(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】シャーベット状飲料用コーヒー飲料、その製造方法及びコーヒー飲料のシャーベット状化方法
(51)【国際特許分類】
A23F 5/24 20060101AFI20220913BHJP
A23L 29/238 20160101ALI20220913BHJP
【FI】
A23F5/24
A23L29/238
(21)【出願番号】P 2018073875
(22)【出願日】2018-04-06
【審査請求日】2021-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】591014972
【氏名又は名称】株式会社 伊藤園
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒井 秀和
【審査官】楠 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/126151(WO,A1)
【文献】国際公開第97/043913(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0137126(US,A1)
【文献】特開2010-017163(JP,A)
【文献】特開2017-143831(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0092724(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 5/24
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体量に対して増粘多糖類を0.02~0.22質量%含み、全体量に対して溶解液部を20~70質量%含有し、凍結部を30~80質量%含有したときの、前記溶解液部の可溶性固形分量が、飲料液の可溶性固形分量100%に対して100~200%であり、前記凍結部の可溶性固形分量が、飲料液の可溶性固形分量100%に対しての20~100%であり、
飲料液の可溶性固形分量は、凍結させていない全ての液状の飲料液中に含まれる可溶性固形分値(Brix)を100%とした値をいい、
全体量に対してショ糖
の量が0.00~2.00質量
%であり、
pH5.0~7.0であり、
凍結後、シャーベット状に解凍させて飲用することができる、
容器詰めされた、低甘味若しくは無糖の容器詰めシャーベット状飲料用コーヒー飲料。
【請求項2】
前記増粘多糖類が、タマリンドシートガム、ローカストビーンガム及びグアーガムからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の容器詰めシャーベット状飲料用コーヒー飲料。
【請求項3】
前記増粘多糖類が、タマリンドシードガム及びグアーガムから選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の容器詰めシャーベット状飲料用コーヒー飲料。
【請求項4】
前記増粘多糖類が、タマリンドシードガム及びグアーガムの組み合わせである、請求項1~3のいずれか1項に記載の容器詰めシャーベット状飲料用コーヒー飲料。
【請求項5】
前記飲料液の可溶性固形分値(%)が1.0~9.0である、請求項1~4のいずれか1項に記載の容器詰めシャーベット状飲料用コーヒー飲料。
【請求項6】
飲料液のクロロゲン酸類の濃度を100%とし、全体量に対して溶解液部を20~70質量%含有し、凍結部を30~80質量%含有したときの、前記溶解液部のクロロゲン酸類の濃度が前記飲料液のクロロゲン酸類の濃度に対して100~210%であり、前記凍結部のクロロゲン酸類の濃度が前記飲料液のクロロゲン酸類の濃度に対して50~100%である、請求項1~5のいずれか1項に記載の容器詰めシャーベット状飲料用コーヒー飲料。
【請求項7】
前記飲料液のクロロゲン酸類の濃度が200~1000ppmである、請求項6に記載の容器詰めシャーベット状飲料用コーヒー飲料。
【請求項8】
凍結後、全体量に対して溶解液部が20~70質量%となり、凍結部が30~80質量%となるように解凍したときに、飲料液の可溶性固形分量100%に対して、前記溶解液部の可溶性固形分量が100~200%となり、前記凍結部の可溶性固形分量が20~100%となるように、全体量に対して増粘多糖類を0.02~0.22質量%添加し、
飲料液の可溶性固形分量は、凍結させていない全ての液状の飲料液中に含まれる可溶性固形分値(Brix)を100%とした値をいい、
低甘味若しくは無糖となるように全体量に対して添加するショ糖の量が
0.00~2.00質量
%であり、
pHが5.0~7.0であり、
凍結後にシャーベット状に解凍させて飲用することができ、
容器詰めする、低甘味若しくは無糖の容器詰めシャーベット状飲料用コーヒー飲料の製造方法。
【請求項9】
凍結後、全体量に対して溶解液部が20~70質量%となり、凍結部が30~80質量%となるように解凍したときに、飲料液の可溶性固形分量100%に対して、前記溶解液部の可溶性固形分量が100~200%となり、前記凍結部の可溶性固形分量が20~100%となるように、全体量に対して増粘多糖類を0.02~0.22質量%添加し、
飲料液の可溶性固形分量は、凍結させていない全ての液状の飲料液中に含まれる可溶性固形分値(Brix)を100%とした値をいい、
低甘味若しくは無糖となるように全体量に対して添加するショ糖の量が
0.00~2.00質量
%であり、
pHが5.0~7.0であり、
凍結後にシャーベット状に解凍させて飲用することができるように、容器詰めする、低甘味若しくは無糖の容器詰めコーヒー飲料のシャーベット状化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結後、シャーベット状に解凍させて飲用できる、シャーベット状飲料用コーヒー飲料、その製造方法及びシャーベット状コーヒー飲料製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細な氷と飲料液を合わせたシャーベット状飲料や、飲料液を凍結させた後、半解凍状態にしたシャーベット状飲料が夏場を中心に飲用されている。凍らせた状態の飲料を解凍してシャーベット状にして飲む飲料として、ショ糖及び/又はトレハロースを含むpHが2.0~4.0である、シャーベット状飲料が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
甘味が付与されて糖度が高く酸性の飲料は、凍結後、半解凍した場合に、飲料中に含まれる糖分などの可溶性固形分の凝固点降下の影響により、凍結させた飲料が解凍しやすく、氷塊が崩れやすい傾向がある。一方、微糖又は低糖といわれる低甘味、若しくは無糖であり、中性の飲料は、可溶性固形分量が少ないため、氷塊が崩れにくく、微細な氷結晶と飲料とが混合されたシャーベット状飲料になりにくい傾向がある。例えばコーヒー飲料は、pHがほぼ中性(pH5~7)程度である。また、近年は、「甘さ控えめ」の消費者のニーズとともに、特に夏場においてはすっきりとした口当たりが望まれており、微糖又は低糖の低甘味若しくは無糖のコーヒー飲料が好まれている。
【0005】
このような微糖又は低糖の低甘味若しくは無糖のコーヒー飲料を凍結し、解凍した場合、溶解液部の量が少なく凍結部の量が多い解凍初期の状態と、溶解液部の量が多く凍結部の量が少ない解凍後期の状態では、飲用した場合に甘味や風味が異なる。解凍初期の状態では甘味や風味が強く感じられ、解凍後期の状態では甘味や風味が弱く水っぽく感じられる場合が多い。特に低甘味又は無糖のコーヒー飲料は、飲料液自体に含まれる可溶性固形分量が少なく、解凍初期の状態で、少ない量の溶解液部に飲料液中に含まれる可溶性固形分量の大部分が溶け出してしまい、解凍後期の状態で甘味や風味がほぼ感じられない水っぽい状態となる。
【0006】
本発明は、低甘味若しくは無糖のコーヒー飲料であっても、微細な氷結晶と飲料とが混合した状態を含むシャーベット状飲料として飲用することが可能であり、解凍時において甘味や風味の経時的な変化が抑制されたシャーベット状飲料用コーヒー飲料、その製造方法及びコーヒー飲料のシャーベット状化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りであり、本発明は、以下の態様を包含する。
【0008】
本発明の第一の態様は、全体量に対して増粘多糖類を0.02~0.22質量%含み、全体量に対して溶解液部を20~70質量%含有し、凍結部を30~80質量%含有したときの、前記溶解液部の可溶性固形分量が、飲料液の可溶性固形分量100%に対して100~200%であり、前記凍結部の可溶性固形分量が、飲料液の可溶性固形分量100%に対して20~100%であることを特徴とするシャーベット状飲料用コーヒー飲料である。
【0009】
本発明の第二の態様は、凍結後、全体量に対して溶解液部が20~70質量%となり、凍結部が30~80質量%となるように解凍したときに、飲料液の可溶性固形分量100%に対して、前記溶解液部の可溶性固形分量が100~200%となり、前記凍結部の可溶性固形分量が20~100%となるように、全体量に対して増粘多糖類を0.02~0.22質量%添加することを特徴とするシャーベット状飲料用コーヒー飲料の製造方法である。
【0010】
本発明の第三の態様は、凍結後、全体量に対して溶解液部が20~70質量%となり、凍結部が30~80質量%となるように溶解したときに、飲料液の可溶性固形分量100%に対して、前記溶解液部の可溶性固形分量が100~200%となり、前記凍結部の可溶性固形分量が20~100%となるように、全体量に対して増粘多糖類を0.02~0.22質量%添加することを特徴とするコーヒー飲料のシャーベット状化方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、微細な氷結晶と飲料とが混合した状態を含むシャーベット状飲料とすることができ、解凍時における甘味や風味の経時的な変化が抑制されたシャーベット状飲料用コーヒー飲料、その製造方法及びコーヒー飲料のシャーベット状化方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施例1及び比較例1のコーヒー飲料の溶解液部率(質量%)と可溶性固形分量(%)の関係を示すグラフである。
【
図2】
図2は、実施例1及び比較例1のコーヒー飲料の凍結部率(質量%)と可溶性固形分量(%)の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は、以下に示す実施形態に限定されない。
【0014】
本発明の第一の実施形態に係るシャーベット状飲料用コーヒー飲料は、全体量に対して増粘多糖類を0.02~0.22質量%含み、全体量に対して溶解液部を20~70質量%含有し、凍結部を30~80質量%含有したときの、前記溶解液部の可溶性固形分量が、飲料液の可溶性固形分量100%に対して100~200%であり、前記凍結部の可溶性固形分量が、飲料液の可溶性固形分量100%に対して20~100%であることを特徴とする。本明細書において、コーヒー飲料の飲料液とは、凍結させていない全て液状のコーヒー飲料液、又は、凍結後に凍結部が含まれないように全て溶解した状態のコーヒー飲料液をいう。以下、飲料液の全体量に対する溶解液部の含有量を「溶解液部率(質量%)」という場合がある。また、飲料液の全体量に対する凍結部の含有量を「凍結部率(質量%)」という場合がある。飲料液の可溶性固形分量は、凍結させていない全て液状の飲料液中に含まれる可溶性固形分値(Brix)を100%とした値をいう。
【0015】
本明細書においてシャーベット状飲料とは、微細な氷結晶と液体状の飲料とが混合した状態を含む飲料をいう。シャーベット状飲料は、一部に細かい氷結晶とならない氷塊が残っていてもよいが、全体量の5割以上、好ましくは6割以上が微細な氷結晶と飲料液が混合したシャーベット状となっていることが好ましい。また、本明細書において、シャーベット状とは、微細な氷結晶と液体が混合されてスプーンですくえる程度若しくはPETボトルの口部から流れ出ることが可能な程度の柔らかさの状態となっていることをいう。本発明の一実施形態において、シャーベット状飲料中の微細な氷結晶は、凍結したコーヒー飲料の氷結晶からなるものであることが好ましく、凍結したコーヒー飲料の一部が解凍し、溶解液部と凍結部とが撹拌混合されてシャーベット状飲料となったものであることが好ましい。
【0016】
シャーベット状飲料用コーヒー飲料は、溶解液部率が20質量%及び凍結部率が80質量%である解凍初期の状態から、溶解液部率が70質量%及び凍結部率が30質量%である解凍後期の状態において、溶解液部中の可溶性固形分量が、飲料液の可溶性固形分量に対して100~200%と一定の範囲となるようにしたので、解凍時における甘味や風味の経時的な変化を抑制することができる。シャーベット状飲料用コーヒー飲料は、溶解液部率が20~70質量%であり、凍結部率が30~80質量%であるときの、前記溶解液部の可溶性固形分量(%)が、飲料液の可溶性固形分量に対して、好ましくは101~195%、より好ましくは102~190%、さらに好ましくは103~186%である。
【0017】
シャーベット状飲料用コーヒー飲料は、凍結後に、溶解液部率が20~70質量%であり、凍結部率が80~30質量%であるときに、凍結部中の可溶性固形分量が、飲料液中の可溶性固形分量に対して20~100%であるため、解凍初期から解凍後期の状態において、凍結部が細かい氷の結晶に崩れやすく、溶解液部と細かい氷結晶が混合されて滑らかなシャーベット状の食感の飲料とすることができる。シャーベット状飲料用コーヒー飲料は、溶解液部率が20~70質量%であり、凍結部率が30~80質量%であるときの、前記凍結部の可溶性固形分量が、飲料液の可溶性固形分量に対して、好ましくは20~99%、より好ましくは23~98%、さらに好ましくは25~97%、よりさらに好ましくは28~96%である。凍結部の可溶性固形分量は、溶解液部と凍結部を分離させた後、凍結部を溶解させて、後述する測定方法により可溶性固形分値(Brix)を測定し、飲料液中の可溶性固形分値(Brix)を100%とした場合の割合として算出することができる。
【0018】
シャーベット状飲料用コーヒー飲料は、溶解液部率が20~30質量%であり、凍結部率が80~70質量%であるときに、前記溶解液部の可溶性固形分量が、飲料液の可溶性固形分量に対して、好ましくは100%以上200%未満であり、より好ましくは100~190%であり、さらに好ましくは105~185%である。シャーベット状飲料用コーヒー飲料は、溶解液部率が20~30質量%であり、凍結部率が80~70質量%であるときの解凍初期の状態において、溶解液部中に溶け出す可溶性固形分量が比較的少なく、解凍初期の状態においてコーヒーの味が濃すぎることなく、解凍初期の状態から適度なコーヒーの味と風味を感じられるシャーベット状飲料を飲用するこことができる。
【0019】
シャーベット状飲料用コーヒー飲料は、溶解液部率が60~70質量%であり、凍結部率が40~30質量%であるときに、前記凍結部の可溶性固形分量が、飲料液の可溶性固形分量に対して、好ましくは20%以上100%未満であり、より好ましくは25~99%である。シャーベット状飲料用コーヒー飲料は、溶解液部率が60~70質量%であり、凍結部率が40~30質量%である、解凍後期の状態において、凍結部に残っている可溶性固形分量が、飲料液の可溶性固形分量に対して、20%以上100%未満と多く残存していたため、解凍後期の状態においても、コーヒーの味が薄く水っぽくなることなく、細かい氷結晶に砕かれた凍結部と溶解液部を混合させて、シャーベット状飲料を飲用することができる。
【0020】
可溶性固形分値(%)は、飲料中に含まれる可溶性固形分の濃度であり、可溶性固形分値(%)は、Brix(Bx)ともいう。可溶性固形分値(%)は、屈折率計で測定した屈折率を、国際砂糖分析統一委員会(ICUMS)で定められた換算式により、ショ糖液100g中に含まれるショ糖のグラム数に換算した値である。可溶性固形分値(%)の測定方法は、公知の方法により測定することができ、例えば光学屈折率計(アタゴ社製、Digital Refractometers、RX5000α)を用いて測定することができる。
【0021】
シャーベット状飲料用コーヒー飲料は、飲料液の可溶性固形分値(Brix)(%)が、好ましくは1.0~9.0であり、より好ましくは1.0~8.5であり、さらに好ましくは1.0~8.0である。また、飲料液中の可溶性固形分は、原料として含まれるコーヒー抽出液由来の可溶性固形分、及びコーヒー抽出液以外の原料、例えば糖分由来の可溶性固形分を含む。
【0022】
シャーベット状飲料用コーヒー飲料は、通常pH4.0~8.0、好ましくはpH5.0~7.0、より好ましくはpH5.0~6.0である。
【0023】
シャーベット状飲料用コーヒー飲料は、原料となるコーヒー抽出液を含み、コーヒー抽出液由来の可溶性固形分値(Brix)(%)は、好ましくは0.5~2.2であり、より好ましく1.0~2.1であり、さらに好ましくは1.1~2.0であり、よりさらに好ましくは1.2~2.0である。
【0024】
コーヒー抽出液に用いるコーヒー豆の産地としては、特に制限されず、例えばブラジル、コロンビア、タンザニア、モカ等が挙げられる。また、コーヒー豆の品種としては、アラビカ種、ロブスタ種等が挙げられる。抽出液に用いるコーヒー豆は、1種を用いてもよく、2種以上をブレンドして用いてもよい。コーヒー豆の焙煎は、公知の方法を用いて行い、求める香味に応じて適宜調整が可能である。
【0025】
コーヒー抽出液には、ポリフェノールの一種であり、コーヒーの呈味や香味、コク味を感じさせる成分であるクロロゲン酸類を含む。コーヒー飲料に含まれるクロロゲン酸類も凍結後、解凍初期の状態で、凍結させたコーヒー飲料に含まれる可溶性固形分と共に溶解液部に溶出しやすく、解凍後期の状態でコーヒー飲料に含まれるクロロゲン酸類の量が少なくなると、コーヒー飲料の風味が感じられなくなる。
【0026】
シャーベット状飲料用コーヒー飲料は、飲料液のクロロゲン酸類の濃度(ppm)を100%とし、全体量に対して溶解液部を20~70質量%含有し、凍結部を30~80質量%含有したときの、前記溶解液部のクロロゲン酸類の濃度(ppm)が飲料液のクロロゲン酸類の濃度に対して100~210%であり、前記凍結部のクロロゲン酸類の濃度(ppm)が飲料液のクロロゲン酸類の濃度に対して50~100%であることが好ましい。飲料液のクロロゲン酸類の濃度(ppm)を100%としたときの、前記溶解液部のクロロゲン酸類の濃度(ppm)を、「溶解液部のクロロゲン酸類量(%)」という場合がある。飲料液のクロロゲン酸類の濃度(ppm)を100%としたときの前記凍結部のクロロゲン酸類の濃度(ppm)を、「凍結部のクロロゲン酸類量(%)」という場合がある。シャーベット状飲料用コーヒー飲料は、溶解液部率が20質量%及び凍結部率が80質量%とした解凍初期の状態から、溶解液部率が70質量%及び凍結部率が30質量%とした解凍後期の状態において、飲料液中のクロロゲン酸類の濃度100%に対して、前記溶解液部中のクロロゲン酸類の濃度(溶解液部のクロロゲン酸類量)が100~210%であり、前記凍結部のクロロゲン酸類の濃度(凍結部のクロロゲン酸類量)が50~100%となるようにしたので、解凍時における、コーヒーの呈味や香味、コク味の経時的な変化を抑制することができる。シャーベット状飲料用コーヒー飲料は、溶解液部率が20~70質量%であり、凍結部率が30~80質量%であるときの、飲料液のクロロゲン酸類の濃度に対して、前記溶解液部のクロロゲン酸類の濃度(溶解液部のクロロゲン酸類量(%))がより好ましくは100~200%であり、前記凍結部のクロロゲン酸類の濃度(凍結部のクロロゲン酸類量(%))がより好ましくは55~98%である。
【0027】
シャーベット状飲料用コーヒー飲料は、飲料液中のクロロゲン酸類の濃度が200~1000ppmであることが好ましく、より好ましくは350~950ppm、さらに好ましくは400~910ppmである。シャーベット状飲料用コーヒー飲料の飲料液のクロロゲン酸類の濃度が200~1000ppmであると、凍結後、半溶解させてシャーベット状飲料として飲用しても、コーヒーの呈味、香味及びコク味を感じることができる。
【0028】
本明細書において、クロロゲン酸類は、3-カフェオイルキナ酸、4-カフェオイルキナ酸、5-カフェオイルキナ酸、3-フェルラキナ酸、4-フェルラキナ酸、5-フェルラキナ酸、3,4-ジカフェオイルキナ酸、3,5-ジカフェオイルキナ酸、及び4,5-ジカフェオイルキナ酸の9種のクロロゲン酸類の総称である。測定したクロロゲン酸類は、9種のクロロゲン酸の全てが含まれている必要はなく、少なくとも3種以上が含まれていればよい。シャーベット状飲料用コーヒー飲料に含まれるクロロゲン酸類の濃度(ppm)の測定は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いてUV検出により検出することができる。
【0029】
シャーベット状飲料用コーヒー飲料は、全体量に対して増粘多糖類を0.02~0.22質量%含む。シャーベット状飲料用コーヒー飲料の増粘多糖類の含有量は、全体量に対して、好ましくは0.02~0.21質量%、より好ましくは、0.03~0.20質量%、さらに好ましくは0.03~0.19質量%、よりさらに好ましくは0.04~0.18質量%である。シャーベット状飲料用コーヒー飲料中の増粘多糖類の含有量が、全体量に対して0.02質量%未満であると、凍結後、解凍初期の状態で、可溶性固形分が溶解液部中に多く溶出してしまい、解凍時における甘味や風味の経時的な変化を抑制することができない場合がある。また、シャーベット状飲料用コーヒー飲料中の増粘多糖類の含有量が、全体量に対して0.02質量%未満であると、溶解初期の状態で可溶性固形分が溶解液部中に多く溶出してしまい、凍結部中に含まれる可溶性固形分の量が少なくなるため、凍結部の氷塊が崩れにくくなり、滑らかなシャーベット状飲料となりにくい場合がある。シャーベット状飲料用コーヒー飲料中の増粘多糖類の含有量が、全体量に対して0.22質量%を超えると、増粘多糖類特有の味が感じられる場合があるか、飲料中にゲル状部が存在する場合があり、好ましくない。
【0030】
増粘多糖類としては、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、グアーガム、ジェランガム、キサンタンガム、タラガム、カラギーナン、寒天、グルコマンナン、ペクチン等が挙げられる。シャーベット状飲料用コーヒー飲料に用いる増粘多糖類は、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム及びグアーガムからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、タマリンドシードガム及びグアーガムから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。増粘多糖類は、1種を用いても、2種以上を用いてもよい。増粘多糖類は、タマリンドシードガム及びグアーガムの組み合わせであることが好ましい。増粘多糖類として、タマリンドシードガムとグアーガムとを組み合わせて用いる場合は、タマリンドシードガムとグアーガムの質量比は、特に制限されないが、タマリンドシードガムとグアーガムの質量比(タマリンドシードガム:グアーガム)が、好ましくは1:9~9:1、より好ましくは2:8~8:2、さらに好ましくは3:7~7:3である。
【0031】
グアーガムは、その重量平均分子量が15,000~350,000のものであることが好ましい。グアーガムは、酵素処理により、重量平均分子量が15,000~30,000の低分子量の酵素処理グアーガムを用いてもよい。グアーガムは、重量平均分子量が15,000~30,000の低分子量の酵素処理グアーガムと、酵素処理をしていない重量平均分子量が30,000を超えて350,000の高分子量のグアーガムと、分子量が異なる2種以上のグアーガムを用いてもよい。重量平均分子量が30,000を超えて350,000の高分子量のグアーガムは、測定温度15℃における粘度が2,000mPa・s以上である。また、酵素処理により低分子化した低分子量の酵素処理グアーガムは、酵素処理グアーガムを5質量%含み、温度が5℃で測定した溶液の粘度が13mPa・s以下である。なお、粘度測定には東機産業社製TVB-10型粘度計を用いた。
【0032】
シャーベット状飲料用コーヒー飲料は、増粘多糖類、及び原料となるコーヒー抽出液以外に、本発明の範囲を逸脱しない限り、糖分、乳製品、豆乳、植物油脂などの副原料を含んでいてもよく、抗酸化剤、pH調整剤、乳化剤、香料等の添加物を含んでいてもよい。
【0033】
前記糖分としては、ショ糖、グルコース、フルクトース、キシロース、果糖ブドウ糖液糖、糖アルコール等が挙げられる。糖分は1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。シャーベット状飲料用コーヒー飲料中の糖分の含有量は、特に制限されない。「甘さ控えめ」のすっきりとした口当たりを望む場合には、微糖又は低糖のシャーベット状飲料用コーヒー飲料として、糖分の含有量は、全体量に対して、好ましくは1~10質量%、より好ましくは2~8質量%、さらに好ましくは2~5質量%である。
【0034】
前記乳製品としては、生乳、牛乳、全粉乳、生クリーム、濃縮乳、脱脂乳、部分脱脂乳、練乳等が挙げられる。乳製品は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0035】
前記抗酸化剤としては、アスコルビン酸又はその塩、エリソルビン酸又はその塩等が挙げられる。
【0036】
前記乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン類、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0037】
前記pH調整剤としては、公知のものを適宜選択できるが、劣化酸味の抑制に対しては、炭酸水素ナトリウム(重曹)が好ましい。
【0038】
シャーベット状飲料用コーヒー飲料は、容器詰めされた容器詰めシャーベット状飲料用コーヒー飲料であることが好ましい。シャーベット状飲料用コーヒー飲料が容器詰めされていると、容器ごと冷凍庫に入れることによって簡単に凍結させることができる。また、凍結後に冷凍庫から出して半解凍させた場合に、容器を振ることによって、容器内で簡単に凍結部を細かい氷結晶に砕くことができ、細かい氷結晶と溶解液部を混合させてシャーベット状飲料を製造することができる。シャーベット状飲料用コーヒー飲料を詰める容器としては、特に限定されない。容器は、PETボトル、缶(アルミニウム、スチール)、紙、プラスチック、レトルトパウチ、瓶(ガラス)等が挙げられる。レトルト殺菌処理への耐熱性や、加温販売などを考慮する必要がある場合には、缶(アルミニウム、スチール)、又は、強化層や酸素吸収層等を有する強化型プラスチック容器を用いることが好ましい。
【0039】
本発明の第二の実施形態に係るシャーベット状飲料用コーヒー飲料の製造方法は、凍結後、飲料液の全体量に対して溶解液部が20~70質量%(溶解液部率が20~70質量%)となり、凍結部が30~80質量%(凍結部率が30~80質量%)となるように解凍したときに、飲料液の可溶性固形分量100%に対して、前記溶解液部の可溶性固形分量が100~200%となり、前記凍結部の可溶性固形分量が20~100%となるように、全体量に対して増粘多糖類を0.02~0.22質量%添加することを特徴する。本発明の製造方法によれば、凍結後に、溶解液部率が20質量%及び凍結部率が80質量%となるように解凍した解凍初期の状態から、溶解液部率が70質量%及び凍結部率が30質量%となるように解凍した解凍後期の状態において、解凍時における甘味や風味の経時的な変化を抑制し、溶解液部と細かい氷結晶が混合されて滑らかなシャーベット状の食感のシャーベット状飲料を製造することができる。
【0040】
本発明の第三の実施形態に係るコーヒー飲料のシャーベット状化方法は、凍結後、全体量に対して溶解液部が20~70質量%(溶解液部率が20~70質量%)となり、凍結部が30~80質量%(凍結部率が30~80質量%)となるように解凍したときに、飲料液の可溶性固形分量100%に対して、前記溶解液部の可溶性固形分量が100~200%となり、前記凍結部の可溶性固形分量が20~100%となるように、全体量に対して増粘多糖類を0.02~0.22質量%添加することを特徴とする。本発明のコーヒー飲料のシャーベット状化方法によれば、コーヒー飲料を凍結させ、溶解液部率が20~70質量%となるように、2~4時間程度、解凍させた場合に、解凍初期の状態から、解凍後期の状態まで、甘味や風味の経時的な変化を抑制することができ、簡単に溶解液部と細かい氷結晶に砕かれた凍結部とを混合してシャーベット状化したコーヒー飲料を飲用することができる。
【0041】
本発明の第三の実施形態に係るコーヒー飲料のシャーベット状化方法において、凍結後、30℃で保管したときに、60~120分(1~2時間)で、溶解液部率が20~40質量%となり、凍結部率が60~80質量%となり、前記溶解液部の可溶性固形分量が、飲料液の可溶性固形分量に対して、100質量%以上200質量%未満となり、前記凍結部の可溶性固形分量が、飲料液の可溶性固形分量に対して、20~100質量%となるように、増粘多糖類を0.02~0.20質量%添加することが好ましい。コーヒー飲料のシャーベット状化方法において、2~2.5時間程度で、凍結させたコーヒー飲料をシャーベット状化することができると、飲用に好適なシャーベット状化させるまでに長時間かからずにシャーベット状化したコーヒー飲料を飲用することができる。この方法において、増粘多糖類としては、タマリンドシードガム及びグアーガムから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。グアーガムは、酵素処理などの方法により、重量平均分子量が15,000~30,000の低分子量のものを用いることが好ましい。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0043】
実施例1
コーヒー抽出液
ブラジル産アラビカ種の焙煎コーヒー豆を粉砕し、粉砕したコーヒー豆24.25gをドリップ式抽出器(メリタ社製、アロフィルター-AF-M1×4)に投入し、90℃の熱湯240mlにて抽出し、可溶性固形分値(Brix)1.4のコーヒー抽出液を得た。このコーヒー抽出液97.83質量%、ショ糖2.00質量%、タマリンドシードガム0.04質量%、酵素処理した重量平均分子量15,000~30,000のグアーガム0.06質量%を加えて、さらに炭酸水素ナトリウム(重曹)0.07質量%を加えシャーベット状飲料用のコーヒー飲料液とし、殺菌後、無菌環境下でこのコーヒー飲料液190gを200mLのPETボトルに充填した。なお、実施例1のシャーベット状飲料用コーヒー飲料の飲料液の可溶性固形分値(Brix)(%)は3.80であり、pHは6.0であった。
その後実施例1のシャーベット状飲料用コーヒー飲料190gを、冷凍庫(-19℃)で6時間凍結させた後、冷凍庫から取り出し、30℃に保管して1~5時間解凍して、解凍時間ごとに、飲料液の全体量に対する溶解液部の含有量(溶解液部率)(質量%)と、全体量に対する凍結部の含有量(凍結部率)(質量%)と、溶解液部及び凍結部の各可溶性固形分値(Brix)と、飲料液の可溶性固形分量100%とした場合の溶解液部の可溶性固形分量(%)と、凍結部の可溶性固形分量(%)とを測定した。凍結部の可溶性固形分値(Brix)(%)及び飲料液の可溶性固形分量100%に対する凍結部の可溶性固形分量(%)は、溶解液部と凍結部を分離させた後、凍結部を全部溶解させて液体にして測定した。結果を表1及び表3、
図1及び2に示す。
【0044】
比較例1
実施例1で用いたコーヒー抽出液97.93質量%、ショ糖2.00質量%を用い、表3に示す配合としたこと以外は、実施例1と同様にしてコーヒー飲料を製造した。なお、比較例1のコーヒー飲料の飲料液の可溶性固形分値(Brix)(%)は3.75であり、pHは6.0であった。実施例1と同様にして、凍結させた後、30℃に保管して1~5時間解凍して、解凍時間ごとに、全体量に対する溶解液部の含有量(溶解液部率)(質量%)と、全体量に対する凍結部の含有量(凍結部率)(質量%)と、溶解液部及び凍結部の可溶性固形分値(Brix)と、飲料液の可溶性固形分量100%とした場合の溶解液部の可溶性固形分量(%)と凍結部の可溶性固形分量(%)を測定した。結果を表2及び表3、
図1及び
図2に示す。
【0045】
<可溶性固形分値(Brix)>
光学屈折率計(アタゴ社製、Digital Refractometers、RX5000α)を用いて測定した。可溶性固形分値(Brix)(%)は、「Bx(%)」とも表す。
【0046】
【0047】
【0048】
表1に示すように、実施例1のシャーベット状飲料用コーヒー飲料は、凍結後、溶解液部率が20~70質量%であり、凍結部率が30~80質量%であるときの、飲料液の可溶性固形分量100%に対する溶解液部の可溶性固形分量は118~121%となり、凍結部の可溶性固形分量は23~39%となった。
【0049】
一方、表2に示すように、増粘多糖類を含まない比較例1のコーヒー飲料は、凍結後、溶解液部率が20~70質量%であり、凍結部率が30~80質量%であるときの、飲料液の可溶性固形分量100%に対する溶解液部の可溶性固形分量は131~213%となり、凍結部の可溶性固形分量は13~19%となった。表2に示す結果から、増粘多糖類を含まない、比較例1のコーヒー飲料は、凍結した後、解凍初期の状態で、溶解液部中に多くの可溶性固形分が溶出し、凍結部に含まれる可溶性固形分が少なく、解凍初期にコーヒーの味や甘味が強く、解凍後期にコーヒーの味が薄くなることが推測される。
【0050】
図1に示すように、実施例1のシャーベット状飲料用コーヒー飲料は、凍結後、溶解液部率が20~70質量%となるように解凍した場合に、溶解液部の可溶性固形分量の変化が小さく、解凍初期から解凍後期において、解凍時における甘味や風味の経時的な変化が抑制されていた。実施例1のシャーベット状飲料用コーヒー飲料は、解凍後1時間の溶解液部率が5.4質量%となる状態であっても、溶解液部の可溶性固形分量が134%であり、可溶性固形分の溶け出しが少ない。一方、比較例1のコーヒー飲料は、解凍後1時間の溶解液部率が14.3質量%となる状態において、溶解液部の可溶性固形分量が224%と大きくなり、解凍後1時間で多くの可溶性固形分が溶解液部に溶け出していることが分かる。また、比較例1のコーヒー飲料は、溶解液部率が20~70質量%となる解凍初期から解凍後期の状態で、溶解液部に含まれる可溶性固形分量の差が大きくなり、解凍初期には味が濃くなり、解凍後期でコーヒーの風味がほぼ感じられない水っぽい状態となると推測された。
【0051】
図2に示すように、実施例1のシャーベット状飲料用コーヒー飲料は、凍結後、凍結部率が80~30質量%となるように解凍した場合に、凍結部の可溶性固形分量がほぼ直線的に減っていき、解凍初期から解凍後期において、甘味や風味の経時的な変化が抑制されていると推測された。一方、比較例1のコーヒー飲料は、凍結後、凍結部率が80~30質量%となるように解凍した場合に、凍結部の可溶性固形分量が実施例1よりも少なく、凍結部の可溶性固形分量が直線的に減じていないことから、解凍初期の状態で多くの可溶性固形分が溶解液部に溶出しており、凍結部に残存している可溶性固形分が少ないことが推測された。
【0052】
実施例2~10
実施例1と同様のコーヒー抽出液を用いて、表3に示す原料の配合比率としたこと以外は、実施例1と同様にして、シャーベット状飲料用コーヒー飲料を製造した。シャーベット状飲料用コーヒー飲料のpHは6.0であった。
【0053】
比較例2
実施例1と同様のコーヒー抽出液を用いて、表3に示す原料の配合比率としたこと以外は、実施例1と同様にして、コーヒー飲料を製造した。コーヒー飲料のpHは6.0であった。
【0054】
実施例11~14
コーヒー抽出液
ブラジル産アラビカ種の焙煎コーヒー豆を粉砕し、粉砕したコーヒー豆36.37gをドリップ式抽出器(メリタ社製、アロフィルター-AF-M1×4)に投入し、90℃の熱湯360mlにて抽出し、可溶性固形分値(Brix)2.0のコーヒー抽出液を得た。このコーヒー抽出液を用いて、表4に示す配合比率としたこと以外は、実施例1と同様にして、シャーベット状飲料用コーヒー飲料を製造した。シャーベット状飲料用コーヒー飲料のpHは6.0であった。
【0055】
実施例2から9、11から14及び比較例2については解凍時間を2時間、実施例10については解凍時間を4時間としたこと以外は、実施例1と同様に凍結させた後解凍し、飲料液の可溶性固形分値(Brix)(%)と、飲料液の全体量に対する溶解液部の含有量(溶解液部率)(質量%)と、飲料液の全体量に対する凍結部の含有量(凍結部率)(質量%)と、溶解液部及び凍結部の各可溶性固形分値(Brix)(%)と、飲料液の可溶性固形分量100%とした場合の溶解液部の可溶性固形分量(%)と凍結部の可溶性固形分量(%)と、クロロゲン酸類の濃度(ppm)と、飲料液のクロロゲン酸類の濃度を100%とした場合の溶解液部のクロロゲン酸類量(%)及び凍結部のクロロゲン酸類量(%)を測定した。また、凍結後の各飲料について、後述する官能評価を行った。実施例2から10及び比較例1から2は、結果を表3に示す。実施例11から14は、結果を表4に示す。
【0056】
<クロロゲン酸類の定量>
各実施例及び比較例について、下記方法によってクロロゲン酸類の濃度(ppm)の定
量分析を行った。
測定対象試料を、移動相Aにて適量希釈し、メンブレンフィルターにて濾過後、分析に供した。
装置構成
・UV検出器:2487 デュアル λ UV/VIS 検出器(日本ウォーターズ(株))
・HPLC:アライアンス2695 セパレーションモジュール(日本ウォーターズ(株))
・カラム:Cadenza CD-C18 内径4.6mm×長さ150mm、粒子径3μm(インタクト(株))
分析条件
・サンプル注入量:10μL
・流量:1.0mL/min
・検出波長:325nm
・カラムオーブン設定温度:35℃
・溶離液A:0.05M酢酸、10mM酢酸ナトリウム、5(V/V)%アセトニトリル溶液
・溶離液B:アセトニトリル
濃度勾配条件
・100%Aから90%Bへのグラジェント法
定量方法
・モノカフェオイルキナ酸、フェルラキナ酸、ジカフェオイルキナ酸の合計9種のクロロゲン酸類の面積値から5-カフェオイルキナ酸を標準物質として濃度を算出した。
【0057】
<官能評価>
官能評価は、2時間解凍後の各サンプルについて、10人のパネラーが以下の評価基準で評価し、最も多かった評価を各サンプルの評価として採用した。各官能評価及び性状評価における評価項目は以下のとおりである。
なお、各サンプルを1往復/1秒の速さで5cmの幅で上下に15回振ることでシャーベット状化飲料を得た。同条件であれば10回~20回振った状態でも評価に大きな差がないことをあらかじめ確認した。
シャーベット状飲料
3:容器を振ることで飲料全体がシャーベット状になった。
2:容器を振ることで飲料の7割以上がシャーベット状になった。
1:容器を振っても飲料の半分以上が氷塊のままであった。
溶解液部の味(シャーベット状化後)
3:コーヒーの味を適度に感じる。
2:コーヒーの味がやや濃い、もしくはやや薄い。
1:コーヒーの味がかなり濃い、もしくはかなり薄い。
凍結部の味(シャーベット状化後)
3:コーヒーの味を適度に感じる。
2:コーヒーの味がやや薄い、もしくはやや濃い。
1:コーヒーの味がかなり薄い、もしくはかなり濃い。
食感(シャーベット状化後)
3:シャーベット状飲料の氷が柔らかく、滑らかな食感である。
2:シャーベット状飲料の氷がやや固いが、滑らかな食感である。
1:シャーベット状飲料の氷が固く、食感が良くない。
総合評価
◎:上記評価が全て3であり、極めて良好なシャーベット状飲料である。
〇:上記評価に1がなく、合計点数が9以上であり、食感及び風味のよいシャーベット状のコーヒー飲料である。
×:上記評価に1があるか、合計点数が8以下であり、シャーベット状の食感がよくないか、コーヒーの風味のよくない飲料である。
ゲル状部の有無(シャーベット状化後)
〇:飲料中にゲル状部が存在しない。
△:飲料中にわずかにゲル状部が存在するが、視覚的又は食感的に許容範囲である。
×:ゲル状部が存在し、視覚的又は食感的に不快に感じる。
増粘多糖類の味(シャーベット状化後)
〇:増粘多糖類の味を感じない。
△:増粘多糖類の味をわずかに感じるが、味覚的に許容範囲である。
×:増粘多糖類の味を感じ、味覚的に不快である。
【0058】
【0059】
【0060】
表3に示すように、実施例1~10に係るシャーベット状飲料用コーヒー飲料は、溶解液部率が20~30%である解凍初期の状態において、溶解液部の可溶性固形分量が、飲料液の可溶性固形分量100%に対して、100~200%の範囲であり、可溶性固形分が溶解液部に多く溶け出しておらず、コーヒーの呈味、香味、コク味を維持しており、滑らかなシャーベット状で飲用できることが確認された。
比較例1又は2のコーヒー飲料は、凍結部が細かい氷結晶とならず氷塊が存在し、シャーベット状化することが困難であり、コーヒーの味も薄くなった。
【0061】
表4に示すように、実施例11から14に係るシャーベット状飲料用コーヒー飲料は、原料として用いたコーヒー抽出液の可溶性固形分値(Brix)が2.0と比較的高いものであるが、溶解液部率が20~30%である解凍初期の状態において、溶解液部の可溶性固形分量が、飲料液の可溶性固形分量100%に対して、100~125%の範囲であり、可溶性固形分が溶解液部に多く溶け出しておらず、コーヒーの呈味、香味、コク味を維持しており、滑らかなシャーベット状で飲用できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、微細な氷結晶と飲料とが混合した状態を含むシャーベット状飲料とすることができ、解凍時における甘味や風味の経時的な変化が抑制されたシャーベット状飲料用コーヒー飲料、その製造方法及びコーヒー飲料のシャーベット状化方法に適用可能である。