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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】化粧シートおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20220913BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20220913BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20220913BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
C08L67/02
C08K3/013
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018120717
(22)【出願日】2018-06-26
(65)【公開番号】P2020002199
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】金子 純
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慎太郎
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-058486(JP,A)
【文献】国際公開第2005/105903(WO,A2)
【文献】特開2001-018223(JP,A)
【文献】特開2017-145338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
C08L 67/02
C08K 3/013
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成分と白色顔料とを含む化粧シートであり、
前記樹脂成分が、PETボトルに由来する再生PET系樹脂を90質量%以上含み、
前記再生PET系樹脂のCIE 1976 L*a*b*色空間におけるb*が9以下であり、
前記白色顔料の含有量が、前記樹脂成分100質量部に対して10~18質量部であり、
前記化粧シートの厚さ(mm)と前記白色顔料の含有量(質量部)との積が、2.300以上である、化粧シート。
【請求項2】
前記化粧シートのCIE 1976 L*a*b*色空間におけるL*が92以上であり、a*が-1.5~+1.0であり、b*が0~+4.5である、請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
PETボトルに由来する、CIE 1976 L*a*b*色空間におけるb*が9以下の再生PET系樹脂と、白色顔料を含むマスターバッチとを混合して、前記再生PET系樹脂を90質量%以上含む樹脂成分と、前記樹脂成分100質量部に対して10~18質量部の白色顔料とを含む樹脂混合物を調製し、
前記樹脂混合物を成形して、厚さ(mm)と前記白色顔料の含有量(質量部)との積が2.300以上である化粧シートを得る、化粧シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
壁材、床材、建具(扉、戸等)、家具、シンク台、洗面化粧台等の表層に用いられる化粧シートとしては、かつてはポリ塩化ビニルシートが主流であった。近年、環境問題への関心の高まりから、化粧シートとしては、ポリエチレン等のポリオレフィンを主体とするシートやポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」とも記す。)等のポリエステルを主体とするシートが主流となっている。また、廃プラスチックからなる再生樹脂を用いた化粧シートの開発が強く要望されている。
しかし、再生樹脂は様々な色に着色されたものが多く、再生樹脂を用いた化粧シートは、色にバラツキが生じやすい。
【0003】
再生樹脂を用い、かつ色のバラツキが抑えられた化粧シートとしては、下記のものが提案されている。
(1)再生ポリ塩化ビニルシートと、着色層を有する新生ポリ塩化ビニルシートとをラミネートした化粧シート(特許文献1)。
(2)再生ポリエステル3~70質量%とバージンポリエステル30~97質量%とからなるポリエステルに対して、着色顔料を0.1~30質量%含む化粧シート(特許文献2)。
しかし、(1)、(2)の化粧シートは、色のバラツキを抑えるため、バージン樹脂(新生樹脂)の割合を多くする必要があり、再生樹脂の割合が低い。
【0004】
再生樹脂の割合の高いシートとしては、下記のものが提案されている。
(3)再生PET/再生ポリエチレン/相溶化剤/青色顔料=85/15/5/1質量比の樹脂層(化粧シートに相当)が鋼板の表面にラミネートされた化粧板(特許文献3の段落[0148])。
(4)再生PET100質量部に、特定の結合材3~10質量部、および酸化チタンからなる改質剤2~5質量部を配合した再生プラスチックシート(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭56-080417号公報
【文献】特開平11-130877号公報
【文献】特開2009-030062号公報
【文献】特開2002-348448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(3)の化粧板における樹脂層は、再生樹脂による色のバラツキを抑えるため、青色に着色されている。(3)の化粧板における樹脂層のような配合の場合は、再生樹脂による色のバラツキが判別しにくい濃い青色、黒色、灰色等の明度の低い色に限定されてしまい、白色、淡色等の明度の高い色を採用できない。
(4)の再生プラスチックシートは、冷却塔用充填材として用いることを前提としており、酸化チタンは、耐候性を付与するための改質剤として少量添加されている。酸化チタンの含有量が少ない(4)の再生プラスチックシートは、下記の理由から、化粧シートとして利用できない。
・白色や淡色の化粧シートとするには、明度が低い。
・シートの向こう側が透けてしまい、化粧シートとしての隠蔽力が不十分である。
・原料ロット間やシートの場所ごとの色のバラツキが大きい。
【0007】
本発明は、全樹脂成分中の再生樹脂の割合が高い親環境的なシートであり、かつ明度が高い白色や淡色の化粧シートでありながら、原料ロット間やシートの場所ごとの色のバラツキが少なく、さらには、隠蔽力が高く、製造の際の成形性もよい化粧シートおよびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記の態様を有する。
<1>樹脂成分と白色顔料とを含む化粧シートであり、前記樹脂成分が、PETボトルに由来する再生PET系樹脂を90質量%以上含み、前記白色顔料の含有量が、前記樹脂成分100質量部に対して10~18質量部であり、前記化粧シートの厚さ(mm)と前記白色顔料の含有量(質量部)との積が、2.300以上である、化粧シート。
<2>CIE 1976 L*a*b*色空間におけるL*が92以上であり、a*が-1.5~+1.0であり、b*が0~+4.5である、前記<1>の化粧シート。
<3>PETボトルに由来する再生PET系樹脂と、白色顔料を含むマスターバッチとを混合して、前記再生PET系樹脂を90質量%以上含む樹脂成分と、前記樹脂成分100質量部に対して10~18質量部の白色顔料とを含む樹脂混合物を調製し、前記樹脂混合物を成形して、厚さ(mm)と前記白色顔料の含有量(質量部)との積が2.300以上である化粧シートを得る、化粧シートの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の化粧シートは、全樹脂成分中の再生樹脂の割合が高い親環境的なシートであり、かつ明度が高い白色や淡色の化粧シートでありながら、原料ロット間やシートの場所ごとの色のバラツキが少なく、さらには、隠蔽力が高く、製造の際の成形性もよい。
本発明の化粧シートの製造方法によれば、全樹脂成分中の再生樹脂の割合が高い親環境的なシートであり、かつ明度が高い白色や淡色の化粧シートでありながら、原料ロット間やシートの場所ごとの色のバラツキが少なく、さらには、隠蔽力が高い化粧シートを、成形性よく製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の用語の定義は、本明細書及び特許請求の範囲にわたって適用される。
「L*」は、JIS Z 8781-4:2013「測色-第4部:CIE 1976 L*a*b*色空間」(対応国際規格ISO 11664-4:2008)に定義される明度の相関量である。
「a*」および「b*」は、JIS Z 8781-4:2013「測色-第4部:CIE 1976 L*a*b*色空間」(対応国際規格ISO 11664-4:2008)に定義される色座標である。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0011】
<化粧シート>
本発明の化粧シートは、樹脂成分と白色顔料とを含む。
本発明の化粧シートは、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて樹脂成分および白色顔料以外の成分(以下、「他の成分」とも記す。)を含んでいてもよい。
【0012】
(樹脂成分)
樹脂成分は、PETボトルに由来する再生PET系樹脂を90質量%以上含む。
樹脂成分は、再生PET系樹脂以外の樹脂(以下、「他の樹脂」とも記す。)を10質量%以下の範囲で含んでいてもよい。
【0013】
再生PET系樹脂は、PETボトルに由来する再生樹脂であり、安価でかつ入手しやすい点から、PETボトルの粉砕物が好ましい。再生PET系樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲において、PETボトルに付属していたラベル(印刷・接着剤等を含む)、キャップ等の粉砕物を含んでいてもよい。
【0014】
我が国においては、再利用品の品質低下を防ぐために、以下に説明する自主設計ガイドラインに、指定PETボトルについては、PET単体(PET主材以外の物質を添加、複合等をして用いていない。)と定められ、着色はしない(口栓部の結晶化による白色は除く。)と定められている。したがって、現在、国内では着色PETボトルは生産されておらず、海外で生産される日本向けの着色PETボトルについても無着色PETボトルへの変更が要請されている(http://www.petbottle-rec.gr.jp/qanda/sec13.html)。
【0015】
国内で流通するPETボトルについては、国の指導を受けてPETボトルリサイクル推進協議会によって制定された「指定PETボトルの自主設計ガイドライン」に詳細が規定されている(http://www.petbottle-rec.gr.jp/guideline/jisyu.html)。
自主設計ガイドラインは、PETボトルリサイクル推進協議会が、資源有効利用促進法規定の指定表示製品(清涼飲料、乳飲料、酒類、特定調味料)に使用されているPETボトル(指定PETボトル)を、使用後の再処理、衛生性を含めた再利用適性に優れた容器とするために、使用するボトル、ラベル(印刷・接着剤等を含む)、キャップ等について規定したものである。
PETボトルリサイクル推進協議会の会員(団体、企業)が自主設計ガイドラインを遵守することは当然として、会員以外においても、指定PETボトル入り飲料・酒類・特定調味料を製造・輸入・販売する場合、あるいは指定PETボトルおよび附属包材を製造・輸入する場合は、日本国内で販売・使用されるものであれば、自主設計ガイドラインに適合することが必要とされている。
【0016】
したがって、国内で流通するPETボトルは、無着色のものがほとんどであり、また、PETボトルに由来する再生PET系樹脂は、ほぼ透明である。
なお、再生PET系樹脂は、ほぼ透明であるものの、熱成形加工時に受ける熱履歴や、ラベル等の混在によって、黄黒い(CIE 1976 L*a*b*色空間におけるb*の値が高く、L*の値が低い)傾向にある。そのため、これまでは、明度が高い白色や淡色の化粧シートの材料に再生PET系樹脂を用いることは躊躇われていた。本発明においては、後述するように、白色顔料の含有量を特定の範囲とし、かつ化粧シートの厚さと白色顔料の含有量との積を特定の範囲とすることによって、明度が高い白色や淡色の化粧シートの材料に再生PET系樹脂を用いることを可能にしている。
【0017】
再生PET系樹脂の結晶化温度は、145℃以下が好ましく、120~145℃がより好ましく、125~140℃がさらに好ましい。
再生PET系樹脂の結晶化温度は、熱分析装置(示差走査熱量計(DSC)等)を用いて測定される。
【0018】
再生PET系樹脂の固有粘度(IV値)は、0.60以上が好ましく、0.65~0.85がより好ましく、0.70~0.83がさらに好ましい。再生PET系樹脂の固有粘度(IV値)が前記範囲の下限値未満では、顔料添加時の溶融粘度低下により、押出成形性に問題が生じるおそれがある。再生PET系樹脂の固有粘度(IV値)が前記範囲の上限値超では、粘度が高くて押出成形性に問題が生じるおそれがある。
再生PET系樹脂の固有粘度(IV値)は、JIS K 7390:2003に記載の試験方法によって測定される。
【0019】
再生PET系樹脂の、CIE 1976 L*a*b*色空間におけるb*は、9以下が好ましく、-6~8がより好ましく、0~7がさらに好ましい。再生PET系樹脂のb*が前記範囲の下限値以上であれば、着色PETボトルの割合が低く、明度が高い白色や淡色の化粧シートを製造しやすい。再生PET系樹脂のb*が前記範囲の上限値以下であれば、再生PET系樹脂の黄味が抑えられ、青系の着色剤を添加しても明度が高い白色や淡色の化粧シートを製造しやすい。
再生PET系樹脂のb*は、JIS K 7390:2003に記載の試験方法によって測定される。
【0020】
再生PET系樹脂の、CIE 1976 L*a*b*色空間におけるL*は、65以上が好ましく、68以上がより好ましく、70以上がさらに好ましい。再生PET系樹脂のL*が前記範囲の下限値以上であれば、明度が高い白色や淡色の化粧シートを製造しやすい。
【0021】
他の樹脂としては、白色顔料を含むマスターバッチに用いられる樹脂、化粧シートの色のバラツキを抑える、化粧シートの特性を改善する等の目的で添加された樹脂等が挙げられる。他の樹脂の具体例としては、バージンPET系樹脂、再生PET系樹脂以外の再生樹脂(ポリ塩化ビニルを除く。)、バージンPET系樹脂以外のバージン樹脂(ポリ塩化ビニルを除く。)等が挙げられる。
【0022】
(白色顔料)
白色顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、リトボン等が挙げられる。白色顔料としては、隠蔽力が高い点から、酸化チタンが好ましい。酸化チタンとしては、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタン等が挙げられ、触媒としての活性が低い点から、ルチル型酸化チタンが好ましい。
【0023】
白色顔料の含有量は、樹脂成分100質量部に対して10~18質量部であり、11~17質量部が好ましく、12~16質量部がより好ましい。白色顔料の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、原料ロット間やシートの場所ごとの色のバラツキが少ない、明度が高い白色や淡色の化粧シートが得られる。白色顔料の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、押出挙動異常(溶融粘度低下に伴う幅異常等)が抑えられ、化粧シートを製造する際の成形性がよい。
【0024】
(他の成分)
他の成分としては、白色顔料以外の顔料、相溶化剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、保存安定剤、滑剤、充填材等が挙げられる。
他の成分の含有量は、樹脂成分100質量部に対して15質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、5質量部以下がさらに好ましい。
【0025】
(化粧シート)
本発明の化粧シートの、CIE 1976 L*a*b*色空間におけるL*は、92以上が好ましく、94以上がより好ましく、95以上がさらに好ましい。化粧シートのL*が前記範囲の下限値以上であれば、化粧シートの明度が十分に高くなる。化粧シートのL*は高ければ高いほどよく、上限値は特に限定されないが、通常100である。
【0026】
本発明の化粧シートの、CIE 1976 L*a*b*色空間におけるa*は、-1.5~+1.0が好ましく、-1.2~+0.5がより好ましく、-1.0~0がさらに好ましい。化粧シートのa*が前記範囲の下限値以上であれば、化粧シートの緑味が抑えられる。化粧シートのa*が前記範囲の上限値以下であれば、化粧シートの赤味が抑えられる。
【0027】
本発明の化粧シートの、CIE 1976 L*a*b*色空間におけるb*は、0~+4.5が好ましく、0~+4がより好ましく、0~+3.5がさらに好ましい。化粧シートのb*が前記範囲の下限値以上であれば、化粧シートの青味が抑えられる。化粧シートのb*が前記範囲の上限値以下であれば、化粧シートの黄味が抑えられる。
【0028】
本発明の化粧シートの厚さは、0.15~0.4mmが好ましく、0.20~0.35mmがより好ましい。化粧シートの厚さが前記範囲の下限値以上であれば、化粧シートの機械的強度、隠蔽力を高くしやすい。化粧シートの厚さが前記範囲の上限値以下であれば、化粧シートの三次元加工性、可とう性等が良好になる。
【0029】
本発明の化粧シートにおいては、化粧シートの厚さ(mm)と白色顔料の含有量(質量部)との積は、2.300以上であり、2.500以上が好ましく、2.700以上がより好ましい。化粧シートの厚さと白色顔料の含有量との積が前記範囲の下限値以上であれば、化粧シートの隠蔽力が十分に高くなる。化粧シートの厚さと白色顔料の含有量との積は高かれば高いほどよく、上限値は特に限定されない。
【0030】
本発明の化粧シートは、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて各種機能を付与するための機能層を有していてもよい。機能層としては、耐汚染性、耐候性を付与するためのコーティング層、転写層、意匠性を付与するための印刷層等が挙げられる。
化粧シートの表面形状は、特に限定されず、平滑であってもよく、エンボス加工等による凹凸を有する形状であってもよい。
【0031】
本発明の化粧シートは、例えば、樹脂成分と白色顔料とを含む樹脂混合物をシート状に成形することによって製造できる。
樹脂混合物は、再生PET系樹脂を90質量%以上含む樹脂成分と、樹脂成分100質量部に対して10~18質量部の白色顔料とを含む。
樹脂混合物は、例えば、再生PET系樹脂と、白色顔料を含むマスターバッチとを混合することによって調製できる。
樹脂混合物の成形方法としては、押出成形法、カレンダー成形法等が挙げられる。
化粧シートは、無延伸であってもよく、延伸されていてもよい。
【0032】
(作用機序)
以上説明した本発明の化粧シートにあっては、樹脂成分がPETボトルに由来する再生PET系樹脂を90質量%以上含むため、ポリ塩化ビニルを含む化粧シートや、全樹脂成分中の再生樹脂の割合が低い化粧シートに比べ、親環境的である。
また、本発明の化粧シートにあっては、再生樹脂としてほぼ透明な再生PET系樹脂を用い、かつ白色顔料の含有量が樹脂成分100質量部に対して10質量部以上であるため、全樹脂成分中の再生樹脂の割合が高く、かつ明度が高い白色や淡色の化粧シートでありながら、原料ロット間やシートの場所ごとの色のバラツキが少ない。
また、本発明の化粧シートにあっては、化粧シートの厚さ(mm)と白色顔料の含有量(質量部)との積が2.300以上であるため、隠蔽力が高い。
また、本発明の化粧シートにあっては、白色顔料の含有量が樹脂成分100質量部に対して18質量部以下であるため、製造の際の成形性もよい。
本発明の化粧シートは、壁材、床材、建具(扉、戸等)、家具、シンク台、洗面化粧台等の表層に用いられ、好適には家具、シンク台、洗面化粧台等の扉の表層に用いられる。
【実施例
【0033】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0034】
(測色方法)
分光光度計(CCM)(クラボウ社製、COLOR-7)を用い、光源D65、視野角10°の条件にて、背後に所定のバッカーがある状態で化粧フィルムを測色し、CIE 1976 L*a*b*色空間におけるL*、a*、b*を求めた。
【0035】
(透明シートの測色)
参考例の透明シートについて、バッカーとして白基材(L*=96.82、a*=-1.03、b*=1.57)を用いて3箇所で測色し、L*、a*、b*を求め、3箇所の平均値を求めた。
【0036】
(化粧シートの測色)
再生PET系樹脂のロットのみが異なる4種の化粧シートのそれぞれについて、バッカーとして測色台(L*=99.11、a*=-0.09、b*=0.56)を用いて3箇所で測色し、L*、a*、b*を求め、3箇所の平均値を求め、さらに4ロットの平均値を求めた。
化粧シートのL*、a*、b*(4ロットの平均値)と、化粧シートのターゲット色(製品として目標とする色)L*、a*、b*とから下記式にて色差ΔEを求めた。
ΔE={(L*-L*)+(a*-a*)+(b*-b*)1/2
【0037】
(隠蔽力)
再生PET系樹脂のロットのみが異なる4種の化粧シートのそれぞれについて、バッカーとして白基材(L*=93.38、a*=-0.85、b*=4.99)を用いて3箇所で測色し、L*、a*、b*を求め、3箇所の平均値を求めた。
同じ4種の化粧シートのそれぞれについて、バッカーとしてMDF基材(L*=66.03、a*=9.24、b*=21.90)を用いて3箇所で測色し、L*、a*、b*を求め、3箇所の平均値を求めた。
化粧シートのL*、a*、b*(3箇所の平均値)と、L*、a*、b*(3箇所の平均値)とから下記式にて色差ΔEを求め、4ロットの平均値を求めた。
ΔE={(L*-L*)+(a*-a*)+(b*-b*)1/2
ΔEが0.6未満であれば、化粧シートの隠蔽力が十分であり、実用上問題がないことが経験的にわかっている。
【0038】
(原料ロット間の色のバラツキ)
再生PET系樹脂のロットのみが異なる4種の化粧シートのそれぞれについて、バッカーとして測色台(L*=99.11、a*=-0.09、b*=0.56)を用いて3箇所で測色し、L*、a*、b*を求め、3箇所の平均値を求めた。
化粧シートのL*、a*、b*(3箇所の平均値)と、化粧シートのターゲット色(製品として目標とする色)L*、a*、b*とから下記式にて色差ΔEを求めた。
ΔE={(L*-L*)+(a*-a*)+(b*-b*)1/2
4ロットのΔEのうちの最大値が0.6未満であれば、原料ロット間の色のバラツキが少なく、実用上問題がないことが経験的にわかっている。
【0039】
(シートの場所ごとの色のバラツキ)
再生PET系樹脂のロットのみが異なる4種の化粧シートのそれぞれについて、バッカーとして測色台(L*=99.11、a*=-0.09、b*=0.56)を用いて30cmごとに50箇所で測色し、L*、a*、b*を求めた。
化粧シートの各測定場所のL*、a*、b*と、50箇所の平均値Lav*、aav*、bav*とから下記式にて色差ΔEを求めた。
ΔE={(L*-Lav*)+(a*-aav*)+(b*-bav*)1/2
4ロットをあわせたすべての測定場所のΔEのうちの最大値が0.3未満であれば、シートの場所ごとの色のバラツキが少なく、実用上問題がないことが経験的にわかっている。
【0040】
(成形性)
化粧シートを製造するときの化粧シートの幅変動を下記基準にて評価した。
○:化粧シートの幅変動なし。
×:化粧シートの幅変動あり。
【0041】
(参考例1)
4ロットのバージンPET系樹脂(華潤社製、CR8816、ロットA~D、結晶化温度133℃、固有粘度(IV値)0.80)のそれぞれについて、東洋精機製作所社製、LABO PLASTOMILL(MODEL 30C150)を使用して、温度265℃、スクリュー回転25rpmにてシート成形加工を行い、4種の透明シート(幅150mm、厚さ0.3mm)を得た。各透明シートについてL*、a*、b*(3箇所の平均値)を求めた。結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
(参考例2)
4ロットの再生PET系樹脂(ウツミリサイクルシステムズ社製、UK-31C、ロットA~D)のそれぞれについて、東洋精機製作所社製、LABO PLASTOMILL(MODEL 30C150)を使用して、温度265℃、スクリュー回転25rpmにてシート成形加工を行い、4種の透明シート(幅150mm、厚さ0.3mm)を得た。各透明シートについてL*、a*、b*(3箇所の平均値)を求めた。結果を表2に示す。バージンPET系樹脂を用いた参考例1に比べ、色のバラツキが大きい。また、b*(黄味)が大きい。
【0044】
【表2】
【0045】
(参考例3)
4ロットの再生PET系樹脂(イタリア・ALIPLAST社製、Alimpet、ロットA~D、結晶化温度130℃、固有粘度(IV値)0.77)のそれぞれについて、東洋精機製作所社製、LABO PLASTOMILL(MODEL 30C150)を使用して、温度265℃、スクリュー回転25rpmにてシート成形加工を行い、4種の透明シート(幅150mm、厚さ0.3mm)を得た。各透明シートについてL*、a*、b*(3箇所の平均値)を求めた。結果を表3に示す。バージンPET系樹脂を用いた参考例1に比べ、色のバラツキが大きい。また、ロットB~Dは、b*(黄味)が大きい。ロットAのように、b*が小さいこともあるが、同時にL*も下がってしまう。
【0046】
【表3】
【0047】
(ターゲット色)
再生PET系樹脂としてウツミリサイクルシステムズ社製のUK-31Cを用いた化粧シートのターゲット色は、バッカーとして測色台(L*=99.11、a*=-0.09、b*=0.56)を用いた場合、L*=97.45、a*=-0.36、b*=2.71とした。
再生PET系樹脂としてイタリア・ALIPLAST社製のAlimpetを用いた化粧シートのターゲット色は、バッカーとして測色台(L*=99.11、a*=-0.09、b*=0.56)を用いた場合、L*=95.52、a*=-1.10、b*=2.16とした。
【0048】
(実施例1)
4ロットの再生PET系樹脂(ウツミリサイクルシステムズ社製、UK-31C、ロットA~D)のそれぞれについて、以下のようにして化粧シートを作製した。
再生PET系樹脂にマスターバッチ(酸化チタンおよびバージンPET(A-PET)を含む。)を添加した樹脂混合物について、東洋精機製作所社製、LABO PLASTOMILL(MODEL 30C150)を使用して、温度265℃、スクリュー回転25rpmにてシート成形加工を行い、化粧シート(長さ15m、幅150mm、厚さ0.25mm)を得た。樹脂成分中の再生PET系樹脂の割合、樹脂成分に対する白色顔料の含有量を表4に示す。
化粧シートを30cmごとにカットし、評価用のサンプルとした。測色結果および各種評価結果を表4に示す。
【0049】
(実施例2)
4ロットの再生PET系樹脂(イタリア・ALIPLAST社製、Alimpet、ロットA~D)のそれぞれについて、以下のようにして化粧シートを作製した。
再生PET系樹脂にマスターバッチ(酸化チタンおよびバージンA-PETを含む。)を添加した樹脂混合物について、東洋精機製作所社製、LABO PLASTOMILL(MODEL 30C150)を使用して、温度265℃、スクリュー回転25rpmにてシート成形加工を行い、化粧シート(長さ15m、幅150mm、厚さ0.25mm)を得た。樹脂成分中の再生PET系樹脂の割合、樹脂成分に対する白色顔料の含有量を表4に示す。
化粧シートを30cmごとにカットし、評価用のサンプルとした。測色結果および各種評価結果を表4に示す。
【0050】
(実施例3~5、比較例1~5)
化粧シートの厚さ、樹脂成分中の再生PET系樹脂の割合、樹脂成分に対する白色顔料の含有量を表4~表6に示すように変更した以外は、実施例2と同様にして化粧シートを作製した。樹脂成分中の再生PET系樹脂の割合、樹脂成分に対する白色顔料の含有量を表4~表6に示す。
化粧シートを30cmごとにカットし、評価用のサンプルとした。測色結果および各種評価結果を表4~表6に示す。
【0051】
【表4】
【0052】
【表5】
【0053】
【表6】
【0054】
比較例1~5は、L*、a*、b*は本発明における好ましい範囲内であったが、樹脂成分に対する白色顔料の含有量が少ない比較例3、4は、ターゲット色との色差ΔEが大きくなった。
比較例1は、化粧シートの厚さと白色顔料の含有量との積が小さいため、隠蔽力が不十分であった。
比較例2は、樹脂成分に対する白色顔料の含有量が多いため、成形性が悪かった。
比較例3は、樹脂成分に対する白色顔料の含有量が少ないため、原料ロット間やシートの場所ごとの色のバラツキが大きかった。
比較例4は、化粧シートの厚さと白色顔料の含有量との積が小さいため、隠蔽力が不十分であった。また、樹脂成分に対する白色顔料の含有量が少ないため、原料ロット間やシートの場所ごとの色のバラツキが大きかった。
比較例5は、樹脂成分に対する白色顔料の含有量が多いため、成形性が悪かった。
【0055】
(比較例6)
4ロットの再生PET系樹脂(イタリア・ALIPLAST社製、Alimpet、ロットA~D)のそれぞれについて、以下のようにして化粧シートを作製した。
再生PET系樹脂の90質量部とバージンPET系樹脂(華潤社製、CR8816、ロットA)の10質量部とを混合し、これにマスターバッチ(酸化チタンおよびバージンA-PETを含む。)を添加した樹脂混合物について、長田製作所社製の押出機(OSE-35φmm押出機)を使用して、温度265℃、スクリュー回転44rpmにてシート成形加工を行い、化粧シート(長さ15m、幅150mm、厚さ0.25mm)を得た。樹脂成分中の再生PET系樹脂の割合、樹脂成分に対する白色顔料の含有量を表7に示す。
化粧シートを30cmごとにカットし、評価用のサンプルとした。各種評価結果を表7に示す。
【0056】
(比較例7)
4ロットの再生PET系樹脂(イタリア・ALIPLAST社製、Alimpet、ロットA~D)のそれぞれについて、以下のようにして化粧シートを作製した。
バージンPET系樹脂(華潤社製、CR8816、ロットA)にマスターバッチ(酸化チタンおよびバージンA-PETを含む。)を添加して表層用樹脂混合物を調製した。
再生PET系樹脂にマスターバッチ(酸化チタンおよびバージンA-PETを含む。)を添加して基材層用樹脂混合物を調製した。
表層用樹脂混合物および基材層用樹脂混合物について、長田製作所社製の押出機(OSE-35φmm押出機)を基材層側に使用して、温度265℃、スクリュー回転44rpmで成形加工を行い、長田製作所社製の押出機(OSE-35φmm押出機)を表層側に使用して、温度265℃、スクリュー回転5rpmで成形加工を行い、バージンPET系樹脂を主体とする表層(厚さ25μm)と、再生PET系樹脂を主体とする基材層(厚さ225μm)とが積層された化粧シート(長さ15m、幅1440mm、厚さ0.25mm)を得た。化粧シート全体の樹脂成分中の再生PET系樹脂の割合、化粧シート全体の樹脂成分に対する白色顔料の含有量を表7に示す。
化粧シートを30cmごとにカットし、評価用のサンプルとした。測色は表面層側について行った。各種評価結果を表7に示す。
【0057】
【表7】
【0058】
比較例6は、バージンPET系樹脂の割合を増やした例であり、各種評価結果は良好であった。しかし、バージンPET系樹脂の割合が多いため、親環境的ではない。
比較例7は、バージンPET系樹脂を主体とする表層を設けた例であり、各種評価結果は良好であった。しかし、化粧シート全体ではバージンPET系樹脂の割合が多くなるため、親環境的ではない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の化粧シートは、親環境的であり、かつ明度が高い白色や淡色の化粧シートとして有用である。