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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】インダクタおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/00 20060101AFI20220913BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20220913BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20220913BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
H01F17/00 A
H01F17/04 F
H01F27/29 123
H01F41/04 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017183405
(22)【出願日】2017-09-25
(65)【公開番号】P2019062002
(43)【公開日】2019-04-18
【審査請求日】2020-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】古川 佳宏
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-139413(JP,U)
【文献】特公昭57-051247(JP,B1)
【文献】特開平09-180937(JP,A)
【文献】特許第5082675(JP,B2)
【文献】特開2014-013815(JP,A)
【文献】特開2014-229739(JP,A)
【文献】特開2001-244123(JP,A)
【文献】特開2007-019333(JP,A)
【文献】国際公開第2015/133310(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/169162(WO,A1)
【文献】特開2011-071457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00
H01F 27/29
H01F 17/04
H01F 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅Wを有する配線と、
前記配線の両端のそれぞれに連続する第1電極および第2電極とを備え、
前記配線、前記第1電極および前記第2電極は、同一平面上にあり、
前記第1電極の平面積S1および前記第2電極の平面積S2のそれぞれは、前記幅Wの2乗値(W2)以上であり、
前記配線が配置されているエリアは、前記第1電極および前記第2電極間に位置し、
前記エリアは、前記第1電極および前記第2電極の対向方向に沿った前記第1電極および前記第2電極間の長さLに等しい長手方向長さXと、前記長手方向に対して直交する方向における短手方向長さYとを有し、
前記長手方向長さXは、前記短手方向長さYの1.5倍値以上であり、
前記配線の厚み方向一方面を被覆する磁性層と、
前記第1電極の厚み方向一方面に配置される第1バンプと、
前記第2電極の厚み方向一方面に配置される第2バンプとをさらに備え、
前記第1バンプおよび前記第2バンプは、前記磁性層と面方向に0.1μm以上の間隔を隔てて配置され
前記第1バンプおよび前記第2バンプの周囲を被覆し、前記配線、前記第1電極および前記第2電極の厚み方向一方側に配置されるカバー絶縁層をさらに備えていることを特徴とする、インダクタ。
【請求項2】
前記磁性層の厚みが、500μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のインダクタ。
【請求項3】
前記第1バンプの平面積BS1の、前記第1電極の平面積S1に対する割合が、70%以上であり、
前記第2バンプの平面積BS2の、前記第2電極の平面積S2に対する割合が、70%以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載のインダクタ。
【請求項4】
前記第1バンプおよび前記第2バンプの厚み方向長さが、前記磁性層の厚みに対して、長いことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のインダクタ。
【請求項5】
前記配線の前記厚み方向他方面に配置されるベース絶縁層と、
前記ベース絶縁層の前記厚み方向他方面に配置される第2磁性層とをさらに備えることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載のインダクタ。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載のインダクタを製造するための製造方法であり、
1つの前記配線、1つの前記第1電極および1つの前記第2電極を含むユニットを、前記面方向における一方向に沿って複数作製する工程、
前記複数のユニットにおける前記複数の配線の前記厚み方向一方面をまとめて被覆するように、前記一方向に長い長尺の磁性シートを前記複数のユニットに対して配置して、前記磁性シートから前記磁性層を形成する工程
前記磁性層を前記一方向に交差する方向に沿って切断して、前記複数のユニットを個片化する工程
前記第1電極の厚み方向一方面に配置される第1バンプと、前記第2電極の厚み方向一方面に配置される第2バンプとを設ける工程であって、前記磁性層と面方向に0.1μm以上の間隔を隔てて配置される前記第1バンプおよび前記第2バンプを設ける工程、および、
前記第1バンプおよび前記第2バンプの周囲を被覆し、前記配線、前記第1電極および前記第2電極の厚み方向一方側に配置されるカバー絶縁層を形成する工程
を備え
前記ユニットにおいて、前記配線、前記第1電極および前記第2電極は、同一平面上にあり、
前記第1電極の平面積S1および前記第2電極の平面積S2のそれぞれは、前記幅Wの2乗値(W2)以上であり、
前記配線が配置されているエリアは、前記第1電極および前記第2電極間に位置し、
前記エリアは、前記第1電極および前記第2電極の対向方向に沿った前記第1電極および前記第2電極間の長さLに等しい長手方向長さXと、前記長手方向に対して直交する方向における短手方向長さYとを有し、
前記長手方向長さXは、前記短手方向長さYの1.5倍値以上であることを特徴とする、インダクタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インダクタは、電子機器などに搭載されて、電圧変換部材などの受動素子として用いられることが知られている。
【0003】
例えば、厚み方向に重ね合わせた多層基板のそれぞれにミアンダ形状に形成した内部電極を設け、複数の内部電極をビアホールで互いに電気的に接続した上で、最上部の内部電極の一端部に上側外部電極を形成し、最下部の内部電極の他端部に下側外部電極を形成した積層チップインダクタが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-86039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電子機器の小型化が進んでおり、そのため、搭載されるインダクタにも小型化が要求される。しかし、特許文献1に記載の積層チップインダクタは、多層基板を備えるので、上記した要求を満足することができないという不具合がある。
【0006】
一方で、インダクタの低抵抗化も要求されているが、特許文献1に記載の積層チップインダクタは、上記した要求を満足することができないという不具合がある。
【0007】
本発明は、小型化および低抵抗化が図られたインダクタおよびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明(1)は、幅Wを有する配線と、前記配線の両端のそれぞれに連続する第1電極および第2電極とを備え、前記配線、前記第1電極および前記第2電極は、同一平面上にあり、前記第1電極の平面積S1および前記第2電極の平面積S2のそれぞれは、前記幅Wの2乗値(W)以上であり、前記配線が配置されているエリアは、前記第1電極および前記第2電極間に位置し、前記エリアは、前記第1電極および前記第2電極の対向方向に沿った前記第1電極および前記第2電極間の長さLに等しい長手方向長さXと、前記長手方向に対して直交する方向における短手方向長さYとを有し、前記長手方向長さXは、前記短手方向長さYの1.5倍値以上である、インダクタを含む。
【0009】
このインダクタでは、配線、第1電極および第2電極が、同一平面上にあるので、厚み方向の小型化を図ることができる。また、エリアの長手方向長さXは、短手方向長さYの1.5倍値以上であるので、エリアの短手方向のより一層の小型化を図ることができる。結果として、インダクタの小型化を図ることができる。
【0010】
また、このインダクタでは、第1電極の平面積S1および第2電極の平面積S2のそれぞれは、配線の幅Wの2乗値(W)以上であるので、インダクタの低抵抗化を図ることができる。
【0011】
その結果、このインダクタでは、小型化および低抵抗化の両方が図られている。
【0012】
本発明(2)は、前記配線の厚み方向一方面を被覆する磁性層をさらに備える、請求項1に記載のインダクタを含む。
【0013】
このインダクタは、配線の厚み方向一方面を被覆する磁性層をさらに備えるので、高インダクタンスを確保することができる。
【0014】
本発明(3)は、前記磁性層の厚みが、500μm以下である、(2)に記載のインダクタを含む。
【0015】
このインダクタでは、磁性層の厚みが、500μm以下である。そのため、インダクタの高インダクタンスを確保しながら、インダクタの小型化を図ることができる。
【0016】
本発明(4)は、前記第1電極の厚み方向一方面に配置される第1バンプと、前記第2電極の厚み方向一方面に配置される第2バンプとをさらに備える、(2)または(3)に記載のインダクタを含む。
【0017】
このインダクタは、第1バンプと第2バンプとを備えるので、インダクタが搭載される電子機器と、第1電極および第2電極との電気的な接続を容易に図ることができる。
【0018】
本発明(5)は、前記第1バンプの平面積BS1の、前記第1電極の平面積S1に対する割合が、70%以上であり、前記第2バンプの平面積BS2の、前記第2電極の平面積S2に対する割合が、70%以上である、(4)に記載のインダクタを含む。
【0019】
このインダクタでは、第1バンプの平面積の、第1電極の平面積に対する割合が、70%以上であり、第2バンプの平面積の、第2電極の平面積に対する割合が、70%以上であるので、インダクタの低抵抗化を図って、電子機器と第1電極との電気的な接続信頼性の低下、および、電子機器と第2電極との電気的な接続信頼性の低下を抑制することができる。
【0020】
本発明(6)は、前記第1バンプおよび前記第2バンプの厚み方向長さが、前記磁性層の厚みに対して、長い、(4)または(5)に記載のインダクタを含む。
【0021】
このインダクタでは、第1バンプおよび第2バンプの厚み方向長さが、磁性層の厚みに対して、長いので、電子機器と、第1電極および第2電極との電気的な接続信頼性を向上させることができる。
【0022】
本発明(7)は、前記第1バンプおよび前記第2バンプは、前記磁性層と面方向に0.1μm以上の間隔を隔てて配置されている、(4)~(6)のいずれか一項に記載のインダクタを含む。
【0023】
このインダクタでは、第1バンプおよび第2バンプは、磁性層と面方向に0.1μm以上の間隔を隔てて配置されているので、第1バンプおよび第2バンプと、磁性層との短絡を有効に防止することができる。そのため、電子機器と、第1電極および第2電極との電気的な接続信頼性を向上させることができる。
【0024】
本発明(8)は、前記第1バンプおよび前記第2バンプの周囲を被覆し、前記配線、前記第1電極および前記第2電極の前記厚み方向一方側に配置されるカバー絶縁層をさらに備える、(4)~(7)のいずれか一項に記載のインダクタを含む。
【0025】
このインダクタは、カバー絶縁層を備えるので、カバー絶縁層により、第1電極、第2電極および配線を被覆(保護)することができ、そのため、電気的な接続信頼性を向上させることができる。
【0026】
本発明(9)は、前記配線の前記厚み方向他方面に配置されるベース絶縁層と、前記ベース絶縁層の前記厚み方向他方面に配置される第2磁性層とをさらに備える、(1)~(8)のいずれか一項に記載のインダクタを含む。
【0027】
このインダクタは、第2磁性層をさらに備えるので、高インダクタンスを確保することができる。
【0028】
本発明(10)は、(2)~9のいずれか一項に記載のインダクタを製造するための製造方法であり、1つの前記配線、1つの前記第1電極および1つの前記第2電極を含むユニットを、前記面方向における一方向に沿って複数作製する工程、前記複数のユニットにおける前記複数の配線の前記厚み方向一方面をまとめて被覆するように、前記一方向に長い長尺の磁性シートを前記複数のユニットに対して配置して、前記磁性シートから前記磁性層を形成する工程、および、前記磁性層を前記一方向に交差する方向に沿って切断して、前記複数のユニットを個片化する工程を備える、インダクタの製造方法を含む。
【0029】
この製造方法は、複数のユニットにおける複数の配線の厚み方向一方面をまとめて被覆するように、一方向に長い長尺の磁性シートを複数のユニットに対して配置して、ユニットを個片化して、磁性シートから磁性層を形成するので、複数のインダクタを効率よく製造することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明のインダクタでは、小型化および低抵抗化の両方が図られている。
【0031】
本発明のインダクタの製造方法は、複数のインダクタを効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1Aおよび図1Bは、本発明のインダクタの一実施形態を示し、図1Aが、カバー絶縁層を省略した平面図、図1Bが、第1バンプ、第2バンプおよびカバー絶縁層を省略した平面図である。
図2図2は、図1Aおよび図1BのC-C線に沿う断面図を示す。
図3図3A図3Eは、図2に示すインダクタの製造工程の断面図であり、図3Aが、ベース絶縁層および導体層を準備する工程、図3Bが、配線、第1電極および第2電極を設ける工程、図3Cが、磁性層および第2磁性層を設ける工程、図3Dが、第1バンプおよび第2バンプを設ける工程、図3Eが、カバー絶縁層を設ける工程を示す。
図4図4A図4Dは、図2に示すインダクタの製造工程の斜視図であり、図4Aが、ベース絶縁層および導体層を準備する工程、図4Bが、配線、第1電極および第2電極を設ける工程、図4Cが、磁性層および第2磁性層を設ける工程、図4Dが、第1バンプおよび第2バンプを設ける工程、カバー絶縁層を設ける工程、および、インダクタ集合体を個片化する工程を示す。
図5図5は、図1Bに示すインダクタの第1変形例の平面図を示す。
図6図6および図7は、図1Bに示すインダクタの第3変形例の平面図を示す。
図7図7は、図1Bに示すインダクタの第3変形例の平面図を示す。
図8図8は、図1Bに示すインダクタの第4変形例の平面図を示す。
図9図9は、図2に示すインダクタの第5変形例の断面図を示す。
図10図10は、図2に示すインダクタの第6変形例の断面図を示す。
図11図11は、図2に示すインダクタの第7変形例の断面図を示す。
図12図12は、図2に示すインダクタの第8変形例の断面図を示す。
図13図13は、図2に示すインダクタの第9変形例の断面図を示す。
図14図14は、図2に示すインダクタの第10変形例の断面図を示す。
図15図15は、比較例1のインダクタの平面図であって、第1バンプ、第2バンプおよびカバー絶縁層を省略した平面図を示す。
図16図16は、図8に示すインダクタの第4変形例のさらなる変形例の平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
<一実施形態>
本発明のインダクタの一実施形態を、図1A図2を参照して、説明する。
【0034】
図1Aおよび図1Bにおいて、紙面左右方向は、インダクタの長手方向を示す。図1Aおよび図1Bの左側は、長手方向一方側であり、図1Aおよび図1Bの右側は、長手方向他方側である。
【0035】
図1Aおよび図1Bにおいて、上下方向は、前後方向(インダクタの短手方向)を示す。図1Aおよび図1Bの下側は、前側(短手方向一方側)であり、図1Aおよび図1Bの上側は、後側(短手方向他方側)である。
【0036】
図1Aおよび図1Bにおいて、紙面紙厚方向は、インダクタの厚み方向を示す。図1Aおよび図1Bの紙面手前側は、上側(厚み方向一方側)であり、図1Aおよび図1Bの紙面奥側は、下側(厚み方向他方側)である。
【0037】
図1Aの平面図では、第1電極11、第2電極12および配線9(配線エリア15)(後述)の平面視(厚み方向に投影したときと同義)における相対配置を明確に示すために、カバー絶縁層6(後述)を省略している。
【0038】
図1Bの平面図では、第1電極11、第2電極12および配線9(配線エリア15)(後述)の平面視(厚み方向に投影したときと同義)における相対配置を明確に示すために、第1バンプ4、第2バンプ5およびカバー絶縁層6(後述)を省略し、磁性層10(後述)を破線で示している。
【0039】
インダクタ1は、長手方向に延びる略矩形シート形状を有する。インダクタ1は、ベース層2と、導体パターン3と、第1バンプ4および第2バンプ5と、磁性層10と、カバー絶縁層6とを備える。
【0040】
ベース層2は、インダクタ1と同一の外形形状のシート形状を有する。ベース層2は、第2磁性層7と、ベース絶縁層8とを厚み方向上側に向かって順に備える。
【0041】
第2磁性層7は、インダクタ1に高いインダクタンスを付与する層である。第2磁性層7は、長手方向および前後方向に沿う平坦な上面および下面を有するシート形状を有する。第2磁性層7は、インダクタ1における最下層である。また、第2磁性層7は、ベース層2の下層でもある。第2磁性層7の材料は、例えば、特開2014-189015号公報などに開示される磁性組成物(具体的には、硬化磁性組成物)などが挙げられる。第2磁性層7の厚みは、例えば、10μm以上、好ましくは、50μm以上であり、また、例えば、500μm以下、好ましくは、300μm以下である。
【0042】
ベース絶縁層8は、第2磁性層7の上面全面に配置されている。ベース絶縁層8は、ベース層2の上層である。ベース絶縁層8は、長手方向および前後方向に沿う平坦な上面および下面を有する。ベース絶縁層8の上面は、ベース層2の上面を形成する。また、ベース絶縁層8の上面は、次に説明する導体パターン3を同一平面上に配置するための平面でもある。ベース絶縁層8の材料は、例えば、ガラス、セラミックスなどの無機材料、例えば、ポリイミド、フッ素樹脂などの有機材料、例えば、それらの複合材料(ガラスエポキシ)などの絶縁材料が挙げられる。ベース絶縁層8の厚みは、例えば、0.1μm以上、好ましくは、0.5μm以上であり、また、例えば、15μm以下、好ましくは、10μm以下である。
【0043】
ベース層2の厚みは、第2磁性層7の厚みおよびベース絶縁層8の厚みの総和であり、例えば、10.1μm以上、好ましくは、50.5μm以上であり、また、例えば、515μm以下、好ましくは、310μm以下である。
【0044】
導体パターン3は、ベース層2の上面に配置されている。導体パターン3は、第1電極11と、第2電極12と、配線9とを連続して備える電極パターンである。
【0045】
第1電極11は、ベース絶縁層8の上面に配置されている。具体的には、第1電極11は、ベース絶縁層8の上面における長手方向一端部(図1Aおよび図1Bにおける左端部)に位置する。また、第1電極11は、導体パターン3における長手方向一端部である。第1電極11は、短手方向(前後方向)に延びる平面視略矩形状を有する。
【0046】
第2電極12は、ベース絶縁層8の上面に配置されている。具体的には、第2電極12は、ベース絶縁層8の上面において、第1電極11に対して長手方向他方側(図1Aおよび図1Bにおける右側)に、間隔を隔てて対向配置されている。詳しくは、第2電極12は、ベース絶縁層8の上面における長手方向他端部(図1Aおよび図1Bにおける右端部)に位置する。また、第2電極12は、導体パターン3における長手方向他端部である。第2電極12は、第1電極11と同一形状を有する。つまり、第2電極12は、短手方向(前後方向)に延びる平面視略矩形状を有する。第1電極11および第2電極12は、1対の電極を形成する。
【0047】
第1電極11および第2電極12の対向方向は、第1電極11および第2電極12を最も短い距離で結ぶ仮想最短線分IL0(図1A参照)に沿う方向(最短方向)である。最短方向は、インダクタ1の長手方向と同一である。仮想最短線分IL0の長さは、第1電極11および第2電極12間の最短距離(長さL)である。
【0048】
配線9は、エリアの一例としての配線エリア15に配置されている。
【0049】
配線エリア15は、第1電極11および第2電極12間に位置するエリアであって、具体的には、インダクタ1における長手方向に沿った第1電極11および第2電極12間の長さLに等しい長手方向長さXと、長手方向に対して直交する方向における短手方向長さの一例である前後方向長さYとを有する。「第1電極11および第2電極12間の長さL」は、後で詳述する。
【0050】
配線エリア15は、インダクタ1の長手方向における、第1電極11の長手方向他端縁(右端縁、第2電極12に近い側の端縁)に沿う第1仮想線分IL1と、第2電極12の長手方向一端縁(左端縁、第1電極11に近い側の端縁)に沿う第2仮想線分IL2との間のエリアであって、かつ、配線9の前端縁に沿う第3仮想線分IL3と、配線9の後端縁に沿う第4仮想線分IL4との間のエリアである。なお、この一実施形態では、第3仮想線分IL3は、第1電極11および第2電極12のそれぞれの前端縁に沿い、第4仮想線分IL4は、第1電極11および第2電極12のそれぞれの後端縁に沿う。第1仮想線分IL1および第2仮想線分IL2は、平行し、また、第3仮想線分IL3および第4仮想線分IL4は、平行しており、第1仮想線分IL1、第2仮想線分IL2、第3仮想線分IL3および第4仮想線分IL4によって仕切られる平面視略矩形状のエリアが、配線エリア15である。すると、配線エリア15の平面積は、配線エリア15の長手方向長さXおよび前後方向長さYの積(XY)で表される。
【0051】
配線9は、第1電極11および第2電極12に連続するように、配線エリア15内に配置される。配線9は、幅Wを有しており、配線エリア15内において、平面視略葛折り形状を有する。配線9の両端部は、第1電極11および第2電極12のそれぞれに連続している。具体的には、配線9は、複数の直線部13と、互いに隣接する2つの直線部13の長手方向一端部間同士または両端部間同士を連結する複数の連結部14とを連続して有する。複数の直線部13は、前後方向に互いに間隔を隔てて配置されている。複数の直線部13のそれぞれは、長手方向に沿って延びる形状を有する。複数の直線部13のうち、例えば、後端部に位置する直線部13が、第1電極11の後端部に連続し、前端部に位置する直線部13が、第2電極12の前端部に連続する。複数の連結部14のそれぞれは、複数の直線部13のそれぞれに対して、短い。複数の連結部14は、配線エリア15内において、第1電極11の近傍、および、第2電極12の近傍に、交互に配置される。
【0052】
また、第1電極11、第2電極12および配線9は、同一平面上にある。第1電極11、第2電極12および配線9は、長手方向に投影したときに、重複し、より具体的には、一致している。また、図2から分かるように、上記投影においても、第1電極11、第2電極12および配線9のそれぞれの上面および下面も、重複し、より具体的には、一致している。
【0053】
導体パターン3における配線9、第1電極11および第2電極12は、同一材料からなる。導体パターン3の材料は、例えば、特開2014-189015号公報に開示される導体が挙げられ、好ましくは、銅などの金属が挙げられる。
【0054】
導体パターン3の厚みは、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、300μm以下、好ましくは、100μm以下である。
【0055】
導体パターン3の平面視における寸法等は、後で詳述する。
【0056】
第1バンプ4は、第1電極11と接続部材21(後述、図2の仮想線参照)との電気的な接続に用いられる接点である。第1バンプ4は、第1電極11の上面に配置されている。具体的には、第1バンプ4は、前後方向および厚み方向に延びる略矩形箱(板)形状を有する。第1バンプ4は、第1電極11と略相似形状を有する。第1バンプ4の下面は、第1電極11の上面の中央部に接触する一方、第1バンプ4の上面は、上側に露出している。なお、第1電極11の周端部は、第1バンプ4から露出している。第1バンプ4の側面(長手方向両側面および前後両面)は、後述するカバー絶縁層6に被覆されている。第1バンプ4は、第1電極11の上面に接触しているので、第1電極ポストでもある。第1バンプ4の材料としては、上記した導体(はんだを含む)が挙げられる。
【0057】
第1バンプ4の平面積BS1の、第1電極11の平面積S1(後述)に対する割合(BS1/S1)は、例えば、70%以上、好ましくは、80%以上、より好ましくは、90%以上であり、また、例えば、100%以下である。BS1/S1が上記した下限以上であれば、第1バンプ4および第1電極11の低抵抗化を図り、電子機器(図示せず)と、第1電極11との電気的な接続信頼性の低下を抑制することができる。
【0058】
第2バンプ5は、第2電極12と接続部材21(後述、図2の仮想線参照)との電気的な接続に用いられる接点である。第2バンプ5は、第2電極12の上面に配置されている。具体的には、第2バンプ5は、前後方向および厚み方向に延びる略矩形箱(板)形状を有する。第2バンプ5は、第2電極12と略相似形状を有する。第2バンプ5の下面は、第2電極12の上面の中央部に接触する一方、第2バンプ5の上面は、上側に露出している。なお、第2電極12の周端部は、第2バンプ5から露出している。第2バンプ5の側面(長手方向両側面および前後両面)は、後述するカバー絶縁層6に被覆されている。第2バンプ5は、第2電極12の上面に接触しているので、第2電極ポストでもある。第2バンプ5の材料は、第1バンプ4の材料と同一である。
【0059】
第2バンプ5の平面積BS2の、第2電極12の平面積S2(後述)に対する割合(BS2/S2)は、例えば、70%以上、好ましくは、80%以上、より好ましくは、90%以上であり、また、例えば、100%以下である。BS2/S2が上記した下限以上であれば、第2バンプ5および第2電極12の低抵抗化を図り、電子機器(図示せず)と、第2電極12との電気的な接続信頼性の低下を抑制することができる。
【0060】
第1バンプ4の厚みT1および第2バンプ5の厚みT1は、互いに同一であって、例えば、15μm以上、好ましくは、50μm以上であり、また、例えば、600μm以下、好ましくは、500μm以下である。なお、第1バンプ4の厚みT1は、第1電極11(導体パターン3)の上面から第1バンプ4の上面までの距離である。第2バンプ5の厚みT1は、第2電極12(導体パターン3)の上面から第2バンプ5の上面までの距離である。
【0061】
磁性層10は、インダクタ1において高インダクタンスを付与する層である。磁性層10は、インダクタ1の長手方向および短手方向に延びる略シート形状を有する。磁性層10は、ベース絶縁層8の上において、配線9を被覆する。そのため、磁性層10は、配線9の形状に対応する下面と、下面の上側に対向する平坦な上面とを備える。一方、磁性層10は、インダクタ1の長手方向において、第1電極11および第2電極12の内側に間隔を隔てて位置しており、第1電極11および第2電極12を被覆していない。
【0062】
つまり、磁性層10の長手方向一端縁は、第1バンプ4の長手方向他端縁に対して長手方向他方側に微小な間隔を隔てて位置し、磁性層10の長手方向他端縁は、第2バンプ5の長手方向一端縁に対して長手方向一方側に微小な間隔を隔てて位置する。具体的には、磁性層10は、第1バンプ4および第2バンプ5に対して、長手方向に、例えば、0.1μm以上、好ましくは、0.3μm以上、より好ましくは、0.5μm以上の間隔INであって、また、例えば、10μm以下の間隔INが隔てられている。
【0063】
上記した間隔INが上記した下限以上であれば、第1バンプ4および第2バンプ5と、磁性層10との短絡を有効に防止することができる。
【0064】
また、磁性層10の前後両端縁は、厚み方向に投影したときに、ベース層2の前後両端縁に一致する。
【0065】
磁性層10の厚みT2は、例えば、第1バンプ4および第2バンプ5の厚みT1に対して、短い。換言すれば、第1バンプ4および第2バンプ5の厚みT1は、磁性層10の厚みT2に対して、長い。
【0066】
具体的には、磁性層10の厚みT2は、第1バンプ4および第2バンプ5の厚みT1に対して、例えば、99%以下、好ましくは、97%以下、より好ましくは、95%以下であり、また、例えば、70%以上である。
【0067】
詳しくは、磁性層10の厚みT2は、例えば、500μm以下、好ましくは、300μm以下、より好ましくは、100μm以下であり、また、例えば、10μm以上である。磁性層10の厚みT2が上記した上限以下であれば、インダクタ1の小型化を図ることができる。
【0068】
なお、磁性層10の厚みT2は、配線9(導体パターン3)の上面から磁性層10の上面までの距離である。
【0069】
第1バンプ4および第2バンプ5の厚みT1が、磁性層10の厚みT2に対して、長ければ、接続部材21(後述)が第1バンプ4および第2バンプ5の上面に接触する際に、接続部材21が磁性層10に接触し難く、そのため、電子機器(図示せず)と、第1電極11および第2電極12との電気的な接続信頼性を向上させることができる。
【0070】
磁性層10の材料は、第2磁性層7の材料と同一である。
【0071】
カバー絶縁層6は、第1電極11、第2電極12および配線9を保護する保護絶縁層である。カバー絶縁層6は、ベース絶縁層8の上において、第1電極11、第1バンプ4、第2電極12、第2バンプ5の周囲を被覆するとともに、磁性層10全体を被覆する。具体的には、カバー絶縁層6は、第1バンプ4の側面と、第2バンプ5の側面と、第1電極11の上面における周端部および側面と、第2電極12の上面における周端部および側面とを被覆している。また、カバー絶縁層6は、磁性層10の側面および上面を被覆している。さらに、カバー絶縁層6は、ベース絶縁層8の上面において、第1電極11および第2電極12と、磁性層10とが形成される部分以外の部分も、被覆している。そのため、カバー絶縁層6は、第1電極11および第2電極12と、磁性層10とに対応する下面と、下面の上側に対向する平坦な上面とを有する。また、カバー絶縁層6の上面は、第1バンプ4および第2バンプ5の上面と面一である。つまり、カバー絶縁層6の上面と、第1バンプ4および第2バンプ5の上面とは、1つの平面を形成する。また、カバー絶縁層6の周端縁は、厚み方向に投影したときに、ベース層2の周端縁と一致する。
【0072】
カバー絶縁層6の材料は、ベース絶縁層8の材料と同一である。カバー絶縁層6の厚みは、例えば、120μm以下、好ましくは、100μm以下であり、また、例えば、0.1μm以上、好ましくは、0.3μm以上である。
【0073】
次に、第1電極11および第2電極12間の長さLと、配線エリア15の長手方向長さXとの関係を、本発明の範囲外である比較例1と対比して詳述する。
【0074】
図1Aおよび図1Bに示すように、一実施形態では、第1電極11および第2電極12間の長さLと、配線エリア15の長手方向長さXとは、等しい。
【0075】
また、図5に示すように、本発明の範囲内にある第1変形例では、後で詳述するが、第1電極11および第2電極12を長手方向に投影したときに、一部が重複しており、第1電極11および第2電極12を最も短い距離で結ぶ仮想最短線分IL0の長さである、第1電極11および第2電極12間の長さLは、配線エリア15の長手方向長さXと、等しい。
【0076】
これらに対して、図15に示すように、比較例1では、第1電極11および第2電極12を長手方向に投影したときに、重複しておらず(ずれており)、そして、仮想最短線分IL0である、第1電極11および第2電極12間の長さLは、配線エリア15の長手方向長さXに比べ、長い。つまり、第1電極11および第2電極12間の長さLと、配線エリア15の長方向長さXとは、相違する。従って、比較例1は、本発明の範囲外である。
【0077】
次いで、図1Aおよび図1Bに示すように、導体パターン3の平面視における寸法を詳述する。
【0078】
配線9の幅Wは、平均値として、例えば、500μm以下、好ましくは、100μm以下であり、また、例えば、10μm以上、好ましくは、50μm以上である。また、隣接する直線部13間の間隔SPは、上記した幅Wと同様である。また、配線9の数は、特に限定されず、例えば、1以上、好ましくは、3以上であり、また、例えば、1000以下、好ましくは、100以下である。
【0079】
第1電極11の平面積S1および第2電極12の平面積S2のそれぞれは、配線9の幅Wの2乗値(W)以上であり、詳しくは、2乗値(W)に対する割合(S1/W、または、S2/W)が、1超過、好ましくは、2以上、より好ましくは、3以上、さらに好ましくは、4以上、とりわけ好ましくは、5以上であり、また、例えば、100以下である。
【0080】
第1電極11の平面積S1および第2電極12の平面積S2のそれぞれが、配線9の幅Wの2乗値(W)に満たなければ、インダクタ1の低抵抗化を図ることができない。換言すれば、第1電極11の平面積S1および第2電極12の平面積S2のそれぞれは、配線9の幅Wの2乗値(W)以上であれば、インダクタ1の低抵抗化を図ることができる。
【0081】
なお、第1電極11の平面積S1は、第1電極11が矩形状であることから、インダクタ1の長手方向における、第1電極11の長さ(短辺)SS1と、前後方向における第1電極11の長さ(長辺)LS1とから求められ、具体的には、SS1×LS1である。
【0082】
第2電極12の平面積S2は、第2電極12が矩形状であることから、インダクタ1の長手方向における、第2電極12の長さ(短辺)SS2と、前後方向における第2電極12の長さ(長辺)LS2とから求められ、具体的には、SS2×LS2である。
【0083】
具体的には、第1電極11の平面積S1および第2電極12の平面積S2は、例えば、10,000μm以上、好ましくは、20,000μm超過、より好ましくは、25,000μm超過であり、また、例えば、100,000μm以下、好ましくは、50,000μm以下である。
【0084】
第1電極11の長辺LS1の配線9の幅Wに対する比(LS1/W)は、例えば、1以上、好ましくは、2以上、より好ましくは、4以上であり、また、例えば、50以下である。第1電極11の短辺SS1は、上記した平面積S1および長辺LS1に対応して適宜設定される。
【0085】
第2電極12の長辺LS2の配線9の幅Wに対する比(LS2/W)は、上記した比(LS1/W)と同様である。第2電極12の短辺SS2は、上記した平面積S2および長辺LS2に対応して適宜設定される。
【0086】
また、配線エリア15の長手方向長さXは、短手方向長さYの1.5倍値以上である。つまり、下記式(1)を満足する。
【0087】
X/Y≧1.5 (1)
好ましくは、下記式(2)を満足する。
【0088】
X/Y≧2.0 (2)
X/Yが上記した下限(式(1)では、1.5、式(2)では、2.0)を下回れば、第2バンプ5の前後方向のより一層の小型化を図ることができない。換言すれば、X/Yが上記した下限以上であれば、第2バンプ5の前後方向のより一層の小型化を図ることができ、結果として、インダクタ1の小型化を図ることができる。
【0089】
次に、インダクタ1の製造方法を、図3A図3Eおよび図4A図4Dを参照して、説明する。
【0090】
図3Aおよび図4Aに示すように、この方法では、まず、ベース絶縁層8および導体層16を準備する。
【0091】
ベース絶縁層8は、最終的に得られるインダクタ1の前後方向(短手方向)に長い長尺シートとして準備する。一方、ベース絶縁層8は、インダクタ1の長手方向長さと同一長さの幅W3を有する。
【0092】
導体層16は、ベース絶縁層8の上面全面に設けられる導体シートである。導体層16の材料は、導体パターン3の材料と同一である。
【0093】
また、ベース絶縁層8および導体層16を、支持シート17で、下側から支持した状態で、準備することができる。支持シート17は、樹脂や金属からなるセパレータである。つまり、支持シート17、第2磁性層7および導体層16を厚み方向上側に向かって順に備える積層体20を準備する。
【0094】
図3Bおよび図4Bに示すように、次いで、導体層16から、導体パターン3を形成する。例えば、エッチングを含むサブトラクティブ法などによって、第1電極11、第2電極12および配線9を有する導体パターン3を形成する。具体的には、1つの第1電極11、1つの第2電極12、および、1つの配線9を含むユニット18を、前後方向(ベース絶縁層8の長尺方向)に沿って複数作製する。
【0095】
図3Cおよび図4Cに示すように、次いで、磁性層10を、ベース絶縁層8の上に、配線9を被覆するように、設ける。
【0096】
磁性層10を設けるには、まず、図3Bの上側図および図4Bの上側図に示すように、前後方向に長い長尺シート形状を有する磁性シート19を準備する。
【0097】
磁性シート19の幅W4は、複数の磁性層10の長手方向長さと同一である。磁性シート19の材料は、例えば、特開2014-189015号公報に開示される硬化性磁性組成物などが挙げられる。磁性シート19の厚みは、得られる磁性層10の厚みに応じて、適宜設定される。
【0098】
続いて、図3Bの矢印および図4Bの矢印で示すように、磁性シート19を、複数のユニット18における複数の配線9の上面および側面をまとめて被覆するように、複数のユニット18に対して配置する。具体的には、長尺の1つの磁性シート19を、複数のユニット18に対して、押圧する(押し下げる)。図3Cおよび図4Cに示すように、その後、あるいは、押圧と同時に、必要により、磁性シート19を硬化させて、前後方向に連続する磁性層10を形成する。
【0099】
同時に、第2磁性層7をベース絶縁層8の下面に設ける。第2磁性層7を設けるには、まず、図3Bに示す支持シート17をベース絶縁層8の下面から剥離し(つまり、積層体20から支持シート17を除去し)、続いて、別の磁性シート19から第2磁性層7を形成する。
【0100】
図3Dおよび図4Dに示すように、次いで、第1バンプ4および第2バンプ5を設ける。具体的には、複数の第1バンプ4および複数の第2バンプ5を、例えば、アディティブ法、サブトラクティブ法などのパターン形成法に従って、第1電極11および第2電極12の上面に形成する。
【0101】
その後、カバー絶縁層6を上記したパターンで設ける。
【0102】
図4Dの仮想線に示すように、これにより、1つのベース層2と、複数のユニット18(図4C参照)と、複数の第1バンプ4および複数の第2バンプ5と、1つの磁性層10と、1つのカバー絶縁層6とを備えるインダクタ集合体22を複数まとめて製造する。
【0103】
その後、図4Dの太い仮想線で示すように、インダクタ集合体22において、複数のユニット18、複数の第1バンプ4および複数の第2バンプ5を個片化するように、長尺状のカバー絶縁層6(図3E参照)と、長尺状の磁性層10と、長尺状のベース層2(ベース絶縁層8および第2磁性層7)とを、インダクタ1の厚み方向(前後方向に直交する方向)に沿って、切断する。
【0104】
これによって、1つのベース層2と、1つの導体パターン3と、1つの第1バンプ4および1つの第2バンプ5と、1つの磁性層10と、1つのカバー絶縁層6とを備えるインダクタ1を製造する。好ましくは、インダクタ1は、ベース層2と、導体パターン3と、第1バンプ4および第2バンプ5と、磁性層10と、カバー絶縁層6とのみからなる。
【0105】
インダクタ1は、後述する電子機器ではなく、電子機器の一部品、すなわち、電子機器を作製するための部品であり、電子素子(チップ、キャパシタなど)や、電子素子を実装する実装基板を含まず、部品単独で流通し、産業上利用可能なデバイスである。
【0106】
このインダクタ1は、例えば、電子機器などに搭載される(組み込まれる)。図示しないが、電子機器は、実装基板と、実装基板に実装される電子素子(チップ、キャパシタなど)とを備える。そして、電子機器において、インダクタ1は、実装基板に実装される。具体的には、図2の仮想線に示すように、ワイヤやはんだなどの接続部材21が、第1バンプ4および第2バンプ5の上面に接触する。インダクタ1は、接続部材21を介して実装基板に実装され、他の電子機器と電気的に接続され、受動素子として作用する。
【0107】
そして、このインダクタ1では、配線9、第1電極11および第2電極12が、同一平面上にあるので、厚み方向の小型化を図ることができる。また、配線エリア15の長手方向長さXは、前後方向長さYの1.5倍値以上であるので、配線エリア15の前後方向の小型化を図ることができる。結果として、インダクタ1のより一層の小型化を図ることができる。
【0108】
また、このインダクタ1では、第1電極11の平面積S1および第2電極12の平面積S2のそれぞれは、配線9の幅Wの2乗値(W)以上であるので、インダクタ1の低抵抗化を図ることができる。
【0109】
このインダクタ1は、磁性層10をさらに備えるので、高インダクタンスを確保することができる。
【0110】
このインダクタ1では、インダクタ1の高インダクタンスを確保しながら、磁性層10の厚みT2が500μm以下であれば、インダクタ1の小型化を図ることができる。
【0111】
このインダクタ1は、第1バンプ4と第2バンプ5とを備えるので、接続部材21を第1電極11および第2電極12の上面に接触させれば、インダクタ1が搭載される電子機器(図示せず)と、第1電極11および第2電極12との電気的な接続を容易に図ることができる。
【0112】
このインダクタ1では、第1バンプ4の平面積BS1の、第1電極11の平面積S1に対する割合が、70%以上であり、第2バンプ5の平面積BS2の、第2電極12の平面積S2に対する割合が、70%以上であれば、インダクタ1の低抵抗化を図って、電子機器(図示せず)と、第1電極11および第2電極12との電気的な接続信頼性の低下を抑制することができる。
【0113】
このインダクタ1では、第1バンプ4および第2バンプ5の厚み方向長さT1が、磁性層10の厚みT2に対して、長ければ、接続部材21が第1バンプ4および第2バンプ5の上面に接触する際に、接続部材21が磁性層10に接触しにくく、そのため、接続部材21の磁性層10に対する接触に起因する短絡を抑制して、電子機器(図示せず)と、第1電極11および第2電極12との電気的な接続信頼性を向上させることができる。
【0114】
このインダクタ1では、第1バンプ4および第2バンプ5は、磁性層10と面方向に100μm以上の間隔INを隔てて配置されれば、第1バンプ4および第2バンプ5と、磁性層10との短絡を有効に防止することができる。そのため、電子機器(図示せず)と、第1電極11および第2電極12との電気的な接続信頼性を向上させることができる。
【0115】
このインダクタ1は、カバー絶縁層6を備えるので、カバー絶縁層6により、第1電極11、第2電極12および配線9を被覆(保護)することができ、そのため、電気的な接続信頼性を向上させることができる。
【0116】
このインダクタ1は、磁性層10の他に、第2磁性層7をさらに備えるので、高インダクタンスを確保することができる。
【0117】
このインダクタ1の製造方法は、複数のユニットにおける複数の配線9の上面をまとめて被覆するように、前後方向に長い長尺の磁性シート19を複数のユニット18に対して配置して、磁性シート19から磁性層10を形成する。つまり、複数のインダクタ1を含むインダクタ集合体22を製造する。その後、インダクタ集合体22を個片化して、複数のインダクタ1を製造する。その結果、複数のインダクタ1を効率よく製造することができる。
【0118】
<変形例>
以下の各変形例において、上記した一実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、各変形例を適宜組み合わせることができる。さらに、各変形例は、特記する以外、一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0119】
また、図5図8の平面図では、第1電極11、第2電極12および配線9(配線エリア15)の相対配置を明確に示すために、第1バンプ、第2バンプおよびカバー絶縁層を省略している。
【0120】
第1変形例
図5に示すように、インダクタ1において、第1電極11および第2電極12を長手方向に投影したときに、一部が重複している。具体的には、第1電極11は、長手方向に投影したときに、配線エリア15の後側部分および前後方向中央部に重複する。第2電極12は、長手方向に投影したときに、配線エリア15の前側部分および前後方向中央部に重複する。そのため、長手方向に投影したときに、第1電極11の前端部と、第2電極12の後端部と、配線エリア15の前後方向中央部とが、重複する。
【0121】
また、第1電極11の前端部と、第2電極12の後端部とは、長手方向に対向する。そのため、第1電極11および第2電極12を最も短い距離で結ぶ仮想最短線分IL0は、長手方向に沿う線分であり、第1実施形態と同様に、仮想最短線分IL0の長さである、第1電極11および第2電極12間の長さLは、配線エリア15の長手方向長さXと、等しい。
【0122】
第2変形例
配線9のパターン形状は、上記に限定されない。図6に示すように、第2変形例では、複数の直線部13は、長手方向方向に互いに間隔を隔てて配置されている。複数の直線部13のそれぞれは、前後方向に延びる。
【0123】
第3変形例
図7に示すように、第3変形例では、配線9は、1つの連結部14のみを有する。連結部14は、長手方向中央部に位置しており、前側の直線部13の長手方向一端縁と、後側の直線部13の長手方向端部を、前後方向に連結する。第3変形例では、連結部14の長さは、直線部13の長さと同一であってもよく、直線部13より長くてもよい。
【0124】
第4変形例
図8に示すように、第4変形例では、複数の直線部13は、前側に向かうに従って長手方向一方側に傾斜する第1傾斜方向において、互いに間隔を隔てて配置されている。複数の直線部13のそれぞれは、第1傾斜方向に直交する方向(前側に向かうに従って長手方向他方側に傾斜する第2傾斜方向)に沿って延びる形状を有する。
【0125】
連結部14は、例えば、平面視湾曲形状を有することができる。
【0126】
第5変形例
図9に示すように、インダクタ1は、第2磁性層7(図2参照)を備えない。ベース層2は、第2磁性層7を含まず、ベース絶縁層8のみからなる。ベース絶縁層8は、インダクタ1における最下層である。
【0127】
第6変形例
図10に示すように、インダクタ1は、ベース絶縁層8(図2参照)を備えない。ベース層2は、ベース絶縁層8を含まず、第2磁性層7のみからなる。第2磁性層7の上面は、導体パターン3を同一平面上に配置するための平面である。つまり、第2磁性層7の上面には、導体パターン3が配置されている。
【0128】
第7変形例
図11に示すように、磁性層10は、第1電極11の周端部および第2電極12の周端部も被覆する。第7変形例においても、磁性層10は、第1バンプ4および第2バンプ5に対して、長手方向に上記した間隔INが隔てられている。
【0129】
第8変形例
図12に示すように、第1バンプ4および第2バンプ5のそれぞれは、第1電極11および第2電極12のそれぞれに対して、下側に配置されている。第1バンプ4および第2バンプ5のそれぞれは、第1電極11および第2電極12の下面に接触している。
【0130】
カバー絶縁層6は、ベース絶縁層8の下に配置されている。カバー絶縁層6は、第1バンプ4および第2バンプ5の側面と、第2磁性層7の下面および側面とを被覆している。カバー絶縁層6は、平面視において、ベース絶縁層8より小さい。
【0131】
第1バンプ4および第2バンプ5のそれぞれは、ベース絶縁層8およびカバー絶縁層6を厚み方向に貫通しており、その下面が、カバー絶縁層6の下面と面一になっている。
【0132】
第2磁性層7は、第1バンプ4および第2バンプ5に対して、長手方向に間隔INが隔てられている。
【0133】
第9変形例
図13に示すように、第1バンプ4および第2バンプ5のそれぞれは、第1電極11および第2電極12の下面に接触し、かつ、第2磁性層7は、第1バンプ4および第2バンプ5の周端部も被覆している。第9変形例においても、第2磁性層7は、第1バンプ4および第2バンプ5に対して、長手方向に上記した間隔INが隔てられている。
【0134】
第10変形例
図14に示すように、インダクタ1は、第1バンプ4および第2バンプ5(図2参照)を備えない。つまり、インダクタ1は、ベース層2と、導体パターン3と、磁性層10と、カバー絶縁層6とのみからなる。
【0135】
カバー絶縁層6は、第1電極11および第2電極12のそれぞれの上面の中央部を露出する第1開口部24および第2開口部25を有する。
【0136】
第1電極11および第2電極12のそれぞれの上面に、第1開口部24および第2開口部25のそれぞれを介して、接続部材21が接触する。
【0137】
その他の変形例
一実施形態では、配線エリア15を画定する第3仮想線分IL3と第4仮想線分IL4とは、第1電極11および第2電極12のそれぞれの前端縁と後端縁とに沿っているが、例えば、図16に示すように、第4変形例のさらなる変形例として、第3仮想線分IL3が、第1電極11および第2電極12の前端縁より前側に位置し、第4仮想線分IL4が、第1電極11および第2電極12の後端縁より後側に位置することもできる。
【0138】
一実施形態では、導体パターン3をサブトラクティブ法で形成しているが、図示しないが、導体層16を準備せず、種膜を用いたアディティブ法で導体パターン3をベース絶縁層8の上面に形成することもできる。
【0139】
また、インダクタ1は、ロールトゥロール法および枚葉法のいずれの方法でも製造することができる。
【0140】
一実施形態では、図3Dに示すように、第1バンプ4および第2バンプ5を設け、その後、図3Eに示すように、カバー絶縁層6を設けている。しかし、図示しないが、まず、カバー絶縁層6を、第1開口部24および第2開口部25を有するパターンで設け、その後、第1バンプ4および第2バンプ5を設けることもできる。
【実施例
【0141】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0142】
実施例1
図1A図2に示す一実施形態のインダクタ1を、上記の製造方法に従って製造した。インダクタ1は、第2磁性層7と、ベース絶縁層8と、導体パターン3と、第1バンプ4および第2バンプ5と、磁性層10と、カバー絶縁層6とを備える。
【0143】
導体パターン3は、第1電極11、第2電極12および配線9を含み、材料が、銅であり、厚みが、50μmであった。また、第1バンプ4および第2バンプ5の材料は、SnAgCuはんだであり、厚みが、140μmであった。
【0144】
第2磁性層7および磁性層10の材料は、特開2014-189015号公報の実施例1に記載の磁性組成物であった。
【0145】
第1電極11、第2電極12および配線9の寸法と、第1バンプ4および第2バンプ5と、磁性層10との間隔INとは、それぞれ、表1に記載の通りであった。
【0146】
実施例2~比較例1
第1電極11および第2電極12の寸法等を、表1に記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様にインダクタ1を準備した。
【0147】
なお、実施例3は、図5に示す第1変形例のインダクタ1であり、また、比較例1は、図15に示す、本発明の範囲外であるインダクタ1である。
【0148】
<評価>
[抵抗]
製造途中の図3Bおよび図4Bに示す第1電極11および第2電極12間の抵抗R1と、得られたインダクタ1における第1バンプ4および第2バンプ5間の抵抗R2とを、4端子法で、それぞれ、測定し、第1電極11および第2電極12間の抵抗R1の、第1バンプ4および第2バンプ5間の抵抗R2に対する百分率(R1/R2×100)を算出した。
【0149】
[短絡]
第1バンプ4および磁性層10間の抵抗値を、2端子端子法で測定し、下記に従って、第1バンプ4および磁性層10間の短絡性(導通性)を評価した。
【0150】
○:1MΩ以上。
【0151】
△:0.1MΩ超過、1MΩ未満。
【0152】
×:0.1MΩ未満。
【0153】
【表1】
【符号の説明】
【0154】
1 インダクタ
4 第1バンプ
5 第2バンプ
6 カバー絶縁層
7 第2磁性層
8 ベース絶縁層
9 配線
10 磁性層
11 第1電極
12 第2電極
15 配線エリア
18 ユニット
19 磁性シート
BS1 第1バンプの平面積
BS2 第2バンプの平面積
IN 磁性層と、第1バンプおよび第2バンプとの間隔
L 長手方向(最短方向)に沿った第1電極および第2電極間の長さ
S1 第1電極の平面積
S2 第2電極の平面積
T1 第1バンプおよび第2バンプの厚み
T2 磁性層の厚み
X 長手方向長さ
Y 前後方向長さ
W 幅
幅の2乗値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16