(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】連結装置、搬送装置、および搬送システム
(51)【国際特許分類】
B60D 1/36 20060101AFI20220913BHJP
B60D 1/02 20060101ALI20220913BHJP
B61G 1/32 20060101ALI20220913BHJP
B61B 13/00 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
B60D1/36
B60D1/02 Z
B61G1/32
B61B13/00 S
(21)【出願番号】P 2018113071
(22)【出願日】2018-06-13
【審査請求日】2021-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】辻本 展敏
(72)【発明者】
【氏名】松浦 史裕
【審査官】藤井 浩介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05009446(US,A)
【文献】特開2016-150691(JP,A)
【文献】実開昭56-110058(JP,U)
【文献】特開2011-102076(JP,A)
【文献】特開平04-135905(JP,A)
【文献】特開平06-135321(JP,A)
【文献】特開2018-024415(JP,A)
【文献】特開昭59-053212(JP,A)
【文献】特開昭62-137210(JP,A)
【文献】特開2017-149388(JP,A)
【文献】国際公開第2018/012285(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60D 1/02;1/36
B61B 13/00
B61G 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送装置に設けられて、この搬送装置と被搬送物とを連結する連結装置であって、
連結ピン
と、前記連結ピンを水平面内の少なくとも一つの線方向に移動自由に支持する支持機構とを備える連結装置本体を有し、
前記支持機構は、
前記連結ピンが上方に向けて突設された支持板と、
前記支持板の下方に重なるように配設された受け板、および前記受け板に固定され前記支持板に接続された回動軸を有して、前記回動軸を中心に前記支持板を回動自由に支持する回動支持部とを備えており、
前記回動軸は、前記水平面内で、前記連結ピンが立設された位置から離間するように設けられ、前記連結ピンは前記回動軸を中心として回動可能とされたことを特徴とする連結装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の連結装置において、
前記連結装置本体は、前記連結ピンの移動を、前記線方向の一定範囲内に規制する規制部材を備えることを特徴とする連結装置。
【請求項3】
請求項2に記載の連結装置において、
前記規制部材は、前記受け板に立設されて前記支持板を貫通する規制ピンと、前記支持板に設けられた凹溝とを含み、
前記規制ピンは前記凹溝内に挿通され、前記凹溝に沿って摺動可能とされたことを特徴とする連結装置。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一つの請求項に記載の連結装置において、
前記連結装置本体は、前記連結ピンを上下動させる昇降機構を備えることを特徴とする連結装置。
【請求項5】
請求項4に記載の連結装置において、
前記昇降機構は、前記受け板の下方に配設された昇降部材と、前記昇降部材を介して前記受け板を上下に移動させるシリンダ装置とを備え、前記連結ピンおよび前記支持機構を上下動させることを特徴とする連結装置。
【請求項6】
請求項
4または5に記載の連結装置において、
前記昇降機構は、前記搬送装置の本体部に固定され、
前記連結ピンは前記昇降機構に対して、前記水平面内の少なくとも一つの線方向に移動自由に設けられていることを特徴とする連結装置。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一つの請求項に記載の連結装置において、
前記連結装置本体は、前記連結ピンが移動自由な可動状態と、前記連結ピンの移動を制止した固定状態とを切り換えるロック機構を備えることを特徴とする連結装置。
【請求項8】
請求項7に記載の連結装置において、
前記ロック機構として、前記支持板に対して進退可能な係合部材と、前記支持板の外縁部に設けられた被係合部とを備え、
前記係合部材が前進位置にあるとき、前記係合部材は前記被係合部に係合して前記固定状態となり、
前記係合部材が後退位置にあるとき、前記係合部材は前記被係合部から離脱して前記可動状態となることを特徴とする連結装置。
【請求項9】
請求項
7または8に記載の連結装置において、
前記ロック機構は、前記搬送装置と前記被搬送物との連結が行われる際に前記連結ピンを前記可動状態とし、前記搬送装置と前記被搬送物との連結が行われた後、前記連結ピンを前記固定状態に保持することを特徴とする連結装置。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一つの請求項に記載の連結装置において、
前記搬送装置は、床面と前記被搬送物の底面との間に潜り込んだ状態で前進し、前記底面に設けられた被接続部に前記連結ピンが連結することにより、前記被搬送物と前記搬送装置とが連結され、
前記連結ピンは、前記前進の方向に交差する一つの線方向に移動自由に設けられていることを特徴とする連結装置。
【請求項11】
請求項10に記載の連結装置において、
前記被搬送物の底面には、前記連結ピンを前記被接続部に導くガイド機構が備えられ、
前記連結ピンは連結が行われる際に、前記ガイド機構からの作用力を受けて自由移動することにより前記被接続部に導かれることを特徴とする連結装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一つの請求項に記載の連結装置を備えた搬送装置。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一つの請求項に記載の連結装置を備えた搬送装置により被搬送物を搬送する搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置と被搬送物とを連結する連結装置、ならびにこの連結装置を備えた搬送装置および搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、予め設定されたルートに沿って自走可能な無人牽引車に、ワークを積載した台車を組み合わせた無人牽引システムが知られている。無人牽引車は、駆動用のモータやバッテリ等を備えているほか、床面に敷設された磁気テープ等のガイドラインを検知するセンサを備えている。このような無人牽引車に台車が連結されることで、台車は所定のルートに沿って移動するものとなる。
【0003】
例えば、特許文献1には、自在車輪を備えた台車と、この台車の下側に潜り込んで連結される牽引車とを組み合わせた自動搬送車について開示されている。牽引車は、台車を連結する連結ピンと、連結ピンを連結方向へ付勢する弦巻バネと、連結ピンの突出を規制する突出規制機構とを有している。台車の底面には、連結ピンを収容する連結孔が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のような牽引車の構成では、床面の起伏などによって牽引車が傾いて連結ピンが適正位置に到達せず、連結孔に挿入されなかったり、斜めに挿入されたりして、良好に連結できないおそれがあった。特許文献1では、制御ユニットの制御によって連結位置での連結ピンの有無を検出し、連結ピンを検出できない場合に台車に振動を加えることが開示されている。しかしながら、通常、台車は、搬送する対象物が積載されていることから相当の重量を有するものであり、牽引車も同様に重量を有する。そのため、多少の振動を加えたとしても、重量を有する搬送台車と牽引車との間では、連結ピンの移動に抵抗力が作用し、連結ピンが容易には移動し得ず、やはり連結孔に納まりにくいものと考えられる。
【0006】
本発明は、前記のような従来の問題点にかんがみてなされたものであり、その目的とするところは、連結のための連結ピンを、被搬送物との連結位置へとスムーズに導き、確実な連結を可能にする連結装置を提供するとともに、この連結装置を備えて被搬送物に連結される搬送装置および前記連結装置を用いた搬送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明では、搬送装置に設けられて、この搬送装置と被搬送物とを連結する連結装置として、連結ピンを備える連結装置本体を有し、前記連結ピンは、前記連結装置本体から上方に向けて突設され、前記連結装置本体に対して、水平面内の少なくとも一つの線方向に移動自由に設けられることを特徴としている。
【0008】
この特定事項により、前記連結ピンは水平方向の少なくとも一つの線方向に移動自由であるので、重量を有する被搬送物と搬送装置との連結にあっても、前記連結ピンを、連結が行われる位置へと移動させることが可能となり、被搬送物と搬送装置とをスムーズに連結することを可能にする。
【0009】
ここで、一つの線方向に移動自由であるとは、水平面内に延びる一つの直線方向または一つの曲線方向に沿って自由に移動し得ることをいい、一方向の移動だけでなく当該直線または曲線に沿った往復方向の移動を含めた自由な移動をさすものである。
【0010】
前記連結装置における、より具体的な構成として次のものが挙げられる。すなわち、前記構成の連結装置において、前記連結装置本体は、前記連結ピンを前記水平面内の一つの線方向に移動自由に支持する支持機構を備えることが好ましい。このような支持機構によって、前記連結ピンを、前記水平面内の一つの線方向に移動自由なものとすることができる。
【0011】
より具体的には、前記支持機構は、前記連結ピンが立設された支持板と、回動軸を有して該回動軸を中心として前記水平面内で前記支持板を回動自由に支持する回動支持部とを備え、前記回動軸は、前記水平面内で、前記連結ピンが立設された位置から離間して備えられ、前記連結ピンは前記回動軸を中心として回動可能とされることが好ましい。これにより、前記連結ピンを、前記水平面内の一つの線方向に移動自由に設けることができる。
【0012】
また、前記支持機構として、前記連結ピンを前記水平面内でスライド自由に支持するスライド支持部を備えた構成とされてもよい。これによっても、前記連結ピンを、前記水平面内の一つの線方向に移動自由に設けることができる。
【0013】
また、前記構成の連結装置において、前記連結装置本体は、前記連結ピンの移動を、前記線方向の一定範囲内に規制する規制部材を備えることが好ましい。これにより、前記連結ピンを、前記一つの線方向の一定範囲内で移動自由に支持することが可能とされる。
【0014】
また、前記構成の連結装置において、前記連結装置本体は、前記連結ピンを上下動させる昇降機構を備えることが好ましい。これにより、前記搬送装置と前記被搬送物との連結が行われる際に、前記連結ピンを上下方向に動かして、連結に要する高さまで突出させることが可能となる。
【0015】
また、前記昇降機構は、前記搬送装置の本体部に固定され、前記連結ピンは前記昇降機構に対して、前記水平面内の少なくとも一つの線方向に移動自由に設けられることが好ましい。これにより、前記連結ピンは、前記本体部に固定された昇降機構に対して移動自由とされて、前記本体部に対して上下方向に離間したり近接したりすることが可能とされる。
【0016】
また、前記構成の連結装置において、前記連結装置本体は、前記連結ピンが移動自由な可動状態と、前記連結ピンの移動を制止した固定状態とを切り換えるロック機構を備えることが好ましい。これにより、前記搬送装置の状況に応じて、前記連結ピンを固定状態としたり可動状態としたりすることができる。
【0017】
さらに、前記ロック機構は、前記搬送装置と前記被搬送物との連結が行われる際に前記連結ピンを前記可動状態とし、前記搬送装置と前記被搬送物との連結が行われた後、前記連結ピンを前記固定状態に保持する構成であることが好ましい。これにより、前記搬送装置と前記被搬送物との連結時には、前記連結ピンが前記水平面内の少なくとも一つの線方向に移動自由とされるとともに、前記連結後には前記連結ピンの移動を制止することが可能となる。
【0018】
また、前記構成の連結装置において、前記搬送装置は、床面と前記被搬送物の底面との間に潜り込んだ状態で前進し、前記底面に設けられた被接続部に前記連結ピンが連結することにより前記被搬送物と前記搬送装置とが連結され、前記連結ピンは、前記前進の方向に交差する一つの線方向に移動自由に設けられていることが好ましい。これにより、前記搬送装置と前記被搬送物とを前記連結装置を介してスムーズに連結することが可能となる。
【0019】
また、前記連結装置において、前記被搬送物の底面には、前記連結ピンを前記被接続部に導くガイド機構が備えられ、前記連結ピンは連結が行われる際に、前記ガイド機構からの作用力を受けて自由移動することにより前記被接続部に導かれる構成であることが好ましい。これにより、前記連結ピンを前記被接続部へと誘導することができ、精度よくスムーズに連結することが可能となる。
【0020】
前記の各解決手段に係る連結装置を備えた搬送装置も本発明の技術的思想の範疇である。また、前記の各解決手段に係る連結装置を備えた搬送装置により被搬送物を搬送する搬送システムも本発明の技術的思想の範疇である。これらによって、被搬送物は前記搬送装置に精度よく連結されて、目的の位置まで確実に搬送されることが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、被搬送物と搬送装置との連結のための連結ピンを、連結が行われる位置へとスムーズに導くことが可能となり、連結ピンを介して被搬送物と搬送装置とを確実に連結することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態1に係る搬送装置および搬送システムを示す斜視図である。
【
図2】前記搬送装置および被搬送物を示す側面図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係る連結装置を示す側面図である。
【
図7】本発明の実施形態2に係る連結装置および搬送装置におけるガイド機構を示す説明図である。
【
図8】前記ガイド機構を前記搬送装置の進行方向の後方から見て示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る連結装置、搬送装置、および搬送システムについて、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
(実施形態1)
図1~
図6は、本発明の実施形態1に係る連結装置1、ならびに連結装置1を備えた搬送装置2および搬送システムに関する図面である。これらの図面のうち、
図1は、連結装置1を適用した搬送装置2および搬送システムを示す斜視図であり、
図2は搬送装置2および被搬送物7を示す側面図である。
【0025】
図1に示すように、実施形態1に係る搬送システムは、床面を走行する無人牽引車である搬送装置2と、搬送装置2により牽引されて走行する台車などの被搬送物7とを含んで構成されている。被搬送物7は、例えば、倉庫等で荷物の搬出入に用いられる台車であり、4輪の自在輪71を備えている。被搬送物7としては、図示するような台車であるに限られず、その形状や自在輪の数など、どのような構成とされてもよい。
【0026】
搬送装置2は、低床設計とされた本体部21を備えており、被搬送物7を連結して牽引する際に、床面と被搬送物7の底面との間に本体部21を潜り込ませられる構造を有する。例えば、
図1および
図2に示すように、搬送装置2は、被搬送物7の対向する自在輪71同士の間に進入しうる低背の略直方体形状の本体部21を有している。本体部21には、床面を転動する左右一対の駆動輪22や図示しない従動輪等が備えられている。
【0027】
左右一対の駆動輪22は、互いに平行となる向きに配置されており、これらの駆動輪22が平行に配置された方向が搬送装置2の前後方向である。そして、搬送装置2は、左右一対の駆動輪22の回転数が同一である場合には前後に移動し、左右一対の駆動輪22の回転数が異なる場合には、回転数の差に応じて左右に旋回移動する。
【0028】
また、搬送装置2の本体部21は、被搬送物7の下方に潜り込んだ状態で、被搬送物7を本体部21に連結するための連結装置1を備えている。連結装置1は、搬送装置2に組み込まれる連結装置本体11を備えており、本体部21の上面側に配設されている。
【0029】
図1に示す形態では、連結装置1は、搬送装置2の本体部21の上面側に部分的に露出するように配設されている。この搬送装置2には2つの連結装置1が備えられている。連結装置1は、本体部21の幅方向の両端部に沿ってそれぞれ配設されている。
【0030】
・連結装置本体
図3は、搬送装置2に設けられる連結装置1を示す側面図であり、
図4は連結装置1の斜視図である。連結装置1は、連結ピン12を備える連結装置本体11を有する。連結装置本体11には、この連結ピン12と、連結ピン12を支持する支持機構3とが設けられている。
【0031】
図3に示すように、連結ピン12は、支持機構3に下方から支持されており、連結装置本体11の上方に向けて突設されている。支持機構3としては、支持板31と、支持板31を回動自由に支持する回動支持部32とが備えられている。
【0032】
図4に示すように、連結ピン12は支持板31の上面に立設され、支持板31に一体に固定されている。支持板31の形状は特に限定されないが、例示の形態では、略長方形状の板状体とされ、その長手方向が搬送装置2の駆動輪22の回転軸に対して直交する方向、すなわち搬送装置2の前後方向に配設されている。
【0033】
支持板31は、受け板33と回動軸34とを含む回動支持部32に支持されている。受け板33は、支持板31の下方に配設されて、連結装置本体11に支持されている。支持板31と同様、受け板33の形状も特に限定されないが、例示の形態では略長方形状の板状体とされており、支持板31と略同形状であって、支持板31に重なるように配設されている。支持板31は、この受け板33に対して、回動軸34を介して支持されている。
【0034】
図4に示すように、連結ピン12は、支持板31における中心部よりも、支持板31の長手方向の一方の端部寄りに配設されている。支持板31の他方の端部寄りには、回動軸34が設けられている。これにより、支持板31(および受け板33)に沿う水平面内で、連結ピン12の位置から離間した位置に回動軸34は配置されている。回動軸34と連結ピン12との各軸心は、距離Rだけ離れて設けられている。
【0035】
回動軸34の下端部は受け板33に固定される一方、回動軸34の上端部は支持板31にベアリング等を介して取り付けられている。支持板31は、回動軸34を中心に受け板33上を回動可能に備えられている。連結ピン12は、このような回動軸34を含む支持機構3によって、前記水平面内で回動自由に支持されている。
【0036】
支持板31は、回動軸34を中心として回動するので、連結ピン12も支持板31とともに、前記水平面内の一つの線方向に移動自由に支持されたものとなる。この場合には、連結ピン12は、回動軸34を中心とした半径Rの円弧方向に往復移動が可能とされている。連結ピン12の水平面内の自由移動方向は、搬送装置2の前後方向に対して垂直な方向(左右方向)と略同一である。
【0037】
・規制部材
連結装置本体11には、さらに、連結ピン12の移動を、前記水平面内の一つの線方向の一定範囲内に規制する規制部材4が備えられている。例示の形態では、規制部材4として、
図4に示すように、支持板31を貫通する規制ピン41と、規制ピン41を円弧方向に案内する凹溝42とが設けられている。
【0038】
規制ピン41は、受け板33の上面に立設されている。また、凹溝42は、支持板31の長手方向の一方の端部寄りに配設され、支持板31に貫通する略円弧形状の長孔として穿設されている。規制ピン41は凹溝42内に挿通され、凹溝42に沿って摺動可能とされている。
【0039】
図5は、連結装置1において連結ピン12が移動自由とされた状態を示す側面図であり、
図6は支持板31が回動する様子を示す斜視図である。具体的には、規制部材4としての規制ピン41は、頭部および雄ねじ部を有して形成されている。これに対し、凹溝42は、頭部を受ける段部が溝内に設けられている。規制ピン41は、凹溝42を介して受け板33にねじ込まれることにより、受け板33に接合され立設されている。
【0040】
図4および
図6に示すように、支持板31が回動軸34を中心として回動するとき、受け板33に立設された規制ピン41は、支持板31の回動範囲を凹溝42の溝内の範囲に規制する。支持板31に立設された連結ピン12は、回動軸34を中心とした円弧方向に移動可能であるとともに、その移動が、かかる規制部材4により凹溝42の範囲内となるように規制されている。
【0041】
・ロック機構
支持板31に立設された連結ピン12の移動は、連結装置本体11に備えられたロック機構5によって、固定状態と可動状態とに切り換えられる。すなわち、ロック機構5は、連結ピン12が凹溝42の範囲内で移動自由な可動状態と、連結ピン12の自由移動を制止した固定状態とを切り換え可能に構成されている。
【0042】
図3に示されるように、連結装置1には、ロック機構5として、支持板31に対し進退可能な係合部材51と、係合部材51が係合される被係合部52とを備えている。被係合部52は支持板31に設けられている。
【0043】
係合部材51は、アクチュエータ等の適宜の駆動手段を介して、支持板31に対して進退するように設けられている。一例としての係合部材51には、駆動手段として、コイルの励磁により進退する進退ロッド53を備えたソレノイド54が連結されている。進退ロッド53は、ソレノイド54の通電により進退駆動されて、係合部材51を前進位置と後退位置とに移動させる。
【0044】
図3は、係合部材51が前進位置にあるときを示しており、係合部材51は、支持板31に設けられた被係合部52に係合している。支持板31は係合部材51に移動を制止されて受け板33の上方に固定されている(固定状態)。
【0045】
図4および
図5は、係合部材51が後退位置にあるときを示している。ソレノイド54は通電されて進退ロッド53が後退し、係合部材51は被係合部52から離脱している。支持板31は、回動軸34を中心として移動自由な状態とされている(可動状態)。ソレノイド54の通電が停止されると、進退ロッド53は前進し、係合部材51は再び被係合部52に係合するものとなる。
【0046】
ロック機構5は、支持板31に対してどのように構成されたものであってもよく、配置形態も例示したものに限定されない。図示する形態では、被係合部52が支持板31における回動軸34の反対側の端部に設けられている。また、被係合部52と回動軸34とは、支持板31における同一軸線上に設けられ、その延長軸線上に係合部材51および進退ロッド53が配設されている。被係合部52は、前記軸線方向に沿った切欠溝とされており、係合部材51は被係合部52に嵌入される突部とされて係合容易な構成とされている。
【0047】
また、ロック機構5には、係合部材51とソレノイド54との間に縦壁55が設けられており、縦壁55と係合部材51との間に圧縮状態の戻りばね56が配設されている。戻りばね56は、係合部材51を前進位置と後退位置とに移動させる際の緩衝作用をなす。
【0048】
このようにロック機構5を駆動することで、係合部材51は被係合部52に対して進退し、支持板31を回動可能な状態としたり回動不能な状態としたりすることができる。
【0049】
・昇降機構
前記したように、搬送装置2は被搬送物7の下方に潜り込んだ状態で連結装置1により被搬送物7に連結される。このため、連結装置本体11には、被搬送物7との連結が行われるときに、連結ピン12を上昇させる昇降機構6が収容されている。
【0050】
昇降機構6は、連結ピン12を備えた支持板31を、受け板33とともに上下動させる機能を有する。このような昇降機構6として、例えば
図3に示す形態では、受け板33の下方に配設された昇降部材61と、昇降部材61を介して受け板33を上下に移動させるシリンダ装置62とが備えられている。また、受け板33の底面には、連結ピン12を、受け板33および支持板31を介して突出方向(上昇方向)へ付勢するばね部材63が備えられていることが好ましい。
【0051】
昇降機構6は、搬送装置2の本体部21に固定されることで、連結ピン12を本体部21の上面から上方に向けて突出させ、連結ピン12を上下動させるものとなる。この昇降機構6自体は、連結装置本体11に固定されており、水平面内の一つの線方向に自由移動することはない。昇降機構6の上端部に受け板33が設けられており、さらに受け板33の上に、支持板31および当該支持板31の上面に配された連結ピン12が設けられている。前記のように、支持板31は、回動軸34を中心に受け板33上を回動可能に備えられており、連結ピン12も支持板31とともに、前記水平面内における回動軸34を中心とした半径Rの円弧方向に往復移動が可能とされている。これにより、連結ピン12は、昇降機構6に対して、前記水平面内の一つの線方向(例示の形態では円弧方向)に移動自由なものとなされている。
【0052】
本実施形態によれば、昇降機構6により昇降される上端部に対して連結ピン12が支持機構3により水平面内の一つの線方向に移動自由に支持された構造とされている。これにより、重量のある昇降機構6自体を連結装置11に固定しつつ、軽量である連結ピン12の部分のみを水平面内の一つの線方向に自由移動させることができる。したがって、連結装置1において、例えば昇降機構6ごと水平方向に自由移動させる構造に比べて、装置構造を簡略なものとすることができ、かつ水平面内での連結ピン12の自由移動性能を向上させることが可能となる。
【0053】
・連結動作
次に、連結装置1を用いた搬送装置2と被搬送物7との連結動作について説明する。
図1に示したように、連結装置1は、搬送装置2の本体部21に一体に備えられている。被搬送物7は、荷物等を積載した状態で所定位置に停止状態で待機している。また、
図3に示すように、被搬送物7の底面には、被接続部72として、連結ピン12が嵌入する連結孔73が設けられている。
【0054】
搬送装置2と被搬送物7との連結に際しては、搬送装置2が、床面と被搬送物7の底面との間に潜り込んだ状態で前進する。連結装置1における受け板33と支持板31は初期状態の下降位置にあり、支持板31には前進位置にある係合部材51が係合されて固定されている。連結ピン12は固定状態のまま、被搬送物7の底面に接触することなく移動される。
【0055】
搬送装置2が被搬送物7と床面との間を所定位置まで前進すると、昇降機構6が駆動され、受け板33が上昇する。これにより、
図3に示すように、支持板31および連結ピン12が上昇し、ばね部材63により付勢されて、被搬送物7の底面に押し当てられた状態となる。このとき、ロック機構5の係合部材51は前進位置にあって支持板31の被係合部52に係合しており、連結ピン12は固定状態にある。
【0056】
次いで、ロック機構5の切り換え操作がなされ、
図4に示すように、係合部材51が後退位置に移動される。これにより、係合部材51は支持板31の被係合部52から離脱する。連結ピン12は移動自由な可動状態となる。
【0057】
この状態で、連結装置1を備えた搬送装置2が前進することで、
図5に示すように、連結ピン12が被接続部72に接近する。連結ピン12が連結孔73の位置に到達すると、突出方向に付勢されている連結ピン12は連結孔73に嵌入する。これにより、被搬送物7と搬送装置2とが連結されて、ともに床面を走行するものとなされる。
【0058】
搬送装置2と被搬送物7との連結後、ロック機構5によって、係合部材51は前進位置へと移動されて被係合部52に係合し、連結ピン12は再び固定状態とされる。連結ピン12の自由移動が制止されるので、搬送装置2と被搬送物7との連結状態は良好なまま安定的に保持される。
【0059】
ここで、連結ピン12が連結孔73の位置まで前進する際に、床面の起伏などによって連結ピン12と連結孔73との間に僅かな位置ずれを生じる可能性があると想定する。前記のとおり、連結装置1においては、連結ピン12は被接続部72に前進するとき、ロック機構5によって固定状態が解除される。これにより、連結ピン12は、搬送装置2の前進方向に対して交差する円弧方向に移動自由な状態とされている(
図6参照)。
【0060】
図5に示すように、突出方向に付勢されて、被搬送物7の底面に押し当てられつつ前進する連結ピン12は、連結孔73との間に僅かな位置ずれを生じたとしても、連結ピン12の先端部が連結孔73に接触することで適正位置へと自然に移動するものとなる。したがって、このような場合にあっても、連結ピン12はスムーズに連結孔73に納まるものとなる。
【0061】
被搬送物7は、搬送装置2によって目的地まで搬送されると、搬送装置2から切り離される。連結装置1は、昇降機構6により連結ピン12を降下させ、連結孔73から離脱させる。これにより、搬送装置2と被搬送物7との連結を解除する。なお、連結装置1において、被搬送物7との連結位置から連結解除位置までの間は、ロック機構5の作用で連結ピン12が固定状態とされているので、連結孔73から連結ピン12が離脱することが防止されている。
【0062】
このように、連結装置1を備えた搬送装置2および搬送システムでは、被搬送物7に対して連結装置1の連結ピン12がスムーズに連結されるので、複雑な制御システム等を要することなく、被搬送物7を良好に搬送することが可能となる。また、被搬送物7の搬送中にも、連結ピン12の安定的な連結状態が保持されて、確実に目的地まで搬送することが可能となる。
【0063】
なお、本実施形態に係る連結装置1において、昇降機構6およびロック機構5は、搬送装置2の本体部21に備えられた図示しない制御部により電気的に駆動制御されている。昇降機構6およびロック機構5の構成は例示した形態に限られず、例えば昇降機構6としてシリンダ装置62にかえて駆動モータ等が適用される構成であってもよい。また、昇降機構6により連結ピン12を上昇させた後、ロック機構5が解除されて連結ピン12が可動状態とされる例を説明したが、ロック機構5により連結ピン12が可動状態とされた後、昇降機構6により連結ピン12を上昇させる構成であってもよい。
【0064】
さらに、連結ピン12の移動自由な線方向は、水平面内における搬送装置2の進行方向に交差する方向であれば、直線方向であっても曲線方向であっても、どのような線方向でもよく、また一つの線方向であるに限られず複数の線方向であってもよい。また、連結構造としては、連結ピン12と連結孔73に限定されるものではなく、連結ピン12の形状や、連結ピン12に連結される被接続部72等もどのような構成とされてもよい。
【0065】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2に係る連結装置1、この連結装置1を備えた搬送装置2および搬送システムについて、図面を参照しつつ説明する。この形態では、実施形態1で説明した構成に加えて、さらに連結ピン12のガイド機構8が備えられた点に特徴を有しており、その他の構成は実施形態1と共通する。そのため、共通する構成については実施形態1と共通の参照符号を用いて説明することとし、主にガイド機構8について詳述する。
【0066】
図7(a)~
図7(c)は、実施形態2に係る連結装置1、ならびに連結装置1を備えた搬送装置2および搬送システムにおける、ガイド機構8を示した説明図である。
図7(a)~
図7(c)は、被搬送物7の底面側を下方から見てガイド機構8を示している。
図8は、このガイド機構8を、搬送装置2の進行方向の後方から見て示した説明図である。
【0067】
搬送システムとして、被搬送物7の底面には、連結ピン12を連結孔73に導くガイド機構8が設けられている。ガイド機構8は、例えば、
図7(a)に示すような矩形状の接続板81に備えられている。接続板81は、連結ピン12を収容する連結孔73が穿設されており、被搬送物7の底面に一体に取り付けられている。
【0068】
ガイド機構8は、接続板81から下方に向けて突設された一組のガイド壁82を有する。
図7(a)に示すように、ガイド壁82は搬送装置2の進行方向(A)に沿って長く配設された突状部とされている。また、各ガイド壁82の一端部は連結孔73の近傍に配置され、他端部は接続板81の辺縁部寄りまで延設されている。
図8に示すように、これらのガイド壁82は、接続板81の下面から下方に垂設されている。
【0069】
これにより、一組のガイド壁82は、対向する内壁面同士の間隔が、連結孔73に近づくほど短い距離となる、略ハの字状に配設されている。すなわち、ガイド壁82の一端部は、連結孔73の開口幅に対応して、互いに近接して配設されている。また、ガイド壁82の他端部は互いに離間し、進行方向(A)の反対側ほど互いの間隔が末広がりとなるように配設されている。連結孔73の深さおよびガイド壁82の突出量は、連結ピン12の軸方向の長さに対応して設けられている。
【0070】
図5に示したように、被搬送物7との連結時に搬送装置2が前進することで、連結ピン12が連結孔73に近づいていく。
図7(a)に示すように、連結ピン12は、一組のガイド壁82の間を進み、連結孔73に到達する。連結ピン12は突出方向に付勢されているので、
図8に示すように、連結孔73に到達することで連結孔73にスムーズに嵌入する。
【0071】
仮に、連結ピン12と連結孔73とが、進行方向(A)に沿った同一直線上に位置していなかった場合を想定する。この場合、
図7(b)および
図7(c)に示すように、搬送装置2の前進にともなって、連結ピン12は、どちらか一方のガイド壁82に接触することとなる。
【0072】
ここで、連結ピン12は、
図6に示したように、規制部材4に規制されて円弧方向に移動自由な状態(可動状態)にある。そのため、ガイド壁82に接触した連結ピン12は、そのままガイド壁82に沿って斜め前方へ移動していく。また、連結ピン12を備える支持板31は、回動軸34を中心に回動して、連結ピン12のガイド壁82に沿った移動を許容する。その結果、連結ピン12は、かかるガイド機構8からの作用力を受けて一組のガイド壁82の間で自由移動しながら、連結孔73に誘導されていく。連結孔73まで到達した連結ピン12は、そのまま連結孔73にスムーズに嵌入される。
【0073】
以上のように、本実施形態に係る連結装置1、搬送装置2、および搬送システムにおいては、ガイド機構8を備えることによって、重量を有する被搬送物7と搬送装置2との連結にあっても、可動状態の連結ピン12がスムーズに連結孔73へと導かれて、搬送装置2と被搬送物7とを精度よく連結することが可能となる。
【0074】
なお、ガイド機構8において連結ピン12を被接続部72へと導くための部材は、前記した一組のガイド壁82とされるに限らず、また、その配置形態も前記した略ハの字状であるに限定されず、例えば接続板81に設けられた傾斜面や湾曲部など、どのような構成とされてもよい。
【0075】
(他の実施形態)
本発明に係る連結装置1、この連結装置1を備えた搬送装置2および搬送システムは、前記の実施形態1および2にて説明した構成に限定されず、さらに多様な形態により実施することができる。
【0076】
例えば、連結装置1において、連結ピン12を支持する支持機構3は、支持板31と、支持板31を回動自由に支持する回動支持部32とを含む構成であるに限られず、連結ピン12を水平面内でスライド自由に支持するスライド支持部を備えた構成であってもよい。
【0077】
この場合、連結ピン12が立設された支持板31が、搬送装置2の進行方向に交差する方向に配置されたスライドレール等を介してスライド自由に支持され、水平面内を自由に平行移動する。あるいはまた、支持板31に連結ピン12が立設されずとも、連結ピン12がスライド支持部によって直接的または間接的にスライド自由に支持されていてもよい。このような支持機構3にあっても、前記各実施形態と同様に連結ピン12を被接続部72へとスムーズに導くことが可能とされ、搬送装置2と被搬送物7とを良好に連結することができる。
【0078】
また、支持機構3として2軸移動ステージ等を利用し、連結ピン12を水平面内に2以上の線方向に移動自由に設けることも可能である。
【0079】
本発明は前記の各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変形が可能であり、異なる実施形態に示された技術的事項を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。このため、前記実施形態は例示であって、限定的なものではない。
【符号の説明】
【0080】
1 連結装置
11 連結装置本体
12 連結ピン
2 搬送装置
21 本体部
22 駆動輪
3 支持機構
31 支持板
32 回動支持部
33 受け板
34 回動軸
4 規制部材
41 規制ピン
42 凹溝
5 ロック機構
51 係合部材
52 被係合部
53 進退ロッド
54 ソレノイド
55 縦壁
56 戻りばね
6 昇降機構
61 昇降部材
62 シリンダ装置
63 ばね部材
7 被搬送物
71 自在輪
72 被接続部
73 連結孔
8 ガイド機構
81 接続板
82 ガイド壁