(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】ヘキソースの酵素的生成
(51)【国際特許分類】
C12P 19/24 20060101AFI20220913BHJP
C12P 19/02 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
C12P19/24 ZNA
C12P19/02
(21)【出願番号】P 2019550240
(86)(22)【出願日】2018-03-13
(86)【国際出願番号】 US2018022185
(87)【国際公開番号】W WO2018169957
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-03-09
(32)【優先日】2017-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518059587
【氏名又は名称】ボヌモーズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィチェレキー、ダニエル、ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ロジャーズ、エドウィン、オー.
【審査官】木原 啓一郎
(56)【参考文献】
【文献】J. Am. Chem. Soc.,1992年,Vol. 114,pp. 6980-6987
【文献】Appl. Microbiol. Biotechnol.,2011年,Vol. 91,pp. 229-235
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖からのアロースの製造方法であって、
プシコース6-リン酸3-エピメラーゼ(P6PE)で触媒することによってフルクトース6-リン酸(F6P)をプシコース6-リン酸(P6P)に転化させることと、
アロース6-リン酸イソメラーゼ(A6PI)で触媒することによって前記P6Pをアロース6-リン酸(A6P)に転化させることと、
アロース6-リン酸ホスファターゼ(A6PP)で触媒することによって前記A6Pをアロースに転化させることと
を含む、前記方法。
【請求項2】
グルコース6-リン酸(G6P)を前記F6Pに転化させるステップを更に含み、前記ステップがホスホグルコイソメラーゼ(PGI)によって触媒される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
グルコース1-リン酸(G1P)を前記G6Pに転化させるステップを更に含み、前記ステップがホスホグルコムターゼ(PGM)によって触媒される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
糖を前記G1Pに転化させるステップを更に含み、前記ステップが少なくとも1種の酵素によって触媒され、前記糖が、デンプンまたはその誘導体、及びスクロースからなる群より選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
糖を前記G1Pに転化させる前記ステップにおける前記少なくとも1種の酵素が、α-グルカンホスホリラーゼ(αGP)、マルトースホスホリラーゼ、及びスクロースホスホリラーゼ、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記糖が、アミロース、アミロペクチン、可溶性デンプン、アミロデキストリン、マルトデキストリン、マルトース、及びグルコース、ならびにそれらの混合物からなる群より選択されるデンプンまたはその誘導体である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
デンプンを、デンプンの酵素的加水分解またはデンプンの酸加水分解によって製造されるデンプン誘導体に転化させるステップを更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
4-グルカントランスフェラーゼ(4GT)が前記方法に添加される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記デンプン誘導体が、イソアミラーゼ、プルラナーゼ、α-アミラーゼ、またはそれらの組み合わせによって触媒されるデンプンの酵素的加水分解により製造される、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記A6PIが、配列番号1または2との少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
前記A6PIが前記P6PのA6Pへの転化を触媒する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記A6PIが、
触媒作用のためのロスマン様フォールドであって、
前記ロスマン様フォールドの第1のβストランドのHis C末端と、
前記ロスマン様フォールドの第5のβストランドのαヘリックスC末端のArg C末端と、
活性部位中のHisと、
Cysと、
前記活性部位中のThrと、
前記活性部位近傍のGTG疎水性Gモチーフと、
前記活性部位近傍のAsnと
を有する前記ロスマン様フォールドを含有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記A6PPが、配列番号3~7のいずれか1との少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
前記A6PPが前記A6Pのアロースへの転化を触媒する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記A6PPが、
触媒作用のためのロスマン様フォールドドメインと、
C1キャッピングドメインと、
前記ロスマン様フォールドの第1のβストランド中のDxDシグネチャーと、
前記ロスマン様フォールドの第2のβストランドの末端のThrまたはSerと、
前記ロスマン様フォールドの第3のβストランドのαヘリックスC末端のN末端のLysと、
前記ロスマン様フォールドの第4のβストランドの末端のEDシグネチャーと
を含有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
プロセスステップが、40℃~90℃の範囲の温度で、5.0~8.0の範囲のpHで、及び/または8時間~48時間実施される、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
プロセスステップが単一のバイオリアクターまたは直列に配置された複数のバイオリアクター中で実施される、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
プロセスステップが、ATPなし、NAD(P)(H)なし、
0.1mM~150mMのリン酸濃度で実施され、前記リン酸がリサイクルされ、及び/または前記プロセスステップの少なくとも1がエネルギー的に有利な化学反応を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年3月13日出願の米国出願第62/470,605号、2017年3月13日出願の米国出願第62/470,620号、2017年4月5日出願の米国出願第62/482,148号、及び2017年4月3日出願の米国出願第62/480,798号の優先権を主張し、上記出願は、本記載をもってそれらの全体が参照により援用される。
【0002】
発明の分野
本発明はヘキソースの製造に関する。より詳細には、本発明は、糖(例えば、多糖、オリゴ糖、二糖、スクロース、D-グルコース、及びD-フルクトース)からのD-ヘキソース(またはヘキソース)の製造方法であって、フルクトース6-リン酸が1または複数の酵素的ステップによって上記ヘキソースに転化されるステップを含む、上記方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
ヘキソースは6の炭素原子を有する単糖である。ヘキソースは官能基によって分類することができ、アルドヘキソースは1位にアルデヒドを有し、ケトヘキソースは2位にケトンを有する。アルドヘキソース(またはアルドース)としてはアロース、アルトロース、グルコース、グロース、ガラクトース、イドース、タロース、及びマンノースが挙げられる。ケトヘキソース(またはケトース)としては、プシコース(アルロース)、フルクトース、タガトース、及びソルボースが挙げられる。これらのアルドヘキソース及びケトヘキソースの種々の態様については次の段落で言及する。
【0004】
例えば、D-アロース(以下、アロース)は、甘味がスクロースの約80%である低カロリーの天然甘味料であり、ノンカロリーの甘味料及び増量剤とされる。アロースは特定の低木及び藻類中に少量でしか存在しない、天然起源のヘキソースである。アロースには、凍結保護、抗酸化、抗高血圧、免疫抑制、抗炎症、抗腫瘍、及び抗がん活性などの、いくつかの潜在的な医療及び農業上の利点がある。アロースはまた、食品及び飲料においてスクロースと同様の機能を有している。このように、アロースには明らかに食品及び飲料産業において種々の用途がある。しかし、アロースの販売価格が高いために、その甘味料としての使用は限定されてきた。
【0005】
現在、アロースは、主としてD-プシコースの酵素的異性化によって製造されている(WO2014069537)。全体として、原料コストが高いこと、D-プシコースからのアロースの分離にコストを要すること、及び製品の収率が比較的低いこと(約23%)から、この方法は苦境にある。
【0006】
アルトロースは別の非天然アルドヘキソースであり、マンノースのC-3エピマーである。D-アルトロース((2S,3R,4R,5R)-2,3,4,5,6-ペンタヒドロキシヘキサナール)は、Caldicellulosiruptor saccharolyticus由来のL-フコースイソメラーゼならびにBacillus pallidus(B. pallidus)及びKlebsiella pneumoniae由来のd-アラビノースイソメラーゼ(d-AI)などのアルドースイソメラーゼを同定、識別、及びキャラクタライズするための基質として用いることができる。最近、生理活性物質として有用な機能を果たすオリゴ糖及び多糖などの糖鎖が、医薬品及び農薬などのファインケミカルの分野で注目されている。現在、上記糖鎖に関する研究の対象は、D-グルコース、D-マンノース、及びD-ガラクトースなどの自然界に大量に存在し、研究者が容易に入手できる単糖から構成される糖鎖に制限されている。しかしながら、将来、より有用な機能を果たす糖鎖の合成に関する研究において、自然界に存在するもの以外の種々の単糖が求められるようになることが予想される。このような状況下では、処理ステップ数を低減しつつ、入手が困難な希少糖であるD-アルトロースを高収率で製造可能な方法を開発することが非常に重要且つ必要である。米国特許第5,410,038号。
【0007】
D-グルコースは、例えば、賦形剤、キレート剤、医薬中間体、ガラス及び金属の洗浄剤、食品添加物として、及び洗剤の添加物として有用である。米国特許第5,215,591号。
【0008】
D-ガラクトース(以下、ガラクトース)は、甘味がスクロースの約33%である天然甘味料であり、栄養甘味料とされる。ガラクトースは、乳製品、マメ科植物、穀物、ナッツ、塊茎、及び野菜中に存在する天然起源のヘキソースである。ガラクトースは、パン業界で酸味及び酸性度を制限するために用いられる。また、運動サプリメント業界で持久力を高めるためのエネルギー源として用いられる。製薬業界では、ガラクトースはいくつかの医薬の中間体であり、タンパク質治療薬の生物学的生産の最適化における細胞代謝モジュレーターとしても用いられる。更に、ガラクトースは、キュウリ、ニンジン、ジャガイモ、トマトを冒す植物病原体などの特定の植物病原体によって引き起こされる植物病害に対する防除剤として有効であることが明らかになっている。食事に関する関心(例えばビーガニズム)及び健康上の関心(例えばBSE疾患)に起因して、産業界はガラクトースの非動物性供給源に着目している。このように、ガラクトースは明らかに食品、飲料、運動、農業、及び製薬業界において種々の用途がある。しかし、ガラクトースの販売価格が高いために、その使用は制限されてきた。
【0009】
ガラクトースは、主としてラクトースの加水分解により製造される(WO2005039299A3)。この方法は、原料コストがより高く、ガラクトースからのグルコースの分離の費用がかかるため、あまり望ましいものではない。あるいは、ガラクトースは、植物系バイオマスの加水分解によって製造することができる(WO2005001145A1)。この方法は、バイオマスの加水分解中に放出される他の複数の糖(例えば、キシロース、アラビノース、マンノース、グルコース、ラムノース)からのガラクトースの分離のコストが高く、且つ収率が低い(一般的なバイオマス源の乾燥質量の約4.6%がガラクトース)ことから苦境にある。
【0010】
イドースは自然界には存在しないが、そのウロン酸であるイズロン酸は重要である。イズロン酸は、グリコサミノグリカンであるデルマタン硫酸及びヘパラン硫酸の成分である。(https://en.wikipedia.org/wiki/Idose - accessed 3/7/18)。
【0011】
タロースは、水に可溶、且つメタノールにわずかに可溶である非天然アルドヘキソースである。タロースはガラクトースのC-2エピマーであり、且つマンノースのC-4エピマーである。タロースは、Clostridiaのリボース-5-リン酸イソメラーゼ(複数可)を同定、識別、及びキャラクタライズするための基質として用いることができる。
【0012】
D-マンノース(以下、マンノース)は、多くの果実、野菜、植物材料、及び人体中にさえ存在する、中程度の甘さの天然起源の単糖である。マンノースは、複数の健康上の利点及び製薬における用途を有する。例えば、マンノースは、炭水化物欠乏性糖タンパク質症候群1b型、より一般的には尿路感染症の治療に用いることができる。更に、マンノースは検証されたプレバイオティクスであり、血糖値を上昇させず、抗炎症特性を示す。更に、マンノースはブタの枝肉の収量を高めることが明らかになっており、スキンケア製品に広く使用されている補助保湿剤である。このように、マンノースは、医薬品、化粧品、飲料、食品、乳製品、製菓、及び家畜業界において種々の用途がある。しかし、マンノースの販売価格が高いために、日用品におけるその使用は制限されてきた。
【0013】
マンノースは主として植物からの抽出により製造される。一般的な方法としては、酸加水分解、熱加水分解、酵素的加水分解、微生物発酵加水分解、及びそれらの組み合わせが挙げられる。あまり一般的ではない方法としては、化学的及び生物学的変換が挙げられる。全体として、これらの方法は、過酷な条件、高い資本支出、高い原料コスト、コストの高い異性化反応混合物からのマンノースの分離、及び比較的低い製品収率(15~35%)により、問題を抱えている。
【0014】
D-アルロース(D-プシコースとしても知られる)(以下、プシコース)は、甘味がスクロースの70%であるが、カロリーはわずか10%に過ぎない低カロリーの天然甘味料である。プシコースは小麦及び他の植物中にわずかな量でしか存在しない天然起源のヘキソースである。プシコースは2012年に食品医薬品局(FDA)によって食品添加物として認可され、FDAはプシコースを「一般的に安全であると認められている(GRAS)」と指定した。しかし、プシコースの販売価格が高いことから、その甘味料としての使用は制限されてきた。プシコースには無数の健康上の利点がある。すなわち、プシコースは低カロリー(スクロースの10%)であり、グリセミック指数が1と非常に低く、小腸で完全に吸収されるが代謝されず、尿と糞便中に分泌され、α-アミラーゼ、スクラーゼ、及びマルターゼを阻害することにより血糖を調節するのに役立ち、また、食品及び飲料中においてスクロースと類似の機能を有する。このように、プシコースは明らかに食品及び飲料業界において種々の用途を有する。
【0015】
現在、プシコースは主としてフルクトースの酵素的異性化によって製造されている(WO2014049373)。全体として、この方法は、高い原料コスト、コストが高いプシコースのフルクトースからの分離、及び比較的低い製品収率を示す。
【0016】
フルクトースは、多くの植物中に存在する単純なケトンをもつ単糖であり、グルコースに結合して二糖であるスクロースを形成することが多い。フルクトースは、工業的にはサトウキビ、サトウダイコン、及びトウモロコシから誘導される。フルクトースが食品及び飲料において工業的に使用されている主たる理由は、その低コストに加えて、その相対的な甘味が高いことである。フルクトースは全ての天然起源の炭水化物の中で最も甘い。フルクトースは、製造された甘味料である高フルクトースコーンシロップ(HFCS)中にも含まれ、HFCSは、コーンシロップを酵素で処理し、グルコースをフルクトースに転化させることによって製造される。(https://en.wikipedia.org/wiki/Fructose#Physical_and_functional_properties-- accessed 3/7/18)。
【0017】
D-タガトース(以下、タガトース)は、甘味がスクロースの92%であるが、カロリーがわずか38%に過ぎない低カロリーの天然甘味料である。タガトースは、果実、カカオ、及び乳製品中にわずかな量でしか存在しない天然起源のヘキソースである。タガトースは、2003年に食品医薬品局(FDA)によって食品添加物として認可され、FDAはタガトースを「一般的に安全であると認められている(GRAS)」と指定した。しかし、タガトースの販売価格が高いことから、その甘味料としての使用は制限されてきた。タガトースには無数の健康上の利点がある。すなわち、タガトースは非発がん性であり、低カロリーであり、グリセミック指数が3と非常に低く、グルコースのグリセミック指数を20%減衰させ、平均血糖値を低下させることができ、高密度リポタンパク質(HDL)コレステロールを上昇させることにより、心血管疾患、脳卒中、及び他の血管疾患を予防するのに役立ち、検証されたプレバイオティクス及び抗酸化剤である。Lu et al., Tagatose, a New Antidiabetic and Obesity Control Drug, Diabetes Obes. Metab. 10(2): 109-34 (2008)。このように、タガトースは明らかに、製薬、バイオテクノロジー、学術、食品、飲料、栄養補助食品、及び加工食品業界において種々の用途を有する。
【0018】
タガトースは、主として、D-グルコース及びD-ガラクトースを生成するラクターゼまたは酸によるラクトースの加水分解によって製造される(WO2011150556、CN103025894、US5002612、US6057135、及びUS8802843)。次いで、D-ガラクトースは、アルカリ条件下で水酸化カルシウムによって化学的に、または中性のpH条件下でL-アラビノースイソメラーゼによって酵素的にのいずれかで、D-タガトースに異性化される。最終製品は、ろ過及びイオン交換クロマトグラフィーの併用によって単離される。この方法は、数基の槽またはバイオリアクター中で行われる。全体として、上記方法は、他の糖(例えば、D-グルコース、D-ガラクトース、及び未加水分解ラクトース)の分離のコストが高く、且つ製品収率が低いために不利である。微生物細胞発酵によるいくつかの方法が開発中であるが、それらの方法が、高価な原料(例えば、ガラクチトール及びD-プシコース)、低い製品収率、及びコストが高い分離に依存することに起因して、いずれの方法も実用的な代替手段であることを実証するに至っていない。
【0019】
ソルボース((3R,4S,5R)-1,3,4,5,6-ペンタヒドロキシヘキサン-2-オン)は、甘味がスクロース(砂糖)と同等のケトヘキソースであり、ブドウにおいて少量自然発生することが分っている植物代謝産物である。D-ソルボースは、Pseudomonas syringae pv. Lachrymans及びRalstonia solanacearumに起因する植物病害の防除剤として有効であると判定されている。米国特許出願公開第2016/0037768号。
【0020】
上述のアルドヘキソース及びアルドケトースなどのヘキソースの高収率での製造のための費用効果の高い合成経路を開発することが求められており、それらの方法の少なくとも1のステップはエネルギー的に有利な化学反応を含む。更に、複数のプロセスステップを1基の槽またはバイオリアクター中で実施することが可能な、及び/またはコストが高い分離ステップを回避もしくは排除する製造方法が求められている。また、リン酸をリサイクルすることが可能である、及び/または添加されるリン酸源としてアデノシン三リン酸(ATP)を使用する必要のない、比較的低濃度のリン酸で実施することが可能なヘキソースの製造方法も求められている。また、反応ステップのいずれにおいても、コストの高いニコチンアミドアデノシンジヌクレオチド(NAD(P)(H))補酵素の使用を必要としないヘキソース製造経路も求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0021】
発明の概要
本明細書に記載の発明は、概括的には、酵素的転化による糖からのヘキソースの製造方法に関する。本発明はまた、本明細書に記載のいずれかの方法により製造されたヘキソースにも関する。
【0022】
より詳細には、本発明は、アロース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、アルトロース、タロース、ソルボース、グロース、及びイドースから選択されるヘキソースの糖からの製造方法であって、イソメラーゼ、エピメラーゼ、及びヘキソース特異的ホスファターゼ、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される1種または複数種の酵素で触媒することによって、フルクトース6-リン酸(F6P)を上記ヘキソースに転化させることを含む上記方法に関する。
【0023】
本発明のアロースの製造方法は、
プシコース6-リン酸3-エピメラーゼ(P6PE)で触媒することによって上記F6Pをプシコース6-リン酸(P6P)に転化させることと、
アロース6-リン酸イソメラーゼ(A6PI)で触媒することによって上記F6Pをアロース6-リン酸(A6P)に転化させることと、
アロース6-リン酸ホスファターゼ(A6PP)で触媒することによって上記A6Pをアロースに転化させることと
を含む。
【0024】
本発明のマンノースの製造方法は、
マンノース6-リン酸イソメラーゼ(M6PI)またはホスホグルコース/ホスホマンノースイソメラーゼ(PGPMI)で触媒することによって上記F6Pをマンノース6-リン酸(M6P)に転化させることと、
マンノース6-リン酸ホスファターゼ(M6PP)で触媒することによって上記M6Pをマンノースに転化させることと
を含む。
【0025】
本発明のガラクトースの製造方法は、
フルクトース6-リン酸4-エピメラーゼ(F6PE)で触媒することによって上記F6Pをタガトース6-リン酸(T6P)に転化させることと、
ガラクトース6-リン酸イソメラーゼ(Gal6PI)で触媒することによって上記T6Pをガラクトース6-リン酸(Gal6P)に転化させることと、
ガラクトース6-リン酸ホスファターゼ(Gal6PP)で触媒することによって上記Gal6Pをガラクトースに転化させることと
を含む。
【0026】
本発明のフルクトースの製造方法は、
フルクトース6-リン酸ホスファターゼ(F6PP)で触媒することによって上記F6Pをフルクトースに転化させることを含む。
【0027】
本発明のアルトロースの製造方法は、
P6PEで触媒することによって上記F6PをP6Pに転化させることと、
アルトロース6-リン酸イソメラーゼ(Alt6PI)で触媒することによって上記P6Pをアルトロース6-リン酸(Alt6P)に転化させることと、
アルトロース6-リン酸ホスファターゼ(Alt6PP)で触媒することによって上記生成したAlt6Pをアルトロースに転化させることと
を含む。
【0028】
本発明のタロースの製造方法は、
F6PEで触媒することによって上記F6PをT6Pに転化させることと、
タロース6-リン酸イソメラーゼ(Tal6PI)で触媒することによって上記T6Pをタロース6-リン酸(Tal6P)に転化させることと、
タロース6-リン酸ホスファターゼ(Tal6PP)で触媒することによって上記Tal6Pをタロースに転化させることと
を含む。
【0029】
本発明のソルボースの製造方法は、
F6PEで触媒することによって上記F6PをT6Pに転化させることと、
ソルボース6-リン酸エピメラーゼ(S6PE)で触媒することによって上記T6Pをソルボース6-リン酸(S6P)に転化させることと、
ソルボース6-リン酸ホスファターゼ(S6PP)で触媒することによって上記S6Pをソルボースに転化させることと
を含む。
【0030】
本発明のグロースの製造方法は、
F6PEで触媒することによって上記F6PをT6Pに転化させることと、
グロース6-リン酸イソメラーゼ(Gul6PI)で触媒することによって上記S6Pをグロース6-リン酸(Gul6P)に転化させることと、
グロース6リン酸ホスファターゼ(Gul6PP)で触媒することによって上記Gul6Pをグロースに転化させることと
を含む。
【0031】
本発明のグロースの製造方法は、
F6PEで触媒することによって上記F6PをT6Pに転化させることと、
ソルボース6-リン酸エピメラーゼ(S6PE)で触媒することによって上記T6Pをソルボース6-リン酸(S6P)に転化させることと、
イドース6-リン酸イソメラーゼ(I6PI)で触媒することによって上記S6Pをイドース6-リン酸(I6P)に転化させることと、
イドース6-リン酸ホスファターゼ(I6PP)で触媒することによって上記I6Pをイドースに転化させることと
を含む。
【0032】
本発明のヘキソースの製造方法は、ホスホグルコースイソメラーゼ(PGI)によって触媒される、グルコース6-リン酸(G6P)を上記F6Pに転化させるステップを含んでいてもよい。本方法は、ホスホグルコムターゼ(PGM)によって触媒される、グルコース1-リン酸(G1P)を上記G6Pに転化させるステップも含んでいてよい。更に、本発明の製造方法は、少なくとも1種の酵素によって触媒される、糖を上記G1Pに転化させるステップを更に含んでいてもよく、上記糖は、デンプンまたはその誘導体、セルロースまたはその誘導体、及びスクロースからなる群より選択される。
【0033】
本発明の製造方法における糖を上記G1Pに転化させる上記ステップにおいて用いられる酵素または複数の酵素は、α-グルカンホスホリラーゼ(αGP)、マルトースホスホリラーゼ、スクロースホスホリラーゼ、セロデキストリンホスホリラーゼ、セロビオースホスホリラーゼ、及び/またはセルロースホスホリラーゼ、ならびにそれらの混合物であってよい。上記糖がデンプンまたはデンプン誘導体である場合には、該誘導体は、アミロース、アミロペクチン、可溶性デンプン、アミロデキストリン、マルトデキストリン、マルトース、及びグルコース、ならびにそれらの混合物からなる群より選択されてもよい。
【0034】
本発明のいくつかの製造方法は、デンプンをデンプン誘導体に転化させるステップであって、上記デンプン誘導体がデンプンの酵素的加水分解またはデンプンの酸加水分解によって製造される上記ステップを更に含んでいてもよい。また、4-グルカントランスフェラーゼ(4GT)を上記方法に添加してもよい。4GTを用いて、分解生成物であるグルコース、マルトース、及びマルトトリオースをより長いマルトオリゴ糖へとリサイクルすることによりヘキソース収率を高めることができ、マルトオリゴ糖をαGPにより加リン酸分解で開裂させてG1Pを生成させることができる。
【0035】
本方法がデンプン誘導体を用いる場合には、該デンプン誘導体を、イソアミラーゼ、プルラナーゼ、α-アミラーゼ、またはそれらの組み合わせによって触媒されるデンプンの酵素的加水分解により製造してもよい。
【0036】
本発明の製造方法はまた、少なくとも1種の酵素によって触媒される、フルクトースを上記F6Pに転化させるステップ及び、任意選択で、少なくとも1種の酵素によって触媒される、スクロースを上記フルクトースに転化させるステップも含んでいてよい。
【0037】
更に、本発明のヘキソースの製造方法は、少なくとも1種の酵素によって触媒される、グルコースを上記G6Pに転化させるステップ及び、任意選択で、少なくとも1種の酵素によって触媒される、スクロースを上記グルコースに転化させるステップを含んでいてもよい。
【0038】
本発明のヘキソースの合成方法のそれぞれにおける上記ステップは、約40℃~約90℃の範囲の温度及び約5.0~約8.0の範囲のpHで実施されてもよい。上記ステップは約8時間~約48時間実施されてもよい。
【0039】
本発明の製造方法の上記ステップは単一のバイオリアクター中で実施されてもよい。上記ステップはまた、直列に配置された複数のバイオリアクター中で実施されてもよい。
【0040】
本発明の酵素的プロセスステップはATPなし及び/またはNAD(P)(H)なしで実施してもよい。上記ステップは約0.1mM~約150mMの範囲のリン酸濃度で実施してもよい。本発明の製造方法のリン酸化及び脱リン酸化ステップにおいて用いられるリン酸をリサイクルしてもよい。上記製造方法の少なくとも1のステップはエネルギー的に有利な化学反応を含んでいてもよい。
【0041】
本発明は、これらの方法によって製造されたアロース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、アルトロース、タロース、ソルボース、グロース、及びイドースにも関する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図面の簡単な記述
【0043】
【
図1-1】デンプンまたはその誘導製品をアロースに転化させる酵素的経路を示す概略図である。次の略語、すなわち、IA:イソアミラーゼ、PA:プルラナーゼ、αGP:α-グルカンホスホリラーゼまたはデンプンホスホリラーゼ、MP:マルトースホスホリラーゼ、PGM:ホスホグルコムターゼ、PPGK:ポリリン酸グルコキナーゼ、PGI:ホスホグルコイソメラーゼ、P6PE:プシコース6-リン酸3-エピメラーゼ、A6PI:アロース6-リン酸イソメラーゼ、A6PP:アロース6-リン酸ホスファターゼを用いる。
【0044】
【
図2-1】デンプンまたはその誘導製品をマンノースに転化させる酵素的経路を示す概略図である。次の略語、すなわち、IA:イソアミラーゼ、PA:プルラナーゼ、αGP:α-グルカンホスホリラーゼまたはデンプンホスホリラーゼ、MP:マルトースホスホリラーゼ、PGM:ホスホグルコムターゼ、PPGK:ポリリン酸グルコキナーゼ、PGI:ホスホグルコイソメラーゼ、PGPMI:二官能性ホスホグルコース/ホスホマンノースイソメラーゼ、M6PI:マンノース6-リン酸イソメラーゼ、M6PP:マンノース6-リン酸ホスファターゼを用いる。
【0045】
【
図3-1】デンプンまたはその誘導製品をガラクトースに転化させる酵素的経路を示す概略図である。次の略語、すなわち、IA:イソアミラーゼ、PA:プルラナーゼ、αGP:α-グルカンホスホリラーゼまたはデンプンホスホリラーゼ、MP:マルトースホスホリラーゼ、PGM:ホスホグルコムターゼ、PPGK:ポリリン酸グルコキナーゼ、PGI:ホスホグルコイソメラーゼ、F6PE:フルクトース6-リン酸4-エピメラーゼ、Gal6PI:ガラクトース6-リン酸イソメラーゼ、Gal6PP:ガラクトース6-リン酸ホスファターゼを用いる。
【0046】
【
図4-1】デンプンまたはその誘導製品をガラクトースに転化させる酵素的経路を示す概略図である。次の略語、すなわち、IA:イソアミラーゼ、PA:プルラナーゼ、αGP:α-グルカンホスホリラーゼまたはデンプンホスホリラーゼ、MP:マルトースホスホリラーゼ、PGM:ホスホグルコムターゼ、PPGK:ポリリン酸グルコキナーゼ、PGI:ホスホグルコイソメラーゼ、F6PP:フルクトース6-リン酸ホスファターゼを用いる。
【0047】
【
図5】スクロースをフルクトースに転化させる酵素的経路を示す概略図である。次の略語、すなわち、SP:スクロースホスホリラーゼ、PGM:ホスホグルコムターゼ、PGI:ホスホグルコイソメラーゼ、F6PP:フルクトース6-リン酸ホスファターゼを用いる。
【0048】
【
図6-1】デンプンまたはその誘導製品をアルトロースに転化させる酵素的経路を示す概略図である。次の略語、すなわち、IA:イソアミラーゼ、PA:プルラナーゼ、αGP:α-グルカンホスホリラーゼまたはデンプンホスホリラーゼ、MP:マルトースホスホリラーゼ、PGM:ホスホグルコムターゼ、PPGK:ポリリン酸グルコキナーゼ、PGI:ホスホグルコイソメラーゼ、P6PE:プシコース6-リン酸エピメラーゼ、Alt6PI:アルトロース6-リン酸イソメラーゼ、Alt6PP:アルトロース6-リン酸ホスファターゼを用いる。
【0049】
【
図7-1】デンプンまたはその誘導製品をタロースに転化させる酵素的経路を示す概略図である。次の略語、すなわち、IA:イソアミラーゼ、PA:プルラナーゼ、αGP:α-グルカンホスホリラーゼまたはデンプンホスホリラーゼ、MP:マルトースホスホリラーゼ、PGM:ホスホグルコムターゼ、PPGK:ポリリン酸グルコキナーゼ、PGI:ホスホグルコイソメラーゼ、F6PE:フルクトース6-リン酸エピメラーゼ、Tal6PI:タロース6-リン酸イソメラーゼ、Tal6PP:タロース6-リン酸ホスファターゼを用いる。
【0050】
【
図8-1】デンプンまたはその誘導製品をソルボースに転化させる酵素的経路を示す概略図である。次の略語、すなわち、IA:イソアミラーゼ、PA:プルラナーゼ、αGP:α-グルカンホスホリラーゼまたはデンプンホスホリラーゼ、MP:マルトースホスホリラーゼ、PGM:ホスホグルコムターゼ、PPGK:ポリリン酸グルコキナーゼ、PGI:ホスホグルコイソメラーゼ、F6PE:フルクトース6-リン酸エピメラーゼ、S6PE:ソルボース6-リン酸エピメラーゼ、S6PP:ソルボース6-リン酸ホスファターゼを用いる。
【0051】
【
図9-1】デンプンまたはその誘導製品をグロースに転化させる酵素的経路を示す概略図である。次の略語、すなわち、IA:イソアミラーゼ、PA:プルラナーゼ、αGP:α-グルカンホスホリラーゼまたはデンプンホスホリラーゼ、MP:マルトースホスホリラーゼ、PGM:ホスホグルコムターゼ、PPGK:ポリリン酸グルコキナーゼ、PGI:ホスホグルコイソメラーゼ、F6PE:フルクトース6-リン酸エピメラーゼ、S6PE:ソルボース6-リン酸エピメラーゼ、Gul6PI:グロース6-リン酸イソメラーゼ、Gul6PP:グロース6-リン酸ホスファターゼを用いる。
【0052】
【
図10-1】デンプンまたはその誘導製品をイドースに転化させる酵素的経路を示す概略図である。次の略語、すなわち、IA:イソアミラーゼ、PA:プルラナーゼ、αGP:α-グルカンホスホリラーゼまたはデンプンホスホリラーゼ、MP:マルトースホスホリラーゼ、PGM:ホスホグルコムターゼ、PPGK:ポリリン酸グルコキナーゼ、PGI:ホスホグルコイソメラーゼ、F6PE:フルクトース6-リン酸エピメラーゼ、S6PE:ソルボース6-リン酸エピメラーゼ、I6PI:イドース6-リン酸イソメラーゼ、I6PP:イドース6-リン酸ホスファターゼを用いる。
【0053】
【
図11】グルコース1-リン酸の別のヘキソースへの転化の生成ギブスエネルギーに基づく、中間体間の反応ギブスエネルギーを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
発明の記述
本明細書に記載の発明は、ヘキソースを合成するための酵素的経路または製造方法であって、製品収率が高いと共に、生成物の分離コスト及びヘキソースの製造コストを大幅に低減する上記経路または製造方法を提供する。本明細書には、これらの製造方法によって製造されたヘキソースも記載される。
【0055】
本発明の糖からのヘキソースの製造方法は、
1種または複数種の酵素で触媒することによってフルクトース6-リン酸(F6P)を上記ヘキソースに転化させることを含み、
上記ヘキソースは、アロース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、アルトロース、タロース、ソルボース、グロース、及びイドースからなる群より選択され、
上記酵素は、イソメラーゼ、エピメラーゼ、及びヘキソース特異的ホスファターゼ、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される。
【0056】
本発明の製造方法の重要な利点の1つは、複数のプロセスステップを単一のバイオリアクターまたは反応槽中で実施することができることである。あるいは、上記複数のステップは、直列に配置された複数のバイオリアクターまたは反応槽中で実施することもできる。
【0057】
特に全てのプロセスステップが単一のバイオリアクターまたは反応槽中で実施される場合、脱リン酸化ステップ中に生成するリン酸イオンを、次に、糖をG1Pに転化させる上記プロセスステップにリサイクルすることができる。上記開示する製造方法においてリン酸をリサイクルすることができることにより、非化学量論量のリン酸を用いることが可能になり、これにより反応液中のリン酸濃度が低く保たれる。このことにより、本製造方法の全体的な経路及び全体を通した速度が影響を受けるが、個々の酵素の活性が制限されることはなく、本ヘキソースの製造方法が全体的に効率的になることができる。
【0058】
例えば、本製造方法のそれぞれにおける反応液中のリン酸濃度は、約0.1mM~約300mM、約0mM~約150mM、約1mM~約50mM、好ましくは約5mM~約50mM、またはより好ましくは約10mM~約50mMの範囲であってよい。例えば、本製造方法のそれぞれにおける反応液中のリン酸濃度は、約0.1mM、約0.5mM、約1mM、約1.5mM、約2mM、約2.5mM、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約15mM、約20mM、約25mM、約30mM、約35mM、約40mM、約45mM、約50mM、または約55mMであってよい。
【0059】
リン酸濃度が低いことで、総リン酸量が少なくなることにより製造コストが減少し、延いてはリン酸除去のコストが低下する。また、リン酸濃度が低いと高濃度の遊離リン酸によるホスファターゼの阻害も防止され、リン酸による汚染の可能性も低下する。
【0060】
更に、本明細書に開示の製造方法のそれぞれは、リン酸の供給源としてATPを添加することなく、すなわちATPなしで実施することができる。本製造方法のそれぞれは、NAD(P)(H)についても、これを添加しなければならないということなしに、すなわちNAD(P)(H)なしで実施することができる。他の利点としては、開示するヘキソースの製造方法の少なくとも1のステップが、エネルギー的に有利な化学反応を含むという事実も挙げられる。
【0061】
糖をG1Pに転化させるために用いられる上記酵素の例としては、α-グルカンホスホリラーゼ(αGP、EC 2.4.1.1)、マルトースホスホリラーゼ(MP、EC 2.4.1.8)、セロデキストリンホスホリラーゼ(CDP、EC 2.4.1.49)、セロビオースホスホリラーゼ(CBP、EC 2.4.1.20)、セルロースホスホリラーゼ、スクロースホスホリラーゼ(SP、EC 2.4.1.7)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。上記酵素または酵素の組み合わせの選択は、本製造方法で用いられる糖に依存する。
【0062】
G1Pを生成させるために用いられる上記糖は、多糖、オリゴ糖、及び/または二糖であってよい。例えば、上記糖は、デンプン、デンプンの1種もしくは複数種の誘導体、セルロース、セルロースの1種もしくは複数種の誘導体、スクロース、スクロースの1種もしくは複数種の誘導体、またはそれらの組み合わせであってよい。
【0063】
デンプンは、自然界で最も広く用いられるエネルギー貯蔵化合物であり、ほとんどが植物の種子中に貯蔵されている。天然のデンプンは直鎖状のアミロースと分岐鎖状のアミロペクチンを含有する。デンプン誘導体の例としては、アミロース、アミロペクチン、可溶性デンプン、アミロデキストリン、マルトデキストリン、マルトース、フルクトース、及びグルコースが挙げられる。セルロース誘導体の例としては、前処理したバイオマス、再生非晶性セルロース、セロデキストリン、セロビオース、フルクトース、及びグルコースが挙げられる。スクロース誘導体としてはフルクトース及びグルコースが挙げられる。
【0064】
デンプン及びその誘導体、セルロース及びその誘導体、ならびにスクロース及びその誘導体からのF6Pの製造方法は、例えば、国際特許出願公開第WO2017/059278号に記載される。
【0065】
上記デンプンの誘導体は、デンプンの酵素的加水分解、またはデンプンの酸加水分解により製造することができる。詳細には、上記デンプンの酵素的加水分解は、α-1,6-グルコシド結合を加水分解するイソアミラーゼ(IA、EC. 3.2.1.68)、α-1,6-グルコシド結合を加水分解するプルラナーゼ(PA、EC. 3.2.1.41)、短鎖マルトオリゴ糖のグリコシル転移を触媒して、より長鎖のマルトオリゴ糖を生成させる4-α-グルカノトランスフェラーゼ(4GT、EC. 2.4.1.25)、またはα-1,4-グルコシド結合を開裂させるα-アミラーゼ(EC 3.2.1.1)によって触媒、すなわち促進される。
【0066】
更に、セルロースの誘導体は、セルラーゼ混合物により触媒されるセルロースの酵素的加水分解、酸、またはバイオマスの前処理により製造することができる。
【0067】
糖をG1Pに転化させるために用いられる酵素はαGPを含んでいてもよい。このステップにおいては、当該の糖がデンプンを含有する場合、上記G1PはαGPによってデンプンから生成し、上記糖が可溶性デンプン、アミロデキストリン、またはマルトデキストリンを含有する場合、上記G1PはαGPによって可溶性デンプン、アミロデキストリン、またはマルトデキストリンから生成する。
【0068】
上記糖がマルトースを含み、上記酵素がマルトースホスホリラーゼを含有する場合、上記G1Pはマルトースホスホリラーゼによってマルトースから生成する。上記糖がスクロースを含み、酵素がスクロースホスホリラーゼを含有する場合、上記G1Pはスクロースホスホリラーゼによってスクロースから生成する。
【0069】
上記糖がセロビオースを含み、上記酵素がセロビオースホスホリラーゼを含有する場合、上記G1Pはセロビオースホスホリラーゼによってセロビオースから生成することができる。
【0070】
上記糖がセロデキストリンを含有し、上記酵素がセロデキストリンホスホリラーゼを含む場合、上記G1Pはセロデキストリンホスホリラーゼによってセロデキストリンから生成することができる。
【0071】
糖をG1Pに転化させる際に、当該の糖がセルロースを含み、酵素がセルロースホスホリラーゼを含有する場合、上記G1Pはセルロースホスホリラーゼによってセルロースから生成することができる。
【0072】
本発明によれば、ヘキソースをフルクトースから製造することもできる。例えば、この製造方法は、
ポリリン酸フルクトキナーゼ(PPFK)で触媒することによってフルクトース及びポリリン酸からF6Pを生成させることと、
F6PEで触媒することによってF6PをT6Pに転化させることと、
T6PPで触媒することによってT6Pをタガトースに転化させることと
を含む。上記フルクトースは、例えば、スクロースの酵素的転化によって製造することができる。
【0073】
ヘキソースはスクロースから製造することができる。この製造方法は、例えば、以下の酵素的ステップ、すなわち、
スクロースホスホリラーゼ(SP)で触媒することによってスクロース及び遊離リン酸からG1Pを生成させることと、
PGMで触媒することによってG1PをG6Pに転化させることと、
PGIで触媒することによってG6PをF6Pに転化させることと、
F6PEで触媒することによってF6PをT6Pに転化させることと、
T6PPで触媒することによってT6Pをタガトースに転化させることと
を含むイン・ビトロ合成経路を提供する。
【0074】
本発明の製造方法において用いられるホスファターゼは上記ヘキソースに特異的である。例えば、アロース6-リン酸はアロース6-リン酸ホスファターゼによってアロースに転化され、マンノース6-リン酸はマンノース6-リン酸ホスファターゼによってマンノースに転化され、ガラクトース6-リン酸はガラクトース6-リン酸ホスファターゼによってガラクトースに転化され、フルクトース6-リン酸はフルクトース6-リン酸ホスファターゼによってフルクトースに転化され、アルトロース6-リン酸はアルトロース6-リン酸ホスファターゼによってアルトロースに転化され、タロース6-リン酸はタロース6-リン酸ホスファターゼによりタロースに転化され、ソルボース6-リン酸はソルボース6-リン酸ホスファターゼによってソルボースに転化され、グロース6-リン酸はグロース6-リン酸ホスファターゼによってグロースに転化され、イドース6-リン酸はイドース6-リン酸ホスファターゼによってイドースに転化される。本明細書では、特異的とは、示されたヘキソースに対して他のヘキソースに対するよりも高い比活性を有することを意味する。例えば、アロース6-リン酸ホスファターゼは、例えばソルボース6-リン酸またはタロース6-リン酸に対するよりも、アロース6-リン酸に対して高い比活性を有する。
【0075】
上記ヘキソース脱リン酸化ステップ中に生成するリン酸イオンを、次に、スクロースをG1Pに転化させる上記ステップにリサイクルすることができる。更に、PPFK及びポリリン酸を用いて、SPによるスクロースの加リン酸分解での開裂によって生成するフルクトースからF6Pを生成させることにより、ヘキソース収率を高めることができる。
【0076】
ヘキソースの製造方法は、以下のステップ、すなわち、
酵素的加水分解または酸加水分解により多糖及びオリゴ糖からグルコースを生成させることと、
少なくとも1種の酵素で触媒することによってグルコースをG6Pに転化させることと、
酵素的加水分解または酸加水分解により多糖及びオリゴ糖からフルクトースを生成させることと、
少なくとも1種の酵素で触媒することによってフルクトースをG6Pに転化させることと
を含んでいてもよい。上記多糖及びオリゴ糖の例は上記に列挙される。G6Pは、ポリリン酸グルコキナーゼにより、グルコース及びポリリン酸ナトリウムから製造することができる。
【0077】
本発明は、デンプン、セルロース、スクロース、及びそれらの誘導製品中の多糖ならびにオリゴ糖などの糖のヘキソースへの転化方法を提供する。無細胞酵素カクテルを使用して、デンプン、セルロース、スクロース、及びそれらの誘導製品をヘキソースに転化させるための、人工(非天然)のATPを含まない酵素的経路を提供することができる。
【0078】
上記に示すように、数種の酵素を用いてデンプンを加水分解し、G1P収率を増加させることができる。かかる酵素としては、イソアミラーゼ、プルラナーゼ、及びα-アミラーゼが挙げられる。コーンスターチはαGPの作用を妨げる多くの分枝を含む。イソアミラーゼを用いてデンプンを脱分枝し、直鎖状のアミロデキストリンを生成させることができる。イソアミラーゼで前処理したデンプンによって、最終生成物中のF6P濃度をより高くすることができる。イソアミラーゼ及びプルラナーゼはα-1,6-グリコシド結合を開裂させ、これにより、α-グルカンホスホリラーゼによってデンプンをより完全に分解することが可能になる。α-アミラーゼはα-1,4-グリコシド結合を開裂させることから、α-アミラーゼを用いてデンプンをフラグメントに分解させて、ヘキソースへの転化をより迅速にし、且つ溶解度を高める。
【0079】
マルトースホスホリラーゼ(MP)を用いて、分解生成物であるマルトースをG1P及びグルコースへと加リン酸分解で開裂させることによって、ヘキソース収率を増加させることができる。あるいは、4-グルカントランスフェラーゼ(4GT)を用いて、分解生成物であるグルコース、マルトース、及びマルトトリオースを、αGPにより加リン酸分解で開裂させてG1Pを生成させることができるより長鎖のマルトオリゴ糖へとリサイクルすることによって、ヘキソース収率を増加させることができる。
【0080】
更に、セルロースは最も豊富な生物資源であり、植物細胞壁の主要な構成成分である。非食品リグノセルロース系バイオマスは、セルロース、ヘミセルロース、及びリグニン、ならびにその他の微量成分を含有する。Avicel(微結晶セルロース)、再生非晶性セルロース、バクテリアセルロース、ろ紙などを含む純粋なセルロースは、一連の処理を経て製造することができる。部分的に加水分解されたセルロース基質としては、重合度が7を超える水不溶性セロデキストリン、3~6の重合度の水溶性セロデキストリン、セロビオース、グルコース、及びフルクトースが挙げられる。
【0081】
セルロース及びその誘導製品を、一連のステップを経てヘキソースに転化させることができる。この製造方法は、以下のステップ、すなわち、
セロデキストリンホスホリラーゼ(CDP)及びセロビオースホスホリラーゼ(CBP)でそれぞれ触媒することによって、セロデキストリン及びセロビオースならびに遊離リン酸からG1Pを生成させることと、
PGMで触媒することによってG1PをG6Pに転化させることと、
PGIで触媒することによってG6PをF6Pに転化させることと
を含むイン・ビトロ合成経路を提供する。この製造方法においては、リン酸イオンはセロデキストリン及びセロビオースをG1Pに転化させる上記ステップによりリサイクルすることができる。
【0082】
数種の酵素を用いて、固体セルロースを水溶性セロデキストリン及びセロビオースに加水分解してもよい。かかる酵素としては、エンドグルカナーゼ及びセロビオヒドロラーゼが挙げられるが、β-グルコシダーゼ(セロビアーゼ)は含まれない。
【0083】
セルロースの加水分解及びG1P生成の前に、セルロース及びバイオマスを前処理して、それらの反応性を高め、セルロース鎖の重合度を低下させてもよい。セルロース及びバイオマスの前処理方法としては、希酸前処理、セルロース溶媒によるリグノセルロース分別、アンモニアによる繊維の膨潤、アンモニア水浸漬、イオン液体処理、及び塩酸、硫酸、リン酸、及びそれらの併用を含む濃酸を使用することによる部分的加水分解が挙げられる。
【0084】
ポリリン酸及びポリリン酸グルコキナーゼ(PPGK)を本発明の製造方法に添加し、それにより分解生成物であるグルコースをG6Pにリン酸化することによって、ヘキソース収率を増加させることができる。
【0085】
ヘキソースをグルコースから生成させてもよい。このヘキソースの製造方法は、
ポリリン酸グルコキナーゼ(PPGK)で触媒することによってグルコース及びポリリン酸からG6Pを生成させるステップと、
PGIで触媒することによってG6PをF6Pに転化させるステップと
を含んでいてもよい。
【0086】
本発明の製造方法のそれぞれに、HEPES、PBS、BIS-TRIS、MOPS、DIPSO、Trizmaなどの、当技術分野で公知の、任意且つ適宜の生物学的に適合性のある緩衝剤を用いてもよい。本発明の製造方法に用いる反応緩衝液のpHは5.0~8.0の範囲であってよい。より好ましくは、上記反応緩衝液のpHは約6.0~約7.3の範囲であってよい。例えば、上記反応緩衝液のpHは、6.0、6.2、6.4、6.6、6.8、7.0、7.2、または7.3であってよい。
【0087】
上記反応緩衝液は金属カチオンも含有していてよい。上記金属イオンの例としては、Mg2+及びZn2+が挙げられる。当技術分野で公知のように、適宜の塩を用いて所望の金属カチオンを導入することができる。
【0088】
本発明の製造方法のそれぞれにおいて、当該プロセスステップが実施される反応温度は37~95℃の範囲であってよい。より好ましくは、上記ステップは約40℃~約90℃の範囲の温度で実施してもよい。上記温度は、例えば、約40℃、約45℃、50℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、約80℃、約85℃、または約90℃であってよい。上記反応温度は約50℃であることが好ましい。
【0089】
開示する製造方法のそれぞれの反応時間は必要に応じて調整してもよく、約8時間~約48時間の範囲であってよい。例えば、上記反応時間は、約16時間、約18時間、約20時間、約22時間、約24時間、約26時間、約28時間、約30時間、約32時間、約34時間、約36時間、約38時間、約40時間、約42時間、約44時間、約46時間、または約48時間であってよい。上記反応時間は約24時間であることがより好ましい。
【0090】
一般的には、開示する製造方法のそれぞれにおいて用いる酵素ユニットの比率は(当該製造方法の触媒反応ステップの数に応じて)1:1~1:1:1:1:1である。製品収率を最適化するために、これらの比率を任意の数の組み合わせで調整してもよい。例えば、3:1:1:1:1の比率を用いて、リン酸化中間体の濃度を最大化することができ、これにより、その下流の反応の活性が増加することとなる。逆に、1:1:1:1:3の比率を用いて、αGPに対するリン酸の供給を確実に維持することができ、これにより、α-1,4-グリコシド結合がより効率的に加リン酸分解で開裂することとなる。例えば3:1:1:1:3の酵素の比率を用いて反応速度を更に高めることができる。したがって、以下に説明する他の任意選択の酵素を含む酵素の比率を変化させて、ヘキソース生成の効率を高めることができる。例えば、ある特定の酵素が、他の酵素の量に対して約2倍、3倍、4倍、5倍等の量で存在していてもよい。
【0091】
本発明の製造方法のそれぞれは、全体の反応に対する非常に有利な平衡定数に起因して、高収率を達成することができる。例えば、
図11は、グルコース1-リン酸のヘキソースへの転化の生成ギブスエネルギーに基づく、中間体間の反応ギブスエネルギーを示す。反応ギブスエネルギーは、http://equilibrator.weizmann.ac.il/を用いて与えられる。理論的には、出発物質が完全に中間体に転化されるならば、最大で99%の収率を達成することができる。
【0092】
本発明の製造方法は低コストの出発物質を使用し、原料及び生成物の分離に関連するコストを削減することにより製造コストを低減する。デンプン、セルロース、スクロース、及びそれらの誘導体は、例えばラクトースよりも安価な原料である。ヘキソースがラクトースから製造される場合、グルコース及び他のヘキソース(複数可)はクロマトグラフィーにより分離され、このことがより高い製造コストに繋がる。
【0093】
また、本発明に係るホスファターゼによるヘキソースの脱リン酸化のステップは、原料の如何にかかわらず不可逆的なホスファターゼ反応である。したがって、ヘキソースは非常に高い収率で生成し、同時にそれに続く生成物の分離コストを効果的に最小限に抑える。
【0094】
本発明のいくつかの態様において、A6P、M6P、F6P、またはGal6Pをそれらのそれぞれの非リン酸化形態に転化させるホスファターゼは、2価金属補因子、好ましくはマグネシウムを利用する。本発明の更なる態様において、上記ホスファターゼは、
触媒作用のためのロスマン様フォールドドメインと、
更に、基質特異性のためのC1またはC2キャッピングドメインと、
更に、マグネシウムを配位させるための、第2のAspが一般的な酸/塩基触媒である上記ロスマン様フォールドの第1のβストランド中のDxDシグネチャーと、
更に、反応中間体の安定性を助長する、上記ロスマン様フォールドの第2のβストランドの末端のThrまたはSerと、
更に、反応中間体の安定性を助長する、上記ロスマン様フォールドの第3のβストランドのαヘリックスC末端のN末端のLysと、
更に、マグネシウムを配位させるための、上記ロスマン様フォールドの第4のβストランドの末端のGDxxxD、GDxxxxD、DD、またはEDシグネチャーと
を含有するが、含有することに限定されない。これらの特徴は当技術分野で知られており、例えば、Burroughs et al., Evolutionary Genomics of the HAD Superfamily: Understanding the Structural Adaptations and Catalytic Diversity in a Superfamily of Phosphoesterases and Allied Enzymes. J. Mol. Biol. 2006;361;1003-1034において言及されている。
【0095】
細胞による製造方法とは対照的に、本発明は、ヘキソースの無細胞での製造を含み、多くの場合に基質の細胞中への/生成物の細胞外への輸送を減速させる細胞膜を排除することに起因して、比較的に高い反応速度を有する。本発明においてはまた、最終製品が栄養分に富む発酵培地/細胞による代謝産物を含まない。
【0096】
アロース
【0097】
本発明の一実施形態は、
プシコース6-リン酸3-エピメラーゼ(P6PE)で触媒することによってフルクトース6-リン酸(F6P)をプシコース6-リン酸(P6P)に転化させることと、
アロース6-リン酸イソメラーゼ(A6PI)で触媒することによってP6Pをアロース6-リン酸(A6P)に転化させることと、
アロース6-リン酸ホスファターゼで触媒することによって上記生成したA6Pをアロースに転化させることと
を含むアロースの製造方法である。
【0098】
P6PEの例としては、UNIPROT識別番号によって識別される以下のタンパク質、すなわち、D9TQJ4、A0A090IXZ8、及びP32719が挙げられるが、これらに限定はされない。これらのうち、D9TQJ4及びA0A090IXZ8は好熱性生物から得られる。P32719は中温性生物から得られる。P32719はA0A090IXZ8に対して53%、D9TQJ4に対して55%の同一性を有し、それぞれのタンパク質がF6PのA6Pへのエピマー化を触媒する。更に、A0A090IXZ8はD9TQJ4に対して45%の同一性を有する。逆に、D9TQJ4に対する同一性が45%以下である、UNIPROT識別番号:A0A101D823、R1AXD6、A0A150LBU8、A0A023CQG9、及びH1XWY2で識別される他のエピメラーゼタンパク質は、F6PのA6Pへのエピマー化を触媒しない。P6PEの例には、上述のUniprot IDのいずれかに対するアミノ酸配列同一性が少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%である任意の類似体も含まれる。
【0099】
A6PIの例としては、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するUniprot ID W4V2C8、及び配列番号2に示すアミノ酸配列を有するUniprot ID Q67LX4が挙げられるが、これらに限定はされない。Uniprot ID W4V2C8及びQ67LX4は共にA6PI反応を触媒し、56%のアミノ酸配列同一性を共有する。したがって、A6PIの例には、上述のUniprot IDのいずれかに対するアミノ酸配列同一性が、少なくとも55%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、更により好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、または少なくとも94%、更に最も好ましくは少なくとも96、97、98、99、または100%である任意の類似体も含まれる。
【0100】
P6PをA6Pに転化させる方法における使用に好適なA6PIはロスマン様フォールドを含有する。当技術分野で報告されている中温性A6PI(Mowbray et al., D-Ribose-5-Phosphate Isomerase B from Escherichia coli is Also a Functional D-Allose-6-phosphate Isomerase, While the Mycobacterium tuberculosis Enzyme is Not. J. Mol. Biol. 2008;382;667-679)は、本発明において開示する好熱性A6PIと保存残基を共有する。本発明のいくつかの態様において、上記イソメラーゼは、
リン酸結合のための上記ロスマン様フォールドの第1のβストランドのHis(中温性残基10)C末端と、
更に、これもリン酸結合のための上記ロスマン様フォールドの第5のβストランドのαヘリックスC末端のArg(中温性残基133)C末端と、
更に、ラクトンを開環させるための活性部位中のHis(中温性残基99)と、
更に、触媒作用をもつ塩基として作用する活性部位中のCys(中温性残基66)と、
更に、触媒作用をもつ酸として作用する活性部位中のThr(中温性残基68)と、
更に、高エネルギー中間体を安定化するための、活性部位の近傍のGTG疎水性Gモチーフ(中温性残基67~71)と、
更に、これも高エネルギー中間体を安定化するための、活性部位の近傍のAsn(中温性残基100)と
を含有するが、含有することに限定されない。A6PIは、好ましくはこれらの保存残基の全てを含有する。
【0101】
A6PPの例としては、以下のタンパク質、すなわち、配列番号3に示すアミノ酸配列を有するUniprot ID S9SDA3、配列番号4に示すアミノ酸配列を有するUniprot ID Q9X0Y1、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するUniprot ID I3VT81、配列番号6に示すアミノ酸配列を有するUniprot ID A0A132NF06、及び配列番号7に示すアミノ酸配列を有するUniprot ID D1C7G9が挙げられるが、これらに限定はされない。Uniprot ID S9SDA3及びI3VT81は共にA6PP反応を触媒し、30%のアミノ酸配列同一性を共有する。したがって、A6PPの例には、上述のUniprot IDのいずれかに対するアミノ酸配列同一性が、少なくとも30%、好ましくは少なくとも35%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも45%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、更により好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、または少なくとも94%、更に最も好ましくは少なくとも96、97、98、99、または100%である任意の類似体も含まれる。
【0102】
A6Pをアロースに転化させるA6PPは、
触媒作用のためのロスマン様フォールドドメインと、
C1キャッピングドメインと、
上記ロスマン様フォールドの第1のβストランド中のDxDシグネチャーと、
上記ロスマン様フォールドの第2のβストランドの末端のThrまたはSerと、
上記ロスマン様フォールドの第3のβストランドのαヘリックスC末端のN末端のLysと、
上記ロスマン様フォールドの第4のβストランドの末端のEDシグネチャーと
を含有することが好ましい。
【0103】
本発明のアロースの製造方法はまた、グルコース6-リン酸(G6P)を酵素的にF6Pに転化させるステップも含み、このステップはホスホグルコイソメラーゼ(PGI)によって触媒される。他の実施形態において、本アロースの製造方法は、グルコース1-リン酸(G1P)をG6Pに転化させるステップを更に含み、このステップはホスホグルコムターゼ(PGM)によって触媒される。更に別の実施形態において、アロースの製造方法はまた、少なくとも1種の酵素によって触媒される、糖を上記G1Pに転化させるステップも含む。
【0104】
したがって、本発明のアロースの製造方法は、例えば、以下のステップ、すなわち、
(i)1種または複数種の酵素を用いて糖をグルコース1-リン酸(G1P)に転化させることと、
(ii)ホスホグルコムターゼ(PGM、EC 5.4.2.2)を用いてG1PをG6Pに転化させることと、
(iii)ホスホグルコイソメラーゼ(PGI、EC 5.3.1.9)を用いてG6PをF6Pに転化させることと、
(iv)P6PEを介してF6PをP6Pに転化させることと、
(v)A6PIを介してP6PをA6Pに転化させることと、
(vi)A6PPを介してA6Pをアロースに転化させることと
を含んでいてもよい。上記糖がデンプンである場合の本酵素的製造方法の例を
図1に示す。
【0105】
一般的には、開示する製造方法のそれぞれにおいて用いる酵素ユニットの比率は1:1:1:1:1:1(αGP:PGM:PGI:P6PE:A6PI:A6PP)である。製品収率を最適化するために、これらの比率を任意の数の組み合わせで調整してもよい。例えば、3:1:1:1:1:1の比率を用いて、リン酸化中間体の濃度を最大化することができ、これにより、その下流の反応の活性が増加することとなる。逆に、1:1:1:1:1:3の比率を用いて、αGPに対するリン酸の供給を確実に維持することができ、これにより、α-1,4-グリコシド結合がより効率的に加リン酸分解で開裂することとなる。例えば3:1:1:1:1:3の酵素の比率を用いて反応速度を更に高めることができる。したがって、以下に説明する他の任意選択の酵素を含む酵素の比率を変化させて、アロース生成の効率を高めることができる。例えば、ある特定の酵素が、他の酵素の量に対して約2倍、3倍、4倍、5倍等の量で存在していてもよい。
【0106】
特に全てのプロセスステップが単一のバイオリアクターまたは反応槽中で実施される場合、A6Pの脱リン酸化によって生成するリン酸イオンを、次に、糖をG1Pに転化させるプロセスステップにリサイクルすることができる。開示する製造方法においてリン酸をリサイクルすることができることにより、非化学量論量のリン酸を用いることが可能になり、これにより反応液中のリン酸濃度が低く保たれる。このことにより、本製造方法の全体的な経路及び全体を通した速度が影響を受けるが、個々の酵素の活性が制限されることはなく、本アロースの製造方法が全体的に効率的になることができる。
【0107】
例えば、反応液中のリン酸濃度は、約0.1mM~約300mM、約0.1mM~約150mM、約1mM~約50mM、好ましくは約5mM~約50mM、またはより好ましくは約10mM~約50mMの範囲であってよい。例えば、上記反応液中のリン酸濃度は、約0.1mM、約0.5mM、約1mM、約1.5mM、約2mM、約2.5mM、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約15mM、約20mM、約25mM、約30mM、約35mM、約40mM、約45mM、約50mM、または約55mMであってよい。
【0108】
リン酸濃度が低いことで、総リン酸量が少なくなることにより製造コストが減少し、延いてはリン酸除去のコストが低下する。また、リン酸濃度が低いと高濃度の遊離リン酸によるA6PPの阻害も防止され、リン酸による汚染の可能性も低下する。
【0109】
更に、本明細書に開示の製造方法は、リン酸の供給源としてATPを添加することなく、すなわちATPなしで実施することができる。本製造方法は、NAD(P)(H)についても、これを添加しなければならないということなしに、すなわちNAD(P)(H)なしで実施することができる。他の利点としては、開示するアロースの製造方法の少なくとも1のステップが、エネルギー的に有利な反応を含むという事実も挙げられる。
【0110】
アロースをフルクトースから製造することもできる。例えば、この製造方法は、
ポリリン酸フルクトキナーゼ(PPFK)で触媒することによってフルクトース及びポリリン酸からF6Pを生成させることと、
F6PEで触媒することによってF6PをP6Pに転化させることと、
A6PIで触媒することによってP6PをA6Pに転化させることと、
A6PPで触媒することによってA6Pをアロースに転化させることと
を含む。上記フルクトースは、例えば、スクロースの酵素的転化によって製造することができる。
【0111】
アロースはスクロースから製造することもできる。この製造方法は、以下の酵素的ステップ、すなわち、
スクロースホスホリラーゼ(SP)で触媒することによってスクロース及び遊離リン酸からG1Pを生成させることと、
PGMで触媒することによってG1PをG6Pに転化させることと、
PGIで触媒することによってG6PをF6Pに転化させることと、
P6PEで触媒することによってF6PをP6Pに転化させることと、
A6PIで触媒することによってP6PをA6Pに転化させることと、
A6PPで触媒することによってA6Pをアロースに転化させることと
を含むイン・ビトロ合成経路を提供する。
【0112】
A6Pがアロースに転化される際に生成するリン酸イオンを、次に、スクロースをG1Pに転化させるステップにリサイクルすることができる。更に、PPFK及びポリリン酸を用いて、SPによるスクロースの加リン酸分解での開裂によって生成するフルクトースからF6Pを生成させることにより、アロース収率を高めることができる。
【0113】
特定の実施形態において、アロースの製造方法は、以下のステップ、すなわち、
酵素的加水分解または酸加水分解により多糖及びオリゴ糖からグルコースを生成させることと、
少なくとも1種の酵素で触媒することによってグルコースをG6Pに転化させることと、
酵素的加水分解または酸加水分解により多糖及びオリゴ糖からフルクトースを生成させることと、
少なくとも1種の酵素で触媒することによってフルクトースをF6Pに転化させることと
を含む。上記多糖及びオリゴ糖の例は上記に列挙される。
【0114】
他の実施形態において、G6Pは、ポリリン酸グルコキナーゼによりグルコース及びポリリン酸ナトリウムから製造される。
【0115】
数種の酵素を用いてデンプンを加水分解し、G1P収率を増加させることができる。かかる酵素としては、イソアミラーゼ、プルラナーゼ、及びα-アミラーゼが挙げられる。コーンスターチはαGPの作用を妨げる多くの分枝を含む。イソアミラーゼを用いてデンプンを脱分枝し、直鎖状のアミロデキストリンを生成させることができる。イソアミラーゼで前処理したデンプンによって、最終生成物中のF6P濃度をより高くすることができる。イソアミラーゼ及びプルラナーゼはα-1,6-グリコシド結合を開裂させ、これにより、α-グルカンホスホリラーゼによってデンプンをより完全に分解することが可能になる。α-アミラーゼはα-1,4-グリコシド結合を開裂させることから、α-アミラーゼを用いてデンプンをフラグメントに分解させて、アロースへの転化をより迅速にし、且つ溶解度を高める。
【0116】
マルトースホスホリラーゼ(MP)を用いて、分解生成物であるマルトースをG1P及びグルコースへと加リン酸分解で開裂させることによって、アロース収率を増加させることができる。あるいは、4-グルカントランスフェラーゼ(4GT)を用いて、分解生成物であるグルコース、マルトース、及びマルトトリオースを、αGPにより加リン酸分解で開裂させてG1Pを生成させることができるより長鎖のマルトオリゴ糖へとリサイクルすることによって、アロース収率を増加させることができる。
【0117】
特定の実施形態において、セルロース及びその誘導製品を、一連のステップを経てアロースに転化させることができる。この製造方法は、以下のステップ、すなわち、
セロデキストリンホスホリラーゼ(CDP)及びセロビオースホスホリラーゼ(CBP)でそれぞれ触媒することによって、セロデキストリン及びセロビオースならびに遊離リン酸からG1Pを生成させることと、
PGMで触媒することによってG1PをG6Pに転化させることと、
PGIで触媒することによってG6PをF6Pに転化させることと、
P6PEで触媒することによってF6PをP6Pに転化させることと、
A6PIで触媒することによってP6PをA6Pに転化させることと、
A6PPで触媒することによってA6Pをアロースに転化させることと
を含むイン・ビトロ合成経路を提供する。この製造方法においては、リン酸イオンはセロデキストリン及びセロビオースをG1Pに転化させる上記ステップによりリサイクルすることができる。
【0118】
数種の酵素を用いて、固体セルロースを水溶性セロデキストリン及びセロビオースに加水分解してもよい。かかる酵素としては、エンドグルカナーゼ及びセロビオヒドロラーゼが挙げられるが、β-グルコシダーゼ(セロビアーゼ)は含まれない。
【0119】
いくつかの実施形態において、ポリリン酸及びポリリン酸グルコキナーゼ(PPGK)を本製造方法に添加し、それにより分解生成物であるグルコースをG6Pにリン酸化することによって、アロースの収率を増加させることができる。
【0120】
アロースをグルコースから製造してもよい。この製造方法は、
ポリリン酸グルコキナーゼ(PPGK)で触媒することによってグルコース及びポリリン酸からG6Pを生成させるステップと、
PGIで触媒することによってG6PをF6Pに転化させるステップと、
P6PEで触媒することによってF6PをP6Pに転化させるステップと、
A6PIで触媒することによってP6PをA6Pに転化させるステップと、
A6PPで触媒することによってA6Pをアロースに転化させるステップと
を含む。
【0121】
本発明のアロースの製造方法は低コストの出発物質を使用し、原料及び生成物の分離に関連するコストを削減することにより製造コストを低減する。デンプン、セルロース、スクロース、及びいくつかのそれらの誘導体は、例えばフルクトースよりも安価な原料である。アロースがプシコースから製造される場合、収率は本発明の場合よりも低く、アロースをクロマトグラフィーによりプシコースから分離する必要があり、これはより高い製造コストに繋がる。
【0122】
また、本発明に係るA6Pをアロースに転化させるステップは、原料の如何にかかわらず不可逆的なホスファターゼ反応である。したがって、アロースは非常に高い収率で生成し、同時にそれに続く生成物の分離コストを効果的に最小限に抑える。
【0123】
細胞による製造方法とは対照的に、本発明は、アロースの無細胞での製造を含み、多くの場合に基質の細胞中への/生成物の細胞外への輸送を減速させる細胞膜を排除することに起因して、比較的に高い反応速度を有する。本発明においてはまた、最終製品が栄養分に富む発酵培地/細胞による代謝産物を含まない。
【0124】
本発明の特定の実施形態は、本明細書に記載のアロースの製造方法によって製造されたアロースである。
【0125】
アロースの機能はスクロースと類似することから、本発明の方法によって製造されたアロースを任意の飲料または食料品に添加して、所望の甘味を生み出すことができる。
【0126】
本明細書に開示の製造方法によって製造されたアロースを、強力な甘味料の効果を相乗するために用いてもよい。アロースは、1種または複数種の強力な甘味料と併用する場合、甘味製品の食感、風味、及び後味などの感覚特性を向上させることができる。様々な食品に強力な甘味料などの低カロリー甘味料を使用することは、食品及び飲料の配合処方において通常の事である。しかし、多くの消費者にとって、人工甘味量を用いたダイエットまたは低カロリー型の製品として販売される製品は好ましいものではない。長年にわたり、少量の炭水化物を添加することによってこれらのダイエットまたは低カロリー製品の味覚の送達を改善する試みがなされてきた。本発明の方法によって製造されたアロースは、食品及び飲料配合物の、特にダイエット/低カロリー飲料において、品質を向上させることができるだけでなく、アロースを用いることが強力な甘味料と相乗的に作用し、その結果、アロースを測定されたその甘味の閾値を十分に下回る濃度で添加した場合であっても、アロースが相当な量の強力な甘味料に取って替わることができる場合がある。
【0127】
本明細書に開示の製造方法によって製造されたアロースを、アイスクリームなどの低カロリー型の食品の製造に、Stevia rebaudiana Bertoni植物の抽出物などの他の甘味料と併用してもよい。
【0128】
本明細書に開示の製造方法によって製造されたアロースを、フロスティングとして、Dアロースが、スクロースもしくは一般的に使用される他の糖に部分的または完全に取って替わった、予め甘味を付けた即席(RTE)朝食用シリアル及び他の食品に用いてもよい。
【0129】
本明細書に開示の製造方法によって製造されたアロースを、エリトリトールなどの糖アルコール、ならびにフルクトース、スクロース、デキストロース、マルトース、トレハロース、ラムノース、コーンシロップ、及びフルクトオリゴ糖などの相当なカロリー含有量を有する栄養甘味料との併用で、食品及び飲料用の甘味料の一部として用いてもよい。
【0130】
本明細書に開示の製造方法によって製造されたアロースを、植物病害防除を強化する組成物の一部として用いてもよい。
【0131】
マンノース
【0132】
本発明の一実施形態は、
マンノース6-リン酸イソメラーゼ(M6PI)で触媒することによってF6Pをマンノース6-リン酸(M6P)に転化させることと、
マンノース6-リン酸ホスファターゼ(M6PP)で触媒することによって上記M6Pをマンノースに転化させることと
を含む、マンノースの製造方法である。
【0133】
M6PIの例としては、配列番号8に示すアミノ酸配列を有するUniprot ID A0A1M6TLY7、配列番号9に示すアミノ酸配列を有するH1XQS6、配列番号10に示すアミノ酸配列を有するG2Q982、及び配列番号11に示すアミノ酸配列を有するF8F1Z8が挙げられるが、これらに限定はされない。Uniprot ID G2Q982及びF8F1Z8は共にM6PI反応を遂行し、28%のアミノ酸配列同一性を共有する。したがって、M6PIの例には、上述のUniprot IDのいずれかに対するアミノ酸配列同一性が、少なくとも25%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも35%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも45%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも55%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、更により好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、または少なくとも94%、更に最も好ましくは少なくとも96、97、98、99、または100%である任意の類似体も含まれる。
【0134】
F6PをM6Pに転化させる方法における使用に好適なM6PIは、キュピンフォールドに類似する逆平行βストランドのコアを有する2のドメイン及びαヘリックスのみからなる第3のドメインを含有する。M6PIは、当技術分野において構造をキャラクタライズされており(Sagurthi et al. Structures of mannose-6-phosphate isomerase from Salmonella typhimurium bound to metal atoms and substrate: implications for catalytic mechanism. Acta Cryst. 2009;D65;724-732)、本発明に記載の好熱性M6PIと保存残基を共有する。本発明のいくつかの態様において、上記イソメラーゼは、
2価金属カチオン、好ましくはMg2+またはZn2+と、
更に、金属との結合に用いるためであることが仮説として提案されているGlu及び2つのHis残基(それぞれ、PDB 3H1M残基134、99、及び255)と、
更に、酸/塩基触媒作用のためであることが仮説として提案されているAsp及びLys残基(それぞれ、PDB 3H1M残基270及び132)と、
リン酸結合のためであることが仮説として提案されているLys、Pro、及びAla残基(それぞれ、PDB 3H1M残基132、133、及び267)と
を含有するが、含有することに限定されない。M6PIは、好ましくはこれらの保存残基の全てを含有する。
【0135】
M6PPの例としては、以下のタンパク質、すなわち、配列番号12に示すアミノ酸配列を有するUniprot ID A0A1A6DSI3、配列番号13に示すアミノ酸配列を有するA0A1M4UN08、配列番号14に示すアミノ酸配列を有するA0A1N6FCW3が挙げられるが、これらに限定はされない。Uniprot ID A0A1A6DSI3及びA0A1N6FCW3は共にM6PP反応を触媒し、35%のアミノ酸配列同一性を共有する。したがって、M6PPの例には、上述のUniprot IDのいずれかに対するアミノ酸配列同一性が、少なくとも35%、より好ましくは少なくとも40%、好ましくは少なくとも45%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、更により好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、または少なくとも94%、更に最も好ましくは少なくとも96、97、98、99、または100%である任意の類似体も含まれる。
【0136】
M6Pをマンノースに転化させるM6PPは、
触媒作用のためのロスマン様フォールドドメインと、
C1キャッピングドメインと、
上記ロスマン様フォールドの第1のβストランド中のDxDシグネチャーと、
上記ロスマン様フォールドの第2のβストランドの末端のThrまたはSerと、
上記ロスマン様フォールドの第3のβストランドのαヘリックスC末端のN末端のLysと、
上記ロスマン様フォールドの第4のβストランドの末端のGDxxxDシグネチャーと
を含有することが好ましい。
【0137】
本発明のマンノースの製造方法はまた、グルコース6-リン酸(G6P)を酵素的に上記F6Pに転化させるステップも含み、このステップはホスホグルコイソメラーゼ(PGI)によって触媒される。他の実施形態において、本マンノースの製造方法は、グルコース1-リン酸(G1P)を上記G6Pに転化させるステップを更に含み、このステップはホスホグルコムターゼ(PGM)によって触媒される。更なる実施形態において、本マンノースの製造方法は、上記G6PのF6PへのM6Pへの転化を含み、このステップは二官能性ホスホグルコース/ホスホマンノースイソメラーゼ(PGPMI)によって触媒される。更に別の実施形態において、マンノースの製造方法は、少なくとも1種の酵素によって触媒される、糖をG1Pに転化させるステップも含む。
【0138】
本発明のマンノースの製造方法は、G6PまたはF6PをM6Pに転化させるPGPMIを用いる。PGPMIの例としては、以下のタンパク質、すなわち、配列番号15に示すアミノ酸配列を有するUniprot ID D7CPH7、配列番号16に示すアミノ酸配列を有するA0A085L170、及び配列番号17に示すアミノ酸配列を有するM1E6Z3が挙げられるが、これらに限定はされない。Uniprot ID A0A085L170及びM1E6Z3は共にPGPMI反応を触媒し、28%のアミノ酸配列同一性を共有する。したがって、PGPMIの例には、上述のUniprot IDのいずれかに対するアミノ酸配列同一性が、少なくとも25%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも35%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも45%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、更により好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、または少なくとも94%、更に最も好ましくは少なくとも96、97、98、99、または100%である任意の類似体も含まれる。
【0139】
上記製造方法においてG6PまたはF6PをM6Pに転化させるために用いるのに好適なPGPMIは、2のロスマン様フォールドを含有する。PGPMIは、当技術分野において構造をキャラクタライズされており(Swan et al. A Novel Phosphoglucose Isomerase (PGI)/Phosphomannose Isomerase from the Crenarchaeon Pyrobaculum aerophilum Is a Member of the PGI Superfamily. J. Biol. Chem. 2004: 279;39838-39845)、本発明に記載の上記好熱性PGPMIと保存残基を共有する。本発明のいくつかの態様において、上記イソメラーゼは、
Gly残基が基質の結合を助長し、Ser残基がリン酸に結合するGGSモチーフ(PDB 1TZB残基46~48)と、
更に、リン酸に結合するSYSG-X-T-X-ET-疎水性モチーフ(PDB 1TZB残基87~96)と、
更に、触媒作用の間に高エネルギー中間体を安定化するArg残基(PDB 1TZB残基135)と、
更に、Gluが活性部位塩基プロトン移動に必須であるENシグネチャー(PDB 1TZB残基203~204)と、
更に、触媒作用の間にHisが基質の開環/閉環にとって重要であるHNシグネチャー(PDB 1TZB残基219~220)と、
更に、触媒作用の間に基質の開環/閉環にとって重要である保存Lys残基(PDB 1TZB残基298)と
を含有するが、含有することに限定されない。上記保存残基の機能は別個の刊行物(Hansen et al. Bifunctional Phosphoglucose/Phosphomannose Isomerases from the Archaea Aeropyrum pernix and Thermoplasma acidophilum Constitute a Novel Enzyme Family within the Phosphoglucose Isomerase Superfamily. J Biol. Chem. 2004;279;2262-2272)において検証されている。PGPMIは好ましくはこれらの保存残基の全てを含有する。
【0140】
したがって、本発明のマンノースの製造方法は、例えば、以下のステップ、すなわち、
(i)1種または複数種の酵素を用いて糖をグルコース1-リン酸(G1P)に転化させることと、
(ii)ホスホグルコムターゼ(PGM、EC 5.4.2.2)を用いてG1PをG6Pに転化させることと、
(iii)ホスホグルコイソメラーゼ(PGI、EC 5.3.1.9)を用いてG6PをF6Pに転化させることと、
(iv)マンノース6-リン酸イソメラーゼ(M6PI、EC 5.3.1.8)を介してF6PをM6Pに転化させることと、
(v)二官能性ホスホグルコース/ホスホマンノースイソメラーゼ(PGPMI、EC 5.3.1.8及び5.3.1.9)を介してG6PをM6Pに転化させることと、
(vi)M6PPを介してM6Pをマンノースに転化させることと
を含んでいてもよい。上記糖がデンプンである本製造方法の例を
図2に示す。
【0141】
一般的には、開示する製造方法において用いる酵素ユニットの比率は1:1:1:1:1(αGP:PGM:PGI:M6PI:M6PP)または1:1:1:1(αGP:PGM:PGPMI:M6PP)である。製品収率を最適化するために、これらの比率を任意の数の組み合わせで調整してもよい。例えば、3:1:1:1:1の比率を用いて、リン酸化中間体の濃度を最大化することができ、これにより、その下流の反応の活性が増加することとなる。逆に、1:1:1:1:3の比率を用いて、αGPに対するリン酸の供給を確実に維持することができ、これにより、α-1,4-グリコシド結合がより効率的に加リン酸分解で開裂することとなる。例えば3:1:1:1:3の酵素の比率を用いて反応速度を更に高めることができる。したがって、以下に説明する他の任意選択の酵素を含む酵素の比率を変化させて、マンノース生成の効率を高めることができる。例えば、ある特定の酵素が、他の酵素の量に対して約2倍、3倍、4倍、5倍等の量で存在していてもよい。
【0142】
本製造方法の重要な利点の1つは、複数のプロセスステップを単一のバイオリアクターまたは反応槽中で実施することができることである。あるいは、上記複数のステップは、直列に配置された複数のバイオリアクターまたは反応槽中で実施することもできる。
【0143】
特に全てのプロセスステップが単一のバイオリアクターまたは反応槽中で実施される場合、M6Pの脱リン酸化ステップによって生成するリン酸イオンを、次に、糖をG1Pに転化させる上記プロセスステップにリサイクルすることができる。上記開示する製造方法においてリン酸をリサイクルすることができることにより、非化学量論量のリン酸を用いることが可能になり、これにより反応液中のリン酸濃度が低く保たれる。このことにより、本製造方法の全体的な経路及び全体を通した速度が影響を受けるが、個々の酵素の活性が制限されることはなく、本マンノースの製造方法が全体的に効率的になることができる。
【0144】
例えば、反応液中のリン酸濃度は、約0.1mM~約300mM、約0.1mM~約150mM、約1mM~約50mM、好ましくは約5mM~約50mM、またはより好ましくは約10mM~約50mMの範囲であってよい。例えば、上記反応液中のリン酸濃度は、約0.1mM、約0.5mM、約1mM、約1.5mM、約2mM、約2.5mM、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約15mM、約20mM、約25mM、約30mM、約35mM、約40mM、約45mM、約50mM、または約55mMであってよい。
【0145】
したがって、リン酸濃度が低いことで、総リン酸量が少なくなることにより製造コストが減少し、延いてはリン酸除去のコストが低下する。また、リン酸濃度が低いと高濃度の遊離リン酸によるM6PPの阻害も防止され、リン酸による汚染の可能性も低下する。
【0146】
更に、本明細書に開示の製造方法は、リン酸の供給源としてATPを添加することなく、すなわちATPなしで実施することができる。本製造方法は、NAD(P)(H)についても、これを添加しなければならないということなしに、すなわちNAD(P)(H)なしで実施することができる。他の利点としては、開示するマンノースの製造方法の少なくとも1のステップが、エネルギー的に有利な反応を含むという事実も挙げられる。
【0147】
マンノースはフルクトースから製造することもできる。この製造方法は、例えば、
ポリリン酸フルクトキナーゼ(PPFK)で触媒することによってフルクトース及びポリリン酸からF6Pを生成させることと、
M6PIで触媒することによってF6PをM6Pに転化させることと、
M6PPで触媒することによってM6Pをマンノースに転化させることと
を含む。上記フルクトースは、例えば、スクロースの酵素的転化により製造することができる。
【0148】
マンノースはスクロースから製造することもできる。この製造方法は、以下の酵素的ステップ、すなわち、
スクロースホスホリラーゼ(SP)で触媒することによってスクロース及び遊離リン酸からG1Pを生成させることと、
PGMで触媒することによってG1PをG6Pに転化させることと、
PGIで触媒することによってG6PをF6Pに転化させることと、
M6PIで触媒することによってF6PをM6Pに転化させることと、
M6PPで触媒することによってM6Pをマンノースに転化させることと
を含むイン・ビトロ合成経路を提供する。上記のステップにおいて、上記G6PのF6PへのM6Pへの転化は、代替手段としてPGPMIによって触媒されてもよい。
【0149】
M6Pがマンノースに転化される際に生成するリン酸イオンを、次に、スクロースをG1Pに転化させるステップにリサイクルすることができる。更に、PPFK及びポリリン酸を用いて、SPによるスクロースの加リン酸分解での開裂によって生成するフルクトースからF6Pを生成させることにより、マンノース収率を高めることができる。
【0150】
いくつかの実施形態において、マンノースの製造方法は、以下のステップ、すなわち、
酵素的加水分解または酸加水分解によって多糖及びオリゴ糖からグルコースを生成させることと、
少なくとも1種の酵素で触媒することによってグルコースをG6Pに転化させることと、
酵素的加水分解または酸加水分解によって多糖及びオリゴ糖からフルクトースを生成させることと、
少なくとも1種の酵素で触媒することによってフルクトースをF6Pに転化させることと
を含む。上記多糖及びオリゴ糖の例は上記に列挙される。
【0151】
他の実施形態において、G6Pは、ポリリン酸グルコキナーゼによりグルコース及びポリリン酸ナトリウムから製造される。
【0152】
本開示は、デンプン、セルロース、スクロース、及びそれらの誘導製品中の多糖ならびにオリゴ糖などの糖のマンノースへの転化方法を提供する。特定の実施形態において、無細胞酵素カクテルを使用して、デンプン、セルロース、スクロース、及びそれらの誘導製品をマンノースに転化させるための、人工(非天然)のATPを含まない酵素的経路が提供される。
【0153】
上記に示すように、数種の酵素を用いてデンプンを加水分解し、G1P収率を増加させることができる。かかる酵素としては、イソアミラーゼ、プルラナーゼ、及びα-アミラーゼが挙げられる。コーンスターチはαGPの作用を妨げる多くの分枝を含む。イソアミラーゼを用いてデンプンを脱分枝し、直鎖状のアミロデキストリンを生成させることができる。イソアミラーゼで前処理したデンプンによって、最終生成物中のF6P濃度をより高くすることができる。イソアミラーゼ及びプルラナーゼはα-1,6-グリコシド結合を開裂させ、これにより、α-グルカンホスホリラーゼによってデンプンをより完全に分解することが可能になる。α-アミラーゼはα-1,4-グリコシド結合を開裂させることから、α-アミラーゼを用いてデンプンをフラグメントに分解させて、マンノースへの転化をより迅速にし、且つ溶解度を高める。
【0154】
マルトースホスホリラーゼ(MP)を用いて、分解生成物であるマルトースをG1P及びグルコースへと加リン酸分解で開裂させることによって、マンノース収率を増加させることができる。あるいは、4-グルカントランスフェラーゼ(4GT)を用いて、分解生成物であるグルコース、マルトース、及びマルトトリオースを、αGPにより加リン酸分解で開裂させてG1Pを生成させることができるより長鎖のマルトオリゴ糖へとリサイクルすることによって、マンノース収率を増加させることができる。
【0155】
特定の実施形態において、セルロース及びその誘導製品を、一連のステップを経てマンノースに転化させることができる。この製造方法は、以下のステップ、すなわち、
セロデキストリンホスホリラーゼ(CDP)及びセロビオースホスホリラーゼ(CBP)でそれぞれ触媒することによって、セロデキストリン及びセロビオースならびに遊離リン酸からG1Pを生成させることと、
PGMで触媒することによってG1PをG6Pに転化させることと、
PGIで触媒することによってG6PをF6Pに転化させることと、
M6PIで触媒することによってF6PをM6Pに転化させることと、
M6PPで触媒することによってM6Pをマンノースに転化させることと
を含むイン・ビトロ合成経路を提供する。あるいは、前述の経路において、上記G6PのF6PへのM6Pへの転化をPGPMIによって触媒してもよい。この製造方法においては、リン酸イオンはセロデキストリン及びセロビオースをG1Pに転化させる上記ステップによりリサイクルすることができる。
【0156】
いくつかの実施形態において、ポリリン酸及びポリリン酸グルコキナーゼ(PPGK)を本製造方法に添加し、それにより分解生成物であるグルコースをG6Pにリン酸化することによって、マンノースの収率を増加させることができる。
【0157】
他の実施形態において、マンノースはグルコースから生成させることができる。この製造方法は、
ポリリン酸グルコキナーゼ(PPGK)で触媒することによってグルコース及びポリリン酸からG6Pを生成させるステップと、
PGIで触媒することによってG6PをF6Pに転化させるステップと、
M6PIで触媒することによってF6PをM6Pに転化させるステップと、
M6PPで触媒することによってM6Pをマンノースに転化させるステップと
を含む。あるいは、上記G6PのF6PへのM6Pへの転化は、PGPMIによって触媒されてもよい。
【0158】
本発明の製造方法は低コストの出発物質を使用し、原料及び生成物の分離に関連するコストを削減することにより製造コストを低減する。デンプン、セルロース、スクロース、及びいくつかのそれらの誘導体は、例えばフルクトースよりも安価な原料である。マンノースがフルクトースから製造される場合、収率は本発明の場合よりも低く、マンノースをクロマトグラフィーによりフルクトースから分離する必要があり、これはより高い製造コストに繋がる。
【0159】
また、本発明に係るM6Pをマンノースに転化させるステップは、原料の如何にかかわらず不可逆的なホスファターゼ反応である。したがって、マンノースは非常に高い収率で生成し、同時にそれに続く生成物の分離コストを効果的に最小限に抑える。
【0160】
細胞による製造方法とは対照的に、本発明は、マンノースの無細胞での製造を含み、多くの場合に基質の細胞中への/生成物の細胞外への輸送を減速させる細胞膜を排除することに起因して、比較的に高い反応速度を有する。本発明においてはまた、最終製品が栄養分に富む発酵培地/細胞による代謝産物を含まない。
【0161】
本発明の特定の実施形態は、本明細書に記載のマンノースの製造方法によって製造されたマンノースである。
【0162】
本明細書に記載の製造方法により製造されたマンノースは、上述のように、医薬品、化粧品、飲料、食品、乳製品、菓子、及び畜産業界における様々な用途に使用することができる。
【0163】
更に、本明細書に開示される製造方法によって製造されたマンノースは、水素化によりマンニトールに転化させることができる。マンノースの接触水素化は化学量論的収率で起こり、マンニトールを与える。米国特許第5,466,795号。マンニトールは、無糖チューインガム、菓子、医薬品賦形剤の製造に広く使用されている。しかし、高純度のマンノースの製造を行うことは非常に困難であり、コストが高くなる。同上。したがって、上述の製造方法によって製造されたマンノースは、接触水素化によってマンニトールに転化させることができる。
【0164】
ガラクトース
【0165】
本発明の一実施形態は、
フルクトース6-リン酸4-エピメラーゼ(F6PE)で触媒することによってフルクトース6-リン酸(F6P)をタガトース6-リン酸(T6P)に転化させることと、
ガラクトース6-リン酸イソメラーゼ(Gal6PI)で触媒することによってT6Pをガラクトース6-リン酸(Gal6P)に転化させることと、
ガラクトース6-リン酸ホスファターゼ(Gal6PP)で触媒することによって上記Gal6Pをガラクトースに転化させることと
を含む、ガラクトースの製造方法である。
【0166】
F6PEの例としては、以下のタンパク質、すなわち、Uniprot ID E8N0N6、E4SEH3、I0I507、H1XRG1、及びB5YBD7が挙げられるが、これらに限定はされない。Uniprot ID E8N0N6及びI0I507は共にF6PE反応を触媒し、27%のアミノ酸配列同一性を共有する。したがって、F6PEの例には、上述のUniprot IDのいずれかに対するアミノ酸配列同一性が、少なくとも25%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも35%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも45%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、更により好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、または少なくとも94%、更に最も好ましくは少なくとも96、97、98、99、または100%である任意の類似体も含まれる。
【0167】
Gal6PIは、2のサブユニット、LacA及びLacBの多量体として存在する。Gal6PIの例としては、以下のタンパク質(LacA/LacB)サブユニット対、すなわち、配列番号18/配列番号19に示すアミノ酸配列を有するUniprot ID P23494/P23495が挙げられるが、これらに限定はされない。Gal6PIの例には、サブユニットLacAに関する上述のUniprot IDのいずれかに対するアミノ酸配列同一性が、少なくとも25%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも35%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも45%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、更により好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、または少なくとも94%、更に最も好ましくは少なくとも96、97、98、99、または100%である任意の類似体、及びサブユニットLacBに関する上述のUniprot IDのいずれかに対するアミノ酸配列同一性が、少なくとも25%、少なくとも30%、より好ましくは少なくとも35%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも45%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、更により好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、または少なくとも94%、更に最も好ましくは少なくとも96、97、98、99、または100%である任意の類似体も含まれる。
【0168】
T6PをGal6Pに転化させる方法における使用に好適なGal6PIは、ロスマン様αβαサンドウィッチフォールドを有するサブユニットからなるヘテロ二量体(「A」及び「B」)を含有する。当技術分野において保存残基が議論されている(Jung et al. Crystal Structure and Substrate Specificity of D-Galactose-6-Phosphate Isomerase Complexed with Substrates. PLOS ONE. 2013;8;e72902)。本発明のいくつかの態様において、上記イソメラーゼヘテロ二量体は、
基質のリン酸基に結合するための、「A」中のArg130及びArg134ならびに「B」中のHis9及びArg39と、
更に、基質の開環のための、「A」中のHis96と、
更に、高エネルギー中間体を安定化するための、「A」中のAsn97と、
更に、プロトン移動に関与するための、「B」のCys65及びThr67と
を含有するが、含有することに限定されない。
【0169】
Gal6PPの例としては、配列番号20に示すアミノ酸配列を有するUniprot ID Q8A2F3が挙げられるが、これに限定はされない。Gal6PPの例には、上述のUniprot IDのいずれかに対するアミノ酸配列同一性が、少なくとも25%、少なくとも30%、より好ましくは少なくとも35%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも45%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、更により好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、または少なくとも94%、更に最も好ましくは少なくとも96、97、98、99、または100%である任意の類似体も含まれる。
【0170】
Gal6Pをガラクトースに転化させるGal6PPは、
触媒作用のためのロスマン様フォールドドメインと、
C2キャッピングドメインと、
上記ロスマン様フォールドの第1のβストランド中のDxDシグネチャーと、
上記ロスマン様フォールドの第2のβストランドの末端のThrまたはSerと、
上記ロスマン様フォールドの第4のβストランドの末端のGDxxxDシグネチャーと
を含有することが好ましい。
【0171】
本発明のガラクトースの製造方法はまた、グルコース6-リン酸(G6P)を酵素的にF6Pに転化させるステップも含み、このステップはホスホグルコイソメラーゼ(PGI)によって触媒される。他の実施形態において、本ガラクトースの製造方法は、グルコース1-リン酸(G1P)を上記G6Pに転化させるステップを更に含み、このステップはホスホグルコムターゼ(PGM)によって触媒される。更に別の実施形態において、ガラクトースの製造方法は、少なくとも1種の酵素によって触媒される、糖を上記G1Pに転化させるステップも含む。
【0172】
したがって、本発明のガラクトースの製造方法は、例えば、以下のステップ、すなわち、
(i)1種または複数種の酵素を用いて糖をグルコース1-リン酸(G1P)に転化させることと、
(ii)ホスホグルコムターゼ(PGM、EC 5.4.2.2)を用いてG1PをG6Pに転化させることと、
(iii)ホスホグルコイソメラーゼ(PGI、EC 5.3.1.9)を用いてG6PをF6Pに転化させることと、
(iv)F6PEを介してF6PをT6Pに転化させることと、
(v)Gal6PI(EC 5.3.1.26)を介してT6PをGal6Pに転化させることと、
(vi)Gal6PPを介してGal6Pをガラクトースに転化させることと
を含んでいてもよい。上記糖がデンプンである本製造方法の例を
図3に示す。
【0173】
一般的には、開示する製造方法において用いる酵素ユニットの比率は1:1:1:1:1:1(αGP:PGM:PGI:F6PE:Gal6PI:Gal6PP)である。製品収率を最適化するために、これらの比率を任意の数の組み合わせで調整してもよい。例えば、3:1:1:1:1:1の比率を用いて、リン酸化中間体の濃度を最大化することができ、これにより、その下流の反応の活性が増加することとなる。逆に、1:1:1:1:1:3の比率を用いて、αGPに対するリン酸の供給を確実に維持することができ、これにより、α-1,4-グリコシド結合がより効率的に加リン酸分解で開裂することとなる。例えば3:1:1:1:1:3の酵素の比率を用いて反応速度を更に高めることができる。したがって、以下に説明する他の任意選択の酵素を含む酵素の比率を変化させて、ガラクトース生成の効率を高めることができる。例えば、ある特定の酵素が、他の酵素の量に対して約2倍、3倍、4倍、5倍等の量で存在していてもよい。
【0174】
本製造方法の重要な利点の1つは、複数のプロセスステップを単一のバイオリアクターまたは反応槽中で実施することができることである。あるいは、上記複数のステップは、直列に配置された複数のバイオリアクターまたは反応槽中で実施することもできる。
【0175】
特に全てのプロセスステップが単一のバイオリアクターまたは反応槽中で実施される場合、Gal6Pの脱リン酸化によって生成するリン酸イオンを、次に、糖をG1Pに転化させる上記プロセスステップにリサイクルすることができる。上記開示する製造方法においてリン酸をリサイクルすることができることにより、非化学量論量のリン酸を用いることが可能になり、これにより反応液中のリン酸濃度が低く保たれる。このことにより、本製造方法の全体的な経路及び全体を通した速度が影響を受けるが、個々の酵素の活性が制限されることはなく、本ガラクトースの製造方法が全体的に効率的になることができる。
【0176】
例えば、反応液中のリン酸濃度は、約0.1mM~約300mM、約0.1mM~約150mM、約1mM~約50mM、好ましくは約5mM~約50mM、またはより好ましくは約10mM~約50mMの範囲であってよい。例えば、上記反応液中のリン酸濃度は、約0.1mM、約0.5mM、約1mM、約1.5mM、約2mM、約2.5mM、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約15mM、約20mM、約25mM、約30mM、約35mM、約40mM、約45mM、約50mM、または約55mMであってよい。
【0177】
したがって、リン酸濃度が低いことで、総リン酸量が少なくなることにより製造コストが減少し、延いてはリン酸除去のコストが低下する。また、リン酸濃度が低いと高濃度の遊離リン酸によるGal6PPの阻害も防止され、リン酸による汚染の可能性も低下する。
【0178】
更に、本明細書に開示の製造方法は、リン酸の供給源としてATPを添加することなく、すなわちATPなしで実施することができる。本製造方法は、NAD(P)(H)についても、これを添加しなければならないということなしに、すなわちNAD(P)(H)なしで実施することができる。他の利点としては、開示するガラクトースの製造方法の少なくとも1のステップが、エネルギー的に有利な化学反応を含むという事実も挙げられる。
【0179】
ガラクトースをフルクトースから製造することもできる。例えば、この製造方法は、
ポリリン酸フルクトキナーゼ(PPFK)で触媒することによってフルクトース及びポリリン酸からF6Pを生成させることと、
F6PEで触媒することによってF6PをT6Pに転化させることと、
Gal6PIで触媒することによってT6PをGal6Pに転化させることと、
Gal6PPで触媒することによってGal6Pをガラクトースに転化させることと
を含む。上記フルクトースは、例えば、スクロースの酵素的転化によって製造することができる。
【0180】
ガラクトースはスクロースから製造することができる。この製造方法は、以下の酵素的ステップ、すなわち、
スクロースホスホリラーゼ(SP)で触媒することによってスクロース及び遊離リン酸からG1Pを生成させることと、
PGMで触媒することによってG1PをG6Pに転化させることと、
PGIで触媒することによってG6PをF6Pに転化させることと、
F6PEで触媒することによってF6PをT6Pに転化させることと、
Gal6PIで触媒することによってT6PをGal6Pに転化させることと、
Gal6PPで触媒することによってGal6Pをガラクトースに転化させることと
を含むイン・ビトロ合成経路を提供する。
【0181】
Gal6Pがガラクトースに転化される際に生成するリン酸イオンを、次に、スクロースをG1Pに転化させる上記ステップにリサイクルすることができる。更に、PPFK及びポリリン酸を用いて、SPによるスクロースの加リン酸分解での開裂によって生成するフルクトースからF6Pを生成させることにより、ガラクトース収率を高めることができる。
【0182】
いくつかの実施形態において、ガラクトースの製造方法は、以下のステップ、すなわち、
酵素的加水分解または酸加水分解によって多糖及びオリゴ糖からグルコースを生成させることと、
少なくとも1種の酵素で触媒することによってグルコースをG6Pに転化させることと、
酵素的加水分解または酸加水分解によって多糖及びオリゴ糖からフルクトースを生成させることと、
少なくとも1種の酵素で触媒することによってフルクトースをF6Pに転化させることと
を含む。上記多糖及びオリゴ糖の例は上記に列挙される。
【0183】
他の実施形態において、G6Pは、ポリリン酸グルコキナーゼによりグルコース及びポリリン酸ナトリウムから製造される。
【0184】
本開示は、デンプン、セルロース、スクロース、及びそれらの誘導製品中の多糖ならびにオリゴ糖などの糖のガラクトースへの転化方法を提供する。特定の実施形態において、無細胞酵素カクテルを使用して、デンプン、セルロース、スクロース、及びそれらの誘導製品をガラクトースに転化させるための、人工(非天然)のATPを含まない酵素的経路が提供される。
【0185】
上記に示すように、数種の酵素を用いてデンプンを加水分解し、G1P収率を増加させることができる。かかる酵素としては、イソアミラーゼ、プルラナーゼ、及びα-アミラーゼが挙げられる。コーンスターチはαGPの作用を妨げる多くの分枝を含む。イソアミラーゼを用いてデンプンを脱分枝し、直鎖状のアミロデキストリンを生成させることができる。イソアミラーゼで前処理したデンプンによって、最終生成物中のF6P濃度をより高くすることができる。イソアミラーゼ及びプルラナーゼはα-1,6-グリコシド結合を開裂させ、これにより、α-グルカンホスホリラーゼによってデンプンをより完全に分解することが可能になる。α-アミラーゼはα-1,4-グリコシド結合を開裂させることから、α-アミラーゼを用いてデンプンをフラグメントに分解させて、ガラクトースへの転化をより迅速にし、且つ溶解度を高める。
【0186】
マルトースホスホリラーゼ(MP)を用いて、分解生成物であるマルトースをG1P及びグルコースへと加リン酸分解で開裂させることによって、ガラクトース収率を増加させることができる。あるいは、4-グルカントランスフェラーゼ(4GT)を用いて、分解生成物であるグルコース、マルトース、及びマルトトリオースを、αGPにより加リン酸分解で開裂させてG1Pを生成させることができるより長鎖のマルトオリゴ糖へとリサイクルすることによって、ガラクトース収率を増加させることができる。
【0187】
特定の実施形態において、セルロース及びその誘導製品を、一連のステップを経てガラクトースに転化させることができる。この製造方法は、以下のステップ、すなわち、
セロデキストリンホスホリラーゼ(CDP)及びセロビオースホスホリラーゼ(CBP)でそれぞれ触媒することによって、セロデキストリン及びセロビオースならびに遊離リン酸からG1Pを生成させることと、
PGMで触媒することによってG1PをG6Pに転化させることと、
PGIで触媒することによってG6PをF6Pに転化させることと、
F6PEで触媒することによってF6PをT6Pに転化させることと、
Gal6PIで触媒することによってT6PをGal6Pに転化させることと、
Gal6PPで触媒することによってGal6Pをガラクトースに転化させることと
を含むイン・ビトロ合成経路を提供する。この製造方法においては、リン酸イオンはセロデキストリン及びセロビオースをG1Pに転化させる上記ステップによりリサイクルすることができる。
【0188】
いくつかの実施形態において、ポリリン酸及びポリリン酸グルコキナーゼ(PPGK)を本製造方法に添加し、それにより分解生成物であるグルコースをG6Pにリン酸化することによって、ガラクトースの収率を増加させることができる。
【0189】
他の実施形態において、ガラクトースはグルコースから生成させることができる。この製造方法は、
ポリリン酸グルコキナーゼ(PPGK)で触媒することによってグルコース及びポリリン酸からG6Pを生成させるステップと、
PGIで触媒することによってG6PをF6Pに転化させるステップと、
F6PEで触媒することによってF6PをT6Pに転化させるステップと、
Gal6PIで触媒することによってT6PをGal6Pに転化させるステップと、
Gal6PPで触媒することによってGal6Pをガラクトースに転化させるステップと
を含む。
【0190】
本発明の製造方法は低コストの出発物質を使用し、原料及び生成物の分離に関連するコストを削減することにより製造コストを低減する。デンプン、セルロース、スクロース、及びいくつかのそれらの誘導体は、例えばラクトースよりも安価な原料である。ガラクトースがバイオマスまたはラクトースから製造される場合、収率は本発明の場合よりも低く、ガラクトースをクロマトグラフィーにより他の糖から分離する必要があり、これはより高い製造コストに繋がる。更に、本発明者らの製造方法には動物が含まれない。
【0191】
本発明に係るGal6Pをガラクトースに転化させるステップは、原料の如何にかかわらず不可逆的なホスファターゼ反応である。したがって、ガラクトースは非常に高い収率で生成し、同時にそれに続く生成物の分離コストを効果的に最小限に抑える。
【0192】
細胞による製造方法とは対照的に、本発明は、ガラクトースの無細胞での製造を含み、多くの場合に基質の細胞中への/生成物の細胞外への輸送を減速させる細胞膜を排除することに起因して、比較的に高い反応速度を有する。本発明においてはまた、最終製品が栄養分に富む発酵培地/細胞による代謝産物を含まない。
【0193】
本発明の特定の実施形態は、本明細書に記載のガラクトースの製造方法によって製造されたガラクトースである。
【0194】
フルクトース
【0195】
本発明の一実施形態は、フルクトース6-リン酸ホスファターゼ(F6PP)で触媒することによってフルクトース6-リン酸(F6P)をフルクトースに転化させることを含むフルクトースの製造方法である。
【0196】
F6PPの非限定的な例は、配列番号21に示すアミノ酸配列を有するUniprot ID B8CWV3である。F6PPの例には、上述のUniprot IDに対するアミノ酸配列同一性が、少なくとも25%、少なくとも30%、より好ましくは少なくとも35%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも45%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、更により好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、または少なくとも94%、更に最も好ましくは少なくとも96、97、98、99、または100%である任意の類似体も含まれる。
【0197】
F6Pをフルクトースに転化させるF6PPは、
触媒作用のためのロスマン様フォールドドメインと、
C1キャッピングドメインと、
上記ロスマン様フォールドの第1のβストランド中のDxDシグネチャーと、
上記ロスマン様フォールドの第2のβストランドの末端のThrまたはSerと、
上記ロスマン様フォールドの第3のβストランドのαヘリックスC末端のN末端のLysと、
上記ロスマン様フォールドの第4のβストランドの末端のEDシグネチャーと
を含有することが好ましい。
【0198】
本発明のフルクトースの製造方法はまた、グルコース6-リン酸(G6P)を酵素的にF6Pに転化させるステップも含み、このステップはホスホグルコイソメラーゼ(PGI)によって触媒される。他の実施形態において、本フルクトースの製造方法は、グルコース1-リン酸(G1P)を上記G6Pに転化させるステップを更に含み、このステップはホスホグルコムターゼ(PGM)によって触媒される。更に別の実施形態において、フルクトースの製造方法は、少なくとも1種の酵素によって触媒される、糖を上記G1Pに転化させるステップも含む。
【0199】
したがって、本発明のフルクトースの製造方法は、例えば、以下のステップ、すなわち、
(i)1種または複数種の酵素を用いて糖をグルコース1-リン酸(G1P)に転化させることと、
(ii)ホスホグルコムターゼ(PGM、EC 5.4.2.2)を用いてG1PをG6Pに転化させることと、
(iii)ホスホグルコイソメラーゼ(PGI、EC 5.3.1.9)を用いてG6PをF6Pに転化させることと、
(iv)F6PPを用いてF6Pをフルクトースに転化させることと
を含んでいてもよい。
【0200】
一般的には、開示する製造方法において用いる酵素ユニットの比率は1:1:1:1(αGP:PGM:PGI:F6PP)である。製品収率を最適化するために、これらの比率を任意の数の組み合わせで調整してもよい。例えば、3:1:1:1の比率を用いて、リン酸化中間体の濃度を最大化することができ、これにより、その下流の反応の活性が増加することとなる。逆に、1:1:1:3の比率を用いて、αGPに対するリン酸の供給を確実に維持することができ、これにより、α-1,4-グリコシド結合がより効率的に加リン酸分解で開裂することとなる。例えば3:1:1:3の酵素の比率を用いて反応速度を更に高めることができる。したがって、以下に説明する他の任意選択の酵素を含む酵素の比率を変化させて、フルクトース生成の効率を高めることができる。例えば、ある特定の酵素が、他の酵素の量に対して約2倍、3倍、4倍、5倍等の量で存在していてもよい。
【0201】
本製造方法の重要な利点の1つは、複数のプロセスステップを単一のバイオリアクターまたは反応槽中で実施することができることである。あるいは、上記複数のステップは、直列に配置された複数のバイオリアクターまたは反応槽中で実施することもできる。
【0202】
特に全てのプロセスステップが単一のバイオリアクターまたは反応槽中で実施される場合、F6Pの脱リン酸化によって生成するリン酸イオンを、次に、糖をG1Pに転化させる上記プロセスステップにリサイクルすることができる。上記開示する製造方法においてリン酸をリサイクルすることができることにより、非化学量論量のリン酸を用いることが可能になり、これにより反応液中のリン酸濃度が低く保たれる。このことにより、本製造方法の全体的な経路及び全体を通した速度が影響を受けるが、個々の酵素の活性が制限されることはなく、本フルクトースの製造方法が全体的に効率的になることができる。
【0203】
例えば、反応液中のリン酸濃度は、約0.1mM~約300mM、約0.1mM~約150mM、約1mM~約50mM、好ましくは約5mM~約50mM、またはより好ましくは約10mM~約50mMの範囲であってよい。例えば、上記反応液中のリン酸濃度は、約0.1mM、約0.5mM、約1mM、約1.5mM、約2mM、約2.5mM、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約15mM、約20mM、約25mM、約30mM、約35mM、約40mM、約45mM、約50mM、または約55mMであってよい。
【0204】
したがって、リン酸濃度が低いことで、総リン酸量が少なくなることにより製造コストが減少し、延いてはリン酸除去のコストが低下する。また、リン酸濃度が低いと高濃度の遊離リン酸によるF6PPの阻害も防止され、リン酸による汚染の可能性も低下する。
【0205】
更に、本明細書に開示の製造方法は、リン酸の供給源としてATPを添加することなく、すなわちATPなしで実施することができる。本製造方法は、NAD(P)(H)についても、これを添加しなければならないということなしに、すなわちNAD(P)(H)なしで実施することができる。他の利点としては、開示するフルクトースの製造方法の少なくとも1のステップが、エネルギー的に有利な化学反応を含むという事実も挙げられる。
【0206】
フルクトースをスクロースから、F6P中間体を介して製造することもできる。この製造方法は、以下の酵素的ステップ、すなわち、
スクロースホスホリラーゼ(SP)で触媒することによってスクロース及び遊離リン酸からG1Pを生成させることと、
PGMで触媒することによってG1PをG6Pに転化させることと、
PGIで触媒することによってG6PをF6Pに転化させることと、
F6PPで触媒することによってF6Pをフルクトースに転化させることと
を含む、イン・ビトロ合成経路を提供する。例示的な酵素経路を
図5に示す。
【0207】
F6Pがフルクトースに転化される際に生成するリン酸イオンを、次に、スクロースをG1Pに転化させるステップにリサイクルすることができる。更に、PPFK及びポリリン酸を用いて、SPによるスクロースの加リン酸分解での開裂によって生成するフルクトースからF6Pを生成させることにより、フルクトース収率を高めることができる。
【0208】
いくつかの実施形態において、フルクトースの製造方法は、以下のステップ、すなわち、
酵素的加水分解または酸加水分解によって多糖及びオリゴ糖からグルコースを生成させることと、
少なくとも1種の酵素で触媒することによってグルコースをG6Pに転化させることと、
酵素的加水分解または酸加水分解によって多糖及びオリゴ糖からフルクトースを生成させることと、
少なくとも1種の酵素で触媒することによってフルクトースをF6Pに転化させることと
を含む。上記多糖及びオリゴ糖の例は上記に列挙される。
【0209】
他の実施形態において、G6Pは、ポリリン酸グルコキナーゼによりグルコース及びポリリン酸ナトリウムから製造される。
【0210】
本開示は、デンプン、セルロース、スクロース、及びそれらの誘導製品中の多糖ならびにオリゴ糖などの糖のフルクトースへの転化方法を提供する。特定の実施形態において、無細胞酵素カクテルを使用して、デンプン、セルロース、スクロース、及びそれらの誘導製品をフルクトースに転化させるための、人工(非天然)のATPを含まない酵素的経路が提供される。
【0211】
上記に示すように、数種の酵素を用いてデンプンを加水分解し、G1P収率を増加させることができる。かかる酵素としては、イソアミラーゼ、プルラナーゼ、及びα-アミラーゼが挙げられる。コーンスターチはαGPの作用を妨げる多くの分枝を含む。イソアミラーゼを用いてデンプンを脱分枝し、直鎖状のアミロデキストリンを生成させることができる。イソアミラーゼで前処理したデンプンによって、最終生成物中のF6P濃度をより高くすることができる。イソアミラーゼ及びプルラナーゼはα-1,6-グリコシド結合を開裂させ、これにより、α-グルカンホスホリラーゼによってデンプンをより完全に分解することが可能になる。α-アミラーゼはα-1,4-グリコシド結合を開裂させることから、α-アミラーゼを用いてデンプンをフラグメントに分解させて、フルクトースへの転化をより迅速にし、且つ溶解度を高める。
【0212】
マルトースホスホリラーゼ(MP)を用いて、分解生成物であるマルトースをG1P及びグルコースへと加リン酸分解で開裂させることによって、フルクトース収率を増加させることができる。あるいは、4-グルカントランスフェラーゼ(4GT)を用いて、分解生成物であるグルコース、マルトース、及びマルトトリオースを、αGPにより加リン酸分解で開裂させてG1Pを生成させることができるより長鎖のマルトオリゴ糖へとリサイクルすることによって、フルクトース収率を増加させることができる。
【0213】
特定の実施形態において、セルロース及びその誘導製品を、一連のステップを経てフルクトースに転化させることができる。この製造方法は、以下のステップ、すなわち、
セロデキストリンホスホリラーゼ(CDP)及びセロビオースホスホリラーゼ(CBP)でそれぞれ触媒することによって、セロデキストリン及びセロビオースならびに遊離リン酸からG1Pを生成させることと、
PGMで触媒することによってG1PをG6Pに転化させることと、
PGIで触媒することによってG6PをF6Pに転化させることと、
F6PPで触媒することによってF6Pをフルクトースに転化させることと
を含むイン・ビトロ合成経路を提供する。この製造方法においては、リン酸イオンはセロデキストリン及びセロビオースをG1Pに転化させる上記ステップによりリサイクルすることができる。
【0214】
いくつかの実施形態において、ポリリン酸及びポリリン酸グルコキナーゼ(PPGK)を本製造方法に添加し、それにより分解生成物であるグルコースをG6Pにリン酸化することによって、フルクトースの収率を増加させることができる。
【0215】
他の実施形態において、フルクトースはグルコースから生成させることができる。この製造方法は、
ポリリン酸グルコキナーゼ(PPGK)で触媒することによってグルコース及びポリリン酸からG6Pを生成させるステップと、
PGIで触媒することによってG6PをF6Pに転化させるステップと、
F6PPで触媒することによってF6Pをフルクトースに転化させるステップと
を含む。
【0216】
本発明の製造方法は低コストの出発物質を使用し、原料及び生成物の分離に関連するコストを削減することにより製造コストを低減する。デンプン、セルロース、スクロース、及びいくつかのそれらの誘導体は、例えばラクトースよりも安価な原料である。フルクトースがバイオマスまたはラクトースから製造される場合、収率は本発明の場合よりも低く、フルクトースをクロマトグラフィーにより他の糖から分離する必要があり、これはより高い製造コストに繋がる。更に、本発明者らの製造方法には動物が含まれない。
【0217】
本発明に係るF6Pをフルクトースに転化させるステップは、原料の如何にかかわらず不可逆的なホスファターゼ反応である。したがって、フルクトースは非常に高い収率で生成し、同時にそれに続く生成物の分離コストを効果的に最小限に抑える。
【0218】
細胞による製造方法とは対照的に、本発明は、フルクトースの無細胞での製造を含み、多くの場合に基質の細胞中への/生成物の細胞外への輸送を減速させる細胞膜を排除することに起因して、比較的に高い反応速度を有する。本発明においてはまた、最終製品が栄養分に富む発酵培地/細胞による代謝産物を含まない。
【0219】
本発明の特定の実施形態は、本明細書に記載のフルクトースの製造方法によって製造されたフルクトースである。
【0220】
アルトロース
【0221】
本発明の一実施形態は、
プシコース6-リン酸3-エピメラーゼ(P6PE)で触媒することによってフルクトース6-リン酸(F6P)をプシコース6-リン酸(P6P)に転化させることと、
アルトロース6-リン酸イソメラーゼ(Alt6PI)で触媒することによってP6Pをアルトロース6-リン酸(Alt6P)に転化させることと、
アルトロース6-リン酸ホスファターゼで触媒することによって上記生成したAlt6Pをアルトロースに転化させることと
を含むアルトロースの製造方法である。
【0222】
本発明のアルトロースの製造方法は、グルコース6-リン酸(G6P)を上記F6Pに酵素的に転化させるステップも含み、このステップはホスホグルコイソメラーゼ(PGI)によって触媒される。他の実施形態において、本アルトロースの製造方法は、グルコース1-リン酸(G1P)を上記G6Pに転化させるステップを更に含み、このステップはホスホグルコムターゼ(PGM)によって触媒される。更に別の実施形態において、アルトロースの製造方法は、少なくとも1種の酵素によって触媒される糖を上記G1Pに転化させるステップも含む。
【0223】
したがって、本発明のアルトロースの製造方法は、例えば、以下のステップ、すなわち、
(i)1種または複数種の酵素を用いて糖をグルコース1-リン酸(G1P)に転化させることと、
(ii)ホスホグルコムターゼ(PGM、EC 5.4.2.2)を用いてG1PをG6Pに転化させることと、
(iii)ホスホグルコイソメラーゼ(PGI、EC 5.3.1.9)を用いてG6PをF6Pに転化させることと、
(iv)P6PEを介してF6PをP6Pに転化させることと、
(v)Alt6PIを介してP6PをAlt6Pに転化させることと、
(vi)Alt6PPを介してAlt6Pをアルトロースに転化させることと
を含んでいてもよい。上記糖がデンプンである場合の本酵素的製造方法の例を
図1に示す。
【0224】
一般的には、開示する製造方法において用いる酵素ユニットの比率は1:1:1:1:1:1(αGP:PGM:PGI:P6PE:Alt6PI:Alt6PP)である。製品収率を最適化するために、これらの比率を任意の数の組み合わせで調整してもよい。例えば、3:1:1:1:1:1の比率を用いて、リン酸化中間体の濃度を最大化することができ、これにより、その下流の反応の活性が増加することとなる。逆に、1:1:1:1:1:3の比率を用いて、αGPに対するリン酸の供給を確実に維持することができ、これにより、α-1,4-グリコシド結合がより効率的に加リン酸分解で開裂することとなる。例えば3:1:1:1:1:3の酵素の比率を用いて反応速度を更に高めることができる。したがって、以下に説明する他の任意選択の酵素を含む酵素の比率を変化させて、アルトース生成の効率を高めることができる。例えば、ある特定の酵素が、他の酵素の量に対して約2倍、3倍、4倍、5倍等の量で存在していてもよい。
【0225】
特に全てのプロセスステップが単一のバイオリアクターまたは反応槽中で実施される場合、Alt6Pの脱リン酸化によって生成するリン酸イオンを、次に、糖をG1Pに転化させるプロセスステップにリサイクルすることができる。上記開示する製造方法においてリン酸をリサイクルすることができることにより、非化学量論量のリン酸を用いることが可能になり、これにより反応液中のリン酸濃度が低く保たれる。このことにより、本製造方法の全体的な経路及び全体を通した速度が影響を受けるが、個々の酵素の活性が制限されることはなく、本アルトースの製造方法が全体的に効率的になることができる。
【0226】
例えば、反応液中のリン酸濃度は、約0.1mM~約300mM、約0.1mM~約150mM、約1mM~約50mM、好ましくは約5mM~約50mM、またはより好ましくは約10mM~約50mMの範囲であってよい。例えば、上記反応液中のリン酸濃度は、約0.1mM、約0.5mM、約1mM、約1.5mM、約2mM、約2.5mM、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約15mM、約20mM、約25mM、約30mM、約35mM、約40mM、約45mM、約50mM、または約55mMであってよい。
【0227】
したがって、リン酸濃度が低いことで、総リン酸量が少なくなることにより製造コストが減少し、延いてはリン酸除去のコストが低下する。また、リン酸濃度が低いと高濃度の遊離リン酸によるAlt6PPの阻害も防止され、リン酸による汚染の可能性も低下する。
【0228】
更に、本明細書に開示の製造方法は、リン酸の供給源としてATPを添加することなく、すなわちATPなしで実施することができる。本製造方法は、NAD(P)(H)についても、これを添加しなければならないということなしに、すなわちNAD(P)(H)なしで実施することができる。他の利点としては、開示するアルトロースの製造方法の少なくとも1のステップが、エネルギー的に有利な反応を含むという事実も挙げられる。
【0229】
アルトロースをフルクトースから製造することもできる。例えば、この製造方法は、
ポリリン酸フルクトキナーゼ(PPFK)で触媒することによってフルクトース及びポリリン酸からF6Pを生成させることと、
P6PEで触媒することによってF6PをP6Pに転化させることと、
Alt6PIで触媒することによってP6PをAlt6Pに転化させることと、
Alt6PPで触媒することによってAlt6Pをアルトロースに転化させることと
を含む。上記フルクトースは、例えば、スクロースの酵素的転化によって製造することができる。
【0230】
アルトロースはスクロースから製造することもできる。この製造方法は、以下の酵素的ステップ、すなわち、
スクロースホスホリラーゼ(SP)で触媒することによってスクロース及び遊離リン酸からG1Pを生成させることと、
PGMで触媒することによってG1PをG6Pに転化させることと、
PGIで触媒することによってG6PをF6Pに転化させることと、
F6PEで触媒することによってF6PをP6Pに転化させることと、
Alt6PIで触媒することによってP6PをAlt6Pに転化させることと、
Alt6PPで触媒することによってAlt6Pをアルトロースに転化させることと
を含むイン・ビトロ合成経路を提供する。
【0231】
Alt6Pがアルトロースに転化される際に生成するリン酸イオンを、次に、スクロースをG1Pに転化させるステップにリサイクルすることができる。更に、PPFK及びポリリン酸を用いて、SPによるスクロースの加リン酸分解での開裂によって生成するフルクトースからF6Pを生成させることにより、アルトロース収率を高めることができる。
【0232】
特定の実施形態において、アルトロースの製造方法は、以下のステップ、すなわち、
酵素的加水分解または酸加水分解により多糖及びオリゴ糖からグルコースを生成させることと、
少なくとも1種の酵素で触媒することによってグルコースをG6Pに転化させることと、
酵素的加水分解または酸加水分解により多糖及びオリゴ糖からフルクトースを生成させることと、
少なくとも1種の酵素で触媒することによってフルクトースをF6Pに転化させることと
を含む。上記多糖及びオリゴ糖の例は上記に列挙される。
【0233】
他の実施形態において、G6Pは、ポリリン酸グルコキナーゼによりグルコース及びポリリン酸ナトリウムから製造される。
【0234】
数種の酵素を用いてデンプンを加水分解し、G1P収率を増加させることができる。かかる酵素としては、イソアミラーゼ、プルラナーゼ、及びα-アミラーゼが挙げられる。コーンスターチはαGPの作用を妨げる多くの分枝を含む。イソアミラーゼを用いてデンプンを脱分枝し、直鎖状のアミロデキストリンを生成させることができる。イソアミラーゼで前処理したデンプンによって、最終生成物中のF6P濃度をより高くすることができる。イソアミラーゼ及びプルラナーゼはα-1,6-グリコシド結合を開裂させ、これにより、α-グルカンホスホリラーゼによってデンプンをより完全に分解することが可能になる。α-アミラーゼはα-1,4-グリコシド結合を開裂させることから、α-アミラーゼを用いてデンプンをフラグメントに分解させて、アルトロースへの転化をより迅速にし、且つ溶解度を高める。
【0235】
マルトースホスホリラーゼ(MP)を用いて、分解生成物であるマルトースをG1P及びグルコースへと加リン酸分解で開裂させることによって、アルトロース収率を増加させることができる。あるいは、4-グルカントランスフェラーゼ(4GT)を用いて、分解生成物であるグルコース、マルトース、及びマルトトリオースを、αGPにより加リン酸分解で開裂させてG1Pを生成させることができるより長鎖のマルトオリゴ糖へとリサイクルすることによって、アルトロース収率を増加させることができる。
【0236】
特定の実施形態において、セルロース及びその誘導製品を、一連のステップを経てアルトロースに転化させることができる。この製造方法は、以下のステップ、すなわち、
セロデキストリンホスホリラーゼ(CDP)及びセロビオースホスホリラーゼ(CBP)でそれぞれ触媒することによって、セロデキストリン及びセロビオースならびに遊離リン酸からG1Pを生成させることと、
PGMで触媒することによってG1PをG6Pに転化させることと、
PGIで触媒することによってG6PをF6Pに転化させることと、
P6PEで触媒することによってF6PをP6Pに転化させることと、
Alt6PIで触媒することによってP6PをAlt6Pに転化させることと、
Alt6PPで触媒することによってAlt6Pをアルトロースに転化させることと
を含むイン・ビトロ合成経路を提供する。この製造方法においては、リン酸イオンはセロデキストリン及びセロビオースをG1Pに転化させる上記ステップによりリサイクルすることができる。
【0237】
数種の酵素を用いて、固体セルロースを水溶性セロデキストリン及びセロビオースに加水分解してもよい。かかる酵素としては、エンドグルカナーゼ及びセロビオヒドロラーゼが挙げられるが、β-グルコシダーゼ(セロビアーゼ)は含まれない。
【0238】
いくつかの実施形態において、ポリリン酸及びポリリン酸グルコキナーゼ(PPGK)を本製造方法に添加し、それにより分解生成物であるグルコースをG6Pにリン酸化することによって、アルトロースの収率を増加させることができる。
【0239】
アルトロースをグルコースから製造してもよい。この製造方法は、
ポリリン酸グルコキナーゼ(PPGK)で触媒することによってグルコース及びポリリン酸からG6Pを生成させるステップと、
PGIで触媒することによってG6PをF6Pに転化させるステップと、
P6PEで触媒することによってF6PをP6Pに転化させるステップと、
A6PIで触媒することによってP6PをAlt6Pに転化させるステップと、
Alt6PPで触媒することによってAlt6Pをアルトロースに転化させるステップと
を含む。
【0240】
本発明のアルトロースの製造方法は低コストの出発物質を使用し、原料及び生成物の分離に関連するコストを削減することにより製造コストを低減する。デンプン、セルロース、スクロース、及びいくつかのそれらの誘導体は、例えばフルクトースよりも安価な原料である。アルトロースがプシコースから製造される場合、収率は本発明の場合よりも低く、アルトロースをクロマトグラフィーによりプシコースから分離する必要があり、これはより高い製造コストに繋がる。
【0241】
また、本発明に係るAlt6Pをアルトロースに転化させるステップは、原料の如何にかかわらず不可逆的なホスファターゼ反応である。したがって、アルトロースは非常に高い収率で生成し、同時にそれに続く生成物の分離コストを効果的に最小限に抑える。
【0242】
細胞による製造方法とは対照的に、本発明は、アルトロースの無細胞での製造を含み、多くの場合に基質の細胞中への/生成物の細胞外への輸送を減速させる細胞膜を排除することに起因して、比較的に高い反応速度を有する。本発明においてはまた、最終製品が栄養分に富む発酵培地/細胞による代謝産物を含まない。
【0243】
本発明の特定の実施形態は、本明細書に記載のアルトロースの製造方法によって製造されたアルトロースである。
【0244】
タロース
【0245】
本発明の一実施形態は、
フルクトース6-リン酸4-エピメラーゼ(F6PE)で触媒することによってフルクトース6-リン酸(F6P)をタガトース6-リン酸(T6P)に転化させることと、
タロース6-リン酸イソメラーゼ(Tal6PI)で触媒することによってT6Pをタロース6-リン酸(Tal6P)に転化させることと、
タロース6-リン酸ホスファターゼ(Tal6PP)で触媒することによって上記生成したTal6Pをタロースに転化させることと
を含むタロースの製造方法である。
【0246】
F6PEの例としては、以下のタンパク質、すなわち、Uniprot ID E8N0N6、E4SEH3、I0I507、H1XRG1、及びB5YBD7が挙げられるが、これらに限定はされない。Uniprot ID E8N0N6及びI0I507は共にF6PE反応を触媒し、27%のアミノ酸配列同一性を共有する。したがって、F6PEの例には、上述のUniprot IDのいずれかに対するアミノ酸配列同一性が、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%である任意の類似体も含まれる。
【0247】
本発明のタロースの製造方法は、グルコース6-リン酸(G6P)を上記F6Pに酵素的に転化させるステップも含み、このステップはホスホグルコイソメラーゼ(PGI)によって触媒される。他の実施形態において、本タロースの製造方法は、グルコース1-リン酸(G1P)を上記G6Pに転化させるステップを更に含み、このステップはホスホグルコムターゼ(PGM)によって触媒される。更に別の実施形態において、タロースの製造方法は、少なくとも1種の酵素によって触媒される糖を上記G1Pに転化させるステップも含む。
【0248】
したがって、本発明のタロースの製造方法は、例えば、以下のステップ、すなわち、
(i)1種または複数種の酵素を用いて糖をグルコース1-リン酸(G1P)に転化させることと、
(ii)ホスホグルコムターゼ(PGM、EC 5.4.2.2)を用いてG1PをG6Pに転化させることと、
(iii)ホスホグルコイソメラーゼ(PGI、EC 5.3.1.9)を用いてG6PをF6Pに転化させることと、
(iv)P6PEを介してF6PをT6Pに転化させることと、
(v)Tal6PI(EC 5.3.1.26)を介してT6PをTal6Pに転化させることと、
(vi)Tal6PPを介してTal6Pをタロースに転化させることと
を含んでいてもよい。上記糖がデンプンである場合の本製造方法の例を
図3に示す。
【0249】
一般的には、開示する製造方法において用いる酵素ユニットの比率は1:1:1:1:1:1(αGP:PGM:PGI:F6PE:Tal6PI:Tal6PP)である。製品収率を最適化するために、これらの比率を任意の数の組み合わせで調整してもよい。例えば、3:1:1:1:1:1の比率を用いて、リン酸化中間体の濃度を最大化することができ、これにより、その下流の反応の活性が増加することとなる。逆に、1:1:1:1:1:3の比率を用いて、αGPに対するリン酸の供給を確実に維持することができ、これにより、α-1,4-グリコシド結合がより効率的に加リン酸分解で開裂することとなる。例えば3:1:1:1:1:3の酵素の比率を用いて反応速度を更に高めることができる。したがって、以下に説明する他の任意選択の酵素を含む酵素の比率を変化させて、タロース生成の効率を高めることができる。例えば、ある特定の酵素が、他の酵素の量に対して約2倍、3倍、4倍、5倍等の量で存在していてもよい。
【0250】
本製造方法の重要な利点の1つは、複数のプロセスステップを単一のバイオリアクターまたは反応槽中で実施することができることである。あるいは、上記複数のステップは、直列に配置された複数のバイオリアクターまたは反応槽中で実施することもできる。
【0251】
特に全てのプロセスステップが単一のバイオリアクターまたは反応槽中で実施される場合、Tal6Pの脱リン酸化によって生成するリン酸イオンを、次に、糖をG1Pに転化させるプロセスステップにリサイクルすることができる。上記開示する製造方法においてリン酸をリサイクルすることができることにより、非化学量論量のリン酸を用いることが可能になり、これにより反応液中のリン酸濃度が低く保たれる。このことにより、本製造方法の全体的な経路及び全体を通した速度が影響を受けるが、個々の酵素の活性が制限されることはなく、本タロースの製造方法が全体的に効率的になることができる。
【0252】
例えば、反応液中のリン酸濃度は、約0.1mM~約300mM、約0.1mM~約150mM、約1mM~約50mM、好ましくは約5mM~約50mM、またはより好ましくは約10mM~約50mMの範囲であってよい。例えば、上記反応液中のリン酸濃度は、約0.1mM、約0.5mM、約1mM、約1.5mM、約2mM、約2.5mM、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約15mM、約20mM、約25mM、約30mM、約35mM、約40mM、約45mM、約50mM、または約55mMであってよい。
【0253】
したがって、リン酸濃度が低いことで、総リン酸量が少なくなることにより製造コストが減少し、延いてはリン酸除去のコストが低下する。また、リン酸濃度が低いと高濃度の遊離リン酸によるTal6PPの阻害も防止され、リン酸による汚染の可能性も低下する。
【0254】
更に、本明細書に開示の製造方法は、リン酸の供給源としてATPを添加することなく、すなわちATPなしで実施することができる。本製造方法は、NAD(P)(H)についても、これを添加しなければならないということなしに、すなわちNAD(P)(H)なしで実施することができる。他の利点としては、開示するタロースの製造方法の少なくとも1のステップが、エネルギー的に有利な反応を含むという事実も挙げられる。
【0255】
タロースをフルクトースから製造することもできる。例えば、この製造方法は、
ポリリン酸フルクトキナーゼ(PPFK)で触媒することによってフルクトース及びポリリン酸からF6Pを生成させることと、
P6PEで触媒することによってF6PをP6Pに転化させることと、
Tal6PIで触媒することによってP6PをTal6Pに転化させることと、
Tal6PPで触媒することによってTal6Pをタロースに転化させることと
を含む。上記フルクトースは、例えば、スクロースの酵素的転化によって製造することができる。
【0256】
タロースはスクロースから製造することができる。この製造方法は、以下の酵素的ステップ、すなわち、
スクロースホスホリラーゼ(SP)で触媒することによってスクロース及び遊離リン酸からG1Pを生成させることと、
PGMで触媒することによってG1PをG6Pに転化させることと、
PGIで触媒することによってG6PをF6Pに転化させることと、
F6PEで触媒することによってF6PをT6Pに転化させることと、
Tal6PIで触媒することによってT6PをTal6Pに転化させることと、
Tal6PPで触媒することによってTal6Pをタロースに転化させることと
を含むイン・ビトロ合成経路を提供する。
【0257】
Tal6Pがタロースに転化される際に生成するリン酸イオンを、次に、スクロースをG1Pに転化させるステップにリサイクルすることができる。更に、PPFK及びポリリン酸を用いて、SPによるスクロースの加リン酸分解での開裂によって生成するフルクトースからF6Pを生成させることにより、タロース収率を高めることができる。
【0258】
いくつかの実施形態において、タロースの製造方法は、以下のステップ、すなわち、
酵素的加水分解または酸加水分解により多糖及びオリゴ糖からグルコースを生成させることと、
少なくとも1種の酵素で触媒することによってグルコースをG6Pに転化させることと、
酵素的加水分解または酸加水分解により多糖及びオリゴ糖からフルクトースを生成させることと、
少なくとも1種の酵素で触媒することによってフルクトースをF6Pに転化させることと
を含む。上記多糖及びオリゴ糖の例は上記に列挙される。
【0259】
他の実施形態において、G6Pは、ポリリン酸グルコキナーゼによりグルコース及びポリリン酸ナトリウムから製造される。
【0260】
本開示は、デンプン、セルロース、スクロース、及びそれらの誘導製品中の多糖ならびにオリゴ糖などの糖のタロースへの転化方法を提供する。特定の実施形態において、無細胞酵素カクテルを使用して、デンプン、セルロース、スクロース、及びそれらの誘導製品をタロースに転化させるための、人工(非天然)のATPを含まない酵素的経路が提供される。
【0261】
上記に示すように、数種の酵素を用いてデンプンを加水分解し、G1P収率を増加させることができる。かかる酵素としては、イソアミラーゼ、プルラナーゼ、及びα-アミラーゼが挙げられる。コーンスターチはαGPの作用を妨げる多くの分枝を含む。イソアミラーゼを用いてデンプンを脱分枝し、直鎖状のアミロデキストリンを生成させることができる。イソアミラーゼで前処理したデンプンによって、最終生成物中のF6P濃度をより高くすることができる。イソアミラーゼ及びプルラナーゼはα-1,6-グリコシド結合を開裂させ、これにより、α-グルカンホスホリラーゼによってデンプンをより完全に分解することが可能になる。α-アミラーゼはα-1,4-グリコシド結合を開裂させることから、α-アミラーゼを用いてデンプンをフラグメントに分解させて、タロースへの転化をより迅速にし、且つ溶解度を高める。
【0262】
マルトースホスホリラーゼ(MP)を用いて、分解生成物であるマルトースをG1P及びグルコースへと加リン酸分解で開裂させることによって、タロース収率を増加させることができる。あるいは、4-グルカントランスフェラーゼ(4GT)を用いて、分解生成物であるグルコース、マルトース、及びマルトトリオースを、αGPにより加リン酸分解で開裂させてG1Pを生成させることができるより長鎖のマルトオリゴ糖へとリサイクルすることによって、タロース収率を増加させることができる。
【0263】
特定の実施形態において、セルロース及びその誘導製品を、一連のステップを経てタロースに転化させることができる。この製造方法は、以下のステップ、すなわち、
セロデキストリンホスホリラーゼ(CDP)及びセロビオースホスホリラーゼ(CBP)でそれぞれ触媒することによって、セロデキストリン及びセロビオースならびに遊離リン酸からG1Pを生成させることと、
PGMで触媒することによってG1PをG6Pに転化させることと、
PGIで触媒することによってG6PをF6Pに転化させることと、
P6PEで触媒することによってF6PをT6Pに転化させることと、
Tal6PIで触媒することによってT6PをTal6Pに転化させることと、
Tal6PPで触媒することによってTal6Pをタロースに転化させることと
を含むイン・ビトロ合成経路を提供する。この製造方法においては、リン酸イオンはセロデキストリン及びセロビオースをG1Pに転化させる上記ステップによりリサイクルすることができる。
【0264】
いくつかの実施形態において、ポリリン酸及びポリリン酸グルコキナーゼ(PPGK)を本製造方法に添加し、それにより分解生成物であるグルコースをG6Pにリン酸化することによって、タロースの収率を増加させることができる。
【0265】
他の実施形態において、タロースをグルコースから生成させることができる。この製造方法は、
ポリリン酸グルコキナーゼ(PPGK)で触媒することによってグルコース及びポリリン酸からG6Pを生成させるステップと、
PGIで触媒することによってG6PをF6Pに転化させるステップと、
P6PEで触媒することによってF6PをT6Pに転化させるステップと、
Tal6PIで触媒することによってT6PをTal6Pに転化させるステップと、
Tal6PPで触媒することによってTal6Pをタロースに転化させるステップと
を含む。
【0266】
本発明の製造方法は低コストの出発物質を使用し、原料及び生成物の分離に関連するコストを削減することにより製造コストを低減する。デンプン、セルロース、スクロース、及びいくつかのそれらの誘導体は、例えばラクトースよりも安価な原料である。タロースがバイオマスまたはラクトースから製造される場合、収率は本発明の場合よりも低く、タロースをクロマトグラフィーにより他の糖から分離する必要があり、これはより高い製造コストに繋がる。更に、本発明者らの製造方法には動物が含まれない。
【0267】
本発明に係るTal6Pをタロースに転化させるステップは、原料の如何にかかわらず不可逆的なホスファターゼ反応である。したがって、タロースは非常に高い収率で生成し、同時にそれに続く生成物の分離コストを効果的に最小限に抑える。
【0268】
細胞による製造方法とは対照的に、本発明は、タロースの無細胞での製造を含み、多くの場合に基質の細胞中への/生成物の細胞外への輸送を減速させる細胞膜を排除することに起因して、比較的に高い反応速度を有する。本発明においてはまた、最終製品が栄養分に富む発酵培地/細胞による代謝産物を含まない。
【0269】
本発明の特定の実施形態は、本明細書に記載のタロースの製造方法によって製造されたタロースである。
【0270】
ソルボース
【0271】
本発明の一実施形態は、
フルクトース6-リン酸4-エピメラーゼ(F6PE)で触媒することによってフルクトース6-リン酸(F6P)をタガトース6-リン酸(T6P)に転化させることと、
ソルボース6-リン酸エピメラーゼ(S6PE)で触媒することによってT6Pをソルボース6-リン酸(S6P)に転化させることと、
ソルボース6-リン酸ホスファターゼ(S6PP)で触媒することによって上記生成したS6Pをソルボースに転化させることと
を含むソルボースの製造方法である。
【0272】
F6PEの例としては、以下のタンパク質、すなわち、Uniprot ID E8N0N6、E4SEH3、I0I507、H1XRG1、及びB5YBD7が挙げられるが、これらに限定はされない。Uniprot ID E8N0N6及びI0I507は共にF6PE反応を触媒し、27%のアミノ酸配列同一性を共有する。したがって、F6PEの例には、上述のUniprot IDのいずれかに対するアミノ酸配列同一性が、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%である任意の類似体も含まれる。
【0273】
本発明のソルボースの製造方法は、グルコース6-リン酸(G6P)を上記F6Pに酵素的に転化させるステップも含み、このステップはホスホグルコイソメラーゼ(PGI)によって触媒される。他の実施形態において、本ソルボースの製造方法は、グルコース1-リン酸(G1P)を上記G6Pに転化させるステップを更に含み、このステップはホスホグルコムターゼ(PGM)によって触媒される。更に別の実施形態において、ソルボースの製造方法は、少なくとも1種の酵素によって触媒される糖を上記G1Pに転化させるステップも含む。
【0274】
したがって、本発明のソルボースの製造方法は、例えば、以下のステップ、すなわち、
(i)1種または複数種の酵素を用いて糖をグルコース1-リン酸(G1P)に転化させることと、
(ii)ホスホグルコムターゼ(PGM、EC 5.4.2.2)を用いてG1PをG6Pに転化させることと、
(iii)ホスホグルコイソメラーゼ(PGI、EC 5.3.1.9)を用いてG6PをF6Pに転化させることと、
(iv)P6PEを介してF6PをT6Pに転化させることと、
(v)S6PE(EC 5.3.1.26)を介してT6PをS6Pに転化させることと、
(vi)S6PPを介してS6Pをソルボースに転化させることと
を含んでいてもよい。上記糖がデンプンである場合の本製造方法の例を
図3に示す。
【0275】
一般的には、開示する製造方法において用いる酵素ユニットの比率は1:1:1:1:1:1(αGP:PGM:PGI:F6PE:S6PE:S6PP)である。製品収率を最適化するために、これらの比率を任意の数の組み合わせで調整してもよい。例えば、3:1:1:1:1:1の比率を用いて、リン酸化中間体の濃度を最大化することができ、これにより、その下流の反応の活性が増加することとなる。逆に、1:1:1:1:1:3の比率を用いて、αGPに対するリン酸の供給を確実に維持することができ、これにより、α-1,4-グリコシド結合がより効率的に加リン酸分解で開裂することとなる。例えば3:1:1:1:1:3の酵素の比率を用いて反応速度を更に高めることができる。したがって、以下に説明する他の任意選択の酵素を含む酵素の比率を変化させて、ソルボース生成の効率を高めることができる。例えば、ある特定の酵素が、他の酵素の量に対して約2倍、3倍、4倍、5倍等の量で存在していてもよい。
【0276】
本製造方法の重要な利点の1つは、複数のプロセスステップを単一のバイオリアクターまたは反応槽中で実施することができることである。あるいは、上記複数のステップは、直列に配置された複数のバイオリアクターまたは反応槽中で実施することもできる。
【0277】
特に全てのプロセスステップが単一のバイオリアクターまたは反応槽中で実施される場合、S6Pの脱リン酸化によって生成するリン酸イオンを、次に、糖をG1Pに転化させるプロセスステップにリサイクルすることができる。上記開示する製造方法においてリン酸をリサイクルすることができることにより、非化学量論量のリン酸を用いることが可能になり、これにより反応液中のリン酸濃度が低く保たれる。このことにより、本製造方法の全体的な経路及び全体を通した速度が影響を受けるが、個々の酵素の活性が制限されることはなく、本ソルボースの製造方法が全体的に効率的になることができる。
【0278】
例えば、反応液中のリン酸濃度は、約0.1mM~約300mM、約0.1mM~約150mM、約1mM~約50mM、好ましくは約5mM~約50mM、またはより好ましくは約10mM~約50mMの範囲であってよい。例えば、上記反応液中のリン酸濃度は、約0.1mM、約0.5mM、約1mM、約1.5mM、約2mM、約2.5mM、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約15mM、約20mM、約25mM、約30mM、約35mM、約40mM、約45mM、約50mM、または約55mMであってよい。
【0279】
したがって、リン酸濃度が低いことで、総リン酸量が少なくなることにより製造コストが減少し、延いてはリン酸除去のコストが低下する。また、リン酸濃度が低いと高濃度の遊離リン酸によるS6PPの阻害も防止され、リン酸による汚染の可能性も低下する。
【0280】
更に、本明細書に開示の製造方法は、リン酸の供給源としてATPを添加することなく、すなわちATPなしで実施することができる。本製造方法は、NAD(P)(H)についても、これを添加しなければならないということなしに、すなわちNAD(P)(H)なしで実施することができる。他の利点としては、開示するソルボースの製造方法の少なくとも1のステップが、エネルギー的に有利な反応を含むという事実も挙げられる。
【0281】
ソルボースをフルクトースから製造することもできる。例えば、この製造方法は、
ポリリン酸フルクトキナーゼ(PPFK)で触媒することによってフルクトース及びポリリン酸からF6Pを生成させることと、
F6PEで触媒することによってF6PをT6Pに転化させることと、
S6PEで触媒することによってT6PをS6Pに転化させることと、
S6PPで触媒することによってS6Pをソルボースに転化させることと
を含む。上記フルクトースは、例えば、スクロースの酵素的転化によって製造することができる。
【0282】
ソルボースはスクロースから製造することができる。この製造方法は、以下の酵素的ステップ、すなわち、
スクロースホスホリラーゼ(SP)で触媒することによってスクロース及び遊離リン酸からG1Pを生成させることと、
PGMで触媒することによってG1PをG6Pに転化させることと、
PGIで触媒することによってG6PをF6Pに転化させることと、
F6PEで触媒することによってF6PをT6Pに転化させることと、
S6PEで触媒することによってT6PをS6Pに転化させることと、
S6PPで触媒することによってS6Pをソルボースに転化させることと
を含むイン・ビトロ合成経路を提供する。
【0283】
S6Pがソルボースに転化される際に生成するリン酸イオンを、次に、スクロースをG1Pに転化させるステップにリサイクルすることができる。更に、PPFK及びポリリン酸を用いて、SPによるスクロースの加リン酸分解での開裂によって生成するフルクトースからF6Pを生成させることにより、ソルボース収率を高めることができる。
【0284】
いくつかの実施形態において、ソルボースの製造方法は、以下のステップ、すなわち、
酵素的加水分解または酸加水分解により多糖及びオリゴ糖からグルコースを生成させることと、
少なくとも1種の酵素で触媒することによってグルコースをG6Pに転化させることと、
酵素的加水分解または酸加水分解により多糖及びオリゴ糖からフルクトースを生成させることと、
少なくとも1種の酵素で触媒することによってフルクトースをF6Pに転化させることと
を含む。上記多糖及びオリゴ糖の例は上記に列挙される。
【0285】
他の実施形態において、G6Pは、ポリリン酸グルコキナーゼによりグルコース及びポリリン酸ナトリウムから製造される。
【0286】
本開示は、デンプン、セルロース、スクロース、及びそれらの誘導製品中の多糖ならびにオリゴ糖などの糖のソルボースへの転化方法を提供する。特定の実施形態において、無細胞酵素カクテルを使用して、デンプン、セルロース、スクロース、及びそれらの誘導製品をソルボースに転化させるための、人工(非天然)のATPを含まない酵素的経路が提供される。
【0287】
上記に示すように、数種の酵素を用いてデンプンを加水分解し、G1P収率を増加させることができる。かかる酵素としては、イソアミラーゼ、プルラナーゼ、及びα-アミラーゼが挙げられる。コーンスターチはαGPの作用を妨げる多くの分枝を含む。イソアミラーゼを用いてデンプンを脱分枝し、直鎖状のアミロデキストリンを生成させることができる。イソアミラーゼで前処理したデンプンによって、最終生成物中のF6P濃度をより高くすることができる。イソアミラーゼ及びプルラナーゼはα-1,6-グリコシド結合を開裂させ、これにより、α-グルカンホスホリラーゼによってデンプンをより完全に分解することが可能になる。α-アミラーゼはα-1,4-グリコシド結合を開裂させることから、α-アミラーゼを用いてデンプンをフラグメントに分解させて、ソルボースへの転化をより迅速にし、且つ溶解度を高める。
【0288】
マルトースホスホリラーゼ(MP)を用いて、分解生成物であるマルトースをG1P及びグルコースへと加リン酸分解で開裂させることによって、ソルボース収率を増加させることができる。あるいは、4-グルカントランスフェラーゼ(4GT)を用いて、分解生成物であるグルコース、マルトース、及びマルトトリオースを、αGPにより加リン酸分解で開裂させてG1Pを生成させることができるより長鎖のマルトオリゴ糖へとリサイクルすることによって、ソルボース収率を増加させることができる。
【0289】
特定の実施形態において、セルロース及びその誘導製品を、一連のステップを経てソルボースに転化させることができる。この製造方法は、以下のステップ、すなわち、
セロデキストリンホスホリラーゼ(CDP)及びセロビオースホスホリラーゼ(CBP)でそれぞれ触媒することによって、セロデキストリン及びセロビオースならびに遊離リン酸からG1Pを生成させることと、
PGMで触媒することによってG1PをG6Pに転化させることと、
PGIで触媒することによってG6PをF6Pに転化させることと、
F6PEで触媒することによってF6PをT6Pに転化させることと、
S6PEで触媒することによってT6PをS6Pに転化させることと、
S6PPで触媒することによってS6Pをソルボースに転化させることと
を含むイン・ビトロ合成経路を提供する。この製造方法においては、リン酸イオンはセロデキストリン及びセロビオースをG1Pに転化させる上記ステップによりリサイクルすることができる。
【0290】
いくつかの実施形態において、ポリリン酸及びポリリン酸グルコキナーゼ(PPGK)を本製造方法に添加し、それにより分解生成物であるグルコースをG6Pにリン酸化することによって、ソルボースの収率を増加させることができる。
【0291】
他の実施形態において、ソルボースをグルコースから生成させることができる。この製造方法は、
ポリリン酸グルコキナーゼ(PPGK)で触媒することによってグルコース及びポリリン酸からG6Pを生成させるステップと、
PGIで触媒することによってG6PをF6Pに転化させるステップと、
P6PEで触媒することによってF6PをT6Pに転化させるステップと、
S6PEで触媒することによってT6PをS6Pに転化させるステップと、
S6PPで触媒することによってS6Pをソルボースに転化させるステップと
を含む。
【0292】
本発明の製造方法は低コストの出発物質を使用し、原料及び生成物の分離に関連するコストを削減することにより製造コストを低減する。デンプン、セルロース、スクロース、及びいくつかのそれらの誘導体は、例えばラクトースよりも安価な原料である。ソルボースがバイオマスまたはラクトースから製造される場合、収率は本発明の場合よりも低く、ソルボースをクロマトグラフィーにより他の糖から分離する必要があり、これはより高い製造コストに繋がる。更に、本発明者らの製造方法には動物が含まれない。
【0293】
本発明に係るS6Pをソルボースに転化させるステップは、原料の如何にかかわらず不可逆的なホスファターゼ反応である。したがって、ソルボースは非常に高い収率で生成し、同時にそれに続く生成物の分離コストを効果的に最小限に抑える。
【0294】
細胞による製造方法とは対照的に、本発明は、ソルボースの無細胞での製造を含み、多くの場合に基質の細胞中への/生成物の細胞外への輸送を減速させる細胞膜を排除することに起因して、比較的に高い反応速度を有する。本発明においてはまた、最終製品が栄養分に富む発酵培地/細胞による代謝産物を含まない。
【0295】
本発明の特定の実施形態は、本明細書に記載のソルボースの製造方法によって製造されたソルボースである。
【0296】
グロース
【0297】
本発明の一実施形態は、
フルクトース6-リン酸4-エピメラーゼ(F6PE)で触媒することによってフルクトース6-リン酸(F6P)をタガトース6-リン酸(T6P)に転化させることと、
ソルボース6-リン酸エピメラーゼ(S6PE)で触媒することによってT6Pをソルボース6-リン酸(S6P)に転化させることと、
グロース6-リン酸イソメラーゼで触媒することによって上記生成したS6Pをグロース6-リン酸(Gul6P)に転化させることと、
グロース6-リン酸ホスファターゼ(Gul6PP)で触媒することによって上記Gul6Pをグロースに転化させることと
を含むグロースの製造方法である。
【0298】
F6PEの例としては、以下のタンパク質、すなわち、Uniprot ID E8N0N6、E4SEH3、I0I507、H1XRG1、及びB5YBD7が挙げられるが、これらに限定はされない。Uniprot ID E8N0N6及びI0I507は共にF6PE反応を触媒し、27%のアミノ酸配列同一性を共有する。したがって、F6PEの例には、上述のUniprot IDのいずれかに対するアミノ酸配列同一性が、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%である任意の類似体も含まれる。
【0299】
本発明のグロースの製造方法は、グルコース6-リン酸(G6P)を上記F6Pに酵素的に転化させるステップも含み、このステップはホスホグルコイソメラーゼ(PGI)によって触媒される。他の実施形態において、本グロースの製造方法は、グルコース1-リン酸(G1P)を上記G6Pに転化させるステップを更に含み、このステップはホスホグルコムターゼ(PGM)によって触媒される。更に別の実施形態において、グロースの製造方法は、少なくとも1種の酵素によって触媒される糖を上記G1Pに転化させるステップも含む。
【0300】
したがって、本発明のグロースの製造方法は、例えば、以下のステップ、すなわち、
(i)1種または複数種の酵素を用いて糖をグルコース1-リン酸(G1P)に転化させることと、
(ii)ホスホグルコムターゼ(PGM、EC 5.4.2.2)を用いてG1PをG6Pに転化させることと、
(iii)ホスホグルコイソメラーゼ(PGI、EC 5.3.1.9)を用いてG6PをF6Pに転化させることと、
(iv)F6PEを介してF6PをT6Pに転化させることと、
(v)S6PE(EC 5.3.1.26)を介してT6PをS6Pに転化させることと、
(vi)Gul6PIを介してS6PをGul6Pに転化させることと、
(vii)Gul6PPを介してGulPをグロースに転化させることと
を含んでいてもよい。
【0301】
一般的には、開示する製造方法において用いる酵素ユニットの比率は1:1:1:1:1:1:1(αGP:PGM:PGI:F6PE、S6PE:Gul6PI:Gul6PP)である。製品収率を最適化するために、これらの比率を任意の数の組み合わせで調整してもよい。例えば、3:1:1:1:1:1:1の比率を用いて、リン酸化中間体の濃度を最大化することができ、これにより、その下流の反応の活性が増加することとなる。逆に、1:1:1:1:1:1:3の比率を用いて、αGPに対するリン酸の供給を確実に維持することができ、これにより、α-1,4-グリコシド結合がより効率的に加リン酸分解で開裂することとなる。例えば3:1:1:1:1:1:3の酵素の比率を用いて反応速度を更に高めることができる。したがって、以下に説明する他の任意選択の酵素を含む酵素の比率を変化させて、グロース生成の効率を高めることができる。例えば、ある特定の酵素が、他の酵素の量に対して約2倍、3倍、4倍、5倍等の量で存在していてもよい。
【0302】
本製造方法の重要な利点の1つは、複数のプロセスステップを単一のバイオリアクターまたは反応槽中で実施することができることである。あるいは、上記複数のステップは、直列に配置された複数のバイオリアクターまたは反応槽中で実施することもできる。
【0303】
特に全てのプロセスステップが単一のバイオリアクターまたは反応槽中で実施される場合、S6Pの脱リン酸化によって生成するリン酸イオンを、次に、糖をG1Pに転化させるプロセスステップにリサイクルすることができる。上記開示する製造方法においてリン酸をリサイクルすることができることにより、非化学量論量のリン酸を用いることが可能になり、これにより反応液中のリン酸濃度が低く保たれる。このことにより、本製造方法の全体的な経路及び全体を通した速度が影響を受けるが、個々の酵素の活性が制限されることはなく、本グロースの製造方法が全体的に効率的になることができる。
【0304】
例えば、反応液中のリン酸濃度は、約0.1mM~約300mM、約0.1mM~約150mM、約1mM~約50mM、好ましくは約5mM~約50mM、またはより好ましくは約10mM~約50mMの範囲であってよい。例えば、上記反応液中のリン酸濃度は、約0.1mM、約0.5mM、約1mM、約1.5mM、約2mM、約2.5mM、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約15mM、約20mM、約25mM、約30mM、約35mM、約40mM、約45mM、約50mM、または約55mMであってよい。
【0305】
したがって、リン酸濃度が低いことで、総リン酸量が少なくなることにより製造コストが減少し、延いてはリン酸除去のコストが低下する。また、リン酸濃度が低いと高濃度の遊離リン酸によるS6PPの阻害も防止され、リン酸による汚染の可能性も低下する。
【0306】
更に、本明細書に開示の製造方法は、リン酸の供給源としてATPを添加することなく、すなわちATPなしで実施することができる。本製造方法は、NAD(P)(H)についても、これを添加しなければならないということなしに、すなわちNAD(P)(H)なしで実施することができる。他の利点としては、開示するグロースの製造方法の少なくとも1のステップが、エネルギー的に有利な反応を含むという事実も挙げられる。
【0307】
グロースをフルクトースから製造することもできる。例えば、この製造方法は、
ポリリン酸フルクトキナーゼ(PPFK)で触媒することによってフルクトース及びポリリン酸からF6Pを生成させることと、
F6PEで触媒することによってF6PをT6Pに転化させることと、
S6PEで触媒することによってT6PをS6Pに転化させることと、
Gul6PIで触媒することによってS6PをGul6Pに転化させることと、
Gul6PPで触媒することによってGul6Pをグロースに転化させることと
を含む。上記フルクトースは、例えば、スクロースの酵素的転化によって製造することができる。
【0308】
グロースはスクロースから製造することができる。この製造方法は、以下の酵素的ステップ、すなわち、
スクロースホスホリラーゼ(SP)で触媒することによってスクロース及び遊離リン酸からG1Pを生成させることと、
PGMで触媒することによってG1PをG6Pに転化させることと、
PGIで触媒することによってG6PをF6Pに転化させることと、
F6PEで触媒することによってF6PをT6Pに転化させることと、
S6PEで触媒することによってT6PをS6Pに転化させることと、
Gul6PIで触媒することによってS6PをGul6Pに転化させることと、
Gul6PPで触媒することによってGul6Pをグロースに転化させることと
を含むイン・ビトロ合成経路を提供する。
【0309】
S6Pがソルボースに転化される際に生成するリン酸イオンを、次に、スクロースをG1Pに転化させるステップにリサイクルすることができる。更に、PPFK及びポリリン酸を用いて、SPによるスクロースの加リン酸分解での開裂によって生成するフルクトースからF6Pを生成させることにより、グロース収率を高めることができる。
【0310】
いくつかの実施形態において、グロースの製造方法は、以下のステップ、すなわち、
酵素的加水分解または酸加水分解により多糖及びオリゴ糖からグルコースを生成させることと、
少なくとも1種の酵素で触媒することによってグルコースをG6Pに転化させることと、
酵素的加水分解または酸加水分解により多糖及びオリゴ糖からフルクトースを生成させることと、
少なくとも1種の酵素で触媒することによってフルクトースをF6Pに転化させることと
を含む。上記多糖及びオリゴ糖の例は上記に列挙される。
【0311】
他の実施形態において、G6Pは、ポリリン酸グルコキナーゼによりグルコース及びポリリン酸ナトリウムから製造される。
【0312】
本開示は、デンプン、セルロース、スクロース、及びそれらの誘導製品中の多糖ならびにオリゴ糖などの糖のグロースへの転化方法を提供する。特定の実施形態において、無細胞酵素カクテルを使用して、デンプン、セルロース、スクロース、及びそれらの誘導製品をグロースに転化させるための、人工(非天然)のATPを含まない酵素的経路が提供される。
【0313】
上記に示すように、数種の酵素を用いてデンプンを加水分解し、G1P収率を増加させることができる。かかる酵素としては、イソアミラーゼ、プルラナーゼ、及びα-アミラーゼが挙げられる。コーンスターチはαGPの作用を妨げる多くの分枝を含む。イソアミラーゼを用いてデンプンを脱分枝し、直鎖状のアミロデキストリンを生成させることができる。イソアミラーゼで前処理したデンプンによって、最終生成物中のF6P濃度をより高くすることができる。イソアミラーゼ及びプルラナーゼはα-1,6-グリコシド結合を開裂させ、これにより、α-グルカンホスホリラーゼによってデンプンをより完全に分解することが可能になる。α-アミラーゼはα-1,4-グリコシド結合を開裂させることから、α-アミラーゼを用いてデンプンをフラグメントに分解させて、グロースへの転化をより迅速にし、且つ溶解度を高める。
【0314】
マルトースホスホリラーゼ(MP)を用いて、分解生成物であるマルトースをG1P及びグルコースへと加リン酸分解で開裂させることによって、グロース収率を増加させることができる。あるいは、4-グルカントランスフェラーゼ(4GT)を用いて、分解生成物であるグルコース、マルトース、及びマルトトリオースを、αGPにより加リン酸分解で開裂させてG1Pを生成させることができるより長鎖のマルトオリゴ糖へとリサイクルすることによって、グロース収率を増加させることができる。
【0315】
特定の実施形態において、セルロース及びその誘導製品を、一連のステップを経てグロースに転化させることができる。この製造方法は、以下のステップ、すなわち、
セロデキストリンホスホリラーゼ(CDP)及びセロビオースホスホリラーゼ(CBP)でそれぞれ触媒することによって、セロデキストリン及びセロビオースならびに遊離リン酸からG1Pを生成させることと、
PGMで触媒することによってG1PをG6Pに転化させることと、
PGIで触媒することによってG6PをF6Pに転化させることと、
F6PEで触媒することによってF6PをT6Pに転化させることと、
S6PEで触媒することによってT6PをS6Pに転化させることと、
S6PPで触媒することによってS6Pをソルボースに転化させることと
を含むイン・ビトロ合成経路を提供する。この製造方法においては、リン酸イオンはセロデキストリン及びセロビオースをG1Pに転化させる上記ステップによりリサイクルすることができる。
【0316】
いくつかの実施形態において、ポリリン酸及びポリリン酸グルコキナーゼ(PPGK)を本製造方法に添加し、それにより分解生成物であるグルコースをG6Pにリン酸化することによって、グロースの収率を増加させることができる。
【0317】
他の実施形態において、グロースをグルコースから生成させることができる。この製造方法は、
ポリリン酸グルコキナーゼ(PPGK)で触媒することによってグルコース及びポリリン酸からG6Pを生成させるステップと、
PGIで触媒することによってG6PをF6Pに転化させるステップと、
F6PEで触媒することによってF6PをT6Pに転化させるステップと、
S6PEで触媒することによってT6PをS6Pに転化させるステップと、
Gul6PIで触媒することによってS6PをGul6Pに転化させるステップと、
Gul6PPで触媒することによってGul6Pをグロースに転化させるステップと
を含む。
【0318】
本発明の製造方法は低コストの出発物質を使用し、原料及び生成物の分離に関連するコストを削減することにより製造コストを低減する。デンプン、セルロース、スクロース、及びいくつかのそれらの誘導体は、例えばラクトースよりも安価な原料である。グロースがバイオマスまたはラクトースから製造される場合、収率は本発明の場合よりも低く、グロースをクロマトグラフィーにより他の糖から分離する必要があり、これはより高い製造コストに繋がる。更に、本発明者らの製造方法には動物が含まれない。
【0319】
本発明に係るS6Pをグロースに転化させるステップは、原料の如何にかかわらず不可逆的なホスファターゼ反応である。したがって、グロースは非常に高い収率で生成し、同時にそれに続く生成物の分離コストを効果的に最小限に抑える。
【0320】
細胞による製造方法とは対照的に、本発明は、グロースの無細胞での製造を含み、多くの場合に基質の細胞中への/生成物の細胞外への輸送を減速させる細胞膜を排除することに起因して、比較的に高い反応速度を有する。本発明においてはまた、最終製品が栄養分に富む発酵培地/細胞による代謝産物を含まない。
【0321】
本発明の特定の実施形態は、本明細書に記載のグロースの製造方法によって製造されたグロースである。
【0322】
イドース
【0323】
本発明の一実施形態は、
フルクトース6-リン酸4-エピメラーゼ(F6PE)で触媒することによってフルクトース6-リン酸(F6P)をタガトース6-リン酸(T6P)に転化させることと、
ソルボース6-リン酸エピメラーゼ(S6PE)で触媒することによってT6Pをソルボース6-リン酸(S6P)に転化させることと、
イドース6-リン酸イソメラーゼで触媒することによって上記生成したS6Pをイドース6-リン酸(I6P)に転化させることと、
イドース6-リン酸ホスファターゼ(I6PP)で触媒することによって上記I6Pをイドースに転化させることと
を含むイドースの製造方法である。
【0324】
F6PEの例としては、以下のタンパク質、すなわち、Uniprot ID E8N0N6、E4SEH3、I0I507、H1XRG1、及びB5YBD7が挙げられるが、これらに限定はされない。Uniprot ID E8N0N6及びI0I507は共にF6PE反応を触媒し、27%のアミノ酸配列同一性を共有する。したがって、F6PEの例には、上述のUniprot IDのいずれかに対するアミノ酸配列同一性が、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%である任意の類似体も含まれる。
【0325】
本発明のイドースの製造方法は、グルコース6-リン酸(G6P)を上記F6Pに酵素的に転化させるステップも含み、このステップはホスホグルコイソメラーゼ(PGI)によって触媒される。他の実施形態において、本イドースの製造方法は、グルコース1-リン酸(G1P)を上記G6Pに転化させるステップを更に含み、このステップはホスホグルコムターゼ(PGM)によって触媒される。更に別の実施形態において、イドースの製造方法は、少なくとも1種の酵素によって触媒される糖を上記G1Pに転化させるステップも含む。
【0326】
したがって、本発明のイドースの製造方法は、例えば、以下のステップ、すなわち、
(i)1種または複数種の酵素を用いて糖をグルコース1-リン酸(G1P)に転化させることと、
(ii)ホスホグルコムターゼ(PGM、EC 5.4.2.2)を用いてG1PをG6Pに転化させることと、
(iii)ホスホグルコイソメラーゼ(PGI、EC 5.3.1.9)を用いてG6PをF6Pに転化させることと、
(iv)F6PEを介してF6PをT6Pに転化させることと、
(v)S6PE(EC 5.3.1.26)を介してT6PをS6Pに転化させることと、
(vi)I6PIを介してS6PをI6Pに転化させることと、
(vii)I6PPを介してI6Pをイドースに転化させることと
を含んでいてもよい。
【0327】
一般的には、開示する製造方法において用いる酵素ユニットの比率は1:1:1:1:1:1:1(αGP:PGM:PGI:F6PE:S6PE:I6PI:I6PP)である。製品収率を最適化するために、これらの比率を任意の数の組み合わせで調整してもよい。例えば、3:1:1:1:1:1:1の比率を用いて、リン酸化中間体の濃度を最大化することができ、これにより、その下流の反応の活性が増加することとなる。逆に、1:1:1:1:1:1:3の比率を用いて、αGPに対するリン酸の供給を確実に維持することができ、これにより、α-1,4-グリコシド結合がより効率的に加リン酸分解で開裂することとなる。例えば3:1:1:1:1:1:3の酵素の比率を用いて反応速度を更に高めることができる。したがって、以下に説明する他の任意選択の酵素を含む酵素の比率を変化させて、イドース生成の効率を高めることができる。例えば、ある特定の酵素が、他の酵素の量に対して約2倍、3倍、4倍、5倍等の量で存在していてもよい。
【0328】
本製造方法の重要な利点の1つは、複数のプロセスステップを単一のバイオリアクターまたは反応槽中で実施することができることである。あるいは、上記複数のステップは、直列に配置された複数のバイオリアクターまたは反応槽中で実施することもできる。
【0329】
特に全てのプロセスステップが単一のバイオリアクターまたは反応槽中で実施される場合、S6Pの脱リン酸化によって生成するリン酸イオンを、次に、糖をG1Pに転化させるプロセスステップにリサイクルすることができる。上記開示する製造方法においてリン酸をリサイクルすることができることにより、非化学量論量のリン酸を用いることが可能になり、これにより反応液中のリン酸濃度が低く保たれる。このことにより、本製造方法の全体的な経路及び全体を通した速度が影響を受けるが、個々の酵素の活性が制限されることはなく、本イドースの製造方法が全体的に効率的になることができる。
【0330】
例えば、反応液中のリン酸濃度は、約0.1mM~約300mM、約0.1mM~約150mM、約1mM~約50mM、好ましくは約5mM~約50mM、またはより好ましくは約10mM~約50mMの範囲であってよい。例えば、上記反応液中のリン酸濃度は、約0.1mM、約0.5mM、約1mM、約1.5mM、約2mM、約2.5mM、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約15mM、約20mM、約25mM、約30mM、約35mM、約40mM、約45mM、約50mM、または約55mMであってよい。
【0331】
したがって、リン酸濃度が低いことで、総リン酸量が少なくなることにより製造コストが減少し、延いてはリン酸除去のコストが低下する。また、リン酸濃度が低いと高濃度の遊離リン酸によるS6PPの阻害も防止され、リン酸による汚染の可能性も低下する。
【0332】
更に、本明細書に開示の製造方法は、リン酸の供給源としてATPを添加することなく、すなわちATPなしで実施することができる。本製造方法は、NAD(P)(H)についても、これを添加しなければならないということなしに、すなわちNAD(P)(H)なしで実施することができる。他の利点としては、開示するイドースの製造方法の少なくとも1のステップが、エネルギー的に有利な反応を含むという事実も挙げられる。
【0333】
イドースをフルクトースから製造することもできる。例えば、この製造方法は、
ポリリン酸フルクトキナーゼ(PPFK)で触媒することによってフルクトース及びポリリン酸からF6Pを生成させることと、
F6PEで触媒することによってF6PをT6Pに転化させることと、
S6PEで触媒することによってT6PをS6Pに転化させることと、
I6PIで触媒することによってS6PをI6Pに転化させることと、
I6PPで触媒することによってI6Pをイドースに転化させることと
を含む。上記フルクトースは、例えば、スクロースの酵素的転化によって製造することができる。
【0334】
イドースはスクロースから製造することができる。この製造方法は、以下の酵素的ステップ、すなわち、
スクロースホスホリラーゼ(SP)で触媒することによってスクロース及び遊離リン酸からG1Pを生成させることと、
PGMで触媒することによってG1PをG6Pに転化させることと、
PGIで触媒することによってG6PをF6Pに転化させることと、
F6PEで触媒することによってF6PをT6Pに転化させることと、
S6PEで触媒することによってT6PをS6Pに転化させることと、
I6PIで触媒することによってS6PをI6Pに転化させることと、
I6PPで触媒することによってI6Pをイドースに転化させることと
を含むイン・ビトロ合成経路を提供する。
【0335】
S6Pがソルボースに転化される際に生成するリン酸イオンを、次に、スクロースをG1Pに転化させるステップにリサイクルすることができる。更に、PPFK及びポリリン酸を用いて、SPによるスクロースの加リン酸分解での開裂によって生成するフルクトースからF6Pを生成させることにより、イドース収率を高めることができる。
【0336】
いくつかの実施形態において、イドースの製造方法は、以下のステップ、すなわち、
酵素的加水分解または酸加水分解により多糖及びオリゴ糖からグルコースを生成させることと、
少なくとも1種の酵素で触媒することによってグルコースをG6Pに転化させることと、
酵素的加水分解または酸加水分解により多糖及びオリゴ糖からフルクトースを生成させることと、
少なくとも1種の酵素で触媒することによってフルクトースをF6Pに転化させることと
を含む。上記多糖及びオリゴ糖の例は上記に列挙される。
【0337】
他の実施形態において、G6Pは、ポリリン酸グルコキナーゼによりグルコース及びポリリン酸ナトリウムから製造される。
【0338】
本開示は、デンプン、セルロース、スクロース、及びそれらの誘導製品中の多糖ならびにオリゴ糖などの糖のイドースへの転化方法を提供する。特定の実施形態において、無細胞酵素カクテルを使用して、デンプン、セルロース、スクロース、及びそれらの誘導製品をイドースに転化させるための、人工(非天然)のATPを含まない酵素的経路が提供される。
【0339】
上記に示すように、数種の酵素を用いてデンプンを加水分解し、G1P収率を増加させることができる。かかる酵素としては、イソアミラーゼ、プルラナーゼ、及びα-アミラーゼが挙げられる。コーンスターチはαGPの作用を妨げる多くの分枝を含む。イソアミラーゼを用いてデンプンを脱分枝し、直鎖状のアミロデキストリンを生成させることができる。イソアミラーゼで前処理したデンプンによって、最終生成物中のF6P濃度をより高くすることができる。イソアミラーゼ及びプルラナーゼはα-1,6-グリコシド結合を開裂させ、これにより、α-グルカンホスホリラーゼによってデンプンをより完全に分解することが可能になる。α-アミラーゼはα-1,4-グリコシド結合を開裂させることから、α-アミラーゼを用いてデンプンをフラグメントに分解させて、イドースへの転化をより迅速にし、且つ溶解度を高める。
【0340】
マルトースホスホリラーゼ(MP)を用いて、分解生成物であるマルトースをG1P及びグルコースへと加リン酸分解で開裂させることによって、イドース収率を増加させることができる。あるいは、4-グルカントランスフェラーゼ(4GT)を用いて、分解生成物であるグルコース、マルトース、及びマルトトリオースを、αGPにより加リン酸分解で開裂させてG1Pを生成させることができるより長鎖のマルトオリゴ糖へとリサイクルすることによって、イドース収率を増加させることができる。
【0341】
特定の実施形態において、セルロース及びその誘導製品を、一連のステップを経てイドースに転化させることができる。この製造方法は、以下のステップ、すなわち、
セロデキストリンホスホリラーゼ(CDP)及びセロビオースホスホリラーゼ(CBP)でそれぞれ触媒することによって、セロデキストリン及びセロビオースならびに遊離リン酸からG1Pを生成させることと、
PGMで触媒することによってG1PをG6Pに転化させることと、
PGIで触媒することによってG6PをF6Pに転化させることと、
F6PEで触媒することによってF6PをT6Pに転化させることと、
S6PEで触媒することによってT6PをS6Pに転化させることと、
S6PPで触媒することによってS6Pをソルボースに転化させることと
を含むイン・ビトロ合成経路を提供する。この製造方法においては、リン酸イオンはセロデキストリン及びセロビオースをG1Pに転化させる上記ステップによりリサイクルすることができる。
【0342】
いくつかの実施形態において、ポリリン酸及びポリリン酸グルコキナーゼ(PPGK)を本製造方法に添加し、それにより分解生成物であるグルコースをG6Pにリン酸化することによって、イドースの収率を増加させることができる。
【0343】
他の実施形態において、イドースをグルコースから生成させることができる。この製造方法は、
ポリリン酸グルコキナーゼ(PPGK)で触媒することによってグルコース及びポリリン酸からG6Pを生成させるステップと、
PGIで触媒することによってG6PをF6Pに転化させるステップと、
F6PEで触媒することによってF6PをT6Pに転化させるステップと、
S6PEで触媒することによってT6PをS6Pに転化させるステップと、
I6PIで触媒することによってS6PをI6Pに転化させるステップと、
I6PPで触媒することによってI6Pをイドースに転化させるステップと
を含む。
【0344】
本発明の製造方法は低コストの出発物質を使用し、原料及び生成物の分離に関連するコストを削減することにより製造コストを低減する。デンプン、セルロース、スクロース、及びいくつかのそれらの誘導体は、例えばラクトースよりも安価な原料である。イドースがバイオマスまたはラクトースから製造される場合、収率は本発明の場合よりも低く、イドースをクロマトグラフィーにより他の糖から分離する必要があり、これはより高い製造コストに繋がる。更に、本発明者らの製造方法には動物が含まれない。
【0345】
本発明に係るS6Pをイドースに転化させるステップは、原料の如何にかかわらず不可逆的なホスファターゼ反応である。したがって、イドースは非常に高い収率で生成し、同時にそれに続く生成物の分離コストを効果的に最小限に抑える。
【0346】
細胞による製造方法とは対照的に、本発明は、イドースの無細胞での製造を含み、多くの場合に基質の細胞中への/生成物の細胞外への輸送を減速させる細胞膜を排除することに起因して、比較的に高い反応速度を有する。本発明においてはまた、最終製品が栄養分に富む発酵培地/細胞による代謝産物を含まない。
【0347】
本発明の特定の実施形態は、本明細書に記載のイドースの製造方法によって製造されたイドースである。
【0348】
タガトース
【0349】
タガトースの製造方法は、
エピメラーゼで触媒することによってF6PをT6Pに転化させることと、
ホスファターゼで触媒することによって上記T6Pをタガトースに転化させることと
を含む。
【0350】
F6PをT6Pに転化させる方法における使用に好適なエピメラーゼとしてはF6PEが挙げられる。F6PEの例としては、以下のタンパク質、すなわち、Uniprot ID E8N0N6、E4SEH3、I0I507、H1XRG1、及びB5YBD7が挙げられるが、これらに限定はされない。Uniprot ID E8N0N6及びI0I507は共にF6PE反応を触媒し、27%のアミノ酸配列同一性を共有する。したがって、F6PEの例には、上述のUniprot IDのいずれかに対するアミノ酸配列同一性が、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%である任意の類似体も含まれる。
【0351】
製造方法において、T6Pをタガトース(D-タガトース)に転化させるホスファターゼ、T6PPを用いてもよい。T6PPの例としては、以下のタンパク質、すなわち、Uniprot ID O29805、D2RHV2、及びF2KMK2が挙げられるが、これらに限定はされない。Uniprot ID O29805及びF2KMK2は共にF6PE反応を触媒し、67%のアミノ酸配列同一性を共有する。したがって、T6PPの例には、上述のUniprot IDのいずれかに対するアミノ酸配列同一性が、少なくとも65%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、更により好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、更に最も好ましくは少なくとも96%、97%、98%、99%、または100%である任意の類似体も含まれる。
【0352】
タガトースの製造方法は、グルコース6-リン酸(G6P)を上記F6Pに酵素的に転化させるステップも含み、このステップはホスホグルコースイソメラーゼ(PGI)によって触媒される。本タガトースの製造方法は、グルコース1-リン酸(G1P)を上記G6Pに転化させるステップを更に含み、このステップはホスホグルコムターゼ(PGM)によって触媒される。更に、タガトースの製造方法は、少なくとも1種の酵素によって触媒される糖を上記G1Pに転化させるステップも含む。
【0353】
したがって、タガトースの製造方法は、例えば、以下のステップ、すなわち、
(i)1種または複数種の酵素を用いて糖をグルコース1-リン酸(G1P)に転化させることと、
(ii)ホスホグルコムターゼ(PGM、EC 5.4.2.2)を用いてG1PをG6Pに転化させることと、
(iii)ホスホグルコイソメラーゼ(PGI、EC 5.3.1.9)を用いてG6PをF6Pに転化させることと、
(iv)フルクトース6-リン酸エピメラーゼ(F6PE)を介してF6PをT6Pに転化させることと、
(v)タガトース6-リン酸ホスファターゼ(T6PP)を介してT6Pをタガトースに転化させることと
を含む。
【0354】
一般的には、本製造方法において用いる酵素ユニットの比率は1:1:1:1:1(αGP:PGM:PGI:F6PE:T6PP)である。製品収率を最適化するために、これらの比率を任意の数の組み合わせで調整してもよい。例えば、3:1:1:1:1の比率を用いて、リン酸化中間体の濃度を最大化することができ、これにより、その下流の反応の活性が増加することとなる。逆に、1:1:1:1:3の比率を用いて、αGPに対するリン酸の供給を確実に維持することができ、これにより、α-1,4-グリコシド結合がより効率的に加リン酸分解で開裂することとなる。例えば3:1:1:1:3の酵素の比率を用いて反応速度を更に高めることができる。したがって、以下に説明する他の任意選択の酵素を含む酵素の比率を変化させて、タガトース生成の効率を高めることができる。例えば、ある特定の酵素が、他の酵素の量に対して約2倍、3倍、4倍、5倍等の量で存在していてもよい。
【0355】
タガトースをフルクトースから製造することもできる。例えば、この製造方法は、
ポリリン酸フルクトキナーゼ(PPFK)で触媒することによってフルクトース及びポリリン酸からF6Pを生成させることと、
F6PEで触媒することによってF6PをT6Pに転化させることと、
T6PPで触媒することによってT6Pをタガトースに転化させることと
を含む。上記フルクトースは、例えば、スクロースの酵素的転化によって製造することができる。
【0356】
タガトースはスクロースから製造することができる。この製造方法は、以下の酵素的ステップ、すなわち、
スクロースホスホリラーゼ(SP)で触媒することによってスクロース及び遊離リン酸からG1Pを生成させることと、
PGMで触媒することによってG1PをG6Pに転化させることと、
PGIで触媒することによってG6PをF6Pに転化させることと、
F6PEで触媒することによってF6PをT6Pに転化させることと、
T6PPで触媒することによってT6Pをタガトースに転化させることと
を含むイン・ビトロ合成経路を提供する。
【0357】
T6Pがタガトースに転化される際に生成するリン酸イオンを、次に、スクロースをG1Pに転化させるステップにリサイクルすることができる。更に、PPFK及びポリリン酸を用いて、SPによるスクロースの加リン酸分解での開裂によって生成するフルクトースからF6Pを生成させることにより、タガトース収率を高めることができる。
【0358】
タガトースの製造方法は、以下のステップ、すなわち、
酵素的加水分解または酸加水分解により多糖及びオリゴ糖からグルコースを生成させることと、
少なくとも1種の酵素で触媒することによってグルコースをG6Pに転化させることと、
酵素的加水分解または酸加水分解により多糖及びオリゴ糖からフルクトースを生成させることと、
少なくとも1種の酵素で触媒することによってフルクトースをG6Pに転化させることと
を含む。上記多糖及びオリゴ糖の例は上記に列挙される。
【0359】
セルロース及びその誘導製品を、一連のステップを経てタガトースに転化させることができる。この製造方法は、以下のステップ、すなわち、
セロデキストリンホスホリラーゼ(CDP)及びセロビオースホスホリラーゼ(CBP)でそれぞれ触媒することによって、セロデキストリン及びセロビオースならびに遊離リン酸からG1Pを生成させることと、
PGMで触媒することによってG1PをG6Pに転化させることと、
PGIで触媒することによってG6PをF6Pに転化させることと、
F6PEで触媒することによってF6PをT6Pに転化させることと、
T6PPで触媒することによってT6Pをタガトースに転化させることと
を含む。この製造方法においては、リン酸イオンはセロデキストリン及びセロビオースをG1Pに転化させる上記ステップによりリサイクルすることができる。
【0360】
タガトースをグルコースから生成させることができる。この製造方法は、
ポリリン酸グルコキナーゼ(PPGK)で触媒することによってグルコース及びポリリン酸からG6Pを生成させるステップと、
PGIで触媒することによってG6PをF6Pに転化させるステップと、
F6PEで触媒することによってF6PをT6Pに転化させるステップと、
T6PPで触媒することによってT6Pをタガトースに転化させるステップと
を含む。
【0361】
プシコース
【0362】
プシコースの製造方法は、
エピメラーゼ(例えば、プシコース6-リン酸3-エピメラーゼ、P6PE)で触媒することによってフルクトース6-リン酸(F6P)をプシコース6-リン酸(P6P)に転化させることと、
ホスファターゼ(例えば、プシコース6-リン酸ホスファターゼ、P6PP)で触媒することによって上記生成したP6Pをプシコースに転化させることと
を含む。
【0363】
P6PEの例としては、以下のタンパク質、すなわち、UNIPROT識別番号D9TQJ4、A0A090IXZ8、及びP32719が挙げられるが、これらに限定はされない。Uniprot ID A0A090IXZ8及びD9TQJ4は共にP6PE反応を触媒し、45%のアミノ酸配列同一性を共有する。したがって、P6PEの例には、上述のUniprot IDのいずれかに対するアミノ酸配列同一性が、少なくとも45%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、更により好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、更に最も好ましくはまたは少なくとも96、97、98、99、または100%である任意の類似体も含まれる。
【0364】
P6PPの例としては、以下のタンパク質、すなわち、Uniprot ID A3DC21、Q5LGR4、及びQ89ZR1が挙げられるが、これらに限定はされない。Uniprot ID A3DC21及びQ89ZR1は共にP6PP反応を触媒し、45%のアミノ酸配列同一性を共有する。したがって、P6PPの例には、上述のUniprot IDのいずれかに対するアミノ酸配列同一性が、少なくとも45%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、更により好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、更に最も好ましくはまたは少なくとも96、97、98、99、または100%である任意の類似体も含まれる。
【0365】
プシコースの製造方法は、グルコース6-リン酸(G6P)を上記F6Pに酵素的に転化させるステップも含み、このステップはホスホグルコースイソメラーゼ(PGI)によって触媒される。本プシコースの製造方法は、グルコース1-リン酸(G1P)を上記G6Pに転化させるステップを更に含み、このステップはホスホグルコムターゼ(PGM)によって触媒される。更に、プシコースの製造方法は、少なくとも1種の酵素によって触媒される糖を上記G1Pに転化させるステップも含む。
【0366】
したがって、プシコースの製造方法は、例えば、以下のステップ、すなわち、
(i)1種または複数種の酵素を用いて糖をグルコース1-リン酸(G1P)に転化させることと、
(ii)ホスホグルコムターゼ(PGM、EC 5.4.2.2)を用いてG1PをG6Pに転化させることと、
(iii)ホスホグルコイソメラーゼ(PGI、EC 5.3.1.9)を用いてG6PをF6Pに転化させることと、
(iv)プシコース6-リン酸エピメラーゼ(P6PE)を介してF6PをP6Pに転化させることと、
(v)プシコース6-リン酸ホスファターゼ(P6PP)を介してP6Pをプシコースに転化させることと
を含む。
【0367】
一般的には、本製造方法において用いる酵素ユニットの比率は1:1:1:1:1(αGP:PGM:PGI:P6PE:P6PP)である。製品収率を最適化するために、これらの比率を任意の数の組み合わせで調整してもよい。例えば、3:1:1:1:1の比率を用いて、リン酸化中間体の濃度を最大化することができ、これにより、その下流の反応の活性が増加することとなる。逆に、1:1:1:1:3の比率を用いて、αGPに対するリン酸の供給を確実に維持することができ、これにより、α-1,4-グリコシド結合がより効率的に加リン酸分解で開裂することとなる。例えば3:1:1:1:3の酵素の比率を用いて反応速度を更に高めることができる。したがって、以下に説明する他の任意選択の酵素を含む酵素の比率を変化させて、タガトース生成の効率を高めることができる。例えば、ある特定の酵素が、他の酵素の量に対して約2倍、3倍、4倍、5倍等の量で存在していてもよい。
【0368】
プシコースをフルクトースから製造することもできる。例えば、この製造方法は、
ポリリン酸フルクトキナーゼ(PPFK)で触媒することによってフルクトース及びポリリン酸からF6Pを生成させることと、
P6PEで触媒することによってF6PをP6Pに転化させることと、
P6PPで触媒することによってP6Pをプシコースに転化させることと
を含む。上記フルクトースは、例えば、スクロースの酵素的転化によって製造することができる。
【0369】
プシコースはスクロースから製造することができる。この製造方法は、以下の酵素的ステップ、すなわち、
スクロースホスホリラーゼ(SP)で触媒することによってスクロース及び遊離リン酸からG1Pを生成させることと、
PGMで触媒することによってG1PをG6Pに転化させることと、
PGIで触媒することによってG6PをF6Pに転化させることと、
P6PEで触媒することによってF6PをP6Pに転化させることと、
P6PPで触媒することによってP6Pをプシコースに転化させることと
を含む。
【0370】
P6Pがプシコースに転化される際に生成するリン酸イオンを、次に、スクロースをG1Pに転化させるステップにリサイクルすることができる。更に、PPFK及びポリリン酸を用いて、SPによるスクロースの加リン酸分解での開裂によって生成するフルクトースからF6Pを生成させることにより、プシコース収率を高めることができる。
【0371】
プシコースの製造方法は、以下のステップ、すなわち、
酵素的加水分解または酸加水分解により多糖及びオリゴ糖からグルコースを生成させることと、
少なくとも1種の酵素で触媒することによってグルコースをG6Pに転化させることと、
酵素的加水分解または酸加水分解により多糖及びオリゴ糖からフルクトースを生成させることと、
少なくとも1種の酵素で触媒することによってフルクトースをG6Pに転化させることと
を含む。上記多糖及びオリゴ糖の例は上記に列挙される。
【0372】
セルロース及びその誘導製品を、一連のステップを経てプシコースに転化させることができる。この製造方法は、以下のステップ、すなわち、
セロデキストリンホスホリラーゼ(CDP)及びセロビオースホスホリラーゼ(CBP)でそれぞれ触媒することによって、セロデキストリン及びセロビオースならびに遊離リン酸からG1Pを生成させることと、
PGMで触媒することによってG1PをG6Pに転化させることと、
PGIで触媒することによってG6PをF6Pに転化させることと、
P6PEで触媒することによってF6PをP6Pに転化させることと、
P6PPで触媒することによってP6Pをプシコースに転化させることと
を含む。この製造方法においては、リン酸イオンはセロデキストリン及びセロビオースをG1Pに転化させる上記ステップによりリサイクルすることができる。
【0373】
プシコースをグルコースから生成させることができる。この製造方法は、
ポリリン酸グルコキナーゼ(PPGK)で触媒することによってグルコース及びポリリン酸からG6Pを生成させるステップと、
PGIで触媒することによってG6PをF6Pに転化させるステップと、
P6PEで触媒することによってF6PをP6Pに転化させることと、
P6PPで触媒することによってP6Pをプシコースに転化させるステップと
を含む。
【0374】
実施例
材料及び方法
【0375】
化学薬品
【0376】
別段の注記がない限り、コーンスターチ、可溶性デンプン、マルトデキストリン、グルコース、ろ紙を含む全ての化学薬品は試薬グレードまたはそれ以上のグレードであり、Sigma-Aldrich(St. Louis, MO, USA)またはFisher Scientific(Pittsburgh, PA, USA)から購入した。制限酵素、T4リガーゼ、及びPhusion DNAポリメラーゼはNew England Biolabs(Ipswich, MA, USA)から購入した。オリゴヌクレオチドは、Integrated DNA Technologies(Coralville, IA, USA)またはEurofins MWG Operon(Huntsville, AL, USA)のいずれかが合成した。酵素の精製に使用した再生非晶性セルロースは、Ye et al., Fusion of a family 9 cellulose-binding module improves catalytic potential of Clostridium thermocellum cellodextrin phosphorylase on insoluble cellulose. Appl. Microbiol. Biotechnol. 2011;92:551-560に記載のように、Avicel PH105(FMC BioPolymer, Philadelphia, PA, USA)から、これを溶解及び再生することによって調製した。DNA操作のための宿主細胞としてEscherichia coli Sig10(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, USA)を用い、組換えタンパク質発現のための宿主細胞としてE. coli BL21(DE3)(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, USA)を用いた。100mgL-1のアンピシリンまたは50mgL-1のカナマイシンのいずれかを含むZYM-5052培地を、E. coli細胞増殖及び組換えタンパク質発現に用いた。Trichoderma reesei由来のセルラーゼ(カタログ番号:C2730)及びプルラナーゼ(カタログ番号:P1067)をSigma-Aldrich(St. Louis, MO, USA)から購入し、且つNovozymes(Franklinton, NC, USA)が製造した。マルトースホスホリラーゼ(カタログ番号:M8284)をSigma-Aldrichから購入した。
【0377】
組換え酵素の製造及び精製
【0378】
タンパク質発現プラスミドを保有するE. coli BL21(DE3)株を、100mgL-1のアンピシリンまたは50mgL-1のカナマイシンのいずれかを含有する100mLのZYM-5052培地と共に、1Lの三角フラスコ中でインキュベートした。細胞を220rpmで回転振とうしながら37℃で16~24時間増殖させた。この細胞を12℃での遠心分離により回収し、50mMのNaCl及び5mMのMgCl2を含有する20mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.5)(熱沈殿及びセルロース結合モジュール)または300mMのNaCl及び5mMのイミダゾール(Ni精製)を含有する20mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.5)のいずれかで1回洗浄した。この細胞ペレットを同一の緩衝液中に再懸濁し、超音波処理(Fisher Scientific Sonic Dismembrator Model 500;5秒間パルスをオンし、10秒間オフ、50%の振幅で合計21分間)により溶解した。遠心分離後、上清中の目的のタンパク質を精製した。
【0379】
3種の手法を用いて種々の組換えタンパク質を精製した。Hisタグ付きタンパク質はNi Sepharose 6 Fast Flow樹脂(GE Life Sciences, Marlborough, MA, USA)により精製した。セルロース結合モジュール(CBM)及び自己開裂インテインを含有する融合タンパク質は、大表面積の再生非晶性セルロースへの高親和性吸着により精製した。超耐熱性酵素は70~95℃で5~30分間の熱沈殿を用いて精製した。ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって上記組換えタンパク質の純度を調べた。
【0380】
使用した酵素及びそれらの活性アッセイ
【0381】
Thermotoga maritima由来のα-グルカンホスホリラーゼ(αGP)(Uniprot ID G4FEH8)を用いた。1mMのMgCl2及び30mMのマルトデキストリンを含有する50mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)中、50℃で活性をアッセイした。Vivaspin 2濃縮器(10,000 MWCO)(Vivaproducts, Inc., Littleton, MA, USA)を用いた酵素のろ過により反応を停止させた。25U/mLのホスホグルコムターゼを添加したグルコースヘキソキナーゼ/G6PDHアッセイキット(Sigma Aldrich、カタログ番号GAHK20-1KT)を用いてグルコース1-リン酸(G1P)を測定した。ユニット(U)はμm/分として記述する。
【0382】
Thermococcus kodakaraensis由来のホスホグルコムターゼ(PGM)(Uniprot ID Q68BJ6)を用いた。5mMのMgCl2及び5mMのG1Pを含有する50mMのHEPES緩衝液(pH7.2)中、50℃で活性を測定した。Vivaspin 2濃縮器(10,000 MWCO)を用いた酵素のろ過により反応を停止させた。ヘキソキナーゼ/G6PDHアッセイキット(Sigma Aldrich、カタログ番号GAHK20-1KT)を用いて、生成物であるグルコース6-リン酸(G6P)を測定した。
【0383】
2種の異なる供給源、Clostridium thermocellum由来(Uniprot ID A3DBX9)及びThermus thermophilus由来(Uniprot ID Q5SLL6)のホスホグルコイソメラーゼ(PGI)を用いた。5mMのMgCl2及び10mMのG6Pを含有する50mMのHEPES緩衝液(pH7.2)中、50℃で活性を測定した。Vivaspin 2濃縮器(10,000 MWCO)を用いた酵素のろ過により反応を停止させた。フルクトース6-リン酸キナーゼ(F6PK)/ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PK)/乳酸デヒドロゲナーゼ(LD)共役酵素アッセイを用いて、生成物であるフルクトース6-リン酸(F6P)を測定し、該測定において、340nmの吸光度の減少がF6Pの生成を示す。この200μLの反応液は、50mMのHEPES(pH7.2)、5mMのMgCl2、10mMのG6P、1.5mMのATP、1.5mMのホスホエノールピルビン酸、200μΜのNADH、0.1UのPGI、5UのPK、及び5UのLDを含有していた。
【0384】
C. thermocellum由来の組換えセロデキストリンホスホリラーゼ及びセロビオースホスホリラーゼは、Ye et al., Spontaneous high-yield production of hydrogen from cellulosic materials and water catalyzed by enzyme cocktails. ChemSusChem 2009;2:149-152に記載されている。それらの活性を記載されたようにしてアッセイした。
【0385】
Thermobifida fusca YX由来の組換えポリリン酸グルコキナーゼは、Liao et al., One-step purification and immobilization of thermophilic polyphosphate glucokinase from Thermobifida fusca YX: glucose-6-phosphate generation without ATP. Appl. Microbiol. Biotechnol. 2012;93:1109-1117に記載されている。その活性を記載されたようにしてアッセイした。
【0386】
Sulfolobus tokodaii由来の組換えイソアミラーゼは、Cheng et al., Doubling power output of starch biobattery treated by the most thermostable isoamylase from an archaeon Sulfolobus tokodaii. Scientific Reports 2015;5:13184に記載されている。その活性を記載されたようにしてアッセイした。
【0387】
Thermococcus litoralis由来の組換え4-α-グルカノールトランスフェラーゼは、Jeon et al. 4-α-Glucanotransferase from the Hyperthermophilic Archaeon Thermococcus Litoralis. Eur. J. Biochem. 1997;248:171-178に記載されている。その活性を記載されたようにして測定した。
【0388】
Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticum由来のスクロースホスホリラーゼ(Uniprot ID D9TT09)を用いた(Verhaeghe et al. The quest for a thermostable sucrose phosphorylase reveals sucrose 6’-phosphate phosphorylase as a novel specificity. Appl Microbiol Biotechnol. 2014 Aug;98(16):7027-37)。その活性を、10mMのスクロース及び12mMの有機リン酸を含有する50mMのHEPES緩衝液(pH7.5)中で測定した。グルコース1-リン酸(G1P)を、α-グルカンホスホリラーゼと同様に、25U/mLのホスホグルコムターゼを添加したグルコースヘキソキナーゼ/G6PDHアッセイキットを用いて測定した。
【0389】
Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticum由来のプシコース6-リン酸3-エピメラーゼ(P6PE)(Uniprot ID D9TQJ4)を用いた。5mMのMgCl2、500μΜのCoCl2、1U/mLのP6PP、及び10mMのF6Pを含有する50mMのHEPES緩衝液(pH7.2)中、50℃で活性を測定した。Vivaspin 2濃縮器(10,000 MWCO)を用いた酵素のろ過により反応を停止させた。プシコース6-リン酸ホスファターゼを用い、遊離リン酸の放出を検出して、生成物であるプシコース6-リン酸(P6P)を測定した。遊離リン酸の放出を検出するために、0.1Mの酢酸亜鉛及び2mMのモリブデン酸アンモニウム(pH5)を含有する500μLの溶液を50μLの反応液に添加した。この溶液を混合し、続いて125μlの5%アスコルビン酸(pH5)を添加した。この溶液を混合し、次いで30℃で20分間インキュベートした。850nmでの吸光度を読み取って、遊離リン酸の放出を測定した。次いで、Agilent HiPlex Hカラムを用いたHPLCによりプシコースを確認した(0.6mL/分の5mM H2SO4及び65℃で試料及び対照を測定)。
【0390】
配列番号1に示すアミノ酸配列を有する、Clostridium thermocellum由来のアロース6-リン酸イソメラーゼ(A6PI)(Uniprot ID W4V2C8)を用いた。5mMのMgCl2、500μMのCoCl2、1U/mLのP6PE、1U/mLのA6PP、及び10mMのF6Pを含有する50mMのHEPES緩衝液(pH7.2)中、50℃で活性を測定した。Vivaspin 2濃縮器(10,000 MWCO)を用いた酵素のろ過により反応を停止させた。アロース6-リン酸ホスファターゼを用い、P6PEについて説明したように、遊離リン酸の放出を検出して、生成物であるアロース6-リン酸(A6P)を測定した。プシコースと同様にして、HPLCによりアロースを確認した。別のA6PI、例えば、配列番号2に示すアミノ酸配列を有する、Symbiobacterium thermophilum由来のA6PI(Uniprot ID Q67LX4)を用いてもよい。
【0391】
配列番号3に示すアミノ酸配列を有する、Rubellimicrobium thermophilum由来のアロース6-リン酸ホスファターゼ(A6PP)(Uniprot ID S9SDA3)を用いた。5mMのMgCl2、500μMのCoCl2、1U/mLのP6PE、1U/mLのA6PI、及び10mMのF6Pを含有する50mMのHEPES緩衝液(pH7.2)中、50℃で活性を測定した。Vivaspin 2濃縮器(10,000 MWCO)を用いた酵素のろ過により反応を停止させた。P6PEについて説明したように、遊離リン酸の放出を検出することによって、生成物であるアロースを測定した。プシコースと同様にして、HPLCによりアロースを確認した。他のA6PP、例えば、配列番号4に記載のアミノ酸配列を有する、Thermotoga maritima由来のA6PP(Uniprot ID Q9X0Y1)、配列番号5に記載のアミノ酸配列を有する、Thermoanaerobacterium saccharolyticum由来のA6PP(Uniprot ID I3VT81)、配列番号6に記載のアミノ酸配列を有する、Streptomyces thermoautotrophicus由来のA6PP(Uniprot ID A0A132NF06)、及び配列番号7に記載のアミノ酸配列を有する、Sphaerobacter thermophilus由来のA6PP(Uniprot ID D1C7G9)を用いてもよい。
【0392】
配列番号8に示すアミノ酸配列を有する、Pseudonocardia thermophila由来のマンノース6-リン酸イソメラーゼ(M6PI)(Uniprot ID A0A1M6TLY7)を用いた。5mMのMgCl2、1U/mLのPGI、1U/mLのM6PP、及び10mMのF6Pを含有する50mMのHEPES緩衝液(pH7.2)中、50℃で活性を測定した。Vivaspin 2濃縮器(10,000 MWCO)を用いた酵素のろ過により反応を停止させた。マンノース6-リン酸ホスファターゼ(M6PP)を用い、P6PEについて説明したように、遊離リン酸の放出を検出して、生成物であるマンノース6-リン酸(M6P)を測定した。プシコースと同様にして、HPLCによりマンノースを確認した。他のM6PI、例えば、配列番号9に示すアミノ酸配列を有する、Caldithrix abyssi由来のM6PI(Uniprot ID H1XQS6)、配列番号10に示すアミノ酸配列を有する、Myceliophthora thermophila由来のM6PI(Uniprot ID G2Q982)、及び配列番号11に示すアミノ酸配列を有する、Treponema caldarium由来のM6PI(Uniprot ID F8F1Z8)を用いてもよい。
【0393】
配列番号12に示すアミノ酸配列を有する、Tepidimonas fonticaldi由来のマンノース6-リン酸ホスファターゼ(M6PP)(UniprotID A0A1A6DSI3)を用いた。5mMのMgCl2、及び10mMのマンノース6-リン酸を含有する50mMのHEPES緩衝液(pH7.2)中、50℃で活性を測定した。Vivaspin 2濃縮器(10,000 MWCO)を用いた酵素のろ過により反応を停止させた。P6PEについて説明したように、遊離リン酸の放出を検出することによって、生成物であるマンノースを測定した。プシコースと同様にして、HPLCによりマンノースを確認した。他のM6PP、例えば、配列番号13に示すアミノ酸配列を有する、Thermomonas hydrothermalis由来のM6PP(Uniprot ID A0A1M4UN08)、及び配列番号14に示すアミノ酸配列を有する、Sulfurivirga caldicuralii由来のM6PP(Uniprot ID A0A1N6FCW3)を用いてもよい。
【0394】
配列番号15に示すアミノ酸配列を有する、Syntrophothermus lipocalidus由来の二官能性ホスホグルコース/ホスホマンノースイソメラーゼ(PGPMI)(Uniprot ID D7CPH7)を用いた。5mMのMgCl2、1U/mLのM6PP、及び10mMのG6Pを含有する50mMのHEPES緩衝液(pH7.2)中、50℃で活性を測定した。Vivaspin 2濃縮器(10,000 MWCO)を用いた酵素のろ過により反応を停止させた。M6PPを用い、P6PEについて説明したように、遊離リン酸の放出を検出して、生成物であるM6Pを測定した。プシコースと同様にして、HPLCによりマンノースを確認した。他のPGPMI、例えば、配列番号16に示すアミノ酸配列を有する、Schleiferia thermophila由来のPGPMI(Uniprot ID A0A085L170)、及び配列番号17に示すアミノ酸配列を有する、Thermodesulfobium narugense由来のPGPMI(Uniprot ID M1E6Z3)を用いてもよい。
【0395】
Lactococcus lactis由来のガラクトース6-リン酸イソメラーゼ(Gal6PI)(偏性二量体;それぞれ配列番号18及び19に示すアミノ酸配列を有するUniprot ID P23494及びP23495)を用いる(van Rooijen et al. Molecular Cloning, Characterization, and Nucleotide Sequence of the Tagatose 6-Phosphate Pathway Gene Cluster of the Lactose Operon of Lactococcus Zactis. J. Biol. Chem. 1991;266:7176-7181)。5mMのMgCl2、1U/mLのフルクトース6-リン酸4-エピメラーゼ(F6PE)、1U/mLのガラクトース6-リン酸ホスファターゼ(Gal6PP)、及び10mMのフルクトース6リン酸を含有する50mMのHEPES緩衝液(pH7.2)中、37℃で活性を測定する。Vivaspin 2濃縮器(10,000 MWCO)を用いた酵素のろ過により反応を停止させる。Gal6PPを用い、P6PEについて説明したように、遊離リン酸の放出を検出して、生成物であるガラクトース6-リン酸(gal6P)を測定する。プシコースと同様にして、HPLCによりガラクトースを確認する。
【0396】
配列番号20に示すアミノ酸配列を有する、Bacteroides thetaiotaomicron由来のガラクトース6-リン酸ホスファターゼ(Gal6PP)(Uniprot ID Q8A2F3)を用いた。5mMのMgCl2、及び10mMのガラクトース6-リン酸を含有する50mMのHEPES緩衝液(pH7.2)中、50℃で活性を測定した。Vivaspin 2濃縮器(10,000 MWCO)を用いた酵素のろ過により反応を停止させた。P6PEについて説明したように、遊離リン酸の放出を検出することによって、生成物であるガラクトースを測定した。プシコースと同様にして、HPLCによりガラクトースを確認した。
【0397】
配列番号21に示すアミノ酸配列を有する、Halothermothrix orenii由来のフルクトース6-リン酸ホスファターゼ(F6PP)(Uniprot ID B8CWV3)を用いた。5mMのMgCl2、及び10mMのフルクトース6-リン酸を含有する50mMのHEPES緩衝液(pH7.2)中、50℃で活性を測定した。Vivaspin 2濃縮器(10,000 MWCO)を用いた酵素のろ過により反応を停止させた。P6PEについて説明したように、遊離リン酸の放出を検出することによって、生成物であるフルクトースを測定した。プシコースと同様にして、HPLCによりフルクトースを確認した。
【0398】
Archaeoglobus fugidis由来のタガトース6-リン酸ホスファターゼ(T6PP)(Uniprot ID A0A075WB87)を用いた。5mMのMgCl2及び10mMのT6Pを含有する50mMのHEPES緩衝液(pH7.2)中、50℃で活性を測定した。Vivaspin 2濃縮器(10,000 MWCO)を用いた酵素のろ過により反応を停止させた。F6PEについて説明したように、遊離リン酸の放出を検出することによって、タガトースの生成を測定した。
【0399】
Clostridium thermocellum由来のプシコース6-リン酸ホスファターゼ(P6PP)(UNIPROT ID A3DC21)を用いた。5mMのMgCl2、80μMのCoCl2、1U/mLのP6PE、及び10mMのF6Pを含有する50mMのHEPES緩衝液(pH7.2)中、50℃で活性を測定した。Vivaspin 2濃縮器(10,000 MWCO)を用いた酵素のろ過により反応を停止させた。P6PEについて説明したように、遊離リン酸の放出を検出することによって、生成物であるプシコースを測定した。
【0400】
以下のそれぞれの実施例で用いる酵素ユニットは、所望により反応時間を調整するために増減させてもよい。例えば、実施例9を24時間ではなく8時間で実施したい場合、当該酵素の単位を約3倍に増加させることとなる。逆に、実施例9を24時間ではなく48時間で実施したい場合には、当該酵素ユニットを約1/2に減少させることができる。これらの実施例は、酵素ユニットの量を使用して、一定の生産性を維持しながら反応時間を増減させる方法を例示する。
【0401】
全ての製品
【0402】
実施例1
【0403】
デンプンからのフルクトース6-リン酸の酵素的生合成の技術的実現可能性を検証するために、3種の酵素、すなわち、T. maritima由来のα-グルカンホスホリラーゼ(Uniprot ID G4FEH8)、Thermococcus kodakaraensis由来のホスホグルコムターゼ(Uniprot ID Q68BJ6)、及びClostridium thermocellum由来のホスホグルコイソメラーゼ(Uniprot ID A3DBX9)を組み換えにより発現させた。上記組換えタンパク質をE. coli BL21(DE3)中で過剰発現させ、上述のようにして精製した。
【0404】
10g/Lの可溶性デンプン、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、5mMのMgCl2、0.5mMのZnCl2、0.01UのαGP、0.01UのPGM、及び0.01UのPGIを含有する0.20mLの反応混合物を、50℃で24時間インキュベートした。Vivaspin 2濃縮器(10,000 MWCO)を用いた酵素のろ過により反応を停止させた。フルクトース6-リン酸キナーゼ(F6PK)/ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PK)/乳酸デヒドロゲナーゼ(LD)共役酵素アッセイを用いて、生成物であるフルクトース6-リン酸(F6P)を測定し、該測定においては、上記に説明したように、340nmの吸光度の減少がF6Pの生成を示す。24時間後のF6Pの最終濃度は3.6g/Lであった。
【0405】
実施例2
【0406】
実施例1におけるものと(反応温度以外)同様の試験を40~80℃で実施した。10g/Lの可溶性デンプンから、40時間の反応後に、40℃で0.9g/LのF6P、80℃で3.6g/LのF6Pが生成することがわかった。これらの結果は、この酵素の組み合わせに関しては、反応温度を高めるとF6P収率が増加するが、温度が高過ぎると一部の酵素活性が損なわれる可能性があることを示唆している。
【0407】
実施例3
【0408】
80℃で、約1:1:1のαGP:PGM:PGIの酵素比によって迅速にF6Pが生成することが見出された。反応時間が十分に長かった場合には、酵素比は最終的なF6P濃度に大きく影響しなかったことが注目された。ただし、酵素比は反応速度及び当該システムに使用する酵素の総コストに影響を及ぼす。
【0409】
実施例4
【0410】
10g/Lのマルトデキストリン、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、5mMのMgCl2、0.5mMのZnCl2、0.01UのαGP、0.01UのPGM、及び0.01UのPGIを含有する0.20mLの反応混合物を、50℃で24時間インキュベートした。Vivaspin 2濃縮器(10,000 MWCO)を用いた酵素のろ過により反応を停止させた。フルクトース6-リン酸キナーゼ(F6PK)/ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PK)/乳酸デヒドロゲナーゼ(LD)共役酵素アッセイを用いて、生成物であるフルクトース6-リン酸(F6P)を測定し、該測定においては、上記に説明したように、340nmの吸光度の減少がF6Pの生成を示す。24時間後のF6Pの最終濃度は3.6g/Lであった。
【0411】
実施例5
【0412】
AvicelからのF6Pの製造を試験するために、Sigmaセルラーゼを用い、50℃でセルロースを加水分解した。市販のセルラーゼからβ-グルコシダーゼを除去するために、10ろ紙分解ユニット/mLのセルラーゼを氷水浴中で10g/LのAvicelと10分間混合した。4℃で遠心分離した後、β-グルコシダーゼを含有する上清をデカントした。エンドグルカナーゼ及びセロビオヒドロラーゼを含有するセルラーゼと結合したAvicelをクエン酸緩衝液(pH4.8)中に再懸濁し、50℃で3日間加水分解した。このセルロース加水分解物を、10mMのリン酸、5mMのMgCl2、及び0.5mMのZnCl2を含有する100mMのHEPES緩衝液(pH7.2)中で、5U/mLのセロデキストリンホスホリラーゼ、5U/Lのセロビオースホスホリラーゼ、5U/mLのαGP、5U/mLのPGM、及び5U/mLのPGIと混合した。反応を60℃で72時間行い、高濃度のF6Pを認めた(少量のグルコースが存在し、セロビオースは存在せず)。F6Pを上述の共役酵素アッセイを用いて検出した。グルコースを上述のヘキソキナーゼ/G6PDHアッセイキットを用いて検出した。
【0413】
実施例6
【0414】
AvicelからのF6P収率を増加させるために、Zhang et al. A transition from cellulose swelling to cellulose dissolution by o-phosphoric acid: evidence from enzymatic hydrolysis and supramolecular structure. Biomacromolecules 2006;7:644-648に記載されるようにして、Avicelを濃リン酸で前処理して、非晶性セルロース(RAC)を生成させた。市販のセルラーゼからβ-グルコシダーゼを除去するために、10ろ紙分解ユニット/mLのセルラーゼを氷水浴中で10g/LのRACと5分間混合した。4℃で遠心分離した後、β-グルコシダーゼを含有する上清をデカントした。エンドグルカナーゼ及びセロビオヒドロラーゼを含有するセルラーゼと結合したRACをクエン酸緩衝液(pH4.8)中に再懸濁し、50℃で12時間加水分解した。このRAC加水分解物を、10mMのリン酸、5mMのMgCl2、及び0.5mMのZnCl2を含有する100mMのHEPES緩衝液(pH7.2)中で、5U/mLのセロデキストリンホスホリラーゼ、5U/Lのセロビオースホスホリラーゼ、5U/mLのαGP、5U/mLのPGM、及び5U/mLのPGIと混合した。反応を60℃で72時間行った。グルコースをF6Pに転化させるための酵素は添加しなかったため、高濃度のF6P及びグルコースが回収された。F6Pを上述の共役酵素アッセイを用いて検出した。グルコースを上述のヘキソキナーゼ/G6PDHアッセイキットを用いて検出した。
【0415】
実施例7
【0416】
RACからのF6P収率を更に増加させるために、ポリリン酸グルコキナーゼ及びポリリン酸を添加した。市販のセルラーゼからβ-グルコシダーゼを除去するために、10ろ紙分解ユニット/mLのセルラーゼを氷水浴中で10g/LのRACと5分間混合した。4℃で遠心分離した後、β-グルコシダーゼを含有する上清をデカントした。エンドグルカナーゼ及びセロビオヒドロラーゼを含有するセルラーゼと結合したRACをクエン酸緩衝液(pH4.8)中に再懸濁し、50℃で12時間インキュベートして加水分解させた。このRAC加水分解物を、50mMのポリリン酸、10mMのリン酸、5mMのMgCl2、及び0.5mMのZnCl2を含有する100mMのHEPES緩衝液(pH7.2)中で、5U/mLのポリリン酸グルコキナーゼ、5U/mLのセロデキストリンホスホリラーゼ、5U/Lのセロビオースホスホリラーゼ、5U/mLのαGP、5U/mLのPGM、及び5U/mLのPGIと混合した。反応を50℃で72時間行った。F6Pが高濃度で認められ、この段階で存在するグルコースは少量に過ぎなかった。F6Pを上述の共役酵素アッセイを用いて検出した。グルコースを上述のヘキソキナーゼ/G6PDHアッセイキットを用いて検出した。
【0417】
実施例8
【0418】
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)の濃度範囲を判定するために、50g/Lのマルトデキストリン、6.25mM、12.5mM、25mM、37.5mM、または50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、5mMのMgCl
2、0.1UのαGP、0.1UのPGM、及び0.1UのPGIを含有する0.20mLの反応混合物を50℃で6時間インキュベートした。反応時間を短時間にして、確実に反応が完結に至らないようにしたため、効率の差異を明確に確認できる。F6Pの生成量を、フルクトース6-リン酸キナーゼ(F6PK)/ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PK)/乳酸デヒドロゲナーゼ(LD)共役酵素アッセイを用いて定量し、該測定においては、340nmの吸光度の減少がF6Pの生成を示す。6.25mM、12.5mM、25mM、37.5mM、または50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)のいずれかを含有する反応液に対して、それぞれ4.5g/L、5.1g/L、5.6g/L、4.8g/L、または4.9g/LのF6Pの収量が得られた(表1)。これらの結果は、これらの特定の反応条件に対しては、25mMの濃度のPBS(pH7.2)が理想的であったことを示している。pH7.2で6.25mMのPBSを用いる場合であっても、リン酸のリサイクルに起因して、顕著なターンオーバーが生じることに留意することが重要である。このことは、開示するリン酸をリサイクルする方法が、工業レベルの容積生産性(例えば、200~300g/Lのマルトデキストリン)においてさえ、リン酸濃度を低く保つことができることを示している。
【表1】
【0419】
実施例9
【0420】
上記カスケード反応のpH範囲を判定するために、50g/Lのマルトデキストリン、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH6.0、6.2、6.4、6.6、6.8、7.0、7.2、または7.3)、5mMのMgCl
2、0.02UのαGP、0.02UのPGM、及び0.02UのPGIを含有する0.20mLの反応混合物を50℃で16時間インキュベートした。ユニットを少量にして、確実に反応が完結に至らないようにしたため、効率の差異を明確に確認できる。F6Pの生成量を実施例12と同様にして定量した。pH6.0、6.2、6.4、6.6、6.8、7.0、7.2、または7.3の、50mMのリン酸緩衝生理食塩水を含有する反応液に対して、それぞれ4.0g/L、4.1g/L、4.2g/L、4.1g/L、4.4g/L、4.1g/L、3.8g/L、または4.0g/LのF6Pの収量が得られた(表2)。これらの結果は、本システムは広いpH範囲にわたって機能はするが、これらの特定の反応条件に対しては、6.8のpHが理想的であったことを示している。
【表2】
【0421】
アロース
【0422】
実施例10
【0423】
F6Pからのアロースの製造を検証するために、5mMのMgCl2及び500μΜのCoCl2を含有する50mMのHEPES緩衝液(pH7.2)中で、10g/LのF6Pを1U/mLのP6PE、1U/mLのA6PI、及び1U/mLのA6PPと混合した。この反応液を50℃で3時間インキュベートした。F6Pのアロースへの転化を、Agilent Hi-Plex Hカラム及び屈折率検出器を使用したHPLC(Agilent 1100シリーズ)によって確認した。上記試料及び対照を、5mMのH2SO4中、0.6mL/分及び65℃で測定した。
【0424】
実施例11
【0425】
マルトデキストリンからのアロースの製造を検証するために、20g/Lのマルトデキストリン、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、5mMのMgCl2、500μΜのCoCl2、0.05UのαGP、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのP6PE、0.05UのA6PI、及び0.05UのA6PPを含有する0.20mLの反応混合物を50℃で24時間インキュベートした。Vivaspin 2濃縮器(10,000 MWCO)を用いた酵素のろ過により反応を停止させた。アロースを実施例10に記載したHPLCによって確認した。
【0426】
実施例12
【0427】
200g/Lのマルトデキストリン、10mMの酢酸緩衝液(pH5.5)、5mMのMgCl2、及び0.1g/Lのイソアミラーゼを含有する反応混合物を80℃で24時間インキュベートした。これを用いて、20g/Lのイソアミラーゼ処理マルトデキストリン、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、5mMのMgCl2、500μΜのCoCl2、0.05UのαGP、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのP6PE、0.05UのA6PI、及び0.05UのA6PPを含有する別の反応混合物をつくり、これを50℃で24時間インキュベートした。アロースの生成を実施例10の場合と同様にして確認した。
【0428】
実施例13
【0429】
マルトデキストリンからのアロース収率を更に増加させるために、0.05Uの4-グルカントランスフェラーゼ(4GT)を実施例11に記載の反応液に添加した。
【0430】
20g/Lのイソアミラーゼ処理マルトデキストリン(実施例12を参照のこと)、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、5mMのMgCl2、500μΜのCoCl2、0.05UのαGP、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのP6PE、0.05UのA6PI、0.05UのA6PP、及び0.05Uの4GTを含有する0.2mLの反応混合物を50℃で24時間インキュベートした。アロースの生成を実施例10の場合と同様にして確認した。
【0431】
実施例14
【0432】
マルトデキストリンからのアロース収率を更に増加させるために、0.05Uのマルトースホスホリラーゼを、実施例11に記載の反応液に添加する。
【0433】
実施例15
【0434】
マルトデキストリンからのアロース収率を更に増加させるために、0.05Uのポリリン酸グルコキナーゼ及び75mMのポリリン酸を実施例11に記載の反応液に添加する。
【0435】
実施例16
【0436】
フルクトースからアロースを製造するために、10g/Lのフルクトース、50mMのTris緩衝液(pH7.0)、75mMのポリリン酸、5mMのMgCl2、500μΜのCoCl2、0.05Uのフルクトースポリリン酸キナーゼ、0.05UのP6PE、0.05UのA6PI、及び0.05UのA6PPを含有する反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。アロースの生成量を実施例10の場合と同様にして定量する。
【0437】
実施例17
【0438】
グルコースからアロースを製造するために、10g/Lのグルコース、50mMのTris緩衝液(pH7.0)、75mMのポリリン酸、5mMのMgCl2、500μΜのCoCl2、0.05Uのグルコースポリリン酸キナーゼ、0.05UのPGI、0.05UのP6PE、0.05UのA6PI、及び0.05UのA6PPを含有する反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。アロースの生成量を実施例10の場合と同様にして定量する。
【0439】
実施例18
【0440】
スクロースからアロースを製造するために、10g/Lのスクロース、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.0)、5mMのMgCl2、500μΜのCoCl2、0.05Uのスクロースホスホリラーゼ、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのP6PE、0.05UのA6PI、及び0.05UのA6PPを含有する反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。アロースの生成量を実施例10の場合と同様にして定量する。
【0441】
実施例19
【0442】
スクロースからのアロースの収率を更に増加させるために、75mMのポリリン酸及び0.05Uのポリリン酸フルクトキナーゼを実施例18の反応混合物に添加する。アロースの生成量を実施例10の場合と同様にして定量する。
【0443】
マンノース
【0444】
実施例20
【0445】
F6Pからのマンノースの製造を検証するために、5mMのMgCl2を含有する50mMのHEPES緩衝液(pH7.2)中で、10g/LのF6Pを1U/mLのM6PI/PGPMI、及び1U/mLのM6PPと混合した。この反応液を50℃で3時間インキュベートした。F6Pのマンノースへの転化を、Agilent Hi-Plex Hカラム及び屈折率検出器を使用したHPLC(Agilent 1100シリーズ)によって確認した。上記試料及び対照を、5mMのH2SO4中、0.6mL/分及び65℃で測定した。
【0446】
実施例21
【0447】
マルトデキストリンからのマンノースの製造を検証するために、20g/Lのマルトデキストリン、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、5mMのMgCl2、0.05UのαGP、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのM6PI/PGPMI(PGPMIの場合PGIは不要)、及び0.05UのM6PPを含有する0.20mLの反応混合物を50℃で24時間インキュベートした。Vivaspin 2濃縮器(10,000 MWCO)を用いた酵素のろ過により反応を停止させた。マンノースを実施例20に記載したHPLCによって確認した。
【0448】
実施例22
【0449】
200g/Lのマルトデキストリン、10mMの酢酸緩衝液(pH5.5)、5mMのMgCl2、及び0.1g/Lのイソアミラーゼを含有する反応混合物を80℃で24時間インキュベートした。これを用いて、20g/Lのイソアミラーゼ処理マルトデキストリン、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、5mMのMgCl2、0.05UのαGP、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのM6PI/PGPMI(PGPMIの場合PGIは不要)、及び0.05UのM6PPを含有する別の反応混合物をつくり、これを50℃で24時間インキュベートした。マンノースの生成を実施例20の場合と同様にして確認した。
【0450】
実施例23
【0451】
マルトデキストリンからのマンノース収率を更に増加させるために、0.05Uの4-グルカントランスフェラーゼ(4GT)を実施例21に記載の反応液に添加した。
【0452】
20g/Lのイソアミラーゼ処理マルトデキストリン(実施例22を参照のこと)、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、5mMのMgCl2、0.05UのαGP、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのM6PI/PGPMI(PGPMIの場合PGIは不要)、0.05UのM6PP、及び0.05Uの4GTを含有する0.2mLの反応混合物を50℃で24時間インキュベートした。マンノースの生成を実施例20の場合と同様にして確認した。
【0453】
実施例24
【0454】
マルトデキストリンからのマンノース収率を更に増加させるために、0.05Uのマルトースホスホリラーゼを実施例21に記載の反応液に添加する。
【0455】
実施例25
【0456】
マルトデキストリンからのマンノース収率を更に増加させるために、0.05Uのポリリン酸グルコキナーゼ及び75mMのポリリン酸を実施例21に記載の反応液に添加する。
【0457】
実施例26
【0458】
フルクトースからマンノースを製造するために、10g/Lのフルクトース、50mMのTris緩衝液(pH7.0)、75mMのポリリン酸、5mMのMgCl2、0.05Uのフルクトースポリリン酸キナーゼ、0.05UのM6PI/PGPMI(PGPMIの場合PGIは不要)、及び0.05UのM6PPを含有する反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。マンノースの生成量を実施例20の場合と同様にして定量する。
【0459】
実施例27
【0460】
グルコースからマンノースを製造するために、10g/Lのグルコース、50mMのTris緩衝液(pH7.0)、75mMのポリリン酸、5mMのMgCl2、0.05Uのグルコースポリリン酸キナーゼ、0.05UのPGI、0.05UのM6PI/PGPMI(PGPMIの場合PGIは不要)、及び0.05UのM6PPを含有する反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。マンノースの生成量を実施例20の場合と同様にして定量する。
【0461】
実施例28
【0462】
スクロースからマンノースを製造するために、10g/Lのスクロース、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.0)、5mMのMgCl2、0.05Uのスクロースホスホリラーゼ、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのM6PI/PGPMI(PGPMIの場合PGIは不要)、及び0.05UのM6PPを含有する反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。マンノースの生成量を実施例20の場合と同様にして定量する。
【0463】
実施例29
【0464】
スクロースからのマンノースの収率を更に増加させるために、75mMのポリリン酸及び0.05Uのポリリン酸フルクトキナーゼを実施例28の反応混合物に添加する。マンノースの生成量を実施例20の場合と同様にして定量する。
【0465】
ガラクトース
【0466】
実施例30
【0467】
F6Pからのガラクトースの製造を検証するために、5mMのMgCl2を含有する50mMのHEPES緩衝液(pH7.2)中で、10g/LのF6Pを1U/mLのGal6PI、及び1U/mLのGal6PPと混合する。この反応液を37℃で3時間インキュベートする。F6Pのガラクトースへの転化を、Agilent Hi-Plex Hカラム及び屈折率検出器を使用したHPLC(Agilent 1100シリーズ)によって確認する。上記試料及び対照を、5mMのH2SO4中、0.6mL/分及び65℃で測定する。
【0468】
実施例31
【0469】
マルトデキストリンからのガラクトースの製造を検証するために、20g/Lのマルトデキストリン、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、5mMのMgCl2、0.05UのαGP、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのGal6PI、及び0.05UのGal6PPを含有する0.20mLの反応混合物を37℃で24時間インキュベートする。Vivaspin 2濃縮器(10,000 MWCO)を用いた酵素のろ過により反応を停止させる。ガラクトースを実施例30に記載したHPLCによって確認する。
【0470】
実施例32
【0471】
200g/Lのマルトデキストリン、10mMの酢酸緩衝液(pH5.5)、5mMのMgCl2、及び0.1g/Lのイソアミラーゼを含有する反応混合物を80℃で24時間インキュベートする。これを用いて、20g/Lのイソアミラーゼ処理マルトデキストリン、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、5mMのMgCl2、0.05UのαGP、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのGal6PI、及び0.05UのGal6PPを含有する別の反応混合物をつくり、これを37℃で24時間インキュベートする。ガラクトースの生成を実施例30の場合と同様にして確認する。
【0472】
実施例33
【0473】
マルトデキストリンからのガラクトース収率を更に増加させるために、0.05Uの4-グルカントランスフェラーゼ(4GT)を実施例31に記載の反応液に添加する。
【0474】
20g/Lのイソアミラーゼ処理マルトデキストリン(実施例12を参照のこと)、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、5mMのMgCl2、0.05UのαGP、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのGal6PI、0.05UのGal6PP、及び0.05Uの4GTを含有する0.2mLの反応混合物を37℃で24時間インキュベートする。ガラクトースの生成を実施例30の場合と同様にして確認する。
【0475】
実施例34
【0476】
マルトデキストリンからのガラクトース収率を更に増加させるために、0.05Uのマルトースホスホリラーゼを実施例31に記載の反応液に添加する。
【0477】
実施例35
【0478】
マルトデキストリンからのガラクトース収率を更に増加させるために、0.05Uのポリリン酸グルコキナーゼ及び75mMのポリリン酸を実施例31に記載の反応液に添加する。
【0479】
実施例36
【0480】
フルクトースからガラクトースを製造するために、10g/Lのフルクトース、50mMのTris緩衝液(pH7.0)、75mMのポリリン酸、5mMのMgCl2、0.05Uのフルクトースポリリン酸キナーゼ、0.05UのGal6PI、及び0.05UのGal6PPを含有する反応混合物を37℃で24時間インキュベートする。ガラクトースの生成量を実施例30の場合と同様にして定量する。
【0481】
実施例37
【0482】
グルコースからガラクトースを製造するために、10g/Lのグルコース、50mMのTris緩衝液(pH7.0)、75mMのポリリン酸、5mMのMgCl2、0.05Uのグルコースポリリン酸キナーゼ、0.05UのPGI、0.05UのGal6PI、及び0.05UのGal6PPを含有する反応混合物を37℃で24時間インキュベートする。ガラクトースの生成量を実施例30の場合と同様にして定量する。
【0483】
実施例38
【0484】
スクロースからガラクトースを製造するために、10g/Lのスクロース、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.0)、5mMのMgCl2、0.05Uのスクロースホスホリラーゼ、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのGal6PI、及び0.05UのGal6PPを含有する反応混合物を37℃で24時間インキュベートする。ガラクトースの生成量を実施例30の場合と同様にして定量する。
【0485】
実施例39
【0486】
スクロースからのガラクトースの収率を更に増加させるために、75mMのポリリン酸及び0.05Uのポリリン酸フルクトキナーゼを実施例38の反応混合物に添加する。ガラクトースの生成量を実施例30の場合と同様にして定量する。
【0487】
実施例40
【0488】
Gal6Pからのガラクトースの製造を検証するために、5mMのMgCl2を含有する50mMのHEPES緩衝液(pH7.2)中で、10g/LのGal6Pを1U/mLのGal6PPと混合した。この反応液を50℃で1時間インキュベートした。Gal6Pのガラクトースへの転化を遊離リン酸の検出によって確認する。遊離リン酸の放出を検出するために、0.1Mの酢酸亜鉛及び2mMのモリブデン酸アンモニウムを含有する500μLの溶液(pH5)を50μLの反応液に添加した。この溶液を混合し、続いて125μlの5%アスコルビン酸(pH5)を添加した。この溶液を混合し、次いで30℃で20分間インキュベートした。850nmでの吸光度を読み取って、遊離リン酸の放出を測定した。
【0489】
フルクトース
【0490】
実施例41
【0491】
F6Pからのフルクトースの製造を検証するために、5mMのMgCl2を含有する50mMのHEPES緩衝液(pH7.2)中で、10g/LのF6Pを1U/mLのF6PPと混合した。この反応液を50℃で3時間インキュベートした。F6Pのフルクトースへの転化を、Agilent Hi-Plex Hカラム及び屈折率検出器を使用したHPLC(Agilent 1100シリーズ)によって確認した。上記試料及び対照を、5mMのH2SO4中、0.6mL/分及び65℃で測定した。
【0492】
実施例42
【0493】
マルトデキストリンからのフルクトースの製造を検証するために、20g/Lのマルトデキストリン、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、5mMのMgCl2、0.05UのαGP、0.05UのPGM、0.05UのPGI、及び0.05UのF6PPを含有する0.20mLの反応混合物を50℃で24時間インキュベートした。Vivaspin 2濃縮器(10,000 MWCO)を用いた酵素のろ過により反応を停止させた。フルクトースを実施例41に記載したHPLCによって確認した。
【0494】
実施例43
【0495】
200g/Lのマルトデキストリン、10mMの酢酸緩衝液(pH5.5)、5mMのMgCl2、及び0.1g/Lのイソアミラーゼを含有する反応混合物を80℃で24時間インキュベートした。これを用いて、20g/Lのイソアミラーゼ処理マルトデキストリン、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、5mMのMgCl2、0.05UのαGP、0.05UのPGM、0.05UのPGI、及び0.05UのF6PPを含有する別の反応混合物をつくり、これを50℃で24時間インキュベートした。フルクトースの生成を実施例41の場合と同様にして確認した。
【0496】
実施例44
【0497】
マルトデキストリンからのフルクトース収率を更に増加させるために、0.05Uの4-グルカントランスフェラーゼ(4GT)を実施例42に記載の反応液に添加した。
【0498】
20g/Lのイソアミラーゼ処理マルトデキストリン(実施例12を参照のこと)、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、5mMのMgCl2、0.05UのαGP、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのF6PP、及び0.05Uの4GTを含有する0.2mLの反応混合物を50℃で24時間インキュベートした。フルクトースの生成を実施例41の場合と同様にして確認した。
【0499】
実施例45
【0500】
マルトデキストリンからのフルクトース収率を更に増加させるために、0.05Uのマルトースホスホリラーゼを実施例42に記載の反応液に添加する。
【0501】
実施例46
【0502】
マルトデキストリンからのフルクトース収率を更に増加させるために、0.05Uのポリリン酸グルコキナーゼ及び75mMのポリリン酸を実施例42に記載の反応液に添加する。
【0503】
実施例47
【0504】
グルコースからフルクトースを製造するために、10g/Lのグルコース、50mMのTris緩衝液(pH7.0)、75mMのポリリン酸、5mMのMgCl2、0.05Uのグルコースポリリン酸キナーゼ、0.05UのPGI、及び0.05UのF6PPを含有する反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。フルクトースの生成量を実施例41の場合と同様にして定量する。
【0505】
実施例48
【0506】
スクロースからフルクトースを製造するために、10g/Lのスクロース、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.0)、5mMのMgCl2、0.05Uのスクロースホスホリラーゼ、0.05UのPGM、0.05UのPGI、及び0.05UのF6PPを含有する反応混合物を50℃で24時間インキュベートした。フルクトースの生成量を実施例41の場合と同様にして定量した。
【0507】
アルトロース
【0508】
実施例49
【0509】
F6Pからのアルトロースの製造を検証するために、5mMのMgCl2を含有する50mMのHEPES緩衝液(pH7.2)中で、10g/LのF6Pを1U/mLのP6PE、1U/mLのアルトロース6-リン酸イソメラーゼ(Alt6PI)、及び1U/mLのアルトロース6-リン酸ホスファターゼ(Alt6PP)と混合する。この反応液を50℃で3時間インキュベートする。F6Pのアルトロースへの転化を、Agilent Hi-Plex Hカラム及び屈折率検出器を使用したHPLC(Agilent 1100シリーズ)によって確認する。上記試料及び対照を、5mMのH2SO4中、0.6mL/分及び65℃で測定する。
【0510】
実施例50
【0511】
マルトデキストリンからのアルトロースの製造を検証するために、20g/Lのマルトデキストリン、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、5mMのMgCl2、0.05UのαGP、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのP6PE、0.05UのAlt6PI、及び0.05UのAlt6PPを含有する0.20mLの反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。Vivaspin 2濃縮器(10,000 MWCO)を用いた酵素のろ過により反応を停止する。アルトロースを実施例49に記載したHPLCによって確認する。
【0512】
実施例51
【0513】
200g/Lのマルトデキストリン、10mMの酢酸緩衝液(pH5.5)、5mMのMgCl2、及び0.1g/Lのイソアミラーゼを含有する反応混合物を80℃で24時間インキュベートする。これを用いて、20g/Lのイソアミラーゼ処理マルトデキストリン、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、5mMのMgCl2、0.05UのαGP、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのP6PE、0.05UのAlt6PI、及び0.05UのAlt6PPを含有する別の反応混合物をつくり、これを50℃で24時間インキュベートする。アルトロースの生成を実施例49の場合と同様にして確認する。
【0514】
実施例52
【0515】
マルトデキストリンからのアルトロース収率を更に増加させるために、0.05Uの4-グルカントランスフェラーゼ(4GT)を実施例50に記載の反応液に添加する。
【0516】
20g/Lのイソアミラーゼ処理マルトデキストリン(実施例50を参照のこと)、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、5mMのMgCl2、0.05UのαGP、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのP6PE、0.05UのAlt6PI、0.05UのAlt6PP、及び0.05Uの4GTを含有する0.2mLの反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。アルトロースの生成を実施例49の場合と同様にして確認する。
【0517】
実施例53
【0518】
マルトデキストリンからのアルトロース収率を更に増加させるために、0.05Uのマルトースホスホリラーゼを実施例50に記載の反応液に添加する。
【0519】
実施例54
【0520】
マルトデキストリンからのアルトロース収率を更に増加させるために、0.05Uのポリリン酸グルコキナーゼ及び75mMのポリリン酸を実施例50に記載の反応液に添加する。
【0521】
実施例55
【0522】
フルクトースからアルトロースを製造するために、10g/Lのフルクトース、50mMのTris緩衝液(pH7.0)、75mMのポリリン酸、5mMのMgCl2、0.05Uのフルクトースポリリン酸キナーゼ、0.05UのP6PE、0.05UのAlt6PI、及び0.05UのAlt6PPを含有する反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。アルトロースの生成量を実施例49の場合と同様にして定量する。
【0523】
実施例56
【0524】
グルコースからアルトロースを製造するために、10g/Lのグルコース、50mMのTris緩衝液(pH7.0)、75mMのポリリン酸、5mMのMgCl2、0.05Uのグルコースポリリン酸キナーゼ、0.05UのPGI、0.05UのP6PE、0.05UのAlt6PI、及び0.05UのAlt6PPを含有する反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。アルトロースの生成量を実施例49の場合と同様にして定量する。
【0525】
実施例57
【0526】
スクロースからアルトロースを製造するために、10g/Lのスクロース、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.0)、5mMのMgCl2、0.05Uのスクロースホスホリラーゼ、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのP6PE、0.05UのAlt6PI、及び0.05UのAlt6PPを含有する反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。アルトロースの生成量を実施例49の場合と同様にして定量する。
【0527】
実施例58
【0528】
スクロースからのアルトースの収率を更に増加させるために、75mMのポリリン酸及び0.05Uのポリリン酸フルクトキナーゼを実施例56の反応混合物に添加する。アルトースの生成量を実施例49の場合と同様にして定量する。
【0529】
タロース
【0530】
実施例59
【0531】
F6Pからのタロースの製造を検証するために、5mMのMgCl2を含有する50mMのHEPES緩衝液(pH7.2)中で、10g/LのF6Pを1U/mLのF6PE、1U/mLのタロース6-リン酸イソメラーゼ(Tal6PI)、及び1U/mLのタロース6-リン酸ホスファターゼ(Tal6PP)と混合する。この反応液を50℃で3時間インキュベートする。F6Pのタロースへの転化を、Agilent Hi-Plex Hカラム及び屈折率検出器を使用したHPLC(Agilent 1100シリーズ)によって確認する。上記試料及び対照を、5mMのH2SO4中、0.6mL/分及び65℃で測定する。
【0532】
実施例60
【0533】
マルトデキストリンからのタロースの製造を検証するために、20g/Lのマルトデキストリン、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、5mMのMgCl2、0.05UのαGP、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのF6PE、0.05UのTal6PI、及び0.05UのTal6PPを含有する0.20mLの反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。Vivaspin 2濃縮器(10,000 MWCO)を用いた酵素のろ過により反応を停止させる。タロースを実施例59に記載したHPLCによって確認する。
【0534】
実施例61
【0535】
200g/Lのマルトデキストリン、10mMの酢酸緩衝液(pH5.5)、5mMのMgCl2、及び0.1g/Lのイソアミラーゼを含有する反応混合物を80℃で24時間インキュベートする。これを用いて、20g/Lのイソアミラーゼ処理マルトデキストリン、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、5mMのMgCl2、0.05UのαGP、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのF6PE、0.05UのTal6PI、及び0.05UのTal6PPを含有する別の反応混合物をつくり、これを50℃で24時間インキュベートする。タロースの生成を実施例59の場合と同様にして確認する。
【0536】
実施例62
【0537】
マルトデキストリンからのタロース収率を更に増加させるために、0.05Uの4-グルカントランスフェラーゼ(4GT)を実施例60に記載の反応液に添加する。
【0538】
20g/Lのイソアミラーゼ処理マルトデキストリン(実施例60を参照のこと)、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、5mMのMgCl2、0.05UのαGP、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのF6PE、0.05UのTal6PI、0.05UのTal6PP、及び0.05Uの4GTを含有する0.2mLの反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。タロースの生成を実施例59の場合と同様にして確認する。
【0539】
実施例63
【0540】
マルトデキストリンからのタロース収率を更に増加させるために、0.05Uのマルトースホスホリラーゼを実施例59に記載の反応液に添加する。
【0541】
実施例64
【0542】
マルトデキストリンからのタロース収率を更に増加させるために、0.05Uのポリリン酸グルコキナーゼ及び75mMのポリリン酸を実施例60に記載の反応液に添加する。
【0543】
実施例65
【0544】
フルクトースからタロースを製造するために、10g/Lのフルクトース、50mMのTris緩衝液(pH7.0)、75mMのポリリン酸、5mMのMgCl2、0.05Uのフルクトースポリリン酸キナーゼ、0.05UのF6PE、0.05UのTal6PI、及び0.05UのTal6PPを含有する反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。タロースの生成量を実施例59の場合と同様にして定量する。
【0545】
実施例66
【0546】
グルコースからタロースを製造するために、10g/Lのグルコース、50mMのTris緩衝液(pH7.0)、75mMのポリリン酸、5mMのMgCl2、0.05Uのグルコースポリリン酸キナーゼ、0.05UのPGI、0.05UのF6PE、0.05UのTal6PI、及び0.05UのTal6PPを含有する反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。タロースの生成量を実施例59の場合と同様にして定量する。
【0547】
実施例67
【0548】
スクロースからタロースを製造するために、10g/Lのスクロース、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.0)、5mMのMgCl2、0.05Uのスクロースホスホリラーゼ、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのF6PE、0.05UのTal6PI、及び0.05UのTal6PPを含有する反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。タロースの生成量を実施例59の場合と同様にして定量する。
【0549】
実施例68
【0550】
スクロースからのタロースの収率を更に増加させるために、75mMのポリリン酸及び0.05Uのポリリン酸フルクトキナーゼを実施例66の反応混合物に添加する。タロースの生成量を実施例59の場合と同様にして定量する。
【0551】
ソルボース
【0552】
実施例69
【0553】
F6Pからのソルボースの製造を検証するために、5mMのMgCl2を含有する50mMのHEPES緩衝液(pH7.2)中で、10g/LのF6Pを1U/mLのF6PE、1U/mLのソルボース6-リン酸3-エピメラーゼ(S6PE)、及び1U/mLのソルボース6-リン酸ホスファターゼ(S6PP)と混合する。この反応液を50℃で3時間インキュベートする。F6Pのソルボースへの転化を、Agilent Hi-Plex Hカラム及び屈折率検出器を使用したHPLC(Agilent 1100シリーズ)によって確認する。上記試料及び対照を、5mMのH2SO4中、0.6mL/分及び65℃で測定する。
【0554】
実施例70
【0555】
マルトデキストリンからのソルボースの製造を検証するために、20g/Lのマルトデキストリン、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、5mMのMgCl2、0.05UのαGP、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのF6PE、0.05UのS6PE、及び0.05UのS6PPを含有する0.20mLの反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。Vivaspin 2濃縮器(10,000 MWCO)を用いた酵素のろ過により反応を停止させる。ソルボースを実施例68に記載したHPLCによって確認する。
【0556】
実施例71
【0557】
200g/Lのマルトデキストリン、10mMの酢酸緩衝液(pH5.5)、5mMのMgCl2、及び0.1g/Lのイソアミラーゼを含有する反応混合物を80℃で24時間インキュベートする。これを用いて、20g/Lのイソアミラーゼ処理マルトデキストリン、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、5mMのMgCl2、0.05UのαGP、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのF6PE、0.05UのS6PE、及び0.05UのS6PPを含有する別の反応混合物をつくり、これを50℃で24時間インキュベートする。ソルボースの生成を実施例69の場合と同様にして確認する。
【0558】
実施例72
【0559】
マルトデキストリンからのソルボース収率を更に増加させるために、0.05Uの4-グルカントランスフェラーゼ(4GT)を実施例70に記載の反応液に添加する。
【0560】
20g/Lのイソアミラーゼ処理マルトデキストリン(実施例70を参照のこと)、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、5mMのMgCl2、0.05UのαGP、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのF6PE、0.05UのS6PE、0.05UのS6PP、及び0.05Uの4GTを含有する0.2mLの反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。ソルボースの生成を実施例69の場合と同様にして確認する。
【0561】
実施例73
【0562】
マルトデキストリンからのソルボース収率を更に増加させるために、0.05Uのマルトースホスホリラーゼを実施例70に記載の反応液に添加する。
【0563】
実施例74
【0564】
マルトデキストリンからのソルボース収率を更に増加させるために、0.05Uのポリリン酸グルコキナーゼ及び75mMのポリリン酸を実施例69に記載の反応液に添加する。
【0565】
実施例75
【0566】
フルクトースからソルボースを製造するために、10g/Lのフルクトース、50mMのTris緩衝液(pH7.0)、75mMのポリリン酸、5mMのMgCl2、0.05Uのフルクトースポリリン酸キナーゼ、0.05UのF6PE、0.05UのS6PE、及び0.05UのS6PPを含有する反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。ソルボースの生成量を実施例69の場合と同様にして定量する。
【0567】
実施例76
【0568】
グルコースからソルボースを製造するために、10g/Lのグルコース、50mMのTris緩衝液(pH7.0)、75mMのポリリン酸、5mMのMgCl2、0.05Uのグルコースポリリン酸キナーゼ、0.05UのPGI、0.05UのF6PE、0.05UのS6PE、及び0.05UのS6PPを含有する反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。ソルボースの生成量を実施例69の場合と同様にして定量する。
【0569】
実施例77
【0570】
スクロースからソルボースを製造するために、10g/Lのスクロース、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.0)、5mMのMgCl2、0.05Uのスクロースホスホリラーゼ、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのF6PE、0.05UのS6PE、及び0.05UのS6PPを含有する反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。ソルボースの生成量を実施例69の場合と同様にして定量する。
【0571】
実施例78
【0572】
スクロースからのソルボースの収率を更に増加させるために、75mMのポリリン酸及び0.05Uのポリリン酸フルクトキナーゼを実施例76の反応混合物に添加する。ソルボースの生成量を実施例69の場合と同様にして定量する。
【0573】
グロース
【0574】
実施例79
【0575】
F6Pからのグロースの製造を検証するために、5mMのMgCl2を含有する50mMのHEPES緩衝液(pH7.2)中で、10g/LのF6Pを1U/mLのF6PE、1U/mLのS6PE、1U/mLのグロース6-リン酸イソメラーゼ(Gul6PI)、及び1U/mLのグロース6-リン酸ホスファターゼ(Gul6PP)と混合する。この反応液を50℃で3時間インキュベートする。F6Pのグロースへの転化を、Agilent Hi-Plex Hカラム及び屈折率検出器を使用したHPLC(Agilent 1100シリーズ)によって確認する。上記試料及び対照を、5mMのH2SO4中、0.6mL/分及び65℃で測定する。
【0576】
実施例80
【0577】
マルトデキストリンからのグロースの製造を検証するために、20g/Lのマルトデキストリン、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、5mMのMgCl2、0.05UのαGP、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのF6PE、0.05UのS6PE、0.05UのGul6PI、及び0.05UのGul6PPを含有する0.20mLの反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。Vivaspin 2濃縮器(10,000 MWCO)を用いた酵素のろ過により反応を停止させる。グロースを実施例79に記載したHPLCによって確認する。
【0578】
実施例81
【0579】
200g/Lのマルトデキストリン、10mMの酢酸緩衝液(pH5.5)、5mMのMgCl2、及び0.1g/Lのイソアミラーゼを含有する反応混合物を80℃で24時間インキュベートする。これを用いて、20g/Lのイソアミラーゼ処理マルトデキストリン、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、5mMのMgCl2、0.05UのαGP、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのF6PE、0.05UのS6PE、0.05UのGul6PI、及び0.05UのGul6PPを含有する別の反応混合物をつくり、これを50℃で24時間インキュベートする。グロースの生成を実施例79の場合と同様にして確認する。
【0580】
実施例82
【0581】
マルトデキストリンからのグロース収率を更に増加させるために、0.05Uの4-グルカントランスフェラーゼ(4GT)を実施例80に記載の反応液に添加する。
【0582】
20g/Lのイソアミラーゼ処理マルトデキストリン(実施例80を参照のこと)、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、5mMのMgCl2、0.05UのαGP、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのF6PE、0.05UのS6PE、0.05UのGul6PI、0.05UのGul6PP、及び0.05Uの4GTを含有する0.2mLの反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。グロースの生成を実施例79の場合と同様にして確認する。
【0583】
実施例83
【0584】
マルトデキストリンからのグロース収率を更に増加させるために、0.05Uのマルトースホスホリラーゼを実施例80に記載の反応液に添加する。
【0585】
実施例84
【0586】
マルトデキストリンからのグロース収率を更に増加させるために、0.05Uのポリリン酸グルコキナーゼ及び75mMのポリリン酸を実施例80に記載の反応液に添加する。
【0587】
実施例85
【0588】
フルクトースからグロースを製造するために、10g/Lのフルクトース、50mMのTris緩衝液(pH7.0)、75mMのポリリン酸、5mMのMgCl2、0.05Uのフルクトースポリリン酸キナーゼ、0.05UのF6PE、0.05UのS6PE、0.05UのGul6PI、及び0.05UのGul6PPを含有する反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。グロースの生成量を実施例79の場合と同様にして定量する。
【0589】
実施例86
【0590】
グルコースからグロースを製造するために、10g/Lのグルコース、50mMのTris緩衝液(pH7.0)、75mMのポリリン酸、5mMのMgCl2、0.05Uのグルコースポリリン酸キナーゼ、0.05UのPGI、0.05UのF6PE、0.05UのS6PE、0.05UのGul6PI、及び0.05UのGul6PPを含有する反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。グロースの生成量を実施例79の場合と同様にして定量する。
【0591】
実施例87
【0592】
スクロースからグロースを製造するために、10g/Lのスクロース、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.0)、5mMのMgCl2、0.05Uのスクロースホスホリラーゼ、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのF6PE、0.05UのS6PE、0.05UのGul6PI、及び0.05UのGul6PPを含有する反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。グロースの生成量を実施例79の場合と同様にして定量する。
【0593】
実施例88
【0594】
スクロースからのグロースの収率を更に増加させるために、75mMのポリリン酸及び0.05Uのポリリン酸フルクトキナーゼを実施例86の反応混合物に添加する。グロースの生成量を実施例79の場合と同様にして定量する。
【0595】
イドース
【0596】
実施例89
【0597】
F6Pからのイドースの製造を検証するために、5mMのMgCl2を含有する50mMのHEPES緩衝液(pH7.2)中で、10g/LのF6Pを1U/mLのF6PE、1U/mLのS6PE、1U/mLのイドース6-リン酸イソメラーゼ(I6PI)、及び1U/mLのイドース6-リン酸ホスファターゼ(I6PP)と混合する。この反応液を50℃で3時間インキュベートする。F6Pのイドースへの転化を、Agilent Hi-Plex Hカラム及び屈折率検出器を使用したHPLC(Agilent 1100シリーズ)によって確認する。上記試料及び対照を、5mMのH2SO4中、0.6mL/分及び65℃で測定する。
【0598】
実施例90
【0599】
マルトデキストリンからのイドースの製造を検証するために、20g/Lのマルトデキストリン、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、5mMのMgCl2、0.05UのαGP、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのF6PE、0.05UのS6PE、0.05UのI6PI、及び0.05UのI6PPを含有する0.20mLの反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。Vivaspin 2濃縮器(10,000 MWCO)を用いた酵素のろ過により反応を停止させる。イドースを実施例89に記載したHPLCによって確認する。
【0600】
実施例91
【0601】
200g/Lのマルトデキストリン、10mMの酢酸緩衝液(pH5.5)、5mMのMgCl2、及び0.1g/Lのイソアミラーゼを含有する反応混合物を80℃で24時間インキュベートする。これを用いて、20g/Lのイソアミラーゼ処理マルトデキストリン、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、5mMのMgCl2、0.05UのαGP、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのF6PE、0.05UのS6PE、0.05UのI6PI、及び0.05UのI6PPを含有する別の反応混合物をつくり、これを50℃で24時間インキュベートする。イドースの生成を実施例89の場合と同様にして確認する。
【0602】
実施例92
【0603】
マルトデキストリンからのイドース収率を更に増加させるために、0.05Uの4-グルカントランスフェラーゼ(4GT)を実施例90に記載の反応液に添加する。
【0604】
20g/Lのイソアミラーゼ処理マルトデキストリン(実施例90を参照のこと)、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、5mMのMgCl2、0.05UのαGP、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのF6PE、0.05UのS6PE、0.05UのI6PI、0.05UのI6PP、及び0.05Uの4GTを含有する0.2mLの反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。イドースの生成を実施例89の場合と同様にして確認する。
【0605】
実施例93
【0606】
マルトデキストリンからのイドース収率を更に増加させるために、0.05Uのマルトースホスホリラーゼを実施例90に記載の反応液に添加する。
【0607】
実施例94
【0608】
マルトデキストリンからのイドース収率を更に増加させるために、0.05Uのポリリン酸グルコキナーゼ及び75mMのポリリン酸を実施例90に記載の反応液に添加する。
【0609】
実施例95
【0610】
フルクトースからイドースを製造するために、10g/Lのフルクトース、50mMのTris緩衝液(pH7.0)、75mMのポリリン酸、5mMのMgCl2、0.05Uのフルクトースポリリン酸キナーゼ、0.05UのF6PE、0.05UのS6PE、0.05UのI6PI、及び0.05UのI6PPを含有する反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。イドースの生成量を実施例89の場合と同様にして定量する。
【0611】
実施例96
【0612】
グルコースからイドースを製造するために、10g/Lのグルコース、50mMのTris緩衝液(pH7.0)、75mMのポリリン酸、5mMのMgCl2、0.05Uのグルコースポリリン酸キナーゼ、0.05UのPGI、0.05UのF6PE、0.05UのS6PE、0.05UのI6PI、及び0.05UのI6PPを含有する反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。イドースの生成量を実施例89の場合と同様にして定量する。
【0613】
実施例97
【0614】
スクロースからイドースを製造するために、10g/Lのスクロース、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.0)、5mMのMgCl2、0.05Uのスクロースホスホリラーゼ、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのF6PE、0.05UのS6PE、0.05UのI6PI、及び0.05UのI6PPを含有する反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。イドースの生成量を実施例89の場合と同様にして定量する。
【0615】
実施例98
【0616】
スクロースからのイドースの収率を更に増加させるために、75mMのポリリン酸及び0.05Uのポリリン酸フルクトキナーゼを実施例96の反応混合物に添加する。イドースの生成量を実施例89の場合と同様にして定量する。
【0617】
タガトース
【0618】
実施例99
【0619】
F6Pからのタガトースの製造を検証するために、5mMのMgCl2を含有する50mMのHEPES緩衝液(pH7.2)中で、2g/LのF6Pを1U/mLのフルクトース6-リン酸エピメラーゼ(F6PE)及び1U/mLのタガトース6-リン酸ホスファターゼ(T6PP)と混合した。この反応液を50℃で16時間インキュベートした。Agilent Hi-Plex Hカラム及び屈折率検出器を使用したHPLC(Agilent 1100シリーズ)によって、F6Pのタガトースへの100%転化を確認する。上記試料を、5mMのH2SO4中、0.6mL/分で測定した。
【0620】
実施例100
【0621】
マルトデキストリンからのタガトースの製造を検証するために、20g/Lのマルトデキストリン、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、5mMのMgCl2、0.05UのαGP、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのF6PE、及び0.05UのT6PPを含有する0.20mLの反応混合物を50℃で24時間インキュベートした。Vivaspin 2濃縮器(10,000 MWCO)を用いた酵素のろ過により反応を停止させた。屈折率検出器及びAgilent Hi-Plex Hカラムを備えたAgilent 1100シリーズHPLCを用いてタガトースを検出及び定量した。移動相は5mMのH2SO4であり、該移動相は0.6mL/分で流通させた。9.2g/Lの収量のタガトースが得られた。これは、イソアミラーゼまたは4-グルカントランスフェラーゼなどの酵素の非存在下でのマルトデキストリンの分解の制限に起因して、理論収量の92%に等しい。種々の濃度のタガトースの標準試料を用いて、本発明者らによる実験の収量を定量した。
【0622】
実施例101
【0623】
200g/Lのマルトデキストリン、10mMの酢酸緩衝液(pH5.5)、5mMのMgCl2、及び0.1g/Lのイソアミラーゼを含有する反応混合物を80℃で24時間インキュベートした。これを用いて、20g/Lのイソアミラーゼ処理マルトデキストリン、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、5mMのMgCl2、0.05UのαGP、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのF6PE、及び0.05UのT6PPを含有する別の反応混合物をつくり、これを50℃で24時間インキュベートした。タガトースの生成量を実施例99の場合と同様にして定量した。イソアミラーゼによるマルトデキストリンの前処理により、タガトースの収量は16g/Lへと増加した。これは理論収量の80%に等しい。
【0624】
実施例102
【0625】
マルトデキストリンからのタガトース収率を更に増加させるために、0.05Uの4-グルカントランスフェラーゼ(4GT)を実施例100に記載の反応液に添加した。
【0626】
20g/Lのイソアミラーゼ処理マルトデキストリン(実施例9を参照のこと)、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、5mMのMgCl2、0.05UのαGP、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのF6PE、0.05UのT6PP、及び0.05Uの4GTを含有する0.2mLの反応混合物を50℃で24時間インキュベートした。タガトースの生成量を実施例9の場合と同様にして定量した。IA処理マルトデキストリンへの4GTの添加により、タガトースの収量は17.7g/Lへと増加した。これは理論収量の88.5%に等しい。
【0627】
実施例103
【0628】
50g/Lのイソアミラーゼ処理マルトデキストリン(実施例99を参照のこと)、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、5mMのMgCl2、10UのαGP、10UのPGM、10UのPGI、10UのF6PE、及び10UのT6PPを含有する20mLの反応混合物を50℃で24時間インキュベートした。タガトースの生成量を実施例8の場合と同様にして定量した。タガトースの収量は、20mLスケール且つ50g/Lのマルトデキストリンにおいて37.6g/Lであった。これは理論収量の75%に等しい。これらの結果は、より大きな反応液量にスケールアップしても、収量の顕著な低下が生じることはないことを示している。
【0629】
実施例104
【0630】
マルトデキストリンからのタガトース収率を更に増加させるために、0.05Uのマルトースホスホリラーゼを実施例100に記載の反応液に添加する。
【0631】
実施例105
【0632】
マルトデキストリンからのタガトース収率を更に増加させるために、0.05Uのポリリン酸グルコキナーゼ及び75mMのポリリン酸を実施例99に記載の反応液に添加する。
【0633】
実施例106
【0634】
フルクトースからタガトースを製造するために、10g/Lのフルクトース、50mMのTris緩衝液(pH7.0)、75mMのポリリン酸、5mMのMgCl2、0.05Uのフルクトースポリリン酸キナーゼ、0.05UのF6PE、及び0.05UのT6PPを含有する反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。タガトースの生成量を実施例100の場合と同様にして定量する。
【0635】
実施例107
【0636】
グルコースからタガトースを製造するために、10g/Lのグルコース、50mMのTris緩衝液(pH7.0)、75mMのポリリン酸、5mMのMgCl2、0.05Uのグルコースポリリン酸キナーゼ、0.05UのPGI、0.05UのF6PE、及び0.05UのT6PPを含有する反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。タガトースの生成量を実施例100の場合と同様にして定量する。
【0637】
実施例108
【0638】
スクロースからタガトースを製造するために、10g/Lのスクロース、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.0)、5mMのMgCl2、0.05Uのスクロースホスホリラーゼ、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのF6PE、及び0.05UのT6PPを含有する反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。タガトースの生成量を実施例100の場合と同様にして定量する。
【0639】
実施例109
【0640】
スクロースからのタガトースの収率を更に増加させるために、75mMのポリリン酸及び0.05Uのポリリン酸フルクトキナーゼを実施例15の反応混合物に添加する。タガトースの生成量を実施例100の場合と同様にして定量する。
【0641】
プシコース
【0642】
実施例110
【0643】
F6Pからのプシコースの製造を検証するために、5mMのMgCl2及び80μMのCoCl2を含有する50mMのHEPES緩衝液(pH7.2)中で、2g/LのF6Pを1U/mLのP6PE及び1U/mLのP6PPと混合した。この反応液を50℃で6時間インキュベートした。Agilent Hi-Plex Hカラム及び屈折率検出器を使用したHPLC(Agilent 1100シリーズ)によって、F6Pのプシコースへの99%転化を確認した。上記試料を、5mMのH2SO4中、0.6mL/分で測定した。
【0644】
実施例111
【0645】
マルトデキストリンからのプシコースの製造を検証するために、20g/Lのマルトデキストリン、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、5mMのMgCl2、80μMのCoCl2、0.05UのαGP、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのP6PE、及び0.05UのP6PPを含有する0.20mLの反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。Vivaspin 2濃縮器(10,000 MWCO)を用いた酵素のろ過により反応を停止させる。屈折率検出器及びAgilent Hi-Plex Hカラムを備えたAgilent 1100シリーズHPLCを用いてプシコースを検出及び定量する。移動相は5mMのH2SO4であり、該移動相は0.6mL/分で流通させる。種々の濃度のプシコースの標準試料を用いて、本発明者らによる実験の収量を定量した。
【0646】
実施例112
【0647】
200g/Lのマルトデキストリン、10mMの酢酸緩衝液(pH5.5)、5mMのMgCl2、80μMのCoCl2、及び0.1g/Lのイソアミラーゼを含有する反応混合物を80℃で24時間インキュベートする。これを用いて、20g/Lのイソアミラーゼ処理マルトデキストリン、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、5mMのMgCl2、0.05UのαGP、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのP6PE、及び0.05UのP6PPを含有する別の反応混合物をつくり、これを50℃で24時間インキュベートする。プシコースの生成量を実施例111の場合と同様にして定量する。
【0648】
実施例113
【0649】
200g/Lのマルトデキストリン、10mMの酢酸緩衝液(pH4.5)、5mMのMgCl2、及び1:200希釈のNovozymes D6プルラナーゼを含有する反応混合物を50℃で4時間インキュベートする。これを用いて、20g/Lのプルラナーゼ処理マルトデキストリン、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、5mMのMgCl2、80μMのCoCl2、0.05UのαGP、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのP6PE、及び0.05UのP6PPを含有する別の反応混合物をつくり、これを50℃で24時間インキュベートする。プシコースの生成量を実施例111の場合と同様にして定量する。
【0650】
実施例114
【0651】
マルトデキストリンからのプシコース収率を更に増加させるために、0.05Uの4-グルカントランスフェラーゼ(4GT)を実施例111に記載の反応液に添加する。
【0652】
20g/Lのイソアミラーゼ処理マルトデキストリン(実施例9を参照のこと)、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、5mMのMgCl2、80μMのCoCl2、0.05UのαGP、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのP6PE、0.05UのP6PP、及び0.05Uの4GTを含有する0.2mLの反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。プシコースの生成量を実施例111の場合と同様にして定量する。
【0653】
実施例115
【0654】
スケールアップを検討するために、50g/Lのイソアミラーゼ処理マルトデキストリン(実施例10を参照のこと)、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、5mMのMgCl2、80μMのCoCl2、10UのαGP、10UのPGM、10UのPGI、10UのP6PE、及び10UのP6PPを含有する20mLの反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。プシコースの生成量を実施例111の場合と同様にして定量した。
【0655】
実施例116
【0656】
マルトデキストリンからのプシコース収率を更に増加させるために、0.05Uのマルトースホスホリラーゼを実施例110に記載の反応液に添加する。
【0657】
実施例117
【0658】
マルトデキストリンからのプシコース収率を更に増加させるために、0.05Uのポリリン酸グルコキナーゼ及び75mMのポリリン酸を実施例111に記載の反応液に添加する。
【0659】
実施例118
【0660】
フルクトースからプシコースを製造するために、10g/Lのフルクトース、50mMのTris緩衝液(pH7.0)、75mMのポリリン酸、5mMのMgCl2、80μMのCoCl2、0.05Uのフルクトースポリリン酸キナーゼ、0.05UのP6PE、及び0.05UのP6PPを含有する反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。プシコースの生成量を実施例111の場合と同様にして定量する。
【0661】
実施例119
【0662】
グルコースからプシコースを製造するために、10g/Lのグルコース、50mMのTris緩衝液(pH7.0)、75mMのポリリン酸、5mMのMgCl2、80μMのCoCl2、0.05Uのグルコースポリリン酸キナーゼ、0.05UのPGI、0.05UのP6PE、及び0.05UのP6PPを含有する反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。プシコースの生成量を実施例111の場合と同様にして定量する。
【0663】
実施例120
【0664】
スクロースからプシコースを製造するために、10g/Lのスクロース、50mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.0)、5mMのMgCl2、80μMのCoCl2、0.05Uのスクロースホスホリラーゼ、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのP6PE、及び0.05UのP6PPを含有する反応混合物を50℃で24時間インキュベートする。プシコースの生成量を実施例111の場合と同様にして定量する。
【0665】
実施例121
【0666】
スクロースからのプシコースの収率を更に増加させるために、75mMのポリリン酸及び0.05Uのポリリン酸フルクトキナーゼを実施例20の反応混合物に添加する。プシコースの生成量を実施例111の場合と同様にして定量する。
【0667】
本発明は、実質的に本明細書に上述したならびに実施例及び図面に関する全ての実施形態ならびに変化形を包含する。本明細書には本発明の様々な実施形態が開示されるが、当業者の通常の一般知識に従って、本発明の範囲内で改変及び変更を行うことができる。
本発明に関連して、以下の内容を更に開示する。
[1]
糖からのヘキソースの製造方法であって、
1種または複数種の酵素で触媒することによってフルクトース6-リン酸(F6P)を前記ヘキソースに転化させることを含み、
前記ヘキソースが、アロース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、アルトロース、タロース、ソルボース、グロース、及びイドースからなる群より選択され、
前記酵素が、イソメラーゼ、エピメラーゼ、及びヘキソース特異的ホスファターゼ、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される
前記方法。
[2]
前記ヘキソースがアロースであり、
プシコース6-リン酸3-エピメラーゼ(P6PE)で触媒することによって前記F6Pをプシコース6-リン酸(P6P)に転化させることと、
アロース6-リン酸イソメラーゼ(A6PI)で触媒することによって前記P6Pをアロース6-リン酸(A6P)に転化させることと、
アロース6-リン酸ホスファターゼ(A6PP)で触媒することによって前記A6Pをアロースに転化させることと
を含む、[1]に記載の方法。
[3]
前記ヘキソースがマンノースであり、
マンノース6-リン酸イソメラーゼ(M6PI)またはホスホグルコース/ホスホマンノースイソメラーゼ(PGPMI)で触媒することによって前記F6Pをマンノース6-リン酸(M6P)に転化させることと、
マンノース6-リン酸ホスファターゼ(M6PP)で触媒することによって前記M6Pをマンノースに転化させることと
を含む、[1]に記載の方法。
[4]
前記ヘキソースがガラクトースであり、
フルクトース6-リン酸4-エピメラーゼ(F6PE)で触媒することによって前記F6Pをタガトース6-リン酸(T6P)に転化させることと、
ガラクトース6-リン酸イソメラーゼ(Gal6PI)で触媒することによって前記T6Pをガラクトース6-リン酸(Gal6P)に転化させることと、
ガラクトース6-リン酸ホスファターゼ(Gal6PP)で触媒することによって前記Gal6Pをガラクトースに転化させることと
を含む、[1]に記載の方法。
[5]
前記ヘキソースがフルクトースであり、
フルクトース6-リン酸ホスファターゼ(F6PP)で触媒することによって前記F6Pをフルクトースに転化させることを含む、[1]に記載の方法。
[6]
前記ヘキソースがアルトロースであり、
プシコース6-リン酸3-エピメラーゼ(P6PE)で触媒することによって前記F6Pをプシコース6-リン酸(P6P)に転化させることと、
アルトロース6-リン酸イソメラーゼ(Alt6PI)で触媒することによって前記P6Pをアルトロース6-リン酸(Alt6P)に転化させることと、
アルトロース6-リン酸ホスファターゼ(Alt6PP)で触媒することによって生成した前記Alt6Pをアルトロースに転化させることと
を含む、[1]に記載の方法。
[7]
前記ヘキソースがタロースであり、
フルクトース6-リン酸4-エピメラーゼ(F6PE)で触媒することによって前記F6Pをタガトース6-リン酸(T6P)に転化させることと、
タロース6-リン酸イソメラーゼ(Tal6PI)で触媒することによって前記T6Pをタロース6-リン酸(Tal6P)に転化させることと、
タロース6-リン酸ホスファターゼ(Tal6PP)で触媒することによって前記Tal6Pをタロースに転化させることと
を含む、[1]に記載の方法。
[8]
前記ヘキソースがソルボースであり、
フルクトース6-リン酸4-エピメラーゼ(F6PE)で触媒することによって前記F6Pをタガトース6-リン酸(T6P)に転化させることと、
ソルボース6-リン酸エピメラーゼ(S6PE)で触媒することによって前記T6Pをソルボース6-リン酸(S6P)に転化させることと、
ソルボース6-リン酸ホスファターゼ(S6PP)で触媒することによって前記S6Pをソルボースに転化させることと
を含む、[1]に記載の方法。
[9]
前記ヘキソースがグロースであり、
フルクトース6-リン酸4-エピメラーゼ(F6PE)で触媒することによって前記F6Pをタガトース6-リン酸(T6P)に転化させることと、
ソルボース6-リン酸エピメラーゼ(S6PE)で触媒することによって前記T6Pをソルボース6-リン酸(S6P)に転化させることと、
グロース6-リン酸イソメラーゼ(Gul6PI)で触媒することによって前記S6Pをグロース6-リン酸(Gul6P)に転化させることと、
グロース6リン酸ホスファターゼ(Gul6PP)で触媒することによって前記Gul6Pをグロースに転化させることと
を含む、[1]に記載の方法。
[10]
前記ヘキソースがイドースであり、
フルクトース6-リン酸4-エピメラーゼ(F6PE)で触媒することによって前記F6Pをタガトース6-リン酸(T6P)に転化させることと、
ソルボース6-リン酸エピメラーゼ(S6PE)で触媒することによって前記T6Pをソルボース6-リン酸(S6P)に転化させることと、
イドース6-リン酸イソメラーゼ(I6PI)で触媒することによって前記S6Pをイドース6-リン酸(I6P)に転化させることと、
イドース6-リン酸ホスファターゼ(I6PP)で触媒することによって前記I6Pをイドースに転化させることと
を含む、[1]に記載の方法。
[11]
グルコース6-リン酸(G6P)を前記F6Pに転化させるステップを更に含み、前記ステップがホスホグルコイソメラーゼ(PGI)によって触媒される、[1]~[10]のいずれかに記載の方法。
[12]
グルコース1-リン酸(G1P)を前記G6Pに転化させるステップを更に含み、前記ステップがホスホグルコムターゼ(PGM)によって触媒される、[11]に記載の方法。
[13]
糖を前記G1Pに転化させるステップを更に含み、前記ステップが少なくとも1種の酵素によって触媒され、前記糖が、デンプンまたはその誘導体、及びスクロースからなる群より選択される、[12]に記載の方法。
[14]
糖を前記G1Pに転化させる前記ステップにおける前記少なくとも1種の酵素が、α-グルカンホスホリラーゼ(αGP)、マルトースホスホリラーゼ、及びスクロースホスホリラーゼ、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される、[13]に記載の方法。
[15]
前記糖が、アミロース、アミロペクチン、可溶性デンプン、アミロデキストリン、マルトデキストリン、マルトース、及びグルコース、ならびにそれらの混合物からなる群より選択されるデンプンまたはその誘導体である、[13]または[14]に記載の方法。
[16]
デンプンを、デンプンの酵素的加水分解またはデンプンの酸加水分解によって製造されるデンプン誘導体に転化させるステップを更に含む、[15]に記載の方法。
[17]
4-グルカントランスフェラーゼ(4GT)が前記方法に添加される、[15]または[16]に記載の方法。
[18]
前記デンプン誘導体が、イソアミラーゼ、プルラナーゼ、α-アミラーゼ、またはそれらの組み合わせによって触媒されるデンプンの酵素的加水分解により製造される、[13]~[17]のいずれかに記載の方法。
[19]
前記A6PIが、配列番号1または2との少なくとも55%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
前記A6PIが前記P6PのA6Pへの転化を触媒する、[2]に記載の方法。
[20]
前記A6PIが、
触媒作用のためのロスマン様フォールドであって、
前記ロスマン様フォールドの第1のβストランドのHis C末端と、
前記ロスマン様フォールドの第5のβストランドのαヘリックスC末端のArg C末端と、
活性部位中のHisと、
Cysと、
前記活性部位中のThrと、
前記活性部位近傍のGTG疎水性Gモチーフと、
前記活性部位近傍のAsnと
を有する前記ロスマン様フォールドを含有する、[19]に記載の方法。
[21]
前記A6PPが、配列番号3~7のいずれか1との少なくとも30%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
前記A6PPが前記A6Pのアロースへの転化を触媒する、[2]、[19]、及び[20]のいずれかに記載の方法。
[22]
前記A6PPが、
触媒作用のためのロスマン様フォールドドメインと、
C1キャッピングドメインと、
前記ロスマン様フォールドの第1のβストランド中のDxDシグネチャーと、
前記ロスマン様フォールドの第2のβストランドの末端のThrまたはSerと、
前記ロスマン様フォールドの第3のβストランドのαヘリックスC末端のN末端のLysと、
前記ロスマン様フォールドの第4のβストランドの末端のEDシグネチャーと
を含有する、[21]に記載の方法。
[23]
前記M6PIが、配列番号8~11のいずれか1との少なくとも25%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
前記M6PIが前記F6PのM6Pへの転化を触媒する、[3]に記載の方法。
[24]
前記M6PIが、キュピンフォールドに類似する逆平行βストランドのコアを有する2のドメイン及びαヘリックスのみからなる第3のドメイン、ならびに2価金属カチオンを含有する、[23]に記載の方法。
[25]
前記PGPMIが、配列番号15~17のいずれか1との少なくとも25%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
前記PGPMIが前記F6PのM6Pへの転化を触媒する、[3]、[23]、または[24]のいずれかに記載の方法。
[26]
前記PGPMIが、
2のロスマン様フォールドと、
GGSモチーフと、
SYSG-X-T-X-ET-疎水性モチーフと、
Gluが存在することにより活性部位塩基プロトン移動が起こるENシグネチャーと、
HISが存在することにより触媒反応中に基質の開環/閉環が起こるHNシグネチャーと
を含有する、[25]に記載の方法。
[27]
前記M6PPが、配列番号12~14のいずれか1との少なくとも30%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
前記M6PPが前記M6Pのマンノースへの転化を触媒する、[3]及び[23]~[26]のいずれかに記載の方法。
[28]
前記M6PPが、
触媒作用のためのロスマン様フォールドドメインと、
C1キャッピングドメインと、
前記ロスマン様フォールドの第1のβストランド中のDxDシグネチャーと、
前記ロスマン様フォールドの第2のβストランドの末端のThrまたはSerと、
前記ロスマン様フォールドの第3のβストランドのαヘリックスC末端のN末端のLysと、
前記ロスマン様フォールドの第4のβストランドの末端のGDxxxDシグネチャーと
を含有する、[27]に記載の方法。
[29]
前記F6PPが、配列番号21との少なくとも25%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
前記F6PPが前記F6Pのフルクトースへの転化を触媒する、[5]に記載の方法。
[30]
前記F6PPが、
触媒作用のためのロスマン様フォールドドメインと、
C1キャッピングドメインと、
前記ロスマン様フォールドの第1のβストランド中のDxDシグネチャーと、
前記ロスマン様フォールドの第2のβストランドの末端のThrまたはSerと、
前記ロスマン様フォールドの第3のβストランドのαヘリックスC末端のN末端のLysと、
前記ロスマン様フォールドの第4のβストランドの末端のEDシグネチャーと
を含有する、[33]に記載の方法。
[31]
前記Gal6PIが2のサブユニットLac A及びLac Bの多量体であり、
前記Lac Aが、配列番号18との少なくとも25%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
前記Lac Bが、配列番号19との少なくとも25%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
前記Gal6PIが前記T6PのGal6Pへの転化を触媒する、
[4]に記載の方法。
[32]
前記Gal6PIが、ヘテロ二量体(「A」及び「B」)であって、
ロスマン様αβαサンドウィッチフォールドと、
基質のリン酸基を結合させるための、「A」中のArg130及びArg134ならびに「B」中のHis9及びArg39と、
基質の開環のための「A」中のHis96と、
高エネルギーの中間体を安定化するための、「A」中のAsn97と、
プロトン移動に関与するための、「B」中のCys65及びThr67と
を有するサブユニットからなる前記ヘテロ二量体を含有する、[31]に記載の方法。
[33]
前記Gal6PPが、配列番号20との少なくとも25%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
前記Gal6PPが前記Gal6Pのガラクトースへの転化を触媒する、
[4]、[31]、及び[32]のいずれかに記載の方法。
[34]
前記Gal6PPが、
触媒作用のためのロスマン様フォールドドメインと、
C2キャッピングドメインと、
前記ロスマン様フォールドの第1のβストランド中のDxDシグネチャーと、
前記ロスマン様フォールドの第2のβストランドの末端のThrまたはSerと、
前記ロスマン様フォールドの第4のβストランドの末端のGDxxxDシグネチャーと
を含有する、[33]に記載の方法。
[35]
前記ヘキソースがフルクトースであり、
前記糖がスクロースであり、
前記少なくとも1種の酵素がスクロースホスホリラーゼである、
[14]に記載の方法。
[36]
PGPMIによって触媒される前記G6PのF6Pへの転化を更に含み、PGPMIによってF6PがM6Pに転化される、[3]及び[23]~[28]のいずれかに記載の方法。
[37]
プロセスステップが、約40℃~約70℃の範囲の温度で、約5.0~約8.0の範囲のpHで、及び/または約8時間~約48時間実施される、[1]~[36]のいずれかに記載の方法。
[38]
プロセスステップが単一のバイオリアクターまたは直列に配置された複数のバイオリアクター中で実施される、[1]~[37]のいずれかに記載の方法。
[39]
プロセスステップが、ATPなし、NAD(P)(H)なし、約0.1mM~約150mMのリン酸濃度で実施され、前記リン酸がリサイクルされ、及び/または前記プロセスステップの少なくとも1がエネルギー的に有利な化学反応を含む、[1]~[38]のいずれかに記載の方法。
[40]
[1]~[39]のいずれかに記載の方法により製造されたヘキソースであって、アロース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、アルトロース、タロース、ソルボース、グロース、及びイドースからなる群より選択される前記ヘキソース。
【配列表】