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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】投影表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20220913BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018023902
(22)【出願日】2018-02-14
(65)【公開番号】P2019139129
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 順一
(72)【発明者】
【氏名】荻巣 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】杉山 哲也
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/183556(WO,A1)
【文献】特開2016-080860(JP,A)
【文献】特開2016-014861(JP,A)
【文献】国際公開第2017/195740(WO,A1)
【文献】特開平11-023997(JP,A)
【文献】特開2015-225119(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0169612(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示デバイスと、前記表示デバイスから放たれた光を所定の投影位置に向けて表示像として投影し、前記投影位置に投影された光が投影面で反射されてユーザのアイポイントに向かう正規光路を構成する光学系と、前記光が前記正規光路とは異なる光路を経て前記投影位置に至ることを抑制する遮光部と、を備えた投影表示装置であって、
前記光学系は、
前記正規光路の途中に設けられた一対のミラーであって、一方の前記ミラーは前記アイポイントに向かう前記正規光路が収束する光路収束箇所を前記正規光路上に設定可能であるように構成され、他方の前記ミラーは前記光路収束箇所に対応した位置に設けられる、一対のミラーと、
前記一対の前記ミラーと前記投影位置との間の前記正規光路の途中に設けられた、前記一対の前記ミラーとは異なる第3のミラーと、を有し、
前記正規光路は、前記表示デバイスから、前記他方の前記ミラー、前記一方の前記ミラー、及び、前記第3の前記ミラーを、この順に経て、前記投影位置に達するように構成されており、
前記光学系は、
前記表示像を視認することになる前記アイポイントに対応した前記投影位置に、前記一対の前記ミラー及び前記光路収束箇所を経た前記光を投影するように、前記一対の前記ミラーの少なくとも一方の鏡面位置を前記アイポイントに対応させながら調整可能である、ように構成され、
前記遮光部は、
前記一対の前記ミラーの間の前記正規光路に干渉せず、前記一方の前記ミラーと前記第3の前記ミラーとの間の前記正規光路に干渉せず、前記一対の前記ミラーを経ることなく前記光が前記第3の前記ミラーに向かうことになる前記異なる光路に干渉する位置であり、且つ、前記一対の前記ミラーの間の前記正規光路と、前記一方の前記ミラーと前記第3の前記ミラーとの間の前記正規光路と、の間に画成される空間内の位置、に配置される、
投影表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の投影表示装置において、
前記光学系は、
前記光に光学的処理を施す熱遮断フィルタを前記光路収束箇所に対応した位置に有する、
投影表示装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の投影表示装置であって、
前記アイポイントを前記ユーザの操作によらず測定する測定部、及び、前記アイポイントを前記ユーザの操作によって入力する入力部、の少なくとも一方を、更に備えた、
投影表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示デバイスと、表示デバイスから放たれた光を所定の投影位置に向けて表示像として投影する光路を構成する光学系と、を備えた投影表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の運転者が車速表示やナビゲーションシステムの案内表示などの表示像を見る際の視認性を向上させるため、車両用のヘッドアップディスプレイ(HUD)装置を利用することが広く知られている(例えば、特許文献1,2を参照)。
【0003】
一般に、車両用のHUD装置では、表示デバイスから投射された光が、複数の光学部材などによって構成される光学系を経てウインドシールド等の投影位置に投影され、投影位置において反射したその光が運転者のアイポイントに向かうように、光路が形成される。これにより、運転者は、ウインドシールドを通して車両の前方の風景を視認しながら、同時にウインドシールド等に映る表示像を虚像として視認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-173557号公報
【文献】特開2017-181644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、運転者のアイポイントは、運転者の体格やシートへの着座位置などによって相違する。そこで、車両用のHUD装置では、例えば、アイポイントがある程度の範囲内で相違しても運転者が表示像を視認し続けることができるように、その範囲内の様々な位置にアイポイントが存在する場合に対応した様々な光路を実現可能であるように、光学系が設計される。このように、様々な光路を想定して光学系を設計するためには、例えば、光学系を構成する光学部材(例えば、ミラー)の入射可能範囲を大きく確保するべく、光学部材を大きくすることが考えられる。ところが、個々の光学部材が大型化すると、通常、HUD装置全体も大型化することになる。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、様々なアイポイントへの対応と、装置の小型化と、を両立可能な投影表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係る投影表示装置は、下記(1)~(3)を特徴としている。
(1)
表示デバイスと、前記表示デバイスから放たれた光を所定の投影位置に向けて表示像として投影し、前記投影位置に投影された光が投影面で反射されてユーザのアイポイントに向かう正規光路を構成する光学系と、前記光が前記正規光路とは異なる光路を経て前記投影位置に至ることを抑制する遮光部と、を備えた投影表示装置であって、
前記光学系は、
前記正規光路の途中に設けられた一対のミラーであって、一方の前記ミラーは前記アイポイントに向かう前記正規光路が収束する光路収束箇所を前記正規光路上に設定可能であるように構成され、他方の前記ミラーは前記光路収束箇所に対応した位置に設けられる、一対のミラーと、
前記一対の前記ミラーと前記投影位置との間の前記正規光路の途中に設けられた、前記一対の前記ミラーとは異なる第3のミラーと、を有し、
前記正規光路は、前記表示デバイスから、前記他方の前記ミラー、前記一方の前記ミラー、及び、前記第3の前記ミラーを、この順に経て、前記投影位置に達するように構成されており、
前記光学系は、
前記表示像を視認することになる前記アイポイントに対応した前記投影位置に、前記一対の前記ミラー及び前記光路収束箇所を経た前記光を投影するように、前記一対の前記ミラーの少なくとも一方の鏡面位置を前記アイポイントに対応させながら調整可能である、ように構成され、
前記遮光部は、
前記一対の前記ミラーの間の前記正規光路に干渉せず、前記一方の前記ミラーと前記第3の前記ミラーとの間の前記正規光路に干渉せず、前記一対の前記ミラーを経ることなく前記光が前記第3の前記ミラーに向かうことになる前記異なる光路に干渉する位置であり、且つ、前記一対の前記ミラーの間の前記正規光路と、前記一方の前記ミラーと前記第3の前記ミラーとの間の前記正規光路と、の間に画成される空間内の位置、に配置される、
投影表示装置であること。
(2)
上記(1)に記載の投影表示装置において、
前記光学系は、
前記光に光学的処理を施す熱遮断フィルタを前記光路収束箇所に対応した位置に有する、
投影表示装置であること。
(3)
上記(1)又は上記(2)に記載の投影表示装置であって、
前記アイポイントを前記ユーザの操作によらず測定する測定部、及び、前記アイポイントを前記ユーザの操作によって入力する入力部、の少なくとも一方を、更に備えた、
投影表示装置であること。
【0008】
上記(1)の構成の投影表示装置によれば、アイポイントが種々の理由によって相違しても、一対のミラーの少なくとも一方の鏡面位置を調整することで、一方のミラーによって設定される光路収束箇所に対応した位置に他方のミラーが存在する状態を維持しながら、アイポイントに対応した投影位置に表示像を投影させ続けることができる。更に、アイポイントの位置にかかわらず常に他方のミラーが光路収束箇所に対応した位置に配置されるため、他方のミラーに想定される光の入射可能範囲を狭くすることができ、他方のミラーを大型化させることなく様々な光路の全体に対応できる。その結果、投影表示装置そのものを小型化できる。
【0009】
よって、上記構成の投影表示装置によれば、様々なアイポイントへの対応と、装置の小型化と、を両立可能である。
【0010】
なお、光路収束箇所に「対応した」位置とは、光路収束箇所そのものであっても、上述した効果を発揮可能な程度の範囲内で光路収束箇所の近傍であってもよい。
【0011】
上記(2)の構成の投影表示装置によれば、光路収束箇所に対応した位置に、光学的処理を施す光学部材を配置する。これにより、上述した他方のミラーを小型化できる理由と同様の理由により、光学部材を小型化できる。その結果、光学部材を配置することに伴う投影表示装置の大型化を抑制できる。なお、このような光学部材としては、典型的には、外部からの太陽光が光路を逆行して表示デバイスに向かう場合を想定して光路上に配置される熱遮断フィルタ及びコールドミラー等が想定される。
【0012】
上記(3)の構成の投影表示装置によれば、アイポイントを測定部で自動測定することで、表示像の投影位置を自動的に調整できる。または、ユーザが入力部を操作することで、自分のアイポイントに適した投影位置に表示像が投影されるように投影位置を手動で調整できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、様々なアイポイントへの対応と、装置の小型化と、を両立可能な投影表示装置を提供できる。
【0014】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施形態に係るHUD装置の構成の概要及び光路を示す外略構成図である。
図2図2(a)は、アイポイントが上方に移動した場合の第1、第2凹面ミラーの鏡面角度の調整方向及び光路を示す図1に対応する図であり、図2(b)は、アイポイントが下方に移動した場合の第1、第2凹面ミラーの鏡面角度の調整方向及び光路を示す図1に対応する図であり、図2(c)は、図1図2(a)及び図2(b)に示す第1凹面ミラーの周りを重ねて拡大して示した拡大図である。
図3図3は、図1に示す制御装置によって実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図4図4は、図1に示す遮光板の機能を説明するための図1に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
以下、図1図4を参照しながら、本発明の実施形態に係る車両用のHUD装置1(投影表示装置)について説明する。以下、説明の便宜上、図1に示すように、「車両前後方向」、「車両上下方向」、「前」、「後」、「上」、及び「下」を定義する。車両前後方向及び車両上下方向は、互いに直交している。また、車両前後方向及び車両上下方向に直交する方向(図1において紙面奥行方向)を「車両幅方向」と称呼する。
【0017】
図1に示すように、HUD装置1は、車両のダッシュボードDBの上面の一部分に形成した開口部Hから、光を車両のウインドシールドWSに投影できるように構成されている。表示像としては、典型的には、車両の運転に役立つ情報(例えば、車速表示、ナビゲーションシステムの案内表示)が挙げられる。
【0018】
HUD装置1は、表示デバイス10と、光学系20と、制御装置30と、を備える。表示デバイス10及び光学系20は、車両のダッシュボードDBの内側に収容されている。制御装置30は、ダッシュボードDBの内側に収容されていても、ダッシュボードの外側に配置されていてもよい。
【0019】
表示デバイス10は、任意の二次元画像を表示可能な表示面11を有し、表示面11から車両前方に向けて、光を出射するようになっている。表示デバイス10は、HUD装置1に固定配置されている。表示デバイス10としては、典型的には、透過型液晶表示パネルが想定されるが、表示面11の位置にスクリーンを有するプロジェクタが使用されてもよい。
【0020】
光学系20は、第1凹面ミラー21と、第2凹面ミラー22と、第3凹面ミラー23と、熱遮断フィルタ24と、遮光板25と、を含んで構成されている。
【0021】
第1凹面ミラー21は、表示デバイス10に対して車両前方に位置し、車両後方を向いた非球面の凹形状の鏡面を有する。第1凹面ミラー21は、自身の背面側(鏡面とは反対側)に設けられた車両幅方向に延びる回転軸を中心に所定範囲内にて上下に回動可能に、HUD装置1に支持されている。第1凹面ミラー21の角度は、自身の背面側に設けられた第1アクチュエータ21aによって任意に調整可能となっている。図1に示す第1凹面ミラー21の角度は、調整範囲内における設計上の標準角度を示している。
【0022】
第2凹面ミラー22は、表示デバイス10に対して車両後方且つ車両上方に位置し、車両前方を向いた非球面の凹形状の鏡面を有する。第2凹面ミラー22は、自身の背面側(鏡面とは反対側)に設けられた車両幅方向に延びる回転軸を中心に所定範囲内にて上下に回動可能に、HUD装置1に支持されている。第2凹面ミラー22の角度は、自身の背面側に設けられた第2アクチュエータ22aによって任意に調整可能となっている。図1に示す第2凹面ミラー22の角度は、調整範囲内における設計上の標準角度を示している。
【0023】
第3凹面ミラー23は、第1凹面ミラー21に対して車両前方かつ車両上方で、且つ、開口部Hの直下に位置し、車両後方を向いた非球面の凹形状の鏡面を有する。第3凹面ミラー23は、HUD装置1に(回動不能に)固定配置されている。
【0024】
表示デバイス10の表示面11から車両前方に向けて出射された光は、光路(光束)L1を通って第1凹面ミラー21に向かい、第1凹面ミラー21の鏡面に入射した光は、当該鏡面で反射されて光路(光束)L2を通って第2凹面ミラー22に向かい、第2凹面ミラー22の鏡面に入射した光は、当該鏡面で反射されて光路(光束)L3を通って第3凹面ミラー23に向かい、第3凹面ミラー23の鏡面に入射した光は、当該鏡面で反射されて光路(光束)L4を通って開口部Hから出射されて、ウインドシールドWSの内側面(投影面)の投影位置Pに投影される。
【0025】
ウインドシールドWSの投影位置Pに投影された光は、ウインドシールドWSの投影面で反射されて光路(光束)L5を通って運転者のアイポイントEPに向かう。図1に示すアイポイントEPは、運転者のアイポイントの設計上の標準位置を示している。よって、図1に示すアイポイントEPに対応する図1に示す投影位置Pは、投影位置の設計上の標準位置を示す。
【0026】
光路(光束)L1~L5は、表示デバイス10の表示面11から出射される光の一部である、運転者がアイポイントEPで視認する表示像を構成する光、が通過する設計上の標準光路を示す。例えば、光路L2について、第2凹面ミラー22側からみたとき、光路L2が第1凹面ミラー21の鏡面上の1点である光路収束箇所Cで収束する。換言すれば、第2凹面ミラー22の鏡面の凹形状によって形成される光路L2の光路収束箇所Cに第1凹面ミラー21の鏡面が位置している。
【0027】
運転者は、アイポイントEPで、HUD装置1が投射する表示像を視認することができる。実際に運転者が視認する表示像は、ウインドシールドWSよりも車両前方の所定の位置に虚像VIとして結像される。
【0028】
なお、図1に示す例では、HUD装置1が出射した光をウインドシールドWSの投影面で反射してアイポイントEPに導いているが、ウインドシールドWSに代えて、コンバイナ又はハーフミラー等の光学反射部材を採用し、HUD装置1が出射した光をこの光学反射部材の投影面で反射してアイポイントEPに導くように構成してもよい。
【0029】
熱遮断フィルタ24は、第1凹面ミラー21と第2凹面ミラー22との間の光路L2上における第1凹面ミラー21の近傍位置(即ち、光路L2の光路収束箇所Cの近傍位置)において、HUD装置1に固定配置されている。熱遮断フィルタ24は、表示デバイス10から出射される光を透過し、太陽光を遮断する特性を有するフィルタである。熱遮断フィルタ24は、外部からの太陽光が、光路L4,L3,L2,L1を逆行して表示デバイス10に向かい、表示デバイス10が太陽光の熱によって過度に加熱されること等を防止するために設けられている。
【0030】
遮光板25は、第1凹面ミラー21と第3凹面ミラー23との間において光路L2,L3に干渉しない位置及び向きで、HUD装置1に固定配置されている。遮光板25は、図4に示すように、表示デバイス10から出射された光が、正規の光路L1,L2,L3,L4,L5とは異なる光路Lgを通ってアイポイントEPに到達することで、運転者が正規の表示像に加えて所謂ゴースト像を視認する事態の発生を防止するために設けられている。前述の通り、本実施形態において光路L2について、第2凹面ミラー22側からみたとき、光路L2が第1凹面ミラー21の鏡面上の1点である光路収束箇所Cで収束する。換言すれば、第2凹面ミラー22の鏡面の凹形状によって形成される光路L2の光路収束箇所Cに第1凹面ミラー21の鏡面が位置している。従って、光路L2の幅が細くなり、遮光板25の配置の自由度が向上し、HUD装置1全体の大型化が抑制される。更に、遮光板25は、表示デバイス10が太陽光に曝されることを抑制するように、外部からの太陽光を遮る機能も有する。ここで、HUD装置1では第1凹面ミラー21と第2凹面ミラー22との間で光路L2が収束されるようになっているため、光路L2が収束された分だけ、HUD装置1の内部空間に余裕ができる。そこで、この余裕を利用し、遮光板25を大型化できる。遮光板25を大型化することで、表示デバイス10に到達する太陽光をより確実に遮光できることになる。
【0031】
制御装置30は、表示デバイス10、第1アクチュエータ21a、第2アクチュエータ22a、及び、ウインドシールドWSの内側面の上側の所定位置に設けられているアイポイント測定用カメラ31と、電気的に接続されているマイクロコンピュータである。アイポイント測定用カメラ31は、運転者のアイポイントEPの位置を測定するために、運転者の顔(目)の周りを撮影するカメラである。
【0032】
制御装置30は、車両の状態に応じて、表示デバイス10の表示面11から出射される光を制御するようになっている。制御装置30は、第1アクチュエータ21aを制御することで、第1凹面ミラー21の角度を調整するようになっている。制御装置30は、第2アクチュエータ22aを制御することで、第2凹面ミラー22の角度を調整するようになっている。制御装置30は、アイポイント測定用カメラ31が撮影した画像を解析して、運転者のアイポイントEPの位置を測定するようになっている。
【0033】
次いで、図2を参照しながら、HUD装置1による、アイポイントEPの位置に応じた第1、第2凹面ミラー21,22の角度の調整について説明する。アイポイントEPの位置は、運転者の体格等によって相違する。アイポイントEPが異なれば、ウインドシールドWSの投影面上における、アイポイントEPに対応する投影位置Pも異なる。
【0034】
具体的には、図2(a)に示すように、アイポイントEPが図1に示す標準位置から上方に移動した位置にある場合、ウインドシールドWSの投影面上における、アイポイントEPに対応する投影位置Pも、図1に示す標準位置から上方に移動する。このように、投影位置Pを図1に示す標準位置から上方に移動するためには、表示デバイス10からウインドシールドWSの投影面までの光路を、図1に示す標準の光路L1,L2,L3,L4,L5から、図2(a)に示す光路L1a,L2a,L3a,L4a,L5aに移動する必要がある。
【0035】
このため、図2(a)に示すように、第1、第2凹面ミラー21,22の角度がそれぞれ、図1に示す標準角度から変更される。図2(a)に示す例では、第1凹面ミラー21の角度が図1に示す標準角度から下向きに変更され、第2凹面ミラー22の角度が図1に示す標準角度から上向きに変更されている。
【0036】
ここで、図2(a)に示す光路L2aについても、図1に示す光路L2と同様、第2凹面ミラー22側からみたとき、光路L2aが第1凹面ミラー21の鏡面上の1点である光路収束箇所Caで収束している。図2(c)に示すように、第1凹面ミラー21の鏡面上において、光路収束箇所Ca(図2(a)参照)は、光路収束箇所C(図1参照)よりも、若干上方に移動した位置にある。
【0037】
一方、図2(b)に示すように、アイポイントEPが図1に示す標準位置から下方に移動した位置にある場合、ウインドシールドWSの投影面上における、アイポイントEPに対応する投影位置Pも、図1に示す標準位置から下方に移動する。このように、投影位置Pを図1に示す標準位置から下方に移動するためには、表示デバイス10からウインドシールドWSの投影面までの光路を、図1に示す標準の光路L1,L2,L3,L4,L5から、図2(b)に示す光路L1b,L2b,L3b,L4b,L5bに移動する必要がある。
【0038】
このため、図2(b)に示すように、第1、第2凹面ミラー21,22の角度がそれぞれ、図1に示す標準角度から変更される。図2(b)に示す例では、第1凹面ミラー21の角度が図1に示す標準角度から上向きに変更され、第2凹面ミラー22の角度が図1に示す標準角度から下向きに変更されている。
【0039】
ここで、図2(b)に示す光路L2bについても、図1に示す光路L2と同様、第2凹面ミラー22側からみたとき、光路L2bが第1凹面ミラー21の鏡面上の1点である光路収束箇所Cbで収束している。図2(c)に示すように、第1凹面ミラー21の鏡面上において、光路収束箇所Cb(図2(b)参照)は、光路収束箇所C(図1参照)よりも、若干下方に移動した位置にある。
【0040】
このように、HUD装置1では、アイポイントEPが設計上想定される範囲内で上下に移動しても、第1、第2凹面ミラー21,22の角度を変更することで、第2凹面ミラー22によって発生する光路L2の光路収束箇所に第1凹面ミラー21の鏡面が位置する状態を維持しながら、ウインドシールドWSの投影面上におけるアイポイントEPに対応した投影位置Pに表示像が投影される。よって、アイポイントEPが設計上想定される範囲内で上下に移動しても、運転者が表示像を視認し続けることができる。
【0041】
次いで、図3に示すフローチャートを参照しながら、HUD装置1の制御装置30が、アイポイントEPの位置に応じて第1、第2凹面ミラー21,22の角度を調整する際の具体的な処理の流れについて説明する。制御装置30は、所定のタイミングが到来する毎に、図3に示す処理を繰り返し実行する。
【0042】
先ず、HUD装置1が作動状態であるか否かが判定され(ステップS1)、HUD装置1が作動状態でない場合(ステップS1でNo)、表示デバイス10がOFF状態に維持される(ステップS6)。一方、HUD装置1が作動状態である場合(ステップS1でYes)、表示デバイス10がON状態とされる(ステップS2)。
【0043】
次いで、アイポイント測定用カメラ31が撮影した画像を公知の手法の1つを用いて解析することで、運転者のアイポイントEPの位置が測定される(ステップS3)。
【0044】
アイポイントEPの位置の測定が完了すると、測定されたアイポイントEPの位置に応じた第1、第2凹面ミラー21,22の角度が算出され(ステップS4)、第1、第2凹面ミラー21,22の実際の角度が算出された角度とそれぞれ一致するように、第1、第2アクチュエータ21a,22aがそれぞれ制御される(ステップS5)。第1、第2凹面ミラー21,22の角度の調整が完了する。
【0045】
これにより、第2凹面ミラー22によって発生する光路L2の光路収束箇所Cに第1凹面ミラー21の鏡面が位置する状態を維持しながら、ステップS2で測定されたアイポイントEPに対応した投影位置Pに表示像が投影されることになる。
【0046】
以上、本発明の実施形態に係るHUD装置1によれば、アイポイントEPが設計上想定される範囲内で移動しても、第1、第2凹面ミラー21,22の角度を変更することで、第2凹面ミラー22によって発生する光路L2の光路収束箇所に第1凹面ミラー21の鏡面が位置する状態を維持しながら、ウインドシールドWSの投影面上におけるアイポイントEPに対応した投影位置Pに表示像が投影され得る。よって、アイポイントEPが設計上想定される範囲内で移動しても、運転者が表示像を視認し続けることができる。
【0047】
加えて、アイポイントEPが設計上想定される範囲内で移動しても、第1凹面ミラー21の鏡面が光路L2の光路収束箇所に常に配置されるため、第1凹面ミラー21の鏡面における想定される光の入射範囲を狭くすることが可能となる。このとき、図2(c)に示す光路収束箇所C,Ca,Cbの間隔が狭くなるように光学系20を設計することで、第1凹面ミラー21を極めて小さくすることができる。この結果、HUD装置1全体の小型化が可能である。
【0048】
よって、HUD装置1によれば、アイポイントEPが設計上想定される範囲内で移動しても運転者が表示像を視認し続けることができ、且つ、HUD装置1全体の小型化が可能となる。
【0049】
更に、熱遮断フィルタ24が、第1凹面ミラー21と第2凹面ミラー22との間の光路L2上における第1凹面ミラー21の近傍位置、即ち、光路の光路収束箇所の近傍位置に配置されている。この結果、熱遮断フィルタ24における想定される光の入射範囲を狭くすることが可能となる。このため、第1凹面ミラー21と同様の理由で、熱遮断フィルタ24を小さくすることができる。その結果、熱遮断フィルタ24を配置することに伴うHUD装置1全体の大型化が抑制され得る。
【0050】
更に、上記実施形態では、第1凹面ミラー21、第2凹面ミラー22及び第3凹面ミラー23は、凸面形状を有する非球面ミラーである。これに対し、凸面形状を有する非球面ミラーや凹面と凸面とが混在した非球面ミラーが用いられてもよい。また、上記実施形態では、第1凹面ミラー21及び第2凹面ミラー22が回動可能となっているが、更に第3凹面ミラー23が回動可能となっていてもよい。
【0051】
更に、アイポイント測定用カメラ31が撮影した画像を用いてアイポイントEPを自動で測定することで、第1、第2凹面ミラー21,22の角度、ひいては、ウインドシールドWSの投影面上における表示像の投影位置Pを自動で調整することができる。
【0052】
<他の形態>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0053】
例えば、上記実施形態では、アイポイント測定用カメラ31が撮影した画像を用いてアイポイントEPを自動で測定して、投影位置Pを自動で調整している。これに対し、アイポイント測定用カメラ31に代えて、運転者が操作可能な調整レバー等の入力部を設けてもよい。この場合、運転者が入力部を操作することで、自分のアイポイントEPに合わせた投影位置Pが得られるように投影位置Pを手動で調整することができる。
【0054】
更に、上記実施形態では、第1、第2凹面ミラー21,22の双方の角度を変更することで、ウインドシールドWSの投影面上における投影位置Pを変更している。これに対し、第1、第2凹面ミラー21,22の何れか一方のみの角度を変更することで、ウインドシールドWSの投影面上における投影位置Pを変更するように構成してもよい。
【0055】
更に、上記実施形態では、光学系20において、熱遮断フィルタ24及び遮光板25が含まれている。これに対し、熱遮断フィルタ24及び遮光板25の何れか一方又は双方が省略されてもよい。
【0056】
ここで、上述した本発明に係るHUD装置1(投影表示装置)の実施形態の特徴をそれぞれ以下(1)~(3)に簡潔に纏めて列記する。
(1)
表示デバイス(10)と、前記表示デバイスから放たれた光を所定の投影位置に向けて表示像として投影する光路(L1,L2,L3,L4)を構成する光学系(20)と、を備えた投影表示装置(1)であって、
前記光学系は、
前記光路の途中に設けられた一対のミラー(21,22)であって、一方の前記ミラー(22)は前記光が収束された光路収束箇所(C)を前記光路上に設定可能であるように構成され、他方の前記ミラー(21)は前記光路収束箇所に対応した位置に設けられる、一対のミラーを有すると共に、
前記表示像を視認することになるユーザのアイポイント(EP)に対応した前記投影位置(P)に、前記一対の前記ミラー及び前記光路収束箇所を経た前記光を投影するように、前記一対の前記ミラーの少なくとも一方の鏡面位置を前記アイポイントに対応させながら調整可能である、ように構成された、
投影表示装置。
(2)
上記(1)に記載の投影表示装置において、
前記光学系は、
前記光に光学的処理を施す光学部材(24)を前記光路収束箇所に対応した位置に有する、
投影表示装置。
(3)
上記(1)又は上記(2)に記載の投影表示装置であって、
前記アイポイントを前記ユーザの操作によらず測定する測定部(31)、及び、前記アイポイントを前記ユーザの操作によって入力する入力部、の少なくとも一方を、更に備えた、
投影表示装置。
【符号の説明】
【0057】
1 投影表示装置
10 表示デバイス
20 光学系
21 第1凹面ミラー(他方のミラー)
22 第2凹面ミラー(一方のミラー)
24 熱遮断フィルタ(光学部材)
31 アイポイント測定用カメラ(測定部)
C 光路収束箇所
EP アイポイント
L1,L2,L3,L4 光路
P 投影位置
図1
図2
図3
図4