(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】異物侵入抑制装置
(51)【国際特許分類】
A01M 29/32 20110101AFI20220913BHJP
E04B 1/92 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
A01M29/32
E04B1/92
(21)【出願番号】P 2018210199
(22)【出願日】2018-11-08
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】593054860
【氏名又は名称】スワロー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【氏名又は名称】原田 卓治
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】原田 雅史
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 正則
(72)【発明者】
【氏名】野澤 良介
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-123005(JP,A)
【文献】特開2016-079680(JP,A)
【文献】特表2014-500628(JP,A)
【文献】登録実用新案第3179214(JP,U)
【文献】特開平08-049378(JP,A)
【文献】特開2019-058078(JP,A)
【文献】登録実用新案第3174173(JP,U)
【文献】特開2018-105002(JP,A)
【文献】特開2003-284481(JP,A)
【文献】実開昭64-057202(JP,U)
【文献】特開2006-166723(JP,A)
【文献】登録実用新案第3015295(JP,U)
【文献】実開平05-015745(JP,U)
【文献】特開2018-091425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 29/32
E04B 1/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置物と前記設置物が設置される設置面の間の隙間に異物が侵入することを抑制する異物侵入抑制装置であって、
幅方向に延びる複数の第1線状部、及び前記幅方向に交わる高さ方向に延び、前記第1線状部との交点で連結する複数の第2線状部を有する
可撓性を有するネットと、
前記設置面に対面する板状に形成される前記設置物
の被取付部に
前記ネットを固定する第1固定手段と、
前記ネットを前記設置面に対して固定する第2固定手段と、を備え、
前記ネットの前記第2線状部は、
前記設置面に近い端部に位置し、前記隙間から離れる方向に向けて延びる先端部
と、
前記ネットにおける前記先端部の反対側の端部に位置し、前記被取付部に沿うように延びる基端部と、
前記先端部及び前記基端部の間に位置し、前記異物侵入抑制装置の外側から見て凹状の曲線をなすように撓んだ状態に設けられる中央部と、を備え、
前記基端部の前記中央部側の部位は、前記異物侵入抑制装置の外側から見て谷状に折り曲げられた状態で設けられる、
異物侵入抑制装置。
【請求項2】
前記第1固定手段は、
前記被取付部の前記隙間に近い側の端部に装着され、前記ネットの前記第1線状部を保持した状態で前記設置物の
前記被取付部を
前記被取付部の厚さ方向から挟み込む第1クリップであり、
前記第2固定手段は、
前記設置面に固定される
L字状の固定金具と、
前記固定金具の前記設置面から遠い側の端部に装着され、前記ネットの前記第1線状部を保持した状態で前記固定金具を
前記固定金具の厚さ方向から挟み込む第2クリップと、を備える、
請求項
1に記載の異物侵入抑制装置。
【請求項3】
前記固定金具は、
前記設置面に接着される接着板部と、
前記設置面に交わる方向に延び、前記第2クリップが装着されるクリップ装着板部と、を備え、
前記接着板部には、接着剤が充填され、前記設置面から離れるにつれて孔径が大きくなる孔が形成される、
請求項
2に記載の異物侵入抑制装置。
【請求項4】
前記第1クリップは、前記設置物の前記被取付部を挟み込む第1挟持部及び第2挟持部を備え、
前記第1挟持部は、前記第2挟持部よりも前記第1クリップの開口側に位置し、
前記ネットの前記第1線状部は、前記第1挟持部と前記第2挟持部の間に保持される、
請求項
2又は
3に記載の異物侵入抑制装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異物侵入抑制装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鳥類が侵入することを抑制する防鳥ネットが知られている。例えば、特許文献1に記載される防鳥ネット取付装置は、取付対象に固定される2つの支柱と、2つの支柱の間に配設されるポールと、を有し、2つの支柱間の上部と下部にネット吊りワイヤーを掛け渡し、ネット吊りワイヤーの間にネットが張られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の構成では、ネットと取付対象の間の隙間から鳥類等の異物が侵入するおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記実状を鑑みてなされたものであり、異物の侵入をより確実に抑制することができる異物侵入抑制装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る異物侵入抑制装置は、設置物と前記設置物が設置される設置面の間の隙間に異物が侵入することを抑制する異物侵入抑制装置であって、幅方向に延びる複数の第1線状部、及び前記幅方向に交わる高さ方向に延び、前記第1線状部との交点で連結する複数の第2線状部を有する可撓性を有するネットと、前記設置面に対面する板状に形成される前記設置物の被取付部に前記ネットを固定する第1固定手段と、前記ネットを前記設置面に対して固定する第2固定手段と、を備え、前記ネットの前記第2線状部は、前記設置面に近い端部に位置し、前記隙間から離れる方向に向けて延びる先端部と、前記ネットにおける前記先端部の反対側の端部に位置し、前記被取付部に沿うように延びる基端部と、前記先端部及び前記基端部の間に位置し、前記異物侵入抑制装置の外側から見て凹状の曲線をなすように撓んだ状態に設けられる中央部と、を備え、前記基端部の前記中央部側の部位は、前記異物侵入抑制装置の外側から見て谷状に折り曲げられた状態で設けられる。
【0008】
また、上記異物侵入抑制装置において、前記第1固定手段は、前記被取付部の前記隙間に近い側の端部に装着され、前記ネットの前記第1線状部を保持した状態で前記設置物の前記被取付部を前記被取付部の厚さ方向から挟み込む第1クリップであり、前記第2固定手段は、前記設置面に固定されるL字状の固定金具と、前記固定金具の前記設置面から遠い側の端部に装着され、前記ネットの前記第1線状部を保持した状態で前記固定金具を前記固定金具の厚さ方向から挟み込む第2クリップと、を備える、ようにしてもよい。
【0009】
また、上記異物侵入抑制装置において、前記固定金具は、前記設置面に接着される接着板部と、前記設置面に交わる方向に延び、前記第2クリップが装着されるクリップ装着板部と、を備え、前記接着板部には、接着剤が充填され、前記設置面から離れるにつれて孔径が大きくなる孔が形成される、ようにしてもよい。
【0010】
また、上記異物侵入抑制装置において、前記第1クリップは、前記設置物の前記被取付部を挟み込む第1挟持部及び第2挟持部を備え、前記第1挟持部は、前記第2挟持部よりも前記第1クリップの開口側に位置し、前記ネットの前記第1線状部は、前記第1挟持部と前記第2挟持部の間に保持される、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、異物侵入抑制装置において、異物の侵入をより確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る異物侵入抑制装置の概略側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るクリップが装着されるネットの正面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る固定金具の平面図、正面図及び側面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るクリップの側面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るクリップの正面図である。
【
図6】比較例に係る異物侵入抑制装置の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る異物侵入抑制装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、異物侵入抑制装置1は、屋根面90に設置される太陽光発電モジュール80と屋根面90の隙間S1に異物I1が侵入することを抑制する。
異物侵入抑制装置1は、ネット10と、複数のクリップ21,22と、複数の固定金具30と、を備える。
【0014】
(ネット10)
図2に示すように、ネット10は、ポリエチレン等の樹脂により格子状に形成され、可撓性を有している。
詳しくは、ネット10は、幅方向Wに延びる複数の横線状部11と、高さ方向Hに延びる複数の縦線状部12と、を備える。横線状部11は第1線状部の一例であり、縦線状部12は第2線状部の一例である。
複数の横線状部11は高さ方向Hに沿って並べられている。複数の縦線状部12は幅方向Wに沿って並べられている。各縦線状部12と各横線状部11は交点にて連結されている。
例えば、ネット10の幅方向Wの長さは1000mmであり、ネット10の高さ方向Hの長さは140mmである。ネット10の格子を構成する正方形は20mm×20mmである。この正方形のサイズは、鳥類、枝又は落葉等の異物I1が通過しないように、かつ通気性が確保されるように設定される。特に、ネット10の通気性が確保されることにより、太陽光発電モジュール80の温度上昇を抑制することができ、発電効率の向上に寄与する。
【0015】
図1に示すように、ネット10は、太陽光発電モジュール80から屋根面90に向けて外側から見て凹状の曲線をなすように撓んだ状態で保持される。例えば、ネット10は、太陽光発電モジュール80から屋根面90に近づくにつれて曲率が小さくなるように形成される。
【0016】
ネット10の基端部(ネット10の太陽光発電モジュール80に近い端部)はクリップ21により太陽光発電モジュール80に固定される。
縦線状部12の先端部12a(ネット10の屋根面90に近い端部)には横線状部11が位置していない。よって、縦線状部12の先端部12aは鳥類等の動物を威嚇するために隙間S1とは反対側の外側に向けて延びている。縦線状部12は幅方向Wに沿って並べられているため、ネット10の先端部12aはくし状に外側に向けて延びている。
縦線状部12の先端部12aは、
図1の実線で示すように、屋根面90に接触していてもよいし、
図1の破線で示すように、屋根面90との間に隙間を有していてもよい。
【0017】
比較例として、
図6に示すように、ネット100が外側から見て凸状の曲線をなすように撓んだ状態で保持された場合、ネット100の外側であっても、太陽光発電モジュール80の下となる空間S2が形成され易い。空間S2に鳥類が巣を作るおそれがあり、鳥害が懸念される。この点、本実施形態のネット10は空間S2が形成されないため、鳥害を抑制することができる。また、比較例では、
図6の破線で示すように、鳥類等の異物I1が外側から隙間S1に向かって進むにつれてネット100の下端が上側に押し上げられ、異物I1の隙間S1への進入が容易である。この点、本実施形態では、
図1に示すように、異物I1が外側から隙間S1に向かって進んだとしても、ネット10の上に乗るか、ネット10の先端部12aに突き刺さるため、異物I1は隙間S1に進入できない。
【0018】
また、縦線状部12の先端部12aが屋根面90に点接触するため、先端部12aの屋根面90に対する接触圧力を高めることができる。よって、先端部12aが異物I1により押し上げられることが抑制される。
さらに、縦線状部12の先端部12aは、幅方向Wに沿って並べられている。よって、複数の先端部12aのうち何れかが異物I1により押し上げられた場合でも、残りの先端部12aは押し上げられない。よって、ネット10と屋根面90の隙間を最小限に留めることができる。これと比較して、ネットの先端部に横線状部が位置し、横線状部が屋根面に線接触する構成においては、横線状部の一部が異物により押し上げられたとき、押し上げられた部位を中心とした周辺領域まで押し上げられ、結果的にネットと屋根面の隙間が大きくなる。
【0019】
ネット10において縦線状部12と横線状部11はハサミにより切断可能に構成されている。よって、屋根面90に凹凸がある場合、その凹凸に合わせてネット10を切断することができる。
【0020】
(固定金具30)
複数の固定金具30は、ネット10の幅方向Wに沿って屋根面90に配列される。固定金具30は、ステンレス等の金属により形成されるL字状の金具である。
図3に示すように、固定金具30は、屋根面90に接着される接着板部31と、クリップ22がネット10とともに装着されるクリップ装着板部32と、を備える。
【0021】
接着板部31は、屋根面90に沿う正方形板状をなし、接着剤が充填される複数の孔31aが形成される。各孔31aは、接着板部31の厚さ方向に貫通し、接着板部31の下面から上面に向かうにつれて孔径が大きくなるように形成される。これにより、各孔31a内の接着剤が硬化すると、その硬化した接着剤が各孔31aから抜けることを抑制する。本例では、孔31aは、正方形の角部に4つと正方形の中央に1つ設けられている。
【0022】
クリップ装着板部32は、長方形板状に形成され、接着板部31の一辺の縁部から接着板部31に対して直交する方向に延びる。クリップ装着板部32は屋根面90に交わる方向に延びる。
クリップ装着板部32には、クリップ22の後述する第1挟持部22eが引っ掛かる凹部32aが形成される。凹部32aは、クリップ装着板部32の外面にネット10の幅方向Wに沿って延びるように形成される。
【0023】
(クリップ21,22)
図1に示すように、クリップ21はネット10を太陽光発電モジュール80の被取付部81に固定する。被取付部81は、太陽光発電モジュール80の金属製の外枠フレームの一部であり、外枠フレームの下部から隙間S1に向けて延びるフランジ板状に形成される。
図4に示すように、クリップ21は、ネット10の横線状部11及び太陽光発電モジュール80の被取付部81を挟み込むクリップ部21aと、クリップ21を取り付ける際に作業者により把持される取手部21bと、を備える。
【0024】
クリップ部21aは、樹脂からなる外装部21cと、外装部21c内に保持される金具21dと、を備える。金具21dは金属により略U字状に形成される。金具21dは、第1挟持部21e及び第2挟持部21fを備える。
第1挟持部21e及び第2挟持部21fは、それぞれ、被取付部81をその厚さ方向から挟み込んだ状態で保持する一対の弾性板部からなる。一対の弾性板部は、クリップ部21aの開口部から底部に向かうにつれて互いに近づくように傾斜する。また、一対の弾性板部は、被取付部81が挿入される際に互いに離れるように弾性変形し、被取付部81が挿入された後は復元力により被取付部81に付勢する。
【0025】
第1挟持部21eは、第2挟持部21fよりもクリップ部21aの開口側に位置する。
図5に示すように、第1挟持部21eは、ネット10の幅方向Wにおいて第2挟持部21fの両側に2組配置される。
図4の一点鎖線で示すように、第1挟持部21e及び第2挟持部21fは、被取付部81を挟み込み、第1挟持部21eと第2挟持部21fの間にはネット10の横線状部11が保持される。ネット10の横線状部11は、クリップ21において、2組の第1挟持部21eと1組の第2挟持部21fにより3箇所で安定的に保持される。
取手部21bは、樹脂によりクリップ部21aの外装部21cと一体で形成される。取手部21bは、内部に空洞を有する直方体で形成される。取手部21bの空洞は、図示しない結束バンドを挿通可能に形成されている。取手部21bの空洞に作業者の爪や指先を挿入することができ、作業性が向上する。
図1に示すように、取手部21bはクリップ部21aの下方向に設けられる。
【0026】
図1に示すように、クリップ22はネット10を固定金具30に固定する。クリップ22は、クリップ21と同様の構成であり、固定金具30のクリップ装着板部32を挟み込むクリップ部22aと、クリップ22を取り付ける際に作業者により把持される取手部22bと、を備える。
クリップ22のクリップ部22aはクリップ装着板部32の上端に装着される。取手部22bはクリップ部22aよりも外側に位置する。
クリップ22がクリップ装着板部32に装着されたとき、
図3の破線で示すように、クリップ22の第1挟持部22eの先端はクリップ装着板部32の凹部32a内に位置する。これにより、クリップ22がクリップ装着板部32から外れることが抑制される。
なお、クリップ21は第1クリップ及び第1固定手段の一例であり、クリップ22は第2クリップの一例である。また、クリップ22及び固定金具30は第2固定手段の一例である。
【0027】
(組み付け作業)
次に、異物侵入抑制装置1の組み付け作業について説明する。以下の作業は作業者により行われる。
現場である屋根面90での異物侵入抑制装置1の組み付け作業の前に、
図1に示すように、ネット10の各横線状部11にクリップ21,22が装着される。このとき、横線状部11は、クリップ21,22における第1挟持部21eと第2挟持部21fの間に保持される。複数のクリップ21はネット10における上から2番目の横線状部11に幅方向Wに均等な間隔毎に配置される。複数のクリップ22はネット10における下から2番目の横線状部11に幅方向Wに均等な間隔毎に配置される。クリップ21とクリップ22は高さ方向Hに一致する位置に設けられる。
【0028】
クリップ21,22が装着されたネット10が固定金具30及び接着剤等とともに現場である屋根面90に持ち込まれる。そして、
図1に示すように、各クリップ21は、横線状部11を保持した状態で、太陽光発電モジュール80の被取付部81に装着される。これにより、ネット10の基端部が折り曲げられて、ネット10は外側から見て凹状に撓み、ネット10の先端部12aは外側に向けて突き出しつつ屋根面90に向けて付勢した状態となる。
クリップ21は予めネット10に装着されているため、クリップ21を太陽光発電モジュール80の被取付部81に押し込むだけで、簡単にネット10を太陽光発電モジュール80に固定できる。よって、クリップ21を用いる方法は、締結バンド又は紐によりネット10を太陽光発電モジュール80に締結する方法に比べて、簡易である。
【0029】
次に、屋根面90におけるクリップ22に対応する位置に固定金具30が接着される。
詳しくは、固定金具30の接着板部31の下面に接着剤が塗布された後、接着板部31の下面が屋根面90に押し当てられる。これにより、接着剤が接着板部31の各孔31a内に充填される。接着剤が硬化するまで、図示しない養生テープにより固定金具30が屋根面90に対して固定される。
接着剤が硬化した後、クリップ22は、横線状部11を保持した状態で、固定金具30のクリップ装着板部32に装着される。
クリップ22は予めネット10に装着されているため、クリップ22を固定金具30に押し込むだけで、簡単にネット10を固定金具30に固定できる。よって、クリップ22を用いる方法は、締結バンド又は紐によりネット10を固定金具30に締結する方法に比べて、簡易である。
最後に、養生テープが剥がされて、組み付け作業が完了となる。太陽光発電モジュール80の各側面につき、上述した異物侵入抑制装置1の組み付け作業が行われる。ネット10の幅方向Wの端部同士は結束バンドにより締結される。
【0030】
(効果)
以上、説明した一実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0031】
(1)異物侵入抑制装置1は、設置物の一例である太陽光発電モジュール80と太陽光発電モジュール80が設置される設置面の一例である屋根面90の間の隙間S1に異物I1が侵入することを抑制する。異物侵入抑制装置1は、幅方向Wに延びる複数の第1線状部の一例である横線状部11、及び幅方向Wに交わる高さ方向Hに延び、横線状部11との交点で連結する複数の第2線状部の一例である縦線状部12を有するネット10と、ネット10を太陽光発電モジュール80に固定する第1固定手段の一例であるクリップ21と、ネット10を屋根面90に対して固定する第2固定手段の一例であるクリップ22及び固定金具30と、を備える。ネット10の縦線状部12は、屋根面90に近い端部に位置し、隙間S1から離れる方向に向けて延びる先端部12aを備える。
この構成によれば、ネット10の先端部12aにより鳥類等を威嚇することができる。よって、異物I1の侵入をより確実に抑制することができる。
【0032】
(2)ネット10は、太陽光発電モジュール80と屋根面90の間において凹状の曲線をなすように撓んだ状態でクリップ21,22により保持される。
この構成によれば、異物I1が外側から隙間S1に向かって進んだとしても、ネット10の上に乗るか、ネット10の先端部12aに突き刺さるため、異物I1が隙間S1に進入することを抑制できる。
また、この構成では、ネットを筒状に巻いて隙間S1に設置する比較例に比べて、使用するネット10の材料を少なくすることができる。
さらに、ネット10が外側から見て凹むように保持されるため、ネット10が外部に露出することを最小限とすることができる。
【0033】
(3)第1固定手段は、ネット10の横線状部11を保持した状態で太陽光発電モジュール80の被取付部81を挟み込む第1クリップの一例であるクリップ21である。第2固定手段は、屋根面90に固定される固定金具30と、ネット10の横線状部11を保持した状態で固定金具30を挟み込む第2クリップの一例であるクリップ22と、を備える。
この構成によれば、クリップ21はネット10の横線状部11を保持した状態であるため、クリップ21を被取付部81に装着するだけで、クリップ21によりネット10を被取付部81に固定することができる。また、クリップ22はネット10の横線状部11を保持した状態であるため、クリップ22を固定金具30に装着するだけで、クリップ22によりネット10を固定金具30に固定することができる。このように、ビスや結束バンドを用いることなく、簡単にネット10を太陽光発電モジュール80及び固定金具30に固定することができる。
【0034】
(4)固定金具30は、屋根面90に接着される接着板部31と、屋根面90に交わる方向に延び、クリップ22が装着されるクリップ装着板部32と、を備える。接着板部31には、接着剤が充填され、屋根面90から離れるにつれて孔径が大きくなる孔31aが形成される。
この構成によれば、各孔31a内の接着剤が硬化すると、その硬化した接着剤が各孔31aから抜けることを抑制する。よって、固定金具30がより確実に屋根面90に固定される。
【0035】
(5)クリップ21は、太陽光発電モジュール80の被取付部81を挟み込む第1挟持部21e及び第2挟持部21fを備える。第1挟持部21eは、第2挟持部21fよりもクリップ21の開口側に位置する。ネット10の横線状部11は、第1挟持部21eと第2挟持部21fの間に保持される。
この構成によれば、第1挟持部21e及び第2挟持部21fにより被取付部81が確実に固定される。ネット10の横線状部11は、第1挟持部21eと第2挟持部21fの間に保持されるため、クリップ21内の横線状部11が、クリップ21の被取付部81への挿入を阻害することが抑制される。
【0036】
(6)第1挟持部21eは、幅方向Wにおける第2挟持部21fの両側に位置する。
この構成によれば、ネット10の横線状部11は、クリップ21において、2組の第1挟持部21eと1組の第2挟持部21fにより3箇所で安定的に保持される。よって、クリップ21がネット10の横線状部11に対して傾くことが抑制される。クリップ22も、クリップ21と同様に、ネット10の横線状部11に対して傾くことが抑制される。
【0037】
(7)クリップ装着板部32には、第1挟持部22eの先端が位置する凹部32aが形成される。
この構成によれば、クリップ22がクリップ装着板部32から外れることが抑制される。
【0038】
なお、本発明は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。以下に、変形の一例を説明する。
【0039】
(変形例)
上記実施形態においては、異物侵入抑制装置1は、太陽光発電モジュール80と屋根面90の隙間S1に適用されたものであったが、太陽光発電モジュール80以外のエアコンディショナの室外機等の設置物と屋根面90の隙間に適用されてもよい。さらに、異物侵入抑制装置1は、屋根面90以外の設置面、例えば地面又は床下と設置物の隙間に適用されてもよい。
【0040】
上記実施形態において、クリップ21,22の少なくとも何れかに代えて結束バンドが用いられていてもよい。
【0041】
上記実施形態においては、接着板部31の孔31aは、下面から上面に向かうにつれて孔径が大きくなるように形成されていたが、これに限らず、孔径が一定に形成されていてもよい。また、孔31aの配置位置及び数は適宜変更可能である。また、孔31aは省略されてもよい。また、クリップ装着板部32には凹部32aが形成されていたが、凹部32aは省略されてもよい。
【0042】
上記実施形態においては、クリップ21は第1挟持部21e及び第2挟持部21fを備えていたが、第1挟持部21e及び第2挟持部21fの何れかは省略されてもよい。また、クリップ22も同様である。
【0043】
上記実施形態においては、固定金具30は接着剤により屋根面90に接着されていたが、固定金具30はビスにより屋根面90に固定されていてもよい。
【0044】
上記実施形態においては、ネット10は外側から見て凹状に撓むように保持されていた。しかしながら、ネット10の先端部12aが外側に向けて突出していれば、ネット10の一部が外側から見て凸状に撓むように保持されていてもよい。また、先端部12aが省略されてもよい。
【0045】
以上の実施形態の異物侵入抑制装置1は、他の観点の課題も解決できる。この課題について説明する。
従来では、防鳥ネットを紐や結束バンド等により固定金具等に締結する細かな作業が必要があり、防鳥ネットの組み付け作業は困難であった。
下記の付記1は、上記実状を鑑みてなされたものであり、ネットの組み付け作業が容易となる異物侵入抑制装置を提供することを目的とする。
【0046】
(付記1)
設置物と前記設置物が設置される設置面の間の隙間に異物が侵入することを抑制する異物侵入抑制装置であって、
幅方向に延びる複数の第1線状部、及び前記幅方向に交わる高さ方向に延び、前記第1線状部との交点で連結する複数の第2線状部を有するネットと、
前記ネットを前記設置物に固定する第1固定手段と、
前記ネットを前記設置面に対して固定する第2固定手段と、を備え、
前記第1固定手段は、前記ネットの前記第1線状部を保持した状態で前記設置物の被取付部を挟み込む第1クリップであり、
前記第2固定手段は、
前記設置面に固定される固定金具と、
前記ネットの前記第1線状部を保持した状態で前記固定金具を挟み込む第2クリップと、を備える、
異物侵入抑制装置。
【符号の説明】
【0047】
1 異物侵入抑制装置
10,100 ネット
11 横線状部(第1線状部の一例)
12 縦線状部(第2線状部の一例)
12a 先端部
21 クリップ(第1クリップの一例)
22 クリップ(第2クリップの一例)
21a,22a クリップ部
21b,22b 取手部
21e,22e 第1挟持部
21f 第2挟持部
30 固定金具
31 接着板部
31a 孔
32 クリップ装着板部
32a 凹部
80 太陽光発電モジュール(設置物の一例)
81 被取付部
90 屋根面(設置面の一例)
H 高さ方向
W 幅方向
I1 異物
S1 隙間