(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】保守交換訓練システム、保守交換訓練方法、および保守交換訓練プログラム
(51)【国際特許分類】
G09B 19/00 20060101AFI20220913BHJP
【FI】
G09B19/00 Z
(21)【出願番号】P 2019214956
(22)【出願日】2019-11-28
【審査請求日】2021-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000232140
【氏名又は名称】NECフィールディング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】小平 真樹
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 禎史
【審査官】安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-149450(JP,A)
【文献】特開平06-274256(JP,A)
【文献】特開2009-086542(JP,A)
【文献】特開2005-258089(JP,A)
【文献】特開2005-195722(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0032946(US,A1)
【文献】4.2 BIOSのセットアップ,IBM PC/AT互換機ガイドブック Windows95版,ソフトバンク株式会社,1996年07月04日,99,100,101,114,115
【文献】[PC]マザーボードのバッテリーを交換する方法,インターネット パソコンに関するハウと記事,2019年03月12日,https://coeure.co.jp/blog/pc_support/pc_battery_190311
【文献】マザーボードの電池交換に伴うBIOSバックアップと復元方法!,インターネット マザーボードの電池交換に関するブログ記事,2014年03月15日,https://vivati.blog.fc2.com/blog-entry-592.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 19/00
G09B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保守交換作業の対象である対象機器と、
前記対象機器にそれぞれ電力を供給する第1の電源と第2の電源とを制御するリレー回路と、
前記対象機器と前記リレー回路とを操作する第1の端末と、
を備え
、
前記第1の端末は、行われた操作の順序の履歴を記録する記録部と、前記操作に連動して実際の作業に対応する動画又は写真を表示する表示部と、を備える、
保守交換訓練システム。
【請求項2】
前記第1の端末は、行われるべき操作の順序と行われた操作の順序との比較を行う比較部を備える請求項
1に記載の保守交換訓練システム。
【請求項3】
前記第1の端末
の前記表示部は、行われるべき操作の順序と行われた操作の順序との比較結果を表示す
る請求項
2に記載の保守交換訓練システム。
【請求項4】
前記第1の電源は、交流電源であり、前記第2の電源は、直流電源である請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載の保守交換訓練システム。
【請求項5】
前記第1の端末を遠隔操作する第2の端末を備える請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の保守交換訓練システム。
【請求項6】
保守交換作業の対象である対象機器と、前記対象機器にそれぞれ電力を供給する第1の電源および第2の電源と、を第1の端末を介して操作する保守交換訓練方法であって、
前記対象機器に前記第1の電源から電力の供給を開始する第1のステップと、
前記対象機器から情報を抽出する第2のステップと、
前記第1の電源からの電力の供給を停止する第3のステップと、
前記第2の電源からの電力の供給を停止する第4のステップと、
前記第2の電源からの電力の供給を再開する第5のステップと、
前記第1の電源からの電力の供給を再開する第6のステップと、
前記対象機器に情報を書き込む第7のステップと、
前記第1から前記第7のステップが順次正しく実行されたかを評価する評価ステップと、
を順次行
い、
前記第1の端末は、前記操作に連動して実際の作業に対応する動画又は写真を表示する、保守交換訓練方法。
【請求項7】
保守交換作業の対象である対象機器と、前記対象機器にそれぞれ電力を供給する第1の電源および第2の電源と、を操作する第1の端末にて実行する保守交換訓練プログラムであって、
前記対象機器に前記第1の電源から電力の供給を開始したことを記録する第1のステップと、
前記対象機器から情報を抽出したことを記録する第2のステップと、
前記第1の電源からの電力の供給を停止したことを記録する第3のステップと、
前記第2の電源からの電力の供給を停止したことを記録する第4のステップと、
前記第2の電源からの電力の供給を再開したことを記録する第5のステップと、
前記第1の電源からの電力の供給を再開したことを記録する第6のステップと、
前記対象機器に情報を書き込んだことを記録する第7のステップと、
前記第1から前記第7のステップが順次正しく実行されたかを評価する評価ステップと、
を順次行
い、
前記第1の端末は、前記操作に連動して実際の作業に対応する動画又は写真を表示する、保守交換訓練プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保守交換訓練システム、保守交換訓練方法、および保守交換訓練プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、保守交換作業の訓練ないし支援をシミュレーション環境で行う技術が知られている。例えば、特許文献1には、プラント故障部位の同定および復旧を行う訓練のためのシミュレーションシステムが記載されている。また、特許文献2には、保守時に受変電設備の回路状況を把握するための支援システムが記載されている。また、特許文献3には、コンピュータシステムにおける障害対応として、「業務への影響判断」、「業務継続の方法」、「正常動作の確認」、「資料採取」、「リカバリ」の段階を踏ませて訓練を行うシミュレーション装置が記載されている。同様に、サーバやネットワーク機器に関する保守部品の交換作業の訓練を受ける際、多くの部品の交換作業に伴うソフトウェア設定ついては、遠隔操作により訓練を受けることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-073856号公報
【文献】特開2005-258089号公報
【文献】特開2002-279333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
なお、上記先行技術文献の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。以下の分析は、本発明者らによってなされたものである。
【0005】
しかしながら、例えばマザーボード等を交換し、各種システム設定等を交換前の状態に戻す作業については遠隔操作で十分な訓練を受けることができず、訓練設備が整った施設に出向き実機を用いて訓練を受ける他なかった。これはマザーボードが、主電源とは別に内蔵電源から供給を受けているからであり、これらの電源のオン/オフ作業と保守交換作業の順番を正しく行うような訓練が必要だからである。以下、この点について補足説明する。
【0006】
サーバやネットワーク機器におけるマザーボードには、メモリスロットに挿入することで容易に増設又は交換可能なメインメモリと、マザーボード上に接合されており個別で交換不可能な半導体メモリ(BIOS ROM(Basic Input/Output System Read Only Memory)またはCMOS ROM(Complementary Metal Oxide Semiconductor Read Only Memory)とも呼ぶ)との2種類が搭載される。
【0007】
前者は、CPU(Central Processing Unit)と補助記憶装置(例えばHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等)の橋渡しとしての役割を担っており、補助記憶装置内のデータは一度メインメモリに格納され、その後メインメモリからCPUに送られることでデータ処理の高速化を図るものである。なお、メインメモリに記憶されているデータは、機器の主電源を切ると消去される。
【0008】
一方、後者は、システム時刻の設定や装置の基本動作に関わる設定などを管理するBIOS(Basic Input/Output System)に関するデータを記憶している。このデータは内蔵電池の電力供給により保持され、主電源を切っても電池の寿命が続く限り保持される。したがってマザーボードを交換する場合、交換前のマザーボード上に接合されている半導体メモリ内に保持されているデータを予め抽出し、次に新たなマザーボードに取り替えた後に内蔵電池の載せ替え作業を行い、最後に抽出データを半導体メモリに書き込むことでBIOSの再設定を行う必要がある。
【0009】
中でも内蔵電池の載せ替え作業は、遠隔操作により擬似的に行うことができなかった為、訓練を受ける保守員は、一連の作業の流れに沿った交換作業を経験することができなかった。従って、実際に交換作業が必要になった場合には、作業ミスが発生してしまう可能性が懸念されていた。
【0010】
本発明の目的は、上述した課題を鑑み、異なる複数の電源から供給を受けている機器における保守交換作業の訓練を行うことに寄与する保守交換訓練システム、保守交換訓練方法、および保守交換訓練プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の視点では、保守交換作業の対象である対象機器と、前記対象機器にそれぞれ電力を供給する第1の電源と第2の電源とを制御するリレー回路と、前記対象機器と前記リレー回路とを操作する第1の端末とを備える保守交換訓練システムが提供される。
前記第1の視点に係る保守交換訓練システムは、保守交換作業の対象である対象機器と、前記対象機器にそれぞれ電力を供給する第1の電源と第2の電源とを制御するリレー回路と、前記対象機器と前記リレー回路とを操作する第1の端末と、を備え、前記第1の端末は、行われた操作の順序の履歴を記録する記録部と、前記操作に連動して実際の作業に対応する動画又は写真を表示する表示部と、を備えることができる。
【0012】
本発明の第2の視点では、保守交換作業の対象である対象機器と、前記対象機器にそれぞれ電力を供給する第1の電源および第2の電源と、を第1の端末を介して操作する保守交換訓練方法であって、前記対象機器に前記第1の電源から電力の供給を開始する第1のステップと、前記対象機器から情報を抽出する第2のステップと、前記第1の電源からの電力の供給を停止する第3のステップと、前記第2の電源からの電力の供給を停止する第4のステップと、前記第2の電源からの電力の供給を再開する第5のステップと、前記第1の電源からの電力の供給を再開する第6のステップと、前記対象機器に情報を書き込む第7のステップと、を順次行う保守交換訓練方法が提供される。
前記第2の視点に係る保守交換訓練方法は、保守交換作業の対象である対象機器と、前記対象機器にそれぞれ電力を供給する第1の電源および第2の電源と、を第1の端末を介して操作する保守交換訓練方法であって、前記対象機器に前記第1の電源から電力の供給を開始する第1のステップと、前記対象機器から情報を抽出する第2のステップと、前記第1の電源からの電力の供給を停止する第3のステップと、前記第2の電源からの電力の供給を停止する第4のステップと、前記第2の電源からの電力の供給を再開する第5のステップと、前記第1の電源からの電力の供給を再開する第6のステップと、前記対象機器に情報を書き込む第7のステップと、前記第1から前記第7のステップが順次正しく実行されたかを評価する評価ステップと、を順次行い、前記第1の端末は、前記操作に連動して実際の作業に対応する動画又は写真を表示することができる。
【0013】
本発明の第3の視点では、保守交換作業の対象である対象機器と、前記対象機器にそれぞれ電力を供給する第1の電源および第2の電源と、を操作する第1の端末にて実行する保守交換訓練プログラムであって、前記対象機器に前記第1の電源から電力の供給を開始したことを記録する第1のステップと、前記対象機器から情報を抽出したことを記録する第2のステップと、前記第1の電源からの電力の供給を停止したことを記録する第3のステップと、前記第2の電源からの電力の供給を停止したことを記録する第4のステップと、前記第2の電源からの電力の供給を再開したことを記録する第5のステップと、前記第1の電源からの電力の供給を再開したことを記録する第6のステップと、前記対象機器に情報を書き込んだことを記録する第7のステップと、を順次行う保守交換訓練プログラムが提供される。
前記第3の視点に係る保守交換訓練プログラムは、保守交換作業の対象である対象機器と、前記対象機器にそれぞれ電力を供給する第1の電源および第2の電源と、を操作する第1の端末にて実行する保守交換訓練プログラムであって、前記対象機器に前記第1の電源から電力の供給を開始したことを記録する第1のステップと、前記対象機器から情報を抽出したことを記録する第2のステップと、前記第1の電源からの電力の供給を停止したことを記録する第3のステップと、前記第2の電源からの電力の供給を停止したことを記録する第4のステップと、前記第2の電源からの電力の供給を再開したことを記録する第5のステップと、前記第1の電源からの電力の供給を再開したことを記録する第6のステップと、前記対象機器に情報を書き込んだことを記録する第7のステップと、前記第1から前記第7のステップが順次正しく実行されたかを評価する評価ステップと、を順次行い、前記第1の端末は、前記操作に連動して実際の作業に対応する動画又は写真を表示することができる。
なお、このプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記録することができる。記憶媒体は、半導体メモリ、ハードディスク、磁気記録媒体、光記録媒体等の非トランジェント(non-transient)なものとすることができる。本発明は、コンピュータプログラム製品として具現することも可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の各視点によれば、異なる複数の電源から供給を受けている機器における保守交換作業の訓練を行うことに寄与する保守交換訓練システム、保守交換訓練方法、および保守交換訓練プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、保守交換訓練システムの第1実施形態の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、保守交換訓練方法の第1実施形態の手順を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、第1の端末のハードウェア構成の例を示す図である。
【
図4】
図4は、保守交換訓練システムの第2実施形態の構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、保守交換訓練方法の第2実施形態の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。ただし、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、保守交換訓練システムの第1実施形態の構成例を示す図である。
図1に示すように、第1実施形態に係る保守交換訓練システム100は、保守交換作業の対象である対象機器10と、対象機器10にそれぞれ電力を供給する第1の電源21と第2の電源22とを制御するリレー回路20と、対象機器10とリレー回路20とを操作する第1の端末30とを備えている。
【0018】
また、第1の端末30は、行われた操作の順序の履歴を記録する記録部31を備えることが好ましい。さらに、第1の端末30は、行われるべき操作の順序と行われた操作の順序との比較を行う比較部32を備えることが好ましい。そして、第1の端末30は、行われるべき操作の順序と行われた操作の順序との比較結果を表示する表示部33を備えることが好ましい。なお、表示部33は、第1の端末30の一部として構成することもできるが、外部ディスプレイの形態で備えることも可能である。
【0019】
上記の構成の保守交換訓練システム100を用いれば、異なる複数の電源から供給を受けている機器における保守交換作業の訓練を行うことが容易となる。具体的には以下のように保守交換訓練を行うことができる。
【0020】
図2は、保守交換訓練方法の第1実施形態の手順を示すフローチャートである。なお、
図2に示す保守交換訓練方法は、例えば上記説明をしたような、保守交換作業の対象である対象機器10と、対象機器10にそれぞれ電力を供給する第1の電源21および第2の電源22と、を第1の端末30を介して操作する保守交換訓練システム100を用いて行うことが好ましいが、当該構成に限定されるものではない。
【0021】
また、
図2を参照しながら説明する保守交換訓練方法は、第1の電源21を主電源とし、第2の電源22を主電源とは異なる電源であると想定する。そして、保守交換訓練方法の初期状態として、第1の電源21がオフ状態であり、第2の電源22がオン状態であると想定する。
【0022】
図2に示すように、第1実施形態に係る保守交換訓練方法は、まず対象機器10に第1の電源21から電力の供給を開始する(ステップS1)。その後、対象機器10から情報を抽出する(ステップS2)。ここで、抽出する情報とは、対象機器10の第1の電源21(主電源)がオン状態でなければ抽出できない情報であって、第2の電源22がオフ状態になると消去されてしまう情報である。例えば、第2の電源22(内蔵電池)によって第1の電源21(主電源)がオフ状態の時も記憶が保持できるように構成したメモリに保持されている情報であり、対象機器10の設定情報がその一例となる。
【0023】
対象機器10から情報を抽出した後に、第1の電源21からの電力の供給を停止し(ステップS3)、第2の電源22からの電力の供給を停止する(ステップS4)。この状態で、対象機器10に供給されていた電力の全てが遮断される。すなわち、対象機器10に対する保守交換作業を行うことができる状態である。本実施形態の保守交換訓練方法は、直接の保守交換作業の事前作業および事後作業に関するものであるので、保守交換作業の具体的内容には限定されない。しかしながら、想定し得る保守交換作業は、第2の電源22をオフ状態にしなければならない作業であり、例えば、対象機器10のマザーボードの交換や第2の電源22(内蔵電池)の交換などを想定することができる。また、本実施形態の保守交換訓練方法は、訓練方法であるので、実際に保守交換作業を行うことを必要としない。
【0024】
第2の電源22からの電力の供給を停止した後に、保守交換作業が完了したことを想定し、第2の電源22からの電力の供給を再開し(ステップS5)、第1の電源からの電力の供給を再開する(ステップS6)。そして、ステップS2にて対象機器10から抽出した情報を対象機器10に書き込む(ステップS7)。
【0025】
なお、本実施形態の保守交換訓練方法は、上記作業に同時並行して又は終わった後に、ステップS1~S7の作業が順次正しく実行されたかを評価することが好ましい。例えば、上記保守交換訓練が実作業内のどの作業に対応しているのかを訓練を受ける者の入力に応じて表示部33に表示することで、訓練を受ける者の理解を促す効果が高まる。例えば、予めRPA(Robotic Process Automation)等で訓練を受ける者の操作に連動して実際の作業に対応する動画や写真が表示されるように設定しておき、訓練を受ける者がコマンドを入力後に実作業の動画や写真を表示させるようにしてもよい。更に、訓練を受ける者の入力が順番を間違えた場合には、実作業において発生する危険性を表示部33に表示することで、訓練を受ける者の理解を促す効果がより一層高まる。
【0026】
上記保守交換訓練方法は、第1の端末30にて実行する保守交換訓練プログラムによって支援することが好ましい。保守交換訓練プログラムを第1の端末30にて実行するために、例えば第1の端末30を
図3に示すようなハードウェア構成とすることが好ましい。
図3は、第1の端末のハードウェア構成の例を示す図である。ただし、
図3に示すハードウェア構成例は、第1の端末30の機能を実現するハードウェア構成の一例であり、第1の端末30のハードウェア構成を限定する趣旨ではない。第1の端末30は、
図3に示さないハードウェアを含むことができる。
【0027】
図3に示すように、第1の端末30のハードウェア構成は、例えば内部バスにより相互に接続される、CPU(Central Processing Unit)34、主記憶装置35、補助記憶装置36、およびIF(Interface)部37を備える。
【0028】
CPU34は、実施形態に係る保守交換訓練プログラムを実行する。主記憶装置35は、例えばRAM(Random Access Memory)であり、CPU34が保守交換訓練プログラムを処理するために一時記憶する。
【0029】
補助記憶装置36は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)であり、保守交換訓練プログラムなどを中長期的に記憶しておくことが可能である。保守交換訓練プログラムは、非一時的なコンピュータ可読記録媒体(non-transitory computer-readable storage medium)に記録されたプログラム製品として提供することができる。
【0030】
IF部37は、第1の端末30の外部との入出力に関するインターフェイスを提供する。例えば、IF部37は、対象機器10、リレー回路20に接続するために用いることができる。
【0031】
CPU34は、IF部37を介して対象機器10およびリレー回路20に対して行われる操作を監視し、
図2に示したステップS1~S7の各操作が行われた順序を主記憶装置35または補助記憶装置36に記録する。そして、CPU34は、主記憶装置35または補助記憶装置36を参照しながら、行われるべき操作の順序と行われた操作の順序との比較を行う。すなわち、CPU34は、主記憶装置35、補助記憶装置36、およびIF部37と連携することで、行われた操作の順序の履歴を記録する記録部31および行われるべき操作の順序と行われた操作の順序との比較を行う比較部32として機能することができる。
【0032】
また、上記のようなハードウェア構成を採用した第1の端末30は、保守交換訓練方法を適切に支援することが可能である。すなわち、第1の端末30は、
図2に示したステップS1~S7の各作業が行われたことを記録し、各作業が順次正しく実行されたかを評価することができる。例えば、上記保守交換訓練が実作業内のどの作業に対応しているのかを訓練を受ける者の入力に応じて表示部33に表示することで、訓練を受ける者の理解を促す効果が高まる。例えば、予めRPA(Robotic Process Automation)等で訓練を受ける者の操作に連動して実際の作業に対応する動画や写真が表示されるように設定しておき、訓練を受ける者がコマンドを入力後に実作業の動画や写真を表示させるようにしてもよい。更に、訓練を受ける者の入力が順番を間違えた場合には、実作業において発生する危険性を表示部33に表示することで、訓練を受ける者の理解を促す効果がより一層高まる。
【0033】
(第2実施形態)
図4は、保守交換訓練システムの第2実施形態の構成例を示す図である。第2実施形態に係る保守交換訓練システム200は、第1実施形態に係る保守交換訓練システム100をより応用に近い構成にしたものである。したがって、同一の構成については同一の参照符号を付し、相違点に重点を置いて説明を行う。
【0034】
図4に示すように、第2実施形態に係る保守交換訓練システム200は、保守交換作業の対象である対象機器10と、対象機器10にそれぞれ電力を供給する第1の電源21と第2の電源22とを制御するリレー回路20と、対象機器10とリレー回路20とを操作する第1の端末30とを備えている。これに加え、第2実施形態に係る保守交換訓練システム200は、第1の端末30を遠隔操作する第2の端末40を備えている。
【0035】
対象機器10は、例えばサーバや、ルータ等のネットワーク機器であり、保守部品(例えばマザーボード等)の交換対象となる機器である。第1の端末30は、対象機器10に第1の配線51を介して接続されている。また第1の端末30のコマンド操作により対象機器10のシステム設定等を行うことができる。また、対象機器10は、並列的に複数備えることも可能である。
【0036】
第1の配線51は、コンソールケーブルであり、例えば一端がRJ-45のEthernetコネクタ形状であり、他端がD-Sub9ピンコネクタ形状からなる。RJ-45側を対象機器10のコンソール用ポートに差し込み、D-Sub側を第1の端末30のシリアルポートに差し込むことにより、第1の端末30の操作による対象機器10の操作をすることが可能となる。
【0037】
リレー回路20は、対象機器10に対して主電源となる第1の電源21(例えばAC100V商用電源)と、対象機器10内の内蔵電池の代わりとなるサブ電源として第2の電源22を制御する。リレー回路20は、スイッチSW1をオンにすることで第1の電源21から電力を対象機器10に供給することができ、スイッチSW2をオンにすることで第2の電源22から電力を対象機器10に供給することができる。
【0038】
なお、第1の電源21は、例えばAC100V商用電源であるので交流電源であることが好ましく、一方、第2の電源22は、内蔵電池の代わりとなるサブ電源であるので、直流電源であることが好ましい。電源供給に用いられるケーブルは特に指定されるものはない。
【0039】
第2の電源22から電力は、仮想電池11から電池ホルダを介して対象機器10に供給される。仮想電池11は、対象機器10内のマザーボードに取り付けられている電池ホルダと電気的に接続可能なコネクタである。保守交換訓練に用いる対象機器10に実際のマザーボードなどを用いることを考慮すると、ボタン電池と互換性がある仮想電池11を用いることが好ましいが、必ずしも電池の種類はボタン電池に限定されるものではない。
【0040】
リレー回路20は、第2の配線52を介して第1の端末30と接続されている。第2の配線52は、第1の端末30とリレー回路20とを接続するケーブルであり、例えば両端がD-Sub9ピンのRS-232Cストレートケーブルとすることができる。
【0041】
リレー回路20は、第1の端末30のコマンド操作により、複数の対象機器10のうちどの保守対象機器に対して第1の電源21または第2の電源22から電力を供給するかを指定することができる。またリレー回路20に別途の制御スイッチを設けても良い。
【0042】
第2の端末40は、第1の端末30と同一のネットワーク53に接続されており、リモート操作により遠隔地から第1の端末30を操作することが可能である。つまり、遠隔地から第1の端末30を操作することで対象機器10内の部品の交換作業を擬似的に行うことが可能である。
【0043】
図5は、保守交換訓練方法の第2実施形態の手順を示すフローチャートである。第2実施形態に係る保守交換訓練は、実質的に第1実施形態に係る保守交換訓練と同一であるが、より応用に近い第2実施形態に係る保守交換訓練システム200を用いた保守交換訓練方法となっている。
【0044】
図5を参照しながら説明する保守交換訓練方法は、第1の電源21を主電源とし、第2の電源22を内蔵電池の代替電源であると想定する。そして、保守交換訓練方法の初期状態として、第1の電源21がオフ状態であり、第2の電源22がオン状態であると想定する。また、実際の保守交換訓練は、第2の端末40を用いて、第1の端末30を遠隔操作することが想定されているが、下記説明では、便宜上、第1の端末30によるコマンド入力により操作されるものとして説明する。
【0045】
まずステップS11において、第1の端末30は、コマンド入力により、リレー回路20のスイッチSW1をオンにする。スイッチSW1をオンにすることで、所定の対象機器10に第1の電源21(主電源)から電力を供給することができる。なお、第1の端末30は、リレー回路20の設定内容を監視することができるので、リレー回路20のスイッチSW1がオンになっているか否かを監視し、また動作を記録することができる。
【0046】
ステップS12において、第1の端末30は、コマンド入力により、ステップS11で主電源を入れた対象機器10について、BIOS(Basic Input/Output System)に関するデータを抽出する。このデータ抽出作業により、後述するステップでシステム時刻や機器の基本動作に関わる設定などを復元することが可能となる。なお、抽出されたデータは、第1の端末30に内蔵されている記憶媒体(例えばHDDやSSD等)に格納してもよく、USBメモリ等の外部メモリに格納してもよい。
【0047】
続いてステップS13において、第1の端末30は、コマンド入力により、リレー回路20のスイッチSW1をオフにする。スイッチSW1をオフにすることで、対象機器10への主電源からの電力供給を停止することができる。ステップS13についてもステップS11と同様に、第1の端末30がリレー回路20のスイッチSW1がオフになっているか否かを監視し、また動作を記録することができる。リレー回路20のスイッチSW1がオフになっていることを確認できた場合には、次のステップS14に進む。
【0048】
ステップS14において、第1の端末30は、コマンド入力により、スイッチSW2のスイッチをオフにする。この操作により、対象機器10へ第2の電源22からの電力の供給が停止されることになり、例えばマザーボードの内蔵電池を取り外したことと同じ結果が得られる。つまり、第2の端末40の遠隔操作により、擬似的に内蔵電池を取り外す作業を実施することができる。なお、ステップS14についてもステップS11と同様に、第1の端末30がリレー回路20のスイッチSW2がオフになっているか否かを監視し、また動作を記録することができる。リレー回路20のスイッチSW2がオフになっていることを確認できた場合には、次のステップS15に進む。
【0049】
ステップS15において、第1の端末30は、コマンド入力により、スイッチSW2のスイッチをオンにする。この操作により、例えば対象機器10に第2の電源22からの電力が供給されることになり、例えばマザーボードに内蔵電池を取り付けたことと同じ結果が得られる。つまり、第2の端末40の遠隔操作により、擬似的に新たな内蔵電池を取り付ける作業を実施することができる。なお、ステップS15についてもステップS11と同様に、第1の端末30がリレー回路20のスイッチSW2がオンになっているか否かを監視し、また動作を記録することができ、オンになっていることを確認できた場合には、次のステップS16に進む。
【0050】
ステップS16において、第1の端末30は、コマンド入力により、再度スイッチSW1のスイッチをオンにする。この動作はステップS11と同様である為、説明は割愛する。リレー回路20のスイッチSW1がオンになっていることが確認できた場合には、次のステップS17に進む。
【0051】
ステップS17において、第1の端末30は、コマンド入力により、ステップS12で抽出したデータを用いて、対象機器10のシステムの再設定を行う。この操作により、部品の交換作業前のシステム状態に復元することが可能となる。
【0052】
なお、よりリアリティの高い訓練を受ける為に、例えば第1の端末30による入力コマンドに対応した実際の保守作業映像を、スマートグラス等に配信することもできる。このような構成によれば、第2の端末40を操作する者は、遠隔地で保守作業映像を見ながら擬似的に作業を行うことができる為、より高い訓練効果が期待できる。
【0053】
また上記保守交換訓練は、内蔵電池の交換を想定したものであるが、この作業に限定されるものではない。例えば電池交換不可のマザーボードの交換を想定することも可能である。具体的には、ステップS13の終了後にマザーボードの取り外しを行い、ステップS16開始前に新たなマザーボードの取り付けを行う為の前準備として、ステップS14およびステップS15を行うことで、擬似的にマザーボードの設定初期化作業を行うことも可能である。
【0054】
以上の保守交換訓練を行えば、電池の交換作業を含めた一連の作業を遠隔操作により擬似的に行うことができる。そのため、保守員は、訓練設備が整った施設に出向いて訓練を受ける必要がなくなる。すなわち、多くの保守員が簡便な方法により、一連の作業の流れに沿った交換作業を経験することができるため、実際に交換作業が必要になった場合に作業ミスの発生を低減することが可能となる。
【0055】
なお、引用した上記の特許文献等の各開示は、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。例えば、上記実施例における第2の電源は、主電源よりも電力が小さい内蔵電池であるものとして説明しているが、主電源よりも電力が大きい電源であっても適用可能である。また、本発明の全開示の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ、ないし、選択(部分的削除を含む)が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。特に、本書に記載した数値範囲については、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし小範囲が、別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。さらに、上記引用した文献の各開示事項は、必要に応じ、本発明の趣旨に則り、本発明の開示の一部として、その一部又は全部を、本書の記載事項と組み合わせて用いることも、本願の開示事項に含まれるものと、みなされる。
【符号の説明】
【0056】
100、200 保守交換訓練システム
10 対象機器
11 仮想電池
20 リレー回路
21 第1の電源
22 第2の電源
30 第1の端末
31 記録部
32 比較部
33 表示部
34 CPU
35 主記憶装置
36 補助記憶装置
37 IF部
40 第2の端末
51 第1の配線
52 第2の配線
53 ネットワーク