(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】車両用ランプ
(51)【国際特許分類】
F21S 41/675 20180101AFI20220913BHJP
F21S 41/148 20180101ALI20220913BHJP
F21V 14/04 20060101ALI20220913BHJP
F21V 23/00 20150101ALI20220913BHJP
B60Q 1/14 20060101ALI20220913BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20220913BHJP
G01S 17/89 20200101ALI20220913BHJP
G01S 17/95 20060101ALI20220913BHJP
F21W 102/145 20180101ALN20220913BHJP
F21W 102/165 20180101ALN20220913BHJP
F21W 102/155 20180101ALN20220913BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20220913BHJP
F21Y 115/15 20160101ALN20220913BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20220913BHJP
【FI】
F21S41/675
F21S41/148
F21V14/04
F21V23/00 113
F21V23/00 140
B60Q1/14 B
H01L33/00 L
G01S17/89
G01S17/95
F21W102:145
F21W102:165
F21W102:155
F21Y115:10
F21Y115:15
F21Y115:30
(21)【出願番号】P 2018112379
(22)【出願日】2018-06-13
【審査請求日】2021-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081433
【氏名又は名称】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】向島 健太
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-224317(JP,A)
【文献】国際公開第2014/024385(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/675
F21S 41/148
F21V 14/04
F21V 23/00
B60Q 1/14
H01L 33/00
G01S 17/89
G01S 17/95
F21W 102/145
F21W 102/155
F21W 102/165
F21Y 115/10
F21Y 115/15
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源部と、この光源部から出射した光を走査する走査部を備え、走査された光を車両外部に向けて照射する車両用ランプであって、前記光源部は、可視光を出射する複数個の可視光源と、赤外光を出射する
複数個の赤外光源を備え、
前記可視光源と前記赤外光源は前記走査部での走査方向に並んで配列され、隣接配置された複数個の可視光源による各照射領域は前記走査方向に連続され、隣接配置された複数個の赤外光源の各照射領域は前記走査方向に連続されることを特徴とする車両用ランプ。
【請求項2】
前記赤外光源は前記可視光源の間に配置されて前記光源部の両端の光源は可視光源
であり、前記複数個の可視光源の照射領域を合成した領域は、前記複数個の赤外光源の照射領域を合成した領域よりも、前記走査方向の両側に拡大されている請求項1に記載の車両用ランプ。
【請求項3】
前記可視光源と前記赤外光源はそれぞれ半導体発光素子で構成される請求項
1又は2に記載の車両用ランプ。
【請求項4】
前記走査部は、前記光源部から出射された光を反射する反射面の角度が回転に伴って連続的に変化する回転リフレクタ、または反射面が走査方向に沿って傾動される可動ミラーで構成される請求項1ないし
3のいずれかに記載の車両用ランプ。
【請求項5】
前記走査部での可視光の走査に対応して前記可視光源の点灯タイミングを制御する点灯制御手段を備える請求項1ないし
4のいずれかに記載の車両用ランプ。
【請求項6】
前記点灯制御手段は、照射された赤外光の反射光に基づいて対象物を検出する対象物検出手段の検出信号に基づいて点灯タイミングの制御を行う請求項
5に記載の車両用ランプ。
【請求項7】
前記対象物検出手段を備える請求項
6に記載の車両用ランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は照明用の可視光を出射する可視光源と、他車両等の対象物を検出するための赤外光を出射する赤外光源を備える車両用ランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の安全走行性を高めるために、例えば、自動車の前方領域を可視光により照明するとともに、当該前方領域に向けて赤外光を照射し、対象物で反射された赤外光に基づいて当該対象物を検出する車両用ランプが提案されている。また、車両の走行領域やその周辺領域の視認性を高めるために、可視光で走査して前方領域を照明する技術も提案されている。
【0003】
特許文献1には、ランプハウジング内に、可視光源と、赤外線センサーの発光部と受光部を配設し、可視光源から出射された可視光と、発光部(赤外光源)から出射された赤外光を走査ミラーにより走査して自動車の前方領域を照射する技術が提案されている。この技術によれば、赤外光を利用して前方領域に存在する対象物(障害物)を検出し、検出した対象物に可視光を照射して乗員が当該対象物を視認することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術は、可視光源と赤外光源から出射される光束(光ビーム)を1つの走査ミラーにより走査しながら照射しており、可視光と赤外光の照射領域はほぼ同じである。そのため、可視光の照射領域を自動車の走行領域の外側にまで広げると、これに伴って赤外光の照射領域も広くなり、走行に関与しない対象物を検出してしまうことがある。反対に、赤外光の照射領域を自動車の走行領域に限ると、可視光の照射領域が狭くなり、走行領域の周辺領域を乗員が視認することができなくなる。
【0006】
この課題を解消するためには、可視光と赤外光をそれぞれ独立した別の走査手段で走査することが考えられ、特許文献1でも提案されている。しかし、これでは少なくとも2つの走査手段が必要となり、ランプを構成する部品点数が増大し、ランプ構造が複雑かつ大型になり、かつコスト高の要因になる。
【0007】
本発明の目的は、ランプ構造の複雑化を回避する一方で、可視光と赤外光をそれぞれ異なる所定の領域に照射することを可能にした車両用ランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、光源部と、この光源部から出射した光を走査する走査部を備え、走査された光を車両外部に向けて照射する車両用ランプであって、前記光源部は、可視光を出射する複数個の可視光源と、赤外光を出射する複数個の赤外光源を備える。可視光源と赤外光源は走査部での走査方向に並んで配列され、隣接配置された複数個の可視光源による各照射領域は走査方向に連続され、隣接配置された複数個の赤外光源の各照射領域は走査方向に連続される。
【0009】
本発明において、赤外光源は可視光源の間に配置されて光源部の両端の光源は可視光源であり、複数個の可視光源の照射領域を合成した領域は、複数個の赤外光源の照射領域を合成した領域よりも、走査方向の両側に拡大される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、可視光と赤外光を走査する走査部を共用する一方で、それぞれを異なる所定の領域に照射することを可能にした車両用ランプを提供することができ、ランプ構造の簡略化や低コスト化が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明を適用した自動車のヘッドランプの概略水平断面図。
【
図2】ロービーム配光とハイビーム配光の配光特性図。
【
図3】本発明にかかるランプユニットの概略斜視図と光源部の正面図。
【
図4】自動車の前方領域の配光パターンを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明を適用した自動車のヘッドランプHLの概略水平断面図である。このヘッドランプHLはランプボディ11と、透光性の前面カバー12で構成されたランプハウジング1を備え、このランプハウジング1に内装されたロービームランプユニット2とハイビームランプユニット3で構成されている。
【0013】
前記ロービームランプユニット2は従来から提案されているリフレクタ型ランプユニットあるいはプロジェクタ型ランプユニットで構成されているが、ここではプロジェクタ型ランプユニットで構成されている。このロービームランプユニット2は、点灯されたときには、
図2(a)の配光特性図に示すように、自動車の前方領域の水平線Hにほぼ沿って延びるカットオフラインCOLを有し、このカットオフラインCOLよりも下側の領域を照明するロービーム配光パターンPLでの照明を行うようになっている。カットオフラインCOLは、鉛直線Vの右側(対向車線側)と左側(自車線側)とで高さが相違する。
【0014】
前記ハイビームランプユニット3は、ここではADB(Adaptive Driving Beam)配光制御のランプユニットとして構成されている。このハイビームランプユニット3の構造については後述するが、
図2(b)の配光特性図に示すように、水平方向に並んだ複数の照射領域P1~P6で構成されており、ハイビームランプとして点灯されたときには、全ての照射領域P1~P6が水平方向に連続するようにして合成されたハイビーム配光パターンPHでの照明を行う。このハイビーム配光パターンPHは、前記カットオフラインCOLを含むロービーム配光パターンPLの上側の領域を照明する。
【0015】
また、詳細は後述するが、ハイビームランプユニット3がADB制御されるときには、照射領域P1~P6のいずれかを選択的に点灯、あるいは消灯(減光を含む)する。これにより、対向車や先行車等の他車が存在する領域を非照射領域として当該他車に対する眩惑を防止し、同時にそれ以外の領域についてはカットオフラインよりも上側の領域を照明することにより自動車の前方領域の視認性を高めたADB配光制御が実現される。
【0016】
本発明は、前記ハイビームランプユニット3に適用されており、このハイビームランプユニット3は、
図1に示すように、光源部4と、走査部5と、投影部6を備えており、点灯制御装置8により点灯が制御されるようになっている。
【0017】
前記光源部4は前記ランプハウジング1に内装支持されたヒートシンク7の一部に搭載されている。前記ヒートシンク7は、図示を省略する複数の放熱フィンを備えており、前記光源部4が発光したときに発生する熱をヒートシンク7から外部に放熱させるようになっている。
【0018】
図3(a)はハイビームランプユニット3の概略構成を示す模式的斜視図であり、前記光源部4は前記ヒートシンク7に支持される回路基板40を有しており、この回路基板40に、
図3(b)のように、5個の光源が搭載されている。前記各光源は発光素子で構成されており、ここではLED(発光ダイオード)41~45が水平方向に一列に配列された状態で搭載されている。
【0019】
これら5個のLED41~45は、3個の可視(VI:visible)LED41,43,45と、2個の赤外(IR:Infrared)LED42,44で構成されている。可視LED41,43,45は発光したときに白色光を出射し、赤外LED42,44は発光したときに赤外光を出射する。そして、これら可視LED41,43,45と赤外LED42,44は交互に配列されており、中央と両端に可視LED41,43,45が配置され、中央の可視LED43を挟んだ両側に赤外LED42,44が配置されている。
【0020】
前記各LED41~45は、
図3(a)の一部に一つのLED41を代表して示すように、給電されたときに発光するLEDチップ411と、このLEDチップ411の発光面に対向して配置された集光レンズ412が一体化されており、LEDチップ411から出射される光は集光レンズ412により所要の径寸法の光束(光ビーム)として前記走査部5に向けて出射される。なお、前記各LEDはディスクリートLEDを用いたものであってもよい。また、発光素子はLD(レーザダイオード)であってもよい。
【0021】
前記走査部5は前記光源部4に対して水平方向に対向する位置に配設されており、前記ヒートシンク7に支持されたモーター51と、このモーター51により回転駆動される回転ブレード52とを有する回転リフレクタとして構成されている。回転ブレード52は表面が光反射面として構成された複数枚、ここでは2枚の半円形をした光反射ブレードで構成されており、これらの回転ブレード52がモーター51の回転軸に対して円周方向に並んで取り付けられている。
【0022】
また、前記2枚の回転ブレード52はモーター51の回転中心に対して点対称の形状であり、その光反射面の径方向の傾斜角度、すなわち前記光源部4から出射されてくる光の出射方向に対する水平方向の傾斜角度が、円周方向に沿って連続的に変化する捩じり面として形成されている。また、各回転ブレード52の光反射面は、水平方向については、前記光源部4に対して45度を基準とする角度に向けられている。これにより、回転ブレード52は光源部4から出射されてきた光を水平方向にほぼ直角に曲げて反射するとともに、モーター51を駆動したときに回転ブレード52は回転駆動され、この回転に伴って当該光路を水平方向に走査しながら投影部6に向けて投射する。
【0023】
前記投影部6は、所要の光学特性を有する投影レンズ61を備えており、この投影レンズ61はレンズホルダ62及び前記ヒートシンク7の一部で構成されているステム63により前記ヒートシンク7に支持されている。この投影レンズ61は、前記走査部5から反射されてきた光を自動車の前方領域に向けて投影するが、ここでは5個のLED41~45の光束L1~L5をそれぞれ上下方向、すなわち鉛直方向に拡大するように屈折し、鉛直方向に細長い形状の光束に整形する。したがって、この鉛直方向に縦長とされた5個の光束L1~L5が前記走査部5によりそれぞれ水平方向に走査されることになる。
【0024】
さらに、この実施形態では、前記ヘッドランプHLは対象物検出装置9を備えている。この対象物検出装置9は、赤外光に受光感度を有する撮像素子91と画像解析部92を備えている。この撮像素子91は、自動車の前方領域における赤外光、特に前記赤外LED42,44から当該前方領域に向けて照射された赤外光で照明された対象物を撮像する。また、前記画像解析部92は、前記撮像素子91で撮像して得られる撮像信号に基づいて所要の画像解析を行い、当該前方領域に存在する対象物、すなわち先行車や対向車を検出し、その検出信号を出力する。ここで、撮像素子91は対象物から反射された赤外光を受光するラインセンサーで構成されてもよい。
【0025】
前記点灯制御装置8は、前記対象物検出装置9と前記光源部4に接続されており、前記対象物検出装置9において検出された対象物の検出信号が入力されると、この検出信号に基づいて前記光源部4の各LED41~45の点灯を制御する。この検出信号には、検出した対象物の位置情報、すなわち自車両の前方領域のいずれの方向に先行車や対向車が存在しているかの情報が含まれる。また、各LED41~45の点灯の制御はLEDの発光と消光を制御するが、発光したときの発光光度を制御する機能を含んでいてもよい。さらに、この点灯制御装置8はロービームランプユニット2の光源部(図示せず)を制御する機能を備えていてもよく、この実施形態ではそのように構成している。
【0026】
以上の構成のヘッドランプHLにおいては、乗員(運転者)が点灯スイッチ(図示せず)を「ロービーム」に操作すると、これを受けた点灯制御装置8での制御によりロービームランプユニット2が点灯される。このときには、
図2(a)にも示しているが、
図4の前方領域のうち左上がり破線領域のように、自動車の前方領域の走行領域A1と、その周辺領域A2を含む水平線Hにほぼ沿ったカットオフラインCOLの下側領域を照明するロービーム配光パターンPLでの照明が実行される。
【0027】
また、乗員が点灯スイッチを「ハイビーム」に操作すると、点灯制御装置8はロービームランプユニット2点灯に加えて、ハイビームランプユニット3を点灯状態に制御する。この制御では、光源部4の可視LED41,43,45のみを発光すると同時に、走査部5、すなわち回転リフレクタが駆動され、回転ブレード52が一方向に回転駆動される。これにより、3個の可視LED41,43,45から出射された白色の光束は回転ブレード52に投射され、回転駆動される回転ブレード52によって反射されて投影レンズ61により自動車の前方領域に照射される。
【0028】
このとき、
図5に示すように、3個の可視LED41,43,45から出射される光束L1,L3,L5は、回転ブレード52での回転によりそれぞれ水平方向の所要領域にわたって走査されながら前方領域に照射される。これにより、
図2(b)にも示したように、各可視LED41,43,45の光束L1,L3,L5は、それぞれ水平方向に隣り合った照射領域P1とP2,P3とP4,P5とP6は、それぞれ水平方向に連続された照射領域とされる。
【0029】
このような3個の可視LED41,43,45の照射領域P1~P6を合成すると、
図4に示したロービーム配光パターンPLの上側領域、すなわちカットオフラインCOLの上側領域を照明する右上がり破線のハイビーム配光パターンPHが得られる。したがって、ロービーム配光パターンPLとハイビーム配光パターンPHとが合成されて前方領域の照明が実行される。この「ハイビーム」での照射領域は、自動車の走行領域A1とその周辺領域A2を含めた広い領域である。
【0030】
一方、乗員が点灯スイッチを「ADB制御」に操作すると、点灯制御装置8はロービームランプユニット2を点灯状態に制御するとともに、ハイビームランプユニット3の光源部4の赤外LED42,44を発光する。同時に、走査部5が駆動されて回転ブレード52が回転駆動されるため、2個の赤外LED42,44から出射された赤外光の光束L2,L4は自動車の前方領域に水平方向に走査されながら照射される。
【0031】
各赤外LED42,44から出射される光束L2,L4は、それぞれ水平方向の所要範囲にわたって走査されながら前方領域に照射されるので、
図6に示すように、各赤外LED42,44の光束L2,L4は、それぞれ水平方向に隣り合った照射領域P2とP3,P4とP5が水平方向に連続した状態で照射される。2個の赤外LED42,44は3個の可視LED41,43,45よりも水平方向の中央側に配置されているので、赤外光の照射領域P2~P5は可視光の照射領域P1~P6よりも狭く、ほぼ自動車の走行領域A1に照射される。
【0032】
したがって、
図7に示すように、赤外光が照射される走行領域A1に対象物、ここでは対向車CARが存在しているときには、照射された赤外光は対向車CARにより反射され、この反射光は対象物検出装置9の撮像素子91において撮像される。そして、撮像された画像に基づいて画像解析部92において対向車CARが検出されると、検出信号が点灯制御装置8に出力される。点灯制御装置8は、この検出信号を受けて光源部4の可視LED41,43,45を点灯制御し、対向車CARが存在している領域には可視LEDの光束を照射しないように制御する。
【0033】
ここで、可視LED41,43,45が経時的に連続して発光されているときには、可視LED41,43,45からの光束は回転ブレード52の回転に伴って水平方向に繰り返し走査されるが、この走査は高速であるので、人間の眼で見れば水平方向に走査された領域は照射領域となる。この走査に同期して可視LED41,43,45の発光光度(光度零の消光を含む)をタイミング制御することにより、走査する水平方向の光度分布を変化させることができる。したがって、各照射領域P1~P6について、所望の領域のみを照明し、他の領域の光度を低下ないし消灯することができる。
【0034】
この
図7の例では、可視LED41,43から出射される可視光の光束L1,L3は回転ブレード52により走査されて照射領域P1とP2,P3とP4に照射されるが、可視LED45については、対向車CARが存在する照射領域P5に可視光が走査されるタイミング時にその発光が停止され、消光される。そのため、照射領域P6には照射が行われるが、照射領域P5については一部、すなわち対向車CARが存在する領域には照射が行われない。
【0035】
これにより、ADB制御時には、3個の可視LED41,43,45の照射領域を合成した照射領域P1~P6は、対向車CARが存在する照射領域P5の一部領域は可視光が照射されず、それ以外の照射領域P1~P4,P6は可視光が照射され、走行領域A1とその周辺領域A2を含めた広い領域が照明され、自動車の前方領域の視認性を高めたADB配光制御が実現される。
【0036】
以上のように、可視LED41,43,45と赤外LED42,44を複合した光源部4を構成することにより、1つの走査部5で可視光と赤外光の両方を走査することができ、走査部を構成する部品点数、さらにはランプを構成する部品点数の増大を抑制し、ランプ構造の簡易化と小型化ができ、かつ低コスト化が実現できる。
【0037】
その一方で、赤外LED42,44は、光源部4において可視LED41,43,45よりも水平方向の中央側に配列されており、点灯されたときの照射領域P2~P4を合成した領域は可視LEDの照射領域P1~P6合成した領域よりも左右領域が狭い領域とされている。したがって、赤外光を自動車の走行領域A1に対して限定的に照射し、この走行領域A1に存在する対向車や先行車等の対象物を検出することができる。すなわち、自動車の走行に直接関係しない周辺領域A2に存在する不要な対象物を検出することはなく、不要な対象物を検出することによってADB制御に無用な影響を与えることを防止することができる。
【0038】
実施形態では、光源部の構成として、3個の可視LEDと2個の赤外LEDを水平方向に1列で配列した構成であるが、各LEDの個数は、この数に限定されるものではなく、適宜の個数に設定できる。すなわち、可視LEDは複数個で構成され、赤外LEDは可視LEDよりも少ない1個以上の個数であればよい。
【0039】
また、各LEDは鉛直方向に複数個単位で配列されていてもよい。例えば、
図8(a)の光源部は、水平方向に5列の可視LED41,43,45と赤外LED42,44がそれぞれ鉛直方向に2個ずつ配列されている。この場合においても、可視LED41,43,45と赤外LED42,44は交互に配列され、両端には可視LED41,45が配置されている。このように、鉛直方向に複数個のLEDを配列することにより、投影する光束の鉛直方向の照射領域(照射高さ範囲)を拡大することができ、投影部6の投影レンズ61の設計、製造が容易になる。
【0040】
また、可視LEDと赤外LEDは、必ずしも交互に、すなわち1個ずつ配列する構成でなくてもよい。すなわち、可視LEDで照明する領域が水平方向に連続した照射領域となり、また赤外LEDを照射する領域も水平方向に連続した照射領域となり、その一方で赤外LEDを照射する領域が可視LEDで照明する領域よりも水平方向の両側が狭くされた領域となるような配列であれば、複数個ずつ交互に配列する構成、あるいは不規則な個数ずつ配列する構成であってもよい。例えば、
図8(b)は、7個のLEDを配列しているが、両端にはそれぞれ2個の可視LED41a,41b,45a,45bが隣接配列されている。これにより、周辺領域A2をより広い範囲で照明することができる。
【0041】
本発明の光源部を構成する複数の可視光源と赤外光源は、実施形態のLEDに限られるものではなく、LD、有機LED等の半導体発光素子であってもよく、あるいは電球、放電灯等の光源であってもよい。
【0042】
本発明にかかる走査部は、実施形態に記載の回転リフレクタ構造に限定されるものではない。例えば、特許文献1においても採用されているが、
図9に概略構成を示すように、電磁力により光反射用のミラー11を鉛直軸12を中心として水平方向に揺動させることにより、ミラー11の反射面の傾きを水平方向に変化させる1軸型ミラー10で構成されてもよい。
【0043】
また、図示は省略するが、走査部は、光源部から出射された光を水平方向及び鉛直方向にそれぞれ走査して所定の領域の照射を行うようにしてもよい。この場合には、走査部は、互いに直交する方向に向けられた2つの軸回りに回動ないし傾動させて走査を行う2軸型走査ミラーで構成されてもよい。
【0044】
実施形態では、ヘッドランプHLに対象物検出装置9を一体的に構成しているが、対象物検出装置はランプとは別体に構成されていてもよい。すなわち、ランプに設けられた赤外光源により照射される赤外光を利用して、ランプとは別途に設けられた対象物検出装置において対象物を検出するようにしてもよい。
【0045】
また、実施形態では、対象物検出装置での対象物の検出に基づいてADB制御を行う例を示したが、赤外光を利用して道路形状や路面上の車線ライン等を対象物として検出してもよく、検出した対象物に基づいて自動車の自動運転を行うように構成してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 ランプハウジング
2 ロービームランプユニット
3 ハイビームランプユニット
4 光源部
5 走査部
6 投影部
7 ヒートシンク
8 点灯制御装置
9 対象物検出装置
10 1軸型ミラー
41,43,45 可視LED(可視光源)
42,44 赤外LED(赤外光源)
51 モーター
52 回転ブレード
61 投影レンズ
PL ロービーム配光パターン
PH ハイビーム配光パターン
L1~L5 光束(光ビーム)
P1~P6 照射領域
A1 走行領域
A2 周辺領域