(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】傷治療用の医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/02 20060101AFI20220913BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20220913BHJP
A61K 38/40 20060101ALI20220913BHJP
A61K 38/18 20060101ALI20220913BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220913BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220913BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
A61K38/02
A61K47/04
A61K38/40
A61K38/18
A61K48/00
A61K45/00
A61P17/02
(21)【出願番号】P 2021504531
(86)(22)【出願日】2019-07-31
(86)【国際出願番号】 KR2019009531
(87)【国際公開番号】W WO2020027571
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-01-27
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】10-2019-0092942
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517022072
【氏名又は名称】レモネックス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】LEMONEX INC.
【住所又は居所原語表記】Seoul National University,1,Gwanak-ro,Gwanak-gu,Seoul,08826,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】ウォン, チョル ヘ
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-529384(JP,A)
【文献】特表2006-503044(JP,A)
【文献】特開平07-196529(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0011565(KR,A)
【文献】国際公開第2018/143787(WO,A1)
【文献】BioMed Research International (2016) vol.2016, Article ID 9676934
【文献】Adv. Mater.,2017年,29, 1604634,p.1-51
【文献】Molecules,2017年,Vol.23, No.47,p.1-13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/04
A61K 38/02
A61K 38/40
A61K 38/18
A61K 48/00
A61K 45/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質を担持した多孔性シリカ粒子を含み、
前記多孔性シリカ粒子は、下記数式1の吸光度の比が1/2となるtが24以上である、傷治療用の医薬組成物。
[数式1]
A
t/A
0
(式中、A
0は、前記多孔性シリカ粒子1mg/mlの懸濁液5mlを直径50kDaの気孔を有する円筒状の透過膜に入れて測定した前記多孔性シリカ粒子の吸光度であり、
前記透過膜の外部には、前記透過膜と接し、前記懸濁液と同じ溶媒15mlが位置し、前記透過膜の内外部は37℃で60rpmで水平攪拌され、
前記懸濁液のpHは7.4であり、
A
tは、前記A
0の測定時からt時間経過後に測定した前記多孔性シリカ粒子の吸光度である。)
【請求項2】
前記多孔性シリカ粒子の平均直径は、150nm~1,000nmであり、そのBET表面積は200m
2/g~700m
2/gであり、気孔のg当たりの体積は0.7ml~2.2mlである、請求項1に記載の傷治療用の医薬組成物。
【請求項3】
前記ポリペプチドは、ラクトフェリン、上皮細胞成長因子、肝細胞成長因子または血管内皮細胞成長因子である、請求項1に記載の傷治療用の医薬組成物。
【請求項4】
前記ラクトフェリンタンパク質は、配列番号1の配列からなるものである、請求項
3に記載の傷治療用の医薬組成物。
【請求項5】
前記上皮細胞成長因子は配列番号2の配列、前記肝細胞成長因子は配列番号3の配列、前記血管内皮細胞成長因子は配列番号4の配列からなるものである、請求項
3に記載の傷治療用の医薬組成物。
【請求項6】
前記物質は、配列番号1の配列をコードする遺伝子が担持されたプラスミドである、請求項1に記載の傷治療用の医薬組成物。
【請求項7】
前記多孔性シリカ粒子は、前記上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチドを担持したものであり、当該粒子は、外部表面または気孔内部が中性のpHで陰電荷を帯びるものである、請求項1に記載の傷治療用の医薬組成物。
【請求項8】
前記多孔性シリカ粒子は、前記上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチドをコードする遺伝子が担持されたプラスミドを担持したものであり、当該粒子は、外部表面または気孔内部が中性のpHで陽電荷を帯びるものである、請求項1に記載の傷治療用の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた傷治療効果を有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物送達システムとは、医薬品の副作用を最小限に抑え、効能及び効果を極大化し、必要な量の薬物、例えば、タンパク質、核酸又はその他の低分子などを効率よく送達する医薬技術を意味する。新薬開発に必要なコストと時間を軽減する効果を有する前記技術は、最近になってナノテクノロジーと結合し、医薬系において新たな付加価値を創出する先端技術の一分野として位置づけられている。米国と日本などの技術先進国では、去る80年代後半から、製薬会社などの企業を中心に新薬開発とともに薬物送達システムの開発に全力を注いでいる。
【0003】
これまでは、ウイルス遺伝子、組換えタンパク質、リポソーム(liposome)、陽イオン性高分子、並びに様々な形態のナノ粒子とナノ物質が、動物細胞内への薬物送達に使用されてきた。しかし、多くの陽イオン性リポソームと陽イオン性高分子は、細胞に強い毒性を示すため、臨床に適用するには不適当であることが判明した。また、核酸の安定な細胞膜透過のために、核酸の主鎖を化学的に変形する方法も試みられた。しかし、この方法は、高コストで長時間かかり、労働集約的な工程を必要とするため、臨床への適用には適していない。意味のある試みとして、量子ドット、磁性粒子又は金ナノ粒子を含む様々な形態のナノ粒子を用いる薬物送達システム(drug delivery system、DDS)が開発されている。しかし、これらの粒子は、細胞に毒性を示し、核酸などの生体高分子を導入するのに容易でない構造を有し、また細胞内への導入効率も低いという欠点があった。
【0004】
細胞内における生理活性物質の機能の研究または細胞内送達のためには、効率の良い送達システムが必要である。しかしながら、広範な生理活性物質を送達できる汎用的な送達システム、多量の薬物を収容及び送達できるシステム、薬物を徐放的に放出するシステムの開発は、まだ不十分な状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、優れた傷治療効果を有する医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1.上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質を担持した多孔性シリカ粒子を含み、
前記多孔性シリカ粒子は、下記数式1の吸光度の比が1/2となるtが24以上である、傷治療用の医薬組成物。
[数式1]
At/A0
(式中、A0は、前記多孔性シリカ粒子1mg/mlの懸濁液5mlを直径50kDaの気孔を有する円筒状の透過膜に入れて測定した前記多孔性シリカ粒子の吸光度であり、
前記透過膜の外部には、前記透過膜と接し、前記懸濁液と同じ溶媒15mlが位置し、前記透過膜の内外部は37℃で60rpmで水平攪拌され、
前記懸濁液のpHは7.4であり、
Atは、前記A0の測定時からt時間経過後に測定した前記多孔性シリカ粒子の吸光度である。)
【0007】
2.前記項目1において、前記多孔性シリカ粒子は、直径5nm未満の気孔を有するシリカ粒子を120℃~180℃で24時間~96時間膨張剤と反応させ、前記直径5nm未満の気孔を膨張させるステップと、前記気孔が膨張されたシリカ粒子を400℃以上の温度で3時間以上か焼するステップとを含んで製造されたものである、傷治療用の医薬組成物。
【0008】
3.前記項目1において、前記多孔性シリカ粒子の平均直径は、150nm~1,000nmであり、そのBET表面積は200m2/g~700m2/gであり、気孔のg当たりの体積は0.7ml~2.2mlである、傷治療用の医薬組成物。
【0009】
4.前記項目1において、前記ポリペプチドは、ラクトフェリン、上皮細胞成長因子、肝細胞成長因子または血管内皮細胞成長因子である、傷治療用の医薬組成物。
【0010】
5.前記項目4において、前記ラクトフェリンタンパク質は、配列番号1の配列からなるものである、傷治療用の医薬組成物。
【0011】
6.前記項目4において、前記上皮細胞成長因子は配列番号2の配列、前記肝細胞成長因子は配列番号3の配列、前記血管内皮細胞成長因子は配列番号4の配列からなるものである、傷治療用の医薬組成物。
【0012】
7.前記項目1において、前記物質は、配列番号1の配列をコードする遺伝子が担持されたプラスミドである、傷治療用の医薬組成物。
【0013】
8.前記項目1において、前記多孔性シリカ粒子は、前記上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチドを担持したものであり、当該粒子は、外部表面または気孔内部が中性のpHで陰電荷を帯びるものである、傷治療用の医薬組成物。
【0014】
9.前記項目1において、前記多孔性シリカ粒子は、前記上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチドをコードする遺伝子が担持されたプラスミドを担持したものであり、当該粒子は、外部表面または気孔内部が中性のpHで陽電荷を帯びるものである、傷治療用の医薬組成物。
【発明の効果】
【0015】
本発明の組成物は、上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質を高効率で徐放的に送達し、優れた効率で傷を治療することができる。
【0016】
本発明の組成物は、上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質を徐放的に放出し、体内の上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質を長時間維持することができる。これにより、優れた薬効を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子の顕微鏡写真である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子の顕微鏡写真である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子の製造工程における小気孔粒子の顕微鏡写真である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態による小気孔粒子の顕微鏡写真である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子の気孔直径別の顕微鏡写真である。DDV(Degradable Delivery Vehicle)は、実施例の粒子であり、括弧内の数字は粒子の直径を、下付き文字の数字は気孔の直径を意味する。例えば、DDV(200)
10は、粒子直径が200nm、気孔直径が10nmである実施例の粒子を意味する。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子の生分解性を確認できる顕微鏡写真である。
【
図7】
図7は、一つの例示による円筒状の透過膜を備えたチューブである。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子の時間経過による吸光度の減少の結果である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子の時間経過による粒径別の吸光度の減少の結果である。
【
図10】
図10は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子の時間経過による気孔直径別の吸光度の減少の結果である。
【
図11】
図11は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子の時間経過による環境のpH別の吸光度の減少の結果である。
【
図12】
図12は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子の時間経過による吸光度の減少の結果である。
【
図13】
図13は、本発明の一実施形態に基づいてラクトフェリンタンパク質又はそれをコードする遺伝子が担持された多孔性シリカ粒子のVEGF発現増加の結果である。
【
図14】
図14は、本発明の一実施形態に基づいてラクトフェリンタンパク質又はそれをコードする遺伝子が担持された多孔性シリカ粒子の細胞増殖誘導の結果である。
【
図15】
図15は、本発明の一実施形態に基づいてラクトフェリンタンパク質又はそれをコードする遺伝子が担持された多孔性シリカ粒子の細胞増殖および血管形成誘導の結果である。
【
図16】
図16は、本発明の一実施形態に基づいてラクトフェリンタンパク質又はそれをコードする遺伝子が担持された多孔性シリカ粒子の創傷治癒の結果である。
【
図17】
図17は、本発明の一実施形態に基づいてラクトフェリンタンパク質又はそれをコードする遺伝子が担持された多孔性シリカ粒子の創傷治癒の結果である。
【
図18】
図18は、本発明の一実施形態に基づいてラクトフェリンタンパク質又はそれをコードする遺伝子が担持された多孔性シリカ粒子の創傷治癒の結果である。
【
図19】
図19は、本発明の一実施形態に基づいてラクトフェリンタンパク質又はそれをコードする遺伝子が担持された多孔性シリカ粒子の創傷治癒の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の具体的な説明において用語の具体的な意味を定義するが、これは当業界の通常の技術者に理解される意味として受け入れられるものであるだけで、下記に定義された特定の意味に限定しようとする意図ではない。
【0019】
本発明の傷治療用の医薬組成物は、上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質を担持した多孔性シリカ粒子を含む。
【0020】
上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチドは、上皮細胞または内皮細胞成長促進能を有するものであれば制限なく使用でき、例えば、ラクトフェリン、細胞成長因子などであってもよい。細胞成長因子は、具体的には上皮細胞成長因子、肝細胞成長因子または血管内皮細胞成長因子であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0021】
上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチドは、投与対象と同一種に由来するものであってよいが、これに限定されるものではない。他種に由来するものであっても、配列間の類似性によって同一/類似の機能を果たすことができるものであれば使用できる。例えばラクトフェリンの場合には、投与対象がヒトであれば、ヒト由来の配列番号1のアミノ酸配列を含むものであってもよく、具体的には、配列番号1の配列からなるものであってもよい。また、例えば、上皮細胞成長因子の場合には配列番号2のアミノ酸配列を、肝細胞成長因子の場合には配列番号3のアミノ酸配列を、血管内皮細胞成長因子の場合には配列番号4のアミノ酸配列を含むものであってもよく、具体的には、前記配列からなるものであってもよい。
【0022】
上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチドの活性または発現を増加させる物質は、その活性または発現を増加できるものであれば、その種類を制限せず、例えば、上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチドをコードする遺伝子が担持されたプラスミドであってもよい。
【0023】
プラスミドとしては、当分野で公知のものを制限なく使用することができる。具体例としては、ラクトフェリン遺伝子を担持したプラスミドは配列番号5の塩基配列を、上皮細胞成長因子を担持したプラスミドは配列番号6の塩基配列を、肝細胞成長因子を担持したプラスミドは配列番号7の塩基配列を、血管内皮細胞成長因子を担持したプラスミドは配列番号8の塩基配列を含むものであってもよく、具体的には前記配列からなるものであってもよい。
【0024】
投与対象は、ヒトを含むあらゆる哺乳類であってもよく、具体的にはヒトであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0025】
本発明において、用語「傷(wound)」は、組織が切られたり(cut)、裂けたり(torn)、壊れたり(broken)、焼けたり(burned)、外傷を負ったり(traumatized)、そのような損傷を誘発する障害または疾患から発生したりする人体に対する損傷(injury)を意味する。前記傷は、表面が開放された開放性傷(open wound)、または表面が開放されていない閉鎖性傷(closed wound)でもある。前記傷の一例は、皮膚の開放性傷でもある。前記傷は、病変(lesion)、できもの(sore)、懐死(necrosis)及び潰瘍(ulcer)を含んでもよい。前記懐死は、感染、損傷または梗塞から生成される死んだ組織に係わるものでもある。前記潰瘍は、懐死組織の脱皮によって生成された、器官または組織の表面の局所的な欠陥またはくぼみでもある。
【0026】
前記傷の一例は、皮膚の表皮(epidermis);真皮(dermis);表皮及び真皮;または表皮、真皮及び皮下脂肪層が損傷された傷でもある。
【0027】
また、前記傷の例は、創傷、肥大傷、ケロイド、切れ(cut)、切開(incisions)(例:手術的切開)、擦過傷(abrasions)、裂傷または引き裂き(lacerations)、骨折(fracture)、打撲傷(contusions)、火傷(burns)または切断(amputations)を含んでもよい。
【0028】
前記創傷治療は、皮膚損傷の進行の抑制、皮膚損傷の軽減、または皮膚損傷の除去を意味する。前記創傷は、具体的には、火傷、潰瘍、外傷、外科的手術(post-surgical)、出産、慢性創傷(chronic wound)または皮膚炎(dermatitis)による損傷でもある。
【0029】
本発明による多孔性シリカ粒子は、シリカ(SiO2)素材の粒子であり、ナノサイズの粒径を有する。
【0030】
本発明の多孔性シリカナノ粒子は、多孔性の粒子であり、ナノサイズの気孔を有し、その表面(外部表面)及び/又は気孔内部に上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質を担持することができる。
【0031】
本発明の多孔性シリカ粒子は、生分解性の粒子であり、上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質を担持し、体内に投与されたときに体内で生分解され、上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質を放出することができる。本発明の多孔性シリカ粒子は、体内で徐々に分解され、担持している上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質を徐放的に放出させることができる。例えば、下記数式1の吸光度の比が1/2となるtは、24以上である。
【0032】
[数式1]
At/A0
(式中、A0は、前記多孔性シリカ粒子1mg/mlの懸濁液5mlを直径50kDaの気孔を有する円筒状の透過膜に入れて測定した多孔性シリカ粒子の吸光度であり、
前記透過膜の外部には、前記透過膜と接し、前記懸濁液と同じ溶媒15mlが位置し、前記透過膜の内外部は37℃で60rpmで水平攪拌され、
前記懸濁液のpHは7.4であり、
Atは、前記A0の測定時からt時間経過後に測定した多孔性シリカ粒子の吸光度である。)
【0033】
前記数式1は、多孔性シリカ粒子が体内と同様の環境でどの程度の速度で分解されるかを意味するものである。
【0034】
前記の数式1での吸光度A
0、A
tは、例えば
図7に示すように、円筒状の透過膜に多孔性シリカ粒子および懸濁液を入れ、透過膜の外部にも同じ懸濁液を入れて測定したものであり得る。
【0035】
本発明の多孔性シリカ粒子は、生分解性であり、懸濁液中で徐々に分解され得る。直径50kDaは約5nmに相当するものであり、生分解された多孔性シリカ粒子は、直径50kDaの透過膜を通過することができる。円筒状の透過膜は、60rpmの水平攪拌下にあるので、懸濁液を均一に混合することができ、分解された多孔性シリカ粒子は、透過膜の外部に放出され得る。
【0036】
前記数式1での吸光度は、例えば、透過膜の外部の懸濁液が新しい懸濁液に入れ替わる環境下で測定したものであり得る。懸濁液は、持続的に入れ替わるものであってもよく、一定期間ごとに入れ替わるものであってもよい。前記一定期間は、定期的または不定期的な期間であってもよい。たとえば、1時間~1週間の範囲内で、1時間おき、2時間おき、3時間おき、6時間おき、12時間おき、24時間おき、2日おき、3日おき、4日おき、7日おき等に入れ替えることができるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
前記「吸光度の比が1/2となる」ということは、t時間後の吸光度が初期吸光度の半分になるということであり、これは多孔性シリカ粒子の約半分が分解されたことを意味する。
【0038】
前記懸濁液は緩衝溶液であってもよく、具体例としては、PBS(リン酸緩衝食塩水)およびSBF(疑似体液)からなる群より選択される1種以上であってもよく、より具体的にはPBSであってもよい。
【0039】
本発明の前記数式1の吸光度の比が1/2となるtは24以上であり、例えばtは24~120であってもよく、例えば、前記範囲内で24~96、24~72、30~70、40~70、50~65などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0040】
本発明の多孔性シリカ粒子は、前記数式1の吸光度の比が1/5となるtが、例えば70~140であってもよく、例えば、前記範囲内で80~140、80~120、80~110、70~140、70~120、70~110などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0041】
本発明の多孔性シリカ粒子は、前記数式1の吸光度の比が1/20となるtが、例えば130~220であってもよく、例えば、前記範囲内で130~200、140~200、140~180、150~180などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0042】
本発明の多孔性シリカ粒子は、測定される吸光度が0.01以下となるtが、例えば、250以上、300以上、350以上、400以上、500以上、1,000以上などであってもよく、その上限は2,000であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0043】
本発明の多孔性シリカ粒子における前記数式1の吸光度の比とtは、高い量の相関関係を有するものであり、例えば、ピアソン相関係数が0.8以上であってもよく、例えば0.9以上、0.95以上であってもよい。
【0044】
前記数式1のtは、多孔性シリカ粒子が体内と同様の環境でどの程度の速度で分解されるかを意味するものである。これは、例えば多孔性シリカ粒子の表面積、粒径、気孔直径、表面及び/又は気孔内部の置換基、表面の緻密さの程度などを調節することによって調節できる。
【0045】
例えば、粒子の表面積を増加させてtを減少させるか、表面積を減少させてtを増加させることができる。表面積は、粒子の直径、気孔の直径を調節することによって調節できる。また、表面及び/又は気孔内部に置換基を位置させ、多孔性シリカ粒子が環境(溶媒など)に直接露出することを減らしてtを増加させることができる。また、多孔性シリカ粒子に上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質を担持させ、上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質と多孔性シリカ粒子間の親和度を増加させ、多孔性シリカ粒子が環境に直接露出することを減らしてtを増加させることができる。また、粒子の製造時に表面をより緻密に製造してtを増加させることもできる。前記に数式1のtを調節できる様々な例を示したが、それらに限定されるものではない。
【0046】
本発明の多孔性シリカ粒子は、例えば球状粒子であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0047】
本発明の多孔性シリカ粒子は、平均粒径が例えば150nm~1,000nmであってもよく、例えば、前記範囲内で150nm~800nm、150nm~500nm、150nm~400nm、150nm~300nm、150nm~200nmであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0048】
本発明の多孔性シリカ粒子は、平均気孔直径が例えば1nm~100nmであってもよく、例えば、前記範囲内で5nm~100nm、7nm~100nm、7nm~50nm、10nm~50nm、10nm~30nm、7nm~30nmであってもよいが、これらに限定されるものではない。前記のような大きな直径を持って多量の上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質を担持することができ、サイズの大きい上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質の担持も可能である。
【0049】
本発明の多孔性シリカ粒子は、BET表面積が、例えば200m2/g~700m2/gであってもよい。例えば、前記範囲内で200m2/g~700m2/g、200m2/g~650m2/g、250m2/g~650m2/g、300m2/g~700m2/g、300m2/g~650m2/g、300m2/g~600m2/g、300m2/g~550m2/g、300m2/g~500m2/g、300m2/g~450m2/gなどであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0050】
本発明の多孔性シリカナノ粒子は、気孔のg当たりの体積が例えば0.7ml~2.2mlであってもよい。例えば、前記範囲内で0.7ml~2.0ml、0.8ml~2.2ml、0.8ml~2.0ml、0.9ml~2.0ml、1.0ml~2.0mlなどであってもよいが、これらに限定されるものではない。g当たりの体積が小さすぎると、分解速度が速くなりすぎることがあり、大きすぎると、製造が困難であるか、完全な形状を有しないことがある。
【0051】
本発明の多孔性シリカ粒子は、外部表面及び/又は気孔内部に親水性置換基及び/又は疎水性置換基が存在し得る。例えば、表面及び気孔内部の両方に親水性置換基のみが存在するか、疎水性置換基のみが存在してもよく、表面または気孔内部の一方のみに親水性置換基が存在するか、疎水性置換基が存在してもよい。また、表面に親水性置換基が、気孔内部に疎水性置換基が存在してもよく、その逆の場合も可能である。
【0052】
本発明の多孔性シリカ粒子に担持された上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質の放出は、主にナノ粒子の分解によって行われる。このため、前記置換基の調節により上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質の放出環境に対する多孔性シリカ粒子の相互作用を調節し、ナノ粒子自体の分解速度を調節して、上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質の放出速度を調節することができる。また、上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質は、ナノ粒子から拡散して放出させることもできるが、前記置換基の調節により上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質のナノ粒子への結合力を調節し、上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質の放出を調節することができる。
【0053】
また、難溶性(疎水性)の上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質との結合力を強化するために、気孔内部に疎水性置換基が存在し、使用、製剤化のし易さなどの側面で粒子の表面に親水性置換基が存在するようにするなどの処理も可能である。
【0054】
親水性置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、カルボニル基、スルフヒドリル基、ホスフェート基、チオール基、アンモニウム基、エステル基、イミド基、チオイミド基、ケト基、エーテル基、インデン基、スルホニル基、ポリエチレングリコール基などが挙げられる。疎水性置換基としては、例えば、置換または非置換のC1~C30のアルキル基、置換または非置換のC3~C30のシクロアルキル基、置換または非置換のC6~C30のアリール基、置換または非置換のC2~C30のヘテロアリール基、ハロゲン基、C1~C30のエステル基、及びハロゲン含有基などが挙げられる。
【0055】
また、本発明の多孔性シリカ粒子は、外部表面及び/又は気孔内部が陽電荷及び/又は陰電荷に帯電されたものであってもよい。例えば、表面及び気孔内部の両方が陽電荷に帯電されるか、陰電荷に帯電されてもよく、表面または気孔内部の一方のみが陽電荷に帯電されるか、陰電荷に帯電されてもよい。また、表面が陽電荷、気孔内部が陰電荷に帯電されてもよく、その逆の場合も可能である。具体的には、多孔性シリカ粒子がポリペプチドを担持した場合には、外部表面及び/又は気孔内部が陰電荷に帯電されたものであってもよく、ポリペプチドをコードする遺伝子が担持されたプラスミドを担持した場合には、外部表面及び/又は気孔内部が陽電荷に帯電されたものであってもよい。
【0056】
前記帯電は、例えば、陽イオン性置換基または陰イオン性置換基が存在することによって行われたものであり得る。
【0057】
前記陽イオン性置換基は、例えば、塩基性基としてアミノ基、その他の窒素含有基などであってもよく、前記陰イオン性置換基は、例えば、酸性基としてカルボキシ基(-COOH)、スルホン酸基(-SO3H)、チオール基(-SH)などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0058】
同様に、前記帯電によって前記置換基の調節により上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質の放出環境に対する多孔性シリカ粒子の相互作用を調節し、ナノ粒子自体の分解速度を調節して、上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質の放出速度を調節することができる。また、上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質は、ナノ粒子から拡散されて放出させることもできるが、前記置換基の調節により上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質のナノ粒子への結合力を調節し、上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質の放出を調節することができる。
【0059】
また、本発明の多孔性シリカ粒子は、その表面及び/又は気孔内部に前記の他に上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質の担持、上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質の標的細胞への移動、その他の目的のための物質の担持、又はその他の追加置換基の結合などのための置換基が存在してもよく、それに結合された抗体、リガンド、細胞透過性のペプチドまたはアプタマーなどをさらに含んでいてもよい。
【0060】
前述した表面及び/又は気孔内部の置換基、電荷、結合物質などは、例えば、表面改質によって付加することができる。
【0061】
表面改質は、例えば、導入しようとする置換基を有する化合物を粒子と反応させて行うことができ、前記化合物は、例えば、C1~C10のアルコキシ基を有するアルコキシシランであってもよいが、これに限定されるものではない。前記アルコキシシランは、前記アルコキシ基を1つ以上有するものであり、例えば1~3つを有することができ、アルコキシ基の結合していない部位に導入しようとする置換基があるか、又はそれで置換された置換基があってもよい。
【0062】
本発明の多孔性シリカ粒子は、例えば、小気孔の粒子の製造および気孔拡張工程を経て製造したものであってもよく、必要に応じて、か焼(calcination)工程、表面改質工程などをさらに経て製造したものであってもよい。か焼及び表面改質工程をすべて経た場合は、か焼後に表面改質されたものであってもよい。
【0063】
前記小気孔の粒子は、例えば、平均気孔直径が1nm~5nmの粒子であってもよい。
【0064】
前記小気孔の粒子は、溶媒に界面活性剤とシリカ前駆物質を入れて攪拌及び均質化して得ることができる。
【0065】
前記溶媒は、水及び/又は有機溶媒であってもよい。有機溶媒としては、例えば、1,4-ジオキサンなどのエーテル類(特に環状エーテル類);クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、ジクロロプロパン、塩化アミル、1,2-ジブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトン、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの炭素系芳香族類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアルキルアミド類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類(セロソルブ);その他ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホアミド、テトラメチル尿素、N-メチルカプロラクタム、テトラヒドロフラン、m-ジオキサン、P-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタンなどを使用でき、具体的にはアルコール、より具体的にはメタノールを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0066】
前記溶媒において、水と有機溶媒の混合溶媒の使用時の割合は、例えば、水と有機溶媒を1:0.7~1.5の体積比、例えば1:0.8~1.3の体積比で使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
前記界面活性剤は、例えば、CTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)、TMABr(臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム)、TMPrCl(塩化ヘキサデシルトリメチルピリジニウム)、TMACl(塩化テトラメチルアンモニウム)などであってもよく、具体的にはCTABを使用することができる。
【0068】
前記界面活性剤は、例えば、溶媒1リットル当たりに1g~10g、例えば、前記範囲内で1g~8g、2g~8g、3g~8gなどの量で添加できるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
前記シリカ前駆物質は、溶媒に界面活性剤を添加して攪拌した後に添加することができる。シリカ前駆物質は、例えば、TMOS(テトラメチルオルソシリケート)であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0070】
前記攪拌は、例えば10分~30分間行うことができるが、これに限定されるものではない。
【0071】
前記シリカ前駆物質は、例えば溶媒1リットル当たりに0.5ml~5ml、例えば、前記範囲内で0.5ml~4ml、0.5ml~3ml、0.5ml~2ml、1ml~2mlなどの量で添加できるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
必要に応じて、触媒として水酸化ナトリウムをさらに使用することができるが、これは溶媒に界面活性剤を添加した後、シリカ前駆物質の添加前に撹拌しながら添加することができる。
【0073】
前記水酸化ナトリウムは、例えば、1M水酸化ナトリウム水溶液を基準で溶媒1リットル当たりに0.5ml~8ml、例えば、前記範囲内で0.5ml~5ml、0.5ml~4ml、1ml~4ml、1ml~3ml、2ml~3mlなどであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0074】
前記シリカ前駆物質の添加後に溶液を攪拌して反応させることができる。攪拌は、例えば2時間~15時間行うことができ、例えば、前記範囲内で3時間~15時間、4時間~15時間、4時間~13時間、5時間~12時間、6時間~12時間、6時間~10時間などであってもよいが、これらに限定されるものではない。攪拌時間(反応時間)が短すぎると、結晶核生成(nucleation)が不足することがある。
【0075】
前記攪拌の後には、溶液を熟成(aging)させることができる。熟成は、例えば、8時間~24時間行うことができ、例えば、前記範囲内で8時間~20時間、8時間~18時間、8時間~16時間、8時間~14時間、10時間~16時間、10時間~14時間などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0076】
その後、反応産物を洗浄及び乾燥して多孔性シリカ粒子を得ることができる。必要に応じて、洗浄の前に未反応物質の分離を先行することができる。
【0077】
前記未反応物質の分離は、例えば、遠心分離で上澄み液を分離して行うことができる。遠心分離は、例えば6,000~10,000rpmで行うことができる。その時間は、例えば3分~60分、例えば、前記範囲内で3分~30分、3分~30分、5分~30分などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0078】
前記洗浄は、水及び/又は有機溶媒で行うことができ、具体的には、溶媒ごとに溶解できる物質が異なるので、水と有機溶媒を1回または数回交互に使用してもよく、水または有機溶媒単独で1回または数回洗浄してもよい。前記数回は、例えば2回以上10回以下、例えば、3回以上10回以下、4回以上8回以下、4回以上6回以下などであってもよい。
【0079】
前記有機溶媒としては、例えば、1,4-ジオキサンなどのエーテル類(特に環状エーテル類);クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、ジクロロプロパン、塩化アミル、1,2-ジブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトン、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの炭素系芳香族類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアルキルアミド類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類(セロソルブ);その他ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホアミド、テトラメチル尿素、N-メチルカプロラクタム、テトラヒドロフラン、m-ジオキサン、P-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタンなどを使用でき、具体的にはアルコール、より具体的にはエタノールを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0080】
前記洗浄は遠心分離下で行うことができ、例えば6,000~10,000rpmで行うことができる。その時間は、例えば3分~60分、例えば、前記範囲内で3分~30分、3分~30分、5分~30分などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0081】
前記洗浄は、遠心分離をせずに、フィルタで粒子をろ過して行うこともできる。フィルタは、多孔性シリカ粒子の直径以下の気孔を有するものであってもよい。反応液を、そのようなフィルタでろ過すると、粒子だけがフィルタの上に残り、そのフィルタの上に水及び/又は有機溶媒を注ぎ、洗浄することができる。
【0082】
前記洗浄時には、水と有機溶媒を1回または数回交互に使用してもよく、水または有機溶媒単独で1回または数回洗浄してもよい。前記数回は、例えば、2回以上10回以下、例えば、3回以上10回以下、4回以上8回以下、4回以上6回以下などであってもよい。
【0083】
前記乾燥は、例えば20℃~100℃で行うことができるが、これらに限定されず、真空状態で行うこともできる。
【0084】
その後、前記で得られた多孔性シリカ粒子の気孔を拡張する。気孔の拡張は、気孔膨張剤を用いて行うことができる。
【0085】
前記気孔膨張剤としては、例えば、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン、トリプロピルベンゼン、トリブチルベンゼン、トリペンチルベンゼン、トリヘキシルベンゼン、トルエン、ベンゼンなどを使用でき、具体的にはトリメチルベンゼンを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0086】
また、前記気孔膨張剤としては、例えばN,N-ジメチルヘキサデシルアミン(N,N-dimethylhexadecylamine、DMHA)を使用できるが、これに限定されるものではない。
【0087】
前記気孔の拡張は、例えば、溶媒中の多孔性シリカ粒子を気孔膨張剤と混合し、加熱して反応させて行うことができる。
【0088】
前記溶媒は、例えば、水及び/又は有機溶媒であってもよい。有機溶媒としては、例えば1,4-ジオキサンなどのエーテル類(特に環状エーテル類);クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、ジクロロプロパン、塩化アミル、1,2-ジブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭素系芳香族類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアルキルアミド類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;などを使用でき、具体的にはアルコール、より具体的にはエタノールを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0089】
前記多孔性シリカ粒子は、例えば、溶媒1リットル当たりに10g~200g、例えば、前記範囲内で10g~150g、10g~100g、30g~100g、40g~100g、50g~100g、50g~80g、60g~80gなどの割合で添加できるが、これらに限定されるものではない。
【0090】
前記多孔性シリカ粒子は、溶媒中に均一に分散されているものであってもよく、例えば、溶媒に多孔性シリカ粒子を添加して超音波分散したものであってもよい。混合溶媒を使用する場合には、第1の溶媒に多孔性シリカ粒子を分散した後、第2の溶媒を添加したものであってもよい。
【0091】
前記気孔膨張剤は、例えば、溶媒100体積部に対して10~200体積部、前記範囲内で10~150体積部、10~100体積部、10~80体積部、30~80体積部、30~70体積部などの割合で添加できるが、これらに限定されるものではない。
【0092】
前記反応は、例えば120℃~190℃で行うことができる。例えば、前記範囲内で120℃~190℃、120℃~180℃、120℃~170℃、130℃~170℃、130℃~160℃、130℃~150℃、130℃~140℃などで行うことができるが、これらに限定されるものではない。
【0093】
前記反応は、例えば6時間~96時間行うことができる。例えば、前記範囲内で30時間~96時間、30時間~96時間、30時間~80時間、30時間~72時間、24時間~80時間、24時間~72時間、36時間~96時間、36時間~80時間、36時間~72時間、36時間~66時間、36時間~60時間、48時間~96時間、48時間~88時間、48時間~80時間、48時間~72時間、6時間~96時間、7時間~96時間、8時間~80時間、9時間~72時間、9時間~80時間、6時間~72時間、9時間~96時間、10時間~80時間、10時間~72時間、12時間~66時間、13時間~60時間、14時間~96時間、15時間~88時間、16時間~80時間、17時間~72時間などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0094】
前記例示した範囲内で時間および温度を調節して、反応が過剰せずに十分に行われるようにすることができる。例えば、反応温度が低くなると反応時間を増やしたり、反応温度が高くなると反応時間を短くしたりすることができる。反応が十分でないと、気孔の拡張が十分でないことがあり、反応が進行しすぎると、気孔の過剰拡張により粒子が崩壊することがある。
【0095】
前記反応は、例えば、段階的に昇温して行うことができる。具体的には、常温から前記温度まで0.5℃/分~15℃/分の速度で段階的に昇温して行うことができ、例えば、前記範囲内で1℃/分~15℃/分、3℃/分~15℃/分、3℃/分~12℃/分、3℃/分~10℃/分などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0096】
前記反応は、攪拌下で行うことができる。例えば100rpm以上の速度で攪拌することができ、具体的には100rpm~1,000rpmの速度で行うことができるが、これらに限定されるものではない。
【0097】
前記反応後は、反応液を徐々に冷却することができ、例えば、段階的に減温して冷却することができる。具体的には、前記温度から常温まで0.5℃/分~20℃/分の速度で段階的に減温して行うことができ、例えば、前記範囲内で1℃/分~20℃/分、3℃/分~20℃/分、3℃/分~12℃/分、3℃/分~10℃/分などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0098】
前記冷却後に反応産物を洗浄および乾燥し、気孔が拡張された多孔性シリカ粒子を得ることができる。必要に応じて、洗浄の前に未反応物質の分離を先行することができる。
【0099】
前記未反応物質の分離は、例えば、遠心分離で上澄み液を分離して行うことができる。遠心分離は、例えば6,000~10,000rpmで行うことができる。その時間は、例えば3分~60分、例えば、前記範囲内で3分~30分、3分~30分、5分~30分などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0100】
前記洗浄は、水及び/又は有機溶媒で行うことができる。具体的には、溶媒ごとに溶解できる物質が異なるので、水と有機溶媒を1回または数回交互に使用してもよく、水または有機溶媒単独で1回または数回洗浄してもよい。前記数回は、例えば2回以上、10回以下、例えば、3回、4回、5回、6回、7回、8回などであってもよい。
【0101】
前記有機溶媒としては、例えば、1,4-ジオキサンなどのエーテル類(特に環状エーテル類);クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、ジクロロプロパン、塩化アミル、1,2-ジブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭素系芳香族類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアルキルアミド類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;などを使用することができ、具体的にはアルコール、より具体的にはエタノールを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0102】
前記洗浄は遠心分離下で行うことができ、例えば6,000~10,000rpmで行うことができる。その時間は、例えば3分~60分、例えば、前記範囲内で3分~30分、3分~30分、5分~30分などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0103】
前記洗浄は遠心分離をせずに、フィルタで粒子をろ過して行うこともできる。フィルタは、多孔性シリカ粒子の直径以下の気孔を有するものであってもよい。反応液を、そのようなフィルタでろ過すると、粒子だけがフィルタの上に残り、そのフィルタの上に水及び/又は有機溶媒を注ぎ、洗浄することができる。
【0104】
前記洗浄時には、水と有機溶媒を1回または数回交互に使用してもよく、水または有機溶媒単独で1回または数回洗浄してもよい。前記数回は、例えば2回以上10回以下、例えば、3回以上10回以下、4回以上8回以下、4回以上6回以下などであってもよい。
【0105】
前記乾燥は、例えば20℃~100℃で行うことができるが、これに限定されるものではなく、真空状態で行うこともできる。
【0106】
その後、得られた粒子は、か焼することができる。か焼は、粒子を加熱してその表面および内部のシラノール基を除去して粒子の反応性を下げ、より緻密な構造にし、気孔を満たす有機物を除去する工程であり、例えば400℃以上の温度に加熱することができる。その上限は特に限定されず、例えば、1,000℃、900℃、800℃、700℃等であってもよい。加熱は、例えば、3時間以上、4時間以上などで行うことができる。その上限は特に限定されず、例えば、24時間、12時間、10時間、8時間、6時間、5時間などであってもよい。より具体的には、400℃~700℃で3時間~8時間、具体的には500℃~600℃で4時間~5時間行うことができるが、これらに限定されるものではない。
【0107】
気孔を満たす有機物を除去することにより、残存有機物によって示される細胞毒性、泡の発生などの問題を防止することができる。
【0108】
その後、得られた多孔性シリカ粒子は、表面改質することができる。表面改質は、表面及び/又は気孔内部に行うことができる。粒子表面と気孔内部は、同じように表面改質してもよく、異なるように表面改質してもよい。
【0109】
前記表面改質により粒子が帯電されるようにするか、または親水性及び/又は疎水性の性質を持つようにすることができる。
【0110】
より具体的には、上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質の効果的な担持のために、アミノ基、アミノアルキル基、アルキルアミノ基、窒素原子を含むヘテロ環芳香族化合物基、シアン基及びグアニジン基からなる群より選択される少なくとも一つの置換基を有するようにして、前記多孔性シリカ粒子の表面改質を行うことができる。
【0111】
表面改質は、例えば、導入しようとする親水性、疎水性、陽イオン性、陰イオン性などの置換基を有する化合物を粒子と反応させて行うことができる。前記化合物は、例えばC1~C10のアルコキシ基を有するアルコキシシランであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0112】
前記アルコキシシランは、前記アルコキシ基を1個以上有するものであり、例えば1~3個有することができ、アルコキシ基が結合していない部位に導入しようとする置換基があるか、又はそれで置換された置換基があってもよい。
【0113】
前記アルコキシシランを多孔性シリカ粒子と反応させると、シリコン原子と酸素原子との共有結合が形成され、アルコキシシランが多孔性シリカ粒子の表面及び/又は気孔内部と結合することができる。前記アルコキシシランは、導入しようとする置換基を有しているので、当該置換基を多孔性シリカ粒子の表面及び/又は気孔内部に導入することができる。
【0114】
前記反応は、溶媒に分散した多孔性シリカ粒子をアルコキシシランと反応させて行うことができる。
【0115】
前記溶媒は、水及び/又は有機溶媒であってもよい。有機溶媒としては、例えば、1,4-ジオキサンなどのエーテル類(特に環状エーテル類);クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、ジクロロプロパン、塩化アミル、1,2-ジブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトン、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの炭素系芳香族類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアルキルアミド類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類(セロソルブ);その他ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホアミド、テトラメチル尿素、N-メチルカプロラクタム、テトラヒドロフラン、m-ジオキサン、P-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタンなどを使用でき、具体的にはトルエンを使用できるが、これらに制限されるものではない。
【0116】
前記陽電荷での帯電は、例えばアミノ基、アミノアルキル基などの窒素含有基などの塩基性基を有するアルコキシシランと反応させて行うことができる。具体的には、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン(N-[3-(Trimethoxysilyl)propyl]ethylenediamine)、N1-(3-トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン(N1-(3-Trimethoxysilylpropyl)diethylenetriamine)、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン((3-Aminopropyl)trimethoxysilane)、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アニリン(N-[3-(Trimethoxysilyl)propyl]aniline)、トリメトキシ[3-(メチルアミノ)プロピル]シラン(Trimethoxy[3-(methylamino)propyl]silane)、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン(3-(2-Aminoethylamino)propyldimethoxymethylsilane)などを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0117】
前記陰電荷での帯電は、例えばカルボキシ基、スルホン酸基、チオール基、メチルホスホネート基、ホスホネート基などの酸性基を有するアルコキシシランと反応させて行うことができる。具体的には、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン((3-Mercaptopropyl)trimethoxysilane)などを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0118】
前記親水性の性質は、親水性基、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、カルボニル基、スルフヒドリル基、ホスフェート基、チオール基、アンモニウム基、エステル基、イミド基、チオイミド基、ケト基、エーテル基、インデン基、スルホニル基、ポリエチレングリコール基などを有するアルコキシシランと反応させて持たせることができる。具体的には、 N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン(N-[3-(Trimethoxysilyl)propyl]ethylenediamine)、N1-(3-トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン(N1-(3-Trimethoxysilylpropyl)diethylenetriamine)、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン((3-Aminopropyl)trimethoxysilane)、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン((3-Mercaptopropyl)trimethoxysilane)、トリメトキシ[3-(メチルアミノ)プロピル]シラン(Trimethoxy[3-(methylamino)propyl]silane)、 3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン(3-(2-Aminoethylamino)propyldimethoxymethylsilane)などを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0119】
前記疎水性の性質は、疎水性置換基、例えば、置換または非置換のC1~C30のアルキル基、置換または非置換のC3~C30のシクロアルキル基、置換または非置換のC6~C30のアリール基、置換または非置換のC2~C30のヘテロアリール基、ハロゲン基、C1~C30のエステル基、ハロゲン含有基などを有するアルコキシシランと反応させて持たせることができる。具体的には、トリメトキシ(オクタデシル)シラン(Trimethoxy(octadecyl)silane)、トリメトキシ-n-オクチルシラン(Trimethoxy-n-octylsilane)、トリメトキシ(プロピル)シラン(Trimethoxy(propyl)silane)、イソブチル(トリメトキシ)シラン(Isobutyl(trimethoxy)silane)、トリメトキシ(7-オクテン-1-イル)シラン(Trimethoxy(7-octen-1-yl)silane)、トリメトキシ(3,3,3-トリフルオロプロピル)シラン(Trimethoxy(3,3,3-trifluoropropyl)silane)、トリメトキシ(2-フェニルエチル)シラン(Trimethoxy(2-phenylethyl)silane)、ビニルトリメトキシシラン(Vinyltrimethoxysilane)、シアノメチル(Cyanomethyl)、[3-(トリメトキシシリル)プロピル]トリチオカーボネート([3-(trimethoxysilyl)propyl]trithiocarbonate)、(3-ブロモプロピル)トリメトキシシラン((3-Bromopropyl)trimethoxysilane)などを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0120】
そのほか、前記表面改質により難溶性(疎水性)の上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質との結合力を強化するために、気孔内部に疎水性置換基が存在し、使用、製剤化のし易さなどの側面で粒子の表面に親水性置換基が存在するようにするなどの処理も可能であり、表面に他の上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質を結合するための置換基が存在してもよい。
【0121】
また、前記表面改質は、複合的に行うこともできる。例えば、外部表面または気孔内部に2回以上の表面改質を行うこともできる。具体的な例として、アミノ基が導入されたシリカ粒子にカルボキシル基を含む化合物をアミド結合で結合して陽電荷に帯電した粒子を、他の表面特性を持つように変化させることができるが、これに限定されるものではない。
【0122】
前記多孔性シリカ粒子のアルコキシシランとの反応は、例えば、加熱下で行うことができる。加熱は、例えば80℃~180℃、例えば、前記範囲内で80℃~160℃、80℃~150℃、100℃~160℃、100℃~150℃、110℃~150℃などで行うことができるが、これらに限定されるものではない。
【0123】
前記多孔性シリカ粒子のアルコキシシランとの反応は、例えば4時間~20時間、例えば、前記範囲内で4時間~18時間、4時間~16時間、6時間~18時間、6時間~16時間、8時間~18時間、8時間~16時間、8時間~14時間、10時間~14時間などで行うことができるが、これらに限定されるものではない。
【0124】
前記反応温度、時間、そして表面改質に使用される化合物の量などは、表面改質しようとする程度によって選択できる。上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質の親水性、疎水性、電荷の程度によって反応条件を変えて多孔性シリカ粒子の親水性、疎水性、電荷の程度を調節することにより、上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質の放出速度を調節することができる。例えば、上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質が中性のpHで強い陰電荷を帯びる場合には、多孔性シリカ粒子が強い陽電荷を帯びるようにするために、反応温度を高くしたり、反応時間を長くしたり、化合物の処理量を増やすことができるが、これらに制限されるものではない。
【0125】
また、本発明の多孔性シリカ粒子は、例えば、小気孔の粒子の製造、気孔の拡張、表面改質、気孔内部の改質工程を経て製造されたものであってもよい。
【0126】
前記小気孔の粒子の製造および気孔拡張工程は前述通りの工程によって行うことができ、小気孔の粒子の製造後、そして気孔拡張工程の後に洗浄及び乾燥工程を行うことができる。
【0127】
必要に応じて、洗浄の前に未反応物質の分離を先行することができる。未反応物質の分離は、例えば遠心分離で上澄み液を分離して行うことができる。
【0128】
前記遠心分離は、例えば6,000~10,000rpmで行うことができる。その時間は、例えば3分~60分、具体的には、前記範囲内で3分~30分、3分~30分、5分~30分などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0129】
前記小気孔の粒子の製造後の洗浄は、先に例示した範囲内の方法/条件で行うことができるが、これらに限定されるものではない。
【0130】
前記気孔拡張後の洗浄は、先の例示よりは緩和された条件で行うことができる。例えば、洗浄を3回以内行うことができるが、これに限定されるものではない。
【0131】
前記表面改質と気孔内部改質のそれぞれは、前述の工程によって行うことができる。表面改質と気孔内部改質の順に工程を行うことができ、前記両工程の間に粒子の洗浄工程をさらに行うことができる。
【0132】
前記小気孔の粒子の製造および気孔拡張の後に洗浄をより緩和された条件で行う場合、気孔内部には粒子製造、気孔拡張に使用された界面活性剤などの反応液が満たされているため、表面改質時に気孔内部が改質されずに、表面だけが改質され得る。その後、粒子を洗浄すると、気孔内部の反応液が除去され得る。
【0133】
前記表面改質工程と気孔内部改質工程との間の粒子の洗浄は、水及び/又は有機溶媒で行うことができる。具体的には、溶媒ごとに溶解できる物質が異なるので、水と有機溶媒を1回または数回交互に使用してもよく、水または有機溶媒単独で1回または数回洗浄してもよい。前記数回は、例えば2回以上10回以下、具体的には、3回以上10回以下、4回以上8回以下、4回以上6回以下などであってもよい。
【0134】
前記洗浄は遠心分離下で行うことができ、例えば6,000~10,000rpmで行うことができる。その時間は、例えば3分~60分、具体的には、前記範囲内で3分~30分、3分~30分、5分~30分などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0135】
前記洗浄は遠心分離をせずに、フィルタで粒子をろ過して行うこともできる。フィルタは、多孔性シリカ粒子の直径以下の気孔を有するものであってもよい。反応液をそのようなフィルタでろ過すると、粒子だけがフィルタの上に残り、そのフィルタの上に水及び/又は有機溶媒を注ぎ、洗浄することができる。
【0136】
前記洗浄時には、水と有機溶媒を1回または数回交互に使用してもよく、水または有機溶媒単独で1回または数回洗浄してもよい。前記数回は、例えば2回以上10回以下、具体的には、3回以上10回以下、4回以上8回以下、4回以上6回以下などであってもよい。
【0137】
前記乾燥は、例えば20℃~100℃で行うことができるが、これに限定されるものではなく、真空状態で行うこともできる。
【0138】
上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質は、多孔性シリカ粒子の表面及び/又は気孔内部に担持することができる。担持は、例えば、溶媒中の多孔性シリカ粒子と上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質を混合して行うことができる。
【0139】
前記溶媒は、水及び/又は有機溶媒であってもよい。有機溶媒としては、例えば、1,4-ジオキサンなどのエーテル類(特に環状エーテル類);クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、ジクロロプロパン、塩化アミル、1,2-ジブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭素系芳香族類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアルキルアミド類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;などを使用することができる。
【0140】
また、前記溶媒として、PBS(リン酸緩衝食塩水)、SBF(疑似体液)、Borate-buffered saline、Tris-buffered salineなどを使用することもできる。
【0141】
前記多孔性シリカ粒子に担持された上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質は、延長された時間をかけて段階的に放出され得る。このような遅い放出は、連続性または非連続性、線形または非線形であってもよく、多孔性シリカ粒子の特徴及び/又はそれと上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質との相互作用に起因して異なり得る。
【0142】
前記多孔性シリカ粒子に担持された上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質は、多孔性シリカ粒子が生分解されながら放出されるが、本発明に係る多孔性シリカ粒子は徐々に分解され、担持された上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質が徐放的に放出されるようにすることができる。これは例えば、多孔性シリカ粒子の表面積、粒径、気孔直径、表面及び/又は気孔内部の置換基、表面の緻密さの程度などを調節することで調節できるが、これらに限定されるものではない。
【0143】
また、前記多孔性シリカ粒子に担持された上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質は、多孔性シリカ粒子から離脱して拡散しながらも放出できる。これは多孔性シリカ粒子と上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質、上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質の放出環境との関係に影響を受けるものであるところ、これを調整して、上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質の放出を調節することができる。例えば、表面改質によって多孔性シリカ粒子の上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質との結合力を強化または弱化させることによって調節することができる。
【0144】
より具体的な例として、担持される上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質が難溶性(疎水性)である場合には、粒子の表面及び/又は気孔内部が疎水性置換基を有することにより、多孔性シリカ粒子と上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質との結合力が増加し得る。これにより、上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質を徐放的に放出することができる。これは例えば、多孔性シリカ粒子が疎水性置換基を有するアルコキシシランで表面改質されたものであってもよい。
【0145】
本明細書で「難溶性」とは、(水に対して)不溶性(insoluble)、実質的に不溶性(practically insoluble)、またはごくわずかの可溶性(only slightly soluble)を含む意味である。これは「Pharmaceutical Science」18th Edition(USP、Remington、Mack Publishing Company発行)に定義されている用語である。
【0146】
前記難溶性の物質は、例えば1気圧、25℃での水溶解度が10g/L未満、具体的には5g/L未満、より具体的には1g/L未満であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0147】
担持される上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質が水溶性(親水性)である場合には、粒子の表面及び/又は気孔内部が親水性置換基を有することにより、多孔性シリカ粒子と上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質との結合力が増加し得る。これにより、上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質を徐放的に放出することができる。これは例えば、多孔性シリカ粒子が親水性置換基を有するアルコキシシランで表面改質されたものであってもよい。
【0148】
水溶性物質は、例えば1気圧、25℃での水溶解度が10g/L以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0149】
担持される上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質が電荷を帯びる場合には、粒子の表面及び/又は気孔内部がその逆の電荷に帯電することにより、多孔性シリカ粒子と上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質との結合力が増加し得る。これにより、上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質を徐放的に放出することができる。これは例えば、多孔性シリカ粒子が酸性基または塩基性基を有するアルコキシシランで表面改質されたものであってもよい。
【0150】
具体的には、上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質が中性のpHで陽電荷を帯びるものであれば、粒子の表面及び/又は気孔内部が中性のpHで陰電荷に帯電するものであってよい。これにより、多孔性シリカ粒子と上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質との結合力が増加して、上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質を徐放的に放出することができる。これは例えば、多孔性シリカ粒子がカルボキシ基(-COOH)、スルホン酸基(-SO3H)などの酸性基を有するアルコキシシランで表面改質されたものであってもよい。
【0151】
また、上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質が中性のpHで陰電荷を帯びるものであれば、粒子の表面及び/又は気孔内部が陽電荷に帯電するものであってもよい。これにより、多孔性シリカ粒子と上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質との結合力が増加して、上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質を徐放的に放出することができる。これは例えば、多孔性シリカ粒子がアミノ基、その他窒素含有基などの塩基性基を有するアルコキシシランで表面改質されたものであってもよい。
【0152】
上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質は、必要な治療の種類、放出環境、使用される多孔性シリカ粒子に依存して、例えば7日~1年またはそれ以上の期間にわたって放出され得る。
【0153】
また、本発明の多孔性シリカ粒子は、生分解性で100%分解され得るので、これに担持された上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質は、100%放出され得る。
【0154】
本発明の組成物は、傷治療効果を有するものである。この効果は担持された上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質を体内に安定的に送達し、ターゲットに徐放的に放出して、血管内皮成長因子(VEFG)などの因子などの発現を促進することにより達成される効果であり得る。
【0155】
本発明の組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含むことができ、担体と共に製剤化することができる。本発明で用語「薬学的に許容可能な担体」とは、生物体を刺激せず投与化合物の生物学的活性及び特性を阻害しない担体または希釈剤を意味する。液状溶液に製剤化される組成物における薬学的に許容可能な担体は、滅菌および生体に適したものであり、食塩水、滅菌水、リンガー液、緩衝食塩水、アルブミン注射液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール及びこれらの成分のうち1つの成分以上を混合して使用することができ、必要に応じて、抗酸化剤、緩衝液及び静菌剤などの他の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び潤滑剤を付加的に添加し、水溶液、懸濁液、乳濁液などの注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤に製剤化することができる。
【0156】
本発明の組成物は、いずれの剤型にも適用可能であり、経口用または非経口用の剤形に製造することができる。本発明の薬学的剤形は、口腔(oral)、直腸(rectal)、鼻腔(nasal)、局所(topical;頬及び舌下を含む)、皮下、膣(vaginal)または非経口(parenteral;筋肉内、皮下及び静脈内を含む)投与に適したもの、あるいは吸入(inhalation)または注入(insufflation)による投与に適した形態を含む。
【0157】
本発明の組成物は、薬学的に有効な量で投与する。有効容量は、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路、排出割合、治療期間、同時使用される薬物を含む要素、及びその他の医学分野でよく知られている要素によって決定できる。本発明の薬学的組成物は、個々の治療剤として投与しても、他の治療剤と併用して投与してもよい。また、従来の治療剤と順次または同時に投与することができ、単一または多重投与することができる。前記の要素をすべて考慮して副作用なしに最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要であり、これは当業者によって容易に決定され得る。
【0158】
本発明の組成物の投与量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食物、投与時間、投与方法、排泄率および疾患の重症度などによってその範囲が非常に多様である。適正な投与量は、例えば、患者の体内に蓄積された薬物の量及び/又は使用される本発明の送達体の具体的な効能程度によって異なり得る。例えば、体重1kg当たりに0.01μg~1gであってもよい。日、週、月、または年の単位期間に、単位期間当たりの一回または数回に分けて投与してもよく、若しくはインフュージョンポンプを用いて長期間連続して投与してもよい。反復投与の回数は、薬物の体内滞在時間、体内薬物濃度などを考慮して決定する。疾患の治療経過によっては、治療された後でも再発防止のために組成物を投与することができる。
【0159】
本発明の組成物は、傷治療に関連して同一または類似の機能を示す有効成分を1種以上、または有効成分の溶解性及び/又は吸収性を維持/増加させる化合物をさらに含有することができる。また必要に応じて、抗炎症剤、抗ウイルス剤、及び/又は免疫調節剤などをさらに含むことができる。
【0160】
また、本発明の組成物は、哺乳動物に投与された後、活性成分の迅速、持続または遅延放出を提供できるように、当業界で公知の方法を用いて剤形化することができる。剤形は、粉末、顆粒、錠剤、エマルジョン、シロップ、エアロゾル、軟質または硬質のゼラチンカプセル、滅菌注射液、滅菌粉末の形態であってもよい。
【0161】
また、本発明は傷治療方法に関するものである。
【0162】
本発明の傷治療方法は、上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質を担持した多孔性シリカ粒子を個体に投与することを含む。
【0163】
上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質は、前述した範囲内のものであってもよい。
【0164】
多孔性シリカ粒子は、先に例示した範囲内のものであってもよく、先に例示した範囲内の方法/条件などで製造されたものであってもよい。
【0165】
個体は、ヒトを含む哺乳類であってもよく、具体的にはヒトであってもよい。
【0166】
前記上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質は、組成物の形態で前述した範囲内の方法で剤形化することができる。
【0167】
投与方法は、限定されず、例えば、口腔(oral)、直腸(rectal)、鼻腔(nasal)、局所(topical;頬及び舌下を含む)、皮下、膣(vaginal)または非経口(parenteral;筋肉内、皮下及び静脈内を含む)投与、あるいは吸入(inhalation)または注入(insufflation)による投与などの方法であってもよい。
【0168】
また、本発明は、上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質を担持した多孔性シリカ粒子の傷治療用の医薬組成物の製造のための用途に関するものである。
【0169】
上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質は、前述した範囲内のものであってもよい。
【0170】
多孔性シリカ粒子は、先に例示した範囲内のものであってもよく、先に例示した範囲内の方法/条件などで製造されたものであってもよい。
【0171】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明することにする。以下、本発明の多孔性シリカ粒子は、「DegradaBALLまたはDDV」と略称することがある。
【0172】
実験方法
実施例1.多孔性シリカ粒子(DDVまたはDegradaBALL)
1.多孔性シリカ粒子の製造
(1)多孔性シリカ粒子の製造
1)小気孔粒子の製造
2L丸底フラスコに蒸留水(DW)の960mlとMeOHの810mlを入れた。前記フラスコにCTABを7.88g入れた後、攪拌しながら1M NaOHの4.52mlを素早く入れた。10分間攪拌して均一な混合液を得た後、TMOSの2.6mlを入れた。6時間攪拌して均一に混合した後、24時間熟成し、反応液を得た。
【0173】
その後、前記反応液を25℃で10分間8,000rpmで遠心分離して上澄み液を除去し、25℃で10分間8,000rpmで遠心分離し、エタノール及び蒸留水で交互に5回洗浄した。
【0174】
その後、70℃のオーブンで乾燥し、1.5gの粉末状の小気孔多孔性シリカ粒子(気孔平均直径2nm、粒径200nm)を得た。
【0175】
2)気孔の拡張
1.5gの小気孔多孔性シリカ粒子の粉末をエタノール10mlに添加して超音波分散し、水10ml、TMB(trimethyl benzene)10mlを添加して超音波分散し、分散液を得た。
【0176】
その後、前記分散液をオートクレーブに入れて160℃、48時間反応させた。
【0177】
反応は25℃で開始し、10℃/分の速度で昇温して行った。その後、オートクレーブ内で1~10℃/分の速度で徐々に冷却した。
【0178】
冷却した反応液を25℃で10分間8,000rpmで遠心分離して上澄み液を除去し、25℃で10分間8,000rpmで遠心分離し、エタノールおよび蒸留水で交互に5回洗浄した。
【0179】
その後70℃のオーブンで乾燥し、粉末状の多孔性シリカ粒子(気孔直径10~15nm、粒径200nm)を得た。
【0180】
3)か焼
前記2)で製造された多孔性シリカ粒子をガラスバイアル(vial)に入れて550℃で5時間加熱し、反応終了後、常温まで徐々に冷却して粒子を製造した。
【0181】
(2)多孔性シリカ粒子の製造
気孔拡張時の反応条件を140℃、72時間に変更した以外は、前記1-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0182】
(3)多孔性シリカ粒子の製造(10Lスケール)
5倍大きな容器を使用し、各物質をいずれも5倍の容量で使用した以外は、実施例1-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0183】
(4)多孔性シリカ粒子の製造(粒径300nm)
小気孔粒子の製造時に蒸留水920ml、メタノール850mlを使用した以外は、1-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0184】
(5)多孔性シリカ粒子の製造(粒径500nm)
小気孔粒子の製造時に蒸留水800ml、メタノール1,010ml、CTAB 10.6gを使用した以外は、1-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0185】
(6)多孔性シリカ粒子の製造(粒径1,000nm)
小気孔粒子の製造時に蒸留水620ml、メタノール1,380ml、CTAB 7.88gを使用した以外は、1-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0186】
(7)多孔性シリカ粒子の製造(気孔直径4nm)
気孔拡張時にTMBを2.5ml使用した以外は、1-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0187】
(8)多孔性シリカ粒子の製造(気孔直径7nm)
気孔拡張時にTMBを4.5ml使用した以外は、1-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0188】
(9)多孔性シリカ粒子の製造(気孔直径17nm)
気孔拡張時にTMBを11ml使用した以外は、1-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0189】
(10)多孔性シリカ粒子の製造(気孔直径23nm)
気孔拡張時にTMBを12.5ml使用した以外は、1-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0190】
(11)多孔性シリカ粒子の製造(二重改質)
1)小気孔粒子の製造
実施例1-1-(1)-1)の方法と同様にして小気孔粒子を製造した。
【0191】
2)気孔の拡張
実施例1-1-(1)-2)の方法と同様にして小気孔粒子をTMBと反応させ、冷却し、遠心分離して上澄み液を除去した。その後、実施例1-1-(1)-2)と同じ条件で遠心分離し、エタノール及び蒸留水で交互に3回洗浄した。その後、実施例1-1-(1)-2)と同じ条件で乾燥し、粉末状の多孔性シリカ粒子(気孔直径10~15nm、粒径200nm)を得た。
【0192】
3)表面改質
気孔が拡張された多孔性シリカ粒子0.8g~1gを50mlのトルエンに分散した後、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン((3-aminopropyl)triethoxysilane)を5ml入れて120℃で還流したまま12時間加熱した。この過程は、前述の洗浄過程および乾燥過程を経た後、1mlのトリエチレングリコール(PEG3,2-[2-(2-methoxyethoxy)ethoxy] acetic acid)と、100mgのEDC(1-Ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide)と、200mgのN-ヒドロキシコハク酸イミド(N-Hydroxysuccinimide,NHS)を30mlのPBSに分散して常温で攪拌したまま12時間反応する。その後、生成物は、前記の洗浄及び乾燥過程を経る。
【0193】
気孔内部に、前のステップの反応液が残っているため、気孔内部は改質されない。
【0194】
4)気孔内部の洗浄
表面改質された粒子粉末800mgを2M HCl/エタノール40mlに溶かし、12時間強く撹拌下で還流した。
【0195】
その後、冷却された反応液を10分間8,000rpmで遠心分離して上澄み液を除去し、25℃で10分間8,000rpmで遠心分離し、エタノールおよび蒸留水で交互に5回洗浄した。
【0196】
その後、70℃のオーブンで乾燥して粉末状の多孔性シリカ粒子を得た。
【0197】
5)気孔内部の改質
i)後述する実施例1-2-(2)-1)の方法と同様にして気孔内部にプロピル基を導入した。
ii)後述する実施例1-2-(2)-2)の方法と同様にして気孔内部にオクチル基を導入した。
【0198】
2.多孔性シリカ粒子の表面改質
(1)陽電荷での帯電
1)粒径300nmの粒子
実施例1-1-(4)の多孔性シリカ粒子を(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン((3-Aminopropyl)triethoxysilane,APTES)と反応させて、陽電荷に帯電させた。
【0199】
具体的には、100mL丸底フラスコにおいて、100mgの多孔性シリカ粒子を10mLのトルエンに洗浄器(bath sonicator)で分散させた。その後、1mLのAPTESを添加し、400rpmで攪拌し、130℃で攪拌して12時間反応させた。
【0200】
反応後、常温まで徐々に冷却し、10分間8,000rpmで遠心分離して上澄み液を除去し、25℃で10分間8,000rpmで遠心分離し、エタノールおよび蒸留水で交互に5回洗浄した。
【0201】
その後、70℃のオーブンで乾燥し、表面および気孔内部にアミノ基を有する粉末状の多孔性シリカ粒子を得た。
【0202】
2)粒径200nmの粒子
i)実施例1-1-(1)の多孔性シリカ粒子を(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン((3-Aminopropyl)triethoxysilane,APTES)と反応させて陽電荷に帯電させ、APTESを0.4ml添加し、反応時間を3時間とした以外は、実施例1-2-(1)-1)の方法と同様にして改質した。
ii)実施例1-1-(9)の多孔性シリカ粒子を(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン((3-Aminopropyl)triethoxysilane,APTES)と反応させて陽電荷に帯電させ、それ以外は、実施例1-2-(1)-1)の方法と同様にして改質した。
iii)実施例1-1-(10)の多孔性シリカ粒子を(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン((3-Aminopropyl)triethoxysilane,APTES)と反応させて陽電荷に帯電させ、それ以外は、実施例1-2-(1)-1)の方法と同様にして改質した。
【0203】
(2)疎水性基の導入
1)プロピル基
前記実施例1-1-(1)の多孔性シリカ粒子をトリメトキシ(プロピル)シラン(Trimethoxy(propyl)silane)と反応させて、表面および気孔内部にプロピル基を導入し、APTESの代わりにトリメトキシ(プロピル)シラン(Trimethoxy(propyl)silane)を0.35ml添加し、12時間反応させた以外は、前記実施例1-2-(1)の方法と同様にして改質した。
【0204】
2)オクチル基
前記実施例1-1-(1)の多孔性シリカ粒子をトリメトキシ-n-オクチルシラン(Trimethoxy-n-octylsilane)と反応させて、表面および気孔内部にプロピル基を導入し、APTESの代わりにトリメトキシ-n-オクチルシラン(Trimethoxy-n-octylsilane)を0.5ml添加し、12時間反応させた以外は、前記実施例1-2-(1)の方法と同様にして改質した。
【0205】
(3)陰電荷での帯電
1)カルボキシル基
前記実施例1-1-(1)の多孔性シリカ粒子を無水コハク酸(succinic anhydride)と反応させて陰電荷に帯電させ、トルエンの代わりにDMSO(ジメチルスルホキシド)を使用し、APTESの代わりに80mgの無水コハク酸(succinic anhydride)を添加して24時間常温で攪拌し反応させ、洗浄時に蒸留水の代わりにDMSOを使用した以外は、前記実施例1-2-(1)-1)の方法と同様にして改質した。
【0206】
2)チオール基
APTESの代わりにMPTESの1.1mLを使用した以外は、前記実施例1-2-(1)-1)の方法と同様にして改質した。
【0207】
3)スルホン酸基
前記実施例1-2-(3)-2)の多孔性シリカナノ粒子100mgを、1M硫酸水溶液1mLと30%過酸化水素水20mLに分散して常温で攪拌し、酸化反応を誘導してチオール基をスルホン酸基に酸化した。その後、実施例1-2-(1)-1)の方法と同様にして洗浄および乾燥した。
【0208】
4)メチルホスホネート基
APTESの代わりにTHMPの3mlを、トルエンの代わりに蒸留水の10mlを使用し、塩酸溶液1.5mlを加えた以外は、前記実施例1-2-(1)-1)の方法と同様にして改質した。
【0209】
3.粒子の形成及び気孔拡張の確認
実施例1-1-(1)~(3)の粒子の小気孔粒子、製造された多孔性シリカ粒子を顕微鏡で観察し、小気孔粒子が均一に生成されているか、気孔が十分に拡張されて多孔性シリカ粒子が均一に形成されているかを確認した(
図1~4)。
【0210】
図1は、実施例1-1-(1)の多孔性シリカ粒子の写真、
図2は、実施例1-1-(2)の多孔性シリカ粒子の写真であり、気孔が十分に拡張された球状の多孔性シリカ粒子が均一に生成されていることを確認することができる。
【0211】
図3は、実施例1-1-(1)の小気孔粒子の写真、
図4は、実施例1-1-(1)と1-1-(3)の小気孔粒子の比較写真であり、球状の小気孔粒子が均一に生成されたことを確認することができる。
【0212】
4.BET表面積及び気孔の体積の算出
実施例1-1-(1)の小気孔粒子、実施例1-1-(1)、(7)、(8)、(10)の多孔性シリカ粒子の表面積と気孔体積を算出した。表面積はBrunauer-Emmett-Teller(BET)の方法により算出し、気孔サイズの分布はBarrett-Joyner-Halenda(BJH)方法により算出した。
【0213】
前記各粒子の顕微鏡写真を
図5に示し、算出結果を下記表1に示す。
【0214】
【0215】
5.生分解性の確認
実施例1-1-(1)の多孔性シリカ粒子の生分解性を確認するために、37℃、SBF(pH7.4)における生分解の程度を0時間、120時間、360時間に顕微鏡で観察し、それを
図6に示す。
【0216】
これを参照すると、多孔性シリカ粒子が生分解され、360時間経過後はほぼすべてが分解されたことを確認することができる。
【0217】
6.吸光度比の測定
時間別に下記数式1による吸光度比を測定した。
【0218】
[数式1]
At/A0
(式中、A0は、前記多孔性シリカ粒子1mg/mlの懸濁液5mlを直径50kDaの気孔を有する円筒状の透過膜に入れて測定した多孔性シリカ粒子の吸光度であり、
前記透過膜の外部には、前記透過膜と接し、前記懸濁液と同じ溶媒15mlが位置し、前記透過膜の内外部は、37℃で60rpmで水平攪拌され、
Atは、前記A0の測定時からt時間経過後に測定した多孔性シリカ粒子の吸光度である。)
【0219】
具体的には、多孔性シリカ粒子粉末5mgをSBF(pH7.4)5mlに溶かした。その後、5mlの多孔性シリカ粒子溶液を、
図7に示す直径50kDaの気孔を有する透過膜に入れた。外部膜に15mlのSBFを添加し、外部膜のSBFは12時間ごとに入れ替えた。多孔性シリカ粒子の分解は、37℃で60rpmで水平攪拌して行った。
【0220】
その後、紫外・可視分光法(UV-vis spectroscopy)によって吸光度を測定し、λ=640nmで分析した。
【0221】
(1)吸光度比の測定
実施例1-1-(1)の多孔性シリカ粒子の吸光度比を前記方法に従って測定し、その結果を
図8に示す。
これを参照すると、吸光度比が1/2となるtは約58時間であり、非常にゆっくりと分解されることが確認できた。
【0222】
(2)粒径別
実施例1-1-(1)、(5)、(6)の多孔性シリカ粒子の吸光度を前記数式1により測定し、その結果を
図9に示す(懸濁液と溶媒としては、SBFを使用した。)。
これを参照すると、粒径の増加によってtが減少することが分かる。
【0223】
(3)気孔の平均直径別
実施例1-1-(1)、(9)の多孔性シリカ粒子、そしてコントロールとして実施例1-1-(1)の小気孔多孔性シリカ粒子の吸光度を前記数式1により測定し、その結果を
図10に示す(懸濁液と溶媒としては、SBFを使用した。)。
これを参照すると、実施例の多孔性シリカ粒子は、コントロールに比べてtが非常に大きいことが確認できる。
【0224】
(4)pH別
実施例1-1-(4)の多孔性シリカ粒子のpH別吸光度を測定した。吸光度は、SBFで、そしてpH2、5及び7.4のTrisで測定し、その結果を
図11に示す。
これを参照すると、pH別にtの差はあるが、いずれも吸光度の比が1/2となるtは24以上であった。
【0225】
(5)帯電
実施例1-2-(1)-1)の多孔性シリカ粒子の吸光度を測定し、その結果を
図12に示す(懸濁液と溶媒としては、トリス(Tris,pH7.4)を使用した。)。
これを参照すると、陽電荷に帯電した粒子も吸光度の比が1/2となるtは24以上であった。
【0226】
7.上皮または内皮細胞成長促進能を有するポリペプチド;若しくはその活性または発現を増加させる物質の担持
(1)ラクトフェリンタンパク質としては、配列番号1の配列からなるタンパク質を用いた。粒子としては、表面にメチルホスホネート基が導入された実施例1-2-(3)-4)の粒子を使用した。
【0227】
1xPBSの200μL中に前記多孔性シリカ粒子の粉末40μgと前記タンパク質4μgを混合した後、室温で1時間インキュベートした。後述するラクトフェリンタンパク質の担持には、前記と同じ粒子を使用した。
【0228】
(2)プラスミドDNAは、pCMVベクターからプロモーター部分を増幅し、KanaR2-ColE1-CMVプロモーター部分を準備した。LTFを暗号化する部分はhuman cdna libraryから、PCRにより増幅して約3kb程度の長さのLTF ORFを準備した(pLEM-hLTF-101、配列番号2)。
【0229】
粒子としては、表面および気孔内部にアミノ基が導入された実施例1-2-(1)-1)の粒子を使用した。
【0230】
前記多孔性シリカ粒子10μgと0.25μgの前記LTF ORFを1xPBSの条件で混合した後、常温で30分間置いて積載した。後述するラクトフェリンプラスミドの担持には、前記と同じ粒子を使用した。
【0231】
実施例2.傷治療効果の確認
(1)VEGF mRNAの発現量の評価
1)ラクトフェリンタンパク質の使用
C2C12細胞を12-ウェルプレートに5.0×104細胞だけシード(seeding)した後、24時間培養した。その後、無血清(Serum-free)培地で12時間pre-starvation処理を行った。0.1%FBS含有培地に入れ替えた後、200μg/mlのLTFタンパク質を細胞に処理した。時間に応じて(0、1、2、3、6、12、24、48時間)細胞をトリゾール(trizol)処理してmRNAを抽出し、PCRによりVEGF mRNAの発現量を確認した。
【0232】
2)ラクトフェリンプラスミドを担持した粒子の使用
C2C12細胞を12-ウェルプレートに5.0×104細胞だけシード(seeding)した後、24時間培養した。その後、無血清(Serum-free)培地で12時間pre-starvation処理を行った。LTFプラスミドDNAの1μgをDDV20μgに担持したLTF pDNA@DDV複合体を無血清(Serum-free)条件で細胞に4時間処理した。
【0233】
その後、1xPBSで細胞を2回洗浄し、培地を0.1%FBS含有培地に入れ替えた後、時間順に(0、4、8、12、24、48時間)細胞をトリゾール(trizol)処理してmRNAを抽出し、PCRによりLTF、VEGF mRNAの発現量を確認した。
【0234】
その結果、Recombinant LTF(rLTF、ラクトフェリンタンパク質)をC2C12細胞株に処理したときは、VEGF mRNAの発現量が6時間後に高いレベルで発現誘導されたが、その後に徐々に減少する様相を見せた。
【0235】
しかし、DDVに担持したLTF plasmid DNA(pLTF)をC2C12細胞株に形質感染したときは、VEGF mRNAの発現量が4時間後から増加する様相を見せ、48時間後も継続して高いレベルで発現誘導される様相を見せた(
図13)。
【0236】
(2)細胞増殖誘導の評価
HEK-293T細胞を12-ウェルプレートに5.0×104細胞だけシード(seeding)した後、24時間培養した。LTF pDNA 1.0μgをDDV 20.0μgに担持してLTF pDNA@DDV複合体を作成した後、無血清(Serum-free)条件で細胞に4時間処理した(mockは、LTF pDNA 1.0μgのみを細胞に処理した。)。その後、1xPBSで細胞を1回洗浄し、培地を1%FBS含有培地に入れ替えた後、48時間培養した。48時間後、HEK-294T細胞を培養していた培地を回収した。
【0237】
HT-1080細胞を96-ウェルプレートに2.0×103細胞だけシード(seeding)した後、24時間培養した。その後、無血清(Serum-free)培地で12時間pre-starvation処理を行った。細胞をそれぞれ無血清(Serum-free)培地、10%FBS培地、1%FBS培地+Mock HEK-294T細胞から回収した培地、1%FBS培地+50%LTF pDNA DDVを処理したHEK-293T細胞から回収した培地、25%LTF pDNA DDVを処理したHEK-293T細胞から回収した培地を処理する。
【0238】
それぞれ24、48、72、96時間経過した後の細胞の増殖率を、10%CCK-8溶液を細胞に処理し、1時間インキュベートした後、450nmの波長での吸光により比較する。
【0239】
その結果、1%FBSが添加された培養でHT-1080細胞株は増殖率が非常に低かったが、条件培地(conditioned medium)を添加したHT-1080細胞株は、10%FBSを添加した培養液の条件と類似した形で細胞増殖が誘導された(
図14)。
【0240】
図14のバーグラフは、左から順に24、48、72、96時間を示す。
【0241】
(3)細胞増殖の誘導および血管形成誘導の評価
(1)HT-1080細胞
DDVに担持したラクトフェリンタンパク質をHT-1080細胞に処理し、細胞の増殖程度を確認した。
【0242】
HT-1080細胞を96-ウェルプレートに3.0×103細胞だけシード(seeding)した後、24時間培養した。細胞を1xPBSで1回洗浄した後、それぞれFBS-free培地、10%FBS培地、1%FBS+ラクトフェリンタンパク質を担持したDDV(0、12.5、25、50、100、200、400μg/ml)、 FBS-free培地+ラクトフェリンタンパク質を担持したDDV(0、12.5、25、50、100、200、400μg/ml)をそれぞれ細胞に処理し、48時間培養した。48時間後、1xPBSで細胞を1回洗浄した後、10%CCK-8溶液を処理し、1時間培養した。その後、450nmの波長での吸光を確認し、細胞の増殖程度を確認した。
【0243】
(2)PAM-212細胞
DDVに担持したRecombinant LTF proteinをPAM-212細胞に処理し、細胞の増殖程度を確認した。
【0244】
PAM-212細胞を96-ウェルプレートに2.0×103細胞だけシード(seeding)した後、24時間培養した。細胞を1xPBSで1回洗浄した後、それぞれFBS-free培地、10%FBS、1%FBS+ラクトフェリンタンパク質(100μg/ml)、1%FBS+ラクトフェリンタンパク質を担持したDDV(100μg/ml)、1%FBSを細胞に処理した。それぞれ48、96時間に1xPBSで細胞を1回洗浄し、10%CCK-8溶液を細胞に処理した後、1時間培養した。そして、450nmの波長での吸光を確認し、細胞の増殖程度を確認した。
【0245】
(3)HUVEC細胞
DDVに担持したVEGFタンパク質、ラクトフェリンタンパク質をHUVEC細胞に処理し、細胞が血管形態に誘導される効果を確認した。
【0246】
HUVEC細胞を96-ウェルプレートに1.5×104細胞だけシードした後、ビヒクル(vechicle)、VEFGタンパク質を担持したDDV(40ng/ml、ラクトフェリンタンパク質を担持した粒子と同じ粒子)、ラクトフェリンタンパク質を担持したDDV(20μg/ml)をそれぞれ細胞に処理し、4時間培養した。4時間後、細胞が血管形態のような網目構造に誘導された程度を顕微鏡で確認した。
【0247】
その結果、ラクトフェリンタンパク質をDDVに担持して送達したとき、細胞増殖効果が優れていることを確認することができる(
図15)。
【0248】
(4)創傷治癒効果の確認
1)創傷治癒の動物モデルの製造
実験動物(ネズミ目、C57BL/6)の背中を除毛し、生体検査用パンチ(直径5 mm)で創傷を誘発した。
【0249】
その後、創傷周辺の皮膚に準備した組成物(50μl)を注射し、観察と管理のために傷周辺に円形のシリコンカバー(外径:30mm、内径:5mm)を覆って外科手術用糸で縫合した。創傷部の感染を防止するために、テガダームフィルムを創傷部に貼り付け、創傷部を圧迫包帯で包んだ。
【0250】
2)効果の確認
i)創傷を誘導した実験動物に1xPBS、ラクトフェリンタンパク質を担持したDDV(500μg)、LTF pDNA(25μg)、DDV(500μg)、LTF pDNAを担持したDDV(25μg)を創傷周辺の皮膚に注射した。傷は2日に一回ずつ観察し、傷の修復程度を確認した。
【0251】
ラクトフェリンを担持したDDVの場合には創傷治癒効果が増加した。中でも、pLTFを担持したDDVの創傷治癒効果が最も優れていた(
図16)。
【0252】
ii)創傷を誘導した実験動物に1xPBS、ラクトフェリンタンパク質を担持したDDV(500μg)、LTF pDNA(25μg)、DDV(500μg)、LTF pDNAを担持したDDV(25μg)、EGF pDNAを担持したDDV(25μg)、HGF pDNAを担持したDDV(25μg)を創傷周辺の皮膚に注射した。傷は2日に一回ずつ観察し、傷の修復程度を確認した。傷の修復程度を画像解析プログラム(Image J)を用いて、(撮影当日の創傷のサイズ/初期の創傷のサイズ)×100(%)により創傷の回復程度を比較した。
【0253】
ラクトフェリンを担持したDDVの場合には創傷治癒効果が増加した。中でも、pLTFを担持したDDVの創傷治癒効果が最も優れていた(
図17)。
【0254】
iii)創傷を誘導した実験動物に1xPBS、ラクトフェリンタンパク質を担持したDDV(1mg)を創傷周辺の皮膚に注射した。傷は2日に一回ずつ観察し、傷の修復程度を確認した。傷の修復程度を画像解析プログラム(Image J)を用いて、(撮影当日の創傷のサイズ/初期の創傷のサイズ)×100(%)により創傷の回復程度を比較した。
【0255】
ラクトフェリンを担持したDDVの場合には、創傷治癒効果が増加した(
図18)。
【0256】
iv)組織病理学的な検査
ラクトフェリンタンパク質、ラクトフェリンpDNAを担持したDDVを創傷治癒の動物モデルの患部周辺に皮内注射し、14日後に創傷の組織病理結果から創傷治療効果の増大を確認した。
【0257】
実験を行った動物を安楽死した後、創傷部の皮膚を回収し、4%PFAで組織を固定した。組織をfrozen blockにし、7mmの厚さに切片して染色を行った後、ガラススライドに乗せて顕微鏡で観察した。
【0258】
その結果、ラクトフェリンタンパク質またはpDNAを担持したDDVの場合に創傷治癒効果が増加し、特に、pDNAを担持したDDVの効果が優れていた(
図19)。
【配列表】