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特許7140599逆止弁および該逆止弁を有する動作試験装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】逆止弁および該逆止弁を有する動作試験装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 15/02 20060101AFI20220913BHJP
【FI】
F16K15/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018155956
(22)【出願日】2018-08-23
(65)【公開番号】P2020029913
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000109428
【氏名又は名称】日本エア・リキード合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西岡 達郎
(72)【発明者】
【氏名】小杉 康
(72)【発明者】
【氏名】星野 英一
(72)【発明者】
【氏名】篠原 久幸
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-252565(JP,A)
【文献】実開平05-073074(JP,U)
【文献】実公昭34-021361(JP,Y1)
【文献】特開昭63-251699(JP,A)
【文献】特開2016-125643(JP,A)
【文献】特開2016-017620(JP,A)
【文献】特開2015-021608(JP,A)
【文献】特開2008-202624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体を移動させて、二次側から一次側へと流体の流通を止めるための逆止弁であって、
前記流体が流通する通路の内部にその通路軸方向に沿って摺動可能に配置される前記弁体と、前記弁体の一次側に設けられる遮断部と当接することで前記流体の流通を止める弁シート部と、前記弁体の前記遮断部を前記弁シート部から離間させるように前記弁体に当接配置される付勢手段とを有し、
前記逆止弁の一次側に配置され、前記付勢手段と、前記弁体とを収納し、前記弁シート部が流体の通路に形成されている一次側ボディと、
前記一次側ボディの二次側に挿入されるように配置される二次側ボディとを有し、
前記二次側ボディの前記一次側ボディ側の内径は前記弁体の直径よりも小さい、
逆止弁。
【請求項2】
弁体を移動させて、二次側から一次側へと流体の流通を止めるための逆止弁であって、
前記流体が流通する通路の内部にその通路軸方向に沿って摺動可能に配置される前記弁体と、前記弁体の一次側に設けられる遮断部と当接することで前記流体の流通を止める弁シート部と、前記弁体の前記遮断部を前記弁シート部から離間させるように前記弁体に当接配置される付勢手段とを有し、
前記逆止弁の一次側に配置され、前記付勢手段と、前記弁体とを収納し、前記弁シート部が流体の通路に形成されている一次側ボディと、
前記一次側ボディの二次側に挿入されるように配置される二次側ボディとを有し、
前記一次側ボディは、
第一内径を有する流体導入部と、
前記第一内径(a)よりも大きい第二内径を(b)有し、前記弁シート部が形成されている、前記付勢手段を収容する付勢手段収納部と、
前記第二内径を(b)よりも大きい第三内径(c)を有し、前記弁体が前記弁シート部に離間および当接するように摺動可能に収容する弁体収納部と、
を有し、
前記一次側から前記二次側の方向に、
前記流体導入部、前記付勢手段収納部、前記弁体収納部の順に直列に配置され、前記第一、第二、第三内径において前記流体が流通する、
逆止弁。
【請求項3】
前記付勢手段は、圧縮ばねである、請求項1に記載の逆止弁。
【請求項4】
前記逆止弁の二次側圧力が、前記逆止弁の一次側圧力よりも高い場合において、前記二次側圧力と前記一次側圧力との圧力差が所定の圧力以上となったときに前記逆止弁が閉弁する、請求項1または請求項2に記載の逆止弁。
【請求項5】
前記二次側ボディは、検査用流体導入部を有することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の逆止弁。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の逆止弁と、
前記逆止弁の二次側に配置される試験対象機器と、
前記逆止弁と前記試験対象機器との間に検査用流体を供給する検査用流体供給配管とを有する、
前記試験対象機器の動作試験を行うための動作試験装置。
【請求項7】
前記試験対象機器は、前記逆止弁の一次側に配置される圧力容器の圧力が許容圧力以上になったときに前記圧力容器の圧力を開放するための安全弁である、請求項6に記載の動作試験装置。
【請求項8】
前記試験対象機器は、前記逆止弁の一次側に配置される圧力容器の圧力を測定するための圧力計である、請求項6に記載の動作試験装置。
【請求項9】
前記逆止弁が開状態である場合における開口面積は、前記安全弁の必要噴き出し面積以上の面積である、請求項7に記載の動作試験装置。
【請求項10】
前記検査用流体供給配管は前記検査用流体供給配管内の圧力を測定する圧力測定機構を有し、前記逆止弁の一次側は圧力設備に接続される、請求項8または請求項9に記載の動作試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガス貯蔵設備、高圧ガス貯蔵設備、石油化学等のプラント、蒸留塔、ガス貯蔵用シリンダー等の圧力容器もしくはそれに付随する配管等の安全弁圧力動作試験に用いられる逆止弁および該逆止弁を有する動作試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような圧力容器には、圧力容器内の流体の圧力が、所定の圧力異常の圧力となって流体の漏洩や圧力容器の破損が発生する現象を抑制するために、安全弁が取り付けられている。安全弁は、圧力容器内が一定の圧力以上の圧力となった場合に作動し、圧力容器内の流体を放出させることにより、圧力容器の圧力が一定の圧力以上にならないようにする。
【0003】
安全弁は定期的に動作確認等の検査をしなければならない。一般的には、圧力容器と安全弁との間に開閉弁を設けられている。該開閉弁を閉じて、安全弁を圧力容器から取り外した後、その取り外された安全弁について、独立した検査設備において検査が行われている。この方法では、安全弁の検査中には圧力容器に安全弁が取り付けられていないため、検査中には圧力容器の安全が確保できないと言う問題がある。また、安全弁を圧力容器から取り外し、検査終了後には再度取り付けるという作業が発生し、作業工数が多く、検査に長時間を要する。安全上の理由により、検査中には圧力容器を使用できない場合もある。
さらに、圧力容器に安全弁を取り付けた後に開閉弁を開ける必要があるが、手動での開閉操作であるため、操作忘れが生じるおそれがある。開閉弁を閉じたままにしていた場合、圧力容器内の圧力が上昇しても安全弁に圧力が伝達されず、安全弁が動作しないため、安全上のリスクが高い。
【0004】
安全弁を圧力容器から取り外すことなく、安全弁の検査を行う方法も提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1の方法によれば、圧力容器と安全弁との間に逆止弁が設けられている。逆止弁の一次側に配置されている圧力容器内の圧力が上昇した場合には、逆止弁が開弁し、圧力容器内の圧力が安全弁に加わることにより、安全弁が開放される。安全弁の検査時には逆支弁と安全弁との間(すなわち逆止弁の二次側)に検査用流体が導入される。このとき検査用流体の圧力が安全弁と逆止弁に加わり、逆止弁は閉弁し、安全弁は一定圧力以上になると圧力を開放する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭63-251699
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示されている逆止弁は、その一次側と二次側との間に最低開弁圧力差以上の圧力差がある場合にのみ開弁し、逆止弁の上流側と下流側の圧力が均一になると、自重および/またはばねにより閉弁する。ここで、最低開弁圧力差とは、逆止弁を開くために必要な、逆止弁の一次側と二次側との圧力差をいう。
したがって、特許文献1に開示される方法では、圧力容器内の圧力が安全弁の動作圧力以下となっている通常時には閉弁している。すなわち、圧力容器内の圧力が上昇する短い時間にのみ逆止弁が開弁するが、それ以外の期間は常に閉弁している。そのため、閉弁している期間中に逆止弁の弁体がボディ(弁箱ともいう)に固着してしまい、順方向に流体の流れがあっても逆止弁が動作しない不具合が生じるおそれがある。また、弁体の固着の有無を検査するためには、逆止弁を取り外さなければならないが、逆止弁を圧力容器から取り外し可能とするためには逆止弁と圧力容器との間にさらに開閉弁等を設ける必要があり、設備が複雑になる。
【0007】
以上に述べたように、特許文献1の方法では逆止弁の弁体の固着を抑制して逆止弁が長期間にわたり正常に作動するようにしたり、逆止弁の弁体の固着の有無を検査したりすることは困難である。
【0008】
以上の背景により、検査対象機器あるいは計測器を取り外すことなく、検査可能とする逆止弁を提供することを目的とする。また、長期間正常に作動し、また、正常に作動するかどうかを簡便に検査することができる逆止弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明にかかる逆止弁は、弁体を移動させて流体の流通を止めるための逆止弁であって、
前記流体が流通する通路の内部にその通路軸方向に沿って摺動可能に配置される前記弁体と、前記弁体の一次側に設けられる遮断部と当接することで流体の流通を止める弁シート部と、前記弁体の前記遮断部を前記弁シート部から離間させるように前記弁体に当接配置される付勢手段とを有する。
上記の逆止弁は、流体を逆止弁の一次側から二次側へと流通させることが可能であるが、二次側から一次側へと流通させようとすると弁体が移動し、流体の流通を遮断する。本発明にかかる逆止弁では、一次側から二次側の方向に、付勢手段、弁シート部、弁体の順に配置される。
【0010】
付勢手段は、ばねであってもよく、例えば圧縮ばねであってもよい。付勢手段がばねである場合において、ばねと弁体は当接している。弁シート部は、ばねが伸張される状態におけるばねと弁体との当接面よりも一次側に位置する。ばねの片側(ばねの二次側の面であり、弁体と隣接している面)は、弁体と当接している。
流体が逆止弁を流通する通常時は、一次側の流体の圧力が二次側の流体の圧力よりも高いか同等となっており、弁体とばねとが当接している面は、ばねにより押圧されることにより弁シート部から離間するように配置されている。
逆止弁の一次側(ばね側)の圧力が、逆止弁の二次側(弁体側)の圧力よりも高くなると、逆止弁内部を一次側から二次側へと流体が流通する。逆止弁の一次側の圧力と二次側の圧力とが同等であるときは、逆止弁の一次側と二次側とが流通可能な均衡状態となる。
逆止弁の二次側の圧力が、一次側の圧力よりも高くなると、流体はばねの圧力に抗して弁体を押圧し、弁体の遮断部は、弁シート部に当接される。これにより逆止弁の一次側と二次側との間の流体の流通は遮断される。
【0011】
従来の逆止弁では、図6に示すように逆止弁101の一次側から二次側の方向に、弁シート部104、弁体102、付勢手段103(例えば、ばね)、の順に配置されている。
なお、図6に示される矢印は、逆止弁が開弁する際に逆止弁を通過する、ガスの流れ方向を示している。ばね103は、弁体102を常時弁シート部104に押圧接触させるように配置されている。このため、逆止弁101の一次側の圧力と二次側の圧力とが同等である場合や、二次側圧力のほうが高い場合には、弁体102は弁シート部104に当接する状態となる。逆止弁101の一次側の圧力が、二次側の圧力よりも高い場合であって、かつ、その圧力差が該逆止弁の最低開弁圧力差以上である場合にのみ、弁体102は弁シート部104から後退し、一次側から二次側へと流体が流入する。逆止弁102の一次側の圧力と二次側の圧力とが同等、または二次側圧力のほうが高い状態が定常状態である系においては、弁体102が長時間弁シート部104に当接している。このような場合、弁体102が弁シート104に固着し、逆止弁101の一次側の圧力が、二次側の圧力よりも高くなっても正常に逆止弁101が作動しない(すなわち、弁体102が弁シート部104から後退しない)現象が生じうる。弁体102および弁シート部104がいずれも金属製である場合、いずれもが樹脂製である場合、いずれか一方が金属製で他方が樹脂製である場合のいずれであっても、弁体102が弁シート部104に固着する現象が生ずる可能性がある。
【0012】
本発明の逆止弁では、あえてばねと弁体との配置を逆にすることにより、通常時には弁シート部に弁体の遮断部が接触しない構成とした。
逆止弁の二次側の圧力のほうが一次側の圧力よりも所定の圧力だけ高い場合に限り、弁シート部に弁体の遮断部が当接されることにより逆止弁は閉弁する。すなわち、二次側の圧力が高くなると二次側から逆止弁に流入する流体により、弁体はばねに抗して押圧され、弁体の遮断部が弁シート部に押圧当接される。前記所定の圧力は、逆止弁が閉じるのに必要な、逆止弁の一次側と二次側との圧力差をいう。
言い換えると、逆止弁の二次側の圧力と付勢手段であるばねのばね圧との合計圧力が、逆止弁の一次側の圧力よりも大きくなると、逆止弁は閉弁する。
したがって、通常時には、弁体の遮断部が弁シート部に当接されていないことから、弁体が弁シートに固着する現象は起こらない。
【0013】
本発明にかかる逆止弁は、一次側から二次側へと流体を流通させる逆止弁であって、
(1)前記逆止弁の一次側に配置され、前記付勢手段と、前記弁体とを収納し、前記弁シート部が流体の通路に形成されている一次側ボディと、
(2)前記一次側ボディの二次側に挿入されるように配置される二次側ボディと、を有し、
前記二次側ボディの前記一次側ボディ側の内径は前記弁体の直径よりも小さいことを特徴とする。
【0014】
一次側ボディと、一次側ボディの内部に収納された付勢手段および弁体を抑え込むようにして、二次側ボディが一次側ボディに挿入される。二次側ボディの内径は、弁体の直径よりも小さいため、二次側ボディの一次側端面に弁体が規制され、弁体が二次側ボディの内側を通過することは出来ない。このように二次側ボディは、一次側ボディの内部の弁体および付勢手段であるばね等が、流体の流れに同伴されるなどの理由により、一次側ボディから二次側ボディの方向へ移動することを抑制することが可能となる。
一次側ボディと二次側ボディとは、それぞれの中央部に同心の貫通孔(流体の通路に相当する)を有し、その貫通孔を流体が流通する。
【0015】
本発明にかかる逆止弁の一次側ボディは、
第一内径を有する流体導入部と、
第二内径を有し、前記弁シート部が形成されている前記付勢手段を収容する付勢手段収納部と、
第三内径を有し、前記弁体が前記弁シート部に離間および当接するように摺動可能に収容する弁体収納部と、を有し、
第二内径は、第三内径よりも小さく、
前記一次側から前記二次側の方向に、前記流体導入部、前記付勢手段収納部、前記弁体収納部の順に直列に配置される。
流体導入部、付勢手段収納部、および弁体収納部は同心の貫通孔(流体の通路に相当する)を有する。
【0016】
第一内径は、流体が通過することができる太さであれば、任意の太さでよい。第二内径は、付勢手段の外径以上の太さであり、第三内径は、弁体の外径のうちもっとも大きい部分が当接する太さである。また、第二内径と第三内径との接続部分(第二内径と、第三内径との径の違いにより段差形状となっている)に弁シート部が形成される。第二内径は第三内径よりも小さいことにより、第二内径と第三内径の接続部に形成された弁シート部に弁体の遮断部が押圧接触され、逆止弁を閉弁することが可能となる。
【0017】
弁体は、側面に流体流通孔を有する円筒状である。円筒状の弁体の二次側は中空孔を有するが、一次側は中空孔を有しない。前期流体流通孔は、前記中空孔に接続している。円筒状の弁体の一次側は外側側面に流体を流通する流通溝を有している。
通常時に、逆止弁の一次側ボディに流入した流体は、流通溝に流入し、流体流通孔を通過して弁体の二次側の中空孔に流入する。中空孔から流出する流体は逆止弁の二次側ボディに流入し、逆止弁の二次側へと排出される。
【0018】
逆止弁の二次側の流体の圧力が一次側のそれよりも高くなると、流体は付勢手段(例えば、ばね)の付勢圧(例えば、ばね圧)に抗して、弁体の遮断部を弁シートに当接させるように弁体を押圧する。これにより弁体は弁体収納部の内部を摺動し、弁体の遮断部と弁シートが当接する。弁体と弁シートが当接した状態では、逆止弁の二次側から流入した流体は、中空孔、流体流通孔、流通溝の順に流通するが、弁体と弁シートの間を流通することはないため、一次側に流入することはできない。このような構成により、逆止弁は閉弁し、二次側から一次側への流体の流通を遮断するのである。
弁体が逆止弁の二次側からの流体により押圧され、閉弁される圧力(以降、最低閉弁圧力差という)以上の圧力差があり、二次側のほうが一次側よりも圧力が高い場合には逆止弁は閉弁する。
【0019】
また本発明は、上記の発明にかかる逆止弁を用いて、前記逆止弁の二次側に配置される試験対象機器の動作試験を行うための動作試験装置である。該動作試験装置は、上記の発明にかかる逆止弁と、前記逆止弁の二次側に配置される試験対象機器と、前記逆止弁と前記試験対象機器との間に検査用流体を供給する検査用流体供給配管とを有する。
【0020】
前記試験対象機器は、前記逆止弁の一次側に配置される圧力容器の圧力が許容圧力以上になったときに前記圧力容器の圧力を開放するための安全弁であってもよい。この場合、圧力容器と、安全弁との間に逆止弁が配置され、逆止弁の弁体と安全弁との間に検査用流体導入部が配置される。検査用流体導入部は、逆止弁の二次側ボディ上に設けられてもよいが、二次側ボディのさらに二次側に接続された配管上に設けられても良い。
検査用流体が貯留された検査用流体容器は、検査用流体接続口を介して検査用流体供給配管に接続される。該検査用流体供給配管は、検査用流体導入部に接続されており、検査用流体を逆止弁へと供給する。検査用流体供給配管には開閉弁が設けられている。検査用流体容器は、検査を実施するときに検査用流体接続口に接続されるが、検査を実施していないときには接続が外されていてもよい。
【0021】
通常時、逆止弁は開弁しているため、圧力容器内の圧力と、圧力容器から安全弁の一次側までの間の圧力は同じである。圧力容器内の圧力が、予め定められた設定圧力以上になると、安全弁が圧力を開放するように作動する。圧力が開放され、圧力容器内の圧力が前期設定圧力以下になると、安全弁は閉弁する。
この安全弁の動作試験を行うときには、検査用流体供給配管上に設けられた開閉弁が開弁されることにより、検査用流体供給配管から逆止弁および安全弁の方向に検査用流体が導入される。検査用流体は、その圧力が、安全弁の動作圧力よりも高くなるまで導入される。ここで安全弁の動作圧力は、圧力容器内の通常時の圧力よりも高い。したがって逆止弁の一次側の圧力よりも、逆止弁の二次側の圧力が高くなり、逆止弁は閉弁する。このため検査用流体の圧力が、安全弁の動作圧力よりも高くなると、安全弁はその圧力を開放するように作動する。安全弁の作動時の検査用流体の圧力を確認することにより、安全弁の動作確認を行う。
【0022】
安全弁の動作確認が終了した後に、開閉弁を閉じて、検査用流体容器を取り外す。ここで開閉弁を開けると、二次側ボディ内部の流体が開閉弁から放出される。すると逆止弁一次側の圧力よりも二次側の圧力が低くなり、逆止弁は開弁する。ここで、開閉弁から逆止弁一次側の流体が放出されることを確認することにより、逆止弁の弁体の遮断部が弁シートから離間していることを確認することが可能となる。
【0023】
上記の動作試験装置において、逆止弁が開状態である場合における開口面積は、前記安全弁の必要噴き出し面積以上の面積であってもよい。
【0024】
安全弁の必要噴き出し面積以上の開口面積を有する逆止弁を配置することにより、逆止弁の一次側の圧力が急激に上昇した場合であっても逆止弁を通過する流体量に制限されることなく、安全弁の噴き出し量に応じて迅速に流体を放出することが可能となる。
【0025】
上記の動作試験装置において、検査用流体供給配管は前記検査用流体供給配管内の圧力を測定する圧力測定機構を有し、前記逆止弁の一次側は圧力設備に接続されていてもよい。
【0026】
圧力測定機構は、安全弁の作動圧力に応じた圧力の流体を、逆止弁の二次側に導入するために必要となる。
【0027】
前記試験対象機器は、前記逆止弁の一次側に配置される圧力容器の圧力を測定するための圧力計であってもよい。この場合、圧力容器と、圧力計との間に逆止弁が配置され、逆止弁と圧力計との間に検査用流体供給配管が配置される。通常時、逆止弁は開弁しているため、圧力容器内の圧力を圧力計により測定することが可能となる。
この圧力計の動作試験を行うときには、検査用流体供給配管から検査用流体が導入される。検査用流体は、圧力計の動作範囲または圧力計の試験範囲の圧力で導入される。検査用流体の圧力は、例えば検査用流体導入配管に設けられた検査用流体用圧力計、圧力調整器等により既知である。この検査用流体の圧力と、試験対象機器である圧力計の表示圧力とを比較することにより、圧力計の動作試験(例えば、圧力計の校正)を行うことが可能となる。
【0028】
本発明にかかる逆止弁によれば、安全弁を圧力容器から取り外すことなく安全弁の検査を実施することが可能となる。また、該逆止弁は長期間正常に作動し、また、正常に作動するかどうかを簡便に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施形態1にかかる逆止弁の構成例を示す図である。
図2】実施形態1にかかる逆止弁の構成例を示す図である。
図3】実施形態1にかかる逆止弁の構成例を示す図である。
図4】実施形態2にかかる動作試験装置の構成例を示す図である。
図5】実施形態1および実施形態2にかかる弁体の構成例を示す図である。
図6】従来の逆止弁の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお、以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
【0031】
(実施形態1-逆止弁)
実施形態1の逆止弁1について図1~3を用いて説明する。
図1に示す逆止弁1は、弁体12を移動させて流体の流通を止めるための逆止弁である。逆止弁1は、流体が流通する通路15の内部にその通路軸方向に沿って摺動可能に配置される弁体12と、前記弁体の一次側に設けられる遮断部61と当接することで流体の流通を止める弁シート部13と、弁体の前記遮断部61を前記弁シート部から離間させるように前記弁体12に当接配置される付勢手段であるばね11と、を有する。
通路15は、逆止弁1内部の中空の貫通孔の部分である。
通常時において、流体は逆止弁1の一次側(図1中の下側)から、逆止弁1の一次側ボディ21の内部を経由して、二次側ボディ22の内部に流入し、逆止弁1の二次側(図1中の上側)へと流出する。
【0032】
付勢手段であるばね11は、一次側圧力と二次側圧力が同等であるか、あるいは一次側の圧力が二次側の圧力よりも高い場合には、弁体12を押し上げるように押圧している。
弁体12は、弁シート部13に当接される面(遮断部61)を有し、弁シート部13に弁体12の遮断部61が当接される状態において弁体12の一次側と二次側との流体の流通を遮断し、弁シート部13から弁体12が当接されない状態において弁体12の一次側と二次側の流体を流通させる構造であればよい。
図5に示す弁体12においては、弁体12の外周部には逆止弁1の一次側と二次側とを流通させるように、水平方向に開口された開口部14を有する。弁体12の下部から開口部14にかけて、弁体12の外周に垂直方向に溝部111が設けられている。開口部14および溝部111は、弁体12に1つずつ設けられていてもよいが、2以上設けられていても良い。開口部14の数と、溝部111の数は同じである。弁体12の底部に遮断部61が設けられている。遮断部61は弁シート部13に当接して流通を遮断することができる形状であれば良く、傾斜形状または平面形状であってもよい。
弁体12の底部は縁部に傾斜を有する平面状であり、傾斜を有する縁部が遮断部61となる。弁体12の外周に設けられた該溝部111以外には流体の流通する孔はない。弁体12の底部の平面の少なくとも一部は弁シート部13に当接する。
【0033】
弁体12の上部中央には、流体が流通する上部孔112が設けられている。上部孔112は弁体12の上部に凹部を設けるように配置されている。上部孔112の深さ(図5中にCで示す)は、弁体12の上面から、開口部14の下部までの長さと同等またはそれ以上であればよい。このような弁体12の構造とすることにより、通常時において流体は弁体12の下部から溝部111へ流入し、開口部14を通過して、上部孔112から弁体12の上へと流通すし、逆止弁1の二次側ボディ22の方向へと流入する。
【0034】
一方、逆止弁1の二次側の圧力が高くなると、二次側ボディ22内の流体は、弁体12を押し下げるように、ばね11の圧力に抗して弁体12を押圧し、弁体12の遮断部61を弁シート部13に当接させる。弁シート部13と弁体12の遮断部61が接触すると、溝部111から弁体12の下部への流体の流れが遮断されるため、逆止弁1は閉弁された状態となる。詳しくは、弁体12の上部から上部孔112に流入した流体が、その圧力によって弁体12を押し下げる。これにより、弁体12の遮断部61はばね11の圧力に抗して弁シート部13に当接される。上部孔112に流入した流体は、開口部14を経由して溝部111へ流入する。しかし弁体12の下部への経路は、弁体12と弁シート部13が当接することにより遮断されているため、流体は溝部111から弁体12の下部へと流入することができない。
【0035】
二次側ボディ22は、一次側ボディ21に挿入されるように配置される。二次側ボディ22は、一次側ボディ21にスクリュー式に挿入されてもよく、フィッティング金具等により挿入、密着されても良い。
一次側ボディ21は、逆止弁1の一次側に配置され、付勢手段であるばね11と、弁体12とを収納し、弁シート部13を有する。二次側ボディ22の一次側ボディ側21の内径Bは弁体12の直径Aよりも小さい。このため、流体が逆止弁1の一次側から弁体12を押し上げても、弁体12は二次側ボディ22の内部を通過して逆止弁1の二次側へ流出することはない。
【0036】
図2に示すように、一次側ボディ21は、第一内径(a)を有する流体導入部31と、
第二内径(b)を有し前記付勢手段であるばね11を収容する付勢手段収納部32(図2中に記載)と、
第三内径(c)を有し、前記弁体12を収容する弁体収納部33と、を有し、
前記一次側から前記二次側の方向に、前記流体導入部31、前記付勢手段収納部32、前記弁体収納部33の順に直列に配置される。
本実施形態において、第一内径(a)<第二内径(b)<第三内径(c)の関係である。これにより、流体導入部31の二次側端面がばね11の一次側への移動を規制し、弁体12の一次側先端面がばね11の二次側への移動を規制する。また、弁体12の一次側への移動が付勢手段収納部32の二次側端部(弁シート部13)で規制され、弁体12の二次側への最大移動が二次側ボディ22の先端面で規制される。
【0037】
(別実施形態)
逆止弁1の動作確認をする場合や、逆止弁2の二次側に取り付けられる安全弁の動作確認の検査を行う場合には、逆止弁1の二次側に接続される配管部分に検査用流体導入部(不図示)を設けても良いが、図1等に示すように、二次側ボディ22に検査用流体導入部41を配置しても良い。検査用流体導入部41には、図3に示すように開閉弁42を取付けてもよい。開閉弁42は検査用流体を導入するためおよび/または逆止弁1の弁体12の遮断部61の固着確認の際の流体を導出するために用いられる。
なお、図3中に示す、一次側ボディ21および二次側ボディ22の内部の矢印は逆止弁内部を流通する気体または液体の流れを示す。図3中の検査用流体接続口43および検査用流体導入部41を通過する矢印は、検査用流体の流れを示す。
【0038】
(実施形態2)
図4に示す動作試験装置2は、逆止弁1の二次側に接続され、前記逆止弁1の二次側の圧力が許容圧力以上になったときに開放される試験対象機器である安全弁51の動作試験を行うための動作試験装置である。
動作試験装置2は、
逆止弁1と、
安全弁51と逆止弁1との間に分岐するように配置される検査用流体供給配管41と、
安全弁51と逆止弁1との間に配置される開閉弁42と、を有する。
【0039】
安全弁51は、逆止弁1の一次側に配置された配管15に接続される流体の圧力が所定の圧力以上になった場合にその圧力を開放する安全弁である。配管15には、例えば液化ガス貯蔵設備、高圧ガス貯蔵設備、石油化学等のプラント、蒸留塔、ガス貯蔵用シリンダー等の圧力容器もしくはそれに付随する配管等が接続されてもよい。
配管15から逆止弁1に流入する流体の圧力が、逆止弁1の二次側の圧力と同等である場合、または逆止弁1の二次側圧力よりも高い場合には、ばね11により弁体12は押し上げられた状態になり、逆止弁1は開弁している状態である。配管15から流入する流体が安全弁51の動作圧力よりも高くなると、安全弁51が作動し、圧力を放出する。
ここで、流体は気体または液体であればよく、気液混合流体でもよい。具体的には、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、天然ガス等の圧縮ガスまたは液化ガスであってもよい。
【0040】
安全弁51の動作試験は、逆止弁1を配管15に接続したままで実施することができる。検査用の流体は検査用流体接続口43に接続される。検査用流体は開閉弁42を通じて、検査用流体供給配管41から逆止弁1の二次側に導入される。逆止弁1の二次側の圧力が、逆止弁1の一次側の圧力よりも高く、その圧力差が最低閉弁圧力以上になると、検査用流体により弁体12がばね11の圧力に抗して押圧され、遮断部61が弁シート部13に当接するように押し下げられる。これにより逆止弁1は閉弁する。ここで、最低閉弁圧力は逆止弁1が閉弁し始めるのに必要な圧力であり、例えば0.0001MPa以上、かつ、安全弁51の動作圧力以下の値である。
【0041】
検査用流体は、気体または液体であり、配管15から導入される流体と同じであってもよいが、異なっていても良い。検査用流体は、流体供給配管61から導入される流体と接触しても化学反応を起こさない流体であることが望ましい。例えば、配管15から導入される流体が窒素または酸素である場合に、検査用流体は窒素とすることができる。検査用流体と、配管15から導入される流体とが同じであれば、検査用流体が配管15に接続される容器等に貯留される流体に混入しても問題とならないため、さらに望ましい。
【0042】
さらに検査用流体供給配管41から導入される検査用流体の圧力を上昇させ、その圧力が安全弁51の動作圧力以上となると安全弁が作動する。安全弁51の作動の有無は、安全弁51から発生する音または安全弁51から流体が放出されることにより確認することができる。安全弁51が作動することにより、逆止弁1の二次側の圧力は、安全弁51の動作圧力以下にまで低下するため、安全弁51は閉弁する。これで安全弁51の動作確認が終了する。
【0043】
安全弁51の動作確認が終了した後に、検査用の流体を検査用流体接続口43から取り外す。その状態で開閉弁42を開けることにより、逆止弁1の二次側の圧力は、周辺環境圧力と同等の圧力(例えば大気圧)にまでさらに低下するため、ばね11は弁体12を弁シート部13から離れる方向に押し上げ、逆止弁1が開弁する。すると流体供給配管61から逆止弁1に導入された流体が、検査用流体接続口43から流出する。この流体の流出を確認することにより、逆止弁1の弁体12が弁シート部13に固着していないことを確認することができる。
【0044】
なお、弁体12が弁シート部13に固着していないことの確認は、開閉弁42を開閉することにのみによって実施可能であるため、安全弁51の動作試験とは独立して、安全弁51を取り外すことなく実施することができる。
【0045】
以上のように、本発明にかかる逆止弁1を有する動作試験装置2を用いることにより、安全弁51を圧力容器から取り外すことなく、安全弁51の動作試験を実施することが可能となる。また、逆止弁1の弁体12が弁シート部13に固着せずに正常に作動するかどうかを、開閉弁42の開閉によって簡便に検査することが可能となる。さらに、逆止弁1の弁体12は、通常時は弁シート部13に接触していないため、弁体12が弁シート部13に固着することがない。
【符号の説明】
【0046】
1 逆止弁
2 動作試験装置
5 配管
11 ばね
12 弁体
13 弁シート部
14 開口部
21 一次側ボディ
22 二次側ボディ
31 流体導入部
32 付勢手段収納部
33 弁体収納部
41 検査用流体導入部
42 開閉弁
43 検査用流体接続口
51 安全弁
61 遮断部
図1
図2
図3
図4
図5
図6