(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】クローラ式溶接ロボット
(51)【国際特許分類】
B23K 37/02 20060101AFI20220913BHJP
B23K 9/095 20060101ALI20220913BHJP
B25J 5/00 20060101ALI20220913BHJP
B62D 55/30 20060101ALI20220913BHJP
B62D 57/024 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
B23K37/02 Z
B23K9/095 515A
B25J5/00 B
B62D55/30 Z
B62D57/024 L
(21)【出願番号】P 2020539197
(86)(22)【出願日】2020-04-28
(86)【国際出願番号】 CN2020087549
(87)【国際公開番号】W WO2020259068
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2020-07-13
(31)【優先権主張番号】201910545400.3
(32)【優先日】2019-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520258781
【氏名又は名称】北京博清科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】馮消氷
(72)【発明者】
【氏名】潘際鑾
(72)【発明者】
【氏名】高力生
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0111843(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107600214(CN,A)
【文献】特開平02-127977(JP,A)
【文献】特開昭60-018463(JP,A)
【文献】特開昭49-129652(JP,A)
【文献】特開昭47-044716(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0144835(US,A1)
【文献】特開平10-230359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 37/02
B23K 9/095
B25J 5/00
B62D 55/30
B62D 57/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被溶接部をクロールして溶接するための、
車両シャーシと、
前記車両シャーシの両側にそれぞれ、接続された2つの履帯ホイールと、
前記車両シャーシに接続されて溶接するための溶接トーチと、を含み、
前記履帯ホイールがホイールキャリアと、前記ホイールキャリアの両端にそれぞれ、回動して接続された第1のスプロケットホイール及び第2のスプロケットホイールと、前記第1のスプロケットホイール及び前記第2のスプロケットホイールに外嵌されたスプロケットチェーンと、を含むクローラ式溶接ロボットであって、
2つの前記履帯ホイールのホイールキャリアがそれぞれ、前記車両シャーシの両側に可動に接続され
、
ヒンジを含み、2つの前記ホイールキャリアが前記ヒンジによって前記車両シャーシに接続され、前記ヒンジが前記ホイールキャリア及び前記車両シャーシの少なくとも何れかに回動接続され、前記ヒンジの回転軸が前記履帯ホイールの走行方向に沿って延伸して、
前記被溶接部を吸着するための磁気吸着装置と、
前記車両シャーシに設けられるとともに、前記磁気吸着装置の昇降を駆動するための昇降機構と、をさらに含む、ことを特徴とするクローラ式溶接ロボット。
【請求項2】
溶接トーチによる溶接の様子を観察するための溶融プール観察モジュールをさらに含み、
前記溶融プール観察モジュールは、溶融プールを撮影するためのカメラアセンブリと、スパッタを遮蔽するための遮蔽アセンブリと、を含み、
前記遮蔽アセンブリは、第1の光透過孔を有する第1の遮蔽部と、前記第1の遮蔽部と前記カメラアセンブリの間に位置して、前記第1の光透過孔を被覆して設けられるとともに、スパッタを遮蔽するための光透過バッフルと、を含み、
前記カメラアセンブリは、前記第1の光透過孔によって前記溶融プールを撮影し、前記光透過バッフルは、面積が少なくとも、前記第1の光透過孔の面積の2倍となり、かつ、前記光透過バッフルの異なる領域が前記第1の光透過孔を被覆して設けられるように、前記第1の光透過孔に対して移動することができる、
ことを特徴とする請求項1に記載のクローラ式溶接ロボット。
【請求項3】
前記溶融プール観察モジュールは回転軸をさらに含み、前記光透過バッフルが前記回転軸に回動接続されている、ことを特徴とする請求項
2に記載のクローラ式溶接ロボット。
【請求項4】
前記遮蔽アセンブリは、前記第1の遮蔽部と前記カメラアセンブリの間に位置する第2の遮蔽部をさらに含み、
前記第2の遮蔽部には、前記第1の光透過孔に対する第2の光透過孔が設けられ、
前記カメラアセンブリは、前記第1の光透過孔と前記第2の光透過孔によって前記溶融プールを撮影し、前記第1の遮蔽部と前記第2の遮蔽部が収容空間を形成するように囲まれ、前記光透過バッフルが前記収容空間内に位置し、前記回転軸が前記第1の遮蔽部及び/または前記第2の遮蔽部に接続されている、ことを特徴とする請求項
3に記載のクローラ式溶接ロボット。
【請求項5】
前記光透過バッフルが円形柱状を呈し、前記回転軸が前記光透過バッフルの円心位置に回動接続され、前記収容空間が切欠きを有し、前記光透過バッフルが前記切欠きに露出している、ことを特徴とする請求項
4に記載のクローラ式溶接ロボット。
【請求項6】
前記車両シャーシには貫通孔が設けられ、
前記昇降機構は、前記貫通孔を貫通して設けられるとともに、一端が前記磁気吸着装置に接続された調整ねじと、前記車両シャーシの前記磁気吸着装置に背く側に設けられるとともに、前記調整ねじにねじ接続された調整ナットと、を含み、
前記昇降機構は、前記車両シャーシに固定接続されるとともに、前記調整ねじの自転を規制するための周方向規制部をさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載のクローラ式溶接ロボット。
【請求項7】
前記周方向規制部は、係止孔を有し、前記調整ねじに外嵌されて設けられ、
前記係止孔が前記調整ねじの外周に係止されて前記調整ねじの自転を規制し、前記係止孔が「D」字状を呈し、
前記調整ねじは前記係止孔に摺動係合された摺接セクションを含み、前記摺接セクションの横断面の形状が前記係止孔の形状に対応して、「D」字状を呈する、ことを特徴とする請求項
6に記載のクローラ式溶接ロボット。
【請求項8】
前記履帯ホイールは、
前記ホイールキャリアに接続されるとともに、前記スプロケットチェーンの第1の方向での張力を調整するための第1の張力機構と、
前記ホイールキャリアに接続されるとともに、前記スプロケットチェーンの第2の方向での張力を調整するための第2の張力機構と、をさらに含み、
前記第1の方向と前記第2の方向は向きが異なる、ことを特徴とする請求項1に記載のクローラ式溶接ロボット。
【請求項9】
前記第1の方向は、前記履帯ホイールの走行方向と一致した横方向であり、前記第2の方向は、前記横方向に垂直な縦方向である、ことを特徴とする請求項
8に記載のクローラ式溶接ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接の技術分野に属し、特に、クローラ式溶接ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボット技術や溶接技術の発展に伴い、金属構造溶接の分野では、鋼製タンク、ボールタンク、パイプアーク面設備に対する溶接作業時、通常、クローラ式溶接ロボットによる溶接が行われている。従来、履帯ホイールによって駆動されて溶接面を走行するクローラ式溶接ロボットがあったが、上記アーク面、球面等の非平面の溶接面では、クローラ式溶接ロボットの履帯ホイールが溶接面と十分に接触することができないため、溶接ロボットの走行方向を把握しにくくなり、ひいては、スリップしたり、溶接面から落下したりすることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、従来技術では、クローラ式溶接ロボットが非平面の溶接面を走行しているとき、その走行方向を把握しにくくなり、ひいては、スリップしたり、溶接面から落下したりすることがあるという問題点を解決するためのクローラ式溶接ロボットを提供することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、以下のように実現される。被溶接部をクロールして溶接するための、車両シャーシと、前記車両シャーシの両側にそれぞれ、接続された2つの履帯ホイールと、前記車両シャーシに接続されて溶接するための溶接トーチと、を含み、前記履帯ホイールがホイールキャリアと、前記ホイールキャリアの両端にそれぞれ、回動して接続された第1のスプロケットホイール及び第2のスプロケットホイールと、前記第1のスプロケットホイール及び前記第2のスプロケットホイールに外嵌されたスプロケットチェーンと、を含むクローラ式溶接ロボットであって、2つの前記履帯ホイールのホイールキャリアがそれぞれ、前記車両シャーシの両側に可動に接続される。
【0005】
さらに、前記クローラ式溶接ロボットは、ヒンジを含み、2つの前記ホイールキャリアが前記ヒンジによって前記車両シャーシに接続され、前記ヒンジが前記ホイールキャリア及び/または前記車両シャーシに回動接続され、前記ヒンジの回転軸が前記履帯ホイールの走行方向に沿って延伸している。
【0006】
さらに、前記クローラ式溶接ロボットは、溶接トーチによる溶接の様子を観察するための溶融プール観察モジュールをさらに含み、前記溶融プール観察モジュールは、溶融プールを撮影するためのカメラアセンブリと、スパッタを遮蔽するための遮蔽アセンブリと、を含み、前記遮蔽アセンブリは、第1の光透過孔を有する第1の遮蔽部と、前記第1の遮蔽部と前記カメラアセンブリの間に位置して、前記第1の光透過孔を被覆して設けられるとともに、スパッタを遮蔽するための光透過バッフルと、を含み、前記カメラアセンブリは、前記第1の光透過孔によって前記溶融プールを撮影し、前記光透過バッフルは、面積が少なくとも、前記第1の光透過孔の面積の2倍となり、かつ、前記光透過バッフルの異なる領域が前記第1の光透過孔を被覆して設けられるように、前記第1の光透過孔に対して移動することができる。
【0007】
さらに、前記溶融プール観察モジュールは回転軸をさらに含み、前記光透過バッフルが前記回転軸に回動接続されている。
【0008】
さらに、前記遮蔽アセンブリは、前記第1の遮蔽部と前記カメラアセンブリの間に位置する第2の遮蔽部をさらに含み、前記第2の遮蔽部には、前記第1の光透過孔に対する第2の光透過孔が設けられ、前記カメラアセンブリは、前記第1の光透過孔と前記第2の光透過孔によって前記溶融プールを撮影し、前記第1の遮蔽部と前記第2の遮蔽部が収容空間を形成するように囲まれ、前記光透過バッフルが前記収容空間内に位置し、前記回転軸が前記第1の遮蔽部及び/または前記第2の遮蔽部に接続されている。
【0009】
さらに、前記光透過バッフルが円形柱状を呈し、前記回転軸が前記光透過バッフルの円心位置に回動接続され、前記収容空間が切欠きを有し、前記光透過バッフルが前記切欠きに露出している。
【0010】
さらに、前記クローラ式溶接ロボットは、前記被溶接部を吸着するための磁気吸着装置と、前記車両シャーシに設けられるとともに、前記磁気吸着装置の昇降を駆動するための昇降機構と、をさらに含み、前記車両シャーシには貫通孔が設けられ、前記昇降機構は、前記貫通孔を貫通して設けられるとともに、一端が前記磁気吸着装置に接続された調整ねじと、前記車両シャーシの前記磁気吸着装置に背く側に設けられるとともに、前記調整ねじにねじ接続された調整ナットと、を含み、前記昇降機構は、前記車両シャーシに固定接続されるとともに、前記調整ねじの自転を規制するための周方向規制部をさらに含む。
【0011】
さらに、前記周方向規制部は、係止孔を有し、前記調整ねじに外嵌されて設けられ、前記係止孔が前記調整ねじの外周に係止されて前記調整ねじの自転を規制し、前記係止孔が「D」字状を呈し、前記調整ねじは前記係止孔に摺動係合された摺接セクションを含み、前記摺接セクションの横断面の形状が前記係止孔の形状に対応して、「D」字状を呈する。
【0012】
さらに、前記履帯ホイールは、前記ホイールキャリアに接続されるとともに、前記スプロケットチェーンの第1の方向での張力を調整するための第1の張力機構と、前記ホイールキャリアに接続されるとともに、前記スプロケットチェーンの第2の方向での張力を調整するための第2の張力機構と、をさらに含み、前記第1方向と前記第2の方向は向きが異なる。
【0013】
さらに、前記第1の方向は、前記履帯ホイールの走行方向と一致した横方向であり、前記第2の方向は、前記横方向に垂直な縦方向である。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、従来技術に対して、以下のような技術的効果が得られる。本発明が提供するクローラ式溶接ロボットは、車両シャーシと、車両シャーシの両側に設けられた2つの履帯ホイールとを含み、2つの履帯ホイールのホイールキャリアも車両シャーシも可動に接続される。そうすると、クローラ式溶接ロボットは、非平面の溶接面を走行しているところ、溶接面に適応できるように、2つの履帯ホイールが車両シャーシに対して自由に姿勢調整されることが可能であり、2つの履帯ホイールと溶接面との密着度を向上させ、クローラ式溶接ロボットの走行方向を容易に把握して制御することができ、クローラ式溶接ロボットがスリップしたり、溶接面から落下したりする確率を低減させる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明における実施例の技術案をさらに明瞭に説明するために、以下は、本発明における実施例または従来技術の記述に使用すべき添付図面を簡単に紹介する。自明なことに、後述する添付図面はただ本発明のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとって、創造的な労力を払わないことを前提として、それらの添付図面に基づいて、他の添付図面を取得することができる。
【
図1】本発明における実施例によるクローラ式溶接ロボットの斜視図である。
【
図2】本発明における実施例によるクローラ式溶接ロボットの斜視図である。
【
図3】本発明における実施例によるクローラ式溶接ロボットの斜視図である。
【
図4】本発明における実施例による車両シャーシの斜視図である。
【
図5】本発明における実施例による溶融プール観察モジュールの使用状態概略図である。
【
図6】本発明における実施例による溶融プール観察モジュールの斜視図である。
【
図7】本発明における実施例による溶融プール観察モジュールの分解図である。
【
図8】本発明における実施例による溶融プール観察モジュールの断面図である。
【
図9】本発明における実施例による光透過バッフルの斜視図である。
【
図10】本発明における実施例による磁気吸着装置と車両シャーシの取付概略図である。
【
図11】本発明における実施例による磁気吸着装置と車両シャーシの取付概略図である。
【
図12】本発明における実施例による昇降機構と磁気吸着装置の取付概略図である。
【
図13】本発明における実施例による周方向規制部の斜視図である。
【
図14】本発明における実施例による調整ねじの斜視図である。
【
図15】本発明における実施例による摺接セクションの横断面図である。
【
図16】本発明における実施例による昇降機構の分解図である。
【
図17】本発明における実施例による履帯ホイールの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下は、本発明の実施例を詳しく説明し、前記実施例の例示が添付図面に示され、そのうち、同一または類似した素子または同一または類似した機能を有する素子は、一貫して同一または類似した符号で示される。添付図面を参照して説明する以下の実施例は例示的なものであり、本発明を解釈するためのものに過ぎず、本発明を制限するものとして理解されてはならない。
【0017】
本発明の記述では、説明すべきなのは、素子が別の素子に「固定される」または「設けられる」ように記述されている場合、その素子が別の素子上に直接に位置してもよいし、当該別の素子上に間接に位置してもよい。1つの素子が別の素子に「接続されている」ように記述されている場合、その素子が別の素子に直接に接続されてもよいし、当該別の素子に間接に接続されてもよい。
【0018】
理解すべきなのは、用語としての「長さ」、「幅」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「トップ」、「ボトム」、「内」、「外」などが示す方位または位置関係は、添付図面に基づいて示される方位または位置関係であり、本発明を説明しやすく、記載を簡素化するためのものに過ぎず、指し示す装置または素子が特定の方位を具備しなければならず、特定の方位で構成されたり、操作されたりしなければならないということを指示し、または、暗示するものではないことが理解されたい。そのため、それらが本発明を制限するものとして理解されてはならない。
【0019】
また、用語としての「第1の」、「第2の」は、記述する目的を有するものに過ぎず、相対的な重要度を指示し、または、暗示するものとして、あるいは、指し示す構成要件の個数を非明示的に示すものとして、理解されてはならない。それにより、「第1の」、「第2の」が限定された構成要件には、1つまたは複数の当該構成要件が明示または非明示に含まれることが可能である。本願発明の記述では、特に具体的かつ明確的に限定された場合を除き、「複数」は、2つまたは2つ以上であることを意味している。
【0020】
当業者にとって、本願発明における上記用語の具体的な意味は、具体的な状況に応じて理解されてもよい。
【0021】
本発明の目的、技術案および利点をより明瞭にするために、以下は、添付図面および実施例を結び付けながら、本発明をさらに詳しく説明する。
【0022】
図1~
図4を参照して、本発明の実施例が提供するクローラ式溶接ロボットは、被溶接部をクロールして溶接するためのものであり、前記クローラ式溶接ロボットは、車両シャーシ10と、前記車両シャーシ10の両側にそれぞれ、接続された2つの履帯ホイール30と、前記車両シャーシ10に接続されて溶接するための溶接トーチ80と、を含み、前記履帯ホイール30がホイールキャリア31と、前記ホイールキャリア31の両端にそれぞれ、回動して接続された第1のスプロケットホイール32及び第2のスプロケットホイール33と、前記第1のスプロケットホイール32及び前記第2のスプロケットホイール33に外嵌されたスプロケットチェーン34と、を含み、2つの前記履帯ホイール30のホイールキャリア31がそれぞれ、前記車両シャーシ10の両側に可動に接続される。
【0023】
図1~
図4を参照して、本発明が提供するクローラ式溶接ロボットは、車両シャーシ10と、車両シャーシ10の両側に設けられた2つの履帯ホイール30とを含み、2つの履帯ホイール30のホイールキャリア31も車両シャーシ10も可動に接続される。そうすると、クローラ式溶接ロボットは、非平面の溶接面を走行しているところ、溶接面に適応できるように、2つの履帯ホイール30が車両シャーシ10に対して自由に姿勢調整されることが可能であり、2つの履帯ホイール30と溶接面との密着度を向上させ、クローラ式溶接ロボットの走行方向を容易に把握して制御することができ、クローラ式溶接ロボットがスリップしたり、溶接面から落下したりする確率を低減させる。
【0024】
図1~
図4を参照して、さらに、前記クローラ式溶接ロボットは、ヒンジ20を含み、2つの前記ホイールキャリア31が前記ヒンジ20によって前記車両シャーシ10に接続され、前記ヒンジ20が前記ホイールキャリア31及び/または前記車両シャーシ10に回動接続され、前記ヒンジ20の回転軸が前記履帯ホイール30の走行方向に沿って延伸している。本発明の実施例では、ヒンジ20によって、ホイールキャリア31と車両シャーシ10が接続され、ヒンジ20は、ホイールキャリア31のみに回動接続されてもよいし、車両シャーシ10に回動接続されてもよいし、ホイールキャリア31にも車両シャーシ10にも回動接続されてもよい。その構造によれば、履帯ホイール30は、車両シャーシ10に対して自己姿勢の調整を行うことができ、また、ヒンジ20の回転軸が前記履帯ホイール30の走行方向に沿って延伸している。即ち、履帯ホイール30は、車両シャーシ10に対して垂直方向に搖動することができ、
図3に示すように、それによって、異なる非平面の溶接面に適応できるようになる。
【0025】
図5~
図9を参照して、さらに、前記クローラ式溶接ロボットは、溶接トーチ80による溶接の様子を観察するための溶融プール観察モジュール40をさらに含み、前記溶融プール観察モジュール40は、溶融プール90を撮影するためのカメラアセンブリ41と、スパッタを遮蔽するための遮蔽アセンブリと、を含み、前記遮蔽アセンブリは、第1の光透過孔4211を有する第1の遮蔽部421と、前記第1の遮蔽部421と前記カメラアセンブリ41の間に位置して、前記第1の光透過孔4211を被覆して設けられるとともに、スパッタを遮蔽するための光透過バッフル43と、を含み、前記カメラアセンブリ41は、前記第1の光透過孔4211によって前記溶融プール90を撮影し、前記光透過バッフル43は、面積が少なくとも、前記第1の光透過孔4211の面積の2倍となり、かつ、前記光透過バッフル43の異なる領域が前記第1の光透過孔4211を被覆して設けられるように、前記第1の光透過孔4211に対して移動することができる。
【0026】
図5~
図9を参照して、本発明の実施例が提供する溶融プール観察モジュール40は、カメラアセンブリ41と、第1の光透過孔4211を有する第1の遮蔽部421と、前記第1の光透過孔4211を被覆して設けられた光透過バッフル43と、を含み、光透過バッフル43は、面積が少なくとも、第1の光透過孔4211の面積の2倍となり、かつ、光透過バッフル43は第1の光透過孔4211に対して移動することができる。溶接の過程において、スパッタは、第1の光透過孔4211を通過して光透過バッフル43の溶融プール90に向かう側に接着され、かつ、スパッタは、光透過バッフル43における第1の光透過孔4211に対する領域のみに接着される。接着されたスパッタが多すぎて、カメラアセンブリ41による撮影効果に影響を及ぼす場合、光透過バッフル43を移動させることで、光透過バッフル43におけるスパッタが接着されていない領域を第1の光透過孔4211を被覆して設けることができ、そうすると、光透過バッフル43の透過率を向上させて、カメラアセンブリ41による撮影効果を向上させることができる。本発明の実施例が提供する溶融プール観察モジュール40は、光透過バッフル43における第1の光透過孔4211に対する領域には、接着されたスパッタが多すぎると、光透過バッフル43を移動させて光透過バッフル43における清浄な領域を第1の光透過孔4211に合せるだけで、溶接作業を引き続き行うことができる。光透過バッフル43における全ての領域が汚染されてしまう場合のみに、光透過バッフル43を洗浄化したり、交換したりする必要がある。それにより、光透過バッフル43を洗浄化または交換の頻度を大幅に低減し、人的コストを低減し、作業効率を向上させる。
【0027】
図5~
図9を参照して、理解できるように、第1の光透過孔4211に対する前記光透過バッフル43の移動方式は、平行移動、回転などの方式によって実現されてもよく、光透過バッフル43における清浄な領域を第1の光透過孔4211に合わせることができればよい。前記光透過バッフル43の移動は、手動でも、電動でも行われてもよいが、それらに限られていない。前記光透過バッフル43は、全ての光が通過することを許容してもよいし、特定の波長を有する光のみが透過することを許容してもよいし、カメラアセンブリ41による溶接の様子への撮影を可能にすればよい。
【0028】
図5~
図9を参照して、さらに、前記溶融プール観察モジュール40は回転軸44をさらに含み、前記光透過バッフル43が前記回転軸44に回動接続されている。その構造によれば、本発明の実施例では、光透過バッフル43を回転して移動させることにより、光透過バッフル43に必要な取付空間を大幅に節約することができ、溶融プール観察モジュール40の設計上の小型化にも有利である。本実施例では、回転軸44の設置位置が制限されていないが、光透過バッフル43がその回転軸44周りに回転して第1の光透過孔4211に対して動くことが出来ればよい。
【0029】
図5~
図9を参照して、さらに、前記遮蔽アセンブリは、前記第1の遮蔽部421と前記カメラアセンブリ41の間に位置する第2の遮蔽部422をさらに含み、前記第2の遮蔽部422には、前記第1の光透過孔4211に対する第2の光透過孔4221が設けられ、前記カメラアセンブリ41は、前記第1の光透過孔4211と前記第2の光透過孔4221によって前記溶融プール90を撮影し、前記第1の遮蔽部421と前記第2の遮蔽部422が収容空間423を形成するように囲まれ、前記光透過バッフル43が前記収容空間423内に位置し、前記回転軸44が前記第1の遮蔽部及び/または前記第2の遮蔽部に接続されている。本発明の実施例では、光透過バッフル43が収容空間423内に設けられたことで、光透過バッフル43が外部の不純物によって汚染されてしまうことを回避することができ、光透過バッフル43の使用寿命をさらに伸ばし、光透過バッフル43を洗浄化または交換の頻度を低減し、人的コストを低減し、作業効果を向上させる。
【0030】
図5~
図9を参照して、さらに、前記光透過バッフル43が円形柱状を呈し、前記回転軸44が前記光透過バッフル43の円心位置に回動接続され、前記収容空間423が切欠き4231を有し、前記光透過バッフル43が前記切欠き4231に露出している。前記光透過バッフル43が円形柱状を呈し、前記回転軸44が前記光透過バッフル43の円心位置に回動接続され、前記収容空間423が切欠き4231を有し、前記光透過バッフル43が前記切欠き4231に露出している。上記構造によれば、光透過バッフル43の一部が収容空間423の切欠き4231に露出しているので、光透過バッフル43を回転させる必要のある場合、光透過バッフル43の露出部分を手動でプッシュするだけで、光透過バッフル43の回転を駆動させることができ、光透過バッフル43における清浄な領域を第1の光透過孔4211に合わせることができ、操作が簡単で、便利である。
【0031】
図10~
図16を参照して、さらに、前記クローラ式溶接ロボットは、前記被溶接部を吸着するための磁気吸着装置50と、前記車両シャーシ10に設けられるとともに、前記磁気吸着装置50の昇降を駆動するための昇降機構51と、をさらに含み、前記車両シャーシ10には貫通孔52が設けられ、前記昇降機構51は、前記貫通孔52を貫通して設けられるとともに、一端が前記磁気吸着装置50に接続された調整ねじ53と、前記車両シャーシ10の前記磁気吸着装置50に背く側に設けられるとともに、前記調整ねじ53にねじ接続された調整ナット54と、を含み、前記昇降機構51は、前記車両シャーシ10に固定接続されるとともに、前記調整ねじ53の自転を規制するための周方向規制部55をさらに含む。
【0032】
図10~
図16を参照して、本発明の実施例が提供するクローラ式溶接ロボットでは、磁気吸着装置50の昇降を駆動するための昇降機構51は、調整ねじ53と、調整ねじ53に螺合された調整ナット54とを含む。しかも、本発明では、調整ねじ53の自転を規制することができる周方向規制部55を車両シャーシ10に追加することにより、ナットを回転させて磁気吸着装置50の昇降を調整する過程において、周方向規制部55は、調整ねじ53がその軸方向のみに沿って移動できるように、調整ねじ53の自転を規制することができる。そのため、昇降の調整が無効となってしまうことを回避した。また、周方向規制部55によって調整ねじ53の自転が規制されたので、磁気吸着装置50が調整ねじ53に伴って回転する場合も回避し、さらに、磁気吸着装置50がクローラ式溶接ロボットの履帯ホイール30に衝突してクローラ式溶接ロボットの走行を妨げる技術的課題を回避した。
【0033】
図10~
図16を参照して、本発明の実施例における周方向規制アセンブリは、ナットを回転させる過程において、ねじの自転を防止することができる手段であり、その手段は、調整ねじ53がその軸方向に沿って移動すること、即ち、昇降運動を妨げない。理解できるように、調整ねじ53にも調整ナット54にも、互いに係合されたねじが設けられ、ナットを回転させるとき、調整ねじ53による昇降運動を促すことができ、さらに、磁気吸着装置50の昇降を駆動させる。本発明の実施例における磁気吸着装置50は、永久磁石であってもよいし、電気磁石であってもよい。
【0034】
図10~
図16を参照して、さらに、前記周方向規制部55は、係止孔551を有し、前記調整ねじ54に外嵌されて設けられ、前記係止孔551が前記調整ねじ53の外周に係止されて前記調整ねじ53の自転を規制する。具体的には、調整ナット54を回転させるとき、係止孔551は、調整ねじ53の自転を規制することにより、ねじが車両シャーシ10に対して昇降移動し、さらに、磁気吸着装置50の昇降を駆動させる。具体的には、前記係止孔551が「D」字状を呈し、前記調整ねじ53は前記係止孔551に摺動係合された摺接セクション531を含み、前記摺接セクション531の横断面の形状が前記係止孔551の形状に対応して、「D」字状を呈する。横断面の形状は添付図面に示されている。理解できるように、係止孔551が「D」字状を呈し、摺接セクション531の横断面も「D」字状を呈するので、調整ねじ53が周方向規制部55に対して自転できなくなるが、周方向規制部55に対してその軸方向に沿って移動することができ、それにより、調整ねじ53が自転していない場合に、昇降移動することができる。それにより、昇降への調整を有効にし、磁気吸着装置50が回転して履帯ホイール30の走行を妨げる問題を回避した。上記周方向規制部55の構造が簡単で、製造コストが低い。前記周方向規制部55は、前記車両シャーシ10の前記調整ナット54に背く側に固定して設置されている。
【0035】
図10~
図16を参照して、さらに、前記履帯ホイール30は、前記ホイールキャリア31に接続されるとともに、前記スプロケットチェーン34の第1の方向での張力を調整するための第1の張力機構60と、前記ホイールキャリア31に接続されるとともに、前記スプロケットチェーン34の第2の方向での張力を調整するための第2の張力機構70と、をさらに含み、前記第1方向と前記第2の方向は向きが異なる。
【0036】
図17を参照して、本発明の実施例が提供する履帯アセンブリは、第1の張力機構60と第2の張力機構70を含み、第1の張力機構60がスプロケットチェーン34の第1の方向での張力を調整することができ、第2の張力機構70がスプロケットチェーン34の第2の方向での張力を調整することができる。クローラ式溶接ロボットでは、第1の方向においてスプロケットチェーン34による搖動のために十分な空間が保留されていない場合、第2の張力機構70によって、第2の方向からスプロケットチェーン34に張力を与えることができるし、第1の張力機構60によって一部の張力を与えて、第2の張力機構70によって残りの張力を与えることで、その2つの張力の和でスプロケットチェーン34に必要な張力を満足させることもできる。本発明の実施例が提供する履帯アセンブリは、第1の張力機構60には、スプロケットチェーン34に対して完全な張力を与える十分な空間が無い場合、第2の張力機構70によって張力を与えることができ、張力印加の方式がさらに柔軟となる。また、好ましくは、前記第1の方向は、前記履帯ホイール30の走行方向と一致した横方向であり、
図17におけるx方向を参照されたい。そして、前記第2の方向は、前記横方向に垂直な縦方向であり、
図17におけるz方向を参照されたい。前記第1の張力機構60と第2の張力機構70による張力印加の方式は従来の張力印加の方式と同じであり、スプロケットチェーン34に対して張力を与えることができればよい。ここでは省略されたい。
【0037】
以上は、本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を制限するためのものではない。本発明の精神と原則において行われた如何なる補正や等価代替等はいずれも、本発明の保護範囲内に入っている。
【符号の説明】
【0038】
10 車両シャーシ
20 ヒンジ
30 履帯ホイール
31 ホイールキャリア
32 第1のスプロケットホイール
33 第2のスプロケットホイール
34 スプロケットチェーン
40 溶融プール観察モジュール
41 カメラアセンブリ
421 第1の遮蔽部
4211 第1の光透過孔
422 第2の遮蔽部
4221 第2の光透過孔
423 収容空間
4231 切欠き
43 光透過バッフル
44 回転軸
50 磁気吸着装置
51 昇降機構
52 貫通孔
53 調整ねじ
531 摺接セクション
54 調整ナット
55 周方向規制部
551 係止孔
60 第1の張力機構
70 第2の張力機構
80 溶接トーチ
90 溶融プール