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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】リアサスペンション装置
(51)【国際特許分類】
   B60G 7/02 20060101AFI20220913BHJP
   B60G 9/04 20060101ALI20220913BHJP
   F16F 13/14 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
B60G7/02
B60G9/04
F16F13/14 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018026428
(22)【出願日】2018-02-16
(65)【公開番号】P2019142295
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-12-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522297236
【氏名又は名称】株式会社プロスパイラ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】大津 一高
【審査官】西田 侑以
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-312336(JP,A)
【文献】特開2008-007043(JP,A)
【文献】特開2015-120364(JP,A)
【文献】特開2015-098277(JP,A)
【文献】特開2012-101724(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00 - 99/00
F16F 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延びるとともに、後部にタイヤが取付けられる左右一対のトレーリングアームと、
前記トレーリングアームの前部と車体とを連結する防振ブッシュと、
前記左右一対のトレーリングアーム同士を連結するトーションバーと、を備えるリアサスペンション装置であって、
前記防振ブッシュは、前記車体および前記トレーリングアームのうちのいずれか一方に連結される内筒、および他方に連結される外筒と、前記内筒および前記外筒を互いに連結する弾性体と、を備え、
前記内筒および前記外筒それぞれの中心軸線は、前後方向に交差する方向に延び、
前記弾性体は、前記内筒の外周面側と前記外筒の内周面側との間の環状空間を、前記内筒に対して前側に位置する前側液室、および後側に位置する後側液室に区画し、
左右一対の前記防振ブッシュのうち、一方の前記防振ブッシュにおける前記前側液室と、他方の前記防振ブッシュにおける前記後側液室と、が第1配管を通して連通し、一方の前記防振ブッシュにおける前記後側液室と、他方の前記防振ブッシュにおける前記前側液室と、が第2配管を通して連通し、
左右一対の前記防振ブッシュのうちの少なくとも一方における前記前側液室と前記後側液室とを、前記第1配管、および前記第2配管より短い流路長で連通させる短絡路を備え、
前記短絡路には、車両の走行時にタイヤが路面上の突起物を乗り越え、前記前側液室の内圧と前記後側液室の内圧との差が所定値を超えたときに開き、この短絡路を通して前記前側液室と前記後側液室とを連通させる弁体が配設されていることを特徴とするリアサスペンション装置。
【請求項2】
前記短絡路は、前記第1配管および前記第2配管それぞれにおける中間部分同士を連結していることを特徴とする請求項1に記載のリアサスペンション装置。
【請求項3】
前記短絡路は、前記第1配管および前記第2配管それぞれにおいて、中央部を挟む両側に各別に配設されていて、左右一対の前記防振ブッシュそれぞれにおける前記前側液室と前記後側液室とが、各前記短絡路を通して、前記第1配管、および前記第2配管より短い流路長で各別に連通されることを特徴とする請求項1または2に記載のリアサスペンション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリアサスペンション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、タイヤが取付けられる左右一対のトレーリングアームと、トレーリングアームと車体とを連結する防振ブッシュと、左右一対のトレーリングアーム同士を連結するトーションバーと、を備えるリアサスペンション装置として、防振ブッシュが、車体およびトレーリングアームのうちのいずれか一方に連結される内筒、および他方に連結される外筒と、内筒および外筒を互いに連結する弾性体と、を備え、内筒および外筒それぞれの中心軸線が、前後方向に交差する方向に延び、弾性体が、内筒の外周面側と外筒の内周面側との間の環状空間を、内筒に対して前側に位置する前側液室、および後側に位置する後側液室に区画した構成が知られている。
【0003】
この種のリアサスペンション装置として、例えば下記特許文献1に示されるような、左右一対の防振ブッシュのうち、一方の防振ブッシュにおける前側液室と、他方の防振ブッシュにおける後側液室と、が第1配管を通して連通し、一方の防振ブッシュにおける後側液室と、他方の防振ブッシュにおける前側液室と、が第2配管を通して連通した防振装置が知られている。
【0004】
このリアサスペンション装置によれば、車両の旋回時に、第1配管および第2配管のうちのいずれか一方は、左右一対の防振ブッシュが有する4つの液室のなかで、圧縮力が加えられる2つの液室同士を連通し、第1配管および第2配管のうちのいずれか他方は、引張力が加えられる2つの液室同士を連通することとなり、各配管を通した液体の流通が抑止され、防振ブッシュの弾性体が変形しにくくなる。これにより、車両の旋回時に、リアサスペンション装置に装着される左右一対のタイヤが、いわゆるオーバーステアになるのを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-312336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来のリアサスペンション装置では、車両の走行時に、タイヤが路面上の突起物を乗り越えると、内筒および外筒が相対的に前後方向に高速で変位することで、第1配管内および第2配管内で液体の目詰まりが生じ、衝撃力が生ずるおそれがある。
【0007】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、車両の走行時に、タイヤが路面上の突起物を乗り越えたときに生ずる衝撃力を抑制することができるリアサスペンション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係るリアサスペンション装置は、前後方向に延びるとともに、後部にタイヤが取付けられる左右一対のトレーリングアームと、前記トレーリングアームの前部と車体とを連結する防振ブッシュと、前記左右一対のトレーリングアーム同士を連結するトーションバーと、を備えるリアサスペンション装置であって、前記防振ブッシュは、前記車体および前記トレーリングアームのうちのいずれか一方に連結される内筒、および他方に連結される外筒と、前記内筒および前記外筒を互いに連結する弾性体と、を備え、前記内筒および前記外筒それぞれの中心軸線は、前後方向に交差する方向に延び、前記弾性体は、前記内筒の外周面側と前記外筒の内周面側との間の環状空間を、前記内筒に対して前側に位置する前側液室、および後側に位置する後側液室に区画し、左右一対の前記防振ブッシュのうち、一方の前記防振ブッシュにおける前記前側液室と、他方の前記防振ブッシュにおける前記後側液室と、が第1配管を通して連通し、一方の前記防振ブッシュにおける前記後側液室と、他方の前記防振ブッシュにおける前記前側液室と、が第2配管を通して連通し、左右一対の前記防振ブッシュのうちの少なくとも一方における前記前側液室と前記後側液室とを、前記第1配管、および前記第2配管より短い流路長で連通させる短絡路を備え、前記短絡路には、車両の走行時にタイヤが路面上の突起物を乗り越え、前記前側液室の内圧と前記後側液室の内圧との差が所定値を超えたときに開き、この短絡路を通して前記前側液室と前記後側液室とを連通させる弁体が配設されていることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、車両が旋回走行すると、リアサスペンション装置に装着される左右一対のタイヤは、旋回外側から旋回内側に向かう向きの横方向の反力を地面から受け、また、左右一対の防振ブッシュのうち、旋回外側に位置する防振ブッシュ(以下、外側ブッシュという)におけるトレーリングアームとの連結部分に、後方に向けた力が加えられ、左右一対の防振ブッシュのうち、旋回内側に位置する防振ブッシュ(以下、内側ブッシュという)におけるトレーリングアームとの連結部分には、前方に向けた力が加えられる。
【0010】
したがって、例えば、内筒が車体に連結され、かつ外筒がトレーリングアームに連結された構成では、車両の旋回時に防振ブッシュの弾性体が弾性変形することによって、外側ブッシュのうち、前側液室に圧縮力が加えられ、かつ後側液室に引張力が加えられ、また、内側ブッシュのうち、前側液室に引張力が加えられ、かつ後側液室に圧縮力が加えられる。
一方、例えば、内筒がトレーリングアームに連結され、かつ外筒が車体に連結された構成では、車両の旋回時に、外側ブッシュにおける後側液室に圧縮力が加えられ、かつ前側液室に引張力が加えられ、内側ブッシュにおける前側液室に圧縮力が加えられ、かつ後側液室に引張力が加えられる。
そして、これらの各構成において、左右一対の防振ブッシュのうち、一方の防振ブッシュにおける前側液室と、他方の防振ブッシュにおける後側液室と、が第1配管を通して連通し、一方の防振ブッシュにおける後側液室と、他方の防振ブッシュにおける前側液室と、が第2配管を通して連通している。
以上より、それぞれの構成において、車両が旋回走行する向きが逆になっても、第1配管および第2配管のうちのいずれか一方は、圧縮力が加えられた液室同士を連通し、いずれか他方は、引張力が加えられた液室同士を連通する。これにより、第1配管および第2配管を通した液体の流通が抑止され、防振ブッシュの弾性体が変形しにくくなり、リアサスペンション装置に装着される左右一対のタイヤが、オーバーステアになるのを抑えることができる。
【0011】
なお、防振ブッシュに前後方向の荷重が入力されたときには、第1配管および第2配管がそれぞれ、左右一対の防振ブッシュが有する4つの液室のなかで、圧縮力が加えられた液室と引張力が加えられた液室とを連通することとなるので、各配管を通して液体が円滑に流通する。したがって、防振ブッシュに前後方向の荷重が入力されたときに、防振ブッシュの弾性体が円滑に弾性変形することとなり、前後方向のばねを低く抑えることが可能になり、良好な乗り心地性を具備させることができる。
【0012】
また、短絡路および弁体を備えるので、車両の走行時に、タイヤが路面上の突起物を乗り越え、内筒および外筒が相対的に前後方向に高速で変位して、前側液室の内圧と後側液室の内圧との差が所定値を超えたときに、弁体が開き、これらの前側液室と後側液室とが、短絡路を通して連通することとなる。
したがって、車両の走行時に、タイヤが路面上の突起物を乗り越えたときに、この防振ブッシュにおける前側液室および後側液室のうち、圧縮力が加えられた一方の液室の液体を、短絡路を通過させることにより、引張力が加えられた他方の液室に、第1配管および第2配管より短い流路長で到達させることが可能になり、目詰まりを生じにくくすることができる。これにより、車両の走行時に、タイヤが路面上の突起物を乗り越えたときに、防振ブッシュの前後方向の剛性が低く維持されることとなり、生ずる衝撃力を低く抑えることができる。
【0013】
ここで、前記短絡路は、前記第1配管および前記第2配管それぞれにおける中間部分同士を連結してもよい。
【0014】
この場合、短絡路が、第1配管および第2配管それぞれにおける中間部分同士を連結しているので、短絡路が防振ブッシュに形成された構成と比べて、短絡路に配設される弁体の大きさに制約が生ずるのを抑制することができる。
【0015】
また、前記短絡路は、前記第1配管および前記第2配管それぞれにおいて、中央部を挟む両側に各別に配設されていて、左右一対の前記防振ブッシュそれぞれにおける前記前側液室と前記後側液室とが、各前記短絡路を通して、前記第1配管、および前記第2配管より短い流路長で各別に連通されてもよい。
【0016】
この場合、短絡路が、第1配管および第2配管それぞれにおいて、中央部を挟む両側に各別に配設されていて、左右一対の防振ブッシュそれぞれにおける前側液室と後側液室とが、各短絡路を通して、第1配管、および第2配管より短い流路長で各別に連通されるので、リアサスペンション装置に装着される左右一対のタイヤそれぞれについて、前述の作用効果を奏功させることが可能になり、車両の走行時に、タイヤが路面上の突起物を乗り越えたときに生ずる衝撃力を確実に低く抑えることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、車両の走行時に、タイヤが路面上の突起物を乗り越えたときに生ずる衝撃力を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態に係るリアサスペンション装置の概略を示す上面図である。
図2図1のリアサスペンション装置であって、車両が右側に旋回した状態を示す模式図である。
図3図1のリアサスペンション装置であって、車両が左側に旋回した状態を示す模式図である。
図4】本発明の第2実施形態に係るリアサスペンション装置の概略を示す上面図である。
図5】本発明の変形例に係るリアサスペンション装置の概略を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るリアサスペンション装置の実施の形態について、図1から図3に基づいて説明する。
リアサスペンション装置1は、前後方向に延びるとともに、後部にタイヤTが取付けられる左右一対のトレーリングアーム11と、トレーリングアーム11の前部と車体とを連結する防振ブッシュ21、22と、左右一対のトレーリングアーム11同士を連結するトーションバー13と、を備える。リアサスペンション装置1は、例えば4輪の自動車用として用いられる。
【0020】
トーションバー13は、トレーリングアーム11において、タイヤTとの接続部分と、防振ブッシュ21、22との接続部分と、の間に位置する部分に連結されている。トーションバー13は左右方向に延びている。
トレーリングアーム11の前端部に、防振ブッシュ21、22が内側に嵌合される装着筒11aが配設されている。トレーリングアーム11の後端部に、タイヤTを回転可能に支持するリア側支持部材11bが配設されている。
【0021】
防振ブッシュ21、22は、車体およびトレーリングアーム11のうちのいずれか一方に連結される内筒14、および他方に連結される外筒15と、内筒14および外筒15を互いに連結する弾性体16と、を備える。
図示の例では、内筒14が車体に連結され、外筒15がトレーリングアーム11に連結されている。内筒14および外筒15それぞれの中心軸線は、前後方向に交差する方向に延びている。内筒14および外筒15それぞれの中心軸線は左右方向に延びている。内筒14および外筒15は同軸に配置されている。内筒14の左右方向の両端部は、外筒15から左右方向の外側に突出している。内筒14の左右方向の両端部に車体が連結される。
【0022】
弾性体16は、内筒14の外周面側と外筒15の内周面側との間の環状空間を、内筒14に対して前側に位置する前側液室16a、および後側に位置する後側液室16bに区画する。前側液室16aおよび後側液室16bにはそれぞれ、例えば水若しくはエチレングリコール等が充填される。
【0023】
以上の構成において、図2に示されるように、車両が右向きに旋回走行すると、左右一対のタイヤTは、旋回外側から旋回内側に向かう右向きの反力を地面から受け、左側(旋回外側)のトレーリングアーム11に後向きの力が発生し、右側(旋回内側)のトレーリングアーム11に前向きの力が発生する。
図示の例では、トレーリングアーム11が、防振ブッシュ21、22の外筒15に連結されているので、車両が右向きに旋回走行すると、左側の防振ブッシュ21のうち、前側液室16aに後向きの圧縮力が加えられ、かつ後側液室16bに後向きの引張力が加えられ、また、右側の防振ブッシュ22のうち、後側液室16bに前向きの圧縮力が加えられ、かつ前側液室16aに前向きの引張力が加えられる。
【0024】
一方、図3に示されるように、車両が左向きに旋回走行すると、左右一対のタイヤTは、旋回外側から旋回内側に向かう左向きの反力を地面から受け、右側(旋回外側)のトレーリングアーム11に後向きの力が発生し、左側(旋回内側)のトレーリングアーム11に前向きの力が発生する。
図示の例では、トレーリングアーム11が、防振ブッシュ21、22の外筒15に連結されているので、車両が左向きに旋回すると、右側の防振ブッシュ22のうち、前側液室16aに後向きの圧縮力が加えられ、かつ後側液室16bに後向きの引張力が加えられ、また、左側の防振ブッシュ21のうち、後側液室16bに前向きの圧縮力が加えられ、かつ前側液室16aに前向きの引張力が加えられる。
【0025】
ここで、左右一対の防振ブッシュ21、22のうち、左側の防振ブッシュ21における前側液室16aと、右側の防振ブッシュ22における後側液室16bと、が第1配管17を通して連通し、左側の防振ブッシュ21における後側液室16bと、右側の防振ブッシュ22における前側液室16aと、が第2配管18を通して連通している。
【0026】
これにより、図2に示されるように、車両が右向きに旋回走行すると、第1配管17が連通する、左側の防振ブッシュ21における前側液室16a、および右側の防振ブッシュ22における後側液室16bにそれぞれ、前後方向の圧縮力が加えられ、また、第2配管18が連通する、左側の防振ブッシュ21における後側液室16b、および右側の防振ブッシュ22における前側液室16aにそれぞれ、前後方向の引張力が加えられる。
これとは逆に、図3に示されるように、車両が左向きに旋回走行すると、第1配管17が連通する、左側の防振ブッシュ21における前側液室16a、および右側の防振ブッシュ22における後側液室16bにそれぞれ、前後方向の引張力が加えられ、また、第2配管18が連通する、左側の防振ブッシュ21における後側液室16b、および右側の防振ブッシュ22における前側液室16aにそれぞれ、前後方向の圧縮力が加えられる。
以上より、車両が旋回走行すると、旋回する向きを問わず、第1配管17および第2配管18のうちのいずれか一方は、圧縮力が加えられた液室同士を連通し、いずれか他方は、引張力が加えられた液室同士を連通する。
【0027】
左右一対の防振ブッシュ21、22は、互いに同じ形状で同じ大きさとなっている。左右一対の防振ブッシュ21、22における各前側液室16aは、互いに同じ形状で同じ大きさとなっている。左右一対の防振ブッシュ21、22における各後側液室16bは、互いに同じ形状で同じ大きさとなっている。各防振ブッシュ21、22における前側液室16aおよび後側液室16bは、互いに同じ形状で同じ大きさとなっている。
【0028】
なお、左右一対の防振ブッシュ21、22における各前側液室16aを、互いに異なる形状で異なる大きさとしてもよい。また、左右一対の防振ブッシュ21、22における各後側液室16bも、互いに異なる形状で異なる大きさとしてもよい。また、各防振ブッシュ21、22における前側液室16aおよび後側液室16bを、互いに異なる形状で異なる大きさとしてもよい。
【0029】
そして、本実施形態では、左右一対の防振ブッシュ21、22のうちの少なくとも一方における前側液室16aと後側液室16bとを、第1配管17、および第2配管18より短い流路長で連通させる短絡路19が備えられている。
短絡路19の流通抵抗を、第1配管17および第2配管18の各流通抵抗より小さくしてもよいし、第1配管17および第2配管18の各流通抵抗の大きさ以上としてもよい。短絡路19は、第1配管17および第2配管18それぞれにおける中間部分同士を連結している。なお、短絡路19は、防振ブッシュ21、22の例えば内筒14および弾性体16に形成してもよい。
【0030】
短絡路19は、第1配管17および第2配管18それぞれにおいて、中央部を挟む両側に各別に配設され、左右一対の防振ブッシュ21、22それぞれにおける前側液室16aと後側液室16bとが、各短絡路19を通して、第1配管17、および第2配管18より短い流路長で各別に連通される。
【0031】
短絡路19に、前側液室16aの内圧と後側液室16bの内圧との差が所定値を超えたときに開き、この短絡路19を通して前側液室16aと後側液室16bとを連通させる弁体25が配設されている。図示の例では、弁体25は、コイルスプリング等の付勢手段26により前側液室16a側に向けて付勢され、短絡路19を通した前側液室16aと後側液室16bとの連通を遮断している。付勢手段26のばね定数は、車両が旋回走行しているときに生ずる程度の前側液室16aと後側液室16bとの内圧差では、弁体25が移動せず開かない大きさで、かつ、車両が所定速度(例えば40km/h~50km/h)で走行している状態で、タイヤTが路面上の突起物(例えば高さ10mm~20mm)を乗り越えたときに生ずる前側液室16aと後側液室16bとの内圧差で、弁体25が移動して開く大きさに設定されている。
【0032】
これにより、車両の走行時に、タイヤTが路面上の突起物を乗り越え、前側液室16aが前後方向に圧縮変形し、かつ後側液室16bが前後方向に引張変形して、前側液室16aの内圧と後側液室16bの内圧との差が所定値を超えたときに、この内圧差により弁体25が付勢手段26の付勢力に抗して後側液室16b側に向けて移動することによって、この防振ブッシュ21、22における前側液室16aと後側液室16bとが短絡路19を通して連通する。
なお、弁体25を、例えば、不図示のフロントサスペンション装置に設けたGセンサ等からの信号に基づいて、駆動部により移動させるようにしてもよい。
【0033】
左側の防振ブッシュ21では、車両の走行時に、タイヤTが路面上の突起物を乗り越え、前側液室16aの内圧と後側液室16bの内圧との差が所定値を超えたときに、前側液室16aからの液体が、第1配管17における左側の防振ブッシュ21との接続部分、短絡路19、および第2配管18における左側の防振ブッシュ21との接続部分を通して後側液室16bに至る。このときの前側液室16aから後側液室16bに至る流路長は、左側の防振ブッシュ21の前側液室16aから、第1配管17を通して、右側の防振ブッシュ22の後側液室16bに至る流路長、つまり第1配管17の全長より短い。
【0034】
右側の防振ブッシュ22では、車両の走行時に、タイヤTが路面上の突起物を乗り越え、前側液室16aの内圧と後側液室16bの内圧との差が所定値を超えたときに、前側液室16aからの液体が、第2配管18における右側の防振ブッシュ22との接続部分、短絡路19、および第1配管17における右側の防振ブッシュ22との接続部分を通して後側液室16bに至る。このときの前側液室16aから後側液室16bに至る流路長は、右側の防振ブッシュ22の前側液室16aから、第2配管18を通して、左側の防振ブッシュ21の後側液室16bに至る流路長、つまり第2配管18の全長より短い。
【0035】
以上説明したように、本実施形態に係るリアサスペンション装置1によれば、車両が旋回走行する向きが逆になっても、第1配管17および第2配管18のうちのいずれか一方は、圧縮力が加えられた液室同士を連通し、いずれか他方は、引張力が加えられた液室同士を連通する。したがって、車両の旋回走行時に、第1配管17および第2配管18を通した液体の流通が抑止され、防振ブッシュ21、22の弾性体16が変形しにくくなり、リアサスペンション装置1に装着される左右一対のタイヤTが、オーバーステアになるのを抑えることができる。
【0036】
一方、防振ブッシュ21、22に前後方向の荷重が入力されたときには、第1配管17および第2配管18がそれぞれ、左右一対の防振ブッシュ21、22が有する4つの液室のなかで、圧縮力が加えられた液室と引張力が加えられた液室とを連通することとなるので、各配管17、18を通して液体が円滑に流通する。したがって、防振ブッシュ21、22に前後方向の荷重が入力されたときに、防振ブッシュ21、22の弾性体16が円滑に弾性変形することとなり、前後方向のばねを低く抑えることが可能になり、良好な乗り心地性を具備させることができる。
【0037】
また、短絡路19および弁体25を備えるので、車両の走行時に、タイヤTが路面上の突起物を乗り越え、内筒14および外筒15が相対的に前後方向に高速で変位して、前側液室16aの内圧と後側液室16bの内圧との差が所定値を超えたときに、弁体25が開き、これらの前側液室16aと後側液室16bとが、短絡路19を通して連通することとなる。
したがって、車両の走行時に、タイヤTが路面上の突起物を乗り越えたときに、この防振ブッシュ21、22において、圧縮力が加えられた前側液室16aの液体を、短絡路19を通過させることにより、引張力が加えられた後側液室16bに、第1配管17および第2配管18より短い流路長で到達させることが可能になり、目詰まりを生じにくくすることができる。これにより、車両の走行時に、タイヤTが路面上の突起物を乗り越えたときに、防振ブッシュ21、22の前後方向の剛性が低く維持されることとなり、生ずる衝撃力を低く抑えることができる。
【0038】
また、短絡路19が、第1配管17および第2配管18それぞれにおける中間部分同士を連結しているので、短絡路19が防振ブッシュ21、22に形成された構成と比べて、短絡路19に配設される弁体25の大きさに制約が生ずるのを抑えることができる。
【0039】
また、短絡路19が、第1配管17および第2配管18それぞれにおいて、中央部を挟む両側に各別に配設されていて、左右一対の防振ブッシュ21、22それぞれにおける前側液室16aと後側液室16bとが、各短絡路19を通して、第1配管17、および第2配管18より短い流路長で各別に連通されるので、リアサスペンション装置1に装着される左右一対のタイヤTそれぞれについて、前述の作用効果を奏功させることが可能になり、車両の走行時に、タイヤTが路面上の突起物を乗り越えたときに生ずる衝撃力を確実に低く抑えることができる。
【0040】
また、内筒14が車体に連結され、外筒15がトレーリングアーム11に連結されているので、それぞれの連結を、構造を複雑にすることなく容易かつ確実に行うことができる。
【0041】
次に、本発明の第2実施形態に係るリアサスペンション装置2を、図4を参照しながら説明する。
なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0042】
本実施形態では、左右一対の防振ブッシュ21、22のうち、車両の旋回時に、旋回外側に位置する防振ブッシュ21、22における前側液室16aおよび後側液室16bのうち、圧縮力が加えられるいずれか一方の液室の受圧面積が、旋回内側に位置する防振ブッシュ21、22における前側液室16aおよび後側液室16bのうち、第1配管17または第2配管18を通して、旋回外側に位置する防振ブッシュ21、22における前記一方の液室に連通し、かつ圧縮力が加えられるいずれか一方の液室の受圧面積より大きくなっている。
前側液室16aおよび後側液室16bの各受圧面積は、前側液室16aおよび後側液室16bそれぞれにおける前後方向の投影面積となっている。
【0043】
具体的には、車両が右向きに旋回走行して、図2に白抜き矢印で示されるように、左側(旋回外側)のトレーリングアーム11に後向きの力が発生し、右側(旋回内側)のトレーリングアーム11に前向きの力が発生したときに、旋回外側に位置する左側の防振ブッシュ21において、後向きの圧縮力が加えられる前側液室16aの受圧面積が、旋回内側に位置する右側の防振ブッシュ22において、左側の防振ブッシュ21の前側液室16aに第1配管17を通して連通し、かつ前向きの圧縮力が加えられる後側液室16bの受圧面積より大きくなっている。
車両が左向きに旋回走行して、図3に白抜き矢印で示されるように、右側(旋回外側)のトレーリングアーム11に後向きの力が発生し、左側(旋回内側)のトレーリングアーム11に前向きの力が発生したときに、旋回外側に位置する右側の防振ブッシュ22において、後向きの圧縮力が加えられる前側液室16aの受圧面積が、旋回内側に位置する左側の防振ブッシュ21において、右側の防振ブッシュ22の前側液室16aに第2配管18を通して連通し、かつ前向きの圧縮力が加えられる後側液室16bの受圧面積より大きくなっている。
【0044】
また、左右一対の防振ブッシュ21、22のうち、車両の旋回時に、旋回外側に位置する防振ブッシュ21、22における前側液室16aおよび後側液室16bのうち、引張力が加えられるいずれか他方の液室の受圧面積が、旋回内側に位置する防振ブッシュ21、22における前側液室16aおよび後側液室16bのうち、第1配管17または第2配管18を通して、旋回外側に位置する防振ブッシュ21、22における前記他方の液室に連通し、かつ引張力が加えられるいずれか他方の液室の受圧面積より小さくなっている。
【0045】
具体的には、車両が右向きに旋回走行して、図2に白抜き矢印で示されるように、左側(旋回外側)のトレーリングアーム11に後向きの力が発生し、右側(旋回内側)のトレーリングアーム11に前向きの力が発生したときに、旋回外側に位置する左側の防振ブッシュ21において、後向きの引張力が加えられる後側液室16bの受圧面積が、旋回内側に位置する右側の防振ブッシュ22において、左側の防振ブッシュ21の後側液室16bに第2配管18を通して連通し、かつ前向きの引張力が加えられる前側液室16aの受圧面積より小さくなっている。
車両が左向きに旋回走行して、図3に白抜き矢印で示されるように、右側(旋回外側)のトレーリングアーム11に後向きの力が発生し、左側(旋回内側)のトレーリングアーム11に前向きの力が発生したときに、旋回外側に位置する右側の防振ブッシュ22において、後向きの引張力が加えられる後側液室16bの受圧面積が、旋回内側に位置する左側の防振ブッシュ21において、右側の防振ブッシュ22の後側液室16bに第1配管17を通して連通し、かつ前向きの引張力が加えられる前側液室16aの受圧面積より小さくなっている。
【0046】
また、左右一対の防振ブッシュ21、22のうち、車両の旋回時に、旋回外側に位置する防振ブッシュ21、22における前側液室16aおよび後側液室16bのうち、圧縮力が加えられるいずれか一方の液室の受圧面積が、引張力が加えられるいずれか他方の液室の受圧面積より大きくなっている。図示の例では、左右一対の防振ブッシュ21、22それぞれにおいて、前側液室16aの受圧面積が、後側液室16bの受圧面積より大きくなっている。
なお、左右一対の防振ブッシュ21、22それぞれにおいて、前側液室16aの受圧面積を、後側液室16bの受圧面積の大きさ以下としてもよい。
【0047】
以上説明したように、本実施形態に係るリアサスペンション装置2によれば、左右一対の防振ブッシュ21、22のうち、車両の旋回時に、旋回外側に位置する防振ブッシュ(以下、外側ブッシュという)21、22において、圧縮力が加えられる前側液室16aの受圧面積が、旋回内側に位置する防振ブッシュ(以下、内側ブッシュという)21、22において、第1配管17または第2配管18を通して、外側ブッシュ21、22の前側液室16aに連通し、かつ圧縮力が加えられる後側液室16bの受圧面積より大きくなっている。すなわち、車両が旋回走行したときに、トレーリングアーム11から大きな前後方向の荷重が加えられる外側ブッシュ21、22における前側液室16aの受圧面積が、この液室16aに第1配管17または第2配管18を通して連通する内側ブッシュ21、22における後側液室16bの受圧面積より大きくなっている。したがって、外側ブッシュ21、22に加えられる前後方向の荷重が、内側ブッシュ21、22に加えられる前後方向の荷重より大きくても、外側ブッシュ21、22における前側液室16aの内圧と、内側ブッシュ21、22における後側液室16bの内圧と、を同等にすることが可能になり、第1配管17または第2配管18を通した液体の流通を確実に妨げることができる。
【0048】
ここで、外側ブッシュ21、22において、車両の旋回時に引張力が加えられる後側液室16bの受圧面積が、内側ブッシュ21、22において、第1配管17または第2配管18を通して、外側ブッシュ21、22の後側液室16bに連通し、かつ引張力が加えられる前側液室16aの受圧面積より小さくなっている。この場合、車両が旋回走行したときに、トレーリングアーム11から前後方向に大きな荷重が加えられる外側ブッシュ21、22における後側液室16bの受圧面積が、この液室16bに第1配管17または第2配管18を通して連通する内側ブッシュ21、22における前側液室16aの受圧面積より小さくなっているので、外側ブッシュ21、22の後側液室16b、および内側ブッシュ21、22の前側液室16aそれぞれの内圧が、一見すると互いに同等になることはない。
【0049】
しかしながら、外側ブッシュ21、22の後側液室16b、および内側ブッシュ21、22の前側液室16aには、車両の旋回時に引張力が加えられ、弾性体16が引張変形させられて薄肉になっているので、外側ブッシュ21、22の後側液室16b、および内側ブッシュ21、22の前側液室16aの各内圧に追従するように弾性体16が変形しやすくなる。したがって、外側ブッシュ21、22の後側液室16b、および内側ブッシュ21、22の前側液室16aの各内圧の差を低減することが可能になり、第1配管17または第2配管18を通した液体の流通を抑制することができる。
【0050】
以上より、車両の旋回時に、トレーリングアーム11から左右一対の防振ブッシュ21、22に加えられる前後方向の荷重が、外側ブッシュ21、22の方が内側ブッシュ21、22より大きくても、リアサスペンション装置2に装着される左右一対のタイヤTが、オーバーステアになるのを確実に抑制することができる。
【0051】
また、前述したように、車両の旋回する向きが逆向きになれば、左右一対の防振ブッシュ21、22が有する4つの液室16a、16bに加えられる荷重の向きが逆になるので、例えば弁機構等を設けなくても、車両が旋回する向きを問わず、外側ブッシュ21、22における前側液室16aの受圧面積が、この液室16aに第1配管17または第2配管18を通して連通する内側ブッシュ21、22における後側液室16bの受圧面積より大きく、かつ、外側ブッシュ21、22における後側液室16bの受圧面積が、この液室16bに第1配管17または第2配管18を通して連通する内側ブッシュ21、22における前側液室16aの受圧面積より小さい構成を得ることができる。したがって、構造の複雑化を抑えつつ、車両が旋回する向きを問わず、前述の作用効果を奏功させることができる。
【0052】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0053】
例えば、前記実施形態では、内筒14が車体に連結され、外筒15がトレーリングアーム11に連結された構成を示したが、図5に示されるように、内筒14がトレーリングアーム11に連結され、かつ外筒15が車体に連結されたリアサスペンション装置3を採用してもよい。図示の例では、トレーリングアーム11の前端部に、内筒14の左右方向の両端部を支持する左右一対の支持板11cが配設されている。
この場合、車両の旋回時に、外側ブッシュ21、22における後側液室16bに圧縮力が加えられ、かつ前側液室16aに引張力が加えられ、内側ブッシュ21、22における前側液室16aに圧縮力が加えられ、かつ後側液室16bに引張力が加えられる。
【0054】
すなわち、車両が右向きに旋回走行して、図2に白抜き矢印で示されるように、左側(旋回外側)のトレーリングアーム11に後向きの力が発生し、右側(旋回内側)のトレーリングアーム11に前向きの力が発生すると、左側の防振ブッシュ21のうち、後側液室16bに後向きの圧縮力が加えられ、かつ前側液室16aに後向きの引張力が加えられ、また、右側の防振ブッシュ22のうち、前側液室16aに前向きの圧縮力が加えられ、かつ後側液室16bに前向きの引張力が加えられる。
【0055】
一方、車両が左向きに旋回走行して、図3に白抜き矢印で示されるように、右側(旋回外側)のトレーリングアーム11に後向きの力が発生し、左側(旋回内側)のトレーリングアーム11に前向きの力が発生すると、右側の防振ブッシュ22のうち、後側液室16bに後向きの圧縮力が加えられ、かつ前側液室16aに後向きの引張力が加えられ、また、左側の防振ブッシュ21のうち、前側液室16aに前向きの圧縮力が加えられ、かつ後側液室16bに前向きの引張力が加えられる。
【0056】
また、このリアサスペンション装置3においては、外側ブッシュ21、22の後側液室16bの受圧面積を、内側ブッシュ21、22の前側液室16aの受圧面積より大きくし、外側ブッシュ21、22の前側液室16aの受圧面積を、内側ブッシュ21、22の後側液室16bの受圧面積より小さくしてもよい。この場合、前記第2実施形態と同様の作用効果が奏される。
さらにこの構成において、左右一対の防振ブッシュ21、22それぞれにおいて、後側液室16bの受圧面積を前側液室16aの受圧面積より大きくしてもよいし、後側液室16bの受圧面積を、前側液室16aの受圧面積の大きさ以下としてもよい。
【0057】
また、このリアサスペンション装置3においては、弁体25は、付勢手段26により後側液室16b側に向けて付勢され、短絡路19を通した前側液室16aと後側液室16bとの連通を遮断している。そして、車両の走行時に、タイヤTが路面上の突起物を乗り越え、後側液室16bが前後方向に圧縮変形し、かつ前側液室16aが前後方向に引張変形して、前側液室16aの内圧と後側液室16bの内圧との差が所定値を超えたときに、この内圧差により弁体25が付勢手段26の付勢力に抗して前側液室16a側に向けて移動することによって、この防振ブッシュ21、22における前側液室16aと後側液室16bとが短絡路19を通して連通する。
【0058】
左側の防振ブッシュ21では、車両の走行時に、タイヤTが路面上の突起物を乗り越え、前側液室16aの内圧と後側液室16bの内圧との差が所定値を超えたときに、後側液室16bからの液体が、第2配管18における左側の防振ブッシュ21との接続部分、短絡路19、および第1配管17における左側の防振ブッシュ21との接続部分を通して前側液室16aに至る。このときの後側液室16bから前側液室16aに至る流路長は、左側の防振ブッシュ21の後側液室16bから、第2配管18を通して、右側の防振ブッシュ22の前側液室16aに至る流路長、つまり第2配管18の全長より短い。
【0059】
右側の防振ブッシュ22では、車両の走行時に、タイヤTが路面上の突起物を乗り越え、前側液室16aの内圧と後側液室16bの内圧との差が所定値を超えたときに、後側液室16bからの液体が、第1配管17における右側の防振ブッシュ22との接続部分、短絡路19、および第2配管18における右側の防振ブッシュ22との接続部分を通して前側液室16aに至る。このときの後側液室16bから前側液室16aに至る流路長は、右側の防振ブッシュ22の後側液室16bから、第1配管17を通して、左側の防振ブッシュ21の前側液室16aに至る流路長、つまり第1配管17の全長より短い。
【0060】
また、内筒14および外筒15それぞれの中心軸線は、左右方向の外側から内側に向かうに従い漸次、前方に向けて延びてもよい。
この場合、車両が旋回走行したときに、左右一対のタイヤTのうち、旋回外側に位置するタイヤTを、トーイン側に変位させやすくなり、旋回時の操縦安定性を確実に確保することができる。
また、防振ブッシュ21、22として、左右方向の荷重の入力時に、内筒および外筒が前後方向に相対的に弾性変位する、いわゆるトーコレクトブッシュを採用してもよい。
この場合においても、車両が旋回走行したときに、左右一対のタイヤTのうち、旋回外側に位置するタイヤTを、トーイン側に変位させやすくなる。
【0061】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1、2、3 リアサスペンション装置
11 トレーリングアーム
13 トーションバー
14 内筒
15 外筒
16 弾性体
16a 前側液室
16b 後側液室
17 第1配管
18 第2配管
19 短絡路
21、22 防振ブッシュ
25 弁体
T タイヤ
図1
図2
図3
図4
図5