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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】レーザアニール装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/268 20060101AFI20220913BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20220913BHJP
   B23K 26/073 20060101ALI20220913BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20220913BHJP
   B23K 26/067 20060101ALI20220913BHJP
   H01S 5/022 20210101ALI20220913BHJP
【FI】
H01L21/268 J
H01L21/20
B23K26/073
B23K26/064 Z
B23K26/067
H01S5/022
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018235432
(22)【出願日】2018-12-17
(65)【公開番号】P2020098824
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 順
(72)【発明者】
【氏名】澤井 卓哉
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-220589(JP,A)
【文献】特開2012-009872(JP,A)
【文献】特開2004-200497(JP,A)
【文献】特開2008-227122(JP,A)
【文献】国際公開第2017/029729(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/268
H01L 21/20
B23K 26/073
B23K 26/064
B23K 26/067
H01S 5/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビームを被処理基板の表面に照射して被処理基板に対してアニール処理を行うレーザアニール装置であって、
レーザ光を出射する半導体レーザを備える光源部と、
光入射面と当該光入射面に対向する光出射面とを有し、前記光入射面に前記半導体レーザから直接出射されたレーザ光が入射され、前記光出射面から均一化されたレーザビームを出射する均一化素子と、
前記光出射面から出射されたレーザビームを、被処理基板の表面へ投影する出射側結像系と、
を備えるレーザアニール装置。
【請求項2】
前記光源部と前記均一化素子との間に、前記半導体レーザから直接出射されたレーザ光のビーム全体を前記光入射面の領域内のみに入射させる入射側結像系を備える
請求項1に記載のレーザアニール装置。
【請求項3】
前記光源部は、複数の前記半導体レーザを備える
請求項1または請求項2に記載のレーザアニール装置。
【請求項4】
前記光源部は、単一の前記半導体レーザを備え、
前記光源部と前記入射側結像系との間に、前記半導体レーザから直接出射されたレーザ光のビームを複数のビームに分散させる分散素子を備える
請求項2に記載のレーザアニール装置。
【請求項5】
前記出射側結像系から出射されるレーザビームは、前記被処理基板の表面に矩形状のビームスポットで投影される
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のレーザアニール装置。
【請求項6】
前記均一化素子は、前記光出射面から平行光でなるレーザビームを出射する
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のレーザアニール装置。
【請求項7】
前記均一化素子は、ロッドインテグレータ、ロッドアレイ、フライアイレンズから選ばれる
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のレーザアニール装置。
【請求項8】
前記入射側結像系は、前記半導体レーザの活性層のレーザ光出射端面に配されたオンチップレンズである
請求項2または請求項4に記載のレーザアニール装置。
【請求項9】
前記光源は、レーザ光を連続発振する
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のレーザアニール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザアニール装置に関する。
に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイ(OLED:Organic Electroluminescence Display)などの薄型ディスプレイ(FPD:Flat Panel Display)をアクティブ駆動するためのスイッチング素子として用いられている。薄膜トランジスタ(以下、TFTという)の半導体層の材料としては、非晶質シリコン(a-Si:amorphous Silicon)や、多結晶シリコン(P-Si:Polycrystalline Silicon)などが用いられている。
【0003】
非晶質シリコンは、電子の動き易さの指標である移動度が低い。このため、非晶質シリコンでは、さらに高密度・高精細化が進むFPDで要求される高移動度の要求には対応しきれない。そこで、FPDにおけるスイッチング素子としては、非晶質シリコンよりも移動度が大幅に高い多結晶シリコンでチャネル層を形成することが好ましい。多結晶シリコン膜を形成する方法としては、エキシマレーザを使ったエキシマレーザアニール(ELA:Excimer Laser Annealing)装置で、非晶質シリコン膜にレーザ光を照射し、非晶質シリコンを再結晶化させて多結晶シリコンを形成する方法がある。
【0004】
エキシマレーザアニール(以下、ELAという)装置は特殊なガスを使ったガスレーザであり、設備コストならびに維持コストが高いという問題がある。また、ELA装置は、発生出力が強く、レーザ光の位相のそろい具合(コヒーレンス)や出力を一定の状態に保つことが難しいとう問題がある。ガラス基板(歪点:約600℃)を用いたFPDの製造では、ガラス基板に影響を与えるような高温の処理を行うことができない。そこで、FPDの製造においてELA装置を用いる場合は、パルスレーザを用いている。
【0005】
近年、半導体励起固体レーザ(DPSS:Diode Pumped Solid State)を利用したレーザ照明装置が提案されている(特許文献1参照)。このレーザ照明装置では、光源モジュールと、第一の光ファイバと、第二の伝送系としての光ファイバアレイと、第二の光学系と、均一化要素と、が順次配置されている。上記光源モジュールは、多数のエミッタを有する光源ユニットと、第一のカップリング光学系と、を備える。この光源モジュールは、光源ユニットからのレーザ発振光を第一のカップリング光学系を介して第一の光ファイバに導く構成になっている。
【0006】
上記光源ユニットは、半導体レーザとレーザ媒質(レーザ結晶)と非線形材料(非線形結晶)とでなる半導体励起固体レーザを多数備えている。この光源ユニットでは、半導体レーザより出力された励起光でレーザ媒質を励起して基本波を形成し、この基本波を非線形材料で波長変換した光を、第一のカップリング光学系へ出射する構成になっている。第一のカップリング光学系から第一の光ファイバに導かれたレーザ光は、第二の光ファイバアレイに導かれる。第二の光ファイバアレイから出射された複数のビームのレーザ光は、第二の光学系によって均一化素子に導かれて均一化される。均一化素子から出射したビーム状のレーザ光は、第三の光学系で成形されて被処理物の表面に照射される構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4948650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の半導体励起固体レーザを用いたレーザ照明装置では、多くの光ファイバなどの光伝搬経路および光伝搬部材を備えるため、構成が複雑となり、製造コストが高くなるという問題がある。また、上述のレーザ照明装置では、光源モジュールからそれぞれの第二の光ファイバアレイまでを結ぶ第一の光ファイバの長さが、第二の光ファイバアレイ毎に異なる長さとなる。このため、第二の光ファイバアレイから出射されるレーザ光の出力に影響があり、第二の光ファイバアレイ毎にレーザ光の出力が異なるという問題がある。
【0009】
特に、半導体レーザでは、レーザ光を出射する活性層の端面での開口数(NA)が大きく、その端面から出射されるレーザ光は大きく拡散する。このため、上述のレーザ照明装置では、半導体レーザから出射された励起光をレーザ媒質の狭い導波路構造内へ導入する際に、大きな導入ロス(入射効率の低下)が発生し易くなるという課題がある。加えて、上述のレーザ照明装置では、レーザ媒質、非線形材料、第一の光ファイバ、光ファイバアレイなどの多くの光伝搬部材中をレーザ光が伝搬するため、光伝搬ロス(結合損失も含む)が大きくなるという課題がある。さらに、上述のレーザ照明装置では、光ファイバアレイにおける光ファイバの数が多くなればさらに光伝搬ロスが大きくなるという課題がある。特に、上述のレーザ照明装置では、半導体レーザの単体としての出力が小さいため、光伝搬ロスなどにより、所望の照明出力が得られなくなるという課題がある。上述のレーザ照明装置では、光源モジュールにレーザ媒質と非線形材料とを配置するスペースを要する。このため、このレーザ照明装置では、光源モジュールが大型化し易く、光源モジュールを高い密度で集積させることができないという課題がある。そこで、光源モジュールを複数のファイバレーザを備える構成にして、これら複数のファイバレーザをポンプコンバイナで結合させる構成が考えられる。しかし、ポンプコンバイナを用いると、発熱が顕著になることが多くなり、発熱により出力レーザの安定性が乱れるという課題がある。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、レーザ光の光伝搬ロスが小さく、所望のレーザ出力を均一化でき、被処理基板へのレーザ照射条件の制御性がよく、大幅な低コスト化を達成できるレーザアニール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の態様は、レーザビームを被処理基板の表面に照射して被処理基板に対してアニール処理を行うレーザアニール装置であって、レーザ光を出射する半導体レーザを備える光源部と、光入射面と当該光入射面に対向する光出射面とを有し、前記光入射面に前記半導体レーザから直接出射されたレーザ光が入射され、前記光出射面から均一化されたレーザビームを出射する均一化素子と、前記光出射面から出射されたレーザビームを、被処理基板の表面へ投影する出射側結像系と、を備えることを特徴とする。
【0012】
上記態様としては、前記光源部と前記均一化素子との間に、前記半導体レーザから直接出射されたレーザ光のビーム全体を前記光入射面の領域内のみに入射させる入射側結像系を備えることが好ましい。
【0013】
上記態様としては、前記光源部は、複数の前記半導体レーザを備えることが好ましい。
【0014】
上記態様としては、前記光源部は、単一の前記半導体レーザを備え、前記光源部と前記入射側結像系との間に、前記半導体レーザから直接出射されたレーザ光のビームを複数のビームに分散させる分散素子を備えることが好ましい。
【0015】
上記態様としては、前記出射側結像系から出射されるレーザビームは、前記被処理基板の表面に矩形状のビームスポットで投影されることが好ましい。
【0016】
上記態様としては、前記均一化素子は、前記光出射面から平行光でなるレーザビームを出射することが好ましい。
【0017】
上記態様としては、前記均一化素子は、ロッドインテグレータ、ロッドアレイ、フライアイレンズから選ばれることが好ましい。
【0018】
上記態様としては、前記入射側結像系は、前記半導体レーザの活性層のレーザ光出射端面に配されたオンチップレンズであることが好ましい。
【0019】
上記態様としては、前記光源は、レーザ光を連続発振することが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るレーザアニール装置によれば、レーザ光の光伝搬ロスが小さく、所望のレーザ出力を安定して維持でき、被処理基板へのレーザ照射条件の制御性がよく、大幅な低コスト化を達成できる、半導体レーザを光源とするレーザアニール装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態に係るレーザアニール装置の概略構成図である。
図2図2は、本発明の第1の実施の形態に係るレーザアニール装置を用いてラインビームを非晶質シリコン膜の表面に照射した状態を説明する斜視図である。
図3図3は、本発明の第2の実施の形態に係るレーザアニール装置の要部を示す概略構成図である。
図4図4は、本発明の第3の実施の形態に係るレーザアニール装置の要部を示す概略構成図である。
図5図5は、本発明の第4の実施の形態に係るレーザアニール装置の要部を示す概略構成図である。
図6図6は、本発明の第5の実施の形態に係るレーザアニール装置の要部を示す斜視図である。
図7図7は、本発明の第6の実施の形態に係るレーザアニール装置の要部を示す概略構成図である。
図8図8は、本発明の第6の実施の形態に係るレーザアニール装置の光源部に用いる半導体レーザを示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施の形態に係るレーザアニール装置の詳細を図面に基づいて説明する。但し、図面は模式的なものであり、各部材の寸法や寸法の比率や形状などは現実のものと異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率や形状が異なる部分が含まれている。
【0023】
[第1の実施の形態]
ここで、レーザアニール装置の構成の説明に先駆けて、レーザアニール装置でアニール処理を行う被処理基板の一例について説明する。図1および図2に示すように、被処理基板10は、ガラス基板11と、このガラス基板11の表面に略全面に形成された被処理膜としての非晶質シリコン膜12Aとでなり、最終的にはTFT基板となる。なお、非晶質シリコン膜12Aとガラス基板11との間には、作製するTFTの構造によってはゲート線などの配線パターンが形成されていてもよい。
【0024】
図2に示すように、非晶質シリコン膜12Aには、帯状の処理予定領域13が走査方向Tに延びるように設定されている。この処理予定領域13は、走査方向Tに沿って、図示しない複数のTFT形成予定部を繋ぐように形成されている。この処理予定領域13の幅寸法Wは、作製するTFTのチャネル層の幅寸法と略同じ寸法に設定されている。
【0025】
(レーザアニール装置の概略構成)
以下、図1を用いて、本実施の形態に係るレーザアニール装置1の概略構成を説明する。レーザアニール装置1は、基台2と、レーザ照射部3と、を備える。レーザ照射部3は、光源部4と、入射側結像系5と、均一化素子としてのロッドインテグレータ6と、出射側結像系7と、を備える。
【0026】
本実施の形態では、図1に示すように、レーザ照射部3を走査方向Tに走査可能に設けられている。すなわち、基台2上の被処理基板10は移動せず、レーザ照射部3が移動して被処理基板10の非晶質シリコン膜12Aにアニール処理を施すようになっている。なお、本実施の形態では、被処理基板10を固定する構成としたが、レーザ照射部3を固定して、被処理基板10を走査する構成としても勿論よい。
【0027】
図1に示すように、光源部4は、複数の(本実施の形態では4つの)半導体レーザ20を備える。本実施の形態では、半導体レーザ20として、波長帯域が400~500nmのGaN(窒化ガリウム)系の青色レーザを用いる。これら半導体レーザ20は、レーザ光を出射する光出射面が、同一平面上に位置するように配置されている。これらの半導体レーザ20は、一直線上に等間隔に集積された状態で並ぶように配置されている。本実施の形態では、半導体レーザ20は、連続発振(または連続波発振、CW:Continuous Wave)動作を行うCWレーザである。
【0028】
本実施の形態では、入射側結像系5として結像レンズを用いる。この入射側結像系5は、4つの半導体レーザ20からそれぞれ出射されたレーザ光のビーム全体をロッドインテグレータ6の後述する光入射面61に入射させるように設定されている。
【0029】
ロッドインテグレータ6は、直方体形状のガラスロッドで構成され、上下方向(長手方向)の上端面(一端面)である光入射面61と、上下方向(長手方向)の下端面(他端面)である光出射面62と、互いに平行な一対の側面63と、互いに平行な一対の側面64と、を有する。また、ロッドインテグレータ6では、上下方向(長手方向)の長さが、光の均一化を得るために必要な寸法に設定されている。本実施の形態においては、ロッドインテグレータ6の一対の側面64同士の距離が短く、他の一対の側面63同士の距離が長く設定されている。なお、本実施の形態においては、均一化素子としてロッドインテグレータ6を用いるが、ロッドインテグレータの集合体でなるロッドアレイやフライアイレンズなどを用いてもよい。
【0030】
なお、半導体レーザ20では、レーザ光を出射する活性層の端面での開口数(NA)が大きく、その端面から出射されるレーザ光は大きく拡散する。しかし、本実施の形態では、入射側結像系5が半導体レーザ20から拡がって出射されるレーザ光を捕捉できるように、半導体レーザ20と入射側結像系5との距離、ならびに入射側結像系5を構成する結像レンズの径寸法および焦点距離などを適宜設定している。加えて、本実施の形態では、複数の半導体レーザ20の光出射面を同一平面上に位置させ、しかも半導体レーザ20を集積した状態で並ぶように配置している。このような設定や光源部4の構成により、半導体レーザ20から出射されたレーザ光のビーム全体を、ロッドインテグレータ6の光入射面61に漏れなく入射させることが可能となる。
【0031】
出射側結像系7は、ロッドインテグレータ6の光出射面62を被処理基板10の非晶質シリコン膜12Aの表面に投影するように設定されている。なお、図2に示すように、本実施の形態では、出射側結像系7から出射されるレーザビームLBの非晶質シリコン膜12Aの表面に投影されるビームスポットBSが細長い矩形状となるように設定されている。図2に示すように、ビームスポットBSの幅寸法は、被処理基板10における処理予定領域13の幅寸法Wと同一となるように設定されている。
【0032】
(レーザアニール装置の作用および動作)
本実施の形態に係るレーザアニール装置1においては、複数の半導体レーザ20から波長帯域が400~500nmの青色のレーザ光を連続照射する。具体的には、被処理基板10における処理予定領域13の走査方向全体に亘って連続的にレーザ光を発振するように駆動する。そして、処理予定領域13が島状に点在する場合は、その処理予定領域13を走査する間に連続的にレーザ光を発振する駆動を行う。ここで、連続照射とは、目的領域に対して連続してレーザ光を照射する所謂疑似連続照射も含む概念である。つまり、レーザ光がパルスレーザであっても、パルス幅が広ければこの疑似連続照射に含まれる場合がある。
【0033】
本実施の形態では、個々の半導体レーザ20の出力としては、例えば、出力の低い数Wのものを用いることができる。複数の半導体レーザ20をアレイとして束ねることによりアニール処理に必要な、例えば、数Wから数十W、さらにはそれ以上の出力を安定して得ることができる。
【0034】
レーザアニール装置1においては、複数の半導体レーザ20からそれぞれ出射されたレーザ光が、入射側結像系5を介してロッドインテグレータ6へ直接的に入射される。このため、従来のように光ファイバを用いる場合に比べて結合損失が発生しない。加えて、レーザアニール装置1においては、入射側結像系5の結像レンズが、半導体レーザ20から直接出射されたレーザ光のビーム全体を、ロッドインテグレータ6の光入射面61の領域内のみに漏れなく入射させる。
【0035】
本実施の形態においては、ロッドインテグレータ6の一対の側面64同士の距離が短く、他の一対の側面63同士の距離が長く設定されている。したがって、本実施の形態においては、距離の短い一対の側面64同士の間では、光入射面61から入射したレーザ光が光出射面62に向けて、全反射が繰り返される回数が多くなり易く、レーザ光の光量は十分に均一化される。
【0036】
ロッドインテグレータ6の光入射面61に入射したレーザ光のビームの一部は、光出射面62へ向けて直進して光出射面62からそのまま出射されるが、所定以上の入射角を持ったレーザ光は、ロッドインテグレータ6の一対の側面63のいずれかに到達する。ロッドインテグレータ6の一対の側面63のいずれかでは、入射したレーザ光は全反射して折り返される。本実施の形態では、一対の側面63同士は平行であるため、入射したレーザ光はロッドインテグレータ6の光出射面62に到達するまで全反射を繰り返して、光出射面62から出射する。このため、ロッドインテグレータ6に入射したレーザ光のビームは、ロッドインテグレータ6の一対の側面63で折り返され積算されて光出射面62が出射する。この積算により、ロッドインテグレータ6の光出射面62では、レーザ光のビーム内で光強度が平均化されて均一な光強度分布になる。
【0037】
出射側結像系7では、ロッドインテグレータ6の光出射面62を被処理基板10の表面へ投影する。すなわち、図2に示すように、出射側結像系7は、ロッドインテグレータ6の光出射面62から出射されたレーザ光のビームを被処理基板10の表面に矩形状のビームスポットBSとして投影する。
【0038】
アニール処理の手順としては、図1に示すように、基台2の上には被処理基板10を配置し、レーザ照射部3を走査方向Tへ移動させることにより、被処理基板10の表面に設けられた非晶質シリコン膜12Aの処理予定領域13へアニール処理が可能になる。図2に示すように、レーザビームLBが走査方向Tに移動することにより、非晶質シリコン膜12Aは多結晶シリコン膜12Pに改質される。
【0039】
以下、本実施の形態に係るレーザアニール装置1の効果について説明する。本実施の形態によれば、半導体レーザ20で出射されるレーザ光を直接的に均一化素子としてのロッドインテグレータ6へ入射させることができるため、開口数(NA)の大きい半導体レーザ20を用いてもレーザ光の光伝搬ロスを小さくすることができる。
【0040】
また、本実施の形態によれば、安定な出力特性を持つ半導体レーザ20を直接用いることにより、所望のレーザ出力を安定して維持でき、被処理基板10へのレーザ照射条件の制御性を高めることができる。また、本実施の形態では、従来のELA装置や固体レーザアニール装置に比較して、安価な半導体レーザ20がそのまま使えるようになるため、大幅な低コスト化を達成できる。本実施の形態によれば、アニール出力の設定を変えたい場合は、半導体レーザ20の配置個数や点灯個数を増減すればよい。
【0041】
また、本実施の形態のように、レーザ光を連続発振(CW)駆動することにより、非晶質シリコン膜12Aに対して変動のないアニール処理を行うとこが可能となる。このため、多結晶シリコン膜12Pの結晶構造を最適化して良質な多結晶シリコン膜とすることが可能となり、高い移動度を持つチャネル層を有するTFT基板の製造が可能となる。
【0042】
さらに、本実施の形態によれば、本来小型の半導体レーザ20と均一化素子などとを組み合わせたことにより、レーザ照射部3の軽量化を達成できる。このため、本実施の形態によれば、被処理基板10に対してレーザ照射部3が移動する構成とすることができる。近年、FPDの大型化が進んでいるが、従来のような大型のレーザ照射部を備えたレーザアニール装置では、レーザ照射部側の移動が困難であった。従来のレーザアニール装置では、大型の被処理基板10を移動することで装置のフットプリントが大きくなるという課題を抱えている。なお、本実施の形態では、被処理基板10を固定してレーザ照射部3を移動可能としたが、逆にレーザ照射部3を固定して被処理基板10を移動可能とする構成としても勿論よい。
【0043】
また、本実施の形態によれば、寿命が5000時間以上の半導体レーザ20を用いることができるため、半導体レーザ20の交換周期も長く設定でき、光源部4の交換コストや維持コストも従来のレーザアニール装置に比較して大幅に下げることができる。
【0044】
[第2の実施の形態]
図3は、本発明の第2の実施の形態に係るレーザアニール装置1Aを示す概略構成図である。本実施の形態に係るレーザアニール装置1Aは、1つの半導体レーザ20と、分散素子8と、均一化素子としてのロッドインテグレータ6と、出射側結像系7と、を備える。本実施の形態では、半導体レーザ20と、分散素子8と、入射側結像系5と、ロッドインテグレータ6と、出射側結像系7と、でレーザ照射部3Aを構成している。分散素子8としては、拡散板、回折光学素子、プリズムアレイなどを用いることができる。
【0045】
本実施の形態では、1つの半導体レーザ20から直接出射されたレーザ光を分散素子8で分散させて、入射側結像系5側から分散素子8側を見たときに、見かけ上、複数の半導体レーザ20からレーザ光を照射されたように分散させることで、レーザ光の均一化を図ることができる。本実施の形態における他の構成は、上記第1の実施の形態に係るレーザアニール装置1の構成と同様であるため説明を省略する。
【0046】
本実施の形態によれば、単一の半導体レーザ20を用いて均一化されたレーザビームLBを形成することができる。このため、本実施の形態によれば、さらなるレーザ照射部3Aの軽量化と低価格化を達成することができる。本実施の形態における他の効果は、上記第1の実施の形態に係るレーザアニール装置1の効果と同様である。
【0047】
[第3の実施の形態]
図4は、本発明の第3の実施の形態に係るレーザアニール装置1Bを示す概略構成図である。本実施の形態に係るレーザアニール装置1Bは、4つの半導体レーザ20と、均一化素子としてのロッドインテグレータ6と、出射側結像系7と、を備える。本実施の形態では、半導体レーザ20と、ロッドインテグレータ6と、出射側結像系7と、でレーザ照射部3Bを構成している。
【0048】
本実施の形態では、4つの半導体レーザ20から出射されたレーザ光が直接ロッドインテグレータ6へ入射するように設定されている。本実施の形態では、4つの半導体レーザ20から出射されたレーザ光を漏れなく光入射面61へ入射させるために、比較的面積の大きな光入射面61有するロッドインテグレータ6を用いている。本実施の形態における他の構成は、上記第1の実施の形態に係るレーザアニール装置1の構成と同様であるため説明を省略する。
【0049】
本実施の形態では、上記第1の実施の形態に係るレーザアニール装置1を構成する入射側結像系5を用いないため、装置構成をさらに簡素化できる。本実施の形態の効果は、上記第1の実施の形態の効果と同様である。
【0050】
[第4の実施の形態]
図5は、本発明の第4の実施の形態に係るレーザアニール装置1Cを示す概略構成図である。本実施の形態に係るレーザアニール装置1Cは、一対の半導体レーザ20と、それぞれの半導体レーザ20に対応する一対の入射側結像系5Aと、均一化素子としてのロッドインテグレータ6と、出射側結像系7と、を備える。本実施の形態では、一対の半導体レーザ20と、一対の入射側結像系5Aと、ロッドインテグレータ6と、出射側結像系7と、でレーザ照射部3Cを構成している。
【0051】
本実施の形態では、2つの半導体レーザ20から出射されたレーザ光がそれぞれ入射側結像系5Aを介してロッドインテグレータ6への光入射面61に漏れなく入射するように設定されている。本実施の形態における他の構成は、上記第1の実施の形態に係るレーザアニール装置1の構成と同様であるため説明を省略する。本実施の形態の効果は、上記第1の実施の形態の効果と同様である。
【0052】
[第5の実施の形態]
図6は、本発明の第5の実施の形態に係るレーザアニール装置1Dを示す概略構成図である。本実施の形態に係るレーザアニール装置1Dは、4つの半導体レーザ20を備える光源部4と、それぞれの半導体レーザ20に対応する入射側結像系5Bと、均一化素子としてのロッドインテグレータ6と、出射側結像系7と、を備える。本実施の形態では、光源部4と、入射側結像系5Bと、ロッドインテグレータ6と、出射側結像系7と、でレーザ照射部3Dを構成している。
【0053】
本実施の形態では、4つの半導体レーザ20から出射されたレーザ光がそれぞれ入射側結像系5Bを介してロッドインテグレータ6の光入射面61に漏れなく入射するように設定されている。図6に示すように、4つの半導体レーザ20はアレイ基板41の下面に一列に配置、固定されている。入射側結像系5Bは、それぞれの半導体レーザ20に対応するように配置されている。本実施の形態における他の構成は、上記第1の実施の形態に係るレーザアニール装置1の構成と同様であるため説明を省略する。本実施の形態の効果は、上記第1の実施の形態の効果と同様である。
【0054】
[第6の実施の形態]
図7は、本発明の第6の実施の形態に係るレーザアニール装置1Eを示す概略構成図である。本実施の形態に係るレーザアニール装置1Eは、4つの半導体レーザ20Aを備える光源部4と、均一化素子としてのロッドインテグレータ6と、出射側結像系7と、を備える。本実施の形態では、光源部4と、ロッドインテグレータ6と、出射側結像系7と、でレーザ照射部3Eを構成している。
【0055】
図7および図8に示すように、本実施の形態では、半導体レーザ20Aが、入射側結像系としてのオンチップレンズ5Cを備えている。図8に示すように、半導体レーザ20Aは、順次積層されたn側電極21、n型基板22、n型クラッド層23、活性層24、p型クラッド層25、p側電極26を備えている。活性層24の一端側には完全反射膜27が形成されている。一方、活性層24の他端側の反射面24Aにオンチップレンズ5Cが一体に形成されている。
【0056】
本実施の形態では、半導体レーザ20Aにオンチップレンズ5Cが一体に設けられているため、入射側結像系を別途設ける必要がなく、レーザ照射部3Eをコンパクトな構造にできる。
【0057】
また、本実施の形態では、4つの半導体レーザ20Aから出射されたレーザ光がそれぞれオンチップレンズ5Cを介してロッドインテグレータ6の光入射面61に漏れなく入射するように設定することが容易である。本実施の形態における他の構成は、上記第1の実施の形態に係るレーザアニール装置1の構成と同様であるため説明を省略する。本実施の形態の効果は、上記第1の実施の形態の効果と同様である。
【0058】
[その他の実施の形態]
以上、実施の形態について説明したが、この実施の形態の開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0059】
例えば、上記第1から第6の実施の形態においては、均一化素子として直方体形状のロッドインテグレータ6を用いた例を示したが、これに変えてロッドアレイやフライアイレンズなどの光の均一化を行う光学素子を用いてもよい。また、ロッドインテグレータ6としては、光入射面61から光出射面62に向かうに従って断面積が漸次小さくなるような構造のものを用いることも可能である。
【0060】
上記の第1から第6の実施の形態では、半導体レーザ20,20Aの数が、1,2,4の場合について説明したが、半導体レーザ20の数は、これに限定されるものではなく、さらに多数の半導体レーザ20,20Aを用いてレーザビームLBの出力を高めた構成としてもよい。
【0061】
上記第1から第6の実施の形態では、レーザ照射部3,3A,3B,3C,3D,3Eを移動させて、被処理基板10を位置固定する構成としたが、被処理基板10が移動して、レーザ照射部3,3A,3B,3C,3D,3Eが位置固定された構成としてもよい。
【0062】
上記第1から第6の実施の形態では、半導体レーザ20,20Aを青色レーザとしたが、これに限定されるものではなく、他の波長帯域の半導体レーザを適用して勿論よい。
【符号の説明】
【0063】
1,1A,1B,1C,1D,1E レーザアニール装置
2 基台
3,3A,3B,3C,3D,3E レーザ照射部
4 光源部
5,5A,5B 入射側結像系
5C オンチップレンズ
6 ロッドインテグレータ(均一化素子)
7 出射側結像系
8 分散素子
10 被処理基板
12A 非晶質シリコン膜
12P 多結晶シリコン膜
13 処理予定領域
20,20A 半導体レーザ
24 活性層
24A 反射面
27 完全反射膜
41 アレイ基板
61 光入射面
62 光出射面
63 側面
64 側面
BS ビームスポット
LB レーザビーム
T 走査方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8