(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】情報処理装置、印刷システム及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
B41F 33/00 20060101AFI20220913BHJP
B41F 9/00 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
B41F33/00 290
B41F33/00 200
B41F9/00 B
(21)【出願番号】P 2018193344
(22)【出願日】2018-10-12
【審査請求日】2021-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】三好 ▲清▼人
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-109372(JP,A)
【文献】特開2015-094675(JP,A)
【文献】特開2008-137195(JP,A)
【文献】特開2003-072037(JP,A)
【文献】特開平10-100368(JP,A)
【文献】特開2014-116653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 33/00
B41F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に搬送される基材に印刷ユニットにより印刷する印刷システムに用いられる情報処理装置であって、印刷情報を保持する印刷情報記憶部を備え、
前記基材を搬送方向に向かって複数の単位領域に区分したとき、前記印刷システムは、前記複数の連続する単位領域それぞれに、当該単位領域を識別するための識別情報を印刷するように構成され、
前記印刷情報は、
前記印刷ユニットの前記単位領域に対する印刷動作に関する動作情報と、
前記単位領域の前記識別情報と、を含み、
同じ単位領域に対応する前記動作情報と、その単位領域の前記識別情報と、が対応づけられて
おり、前記動作情報は、前記複数の単位領域それぞれに印刷された所定の基準マークの印刷位置に関する情報を含むことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記単位領域に印刷された前記識別情報は、数字、文字、図形、記号、模様、バーコードまたはこれらを複合したものを含むことを特徴とする請求項
1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記印刷ユニットは、前記基材にインキを転写する転写ロールを有し、
本情報処理装置は、前記転写ロールが一回転する動作を1回のサイクルとして、前記印刷ユニットの動作情報をサイクル毎に動作情報記憶部に格納し、その格納された動作情報に基づき前記識別情報との対応づけを行うことを特徴とする請求項1
または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記印刷システムは、前記印刷ユニットで印刷された前記複数の単位領域それぞれの画像を画像情報として取得するように構成され、
前記印刷情報は、
前記単位領域に対応する前記画像情報をさらに含み、
同じ単位領域に対応する前記動作情報と、その単位領域の前記画像情報と、が対応づけられていることを特徴とする請求項1から
3のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記印刷情報に基づいて、前記印刷ユニットによる印刷動作の異常の有無を判定する異常判定部を備えることを特徴とする請求項1から
4のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記印刷情報を視認可能な態様で出力する出力部を備えることを特徴とする請求項1から
5のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項7】
連続的に搬送される基材に印刷する印刷ユニットと、
請求項1から
6のいずれかに記載の情報処理装置と、を備えることを特徴とする印刷システム。
【請求項8】
連続的に搬送される基材に印刷ユニットが印刷する印刷システムに用いられる情報処理方法であって、
前記基材を搬送方向に向かって複数の連続した単位領域に区分したとき、同じ単位領域に対応する印刷ユニットの印刷動作に関する動作情報と、その単位領域に印刷された当該単位領域を識別するための識別情報とを対応づけた印刷情報を印刷情報記憶部に格納することを含み、
前記印刷情報記憶部に格納された印刷情報は、前記印刷ユニットで印刷された前記複数の連続した単位領域それぞれの前記動作情報を
含み、
前記動作情報は、前記複数の単位領域それぞれに印刷された所定の基準マークの印刷位置に関する情報を含むことを特徴とする情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷システムに用いられる情報処理装置、印刷システム及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、グラビア印刷システム等の印刷システムでは、ウェブ等の基材の品質管理のため、基材の品質に関する情報を取り扱うことがある。たとえば、特許文献1の技術では、多色印刷でウェブに色ずれが生じた場合に、その色ずれの位置を示すデータを生成しており、そのデータをウェブの検品に利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術は、基材のどの範囲で色ずれ等の異常が生じているかを提供するのにとどまり、個々の印刷ユニットの印刷動作に関する情報を把握できるものではない。また、印刷品質に関する情報と実際に印刷後の印刷部分との対応関係を把握することも容易でない。例えば、色ずれ等の異常が発生したとき、印刷の何枚目という情報を頼りに実際の印刷物を見つけ出し、その印刷状態を目視等で確認して二次的な判断を行うことが考えられる。しかし、この作業には熟練した技術と多くの労力とが必要である。また、基材の巻き出しスプライス点が巻き出されてその一部が破棄され、何枚目という情報が失われた場合、この作業はさらに困難になるという問題がある。これらから、本発明者は、高度な情報管理を実現するうえでは、従来技術に関して改良の余地があるとの認識を得た。
【0005】
本発明のある態様は、こうした状況に鑑みてなされ、その目的の1つは、印刷システムにおいて、高度な情報管理を実現できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の情報処理装置は、連続的に搬送される基材に印刷ユニットにより印刷する印刷システムに用いられる情報処理装置であって、印刷情報を保持する印刷情報記憶部を備える。基材を搬送方向に向かって複数の単位領域に区分したとき、印刷システムは、複数の単位領域それぞれに、当該単位領域を識別するための識別情報を印刷するように構成され、印刷情報は、印刷ユニットの単位領域に対する印刷動作に関する動作情報と、単位領域の識別情報と、を含む。同じ単位領域に対応する動作情報と、その単位領域の識別情報と、が対応づけられている。
【0007】
本発明の別の態様は印刷システムに関し、この印刷システムは、連続的に搬送される基材に印刷する印刷ユニットと、上述の情報処理装置と、を備える。
【0008】
本発明のさらに別の態様は、情報処理方法である。この方法は、連続的に搬送される基材に印刷ユニットが印刷する印刷システムに用いられる情報処理方法であって、基材を搬送方向に向かって複数の単位領域に区分したとき、同じ単位領域に対応する印刷ユニットの印刷動作に関する動作情報と、その単位領域に印刷された当該単位領域を識別するための識別情報とを対応づけた印刷情報を印刷情報記憶部に格納する。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、印刷システムにおいて、高度な情報管理を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態の制御装置が用いられる印刷システムを示す構成図である。
【
図3】実施形態の印刷システムの機能を示すブロック図である。
【
図4】
図4(a)は、
図1の矢視Pbから基材を見た図であり、
図4(b)は、
図4(a)の範囲Pcの拡大図である。
【
図5】実施形態の動作情報記憶部が保持する情報および画像情報記憶部が保持する情報の一例を示す図である。
【
図6】実施形態の印刷情報記憶部が保持する情報の一例を示す図である。
【
図7】実施形態のデータ処理部がする処理を説明するための図である。
【
図8】単位領域の順序数毎の第2印刷ユニット~第4印刷ユニットの見当ずれ量を示すグラフである。
【
図9】単位領域の順序数毎の第1検出用マークから他の検出用マークまでの累積見当ずれ量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施の形態]
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施の形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0013】
なお、以下の説明において、「平行」、「垂直」は、完全な平行、垂直だけではなく、誤差の範囲で平行、垂直からずれている場合も含むものとする。
【0014】
図1~
図4を参照して本実施形態の主な構成を説明する。
図1は、実施形態の制御装置16が用いられる印刷システム10を示す構成図である。
図2は、
図1の一部を拡大して示す構成図である。
図3は、印刷システム10の機能を示すブロック図である。
図4は、印刷された基材12を示す図である。
図4(a)は、
図1の矢視Pbから基材12を見た図であり、
図4(b)は、
図4(a)の範囲Pcの拡大図である。
図4(a)は、基材12に印刷された検出用マーク28および識別情報56を示し、
図4(b)は、検出用マーク28-A~28-Dを拡大している。検出用マーク28および識別情報56については後述する。
【0015】
印刷システム10は、連続的に搬送される基材12に複数の印刷ユニット14-A~14-Dにより順次に印刷するためのものである。本明細書での「印刷」は、文字、絵柄等の所定のパターンが断続的に形成されるようにインキを転写する場合の他に、一様に連続するようにインキを転写する場合も含まれる。前者は、たとえば、グラビア印刷やオフセット印刷により行われ、後者は、たとえば、コーターにより行われる。本実施形態では、グラビア印刷システムを印刷システム10に適用した例を説明する。
【0016】
本実施形態の基材12はウェブであるが、製函用シートや枚葉等でもよい。基材12は、不図示の基材供給機構から供給され、不図示のガイドロール等の搬送部材を用いて連続的に搬送される。
【0017】
印刷システム10は、主に、複数の印刷ユニット14-A~14-Dと、画像情報取得装置58と、制御装置16と、情報処理装置18と、開始信号用センサ52と、識別情報印刷部54とを備える。
【0018】
(印刷ユニット)
複数の印刷ユニット14-A~14-Dは、基材12の搬送方向Paに順に配置される。本実施形態では、4つの印刷ユニット14-A~14-Dが配置される。以下、複数の印刷ユニット14-A~14-Dは、基材12の搬送方向Paに向かって、名称に「第1、第2、第3、第4」と付し、符号に「-A、-B、-C、-D」を付して区別する。総称するときはこれらを省略する。複数の印刷ユニット14-A~14-Dそれぞれに関連する構成要素を区別するときも同様である。
【0019】
印刷ユニット14は、転写ロール20からインキを基材12に転写することで、基材12に印刷するためのものである。本実施形態の印刷ユニット14は、個々の印刷ユニット14で異なる色のインキを基材12に転写する。転写ロール20は個々の印刷ユニット14で同等の周長Lsに設定される。印刷ユニット14は、転写ロール20の他に、主に、駆動モータ22と、回転検出装置24とを備える。印刷ユニット14-B~14-Dは、センサ26をさらに備える。
【0020】
(駆動モータ)
駆動モータ22は、転写ロール20を駆動するためのものである。本実施形態の印刷システム10では、個々の転写ロール20が個別の駆動モータ22により独立して駆動されるセクショナルドライブ方式を採用している。
【0021】
(回転検出装置)
回転検出装置24は、駆動モータ22の回転軸に接続される。回転検出装置24は、転写ロール20の回転角を検出するためのものである。回転検出装置24は、たとえば、エンコーダ、レゾルバ等であってもよい。本実施形態の回転検出装置24は、インクリメンタル型のロータリーエンコーダとして機能する。回転検出装置24は、転写ロール20の所定の回転角において1回転1パルスの原点パルス信号と、1回転に複数パルス(たとえば、1000パルス)のエンコーダパルスとを出力することができる。
【0022】
(検出用マーク)
センサ26を説明する前に、検出用マークを説明する。
図4(a)に示すように、検出用マーク28は、転写ロール20が一回転するごとに、絵柄等の一つの印刷像とともに印刷される。本実施形態の検出用マーク28は、後述の見当制御に用いられる見当マークである。本実施形態の検出用マーク28は、複数の印刷ユニット14それぞれに対応して搬送方向Paに順々に並ぶように印刷される。たとえば、第1検出用マーク28-Aは、第1印刷ユニット14によって印刷され、第2検出用マーク28-Bは、第1検出用マーク28-Aの下流側に隣り合う位置に、第2印刷ユニット14-Bによって印刷される。また、第3検出用マーク28-Cは、第2検出用マーク28-Bの下流側に隣り合う位置に、第3印刷ユニット14によって印刷され、第4検出用マーク28-Dは、第3検出用マーク28-Cの下流側に隣り合う位置に、第4印刷ユニット14-Dによって印刷される。なお、第1~第4検出用マーク28-A~28-Dがこの位置にこの順番で印刷されることは必須ではなく、これらは別の位置に別の順番で印刷されてもよい。例えば、第1~第4検出用マーク28-A~28-Dは、下流側から上流側に向かってこの順で配列されてもよい。
【0023】
(センサ)
センサ26は、印刷ユニット14の印刷動作に関する動作情報を検出するためのものである。本実施形態のセンサ26は、印刷ユニット14の動作情報として見当ずれ量を検出する。ここでの見当ずれ量とは、
図4(b)に示すように、上流側に隣り合う印刷ユニット14が印刷した検出用マーク28上の特定点から、自らが属する印刷ユニット14が印刷した検出用マーク28の特定点までの距離A2~A4をいう。距離A2~A4を、動作情報A2~A4と表記することがある。
図1に示すように、本実施形態のセンサ26は、自らが属する印刷ユニット14の転写ロール20より搬送方向Paの下流側(以下、単に「下流側」という)に設けられる。本実施形態のセンサ26は、第2印刷ユニット14-B~第4印刷ユニット14-Dに個別に設けられる。なお、センサ26がこのような位置に設けられることは必須ではなく、センサ26は見当ずれ量を検出可能な位置であれば何処に設けられてもよい。
【0024】
図4(a)に示すように、基材12および印刷ユニット14によって印刷された状態の基材12(以下、「印刷基材12p」ということがある)は、その搬送方向Paに向かって複数の単位領域46に区分され、個々の単位領域46毎に管理される。したがって、センサ26により検出された動作情報は、
図4(a)に示す各単位領域46に印刷された検出用マーク28を基準マークとして、その印刷位置に関する情報を含むものであり、特に、この例の動作情報は、別の印刷ユニットによって印刷された別のマークとの相対位置に関する情報を含んでいる。
【0025】
(画像情報取得装置)
図2に示すように、画像情報取得装置58は、印刷基材12pの所定の範囲の画像を取得するためのものである。本実施形態の画像情報取得装置58は、撮像装置として機能する。本実施形態の画像情報取得装置58は、個々の単位領域46の範囲を静止画像として取得する。具体的には、連続搬送される印刷基材12pに所定のタイミングでストロボ(不図示)を照射し、そのタイミングにおける印刷基材12pの画像をカメラ(不図示)によって撮像する。したがって、画像情報取得装置58は、個々の単位領域46についてその静止画像を取得することができる。
【0026】
この例の画像情報取得装置58は、制御装置16に接続されており、制御装置16の画像取得制御部35の制御に基づくタイミングにより単位領域46を撮像してその画像を取得する。また、画像情報取得装置58は、その取得画像を画像情報として制御装置16に出力する。画像取得制御部35は、画像情報取得装置58から取得した画像情報を情報処理装置18の画像情報記憶部45に逐次格納する。したがって、画像情報記憶部45には、時系列順で並べた時系列の画像情報が格納される。また、
図2の画像情報取得装置58は、ディスプレイ(不図示)にも接続されており、画像情報をディスプレイに表示させることができる。オペレータは、ディスプレイに表示された印刷基材12pの単位領域46の静止画像を基にビジュアル検査を行うことができる。つまり、画像情報取得装置58は静止画像撮影装置を構成している。
【0027】
また、画像情報取得装置58は、その取得画像を画像情報として欠点検出装置に送るようにしてもよい。この場合、欠点検出装置は画像情報取得装置58からの画像情報を画像処理して単位領域46へのゴミの付着などの印刷上の欠点を検知することができる。
【0028】
(機能ブロック)
図3に示す制御装置16および情報処理装置18などの各機能ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPU(Central Processing Unit)をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。以下、制御装置16の各機能ブロックの構成およびその関連動作を説明する。情報処理装置18については後述する。
【0029】
(制御装置)
制御装置16は、印刷ユニット14、画像情報取得装置58、識別情報印刷部54およびマーキング付与装置(不図示)を制御するためのものである。
図3の制御装置16は、制御部30と、制御情報記憶部32と、識別情報印刷制御部33と、画像取得制御部35と、マーキング制御部37と、を含む。制御部30は、複数の印刷ユニット14を制御する。制御情報記憶部32は、制御部30の制御に用いる情報を保持する。
【0030】
(画像取得制御部)
画像取得制御部35は、連続的に搬送される基材12に所定のサイクルで印刷する印刷ユニット14から搬送される印刷基材12pの所定の単位領域46の画像を取得するように画像情報取得装置58を制御する。ここで、画像情報取得装置58は、単位領域46の印刷位置から位相がずれたタイミングで印刷基材12pの画像を取得する場合があり、このタイミングで、印刷基材12pの画像を取得すると、連続する単位領域46の途中の画像を取得することになり、単位領域46の全体を表示できず、ビジュアル検査の障害となる。このため、本実施形態の画像取得制御部35は、印刷ユニット14の印刷サイクルを検知しその検知結果に応じたタイミングで印刷基材12pの画像を取得するように画像情報取得装置58を制御する。
【0031】
印刷ユニット14の印刷サイクルは、印刷ユニット14の各部の繰り返し運動のサイクルを取得することにより検知することができる。本実施形態では、印刷ユニット14は基材12にインキを転写する転写ロール20を有しており、転写ロール20が1回転するごとに1つの単位領域46が印刷されるので、転写ロール20の回転サイクルを印刷サイクルとすることができる。特に、本実施形態は、転写ロール20の回転位相をもとに定められたタイミングで印刷基材12pの画像を取得するように画像情報取得装置58を制御している。つまり、本実施形態は、転写ロール20の回転位相を検知し、検知した回転位相と一定の位相関係にあるタイミングでストロボを発光させて撮像を行う。この位相関係は、実験により設定されてもよいし、各所の寸法、距離および基材12の搬送速度などをもとに計算により設定されてもよい。
【0032】
本実施形態では、転写ロール20の回転位相に基づく所定の位相信号として、回転検出装置24からの原点パルス信号を用いている。この例の原点パルス信号は、転写ロール20の1回転あたり1パルス(=1サイクル)の信号であり、転写ロール20の1回転毎に所定の回転角で立ち上がりまたは立ち下がりエッジを有するパルス信号である。
【0033】
(識別情報印刷部)
次に、識別情報印刷部54を説明する。識別情報印刷部54は、制御装置16の制御に応じて、複数の単位領域46それぞれに識別情報56を印刷するためのものである。
図4(a)に、印刷された識別情報56の一例を示している。
図1に示すように、実施形態の識別情報印刷部54は、第4印刷ユニット14-Dのセンサ26の直後に配置される。識別情報印刷部54は、第1印刷ユニット14-Aの上流側から第4印刷ユニット14-Dの下流側の範囲内で別の位置に配置されてもよい。この例の識別情報印刷部54は、微滴化したインクを基材12に吹き付けるインクジェット方式の印刷装置である。識別情報印刷部54は、レーザ印刷など他の印刷方式の印刷装置であってもよい。
【0034】
識別情報56は、複数の単位領域46を識別するために各単位領域46に印刷されるものである。識別情報は、基材12に含まれる複数の単位領域46それぞれを識別可能なものであればよく、数字、文字、図形、記号、模様、バーコード(二次元バーコードを含む)またはこれらを複合したものを含んでもよい。本実施形態の識別情報56は、基材12の下流側から上流側に向かって昇順で個々の単位領域46に割り当てられる順序数を基に生成されてもよい。識別情報印刷部54をユニット14-Dのセンサ26の直後に配置したことにより、識別情報56は、ユニット14-Dのセンサ26からの動作情報(見当ずれ量)に対応づけされた順序数を基に生成される。識別情報56は、順序数から所定のデータ処理によって変換されたものであってもよいが、この例では、順序数をそのまま識別情報56としている。動作情報および順序数については後述する。
【0035】
(識別情報印刷制御部)
識別情報印刷制御部33は、識別情報56を取得すると共に、その識別情報56を所定の位置に印刷するように識別情報印刷部54を制御する。本実施形態の識別情報印刷制御部33は、順序数を情報処理装置18から取得するとともに、取得した順序数を対応する単位領域46に印刷するように識別情報印刷部54を制御する。識別情報56は、検出用マーク28を避けた位置に印刷されてもよい。
【0036】
(マーキング制御部)
マーキング制御部37は、印刷基材12pから取得された動作情報(見当ずれ量)が所定の基準値(たとえば、100μm)を超えたことにより、異常判定部40において、異常と判定された場合に、当該印刷基材12pに視認可能な態様のマーキングを施すようにマーキング付与装置を制御する。このマーキングは、視認可能なもので後に取り除くことが可能なものであればよく、本実施形態では、剥離可能なテープ片を当該印刷基材12pにマーキングとして貼付ける。異常判定部40については後述する。
【0037】
制御部30は、駆動モータ22、回転検出装置24、センサ26に接続されている。制御部30には、センサ26が検出した動作情報(見当ずれ量)や、回転検出装置24が検出した転写ロール20の回転角が入力される。制御部30は、センサ26が検出した動作情報を受けると、その動作情報を制御情報記憶部32に格納する。
【0038】
制御部30は、印刷ユニット14の見当ずれ量に基づき、その見当ずれ量が小さくなるように見当調整機構を制御する見当制御を実行する。本実施形態では、見当調整機構として印刷ユニット14の駆動モータ22を用い、見当ずれ量が小さくなるように転写ロール20の回転位相を修正することで見当制御を実行する。この見当制御は公知であるため、説明を省略する。
【0039】
(情報処理装置)
情報処理装置18は、データ処理部34と、記憶部36と、出力部38と、異常判定部40とを備える。記憶部36は、動作情報記憶部42と、印刷情報記憶部44と、画像情報記憶部45とを有する。データ処理部34と、出力部38と、異常判定部40は後述する。
【0040】
図4(a)を参照する。上述したように、本実施形態では、基材12の個々の単位領域46毎に情報を管理する。
図4(a)では個々の単位領域46の境界線を二点鎖線で示す。個々の単位領域46は、基材12が搬送されている状態を基準として、搬送方向Paに一定の長さを有する領域として定義される。ウェブのように基材12が搬送方向Paに長い場合、単数の基材12を搬送方向Paに向かって一定の長さ毎に区分した個々の領域を単位領域46として捉える。枚葉のように基材12が搬送方向Paに短い場合、個々の基材12を単位領域46として捉えてもよい。
【0041】
本実施形態では、単位領域46の搬送方向Paの長さLaは、転写ロール20の一回転分の周長Lsに相当する長さとなる。本実施形態の単位領域46は、印刷システム10による印刷後に得られる一枚の印刷基材全体を含む領域として捉えられる。この印刷基材は、不図示の裁断機によって、印刷システム10により印刷されたウェブを所定位置で裁断して得られる。
【0042】
図5は、動作情報記憶部42が保持する情報および画像情報記憶部45が保持する情報の一例を示す図である。動作情報記憶部42は、複数の印刷ユニット14それぞれの動作情報を保持する。
図5では、第2印刷ユニット14-B~第4印刷ユニット14-Dそれぞれの動作情報として見当ずれ量A2~A4を示す。画像情報記憶部45は、画像情報取得装置58による、各単位領域46の取得結果を画像情報49として保持する。
【0043】
動作情報記憶部42は、印刷ユニット14のサイクル毎の動作情報をサイクル順(時系列順)で並べた時系列データ48を保持する。ここでは、複数の印刷ユニット14のそれぞれに関して、その印刷ユニット14の転写ロール20が所定の回転角で回転する動作を1回のサイクルとする。個々の印刷ユニット14での1回のサイクルに要する転写ロール20の回転角は同じ大きさに設定されることになる。個々の印刷ユニット14では転写ロール20の周長Lsが同等の大きさに設定されることから、個々の印刷ユニット14で1回のサイクルに要するサイクルタイムは同等の大きさになる。この「所定の回転角」は、その回転角に対応する転写ロール20の周長Lsが、単位領域46の搬送方向Paでの長さLaと一致するように設定される。本実施形態では、転写ロール20が一回転分の回転角で回転する動作を1回のサイクルとする。動作情報記憶部42は、印刷ユニット14のサイクル毎の動作情報を印刷ユニット14毎にまとめた複数の時系列データ48として保持する。
【0044】
画像情報記憶部45は、印刷ユニット14のサイクル毎の取得画像をサイクル順(時系列順)で並べた画像情報49を保持する。画像情報49は、単位領域46を撮像した静止画像の画像データであってもよいし、この画像データにリンク可能なファイル名などの文字情報であってもよい。一例として、
図5の画像情報49はjpegフォーマットの画像データである。
【0045】
同じ単位領域46の動作情報の時系列データ48と画像情報49について説明する。第3印刷ユニット14-Cが第2印刷ユニット14-BからSサイクル分だけ下流側に配置され、第4印刷ユニット14-Dが第3印刷ユニット14-CからTサイクル分だけ下流側に配置され、画像情報取得装置58が第4印刷ユニット14-DからQサイクル分だけ下流側に配置されているとする。この場合、ひとつの同じ単位領域46についての各時系列データは、このサイクル数だけずれている。すなわち、第3印刷ユニット14-Cの時系列データ48は、第4印刷ユニット14-Dの時系列データ48のSサイクル前のデータであり、第2印刷ユニット14-Bの時系列データ48は、第4印刷ユニット14-Dの時系列データ48のS+Tサイクル前のデータである。
【0046】
また、ひとつの同じ単位領域46について、画像情報取得装置58の画像情報49は、第4印刷ユニット14-Dの時系列データ48のQサイクル後のデータである。したがって、各印刷ユニットおよび画像情報取得装置58の配置間隔を転写ロール20の周長Lsで除してサイクル数に変換し、各時系列データをこのサイクル数によりシフトすることにより、同じ単位領域46のデータとして対応づけすることができる。
【0047】
図6は、印刷情報記憶部44が保持する情報の一例を示す図である。本図では、同じ単位領域46に対応する個々の印刷ユニット14の動作情報(見当ずれ量)と、識別情報と、画像情報とを後述する単位領域46の順序数の順で並べたものを示す。印刷情報記憶部44は印刷システム10の印刷内容に関する印刷情報50を保持する。この印刷情報50は、印刷ユニット14毎の単位領域46に対する印刷動作に関する複数の動作情報(見当ずれ量A2~A4)と、単位領域46の搬送方向Paでの順序を示す順序数と、その単位領域46を識別するための識別情報56と、その単位領域46を撮像して取得した画像情報とを含む。この例では、順序数をそのまま識別情報56としている。
【0048】
図2を参照する。
図2において、Po、Pe、Pf、Gpは搬送方向Paにおける位置を示している。Poは第4印刷ユニット14-Dの印刷点の位置を示し、Peはセンサ26の位置を示し、Pfは識別情報印刷部54の印刷点の位置を示し、Gpは画像情報取得装置58の撮像範囲の中心位置を示す。Lo、Le、Lfはそれぞれは、GpからPo、Pe、Pfまでの距離を示している。
図2の例では、Lo≧Le≧Lfの関係にある。
【0049】
次に、画像情報49を第4印刷ユニット14-Dの時系列データ48に対応づけするために画像情報49をシフトさせるサイクル数Qについて説明する。
図2の画像情報取得装置58は、第4印刷ユニット14-Dのセンサ26の下流側に配置されている。画像情報取得装置58は、このセンサ26の情報取得位置Peから、搬送方向Paで距離Le離れた位置を中心とする範囲の印刷基材12pの画像を取得する。転写ロール20の周長をLsとするとき、サイクル数Qは、式(1)により示される。
Q=INT(Le/Ls)・・・(1)
但し、INT()は、括弧内の数値の小数点以下を切り捨てた整数を示すものとする。つまり、サイクル数Qは、距離Leを周長Lsで除した数の整数部分として算出することができる。本実施形態の情報処理装置18は、画像情報49を、当該画像情報49が取得されたサイクルよりQサイクル前のサイクルで取得された動作情報と対応づけを行う。
図2の例では、サイクル数Qは2に設定されている。
【0050】
(順序数)
次に、順序数を説明する。複数の動作情報には、印刷ユニット14毎の動作情報であって、複数の単位領域46のそれぞれに対応するものが含まれる。前述したように、順序数は、基材12の反搬送方向Paに向かって昇順で個々の単位領域46に割り当てられる。ここでの反搬送方向Paとは、下流側から上流側に向かう方向をいう。本実施形態での単位領域46の順序数は、印刷システム10による基材12の印刷後に得られる複数の印刷基材12pに関して、印刷順に数えて何枚目であるかを示す。この印刷情報50では、同じ単位領域46に対応する個々の印刷ユニット14の動作情報と、その単位領域46の順序数と、その単位領域46の識別情報56と、その単位領域46の画像情報とが対応づけられている。
【0051】
(データ処理部)
次に、データ処理部34を説明する。データ処理部34は、複数の印刷ユニット14のサイクル順で並べられた動作情報の時系列データ48から、順序数を用いて、同じ単位領域46に対する各印刷ユニット14の動作情報と、識別情報56と、画像情報とを対応づける処理を行う。また、データ処理部34は、同じ単位領域46について対応づけられた動作情報、識別情報56および画像情報から印刷情報50を生成し、印刷情報記憶部44に格納する。実施形態のデータ処理部34は、前述の印刷情報50を得るために次の処理をしている。以下、この処理の基本的な考え方を説明する。
【0052】
図7は、実施形態のデータ処理部34がする処理を説明するための図である。本図では、搬送方向Paに向かってp番目の印刷ユニット14のXサイクル目の動作情報に関して、Ap-Xと表記する。Xは1以上の自然数である。
【0053】
上流側にある印刷ユニット14(以下、上流側ユニットという)の印刷位置から、下流側にある印刷ユニット14(以下、下流側ユニットという)の印刷位置までの搬送方向Paに沿った長さをパス長Lc[m]とする。ここでの印刷ユニット14の印刷位置とは印刷ユニット14の転写ロール20が基材12にインキを転写する位置をいう。1サイクル当たりの基材12の搬送距離を単位搬送距離Ld[m/サイクル]とする。また、下記の式(2)に示すように、パス長Lcを単位搬送距離Ldで除した数の整数部分をシフト数Sとする。このシフト数Sは、基材12がパス長Lcだけ搬送されるのに要するサイクル数に近似した数を表す。転写ロール20の1サイクル分の回転角に対応する周長Lsは、単位領域46の長さLbと一致するため、単位搬送距離Ldは単位領域46の長さLb[m]と同じになる。よって、シフト数Sは、下記の式(3)で表される。
S=INT(Lc/Ld) ・・・(2)
S=INT(Lc/Lb) ・・・(3)
【0054】
たとえば、
図7に示すように、第2印刷ユニット14-Bと第4印刷ユニット14-Dのパス長に対応するシフト数Sが4であり、第3印刷ユニット14と第4印刷ユニット14-Dのパス長に対応するシフト数Sが2であるとする。この場合、14サイクル目に第2印刷ユニット14-Bの印刷位置を通る単位領域46は、4回分のサイクルの経過後、第4印刷ユニット14-Dの印刷位置を通る可能性が高い。同様に、16サイクル目で第3印刷ユニット14の印刷位置を通る単位領域46は、2回分のサイクルの経過後、第4印刷ユニット14-Dの印刷位置を通る可能性が高い。
【0055】
これは、
図7の左下の黒囲みで示す、第2印刷ユニット14-Bの14サイクル目の動作情報A2-14、第3印刷ユニット14-Cの16サイクル目の動作情報A3-16、第4印刷ユニット14-Dの18サイクル目の動作情報A4-18が、同じ単位領域46の動作情報である可能性が高いことを意味する。別の観点からみると、第4印刷ユニット14-DのXサイクル目の動作情報と、第3印刷ユニット14のX-2サイクル目の動作情報と、第2印刷ユニット14-BのX-4サイクル目の動作情報とは、同じ単位領域46の動作情報である可能性が高い。そこで、本実施形態では、これら印刷ユニット14毎で特定サイクル数の動作情報を、同じ単位領域46の動作情報とみなし、それらの動作情報を対応付けている。より詳しく説明する。
【0056】
実施形態のデータ処理部34は、次のステップ(a)、(b)及び(c)を含む対応付け処理をする。本実施形態のステップ(a)では、N番目の印刷ユニット14(以下、基準ユニットという)の動作情報であって、予め定められた開始タイミングから数えてX回目のサイクルの動作情報を取得する。ここでのNは、全印刷ユニット14の数を示す。本実施形態ではN=4となるため、ステップ(a)では第4印刷ユニット14-Dを基準ユニットとして、そのX回目のサイクルの動作情報を取得する。
【0057】
また、ステップ(b)では、搬送方向Paに向かってm(m≠N)番目の印刷ユニット14の動作情報であって、前述の開始タイミングから数えてX回目のサイクルより所定のシフト数Sでシフトさせたサイクルでの動作情報を取得する。ここでのmは、1~NのうちのN以外の自然数である。本実施形態では、ステップ(b)では、第2印刷ユニット14-Bや第3印刷ユニット14の動作情報を取得することになる。つまり、2~N番目の印刷ユニット14のうち、N番目の印刷ユニット以外の他の印刷ユニット14毎の動作情報を取得することになる。
【0058】
この「所定のシフト数S」は、m番目の印刷ユニット14に対応する値が設定される。m番目の印刷ユニット14のシフト数Sは、基準ユニット14とm番目の印刷ユニット14のパス長Lcと、単位領域46の長さLbに基づき、前述の式(3)を用いて求められる。これらパス長Lc、長さLbは予め記憶部36に保持される。
【0059】
(開始信号用センサ)
開始信号用センサ52を説明する。本実施形態での開始タイミングとは、他の装置から出力される開始信号をデータ処理部34が受け取ったタイミングをいう。実施形態の印刷システム10は、
図1に示すように、この開始信号を生成するための開始信号用センサ52を備える。実施形態の開始信号用センサ52は、複数の基材12(ウェブ)の継ぎ目となるスプライス点を検出可能であり、第4印刷ユニット14-Dのセンサ26の直前に配置される。制御装置16の制御部30は、基材12のスプライス点を開始信号用センサ52が検出したタイミングで、情報処理装置18のデータ処理部34に開始信号を出力する。
【0060】
ステップ(a)、(b)において、データ処理部34は、回転検出装置24を用いて、複数の印刷ユニット14それぞれの動作のサイクル数を特定する。データ処理部34は、印刷ユニット14の動作のサイクル数に関して、その印刷ユニット14の回転検出装置24を用いて特定する。詳しくは、データ処理部34は、この回転検出装置24を用いて転写ロール20が所定の回転角で回転したことを読み取る度にカウントアップするカウンタ(不図示)を有する。
【0061】
カウンタは、前述の開始タイミングにおいてカウント値を初期値(たとえば、1)にリセットする。データ処理部34は、カウンタのカウント値を印刷ユニット14の動作のサイクル数として取得する。本実施形態のデータ処理部34は、複数の印刷ユニット14のそれぞれに対応するカウンタを有し、そのカウンタのカウント値を対応する印刷ユニット14の動作のサイクル数として取得する。本実施形態のデータ処理部34は、複数の印刷ユニット14毎に独立して印刷ユニット14の動作のサイクル数を特定することになる。
【0062】
ステップ(c)では、ステップ(a)、(b)で取得した各印刷ユニット14の動作情報を、同じ単位領域46に対する各印刷ユニット14の動作情報として対応づける。以上の対応付け処理により、複数の印刷ユニット14の動作情報がサイクル順で並べられた時系列データ48から、同じ単位領域46に対する各印刷ユニット14の動作情報を対応づけられる。
【0063】
データ処理部34は、以上の対応付け処理により得られた単位領域46に対する各印刷ユニット14の動作情報に、その単位領域46に対応する順序数を対応づけし、さらに順序数を介して動作情報に識別情報56および画像情報を対応づけて印刷情報50を生成する。この順序数は、サイクル数との間で対応関係がある。たとえば、本実施形態において、第4印刷ユニット14-Dの印刷位置では、基材12のスプライス点を検出した時点で、基材12全体の中で1個目の単位領域46が通る。よって、第4印刷ユニット14-Dのセンサ26から1サイクル目に出力される動作情報は、基材12全体の中で1個目の単位領域46に対応するものとなる。つまり、基材12の単位領域46の実際の順序数とサイクル数とが合致することになる。よって、第4印刷ユニット14-DのXサイクル目の動作情報には、サイクル数と同じ数の順序数を対応づけてもよい。
【0064】
なお、動作情報に対する順序数の対応づけ方は、これに限定されない。たとえば、サイクル数と順序数の対応関係を規定するテーブル又は式を記憶部36に保持しておき、そのテーブル又は式を用いて、サイクル数に基づき順序数を算出し、その算出値を順序数としてもよい。
【0065】
次に、本実施形態の情報処理装置18を用いた情報処理方法の一例を説明する。
制御装置16の制御部30は、前述した見当制御を実行しつつ、複数の印刷ユニット14により基材12に順次に印刷するように駆動モータ22等を制御する。センサ26は、搬送されている基材12の動作情報(見当ずれ量)を逐次検出し、その動作情報が検出される度に動作情報を制御装置16に出力する。
【0066】
制御装置16の制御部30は、センサ26から出力される動作情報を制御情報記憶部32に逐次格納する。制御部30は、センサ26の動作情報を制御情報記憶部32に格納するたびに、センサ26が属する印刷ユニット14に対応するストローブ信号を情報処理装置18のデータ処理部34に出力する。本実施形態では、第2印刷ユニット14-B~第4印刷ユニット14-Dのそれぞれに対応したストローブ信号がデータ処理部34に出力される。印刷ユニット14のセンサ26は、1サイクル毎に、つまり、センサ26が属する印刷ユニット14の転写ロール20が一回転する毎に、単位領域46に関する動作情報(見当ずれ量)を1回出力する。これに伴い、制御部30は、1サイクル毎に、第2印刷ユニット14-B~第4印刷ユニット14-Dのそれぞれに対応した個別のストローブ信号をデータ処理部34に出力する。
【0067】
データ処理部34は、制御部30から出力されたストローブ信号を受ける度に、そのストローブ信号に対応する印刷ユニット14の最新サイクルの動作情報を取得する。データ処理部34は、制御装置16の制御情報記憶部32を読み出すことで、その印刷ユニット14の最新サイクルの動作情報を取得する。データ処理部34は、取得した印刷ユニット14の動作情報をサイクル数と対応づけ、動作情報記憶部42に格納する。データ処理部34は、複数の印刷ユニット14のそれぞれに関して、その印刷ユニット14の動作のサイクル毎に、その印刷ユニット14の最新サイクルの動作情報をサイクル数と対応づけて動作情報記憶部42に1回格納する。本実施形態のデータ処理部34は、印刷ユニット14の動作情報をサイクル順で並べた時系列データ48を生成し、動作情報記憶部42に格納する。
【0068】
データ処理部34は、印刷ユニット14のサイクル毎に動作情報記憶部42に格納された動作情報に基づき識別情報56との対応づけを行う。特に、データ処理部34は、動作情報記憶部42に保持される動作情報に基づき、前述した対応付け処理をすると共に、同じ単位領域46に対応する順序数を介して動作情報に画像情報記憶部45に保持される画像情報および識別情報56を対応づける処理をする。データ処理部34は、動作情報記憶部42に動作情報が格納される度に、これらの対応付け処理をしてもよいし、他のタイミングで対応付け処理をしてもよい。
【0069】
以上の情報処理装置18の効果を説明する。
情報処理装置18の印刷情報記憶部44は、同じ単位領域46に対応する個々の印刷ユニット14の動作情報と、その単位領域46の順序数と、識別情報56と、画像情報と、が対応づけられた印刷情報50を保持している。よって、個々の印刷ユニット14の動作情報と、識別情報56と、画像情報とを単位領域46の順序数単位で管理でき、高度な情報管理を実現できるようになる。
【0070】
たとえば、印刷ユニット14の動作情報が見当ずれ量である場合、次の利点がある。印刷情報50には、単位領域46の順序数毎の各印刷ユニット14の見当ずれ量A2~A4が含まれる。これは、
図4(b)に示すように、単位領域46毎の全ての検出用マーク28に関して、その搬送方向Paでの相対位置を特定する情報が含まれていることを意味する。よって、これら見当ずれ量A2~A4を用いることで、任意の検出用マーク28の特定点から、他の任意の検出用マーク28の特定点までの距離を算出できる。
【0071】
たとえば、
図8は、単位領域46の順序数毎の各印刷ユニット14-B~14-Dの見当ずれ量A2~A4を示すグラフである。また、
図9は、単位領域46の順序数毎の第1検出用マーク28-Aから他の検出用マーク28-B~28-Dまでの累積見当ずれ量A1→2、A1→3、A1→4を示すグラフである。これらのいずれのグラフも、前述の印刷情報50を用いて得られる。これらのグラフを用いて、印刷位置の変化傾向等を分析できる。
【0072】
また、この他にも、後述する異常判定部40を用いることで、異常の発生原因がどの印刷ユニット14にあるか特定したり、その異常の発生箇所がどのような順序数の範囲にあるかを特定できる。このように、同じ単位領域46に対応する個々の印刷ユニット14の動作情報と、その単位領域46の順序数を対応づけた印刷情報を得ることで、印刷ユニット14の動作情報に関する分析手法の多様化を図れる。
【0073】
また、データ処理部34は、転写ロール20が一回転する動作を1回のサイクルとして、複数の印刷ユニット14の動作情報をサイクル毎に動作情報記憶部42に格納する。印刷ユニット14からは、通常、このサイクルより非常に短い周期で動作情報(見当ずれ量)が出力されている。よって、印刷ユニット14から出力される動作情報を逐次格納するよりも、動作情報記憶部42に格納されるデータ量を抑えられる。
【0074】
また、情報処理装置18では、印刷情報記憶部44に同じ単位領域に対応する動作情報と、その単位領域に印刷された識別情報と、が対応づけられて記憶されているため、動作情報(見当ずれ量)と実際の印刷基材とを合致させて確認することができる。たとえば、巻き出しスプライス点が巻き出されてその一部が破棄され、何枚目という情報が失われた場合であっても、識別情報が印刷されているので、動作情報(見当ずれ量)と実際の印刷基材とを容易に合致させることができる。また、識別情報を介して2つの情報を一目で確認できるので、動作情報(見当ずれ量)と実際の印刷基材との確認を短時間で容易に行うことができる。たとえば、印刷された識別情報を用いることにより、見当ずれ量が基準値より大きい単位領域を容易に見つけ出すことができる。この単位領域について、実際の印刷状態を目視等で再確認することにより、短時間で出荷可否の二次的な判断を支援することができる。
【0075】
特に、上述のマーキング付与装置により単位領域に付与されたマーキングを併用することにより、印刷状態の再確認を一層短時間で行うことができる。たとえば、印刷基材から、マーキングを目印にして動作情報(見当ずれ量)が基準値を超えたものを選別し、選別された印刷基材について、印刷された識別情報から対応する動作情報(見当ずれ量)を確認することができる。選別された印刷基材について動作情報(見当ずれ量)を確認すればよいので、作業時間を短くすることができる。
【0076】
また、出荷済みの印刷物でユーザから改善要求があったものについて、印刷された識別情報を確認することにより、対応する動作情報(見当ずれ量)を確認することができるので、動作情報(見当ずれ量)についてユーザの受容レベルを推測することが可能になる。推測された受容レベルをもとに、動作情報(見当ずれ量)の基準値を調整することにより、合理的な出荷品質を実現できる。
【0077】
また、情報処理装置18では、印刷情報記憶部44に同じ単位領域に対応する動作情報と画像情報と、が対応づけられて記憶されているため、動作情報(見当ずれ量)と実際の印刷物の画像情報とを合致させて確認することができる。このため、同じ単位領域について、動作情報(見当ずれ量)と画像情報とを対比しながら、これらの相関関係の確認を短時間で容易に行うことができる。
【0078】
特に、上述のマーキング付与装置により単位領域に付与されたマーキングを併用することにより、印刷状態の再確認を一層短時間で行うことができる。たとえば、マーキングを目印にして選別された印刷基材について、動作情報(見当ずれ量)と画像情報との相関関係を短時間で確認することができる。画像情報を目視等で再確認することにより、短時間で出荷可否の二次的な判断を支援することができる。
【0079】
実施形態の情報処理装置18の他の特徴を説明する。
図3に示すように、情報処理装置18は、前述の通り、データ処理部34の他に、出力部38と、異常判定部40とを備える。
【0080】
出力部38は、印刷情報記憶部44に保持される印刷情報50を視認可能な態様で出力する。本実施形態の出力部38はプリンタであるが、この他にもディスプレイ等でもよい。出力部38は、表、グラフ等の形式で印刷情報50を出力する。
【0081】
異常判定部40は、印刷ユニット14による印刷動作の異常の有無を判定する判定処理をする。異常判定部40は、制御装置16の制御情報記憶部32に保持されている動作情報ではなく、印刷情報記憶部44に保持されている印刷情報50の動作情報に基づいて判定処理をする。
【0082】
異常判定部40は、印刷情報50の動作情報の数値(見当ずれ量)に対して設定された判定閾値と、その動作情報の数値との比較により判定処理をする。判定閾値は、データ処理部34による対応付け処理前に予め設定されてもよいし、その対応付け処理後に設定されてもよい。異常判定部40は、動作情報の数値が判定閾値を超える場合、その動作情報に対応する印刷ユニット14及び順序数の単位領域46で異常があることを示す異常情報を生成する。本実施形態の異常判定部40は、
図6に示すように、その生成した異常情報と対応づけて印刷情報記憶部44に保持される印刷情報50を更新する。これにより、基材12に対する印刷動作の完了後でも判定条件を変更して異常の有無を判断でき、異常の有無に関する分析手法の多様化を図れる。
【0083】
異常判定部40は、単位領域46の順序数毎の複数の印刷ユニット14の動作情報に基づき、前述の判定処理をする。これにより、単位領域46の順序数単位で複数の印刷ユニット14による印刷動作の異常の有無を判定できる。たとえば、
図6の例では、見当ずれ量が大きい異常の発生箇所が14番目~16番目の単位領域46にあることや、発生原因が2番目の印刷ユニット14にあることを特定できる。
【0084】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明した。前述した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態の」「実施形態では」等との表記を付して説明しているが、そのような表記のない内容に設計変更が許容されないわけではない。
【0085】
印刷システム10は、グラビア印刷システムを例に説明したが、その具体例は特に限定されない。たとえば、コーターシステム、製函機システム、枚葉機システム等でもよい。印刷システム10は、転写ロール20の駆動方式としてセクショナルドライブ方式を採用する例を説明した。この駆動方式は特に限定されず、たとえば、コンペンセータ方式を採用してもよい。
【0086】
動作情報は、印刷ユニット14の見当ずれ量である例を説明したが、その具体例はこれに限定されない。たとえば、動作情報は、印刷ユニット14の駆動モータ22の速度、回転位置、トルクの検出値でもよいし、その目標値と検出値の偏差でもよい。
【0087】
単位領域46の搬送方向Paの長さは、転写ロール20の一回転分の周長に相当する長さとなる例を説明したが、これに限られない。たとえば、転写ロール20の半回転分の周長に相当する長さとしてもよい。
【0088】
データ処理部34は、搬送方向Paに向かって2番目~N番目の印刷ユニット14の動作情報を取得する例を説明した。この他にも、第1印刷ユニット14の動作情報を取得し、他の印刷ユニット14の動作情報と対応付けてもよい。
【0089】
データ処理部34は、印刷欠点の有無に関する欠点情報を、印刷情報記憶部44に保持される印刷情報50に対応付けてもよい。ここでの印刷欠点とは、基材12の汚れ、異物、文字欠け等である。この場合、データ処理部34は、単位領域46それぞれの欠点情報を、その単位領域46の順序数と対応づければよい。この他にも、単位領域46の順序数単位で取り扱われる基材12の品質に関する情報を印刷情報50に対応づけてもよい。
【0090】
データ処理部34は、印刷ユニット14の動作情報をサイクル順で並べた時系列データ48を用いて、m番目の印刷ユニット14の動作情報をSサイクル分だけシフトさせ、そのシフト後の動作情報を他の印刷ユニット14の動作情報と対応づける例を説明した。この他にも、シリアル入力-シリアル出力型のシフトレジスタを用いて、m番目の印刷ユニット14の動作情報をSサイクル分だけシフトさせ、そのシフト後の動作情報を他の印刷ユニット14の動作情報と対応づけてもよい。
【0091】
実施形態では、N番目の印刷ユニット14のサイクル数を基準として、他の印刷ユニット14のサイクル数をシフトさせる例を説明した。このサイクル数の基準となる基準ユニット14は、N番目以外の他の印刷ユニット14としてもよい。この基準ユニット14をn(nは1~Nの何れか1つの自然数)番目の印刷ユニットとする。このとき、ステップ(a)では、n番目の印刷ユニットのXサイクル目の動作情報を取得し、ステップ(b)では、m(m≠n)番目の印刷ユニットのX-Sサイクル目の動作情報を取得してもよいということである。このとき、ステップ(b)では、n番目の印刷ユニット14以外の一つの印刷ユニット14の動作情報を取得するだけでもよいし、n番目の印刷ユニット14以外の複数の印刷ユニット14毎の動作情報を取得してもよい。
【0092】
実施形態では、ステップ(a)、(b)の開始タイミングを定める開始信号が、基材12のスプライス点が検出されたタイミングでデータ処理部34に出力される例を説明した。この開始信号の出力タイミングは特に限定されず、たとえば、サイクル数をリセットするためのスイッチが操作されたタイミングで出力されてもよい。また、開始信号用センサ52の位置は特に限定されず、第4印刷ユニット14-Dのセンサ26の直前の他に、第2印刷ユニット14-Bのセンサ26の直前に配置されてもよい。
【0093】
実施形態では、検出用マーク28が直線状の図形である例を説明した。検出用マーク28は、印刷位置に関する情報を検出できるものであればどのようなものでもよく、たとえば、直角三角形などの直線とは異なる形状のマークであってもよい。
【符号の説明】
【0094】
10…印刷システム、12…基材、14…印刷ユニット、18…情報処理装置、20…転写ロール、34…データ処理部、35…画像取得制御部、38…出力部、40…異常判定部、42…動作情報記憶部、44…印刷情報記憶部、45…画像情報記憶部、46…単位領域、50…印刷情報、54…識別情報印刷部、56…識別情報、58…画像情報取得装置。