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特許7140408検体採取具および検体採取部材用の被覆部材
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  • 特許-検体採取具および検体採取部材用の被覆部材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】検体採取具および検体採取部材用の被覆部材
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/10 20060101AFI20220913BHJP
【FI】
G01N1/10 V
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020189479
(22)【出願日】2020-11-13
(65)【公開番号】P2022078651
(43)【公開日】2022-05-25
【審査請求日】2020-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】520445440
【氏名又は名称】鵜飼 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 伸一
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0087133(US,A1)
【文献】登録実用新案第3159968(JP,U)
【文献】再公表特許第2018/061464(JP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0114310(US,A1)
【文献】特表2016-503326(JP,A)
【文献】特開2007-319535(JP,A)
【文献】特開2005-168982(JP,A)
【文献】特開2013-217707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00- 1/44
G01N 33/00- 33/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸状部と、前記軸状部の一端側に設けられ検体を採取する採取部とを備えた検体採取部材と、
前記検体採取部材の前記採取部を露出した状態で前記軸状部の他端を覆い、離脱可能に設けられ、取付け状態で、前記軸状部の他端を隔絶し、可撓性の材料からなる被覆部材と、を有し
前記被覆部材は、前記検体採取部材の採取部側に設けられ前記軸状部に固定される固定部と、前記軸状部の他端を覆う袋状部と、を有していることを特徴とする検体採取具。
【請求項2】
前記被覆部材は、切断可能な脆弱部を有していることを特徴とする請求項に記載の検体採取具。
【請求項3】
軸状部と、前記軸状部の一端側に設けられ検体を採取する採取部とを備えた検体採取部材に、装着できる被覆部材であって、
前記被覆部材は、筒状に形成され、前記採取部を露出した状態で内部に前記軸状部が挿入され、
前記被覆部材と前記軸状部との間をシールするシール部材が前記被覆部材の前記採取部側の内周部に設けられており、
前記被覆部材は、前記軸状部に沿って移動可能であって、前記軸状部の他端側に位置したときに、前記検体採取部材の前記採取部を露出した状態で前記軸状部の他端を覆うことを特徴とする検体採取部材用の被覆部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検体採取に使用する検体採取具および検体採取部材用の被覆部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、人体から検体を採取するスワブ等の検体採取具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-100990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えばウイルス感染症の検査を行う一連の作業工程にあっては、人体から検体を採取する作業と、その後に実際の検査を行う作業とが異なる場所で行われることがある。このため、検体の採取者と検査者とは異なる人員(作業者)となる場合がしばしばある。このような場合、スワブ等の検体採取具を採取者から、例えば手渡しで検査者に渡すことになる。
【0005】
特許文献1に開示されたスワブでは、人体(例えば、被採取者の鼻腔)から検体採取を行うときに、被採取者から発生する、例えば、くしゃみによる飛沫等により、スワブ全体にウイルスや菌等が付着する虞がある。このため、検査者が検体採取具を把持する際に、検査者等の手や手袋にウイルスや菌等が付着してしまうという課題があった。
【0006】
本発明の目的は、ウイルスや菌等の接触感染等による拡散を防止することができる検体採取具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による検体採取具は、軸状部と、前記軸状部の一端側に設けられ検体を採取する採取部とを備えた検体採取部材と、前記検体採取部材の前記採取部を露出した状態で前記軸状部の他端を覆い、離脱可能に設けられ、取付け状態で、前記軸状部の他端を隔絶し、可撓性の材料からなる被覆部材と、を有し、前記被覆部材は、前記検体採取部材の採取部側に設けられ前記軸状部に固定される固定部と、前記軸状部の他端を覆う袋状部と、を有している。
【0008】
また、本発明は、軸状部と、前記軸状部の一端側に設けられ検体を採取する採取部とを備えた検体採取部材に、装着できる被覆部材であって、前記被覆部材は、筒状に形成され、前記採取部を露出した状態で内部に前記軸状部が挿入され前記被覆部材と前記軸状部との間をシールするシール部材が前記被覆部材の前記採取部内周部に設けられており、前記被覆部材は、前記軸状部に沿って移動可能であって、前記軸状部の他端側に位置したときに、前記検体採取部材の前記採取部を露出した状態で前記軸状部の他端を覆うことを特徴としている。

【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、検体の採取作業等を行った後に、検体採取部材を受け取る者がウイルスや菌等が付着していない部分を把持することが可能になり、ウイルスや菌等の拡散を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態による検体採取具を用いて検体を採取する状態を示す説明図である。
図2】第1の実施形態による検体採取具を示す平面図である。
図3】第2の実施形態による検体採取具を示す縦断面図である。
図4】第3の実施形態による検体採取具を示す縦断面図である。
図5】把持部材をスワブの先端側に移動させた状態を示す図4と同様の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態による検体採取具を、添付図面に従って詳細に説明する。
【0012】
図1および図2は、第1の実施形態による検体採取具を示している。検体採取具1は、患者(被採取者)からインフルエンザウイルス、コロナウイルス、溶連菌のようなウイルスや菌等が含まれる咽頭ぬぐい液、鼻咽頭ぬぐい液等の検体を採取するために使用される。検体採取具1は、スワブ2と、袋部材5とを備えている。
【0013】
スワブ2は、検体採取部材である。スワブ2は、棒状の軸状部3と、軸状部3の被採取者側(一端側)に設けられた検体を採取するための採取部4とを備えている。軸状部3は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニル、ABS等の任意のプラスチック材料(樹脂材料)によって形成されている。軸状部3の先端(被採取者側)には、採取部4が取り付けられている。採取部4は、親水性素材からなるスポンジや繊維が接着等で軸状部3に固着されて、全周に亘って覆われた構造となっている。採取部4はポリウレタン、レーヨン、ポリエステル、ポリアミド、炭素繊維、アルギネート、綿等の材料で形成してもよい。
【0014】
また、軸状部3の露出部3Aは、先端に向かって小径となっており、柔軟性が高められている。なお、軸状部3の先端側が、採取時に鼻腔内等に沿って自由に曲がることが可能であれば、軸状部3は、どのような形状であってもよい。
【0015】
袋部材5は、被覆部材である。袋部材5は、スワブ2の採取部4を露出した状態でスワブ2の採取者側(他端側)を覆っている。袋部材5は、可撓性の材料によって形成されている。具体的には、袋部材5は、一端が開口し、基端が閉塞したビニル等によって形成されている。軸状部3の基端側(採取者側)は、袋部材5に挿入されている。これにより、袋部材5は、取付け状態で、スワブ2の他端側を隔絶する。
【0016】
袋部材5は、スワブ2の採取部側に設けられ軸状部3に固定される固定部としての溶着部6と、スワブ2の他端側を覆う袋状部7とを有している。また、袋部材5は、切断可能な脆弱部としてのミシン目8を有している。このとき、軸状部3は、外部に露出した露出部3Aと、袋部材5に覆われた非露出部3Bとを備えている。
【0017】
溶着部6は、袋部材5の開口5A側に位置して、スワブ2の軸状部3に溶着されている。溶着部6は、スワブ2の採取部4側に設けられ、軸状部3に固定される固定部である。具体的には、溶着部6は、軸状部3の軸方向中間部分に配置されている。溶着部6は、袋部材5の内部を外気と遮断している。
【0018】
袋状部7は、袋部材5のうち溶着部6よりも基端側部分によって形成されている。袋状部7には、軸状部3の基端側が挿入されている。このため、袋状部7は、スワブ2の他端側を覆っている。
【0019】
袋部材5の溶着部6より基端側には、脆弱部としてのミシン目8が設けられている。具体的には、ミシン目8は、袋部材5のうち軸方向の中間部分よりも溶着部6に近い位置に配置されている。袋状部7は、ミシン目8よりも基端側に位置している。袋部材5をミシン目8の位置で切り離すことによって、軸状部3の非露出部3Bを袋状部7内から取り出すことができる。なお、脆弱部は、ミシン目でなくとも、厚さを薄くする等、容易に切断可能となっていればよい。
【0020】
第1の実施形態による検体採取具1は上述のように構成されるものであり、次に検体採取具1の使用方法について説明する。
【0021】
図1に示すように、患者Pからインフルエンザウイルス、コロナウイルス、溶連菌のようなウイルスや菌等が含まれる咽頭ぬぐい液等の検体を採取する際には、採取者は、袋部材5に覆われたスワブ2の基端側を把持し、スワブ2の先端の採取部4を患者Pの口や鼻に挿入する。これにより、採取者は、鼻腔や咽頭部から検体を採取する。このような検体採取作業において、仮に患者Pが咳やくしゃみ等をすることがある。このため、この検体採取作業後は、スワブ2および袋部材5の外周囲(外表面)にはウイルスや菌等が付着している可能性がある。
【0022】
この状態で、採取者は、軸状部3の露出部3Aと、袋部材5の基端側とを持って、それらを引き離す。このとき、袋状部7には溶着部6から離れる方向(図2中の矢示A方向)に向けて力が作用し、袋部材5は、ミシン目8の位置で引き千切られる。これにより、スワブ2と袋部材5の基端部分(保護部材)とが分離される。
【0023】
このとき、軸状部3の袋部材5によって覆われていた非露出部3Bには、ウイルスや菌等が付着していない。この状態で、採取者は、検体中にウイルスや菌等が存在するかを検査する検査者に、スワブ2の非露出部3Bを把持するようにして手渡し、または、試験管等に立てて渡す。
【0024】
これにより、検査者の手にウイルスや菌等が付着するのが防止され、検査者等への感染が防止される。これに加え、検査者等が検査やその他の作業で、ウイルスや菌等を周囲に付着させることを防止することができ、院内感染のリスクを下げることができる。
【0025】
かくして、第1の実施形態によれば、検体採取具1は、軸状部3と、軸状部3の一端側に設けられ検体を採取する採取部4とを備えたスワブ2(検体採取部材)と、スワブ2の採取部4を露出した状態でスワブ2の他端側を覆い、離脱可能に設けられた袋部材5(被覆部材)と、を有している。このため、検体を採取するときには、軸状部3の他端側を袋部材5によって保護することができる。従って、軸状部3の他端側にウイルス等が付着することがなくなる。また、検体の採取後には、袋部材5をスワブ2から切り離す。これにより、検査者は、ウイルス等によって汚染されていない状態の軸状部3の他端側を把持することができる。この結果、ウイルスや菌等の拡散を防止することができる。
【0026】
また、袋部材5は、取付け状態で、スワブ2の他端側を隔絶する。このため、検体を採取するときには、スワブ2の他端側を袋部材5によって保護することができる。この結果、スワブ2の他端側にウイルス等が付着することがなくなる。
【0027】
また、袋部材5は、可撓性の材料から形成されている。ここで、検体を採取するときには、スワブ2の採取部4が例えば患者Pの鼻腔や咽頭部に接触する。このとき、スワブ2の軸状部3の先端側は撓み変形する。これに対し、検体採取具1はスワブ2の軸状部3と共に袋部材5を撓み変形させることができるから、袋部材5を撓む部分まで延ばした場合であっても、検体採取具1の操作性を確保することができる。
【0028】
また、袋部材5は、スワブ2の採取部側に設けられ軸状部3に固定される溶着部6(固定部)と、スワブ2の他端側を覆う袋状部7と、を有している。このため、検体を採取するときには、溶着部6によって袋部材5の内部を封止することができ、袋部材5に挿入されたスワブ2(軸状部3)の他端側をウイルス等の汚染から保護することができる。一方、検体の採取後には、溶着部6を残して袋状部7を切り離すことができる。これにより、検体の採取後は、検査者は、ウイルス等が付着していないスワブ2の他端側を把持することができ、ウイルス等の感染拡大を防止することができる。
【0029】
さらに、袋部材5は、切断可能なミシン目8(脆弱部)を有している。このとき、袋部材5の袋状部7を切り離すときには、袋状部7をスワブ2の他端側に向けて引っ張る。これにより、特別な道具を用いることなく、袋状部7をミシン目8の位置で溶着部6から容易に分離することができる。
【0030】
なお、第1の実施形態では、袋部材5をビニル等の可撓性の材料によって形成した場合を示したが、本発明はこれに限らない。袋部材は、例えば、あまり撓まないプラスチック材料等によって形成されてもよい。また、第1の実施形態では、袋部材5の固定部(溶着部6)をスワブ2(軸状部3)に溶着するものとした。本発明はこれに限らず、袋部材の固定部は、液密な状態で軸状部に固定される構成であればよく、例えば軸状部に接着してもよい。なお、この場合の固定とは、完全に固定させる必要はなく、検査時に動かない程度に固定されていればよい。
また、袋部材5の固定部(溶着部6)は、採取者が把持する部分を覆うように袋部材が配置されれば、スワブ2の軸方向の中央でなくともよい。
【0031】
次に、図3は本発明の第2の実施形態を示している。第2の実施形態の特徴は、被覆部材をスワブに対して着脱可能としたことにある。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0032】
第2の実施形態による検体採取具11は、スワブ2と、キャップ部材12と、把持部材14とを備えている。スワブ2の軸状部3の先端側(一端側)には採取部4が設けられている。また、スワブ2の軸状部3の中間部分(軸方向の途中部分)には、キャップ部材12が設けられている。
【0033】
キャップ部材12は、筒部12Aと底部12Bとからなる有底円筒状の部材である。筒部12Aの内周には、雌ねじ12Cが形成されている。キャップ部材12は、プラスチック材料等によって形成されており、例えばペットボトルのキャップのような形状となっている。また、底部12Bの中心には、スワブ2の軸状部3と略同径の挿通孔12Dが設けられている。挿通孔12Dには、軸状部3が挿通されている。
【0034】
軸状部3には、2つの環状凸部13A,13Bが一体成型されている。2つの環状凸部13A,13Bは、これらの間に底部12Bを挟持している。これにより、2つの環状凸部13A,13Bは、軸状部3にキャップ部材12を軸方向に対して変位不能な状態で固定している。
【0035】
把持部材14は、軸状部3の基端側を覆っている。把持部材14は、例えば試験管のような有底筒状の部材であり、プラスチック材料等のような比較的固い材料によって形成されている。把持部材14の開口14Aの外周には、雄ねじ14Bが形成されている。把持部材14の雄ねじ14Bは、キャップ部材12の雌ねじ12Cに螺合する。これにより、把持部材14は、キャップ部材12に取付けられる。この状態で、キャップ部材12および把持部材14は、被覆部材を構成し、スワブ2の採取部4を露出した状態でスワブ2の基端側(他端側)を覆っている。キャップ部材12および把持部材14が螺合された状態では、キャップ部材12および把持部材14の内部は、外気と遮断されている。このとき、軸状部3は、外部に露出した露出部3Aと、キャップ部材12および把持部材14に覆われた非露出部3Bとを備えている。
【0036】
第2の実施形態による検体採取具11は上述のように構成されるものであり、次に検体採取具11の使用方法について説明する。
【0037】
患者からインフルエンザウイルス、コロナウイルス、溶連菌のようなウイルスや菌等が含まれる咽頭ぬぐい液等の検体を採取する際には、採取者は、把持部材14を把持して、スワブ2の先端の採取部4を患者の口や鼻に挿入する。これにより、採取者は、鼻腔や咽頭部から検体を採取する。この検体採取作業後は、スワブ2、キャップ部材12および把持部材14の外周囲は、ウイルスや菌等が付着している可能性がある。
【0038】
この状態で、採取者はキャップ部材12の筒部12Aと把持部材14を持って、それらを捻ることで、把持部材14をキャップ部材12から外す。その後、把持部材14をキャップ部材12から離れる方向(図3中の矢示A方向)に移動させて、把持部材14から軸状部3の基端側部分(非露出部3B)を引き出す。
【0039】
このとき、軸状部3の非露出部3Bは、把持部材14により覆われている。このため、非露出部3Bには、ウイルスや菌等が付着していない。この状態で、採取者は、検体中にウイルスや菌等が存在するかを検査する検査者に、スワブ2の非露出部3Bを把持させるようにして手渡しする。
【0040】
これにより、検査者の手にウイルスや菌等が付着するのが防止され、検査者等への感染が防止される。これに加え、検査者等が検査やその他の作業で、ウイルスや菌等を周囲に付着させることを防止でき、院内感染のリスクを低下させることができる。
【0041】
かくして、このように構成される第2の実施形態でも、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、第2の実施形態では、把持部材14は、スワブ2に対して着脱可能とした。このため、例えば検体の採取後に、スワブ2から取り外した把持部材14を、殺菌処理することによって、再度使用することができる。
【0042】
なお、第2の実施形態では、キャップ部材12と把持部材14を螺合させるものとした。本発明はこれに限らず、例えば把持部材はキャップ部材に圧入してもよい。また、把持部材14はキャップ部材12に挿入するものとしたが、これらの内外の関係を逆にしてもよい。即ち、把持部材にキャップ部材を挿入してもよい。また、把持部材14は開口14A側だけ硬質であればよく、把持する部分は可撓性材料で構成してもよい。
【0043】
また、第2の実施形態では、軸状部3には、2つの環状凸部13A,13Bが一体成型されている例を示したが、これに限らず、キャップ部材12を採取時に軸方向に対して変位不能な状態にできればよく、例えば、軸状部3にゴム製のOリングを嵌めることにより環状凸部13A,13Bを構成することもできる。この場合、市販のスワブを用いることができる。
【0044】
次に、図4および図5は本発明の第3の実施形態を示している。第3の実施形態の特徴は、把持部材をスワブに対して移動可能としたことにある。なお、第3の実施形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0045】
第3の実施形態による検体採取具21は、スワブ2と、把持部材22とを備えている。スワブ2の軸状部3の先端側(一端側)には、採取部4が設けられている。スワブ2の軸状部3には、筒状の把持部材22が挿入されている。把持部材22は、プラスチック材料等によって形成されている。図4に示すように、把持部材22は、軸状部3の基端側に位置したときには、軸状部3の基端側を覆っている。この状態で、把持部材22は、被覆部材を構成し、スワブ2の採取部4を露出した状態でスワブ2の基端側(他端側)を覆っている。このとき、軸状部3は、外部に露出した露出部3Aと、把持部材22に覆われた非露出部3Bとを備えている。なお、軸状部3の露出部3Aは、非露出部3Bに比べて径を小さくし、柔軟性を高めた構成となっている。
【0046】
把持部材22の基端側(被採取者側)は、開口22Aとなっている。なお、開口22Aに膜を設けて、開口22Aを閉塞してもよい。この場合、膜の材料は、容易に破くことが可能な材料であることが好ましい。また、把持部材22の内部の開口22A側に、複数の突起22Cが設けられている。この突起22Cは、後述のストッパ26と当接する位置まで、突出している。
【0047】
把持部材22の先端側には、フランジ部22Bが形成されている。フランジ部22Bは、径方向外側に向けて延びた円盤状に形成されている。フランジ部22Bは、採取時に患者の口や鼻孔から直接放出される飛散物を遮蔽する。フランジ部22Bは、透過性のある材料で形成されることが望ましい。
【0048】
フランジ部22Bの内周部には、挿通孔23が形成されている。挿通孔23は、軸状部3の外径と略同径となっている。挿通孔23の内周面には、柔軟なゴム材等からなるシール部材24が設けられている。なお、挿通孔23の内周面と軸状部3との間の隙間が十分に小さい場合には、シール部材24を省いてもよい。
【0049】
把持部材22は、スワブ2の軸状部3に沿って移動可能となっている。軸状部3には、把持部材22の移動範囲を規制する2つのストッパ26が設けられている。ストッパ26は、例えば軸状部3よりも径方向外側に突出した環状突起によって形成され、軸状部3に固定されている。
【0050】
ストッパ26は、把持部材22の挿通孔23の周囲と当接することで、把持部材22が軸状部3の基端側から抜け落ちるのを防止する。これに加え、ストッパ26は、突起22Cと当接することで、把持部材22のスワブ2の基端側から先端側への移動位置を、把持部材22が採取部4から所定距離離れた位置に規制することができるので、採取部4と把持部材22が接触することを阻止し、また、採取部4を検査用の試験管等に挿入する際に、把持部材22が作業の妨げとならない。
【0051】
第3の実施形態による検体採取具21は上述のように構成されるものであり、次に検体採取具21の使用方法について説明する。
【0052】
患者からインフルエンザウイルス、コロナウイルス、溶連菌のようなウイルスや菌等が含まれる咽頭ぬぐい液、喀痰等の検体を採取する際には、採取者は、把持部材14を把持して、スワブ2の先端の採取部4を患者の口や鼻に挿入する。これにより、採取者は、鼻腔や咽頭部から検体を採取する。この検体採取作業後は、スワブ2、把持部材22の外周囲は、ウイルスや菌等が付着している可能性がある。
【0053】
この状態で、採取者は、軸状部3の先端側部分を持って、把持部材22を軸状部3の先端に近付く方向(図4中の矢示B方向)に移動させる。このとき、軸状部3の非露出部3Bは、把持部材22により覆われている。このため、非露出部3Bには、ウイルスや菌等が付着していない。この状態で、採取者は、検体中にウイルスや菌等が存在するかを検査する検査者に、スワブ2の非露出部3Bを把持させるようにして手渡しする。
【0054】
これにより、検査者の手にウイルスや菌等が付着するのが防止され、検査者等への感染が防止される。これに加え、検査者等が検査やその他の作業で、ウイルスや菌等を周囲に付着させることを防止でき、院内感染のリスクを低下させることができる。
【0055】
かくして、このように構成される第3の実施形態でも、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、第3の実施形態では、把持部材22(被覆部材)は、軸状部3と軸状部3の先端側(一端側)に設けられ検体を採取する採取部4とを備えたスワブ2(検体採取部材)に、移動可能に装着されている。このため、検体の採取時には、把持部材22をスワブ2の基端側に配置して、軸状部3の非露出部3Bを保護することができる。一方、検体の採取後は、把持部材22をスワブ2の先端側に移動させることによって、把持部材22から軸状部3の非露出部3Bを突出させる。これにより、検査者は、ウイルス等が付着していない軸状部3の非露出部3Bを把持することができ、感染拡大のリスクを低下させることができる。
【0056】
また、把持部材22は、筒状に形成され、軸状部3に装着した状態で、軸状部3との間をシールするシール部材24が一端側内周部に設けられている。これにより、把持部材22と軸状部3との隙間から把持部材22の内部にウイルス等が侵入するのを、シール部材24によって防止することができる。このため、検体の採取時に患者から飛沫が放出されても、軸状部3の非露出部3Bをウイルス等から保護することができる。
【0057】
なお、第3の実施形態では、ストッパ26を設けたスワブを例に示したが、例えば、把持部材22のシール部材24の締め代を強くすることで、ストッパ26のない通常流通しているスワブ2に把持部材22を装着するだけで、検体採取具21を構成することができる。
【0058】
前記各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1,11,21 検体採取具
2 スワブ(検体採取部材)
3 軸状部
4 採取部
5 袋部材(被覆部材)
6 溶着部(固定部)
7 袋状部
8 ミシン目(脆弱部)
12 キャップ部材
14,22 把持部材
24 シール部材
図1
図2
図3
図4
図5