(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】ブロック式変形玩具
(51)【国際特許分類】
A63H 3/46 20060101AFI20220913BHJP
A63H 3/04 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
A63H3/46 A
A63H3/04 A
(21)【出願番号】P 2021556120
(86)(22)【出願日】2020-11-11
(86)【国際出願番号】 JP2020042068
(87)【国際公開番号】W WO2021095765
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-03-17
(32)【優先日】2019-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522107359
【氏名又は名称】伊藤 吉哲
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 吉哲
【審査官】西村 民男
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-155068(JP,A)
【文献】登録実用新案第3015685(JP,U)
【文献】実開平02-028297(JP,U)
【文献】実開昭61-042995(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0184768(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0106302(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0136531(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0156960(US,A1)
【文献】米国特許第06482063(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 1/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のブロックの組み合わせにより対象物の形状を表現するブロック式変形玩具であり、
隣り合うブロックは、弾性紐材で互いに接する方向に付勢されており、
上記隣り合うブロック同士を、上記弾性紐材の付勢力に抗して互いの位置関係を異なる面同士が接するように変化させることで、外形がコンパクトになるように折り畳まれた状態と、表現する対象物の形状になるように伸長された状態とに変形可能であり、
さらに、
上記複数のブロックのうち、少なくとも2つのブロックは、それぞれの、
一方の面が隣り合う他方の面に対して傾斜する2つの面同士が互いに同時に接する状態を有し、それにより、上記弾性紐材
の周りの回動が規制されるように構成されているものである
ことを特徴とするブロック式変形玩具。
【請求項2】
請求項1記載のブロック式変形玩具において、
このブロック式変形玩具は、少なくとも、頭部、胴部、足部を複数のブロックの組み合わせにより表現する動物型ブロック式変形玩具である
ことを特徴とするブロック式変形玩具。
【請求項3】
請求項1記載のブロック式変形玩具において、
前記折り畳まれた状態は、外形がボックス状になるように構成されたものである
ことを特徴とするブロック式変形玩具。
【請求項4】
請求項1記載のブロック式変形玩具において、
前記2つの面の、
前記一方の面に対する前記隣り合う他方の面の傾斜の角度は、30度(330度)~170度(190度)である
ことを特徴とする動物型ブロック式変形玩具。
【請求項5】
請求項1記載のブロック式変形玩具において、
上記2つのブロックは、それぞれの2つの面同士が同時に接する状態を2以上有するものである
ことを特徴とするブロック式変形玩具。
【請求項6】
請求項5記載のブロック式変形玩具において、
上記2以上の状態は、それぞれ、折り畳まれた状態、伸長された状態である
ことを特徴とするブロック式変形玩具。
【請求項7】
請求項2記載の動物型ブロック式変形玩具において、
前記2つのブロックは、
それぞれ、頭部と胴を構成するブロックであり、
一方の面が隣り合う他方の面に対して傾斜する2つの面同士が互いに同時に接する状態を有し、それにより、頭部の胴に対する回動が規制されるものである
ことを特徴とするブロック式変形玩具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ブロック同士をゴム紐で連結して成る変形玩具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、以下の特許文献1,2に示される人型ロボットのブロック式変形玩具がある。
【0003】
これらの玩具は基本的に正六面体形状のブロック同士をゴム紐の付勢力によって集合させて変形玩具を構成するものである。すなわち、これらの変形玩具は、外形がボックス状になるように折り畳まれた状態と、人型ロボット形状になるように伸長された状態とに変形可能なものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第6482063号「Artiulating Blocks Toy」
【文献】米国特許公開第2012-0156960A1号公報「Transformable Toy Robot」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、現在、デザイン性の高い複雑な形状を表現したブロック変形玩具はない。
【0006】
これは、従来のブロック式変形玩具は、遊戯性を高めるために人型ロボットに様々な姿勢を取らせることを重視していることによる。このため、多くの場合、六面体ブロックを用いるものであり、ブロックを構成する各面のなす角度は基本的に90度である。このような六面体ブロックを用いる場合、面同士で接するブロックを自由に回転させることができ、人型ロボットに様々な姿勢を取らせることができる。このため、例えば、頭の姿勢を実際にはありえない方向に向けたりできるものであり、且つ、これを許容しているため、デザイン性を高めるという思想がなかったものである。
【0007】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、折り畳みの自由度は確保しつつ、デザイン性の複雑な形状、例えば様々な動物形状を実現できるブロック式変形玩具を提供することを目的とする。
【0008】
また、他の目的は、複雑な形状のブロックにより構成されたブロック式変形玩具を折り畳んだ際に、ブロック同士を確実に位置決めして纏まりのある外形を実現することが容易なブロック式変形玩具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、この発明の主要な観点によれば、以下の発明が提供される。
(1) 複数のブロックの組み合わせにより対象物の形状を表現するブロック式変形玩具であり、
隣り合うブロックは、弾性紐材で互いに接する方向に付勢されており、
上記隣り合うブロック同士を、上記弾性紐材の付勢力に抗して互いの位置関係を異なる面同士が接するように変化させることで、外形がコンパクトになるように折り畳まれた状態と、表現する対象物の形状になるように伸長された状態とに変形可能であり、
さらに、
上記複数のブロックのうち、少なくとも2つのブロックは、それぞれの2つの面同士が互いに同時に接する状態を有し、それにより、上記弾性紐材周りの回動が規制されるように構成されているものである
ことを特徴とするブロック式変形玩具。
(2) 上記(1)記載のブロック式変形玩具において、
このブロック式変形玩具は、少なくとも、頭部、胴部、足部を複数のブロックの組み合わせにより表現する動物型ブロック式変形玩具である
ことを特徴とするブロック式変形玩具。
(3) 上記(1)記載のブロック式変形玩具において、
前記折り畳まれた状態は、外形がボックス状になるように構成されたものである
ことを特徴とするブロック式変形玩具。
(4) 上記(1)記載のブロック式変形玩具において、
前記2つの面のなす角度は、30度~170度、190度~330度である
ことを特徴とする動物型ブロック式変形玩具。
(5) 上記(1)記載のブロック式変形玩具において、
上記2つのブロックは、それぞれの2つの面同士が同時に接する状態を2以上有するものである
ことを特徴とするブロック式変形玩具。
(6) 上記(5)記載のブロック式変形玩具において、
上記2以上の状態は、それぞれ、折り畳まれた状態、伸長された状態である
ことを特徴とするブロック式変形玩具。
(7) 上記(2)記載の動物型ブロック式変形玩具において、
前記2つのブロックは、頭部と胴を構成するブロックであり、上記構成により、頭部の胴に対する回動方向の変位が規制されるものである
ことを特徴とするブロック式変形玩具。
【0010】
なお、上記に記載した以外の特徴は以下の発明の実施形態の説明及び図面に開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態を示す猿型ブロック式変形玩具の正面図。
【
図3】
図3は、同じく、背面図(ゴム紐は透視して示す)。
【
図7】
図7は、同じく、折り畳んだ状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を添付図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、この実施形態の動物型ブロック式変形玩具として、猿型ブロック式変形玩具1を示すものである。
【0014】
(伸長状態)
この猿型ブロック式変形玩具1は、頭部2、胴部3、右腕部4、左腕部5、右脚部6、左脚部7を構成する複数のブロック2a、3a~3b、4a~4c、5a~5c、6a~6c、7a~7cの組み合わせにより猿を表現するものである。従来技術のブロック式変形玩具は人型ロボットのデザインであったが、この発明の例では、上記各ブロック2a、3a~3b、4a~4c、5a~5c、6a~6c、7a~7cを、お互いの組み合わせ方を含めて複雑な形状とすることで特定の種類の動物を表現することが可能となったものである。
【0015】
図2はこの猿型ブロック式変形玩具の平面図、
図3は背面図、
図4は底面図、
図5は右側面図を示すものである。また、
図6は、斜視図を示すものである。
【0016】
ここで、
図3の背面図に示すように、各ブロック2a~7cは、図に8a~8cで示す第1~第3のゴム紐部材で互いに近接する方向に付勢されている。すなわち、第1のゴム紐部材8aは、頭部2を構成するブロック2aから、胴部3を構成するブロック3aを通して胴部3の臀部を構成するブロック3bまで延出され、両端部に作ったコブを上記両端のブロック2a、3bに係合させることで頭部2と胴部3を集合させている。なお、各ゴム紐部材8a~8cは、実際には玩具内に埋め込まれていて外から見えないが、この
図3では透視して示しているものである。
【0017】
また、第2のゴム紐部材8bは、右腕部の手を構成するブロック4aから、ブロック4b、4c、3a、5c、5bを通して左腕部を構成するブロック5aにまで延出され、両端部に作ったコブを上記両端のブロック4c、5cに係合させることで両腕部4,5の各ブロック4a~4c、5a~5cを集合させて、かつ胴部3に取り付けている。
【0018】
また、第3のゴム紐部材8cは、右脚部の足部を構成するブロック6aから、ブロック6b、6c、3b、7c、7bを通して左脚部を構成するブロック7aにまで延出され、両端部に作ったコブを上記両端のブロック6a、7aに係合させることで両脚部の各ブロック6a~6c、7a~7cを前記胴部3のブロック3bに対して集合させている。
【0019】
(折り畳み状態)
そして、上記隣り合うブロック同士を、上記ゴム紐部材8a~8cの付勢力に抗して互いの位置関係を異なる面同士が接するように変化させることで、
図1~
図6に示すような伸長された状態からと、
図7に示す折り畳まれた状態に変形可能である。
【0020】
ここで、
図7はこの猿型ブロック式変形玩具が折り畳まれた状態を示す斜視図、
図8は側面図、
図9は背面図、
図10は平面図、
図11は正面図、
図12は底面図を示すものである。
【0021】
(ブロック同士の組み合わせ)
さらに、請求の範囲に記載されたように、上記複数のブロックのうち、少なくとも2つのブロックは、それぞれの2つの面同士が互いに同時に接する状態を有し、それにより、上記ゴム紐部材周りの回動が規制されるように構成されているものである。
【0022】
具体的には、この実施形態では、前記2つのブロックは、
図13A、13Bに示すように、頭部2を構成するブロック2aと胴部3の上胸部を構成するブロック3aであり、この構成により、頭部2の胴3に対する回動方向の変位が規制されるものである。すなわち、この実施形態では、頭部2を構成するブロック2aの下面10、11(請求項にいう2つの面)は160度の角度θを成して傾いており(
図14参照)、胴部3を構成するブロック3aには、上記頭部の2つの面と同時に当接する上面12,13が200度(360度から上記頭部2の2つの下面10,11のなす角度160度を引いた値)の角度を成して形成されている。
【0023】
そして上記2つのブロック2a、3aはゴム紐部材8aにより互いに当接する方向に付勢されているので、上述した2つの面同士が接触している状態から、上記ゴム紐部材8aの延長線回り(矢印αで示す方向)に回動させようとすると、上記2つの面10・11、12・13同士が干渉して、上記2のブロック2a、3aが互いに離れる方向(矢印βで示す方向)に上記ゴム紐部材8aの付勢力に抗して駆動されることになる。このことで、上記矢印αで示す方向の回動は規制されることになり、手を放すと元の位置、すなわち、2つの面10・11、12・13同士が当接する位置に戻るように構成されている。
【0024】
【0025】
【0026】
このように折り畳む際には、まず、頭部2を
図17Aに示すように折り畳む。
【0027】
この状態においても、上記胴部3の上胸部に対応するブロックの前面に上記頭部2に形成された2つの面10・11と噛み合う2つの面15・16が形成されており、これら同士が互いに接触する状態が構成されるようになっている。すなわち、上記胴部の上胸部には200度の角度を成して隣り合う2面15,16が構成されており、これにより、上記2つの面10・11、15・16同士が当接するようになっているのである。
【0028】
なお、上記頭部2には、
図13B、
図16に示すように、後頭部に上下方向に沿うスリット18が形成されている。また、胴部3には、上記上面12・13と前面15・16の方向に開放するスリット19が形成されている。これにより、上記ゴム紐部材8aはブロック2a、3aと干渉することなく取り回され、
図17Bに示すように、上記頭部2を折り畳めるようになっている。
【0029】
また、
図13A,Bに示すように、上記胴部3の、上記頭部2が取り付けられたブロック3aの下部には胴体下腹部を構成するブロック3bが取りつけられている。そして、このブロック3bは上記ゴム紐部材8aの他端部が固定されている。
【0030】
この2つのブロック3a、3b同士は1面20・21で当接しており、
図13A、13Bに示す状態では上記ゴム紐部材8a回り(矢印α)に自由に回動できるようになっている。この点、上記頭部2のように2面で接するものではないから回動角度が規制されることはない。
【0031】
一方、この下腹部を構成するブロック3bの後部(臀部)には上記ゴム紐部材8aの方向に対して約15度傾く傾斜面22が設けられていると共に、上記胴体を構成するブロック3aの腹部に対応する部分に同角度の傾斜面23が設けられている。そして、折り畳む際にはそれらの両面22,23同士を当接させることで、上記ブロック3bを傾斜に沿って上方向(矢印γ方向)に付勢して頭部2(2a)に当接させ、折り畳んだ際の下面(
図18A,
図18Bに示す)を面一にすることが可能になる。
【0032】
なお、上記ブロック3a、3bには、上記面20,21、22,23に亘ってスリット24,25が設けられており、折り畳む際にゴム紐部材8aがブロックに干渉することはない。
【0033】
このことで、
図19~
図21に示すように外形矩形状になるように位置決めして折り畳むことができるのである。
【0034】
(変形例)
また、本発明は上記の一実施例及び変形例に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で変形可能である。
【0035】
例えば、
図22A、
図22Bは、キリン型ブロック式変形玩具の頭部を示す模式図である。
【0036】
2つの面同士が互いに同時に接する2つのブロックは、この変形例では、
図13A、13Bに示すように、頭部26を構成するブロック26aと首部27の上端部を構成するブロック27aであり、この構成により、
図22Bに示すように、頭部26の首部27に対する回動方向の変位が規制されるものである。すなわち、この変形例では、頭部26を構成するブロック26aの下面28、29(請求項にいう2つの面)は30度の角度θを成して傾いており(
図22B参照)、首部27を構成するブロック27aには、上記頭部の2つの面と同時に当接する上面30,31が330度(360度から上記頭部22の2つの下面28,29のなす角度30度を引いた値)の角度を成して形成されている。
【0037】
なお、先鋭部を有する側のブロックの2つの面のなす角度が小さすぎるとこの部分が弱くなり、かつゴム紐を通すスペースがなくなるので、前記2つの面のなす角度は、30度~170度、190度~330度であることが好ましい。
【0038】
また、上記一実施例では、動物型ブロック式変形玩具は猿であったが、変形例のようにキリンでも良いし、それ以外の動物でも良く、人間型であっても良い。
【0039】
さらに、動物型に限られるものではなく、例えば乗用車や飛行機などの人工物の形態を表現するブロック式変形玩具であっても良い。
【符号の説明】
【0040】
1…ブロック式変形玩具
2…頭部
2a…ブロック
3…胴部
3a、3b…ブロック
4…右腕部
4a~4c…ブロック
5…左腕部
5a~5c…ブロック
6…右脚部
6a~6c…ブロック
7…左脚部
7a~7c…ブロック
8a~8c…第1~第3のゴム紐部材
10、11…頭部の下面
12、13…胴部の上面
15、16…胴部の前面
18…スリット
19…スリット
20…胴部の下面
21…臀部の上面
22、23…傾斜面
24…スリット
25…スリット
26…キリンの頭部
26a…ブロック
27…キリンの首部
27a…ブロック
28、29…キリンの頭部の下面
30、31…キリンの首部の上面