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特許7140551磁気共鳴イメージング装置、処理装置、および医用画像処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置、処理装置、および医用画像処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20220913BHJP
【FI】
A61B5/055 376
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018101672
(22)【出願日】2018-05-28
(65)【公開番号】P2019205542
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】竹島 秀則
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-508656(JP,A)
【文献】特表2009-500115(JP,A)
【文献】特表2005-509471(JP,A)
【文献】特表2001-526067(JP,A)
【文献】米国特許第5502385(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
参照画像に対して再構成処理の逆変換を適用することによって参照k空間データを生成する逆変換部と、
k空間におけるデータの充填位置が異なり時系列に沿った複数のフレームに関する複数の部分k空間データにそれぞれ対応するように、前記充填位置と前記参照k空間データとに基づいて複数の参照部分k空間データを生成する生成部と、
前記複数の部分k空間データと前記複数の参照部分k空間データとの差分を前記複数のフレームの各々に対して実行することによって複数の差分k空間データを生成する差分部と、
前記複数の差分k空間データに対して前記再構成処理をそれぞれ適用することによって複数の差分画像を生成する再構成部と、
前記参照画像と前記複数の差分画像の各々とを合成することによって複数の合成画像を生成する合成部と
を具備する、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記生成部は、前記参照k空間データから前記充填位置にそれぞれ対応するk空間軌跡を抽出することによって前記複数の参照部分k空間データを生成する、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記再構成部は、前記複数の部分k空間データのうちの少なくとも二つ以上のデータを統合したk空間データに対して前記再構成処理を適用することによって前記参照画像を生成する、請求項1または請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記参照k空間データは、前記複数の部分k空間データを収集する前に収集したk空間データである、請求項1または請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記再構成部は、前記複数の部分k空間データを収集した後に収集したk空間データに対して前記再構成処理を適用することによって前記参照画像を生成する、請求項1または請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記再構成部は、造影検査前、或いは造影検査後に収集したk空間データに対して再構成処理を適用することによって前記参照画像を生成する、請求項1または請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記複数の部分k空間データを取得する取得部
を更に具備し、
前記取得部は、ラジアルスキャンを行って前記複数の部分k空間データを取得する、請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記複数の部分k空間データを取得する取得部
を更に具備し、
前記取得部は、スパイラルスキャンを行って前記複数の部分k空間データを取得する、請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記複数の部分k空間データを取得する取得部
を更に具備し、
前記取得部は、カーテシアンスキャンを行って前記複数の部分k空間データを取得する、請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記再構成部は、前記複数のフレーム間の相関性を前記再構成処理に導入することによって前記複数の差分画像を生成する、請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
前記相関性は圧縮センシングである、請求項10に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
前記合成部は、前記参照画像と前記複数の差分画像の各々とを単純加算することによって前記複数の合成画像を生成する、請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項13】
参照画像に対して再構成処理の逆変換を適用することによって参照k空間データを生成する逆変換部と、
k空間におけるデータの充填位置が異なり時系列に沿った複数のフレームに関する複数の部分k空間データにそれぞれ対応するように、前記充填位置と前記参照k空間データとに基づいて複数の参照部分k空間データを生成する生成部と、
前記複数の部分k空間データと前記複数の参照部分k空間データとの差分を前記複数のフレームの各々に対して実行することによって複数の差分k空間データを生成する差分部と、
前記複数の差分k空間データに対して前記再構成処理をそれぞれ適用することによって複数の差分画像を生成する再構成部と、
前記参照画像と前記複数の差分画像の各々とを合成することによって複数の合成画像を生成する合成部と
を具備する、処理装置。
【請求項14】
参照画像に対して再構成処理の逆変換を適用することによって参照k空間データを生成することと、
k空間におけるデータの充填位置が異なり時系列に沿った複数のフレームに関する複数の部分k空間データにそれぞれ対応するように、前記充填位置と前記参照k空間データとに基づいて複数の参照部分k空間データを生成することと、
前記複数の部分k空間データと前記複数の参照部分k空間データとの差分を前記複数のフレームの各々に対して実行することによって複数の差分k空間データを生成することと、
前記複数の差分k空間データに対して前記再構成処理をそれぞれ適用することによって複数の差分画像を生成することと、
前記参照画像と前記複数の差分画像の各々とを合成することによって複数の合成画像を生成することと
を具備する、医用画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置、処理装置、および医用画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置において、例えばダイナミック撮像などの時系列の画像を取得する技術が知られている。
【0003】
具体的には、例えば、NFFT(Nonequispaced Fast Fourier Transform)を用いて、ラジアルスキャンによって収集されたk空間データから動画像を再構成する手法がある。当該手法は、k空間の周辺領域を疎に(即ち、ナイキストサンプリングの基準を下回るように)収集することによって、収集するk空間データの収集量を減らし、撮像時間を短くしている。収集されたk空間データは、k空間の周辺領域に相当する情報を、再構成時に正則化などで補完する。しかし、当該手法は、k空間の周辺領域の補完精度が低いため、画像における輪郭線の鮮鋭さが失われることがある。
【0004】
また例えば、k-t BLAST(k-t space Broad-use Linear Acquisition Speed-up Technique)およびk-t SENSE(k-t SENSitivity Encoding)を用いた再構成において、アンダーサンプリングされたk空間データからk空間平均データを引くことによって、撮像時間を短くする手法がある。しかし、この手法は、画像上の同じ場所を複数回収集する特性を利用しており、k空間上の同じ場所を複数回収集しないような、例えばゴールデンアングル法を用いたラジアルスキャンには適用することが困難である。
【0005】
何れの手法においても、制約された処理時間を満たすように撮像時間を短くできるものの、画質が低下する恐れがある。即ち、従来の手法では、制約された処理時間において磁気共鳴画像の画質を向上させるのは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2005/0174113号明細書
【非特許文献】
【0007】
【文献】Li Feng、外8名、“Golden-Angle Radial Sparse Parallel MRI: Combination of Compressed Sensing, Parallel Imaging, and Golden-Angle Radial Sampling for Fast and Flexible Dynamic Volumetric MRI”、Magnetic Resonance in Medicine 72:707-717、2014年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、制約された処理時間において磁気共鳴画像の画質を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、逆変換部と、生成部と、差分部と、再構成部と、合成部とを備える。逆変換部は、参照画像に対して再構成処理の逆変換を適用することによって参照k空間データを生成する。生成部は、k空間におけるデータの充填位置が異なり時系列に沿った複数のフレームに関する複数の部分k空間データにそれぞれ対応するように、充填位置と参照k空間データとに基づいて複数の参照部分k空間データを生成する。差分部は、複数の部分k空間データと複数の参照k空間データとの差分を複数のフレームの各々に対して実行することによって複数の差分k空間データを生成する。再構成部は、複数の差分k空間データに対して再構成処理をそれぞれ適用することによって複数の差分画像を生成する。合成部は、参照画像と複数の差分画像の各々とを合成することによって複数の合成画像を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態に係るMRI装置の構成例を示す図。
図2図2は、一実施形態において、ラジアルスキャンによって全てのスポークに沿って収集されたk空間データを例示する図。
図3図3は、図2のk空間データから間引かれた第1の部分k空間データを例示する図。
図4図4は、図2のk空間データから間引かれた第2の部分k空間データを例示する図。
図5図5は、図2のk空間データから間引かれた第3の部分k空間データを例示する図。
図6図6は、一実施形態において、ラジアルスキャンによって収集されるスポークに対応するデータの収集順序を例示する図。
図7図7は、一実施形態におけるフレームと部分k空間データとを対応付けた対応表を示す図。
図8図8は、一実施形態における処理回路にて実行される処理を示すフローチャート。
図9図9は、一実施形態における再構成処理の具体例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、磁気共鳴イメージング装置、処理装置、および医用画像処理方法の実施形態について詳細に説明する。
【0012】
図1は、一実施形態に係るMRI装置の構成例を示す図である。例えば、図1に示すように、一実施形態に係るMRI装置100は、静磁場磁石101と、傾斜磁場コイル103と、傾斜磁場電源105と、寝台107と、寝台制御回路109と、送信回路113と、送信コイル115と、受信コイル117と、受信回路119と、撮像制御回路121と、インタフェース123と、ディスプレイ125と、記憶装置127と、処理回路129とを備える。尚、MRI装置100は、静磁場磁石101と傾斜磁場コイル103との間に、中空の円筒形状のシムコイルを有していてもよい。
【0013】
静磁場磁石101は、例えば中空の略円筒形状に形成された磁石である。静磁場磁石101は、被検体Pが挿入される空間であるボア111に一様な静磁場を発生する。静磁場磁石101としては、例えば、超伝導磁石などが使用される。
【0014】
傾斜磁場コイル103は、例えば中空の略円筒形状に形成されたコイルである。傾斜磁場コイル103は、静磁場磁石101の内側に配置される。傾斜磁場コイル103は、互いに直交するX、Y、Zの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成される。Z軸方向は、静磁場の方向と同方向であるとする。また、Y軸方向は、鉛直方向とし、X軸方向は、Z軸およびY軸に垂直な方向とする。傾斜磁場コイル103は、静磁場に重畳させる傾斜磁場を発生する。具体的には、傾斜磁場コイル103における3つのコイルは、傾斜磁場電源105から個別に電流供給を受けて、X、Y、Zの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生させる。
【0015】
傾斜磁場コイル103によって発生するX、Y、Z各軸の傾斜磁場は、例えば、周波数エンコード用傾斜磁場(リードアウト傾斜磁場ともいう)、位相エンコード用傾斜磁場、およびスライス選択用傾斜磁場を形成する。周波数エンコード用傾斜磁場は、空間的位置に応じてMR信号の周波数を変化させるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場は、空間的位置に応じて磁気共鳴(Magnetic Resonance:以下、MRと呼ぶ)信号の位相を変化させるために利用される。スライス選択用傾斜磁場は、撮像断面を決めるために利用される。
【0016】
傾斜磁場電源105は、撮像制御回路121の制御により、傾斜磁場コイル103に電流を供給する電源装置である。
【0017】
寝台107は、被検体Pが載置される天板107aを備えた装置である。寝台107は、寝台制御回路109による制御のもと、被検体Pが載置された天板107aを、ボア111内へ挿入する。寝台107は、例えば、長手方向が静磁場磁石101の中心軸と平行になるように、MRI装置100が設置された検査室内に設置される。
【0018】
寝台制御回路109は、寝台107を制御する回路である。寝台制御回路109は、インタフェース123を介した操作者の指示により寝台107を駆動することで、天板107aを長手方向および上下方向、場合によっては左右方向へ移動させる。
【0019】
送信回路113は、撮像制御回路121の制御により、ラーモア周波数などに対応する高周波パルスを送信コイル115に供給する。
【0020】
送信コイル115は、傾斜磁場コイル103の内側に配置されたRF(Radio Frequency)コイルである。送信コイル115は、送信回路113から高周波パルスの供給を受けて、高周波磁場に相当する送信RF波(RFパルス)を発生する。送信コイルは、例えば、全身用コイル(whole body coil:WBコイル)である。WBコイルは、送受信コイルとして使用されてもよい。
【0021】
受信コイル117は、傾斜磁場コイル103の内側に配置されたRFコイルである。受信コイル117は、高周波磁場によって被検体Pから放射されるMR信号を受信する。受信コイル117は、受信されたMR信号を受信回路119へ出力する。受信コイル117は、例えば、1以上のコイルであり、典型的には複数のコイルエレメントを有するコイルアレイである。なお、図1において送信コイル115と受信コイル117とは別個のRFコイルとして記載されているが、送信コイル115と受信コイル117とは、一体化された送受信コイルとして実施されてもよい。送受信コイルは、例えば、頭部コイルのような局所的な送受信RFコイルである。
【0022】
受信回路119は、撮像制御回路121の制御により、受信コイル117から出力されたMR信号に基づいて、デジタル化された複素数データであるデジタルのMR信号を生成する。具体的には、受信回路119は、受信コイル117から出力されたMR信号に対して各種信号処理を施した後、各種信号処理が施されたデータに対してアナログ/デジタル(A/D(Analog to Digital))変換を実行する。受信回路119は、A/D変換されたデータを標本化(サンプリング)することにより、デジタルのMR信号(以下、MRデータと呼ぶ)を生成する。受信回路119は、生成されたMRデータを、撮像制御回路121に出力する。
【0023】
撮像制御回路121は、処理回路129から出力された撮像プロトコルに従って、傾斜磁場電源105、送信回路113および受信回路119などを制御し、被検体Pに対する撮像を行う。撮像プロトコルは、検査に応じた各種パルスシーケンスを有する。撮像プロトコルには、傾斜磁場電源105により傾斜磁場コイル103に供給される電流の大きさ、傾斜磁場電源105により電流が傾斜磁場コイル103に供給されるタイミング、送信回路113により送信コイル115に供給される高周波パルスの大きさ、送信回路113により送信コイル115に高周波パルスが供給されるタイミング、受信コイル117によりMR信号が受信されるタイミングなどが予め設定されている。撮像制御回路121は、取得部の一例である。
【0024】
例えば、k空間における複数のラジアル方向に沿った複数の収集ライン各々においてMR信号が収集されるパルスシーケンスによるラジアルスキャンが実行される場合、撮像制御回路121は、リードアウト傾斜磁場として位相エンコード用傾斜磁場と周波数エンコード用傾斜磁場とを同時に発生させるように傾斜磁場電源105を制御する。加えて、撮像制御回路121は、送信コイル115への高周波パルスの印加毎に、位相エンコード用傾斜磁場の強度と周波数エンコード用傾斜磁場の強度とを変化させるように、傾斜磁場電源105を制御する。撮像制御回路121は、リードアウト傾斜磁場の発生とともに、MR信号を受信するために受信回路119を制御する。撮像制御回路121は、受信回路119から出力されたMRデータを、リードアウト傾斜磁場の強度およびラジアル方向(k空間に充填される位置)とともに、処理回路129および記憶装置127に出力する。
【0025】
ラジアルスキャンは、k空間の中心を通るように配置した断面に対して、読み出し方向を断面上で回転させながらk空間の中心を通るスキャンを行う。ラジアルスキャンを行うことによって、k空間の断面上に描いた円の内部にある2次元データを収集することができる。即ち、ラジアルスキャンは、k空間の中心領域を高い密度で収集し、k空間の周辺領域を低い密度で収集する。また、ラジアルスキャンでは、k空間の中心から放射状に延びる収集ラインの形状を車輪になぞらえて、読み出し方向のスキャンで描かれる線分をスポークと呼ぶ。
【0026】
ラジアルスキャンは、カーテシアンスキャンとは異なり、k空間上の格子点に対応するサンプル値(信号値)が得られるとは必ずしも限らない。そのため、ラジアルスキャンによって収集されたデータの再構成は、フーリエ変換(或いは、逆離散フーリエ変換)とは異なる手法を用いる。ラジアルスキャンによって収集されたデータの再構成は、例えば、Nonequispaced Discrete Fourier Transform(NDFT)、或いは当該NDFTの高速版であるNonequispaced Fast Fourier Transform(NFFT)を用いてMR画像から信号を生成する過程をモデル化し、当該モデルの逆問題を解くことによって行われる。上記NDFTおよびNFFTは、いずれも線形変換である。尚、ラジアルスキャンによって収集されるサンプル数が十分多い場合、データの再構成としてグリッディング(gridding)と呼ばれる手法が用いられてもよい。
【0027】
また、上記再構成は、パラレルイメージング(Parallel Imaging:PI)を併用することによって、再構成画質を向上させることができる。PIとは、複数の受信コイルの感度差を利用して、k空間データの一部をスキャンしたデータ(部分k空間データ)から画像を再構成する技術である。
【0028】
部分k空間データからMR画像を生成する手法は、例えば、ダイナミック撮像などで用いられる。ダイナミック撮像とは、複数のMR画像を連続撮像することである。被検体の変化がMR画像の一部のみに現れる場合、時間方向の連続性を考慮することによって、データ収集量を減らしたk空間データ(部分k空間データ)からMR画像を再構成することが可能である。
【0029】
時間方向の連続性を考慮した再構成技術として、例えば、圧縮センシングが知られている。圧縮センシングとは、入力データに既知の線形変換を適用した場合、適用したデータの値の大半がゼロであると仮定することによって、当該入力データが不足していたとしても、当該仮定を利用して元の入力データを推定する技術である。一実施形態では、例えば、再構成画像に対して画素値のフレーム間差分に関する線形変換を適用した場合、適用した再構成画像の画素値の大半がゼロであるという仮定を導入する。「フレーム」とは、動画像を構成するための個々の静止画であり、例えば、再構成されたMR画像に相当する。
【0030】
撮像制御回路121は、具体的には、k空間におけるデータの充填位置が異なり時系列に沿った複数のフレームに関する複数の部分k空間データを取得する。「k空間におけるデータの充填位置が異なる」とは、例えば、ラジアルスキャンにおいて、隣接するフレーム間で異なる位置のスポークにデータが収集されることを意味する。「部分k空間データ」とは、例えば、複数のフレームのそれぞれに対応する、スポークの充填位置が間引かれたk空間データを意味する。即ち、部分k空間データのデータ収集量は、本来取得されうるデータ収集量よりも少ないデータ収集量である。
【0031】
なお、撮像制御回路121は、複数の部分k空間データを収集する前に、参照画像を生成するためのk空間データを別途取得してもよい。また、撮像制御回路121は、複数の部分k空間データを収集した後に、参照画像を生成するためのk空間データを別途取得してもよい。また、撮像制御回路121は、造影検査前、或いは造影検査後に、参照画像を生成するためのk空間データを別途取得してもよい。尚、参照画像の詳細は後述する。
【0032】
k空間におけるスポークの総数は、任意に決定される。例えば、重複しないスポークの総数を600本に設定し、1フレームあたり20本のスポークから信号を収集するように設定した場合、フレーム間でスポークが重複していない部分k空間データを30フレーム分、取得することができる。部分k空間データに含まれるスポークの数は、k空間上において設定されたスポークの総数よりも小さい。また、隣接するフレームに対応する部分k空間データは、スポークの配置がフレーム間でそれぞれ異なる配置となっている。
【0033】
また、ラジアルスキャンにおいて、1フレームあたりのスポークの本数だけが決められていてもよい。この場合、隣接するスポークが重複しないように設定するには、k空間において原点を通り角度が55.6度単位で増加するスポークを用いたり、ゴールデンアングル法と呼ばれる111.25度単位で増加するスポークを用いたりすることができる。
【0034】
図2は、一実施形態において、ラジアルスキャンによって全てのスポークに沿って収集されたk空間データを例示する図である。例えば、図2に示すように、一実施形態に係るk空間データ200は、スポークS1からスポークS12までのそれぞれの読み出し方向に沿った収集位置において、k空間データが収集される。尚、図2から図7では、説明を簡単にするため、k空間データにおけるスポークの総数を12本としているが、これに限定されない。
【0035】
図3は、図2のk空間データから間引かれた第1の部分k空間データを例示する図である。例えば、図3に示すように、第1の部分k空間データ300は、スポークS1,S4,S7,S10のそれぞれの読み出し方向に沿った収集位置において、k空間データが収集される。換言すると、第1の部分k空間データ300は、スポークS1,S4,S7,S10の組合せによって構成されるk空間データである。
【0036】
図4は、図2のk空間データから間引かれた第2の部分k空間データを例示する図である。例えば、図4に示すように、第2の部分k空間データ400は、スポークS2,S5,S8,S11のそれぞれの読み出し方向に沿った収集位置において、k空間データが収集される。換言すると、第2の部分k空間データ400は、スポークS2,S5,S8,S11の組合せによって構成されるk空間データである。即ち、k空間におけるデータの充填位置において、第2の部分k空間データ400は、第1の部分k空間データ300とは異なる。
【0037】
図5は、図2のk空間データから間引かれた第3の部分k空間データを例示する図である。例えば、図5に示すように、第3の部分k空間データ500は、スポークS3,S6,S9,S12のそれぞれの読み出し方向に沿った収集位置において、k空間データが収集される。換言すると、第3の部分k空間データ500は、スポークS3,S6,S9,S12の組合せによって構成されるk空間データである。即ち、k空間におけるデータの充填位置において、第3の部分k空間データ500は、第1の部分k空間データ300および第2の部分k空間データ400とは異なる。
【0038】
図6は、一実施形態において、ラジアルスキャンによって収集されるスポークに対応するデータの収集順序を例示する図である。以降では、スポークSnに対応するデータを「Snのデータ」と称する。例えば、図6に示すように、第1フレーム、第2フレーム、および第3フレームにそれぞれ対応するk空間データが、それぞれ時系列に沿って並んでいる。
【0039】
第1フレームで用いられるk空間データは、S1のデータ、S4のデータ、S7のデータ、S10のデータの順で収集される。また、第2フレームで用いられるk空間データは、S2のデータ、S5のデータ、S8のデータ、S11のデータの順で収集される。さらに、第3のフレームで用いられるk空間データは、S3のデータ、S6のデータ、S9のデータ、S12のデータの順で収集される。
【0040】
第1フレームと第2フレームとの境界は、S10のデータとS2のデータとの境界に相当する。第2のフレームと第3フレームとの境界は、S11のデータとS3のデータとの境界に相当する。
【0041】
なお、フレーム内におけるデータの収集順序は上記に限らず自由に設定されてもよい。そのため、隣接するフレームの境界は、上記に拘泥されず、データの収集順序に従った隣接するデータの境界に相当する。
【0042】
図7は、一実施形態におけるフレームと部分k空間データとを対応付けた対応表を示す図である。例えば、図7に示すように、対応表700は、第1フレームと第1の部分k空間データとが対応付けられ、第2フレームと第2の部分k空間データとが対応付けられ、第3フレームと第3の部分k空間データとが対応付けられている。尚、対応表700として、ルックアップテーブル(Look Up Table;LUT)が用いられてもよい。
【0043】
インタフェース123は、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける回路を有する。インタフェース123は、例えば、マウスなどのポインティングデバイス、あるいはキーボードなどの入力デバイスに関する回路を有する。なお、インタフェース123が有する回路は、マウス、キーボードなどの物理的な操作部品に関する回路に限定されない。例えば、インタフェース123は、MRI装置100とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、受け取った電気信号を種々の回路へ出力するような電気信号の処理回路を有していてもよい。
【0044】
ディスプレイ125は、処理回路129におけるシステム制御機能129aによる制御のもとで、画像生成機能129bにより生成された各種MR画像、撮像および画像処理に関する各種情報などを表示する。ディスプレイ125は、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、または当技術分野で知られている他の任意のディスプレイ、モニタなどの表示デバイスである。
【0045】
記憶装置127は、画像生成機能129bを介してk空間に充填されたMRデータ、画像生成機能129bにより生成された画像データなどを記憶する。記憶装置127は、各種撮像プロトコル、撮像プロトコルを規定する複数の撮像パラメータを含む撮像条件などを記憶する。記憶装置127は、処理回路129で実行される各種機能に対応するプログラムを記憶する。
【0046】
また、記憶装置127は、複数のフレーム各々に対応付けられた複数のスポークの組合せを記憶してもよい。具体的には、記憶装置127は、フレームと部分k空間データとを対応付けた対応表を記憶する。
【0047】
記憶装置127は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子、ハードディスクドライブ(hard disk drive)、ソリッドステートドライブ(solid state drive)、光ディスクなどである。また、記憶装置127は、CD-ROMドライブやDVDドライブ、フラッシュメモリなどの可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置などであってもよい。
【0048】
処理回路129は、ハードウェア資源として、図示していないプロセッサ、ROM(Read-Only Memory)やRAMなどのメモリなどを有し、MRI装置100を制御する。処理回路129は、システム制御機能129a、画像生成機能129b、参照k空間データ生成機能129c、参照部分k空間データ生成機能129d、差分k空間データ生成機能129e、再構成機能129f、および合成画像生成機能129gを有する。システム制御機能129a、画像生成機能129b、参照k空間データ生成機能129c、参照部分k空間データ生成機能129d、差分k空間データ生成機能129e、再構成機能129f、および合成画像生成機能129gにて行われる各種機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶装置127へ記憶されている。処理回路129は、これら各種機能に対応するプログラムを記憶装置127から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路129は、図1の処理回路129内に示された複数の機能などを有することになる。
【0049】
なお、図1においては単一の処理回路129にて前述の各種機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとして構わない。換言すると、前述の各種機能がプログラムとして構成され、一つの処理回路が各プログラムを実行する場合であってもよいし、特定の機能が専用の独立したプログラム実行回路に実装される場合であってもよい。
【0050】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、およびフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))などの回路を意味する。
【0051】
プロセッサは、記憶装置127に保存されたプログラムを読み出し実行することで各種機能を実現する。なお、記憶装置127にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、寝台制御回路109、送信回路113、受信回路119、撮像制御回路121なども同様に、上記プロセッサなどの電子回路により構成される。また、処理回路129が有するシステム制御機能129a、画像生成機能129b、参照k空間データ生成機能129c、参照部分k空間データ生成機能129d、差分k空間データ生成機能129e、再構成機能129f、および合成画像生成機能129gは、それぞれシステム制御部、画像生成部、逆変換部、生成部、差分部、再構成部、および合成部の一例である。
【0052】
処理回路129は、システム制御機能129aにより、MRI装置100を制御する。具体的には、処理回路129は、記憶装置127に記憶されているシステム制御プログラムを読み出してメモリ上に展開し、展開されたシステム制御プログラムに従ってMRI装置100の各回路を制御する。例えば、処理回路129は、システム制御機能129aにより、インタフェース123を介して操作者から入力される撮像条件に基づいて、撮像プロトコルを記憶装置127から読み出す。なお、処理回路129は、撮像条件に基づいて、撮像プロトコルを生成してもよい。処理回路129は、撮像プロトコルを撮像制御回路121に送信し、被検体Pに対する撮像を制御する。
【0053】
処理回路129は、画像生成機能129bにより、MRデータをk空間に充填する。処理回路129は、k空間に充填されたMRデータに対して例えばフーリエ変換などを行うことにより、MR画像を生成する。MR画像は、例えば、被検体Pに関する形態画像に対応する。処理回路129は、MR画像を、ディスプレイ125や記憶装置127に出力する。
【0054】
処理回路129は、参照k空間データ生成機能129cにより、参照画像に対して再構成処理の逆変換を適用することによって参照k空間データを生成する。再構成処理の逆変換は、例えば、参照画像からk空間データをシミュレートして生成することに相当する。ラジアルスキャンによって得られるk空間データをシミュレートする場合、例えば、参照画像に対してNDFT、或いはNFFTを用いることによってk空間データを生成する。参照画像は、再構成機能129fによって生成されるが、画像生成機能129bによって生成されてもよい。
【0055】
参照画像は、例えば、複数のフレームに対応する複数の部分k空間データを全て統合したk空間データに関する画像である。複数のフレームは、例えば、予め設定されたフレーム総数の動画像を作成するための全てのフレームである。全てのフレームは、例えば、フレーム毎にそれぞれ異なる複数のスポークから取得されたk空間データに対応する。
【0056】
また、参照画像は、複数のフレームに対応する複数の部分k空間データのうちの少なくとも二つ以上のデータを統合したk空間データに関する画像でもよい。また、参照画像は、複数のフレームに対応する複数の部分k空間データを収集する前後のどちらかに収集したk空間データに関する画像でもよい。また、参照画像は、造影検査前、或いは造影検査後に収集したk空間データに関する画像でもよい。
【0057】
処理回路129は、参照部分k空間データ生成機能129dにより、k空間におけるデータの充填位置が異なり時系列に沿った複数のフレームに関する複数の部分k空間データにそれぞれ対応するように、充填位置と参照k空間データとに基づいて複数の参照部分k空間データを生成する。具体的には、処理回路129は、参照k空間データから充填位置にそれぞれ対応するk空間軌跡を抽出することによって複数の参照部分k空間データを生成する。
【0058】
処理回路129は、差分k空間データ生成機能129eにより、複数の部分k空間データと複数の参照k空間データとの差分を複数のフレームの各々に対して実行することによって複数の差分k空間データを生成する。
【0059】
処理回路129は、再構成機能129fにより、複数の差分k空間データに対して再構成処理をそれぞれ適用することによって複数の差分画像を生成する。また、処理回路129は、再構成機能129fにより、複数のフレーム間の相関性を再構成処理に導入することによって複数の差分画像を生成してもよい。尚、複数のフレーム間の相関性とは、例えば、時間方向の連続性を考慮した圧縮センシングに相当する。
【0060】
また、処理回路129は、再構成機能129fにより、k空間データに対して再構成処理を適用することによって参照画像を生成してもよい。具体的には、処理回路129は、複数の部分k空間データを全て統合したk空間データに対して再構成処理を適用することによって参照画像を生成する。ラジアルスキャンによって得られるk空間データに対して再構成処理を適用する場合、例えば、参照画像に対してNDFT、或いはNFFTおよび圧縮センシングを用いることによって参照画像を生成する。
【0061】
また、処理回路129は、再構成機能129fにより、複数の部分k空間データのうちの少なくともN(N=2)以上のデータを統合したk空間データに対して再構成処理を適用することによって参照画像を生成してもよい。上記Nの値は、再構成処理後の参照画像の画質がある程度担保されるように設定される。例えば、処理回路129は、参照画像におけるノイズレベルが閾値を下回ったことを契機として、上記Nの値を決定してもよい。
【0062】
また、処理回路129は、再構成機能129fにより、複数の部分k空間データを収集する前に収集したk空間データに対して再構成処理を適用することによって参照画像を生成してもよいし、複数の部分k空間データを収集した後に収集したk空間データに対して再構成処理を適用することによって参照画像を生成してもよい。
【0063】
また、処理回路129は、再構成機能129fにより、造影検査前、或いは造影検査後に収集したk空間データに対して再構成処理を適用することによって参照画像を作成してもよい。例えば、造影検査前に収集したk空間データに関する参照画像は、造影検査における時系列の前半のフレームを作成する際に用いられる。また、造影検査後に収集したk空間データに関する参照画像は、造影検査における時系列の後半のフレームを作成する際に用いられる。
【0064】
処理回路129は、合成画像生成機能129gにより、参照画像と複数の差分画像の各々とを合成することによって複数の合成画像を生成する。具体的には、処理回路129は、参照画像と複数の差分画像の各々とを単純加算することによって複数の合成画像を生成する。単純加算とは、例えば、複数の画像において同一の画素位置における画素値を足しあわせることに相当する。
【0065】
図8は、一実施形態における処理回路にて実行される処理を示すフローチャートである。図8の処理は、例えば、ユーザなどにより差分再構成処理の開始指示が入力されることを契機として、処理回路129が差分再構成処理に関するプログラムを実行することにより開始される。
【0066】
差分再構成処理とは、取得した時系列のk空間データから参照画像に基づいた参照k空間データを引いた差分k空間データに対して再構成処理を適用して差分画像を生成し、差分画像に参照画像を加えて再構成画像を生成する処理である。差分再構成処理を行うことによって、時系列のk空間データをそのまま再構成するよりも、差分k空間データを再構成することによって、再構成画像の高画質化が期待できる。
【0067】
なお、以下では、複数のフレームの各々に対応する部分k空間データが撮像制御回路121によって事前に取得されているものとして説明を行う。
【0068】
(ステップS801)
処理回路129は、参照k空間データ生成機能129cにより、参照画像に対して再構成処理の逆変換を適用することによって参照k空間データを生成する。
【0069】
(ステップS802)
処理回路129は、参照部分k空間データ生成機能129dにより、k空間におけるデータの充填位置が異なり時系列に沿った複数のフレームに関する複数の部分k空間データにそれぞれ対応するように、充填位置と参照k空間データとに基づいて複数の参照部分k空間データを生成する。
【0070】
(ステップS803)
処理回路129は、差分k空間データ生成機能129eにより、複数の部分k空間データと複数の参照k空間データとの差分を複数のフレームの各々に対して実行することによって複数の差分k空間データを生成する。
【0071】
(ステップS804)
処理回路129は、再構成機能129fにより、複数の差分k空間データに対して再構成処理をそれぞれ適用することによって複数の差分画像を生成する。
【0072】
(ステップS805)
処理回路129は、合成画像生成機能129gにより、参照画像と複数の差分画像の各々とを合成することによって複数の合成画像を生成する。
【0073】
図9は、一実施形態における再構成処理の具体例を示す図である。尚、図9では、複数の部分k空間データ910を全て統合したk空間データ920から参照画像930を生成しているが、これに限定されない。また、PIを用いる場合、複数の受信コイル毎に図9に示す再構成処理が行われる。
【0074】
撮像制御回路121は、複数の部分k空間データ910を取得する。複数の部分k空間データ910は、第1の部分k空間データ911と、第2の部分k空間データ912と、第3の部分k空間データ913とを含む。複数の部分k空間データ910の各々は、k空間におけるデータの充填位置がそれぞれ異なっている。
【0075】
処理回路129は、再構成機能129fにより、k空間データ920に対して再構成処理を適用することによって参照画像930を生成する。
【0076】
処理回路129は、参照k空間データ生成機能129cにより、参照画像930に対して再構成処理の逆変換を適用することによって参照k空間データ940を生成する。
【0077】
処理回路129は、参照部分k空間データ生成機能129dにより、時系列に沿った複数のフレームに関する第1の部分k空間データ911、第2の部分k空間データ912、および第3の部分k空間データ913にそれぞれ対応するように、充填位置と参照k空間データ940とに基づいて複数の参照部分k空間データ950を生成する。
【0078】
充填位置は、例えば、図7に示した対応表700を参照することにより、任意のフレームに対応するスポークの組合せを取得することによって特定することができる。複数の参照部分k空間データ950は、第1の参照部分k空間データ951と、第2の参照部分k空間データ952と、第3の参照部分k空間データ953とを含む。
【0079】
処理回路129は、差分k空間データ生成機能129eにより、複数の部分k空間データ910と複数の参照部分k空間データ950との差分を複数のフレームの各々に対して実行することによって複数の差分k空間データ960を生成する。
【0080】
具体的には、処理回路129は、第1フレームに関する第1の部分k空間データ911と第1の参照部分k空間データ951との差分である第1の差分k空間データ961を生成する。処理回路129は、第2フレームに関する第2の部分k空間データ912と第2の参照部分k空間データ952との差分である第2の差分k空間データ962を生成する。処理回路129は、第3フレームに関する第3の部分k空間データ913と第3の参照部分k空間データ953との差分である第3の差分k空間データ963を生成する。
【0081】
処理回路129は、再構成機能129fにより、複数の差分k空間データ960に対して再構成処理をそれぞれ適用することによって複数の差分画像970を生成する。
【0082】
具体的には、処理回路129は、第1の差分k空間データ961に対して再構成処理を適用することによって第1の差分画像971を生成する。処理回路129は、第2の差分k空間データ962に対して再構成処理を適用することによって第2の差分画像972を生成する。処理回路129は、第3の差分k空間データ963に対して再構成処理を適用することによって第3の差分画像973を生成する。
【0083】
処理回路129は、合成画像生成機能129gにより、参照画像930と複数の差分画像970の各々とを合成することによって複数の合成画像980を生成する。
【0084】
具体的には、処理回路129は、参照画像930と第1の差分画像971とを合成する事によって第1の合成画像981を生成する。処理回路129は、参照画像930と第2の差分画像972とを合成する事によって第2の合成画像982を生成する。処理回路129は、参照画像930と第3の差分画像973とを合成する事によって第3の合成画像983を生成する。
【0085】
以上説明したように一実施形態によれば、MRI装置は、参照画像に対して再構成処理の逆変換を適用することによって参照k空間データを生成し、k空間における充填位置が異なり時系列に沿った複数のフレームに関する複数の部分k空間データにそれぞれ対応するように、充填位置と参照k空間データとに基づいて複数の参照部分k空間データを生成する。そして、MRI装置は、複数の部分k空間データと複数の参照k空間データとの差分を複数のフレームの各々に対して実行することによって複数の差分k空間データを生成し、複数の差分k空間データに対して再構成処理をそれぞれ適用することによって複数の差分画像を生成し、参照画像と複数の差分画像の各々とを合成することによって複数の合成画像を生成する。従って、MRI装置は、部分k空間データよりもデータ収集量の小さい差分k空間データに対して再構成処理を適用するため、再構成処理における繰り返し演算の収束に必要な演算回数を低減させることが期待できる。また、MRI装置は、参照画像と差分画像とを合成することで、部分k空間データに対してそのまま再構成処理を適用するよりも、少ない繰り返し回数で再構成した画像の画質を向上させることが期待できる。
【0086】
また、一実施形態によれば、MRI装置は、参照k空間データから充填位置にそれぞれ対応するk空間軌跡を抽出することによって複数の参照部分k空間データを生成する。即ち、MRI装置は、部分k空間データの充填位置に対応したk空間データを取得することができる。
【0087】
また、一実施形態によれば、MRI装置は、複数の部分k空間データを全て統合したk空間データに対して再構成処理を適用することによって参照画像を生成する。即ち、MRI装置は、ナイキストレートに近い参照画像を取得することができる。
【0088】
また、一実施形態によれば、MRI装置は、複数の部分k空間データのうちの少なくとも二つ以上のデータを統合したk空間データに対して再構成処理を適用することによって参照画像を生成する。即ち、MRI装置は、複数の部分k空間データを全て取得する時間を待たずに参照画像を取得することができる。
【0089】
また、一実施形態によれば、MRI装置は、複数の部分k空間データを収集する前に収集したk空間データに対して再構成処理を適用することによって参照画像を生成する。即ち、MRI装置は、複数の部分k空間データに基づく参照画像を生成するよりも前に参照画像を取得することができる。
【0090】
また、一実施形態によれば、MRI装置は、複数の部分k空間データを収集した後に収集したk空間データに対して再構成処理を適用することによって参照画像を生成する。即ち、MRI装置は、同一の撮影部位において異なるスキャンシーケンスに基づく参照画像を取得することができる。
【0091】
また、一実施形態によれば、MRI装置は、造影検査前、或いは造影検査後に収集したk空間データに対して再構成処理を適用することによって参照画像を生成する。即ち、MRI装置は、同一の撮影部位において造影剤の影響を受けていない参照画像を取得することができる。
【0092】
よって、以上に説明した実施形態のMRI装置100によれば、制約された処理時間において磁気共鳴画像の画質を向上させることができる。
【0093】
なお、一実施形態では、主にラジアルスキャンによって部分k空間データを収集することについて説明したが、これに限らない。例えば、複数のインタリーブを用いたスパイラルスキャンによって複数の部分k空間データを収集してもよい。インタリーブとは、例えば、スパイラルスキャンにおけるスパイラル状の収集ラインの一つに相当する。スパイラルスキャンを用いる場合、例えば、複数の部分k空間データのそれぞれは、一つのインタリーブによって収集されたk空間データとなる。また例えば、疑似ランダム生成された充填位置の収集ラインに基づくカーテシアンスキャンによって複数の部分k空間データの各々を収集してもよい。
【0094】
(変形例)
一実施形態の変形例として、MRI装置100の差分再構成処理に関する技術的思想を処理装置131で実現する場合には、図1の構成図における破線内の構成要素を有するものとなる。このとき、インタフェース123は、例えば、ネットワークとの接続に使用される通信インタフェースに関する回路として機能し、部分k空間データなどを取得する。具体的には、インタフェース123はネットワークを介して、MRI装置から部分k空間データなどを取得する。本変形例において、インタフェース123は取得部の一例である。
【0095】
処理装置131において、処理回路129は、参照k空間データ生成機能129cにより、参照画像に対して再構成処理の逆変換を適用することによって参照k空間データを生成する。処理回路129は、参照部分k空間データ生成機能129dにより、k空間におけるデータの充填位置が異なり時系列に沿った複数のフレームに関する複数の部分k空間データにそれぞれ対応するように、充填位置と参照k空間データとに基づいて複数の参照部分k空間データを生成する。処理回路129は、差分k空間データ生成機能129eにより、複数の部分k空間データと複数の参照k空間データとの差分を複数のフレームの各々に対して実行することによって複数の差分k空間データを生成する。処理回路129は、再構成機能129fにより、複数の差分k空間データに対して再構成処理をそれぞれ適用することによって複数の差分画像を生成する。処理回路129は、合成画像生成機能129gにより、参照画像と複数の差分画像の各々とを合成することによって複数の合成画像を生成する。尚、処理装置131の処理回路129による差分再構成処理は、一実施形態の処理と同様のため、説明を省略する。
【0096】
以上に説明した変形例の処理装置131によれば、制約された処理時間において磁気共鳴画像の画質を向上させることができる。
【0097】
以上に説明した実施形態のMRI装置100および変形例の処理装置131における動作は、医用画像処理方法として実行することができる。医用画像処理方法に関する効果は、前述の実施形態および変形例などにおける効果と同様なため、説明を省略する。
【0098】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、制約された処理時間において磁気共鳴画像の画質を向上させることができる。
【0099】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0100】
100 磁気共鳴イメージング装置
101 静磁場磁石
103 傾斜磁場コイル
107 寝台
107a 天板
111 ボア
115 送信コイル
117 受信コイル
131 処理装置
200,920 k空間データ
300,911 第1の部分k空間データ
400,912 第2の部分k空間データ
500,913 第3の部分k空間データ
700 対応表
910 複数の部分k空間データ
930 参照画像
940 参照k空間データ
950 複数の参照部分k空間データ
951 第1の参照部分k空間データ
952 第2の参照部分k空間データ
953 第3の参照部分k空間データ
961 第1の差分k空間データ
962 第2の差分k空間データ
963 第3の差分k空間データ
971 第1の差分画像
972 第2の差分画像
973 第3の差分画像
981 第1の合成画像
982 第2の合成画像
983 第3の合成画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9