(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】3軸パラレルリニアロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 11/00 20060101AFI20220913BHJP
【FI】
B25J11/00 D
(21)【出願番号】P 2021001874
(22)【出願日】2021-01-08
【審査請求日】2021-01-08
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】513079236
【氏名又は名称】ナショナル チェン クン ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藍 兆杰
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0121351(US,A1)
【文献】米国特許第05699695(US,A)
【文献】米国特許第04976582(US,A)
【文献】米国特許第06729202(US,B2)
【文献】中国特許出願公開第105150199(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107139174(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業領域と、
該作業領域の幾何学的中心を通過する中心軸と、
該中心軸を中心に配置された3つのドライバと、
該3つのドライバによって協働駆動され、また幾何学的中心が前記作業領域内に位置しているエンドエフェクタを有する運動機構と、
前記中心軸に対して互いに回転対称であり、なおかつ前記エンドエフェクタに並列連結されている3つのリンク機構アセンブリとを備え、
該リンク機構アセンブリの各々は、前記3つのドライバの各々1つによって駆動され、前記エンドエフェクタは三次元空間内を線形移動するように駆動され、前記リンク機構アセンブリの各々は、
第1の連結ロッド、
第2の連結ロッド、及び
第3の連結ロッド有し、
ここで、各前記リンク機構アセンブリの前記第1の連結ロッドは両端部を有し、前記連結ロッドの該両端部のうちの一方は前記3つのドライバのうちの1つに連結され、また前記両端部のうちの他方は、第1の回転ジョイントによって前記第2の連結ロッドの両端部のうちの一方にピボット連結されており、前記第2の連結ロッドの前記両端部のうちの他方は、第2の回転ジョイントによって前記第3の連結ロッドの両端部のうちの一方にピボット連結されており、前記第3の連結ロッドの前記両端部のうちの他方は、第3の回転ジョイントによって前記エンドエフェクタにピボット連結されており、前記エンドエフェクタにおける前記幾何学的中心の閉運動軌道範囲の交点が生成され、また前記3つのリンク機構アセンブリによって駆動されて、前記作業領域を形成しており、
各前記リンク機構アセンブリの前記第1の回転ジョイントと、前記中心軸に垂直な仮想平面Pとの間に画定される内角は、鋭角であり、且つ前記第1の回転ジョイント、前記第2の回転ジョイント、及び前記第3の回転ジョイントの回転中心軸は互いに平行であり、
各前記リンク機構アセンブリの前記第1の回転ジョイントと前記第2の回転ジョイントとの間に第1の中心距離が画定され、各前記リンク機構アセンブリの前記第2の回転ジョイントと前記第3の回転ジョイントとの間に第2の中心距離が画定され、また、前記第1の中心距離は前記第2の中心距離に等し
く、
前記3つのドライバの各々は、
スピンドルであって、前記3つのドライバの該スピンドルは前記中心軸に平行であり、また前記中心軸を中心に等角度分布で配置されている、スピンドル、
シャフトを有するサーボモータ、及び
該サーボモータの該シャフト及び前記スピンドルの端部に連結された変速機アセンブリを有し、
各前記リンク機構アセンブリの前記第1の連結ロッドはねじ付きスリーブを有し、
各前記ドライバの前記スピンドルは、応動する前記リンク機構アセンブリの1つにおける前記第1の連結ロッドの前記ねじ付きスリーブに取り付けられ、かつ螺合しており、また、
前記ドライバはそれぞれ、応動する前記リンク機構アセンブリにおける前記第1の連結ロッドを駆動して、対応する前記スピンドルに沿ってこれを線形移動させている、
3軸パラレルリニアロボット。
【請求項2】
各前記ドライバの前記変速機アセンブリは、タイミングプーリ体である、請求項
1に記載の3軸パラレルリニアロボット。
【請求項3】
前記3軸パラレルリニアロボットは基台を備え、
該基台は3つの固定フレーム板を有し、
前記3つのドライバの各々1つが、前記基台の前記3つの固定フレーム板の各々1つの上に配置されている
請求項
2に記載の3軸パラレルリニアロボット。
【請求項4】
作業領域と、
該作業領域の幾何学的中心を通過する中心軸と、
該中心軸を中心に配置された3つのドライバと、
該3つのドライバによって協働駆動され、また幾何学的中心が前記作業領域内に位置しているエンドエフェクタを有する運動機構と、
前記中心軸に対して互いに回転対称であり、なおかつ前記エンドエフェクタに並列連結されている3つのリンク機構アセンブリとを備え、
該リンク機構アセンブリの各々は、前記3つのドライバの各々1つによって駆動され、前記エンドエフェクタは三次元空間内を線形移動するように駆動され、前記リンク機構アセンブリの各々は、
第1の連結ロッド、
第2の連結ロッド、及び
第3の連結ロッド有し、
ここで、各前記リンク機構アセンブリの前記第1の連結ロッドは両端部を有し、前記連結ロッドの該両端部のうちの一方は前記3つのドライバのうちの1つに連結され、また前記両端部のうちの他方は、第1の回転ジョイントによって前記第2の連結ロッドの両端部のうちの一方にピボット連結されており、前記第2の連結ロッドの前記両端部のうちの他方は、第2の回転ジョイントによって前記第3の連結ロッドの両端部のうちの一方にピボット連結されており、前記第3の連結ロッドの前記両端部のうちの他方は、第3の回転ジョイントによって前記エンドエフェクタにピボット連結されており、前記エンドエフェクタにおける前記幾何学的中心の閉運動軌道範囲の交点が生成され、また前記3つのリンク機構アセンブリによって駆動されて、前記作業領域を形成しており、
各前記リンク機構アセンブリの前記第1の回転ジョイントと、前記中心軸に垂直な仮想平面Pとの間に画定される内角は、鋭角であり、且つ前記第1の回転ジョイント、前記第2の回転ジョイント、及び前記第3の回転ジョイントの回転中心軸は互いに平行であり、
各前記リンク機構アセンブリの前記第1の回転ジョイントと前記第2の回転ジョイントとの間に第1の中心距離が画定され、各前記リンク機構アセンブリの前記第2の回転ジョイントと前記第3の回転ジョイントとの間に第2の中心距離が画定され、また、前記第1の中心距離は前記第2の中心距離に等しく、
前記3つのドライバは固定フレーム上に回転対称に配置されており、
前記中心軸は、前記固定フレームの幾何学的中心を通過しており、
前記3つのドライバの各々は、
前記固定フレームにしっかりと取り付けられ、またシャフトを有するサーボモータ、及び、
両端部を有する駆動アームであって、該両端部のうちの一方は前記サーボモータの前記シャフトにしっかりと連結され、そして前記駆動アームの前記両端部のうちの他方は、応動する前記リンク機構アセンブリの1つの前記第1の連結ロッドに連結されている、駆動アームを有し、また、
各前記ドライバの前記駆動アームが振動して、対応する前記第1の連結ロッドを駆動することにより、前記中心軸に平行な方向に前記第1の連結ロッドを移動させている
、
3軸パラレルリニアロボット。
【請求項5】
前記3つのドライバは、前記中心軸に対して回転対称に固定構造物上に配置されており、
前記3つのドライバの各々は、
前記固定構造物にしっかり固定して配置され、かつスピンドルを有するサーボモータ、
両端部を有する駆動アームであって、該両端部のうちの一方は前記サーボモータの前記スピンドルにしっかりと連結され、且つ前記駆動アームの前記両端部のうちの他方は、応動する前記リンク機構アセンブリの前記第1の連結ロッドに回転可能に連結されている、駆動アーム、及び
前記駆動アームと平行であり、両端部を有する補助アームであって、該補助アームの前記両端部のうちの一方は、前記固定構造物に回転可能に連結され、また、前記補助アームの前記両端部のうちの他方は、応動する前記リンク機構アセンブリにおける前記第1の連結ロッドに回転可能に連結されている、補助アームを有し、
ここで、各前記ドライバの前記駆動アーム及び該補助アームは、共に振動するように駆動されて、応動する前記リンク機構アセンブリにおける前記第1の連結ロッドが前記中心軸に平行な方向に移動できるようにしている、
請求項1から
3のいずれか一項に記載の3軸パラレルリニアロボット。
【請求項6】
各前記リンク機構アセンブリの前記第2の連結ロッドは、前記リンク機構アセンブリの前記第1の回転ジョイントに垂直な方向において、前記第2の連結ロッドの前記両端部間に画定される長さを有し、
各前記リンク機構アセンブリの前記第3の連結ロッドは、前記リンク機構アセンブリの前記第2の回転ジョイントに垂直な方向において、前記第3の連結ロッドの前記両端部間に画定される長さを有し、また、
該2つの前記長さのうちの一方はゼロに等しく、また他方の前記長さはゼロに等しくはない、
請求項1から
4のいずれか一項に記載の3軸パラレルリニアロボット。
【請求項7】
各前記リンク機構アセンブリの前記第2の連結ロッドは、前記リンク機構アセンブリの前記第1の回転ジョイントに垂直な方向において、前記第2の連結ロッドの前記両端部間に画定される長さを有し、
各前記リンク機構アセンブリの前記第3の連結ロッドは、前記リンク機構アセンブリの前記第2の回転ジョイントに垂直な方向において、前記第3の連結ロッドの前記両端部間に画定される長さを有し、また、
該2つの前記長さはゼロに等しくはない、
請求項1から
4のいずれか一項に記載の3軸パラレルリニアロボット。
【請求項8】
各前記リンク機構アセンブリの前記第2の連結ロッドは、前記リンク機構アセンブリの前記第1の回転ジョイントに垂直な方向において、前記第2の連結ロッドの前記両端部間に画定される長さを有し、
各前記リンク機構アセンブリの前記第3の連結ロッドは、前記リンク機構アセンブリの前記第2の回転ジョイントに垂直な方向において、前記第3の連結ロッドの前記両端部間に画定される長さを有し、また、
該2つの前記長さのうちの一方はゼロに等しく、また他方の前記長さはゼロに等しくはない、
請求項
5に記載の3軸パラレルリニアロボット。
【請求項9】
各前記リンク機構アセンブリの前記第2の連結ロッドは、前記リンク機構アセンブリの前記第1の回転ジョイントに垂直な方向において、前記第2の連結ロッドの前記両端部間に画定される長さを有し、
各前記リンク機構アセンブリの前記第3の連結ロッドは、前記リンク機構アセンブリの前記第2の回転ジョイントに垂直な方向において、前記第3の連結ロッドの前記両端部間に画定される長さを有し、また、
該2つの前記長さはゼロに等しくはない、
請求項
5に記載の3軸パラレルリニアロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2020年3月27日に出願された台湾特許出願第109110614号の利益を主張し、その内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、3軸リニアロボット、より詳細には、他の自動機械分野のロボット及び装置で広く使用することができる、3軸パラレルリニアロボットに関する。
【背景技術】
【0003】
従来の3軸パラレルリニアロボットについては、特許文献1(空間における要素の運動及び位置決めのための装置)、特許文献2(直交座標系パラレルマニピュレータ)、及び特許文献3(構造調整可能な3自由度パラレル機構)において開示されている。前述の3軸パラレルリニアロボットの説明は、以下のとおりである。
【0004】
一般にデルタロボットと呼ばれる特許文献1の空間における要素の運動及び位置決めのための装置は、エンドエフェクタに共に連結された3つの連結手段を備え、このエンドエフェクタは出力端として使用されている。これら3つの連結手段の各々は、駆動アセンブリによって駆動され、また4本の平行バーと2本の回転ジョイントとによって構成されるため、これによってエンドエフェクタを3軸線形運動(XYZ)で作動させることができる。
【0005】
特許文献1に開示されているデルタロボットでは、エンドエフェクタを連結するための4本の平行バーと2本の回転ジョイントとで構成された、3つの連結手段の使用を想定しており、三次元空間移動の必要性に基づくと、これら3つの連結手段が長過ぎる状態にある。ある空間では、デルタロボットの全体積がこれら3つの連結手段の全長によって制限されるため、デルタロボットの高さ方向の作動ストロークが短くなり、その結果デルタロボットの適用範囲が制限されることになる。
【0006】
また、前述のデルタロボットでは、連結手段はそれぞれ4本の平行バーと2本の回転ジョイントとで構成されており、ここでは3つ連結手段の各々における4本の平行バーの全長が長い。X軸方向及びY軸方向に沿った各連結手段の剛性は低く、エンドエフェクタはこれら3つの連結手段によって駆動されることから、エンドエフェクタの移動時に揺動する可能性があり、デルタロボットの安定性に影響を及ぼす。その上、デルタロボットの運動のベクトル解析におけるヤコビ行列は、エンドエフェクタの位置によって著しく変化し得るため、速度と動力伝達との関係性の変動が大きくなり過ぎて、運動制御設計がより困難になる。
【0007】
特許文献2に開示されている直交座標系パラレルマニピュレータは、並列配置された3本のシャフトにそれぞれ連結された3つの連結手段を備える垂直型パラレルロボットであり、これら3つの連結手段はエンドエフェクタに連結されている。3つの連結手段の各々は、順次直列連結された3本の連結ロッドを有し、これら3本の連結ロッドのうちの1本は、3本のシャフトのうちの1本の上で上下に移動することができる。これら3本の連結ロッドのうち隣り合う2本の連結ロッドは、ピボットによって互いに連結されている。3つの連結手段の遠位端にある連結ロッドはエンドエフェクタに連結されており、これら3つの連結手段を別々に駆動することで、エンドエフェクタを駆動して空間内でこれを移動させることができる。
【0008】
垂直型パラレルロボットを使用して、デルタロボットと同様のモーション機能をもたらすことができるが、この垂直型パラレルロボットでは、その連結手段におけるより効果的な機構設計が提案されておらず、連結手段の全長は依然として長過ぎるものであり、その上作動ストロークが短く、動作安定性が十分ではないという課題もある。
【0009】
特許文献3に開示されている構造調整可能な3自由度パラレル機構では、固定台、可動台、及び3つの分岐を想定している。分岐はそれぞれ、調整構成要素、支柱、可動部、回転部、連結ロッド、及び球状部を有する。この調整構成要素は、スライドレール、スライドブロック、嵌合ストリップ、及びねじで構成されている。この調整構成要素のうちスライドレールは固定台上に水平に配置され、スライドブロック下部に形成されたスライド溝と整合している。支柱はスライドブロック上に垂直に配置され、可動部はこの支柱及び回転部に連結され、固定台の上面に垂直な軸を有する。回転部は固定台の上面と平行な軸を有する。連結ロッドは、回転部と球状部との間に連結された端部を有し、球状部によって可動台上に配置されている。
【0010】
構造調整可能な3自由度パラレル機構を使用して、デルタロボットと同様のモーション機能をもたらすことができるが、この構造調整可能な3自由度パラレル機構では、その連結手段におけるより効果的な機構設計が提案されておらず、可動台と支柱との間で回転部及び球状部に連結された3つの分岐のうちの連結ロッドは、一直線に延在しなければならず、これによって可動台に連結された連結ロッドの長さが長くなり過ぎて、この構造調整可能な3自由度パラレル機構の全高が増大する可能性がある。
その上、可動台と入力駆動端との距離が長く、また構造調整可能な3自由度パラレル機構自体にも、作動ストロークが短く、なおかつ動作安定性が十分ではないという課題がある。
【0011】
また、別のパラレルロボットが特許文献4(平面パラレル機構制御装置及びダブル5ロッド駆動方式)に開示されている。この平面パラレル機構制御装置は、平面パラレル機構本体と制御部とを備える。この平面パラレル機構本体は、可動台、パッシブ運動用チェーン、及び2つの平面5バー機構を有する。これら2つの平面5バー機構の各々は、2台のダイレクトドライブ回転機、2本の駆動シャフト、及び2本のフォロアシャフトを有する。パッシブ運動用チェーンは、ベアリングアセンブリ及び2本の従動シャフトを有する。制御部は、可動台に配置された3軸加速度センサとダイレクトドライブ回転機とに電気的に連結されている。2つの平面状の5バー機構はアクティブ運動用チェーンとして使用され、またダイレクトドライブ回転機によって作動する。
【0012】
平面パラレル機構制御装置の平面パラレル機構本体は、可動台を駆動して移動させるように制御され得るが、パッシブ運動は2つの平面状の5バー機構と組み合わされ、また、駆動シャフト及び従動シャフトのピボット軸は、2台のダイレクトドライブ回転機の軸と平行になっている。その場合、この可動台を、水平方向に沿って平面上を移動するように駆動することができるのみとなり、三次元空間内を移動するように駆動することはできないため、このことが、平面パラレル機構制御装置の適用範囲を限定してしまう恐れがある。加えて、平面パラレル機構本体は5本の運動用チェーンを使用する必要があり、この平面パラレル機構本体の全体構造は複雑となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許第4976582号明細書
【文献】米国特許6729202号明細書
【文献】中国特許第105150199号明細書
【文献】中国特許第107139174号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
これらの欠点を克服するために、本発明は、前述の課題を軽減する3軸パラレルリニアロボットを提供しようとするものである。
【0015】
本発明の主な目的は、他の自動機械分野のロボット及び装置で広く使用することができる、3軸パラレルリニアロボットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明による3軸パラレルリニアロボットは、中心軸を中心に配置された3つのドライバと、運動機構とを備える。この運動機構は、エンドエフェクタに並列連結された3つのリンク機構アセンブリを有する。エンドエフェクタが三次元空間内を線形移動できるようにするために、これら3つのリンク機構アセンブリはそれぞれ、3つのドライバによって線形駆動又は回転駆動される。リンク機構アセンブリはそれぞれ、3本の連結ロッド及び3本の回転ジョイントを有する。それぞれの回転ジョイントと、中心軸に垂直な仮想平面との間に画定される内角は、鋭角である。第1の回転ジョイントと第2の回転ジョイントとの間の第1の中心距離は、第2の回転ジョイントと第3の回転ジョイントとの間の第2の中心距離に等しい。作動ストロークを増加させ、また本3軸パラレルリニアロボットの動作安定性を向上させるために、運動機構の全高を低減している。
【0017】
本発明の他の目的、利点及び新規の特徴は、添付の図面と併せて解釈される場合、以下の詳細な説明を参照することによってより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明による3軸パラレルリニアロボットの第1の実施形態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の3軸パラレルリニアロボットの基台の固定フレーム板を取り外した状態を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1の3軸パラレルリニアロボットの側面図である。
【
図4】
図4は、
図1の3軸パラレルリニアロボットの上面図である。
【
図5】
図5は、本発明による3軸パラレルリニアロボットの第2の実施形態を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5の3軸パラレルリニアロボットの側面図である。
【
図7】
図7は、
図5の3軸パラレルリニアロボットの上面図である。
【
図8】
図8は、
図5の3軸パラレルリニアロボットの運動機構の動作上面図である。
【
図9】
図9は、
図1の3軸パラレルリニアロボットの運動機構のリンク機構アセンブリ及びエンドエフェクタの動作側面図である。
【
図10】
図10は、本発明による3軸パラレルリニアロボットの第3の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1、
図5、及び
図10を参照すると、本発明による3軸パラレルリニアロボットは3つの実施形態を有し、また3軸パラレルリニアロボットは、作業領域Wと、この作業領域Wの幾何学的中心を通過する中心軸Oと、3つのドライバ1A、1B、1Cと、運動機構2とを備える。
【0020】
図1、
図5、及び
図10を参照すると、3つのドライバ1A、1B、1Cは3軸パラレルリニアロボットの中心軸Oを中心に配置され、駆動力を線形入力又は回転入力している。これら3つのドライバの構造及び種類は、本発明の3つの実施形態で提示することができる。
【0021】
図1、
図3、及び
図4を参照すると、本発明による3軸パラレルリニアロボットの第1の実施形態では、3つのドライバ1Aの各々は、スピンドル10A、サーボモータ11A、及び変速機アセンブリ12Aを有する。
図8及び
図9をさらに参照すると、3つのドライバ1Aのスピンドル10Aは中心軸Oに平行であり、また中心軸Oを中心に等角度分布で配置されている。つまり、スピンドル10Aはそれぞれ、中心軸Oに対して距離rp(rp≠0)を有する。サーボモータ11Aはスピンドル10Aの側部に配置され、かつシャフトを有する。変速機アセンブリ12Aは、サーボモータ11Aのシャフト及びスピンドル10Aの端部に連結され、スピンドル10Aを介して運動機構2に連結されている。3つのドライバ1Aは駆動力を線形入力することにより、運動機構2を共に駆動して、これを線形移動させている。変速機アセンブリ12Aは、タイミングプーリ体、ギヤ体又は他の同等の変速機アセンブリから選択することができる。
【0022】
図1、
図3、及び
図4を参照すると、本3軸パラレルリニアロボットの第1の実施形態では、本3軸パラレルリニアロボットは基台13Aをさらに備え、そしてこの基台13Aは3つの固定フレーム板131Aを有する。3つのドライバ1Aの各々1つが、基台13Aの3つの固定フレーム板131Aの各々1つの固定フレーム板131A上に配置されている。
【0023】
図5~
図7を参照すると、本発明による3軸パラレルリニアロボットの第2の実施形態では、3つのドライバ1Bが固定フレーム10B上に回転対称に配置されている。中心軸Oは、固定フレーム10Bの幾何学的中心を通過している。3つのドライバ1Bの各々は、サーボモータ11B及び駆動アーム12Bを有する。サーボモータ11Bは固定フレーム10Bにしっかりと取り付けられ、またシャフト111Bを有する。駆動アーム12Bは両端部を有し、これら両端部のうちの一方はサーボモータ11Bのシャフト111Bにしっかりと連結され、そして駆動アーム12Bの両端部のうちの他方は運動機構2に連結されている。3つのドライバ1Bは駆動力を回転入力することにより、運動機構2を共に駆動して、これを線形運動で移動させている。
【0024】
図10~
図16を参照すると、本発明による3軸パラレルリニアロボットの第3の実施形態では、3つのドライバ1Cは、中心軸Oに対して回転対称に固定構造物13C上に配置されている。この固定構造物13Cは単一の構成要素であってもよいし、あるいは3つの固定マウント131Cを有していてもよく、そしてこれら3つのドライバ1Cの各々1つが、3つの固定マウント131Cのそれぞれ1つずつに配置される。
【0025】
3つのドライバ1Cの各々は、サーボモータ11C、駆動アーム12C、及び補助アーム14Cを有する。サーボモータ11Cは3つの固定マウント131Cのうちの1つに配置され、またシャフト111Cを有する。駆動アーム12Cは両端部を有し、これら両端部のうちの一方はサーボモータ11Cのシャフト111Cにしっかりと連結され、そして駆動アーム12Cの両端部のうちの他方は運動機構2に連結されている。補助アーム14Cは駆動アーム12Cと平行であり、また両端部を有し、これら両端部のうち一方は固定構造物13Cに回転可能に連結され、これら両端部のうちの他方は運動機構2に連結されている。3つのドライバ1Cは駆動力を回転入力することにより、運動機構2を共に駆動して、これを線形運動で移動させており、また、駆動アーム12Cと補助アーム14Cとで構成されたパラレルリンク体は、これら3つのドライバ1Cが共に連動することにより、運動機構2の線形運動の安定性を向上させることができる。
【0026】
図1~
図4、
図5~
図7、及び
図10~
図11を参照すると、運動機構2は3つのドライバ1A、1B、1Cによって協働駆動され、またエンドエフェクタ20及び3つのリンク機構アセンブリ30を有する。運動機構20の幾何学的中心Cは、本3軸パラレルリニアロボットの作業領域W内に位置し、また3つのリンク機構アセンブリ30は中心軸Oに対して互いに回転対称であり、なおかつエンドエフェクタ20に並列連結されている。これらリンク機構アセンブリ30の各々は、3つのドライバ1A、1B、1Cのそれぞれ1つによって駆動され、その結果、エンドエフェクタ20は三次元空間内を線形移動するように駆動され得る。
【0027】
図1~
図4、
図5~
図7、及び
図10~
図11、さらに
図8及び
図9を参照すると、運動機構2における3つのリンク機構アセンブリ30の各々は、第1の連結ロッド31、第2の連結ロッド32、及び第3の連結ロッド33を有する。第1の連結ロッド31は両端部を有し、これら両端部のうちの一方は対応するドライバ1A、1B、1Cに連結され、またこれら両端部のうちの他方は、第1の回転ジョイント34によって第2の連結ロッド32の両端部のうちの一方にピボット連結されている。第2の連結ロッド32の両端部のうちの他方は、第2の回転ジョイント35によって第3の連結ロッド33の両端部のうちの一方にピボット連結されている。第3の連結ロッド33の両端部のうちの他方は、第3の回転ジョイント36によってエンドエフェクタ20にピボット連結されている。第1の回転ジョイント34、第2の回転ジョイント35、及び第3の回転ジョイント36は全て、ベアリングなどの単一の回転中心軸の回転部分である。また、第1の回転ジョイント34、第2の回転ジョイント35、及び第3の回転ジョイント36の回転中心軸は互いに平行である。エンドエフェクタ20における幾何学的中心Cの閉運動軌道範囲の交点が生成され、また3つのリンク機構アセンブリ30によって駆動されて、作業領域Wを形成する。
【0028】
図8及び
図9を参照すると、第1の回転ジョイント34と、中心軸Oに垂直な仮想平面Pとの間に画定される内角βは、鋭角である。第1の回転ジョイント34は、中心軸Oを通過するy軸法線に対する距離d1、中心軸Oを通過するx軸法線に対する距離d2、第1の回転ジョイント34と第2の回転ジョイント35との間に画定される第1の中心距離d3、及び第2の回転ジョイント35と第3の回転ジョイント36との間に画定される第2の中心距離d4を有する。第1の中心距離d3は第2の中心距離d4に等しい。
【0029】
さらに、
図9を参照すると、各リンク機構アセンブリ30の第2の連結ロッド32は、リンク機構アセンブリ30の第1の回転ジョイント34に垂直な方向において、第2の連結ロッド32の両端部間に画定される長さL1を有する。各リンク機構アセンブリ30の第3の連結ロッド33は、リンク機構アセンブリ30の第2の回転ジョイント35に垂直な方向において、第3の連結ロッド33の両端部間に画定される長さL2を有する。これら2つの当該長さL1、L2のうちの一方はゼロに等しくてもよく、且つ当該長さL1、L2のうち他方はゼロに等しくなくてもよい。さらに、これら2つの当該長さL1、L2はゼロに等しくなくてもよい。
【0030】
図1~
図4を参照すると、3軸パラレルリニアロボットの第1の実施形態では、ドライバ1Aがそれぞれスピンドル10A、シャフト111Aを有するサーボモータ11A、及び変速機アセンブリ12Aを有する場合、第1の連結ロッド31はそれぞれねじ付きスリーブを有し、また対応するスピンドル10Aは、対応するスピンドル10Aの外面上に形成されたねじ山によって、第1の連結ロッド31のねじ付きスリーブに取り付けられ、かつ螺合する。ドライバ1Aはそれぞれ、応動する第1の連結ロッド31を駆動して、対応するスピンドル10Aに沿って線形移動させることができる。
【0031】
図5~
図7を参照すると、3軸パラレルリニアロボットの第2の実施形態では、3つのドライバ1Bが回転対称に固定フレーム10B上に配置されており、ドライバ1Bはそれぞれ、シャフト111Bを有するサーボモータ11B及び駆動アーム12Bを有する。駆動アーム12Bの両端部のうちの一方はシャフト111Bにしっかりと連結され、また駆動アーム12Bの両端部のうちの他方は応動する第1の連結ロッド31に連結されている。各ドライバ1Bの駆動アーム12Bが振動して、対応する第1の連結ロッド31を駆動することにより、中心軸Oに平行な方向にこれを移動させることができる。
【0032】
図10~
図16を参照すると、3軸パラレルリニアロボットの第3の実施形態では、3つのドライバ1Cが回転対称に固定構造物13C上に配置されている場合、ドライバ1Cはそれぞれ、シャフト111Cを有するサーボモータ11C、駆動アーム12C、及び補助アーム14Cを有する。サーボモータ11Cは、固定構造物13Cの3つの固定マウント131Cのうちの1つにしっかり固定して配置され、駆動アーム12Cの両端部のうちの一方は、応動する第1の連結ロッド31に回転可能に連結され、補助アーム14Cは駆動アーム12Cと平行であり、補助アーム14Cの両端部のうちの一方は、固定構造物13Cにおいて対応する固定マウント131Cに回転可能に連結され、また、補助アーム14Cの両端部のうちの他方は、対応する第1の連結ロッド31に回転可能に連結されている。各ドライバ1Cの駆動アーム12C及び補助アーム14Cは、共に振動するように駆動されて、対応する第1の連結ロッド31が中心軸Oに平行な方向に移動できるようにしている。
【0033】
3軸パラレルリニアロボットの第3の実施形態では、駆動アーム12Cは、ベアリング121Cによって対応する第1の連結ロッド31に連結され、且つ補助アーム14Cは、ベアリング141Cによって、固定構造物13Cにおいて対応する固定マウント131Cに回転可能に連結され、かつベアリング141Cによって、対応する第1の連結ロッド31に回転可能に連結されている。駆動アーム12Cと補助アーム14Cとによって形成されたパラレルリンク機構アセンブリを使用すると、ベアリング121C、141Cの寸法公差によってベアリング121C、141Cの内側の構成要素間に間隙が生じた場合でも、補助アーム14Cが依然として駆動アーム12Cを補助することができ、このことにより、ドライバ1Cによって駆動される運動機構2の線形運動の安定性を維持することができる。
【0034】
図3~
図4、
図6~
図7、
図10~
図11、及び
図8~
図9を参照すると、本発明による3軸パラレルリニアロボットの運動に関して、3軸パラレルリニアロボットでは、ベクトル制御解析としてヤコビ行列を使用することができ、次いで3つのドライバ1A、1B、及び1Cを制御して、
図1に示す第1の実施形態の線形入力で駆動するか、又は
図5及び
図10に示す第2の並びに第3の実施形態の回転入力で駆動している。次いで、運動機構2の3つのリンク機構アセンブリ30は、エンドエフェクタ20を共に駆動して、三次元空間内でこれを線形移動させることができる。ヤコビ行列は従来技術に属しているため、ここではこれについて繰り返さないものとする。
【0035】
上記の説明によれば、本発明の3軸パラレルリニアロボットは、少なくとも以下の利点及び効果を有する。
【0036】
第一に、運動機構の全高を低減し、作動ストロークを増加させている。
本発明の3軸パラレルリニアロボットでは、3つのリンク機構アセンブリ30を含む運動機構2を使用しており、これらリンク機構アセンブリ30はそれぞれ、第1の連結ロッド31、第2の連結ロッド32、第3の連結ロッド33、第1の連結ロッド31及び第2の連結ロッド32に連結された第1の回転ジョイント34、第2の連結ロッド32及び第3の連結ロッド33に連結された第2の回転ジョイント35、並びに第3の連結ロッド33及びエンドエフェクタ20に連結された第3の回転ジョイント36を有する。第1の連結ロッド31、第2の連結ロッド32、及び第3の連結ロッド33は、順次直列連結されている。回転ジョイント34、35、36の各々は、単一の回転中心軸の回転部分であり、また回転ジョイント34、35、36の各々と、中心軸Oに垂直な仮想平面Pとの間に画定される内角は、鋭角である。第1の回転ジョイント34、第2の回転ジョイント35、及び第3の回転ジョイント36の回転中心軸は、互いに平行である。第1の回転ジョイント34と第2の回転ジョイント35との間に画定される第1の中心距離d3は、第2の回転ジョイント35と第3の回転ジョイント36との間に画定される第2の中心距離d4に等しい。上記の特徴及び構造関係によれば、本発明の運動機構2の全体構造を平坦化して、運動機構2の全高を低減し、なおかつ作動ストロークを増加させることができる。エンドエフェクタ20と同じ作業領域Wの条件下で、本発明の3軸パラレルリニアロボットの全高は、従来のデルタロボットの全高の約半分未満であり、なおかつ従来の垂直型パラレルロボットの全高未満であり、このことにより、本発明の3軸パラレルリニアロボットは、省スペースで大規模な作動ストロークを実現することができる。
【0037】
第二に、速度と動力伝達との関係性が一定である。
本発明の上記の特徴及び構造関係によれば、3軸パラレルリニアロボットでは、ベクトル制御解析としてヤコビ行列を使用しており、3つのドライバ1A、1B、1Cを線形入力型又は回転入力型から選択して、運動機構2を駆動することができ、これにより、ヤコビ行列を特定の定数値(線形入力型)にするか、又はこの特定の定数値に近似させることができる(回転入力型)。その結果、3軸パラレルリニアロボットのエンドエフェクタ20の速度と動力伝達との関係性を一定にすることができ、本発明の3軸パラレルリニアロボットの運動制御設計が容易になる。
【0038】
第三に、出力速度を上昇させている。
本発明の3軸パラレルリニアロボットの運動機構2を平坦化して、その全高を低くしたために、駆動入力端からエンドエフェクタ20までの距離が比較的短く、また、速度と動力伝達との関係性が一定になっているので、同じ入力速度の条件下では、本発明の3軸パラレルリニアロボットの出力速度はより速く、当該速度は従来のデルタロボットの出力速度の約2倍である。
【0039】
第四に、運動安定性を向上させている。
本発明の3軸パラレルリニアロボットの運動機構2におけるリンク機構アセンブリ30の連結ロッド31、32、33の数は少なく、また3軸パラレルリニアロボットでは、ピボット構成要素として回転ジョイント34、35、36を使用している。その結果、3軸パラレルリニアロボットの全体的な剛性と耐摩耗性とが向上し、また、本3軸パラレルリニアロボットの構成要素間の間隙が小さくなる。また、本3軸パラレルリニアロボットの運動安定性を効果的に向上させることができるように、運動機構2の平坦化した構造は、本発明の3軸パラレルリニアロボットの全高を低くする。
【0040】
本発明の多くの特徴及び利点を、本発明の構造及び特徴の詳細と共に前述の説明に記載しているが、本開示は例示にすぎない。特に部品の形状、サイズ、及び配置の点でこれらの詳細に変更を加えることは、添付の特許請求の範囲で表現される用語の広い一般的意味によって示される本発明の原理の全範囲内で可能である。