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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】設計システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/10 20200101AFI20220913BHJP
   G06F 30/13 20200101ALI20220913BHJP
   G06F 30/20 20200101ALI20220913BHJP
【FI】
G06F30/10
G06F30/13
G06F30/20
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018048654
(22)【出願日】2018-03-15
(65)【公開番号】P2019160099
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】細田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】千葉 勝司
(72)【発明者】
【氏名】西田 祥伸
(72)【発明者】
【氏名】森 一郎
(72)【発明者】
【氏名】市村 浩
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-276031(JP,A)
【文献】国際公開第2015/171563(WO,A1)
【文献】特開2009-295115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/10
G06F 30/13
G06F 30/20
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の構造部材に関する情報に従って、前記構造部材を仮想的に組み上げる仮想組上げ手段と、
前記仮想組上げ手段によって組み上げられた前記構造部材同士が接続される接続点を、前記接続点に関する属性情報に基づき、接続の態様に応じて分類する接続点分類手段と、
を具備し、
前記属性情報には、前記接続点に対して複数の方向から接続されている前記構造部材の識別番号または形状の少なくとも一つが含まれ、
前記接続点分類手段は、
前記接続点を挟んで対向する位置に配置された前記構造部材の識別番号または形状が互いに異なる場合、前記接続点において一の構造部材及び他の構造部材それぞれの端部が接続されていると判定し、
前記接続点を挟んで対向する位置に配置された前記構造部材の識別番号または形状が同一である場合、前記接続点において一の構造部材の中途部に他の構造部材の端部が接続されていると判定する、
設計システム。
【請求項2】
前記属性情報には、前記接続点において互いに接続された前記構造部材のうち、前記接続点が存在する構面に沿って配置された前記構造部材に関する情報が含まれる
請求項1に記載の設計システム。
【請求項3】
前記構造部材ごとに識別番号を付与する識別番号付与手段をさらに具備し、
前記属性情報には、前記接続点において互いに接続された前記構造部材に付与された前記識別番号の組み合わせが含まれる
請求項2に記載の設計システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の設計システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の設計システムに関連する技術として、例えば、特許文献1に記載された技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、多数の構造部材に関する情報を格納する格納部と、設計者の入力情報に基づいて選択された構造部材を、作業空間における所定の位置に配置するモデリング部と、を具備する設計システムが開示されている。また、当該モデリング部は、一の構造部材と他の構造部材との間の接合可能性を判定し、接合可能と判定した場合には、当該接合部分を三次元画像上で色を分けて表示する。このように、特許文献1に記載の技術では、設計者が構造部材の納まり(接合可能性)を確認しながら、構造部材を配置することができる。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、モデリング部によって構造部材同士の接合可能性は判定されるものの、もし接合不能と判定された場合には、設計者が自ら当該接合部分において接合可能な構造部材を再度選択し直す必要がある。この場合、設計者は、自ら構造部材の接合部の構成(接合態様や、接合用孔の位置、数量等)がどのようなものか判断(分類)し、当該接合部において接合可能な構造部材を選択する必要があり、設計作業が煩雑である点で不利であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5806013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、設計作業の効率化を図ることが可能な設計システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、複数の構造部材に関する情報に従って、前記構造部材を仮想的に組み上げる仮想組上げ手段と、前記仮想組上げ手段によって組み上げられた前記構造部材同士が接続される接続点を、前記接続点に関する属性情報に基づき、接続の態様に応じて分類する接続点分類手段と、を具備し、前記属性情報には、前記接続点に対して複数の方向から接続されている前記構造部材の識別番号または形状の少なくとも一つが含まれ、前記接続点分類手段は、前記接続点を挟んで対向する位置に配置された前記構造部材の識別番号または形状が互いに異なる場合、前記接続点において一の構造部材及び他の構造部材それぞれの端部が接続されていると判定し、前記接続点を挟んで対向する位置に配置された前記構造部材の識別番号または形状が同一である場合、前記接続点において一の構造部材の中途部に他の構造部材の端部が接続されていると判定するものである。
【0009】
また、前記属性情報には、前記接続点において互いに接続された前記構造部材のうち、前記接続点が存在する構面に沿って配置された前記構造部材に関する情報が含まれるものとしてもよい。
このような構成により、接続点を適切に分類することができる。
【0010】
また、前記構造部材ごとに識別番号を付与する識別番号付与手段をさらに具備し、前記属性情報には、前記接続点において互いに接続された前記構造部材に付与された前記識別番号の組み合わせが含まれるものとしてもよい。
このような構成により、接続点を適切に分類することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、設計作業の効率化を図ることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る設計システムの構成を示したブロック図。
図2】設計システムによる設計方法を示したフローチャート。
図3】構造部材を仮想空間に配置した一例を示した図。
図4】端部間接続される梁の一例を示した図。
図5】中間部接続される梁の一例を示した図。
図6】仮想空間における接続点を基準とした方向の定義を示した図。
図7】商品区分等に応じた接続方式を示す表の一例を示した図。
図8】(a)端部間接続された梁の端部が削減された状態を示した図。(b)接続点にジョイントボックスが配置された状態を示した図。
図9】構造部材の種類等に応じた接続強度を示す表の一例を示した図。
図10】接続方法の決定結果を例示した表を示した図。
図11】端部プレートの一例を示した図。
図12】端部プレートが梁の端部に配置される様子を示した図。
図13】端部間接続された梁に端部プレートが配置された状態を示した図。
図14】ジョイントボックスにボルト孔が形成された状態を示した図。
図15】端部プレートの型式が引き当てられた結果を例示した表を示した図。
図16】接続部材の型式が引き当てられた結果を例示した表を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、図1を用いて、本実施形態に係る設計システム1の概要について説明する。
【0015】
設計システム1は、建物を設計するためのものであり、特に、柱や梁等の構造部材を接続して構成される架構を設計するためのものである。特に本実施形態に係る設計システム1は、構造部材と他の部材(他の構造部材等)との接続点Pにおける構成を自動的に設計することができる。
【0016】
以下では、本実施形態に係る設計システム1の構成について説明する。
【0017】
設計システム1は、主として入力装置10、表示装置20及び制御装置30を具備する。
【0018】
入力装置10は、種々の情報を制御装置30に入力するためのものである。入力装置10は、作業者(設計者)が操作可能な端末により構成される。例えば、入力装置10として、キーボード、タッチパネル等を用いることができる。
【0019】
表示装置20は、制御装置30から受け取った種々の情報(文字や図面等)を表示するためのものである。例えば、表示装置20として、液晶モニター、タッチパネル等を用いることができる。
【0020】
制御装置30は、種々の情報に基づいて、各種の演算や記憶等を行うものである。制御装置30は、RAM、ROM、HDD等の記憶部、及びCPU等により構成される。例えば、制御装置30として、パソコン等を用いることができる。
【0021】
制御装置30は、機能的には、主として設計の初期処理を行う初期処理部31、構造部材を仮想空間に配置する仮想空間配置部32、仮想空間に配置された構造部材同士の接続方式を決定する接続方式決定部33、構造部材の接続点Pにおける強度を判定する強度判定部34、接続点Pの強度に基づいて部材の形状等を決定する接続方法決定部35、及び設計された各部材が該当する型式を引き当てる型式引当部36等を具備する。なお、当該各部(初期処理部31等)の詳細な機能については、設計システム1の動作と併せて説明する。
【0022】
以下では、設計システム1の動作(設計システム1を用いた設計方法)について具体的に説明する。
【0023】
図2のステップS101において、初期処理部31は、設計の初期処理を行う。
【0024】
初期処理部31は、初期処理として、まず、事前に行われた企画設計の情報を取得する。企画設計により生成された企画設計の情報は、CSVなどの形式で事前に制御装置30に入力される。初期処理部31は、制御装置30の記憶部(不図示)に、取得した企画設計の情報を記憶する。企画設計では、設計対象となる建物の商品区分(商品の分類)、並びに架構を構成する構造部材の形状(断面形状等)、種類(大梁、小梁、キャンチ、柱等)、配置座標等が決定されている。企画設計は、当該企画設計に適した各種のCADソフトウェアを用いて実行することができる。初期処理部31は、企画設計で決定された商品区分、並びに断面等、種々の情報を取得する。
【0025】
また初期処理部31は、初期処理として、取得した構造部材ごとに異なる番号(SEQ番号(シーケンス番号))を付与(採番)し、記憶部に記憶する。構造部材ごとに異なるSEQ番号を付与することで、当該SEQ番号に基づいて構造部材を区別(識別)することができるようになる。
【0026】
ステップS102において、仮想空間配置部32は、構造部材を仮想空間に配置して組み上げる。
【0027】
仮想空間配置部32は、3次元CADソフトウェアを用いて、構造部材を3次元の仮想空間に配置する。本実施形態では、X軸、Y軸及びZ軸からなる3次元の直交座標系により、仮想空間上の座標が定義される。この際、仮想空間配置部32は、ステップS101において取得された各種の情報(構造部材の配置座標等)に基づいて、各構造部材を仮想空間にSEQ番号順に配置する。図3には、各構造部材(梁2、柱3等)を仮想空間に配置した様子を示している。
【0028】
ここで、構造部材の座標とは、当該構造部材の芯(モジュール芯)における座標を意味している。このため、当該座標に基づいて構造部材を配置すると、構造部材同士が接続される部分(後述する接続点P)では、当該構造部材同士が干渉した状態で配置される。
【0029】
図4及び図5には、構造部材(梁2)が座標に従って配置され、接続点Pにおいて干渉する様子を示している。なお、当該図4図5は、構面(水平構面(XZ平面))に沿って梁2が配置された様子を示している。図4においては、4つの梁2の端部同士が接続される例を示している。また図5においては、1つの梁2の長手方向中途部(中間部)に、もう1つの梁2の端部が接続される例を示している。図4及び図5に示すように、構造部材は、接続点Pにおいて互いに重複(干渉)するように配置されることになる。
【0030】
また、仮想空間配置部32は、仮想空間に配置した構造部材の種類、SEQ番号、断面の寸法情報等を、当該構造部材の属性として記憶する。図4及び図5には、各構造部材(梁2)の属性も併せて表示している。例えば、図4には、当該図4に示す4つの梁2の属性として、「SEQ番号:A014、種類:大梁、断面の寸法情報:H-250×100×4.5/9」、「SEQ番号:A021、種類:大梁、断面の寸法情報:H-200×100×4.5/9」、「SEQ番号:B023、種類:小梁、断面の寸法情報:H-200×100×3.2/4.5」及び「SEQ番号:C002、種類:キャンチ梁、断面の寸法情報:H-250×100×3.2/6」の4つの属性を示している。
【0031】
なお、制御装置30は、3次元CADソフトウェアで用いられる仮想空間の映像(図4図5に示すような映像)を、表示装置20に表示させる。作業者は、表示装置20の映像を見ることで、設計システム1による設計の様子を視覚的に確認することができる。
【0032】
図2のステップS103において、仮想空間配置部32は、構造部材同士の接続点を発生させる。
【0033】
仮想空間配置部32は、仮想空間における構造部材の配置結果から、構造部材同士が干渉している部分(構造部材同士が接続される部分)に交点(接続点P)を発生(形成)させる。さらに仮想空間配置部32は、発生させた接続点Pに対して、複数の方向から接続されている構造部材に関する情報を、当該接続点Pの属性として記憶する。
【0034】
例えば、図4及び図5に示す例では、構面(水平構面)に沿って、X軸及びZ軸に平行な4方向から各接続点Pに接続する構造部材(梁2)に関する情報を、当該各接続点Pの属性として記憶する。図4及び図5には、各接続点Pの属性も併せて表示している。例えば、図4には、当該図4に示す接続点Pの属性として、「方向1:A021 大梁、方向2:C002 キャンチ梁、方向3:A014 大梁、方向4:B023 小梁」を示している。なお本実施形態では、図6に示すように、構面に沿って接続点Pに向かう方向のうち、X軸に平行な方向を「方向1」及び「方向3」、Z軸に平行な方向を「方向2」及び「方向4」と、それぞれ定義している。
【0035】
図2のステップS104において、接続方式決定部33は、接続位置(接続点P)に関する判定を行う。より具体的には、接続方式決定部33は、接続点Pに関する情報(属性)に基づいて、当該接続点Pの種類を分類する。ここで、接続点Pの種類とは、当該接続点Pにおいて接続されている複数の構造部材の接続態様(構造部材のどの部位同士が接続されているか)の種類を意味している。
【0036】
具体的には、接続方式決定部33は、接続点Pの属性を参照して、当該接続点Pを挟んで対角線上(対向する方向)に存在する構造部材のSEQ番号の組み合わせ(同一か否か)を判定する。すなわち、接続方式決定部33は、接続点Pに対して「方向1」と「方向3」から接続する構造部材のSEQ番号が同一か、また「方向2」と「方向4」から接続する構造部材のSEQ番号が同一かを、それぞれ判定する。
【0037】
接続方式決定部33は、接続点Pを挟んで対角線上に存在する構造部材のSEQ番号がいずれも異なっている場合には、図4に示すように、接続点Pにおいて複数の構造部材それぞれの端部が接続されているものと判定することができる。このように、構造部材の端部同士が接続されることを「端部間接続」と称する。
【0038】
一方、接続方式決定部33は、接続点Pを挟んで対角線上に存在する構造部材のSEQ番号に同一のものがある場合には、当該接続点Pを挟む2方向に亘るように、1つの構造部材が配置されているものと判定することができる。すなわちこの場合、図5に示すように、接続点Pにおいて、一の構造部材の中途部(中間部)に、他の構造部材の端部が接続されているものと判定することができる。このように、構造部材の中途部(中間部)と端部とが接続されることを「中間部接続」と称する。
【0039】
このように接続方式決定部33は、接続点Pの種類を分類し、当該接続点Pに関する情報として記憶部に記憶する。
【0040】
図2のステップS105において、接続方式決定部33は、接続点Pの種類に基づいて、当該接続点Pにおける構造部材の接続方式を決定する。ここで、接続方式とは、構造部材同士を接続するための構成を意味している。本実施形態における接続方式は、特に、構造部材同士を接続するための接続部材を意味している。
【0041】
接続方式決定部33は、記憶部に記憶された図7に例示すような表T1を参照して、接続点Pの種類の照合を行う。表T1は、商品区分及び接続点Pの種類に応じた接続方式(接続部材)等を示したものである。なお、表T1に示すような商品区分等と接続方式等との関係は、予め商品ごとに型式認定(登録)されている。
【0042】
接続方式決定部33は、ステップS101で得られた建物の商品区分と、ステップS104で得られた接続点Pの種類を、表T1と照合する。これによって、接続方式決定部33は、該当する接続方式(接続部材)及びオフセット値を決定する。
【0043】
例えば、商品区分が「M1」、接続点Pの種類が「端部間接続」である場合、表T1を用いると、接続方式(接続部材)を「ジョイントボックス」、オフセット値を「50mm」に決定することができる。
【0044】
ここで、オフセット値とは、接続方式に応じて必要となる構造部材の長手方向寸法の削減量である。構造部材が他の構造部材と干渉している部分(構造部材の端部)をオフセット値だけ削減する(後退させる)ことで、他の構造部材との干渉を解消することができる。さらに、構造部材をオフセット値だけ削減して得られたスペースに、接続部材(ジョイントボックス等)を配置することになる。
【0045】
このように接続方式決定部33は、接続点Pにおける接続方式等を決定し、記憶部に当該接続点Pに関する情報として記憶する。
【0046】
また接続方式決定部33は、決定されたオフセット値だけ、各構造部材の端部を削減(後退)させる。接続方式決定部33は、当該構造部材の形状を仮想空間に配置された構造部材に反映させる。図8(a)には、一例として、端部間接続された梁2(図4参照)の端部が削減(後退)された状態を示している。
【0047】
また接続方式決定部33は、決定された接続方式(接続部材)を仮想空間に配置する。図8(b)には、一例として、端部間接続された梁2の接続点Pにジョイントボックス5が配置された状態を示している。
【0048】
図2のステップS106において、強度判定部34は、構造部材の種類等に基づいて、当該構造部材の端部に必要な強度(接続強度)の判定を行う。より具体的には、強度判定部34は、構造部材の端部に設けられるプレート(端部プレート4)に必要とされる厚みを判定する。
【0049】
強度判定部34は、記憶部に記憶された図9に例示すような表T2を参照して、接続強度の判定を行う。表T2は、構造部材の種類や部位等に応じた接続強度(端部プレート4の厚み)を示したものである。
【0050】
強度判定部34は、構造部材の種類、部位(構造部材の端部が先端であるか否か)、腕木控え接続の有無(ハングバルコニーにおける腕木控えの接続があるか否か)等を、表T2と照合する。これによって、強度判定部34は、該当する接続強度を判定する。
【0051】
具体的には、強度判定部34は、判定の対象となる構造部材の情報を、表T2の最も上の行から下の行へと順番に照合する。すなわち、表T2では、上の行ほど優先順位が高くなる。強度判定部34は、照合の結果、該当する行があれば、当該行に記載の接続強度(4mm)であると判定する。また強度判定部34は、どの行も該当しない場合には、最も下の行に記載されているように、接続強度は6mmであると判定する。
【0052】
このように、本実施形態(表T2)では所定の場合にのみ接続強度(厚み)を4mmとし、それ以外の場合には接続強度(厚み)を6mmとするように設定している。このように、本実施形態では、接続強度(厚み)の最大値(最大強度:6mm)を標準値とし、最大値(最大強度)まで必要としない場合には、接続強度(厚み)を4mmとするようにしている。
【0053】
また、本実施形態(表T2)では優先順位を設定し、可能であれば接続強度(厚み)が4mmとなるようにしている。これによって、過剰な接続強度ではなく、適切な接続強度を選択することができる。
【0054】
このように強度判定部34は、各構造部材の端部の接続強度を判定し、当該判定結果を記憶する。また強度判定部34は、決定された端部プレート4を配置するスペースを確保するために、当該端部プレート4の厚み(本実施形態では、4mm又は6mm)だけ、構造部材の端部を削減(後退)させる。当該構造部材の形状は、仮想空間に配置された構造部材に反映される。
【0055】
図2のステップS107において、接続方法決定部35は、構造部材の種類等に基づいて、当該構造部材の端部における接続方法を決定する。より具体的には、接続方法決定部35は、構造部材の接続に用いられる端部プレート4の長さ、並びに当該端部プレート4におけるボルトの位置を決定する。
【0056】
接続方法決定部35は、記憶部に記憶された構造部材の種類や断面等と、それに応じた接続方法(ボルトの位置等)との関係を参照して、接続方法を決定する。接続方法決定部35は、構造部材の種類は何か、断面、当該構造部材が床組みが対象か否か、途中階における陸屋根部等が対象か否か、接続相手となる接続部材の種類は何か、をそれぞれ判定し、当該構造部材の種類等に応じた接続方法を決定する。
【0057】
図10の表T3には、接続方法決定部35によって接続方法が決定された結果の一部を例示している。接続方法決定部35は、入力情報として構造部材の種類や断面等を取得し、返却情報として端部プレート4の形状(プレート長さ等)を出力している。
【0058】
ここで、本実施形態において接続方法とは、具体的には端部プレート4の長さ(プレート長さ)、当該端部プレート4に設けられるボルトの数、及びボルトの位置を意味している。図11には、端部プレート4の一例を示している。図11に示すように、プレート長さとは、端部プレート4の上下方向(長手方向(図11における紙面上下方向))の長さである。端部プレート4には、左右対称にボルトが設けられる。図11には、端部プレート4にボルトが挿通されるボルト孔4aが形成された状態を例示している。
【0059】
ボルトの位置(ボルト孔4aの位置)は、端部プレート4の上端からの距離で定義される。例えば図11に示すように、端部プレート4に6つのボルト(ボルト孔4a)が設けられる場合、当該端部プレート4の上端からの距離(ボルト位置1、ボルト位置2及びボルト位置3)によって、当該ボルトの位置が定義される。なお、端部プレート4に4つのボルトが設けられる場合には、ボルト位置1及びボルト位置2にのみ、ボルトが設けられることになる。
【0060】
このように接続方法決定部35は、各構造部材の端部における接続方法を決定し、当該決定の結果を記憶部に記憶する。
【0061】
図2のステップS108において、接続方法決定部35は、ステップS107で決定した接続方法に従って、端部プレート4の形状を生成する。具体的には、接続方法決定部35は、端部プレート4にボルト孔4aを発生(形成)させる。また接続方法決定部35は、3次元CADソフトウェアを用いて、生成された端部プレート4を仮想空間に配置する。図12には、一例として、端部プレート4が梁2の端部に配置される様子を示している。また図13には、一例として、端部間接続された梁2の端部に端部プレート4が配置された状態を示している。
【0062】
図2のステップS109において、接続方法決定部35は、端部プレート4と接合される接続部材(ステップS105で決定された部材)の形状を生成する。具体的には、端部プレート4と接合される接続部材にも、ボルト孔を発生(形成)させる。
【0063】
例えば、接続方法決定部35は、端部プレート4が接続部材であるジョイントボックス(図14に示すジョイントボックス5)と接続される場合、当該ジョイントボックス5にもボルト孔5aを発生させる。この際、接続方法決定部35は、端部プレート4のボルト孔4aに相当する位置に、ボルト孔5aを発生させる。
【0064】
図2のステップS110において、型式引当部36は、各構造部材の端部における接続方法(端部プレート4の形状等)に基づいて、予め登録されている端部プレート4の候補の中から該当する端部プレート4の種類(型式)を引き当てる。
【0065】
型式引当部36は、商品区分ごとに、当該商品に用いられる複数の端部プレート4の種類(型式)と、当該端部プレート4の形状等を記憶している。型式引当部36は、ステップS107で決定された接続方法(端部プレート4の形状等)を参照して、記憶している当該端部プレート4の種類(型式)の中から該当するものを引き当てる。
【0066】
図15の表T4には、型式引当部36によって端部プレート4の種類(型式)が引き当てられた結果の一部を例示している。型式引当部36は、入力情報として端部プレート4の形状(プレート長さ等)を取得し、返却情報として当該端部プレート4の種類(プレート種)を出力している。
【0067】
ここで、本実施形態においてプレート種とは、端部プレート4の種類(型式)を識別する番号である。本実施形態においては、設計対象となる建物の商品区分ごとに、使用される端部プレート4の種類(型式)が定められている。そこで型式引当部36は、ステップS107で決定された接続方法(端部プレート4の形状等)がどの型式の端部プレート4に相当するかを判断している。
【0068】
このように、端部プレート4を、予め定められている型式に紐付け、当該型式を用いて端部プレート4の個数等を把握することで、部品管理や製造の効率化を図ることができる。
【0069】
なお、型式引当部36は、該当する端部プレート4の種類(型式)がない場合には、当該端部プレート4は別注すべきものと判断し、その旨を記憶部に記憶する。
【0070】
このように型式引当部36は、各端部プレート4の型式を引き当て、当該結果を記憶部に記憶する。
【0071】
図2のステップS111において、型式引当部36は、接続点Pにおいて接続される構造部材の端部プレート4の種類(型式)に基づいて、予め登録されている接続部材の候補の中から該当する接続部材の種類(型式)を引き当てる。
【0072】
型式引当部36は、商品区分ごとに、当該商品に用いられる複数の接続部材(ジョイントボックス等)の種類(型式)と、当該接続部材の形状等を記憶する記憶部を参照して、引き当てを行う。型式引当部36は、ステップS110で引き当てられた端部プレート4の種類(型式)を参照して、記憶している接続部材の種類(型式)の中から該当するものを引き当てる。
【0073】
図16の表T5には、型式引当部36によって接続部材(図16の例では、ジョイントボックス)の種類(型式)が引き当てられた結果の一部を例示している。型式引当部36は、入力情報として端部プレート4の種類(型式)を取得し、返却情報として当該端部プレート4が接続されるジョイントボックスの種類(型式)を出力している。より具体的には、ジョイントボックスの6面それぞれに接続される端部プレート4の型式から、適したジョイントボックスの種類(型式)が引き当てられる。
【0074】
なお、型式引当部36は、該当するジョイントボックスの種類(型式)がない場合には、当該ジョイントボックスは別注すべきものと判断し、その旨を記憶部に記憶する。
【0075】
以上のステップS101からステップS111までの処理によって、設計システム1は、構造部材を接続して構成される架構を設計することができる。特に本実施形態の設計システム1は、構造部材同士の接続点Pに関する情報に基づいて、当該接続点Pにおける接続方式等(納まり)を設計するため、設計ミスやそれに起因する取り合い不良の発生を抑制することができる。
【0076】
なお、上記例では水平構面における梁2同士の接続を例に挙げて説明したが、設計システム1はこれに限らず、垂直(鉛直)構面における構造部材同士の接続(例えば、梁2と柱3との接続や、柱3同士の接続)についても、同様の設計が可能である。
【0077】
また、上記例では、構造部材同士の接続点Pにおける接続方式等を設計する様子を説明したが、設計システム1は、当該設計と並行して、設備配管や金物等に関する設計を行うことも可能である。
【0078】
具体的には、設計システム1は、初期処理として、事前に行われた企画設計により決定された設備配管や金物に関する情報を取得する。当該設備配管や金物に関する情報は、CSVなどの形式で事前に制御装置30に入力される。設計システム1は、制御装置30の記憶部に、取得した設備配管等に関する情報を記憶する。また設計システム1は、当該設備配管等を配置するために必要な形状を構造部材に反映させることができる。例えば、梁2に設備配管を挿通する孔が必要であれば、当該設備配管に関する情報(座標等)に基づいて当該孔を形成する。また、梁2に金物(外壁パネル等を取り付けるための金物等)を取り付けるボルト孔が必要であれば、当該金物に関する情報(座標等)に基づいて当該ボルト孔を形成する。
【0079】
以上の如く、本実施形態に係る設計システム1は、
複数の構造部材に関する情報に従って、前記構造部材を仮想的に組み上げる仮想組上げ手段(仮想空間配置部32、ステップS102)と、
前記仮想組上げ手段によって組み上げられた前記構造部材同士が接続される接続点Pを、接続の態様に応じて分類する接続点分類手段(接続方式決定部33、ステップS104)と、
を具備するものである。
このように構成することにより、設計作業の効率化を図ることができる。すなわち、設計システム1によって接続の態様に応じた接続点Pの分類が行われるため、当該分類に従った接続点Pの構成を容易に決定することが可能となり、ひいては設計作業全体の効率化を図ることができる。また、接続点Pの分類が自動的に行われるため、人為的ミスの抑制を図ることもできる。
【0080】
また、前記接続点分類手段(接続方式決定部33)は、
前記接続点Pにおいて互いに接続された前記構造部材のうち、前記接続点が存在する構面に沿って配置された前記構造部材に関する情報に基づいて、前記接続点Pを分類する(ステップS104)ものである。
このように構成することにより、接続点Pを適切に分類することができる。すなわち、構造部材の配置だけでなく、当該構造部材に関する情報を参照することで、より適切な分類が可能となる。
【0081】
また、設計システム1は、
前記構造部材ごとに識別番号(SEQ番号)を付与する識別番号付与手段(初期処理部31)をさらに具備し、
前記接続点分類手段(接続方式決定部33)は、
前記接続点Pにおいて互いに接続された前記構造部材に付与された前記識別番号の組み合わせに基づいて、前記接続点Pを分類するものである。
このように構成することにより、接続点Pを適切に分類することができる。すなわち、構造部材の配置だけでなく、当該構造部材の識別番号を参照することで、より適切な分類が可能となる。
【0082】
また、前記接続点分類手段(接続方式決定部33)は、
前記接続点Pを挟んで対向する位置に配置された前記構造部材に付与された前記識別番号が同一か否かに基づいて、前記接続点Pを分類するものである。
このように構成することにより、接続点Pを容易に分類することができる。すなわち、複雑な演算等は必要なく、各構造部材の識別番号を確認するだけで接続点Pを分類することができる。
【0083】
また、設計システム1は、
複数の構造部材に関する情報に従って、前記構造部材を仮想的に組み上げる仮想組上げ手段(仮想空間配置部32、ステップS102)と、
前記仮想組上げ手段によって組み上げられた前記構造部材同士が接続される接続点を、接続の態様に応じて分類し、分類された前記接続点に応じて、前記接続点の構成を決定する接続方式決定手段(接続方式決定部33、ステップS104、ステップS105)と、
を具備するものである。
このように構成することにより、設計作業の効率化を図ることができる。すなわち、設計システム1によって接続の態様に応じた接続点Pの分類、及び当該分類に従った接続点Pの構成の決定が行われるため、設計者が自ら接続点ごとに構成を決定する必要がなく、設計作業全体の効率化を図ることができる。また、接続点Pの構成の決定が自動的に行われるため、人為的ミスの抑制を図ることもできる。
【0084】
また、前記接続方式決定手段(接続方式決定部33)は、
設計対象となる商品の分類も考慮して前記接続点Pの構成を決定する(ステップS105)ものである。
このように構成することにより、より適切な構成の決定が可能となる。すなわち、予め商品ごとに接続点Pの構成が定められている場合には、当該商品に応じた構成の決定が可能となる。
【0085】
また、前記接続方式決定手段(接続方式決定部33)は、
前記構造部材同士を接続するために用いられる接続部材を決定するものである(ステップS105)。
このように構成することにより、より効果的に設計作業の効率化を図ることができる。すなわち、設計者自らが接続部材の選定を行う必要がないため、設計作業全体の効率化、及び人為的ミスの抑制を図ることができる。
【0086】
また、設計システム1は、
前記接続部材が決定された後、当該接続部材が用いられる前記接続点において必要とされる強度に基づいて、前記接続部材の形状を決定する接続方法決定手段(強度判定部34、ステップS106)をさらに具備するものである。
このように構成することにより、より効果的に設計作業の効率化を図ることができる。すなわち、設計者自らが接続部材の強度計算や形状の決定を行う必要がないため、設計作業全体の効率化、及び人為的ミスの抑制を図ることができる。
【0087】
また、設計システム1は、
決定された前記接続部材が、予め識別された前記接続部材の候補のうちのどれに該当するかを判断する型式引当手段(型式引当部36、ステップS111)をさらに具備するものである。
このように構成することにより、構造部材を容易に管理することができる。すなわち、構造部材を予め識別された型式に分類することで、当該型式に従って容易に管理することができるようになる。
【0088】
なお、本実施形態に係る仮想空間配置部32は、仮想組上げ手段の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る接続方式決定部33は、接続点分類手段及び接続方式決定手段の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る型式引当部36は、型式引当手段の実施の一形態である。
【0089】
以上、実施形態について説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0090】
例えば、本実施形態においては、設計システム1は、設計の様子(3次元の映像)を表示装置20に表示させるものとしたが、本発明はこれに限るものではなく、必ずしも3次元の映像で表示させなくてもよい。
【0091】
また、本実施形態においては、接続点Pにおいて接続された構造部材のSEQ番号に基づいて当該接続点Pを分類するものとしたが(ステップS104)、本発明はこれに限らず、例えばその他の構造部材に関する情報(配置座標や形状等)に基づいて接続点Pを分類してもよい。例えば、接続方式決定部33は、構造部材の配置座標を参照して、接続点Pを挟んで対角線上に存在する2つの構造部材を抽出し、当該構造部材の形状等が同一であるか否かを判定する。接続方式決定部33は、当該2つの構造部材の形状等が完全に同一である場合には、当該2つの構造部材が実際には1つの構造部材であると推定する。一方、接続方式決定部33は、当該2つの構造部材の形状等が同一ではない場合、当該2つの構造部材は別個独立した構造部材であると推定する。接続方式決定部33は、この推定結果に基づいて、接続点Pの種類(端部間接続又は中間部接続)を分類することができる。
【0092】
また、本実施形態においては、商品区分及び接続点Pの種類に基づいて、接続点Pにおける接続方式を決定するものとしたが(ステップS105)、本発明はこれに限るものではなく、例えば接続点Pの種類のみに基づいて接続方式を決定することも可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 設計システム
10 入力装置
20 表示装置
30 制御装置
31 初期処理部
32 仮想空間配置部
33 接続方式決定部
34 強度判定部
35 接続方法決定部
36 型式引当部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16