(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】ドレントラップ
(51)【国際特許分類】
F16T 1/16 20060101AFI20220913BHJP
【FI】
F16T1/16 F
F16T1/16 L
(21)【出願番号】P 2018135824
(22)【出願日】2018-07-19
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】藤田 智行
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特公昭36-003782(JP,B1)
【文献】特開昭50-027124(JP,A)
【文献】実開昭53-031328(JP,U)
【文献】実開昭61-070698(JP,U)
【文献】特開2015-090198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/64-31/72
F16T 1/00-1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流入する流入ポート、流体が流出する流出ポート、及び、弁室が形成されたケーシングと、
前記弁室へ流体を流入させる流入口、及び、前記弁室から流体を流出させる流出口が形成された弁座と、
前記弁室に収容され、前記流入口及び前記流出口を開閉する弁体とを備え、
前記ケーシングには、前記流入ポートから前記弁室へ向かう流体が流通する流入路が形成され、
前記弁体は、ドレンが前記流入口を介して前記弁室へ流入するときに開弁する一方、蒸気が前記流入口を介して前記弁室へ流入したときに前記弁室内の蒸気の圧力によって閉弁し、
前記ケーシングには、仕切壁によって前記弁室と仕切られ、前記弁室よりも上流側の流体が導入され
、且つ、前記流入路とは異なる空間である導入室が、前記ケーシングの外部と前記弁室との間に介在するように形成され、
前記導入室には、前記導入室内で凝縮して発生したドレンの前記仕切壁への付着を抑制するカバーが前記仕切壁を覆うように設けられているドレントラップ。
【請求項2】
請求項1に記載のドレントラップにおいて、
前記カバーは、前記仕切壁との間に隙間を有する状態で前記仕切壁の上方に位置するドレントラップ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のドレントラップにおいて、
前記ケーシングには、前
記流入路から分岐して、前記弁室よりも上流側の流体を前記導入室へ導入する導入路と、前記導入室の流体を前記流入路へ合流させる導出路が形成され、
前記流入路において、前記導出路の下流端は、前記導入路の上流端よりも下流に位置しているドレントラップ。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1つに記載のドレントラップにおいて、
前記ケーシングは、
前記流入ポート及び前記流出ポートが形成されたケーシング本体と、
前記ケーシング本体に取り付けられ、前記弁室を少なくとも部分的に区画する内蓋と、
前記内蓋を覆うように前記ケーシング本体に取り付けられ、前記ケーシング本体及び前記内蓋と共に前記導入室を区画する外蓋とを有し、
前記仕切壁は、前記内蓋によって形成されているドレントラップ。
【請求項5】
請求項4に記載のドレントラップにおいて、
前記カバーは、前記外蓋に設けられ、前記内蓋と接触していないドレントラップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、ドレントラップに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、弁座に形成された、流体の流入口及び流体の流出口を開閉する弁体が弁室に収容され、ドレンが流入口を介して弁室へ流入するときに弁体が開弁する一方、蒸気が流入口を介して弁室へ流入したときに弁室内の蒸気の圧力によって弁体が閉弁するように構成されたドレントラップが開示されている。このドレントラップにおいては、弁室よりも上流側の流体が導入される導入室(特許文献1では「腔室A」)が、ケーシングの外部と弁室との間に介在するように弁室と仕切られた状態で形成されている。
【0003】
このドレントラップにドレンが流入する場合には、弁体が開弁して、ドレンの流出が許容される。一方、蒸気が流入する場合には、弁室に蒸気が流入して弁体が閉弁し、蒸気の流出が阻止される。このとき、導入室内にも蒸気が導入されている。弁室は、導入室の蒸気によって保温された状態となり、弁室内の蒸気の凝縮、ひいては、弁室内の圧力低下が抑制される。これにより、閉弁状態が維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、導入室は、外気と仕切られているものの、外部環境の影響を受け得る。例えば、特許文献1のドレントラップでは、外蓋によって導入室が外気と仕切られているが、外気が低温の場合や外蓋が風雨に晒されている場合等は、外部環境によって導入室が冷却され、導入室内の蒸気が凝縮する可能性がある。発生したドレンが導入室と弁室とを仕切っている仕切壁に付着すると、弁室内の蒸気がドレンによって冷却され得る。弁室内の蒸気が冷却されると、弁室内の温度が低下し、弁体が開弁する虞がある。
【0006】
ここに開示された技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、外部環境の影響を低減して、閉弁状態を維持することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示された技術は、流体が流入する流入ポート、流体が流出する流出ポート、及び、弁室が形成されたケーシングと、前記弁室へ流体を流入させる流入口、及び、前記弁室から流体を流出させる流出口が形成された弁座と、前記弁室に収容され、前記流入口及び前記流出口を開閉する弁体とを備えたドレントラップであって、前記弁体は、ドレンが前記流入口を介して前記弁室へ流入するときに開弁する一方、蒸気が前記流入口を介して前記弁室へ流入したときに前記弁室内の蒸気の圧力によって閉弁し、前記ケーシングには、仕切壁によって前記弁室と仕切られ、前記弁室よりも上流側の流体が導入される導入室が、前記ケーシングの外部と前記弁室との間に介在するように形成され、前記導入室には、前記導入室内で凝縮して発生したドレンの前記仕切壁への付着を抑制するカバーが前記仕切壁を覆うように設けられている。
【発明の効果】
【0008】
前記ドレントラップによれば、外部環境の影響を低減して、閉弁状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図2は、弁室を中心とした、ドレントラップの拡大断面図である。
【
図3】
図3は、開弁状態における
図2に相当するドレントラップの拡大断面図である。
【
図4】
図4は、閉弁状態における
図2に相当するドレントラップの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、ドレントラップ100の断面図である。
図2は、弁室13を中心とした、ドレントラップ100の拡大断面図である。
【0011】
ドレントラップ100は、例えば蒸気システムに組み込まれる。ドレントラップ100には、蒸気の凝縮によって発生したドレン(復水)及び蒸気が流入し得る。ドレントラップ100は、ドレンだけを自動的に排出し、蒸気の流出を阻止する。ドレントラップ100は、流体が流入する流入ポート11、流体が流出する流出ポート12、及び、弁室13が形成されたケーシング1と、弁座5と、弁室13に収容された弁体6とを備えている。
【0012】
ケーシング1は、ケーシング本体2と、ケーシング本体2に取り付けられ、弁室13を少なくとも部分的に区画する内蓋3と、内蓋3を覆うようにケーシング本体2に取り付けられる外蓋4とを有している。
【0013】
ケーシング本体2には、流入ポート11、流出ポート12、弁室13のための凹部14を有する円筒壁21、流入路15及び流出路16が形成されている。
【0014】
流入路15は、流入ポート11と凹部14(即ち、弁室13)とを接続している。流入路15は、流入ポート11から弁室13へ向かう流体が流通する流路である。流入路15の途中には、スクリーン18を収容するスクリーン室17が形成されている。スクリーン18は、略円筒状に形成されている。ケーシング本体2には、スクリーン室17に外部からスクリーン18を設置するための開口が形成されており、開口はプラグ19によって閉じられている。流出路16は、流出ポート12と凹部14(即ち、弁室13)とを接続している。流出路16は、弁室13から流出ポート12へ向かう流体が流通する流路である。
【0015】
円筒壁21は、ケーシング本体2の上部において上方に開口するように形成されている。円筒壁21の内部に凹部14が形成されている。凹部14は、上方に開口し、有底状に形成されている。凹部14の断面は、略円形である。円筒壁21の内周面には、雌ネジが形成されている。円筒壁21の外周面には、雄ネジが形成されている。円筒壁21は、内蓋3の取付部として機能すると共に、外蓋4の取付部として機能する。凹部14の底の略中央に、流入路15の下流端が開口している。また、凹部14の中央から偏心した位置に、流出路16の上流端が開口している。凹部14の上端は、内蓋3によって閉鎖される。
【0016】
内蓋3は、
図2に示すように、天井部31と天井部31の周縁部から下方に延びる周壁部32とを有している。天井部31は、略円盤状に形成されている。周壁部32は、略円筒状に形成されている。周壁部32の外周面には、円筒壁21の雌ネジに対応する雄ネジが形成されている。内蓋3は、周壁部32を円筒壁21に螺合させることによって、ケーシング本体2に取り付けられる。内蓋3は、弁室13の一部を区画する。
【0017】
外蓋4は、
図2に示すように、天井部41と天井部41の周縁部から下方に延びる周壁部42とを有している。天井部41は、略円盤状に形成されている。周壁部42は、略円筒状に形成されている。周壁部42の内周面には、円筒壁21の雄ネジに対応する雌ネジが形成されている。外蓋4は、周壁部42を円筒壁21に螺合させることによってケーシング本体21に取り付けられる。このとき、外壁4は、内蓋3を外側から覆っている。
【0018】
ケーシング1には、弁室13よりも上流側の流体が導入される導入室22が形成されている。導入室22は、ケーシング本体2、内蓋3及び外蓋4によって区画される。導入室22は、ケーシング1の外部と弁室13との間に介在するように形成されている。具体的には、導入室22は、弁室13の概ね上方に位置している。外蓋4の外側がケーシング1の外部となっている。導入室22は、内蓋3(特に、天井部31)によって弁室13と仕切られている。内蓋3は、弁室と導入室とを仕切る仕切壁として機能している。円筒壁21の上端面21aは、導入室22の底を形成している。
【0019】
円筒壁21には、弁室13よりも上流側の流体を導入室22へ導入する導入路23と、導入室22から流体を導出させる導出路24が形成されている。導入路23は、流入路15から分岐して流入路15と導入室22とを接続している。導出路24は、流入路15へ合流するように導入室22と流入路24とを接続している。流入路15において、導出路24の下流端(即ち、合流端)は、導入路23の上流端(即ち、分岐端)よりも下流に位置している。具体的には、導入路23の上流端は、流入路15においてスクリーン18よりも上流に位置し、導出路24の下流端は、流入路15においてスクリーン18よりも下流に位置している。つまり、流入路15を流通する流体の圧力は、導出路24の下流端に比べて導入路23の上流端の方が高いので、流入路15を流通する流体の一部は、流入路15から導入路23、導入室22、導出路24の順に流通して流入路15へ戻ってくる。尚、導入路23の下流端及び導出路24の上流端は、円筒壁21の上端面21aに開口している。
【0020】
弁座5は、鉛直方向に延びる略円柱状に形成されている。弁座5には、円柱の軸心と同軸状に流入口51が貫通形成されている。また、弁座5には、軸心から偏心した位置に流出口52が貫通形成されている。弁座5のうち軸心方向の一端面(上端面)は、弁体6が着座するシート面53となっている。シート面53には、軸心を中心とする環状の溝54が形成されている。流出口52の上流端は、溝54に開口している。弁座5のうちシート面53と反対側の端縁部には、フランジ55が形成されている。フランジ55には、テーパ面56が形成されている。テーパ面56は、下方へ向かって拡径するように拡がっている。
【0021】
弁座5は、フランジ55がケーシング本体2の凹部14の底に接するように凹部14に配置される。弁座5は、円筒壁21に取り付けられる内蓋3の周壁部32と凹部14の底とでフランジ55が挟み込まれることによって凹部14内で固定される。このとき、流入口51は、ケーシング本体2の流入路15の下流端と連通し、流出口52は、ケーシング本体2の流出路16の上流端と連通する。内蓋3及び弁座5によって弁室13が区画されている。
【0022】
弁体6は、弁室13に収容されている。弁体6は、弁室13内を移動可能であり、弁座5の流入口51及び流出口52を開閉する。弁体6は、略円盤状に形成されている。つまり、弁体6は、ディスク弁である。弁体6の外径は、内蓋3の周壁部32の内径よりは小さく、且つ、弁座5のシート面53の外径よりは大きい。弁体6がシート面53に着座した状態において、弁体6の外周縁は、シート面31よりも外側にはみ出している。
【0023】
また、内蓋3の周壁部32と弁座5の外周面との間には、略円筒状のスペース26が形成されている。このスペース26には、バイメタルリング71と、支持リング72とが設けられている。スペース26は、弁室13と繋がった空間であるので、弁室13内と同じ流体で満たされる。
【0024】
バイメタルリング71は、略円筒状であって、周方向の一部に軸方向の全域に亘ってスリットが形成されている。つまり、バイメタルリング71は、断面略C字状に形成されている。バイメタルリング71は、熱膨張率の異なる2枚の金属板を貼り合わせて形成されている。バイメタルリング71は、その温度に応じて径が変化する。具体的には、バイメタルリング71は、低温時は径が小さくなるように変形し、高温時は径が大きくなるように変形する。バイメタルリング71は、径の変化に応じて、弁座5のテーパ面56上を移動する。具体的には、バイメタルリング71は、径が小さくなると、テーパ面56に沿って上方へ移動する。一方、バイメタルリング71は、径が大きくなると、テーパ面56に沿って下方へ移動する。
【0025】
支持リング72は、略円環状に形成されている。支持リング72の内径は、弁座5(フランジ55以外の部分)の外周面の径よりも大きい。支持リング72は、バイメタルリング71の上端に載置され、弁座5の上端部の周囲に位置している。支持リング72と弁座5の外周面との間には隙間が形成されている。支持リング72は、バイメタルリング71の径変化に応じて、バイメタルリング71と共に上下動する。バイメタルリング71が最も上方まで移動したときには、支持リング72は、弁座5のシート面53よりも上方に突出する。この状態においては、弁体6は、シート面53に着座することができず、弁体6とシート面53との間に隙間が形成される。一方、バイメタルリング71が最も下方まで移動したときには、支持リング72は、シート面53から上方に突出しておらず、弁体6は、シート面53に着座することができる。
【0026】
蒸気システムの通常運転時にドレントラップ100に流入する比較的高温のドレン及び蒸気の想定温度範囲においては、バイメタルリング71の径が大きくなって支持リング72がシート面53から突出せず、前述の想定温度範囲よりも低い温度(例えば、想定される外気温度)においては、バイメタルリング71の径が小さくなって支持リング72がシート面53から突出するように、バイメタルリング71の2枚の金属板が選別されている。
【0027】
導入室22には、導入室22内で凝縮して発生したドレンの内蓋3(より具体的には、天井部31)への付着を抑制するカバー8が内蓋3を覆うように設けられている。カバー8は、略円盤状に形成されている。カバー8の外径は、内蓋3の天井部31の外径よりも大きい。カバー8は、天井部31の上方に位置し、天井部31との間に隙間を有する状態で外蓋4に取り付けられている。このとき、カバー8は、天井部31の全面を覆っている。
【0028】
例えば、導入室22内に蒸気が導入された状態において外蓋4がケーシング1の外の外気や風雨によって冷却されると、導入室22内の蒸気が凝縮する可能性がある。外蓋4の近傍で凝縮して発生したドレンは、落下したとしても、カバー8の上に落下し、天井部31への付着が抑制される。
【0029】
続いて、このように構成されたドレントラップ100の動作について説明する。
図3は、開弁状態における
図2に相当するドレントラップ100の拡大断面図である。
図4は、閉弁状態における
図2に相当するドレントラップ100の拡大断面図である。尚、
図1,2は、弁体6の強制開弁状態を示している。
【0030】
蒸気システムの停止状態においては、ドレントラップ100内は低温となっており、バイメタルリング71も低温となっている。そのため、
図2に示すように、バイメタルリング71の径が小さくなっており、バイメタルリング71は上昇している。それに合わせて、支持リング72は、弁座5のシート面53よりも上方に突出している。弁体6は、支持リング72の上に載っており、弁体6とシート面53との間には隙間が形成されている。つまり、弁体6は、支持リング72によって強制的に開弁させられた状態となっている。
【0031】
この状態から蒸気システムの運転を開始すると、初期空気又は低温ドレンは、流入口51から弁室13内にスムーズに流入する。その後、初期空気又は低温ドレンは、流出口52、流出路16及び流出ポート12を介してドレントラップ100から流出する。尚、初期空気又は低温ドレンの流通に伴って、弁体6は押し上げられ、流入口51及び流出口52は大きく開口する。
【0032】
ここで、弁室13とスペース26とは連通している。そのため、ドレンの温度がしだいに上昇すると、バイメタルリング71が加熱される。それにより、バイメタルリング71の径が大きくなり、バイメタルリング71は、
図3に示すように、テーパ面56に沿って降下する。それに応じて、支持リング72は、シート面53から上方に突出しない位置まで降下する。つまり、支持リング72は、弁体6の開閉に影響を与えない位置へ移動する。
【0033】
尚、流入路15を流通するドレンの一部は、導入路23を介して導入室22へ導入される。導入室22は、ドレンで満たされる。導入室22のドレンは、導出路24を介して流入路15へ流出する。
【0034】
その後、ドレントラップ100に蒸気が流入すると、蒸気は、流入ポート11、流入路15及び流入口51を介して弁室13へ流入する。弁室13へ流入した蒸気は、流出口52を介して流出する。このとき、蒸気が弁体6の下面を高速で流れることによって、弁体6の下方にはベルヌーイの定理により低圧域が生じる。さらには、蒸気は、弁室13内において弁体6の上方へも流れ込み、圧縮されることで弁体6の上方に高圧域が生じる。この圧力関係によって、弁体6は、押し下げられ、
図4に示すように、シート面53に着座する。この閉弁状態において、弁室13内は、比較的高圧の蒸気で満たされており、弁体6の上面にはこの圧力が作用している。一方、弁体6の下面のうち流入口51を塞いでいる部分には、流入口51内の蒸気の圧力が作用している。流入口51の蒸気よりも弁室13の蒸気の方が高圧であり、かつ、弁体6のうち弁室13の蒸気の圧力が作用する部分の面積の方が流入口51の蒸気の圧力が作用する部分の面積よりも大きいので、弁体6は、弁室13内の蒸気によってシート面53に押し付けられ、閉弁状態が維持される。
【0035】
ここで、流入路15を流通する蒸気の一部は、導入路23を介して導入室22へ導入される。導入室22は、蒸気で満たされる。導入室22の蒸気は、導出路24を介して流入路15へ流出する。閉弁状態において、導入室22は、弁室13とは連通していない。導入室22は、ケーシング1の外部と弁室13との間に介在するように配置されているので、ケーシング1の外部環境が弁室13に与える影響が低減される。詳しくは、仮に内蓋3が外部環境に晒されている場合、内蓋3が外気又は風雨で冷却されると、弁室13内の蒸気が冷却されて凝縮してしまい、閉弁状態を維持できない可能性がある。それに対し、導入室22が設けられていることによって内蓋3が外部環境に晒されることが防止される。これにより、弁室13内の蒸気の温度低下が抑制される。それに加えて、導入室22には、蒸気が導入されているので、弁室13内の蒸気が保温される。このことによっても、弁室13内の蒸気の温度低下が抑制される。
【0036】
尚、外蓋4は、ケーシング1の外部環境に晒されるので、外気又は風雨の影響を受ける。外蓋4が外気又は風雨で冷却されると、導入室22内の蒸気が冷却され、凝縮し得る。その場合、発生したドレンは、導出路24から流入路15へ導出され、導入路23から流入路15内の蒸気が導入される。つまり、流入路15に蒸気が存在する間(詳しくは、導入路15のうち導入路23の上流端が位置する部分に蒸気が存在する間)は、導入室22の蒸気が凝縮しても、導入室22には蒸気が補充される。こうして、閉弁状態が長期間維持される。
【0037】
弁体6が閉弁した状態で、ドレントラップ100にドレンが流入すると、流入口51がドレンで満たされる。弁座5及び弁体6がドレンで冷却されることによって弁室13内の蒸気も冷却され、弁室13内の圧力が低下する。弁室13内の蒸気によって弁体6を押し下げる力が流入口51のドレンによって弁体6を押し上げる力よりも小さくなると、弁体6は、ドレンによって押し上げられ、開弁する。これにより、ドレンは、ドレントラップ100から速やかに流出する。
【0038】
このとき、前述の如く、流入路15を流通するドレンの一部は、導入路23を介して導入室22へ導入される。導入室22へ導入されたドレンは、内蓋3を冷却する。これにより、弁室13内の蒸気の冷却が促進され、ひいては、開弁が促進される。
【0039】
このようにして、ドレントラップ100は、ドレンを流出させる一方、蒸気の流出を阻止する。
【0040】
ここで、導入室22にはカバー8が設けられているので、弁体6の閉弁状態がより長期間維持される。詳しくは、外蓋4は、前述の如く、外部環境に晒されている。外蓋4が外部環境によって冷却されると、導入室22内の蒸気も冷却され、ひいては、凝縮し得る。蒸気の凝縮は外蓋4の近傍で生じ易く、発生したドレンは、外蓋4の内面に付着したり、そのまま滴下したりする。このとき、カバー8は、内蓋3の上方に配置されており、ドレンが内蓋3、特に、天井部31に落下することを防止する。カバー8に落下したドレンは、カバー8の周縁から落下する。カバー8は、内蓋3の天井部31の全面を覆っているので、カバー8から落下するドレンは、天井部31の外周側、即ち、ケーシング本体2の円筒壁21の上端面に落下する。円筒壁21の上端面に落下したドレンは、導出路24を介して流入路15へ導出される。このように、導入室22でドレンが発生しても、内蓋3に付着するドレンが低減される。それにより、ドレンによる内蓋3の冷却が抑制され、ひいては、弁室13の蒸気の冷却が抑制される。その結果、閉弁状態がより長期間維持される。
【0041】
それに加えて、カバー8と天井部31とは接触していない。そのため、カバー8がドレンで冷却されたとしても、天井部31がカバー8で冷却されることが抑制される。
【0042】
一方、カバー8と天井部31との間に隙間が形成されているので、ドレントラップ100にドレンが流入するときには、導入室22に導入されるドレンがカバー8と天井部31との間に流れ込む。つまり、カバー8は、ドレンによる天井部31の冷却を阻害しない。そのため、弁体6を閉弁状態から開弁状態へ速やかに切り替えることができる。
【0043】
以上のように、ドレントラップ100は、流体が流入する流入ポート11、流体が流出する流出ポート12、及び、弁室13が形成されたケーシング1と、弁室13へ流体を流入させる流入口51、及び、弁室13から流体を流出させる流出口52が形成された弁座5と、弁室13に収容され、流入口51及び流出口52を開閉する弁体6とを備え、弁体6は、ドレンが流入口51を介して弁室13へ流入するときに開弁する一方、蒸気が流入口51を介して弁室13へ流入したときに弁室13内の蒸気の圧力によって閉弁し、ケーシング1には、内蓋3(仕切壁)によって弁室13と仕切られ、弁室13よりも上流側の流体が導入される導入室22が、ケーシング1の外部と弁室13との間に介在するように形成され、導入室22には、導入室22内で凝縮して発生したドレンの内蓋3への付着を抑制するカバー8が内蓋3を覆うように設けられている。
【0044】
この構成によれば、流入ポート11を介してケーシング1に流入した流体は、流入口51を介して弁室13へ流入し得る。弁室13の流体は、流出口51を介して弁室13から流出し、流出ポート12を介してケーシング1から流出し得る。流体がドレンの場合には、弁体6は開弁し、ドレンの弁室13の通過を許容する。一方、流体が蒸気の場合には、弁体6は閉弁し、蒸気の弁室13の通過を阻止する。つまり、ドレントラップ100は、ドレンの流出を許容する一方、蒸気の流出を阻止する。
【0045】
ここで、導入室22が、ケーシング1の外部と弁室13との間に介在するように形成され、導入室22には、弁室13よりも上流側の流体が導入される。ケーシング1に蒸気が流入しているときには、弁室13が蒸気で満たされて弁体6が閉弁すると共に、導入室22は蒸気で満たされている。弁室13は、蒸気で満たされた導入室22によって外部環境から隔離されると共に、導入室22の蒸気で保温される。これにより、弁室13内の蒸気の温度低下が抑制され、閉弁状態が長期間維持される。それに加えて、導入室22には、導入室22内で凝縮して発生したドレンの内蓋3への付着を抑制するカバー8が内蓋3を覆うように設けられている。導入室22が外部環境の影響を受けて、導入室22内の蒸気が凝縮しても、ドレンの内蓋3への付着がカバー8によって抑制される。そのため、導入室22内で凝縮したドレンによって内蓋3が冷却されることが防止される。このように、ケーシング1の外部環境が弁室13に与える影響を低減し、閉弁状態をより一層維持することができる。
【0046】
また、カバー8は、内蓋3との間に隙間を有する状態で内蓋3の上方に位置する。ここで、「隙間を有する状態」とは、2つの部材が完全に非接触な状態だけでなく、2つの部材が部分的に連結され、それ以外の部分では隙間が形成された状態も含む意味である。
【0047】
この構成によれば、隙間が形成された部分においては、カバー8と内蓋3との熱伝導が防止される。これにより、導入室22内で凝縮したドレンによってカバー8が冷却されたとしても、カバー8によって内蓋3、ひいては、弁室13内の蒸気が冷却されることが抑制される。一方、弁体6が閉弁状態においてケーシング1にドレンが流入し始めた場合には、導入室22にドレンが導入される。ドレンは、カバー8と内蓋3との隙間に流れ込み、内蓋3を冷却する。これにより、弁室13内の蒸気の冷却が促進され、ひいては、弁体6の開弁が促進される。
【0048】
さらに、ケーシング1には、流入ポート11から弁室13へ向かう流体が流通する流入路15から分岐して、弁室13よりも上流側の流体を導入室22へ導入する導入路23と、導入室22の流体を流入路15へ合流させる導出路24が形成され、流入路15において、導出路24の下流端は、導入路23の上流端よりも下流に位置している。
【0049】
この構成によれば、流入路15において、導出路24の下流端の部分よりも導入路23の上流端の部分の方が圧力が高いので、導入路23、導入室22、導出路24の順に流体の流れが形成される。導入室22の蒸気が凝縮した場合には、流入路15の蒸気が導入路23を介して導入室22に導入され、導入室22のドレンは導出路24を介して流入路15へ導出される。そのため、導入室22が外部環境の影響を受けた場合であっても、導入室22が蒸気で満たされた状態がしばらく維持される。
【0050】
具体的には、ケーシング1は、流入ポート11及び流出ポート12が形成されたケーシング本体2と、ケーシング本体2に取り付けられ、弁室13を少なくとも部分的に区画する内蓋3と、内蓋3を覆うようにケーシング本体2に取り付けられ、ケーシング本体2及び内蓋3と共に導入室22を区画する外蓋4とを有し、仕切壁は、内蓋3によって形成されている。
【0051】
この構成によれば、ケーシング本体2に内蓋3及び外蓋4を取り付けるという簡単な構成で、ケーシング1の外部と弁室13との間に介在し、仕切壁によって弁室13と仕切られた導入室22を形成することができる。
【0052】
また、カバー8は、外蓋4に設けられ、内蓋3と接触していない。
【0053】
この構成によれば、導入室22内で凝縮したドレンによってカバー8が冷却されたとしても、カバー8によって内蓋3、ひいては、弁室13内の蒸気が冷却されることがより一層防止される。
【0054】
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0055】
例えば、ケーシング1は、ケーシング本体2、内蓋3及び外蓋4を有しているが、これに限られるものではない。ケーシング1は、流入ポート、流出ポート、弁室及び導入室が形成される限り、任意の構成を採用し得る。弁室13及び導入室22は、ケーシング本体2に内蓋3及び外蓋4を取り付けることによって形成されているが、これに限られない。
【0056】
カバー8は、内蓋3の天井部31の全面を覆っているが、これに限られるものではない。カバー8は、天井部31を部分的に覆っていてもよい。カバー8は、天井部31のうちカバー8が覆っている部分へのドレンの付着を低減できるので、その限度において天井部31のドレンによる冷却を抑制できる。
【0057】
また、カバー8は、外蓋4に取り付けられているが、例えば、内蓋3に取り付けられていてもよい。例えば、天井部31にボスが設けられ、カバー8がボスに取り付けられていてもよい。その場合、ボス以外の部分においては、カバー8と天井部31との間に隙間が形成されている。カバー8は、ボスを介して天井部31と熱的に接続されることになるが、熱的に接続される部分は限定的なので、カバー8がドレンで冷却されても、天井部31に与える影響は小さい。別の例としては、カバー8が断熱材で形成され、天井部31の上面に接触する状態で取り付けられていてもよい。すなわち、天井部31の上面が断熱材で覆われることになる。このような構成であっても、導入室22で発生したドレンによって天井部31が冷却されることが抑制される。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上説明したように、ここに開示された技術は、ドレントラップについて有用である。
【符号の説明】
【0059】
100 ドレントラップ
1 ケーシング
11 流入ポート
12 流出ポート
13 弁室
15 流入路
2 ケーシング本体
22 導入室
23 導入路
24 導出路
3 内蓋(仕切壁)
4 外蓋
5 弁座
51 流入口
52 流出口
6 弁体
8 カバー