(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】衝撃波供給システムおよび衝撃波供給方法
(51)【国際特許分類】
F23J 3/00 20060101AFI20220913BHJP
F22B 37/48 20060101ALI20220913BHJP
F28G 1/16 20060101ALI20220913BHJP
F28G 11/00 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
F23J3/00 Z
F22B37/48
F28G1/16 Z
F28G11/00
(21)【出願番号】P 2018100175
(22)【出願日】2018-05-25
【審査請求日】2021-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 充
(72)【発明者】
【氏名】森田 介斗
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-131241(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第107062283(CN,A)
【文献】実開平02-007443(JP,U)
【文献】特開2006-183914(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23J 3/00-3/02
F22B 37/48
F28G 1/16,11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置の壁に取り付けられた複数のノズルと、
前記複数のノズルの何れか1つと選択的に結合される、燃料ガスおよび酸素を含む混合気を燃焼させて衝撃波を発生させるスートブロワ本体と、
前記スートブロワ本体が移動可能に吊り下げられる、前記複数のノズル同士をつなぐように延びるレールと、
を備える、衝撃波供給システム。
【請求項2】
前記複数のノズルは、実質的に等しい高さに位置している、請求項1に記載の衝撃波供給システム。
【請求項3】
前記装置は、廃棄物を焼却する焼却炉からの排ガスが流れる排ガス経路を含むボイラである、請求項1
または2に記載の衝撃波供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃波供給システムおよび衝撃波供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばボイラなどの装置には、装置内の機器表面(例えば、過熱器の表面)に付着したダストを除去するために、衝撃波式スートブロワが設けられている(例えば、特許文献1参照)。この衝撃波式スートブロワは、燃料ガスおよび酸素を含む混合気を燃焼させて衝撃波を発生させ、この衝撃波を装置の内部空間に放出するものである。この衝撃波の放出により、装置内の機器表面からダストが除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、装置内の複数箇所に衝撃波を供給するには、それぞれの箇所に衝撃波式スートブロワを設けることが考えられる。しかしながら、この場合にはコストが高くなる。
【0005】
そこで、本発明は、低コストで装置内の複数箇所に衝撃波を供給することができる衝撃波供給システムおよび衝撃波供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の1つの観点からの衝撃波供給システムは、装置の壁に取り付けられた複数のノズルと、前記複数のノズルの何れか1つと選択的に結合される、燃料ガスおよび酸素を含む混合気を燃焼させて衝撃波を発生させるスートブロワ本体と、を備える、ことを特徴とする。
【0007】
上記の構成によれば、複数のノズルでスートブロワ本体を共有することができる。このため、低コストで装置内の複数箇所に衝撃波を供給することができる。
【0008】
前記複数のノズルは、実質的に等しい高さに位置していてもよい。この構成によれば、スートブロワ本体を1つのノズルから別のノズルへ容易に移設することができる。
【0009】
上記の衝撃波供給システムは、前記スートブロワ本体が移動可能に吊り下げられる、前記複数のノズル同士をつなぐように延びるレールをさらに備えてもよい。この構成によれば、スートブロワ本体をレールに沿って移動するだけで1つのノズルから別のノズルへ移設することができる。
【0010】
また、本発明の衝撃波供給方法は、装置の壁に取り付けられた複数のノズルの何れか1つに、燃料ガスおよび酸素を含む混合気を燃焼させて衝撃波を発生させるスートブロワ本体を結合して使用した後に、前記スートブロワ本体を別の前記ノズルに結合して使用する、ことを特徴とする。
【0011】
上記の構成によれば、複数のノズルでスートブロワ本体を共有することができる。このため、低コストで装置内の複数箇所に衝撃波を供給することができる。
【0012】
また、本発明の別の観点からの衝撃波供給システムは、装置の壁に取り付けられた複数のノズルと、燃料ガスおよび酸素を含む混合気を燃焼させて衝撃波を発生させるスートブロワ本体と、前記スートブロワ本体に接続された集合管と、前記集合管から分岐し、前記複数のノズルとそれぞれ接続された複数の分岐管と、前記複数の分岐管にそれぞれ設けられた複数の開閉弁と、を備える、ことを特徴とする。
【0013】
上記の構成によれば、複数のノズルでスートブロワ本体を共有することができる。このため、低コストで装置内の複数箇所に衝撃波を供給することができる。
【0014】
上記の1つの観点または別の観点からの衝撃波供給システムにおいて、例えば、前記装置は、廃棄物を焼却する焼却炉からの排ガスが流れる排ガス経路を含むボイラであってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、低コストで装置内の複数箇所に衝撃波を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る衝撃波供給システムが組み込まれた焼却プラントの概略構成図である。
【
図2】(a)および(b)は第1実施形態に係る衝撃波供給システムの平面図である。
【
図3】1つのノズルに結合されたスートブロワ本体の斜視図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る衝撃波供給システムの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
図2(a)および(b)に、本発明の第1実施形態に係る衝撃波供給システム1Aを示し、
図1に、その衝撃波供給システム1Aが組み込まれた焼却プラント5を示す。
【0018】
焼却プラント5は、ごみや汚泥などの廃棄物を焼却する焼却炉2と、焼却炉2から排出される排ガスから熱を回収するボイラ3と、ボイラ3から排出される排ガスを利用してボイラ3への給水を加熱する節炭器(エコノマイザ)4を含む。
【0019】
ボイラ3は、焼却炉2からの排ガスが流れる排ガス経路31を含む。排ガス経路31は、上下方向に延びる第1煙道、第2煙道および第3煙道で構成されており、第1煙道、第2煙道および第3煙道は上流側からこの順に並んでいる。第1~第3煙道では壁面に多数の水管(図示せず)が設けられており、第3煙道内には複数(図例では2つ)の過熱器32が配置されている。
【0020】
節炭器4は、ボイラ3からの排ガスが流れる、上下方向に延びる排ガス経路41を含む。排ガス経路41内には、複数(図例では4つ)の節炭器管42が配置されている。
【0021】
本実施形態では、ボイラ3の第2煙道および第3煙道の壁ならびに節炭器4の壁に、3つのノズル6が取り付けられている。3つのノズル6は、実質的に等しい高さに位置している。ここで、「実質的に等しい高さ」とは、3つのノズル6のレベル差が5mm以内に収まっていることをいう。なお、ノズル6の数および位置は適宜変更可能である。
【0022】
図2(a)および(b)に示すように、ノズル6のうちの1つにはスートブロワ本体7が結合され、残りのノズル6は図略のキャップにより閉塞される。スートブロワ本体7は、
図2(a)に示すようにノズル6のうちの1つと結合されて使用された後に、
図2(b)に示すように別のノズル6に結合されて使用される。すなわち、スートブロワ本体7は、ノズル6の何れか1つと選択的に結合される。
【0023】
本実施形態では、スートブロワ本体7が1台である。ただし、スートブロワ本体7の台数は、ノズル6の数よりも少なければ複数台であってもよい。
【0024】
各ノズル6は、装置(ボイラ3または節炭器4)の壁を貫通している。ノズル6へのスートブロワ本体7への結合は、ボルト・ナットやクランプ材を用いたフランジ結合であってもよいし、嵌合であってもよい。
【0025】
スートブロワ本体7は、
図3に示すように、図略のピストンを内蔵するハウジング71およびシリンダ72と、ハウジング71からシリンダ72と反対向きに延びる接続管70を含む。また、スートブロワ本体7は、ハウジング71からシリンダ72および接続管70と直交するように延びる一対の燃焼室73を含む。
【0026】
接続管70にはノズル6が接続され、これにより接続管70の内部とノズル6の内部とが連通する。図略のピストンは、燃焼室73の内部を接続管70の内部から遮断したり接続管70の内部と連通させたりする。
【0027】
さらに、ハウジング71には、バルブユニット76が取り付けられており、このバルブユニット76に燃料ガス貯留室74および酸素貯留室75が接続されている。バルブユニット76は、燃料ガス貯留室74および酸素貯留室75の内部を、一対の燃焼室73の内部から遮断したり一対の燃焼室73の内部と連通させたりする。燃料ガス貯留室74にはメタンなどの燃料ガスが供給され、酸素貯留室75には酸素が供給される。
【0028】
燃料ガス貯留室74および酸素貯留室75の内部が一対の燃焼室73の内部と連通すると、燃料ガス貯留室74から燃焼室73へ燃料ガスが供給されるとともに酸素貯留室75から燃焼室73へ酸素が供給され、それらが燃焼室73内で混合される。その後、混合気に点火されて混合気が燃焼されるとともに図略のピストンが燃焼室73の内部を接続管70の内部と連通させ、これにより衝撃波が発生する。衝撃波は、ノズル6を通じて装置(ボイラ3または節炭器4)の内部空間に放出される。
【0029】
スートブロワ本体7は、レール8から図略のハンガーにより吊り下げられる。このため、スートブロワ本体7のハウジング71の上面には、ハンガーのフックが係合するU字部77が設けられている。ただし、スートブロワ本体7は、床面上を走行可能な台車に載置されてもよい。
【0030】
図略のハンガーは、レール8に沿って移動可能である。すなわち、スートブロワ本体7は、レール8に移動可能に吊り下げられている。レール8は、ノズル6同士をつなぐように延びている。
【0031】
以上説明したように、本実施形態の衝撃波供給システム1Aでは、複数(本実施形態では3つ)のノズル6でスートブロワ本体7を共有することができる。このため、低コストで装置内の複数箇所に衝撃波を供給することができる。
【0032】
また、本実施形態では、複数のノズル6が実質的に等しい高さに位置しているので、スートブロワ本体7を1つのノズル6から別のノズル6へ容易に移設することができる。
【0033】
さらに、本実施形態では、スートブロワ本体7が吊り下げられるレール8がノズル6同士をつなぐように延びているので、スートブロワ本体7をレール8に沿って移動するだけで1つのノズル6から別のノズル6へ移設することができる。
【0034】
(第2実施形態)
図4に、本発明の第2実施形態に係る衝撃波供給システム1Bを示す。なお、本実施形態において、第1実施形態と同一構成要素には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0035】
本実施形態では、スートブロワ本体7の接続管70に集合管91が接続されており、この集合管91から複数(ノズル6と同数)の分岐管92が分岐している。分岐管92は、ノズル6とそれぞれ接続されている。各分岐管92には、開閉弁93が設けられている。
【0036】
スートブロワ本体7が衝撃波を発生する際、1つの開閉弁93が開かれ、残りの開閉弁93が閉じられる。次にスートブロワ本体7が衝撃波を発生する際は、別の1つの開閉弁93が開かれ、残りの開閉弁93が閉じられる。このようにして、スートブロワ本体7からの衝撃波の供給先が変更される。
【0037】
本実施形態でも、複数のノズル6でスートブロワ本体7を共有することができる。このため、低コストで装置内の複数箇所に衝撃波を供給することができる。
【0038】
(その他の実施形態)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0039】
例えば、衝撃波供給システム1A,1Bが組み込まれるプラントは、必ずしも焼却プラント5である必要はなく、その他のプラントであってもよい。
【0040】
また、第1実施形態において、3つのノズル6が互いに異なる高さに位置してもよい。この場合、レール8からスートブロワ本体7までの吊り下げ長さを一定として各ノズル6用のレール8も異なる高さに配置し、それらのレール8の間にスートブロワ本体7を昇降させる昇降装置を設けてもよい。あるいは、昇降装置を省略し、ノズル6の上方位置同士を部分的または全体的に傾斜するレールでつないでもよい。
【符号の説明】
【0041】
1A,1B 衝撃波供給システム
2 焼却炉
3 ボイラ
31 排ガス経路
6 ノズル
7 スートブロワ本体
8 レール
91 集合管
92 分岐管
93 開閉弁