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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】除染用パスボックス
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/18 20060101AFI20220913BHJP
   A61L 101/22 20060101ALN20220913BHJP
【FI】
A61L2/18
A61L2/18 102
A61L101:22
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021108687
(22)【出願日】2021-06-30
【審査請求日】2022-04-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599053643
【氏名又は名称】株式会社エアレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100121784
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 稔
(72)【発明者】
【氏名】川崎 康司
(72)【発明者】
【氏名】角田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】北洞 和彦
(72)【発明者】
【氏名】二村 はるか
(72)【発明者】
【氏名】緒方 嘉貴
(72)【発明者】
【氏名】郭 志強
(72)【発明者】
【氏名】北野 司
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/230449(WO,A1)
【文献】特開2019-054795(JP,A)
【文献】特開2015-139492(JP,A)
【文献】特開2018-089064(JP,A)
【文献】特開平04-020346(JP,A)
【文献】実開昭54-121698(JP,U)
【文献】特開2018-015479(JP,A)
【文献】特開2019-217011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/00-2/28
A61L 101/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無菌環境を維持した作業室の内部に物品を搬入する際に使用するパスボックスであって、
外部環境から前記物品を搬入する搬入ゾーンと、搬入した物品の外表面を除染剤で除染する除染ゾーンと、除染後の物品の外表面に残留した除染剤を除去するエアレーションゾーンと、エアレーション後の物品を前記作業室の内部に搬出する搬出ゾーンとを備えたパスボックス本体、及び、当該パスボックス本体の内部で前記物品を搬送する搬送装置を有し、
前記搬入ゾーンは、外部環境から前記物品を搬入するための気密的に密閉可能な搬入口を備え、
前記除染ゾーンは、前記搬送装置により前記搬入ゾーンから搬送されてきた前記物品の外表面に除染剤ミストを付与するための除染剤付与装置を備え、
前記エアレーションゾーンは、前記搬送装置により前記除染ゾーンから搬送されてきた前記物品の表面に清浄空気を付与するための清浄空気付与装置を備え、
前記搬出ゾーンは、前記搬送装置により前記物品を前記作業室の内部に搬出するための搬出口を備え、
前記除染剤付与装置は、圧縮ガスを発生する圧縮ガス発生手段と、除染剤を供給する除染剤供給手段と、前記圧縮ガスと前記除染剤とを混合して混合気液を調整する混合気液調整器と、当該混合気液を加熱して前記除染剤ミストとする加熱器とを備え、
前記圧縮ガス発生手段から供給する圧縮ガスの量と、前記除染剤供給手段から供給する除染剤の量と、前記加熱器の加熱温度とを制御することにより、前記物品の外表面に付与される前記除染剤ミストの温度を制御し、
前記搬送装置は、第1搬送工程、第2搬送工程、及び、第3搬送工程で作動し、
前記第1搬送工程は、前記搬入ゾーンに搬入されて除染されていない前記物品の一部分を支持して前記搬入ゾーンから前記除染ゾーンに搬送し、前記除染ゾーンにおいて支持された部分以外の大部分を除染し、
前記第2搬送工程は、前記第1搬送工程で除染された部分の一部分を支持するように持ち替えた状態で、前記除染ゾーンから前記エアレーションゾーンに搬送し、前記除染ゾーンにおいて前記第1搬送工程で除染された部分以外を除染すると共に、前記エアレーションゾーンにおいて支持された部分以外の大部分をエアレーションし、
前記第3搬送工程は、前記第2搬送工程でエアレーションされた部分の一部分を支持するように持ち替えた状態で、前記エアレーションゾーンから前記搬出ゾーンに搬送し、前記第2搬送工程でエアレーションされた部分以外をエアレーションすることを特徴とする除染用パスボックス。
【請求項2】
前記搬送装置は、第1搬送装置、第2搬送装置、及び、第3搬送装置の3台の搬送装置からなり、
前記第1搬送装置は、前記第1搬送工程において作動し、
前記第2搬送装置は、前記第2搬送工程において作動し、
前記第3搬送装置は、前記第3搬送工程において作動することを特徴とする請求項1に記載の除染用パスボックス。
【請求項3】
前記搬送装置は、第1搬送装置、及び、第2搬送装置の2台の搬送装置からなり、
前記第1搬送装置は、前記第1搬送工程及び前記第3搬送工程において作動し、
前記第2搬送装置は、前記第2搬送工程において作動することを特徴とする請求項1に記載の除染用パスボックス。
【請求項4】
前記搬送装置は、連続又は半連続に作動することにより、
前記第1搬送工程、第2搬送工程、及び、第3搬送工程の各作動時間の合計は、10分以内であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の除染用パスボックス。
【請求項5】
前記除染剤ミストの温度は、30℃~60℃の範囲内で制御されることを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の除染用パスボックス。
【請求項6】
前記搬入ゾーン及び前記除染ゾーンの空気を排気する第1排気装置と、前記エアレーションゾーン及び前記搬出ゾーンの空気を排気する第2排気装置とを備え、
前記第1排気装置の排気量を前記第2排気装置の排気量より大きくすることにより、前記搬入ゾーン及び前記除染ゾーンの空気が前記エアレーションゾーン及び前記搬出ゾーンに混入することがないと共に、
前記パスボックス本体の空気圧を前記作業室の内部の空気圧より陰圧にすることにより、前記パスボックス本体の空気が前記作業室の内部に混入することがないことを特徴とする請求項1~5のいずれか1つに記載の除染用パスボックス。
【請求項7】
前記加熱器は、前記混合気液を導入する導入口と、円筒状の外筒管と、当該外筒管の内部に外筒管の長手方向に平行に内蔵された発熱体と、前記除染剤ミストを放出する放出口とを備え、
前記混合気液が前記外筒管と前記発熱体との間を通過する間に加熱されて、当該混合気液の全部又は一部が除染剤ガスとなり、当該除染剤ガスが量の制御された前記圧縮ガスによりミスト化して、温度が制御された前記除染剤ミストに変化することを特徴とする請求項1~6のいずれか1つに記載の除染用パスボックス。
【請求項8】
前記加熱器は、前記混合気液を導入する導入口と、円筒状の外筒管と、当該外筒管の内部に外筒管の長手方向に平行に内蔵された発熱体と、前記除染剤ミストを放出する放出口とを備え、
前記発熱体は、その長手方向に配設された棒状のヒータと、当該ヒータの外周に沿って長手方向に螺旋状に捲回された蒸発管とを具備し、
前記混合気液が前記蒸発管の内部を通過する間に加熱されて、当該混合気液の全部又は一部が除染剤ガスとなり、当該除染剤ガスが量の制御された前記圧縮ガスによりミスト化して、温度が制御された前記除染剤ミストに変化することを特徴とする請求項1~6のいずれか1つに記載の除染用パスボックス。
【請求項9】
前記加熱器は、前記発熱体と前記放出口との間に前記除染剤ガスと前記圧縮ガスとを混合する混合ガス調整器を具備し、
前記混合ガス調整器に導入する圧縮ガスの量を制御することにより、前記除染剤ガスが前記圧縮ガスによりミスト化して温度が制御された前記除染剤ミストに変化することを特徴とする請求項7又は8に記載の除染用パスボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除染用パスボックスに関するものであり、特に熱感受性物質を内部に収容した容器の外表面を除染すると共に、当該容器を無菌環境に維持した作業室の内部に搬入する際に使用するパスボックスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
医薬品或いは食品などを製造する製造現場、或いは、手術室などの医療現場においては、室内の無菌状態を維持することが重要である。特に医薬品製造の作業室である無菌室の除染においては、GMP(Good Manufacturing Practice)に即した高度な除染バリデーションを完了させる必要がある。
【0003】
このような無菌環境での小規模な作業においては、作業室として小型のチャンバーを採用し、作業者はこのチャンバーの外部からグローブやハーフスーツを介して作業することのできるアイソレーターが使用される。このアイソレーターのチャンバーには、外部環境から汚染物質が混入しないように無菌状態を維持する吸排気装置が設けられている。また、無菌状態のアイソレーターの内部に外部環境から必要な器具や物品を搬入する際にも、無菌状態の維持が図られている。
【0004】
例えば、アイソレーターの内部に物品を搬入する際には、パスボックスと呼ばれる小型の搬入用予備室が設けられている。物品をアイソレーターの内部に搬入しようとする作業者は、まず物品をパスボックス内に搬入する。このとき、アイソレーターとパスボックスとの間の搬入扉は封鎖されている。次に、パスボックスと外部環境との間の搬入扉を封鎖して物品を除染する。パスボックスでの除染が完了し除染用ガスなどを排除してから、アイソレーターとパスボックスとの間の搬入扉を開放して物品をアイソレーターの内部に搬入する。
【0005】
近年、アイソレーターやパスボックスなどの作業室(以下「除染対象室」という)及び搬入しようとする物品の除染には、過酸化水素(ガス又はミスト)が広く採用されている。この過酸化水素は、強力な滅菌効果を有し、安価で入手しやすく、且つ、最終的には酸素と水に分解する環境に優しい除染ガスとして有効である。この過酸化水素による除染効果は、除染対象部位の表面に凝縮する過酸化水素水の凝縮膜によるものであることが下記特許文献1に記載されている。
【0006】
ところで、パスボックス内で除染してアイソレーターの内部に搬入しようとする物品には、熱に対して不安定な物質(以下「熱感受性物質」という)を収容した容器(バイアル、ボトル等)がある。ここで、熱感受性物質とは、例えば、医薬品原料、医薬品(生物学的製剤、ワクチンなども含む)、凍結乾燥後の医薬品、生体細胞、再生医療等に供される細胞(凍結状態も含む)、培養試薬などが挙げられる。これらの熱感受性物質は、冷蔵保管、冷凍保管など、その物質が安定な低温の最適保存温度で厳密に管理されている。
【0007】
熱感受性物質を収容した容器表面を短時間で高い除染効果で除染するためには、熱感受性物質を収容した容器表面に高温の除染ガス等を供給することが好ましい。しかし、熱感受性物質を収容した容器を内部に収容された熱感受性物質の最適保存温度から大きく外れた温度に長時間曝すことは好ましくない。そこで、本発明者らは、下記特許文献2において、凍結試料などの低温物質を対象として除染効果の完璧を図ると共に、作業時間を短縮して除染作業の効率化を図ることのできるパスボックスを提案した。
【0008】
下記特許文献2に係るパスボックスは、低温物品の表面に向けて除染剤ミストを供給して当該低温物品の表面に除染剤の凝縮膜を形成する。次に、乾燥工程において低温物品の表面に向けて乾燥空気を供給すると共に、凝縮膜に超音波振動と音響放射圧を作用させて作業時間を短縮するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特公昭61-4543号公報
【文献】特開2020-157005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記特許文献2においては、対象とする低温試料を除染する際に、常温付近(20℃~25℃)の除染剤ミストを低温試料の表面に付与する。この場合、低温試料の表面温度が0℃~10℃の温度範囲であれば、比較的短時間で高い除染効果が得られる。しかし、-10℃以下の極低温試料の表面の除染においては、除染剤ミストとの接触時間をより長くしなければ十分な除染効果が得られないという問題があった。そのため、熱に対する品質変化が非常に敏感な熱感受性物質を収容した容器の表面の除染においては、品質に与える影響が大きくなるという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、上記の諸問題に対処して、熱感受性物質を収容した容器の外表面を除染する際に、当該熱感受性物質に熱的品質変化等の影響を与えることなく、適正温度、且つ、短時間の除染操作で除染効果の完璧を図ることのできる除染用パスボックスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題の解決にあたり、本発明者らは、鋭意研究の結果、物品の表面に付与する除染剤ミストの温度を制御すると共に、当該物品をパスボックス内で連続又は半連続に搬送する搬送装置を採用することにより、上記目的を達成できることを見出し本発明の完成に至った。
【0013】
即ち、本発明に係る除染用パスボックスは、請求項1の記載によれば、
無菌環境を維持した作業室の内部に物品を搬入する際に使用するパスボックスであって、
外部環境から前記物品を搬入する搬入ゾーンと、搬入した物品の外表面を除染剤で除染する除染ゾーンと、除染後の物品の外表面に残留した除染剤を除去するエアレーションゾーンと、エアレーション後の物品を前記作業室の内部に搬出する搬出ゾーンとを備えたパスボックス本体、及び、当該パスボックス本体の内部で前記物品を搬送する搬送装置を有し、
前記搬入ゾーンは、外部環境から前記物品を搬入するための気密的に密閉可能な搬入口を備え、
前記除染ゾーンは、前記搬送装置により前記搬入ゾーンから搬送されてきた前記物品の外表面に除染剤ミストを付与するための除染剤付与装置を備え、
前記エアレーションゾーンは、前記搬送装置により前記除染ゾーンから搬送されてきた前記物品の表面に清浄空気を付与するための清浄空気付与装置を備え、
前記搬出ゾーンは、前記搬送装置により前記物品を前記作業室の内部に搬出するための搬出口を備え、
前記除染剤付与装置は、圧縮ガスを発生する圧縮ガス発生手段と、除染剤を供給する除染剤供給手段と、前記圧縮ガスと前記除染剤とを混合して混合気液を調整する混合気液調整器と、当該混合気液を加熱して前記除染剤ミストとする加熱器とを備え、
前記圧縮ガス発生手段から供給する圧縮ガスの量と、前記除染剤供給手段から供給する除染剤の量と、前記加熱器の加熱温度とを制御することにより、前記物品の外表面に付与される前記除染剤ミストの温度を制御し、
前記搬送装置は、第1搬送工程、第2搬送工程、及び、第3搬送工程で作動し、
前記第1搬送工程は、前記搬入ゾーンに搬入されて除染されていない前記物品の一部分を支持して前記搬入ゾーンから前記除染ゾーンに搬送し、前記除染ゾーンにおいて支持された部分以外の大部分を除染し、
前記第2搬送工程は、前記第1搬送工程で除染された部分の一部分を支持するように持ち替えた状態で、前記除染ゾーンから前記エアレーションゾーンに搬送し、前記除染ゾーンにおいて前記第1搬送工程で除染された部分以外を除染すると共に、前記エアレーションゾーンにおいて支持された部分以外の大部分をエアレーションし、
前記第3搬送工程は、前記第2搬送工程でエアレーションされた部分の一部分を支持するように持ち替えた状態で、前記エアレーションゾーンから前記搬出ゾーンに搬送し、前記第2搬送工程でエアレーションされた部分以外をエアレーションすることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、請求項2の記載によれば、請求項1に記載の除染用パスボックスであって、
前記搬送装置は、第1搬送装置、第2搬送装置、及び、第3搬送装置の3台の搬送装置からなり、
前記第1搬送装置は、前記第1搬送工程において作動し、
前記第2搬送装置は、前記第2搬送工程において作動し、
前記第3搬送装置は、前記第3搬送工程において作動することを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、請求項3の記載によれば、請求項1に記載の除染用パスボックスであって、
前記搬送装置は、第1搬送装置、及び、第2搬送装置の2台の搬送装置からなり、
前記第1搬送装置は、前記第1搬送工程及び前記第3搬送工程において作動し、
前記第2搬送装置は、前記第2搬送工程において作動することを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、請求項4の記載によれば、請求項1~3のいずれか1つに記載の除染用パスボックスであって、
前記搬送装置は、連続又は半連続に作動することにより、
前記第1搬送工程、第2搬送工程、及び、第3搬送工程の各作動時間の合計は、10分以内であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、請求項5の記載によれば、請求項1~4のいずれか1つに記載の除染用パスボックスであって、
前記除染剤ミストの温度は、30℃~60℃の範囲内で制御されることを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、請求項6の記載によれば、請求項1~5のいずれか1つに記載の除染用パスボックスであって、
前記搬入ゾーン及び前記除染ゾーンの空気を排気する第1排気装置と、前記エアレーションゾーン及び前記搬出ゾーンの空気を排気する第2排気装置とを備え、
前記第1排気装置の排気量を前記第2排気装置の排気量より大きくすることにより、前記搬入ゾーン及び前記除染ゾーンの空気が前記エアレーションゾーン及び前記搬出ゾーンに混入することがないと共に、
前記パスボックス本体の空気圧を前記作業室の内部の空気圧より陰圧にすることにより、前記パスボックス本体の空気が前記作業室の内部に混入することがないことを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、請求項7の記載によれば、請求項1~6のいずれか1つに記載の除染用パスボックスであって、
前記加熱器は、前記混合気液を導入する導入口と、円筒状の外筒管と、当該外筒管の内部に外筒管の長手方向に平行に内蔵された発熱体と、前記除染剤ミストを放出する放出口とを備え、
前記混合気液が前記外筒管と前記発熱体との間を通過する間に加熱されて、当該混合気液の全部又は一部が除染剤ガスとなり、当該除染剤ガスが量の制御された前記圧縮ガスによりミスト化して、温度が制御された前記除染剤ミストに変化することを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、請求項8の記載によれば、請求項1~6のいずれか1つに記載の除染用パスボックスであって、
前記加熱器は、前記混合気液を導入する導入口と、円筒状の外筒管と、当該外筒管の内部に外筒管の長手方向に平行に内蔵された発熱体と、前記除染剤ミストを放出する放出口とを備え、
前記発熱体は、その長手方向に配設された棒状のヒータと、当該ヒータの外周に沿って長手方向に螺旋状に捲回された蒸発管とを具備し、
前記混合気液が前記蒸発管の内部を通過する間に加熱されて、当該混合気液の全部又は一部が除染剤ガスとなり、当該除染剤ガスが量の制御された前記圧縮ガスによりミスト化して、温度が制御された前記除染剤ミストに変化することを特徴とする。
【0022】
また、本発明は、請求項9の記載によれば、請求項7又は8に記載の除染用パスボックスであって、
前記加熱器は、前記発熱体と前記放出口との間に前記除染剤ガスと前記圧縮ガスとを混合する混合ガス調整器を具備し、
前記混合ガス調整器に導入する圧縮ガスの量を制御することにより、前記除染剤ガスが前記圧縮ガスによりミスト化して温度が制御された前記除染剤ミストに変化することを特徴とする。
【0023】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する各実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0024】
上記構成によれば、本発明に係る除染用パスボックスは、搬入ゾーンと除染ゾーンとエアレーションゾーンと搬出ゾーンとを備えたパスボックス本体、及び、当該パスボックス本体の内部で物品を搬送する搬送装置を有している。搬入ゾーンは、外部環境から物品を搬入するために、気密的に密閉可能な搬入口を備えている。除染ゾーンは、搬入した物品の外表面を除染剤で除染するために、搬送装置により搬入ゾーンから搬送されてきた物品の外表面に除染剤ミストを付与するための除染剤付与装置を備えている。エアレーションゾーンは、除染後の物品の外表面に残留した除染剤を除去するために、搬送装置により除染ゾーンから搬送されてきた物品の表面に清浄空気を付与するための清浄空気付与装置を備えている。搬出ゾーンは、エアレーション後の物品を搬送装置により無菌環境の作業室の内部に搬出する。
【0025】
更に、本発明に係る除染用パスボックスは、圧縮ガス発生手段から供給する圧縮ガスの量と、除染剤供給手段から供給する除染剤の量と、加熱器の加熱温度とを制御することにより、物品の外表面に付与される除染剤ミストの温度を制御する。このことにより、熱感受性物質を収容した容器の外表面を除染する際に、当該熱感受性物質に熱的品質変化等の影響を与えることなく、適正温度、且つ、短時間の除染操作で除染効果の完璧を図ることのできる除染用パスボックスを提供することができる。
【0026】
また、上記構成によれば、搬送装置は、第1搬送工程、第2搬送工程、及び、第3搬送工程で作動する。第1搬送工程は、搬入ゾーンに搬入されて除染されていない物品の一部分を支持して搬入ゾーンから除染ゾーンに搬送する。この間に、除染ゾーンにおいて支持された部分以外の大部分を除染する。第2搬送工程は、第1搬送工程で除染された部分の一部分を支持するように持ち替えた状態で、除染ゾーンからエアレーションゾーンに搬送する。この間に、除染ゾーンにおいて第1搬送工程で除染された部分以外を除染する。更に、エアレーションゾーンにおいて支持された部分以外の大部分をエアレーションする。第3搬送工程は、第2搬送工程でエアレーションされた部分の一部分を支持するように持ち替えた状態で、エアレーションゾーンから搬出ゾーンに搬送する。この間に、第2搬送工程でエアレーションされた部分以外をエアレーションする。このことにより、上記作用効果をより具体的かつ効果的に発揮することができる。
【0027】
また、上記構成によれば、搬送装置は3台の搬送装置からなり、第1搬送装置は第1搬送工程において作動し、第2搬送装置は第2搬送工程において作動し、第3搬送装置は第3搬送工程において作動するようにしてもよい。或いは、搬送装置は2台の搬送装置からなり、第1搬送装置は第1搬送工程及び第3搬送工程において作動し、第2搬送装置は第2搬送工程において作動するようにしてもよい。これらのことにより、上記作用効果をより具体的かつ効果的に発揮することができる。
【0028】
また、上記構成によれば、搬送装置は、連続又は半連続に作動することにより、第1搬送工程、第2搬送工程、及び、第3搬送工程の各作動時間の合計を10分以内とすることが好ましい。また、除染剤ミストの温度は、30℃~60℃の範囲内で制御されることが好ましい。これらのことにより、上記作用効果をより具体的かつ効果的に発揮することができる。
【0029】
また、上記構成によれば、本発明に係る除染用パスボックスは、第1排気装置と第2排気装置とを備えている。第1排気装置は、主として搬入ゾーン及び除染ゾーンの空気を排気する。第2排気装置は、主としてエアレーションゾーン及び搬出ゾーンの空気を排気する。更に、第1排気装置の排気量を第2排気装置の排気量より大きくすることにより、搬入ゾーン及び除染ゾーンの空気がエアレーションゾーン及び搬出ゾーンに混入することがない。また、パスボックス本体の空気圧を作業室の内部の空気圧より陰圧にすることにより、パスボックス本体の空気が作業室の内部に混入することがない。
【0030】
また、上記構成によれば、加熱器は、混合気液を導入する導入口と、円筒状の外筒管と、当該外筒管の内部に外筒管の長手方向に平行に内蔵された発熱体と、前記除染剤ミストを放出する放出口とを備えているものを使用するようにしてもよい。この加熱器においては、混合気液が外筒管と発熱体との間を通過する間に加熱されて、当該混合気液の全部又は一部が除染剤ガスとなる。更に、当該除染剤ガスが量の制御された圧縮ガスによりミスト化して、温度が制御された除染剤ミストに変化する。このことにより、上記作用効果をより具体的かつ効果的に発揮することができる。
【0031】
また、上記構成によれば、加熱器は、混合気液を導入する導入口と、円筒状の外筒管と、当該外筒管の内部に外筒管の長手方向に平行に内蔵された発熱体と、除染剤ミストを放出する放出口とを備え、発熱体は、その長手方向に配設された棒状のヒータと、当該ヒータの外周に沿って長手方向に螺旋状に捲回された蒸発管とを具備しているものを使用するようにしてもよい。この加熱器においては、混合気液が蒸発管の内部を通過する間に加熱されて、当該混合気液の全部又は一部が除染剤ガスとなる。更に、当該除染剤ガスが量の制御された前記圧縮ガスによりミスト化して、温度が制御された前記除染剤ミストに変化する。このことにより、上記作用効果をより具体的かつ効果的に発揮することができる。
【0032】
また、上記構成によれば、加熱器は、発熱体と放出口との間に除染剤ガスと圧縮ガスとを混合する混合ガス調整器を具備してもよい。この加熱器においては、混合ガス調整器に導入する圧縮ガスの量を制御することにより、前記除染剤ガスが前記圧縮ガスによりミスト化して温度が制御された前記除染剤ミストに変化する。このことにより、上記作用効果をより具体的かつ効果的に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本実施形態に係る除染用パスボックスを備えたアイソレーター装置の正面図である。
図2】除染用パスボックスの内部に外部環境からバイアルを搬入した状態を示す内部断面図である。
図3】バイアルを第1搬送装置に持ち替える操作を示す内部断面図である。
図4】バイアルを第1搬送装置に担持した状態を示す内部断面図である。
図5】第1搬送装置に担持したバイアルを搬入ゾーンから除染ゾーンに搬送する状態を示す内部断面図である。
図6】第1搬送装置に担持したバイアルを第2搬送装置に持ち替える状態を示す内部断面図である。
図7】第2搬送装置に挟持したバイアルを除染ゾーンからエアレーションゾーンに搬送する状態を示す内部断面図である。
図8】エアレーションゾーンにおいて、第2搬送装置に挟持したバイアルを第1搬送装置に持ち替えた状態を示す内部断面図である。
図9】第1搬送装置に担持したバイアルをエアレーションゾーンから搬出ゾーンに搬送した状態を示す内部断面図である。
図10】第1搬送装置の担持具でバイアルを担持する状態を示す概要図であって、(A)担持する前、(B)担持した状態を示す。
図11】除染されるバイアルと除染ゾーンの内部に設けられたミストカバーとの関係を示す(A)斜視図、(B)平面図である。
図12】第2搬送装置の挟持具でバイアルを挟持する状態を示す概要図であって、(A)挟持する前、(B)挟持した状態を示す。
図13】除染剤付与装置の構成の一例を示す概要図である。
図14】除染剤付与装置の構成の他の例を示す概要図である。
図15】除染剤付与装置が具備する加熱器の一例を示す断面図である。
図16】除染剤付与装置が具備する加熱器の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係る除染用パスボックスを実施形態により詳細に説明する。なお、本発明は、下記の実施形態にのみ限定されるものではない。
【0035】
図1は、本実施形態に係る除染用パスボックスを備えたアイソレーター装置の正面図である。図1において、アイソレーター装置Aは、脚部Bによって床面上に載置されるチャンバーCと、チャンバーCの上に乗載される装置室Dとにより構成されている。また、本実施形態に係る除染用パスボックスは、パスボックス本体Eとパスボックス本体Eの内部で物品を搬送する搬送装置(後述する)を有している。パスボックス本体Eは、その上面壁部をチャンバーCの底面壁部に接合された状態で床面上に載置されている。このパスボックス本体Eの正面壁部E1には、チャンバーCの内部に物品を搬入する搬入扉E2が設けられている(詳細は後述する)。なお、本実施形態において「物品」は、熱感受性物質を収容したバイアル(以下「バイアル」という)である。
【0036】
チャンバーCは、ステンレス製の箱体からなり、その内部の無菌環境で作業が行われる。チャンバーCは、作業者がいる外部環境とは気密的に遮蔽されている。また、チャンバーCの正面壁部には、内部を視認できる透明なガラス窓C1が設けられている。このガラス窓C1には、外部とチャンバーCの内部とを連通する4つの作業用開口部C1a~C1dが開口している。これらの作業用開口部C1a~C1dには、それぞれ、樹脂製グローブ(図示せず)が気密的に取り付けられている。
【0037】
また、チャンバーCの内部の底面壁部には、パスボックス本体Eの上面壁部と連通する開口部(図示せず)が設けられ、パスボックス本体Eの内部で除染されたバイアルをチャンバーCの内部に搬入する搬入口(パスボックス本体Eの搬出口)となる。なお、チャンバーCの内部へのバイアルの搬入は、外部環境にある作業者が樹脂製グローブを介して行う(詳細は後述する)。
【0038】
装置室Dは、周囲をステンレス製金属板からなる壁材で覆われ、その内部には電装・機械などの装置類(図示せず)が収められている。これらの装置類には、チャンバーCの内部環境を制御する吸気用フィルターユニットを備えた吸気用ブロワー、排気用フィルターユニットを備えた排気用ブロワーなども含まれている。また、この装置室Dの正面壁部には、制御盤(図示せず)が組み込まれている。
【0039】
次に、本実施形態に係る除染用パスボックスの構成と作動について説明する。図2は、除染用パスボックスの内部に外部環境からバイアルを搬入した状態を示す内部断面図である。
【0040】
図2において、パスボックス本体Eは、正面壁部E1と背面壁部E3と上面壁部E4と底面壁部E5と右側壁部(図面奥)と、左側壁部(図面手前、図示せず)とに囲まれたステンレス製の箱体である。正面壁部E1には、バイアルを搬入する搬入扉E2が設けられている。なお、図2において、搬入扉E2は、バイアルを搬入するために開放された状態にある。また、パスボックス本体Eの上部にはアイソレーター装置AのチャンバーC(図示せず)が乗載された状態にある。なお、パスボックス本体Eの上面壁部E4は、チャンバーCの底面壁部を兼ねた構造となっており、パスボックス本体Eの内部からチャンバーCの内部にバイアルを搬出する搬出口E6が開口している。
【0041】
パスボックス本体Eの内部には、外部環境からバイアルを搬入する搬入ゾーン10と、搬入したバイアルの外表面を除染剤で除染する除染ゾーン20と、除染後のバイアルの外表面に残留した除染剤を除去するエアレーションゾーン30と、エアレーション後のバイアルをチャンバーCの内部に搬出する搬出ゾーン40とが設けられている。
【0042】
図2において、搬入ゾーン10は、正面壁部E1と搬入扉E2と底面壁部E5と縦壁部E7aと横壁部E8aとで囲まれた部分である。搬入ゾーン10には、搬入扉E2を介して外部環境から搬入したバイアルGの上部側面を挟持して内部に移動させる架台11が設置されている。架台11は、支軸12と挟持軸13とからなり、バイアルGを挟持した挟持軸13は、支軸12の周りを回転してバイアルGを搬入ゾーン10の内部に移送する(図2及び図3参照)。
【0043】
また、搬入ゾーン10の内部には、架台11からバイアルGを受け取って、除染ゾーン20とエアレーションゾーン30とを経て搬出ゾーン40に搬送する第1搬送装置50が設けられている。第1搬送装置50は、底面壁部E5と横壁部E8bとの間に固定された昇降軸51と、昇降軸51に沿って上下方向に移動する担持軸52と、担持軸52を回転させる回転機構53とを有している。また、担持軸52の上端部には、バイアルGの底部を担持する担持具54が設けられている。なお、第1搬送装置50の作動については、後述する。
【0044】
図2において、除染ゾーン20は、縦壁部E7aと縦壁部E7bと横壁部E8aと横壁部E8cとで囲まれた部分である。除染ゾーン20には、横壁部E8aの中央部に開口部21と、横壁部E8cの中央部に開口部22とが開口している。これらの開口部21、22は、第1搬送装置50に担持されたバイアルGが通過する部分である(詳細は後述する)。また、除染ゾーン20の縦壁部E7aには、除染剤(本実施形態においては、除染剤ミスト)を放出する除染剤付与装置60の放出口64bが設置されている(詳細は後述する)。また、除染ゾーン20の内部には、バイアルGを囲んで除染剤ミストの付与を効率的に図るミストカバー23が設けられている(詳細は後述する)。
【0045】
図2において、エアレーションゾーン30は、正面壁部E1と縦壁部E7cと横壁部E8cと上面壁部E4とで囲まれた部分である。エアレーションゾーン30には、横壁部E8cの中央部に開口部31(除染ゾーンの開口部22に共通)と、上面壁部E4の中央部に開口部32(搬出口E6に共通)とが開口している。これらの開口部31、32は、第1搬送装置50に担持又は後述する第2搬送装置55に挟持されたバイアルGが通過する部分である。また、開口部31、32には、それぞれエアレーションのための清浄空気をバイアルGに吹き付けるリング状の清浄空気付与装置33、34が各開口部31、32に沿って設けられている。なお、開口部32は、上述したパスボックス本体Eの内部からチャンバーCの内部にバイアルを搬出する搬出口E6に相当する。
【0046】
また、エアレーションゾーン30の内部には、第1搬送装置50からバイアルGを受け取って、除染ゾーン20からエアレーションゾーン30に搬送する第2搬送装置55が設けられている。第2搬送装置55は、横壁部E8cと上面壁部E4との間に固定された昇降軸56と、昇降軸56に沿って上下方向に移動する挟持軸57とを有している。また、挟持軸57の先端部には、バイアルGの上部側面を挟持する挟持具58が設けられている。なお、第2搬送装置50の作動については後述する。
【0047】
図2において、搬出ゾーン40は、エアレーションゾーン30の上部と共通する部分である。すなわち、パスボックス本体Eの内部からチャンバーCの内部にバイアルを搬出する機能を有する搬出口E6の部分である。なお、本実施形態においては、搬出口E6は、エアレーションゾーン30の開口部32に相当しており、搬出ゾーン40とエアレーションゾーン30の上部とが共通する。なお、これに限定されるものではなく、搬出ゾーン40をエアレーションゾーン30と別に設けるようにしてもよい。
【0048】
図2において、背面壁部E3と上面壁部E4と底面壁部E5と縦壁部E7aと縦壁部E7cと横壁部E8cの一部とで囲まれた部分は、機械室70であって、上述の除染剤付与装置60及び2台の排気用ブロワー71、72が設けられている。また、機械室70には、排気用フィルターユニット、過酸化水素分解ユニット、及び、除染用パスボックスの駆動と制御に関する装置類が収められている(いずれも図示せず)。
【0049】
ここで、パスボックス本体Eの内部の空気の流れについて説明する。パスボックス本体Eの内部に設けられた2台の排気用ブロワー71、72が作動することにより、パスボックス本体Eの内部の空気圧をアイソレーター装置AのチャンバーCの内部の空気圧よりも低くする。このことにより、搬出口E6を介してチャンバーCの内部にパスボックス本体Eの内部の空気(除染剤などを含む)が混入することを防止する。図2の各開口部及び壁部に記載した矢印は、空気の流れ方向を示している。
【0050】
更に、2台の排気用ブロワー71、72の排気量を調整することが好ましい。排気用ブロワー71は、機械室70の下部にあって主に搬入ゾーン10と除染ゾーン20の空気を排気する。搬入ゾーン10は、除染前のバイアルGが搬入される部分であり、空気の清浄度が低い。また、除染ゾーン20は、除染剤が付与される部分であり、空気中に除染剤が混入する。
【0051】
一方、排気用ブロワー72は、機械室70の上部にあって主にエアレーションゾーン30と搬出ゾーン40の空気を排気する。エアレーションゾーン30は、除染剤を除去する部分であり、空気中に除染剤が混入する。また、搬出ゾーン40は、エアレーション後のバイアルGが搬出される部分であり、清浄度は高いがチャンバーCの内部から清浄空気が流入することが好ましい。よって。排気用ブロワー71の排気量を排気用ブロワー72の排気量より大きくすることにより、搬入ゾーン10と除染ゾーン20の空気がエアレーションゾーン30と搬出ゾーン40に混入することがない。
【0052】
このような構成において、除染用パスボックスの作動について具体的に説明する。本実施形態に係る除染用パスボックスは、バイアルGを第1搬送装置50又は第2搬送装置55に支持(担持又は挟持)された状態で、搬入ゾーン10、除染ゾーン20、エアレーションゾーン30、搬出ゾーン40の順に搬送しながら除染操作を行う。ここでは、除染操作をバイアルGの搬送に沿って、搬入工程、第1搬送工程、第2搬送工程、及び、第3搬送工程の順に図2~9により説明する。なお、各搬送工程は、連続又は半連続に行うことができる。連続の搬送操作においては、バイアルGを常に移動させながら除染及びエアレーションを行う。一方、半連続の搬送操作においては、バイアルGを除染又はエアレーションの際に移動を停止して操作時間を確保する。
【0053】
<搬入工程>
図2は、上述のように、除染用パスボックスの内部に外部環境からバイアルを搬入した状態を示す内部断面図である。アイソレーター装置Aの外部環境にある作業者(図示せず)は、搬入扉E2を解放し熱感受性物質を収容したバイアルGを搬入ゾーン10において架台11に支持する。なお、バイアルを支持する方法については、特に限定するものではなく、バイアルの形状に合わせて適宜選定すればよい。本実施形態においては、バイアルGの形状に合わせて上部側面(上部キャップの下)を挟持軸13で挟持する。
【0054】
次に、バイアルGを架台11から第1搬送装置50に持ち替える。図3は、バイアルを第1搬送装置に持ち替える操作を示す内部断面図である。なお、以下に示す図3~9においては、搬送工程を説明する部分の符号のみを記載してある。図3において、バイアルGを挟持した状態の挟持軸13を支軸12の周りに回転して、第1搬送装置50の担持軸52の上端部にある担持具54の上部に移動する。更に、第1搬送装置50の担持軸52を昇降軸51に沿って上方向に移動して、担持軸52の上端部の担持具54でバイアルGの底部を支持(ここでは担持)して持ち替える。次に、架台11の挟持軸13を支軸12の周りに回転して搬入扉E2の方向に戻す(図3及び図4参照)。
【0055】
ここで、第1搬送装置50によるバイアルGの底部の担持について説明する。図10は、第1搬送装置の担持具でバイアルを担持する状態を示す概要図であって、(A)担持する前、(B)担持した状態を示す。図10に示したバイアルGは、ポリエチレン素材の高さ7cm、直径2cm、容量15mlのものであった。第1搬送装置の担持具54は、3片の爪54aが上方に向けて開いており、バイアルGの底部G1を安定に担持することができる。なお、バイアルを支持する方法は、このような担持に限定するものではなく、バイアルの形状に合わせて他の支持具を適宜選定すればよい。
【0056】
<第1搬送工程>
次に、バイアルGの除染操作に入る。図4は、バイアルを第1搬送装置に担持した状態を示す内部断面図である。この状態において、バイアルGの除染操作の準備が整っている。第1搬送工程においては、第1搬送装置50の担持軸52を昇降軸51に沿って更に上方向に移動して、担持軸52の担持具54で担持されたバイアルGを搬入ゾーン10から除染ゾーン20に搬送する。図5は、第1搬送装置に担持したバイアルを搬入ゾーンから除染ゾーンに搬送する状態を示す内部断面図である。図5において、除染剤付与装置60の放出口64bから除染剤ミストが放出されている。この第1搬送工程において、バイアルGは、担持具54で担持された部分以外の大部分が除染される。
【0057】
図11は、除染されるバイアルと除染ゾーンの内部に設けられたミストカバーとの関係を示す(A)斜視図、(B)平面図である。ミストカバー23は、半円筒状の壁材であって除染されるバイアルGを内部に包み込むように配置されている。図11において、第1搬送装置50の担持具54で担持されたバイアルGが除染ゾーン20に搬送されると、図示左方向に設置された除染剤付与装置60(図示せず)から除染剤ミストが放出される。放出された除染剤ミストは、バイアルGの正面に付与されると共に、ミストカバー23の内面に沿ってバイアルGの背面にも回り込む。このことにより、除染剤ミストは、バイアルGの外表面全体に均一に付与される。
【0058】
また、除染ゾーン20では、第1搬送装置50の回転機構53により担持軸52を回転させる。このことで、バイアルGの外表面全体に除染剤ミストを更に均一に付与することができる。これらのことにより、温度制御された除染剤ミストを適量かつ効率的にバイアルGの外表面に付与できるので、除染効率の向上と除染時間の短縮を図ることができる。
【0059】
なお、除染操作においては、排気用ブロワー71を停止し(図5参照)、排気用ブロワー72の排気量を調整して作動させることが好ましい。排気用ブロワー71を停止することにより、除染ゾーン20で供給される除染剤ミストが必要以上に排気されないようにする。一方、排気用ブロワー72の排気量を調整して、チャンバーCの内部から流入する清浄空気を維持する。
【0060】
<第2搬送工程>
第2搬送工程においては、バイアルGを第1搬送装置50から第2搬送装置55に持ち替える。図6は、第1搬送装置に担持したバイアルを第2搬送装置に持ち替える状態を示す内部断面図である。この状態においても、排気用ブロワー71を停止し、排気用ブロワー72の排気量を調整して作動させることが好ましい。
【0061】
ここで、第2搬送装置55によるバイアルGの上部側面の挟持について説明する。図12は、第2搬送装置の挟持具でバイアルを挟持する状態を示す概要図であって、(A)挟持する前、(B)挟持した状態を示す。図12に示したバイアルGは、図10と同じポリエチレン素材の高さ7cm、直径2cm、容量15mlのものであった。第2搬送装置の挟持具58は、2片の爪58aが水平方向に開いており、バイアルGのキャップG2の直下の上部側面G3を安定に挟持することができる。なお、バイアルを支持する方法は、このような挟持に限定するものではなく、バイアルの形状に合わせて他の支持具を適宜選定すればよい。
【0062】
次に、第2搬送装置55の挟持軸57を昇降軸56に沿って上方向に移動して、挟持軸57の挟持具58で担持されたバイアルGを除染ゾーン20からエアレーションゾーン30に搬送する。なお、除染ゾーン20においては、バイアルGを第1搬送装置から第2搬送装置に持ち替えることにより、第1搬送工程で除染できなかった部分(特に第1搬送装置に担持されていた部分)を除染することができる。
【0063】
図7は、第2搬送装置に挟持したバイアルを除染ゾーンからエアレーションゾーンに搬送する状態を示す内部断面図である。この第2搬送工程において、バイアルGの挟持軸57で挟持された部分以外の大部分をエアレーションして、バイアルGの表面に残留する除染剤を除去する。エアレーションにおいては、開口部31、32に設けられたリング状の2台の清浄空気付与装置33、34からバイアルGの表面に向けて清浄空気を吹き付ける。
【0064】
なお、開口部31に設けられた下方部の清浄空気付与装置33からは、リングの中心部上方に向けて清浄空気を吹き付ける。一方、開口部32に設けられた下方部の清浄空気付与装置34からは、リングの中心部下方に向けて清浄空気を吹き付ける。このことにより、2台の清浄空気付与装置33、34のリング状の中心を通過するバイアルGの全表面に清浄空気を吹き付けることができる。
【0065】
<第3搬送工程>
第3搬送工程においては、バイアルGを第2搬送装置55から再度、第1搬送装置50に持ち替える。図8は、エアレーションゾーンにおいて、第2搬送装置に挟持したバイアルを第1搬送装置に持ち替えた状態を示す内部断面図である。この状態においては、排気用ブロワー71及び排気用ブロワー72の両方を作動させる。
【0066】
この第3搬送工程において、第1搬送装置50の挟持軸52を昇降軸51に沿って上方向に移動して、挟持軸52の挟持具54で担持されたバイアルGをエアレーションゾーン30から搬出ゾーン40に搬送する。なお、エアレーションゾーン30においては、バイアルGを第2搬送装置から第1搬送装置に持ち替えることにより、第2搬送工程でエアレーションできなかった部分(特に第2搬送装置に挟持されていた部分)をエアレーションすることができる。
【0067】
図9は、第1搬送装置に担持したバイアルをエアレーションゾーンから搬出ゾーンに搬送した状態を示す内部断面図である。バイアルGの上部(キャップ部分)が搬出口E6(開口部32に相当)からアイソレーター装置AのチャンバーCの内部に搬出される状態にある。外部環境にある作業者は、チャンバーCの樹脂製グローブを使用してバイアルGをチャンバーCの内部に搬入する。なお、上述のように、搬出口E6からはチャンバーCの内部から清浄空気が流入している。従って、搬出口E6に開閉扉を設けることは必ずしも必要ではない。しかし、開閉扉を設けてバイアルGの搬入時のみ開閉扉を解放するようにしてもよい。
【0068】
次に、本実施形態における除染剤付与装置60について説明する。本実施形態における除染剤付与装置は、バイアルの内部に収容された熱感受性物質に影響を与えることのない温度に制御された除染剤ミストを放出する。なお、本実施形態においては、除染剤として過酸化水素水(H水溶液)を使用した。なお、除染剤は過酸化水素水に限定されるものではなく、液体状の除染剤であればどのようなものを使用するようにしてもよい。
【0069】
図13は、除染剤付与装置の構成の一例を示す概要図である。図13において、除染剤付与装置60は、圧縮ガス発生装置61と除染液供給装置62と混合気液調整器63と加熱器64とから構成されている。
【0070】
本実施形態においては、圧縮ガス発生装置61として圧縮空気を発生するコンプレッサを採用し、圧縮空気の供給量を制御する。除染液供給装置62は、過酸化水素水タンクと配管とポンプとロードセル(いずれも図示せず)から構成され、過酸化水素水の供給量を制御する。ここで、過酸化水素水タンクに貯留される過酸化水素水の濃度は特に限定するものではないが、一般に、危険物などの取扱いを考慮して30~35重量%のものを使用することが好ましい。
【0071】
混合気液調整器63は、除染液供給装置62から供給される過酸化水素水と圧縮ガス発生装置61から供給される圧縮空気とを混合して霧化した混合気液(以下「1次ミスト」という)を発生する。なお、本実施形態においては、混合気液調整器63として二流体スプレーノズルを採用した。なお、本実施形態においては、混合気液調整器として二流体スプレーノズルを使用するが、これに限るものではなく、他のスプレーノズル、又は、超音波加湿器、ネブライザー、ピエゾアトマイザーなどの超音波によるミスト発生器などを使用するようにしてもよい。
【0072】
加熱器64は、混合気液調整器63から供給される1次ミストを効率的に加熱する。加熱器64の内部では、1次ミストの全部又は一部を気化して過酸化水素ガスと水蒸気が発生する。加熱器64の内部で発生した過酸化水素ガスと水蒸気は、1次ミストに混合されている圧縮空気によって冷却され、再ミスト化して2次ミストとなり加熱器64から放出される除染剤ミストとなる。図13において、加熱器64の一方の端部64aは、混合気液調整器63の吐出部に連接され、1次ミストが加熱器64に供給される。また、加熱器64の他方の端部64bは、除染剤付与装置60の放出口64bとなり、除染剤ミストをバイアルGに供給する。
【0073】
本実施形態においては、圧縮ガス発生装置61から供給する圧縮空気の量と、除染液供給装置62から供給する過酸化水素水の量と、加熱器64の加熱温度とを制御することにより、除染剤付与装置60の放出口64bからバイアルGの外表面に付与される除染剤ミストの温度を制御することができる。すなわち、加熱器64の内部で発生した除染剤ガス(過酸化水素ガスと水蒸気)は、圧縮ガス発生装置61から供給する圧縮空気の供給量と加熱器64の加熱温度を制御することにより、温度が制御された除染剤ミスト(2次ミスト)に変化する。
【0074】
ここで、除染剤付与装置の他の実施形態について説明する。図14は、除染剤付与装置の構成の他の例を示す概要図である。図14において、除染剤付与装置65は、圧縮ガス発生装置61と除染液供給装置62と混合気液調整器63と加熱器64と混合ガス調整器66とから構成されている。除染剤付与装置65は、図13の除染剤付与装置60と同じ構成に、新たに混合ガス調整器66が加えられている。
【0075】
混合ガス調整器66は、加熱器64の端部64bに連接されると共に、圧縮ガス発生装置61から圧縮空気が供給される。加熱器64の内部で発生した除染剤ガス(過酸化水素ガスと水蒸気)は、混合ガス調整器66の内部で圧縮ガス発生装置61から供給される圧縮空気の供給量を制御することにより、温度が制御された除染剤ミスト(2次ミスト)に変化する。図14において、混合ガス調整器66の一方の端部66aは、除染剤付与装置65の放出口66aとなり、除染剤ミストをバイアルGに供給する。
【0076】
ここで、ミストについて説明する。本実施形態に係る1次ミストとは、広義に解釈するものであって、微細化して空気中に浮遊する除染剤の液滴の状態、除染剤のガスと液滴が混在した状態、除染剤がガスと液滴との間で凝縮と蒸発との相変化を繰り返している状態などを含むものとする。また、粒径に関しても、場合によって細かく区分されるミスト・フォグ・液滴などを含んで広義に解釈する。
【0077】
一方、本実施形態に係る2次ミストとは、1次ミストよりも微細化されたミストと考えられる。加熱器の内部で発生した除染剤ガス(過酸化水素ガスと水蒸気)が再ミスト化するものであって、粒径からいえば主にミスト(10μm以下と定義される場合もある)或いはフォグ(5μm以下と定義される場合もある)と呼ばれるものが中心になっているものと思われる。このことにより、温度が制御されると共に除染効率が向上するものと考えられる。
【0078】
ここで、本実施形態において採用する加熱器64の構造について説明する。図15は、除染剤付与装置が具備する加熱器の一例を示す断面図である。図15において、加熱器64は、一方の端部64cから他方の端部64dに伸びる円筒状の外筒管81と、その内部に外筒管81の長手方向に平行に内蔵された発熱体82とから構成されている。外筒管81は、ステンレス製の円筒からなる。発熱体82は、外筒管81の長手方向に平行に伸びるヒータ83を具備している。なお、外筒管81の内周面と発熱体82との間には、混合気液(1次ミスト)が通過する隙間が設けられている。
【0079】
ヒータ83は、シリコンゴムからなる接続端子83bにより外筒管81の一方の外周端部(加熱器64の一方の端部64cの側)に設置されており、電線83aから電力の供給を受けて発熱する。なお、高温となるヒータ83は、その表面を石英ガラス84で被覆されている。また、本実施形態においては、外筒管81の内周面も石英ガラスで被覆されている。なお、ヒータ83は、その構造を特に限定するものではなく、棒状ヒータであってもよくコイル状ヒータであってもよい。また、ヒータの表面や外筒管の内周面の石英ガラスによる被覆も必ずしも必要ではないが、本実施形態においては、発塵防止、熱効率の向上を図っている。
【0080】
このような加熱器64においては、混合気液調整器63から供給される霧化した混合気液(1次ミスト)は、加熱器64の一方の端部54cに開口する導入口64aから加熱器64の内部に導入される。加熱器64の内部に導入された1次ミストは、発熱体82で加熱されながら外筒管81と発熱体82との隙間を通過して加熱器64の他方の端部64dに開口する放出口64bの方に移動する。この間に混合気液中の過酸化水素水は、発熱体82で加熱され気化(主に発熱体82の表面で気化)して除染剤ガス(過酸化水素ガスと水蒸気)となる。この除染剤ガスは、圧縮ガス発生装置61から供給される圧縮空気の供給量を制御することにより冷却され、温度が制御された除染剤ミスト(2次ミスト)に変化する。この除染剤ミストは、放出口64bから放出される。なお、放出口65bの除染剤ミストの温度を温度センサで測りながら放出する除染剤ミストの温度を制御するようにしてもよい。
【0081】
ここで、加熱器の他の実施形態について説明する。図16は、除染剤付与装置が具備する加熱器の他の例を示す断面図である。図16において、加熱器85は、一方の端部85cから他方の端部85dに伸びる円筒状の外筒管86と、その内部に外筒管86の長手方向に平行に内蔵された発熱体87とから構成されている。外筒管86は、ステンレス製の円筒からなり、その内部には断熱材86aが充填されている。発熱体87は、外筒管86の長手方向に平行に伸びる棒状のカートリッジヒータ88と、カートリッジヒータ88の外周に沿って長手方向に螺旋状に巻き付けられた蒸発管89とを具備している。なお、カートリッジヒータ88と蒸発管89とは、断熱材86aで被覆されている。カートリッジヒータ88は、外筒管86の一方の端部(加熱器85の一方の端部85cの側)に設置されており、電線88aから電力の供給を受けて発熱する。
【0082】
このような加熱器85においては、混合気液調整器63から供給される霧化した混合気液(1次ミスト)は、加熱器85の一方の端部85cの外周に開口する蒸発管89の導入口85aから蒸発管89の内部に導入される。蒸発管89の内部に導入された1次ミストは、蒸発管89が接触するカートリッジヒータ88で加熱されながら蒸発管89の内部を通過して加熱器85の他方の端部85dに開口する蒸発管89の放出口85bの方に移動する。この間に混合気液中の過酸化水素水は、カートリッジヒータ88で加熱され気化して除染剤ガス(過酸化水素ガスと水蒸気)となる。この除染剤ガスは、圧縮ガス発生装置61から供給される圧縮空気の供給量を制御することにより冷却され、温度が制御された除染剤ミスト(2次ミスト)に変化する。この除染剤ミストは、放出口85bから放出される。なお、放出口85bの除染剤ミストの温度を温度センサで測りながら放出する除染剤ミストの温度を制御するようにしてもよい。
【0083】
以上説明したように、本実施形態によれば、熱感受性物質を収容した容器の外表面を除染する際に、当該熱感受性物質に熱的品質変化等の影響を与えることなく、適正温度、且つ、短時間の除染操作で除染効果の完璧を図ることのできる除染用パスボックスを提供することができる。
【0084】
なお、本発明の実施にあたり、上記実施形態に限らず、次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)上記実施形態においては、搬入工程で搬入されたバイアルを架台から第1搬送装置に持ち替える。しかし、これに限るものではなく、架台を採用しなくてもよい。この場合には、搬入工程において作業者がバイアルを除染用パスボックスの内部に搬入する際に、直接、第1搬送装置の担持具に担持させるようにしてもよい。
(2)上記実施形態においては、第1搬送装置又は第2搬送装置は、昇降軸に沿って担持軸又は挟持軸を上下方向に昇降させる。しかし、これに限定するものではなく、バイアル等の容器の形状や大きさを考慮して、昇降機構その他の作動機構について適宜選定すればよい。また、小型のロボットアームなどを採用するようにしてもよい。
(3)上記実施形態においては、第1搬送工程から第3搬送工程において、バイアル等の容器を第1搬送装置及び第2搬送装置という2台の搬送装置で搬送する。しかし、これに限定するものではなく、第1搬送工程から第3搬送工程において、バイアル等の容器をそれぞれ別個の3台の搬送装置で搬送するようにしてもよい。
(4)上記実施形態においては、第1搬送工程から第3搬送工程において、バイアル等の容器を上下方向に搬送する。しかし、これに限定するものではなく、各搬送装置の搬送方向を水平方向にして、バイアル等の容器を横に搬送するようにしてもよい。その場合には、除染用パスボックスをアイソレーター装置の側壁部に配置するようにしてもよい。
(5)上記実施形態においては、第1搬送装置又は第2搬送装置がバイアル等の容器を担持又は挟持して搬送する。しかし、これに限定するものではなく、例えば、バイアル等の容器をメッシュ状の台の上に載置して、容器と台とが点接触する状態で搬送するようにしてもよい。更に、メッシュ状の台を振動させながら、容器と台との接触点をずらしながら搬送するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0085】
10…搬入ゾーン、11…架台、12…支軸、13…挟持軸、
20…除染ゾーン、21、22…開口部、
30…エアレーションゾーン、31,32…開口部、33,34…清浄空気付与装置、
40…搬出ゾーン、
50…第1搬送装置、51…昇降軸、52…担持軸、53…回転機構、54…担持具、
55…第2搬送装置、56…昇降軸、57…挟持軸、58…挟持具、
60,65…除染剤付与装置、61…圧縮ガス発生装置、62…除染液供給装置、
63…混合気液調整器、64,85…加熱器、64b…放出口、66…混合ガス調整器、70…機械室、71,72…排気用ブロワー、
81,86…外筒管、82,87…発熱体、83,88…ヒータ、84…石英ガラス、
86a…断熱材、83a,88a…電線、89…蒸発管、
A…アイソレーター装置、B…脚部、C…チャンバー、C1…ガラス窓、
C1a~C1d…作業用開口部、D…装置室、E…パスボックス本体、
E1,3~5,7,8…壁部、E2…搬入扉、E6…搬出口、G…バイアル。
【要約】
【課題】熱感受性物質を収容した容器の外表面を除染する際に、当該熱感受性物質に熱的品質変化等の影響を与えることなく、適正温度、且つ、短時間の除染操作で除染効果の完璧を図ることのできる除染用パスボックスを提供する。
【解決手段】搬入ゾーン、除染ゾーン、エアレーションゾーン、搬出ゾーンを備えたパスボックス本体と、パスボックス本体の内部で物品を搬送する搬送装置を有している。除染剤付与装置は、圧縮ガスを発生する圧縮ガス発生手段と、除染剤を供給する除染剤供給手段と、圧縮ガスと除染剤とを混合して混合気液を調整する混合気液調整器と、当該混合気液を加熱して除染剤ミストとする加熱器とを備えている。圧縮ガス発生手段から供給する圧縮ガスの量と、除染剤供給手段から供給する除染剤の量と、加熱器の加熱温度とを制御することにより、物品の外表面に付与される除染剤ミストの温度を制御する。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16