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特許7140439物品搬送箱用蓋及びその製造方法、ならびに物品搬送箱用蓋を備えた物品搬送箱
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】物品搬送箱用蓋及びその製造方法、ならびに物品搬送箱用蓋を備えた物品搬送箱
(51)【国際特許分類】
   B65D 43/08 20060101AFI20220913BHJP
【FI】
B65D43/08
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022068068
(22)【出願日】2022-04-18
【審査請求日】2022-04-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391065781
【氏名又は名称】第一大宮株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100070507
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 俊男
(72)【発明者】
【氏名】松岡 貴峰
(72)【発明者】
【氏名】平井 伸治
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-18316(JP,U)
【文献】国際公開第2020/116520(WO,A1)
【文献】実開平4-2719(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無発泡合成樹脂板、低発泡合成樹脂板、又は中空合成樹脂板のいずれかからなる蓋形成板により構成され、
該蓋形成板は中央の天板と、その周囲に隣接する各側板とを有し、対向する一組の前記側板は両端に袖片部を備え、これに隣接した他の対向する一組の側板は、前記袖片部に当接可能な接合端部を両端に備えたものとし、
前記蓋形成板の接合端部を有する側板及び袖片部を区画する第1の仮想ラインに対して、断面V字の突出部を有する熱板での加熱押圧により第1のV字溝が形成され、当該第1のV字溝を基準に、前記接合端部を有する側板、および、前記袖片部を、それぞれ起立角度90°以下で折曲起立され、当該接合端部を有する側板および前記袖片部が、冷却に伴う熱収縮による起立角度の変化により起立角度が略90°とされ、
前記蓋形成板の前記袖片部を有する側板を区画する第2の仮想ラインに対して前記熱板での加熱押圧により第2のV字溝が形成されるとともに前記接合端部と前記袖片部の端部が溶融され、前記接合端部と前記袖片部とが溶着されてなることを特徴とする物品搬送箱用蓋。
【請求項2】
前記第1のV字溝若しくは第2のV字溝の形成によって、当該V字溝の斜面とこれに隣接するV字溝の縁部を溶融状態として、袖片部を有する側板若しくは接合端部を有する側板を天板に対して起立させることにより、前記各側板と天板との間、及び、隣り合う各側板の間に、相互に溶着された2列の畝部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の物品搬送箱用蓋。
【請求項3】
無発泡合成樹脂板、低発泡合成樹脂板、又は中空合成樹脂板のいずれかからなり、中央の天板とその周囲に隣接する各側板とを有し、対向する一組の前記側板は両端に袖片部を備え、これに隣接した他の対向する一組の側板は前記袖片部に当接可能な接合端部を両端に備えたものとした蓋形成板に対し、
第1の工程として、前記蓋形成板の接合端部を有する側板と袖片部を区画する第1の仮想ラインに対して、断面V字の突出部を有する熱板で加熱押圧することによって、第1のV字溝を形成し、当該第1のV字溝を基準に、前記接合端部を有する側板を第1のガイド部により90°以下で折曲して起立させ、前記袖片部を第2のガイド部により90°以下で折曲して起立させ、当該接合端部を有する側板および前記袖片部が、冷却に伴う熱収縮による起立角度の変化により起立角度を略90°とし、
第2の工程として、前記蓋形成板の前記袖片部を有する側板を区画する第2の仮想ラインに対して前記熱板で加熱押圧することによって、第2のV字溝を形成するとともに、前記袖片部の端部及び接合端部を溶融させ、前記袖片部と前記接合端部とを溶着することを特徴とする物品搬送箱用蓋の製造方法。
【請求項4】
前記第1の工程において、接合端部を有する側板と前記第1のガイド部とが線接触するものであることを特徴とする請求項3に記載の物品搬送箱用蓋の製造方法。
【請求項5】
前記第2のガイド部は、前記袖片部の高さ(H)に対応する長さ(L)を有することを特徴とする請求項3に記載の物品搬送箱用蓋の製造方法。
【請求項6】
前記第1のV字溝若しくは第2のV字溝の形成によって、当該V字溝の斜面とこれに隣接するV字溝の縁部を溶融状態として、袖片部を有する側板若しくは接合端部を有する側板を天板に対して起立させることにより、前記各側板と天板との間、及び、隣り合う各側板の間に、相互に溶着された2列の畝部を形成することを特徴とする請求項3に記載の物品搬送箱用蓋の製造方法。
【請求項7】
請求項1又は2のいずれかに記載の物品搬送箱用蓋を有する物品搬送箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、物品搬送箱の上部開口を閉塞するための物品搬送箱用蓋と、その製造方法、ならびに物品搬送箱用蓋を備えた物品搬送箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、収納物品を搬送、保管するためのリターナブル性を有する物品搬送用箱に関し、例えば、本出願人が先にした発明であって、水密性を有する物品搬送用箱(包装用容器)の本体およびその製造方法について、断面V字輪郭を有する熱板を、底板と側板の境界となる折目部分(第1の仮想ライン)に押し当て加熱して熱罫線を形成し、熱罫線が溶融状態にあるうちに側板とこれに隣接する袖片部を底板にガイド部を押し当てて起立させ当該物品搬送用箱を形成する構成が公知である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6670210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に係る発明は、物品搬送箱に水密性を付与できる点で優れたものである。しかしながら、製造過程において、側板とこれに隣接する袖片部を底板から起立させる際にガイド部を押し当てると、当該側板とこれに隣接する袖片部は熱収縮を生じ、その結果、側板および袖片部は内側へ反り、形成される箱体に歪みを生じることとなり、十分な精度を保持することが困難であった。また、側板が外側に膨らむいわゆる胴膨れを生じることもあった。
【0005】
上記特許文献1に係る発明においては、蓋を有しない構成であることから現実的には何ら問題を生じるものではないが、当該発明の製造方法を物品搬送箱用蓋に適用すると、当該物品搬送箱用蓋の側板の内側への反りによって蓋の開口が狭まり、箱体に被せることができず物品搬送箱用蓋として機能できないこととなり問題となる。そしてこれを回避すべく物品搬送箱用蓋をサイズアップして箱体に対して大きめに設定したとすると、物品搬送箱用蓋の幅が大きくなり、不体裁となるうえ、物品搬送箱の収納効率を低下させることとなる。物品搬送箱用蓋のサイズアップは、当該物品搬送箱用蓋の重量も増加させ、作業時、輸送時の負担も大きくなる。
【0006】
さらに、物品搬送箱用蓋の側板が胴膨れを生じることによって、箱体との隙間が大きくなり、異物の混入の原因となったり、遮光性が低下したりすることも懸念される。
【0007】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、収納物品を搬送、保管するためのリターナブル性を有する物品搬送箱に関連して、使用時の不体裁や物品搬送箱の収納効率の低下、重量の増加を招来することがなく、異物の混入の可能性の低減、遮光性の向上を可能とする物品搬送箱用蓋と、その製造方法、ならびに物品搬送箱用蓋を備えた物品搬送箱の提供を、発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、無発泡合成樹脂板、低発泡合成樹脂板、又は中空合成樹脂板のいずれかからなる蓋形成板により構成され、
該蓋形成板は中央の天板と、その周囲に隣接する各側板とを有し、対向する一組の前記側板は両端に袖片部を備え、これに隣接した他の対向する一組の側板は、前記袖片部に当接可能な接合端部を両端に備えたものとし、
前記蓋形成板の接合端部を有する側板及び袖片部を区画する第1の仮想ラインに対して、断面V字の突出部を有する熱板で加熱押圧されて、第1のV字溝が形成され、当該第1のV字溝を基準に、前記接合端部を有する側板、および、前記袖片部を、それぞれ起立角度90°以下で折曲起立され、当該接合端部を有する側板および前記袖片部が、冷却に伴う熱収縮による起立角度の変化により起立角度を略90°とし、
前記蓋形成板の前記袖片部を有する側板を区画する第2の仮想ラインに対して前記熱板で加熱押圧することによって、第2のV字溝を形成するとともに、前記接合端部と前記袖片部の端部を溶融させ、前記接合端部と前記袖片部とを溶着してなることを特徴とする物品搬送箱用蓋を、課題を解決するための手段とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1のV字溝を基準に、前記接合端部を有する側板および袖片部を、起立角度90°以下で折曲して起立させ、その後の冷却に伴う熱収縮による起立角度の変化により起立角度を略90°とすることにより、蓋としての機能を確保することができる。また、当該物品搬送箱用蓋を箱体に対してサイズアップする必要性がなくなり、不体裁を防止できる。
そして、側板及び袖片部の共通する起立角度を90°に限りなく近い角度として、蓋の精度を高めることで、胴膨れを低減して、異物の混入を低減させ、遮光性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例に係る物品搬送箱用蓋Cを示す斜視図である。
図2】本発明の実施例に係る物品搬送箱用蓋Cの製造方法において用いる蓋形成板を示す平面図である。
図3】本発明の実施例に係る物品搬送箱用蓋Cの製造方法における第1工程中、第1仮想ラインL1に対して熱板Mを押圧させる状態を示す斜視図である。
図4】本発明の実施例に係る物品搬送箱用蓋Cの製造方法における第1工程中、(a)第1のV字溝を形成した状態を示す一部拡大正面図、(b)第1のV字溝を折曲した状態を示す一部拡大正面図である。
図5】本発明の実施例に係る物品搬送箱用蓋Cの製造方法の第1工程中に使用する第1の治具を示す(a)平面図、(b)正面図である。
図6】本発明の実施例に係る物品搬送箱用蓋Cの製造方法の第1工程中、左側の第1の仮想ラインL1に対して加熱押圧がされた蓋形成板を第1の治具T1に嵌め込んだ状態を示す平面図である。
図7図6における細部を示す正面図であって、左側板を第1のガイド部(L字アングルT11)と当接させ、袖片部を第2のガイド部(当接部材T12)と当接させた状態を示す正面図である。
図8】本発明の実施例に係る物品搬送箱用蓋Cの製造方法の第1工程中に使用する第2の治具T2を示す(a)平面図、(b)正面図である。
図9】本発明の実施例に係る物品搬送箱用蓋Cの製造方法の第1の工程中、右側の第1の仮想ラインL1に対して加熱押圧がされた蓋形成板を第2の治具に嵌め込んだ状態を示す平面図である。
図10図9における細部を示す正面図であって、右側板を第1のガイド部(L字アングルT21)と当接させ、袖片部を第2のガイド部(当接部材T22)と当接させた状態を示す正面図である。
図11】本発明の実施例に係る物品搬送箱用蓋Cの製造方法の第2工程中、第2仮想ラインL2に対して熱板を押圧させる状態を示す斜視図である。
図12】本発明の実施例に係る物品搬送箱Eにおける箱本体Dと物品搬送箱用蓋Cを分離した状態を示す斜視図である。
図13】本発明の実施例に係る物品搬送箱Eを示す斜視図である。
図14】本発明の実施例に係る物品搬送箱Eにおける箱本体形成板8を示す平面図である。
図15】本発明の他の実施例に係る物品搬送箱Eにおける公知の箱本体D1と物品搬送箱用蓋Cを分離した状態を示す斜視図である。
図16】本発明の他の実施例に係る物品搬送箱Eを示す斜視図である。
図17】本発明に使用可能な中空合成樹脂板であって(a)平行するリブを有する中空合成樹脂板pを示す斜視図、(b)シート間にハニカム構造のコア材を有する中空合成樹脂板pを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態として、無発泡合成樹脂板、低発泡合成樹脂板、又は中空合成樹脂板のいずれかからなる蓋形成板により構成され、
該蓋形成板は中央の天板と、その周囲に隣接する各側板とを有し、対向する一組の前記側板は両端に袖片部を備え、これに隣接した他の対向する一組の側板は、前記袖片部に当接可能な接合端部を両端に備えたものとし、
前記蓋形成板の接合端部を有する側板と袖片部を区画する第1の仮想ラインに対して、断面V字の突出部を有する熱板で加熱押圧されて、第1のV字溝が形成され、当該第1のV字溝を基準に、前記接合端部を有する側板、および、前記袖片部を、それぞれ起立角度90°以下で折曲起立され、当該接合端部を有する側板および前記袖片部が、冷却に伴う熱収縮による起立角度の変化により起立角度を略90°とし、
前記蓋形成板の前記袖片部を有する側板を区画する第2の仮想ラインに対して前記熱板で加熱押圧することによって、第2のV字溝を形成するとともに、前記接合端部と前記袖片部の端部を溶融させ、前記接合端部と前記袖片部とを溶着してなることを特徴とする物品搬送箱用蓋とすることができる(第1の構成)。
【0012】
上記第1の構成によれば、第1のV字溝を基準に、前記接合端部を有する側板および袖片部を、起立角度90°以下で折曲して起立させ、その後の冷却に伴う熱収縮による起立角度の変化により起立角度を略90°とすることにより、蓋としての機能を確保することができる。また、当該物品搬送箱用蓋を箱体に対してサイズアップする必要性がなくなり、不体裁を防止できる。
そして、側板及び袖片部の共通する起立角度を90°に限りなく近い角度として、物品搬送箱用蓋の精度を高めることで、当該物品搬送箱用蓋の胴膨れを低減して、異物の混入を低減させ、遮光性を向上させることができる。
【0013】
また第1の構成において、前記第1のV字溝若しくは第2のV字溝の形成によって、当該V字溝の斜面とこれに隣接するV字溝の縁部を溶融状態として、袖片部を有する側板若しくは接合端部を有する側板を天板に対して起立させることにより、前記各側板と天板との間、及び、隣り合う各側板の間に、相互に溶着された2列の畝部を形成したことを特徴とする物品搬送箱用蓋とすることができる(第2の構成)。
【0014】
上記第2の構成によれば、上記第1の構成の作用効果を奏する上に、袖片部を有する側板若しくは接合端部を有する側板と天板との間に、相互に溶着された2列の畝部を形成することで、当該側板と天板との境界部分の厚みを増加させ、遮光性を向上させることができる。
【0015】
また、本発明の実施態様として、無発泡合成樹脂板、低発泡合成樹脂板、又は中空合成樹脂板のいずれかからなり、中央の天板とその周囲に隣接する各側板とを有し、対向する一組の前記側板は両端に袖片部を備え、これに隣接した他の対向する一組の側板は前記袖片部に当接可能な接合端部を両端に備えたものとした蓋形成板に対し、
第1の工程として、前記蓋形成板の接合端部を有する側板と袖片部を区画する第1の仮想ラインに対して、断面V字の突出部を有する熱板で加熱押圧することによって、第1のV字溝を形成し、当該第1のV字溝を基準に、前記接合端部を有する側板を第1のガイド部により90°以下で折曲して起立させ、前記袖片部を第2のガイド部により90°以下で折曲して起立させ、当該接合端部を有する側板および前記袖片部が、冷却に伴う熱収縮による起立角度の変化により起立角度を略90°とし、
第2の工程として、前記蓋形成板の前記袖片部を有する側板を区画する第2の仮想ラインに対して前記熱板で加熱押圧することによって、第2のV字溝を形成するとともに、前記袖片部の端部及び接合端部を溶融させ、前記袖片部と前記接合端部とを溶着することを特徴とする物品搬送箱用蓋の製造方法とすることができる(第3の構成)。
【0016】
上記第3の構成によれば、第1のV字溝を基準に、前記接合端部を有する側板を第1のガイド部により90°以下で折曲して起立させることにより、当該接合端部を有する側板が熱収縮により、開口を閉じる方向に変形したとしても、蓋としての機能が確保される。また、第1のガイド部を90°以下で折曲させるために案内ができなくなる低背の袖片部に対して、第2のガイド部を備え、当該第2のガイド部により案内することで、熱収縮に伴う起立角度の変化を経て、接合端部を有する側板と袖片部を平面視同一直線上に配置させることができ、両者を溶着することで、ほぼ直角で構成される角部を形成することができる。このため、熱収縮による蓋としての機能不全を招来せず、蓋のサイズアップによる不体裁を生じることがない。そして、側板及び袖片部の共通する起立角度を90°に限りなく近い角度として物品搬送箱用蓋の精度を高めることで、当該物品搬送箱用蓋の胴膨れを低減するとともに、異物の混入を低減させ、遮光性を向上させることができる。
【0017】
また上記第3の構成を前提として、前記第1の工程において、接合端部を有する側板と第1のガイド手段とが線接触するものとすることができる(第4の構成)。
【0018】
上記第4の構成によれば、第3の構成の作用効果を奏する上に、接合端部を有する側板と第1のガイド手段とが線接触するため、第1のガイド手段による接合端部を有する側板の案内を確保するとともに、面接触を避けることで急激な熱収縮による当該側板の変形を抑制し、物品搬送箱用蓋の精度を高めることができる。
【0019】
また、上記第3の構成において、前記第2のガイド部は、前記袖片部の高さ(H)に対応する長さ(L)を有するものとすることができる。(第5の構成)。
【0020】
上記第5の構成によれば、上記第3の構成の作用効果を奏する上に、前記第2のガイド部によって、袖片部の高さ方向全域で90°以下に起立させるように案内することができ、袖片部の起立の精度を高めることができる。
【0021】
また、上記第3の構成において、前記各側板と天板との間、及び、隣り合う各側板の間に、相互に溶着された2列の畝部を形成することができる(第6の構成)
【0022】
上記第6の構成によれば、第3の構成の作用効果を奏する上に、袖片部を有する側板若しくは接合端部を有する側板と天板との間に、相互に溶着された2列の畝部を形成することで、当該側板と天板との境界部分の厚みを増加させ、遮光性を向上させることができる。
【0023】
また、上記第1、第2のいずれかの構成による物品搬送箱用蓋を有する物品搬送箱を、構成することができる(第7の構成)。
【0024】
上記第7の構成によれば、上記第1、第2のいずれかの構成の作用効果を奏する物品搬送箱用蓋を備えた物品搬送箱を提供することができる。
【実施例1】
【0025】
以下、図面を参照し、本発明の実施例に係る物品搬送箱用蓋C、及びその製造方法について詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。尚、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。また、各図に示された構成部材間の寸法比や角度は、必ずしも実際の寸法比や角度を示すものではない。
【0026】
本発明の実施例に係る物品搬送箱用蓋Cを図1に示す。本実施例に係る物品搬送箱用蓋Cは、ポリプロピレンの低発泡(例えば、発泡倍率3倍程度)の板材から構成されており、平面視矩形の天板2と該天板2の各辺から垂下される4枚の側板である前側板3、後側板4、右側板5、および左側板6を有する。物品搬送箱用蓋Cの内面側となる天板2と各側板3、4、5、6との間、物品搬送箱用蓋Cの内面側となる各側板3、4、5、6相互の間には、それぞれ平行に隣接する2本の畝部70を備えている。この平行に隣接する2本の畝部70は、相互に融着固化された構成を有する。
【0027】
また、右側板5及び左側板6における前端位置及び後端位置には、継ぎ目を有している。継ぎ目は、右側板5及び左側板6における各接合端部50、60と、前側板3及び後側板4から折曲された袖片部30、40とによって形成されるものである。継ぎ目は、天板2の四隅に隣接する位置から、右側板5及び左側板6における斜め下方向へ一定寸法で連続し、その下端から更に下方へ向けて右側板5及び左側板6の下縁まで連続する。
【0028】
当該継ぎ目の内面側には、平行に隣接する2本の畝部を有している。当該継ぎ目の外面側には、当該平行に隣接する2本の畝部を鏝(こて)で押し潰して形成される平滑面を有する1本の畝部71を有している。
【0029】
右側板5及び左側板6と、各袖片部30、40とは、継ぎ目を介して底面視同一直線上に配置されている。
【0030】
当該実施例に係る物品搬送箱用蓋Cの製造方法においては、図2に示す、ポリプロピレン製の低発泡(例えば、発泡倍率3倍程度)の蓋形成板1を使用する。蓋形成板1は、天板2と、該天板2に夫々連続する前側板3、前側板3に対向する後側板4、天板2の右に位置する右側板5、天板2の左に位置し右側板5に対向する左側板6とを有する。
【0031】
前側板3の両端にはそれぞれ袖片部30が形成される。後側板4の両端には、それぞれ袖片部40が形成される。
右側板5の両端にはそれぞれ接合端部50が形成される。左側板6の両端には、それぞれ接合端部60が形成される。
【0032】
蓋形成板1は、平面視矩形となる1枚の合成樹脂シートの4隅等の一部に切欠部を形成して構成される。切欠部は、当該合成樹脂シートの4隅の隅部切欠部10aと、該隅部の切欠部10aのうち後方側で対向する2隅の隅部切欠部10aにおいて当該隅部切欠部10aに連続する第1のV字状切欠部10b(2箇所)、前記4隅の隅部切欠部10aのうち前方側で対向する2隅の隅部切欠部10aにおいて当該隅部切欠部10aに連続する第2のV字状切欠部10c(2箇所)、隣り合う第1のV字状切欠部10bと第2のV字状切欠部10cの各頂部近傍を通る第1の仮想ラインL1が合成樹脂シートの縁部と交差する位置に形成される第3のV字状切欠部10d(4箇所)である。尚、第1のV字状切欠部10bの頂部相互、第2のV字状切欠部10cの頂部相互を通る仮想ラインを第2の仮想ラインL2とする。
【0033】
前記第1の仮想ラインL1および第2の仮想ラインL2によって、天板2、前側板3、後側板4、前側板3および後側板4の袖片部30、40、右側板5、左側板6は区画される。
【0034】
第1の工程として、図3に示すように、蓋形成板1の左右いずれか一方(以下、選択される一方となる側を左側、他方となる側を右側として例示する。)の第1の仮想ラインL1に対して、断面V字の突出部m1を有する熱板Mで加熱押圧する。この加熱押圧によって左側の第1の仮想ラインL1には、第1のV字溝V1(断面V字状輪郭を有する溝)が形成される(図4(a)参照。)。
【0035】
次に、図5に示す第1の治具T1を使用する。第1の治具T1は、載置台T10と、該載置台T10上に所定間隔をあけて平行に配置される2本のL字アングルT11と、そのうちの一方となる左側のL字アングルT11の側面の一部となる2箇所に取着される当接部材T12と、載置台T10上に配置される後方位置決め部T13を有している。
【0036】
L字アングルT11は、断面が挟角90°を有するL字状の金属製の長尺物であり、蓋形成板1の長手寸法よりも長く設定されている。また2本のL字アングルT11のうち、当接部材T12を有する左側のL字アングルT11は、本発明における第1のガイド部となる。また、当該L字アングルT11の側面の一部に取着される当接部材T12は、本発明における第2のガイド部となる。
【0037】
また2本のL字アングルT11間の距離は、蓋形成板1の左側の第1の仮想ラインL1を基準として当該左側板を折曲した状態の天板2側の幅寸法W1よりも数ミリメートル程度大きい寸法W2に設定している(図7参照。)。
【0038】
当接部材T12は、厚さ約2ミリメートル程度の金属製の平板部材であり、その長さ寸法Lは、当該袖片部の長さ寸法(高さ寸法)H(図6参照。)を確保している。L字アングルT11の側面のうち、折曲されていない状態の袖片部に対応する位置に設けている。また、本実施例においては、当接部材T12による蓋形成板1の傷付きを防止し、かつ、当接部材T12をL字アングルT11に取着するために、当接部材T12を被覆する被覆材(粘着面を有するテープ)を設けている。当接部材T12は被覆材で被覆された状態で、L字アングルT11の側面に対して取着される。尚、被覆材は薄膜であるため、図面上省略している。
【0039】
次に図6に示すように、上記第1の治具T1の2本のL字アングルT11間に対して、前記左側の第1の仮想ラインL1に対して加熱押圧がされた蓋形成板1を嵌め込み、後方位置決め部T13にその後端を押し当て、天板2を載置台T10に密着させる。図6に示すように、起立された左側板6が第1のガイド部となる一方のL字アングルT11に線接触で当接し、また隣接する2箇所の袖片部30、40が、それぞれ当接部材T12と線接触で当接する。そして、当該左側板6と袖片部30、40は、第1のV字溝に沿って、折曲される(図6図4(b)参照。)。
【0040】
2本のL字アングルT11の距離(幅寸法W2)が、蓋形成板1の左側の第1の仮想ラインT11を基準として左側板6を折曲した状態の天板2側の幅寸法W1よりも大きく形成されていることによって、左側板6の起立角度θおよび2箇所の袖片部30、40の起立角度θは、それぞれ90°以下となる。
例えば、起立角度θは88°程度、起立角度θは89°程度とすることができる。この起立角度θ、θの設定は、左側板6と袖片部30、40の高さや厚み、樹脂量などによって変更することができる。
【0041】
折曲後、自然冷却させると、左側板6の起立角度θと袖片部30、40の起立角度θは、熱収縮により変化し、略90°となる。このため、左側板6と袖片部30、40は平面視において一直線上に配置され、固化することとなる。
【0042】
次いで、蓋形成板1の右側の第1の仮想ラインL1に対して、断面V字の突出部m1を有する熱板Mで加熱押圧する。この加熱押圧によって右側の第1の仮想ラインL1には、第1のV字溝V1が形成される。
【0043】
次に、図8に示す第2の治具T2を使用する。第2の治具は、載置台T20と、該載置台T20上に平行に配置される2本のL字アングルT21と、双方のL字アングルT21の側面の各一部となる2箇所に取着される当接部材T22と、載置台T20上に配置される後方位置決め部T23を有している。
【0044】
また2本のL字アングルT21間の距離は、蓋形成板1の双方の第1の仮想ラインL1を基準として左側板6及び右側板5をそれぞれ折曲した状態の天板2側の幅寸法W3よりも数ミリメートル程度大きい寸法W4に設定している(図10参照。)。
【0045】
また、第2の治具T2における当接部材T22においても、折曲されていない状態の袖片部30、40に対応する位置に配置してあり、その長さ寸法Lは、当該袖片部30、40の長さ寸法(高さ寸法)Hを確保している。また、第1の治具T1と同様に、当接部材T22による蓋形成板1の傷付きを防止し、かつ、当接部材T22をL字アングルT21に取着するために、当接部材T22を被覆する被覆材(粘着面を有するテープ)を設けている。当接部材Y22は被覆材で被覆された状態で、L字アングルT21の側面に対して取着される。尚、被覆材は薄膜であるため、図面上省略している。
【0046】
図9に示すように、上記第2の治具の2本のL字アングルT21間に対して、前記右側の第1の仮想ラインL1に対して加熱押圧がされた蓋形成板1を嵌め込み、後方位置決め部T23に当該蓋形成板1の後端を押し当て、天板2を載置台T20に密着させると、右側板5が第1のガイド部となるL字アングルT21に線接触で当接し、また隣接する2箇所の袖片部30、40が、それぞれ当接部材T22と線接触で当接する。そして、当該右側板5と袖片部30、40は、溶融状態の右側の第1のV字溝V1に沿って、折曲される。
【0047】
2本のL字アングルT21間の距離(幅寸法W4)が、蓋形成板1の双方の第1の仮想ラインL1を基準として左右側板5、6を折曲した状態の天板2側の幅寸法W3よりも大きく形成されていることによって、右側板5の起立角度θおよび2箇所の他の袖片部30、40の起立角度θは、それぞれ90°以下となる。例えば、起立角度θは88°程度、起立角度θは89°程度とすることができる。この起立角度θ、θの設定は、右側板6と他の袖片部30、40の高さや厚み、樹脂量などによって変更することができる。
【0048】
折曲後、自然冷却させると、左側板6の起立角度θと袖片部30、40の起立角度θは、熱収縮により変化し、略90°となる。このため、左側板6と袖片部30、40は平面視において一直線上に配置され、固化することとなる。
従って、次工程である第2の工程において、左右側板5、6と袖片部30、40とがずれを生じないように溶着作業を行うことができる。
【0049】
尚、左右側板5、6が第1のガイド部となるL字アングルT11、T21に線接触で当接し、また隣接する2箇所の袖片部30、40が、それぞれ当接部材T12、T22と線接触で当接することから、自然冷却によって左右側板5、6および袖片部30、40は僅かに熱収縮する程度となる。
【0050】
第2の工程として、一方となる後端側の第2の仮想ラインL2、及び、起立された左右側板5、6のうち後端側の接合端部50、60並びに後端側の袖片部40に対して、断面V字の突出部m2を有する熱板Mで加熱押圧する(図11参照。)。
【0051】
当該熱板Mによる加熱押圧により、後方側の第2の仮想ラインL2、及び、後端側の接合端部50、60並びに後端側の袖片部40は、溶融状態となる。
後方側の第2の仮想ラインL2には、第2のV字溝(断面V字状輪郭を有する溝)が形成されるとともに、当該第2のV字溝の両側縁に沿って畝部が形成される。
【0052】
後側板4およびその両端に連続して起立状態にある各袖片部40を、後方側の第2のV字溝を基準として起こすことにより、溶融状態にある当該各袖片部40と、後端側の各接合端部50、60とを溶着させるとともに、後方側の第2のV字溝に平行する二つの畝部70aを相互に溶着して2列の畝部70を形成することができる。
【0053】
次に、他方となる前端側の第2の仮想ラインL2、及び、起立された左右側板5、6のうち前端側の接合端部50、60並びに前方側の袖片部30に対して、断面V字の突出部m2を有する熱板Mで加熱押圧する。
【0054】
当該熱板Mによる加熱押圧により、前方側の第2の仮想ラインL2、及び、前端側の接合端部50、60並びに前端側の袖片部30は、溶融状態となる。
前方側の第2の仮想ラインL2には、第2のV字溝が形成されるとともに、当該第2のV字溝の両側に沿って畝部が形成される。
【0055】
前側板3およびその両端に起立状態にある各袖片部30を、前方側の第2のV字溝を基準として起こすことにより、溶融状態にある当該各袖片部30と、前端側の各接合端部50、60とを溶着させるとともに、前方側の第2のV字状溝に平行する二つの畝部70aを相互に溶着して2列の畝部70を形成することができる。
【0056】
以上のように所定の切欠部が形成された蓋形成板1を、第1の工程、および第2の工程により処理することにより、物品搬送箱用蓋Cが完成する。
【0057】
更にその後、第3の工程として、当該物品搬送箱用蓋Cにおける遮光性を向上させるため、右側板と左側板における接合端部と袖片部の継ぎ目となる平行する2列の畝部を、当該畝部が冷却されていない状態において図示されない鏝を用いて押圧し、1列の畝部することができる。
【0058】
以上に示した実施例に係る物品搬送箱用蓋Cは、上記したように低発泡合成樹脂板により構成したものであるが、本発明においては、無発泡合成樹脂板を用いることもできるし、中空合成樹脂板を用いることができる。低発泡板については、概ね発泡倍率8倍以下のものが好適に使用できる。中空合成樹脂板としては、例えば、図17(a)に示すような、上下二枚のシートp1、p2間に平行するリブp3を列設した中空合成樹脂板pや、図17(b)に示すような、上下二枚のシートp4、p5間にハニカム構造のコア材p6を連接配置した中空合成樹脂板p(例えば、商品名:テクセル(登録商標)、岐阜プラスチック株式会社製)、ポリプロピレン製の円柱状に真空成形したシートと上下二枚のシートを熱融着した三層構造中空積層シート(商品名:プラパール(登録商標)、川上産業株式会社製)等、種々の公知の中空合成樹脂板を用いることができる。
【0059】
尚、遮光性を向上させる観点からすると、中空合成樹脂板を用いる際には厚みは概ね9mm以上、低発泡合成樹脂板を用いる際には厚みは概ね3mm以上、発泡倍率は3倍程度までがよく、無発泡合成樹脂板を用いる際には厚みは概ね1mm以上がよい。また合成樹脂板の色については、黒色若しくは暗色が望ましい。ここで暗色とはJIS(日本産業規格)に規定されるマンセル表色系(JIS Z8721)において、明度が5.0以下をいうものとする。
【0060】
また、本発明においては、図12に示すように、上記実施例で示した物品搬送箱用蓋Cと同様の構成を有し、物品搬送箱用蓋Cに嵌合する箱本体Dを構成することができ、これによって、物品搬送箱用蓋Cと箱本体Dからなる、精度の高い物品搬送用箱E(図13参照。)を構成することができる。
【0061】
ここで箱本体Dは、図14に示す箱本体形成板8を、上記実施例に示した一部に断面V字の突出部m1、m2を有する上記熱板Mと、上記第1の治具及び第2の治具を用いることによって、製造することができる。
【0062】
箱本体形成板8は、底板80を中央に配置し、その周縁に前側板81、後側板82、右側板83、左側板84を備え、前側板81及び後側板82は両端に袖片部を備え、右側板及83及び左側板84は両端に接合端部を備える。
【0063】
この箱本体形成板8の左側の第1の仮想ラインL3に対して、断面V字の突出部m1を有する熱型Mで押圧溶融し、第1のV字溝を形成する。
【0064】
次に、箱本体形成板8を、当該箱本体形成板8のサイズに適合させた第1の治具T1の作業台T10上に載置して、第1のV字溝を基準として、左側板及び両側の袖片部を88°以上90°未満で折曲し、一定時間静置する。
【0065】
その後、箱本体形成板8の右側の第1の仮想ラインL3に対して断面V字の突出部m1を有する熱型Mで押圧溶融し、第1のV字溝を形成する。
【0066】
次に、箱本体形成板8を当該箱本体形成板8のサイズに適合させた第2の治具の作業台上に載置して、第1のV字溝を基準として、右側板及び両側の袖片部を88°以上90°未満で折曲し、一定時間静置する。
【0067】
この箱本体形成板8の後方側の第2の仮想ラインL4及び、起立された左右側板83、84のうち後端側の接合端部83a、83b並びに後端側の袖片部82aに対して、一部に断面V字の突出部m2を有する熱型Mで押圧溶融し、後側板82およびその両端に連続して起立状態にある各袖片部82aを、後方側の第2のV字溝を基準として起こすことにより、溶融状態にある当該各袖片部82aと、後方側の各接合端部83a、83bとを溶着させるとともに、後方側の第2のV字溝に平行する2つの畝部を相互に溶着して2列の畝部を形成する。
【0068】
また箱本体形成板8の前方側の第2の仮想ラインL4及び、起立された左右側板83、84のうち前方側の接合端部83a、84a並びに前方側の袖片部81aに対して、一部に断面V字の突出部m2を有する熱型Mで押圧溶融し、前側板81およびその両端に連続して起立状態にある各袖片部81aを、前方側の第2のV字溝を基準として起こすことにより、溶融状態にある当該各袖片部81aと、前方側の各接合端部83a、84aとを溶着させるとともに、前方側の第2のV字溝に平行する2つの畝部を相互に溶着して2列の畝部を形成する。
【0069】
以上のように所定の切欠部が形成された箱本体形成板8を、第1の工程、および第2の工程により処理することにより、物品搬送用箱の箱本体Dが完成する。
【0070】
更にその後、第3の工程として右側板と左側板における接合端部と袖片部の継ぎ目となる平行する2列の畝部を、当該畝部が冷却されていない状態において図示されない鏝を用いて押圧し、1列の畝部85とすることができる。
【0071】
尚、上記実施例においては、第1工程において、第1の治具T1および第2の治具T2を使用したが、本発明は上記方法に限られるものではなく、例えば、蓋形成板1の両端の第1の仮想ラインL1の双方に熱処理を行い、双方に第1のV字溝V1を形成したのち、第1の治具T1を使用せず、第2の治具T2にて当該双方の第1のV字溝V1を基準として蓋形成板1の両端を折曲する構成とすることもできる。
【0072】
また本発明における物品搬送箱用蓋は、前記した図12図13に示すような箱本体Dと組み合わせて使用できるほか、例えば、図15図16に示すように公知の箱本体D1と組み合わせることも可能である。物品搬送箱用蓋の精度が高いことによって、当該物品搬送箱用蓋の胴膨れが抑制され、当該箱本体D1と組み合わせた場合に、その隙間が低減されて異物の混入を防ぐことが可能となる。
更に、物品搬送箱用蓋の精度を高めたことによって、公知の箱本体D1に当該物品搬送箱用蓋を使用することで、遮光性を高めることも可能である。
【0073】
また本発明においては、左右側板5、6の起立角度θは、合成樹脂板が厚物(例えば、厚さが9mm~15mm程度)である場合、熱収縮前の状態において、85°~88°とすると好適である。85°未満の場合には、熱収縮によっても90°に近い精度が実現できず、88°を超えると、当該物品搬送箱用蓋の開口が狭くなり、箱としての機能を損なうおそれがある。
また合成樹脂板が薄物(例えば、厚さが9mm未満)である場合、熱収縮前の状態において、87°~88°とすると好適である。87°未満の場合には、熱収縮によっても90°に近い精度が実現できず、88°を超えると、当該物品搬送箱用蓋の開口が狭くなり、箱としての機能を損なうおそれがある。
【0074】
また本発明においては、袖片部30、40の起立角度θは、熱収縮前の状態において、90°若しくはこれに近い角度としておくことができる。袖片部30、40は高さが低い分、熱収縮による寸法差が出にくいためである。
但し、合成樹脂板が中空合成樹脂板の場合には樹脂量が比較的少ないため、袖片部30、40の溶着強度を確保すべく、当該袖片部30、40を若干傾斜させることができる。その際の傾斜角度を微調節するため、袖片部30、40と接触する当接部材12を厚みの異なるものに変更することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 蓋形成板
10a 隅部切欠部
10b 第1のV字状切欠部
10c 第2のV字状切欠部
10d 第3のV字状切欠部
2 天板
3 前側板
30 袖片部
4 後側板
40 袖片部
5 右側板
50 接合端部
6 左側板
60 接合端部
70 2列の畝部
71 1列の畝部
8 箱本体形成板
80 底板
81 前側板
81a 袖片部
82 後側板
82a 袖片部
83 右側板
83a 接合端部
84 左側板
84a 接合端部
85 1列の畝部
C 物品搬送箱用蓋
D 箱本体
D1 公知の箱本体
E 物品搬送用箱
H 長さ寸法(高さ寸法)
L 長さ寸法
L1 第1の仮想ライン
L2 第2の仮想ライン
L3 第1の仮想ライン
L4 第2の仮想ライン
M 熱板
m1、m2 突出部
T1 第1の治具
T10 作業台
T11 L字アングル
T12 当接部材
T13 後方位置決め部
T2 第2の治具
T20 作業台
T21 L字アングル
T22 当接部材
T23 後方位置決め部
V 第1のV字溝
W1 幅寸法
W2 幅寸法
W3 幅寸法
W4 幅寸法
θ 起立角度
θ 起立角度
【要約】
【課題】使用時の不体裁、収納効率の低下、重量の増加、異物の混入の可能性も低減でき、遮光性を高めることができる物品搬送箱用蓋等の提供。
【解決手段】無発泡又は低発泡合成樹脂板、又は中空合成樹脂板のいずれかからなる蓋形成板で構成し、蓋形成板は天板と各側板とを有し、一組の側板は両端に袖片部を備え、他の側板は袖片部に当接可能な接合端部を両端に備え、蓋形成板の接合端部を有する側板と袖片部を区画する第1の仮想ラインに第1のV字溝を形成し、接合端部を有する側板、および、前記袖片部を、それぞれ起立角度90°以下で折曲起立し、接合端部を有する側板および前記袖片部が、熱収縮で起立角度を略90°とし、袖片部を有する側板を区画する第2の仮想ラインに第2のV字溝を形成し接合端部と袖片部の端部が溶融され、接合端部と袖片部とを溶着してなる物品搬送箱用蓋。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17