IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アース製薬株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-口腔用薬液噴霧製品 図1
  • 特許-口腔用薬液噴霧製品 図2
  • 特許-口腔用薬液噴霧製品 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】口腔用薬液噴霧製品
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20220913BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20220913BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20220913BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20220913BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220913BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20220913BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20220913BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/02
A61K9/00
A61K9/12
A61K47/36
A61K47/38
A61P1/02
A61Q11/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018207379
(22)【出願日】2018-11-02
(65)【公開番号】P2020070279
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新居 沙織
(72)【発明者】
【氏名】浅井 梨加
(72)【発明者】
【氏名】昆野 生成
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-347901(JP,A)
【文献】特表2010-538074(JP,A)
【文献】国際公開第2008/026310(WO,A1)
【文献】特開2010-265217(JP,A)
【文献】特開2005-187404(JP,A)
【文献】新原料紹介、三晶株式会社 天然高分子多糖類「ケルザンシリーズ」,FRAGRANCE JOURNAL,1998年03月,page.97-98
【文献】南 昌義,多糖類による粘弾性の制御,FRAGRANCE JOURNAL,2007年07月,page.40-45
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
増粘剤を含む薬液がスプレー式容器に充填され、口腔内に噴霧して使用される口腔用薬液噴霧製品であって、
前記増粘剤が、ヒドロキシアルキルセルロース、ローカストビーンガム、グアーガム、及びカラギーナンから選ばれる1種以上であり、
回転数50rpmで測定した前記薬液の粘度が10~150mPa・sであり、
前記薬液の、回転数5rpmで測定した薬液粘度(A)と回転数50rpmで測定した薬液粘度(B)で表すシュードプラスチック指数が下記を満たす口腔用薬液噴霧製品。
((A)/(B))×100≦200
【請求項2】
前記薬液のハイドロキシアパタイトに対する接触角が45~85°である、請求項1に記載の口腔用薬液噴霧製品。
【請求項3】
5cmの距離における噴霧パターンの最大直径が20~50mmである、請求項1または2に記載の口腔用薬液噴霧製品。
【請求項4】
唾液分泌促進用または口腔乾燥改善用である、請求項1~のいずれか1項に記載の口腔用薬液噴霧製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内に噴霧して使用される口腔用薬液噴霧製品に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、口臭、虫歯、歯周病、口腔乾燥等の予防のために様々な口腔用組成物が検討されている。口腔用組成物として、ゲルやジェル、ペースト状の半固形状、錠剤等の固形状、液体状のものがあり、口腔内に適用される。
特に高齢者等によく生じる口腔乾燥(ドライマウス)用の製剤として、特許文献1に記載されるようなゲル状の組成物が提案されているが、多量の液体、固形状・半固形状の製剤を高齢者に施用すると誤嚥を引き起こす可能性がある。
そこで、誤嚥等を極力防ぐため、少量の液体組成物を口腔内に噴霧する噴霧製品が種々提案されている(特許文献2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2015-533172号公報
【文献】特開平11-165778号公報
【文献】特開2003-55179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、噴霧製品は少量の液体組成物を適用するため、必然的に製剤中の保湿成分や薬効成分の濃度を高くする必要があるが、従来の噴霧製品のなかには口腔内で拡散し過ぎてしまい舌表面に効率的に塗布できない等、口腔内に効率的に噴霧できない問題があった。
そこで本発明者らは、舌表面に効率的に塗布でき、さらに有効成分を口腔内に効率的に滞留させることのできる口腔用液体噴霧製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、薬液に特定の物性を有する増粘剤を配合し、薬液の接触角を特定の範囲とすることで、舌表面に効率的に塗布でき、有効成分を口腔内に効率的に滞留させることができることを見出した。
〔1〕 増粘剤を含む薬液がスプレー式容器に充填され、口腔内に噴霧して使用される口腔用薬液噴霧製品であって、
前記薬液の、回転数5rpmで測定した薬液粘度(A)と回転数50rpmで測定した薬液粘度(B)で表すシュードプラスチック指数が下記を満たす口腔用薬液噴霧製品。
((A)/(B))×100≦200
〔2〕 前記増粘剤が、ヒドロキシアルキルセルロース、ローカストビーンガム、グアーガム、及びカラギーナンから選ばれる1種以上である、〔1〕に記載の口腔用薬液噴霧製品。
〔3〕 回転数50rpmで測定した前記薬液の粘度が10~150mPa・sである、〔1〕又は〔2〕に記載の口腔用薬液噴霧製品。
〔4〕 前記薬液のハイドロキシアパタイトに対する接触角が45~85°である、〔1〕~〔3〕のいずれか1に記載の口腔用薬液噴霧製品。
〔5〕 5cmの距離における噴霧パターンの最大直径が20~50mmである、〔1〕~〔4〕のいずれか1に記載の口腔用薬液噴霧製品。
〔6〕 唾液分泌促進用または口腔乾燥改善用である、〔1〕~〔5〕のいずれか1に記載の口腔用薬液噴霧製品。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、有効成分を含む薬液を舌表面に効率的に塗布でき、有効成分を口腔内に効率的に滞留させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、噴霧性評価の概要を示す。
図2図2は、各検体の噴霧パターンの写真図を示す。(a)は検体1、(b)は検体2、(c)は検体3、(d)は検体4の結果を示す。
図3図3は、各検体の噴霧パターンの写真図とトレース図を示す。(a)は噴霧前の状態、(b)は検体1、(c)は検体3の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の口腔用薬液噴霧製品の薬液は、シュードプラスチック性の指数が200以下である。
ここでシュードプラスチック性とは、加わる力の小さいときは見かけの粘度が大きく、力が大きいときは見かけの粘度が小さくなる流体の性質である。薬液のシュードプラスチック性が高いと、噴霧の際に力が加わることで粘度が小さくなるが、薬液が口腔内に拡散し過ぎてしまい舌表面に効率的に薬液を塗布することができない。本発明では、シュードプラスチック性が低い薬液を用いることで、噴霧の力によっても粘度が小さくなり過ぎず、薬液が適度に口腔内に拡散される。
本発明において、シュードプラスチック性は下記指数により定義される。本発明における薬液のシュードプラスチック性は200以下であり、好ましくは150以下である。また、下限値については、ダイラタント流体との区別の観点から10以上が好ましい。
シュードプラスチック性:
20℃条件下、B型粘度計のH1ローターを使用して、回転数5rpmで測定した粘度(A)と回転数50rpmで測定した粘度(B)から次の式で求める。
((A)/(B))×100
本発明において、薬液のシュードプラスチック性を上記範囲とするには、例えば、後述する増粘剤の種類及び配合量を調整する方法が挙げられる。
【0009】
本発明における薬液は増粘剤を含有する。
増粘剤としては、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース、ローカストビーンガム、グァーガム、カラギーナン等が好ましく例示できる。なかでも、他の成分との相互作用が少ないという観点からヒドロキシアルキルセルロースが特に好ましい。
増粘剤は単独で用いても、複数種を併用してもよい。
【0010】
増粘剤の薬液における含有量は、適度に口腔内、特に舌に付着している感じがあり、さらに粘度が高すぎて不快にならない使用感と有効成分の口腔内への滞留性のバランスの観点から、好ましくは0.01~0.3質量/容量%、より好ましくは0.05~0.2質量/容量%である。
【0011】
本発明の口腔用薬液噴霧製品における薬液は、上記増粘剤以外に、用途に応じた有効成分を含有することができる。
有効成分としては、口腔用薬液噴霧製品の用途に応じて適宜選択される。唾液分泌促進用薬液噴霧製品又は口腔乾燥改善用薬液噴霧製品とする場合には、湿潤剤として海藻類抽出物、多価アルコール、ヒアルロン酸ナトリウム、有機酸、アミノ酸、リン脂質ポリマー等から1種以上を配合することができる。湿潤剤の配合量は特に制限はないが、湿潤剤の総量として5~50質量/容量%が好ましく、10~30質量/容量%がより好ましい。
【0012】
海藻類抽出物としては、コンブエキス、アオサエキス、テングサエキス、ワカメエキス等が挙げられる。海藻類抽出物の配合量は、製剤の香味を良好にするという観点から、好ましくは0.01~0.3質量/容量%、より好ましくは0.05~0.2質量/容量%である。
【0013】
多価アルコールとしては、2価以上のアルコールであればよく、中でも2価アルコール、3価アルコールがより好ましい。
2価のアルコールとしては、例えばプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール等が挙げられる。中でもプロピレングリコールがさらに好ましい。
3価のアルコールとしては、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。中でもグリセリンがさらに好ましい。
4価のアルコールとしては、例えばエリスリトール、ジグリセリンが挙げられる。5価のアルコールとしては、例えばキシリトール、リビトールが挙げられる。6価のアルコールとしては、例えばソルビトール、マンニトール、ガラクチトールが挙げられる。キシリトールは甘味料としての作用も有する。
多価アルコールは単独で用いても、複数種を併用してもよい。
多価アルコールの配合量は、製剤の香味を良好にするという観点から、好ましくは1~30質量/容量%、より好ましくは1~20質量/容量%である。
【0014】
有機酸としてはクエン酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、乳酸及びこれらの塩類等が挙げられる。有機酸の配合量は製剤の香味を良好にするという観点から、好ましくは0.01~1質量/容量%、より好ましくは0.01~0.5質量/容量%である。これらはpH調整剤としての作用も有する。
【0015】
アミノ酸としてはグルタミン酸、グリシン、及びこれらの誘導体等が挙げられる。アミノ酸の配合量は製剤の香味を良好にするという観点から、好ましくは0.01~1質量/容量%、より好ましくは0.01~0.5質量/容量%である。これらはpH調整剤としての作用も有する。
【0016】
リン脂質ポリマーとしては2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体液等が挙げられる。リン脂質ポリマーの配合量は香味を良好にするという観点から、好ましくは0.05~5質量/容量%、より好ましくは0.1~2質量/容量%である。
【0017】
本発明の口腔用薬液噴霧製品における薬液は、必要に応じて公知の各種添加剤を含有することができる。
添加剤としては、例えば、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物;アズレン、アズレンスルホン酸塩、β-グリチルレチン酸、グリチルリチン酸及び塩類、ジヒドロコレステロール、エピジヒドロコレステリン、オウバクエキス、トウキエキス、酢酸dl-α-トコフェロール、ε-アミノカプロン酸、トラネキサム酸等の抗炎症剤;塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン塩、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等の殺菌剤;メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体またはその塩、塩化亜鉛、有機酸亜鉛等の歯石予防剤;ヒノキチオール、アラントイン、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アラントインジヒドロキシアルミニウム、塩化ナトリウム等の収斂剤;ラウリル硫酸ナトリウム等の発泡剤;ピネン、ペパーミントオイル、シナモンオイル、グローブオイル、オイゲノール、レモンオイル、レモンミントオイル、バニリン、シネオール、ユーカリオイル等の香料;サッカリン、サッカリンナトリウム、スクラロース、ステビア等の甘味料;青色1号、黄色5号、黄色4号、黄色202(1)号、緑色3号、緑色201号、赤色102号等の着色剤;パラベン類、安息香酸ナトリウム等の保存剤;POE硬化ヒマシ油、POE・POPブロックポリマー、POE・POPアルキルエーテル、POEアルキルエーテル、POEアルキルフェニルエーテル、POE脂肪酸エステル、POE高級アルコールエーテル、POE・POP脂肪酸エステル、POEソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤;ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、POEアルキルエーテル硫酸塩、ラウロイルサルコシンナトリウム、ミリストイルサルコシンナトリウム、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルリン酸塩、POEアルキルエーテルリン酸塩、N-アシルタウリン塩、POEアルキルエーテルリン酸・リン酸塩、スルホン酸塩等のアニオン性界面活性剤;塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、POEアルキルアミン・脂肪酸アミド等のカチオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0018】
本発明の口腔用薬液噴霧製品における薬液は、歯や口腔粘膜へのダメージを与えにくくする観点からpHが好ましくは5.0~9.0、より好ましくは5.5~9.0である。
【0019】
本発明における薬液は、上記各成分を、水及び/又はエタノール等の溶媒に混合することで製造することができる。
【0020】
本発明の口腔用薬液噴霧製品は、薬液のハイドロキシアパタイトに対する接触角が45~85°である。当該接触角が45°以上、85°以下であることで適切な付着性を持たせることができる。接触角としては好ましくは50°以上、70°以下である。接触角をかかる範囲とするには、例えば接触角を低下させる働きを有する界面活性剤や多価アルコールの配合量を調節する、増粘剤の配合量を検討するといった方法が挙げられる。
【0021】
本発明の口腔用薬液噴霧製品は、20℃、回転数50rpmにおける薬液の粘度が10~150mPa・sであることが好ましい。粘度が10mPa・s以上であることで効果を発揮するための薬液の付着性を持たせることができ、150mPa・s以下であることで不要なべたつきを軽減できるため好ましい。薬液の粘度は、より好ましくは20~100mPa・sである。粘度をかかる範囲とするには、例えば、薬液に対する増粘剤の配合量を調整する方法が挙げられる。粘度はB型粘度計(H2ローター)にて測定することができる。
【0022】
本発明の口腔用薬液噴霧製品は、スプレー式容器に充填され、口腔内に噴霧して使用される。スプレー式容器としては、薬液を噴霧できる構造を有しているものであれば特に制限されない。具体的には、例えば、薬液を収容するプラスチックボトル等の容器本体と、ポンプディスペンサー等の噴霧機構を有するスプレー部とを備え、容器本体の上部開口部に密着して装着されたスプレー部の押圧部を押圧することで、容器本体に収容された内容物が、スプレー部の内容物排出機構によって内容物排出口(ノズル)から噴霧、排出されるものが使用できる。
スプレー式容器におけるノズル孔径は、適切な広がりの観点から、0.4~0.6mm、さらに0.45~0.55mmであることが好ましい。
また、噴射量は多すぎると噴射の勢いが強く、舌への痛みが生じるなど使用感の低下につながる一方、少なすぎると有効量を吐出するためのスプレー回数が多くなり、利便性に欠けるという観点から0.07~0.2mL、さらに0.1~0.18mLであることが好ましい。
【0023】
本発明の口腔用薬液噴霧製品は、5cmの距離における噴霧パターンの最大直径が20~50mmであることが好ましく、35~50mmであることがより好ましい。噴霧パターンの最大直径がかかる範囲であることで、薬液が口腔内に適度に拡散し、薬液を舌表面に満遍なく塗布することができる。
【実施例
【0024】
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【0025】
表1に記載の組成に従い、各種成分を混合して、薬液を調製した(例1~4)。
【0026】
次に、各薬液を株式会社吉野工業所製のディスペンサーを備えたスプレー式容器に入れ、評価に用いた。なお、当該スプレー式容器の構成を次に示す。
1プッシュ用量(1プッシュで噴霧される量):0.12~0.16mL
ノズル孔径:0.55mm
ボトル部容量:約80mL
【0027】
<噴霧性評価>
調製した各薬液をスプレー式容器に充填し、室温下、5cmの距離に垂直に設置したろ紙に対して上方斜め45°程度の角度で1プッシュしたときの噴霧パターンを評価した。当該評価についての概要を図1に示す。
噴霧パターンの最も長い距離を最大直径とし、最も短い距離を最小直径とした。また、噴霧粒子径はレーザー光式粒子径分布測定装置(東日コンピューター株式会社製、LDSA-1400A)によって計測した。
結果を表2に示す。また、各検体の噴霧パターンの写真画像を図2に示す。
【0028】
<シュードプラスチック性>
薬液のシュードプラスチック性は、20℃で、B型粘度計(H1ロータ)を用い、回転数5rpmの粘度(A)と回転数50rpmの粘度(B)を測定し、下記式により算出した。
((A)/(B))×100
結果を表2に示す。
【0029】
<粘度>
薬液の粘度は、各検体を20℃で、B型粘度計(H2ローター、回転数50rpm)により測定した。
結果を表2に示す。
【0030】
<接触角>
薬液の接触角は、接触角計(協和界面科学株式会社製 CA-X型)を用いてハイドロキシアパタイトに対する接触角を測定した。
結果を表2に示す(3回の計測結果の平均値)。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
表2及び図2の結果より、シュードプラスチック性の低い薬液を用いた例1及び例3の製剤を噴霧した場合は、噴霧パターンが適度な広がりを持つことが明らかである。一方、シュードプラスチック性が高い薬液を用いた例4の製剤の場合は、薬液が広がり過ぎてしまった。
【0034】
<官能試験>
例1、例3の各検体に、それぞれ青色の着色剤(ブリリアントブルーFCF、癸巳化成製、製品名:青色1号)を配合し(0.008%)、被験者の口腔内に噴霧した。結果を図3に示す。図3においてブランクとは噴霧前の状態である。
図3より、シュードプラスチック性の低い薬液を用いた例1及び例3の製剤を噴霧した場合は、舌への広がりが適度であることが明らかである。
また、製剤使用時のべたつき感と舌表面への広がる実感について、モニター試験を行った。具体的には被験者6名の口腔内に例1と例3の製剤を噴霧した。その結果、例1、例3の検体ともべたつきを感じにくく、効率的に舌表面に広がる実感が得られたと評価され、さらに、例3の検体よりも例1の検体の方がより強く感じるという結果が得られた。
図1
図2
図3