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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】電子カルテシステムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 15/00 20180101AFI20220913BHJP
【FI】
G16H15/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021533757
(86)(22)【出願日】2020-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2020014650
(87)【国際公開番号】W WO2021199197
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2021-07-08
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-31
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515158272
【氏名又は名称】株式会社PECO
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 純
【合議体】
【審判長】高瀬 勤
【審判官】相崎 裕恒
【審判官】古川 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-146029(JP,A)
【文献】特開2003-93350(JP,A)
【文献】特開2008-276459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H10/00-80/00,G06Q50/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一又は複数のユーザ端末にネットワークを介して接続された電子カルテサーバを備え、動物の現病歴を記録するための電子カルテシステムであって、
前記ユーザ端末は、前記動物の現病歴を聴取する獣医師により入力操作されるものであり、
前記電子カルテサーバは、
前記ネットワークを介して前記ユーザ端末の表示部に、前記動物の体調および/または食欲に関する項目を含む現病歴の聴取項目ごとに、数値による尺度で聴取結果を入力するための数値尺度オブジェクトと、過去の聴取結果と現在の聴取結果との比較結果を入力するための比較オブジェクトとを表示するオブジェクト表示制御部を備え、
前記オブジェクト表示制御部は、前記数値尺度オブジェクト及び前記比較オブジェクトに対する前記獣医師による入力操作により得られる入力情報に基づいて前記オブジェクトの表示態様を変更させ、
前記聴取結果を入力するための前記数値尺度オブジェクト及び前記比較オブジェクトに対応する前記聴取項目には含まれていない聴取項目に関する聴取結果を入力するための追加入力フォームを表示するフォーム表示制御部と、
前記追加入力フォームへの入力された入力情報から、前記追加入力フォームに入力すべき内容として適切と考えられる情報を提示するサジェスト表示制御部と、
単語に紐付く病状及び前記病状の説明を記憶するデータベースとをさらに備え、
前記サジェスト表示制御部は、前記追加入力フォームに入力された単語に対応する前記病状及び前記入力された単語を含む前記病状の説明を提示する、
電子カルテシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の電子カルテシステムであって、
過去の前記現病歴の聴取結果の履歴を前記ユーザ端末に表示する履歴情報表示制御部と、
表示された前記現病歴の聴取結果の履歴のうち、一の過去の聴取結果を取得する履歴情報取得部と、を備え、
前記オブジェクト表示制御部は、前記ユーザ端末に表示されている前記数値尺度オブジェクト及び前記比較オブジェクトの態様を、取得した前記一の過去の聴取結果に対応する態様に変更する、
電子カルテシステム。
【請求項3】
請求項2に記載の電子カルテシステムであって、
前記履歴情報表示制御部は複数の過去の前記現病歴の聴取結果を含む情報を表示し、
前記履歴情報取得部は、前記複数の聴取結果の表示に対する入力操作により選択された一の聴取結果を取得する、
電子カルテシステム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電子カルテシステムであって、
前記オブジェクト表示制御部は、前記聴取結果により示される状況の開始時期に関する情報を入力可能な開始時期入力フォームの表示を制御する、
電子カルテシステム。
【請求項5】
コンピュータを、動物の現病歴を記録するための電子カルテシステムとして機能させるためのプログラムであって、
前記電子カルテシステムは、一又は複数のユーザ端末にネットワークを介して接続された電子カルテサーバを備え、
前記ユーザ端末は、前記動物の現病歴を聴取する獣医師により入力操作されるものであり、
前記電子カルテサーバは、
前記ネットワークを介して前記ユーザ端末の表示部に、前記動物の体調および/または食欲に関する項目を含む現病歴の聴取項目ごとに、数値による尺度で聴取結果を入力するための数値尺度オブジェクトと、過去の聴取結果と現在の聴取結果との比較結果を入力するための比較オブジェクトとを表示するオブジェクト表示制御部を備え、
前記コンピュータを、
前記オブジェクト表示制御部として機能させ、
前記オブジェクト表示制御部は、前記オブジェクトに対する前記獣医師による入力操作により得られる入力情報に基づいて前記オブジェクトの表示態様を変更させ
前記聴取結果を入力するための前記数値尺度オブジェクト及び前記比較オブジェクトに対応する前記聴取項目には含まれていない聴取項目に関する聴取結果を入力するための追加入力フォームを表示させ、
前記追加入力フォームへの入力された入力情報から、前記追加入力フォームに入力すべき内容として適切と考えられる情報を提示させ、
単語に紐付く病状及び前記病状の説明を記憶させ、
前記情報を提示させるときに、前記追加入力フォームに入力された単語に対応する前記病状及び前記入力された単語を含む前記病状の説明を提示させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子カルテシステムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
患者情報を病院内または複数の病院のグループ内で共有するために、病院において、電子カルテが幅広く使用されるようになっている。例えば、特許文献1には、電子カルテにおける入力支援に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-21216号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
動物病院の場合、診察の対象は動物であり、動物から直接的に現病歴を聴取することが困難である。そのため、人を診察する病院とは異なる態様での聴取結果の記録が求められる。
【0005】
そこで、本開示は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、動物の現病歴の記録を容易に行うことが可能な電子カルテシステムおよびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によれば、動物の現病歴を記録するための電子カルテシステムであって、端末の表示部に、現病歴の聴取項目ごとに聴取結果を入力するためのオブジェクトを表示するオブジェクト表示制御部を備え、前記オブジェクト表示制御部は、前記オブジェクトに対する入力操作により得られる入力情報に基づいて前記オブジェクトの表示態様を変更させる、電子カルテシステムが提供される。
【0007】
また、本開示によれば、コンピュータを、動物の現病歴を記録するための電子カルテシステムとして機能させるためのプログラムであって、前記コンピュータを、端末の表示部に、現病歴の聴取項目ごとに聴取結果を入力するためのオブジェクトを表示するオブジェクト表示制御部、として機能させ、前記オブジェクト表示制御部は、前記オブジェクトに対する入力操作により得られる入力情報に基づいて前記オブジェクトの表示態様を変更させる、プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、動物の現病歴の記録を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施形態に係る電子カルテシステム1の構成例を示す図である。
図2】同実施形態に係るサーバ10を実現するコンピュータのハードウェア構成例を示す図である。
図3】同実施形態に係るサーバ10のソフトウェア構成例を示す図である。
図4】同実施形態に係るオブジェクト表示制御部102により表示が制御されるカルテ画面の一例を示す図である。
図5】同実施形態に係る履歴情報表示画面1050の一例を示す図である。
図6】同実施形態に係る電子カルテシステム1における一連の制御に係るフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0011】
図1は、本開示の一実施形態に係る電子カルテシステム1の構成例を示す図である。図示するように、本実施形態に係る電子カルテシステム1は、電子カルテサーバ10(以下、サーバ10と称する)と、ユーザ端末20とを備える。サーバ10と、ユーザ端末20とは、ネットワークNWを介して通信可能に接続されている。なお、本構成は一例であり、ある構成が他の構成を兼ね備えていたり、他の構成が含まれていたりしてもよい。
【0012】
本実施形態においてネットワークNWはインターネットを想定している。ネットワークNWは、例えば、公衆電話回線網、携帯電話回線網、無線通信網、イーサネット(登録商標)などにより構築される。
【0013】
サーバ10は、例えば、動物病院において受診者である動物C1のカルテの管理およびカルテに関する処理を行うためのコンピュータである。かかるサーバ10は、例えば、動物病院により直接的に管理されてもよいし、動物病院を経営する組織や、少なくとも一の動物病院にかかる電子カルテシステム1を提供するサービサーにより管理されてもよい。
【0014】
また、例えば、サーバ10は、ワークステーションまたはパーソナルコンピュータのような汎用コンピュータとしてもよいし、或いはクラウドコンピューティングによって論理的に実現されてもよい。
【0015】
ユーザ端末20は、例えば、動物病院の診察室に設置される端末である。かかる端末は、ユーザである獣医R1により操作され得る。例えば、ユーザ端末20は、スマートフォン、タブレットコンピュータまたはパーソナルコンピュータ等であり得る。
【0016】
本実施形態に係る電子カルテシステム1の概要について説明する。獣医R1は、ユーザ端末20を介して、ペットである動物C1のカルテの閲覧や入力を行う。ユーザ端末20は、サーバ10から動物C1に関するカルテ情報を取得する。獣医R1は、かかる画面に対する操作を行って、動物C1の現病歴等に関する状態について入力を行う。
【0017】
かかる現病歴は、動物C1が現在かかっている病気(主訴)の状態や経過に関する情報である。現病歴は、例えば、動物C1の体調、食欲といった情報や、動物C1の尿、吐瀉物または便等から得られる情報を含む。診察対象が動物であると、現病歴は身体所見のような客観的な情報ではないため、これらの現病歴について直接的に動物C1から情報を取得することは困難である。獣医R1はかかる状況においても、動物C1の現病歴をできるだけ正確に把握し、かつ経過を観察することが求められる。
【0018】
そこで、本実施形態に係る電子カルテシステム1によれば、動物C1のカルテ情報の表示において、現病歴の聴取項目ごとに聴取結果を示すオブジェクトが表示され、獣医R1の入力によりその表示態様が変化する。かかる構成とすることで、オブジェクトの表示を獣医R1の入力(例えばタッチパネルやマウスによるタッチ、クリック入力)で容易にその結果を入力することができる。このようなオブジェクトをテンプレートのように予め決められた態様で表示され、その態様を変えるような入力方式とすることで、現病歴に関する聴取における入力内容のブレが少なくなる。獣医R1にとっても入力が容易となり、また、複数の獣医の間での情報の共有が容易となる。また、特に、体調や食欲といった主観的な情報について、オブジェクトを数値尺度により示すものとすることで、動物C1の体調や食欲の経過をより正確に把握したり共有することが可能となる。以下、本実施形態の詳細について説明する。
【0019】
図2は、本実施形態に係るサーバ10を実現するコンピュータのハードウェア構成例を示す図である。コンピュータは、少なくとも、制御部11、メモリ12、ストレージ13、通信部14および入出力部15等を備える。これらはバス16を通じて相互に電気的に接続される。
【0020】
制御部11は、サーバ10全体の動作を制御し、各要素間におけるデータの送受信の制御、及びアプリケーションの実行及び認証処理に必要な情報処理等を行う演算装置である。例えば制御部11は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、ストレージ13に格納されメモリ12に展開されたプログラム等を実行して各情報処理を実施する。
【0021】
メモリ12は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性記憶装置で構成される主記憶と、フラッシュメモリまたはHDD(Hard Disc Drive)等の不揮発性記憶装置で構成される補助記憶と、を含む。メモリ12は、制御部11のワークエリア等として使用され、また、サーバ10の起動時に実行されるBIOS(Basic Input/Output System)、及び各種設定情報等を格納する。
【0022】
ストレージ13は、アプリケーション・プログラム等の各種プログラムを格納する。各処理に用いられるデータを格納したデータベースがストレージ13に構築されていてもよい。
【0023】
通信部14は、サーバ10をネットワークに接続する。通信部14は、例えば、有線LAN(Local Area Network)、無線LAN、Wi-Fi(Wireless Fidelity、登録商標)、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)、近距離または非接触通信等の方式で、外部機器と直接またはネットワークアクセスポイントを介して通信する。
【0024】
入出力部15は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等の情報入力機器、及びディスプレイ等の出力機器である。
【0025】
バス16は、上記各要素に共通に接続され、例えば、アドレス信号、データ信号及び各種制御信号を伝達する。
【0026】
本実施形態に係るユーザ端末20を実現するコンピュータやスマートフォン等の端末のハードウェア構成は、図2に示すサーバ10のハードウェア構成例と同様であるため、説明を省略する。
【0027】
図3は、本実施形態に係るサーバ10のソフトウェア構成例を示す図である。サーバ10は、カルテ取得部101、オブジェクト表示制御部102、入力取得部103、履歴情報表示制御部104、履歴情報取得部105、フォーム表示制御部106、サジェスト表示制御部107およびカルテDB108を備える。カルテ取得部101、オブジェクト表示制御部102、入力取得部103、履歴情報表示制御部104、履歴情報取得部105、フォーム表示制御部106およびサジェスト表示制御部107は、制御部11がストレージ13に記憶されているプログラムをメモリ12に読み出して実行することにより実現され得る。また、カルテDB108は、メモリ12およびストレージ13が提供する記憶領域の一部として実現され得る。なお、カルテDB108は、サーバ10以外の一または複数のサーバが提供する外部の記憶領域の一部として実現されてもよい。
【0028】
カルテ取得部101は、カルテDB(データベース)108に記録されている動物のカルテ情報をカルテDB(データベース)から取得する機能を有する。例えば、ユーザ端末20において獣医R1が診察対象の動物のカルテを取り出す場合に、カルテ取得部101は、ユーザ端末20からの要求に基づいて、診察対象の動物のカルテ情報を取得する。
【0029】
オブジェクト表示制御部102は、ユーザ端末20の表示部に、現病歴の聴取項目ごとに聴取結果を入力するためのオブジェクトを表示する機能を有する。以下、オブジェクト表示制御部102の機能について、カルテ画面の一例を参照しながら説明する。
【0030】
図4は、本実施形態に係るオブジェクト表示制御部102により表示が制御されるカルテ画面の一例を示す図である。図4に示すように、ユーザ端末20の表示部25には、カルテ画面1000が表示されている。かかるカルテ画面1000は、オブジェクト表示制御部102により表示が制御されるものであってもよいし、制御部11により実現される他の機能部により表示が制御されるものであってもよい。
【0031】
カルテ画面1000は、動物情報表示領域1010と、聴取結果入力領域1020と、追加情報入力領域1030と、履歴情報表示領域1040とを含む。動物情報表示領域1010は、例えば、診察の対象である動物の写真、動物の名前、動物種、年齢、該動物に関する特殊情報および診察のステータスに関する情報を表示し得る。特殊情報は、例えば、動物の診察における注意事項や、動物の飼主に関する情報を含む。
【0032】
聴取結果入力領域1020は、動物の現病歴の聴取項目、聴取結果に関する情報を表示する領域である。かかる聴取項目は、予め定められ得る。例えば、聴取項目は、体調(Vig)、食欲(App)、尿(Ur)、便(Fec)、嘔吐(Vom)、下痢(Dia)である。かかる聴取項目は、例えば、動物種によって異なっていてもよいし、共通であってもよい。
【0033】
聴取結果入力領域1020は、数値尺度入力領域1021と、結果選択領域1022と、結果比較入力領域1023と、開始時期入力領域1024とを含む。数値尺度入力領域1021は、体調および/または食欲に関する聴取項目の聴取結果を数値による尺度で入力するための数値尺度オブジェクトを含む。図4に示す例では、数値尺度オブジェクトは、体調および食欲のそれぞれに関して、0%、20%、40%、60%、80%および100%のいずれかから選択させることが可能なオブジェクトである。
【0034】
選択されたオブジェクトは、選択されていないオブジェクトとは異なる態様により表示される。例えば、選択されたオブジェクトは、選択前のオブジェクトを暗転させた態様として表示されてもよい。なお、図4に示す例では、かかる数値尺度オブジェクトは離散的な尺度を示すオブジェクトであったが、本技術はかかる例に限定されない。例えば、数値尺度オブジェクトは、0%~100%の間で連続的な尺度として選択可能なバーの態様により表示されるものであってもよい。
【0035】
かかる数値尺度オブジェクトにより得られる聴取結果は、あくまで獣医からみた主観的な要素を含むものではあるが、現病歴の経過を定量的に観察することにおいて重要である。特に、診察対象が動物である場合、動物自身が前回の診察時からの変化を直接的に示すことはできない。そのため、このような変化を獣医の目線で定量的に記録するインタフェースを用いることで、動物の体調や食欲の状況の経過をより正確に評価することが可能となる。
【0036】
結果選択領域1022は、尿、便、嘔吐または下痢の有無や、具体的な主訴の有無を入力するためのオブジェクトを含む。例えば、図4に示す「-」「+」のオブジェクトは、各項目の症状の有無または診察の有無を入力するためのオブジェクトである。また、聴取項目「尿」に対応する「血尿」「多尿」「頻尿」の各々の左側に設けられるチェックマークのオブジェクトは、聴取項目の具体的な主訴の有無を入力するためのオブジェクトである。選択されたオブジェクトは、選択されていないオブジェクトとは異なる態様により表示される。
【0037】
結果比較入力領域1023は、過去の聴取結果と現在の聴取結果との比較結果を入力するための比較オブジェクトを含む。例えば、図4に示す「↑」「→」「↓」のオブジェクトは、前回の診察時における各聴取項目の聴取結果と比較して、病状が改善したか、変わらないか、悪化したかを入力するためのオブジェクトである。各オブジェクトのいずれかを選択することにより、前回との比較を記録することができる。選択されたオブジェクトは、選択されていないオブジェクトとは異なる態様により表示される。
【0038】
開始時期入力領域1024は、聴取結果により示される状況の開始時期に関する情報を入力可能な開始時期入力フォームを含む。例えば図4に示す「2週間前」「2ヶ月以上前」のテキストは、各聴取結果により示される状況がいつから開始していたかを示す開始時期を入力することにより表示されるテキストである。このテキストは、獣医のユーザ端末20に対する操作により取得される。かかるテキストは、例えば、フリーフォームにより入力されるものであってもよいし、複数の選択肢から選択するものであってもよいし、カレンダーの態様で表示されるオブジェクトから開始時期を示す日にちを選択することにより入力されるものであってもよい。
【0039】
追加情報入力領域1030は、聴取結果入力領域1020において規定されている聴取項目以外の項目に関する聴取結果について入力するための領域である。例えば、図4に示すように、追加情報入力領域30には、「軟便」「しっぽを追うような動作をする」というように、聴取結果入力領域1020では入力ができない内容を追記した結果が表示されている。
【0040】
追加情報入力領域1030は、聴取結果を入力するためのオブジェクトに対応する聴取項目には含まれていない聴取項目に関する聴取結果を入力するための追加入力フォーム1031を含む。すなわち、追加入力フォーム1031は、聴取結果入力領域1020において規定されている聴取項目以外の項目に関する聴取結果について入力するためのフォームである。追加入力フォーム1031は、フォーム表示制御部106により表示される。
【0041】
かかる追加入力フォーム1031においては、入力サジェスト機能が付与されてもよい。例えば、追加入力フォーム1031に情報が入力される際に、その入力情報から、追加入力フォーム1031に入力すべき内容として適切と考えられる情報を提示するサジェスト表示機能が設けられていてもよい。かかるサジェスト表示機能は、サジェスト表示制御部107により実現されてもよい。
【0042】
具体的には、獣医が聴取結果として追加入力フォーム1031に「自身の身体の毛をむしる」という内容を記入したい場合に、追加入力フォーム1031に「毛」と入力する(つまり、入力情報が「毛」というテキスト情報である)とする。この場合、サジェスト表示制御部107は「毛」というワードに基づいて、「自身の身体の毛をむしる」という内容が入力すべき内容が適切と考えられるとして、かかる情報をユーザ端末20に提示する。提示態様は、例えば、追加入力フォーム1031の直下に表示する態様であってもよい。かかるサジェストの内容は、例えば、サーバ10のストレージ13等に格納されるサジェスト辞書データベースに記憶されるものであってもよい。すなわち、サジェストの内容は定型文であり得る。サジェストの内容を定型文とすることで、獣医による記入の揺れを防ぎ、現病歴の聴取結果に対する解釈の幅を抑えることができる。
【0043】
履歴情報表示領域1040は、過去の現病歴の聴取結果の履歴をユーザ端末20に表示するための履歴情報表示ボタンを含む。例えば、図4に示すように、「履歴から探す」と表示されている履歴情報表示ボタンをタッチしたりクリックしたりすると、過去の現病歴の聴取結果の履歴が表示される。かかる履歴は、例えば、カルテ画面1000とは別の画面がポップアップで表示されてもよい。
【0044】
図5は、本実施形態に係る履歴情報表示画面1050の一例を示す図である。図5に示すように、履歴情報表示画面1050は、第1の履歴情報表示領域1051と、第2の履歴情報表示領域1052とを含む。それぞれの表示領域には、いずれの履歴情報を使用するかを選ぶための選択ボタン1053、1054が含まれる。ここで「履歴情報を使用する」とは、現在の現病歴の聴取結果を入力する際に、履歴情報に表示されている一の過去の現病歴の聴取結果の情報を、現在の現病歴の聴取結果の入力情報としてカルテ画面1000に反映させることを意味する。例えば、第1の履歴情報表示領域1051に含まれる選択ボタン1053を選択する操作を行うと、第1の履歴情報表示領域1051に示されている2019年12月5日における現病歴の聴取結果を、コピー&ペーストのように、現在の現病歴の聴取結果を入力するための各オブジェクトの表示態様に反映させることができる。かかる履歴情報表示画面1050の表示は、例えば、本実施形態に係る履歴情報表示制御部104により行われる。なお、履歴情報には、現病歴に限らず、例えば、既往歴並びに過去の身体所見、診断、検査、処置/投薬、処方、入院および手術の少なくともいずれかの情報が含まれていてもよい。
【0045】
例えば、図5に示すように、履歴情報表示画面1050において複数の履歴情報(複数の過去の現病歴の聴取結果)が表示されている場合に、複数の聴取結果の表示(すなわち履歴情報表示画面1050)に対する入力操作(例えば選択ボタン1053、1054の選択)により選択された一の聴取結果が取得される。かかる聴取結果がカルテ画面1000に反映される。かかる過去の聴取結果の取得は、例えば、本実施形態に係る履歴情報取得部105により行われる。このように、過去の聴取結果のうち一の聴取結果を利用することで、入力操作が容易になる。また、かかる利用により、前回の聴取結果とを見比べながら現在の聴取結果を入力することとなるので、前回の聴取結果と比較しながら入力することで、より正確な現病歴の把握が可能となる。
【0046】
なお、図4に示すカルテ画面1000や、かかるカルテ画面1000に表示されているオブジェクトやフォームは、あくまでも一例にすぎない。オブジェクトの大きさ、形状、態様の変更に係る表示方法は、特に限定されない。
【0047】
以上、オブジェクト表示制御部102の機能について説明した。なお、以下では、入力取得部103以降の機能の説明を行うが、既に上述した機能については、説明を省略する。
【0048】
入力取得部103は、オブジェクト表示制御部102により表示が制御されるオブジェクトに対する入力や、各種フォームへの入力により得られる入力情報を取得する。入力情報は、例えば、キーボード、タッチパネルまたはマウス等のユーザ端末20に備えられる入力機器により生成され得る。オブジェクト表示制御部102は、かかる入力情報に基づいて、オブジェクトの態様を変更したり、フォームに入力された内容を更新したりする。
【0049】
履歴情報表示制御部104は、過去の現病歴の聴取結果の履歴をユーザ端末に表示する機能を有する。履歴情報表示制御部104は、例えば、カルテ画面1000の履歴情報表示領域に含まれる履歴情報表示ボタンがクリックされると、上述した履歴情報表示画面1050を表示する。
【0050】
履歴情報取得部105は、履歴情報表示画面1050に表示された現病歴の聴取結果の履歴のうち、一の過去の聴取結果を取得する機能を有する。例えば、履歴情報表示画面1050に複数の過去の聴取結果が表示されている場合、複数の聴取結果の表示に対する入力操作により選択された一の聴取結果を取得する。
【0051】
フォーム表示制御部106は、聴取結果を入力するためのオブジェクトに対応する聴取項目には含まれていない聴取項目に関する聴取結果を入力するための追加入力フォーム1031を表示する機能を有する。追加入力フォーム1031は、例えば、自由記入が可能なフリーフォームであってもよいし、既に病状等が記録されている辞書から選択する選択式フォームであってもよい。
【0052】
サジェスト表示制御部107は、追加入力フォーム1031への入力された入力情報から、追加入力フォーム1031に入力すべき内容として適切と考えられる情報を提示する機能を有する。サジェスト表示制御部107によるサジェスト機能は、例えば、追加入力フォーム1031がフリーフォームであっても、選択式フォームであっても、所定の単語を入力した際に、かかる単語に紐付く病状や、かかる単語を含む病状の説明に関する内容をサジェストするものであってよい。
【0053】
カルテDB108は、動物病院において登録されている診察対象の動物のカルテ情報を記憶するデータベースである。かかるカルテ情報は、例えば、図4および図5に示したような、動物に関する情報(例えば、動物の名前、動物種、年齢、動物の飼主等)と、動物の過去の現病歴に係る情報とを含みうる。なお、カルテ情報は、現病歴に係る情報の他に、既往歴、身体所見、診断、検査、処置/投薬、処方、入院および手術の少なくともいずれかに係る情報を含んでいてもよい。
【0054】
図6は、同実施形態に係る電子カルテシステム1における一連の制御に係るフローチャート図である。以下、電子カルテシステム1による動物の現病歴の聴取における聴取結果の入力の一例について説明する。
【0055】
まず、サーバ10が、診察対象の動物のカルテ情報をカルテDB109から取得する(ステップS101)。次に、サーバ10は、取得した診察対象の動物のカルテ情報を表示するカルテ画面を、ユーザ端末20に表示させる(ステップS103)。
【0056】
次に、サーバ10は、ユーザ端末20に対する獣医の操作に基づいて得られる、カルテ画面に対する入力(例えば、各聴取結果に対応するオブジェクトへの入力)を受け付ける(ステップS105)。そして、サーバ10は、かかる入力により情報が追加されたカルテ情報を更新し、該カルテ情報をカルテDBに記憶する(ステップS107)。なお、カルテDBに記憶する処理は、カルテ画面に表示されている各聴取項目の各聴取結果に対する入力がすべて完了してから行われてもよい。この場合、ステップS105の処理は、すべての入力が完了するまで、繰り返し行われ得る。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係る電子カルテシステム1によれば、カルテ画面に表示される、各聴取項目に関する聴取結果に対応するオブジェクトに対する入力を行うだけで聴取結果が反映され、オブジェクトの態様の変化によりその選択の有無を把握することができる。かかるシステムであれば、動物の現病歴を記録するうえで、画一的に評価が可能であり、かつ経過の変化を分かりやすく追うことができる。すなわち、動物の現病歴の記録を容易に行うことが可能となる。
【0058】
また、本実施形態に係る電子カルテシステム1によれば、また、動物の体調や食欲について、数値尺度による聴取結果の記録を行うことが可能である。これにより、主観的な情報を擬似的に定量評価することができ、経過観察や獣医間での評価の共有において、動物の体調や食欲の変化の把握がより容易となる。
【0059】
また、本実施形態に係る電子カルテシステム1によれば、履歴情報を参照し、現在の現病歴の聴取結果に反映することができる。これにより、過去の聴取結果との比較を行いながら、動物の現在の状況について評価することができる。また、過去の聴取結果をそのまま利用することができ、現病歴に関する情報の入力が容易となる。
【0060】
また、本実施形態に係る電子カルテシステム1によれば、予め定められた聴取項目以外の聴取項目の聴取結果について、サジェスト機能を用いた正確な聴取結果の入力が可能となる。かかるサジェスト機能により、獣医間での記載の揺れが抑制され、聴取結果の解釈の違いを生じさせにくくすることができる。
【0061】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0062】
本明細書において説明した装置は、単独の装置として実現されてもよく、一部または全部がネットワークで接続された複数の装置(例えばクラウドサーバ)等により実現されてもよい。例えば、サーバ10の制御部11およびストレージ13は、互いにネットワークで接続された異なるサーバにより実現されてもよい。
【0063】
本明細書において説明した装置による一連の処理は、ソフトウェア、ハードウェア、及びソフトウェアとハードウェアとの組合せのいずれを用いて実現されてもよい。本実施形態に係るサーバ10の各機能を実現するためのコンピュータプログラムを作製し、PC等に実装することが可能である。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体も提供することができる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等である。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信されてもよい。
【0064】
また、本明細書においてフローチャート図を用いて説明した処理は、必ずしも図示された順序で実行されなくてもよい。いくつかの処理ステップは、並列的に実行されてもよい。また、追加的な処理ステップが採用されてもよく、一部の処理ステップが省略されてもよい。
【0065】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0066】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(項目1)
動物の現病歴を記録するための電子カルテシステムであって、
端末の表示部に、現病歴の聴取項目ごとに聴取結果を入力するためのオブジェクトを表示するオブジェクト表示制御部を備え、
前記オブジェクト表示制御部は、前記オブジェクトに対する入力操作により得られる入力情報に基づいて前記オブジェクトの表示態様を変更させる、
電子カルテシステム。
(項目2)
項目1に記載の電子カルテシステムであって、
前記聴取項目は、前記動物の体調および/または食欲に関する項目を含み、
前記オブジェクトは、前記動物の体調および/または食欲に関する前記聴取結果を数値による尺度で入力するための数値尺度オブジェクトを含む、
電子カルテシステム。
(項目3)
項目1または2に記載の電子カルテシステムであって、
前記オブジェクトは、過去の聴取結果と現在の聴取結果との比較結果を入力するための比較オブジェクトを含む、
電子カルテシステム。
(項目4)
項目1~3のいずれか1項に記載の電子カルテシステムであって、
過去の前記現病歴の聴取結果の履歴を前記端末に表示する履歴情報表示制御部と、
表示された前記現病歴の聴取結果の履歴のうち、一の過去の聴取結果を取得する履歴情報取得部と、を備え、
前記オブジェクト表示制御部は、前記端末に表示されている前記オブジェクトの態様を、取得した前記一の過去の聴取結果に対応する態様に変更する、
電子カルテシステム。
(項目5)
項目4に記載の電子カルテシステムであって、
前記履歴情報表示制御部は複数の過去の前記現病歴の聴取結果を含む情報を表示し、
前記履歴情報取得部は、前記複数の聴取結果の表示に対する入力操作により選択された一の聴取結果を取得する、
電子カルテシステム。
(項目6)
項目1~5のいずれか1項に記載の電子カルテシステムであって、
前記オブジェクト表示制御部は、前記聴取結果により示される状況の開始時期に関する情報を入力可能な開始時期入力フォームの表示を制御する、
電子カルテシステム。
(項目7)
項目1~6のいずれか1項に記載の電子カルテシステムであって、
前記聴取結果を入力するためのオブジェクトに対応する前記聴取項目には含まれていない聴取項目に関する聴取結果を入力するための追加入力フォームを表示するフォーム表示制御部を備える、
電子カルテシステム。
(項目8)
項目7に記載の電子カルテシステムであって、
前記追加入力フォームへの入力された入力情報から、前記追加入力フォームに入力すべき内容として適切と考えられる情報を提示するサジェスト表示制御部を備える、
電子カルテシステム。
(項目9)
コンピュータを、動物の現病歴を記録するための電子カルテシステムとして機能させるためのプログラムであって、
前記コンピュータを、
端末の表示部に、現病歴の聴取項目ごとに聴取結果を入力するためのオブジェクトを表示するオブジェクト表示制御部、
として機能させ、
前記オブジェクト表示制御部は、前記オブジェクトに対する入力操作により得られる入力情報に基づいて前記オブジェクトの表示態様を変更させる、
プログラム。
【符号の説明】
【0067】
1 電子カルテシステム
10 サーバ
20 ユーザ端末
102 オブジェクト表示制御部
104 履歴情報表示制御部
105 履歴情報取得部
106 フォーム表示制御部
107 サジェスト表示制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6