(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】眼精疲労改善用または目のピント調節力低下改善用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7048 20060101AFI20220913BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20220913BHJP
A61P 27/10 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
A61K31/7048
A23L33/10
A61P27/10
(21)【出願番号】P 2018079085
(22)【出願日】2018-04-17
【審査請求日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】P 2017165675
(32)【優先日】2017-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591061068
【氏名又は名称】東洋精糖株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川地 康治
(72)【発明者】
【氏名】足海 洋史
(72)【発明者】
【氏名】金谷 知華
(72)【発明者】
【氏名】藤井 ひとみ
【審査官】梅田 隆志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/083554(WO,A1)
【文献】特開平11-171778(JP,A)
【文献】特開平07-196523(JP,A)
【文献】特開2010-100561(JP,A)
【文献】特開2012-051821(JP,A)
【文献】特開2013-010714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/7048
A23L 33/10
A61P 27/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
α-モノグルコシルルチンを有効成分として含有する、目のピント調節力低下改善用組成物。
【請求項2】
α-モノグルコシルルチンを75mg~600mg含有する、請求項1に記載の目のピント調節力低下改善用組成物。
【請求項3】
α-モノグルコシルルチンを225mg~375mg含有する、請求項2に記載の目のピント調節力低下改善用組成物。
【請求項4】
単回投与用である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の目のピント調節力低下改善用組成物。
【請求項5】
VDT(Visual Display Terminals)作業による目のピント調節力低下の改善用である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の目のピント調節力低下改善用組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の目のピント調節力低下改善用組成物を含有する
、目のピント調節力低下改善用飲食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼精疲労改善用または目のピント調節力低下改善用組成物、眼精疲労改善剤、および目のピント調節力低下改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日常的な太陽の紫外線または酸素等などの影響に加え、車の運転、VDT(Visual Display Terminals)作業の増加、テレビおよびスマートフォンの使用並びに睡眠時間の低下等のライフスタイルの変化により、眼精疲労等の目に関するトラブルが増加している。
【0003】
眼精疲労の症状として、目のピント調節力不全がある。目のピント調節力は目で正常にものを見ることに対して重要な役割を果たしており、毛様体筋により調節されている。毛様体筋の痙攣や緊張状態等の過緊張は目のピント調節力の低下および目の疲労感につながり、目のピント調節力が正常に働かないと近視や遠視状態となり、QOL(Quality of life)が低下する。また、毛様体筋の過緊張による目のピント調節力の低下を改善し、目の疲労感を軽減することは生体機能を調節する上で重要となる。
【0004】
したがって、眼精疲労の改善、目のピント調節力低下の改善に有効であり、食品、医薬品などQOLの向上が期待される商品が望まれている。
【0005】
日常的な食品等を通じて目の疲労感を改善する試みとしては、特許文献1には、アントシアニンを多く含むブルーベリー等の果実を摂取しやすいジャムなどの形に加工して、摂取することが開示されている。また、特許文献2には、ブルーベリー葉由来物を含有する眼精疲労治療用組成物が開示されている。
【0006】
また、医薬品および食品などの形態で摂取する組成物として、特許文献3には、キサントフィルおよびペプチドからなる眼の調節機能障害改善組成物が開示されている。また、特許文献4には、クロセチンまたはその薬理学的に許容しうる塩を有効成分として含有する眼精疲労改善剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2001-224320号公報
【文献】特開2015-196673号公報
【文献】特開2008-297222号公報
【文献】特開2007-31426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では絶対的な有効成分量を高めることが困難であり、眼精疲労等の症状への効果は得られにくい。また特許文献2に記載の組成物は効果を発現するまでに一定期間服用する必要があり、短時間での効果が得られにくい。さらに、特許文献3および4に記載の組成物または剤は短時間での効果が得られにくく、香味が悪いという問題がある。
【0009】
したがって、本発明は、眼精疲労の改善、および目のピント調節力低下の改善に効果的な組成物および剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、ケルセチン配糖体が、眼精疲労の改善作用、および目のピント調節力低下の改善作用を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は以下の発明を提供する。
[1]ケルセチン配糖体を有効成分として含有する、眼精疲労改善用、または目のピント調節力低下改善用組成物。
[2]ケルセチン配糖体がα-グルコシルルチンである[1]に記載の眼精疲労改善用、または目のピント調節力低下改善用組成物。
[3]α-グルコシルルチンがα-モノグルコシルルチンである[2]に記載の眼精疲労改善用、または目のピント調節力低下改善用組成物。
[4]ケルセチン配糖体を有効成分として含有する眼精疲労改善剤。
[5]ケルセチン配糖体を有効成分として含有する目のピント調節力低下改善剤。
[6]ケルセチン配糖体がα-グルコシルルチンである[4]に記載の眼精疲労改善剤。
[7]ケルセチン配糖体がα-グルコシルルチンである[5]に記載の目のピント調節力低下改善剤。
[8]α-グルコシルルチンがα-モノグルコシルルチンである[6]に記載の眼精疲労改善剤。
[9]α-グルコシルルチンがα-モノグルコシルルチンである[7]に記載の目のピント調節力低下改善剤。
【発明の効果】
【0012】
従来の眼精疲労及び目のピント調節力低下改善用の組成物または剤は、効果が発現するまでに一定期間服用する必要があったが、本発明の組成物および剤は、単回投与および短時間で効果を発揮することができる。本発明の組成物および剤は、毛様体筋を弛緩させて毛様体筋の過緊張が関与する症状の軽減・緩和を促す作用を有しており、眼精疲労および目のピント調節力低下を効果的に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、ケルセチン配糖体が眼精疲労の改善作用を有することを示す図である。
【
図2】
図2は、ケルセチン配糖体が目のピント調節力低下の改善作用を有することを示す図である。
【
図3】
図3は、ケルセチン配糖体が眼精疲労の改善作用を有することを示す図である。
【
図4】
図4は、ケルセチン配糖体が目のピント調節力低下の改善作用を有することを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の眼精疲労改善用組成物または目のピント調節力低下改善用組成物(以下、本発明の組成物とも略す)並びに本発明の眼精疲労改善剤および目のピント調節力低下改善剤(以下、本発明の剤とも略す。)はケルセチン配糖体を有効成分として含有する。
【0015】
本発明において、「ケルセチン配糖体」は、ポリフェノールの一種であるケルセチンの配糖体を示し、これは下式(I)で表される。
【0016】
【0017】
式(I)中、(X)nは糖鎖を表し、nは1以上の整数である。
【0018】
ここで、ケルセチンにグリコシド結合で結合するXで表される糖鎖を構成する糖としては、例えば、グルコース、ラムノース、ガラクトース、グルクロン酸等が挙げられ、特にグルコースおよびラムノースが好ましい。また、nは1以上であれば特に制限されないが、好ましくは1~16、さらに好ましくは1~8である。nが2以上であるとき、X部分は1種類の糖鎖からなっていてもよく、複数の糖鎖からなっていてもよい。
【0019】
ケルセチン配糖体には、既存のケルセチン配糖体を酵素などで処理して糖転移させたものも含まれる。ケルセチン配糖体としては、具体的には例えば、ルチン、グルコシルルチン、クエルシトリン、イソクエルシトリンが挙げられる。
【0020】
本発明の一態様においては、ケルセチン配糖体に包含される一の化合物を単独で用いてもよいし、複数の化合物を混合して用いてもよい。ケルセチン配糖体の由来については特に制限されず、例えば、ケルセチンまたはケルセチン配糖体を多く含む植物として、ソバ、エンジュ、ケッパー、リンゴ、茶、タマネギ、ブドウ、ブロッコリー、モロヘイヤ、ラズベリー、コケモモ、クランベリー、オプンティア、葉菜類、柑橘類等が挙げられる。
【0021】
また、ケルセチン配糖体は、天然由来の抽出物を、濃縮、精製糖の操作によってケルセチン配糖体濃度を高めたもの、例えば、ケルセチン配糖体含有抽出物の、濃縮物または精製物を用いることができる。濃縮方法または精製方法は、従来公知の方法を用いることができる。
【0022】
本発明の一態様においては、ケルセチン配糖体として、α-グルコシルルチンを用いることが好ましい。α-グルコシルルチンは、「酵素処理ルチン」(「糖転移ルチン」と呼ばれることもある。)として知られている製品に主成分として含まれている化合物であって、下式(II)で表される構造を有する化合物、すなわちルチンが有するルチノース残基中のグルコース残基に、α1→4結合により1または複数(2~20程度)のグルコースが結合した化合物である。
【0023】
本明細書において、α-グルコシルルチンのうち、グルコースが1つだけ結合したものを「α-モノグルコシルルチン」と称し、グルコースが2つ以上結合したものを「α-ポリグルコシルルチン」と称する。
【0024】
つまり、下式(II)において、α-グルコシルルチンは一般的にnが1~20の化合物であり、α-モノグルコシルルチンはnが1の化合物であり、α-ポリグルコシルルチンは一般的にnが2~20の化合物である。
【0025】
【0026】
α-モノグルコシルルチンであっても、本発明の組成物または剤の作用効果およびα-グルコシルルチンについての一般的な作用効果は問題なく発揮され、α-モノグルコシルルチンの分子量はα-ポリグルコシルルチンの分子量よりも小さいため、単位質量あたりの分子数はα-モノグルコシルルチンの方が多くなり、作用効果の上で有利であると考えられる。したがって、α-グルコシルルチンの一部または全部は、α-モノグルコシルルチンであることが好ましい。
【0027】
酵素処理ルチンは、α-グルコシル糖化合物(サイクロデキストリン、澱粉部分分解物など)の共存下で、ルチンに糖転移酵素(サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ(CGTase、EC2.4.1.19)など、ルチンにグルコースを付加する機能を有する酵素)を作用させることにより得られる生成物(以下、第1酵素処理ルチンとも略す)である。
【0028】
第1酵素処理ルチンは、結合したグルコースの個数が異なる様々なα-グルコシルルチン、すなわちα-モノグルコシルルチンおよびそれ以外のα-グルコシルルチンからなる集合体と、未反応物であるルチンとを含有する組成物である。必要に応じて、例えば多孔性合成吸着材と適切な溶出液を用いて、第1酵素処理ルチンを精製することにより、糖供与体およびその他の不純物を除去し、さらにルチンの含有量を減らし、α-グルコシルルチンの純度を高めた第1酵素処理ルチン(α-グルコシルルチン精製物)が得られる。
【0029】
また、第1酵素処理ルチンを、α-1,4-グルコシド結合をグルコース単位で切断するグルコアミラーゼ活性を有する酵素、たとえばグルコアミラーゼ(EC3.2.1.3)で処理し、複数のグルコースが付加されたα-グルコシルルチンにおいて、ルチン自体の(ルチノース残基中の)グルコース残基に直接付加されたグルコース残基を1つだけ残してそれ以外のグルコース残基を切断することにより、α-モノグルコシルルチンを多く含有する酵素処理ルチン(以下、第2酵素処理ルチンとも略す。)を得ることができる。この酵素処理によって、ケルセチン骨格に直接結合しているルチノース残基中のグルコース残基が、ケルセチン骨格から切断されることはない。
【0030】
α-グルコシルルチンは、例えば東洋精糖社製の商品名「αGルチンPS」、商品名「αGルチンP」、商品名「αGルチンH」などに主成分として含まれている。これら商品は、α-モノグルコシルルチンを10~90重量%含有する組成物である。
【0031】
前記組成物は、(i)上述した第1酵素処理ルチンを調製する、(ii)第1酵素処理ルチンを、グルコアミラーゼ活性を有する酵素で処理し、α-グルコシルルチンをほとんど全てα-モノグルコシルルチンに変換する、という手順により製造することができる。
【0032】
本発明の組成物または剤における有効成分であるケルセチン配糖体の含有量は、好ましくは0.001質量%以上であり、より好ましくは0.02質量%以上である。上限は特に限定されないが、通常90質量%以下であることが好ましい。
【0033】
なお、本発明の組成物または剤に含まれるα-グルコシルルチン等の成分は、HPLCのクロマトグラムによって確認することができ、各成分の含有量、または特定の成分の純度はクロマトグラムのピーク面積から算出することができる。
【0034】
本発明の組成物または剤における有効成分であるケルセチン配糖体の有効量は、経口摂取(経口投与)の場合、被験者の状態や年齢にもよるが、例えば、成人1人につき、1日当たり10mg以上が好ましく、より好ましくは50mg以上、さらに好ましくは100mg以上、特に好ましくは300mg以上であり、また、2500mg以下が好ましく、より好ましくは1000mg以下、さらに好ましくは800mg以下、特に好ましくは500mg以下である。
【0035】
具体的には例えば、有効成分がα-モノグルコシルルチンである場合、本発明の組成物または剤における有効量は、成人1人につき、1日当たり7.5mg以上が好ましく、より好ましくは37.5mg以上、さらに好ましくは75mg以上、特に好ましくは225mg以上であり、また、1875mg以下が好ましく、より好ましくは750mg以下、さらに好ましくは600mg以下、特に好ましくは375mg以下である。
【0036】
上記量を1日1回摂取(投与)してもよいし、1日に複数回に分けて摂取(投与)してもよい。本明細書において、「有効量」とは、被験者の眼精疲労を改善するのに、又は目のピント調節力低下を改善するのに有意な量を意味する。当該有意な量は、本明細書の実施例の記載等を参酌して、当業者が適宜設定することができる。
【0037】
本発明の剤は、サプリメント等としてそのまま摂取(投与)してもよいし、飲食品等の組成物に眼精疲労改善作用および目のピント調節力低下改善作用の少なくとも一方の作用を付与するための添加剤として使用してもよい。また、本発明の組成物には、有効成分であるケルセチン配糖体をそのまま、又はケルセチン配糖体を含む剤の形態で配合することができる。
【0038】
本発明の剤を、眼精疲労改善作用および目のピント調節力低下改善作用の少なくとも一方の作用を付加するための添加剤として配合し得る組成物、および本発明の組成物としては、特に制限されず、例えば、飲食品、医薬組成物が挙げられる。
【0039】
本発明において、飲食品には、美容食品・健康食品、機能性表示食品、特定保健用食品、栄養補助食品、疾病リスク低減表示を付した食品、又は病者用食品のような分類のものも包含される。疾病リスク低減表示としては、例えば、眼精疲労を改善、治療、緩和および/または抑制するためのものである旨の表示、目のピント調節力低下の改善、治療、緩和および/または抑制するためのものである旨の表示が挙げられる。
【0040】
飲食品の具体例としては、例えば、サプリメント類;飯類、餅類、麺類、パン類及びパスタ類等の炭水化物含有飲食品;クッキー及びケーキなどの洋菓子類、饅頭及び羊羹等の和菓子類、キャンディー類、ガム類、並びにゼリー、ヨーグルト及びプリンなどの冷菓又は氷菓などの各種菓子類;ジュース、清涼飲料、乳飲料、茶飲料、ゼリー飲料、粉末飲料、機能性飲料、栄養補助飲料及びノンアルコールビール等の各種飲料;ビール及び発泡酒等のアルコール飲料;スープ、味噌汁及びお吸い物などの液状飲食品;卵を用いた加工品、及び魚介類又は畜肉の加工品;調味料;などが挙げられる。
【0041】
また、本発明における飲食品は、上記有効成分の他、栄養補助成分などの他の成分を含むことができる。かかる成分としては、例えば、ビタミン類、ミネラル類、各種植物体並びにその抽出物、精製物及び分画物、微生物並びにその増殖因子及び微生物生産物、食物繊維及びその酵素分解物、動物体並びにその抽出物、精製物、分解物及び生産物、各種オリゴ糖、脂質、各種タンパク質並びにタンパク分解物などが挙げられる。
【0042】
本発明における医薬組成物は、当分野で通常行われている手法により、薬学上許容される担体を用いて製剤化することができる。
【0043】
本発明の組成物または剤は、本発明の所望の効果を得られる限り、摂取(投与)経路は特に限定されない。例えば、経口(例えば、口腔内、舌下など)、非経口(例えば、点眼、静脈内、筋肉内、皮下、経皮、経鼻、経肺など)等の経路が挙げられる。これらの中でも侵襲性の少ない経路が好ましく、経口がより好ましい。
【0044】
経口摂取(経口投与)の場合の本発明の組成物または剤の一態様としては、例えば、例えば、粉末、細粒、顆粒、カプセル、錠剤、サシェ、タブレット、ボーラス、ロゼンジ等の固体態様;水溶液、エキス、懸濁液、シロップ、エリキシル、エマルジョン、分散体等の液体態様;半液体状、クリーム状、ペースト状等の態様が挙げられる。
【0045】
本発明の組成物または剤は、ピルの形態(カプセル中の粉末又は濃縮液)、又は(粉末茶を飲むのと同様に)水やお湯等の液体に入れたり又は溶かしたりした後で摂取され得る粉末形態や顆粒形態(フリーズドライ顆粒を含む)で摂取(投与)してもよい。
【0046】
非経口投与の場合の本発明の組成物または剤の一態様としては、例えば、水溶液、懸濁液、エマルジョン、分散体等の液体などの点眼剤または組成物;半液体状、クリーム状、ペーストなどの眼科用剤または組成物;水溶液、懸濁液、エマルジョン、分散体等の液体などの点滴剤または組成物;水溶液、懸濁液、エマルジョン、分散体等の液体などの静脈内注射剤若しくは組成物、筋肉内注射剤若しくは組成物又は皮下注射剤若しくは組成物;水溶液、懸濁液、エマルジョン、分散体等の液体などの経皮投与剤または組成物;水溶液、懸濁液、エマルジョン、分散体等の液体、粉末、細粒などの経鼻投与剤若しくは組成物または経肺投与剤若しくは組成物;直腸坐剤若しくは組成物または膣坐剤若しくは組成物などの坐剤若しくは組成物などの態様が挙げられる。
【0047】
本発明の組成物または剤は、ケルセチン配糖体に加えて、固形剤形または液体剤形を製造するのに用いられている慣用の任意の補助成分、例えば、賦形剤、希釈剤、緩衝剤、着香剤、着色剤、矯味剤、結合剤、界面活性剤、増粘剤、滑択剤、懸濁剤、防腐剤、酸化防止剤などの1種以上を含有してもよい。
【0048】
本発明の組成物または剤を摂取(投与)するタイミングは、特に限定されるものではないが、本発明の組成物または剤は即効性があることから、眼精疲労および/または目のピント調節力の低下を感じた時に摂取(投与)するのが好ましい。また、眼精疲労および/または目のピント調節力の低下は、目を酷使した後に生じ易いため、ドライアイや目の疲れを感じやすい時間帯(例えば、夕方)やVDT作業前後等に摂取(投与)することが好ましい。
【0049】
以下に本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明の実施態様は本実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0050】
[実施例1]
VDT作業による眼精疲労に対する改善効果および目のピント調節力低下に対する改善効果を評価するため、以下に示すように、プラセボ対照二重盲検比較クロスオーバー法を用いて、眼精疲労を感じる成人男女18名について、主観指標(視覚的評価スケール、以下VASとも略す)および客観指標[遠方視(調節安静時)の調節微動高周波成分の出現頻度、High Frequency Component1、以下HFC1とも略す]について評価した。
【0051】
実験スケジュールは下記の通りとした。
・午前9時~9時20分:PCを見ずにアイマスクをして休憩し、休憩の最後の5分間音楽を聴く。
・午前9時20分:1回目のVASアンケートを実施。
・午前9時20分~午前9時30分:1回目のHFC1測定。
・午前9時30分:サンプルを摂取。
・午前9時30分~午前10時:VDT負荷。
・午前10時:2回目のVASアンケートを実施。
・午前10時~午前10時10分:2回目のHFC1測定。
・午前10時10分~午前10時30分:PCを見ずにアイマスクをして休憩し、休憩の最後の5分間音楽を聴く。
・午前10時30分~午前10時40分:3回目のHFC1測定。
【0052】
VDT作業は、目から30cmの距離になる位置にパソコンのモニターを設置し、英字のタイピング作業を30分間実行した。サンプルとしては、被験食品(α-モノグルコシルルチン187.5mgを含有するケルセチン配糖体配合ハードカプセル)、対照食品(ケルセチン配糖体非配合ハードカプセル)を用意し、9時30分に各カプセルを2粒摂取した。被験食品および対照食品のハードカプセルの内容物処方について表1に示す。
【0053】
【0054】
VASアンケートは、「眼の疲れ」の項目について、10cmの線分の左端から回答した斜線位置までの長さを測定し、回答値とした。回答値は、10が最良、0を最悪とし、より値が高い方が改善を意味する。即ち、「眼の疲れ」の項目について、「とても疲れる」が最悪の状態、「全く疲れを感じない」が最良の状態である。VASにより評価した結果を
図1に示す。
【0055】
またHFC1測定について、毛様体筋の緊張状態をオートレフケラトメーターARK-560(ニデック社製)および眼調節機能解析ソフトウェアAA-2(ニデック社製)を用いたHFC1の値を評価した。結果を
図2に示す。
【0056】
図1に示すように、VASスケールによる眼の疲れの自覚症状の評価において、対照食品を摂取した群では有意な変化が表れなかったのに対し、被験食品を摂取した群は対照食品を摂取した群と比較して、負荷後から休憩後においてVASスケールが有意に向上した。この結果から、ケルセチン配糖体の摂取により、眼精疲労が改善および軽減することが示された。
【0057】
また、
図2に示すように、HFC1測定による目のピント調節力の評価において、被験食品を摂取した群は対照食品を摂取した群と比較して、摂取前および負荷後から休憩後におけるHFC1の値が有意に低下した。この結果から、ケルセチン配糖体の摂取により、毛様体筋を弛緩させて緊張状態を緩和することで、目のピント調節力の低下が改善することが示された。
【0058】
[実施例2]
プラセボ対照二重盲検比較クロスオーバー法を用いて、眼精疲労を感じる成人男女27名について、VASおよびHFC1について評価した。サンプルとして、被験食品(α-モノグルコシルルチン90mgを含有するケルセチン配糖体配合ハードカプセル)、対照食品(ケルセチン配糖体非配合ハードカプセル)を用意し、各カプセルを3粒摂取した点以外は、実施例1と同様とした。ハードカプセルの内容物処方について表2に示す。
【0059】
【0060】
VASアンケートは、「眼の疲れ」の項目について、10cmの線分の左端から回答した斜線位置までの長さを測定し、回答値とした。回答値は、0が最良、10を最悪とし、より値が低い方が改善を意味する。即ち、「眼の疲れ」の項目について、「とても疲れる」が最悪の状態、「全く疲れを感じない」が最良の状態である。VASにより評価した結果を
図3に示す。また、HFC1の値を評価した結果を
図4に示す。
【0061】
図3に示すように、VASスケールによる眼の疲れの自覚症状の評価において、対照食品を摂取した群では有意な変化が表れなかったのに対し、被験食品を摂取した群は対照食品を摂取した群と比較して、負荷後においてVASスケールが有意に低下した。この結果から、360mgの酵素処理ルチン(ケルセチン配糖体を270mg含有)を摂取した場合(実施例2、
図3)においても、500mgの酵素処理ルチンを(ケルセチン配糖体を375mg含有)摂取した場合(実施例1、
図1)と同様に、眼精疲労が改善および軽減することが示された。
【0062】
また、ケルセチン配糖体を375mg摂取した実施例1では特に休憩後において有意な変化が見られ(
図1)、ケルセチン配糖体を270mg摂取した実施例2では特に負荷後において有意な変化が見られたことから、ケルセチン配糖体の摂取量を調整することにより、眼精疲労を改善および軽減するタイミングを調整できる可能性も示唆された。
【0063】
図4に示すように、HFC1測定による目のピント調節力の評価において、被験食品を摂取した群は対照食品を摂取した群と比較して、摂取前および負荷後から休憩後におけるHFC1の値が有意に低下した。この結果から、ケルセチン配糖体の摂取量を270mgとした場合(実施例2、
図4)にも、ケルセチン配糖体の摂取量を375mgとした場合(実施例1、
図2)と同様に、毛様体筋を弛緩させて緊張状態を緩和することで、目のピント調節力の低下が改善することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の組成物または剤は、毛様体筋の過緊張を緩和する作用を有し、眼精疲労を改善、および目のピント調節力の低下を改善する効果を有する。この特徴から、本発明の組成物または剤は、眼精疲労および/または目のピント調節力低下を改善、治療、緩和および/または抑制するための新たな飲食品、医薬組成物などに利用されることが期待される。