(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】表示制御装置及び表示システム
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20220913BHJP
B60R 1/20 20220101ALI20220913BHJP
B60R 1/24 20220101ALI20220913BHJP
B60R 1/26 20220101ALI20220913BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20220913BHJP
G06T 7/60 20170101ALI20220913BHJP
【FI】
H04N7/18 J
B60R1/20 100
B60R1/24
B60R1/26 200
G06T7/00 650A
G06T7/60 200J
(21)【出願番号】P 2018010217
(22)【出願日】2018-01-25
【審査請求日】2020-08-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】フォルシアクラリオン・エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 大輔
【審査官】益戸 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-012904(JP,A)
【文献】特開2014-129021(JP,A)
【文献】特開2007-022454(JP,A)
【文献】特開2015-101282(JP,A)
【文献】特開2014-013455(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0032005(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
B60R 1/20
G06T 7/00
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車線を走行する車両の前方を撮像する前方カメラにより時系列順に撮像して得られた前方画像を取得する前方画像取得部と、
前記前方画像に基づいて、前記走行車線と前記走行車線に隣接する隣接車線とを仕切る区画線の位置を算出する区画線位置算出部と、
前記車両の速度ベクトルに基づいて、前記車両の移動軌跡を算出する移動軌跡算出部と、
前記区画線位置算出部の算出結果と前記移動軌跡算出部の算出結果とに基づいて、区画線位置を保持したマップを生成するマップ生成部と、
前記マップ生成部により生成された前記マップに基づいて、前記区画線に対応した擬似区画線像を前記車両の後側方を撮像する後側方カメラによ
り撮像して得られた後側方画像に対応付けて重畳させた合成画像を表示部に表示する表示制御部と、を有することを特徴とする表示制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示制御装置において、
前記車両が前記隣接車線に移動するか否かを判断する移動判断部を備え、
前記表示制御部は、前記移動判断部により前記車両が前記隣接車線に移動すると判断された場合、前記擬似区画線像を目立つ色で前記後側方画像に対応付けて重畳させた合成画像を前記表示部に表示することを特徴とする表示制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の表示制御装置において、
前記車両のドライバが前記車両を旋回させようとする旋回意思を検出する旋回意思検出部を備え、
前記表示制御部は、前記旋回意思検出部により前記旋回意思が検出された場合、前記擬似区画線像を目立つ色で前記後側方画像に対応付けて重畳させた合成画像を前記表示部に表示することを特徴とする表示制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の表示制御装置において、
前記隣接車線を前記車両に後続して走行する後続車両が存在するか否かを判断する後続車両存在判断部を備え、
前記表示制御部は、前記後続車両存在判断部により前記後続車両が存在すると判断された場合、前記擬似区画線像を目立つ色で前記後側方画像に重畳させた合成画像を前記表示部に表示することを特徴とする表示制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の表示制御装置において、
前記表示制御部は、前記区画線位置算出部により算出された前記区画線の位置に基づいて、前記隣接車線と前記隣接車線に前記走行車線と反対側に隣接する隣々接車線とを仕切る区画線に対応した擬似区画線像を、前記走行車線と前記走行車線に隣接する隣接車線とを仕切る区画線に対応した擬似区画線像とは異なる色で前記表示部に表示することを特徴とする表示制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の表示制御装置と、
前記表示部と、
前記車両の車速を検出する車速センサと、
前記車両の操舵角を検出する操舵角センサと、を有することを特徴とする表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示制御装置及び表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な車線は、車両の走行方向に沿った例えば白線又は黄線の実線又は破線等の区画線で仕切られている。従来、走行車線を走行する車両の前方を撮像し、その撮像された画像に基づいてその走行車線と隣接する車線と仕切る区画線を検出し、当該車両が走行車線を逸脱すると判定されたときに警報信号を出力する車線逸脱警報装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、車両の後側方を視認するためのサイドミラー等があるが、このサイドミラーに代えて、カメラで車両の後側方を撮像し、その撮像により得られる後側方画像をモニタに表示するシステムがある。ところが、サイドミラーを後側方カメラに置き換えた場合、後側方カメラの撮像素子は人間の目と比べてダイナミックレンジが狭く、また、カメラの露光補正の影響で後側方画像をモニタに表示できないことがある。その結果、ドライバは車両の後側方を視認することができないことがある。
【0005】
例えば、夜間走行中に、車両とその後続車両との間の距離が短いときには、後続車両のヘッドライトの明るさによって、露光補正され、後側方画像に含まれる、相対的に暗い区画線が黒潰れしてモニタに表示されない。その結果、ドライバは区画線を視認することができない。さらに、昼間走行中も、逆光等の影響で太陽光が後側方カメラに射し込んでいるような場合には、後側方画像に含まれる区画線が太陽光の明るさによって白飛びしてモニタに表示されない。その結果、ドライバは区画線を視認することができない。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、区画線が後側方画像に映り難い状況であっても、区画線をドライバに分かり易く表示することのできる表示制御装置及び表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る表示制御装置は、走行車線を走行する車両の前方を撮像する前方カメラにより時系列順に撮像して得られた前方画像を取得する前方画像取得部と、前記前方カメラにより前記前方画像が撮像された時点から前記車両が前記走行車線を移動した期間における前記車両の移動に基づいて、前記走行車線と前記走行車線に隣接する隣接車線とを仕切る区画線の位置を算出する区画線位置算出部と、前記車両の速度ベクトルに基づいて、前記車両の移動軌跡を算出する移動軌跡算出部と、前記区画線位置算出部の算出結果と前記移動軌跡算出部の算出結果とに基づいて、マップを生成するマップ生成部と、前記マップ生成部により生成された前記マップに基づいて、前記区画線に対応した擬似区画線像を前記車両の後側方を撮像する後側方カメラにより前記車両の前記移動後に撮像して得られた後側方画像に対応付けて重畳させた合成画像を表示部に表示する表示制御部と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る表示システムは、本発明に係る表示制御装置と、前記表示部と、前記車両の車速を検出する車速センサと、前記車両の操舵角を検出する操舵角センサと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このように構成された本発明に係る表示制御装置及び表示システムによれば、区画線が後側方画像に映り難い状況であっても、区画線をドライバに分かり易く表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施例1に係る表示制御装置が適用される道路状態について説明する図である。
【
図2A】実施例1に係る表示制御装置を適用した表示システムの具体的な機器構成を示すハードウェアブロック図である。
【
図2B】機能ブロックとデータの流れを示す説明図である。
【
図3】実施例1に係る表示制御装置で行われる一連の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】自車両に後続する後続車両が存在する道路状態を示す説明図である。
【
図5】表示制御装置の適用場面として夜間走行中の自車両とその後続車両が存在する道路状態を示す説明図である。
【
図6】自車両の移動軌跡の算出手順を示す説明図である。
【
図7A】自車両の位置が中心となるように生成されたマップの一例を示す説明図である(その1)。
【
図7B】自車両の位置が中心となるように生成されたマップの一例を示す説明図である(その2)。
【
図7C】自車両の位置が中心となるように生成されたマップの一例を示す説明図である(その3)。
【
図7D】自車両の位置が中心となるように生成されたマップの一例を示す説明図である(その4)。
【
図7E】マップの更新処理の一例を示す説明図である(その1)。
【
図7F】マップの更新処理の一例を示す説明図である(その2)。
【
図7G】マップの更新処理の一例を示す説明図である(その3)。
【
図7H】マップの更新処理の一例を示す説明図である(その4)。
【
図8】擬似区画線像を後側方画像に対応付けて重畳させた合成画像の一例を示す説明図である。
【
図9A】実施例2に係る表示制御装置を適用した表示システムの具体的な機器構成を示すハードウェアブロック図である。
【
図9B】機能ブロックとデータの流れを示す説明図である。
【
図10】実施例2に係る表示制御装置で行われる一連の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る表示制御装置及び表示システムの具体的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0012】
(表示制御装置の適用場面の説明)
まず、
図1及び
図2を用いて、表示制御装置100(
図3参照)の概要と、表示制御装置100が適用される道路状態について説明する。表示制御装置100は、例えば片側3車線の車線数を有する道路を自車両10が走行中に動作する。
【0013】
図1は、表示制御装置100が適用される道路の一例を示す図である。道路は、左側領域LZの車線数が3車線であり、右側領域RZの車線数が3車線であり、全車線数が6車線からなる。左側領域LZは、一番右側の追越車線20(走行車線)と、追越車線20の左側に隣接する走行車線22(隣接車線)と、走行車線22に追越車線20と反対側に隣接する走行車線24(隣々接車線)とからなる。
【0014】
右側領域RZ及び左側領域LZは、レーンマーカLM1(区画線)で仕切られている。追越車線20及び走行車線22は、レーンマーカLM2(区画線)で仕切られている。走行車線22及び走行車線24は、レーンマーカLM3(区画線)で区画されている。
図1では、レーンマーカLM1、LM4を実線で示し、レーンマーカLM2、LM3を破線で示している。自車両10は、追越車線20を
図1の紙面上向き(矢印10dの方向)に走行している。
【0015】
(表示制御装置を適用したシステム構成の説明)
図2Aは、表示制御装置100を適用した表示システム1を構成するハードウェア要素を示すハードウェアブロック図である。
図2Bは、機能ブロックとデータの流れを示す説明図である。
【0016】
表示システム1は、自車両10に設置されている。表示システム1は、前方カメラ20F,左後側方カメラ20L,右後側方カメラ20Rと、表示装置30(表示部)と、ジャイロセンサ40と、GPS(Global Positioning System)50と、ナビゲーション装置60と、車速センサ70と、操舵角センサ80と、レーザレーダ90と、表示制御装置100と、を有する。
【0017】
前方カメラ20Fは、例えば自車両10の車室内に自車両10の前方を向いて取り付けられている。その結果、前方カメラ20Fは、追越車線20を走行する自車両10の前方を撮像する。
【0018】
電子ミラー用の左後側方カメラ20Lは、自車両10の前部の左側面に後方を向いて取り付けられている。その結果、左後側方カメラ20Lは、自車両10の側面の一部を含む左側後方の画像を撮像する。電子ミラー用の右後側方カメラ20Rは、自車両10の前部の右側面に後方を向いて取り付けられている。その結果、右後側方カメラ20Rは、自車両10の右側面の一部を含む右側後方の画像を撮像する。なお、以下では、左後側方カメラ20L及び右後側方カメラ20Rを特に区別しないときは、単に後側方カメラ20Bともいう。
【0019】
表示装置30は、例えば矩形状のフラットパネルディスプレイ(液晶、有機EL、プラズマ等)であり、自車両10のドライバが視認できる位置に配置される。表示装置30は、例えば、ドライバの指等により押圧可能な透明のタッチパネルが貼り付けられている。その結果、ドライバの指が表示装置30に接触した場合、その接触はタッチパネルにより検出され、指の位置座標を入力することができる。
【0020】
ジャイロセンサ40は、自車両10の地平線に対する姿勢(傾き)を検出する。ジャイロセンサ40で検出された情報は、表示制御装置100に出力され、表示制御装置100における演算処理で利用される。
【0021】
GPS50は、人工衛星により発信される複数の電波を受信することによって、電波の受信位置における自車両10の位置情報(緯度及び経度)を検出する。GPS50で検出された情報は、表示制御装置100に出力され、表示制御装置100における演算処理で利用される。
【0022】
ナビゲーション装置60には、表示装置30への地図表示に必要な地図情報、ドライバが所望する目的地を検索するための位置検索情報、経路を音声で案内するための情報等が予め記憶されている。地図データ中には、各地点の高度(海抜)情報が含まれる。ナビゲーション装置60で記憶されている各種情報は、表示制御装置100に出力され、表示制御装置100における演算処理で利用される。
【0023】
車速センサ70は、自車両10の車速を検出する。操舵角センサ80は、自車両10の操舵角を検出する。
【0024】
レーザレーダ90は、例えば、自車両10の後方のバンパ位置に取り付けられる。レーザレーダ90は、発振させたパルス状のレーザ光を自車両10の後方領域に出射する。レーザレーダ90は、出射したレーザ光が、例えば、自車両10の後方の所定領域に存在する後続車両16(
図4)に当たって反射した反射レーザ光を受光することにより、自車両10から後続車両16までの方向や距離を測定する。
【0025】
(表示制御装置の構成の説明)
表示制御装置100は、前方画像取得部101と、後側方画像取得部102と、区画線位置算出部103と、表示制御部104と、移動軌跡算出部105と、記憶部106と、マップ生成部107と、を有する。
【0026】
表示制御装置100の内部には、例えば、周辺デバイスを含めたマイクロプロセッサ及びプログラム、必要な処理を実行するCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、画像処理や信号処理を行う専用ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のモジュールが実装されている。
【0027】
前方画像取得部101は、前方カメラ20Fにより時系列順に撮像して得られた前方画像を取得し、その取得した前方画像をその取得した時刻に対応付けて記憶部106に記憶する。
【0028】
後側方画像取得部102は、後側方カメラ20Bにより撮像して得られた後側方画像を取得し、その取得した前方画像をその取得した時刻に対応付けて記憶部106に記憶する。
【0029】
区画線位置算出部103は、前方カメラ20Fにより前方画像が撮像された時点から自車両10が追越車線20を移動した期間における自車両10の移動に基づいて、追越車線20と走行車線22とを仕切るレーンマーカLM2(
図1)の位置を算出する。
【0030】
表示制御部104は、自車両10の移動前に区画線位置算出部103により算出されたレーンマーカLM2,LM3,LM4(
図1)の位置に基づいて、レーンマーカLM2,LM3,LM4にそれぞれ対応した擬似区画線像I2,I3,I4(
図8)を自車両10の後側方を撮像する後側方カメラ20Bにより自車両10の移動後に撮像して得られた後側方画像に対応付けて重畳させた合成画像を表示装置30に表示する。
【0031】
移動軌跡算出部105は、自車両10の速度ベクトルに基づいて、自車両10の移動軌跡を算出する。
【0032】
表示制御部104、移動軌跡算出部105及びマップ生成部107の詳細は後述する。
【0033】
(表示制御装置100で行われる一連の処理の流れ)
次に、表示制御装置100で行われる一連の処理の流れを、
図3に示すフローチャートと、
図5、
図6、
図7A、
図7B、
図7C、
図7D及び
図8に示す説明図とを用いて説明する。
【0034】
図4は、後側方画像の一例であって、自車両10に後続する後続車両16が存在する道路状態を示している。
図5は、後側方画像の一例であって、表示制御装置100の適用場面として夜間走行中の自車両10とその後続車両16が存在する道路状態を示している。
【0035】
この道路状態において、自車両10と後続車両16との間の距離が短いときには、後続車両16のヘッドライトHL(
図5)の明るさによって、露光補正され、後側方画像に含まれる、相対的に暗いレーンマーカLM2,LM3,LM4が黒潰れして表示装置30に表示されない。その結果、自車両10のドライバは表示装置30を通じてレーンマーカLM2,LM3,LM4を視認することができない。
【0036】
図3に示す一連の処理は、走行車線22を自車両10に後続して走行する後続車両16(
図4)が存在することが検出されたときに開始される。
【0037】
(ステップS1)
まず、区画線位置算出部103は、記憶部106に記憶されている前方画像に基づき、区画線として例えばレーンマーカLM2(
図4)の位置を算出する。なお、区画線の位置を算出する技術は、例えば特開2014-13455号公報等で提案されているなど既に周知であるため詳細な説明は省略するが、実施例1では、前方画像におけるエッジ(輝度値が急激に変わる点)の強度を算出して区画線の位置が算出される。
【0038】
(ステップS2)
次に、移動軌跡算出部105は、下記式(1)に示すように、速度ベクトルV(t)を時間積分することで自車両10の移動軌跡P(t)を算出する。なお、速度ベクトルV(t)の算出に必要な情報は、車速センサ70及び操舵角センサ80から出力された情報が必要に応じて使用される。具体的に、速度ベクトルV(t)は、操舵角センサ80から出力された操舵角に基づく回転半径R(
図6)と、車速センサ70から出力された車速とに基づいて算出される。
【数1】
・・・(1)
【0039】
(ステップS3)
次に、マップ生成部107は、区画線位置算出部103の算出結果と移動軌跡算出部105の算出結果とに基づいて、マップを生成する。
図7A,
図7B,
図7C,
図7Dは、自車両10の位置が中心となるように生成されたマップの一例である。各マップM中の三角形T1で示す領域は、前方カメラ20Fで撮像可能な範囲である。各マップM中の三角形T2で示す領域は、左後側方カメラ20Lで撮像可能な範囲である。各マップM中の三角形T3で示す領域は、右後側方カメラ20Rで撮像可能な範囲である。
マップの座標系は、例えば自車両10が起動(エンジンON等)した時点での基準位置が原点となる。基準位置の一例には、後輪車軸の中心等を挙げることができる。自車両10が移動しても、原点の場所は変わらない(世界座標に固定)。座標軸は、例えば左右方向がX軸、前後方向がY軸等のように、起動時の自車両10の方向に合わせて調整される。本実施形態の移動軌跡算出部105における算出結果は、すべてこの座標系での値が使用される。
マップの範囲については概念的に無限大の広さを有する。しかし、実装上無限大の領域は扱えないので、記録対象の範囲は制限される(例、縦30メートル、横30メートル等)。この際、自車両10がマップの中心に位置するように、自車両10の移動に合わせてマップの範囲が切り替えられる。ただし、マップの範囲の切り替えは、例えば平行移動のみで実現され、自車両10に合わせた回転は不要とされる。その理由は、マップ画像の回転が情報劣化をもたらし得るからである。
マップ情報の保持方法については画像情報と同様に取り扱われる。例えば、1画素のサイズを縦1センチ、横1センチと定義した場合、縦30メートル×横30メートルのマップは縦3000ピクセル×横3000ピクセルとなる。
マップに保持する情報については、区画線位置算出部103の算出結果がマップに反映される。マップは画像ゆえ、例えば、初期値を黒、区画線を白と決めた場合、区画線が存在する領域を白で塗るイメージとなる。この場合、その他の情報はマップで保持されない。すなわち、マップに保持される情報は区画線位置のみである。
【0040】
マップ生成部107は、先行時刻Tに前方カメラ20Fが撮像して得られた画像をマッピングして、マップMを生成する(
図7E)。
後続時刻T+1までに自車両10が前進した場合、その前進に伴い、マップ生成部107はマップMを更新する(
図7F)。
図7F中の点線枠は、時刻T+1のマップ範囲を示す。このとき、マップ生成部107は新しいマップMで範囲外になった部分を破棄する。
そして、マップ生成部107はマップMを自車両10の移動分だけ平行移動させる(
図7G)。
図7Gは、時刻T+1のマップ情報であって、区画線の位置が反映される前のマップ情報を示している。マップ生成部107は、後続時刻T+1までに自車両10が前進した方向及び距離、自車両10の姿勢の変化を補正するように、マップMを写像変換する(
図7G)。
マップ生成部107は新しいマップで拡張された部分に初期値である黒を塗る(
図7G)。マップ生成部107は自車両10の移動分に応じて位置合わせを行い、自車両10が前進した方向及び距離、自車両10の姿勢の変化を吸収しながらマップMを更新していく(
図7H)。
図7Hは、時刻T+1のマップ情報であって、区画線の位置が反映された後のマップ情報を示している。各時刻分のマップMは、それぞれ、区画線位置算出部103の算出結果の瞬間値情報に相当する。したがって、マップ生成部107は各時刻分のマップMを蓄積しなくてもよい。
【0041】
(ステップS4)
次に、区画線位置算出部103は、記憶部106に記憶されているマップMに基づき、ステップS1と同様の処理を行い、例えばレーンマーカLM1~LM4の各位置を算出する。
【0042】
(ステップS5)
次に、表示制御部104は、マップMの二次元座標系をカメラ座標系の三次元座標に変換する。この変換方法は、例えば画像を拡大または縮小または回転するアフィン変換等により既に周知である。そのため、詳細な説明は省略する。
【0043】
(ステップS6)
次に、表示制御部104は、マップ生成部107により生成されたマップM(レーンマーカLM2,LM3,LM4の各位置)に基づいて、レーンマーカLM2,LM3,LM4にそれぞれ対応した擬似区画線像I2,I3,I4を後側方画像BIに対応付けて重畳させた合成画像SI(
図8)を表示装置30に表示する。擬似区画線像I2,I3,I4は、それぞれ、レーンマーカLM2,LM3,LM4をイラスト化した画像である。
【0044】
すなわち、上記実施形態では、表示制御部104は、追越車線20と走行車線22とを仕切るレーンマーカLM2(
図1)が後側方画像に映り難い状況であっても、レーンマーカLM2をドライバに分かり易く表示装置30に表示することができる。もちろん、走行車線22と走行車線24とを仕切るレーンマーカLM3(
図1)や、右側領域RZと左側領域LZとを仕切るレーンマーカLM1(
図1)についても同様のことが言える。なお、レーンマーカLM2が後側方画像に映り難い状況としては、自車両10が夜間走行中の場合には、後続車両16のヘッドライトの光が自車両10の後側方カメラ20Bに入り込んでくる状況が例示される。また、自車両10が昼間走行中の場合には、通常より強い太陽光が自車両10の後側方カメラ20Bに入り込んでくる状況が例示される。
【実施例2】
【0045】
本発明に係る表示制御装置を適用した表示システムの別の具体的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0046】
(表示制御装置を適用したシステム構成の説明)
図9Aは、実施例2に係る表示制御装置200を適用した表示システム2を構成するハードウェア要素を示すハードウェアブロック図である。
図9Bは、機能ブロックとデータの流れを示す説明図である。
【0047】
実施例1で説明した要素と同一の要素については、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。表示制御装置200は、旋回意思検出部108及び後続車両存在判断部109が新たに備え付けられていることを除き、実施例1の表示制御装置100(
図2A及び
図2B)と同じである。
【0048】
旋回意思検出部108は、自車両10のドライバが自車両10を旋回させようとする旋回意思を検出する。旋回意思検出部108は、例えば、ステアリングの方向及びその方向が変化する角度を検出し、その検出結果を基に旋回意思を検出する。ここで、「旋回」とは、ステアリングの操作全般をいい、特に、自車両10がカーブを走行している状態のことをいう。
【0049】
後続車両存在判断部109は、走行車線22を自車両10に後続して走行する後続車両16(
図4)が存在するか否かを判断する。なお、後続車両16が存在するか否かの判断に必要な情報は、レーザレーダ90から出力された情報が必要に応じて使用される。
【0050】
(表示制御装置200で行われる一連の処理の流れ)
次に、表示制御装置200で行われる一連の処理の流れを、
図10に示すフローチャートと、
図7C及び
図8に示す説明図とを用いて説明する。
【0051】
図7Cは、表示制御装置200の適用場面の一例であって、自車両10に後続する後続車両16が存在する道路状態を示している。この道路状態では、自車両10が走行車線22をカーブ走行し、且つ、後続車両16が走行車線24において自車両10の略真後ろとなる位置に存在している。
【0052】
このような道路状態では、自車両10のドライバは、後続車両16が走行車線22を走行中なのか走行車線24を走行中なのか表示装置30を通じて視認し難い。したがって、擬似区画線像I2,I3,I4(
図8)を目立つ色にして表示装置30に表示して、後続車両16が走行車線22を走行中であることを明確にすることが好ましい。目立つ色としては、暗闇に映える暖色系の色、すなわち、赤、ピンク、蛍光色等が例示される。要するに、目立つ色は、一般的な車線の区画線で使用される白線又は黄線より目立つ色であり、自車両10のドライバがレーンマーカを分かり易く視認可能となるような色合いである。
【0053】
図10に示す一連の処理は、旋回意思検出部108において旋回意思が確認され、且つ、後続車両存在判断部109において後続車両16(
図4)が自車両10の略真後ろとなる位置に存在することが検出されたときに開始される。
【0054】
なお、
図10に示すステップU1,U2,U3,U4,U5,U6は、それぞれ、
図4に示すステップS1,S2,S3,S4,S5,S6と同様の処理であるので、詳細な説明を省略する。すなわち、
図10に示すステップU1~U5の処理が実行された後、処理はステップU6に進む。ステップU6において、表示制御部104は、擬似区画線像I2,I3,I4を目立つ色にして後側方画像BIに対応付けて重畳させた合成画像SI(
図8)を表示装置30に表示する。
【0055】
すなわち、実施例2の表示制御装置200及び表示システム2によれば、実施例1での効果に加え、自車両10のドライバにとって、後続車両16が走行車線22を走行中なのか走行車線24を走行中なのか分かり難い道路状況で、表示制御部104は、擬似区画線像I2,I3,I4を目立つ色にして後側方画像BIに対応付けて重畳させた合成画像SIを表示装置30に表示する。これにより、自車両10のドライバは、後続車両16が走行車線24を走行中であると見誤る虞が無くなり、表示システム2としてドライバの運転操作をより安全に支援することができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態を図面により詳述したが、実施形態は本発明の例示にしか過ぎないものであるため、本発明は実施形態の構成にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【0057】
上述した実施例1では、表示制御装置100の適用場面として、自車両10が夜間走行中の場面を示した。しかし、これに限られない。例えば、表示制御装置100は、自車両10が昼間走行中に適用されても良い。すなわち、逆光等の影響で太陽光が後側方カメラ20Bに射し込んでいるような場合には、後側方画像BIに含まれるレーンマーカLM1~LM4が太陽光の明るさによって白飛びして表示装置30に表示されない。
【0058】
その結果、ドライバはレーンマーカLM1~LM4視認することができない。これに対し、実施例1では、表示制御部104は、追越車線20と走行車線22とを仕切るレーンマーカLM2をその所在の如何に関わらず精度良く表示装置30に表示することができる。もちろん、レーンマーカLM1,LM3についても同様のことが言える。
【0059】
上述した実施例1では、前方カメラ20Fは、車室内に取り付けられ、自車両10の前方を撮像する例を示した。しかし、これに限られない。例えば、前方カメラ20Fは、被写界深度と画角が俯瞰画像の生成に適用可能な範囲であれば、車室外に設置されて俯瞰画像の生成に使用されても良い。
【0060】
上述した実施例1では、前方カメラ20Fが等間隔で時系列順に自車両10の前方を撮像する例を示した。しかし、これに限られない。例えば、前方カメラ20Fは不等間隔で時系列順に自車両10の前方を撮像しても良い。
【0061】
上述した実施例1では、表示制御部104は、前方画像(フレーム)の数が少ない場合、間のフレームを線形補間で自車両10の走行履歴を予測する例を示した。しかし、これに限られない。表示制御部104は、昨今、一般的に行われている何れの方法を用いて自車両10の走行履歴を予測しても良い。
【0062】
上述した実施例1では、擬似区画線像I2,I3,I4を、レーンマーカをイラスト化した画像で構成する例を示した。しかし、これに限られない。擬似区画線像I2,I3,I4を、それぞれ、実写のレーンマーカLM2,LM3,LM4に基づいて画像処理で求めても良い。この画像処理は、前方カメラ20Fにより得られた前方画像に含まれるレーンマーカLM2,LM3,LM4を、後側方カメラ20Bにより得られた後側方画像と同じ見え方の画像に変形する処理や、前方カメラ20Fにより得られた前方画像の明度をさらに見易い明度に変える処理が含まれる。また例えば、擬似区画線像を、レーンマーカで挟まれた走行面をイラスト化した画像で構成しても良い。
【0063】
上述した実施例1では、表示制御部104は、擬似区画線像I2,I3,I4を後側方画像BIに対応付けて重畳させた合成画像を表示装置30に表示する例を示した。しかし、これに限られない。例えば、自車両10が走行車線22に移動するか否かを判断する移動判断部を表示制御装置100に新たに備え付けても良い。
【0064】
すなわち、表示制御部104は、当該移動判断部から出力された情報に応じて、擬似区画線像I2,I3,I4を後側方画像BIに対応付けて重畳させた合成画像SIを表示装置30に表示しても良い。具体的に、表示制御部104は、追越車線20から走行車線22に車線変更しようとするドライバの意思としてウィンカ操作がなされた場合に、擬似区画線像I2,I3,I4を例えばピンク、黄、赤等の目立つ色で後側方画像BIに対応付けて重畳させた合成画像SIを表示装置30に表示しても良い。
【0065】
上述した実施例1では、表示制御部104は、区画線位置算出部103により算出されたレーンマーカLM1~LM4の各位置に基づいて、擬似区画線像I2,I3,I4を後側方画像BIに対応付けて重畳させた合成画像SIを表示装置30に表示する例を示した。しかし、これに限られない。例えば、表示制御部104は、区画線位置算出部103により算出されたレーンマーカLM1~LM4の各位置に基づいて、レーンマーカLM3に対応した擬似区画線像I3を、レーンマーカLM2に対応した擬似区画線像I2とは異なる色で表示装置30に表示しても良い。要するに、擬似区画線像I2の色と、擬似区画線像I3の色とが異なっていれば良い。
【0066】
上述した実施例2では、表示制御部104は、擬似区画線像I2,I3,I4を、赤、ピンク、黄等の暖色系の色にして後側方画像BIに対応付けて重畳させた合成画像SIを表示装置30に表示する例を示した。しかし、これに限られない。例えば、表示制御部104は、擬似区画線像I2,I3,I4を、青緑、青、青紫等の寒色系の色又は黄緑、緑、紫、無彩色等の中性色にして後側方画像BIに対応付けて重畳させた合成画像SIを表示装置30に表示しても良い。要するに、擬似区画線像I2,I3,I4は目立つ色であれば良い。
【0067】
上述した実施例2では、自車両10が走行車線22をカーブ走行し、且つ、走行車線24を走行中の後続車両16が自車両10の略真後ろとなる位置に存在している道路状態に表示制御装置200を適用する例を示した。しかし、これに限られない。例えば、自車両10が追越車線20をカーブ走行し、且つ、走行車線22を走行中の後続車両16が自車両10の略真後ろとなる位置に存在している道路状態に表示制御装置200を適用しても良い。
【0068】
上述した実施例1,2では、左側領域LZの車線数を3車線とする例を示した。しかし、これに限られない。左側領域LZの車線数は2車線又は4車線以上であっても良い。右側領域RZの車線数についても同様である。
【符号の説明】
【0069】
1、2・・・表示システム
10・・・自車両(車両)
16・・・後続車両
20・・・追越車線(走行車線)
20B・・・後側方カメラ
20F・・・前方カメラ
20L・・・左後側方カメラ
20R・・・右後側方カメラ
22・・・走行車線(隣接車線)
24・・・走行車線(隣々接車線)
30・・・表示装置
100、200・・・表示制御装置
101・・・前方画像取得部
103・・・区画線位置算出部
104・・・表示制御部
105・・・移動軌跡算出部
107・・・マップ生成部
108・・・旋回意思検出部
109・・・後続車両存在判断部
BI・・・後側方画像
I2、I3、I4・・・擬似区画線像
LM1、LM2、LM3、LM4・・・レーンマーカ(区画線)