(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】空気噴射式織機におけるエアタックイン装置
(51)【国際特許分類】
D03D 47/48 20060101AFI20220913BHJP
D03D 47/30 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
D03D47/48
D03D47/30
(21)【出願番号】P 2018209408
(22)【出願日】2018-11-07
【審査請求日】2021-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000215109
【氏名又は名称】津田駒工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田村 公一
(72)【発明者】
【氏名】名木 啓一
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第00534429(EP,A1)
【文献】特開2008-121178(JP,A)
【文献】特開2003-166148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 47/48
D03D 47/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気噴射式織機に備えられると共にタックインノズルによる空気噴射でタックイン動作を行うエアタックイン装置であって、給糸側及び反給糸側に備えられると共に前記タックインノズルを有する一対のタックインヘッド、織機主軸と同期して一方向に連続的に回転駆動される駆動軸、及び少なくとも反給糸側の前記タックインヘッドを支持すると共に前記駆動軸を駆動源とする往復運動機構であって織機の前後方向に関し織前側の第1の位置と織前から離間した第2の位置との間で前記タックインヘッドを往復運動させる往復運動機構を備え、前記第1の位置は、前記往復運動に伴い、前記タックインヘッドが織前と重複する状態となる位置であると共に、前記第2の位置は、前記タックインヘッドが織前から筬側とは反対側に離間する状態となる位置である空気噴射式織機におけるエアタックイン装置において、
前記往復運動機構は、織機フレームに回転可能に支持されると共に織幅方向に延在する中間伝動軸と、該中間伝動軸と前記駆動軸とを連結すると共に前記中間伝動軸を往復反転駆動する反転駆動部と、ワープラインの上方に設けられた支持軸に一端で支持されると共に前記支持軸の軸心を中心に揺動可能に設けられた揺動アームであって他端で前記タックインヘッドを支持する揺動アームと、該揺動アームと前記中間伝動軸とを連結すると共に前記中間伝動軸に対し前記織幅方向に関し位置変更可能に取り付けられる駆動伝達部とを備える
ことを特徴とする空気噴射式織機におけるエアタックイン装置。
【請求項2】
前記支持軸は、前記前後方向に関し織前の直上を含む織前近傍の範囲内に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の空気噴射式織機におけるエアタックイン装置。
【請求項3】
前記駆動伝達部は、一端で前記中間伝動軸に対し相対回転不能に取り付けられた第1の連結レバーと、該第1の連結レバーの他端に対し一端で回転可能に連結されると共に前記揺動アームに対し他端で回転可能に連結される第2の連結レバーとから成る
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の空気噴射式織機におけるエアタックイン装置。
【請求項4】
前記揺動アームと前記第2の連結レバーとの連結部分は、前記揺動アームの長手方向における中間部よりも他端側に位置する
ことを特徴とする請求項3に記載の空気噴射式織機におけるエアタックイン装置。
【請求項5】
前記タックインヘッドが前記第1の位置及び前記第2の位置のうちの一方の位置に位置する状態で前記第1の連結レバーと前記第2の連結レバーとの為す角度が略90°となるように前記連結部分の位置及び両連結レバーの長さ寸法が設定されていると共に、前記タックインヘッドが前記一方の位置に対する他方の位置に位置する状態でも前記角度が略90°となるように前記支持軸の位置が設定されている
ことを特徴とする請求項
4に記載の空気噴射式織機におけるエアタックイン装置。
【請求項6】
前記反転駆動部は、前記駆動軸に対し取り付けられるクランク機構を含む多節リンク機構である
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、又は5に記載の空気噴射式織機におけるエアタックイン装置。
【請求項7】
前記クランク機構は、前記駆動軸に対し相対回転不能に取り付けられるクランクハブを含み、前記駆動軸に対する前記クランクハブの取り付け位相が変更可能に構成されている
ことを特徴とする請求項6に記載の空気噴射式織機におけるエアタックイン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気噴射式織機に備えられると共にタックインノズルによる空気噴射でタックイン動作を行うエアタックイン装置であって、給糸側及び反給糸側に備えられると共に前記タックインノズルを有する一対のタックインヘッド、織機主軸と同期して一方向に連続的に回転駆動される駆動軸、及び少なくとも反給糸側の前記タックインヘッドを支持すると共に前記駆動軸を駆動源とする往復運動機構であって織機の前後方向に関し織前側の第1の位置と織前から離間した第2の位置との間で前記タックインヘッドを往復運動させる往復運動機構を備え、前記第1の位置は、前記往復運動に伴い、前記タックインヘッドが織前と重複する状態となる位置であると共に、前記第2の位置は、前記タックインヘッドが織前から筬側とは反対側に離間する状態となる位置である空気噴射式織機におけるエアタックイン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気噴射式織機に備えられるタックイン装置として、緯入れされた緯糸の端部を後続の緯糸が緯入れされる経糸開口内へ空気噴射によって折り返す(タックインする)といったタックイン動作を給糸側及び反給糸側で行う空気噴射式のタックイン装置である所謂エアタックイン装置がある。なお、そのタックイン装置は、空気噴射を行うタックインノズルを有するタックインヘッドを含んでいる。そして、タックイン装置においては、そのタックインヘッドが給糸側及び反給糸側に備えられている。
【0003】
ところで、そのようなエアタックイン装置が備えられた空気噴射式織機において、製織される織布の織幅が変更される場合には、その変更後の織端の位置に対応させるかたちで、タックインヘッドの配置が織幅方向に変更される。因みに、その場合において、一般的な織機では、反給糸側のタックインヘッドの配置が変更されるが、織幅方向における中央を基準とする所謂中心基準の織機では、給糸側及び反給糸側のタックインヘッドの配置が変更される。
【0004】
そして、前記のようにタックインヘッドの配置が織幅方向に変更されると、そのタックインヘッドと筬(筬羽)との筬打ちにおける干渉を避けるべく、一般的には筬も変更される。すなわち、織幅変更に伴うタックインヘッドの配置の変更に伴い、筬もその変更後の織幅に応じた幅寸法のものに変更される。しかし、その場合には、想定される複数の織幅のそれぞれに応じた幅寸法の筬を複数用意する必要がある。
【0005】
それに対し、そのような複数の筬の用意を不要とすることを目的としたエアタックイン装置として、織機の前後方向に関し前記タックイン動作が行われるタックイン位置と前記干渉を避ける退避位置との間でタックインヘッドを往復運動させるように構成された所謂退避型のエアタックイン装置が、従来から提案されている。そして、そのような退避型のエアタックイン装置の一例として、特許文献1に開示されている装置(以下、「従来装置」と言う。)がある。
【0006】
詳しくは、その従来装置は、駆動軸を駆動源とする往復運動機構によって、前記のようにタックインヘッド(タックインノズル)を往復運動させるように構成されている。そして、その往復運動機構は、駆動機構としてのカム機構と、そのカム機構の運動をタックインヘッドに伝達するリンク機構とで構成されている。
【0007】
その往復運動機構の構成について、カム機構は、駆動軸に対し相対回転不能に取り付けられるカムと、そのカムの回転に応じて織機の前後方向に揺動するように設けられたレバー(カムレバー)とから成る。また、リンク機構は、一端でそのカムレバーにおける長孔に対し自身に設けられたピンを挿入させるかたちでカムレバーに連結されたリンクロッドと、一端でそのリンクロッドの他端に対し枢着されるかたちでリンクロッドに連結されると共に織機上で前記前後方向にスライド可能に支持されたスライド部材とから成る。
【0008】
そして、その従来装置では、そのスライド部材の他端に固定されるかたちでタックインのために空気噴射を行うノズル(タックインヘッド)が支持されている。その構成により、従来装置では、カムの回転に伴うカムレバーの揺動に伴い、そのカムレバーに対しリンクロッドを介して連結されたスライド部材が前記前後方向にスライドし、それによってタックインヘッドが前記のように往復運動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、退避型のタックイン装置は、前記のように織幅変更に合わせてタックインヘッドの配置が織幅方向に変更されることを前提とした装置である。したがって、前記した従来装置を備えた織機においても、製織される織布の織幅が変更されると、当然ながらその変更に応じてそのタックインヘッドの配置が織幅方向に変更される。
【0011】
なお、そのようにタックインヘッドの配置を変更する場合、前記のように構成された従来装置では、タックインヘッドを直接的に支持する部材であるスライド部材が織幅方向に移動される。しかしながら、その従来装置では、そのスライド部材がリンクロッドによって駆動機構(カム機構)と連結されるように構成されていることから、タックインヘッドの配置を変更するにあたっては、スライド部材のみならず、そのスライド部材に連結された駆動機構をも織幅方向に移動させる必要が生じる。すなわち、従来装置では、織幅変更に伴うタックインヘッドの配置の変更に伴い、往復運動機構全体を織幅方向に移動させなければならない。そのため、そのタックインヘッドの配置の変更に多大な労力を要するといった問題がある。
【0012】
以上のような実情を鑑み、本発明は、前記のような往復運動機構を備える空気噴射式織機におけるエアタックイン装置において、タックインヘッドの配置を織幅方向に容易に変更することができる構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記のように織機の前後方向に関し織前側の第1の位置と織前から離間した第2の位置との間で前記タックインヘッドを往復運動させる往復運動機構を備える空気噴射式織機におけるエアタックイン装置を前提とする。
【0014】
なお、本発明で言う「第1の位置」は、タックインヘッドの往復運動に伴い、織機の前後方向に関しタックインヘッドが織前と重複する状態となる位置である。より詳しくは、その第1の位置は、その位置もしくはその近傍に前記タックインヘッドが位置することで前記タックイン動作を行うことが可能となる位置であって、具体的には、織機の前後方向に関し前記タックインヘッドに形成されたスリットの存在範囲内に織前が位置する状態となる位置である。また、本発明で言う「第2の位置」は、タックインヘッドの往復運動に伴い、織機の前後方向に関しタックインヘッドが織前から筬側とは反対側に離間する状態となる位置である。より詳しくは、その第2の位置は、その位置に前記タックインヘッドが位置する状態において筬が最前進位置に達したとしても前記タックインヘッドが筬と干渉しない筬から退避した位置(退避位置)である。
【0015】
そして、本発明によるエアタックイン装置は、前記往復運動機構が、織機フレームに回転可能に支持されると共に織幅方向に延在する中間伝動軸と、該中間伝動軸と前記駆動軸とを連結すると共に前記中間伝動軸を往復反転駆動する反転駆動部と、ワープラインの上方に設けられた支持軸に一端で支持されると共に前記支持軸の軸心を中心に揺動可能に設けられた揺動アームであって他端で前記タックインヘッドを支持する揺動アームと、該揺動アームと前記中間伝動軸とを連結すると共に前記中間伝動軸に対し前記織幅方向に関し位置変更可能に取り付けられる駆動伝達部とを備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明によるエアタックイン装置において、前記支持軸を、前記前後方向に関し織前の直上を含む織前近傍の範囲内に配置されたものとしても良い。さらに、そのエアタックイン装置において、前記駆動伝達部を、一端で前記中間伝動軸に対し相対回転不能に取り付けられた第1の連結レバーと、該第1の連結レバーの他端に対し一端で回転可能に連結されると共に前記揺動アームに対し他端で回転可能に連結される第2の連結レバーとから成るものとしても良い。
【0017】
また、前記駆動伝達部が前記第1の連結レバーと前記第2の連結レバーとから成る場合は、前記揺動アームと前記第2の連結レバーとの連結部分を、前記揺動アームの長手方向における中間部よりも他端側に位置するものとしても良い。さらに、前記駆動伝達部がそのように構成されている場合において、前記タックインヘッドが前記第1の位置及び前記第2の位置のうちの一方の位置に位置する状態で前記第1の連結レバーと前記第2の連結レバーとの為す角度が略90°となるように前記連結部分の位置及び両連結レバーの長さ寸法が設定されていると共に、前記タックインヘッドが前記一方の位置に対する他方の位置に位置する状態でも前記角度が略90°となるように前記支持軸の位置が設定されていても良い。
【0018】
また、本発明によるエアタックイン装置において、前記反転駆動部を、前記駆動軸に対し取り付けられるクランク機構を含む多節リンク機構としても良い。さらに、前記反転駆動部が前記クランク機構を含む前記多節リンク機構で構成される場合は、前記クランク機構を、前記駆動軸に対し相対回転不能に取り付けられるクランクハブを含み、前記駆動軸に対する前記クランクハブの取り付け位相が変更可能に構成されたものとしても良い。
【発明の効果】
【0019】
本発明によるエアタックイン装置における往復運動機構では、タックインヘッドが揺動アームに支持されると共に、その揺動アームに往復揺動運動を与えるべく揺動アームに対し駆動伝達部が連結されている。そして、その往復運動機構では、前記した従来装置の駆動機構に対応する反転駆動部が、その従来装置のようにタックインヘッドを支持するスライド部材に往復運動を与えるリンクロッドに対し直接的に連結されるのではなく、織幅方向に延在するように設けられた中間伝動軸を介して駆動伝達部に連結されている。すなわち、本発明によるタックイン装置における往復運動機構は、反転駆動部が中間伝動軸を往復反転駆動すると共に、そのように往復反転運動する中間伝動軸を駆動源として揺動アームが往復揺動駆動される構成となっている。
【0020】
その上で、その往復運動機構においては、揺動アームに連結された駆動伝達部の中間伝動軸に対する取り付け位置がその中間伝動軸の軸線方向である織幅方向に変更可能となっていることから、その駆動伝達部及びその駆動伝達部が連結された揺動アームの配置が、織幅方向に変更可能となっている。すなわち、その往復運動機構は、その全体のうち、タックインヘッドを支持する揺動アーム及びその揺動アームに連結された駆動伝達部のみが織幅方向に移動可能な構成となっている。
【0021】
したがって、本発明によるエアタックイン装置によれば、織幅変更に伴ってタックインヘッドの配置を変更するにあたり、従来装置のように往復運動機構全体を移動させる必要はなく、その往復運動機構における反転駆動部の配置を変更することなく、タックインヘッドを直接的に支持する揺動アーム及びその揺動アームに付随する部分である駆動伝達部のみを移動させるだけで、そのタックインヘッドの配置の変更が実現される。それにより、従来装置と比べ、多大な労力を要することなくタックインヘッドの織幅方向への配置変更を容易に行うことができる。
【0022】
また、本発明によるエアタックイン装置においては、一端側の支持軸の軸心を中心に揺動可能な揺動アームの他端でタックインヘッドが支持されており、そのタックインヘッドの往復運動は、その支持軸の軸心を中心とした揺動によって行われる。その上で、そのエアタックイン装置を、前記した織前近傍の範囲に対し、その支持軸がその範囲内に配置されるように構成することにより、その範囲外に支持軸が配置された場合と比べ、往復揺動運動するタックインヘッドの軌跡がワープラインに対しより平行に近い状態となる。それにより、タックインヘッドが揺動変位する構成であっても、前記タックイン動作を行うことが可能な第1の位置がワープラインに対しより近い位置となり、その結果として、より適切に前記タックイン動作が行われる状態を実現することができる。
【0023】
さらに、本発明によるエアタックイン装置において、その駆動伝達部を前記のような第1の連結レバー及び第2の連結レバーから成るように構成することにより、駆動伝達部が単一の連結レバーで構成される場合と比べ、揺動アーム及び駆動伝達部の長寿命化を図ることができる。
【0024】
詳しくは、単一の連結レバーによって駆動伝達部を構成した場合、揺動アームを揺動可能とするためには、揺動アームと連結レバーとの連結構成は、その一方に設けられた連結部分がその他方の長手方向に変位可能となるように構成されている必要がある。何故なら、揺動アーム及び連結レバーの揺動支点が異なるため、例えば揺動アーム上の所定の位置に連結部分が設けられている場合、その連結部分から連結レバーの揺動支点(中間伝動軸の軸心)までの距離が、揺動アームの揺動に伴って変化するからである。なお、そのような連結構成としては、例えば、揺動アームに連結部分としての連結ピンを設けると共に連結レバーに対しその長手方向に延在する長孔を形成し、その連結ピンが長孔に挿入されるかたちで両者が連結されるといった構成が考えられる。そして、その連結構成の場合、揺動アームの揺動に伴って連結ピンが長孔内において摺動変位し、連結レバーの揺動支点から連結部分までの距離が変化することとなる。
【0025】
それに対し、前記のように第1の連結レバー及び第2の連結レバーによって駆動伝達部を構成すれば、その駆動伝達部は、第1の連結レバーと第2の連結レバーとの為す角度が変化することで、第1の連結レバーの前記一端と第2の連結レバーの前記他端との間の直線距離が変化し得る構成となる。したがって、その構成によれば、揺動アームの連結部分が駆動伝達部(第2の連結レバー)の他端に対し変位不能に連結されていても、揺動アームの揺動に伴って第1の連結レバーと第2の連結レバーとの為す角度が変化することで、その揺動に伴う連結部分と中間伝動軸の軸心との間の距離の変化が吸収される。それにより、駆動伝達部を前記のような摺動変位する部分を持たない構成とすることができるため、その摺動に伴う摩耗等が発生すること無く、結果として揺動アーム及び駆動伝達部の長寿命化を図ることができる。
【0026】
また、駆動伝達部がそのように構成されている場合において、揺動アームと第2の連結レバーとの連結部分の位置を、その揺動アームの長手方向における中間部よりも他端側に設定することにより、その連結部分に設けられる軸受の長寿命化を図ることができる。すなわち、連結部分の位置をそのように設定することで、揺動アームを支持する支持軸から連結部分までの距離がより大きくなるため、前記軸受に作用するモーメント荷重(タックインヘッドを支持する揺動アームを揺動させる力)がより小さくなり、その結果として、前記軸受の長寿命化を図ることができる。
【0027】
さらに、前記のように第1の連結レバー及び第2の連結レバーによって駆動伝達部が構成されている場合において、そのエアタックイン装置を、タックインヘッドが第1の位置及び第2の位置に位置する状態で両連結レバーの為す角度が略90°となるように、前記連結部分の位置、両連結レバーの長さ寸法、及び支持軸の位置が設定された構成とすることにより、中間伝動軸の往復回動によって揺動アームを揺動させる上での運動伝達がより効率的に行えるものとなる。それにより、往復運動機構によるタックインヘッドの往復運動が効率的に行われることとなり、所定の往復運動を行わせる上での往復運動に掛かる負担が小さくなる。
【0028】
また、本発明によるエアタックイン装置において、反転駆動部を、クランク機構によって駆動軸の回転を往復運動に変換する多節リンク機構で構成することにより、本発明によるエアタックイン装置の製造コストを低減することができる。
【0029】
詳しくは、より安定して前記タックイン動作が行われるようにするためには、タックインヘッドが第1の位置付近に可及的に留まるようにするための停留期間が生じるように反転駆動部が構成されているのが望ましい。その上で、そのような停留期間を得るための構成としては、一般的にはカム機構を用いたものが考えられるが、装置構成としてカム機構を用いると、その装置は比較的に高価なものとなる。それに対し、前記のようなクランク機構を含む多節リンク機構を反転駆動部の構成として用い、その反転駆動部を前記停留期間が生じるように構成すれば、前記のようにカム機構を用いた場合と比べ、その反転駆動部は安価なものとなる。したがって、反転駆動部をそのように構成されたものとすることで、エアタックイン装置の製造コストを低減することができる。
【0030】
さらに、反転駆動部をそのように構成する場合において、そのクランク機構におけるクランクハブの駆動軸に対する取り付け位相が変更できるようにクランク機構を構成することにより、製織条件の変更に伴うタックインヘッドが第1の位置に位置するタイミングの変更に容易に対応することが可能となる。
【0031】
詳しくは、製織のための製織条件が変更されると、それに伴い、前記タックイン動作を行う最適なタイミングが変わる場合がある。そして、その場合には、タックインヘッドが往復運動する退避型のタックイン装置を備えた織機では、タックインヘッドが第1の位置に位置するタイミングを変更する必要がある。そこで、本発明におけるエアタックイン装置において、前記のように反転駆動部がクランク機構を含む多節リンク機構で構成される場合に、前記取り付け位相が変更できるようにクランク機構を構成すれば、前記取り付け位相を変更するだけでタックインヘッドの往復運動の位相を変更することが可能となるため、製織条件の変更に伴うタックインヘッドが第1の位置に位置するタイミングの変更に容易に対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明が前提とする空気噴射式織機の一例を示す概略図。
【
図3】本発明によるエアタックイン装置における往復運動機構の一例を示す正面図。
【
図4】本発明によるエアタックイン装置における往復運動機構の一例を示す左側面図。
【
図5】駆動軸に対するクランクハブの取り付け構造の一例を示す部分断面図。
【
図6】往復運動駆動されるタックインヘッドの位置とクランク角度との関係を示す図。
【
図7】4節リンク機構で構成された反転駆動部の一例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、
図1~6に基づき、本発明による空気噴射式織機におけるエアタックイン装置の一実施例を説明する。
【0034】
図1に示すように、本発明が前提とする空気噴射式織機1は、メインノズルMN等から噴射される圧縮空気によって緯入れされた緯糸Yの端部(以下、「緯糸端部」と言う。)を後続の緯糸Yが緯入れされる経糸Wの開口内へ空気噴射で折り返す(タックインする)タックイン動作を行うエアタックイン装置2を備えている。
【0035】
そのエアタックイン装置2について、詳しくは、エアタックイン装置2は、そのタックイン動作を行うためのタックインヘッド3を含んでいる。また、そのタックインヘッド3は、
図2に示すように、緯糸端部が挿入されるスリット3aと、前記タックイン動作のための前記空気噴射を行うタックインノズル3cであってスリット3aの上下においてスリット3aの延在方向に並び方向を一致させた複数のタックインノズル3cとを有している。なお、そのタックインヘッド3における先端側の部分は、緯糸Yがスリット3aへ挿入されやすくなるように、そのスリット3aに連続するようにして上下に広がる傾斜面3eが形成された案内部3dとなっている。また、タックインヘッド3は、各タックインノズル3cの噴射領域(タックインノズル3cによる前記空気噴射が及ぶ範囲)内へ向けてスリット3a内から緯糸端部を折り返すための空気噴射を行う解放ノズル3fも有している。
【0036】
その上で、そのエアタックイン装置2は、そのようなタックインヘッド3を空気噴射式織機1における給糸側(メインノズルMN側)及び反給糸側に備えている。なお、本実施例では、給糸側のタックインヘッド3と反給糸側のタックインヘッド3とは異なる構成となっており、給糸側のタックインヘッド3は、前記したスリット3a及び各ノズルに加え、そのスリット3a内で緯糸端部を保持するための保持孔及び保持ノズル(いずれも図示略)を有している。そして、各タックインヘッド3は、織機1の前後方向(以下、単に「前後方向」と言う。)に関し織前CF側の第1の位置において、前記タックイン動作を行うことが可能となっている。なお、その第1の位置は、具体的には、前後方向に関しスリット3aの底部3bの位置が織前CFの位置と略一致する位置(
図1において実線で示す位置)として設定されている。
【0037】
また、各タックインヘッド3の織幅方向に関する配置について、給糸側のタックインヘッド3は、給糸側の織端の近傍であって、メインノズルMNと給糸側の織端との間に位置するように設けられている。また、反給糸側のタックインヘッド3については、空気噴射式織機1は、図示のように反給糸側の織端の外側にキャッチコードCを備えており、反給糸側のタックインヘッド3は、反給糸側の織端の近傍であって、キャッチコードCと反給糸側の織端との間に位置するように設けられている。したがって、その空気噴射式織機1においては、各タックインヘッド3は、織幅方向に関し、筬4(筬羽4a)と重複した位置に配置されている。
【0038】
なお、その空気噴射式織機1において、給糸側で緯入れ毎に緯糸Yを切断する給糸カッタ5は、給糸側のタックインヘッド3に対する織端側とは反対側であって、給糸側のタックインヘッド3とメインノズルMNとの間に設けられている。また、反給糸側でキャッチコードCに連なる緯糸Yを切断するカッタ6は、反給糸側のタックインヘッド3に対する織端側とは反対側であって、反給糸側のタックインヘッド3とキャッチコードCとの間に位置するように設けられている。但し、その反給糸側のカッタ6は、前記タックイン動作のために緯入れ毎に切断動作を行うものとなっており、エアタックイン装置2の一部として機能しているとも言える。
【0039】
そして、以上で説明した空気噴射式織機1において、製織される織布Tの織幅が変更される場合、反給糸側の織端の位置が変わるため、それに伴って反給糸側のタックインヘッド3、及びカッタ6の位置も変更される。なお、給糸側のようにタックインヘッド3と筬4との織幅方向に関する位置関係が変わらない場合には、筬4における一部の筬羽4aを切り欠くことで、筬打ち動作に伴うタックインヘッド3と筬羽4aとの干渉は回避される。しかし、前記のようにタックインヘッド3の位置が変わり得る反給糸側については、給糸側のように筬羽4aを切り欠くことでは対応できない。
【0040】
そこで、本発明のエアタックイン装置は、そのように筬打ち動作に伴って筬羽4aと干渉する可能性のあるタックインヘッド(本実施例では反給糸側のタックインヘッド3)が筬打ち動作に合わせて揺動変位(往復運動)するように構成されている。すなわち、本発明のエアタックイン装置は、そのようにタックインヘッドを往復運動させるための往復運動機構を備えている。そして、その往復運動は、前後方向に関し、前記のように前記タックイン動作を行うことが可能な前記第1の位置と前記のような干渉を避ける第2の位置(退避位置)との間で行われる。なお、その退避位置は、前後方向に関し織前CFから離間した位置であって前記往復運動に伴い反給糸側のタックインヘッド3が織前CFから筬4側とは反対側に離間する状態となる位置(
図1において点線で示す位置)として設定されている。
【0041】
以下では、そのような本発明のエアタックイン装置における往復運動機構について、その一例を本実施例の構成として詳細に説明する。なお、本実施例では、前記のように反給糸側のタックインヘッド3のみがその往復運動機構7によって往復運動するように駆動される。すなわち、本実施例において往復運動機構7が関係するタックインヘッドは、反給糸側のタックインヘッド3である。そこで、特に断りが無い限り、「タックインヘッド」は、反給糸側のタックインヘッドを指す。
【0042】
先ず、エアタックイン装置2は、前記のようにタックインヘッド3を往復運動させる往復運動機構7に加え、その往復運動機構7の駆動源としての駆動軸8を備えている(
図3)。その駆動軸8は、織幅方向に関しその一端部が織機フレーム9よりも外側に突出した状態で、織機フレーム9に対し軸受10を介して回転可能に支持されている。そして、その駆動軸8は、織機主軸MSに対し機械的に連結されており、織機主軸MSと同期して一方向に連続的に回転駆動されるように設けられている。なお、本実施例では、駆動軸8は、空気噴射式織機1における給糸側及び反給糸側のそれぞれに備えられるかたちで一対設けられている。
【0043】
その上で、往復運動機構7は、その駆動軸8に対し連結されるかたちで設けられている。より詳しくは、往復運動機構7は、織幅方向に延在する中間伝動軸11であって両駆動軸8に共通の中間伝動軸11と、その中間伝動軸11と各駆動軸8とを連結して中間伝動軸11を往復反転駆動する一対の反転駆動部12とを備えている。さらに、往復運動機構7は、タックインヘッド3を支持する揺動アーム13であって織機1上で揺動可能に設けられた揺動アーム13と、中間伝動軸11の往復反転運動を揺動アーム13に伝達する駆動伝達部14とを備えている。その往復運動機構7が備える各構成要素について、詳しくは、以下の通りである。
【0044】
中間伝動軸11は、前後方向に関し前記退避位置よりも織布Tの巻取り側の位置において、左右の織機フレーム9間に架設されるかたちで設けられている。なお、織機1上には織幅方向に延在するようにしてテンプルバー15が設けられており、中間伝動軸11の位置は、そのテンプルバー15よりも織布Tの巻取り側となっている。そして、その中間伝動軸11は、織機フレーム9に対し軸受(図示略)を介して回転可能に支持されると共に、その両端部が各織機フレーム9よりも外側に突出した状態となるように設けられている。
【0045】
次に、反転駆動部12は、給糸側の織機フレーム9よりも外側及び反給糸側の織機フレーム9よりも外側に備えられている。なお、給糸側の反転駆動部12と反給糸側の反転駆動部12とは、織幅方向に関し対称的に構成されている。そこで、以下では、反給糸側の反転駆動部12についてのみ説明する。
【0046】
図3に示すように、反転駆動部12は、駆動軸8に対し取り付けられるクランク機構16を含む多節リンク機構で構成されている。なお、本実施例では、その反転駆動部12を構成する多節リンク機構は、6節リンク機構となっている。具体的には、その反転駆動部12は、コンロッド161を含む前記のクランク機構16、一端でクランク機構16におけるコンロッド161に対し連結されると共に中間部で織機フレーム9に対し揺動可能に支持された揺動レバー17、中間伝動軸11に対しその一端で相対回転不能に取り付けられた駆動レバー18、及び揺動レバー17の他端と駆動レバー18の他端とを連結する連結ロッド19で構成されている。
【0047】
その反転駆動部12において、クランク機構16は、
図5に示すように、駆動軸8の前記一端部に対し相対回転不能に取り付けられたクランクハブ162と、そのようにクランクハブ162が駆動軸8に対し取り付けられた状態で駆動軸8の軸心から偏心した位置に軸心が位置するようにクランクハブ162に対し固定された偏心軸163と、その偏心軸163に対し相対回転可能に取り付けられたコンロッド161とで構成されている。
【0048】
より詳しくは、クランクハブ162は、全体として軸形状を成すと共に、駆動軸8の前記一端部が嵌挿される嵌挿孔162aを有するように構成されている。但し、その嵌挿孔162aは、クランクハブ162の軸線方向における一端側の端面に開口する有底の孔となっている。さらに、クランクハブ162は、その嵌挿孔162aに連通するスリ割り部162bを含む割締め構造を有している。そして、クランクハブ162は、その割締め構造による割締め固定により、嵌挿孔162aに挿通された駆動軸8(前記一端部)に対し相対回転不能に取り付けられている。
【0049】
また、偏心軸163は、コンロッド161が連結される軸であり、本実施例では、クランクハブ162と一体的に形成されている。その偏心軸163は、クランクハブ162における前記一端側とは反対側(他端側)の端面から突出するようなかたちで設けられている。但し、その偏心軸163は、クランクハブ162における嵌挿孔162aの中心から偏心した位置に軸心が位置するように設けられている。したがって、前記のようにクランクハブ162が駆動軸8に対し取り付けられた状態では、偏心軸163は、駆動軸8の軸心から偏心した位置に軸心が位置した状態となっている。
【0050】
また、コンロッド161は、その両端部に貫通孔を有するレバー状の部材である。そして、コンロッド161は、その一端で偏心軸163に対し相対回転可能に連結されている。具体的には、そのコンロッド161は、その一端部における貫通孔161aには軸受20が嵌装されており、その軸受20に対し偏心軸163が嵌挿されることで、偏心軸163に対し相対回転可能に連結されている。それにより、コンロッド161は、その一端でクランクハブ162に対し偏心軸163を介して連結された状態となっている。
【0051】
揺動レバー17は、その中間部において屈曲された略L字形状のレバー部材である。そして、揺動レバー17は、織機フレーム9に対しその中間の屈曲部で揺動可能に支持されている。その揺動レバー17の支持について、具体的には、織機フレーム9側には、揺動レバー17を支持するためのレバー軸21が外側に突出した状態で設けられている。一方、揺動レバー17には、その揺動レバー17をレバー軸21に組み付けるための貫通孔が屈曲部に形成されている。その上で、揺動レバー17が軸受を介してレバー軸21に組み付けられる、あるいはレバー軸21が織機フレーム9に対し回転可能に支持されることにより、揺動レバー17は、織機フレーム9に対し揺動可能に支持された状態となっている。
【0052】
また、揺動レバー17には、その両端部にも貫通孔が形成されている。そして、揺動レバー17は、その一端部でコンロッド161の他端部に対し相対回転可能に連結されている。具体的には、その揺動レバー17の一端部における貫通孔及びコンロッド161の他端部における貫通孔の一方に軸受(図示略)が嵌装されると共に、他方の貫通孔に嵌挿された連結軸22が軸受に嵌挿されることで、揺動レバー17とコンロッド161とが相対回転可能に連結された状態となっている。
【0053】
駆動レバー18は、その中間部において僅かに屈曲された形状を成すレバー部材である。また、その駆動レバー18の両端部にも貫通孔が形成されている。さらに、駆動レバー18は、その一端部における貫通孔に連通するスリ割り部18aを含む割締め構造を有している。そして、駆動レバー18は、その一端部における貫通孔に中間伝動軸11(その前記両端部のうち反給糸側の端部)が挿通された状態でその割締め構造により割締め固定されることにより、その一端部で中間伝動軸11に対し相対回転不能に取り付けられている。
【0054】
連結ロッド19は、その両端部に貫通孔を有するレバー状の部材である。そして、連結ロッド19は、その一端部で揺動レバー17の他端部に対し相対回転可能に連結されている。具体的には、その連結ロッド19の一端部における貫通孔及び揺動レバー17の他端部における貫通孔の一方に軸受(図示略)が嵌装されると共に、他方の貫通孔に嵌挿された連結軸23が軸受に嵌挿されることで、連結ロッド19と揺動レバー17とが相対回転可能に連結された状態となっている。
【0055】
また、連結ロッド19は、その他端部で駆動レバー18の他端部に対し相対回転可能に連結されている。具体的には、その連結ロッド19の他端部における貫通孔及び駆動レバー18の他端部における貫通孔の一方に軸受(図示略)が嵌装されると共に、他方の貫通孔に嵌挿された連結軸24が軸受に嵌挿されることで、連結ロッド19と駆動レバー18とが相対回転可能に連結された状態となっている。
【0056】
次に、タックインヘッド3を支持する揺動アーム13について、揺動アーム13は、その両端部に貫通孔を有するレバー状の部材である。また、その揺動アーム13は、その中間部13cと他端部との間において僅かに屈曲するような形状を成している。なお、その揺動アーム13について、その長手方向に延在する4側面のうちの厚さ方向と平行な2側面を前側面13a、後側面13bとすると共に、前記屈曲の外側となる方の側面を前側面13aとする。
【0057】
そして、その揺動アーム13は、ワープラインWLよりも上方において支持軸25により支持されている。より詳しくは、織機1上におけるワープラインWLの上方には、後述する支持機構30に支持されるかたちで支持軸25が設けられている。また、その支持軸25は、前後方向に関しては織前CFの上方に配置されると共に、織幅方向に関しては反給糸側の織機フレーム9と反給糸側の織端との間に配置されている。さらに、その支持軸25は、前記のように支持された状態において、その軸線の方向が織幅方向(中間伝動軸11の軸線方向)と一致するように設けられている。その上で、揺動アーム13は、その一端部で支持軸25に支持されている。それにより、揺動アーム13は、ワープラインWLよりも上方に位置すると共に、織幅方向に関し反給糸側の織機フレーム9と反給糸側の織端との間に位置した状態となっている。但し、揺動アーム13は、その前側面13aを筬4側に向けた状態で支持軸25に支持されている。
【0058】
また、その揺動アーム13の支持について、具体的には、揺動アーム13は、その一端部における貫通孔に支持軸25が挿入されるかたちで支持軸25に対し組み付けられることにより、その一端部において支持軸25に支持されている。その上で、揺動アーム13と支持軸25とが軸受(図示略)を介して組み付けられている、あるいは支持軸25が支持機構30に対し回転可能に支持されることにより、揺動アーム13は、前記配置において支持軸25の軸心を中心に揺動可能となっている。
【0059】
そして、タックインヘッド3は、前記のように支持された揺動アーム13により支持されている。より詳しくは、揺動アーム13には、その屈曲された部分(屈曲部)に隣接する他端側の位置にブラケット26が取り付けられている。なお、そのブラケット26は、その取り付け状態で、揺動アーム13の厚さ方向に見て揺動アーム13の前側面13aから突出すると共に、揺動アーム13における屈曲部よりも他端側の部分の延在方向に対してその突出方向が鋭角を成すように揺動アーム13に対し取り付けられている。その上で、タックインヘッド3は、そのブラケット26の先端部に対し取り付けられている。すなわち、タックインヘッド3は、ブラケット26を介して揺動アーム13に支持されている。
【0060】
但し、その支持状態において、タックインヘッド3は、その案内部3dを筬4側に向けた状態となっている。また、その支持状態において、タックインヘッド3は、そのタックインヘッド3の筬4側へ向けた変位(運動)の過程で前後方向に関し案内部3dが織前CFの位置に達したときにスリット3aの延在方向がワープラインWLと略平行となるような状態となっている。
【0061】
さらに、前記のブラケット26の先端部には、前記した反給糸側のカッタ6も取り付けられている。なお、その取り付け状態において、反給糸側のカッタ6は、その可動刃6a及び固定刃6bの先端が両刃を支持する部分よりも筬4側に位置した状態となっている。また、反給糸側のカッタ6は、織幅方向に関しては前記したようにタックインヘッド3とキャッチコードCとの間に位置すると共に、前後方向に関してはタックインヘッド3との位置関係においてタックインヘッド3におけるスリット3aに挿入された緯糸Yを切断可能な位置に位置する状態となっている。
【0062】
次に、中間伝動軸11の往復反転運動を揺動アーム13に伝達する駆動伝達部14について、駆動伝達部14は、一端で中間伝動軸11に対し相対回転不能に取り付けられた第1の連結レバー141と、その第1の連結レバー141の他端と揺動アーム13の他端とを連結する第2の連結レバー142とで構成されている。
【0063】
その駆動伝達部14において、第1の連結レバー141は、その両端部に貫通孔を有するレバー部材である。また、第1の連結レバー141は、その一端部における貫通孔に連通するスリ割り部141aを含む割締め構造を有している。そして、第1の連結レバー141は、その一端部における貫通孔に中間伝動軸11が挿通された状態でその割締め構造により割締め固定されることにより、その一端部で中間伝動軸11に対し相対回転不能に取り付けられている。
【0064】
また、第2の連結レバー142は、その両端部に貫通孔を有するレバー部材である。そして、第2の連結レバー142は、その一端部で第1の連結レバー141の他端部に対し相対回転可能に連結されている。具体的には、第2の連結レバー142の一端部における貫通孔及び第1の連結レバー141の他端部における貫通孔の一方に軸受(図示略)が嵌装されると共に、他方の貫通孔に嵌挿された連結軸27が軸受に嵌挿されることで、第2の連結レバー142と第1の連結レバー141とが相対回転可能に連結された状態となっている。
【0065】
また、第2の連結レバー142は、その他端部で揺動アーム13の他端部に対し相対回転可能に連結されている。具体的には、第2の連結レバー142の他端部における貫通孔及び揺動アーム13の他端部における貫通孔の一方に軸受(図示略)が嵌装されると共に、他方の貫通孔に嵌挿された連結軸28が軸受に嵌挿されることで、第2の連結レバー142と揺動アーム13とが相対回転可能に連結された状態となっている。なお、そのように第2の連結レバー142と揺動アーム13とを連結している部分(連結軸28が存在する部分)CPが「連結部分」に相当する。
【0066】
以上のような各構成要素を備えた往復運動機構7によれば、織機主軸MSによって駆動軸8が回転駆動されるのに伴い、クランク機構16においてコンロッド161の前後方向における往復運動が発生する。なお、駆動軸8は、織機主軸MSが1回転する毎(織機1の1製織サイクル毎)に1回転するように織機主軸MSと同期して回転駆動される。したがって、織機1の1製織サイクル毎に1回のコンロッド161の往復運動が行われることとなる。そして、そのようなコンロッド161の往復運動に伴い、そのコンロッド161の運動に併せ、コンロッド161に連結された揺動レバー17が駆動されると共に、その揺動レバー17と連結ロッド19で連結された駆動レバー18が中間伝動軸11の軸心を中心に揺動駆動される。それにより、その駆動レバー18が相対回転不能に連結された中間伝動軸11が、織機1の1製織サイクル毎に1回の割合で往復反転駆動されることとなる。このようにして反転駆動部12による中間伝動軸11の往復反転駆動が行われる。
【0067】
さらに、そのような中間伝動軸11の往復反転駆動に伴い、駆動伝達部14においては、中間伝動軸11に対し相対回転不能に連結された第1の連結レバー141が中間伝動軸11の軸心を中心に揺動駆動される。それにより、駆動伝達部14における第2の連結レバー142によって第1の連結レバー141と連結された揺動アーム13が、支持軸25の軸心を中心として前後方向に往復揺動駆動される。また、その揺動レバー17の往復揺動は、織機1の1製織サイクル毎に1回の割合で行われる。その結果として、前記のように揺動アーム13に支持されているタックインヘッド3及び反給糸側のカッタ6は、織機1の1製織サイクル毎に1回の割合で前後方向に往復運動を行うこととなる。このようにして往復運動機構7はタックインヘッド3及び反給糸側のカッタ6を往復運動させる。
【0068】
次に、前記のように往復運動駆動されるタックインヘッド3の前後方向における位置と織機主軸MSの回転角度(所謂、クランク角度。以下、「クランク角度」と言う。)との関係を、
図6に基づき、筬4の揺動運動を交えて説明する。なお、
図6は、横軸をクランク角度(1製織サイクル分)とし、縦軸を織前CFの位置に対するタックインヘッド3及び筬4の前後方向における変位量とする図である。そして、その図では、筬4の変位が一点鎖線で示されており、タックインヘッド3の変位が二点鎖線で示されている。
【0069】
図示のように、筬4は、クランク角度0°の時点で最前進位置に達し、その時点で緯入れされた緯糸Yが織前CFに筬打ちされる。なお、その緯糸Yは、その先端部がキャッチコードCによって保持された状態となっている。一方、タックインヘッド3は、クランク角度0°の時点では、前記第2の位置(前記退避位置)付近に位置する状態となっている。具体的には、タックインヘッド3は、クランク角度5°の時点で前記退避位置に位置している。
【0070】
次いで、筬4は、図示のように最後退位置へ向かって変位し、クランク角度略135°で最後退位置付近に達すると共に、クランク角度180°の時点で最後退位置に達する。その後、筬4は、最前進位置へ向かって前進する。なお、その前進の過程において、その筬4は、そのクランク角度180°から略225°までの間において、最後退位置付近に位置している。
【0071】
そのような筬4の変位に対し、タックインヘッド3は、前記のクランク角度5°の時点から前記第1の位置へ向けて変位を開始し、クランク角度185°の時点で前記第1の位置に達する。そして、タックインヘッド3は、そのクランク角度185°の時点から前記退避位置へ向けた後退を開始する。なお、そのようにタックインヘッド3を変位させる往復運動機構7における反転駆動部12は、前記のように6節リンク機構として構成されている。それにより、タックインヘッド3は、クランク角度略150°から略220°までの間において、前記第1の位置付近に位置している。
【0072】
そして、前記のようなタックインヘッド3の変位の過程において、そのタックインヘッド3は、クランク角度略70°の時点で、その案内部3dが織前CFの位置に達した状態となる。したがって、その時点からタックインヘッド3の前記第1の位置に向けた変位に伴い、先端部をキャッチコードCによって捕捉された緯糸YにおけるキャッチコードCと織端との間に位置する部分の一部が、そのタックインヘッド3のスリット3aに挿入された状態となる。そして、タックインヘッド3が前記第1の位置に達した時点(クランク角度185°の時点)で、緯糸Yの前記一部がそのタックインヘッド3のスリット3aの底部3bに達した状態となる。
【0073】
また、そのタックインヘッド3においては、クランク角度180°の時点から、各タックインノズル3cによる空気噴射が開始される。そして、その各タックインノズル3cによる空気噴射は、クランク角度225°の時点まで継続される。また、そのように各タックインノズル3cによる空気噴射が行われる間に、タックインヘッド3と共に揺動アーム13に支持された反給糸側のカッタ6による緯糸Yの切断が行われる。より詳しくは、クランク角度210°の時点でそのカッタ6が駆動され、緯糸Yの前記部分における織端に連なる部分(緯糸端部)が、タックインヘッド3よりもキャッチコードC側でその反給糸側のカッタ6により切断される。
【0074】
さらに、タックインヘッド3においては、前記切断が行われるクランク角度210°の時点よりも前のクランク角度206°の時点から、解放ノズル3fによる空気噴射が開始される。それにより、その解放ノズル3fによる空気噴射によって各タックインノズル3cの前記噴射領域まで緯糸端部が吹き流され、その後、各タックインノズル3cによる空気噴射によって緯糸端部が折り返されて経糸Wの開口内へ挿入されることにより、前記タックイン動作が完了する。
【0075】
また、タックインヘッド3は、前記のようにクランク角度略150°から略220°までの間は前後方向に関し織前CFと重複する前記第1の位置付近に位置するが、それ以降は前記退避位置へ向けて大きく変位し、クランク角度略300°の時点で、前後方向に関し織前CFから完全に離間した状態となる。したがって、前記のように筬4はクランク角度略225°以降において最後退位置付近から最前進位置へ向けて変位するが、その最前進位置に筬4が達する時点(クランク角度360°)よりも前に、タックインヘッド3は、前記のように織前CFから離間した状態となる。それにより、織幅方向において筬4(筬羽4a)と重複する範囲でどの様な位置にタックインヘッド3が配置されていても、そのタックインヘッド3が筬4と干渉することは無い。
【0076】
次に、以上のようにタックインヘッド3を往復運動させる往復運動機構7における揺動アーム13の支持について、その支持軸25を支持している支持機構30は、前記のように織機1上に設けられたテンプルバー15上に設置されている。その支持機構30の構成について、詳しくは、以下の通りである。
【0077】
支持機構30は、支持軸25を支持する支持部31と、その支持部31が取り付けられると共にテンプルバー15に対し取り付けられる取付部32とで構成されている。また、支持部31は、3つのブラケットを組み合わせた構成となっている。具体的には、その支持部31は、支持軸25を支持する第1のブラケット311と、取付部32に対し取り付けられる第2のブラケット312と、第1のブラケット311を第2のブラケット312に対し支持された状態とするための第3のブラケット313とで構成されている。
【0078】
より詳しくは、第1のブラケット311は、板状に形成されたブラケットである。また、その第1のブラケット311の一端部には、支持軸25を支持するための貫通孔(図示略)が板厚方向に貫通するように形成されている。さらに、その第1のブラケット311の他端部には、第3のブラケット313に対して第1のブラケット311を取り付けるためのネジ部材(第1のネジ部材)40が螺挿される雌ネジ孔(図示略)が2つ形成されている。その2つの雌ネジ孔も板厚方向に貫通するように形成されている。
【0079】
第3のブラケット313も、板状に形成されたブラケットである。また、その第3のブラケット313の一端部には、第1のネジ部材40が挿通される2つの貫通孔(図示略)が板厚方向に貫通するように形成されている。そして、その第3のブラケット313の貫通孔に挿通された第1のネジ部材40が第1のブラケット311の前記雌ネジ孔に螺挿されることで、第3のブラケット313に対し第1のブラケット311が組み付けられた状態となっている。
【0080】
さらに、第3のブラケット313の他端側にも、2つの貫通孔(図示略)が板厚方向に貫通するように形成されている。なお、この貫通孔は、第2のブラケット312に対し第3のブラケット313を取り付けるためのネジ部材(第2のネジ部材)41が挿通される孔である。但し、その2つの貫通孔は、前記した第1のネジ部材40が挿通される2つの貫通孔とは並び方向を異ならせて(具体的には、並び方向を直交させるかたちで)形成されている。
【0081】
第2のブラケット312は、そのベースとなる板状のベース部312aと、そのベース部312aにおける中間部付近の部分からベース部312aの板厚方向の一方に突出すると共に板状に形成された突出部312bとから成るように構成されている。また、その突出部312bには、第2のネジ部材41が螺挿される2つの雌ネジ孔(図示略)が形成されている。なお、その2つの雌ネジ孔は、突出部312bの板厚方向に貫通するように形成されている。また、その2つの雌ネジ孔は、その並び方向がベース部312aの上面(突出部312bが突出する面)と平行な方向となるように形成されている。
【0082】
その上で、第3のブラケット313の前記他端側に形成された前記貫通孔のそれぞれに挿通された第2のネジ部材41がその雌ネジ孔に螺挿されることで、前記のように第1のブラケット311が組み付けられた第3のブラケット313が第2のブラケット312に対し組み付けられた状態となっている。そして、このようにして各ブラケットが組み付けられることで、支持軸25を支持する支持部31が構成されている。
【0083】
また、その第2のブラケット312におけるベース部312aには、突出部312bの板厚方向(ベース部312aの長手方向)における両端部のそれぞれに、ベース部312aの板厚方向に貫通するようにして貫通孔(図示略)が形成されている。なお、その貫通孔は、取付部32に対して第2のブラケット312(支持部31)を取り付けるためのネジ部材(第3のネジ部材)42が挿通される孔である。
【0084】
次に、その支持部31(第2のブラケット312)が取り付けられる取付部32について、その取付部32は、テンプルバー15上に立設される取付ブラケット321と、その取付ブラケット321をテンプルバー15に対し固定された状態とするための止め部材322とで構成されている。また、取付ブラケット321は、単一の部材で構成されており、支持部31が取り付けられる支持部取付部分321aと、取付ブラケット321がテンプルバー15上に立設された状態においてテンプルバー15に対し直接的に固定される固定部分321cとで構成されている。
【0085】
その取付ブラケット321について、支持部取付部分321aは、側面の幅が前後面の幅よりも小さい略直方体状に形成されている。そして、支持部取付部分321aの幅寸法(前後面の幅方向における寸法)は、前記した支持部31におけるベース部312aの長手方向における寸法と略同じとなっている。但し、その支持部取付部分321aには、上面及び前後面に開口するようにして溝321bが形成されている。なお、その溝321bは、後述のように駆動伝達部14における第2の連結レバー142の配置を許容するためのものである。また、その溝321bは、その溝幅(溝321bの内側面の間隔)が支持部31におけるベース部312aに形成された2つの前記貫通孔の間隔よりも小さくなるように形成されている。そして、その支持部取付部分321aには、上面における溝321bの両側においてその上面に開口するかたちで、前記した第3のネジ部材42が螺挿される雌ネジ孔(図示略)が形成されている。
【0086】
また、固定部分321cは、前記のように取付ブラケット321がテンプルバー15上に立設された状態においてテンプルバー15に対し直接的に固定される部分であるが、その固定は、テンプルバー15に対し固定部分321cが載置された状態で行われる。なお、周知のようにテンプルバー15は、左右の織機フレーム9間において織幅方向に延在するように設けられている。すなわち、テンプルバー15の長手方向(延在方向)は織幅方向に一致している。そこで、以下の説明では、その長手方向及びそれと平行な方向は、全て織幅方向と言い換えて説明する。また、前記の前後方向に対し、以下の説明では、その対象とする部分(装置)の筬4側を後(側)とし、筬4側とは反対の側を前(側)とする。
【0087】
より詳しくは、固定部分321cは、略直方体状に形成された部分を主体とするように構成されている。そして、固定部分321cは、その主体的な部分(略直方体状に形成された部分。以下、「主体部」と言う。)において、テンプルバー15上に載置される。但し、その載置された状態(設置状態)においては、固定部分321cは、その主体部における長方形状の下面の長辺方向を織幅方向に一致させると共に、その下面の短辺方向における一端をテンプルバー15の上面の前側の縁に合わせた配置とされる。
【0088】
但し、固定部分321cにおける前記主体部は、その下面の短辺方向に関し、テンプルバー15の上面の前後方向における寸法よりも大きい寸法を有するように形成されている。すなわち、その前記主体部は、前記設置状態で、テンプルバー15に対し前後方向における後側に突出する大きさとなっている。その上で、前記主体部は、前記設置状態でその突出する部分の下面がテンプルバー15の上面よりも下方に位置するように、テンプルバー15の形状に合わせた段部を下面に有するかたちとなっている。
【0089】
また、前記主体部には、前記設置状態で前側を向く面(前面)に開口するようにして雌ネジ孔(図示略)が形成されている。また、その雌ネジ孔は、前記設置状態において、織幅方向に関し、前記前面の中間部の両側に位置するように2つ形成されている。なお、その雌ネジ孔は、テンプルバー15に対し固定部分321c(取付ブラケット321)が固定された状態とするためのネジ部材(第4のネジ部材)43が螺挿される孔である。
【0090】
また、固定部分321cは、その前記主体部の上面から突出するように形成された部分を有している。そして、取付ブラケット321においては、固定部分321cは、その前記主体部の上面から突出する部分において支持部取付部分321aの下面に連続するようなかたちで、支持部取付部分321aと一体的に形成されている。なお、そのように構成された取付ブラケット321において、支持部取付部分321aの前後面の幅方向と固定部分321cの下面の長辺方向とは一致している。
【0091】
次に、以上のように構成された取付ブラケット321をテンプルバー15に対し固定された状態とするための止め部材322について、止め部材322は、ネジ部材の頭部を受ける板状の受け部322aを主体として構成されている。なお、その受け部322aは、板厚方向に見て略長方形状を成している。さらに、その止め部材322は、その受け部322aの長辺方向の両端部のそれぞれに、受け部322aの板厚方向の一方に突出すると共に受け部322aの短辺方向に延在するように形成された突起部322bを有している。そして、止め部材322は、その各突起部322bと受け部322aとが一体的に形成された構成となっている。
【0092】
また、止め部材322における受け部322aには、その中央において板厚方向に貫通するようにして貫通孔(図示略)が形成されている。なお、その貫通孔は、前記した第4のネジ部材43が挿通される孔である。さらに、その止め部材322において、突起部322bは、受け部322aの長辺方向に関し受け部322aに形成された前記貫通孔の両側に位置するが、その間隔は、その前記貫通孔に挿通された第4のネジ部材43がテンプルバー15上に載置された固定部分321cの前記雌ネジ孔に螺挿されると共に受け部322aの長辺方向を上下方向に一致させた状態で、一方の突起部322bがテンプルバー15の前方に位置する大きさとなっている。言い換えれば、止め部材322における受け部322aは、その長辺方向において、突起部322bをそのような間隔で形成できるような大きさ(寸法)を有している。
【0093】
そして、取付ブラケット321(固定部分321c)をテンプルバー15に固定するにあたっては、取付ブラケット321をその固定部分321cにおいてテンプルバー15上に載置された状態とする。但し、その載置された状態においては、固定部分321cは、前記した下面における段部がテンプルバー15の後側の面に当接した状態とされる。さらに、その状態にある固定部分321cに対し、その固定部分321cに形成された2つの前記雌ネジ孔のそれぞれに対応させるかたちで、2つの止め部材322、322が組み合わされる。具体的には、各止め部材322における受け部322aの突起部322bが突出する面を固定部分321cに対向させると共に、その受け部322aの前記貫通孔に対し突起部322bが突出するその面とは反対側の面の側から第4のネジ部材43を挿通し、その第4のネジ部材43を固定部分321cの前記雌ネジ孔に螺挿することで、固定部分321cと止め部材322とを組み合わせた状態とする。
【0094】
その上で、各止め部材322をその受け部322aの長辺方向が上下方向と一致する向きとした状態で、第4のネジ部材43を締め付ける。それにより、その第4のネジ部材43の頭部が受け部322aに当接した状態で、各止め部材322における前記した一方の突起部322bがテンプルバー15に当接すると共に、他方の突起部322bが固定部分321cに当接した状態となる。それにより、互いに組み合わされた固定部分321cと止め部材322とは、固定部分321cの前記段部と止め部材322の前記一方の突起部322bとでテンプルバー15を挟み込んだ状態となる。そして、第4のネジ部材43の締め付けによってその頭部を介して止め部材322(受け部322a)に作用する力が挟持力としてテンプルバー15に作用することで、前記段部と前記一方の突起部322bとでテンプルバー15を挟持した状態となり、その結果として、固定部分321c(取付ブラケット321)がテンプルバー15に対し固定された状態となる。
【0095】
そして、以上のようにテンプルバー15上に設置される支持機構30は、その支持部31における第1のブラケット311において、前記した揺動アーム13を支持するための支持軸25を支持している。より詳しくは、支持機構30において、支持部31は、その第2のブラケット312のベース部312aに形成された前記貫通孔のそれぞれに第3のネジ部材42が挿通されると共に、その第3のネジ部材42が取付ブラケット321における支持部取付部分321aに形成された前記雌ネジ孔に螺挿されることで、取付ブラケット321に対し組み付けられた状態とされる。
【0096】
但し、その組み付けは、支持機構30がテンプルバー15上に設置された状態(前記設置状態)で、取付ブラケット321上の第2のブラケット312の突出部312bに対し第3のブラケット313を介して取り付けられた第1のブラケット311が後方へ延びるように行われている。したがって、前記設置状態では、支持部31における第1のブラケット311は、前後方向に関しテンプルバー15から後方に延在した状態となる。その上で、その第1のブラケット311における前記一端部に形成された前記貫通孔は、織前CFの略上方に位置している。
【0097】
そして、支持軸25は、その一端部側において第1のブラケット311の前記一端部における前記貫通孔に挿入されると共に他端部が織幅方向に関し反給糸側の織機フレーム9側に突出するかたちで、その第1のブラケット311(支持機構30)に支持されている。なお、その支持軸25の支持は、前記一端部で第1のブラケット311における前記貫通孔に嵌挿される、あるいはその前記貫通孔に軸受(図示略)を嵌装させてその軸受に前記一端部で嵌挿されるかたちで行われている。そして、そのように支持された支持軸25における前記他端部において、前記のように揺動アーム13が支持されている。
【0098】
また、そのように支持軸25に支持される揺動アーム13と中間伝動軸11とは、前記のように構成された駆動伝達部14により連結されている。なお、その駆動伝達部14について、第1の連結レバー141は、タックインヘッド3が前記第1の位置に位置した状態となる時点(クランク角度185°の時点)で中間伝動軸11から略上方へ延在する状態となるような取り付け位相で、中間伝動軸11に対し取り付けられている。なお、前記第1の位置は、前記の通り、前後方向に関しタックインヘッド3におけるスリット3aの底部3bの位置が織前CFの位置と略一致する位置である。
【0099】
また、第1の連結レバー141は、その取り付け状態で、前記他端部における前記貫通孔の高さ位置が、タックインヘッド3が前記第1の位置に位置した状態での揺動アーム13の前記他端部における前記貫通孔の高さ位置と略一致するような長さ寸法を有している。さらに、第2の連結レバー142は、その取り付け状態で、第1の連結レバー141と揺動アーム13とを連結する状態となるような長さ寸法を有している。
【0100】
その結果として、駆動伝達部14において第1の連結レバー141が中間伝動軸11に対し取り付けられると共に第2の連結レバー142が第1の連結レバー141及び揺動アーム13に連結された状態では、駆動伝達部14における第1の連結レバー141と第2の連結レバー142との為す角度θ(以下、「連結角度」と言う。)は略90°となる。すなわち、その状態では、第2の連結レバー142は、その長手方向が略水平な状態となる。
【0101】
また、前記のように駆動伝達部14と揺動アーム13とが連結されることで、その部分は、駆動伝達部14における第1の連結レバー141及び第2の連結レバー142と揺動アーム13とで構成されるリンク機構を成すかたちとなっている。そして、そのリンク機構は、タックインヘッド3が前記第1の位置と前記第2の位置(前記退避位置)との間で往復運動駆動される間に亘って、連結角度θが略一定に維持されるように構成されている。
【0102】
具体的には、そのリンク機構において、第1の連結レバー141と第2の連結レバー142との連結点(その連結軸27の軸心)を第1の連結点P1とし、揺動アーム13と第2の連結レバー142との連結点(その連結軸28の軸心)を第2の連結点P2とする。また、そのリンク機構における一端側の支点である第1の連結レバー141の揺動中心(中間伝動軸11の軸心)を第1の支点F1とし、他端側の支点である揺動アーム13の揺動中心(支持軸25の軸心)を第2の支点F2とする。その上で、そのリンク機構は、第1の支点F1から第1の連結点P1までの距離、第2の支点F2から第2の連結点P2までの距離、及び第1の支点F1と第1の連結点P1とを結ぶ線分に対し第2の支点F2と第2の連結点P2とを結ぶ線分の為す角度が、前記の往復運動駆動の間に亘り、連結角度θを同じ角度に維持するような関係に設定された構成となっている。したがって、その往復運動駆動の間に亘り、連結角度θは略90°となっている。
【0103】
なお、その構成について、中間伝動軸11の軸心(第1の支点F1)の位置、第1の連結レバー141及び第2の連結レバー142の長さ寸法は機械的に定まっていることから、タックインヘッド3が前記第1の位置に位置した状態での連結角度θが略90°であることを踏まえると、そのときの連結部分CPの位置が特定される。但し、そのような連結部分CPの位置及びタックインヘッド3が前記第1の位置に位置する状態を実現する上で、支持軸25の位置は、特定の位置には限定されず、揺動アーム13の形状をそれに合わせることによって異なる位置を取り得る。そして、その支持軸25の位置によっては、前記の往復運動駆動の間に亘って連結角度θが略90°とならない場合がある。したがって、前記の構成は、その往復運動駆動の間に亘って(タックインヘッド3が前記退避位置に位置する状態でも)連結角度θが略90°となるように、支持軸25の位置が設定された構成であるとも言える。
【0104】
また、前記のように支持軸25を介して支持機構30に支持された揺動アーム13は、織幅方向に関し、支持機構30における取付部32(取付ブラケット321)と重複した位置に位置している。したがって、その揺動アーム13に連結される駆動伝達部14も、織幅方向に関し、取付ブラケット321と重複するように配置される。また、前記のように中間伝動軸11はテンプルバー15よりも前側に配置されており、一方で、揺動アーム13はテンプルバー15よりも後方に位置する織前CFの上方に配置された支持軸25に支持されている。そのことから、その中間伝動軸11と揺動アーム13とを連結する駆動伝達部14は、前後方向に関しては、第2の連結レバー142の一部で取付ブラケット321と重複するように配置される。
【0105】
但し、その取付ブラケット321には、前記のようにその支持部取付部分321aにおいてその前後面に開口する溝321bが形成されている。また、その溝321bは、支持機構30の前記設置状態で、上下方向に関し、駆動伝達部14における第2の連結レバー142の位置が、その存在範囲内に含まれるように形成されている。したがって、駆動伝達部14は、中間伝動軸11と揺動アーム13とを連結した状態では、第2の連結レバー142がその取付ブラケット321における溝内を通過する状態となっている。
【0106】
そして、以上で説明したエアタックイン装置2を備えた空気噴射式織機1において、製織される織布Tが変更されると共に、その変更後の織布Tの織幅が変更前の織布Tの織幅と異なる場合、その織布T(織幅)の変更に合わせ、タックインヘッド3及び反給糸側のカッタ6の配置が変更される。そして、その配置の変更は、以下のようにして行われる。
【0107】
先ず、駆動伝達部14において、第1の連結レバー141における割締め構造のネジ部材44を操作して割締め固定の状態を緩め、中間伝動軸11に対する第1の連結レバー141(駆動伝達部14)の固定状態を解消する。それにより、駆動伝達部14は、その第1の連結レバー141の前記一端部に形成された前記貫通孔に中間伝動軸11が挿通された状態で、中間伝動軸11に対してはその軸線方向に相対移動可能な状態となる。
【0108】
次いで、支持軸25を介して揺動アーム13を支持する支持機構30において、その取付部32がテンプルバー15に対し固定された状態を解消する。具体的には、第4のネジ部材43の締め付けを緩め、前記挟持力がテンプルバー15に作用した状態を解消する。その結果、前記のように中間伝動軸11に対する駆動伝達部14の固定状態が解消されたのと相俟って、支持機構30及びその支持機構30に支持された揺動アーム13、並びにその揺動アーム13に連結された駆動伝達部14が、織機1上において固定的に設けられたテンプルバー15及び中間伝動軸11(特に、支持機構30等を介して揺動アーム13を支持するテンプルバー15)に対し、織幅方向に位置調整可能となる。
【0109】
その上で、タックインヘッド3及び反給糸側のカッタ6を織幅方向における所望の位置に配置すべく、支持機構30等の位置の変更が行われる。なお、その位置の変更は、支持機構30をテンプルバー15上においてスライドさせると共に、駆動伝達部14を中間伝動軸11に対しスライドさせることで行われる。そして、タックインヘッド3が所望の位置に配置された状態で、その配置を確定すべく、再び支持機構30をテンプルバー15に対し固定された状態とすると共に、駆動伝達部14を中間伝動軸11に対し固定された状態とする。それにより、織布T(織幅)の変更に応じた位置へタックインヘッド3及び反給糸側のカッタ6の配置が変更された状態となる。
【0110】
このように、そのエアタックイン装置2によれば、織幅変更に伴ってタックインヘッド3の配置を変更するにあたり、前記のように支持機構30等(支持機構30、揺動アーム13、及び駆動伝達部14)の位置のみを変更することで、タックインヘッド3の配置を変更することができる。言い換えれば、織幅変更に伴うタックインヘッド3の配置変更にあたり、中間伝動軸11に対し支持機構30等とは反対側(駆動軸8側)に連結された反転駆動部12の配置を変更させることなく、タックインヘッド3の配置を変更することができる。したがって、そのエアタックイン装置2によれば、そのタックインヘッド3の配置を容易に変更することができる。
【0111】
因みに、支持機構30は、支持部31における第1のブラケット311の取付部32に対する位置が、織幅方向、前後方向及び上下方向の3方向に調整可能であるように構成されている。具体的には、その支持機構30において、第2のブラケット312のベース部312aに形成された前記貫通孔は、ベース部312aの長手方向(前記設置状態での織幅方向)に長い長孔となっている。したがって、第2のブラケット312は、その長孔(前記貫通孔)の範囲において取付部32に対する位置が調整可能となっている。
【0112】
また、第3のブラケット313における前記した第2のネジ部材41が挿通される前記貫通孔は、前記設置状態での前後方向に長い長孔となっている。さらに、第3のブラケット313における前記した第1のネジ部材40が挿通される前記貫通孔は、前記設置状態での上下方向に長い長孔となっている。したがって、第3のブラケット313は、その第2のネジ部材41が挿通される長孔(前記貫通孔)の範囲において第2のブラケット312の突出部312bに対する位置が調整可能となっている。さらに、その第3のブラケット313に対し、第1のブラケット311は、第3のブラケット313における第1のネジ部材40が挿通される長孔(前記貫通孔)の範囲においてその位置が調整可能となっている。
【0113】
そして、これらの構成の結果として、前記設置状態において、第1のブラケット311は、取付部32に対する位置が前記3方向に調整可能となっている。それにより、その第1のブラケット311に対し支持軸25及び揺動アーム13を介して支持されるタックインヘッド3は、前記設置状態においてその位置が前記3方向に調整可能となっている。
【0114】
また、支持軸25は、前記の通り、前後方向に関し織前CFの上方に配置されている。すなわち、その支持軸25は、前後方向に関し織前CFの直上を含む織前CF近傍の範囲内に配置されている。なお、本実施例の往復運動機構7において、支持軸25の軸心を揺動中心とするタックインヘッド3の揺動半径は、前記のような揺動範囲による揺動角では、タックインヘッド3がその半径方向に大きく変位しない大きさとなっている。その上で、前記のように往復運動の過程で案内部3dが織前CFの位置に達したときにスリット3aの延在方向がワープラインWLと略平行となるように、タックインヘッド3が揺動アーム13に支持されている。
【0115】
それらのことから、前後方向に関し案内部3dが織前CFの位置に達してからタックインヘッド3が前記第1の位置に達するまでの間の揺動変位において、そのタックインヘッド3のスリット3aは、ワープラインWLに対し略平行な状態で変位する。すなわち、その間でのタックインヘッド3の運動の軌跡は、ワープラインWLに対し略平行となっている。
【0116】
したがって、そのようにその軌跡がワープラインWLに対し略平行となる構成によれば、タックインヘッド3は、その往復運動の過程において、スリット3aの延在方向がワープラインWLに対し略平行な状態でスリット3a内へ緯糸Yを受け入れると共に、そのスリット3aの延在方向がワープラインWLに対し略平行な状態が略維持されたままの状態で前記第1の位置に達することとなる。そして、そのタックインヘッド3においては、前述のように複数のタックインノズル3cの並び方向がスリット3aの延在方向と一致していることから、そのエアタックイン装置2によれば、前記タックイン動作を適切なかたちで実現することができる。
【0117】
また、駆動伝達部14における第1の連結レバー141及び第2の連結レバー142と揺動アーム13とで構成される前記リンク機構について、そのリンク機構は、前記の通り、前記の往復運動駆動の間に亘って連結角度θを略90°に維持するように構成されている。したがって、その構成によれば、中間伝動軸11の運動がより効率的に揺動アーム13に伝達されることとなるため、所望のタックインヘッド3の往復運動を、より小さい回動量での中間伝動軸11の往復回動で実現することが可能となる。それにより、タックインヘッド3を前記のように往復運動させる上で、中間伝動軸11を往復反転駆動する反転駆動部12において往復動作する各部材及び中間伝動軸11の回動に伴って往復動作する各部材の動作量を小さくすることができるため、往復運動機構7における各部に掛かる負担が小さくなる。
【0118】
また、反転駆動部12のクランク機構16において、そのクランクハブ162は、前記の通り、割締め構造を有しており、割締め固定によって駆動軸8に対し相対回転不能に取り付けられている。すなわち、クランクハブ162は、任意の取り付け位相で、駆動軸8に対し取り付けることが可能となっている。そして、駆動軸8に対するクランクハブ162の取り付け位相を変更することで、往復運動駆動されるタックインヘッド3のクランク角度に対する前後方向の位置(タックインヘッド3の往復運動の位相)が変更される。このように、本実施例のエアタックイン装置2は、そのタックインヘッド3の往復運動の位相を変更可能な構成となっている。それにより、製織条件の変更等に伴って前記タックイン動作を行う最適なタイミングが変わる場合でも、それに対し容易に対応することが可能となっている。
【0119】
なお、本発明は、以上で説明した実施例に限定されるものではなく、以下(1)~(6)のように変形させた態様でも実施することができる。
【0120】
(1)前記実施例では、反転駆動部12は、駆動軸8に対し取り付けられるクランク機構16を含む多節リンク機構で構成されている。その上で、その多節リンク機構は、6節リンク機構となっている。しかし、本発明における反転駆動部は、クランク機構を含む多節リンク機構で構成される場合において、前記のように6節リンク機構で構成されたものに限らず、4節リンク機構で構成されたものであっても良い。
【0121】
そして、そのように反転駆動部を4節リンク機構で構成する場合には、前記実施例の反転駆動部(6節リンク機構)におけるクランク機構のコンロッドに連結される揺動レバー、及び揺動レバーと駆動レバーとを連結する連結ロッドが省略される。具体的には、その構成50は、
図7に示すように、コンロッド51と駆動レバー52とが直接的に相対回転可能に連結された構成となる。なお、そのように構成された4節リンク機構では、タックインヘッドが前記第1の位置付近に位置する期間(停留期間)が6節リンク機構と比べて短くなるが、前記タックイン動作については問題無く行われる。
【0122】
(2)以上では、反転駆動部がクランク機構を含む多節リンク機構で構成される場合について説明した。しかし、本発明において、反転駆動部は、そのようにクランク機構を用いて構成されたものに限らず、カム機構を用いて構成されたものであっても良い。すなわち、以上で説明した構成において、そのクランク機構がカム機構に置き換えられたかたちで反転駆動部を構成しても良い。具体的には、その反転駆動部は、クランク機構を除く部分が前記実施例と同じ構成である場合においては、その構成における揺動レバーに対しカム機構が連結された構成となる。
【0123】
より詳しくは、そのカム機構は、駆動軸に対し相対回転不能に取り付けられるカムと、そのカムの回転に応じて揺動するように設けられたカムレバーと、一端でそのカムレバーに対し連結されると共にカムレバーの揺動に伴って変位するように駆動されるレバー状のロッド(前記実施例のコンロッドに相当)とを備えている。その上で、そのカム機構は、そのロッドの他端において揺動レバーと連結される。また、その連結状態では、そのロッドは、その長手方向が略水平となるような状態となっている。したがって、その構成においては、カムの回転によるカムレバーの揺動に伴い、ロッドがその長手方向を水平方向に略一致させた状態で前後方向に往復運動し、それにより、揺動レバーは、前記実施例と同様に往復揺動駆動される。
【0124】
(3)本発明において、反転駆動部は、駆動軸を駆動源とするように駆動軸に連結されており、駆動軸に対し直接的に連結される部材が駆動軸に対し相対回転不能に取り付けられる。その上で、前記実施例では、その部材であるクランク機構16におけるクランクハブ162は、割締め構造を有し、割締め固定により駆動軸8に対し取り付けられている。しかし、本発明における反転駆動部は、クランク機構を含む場合において、クランクハブがその取り付けのための構成として割締め構造を有するように構成されたものには限定されない。
【0125】
例えば、クランクハブを、割締め構造のためのスリ割り部が形成されていない円筒状に形成された部材とする。さらに、そのクランクハブの構成を、半径方向に貫通すると共に円周方向において等間隔に並ぶ複数の雌ネジ孔が形成されたものとする。その上で、その反転駆動部(クランク機構)においては、駆動軸の前記一端部がクランクハブに嵌挿された状態で、クランクハブの各雌ネジ孔にネジ部材を螺挿し、そのネジ部材を駆動軸の前記一端部に対し押接させた状態として、クランクハブが駆動軸に対し相対回転不能に取り付けられるようにすれば良い。
【0126】
あるいは、クランクハブを前記のように円筒状の部材とした上で、そのクランクハブの構成を、半径方向に貫通する1つ以上(好ましくは複数)の貫通孔が形成されたものとする。一方で、駆動軸については、その構成を、円周方向において並ぶ複数の雌ネジ孔が前記一端部に形成されたものとする。但し、その複数の雌ネジ孔は、前記のクランクハブにおける貫通孔との関係で、想定されるクランクハブの複数の取り付け位相に対応できるように形成されている。その上で、反転駆動部(クランク機構)においては、駆動軸の前記一端部がクランクハブに嵌挿された状態で、所望の前記取り付け位相においてクランクハブの貫通孔と一致する駆動軸における雌ネジ孔に対しネジ部材を螺挿することにより、クランクハブが駆動軸に対し相対回転不能に取り付けられるようにすれば良い。
【0127】
なお、そのような反転駆動部における駆動軸に対し直接的に連結される部材の駆動軸に対する取り付けについて、反転駆動部が前記のようにカム機構を含むように構成されている場合においても、以上で説明したクランクハブの取り付けと同様の構成により、カムが駆動軸に対し取り付けられるようにすれば良い。
【0128】
また、以上では、反転駆動部における駆動軸に対し直接的に連結される部材を駆動軸に対し取り付けるための構成(取り付け構成)について、その部材の駆動軸に対する取り付け位相が変更可能であるものについて説明した。しかし、本発明における反転駆動部において、前記の取り付け構成は、前記のように前記取り付け位相が変更可能なものに限らず、前提とする織機で製織条件の変更が行われることがない場合には、前記取り付け位相が変更不能なものであっても良い。
【0129】
(4)前記実施例では、駆動伝達部14は、2つの連結レバー(第1の連結レバー141及び第2の連結レバー142)で構成されている。その上で、その2つの連結レバーで構成される駆動伝達部14は、タックインヘッド3が前記第1の位置に位置した状態で、連結角度θが略90°となるように構成されている。しかし、本発明において、その駆動伝達部は、そのように2つの連結レバーで構成されている場合であっても、タックインヘッドが前記第1の位置に位置する状態で連結角度が略90°となるように構成されたものには限らない。
【0130】
具体的には、第1の連結レバーの中間伝動軸に対する取り付け位相が、タックインヘッドが前記第1の位置に位置した状態となる時点で、第1の連結レバーが中間伝動軸から鉛直方向に対し角度を成す方向へ延在する状態で中間伝動軸に対し取り付けられるように駆動伝達部を構成しても良い。また、その取り付け位相については前記実施例と同じとした上で、タックインヘッドが前記第1の位置に位置する状態で、駆動伝達部について、第1の連結レバーの前記他端部における前記貫通孔の高さ位置が揺動アームの前記他端部における前記貫通孔の高さ位置と異なるように第1の連結レバーが形成された構成としても良い。なお、いずれの場合も、第2の連結レバーは、第1の連結レバーと揺動アームとを連結する状態とすべく、前記実施例と異なる長さ寸法を有するものとなる。
【0131】
また、前記実施例では、タックインヘッド3が前記第1の位置に位置する状態で連結角度θが略90°となるように駆動伝達部14を構成した上で、タックインヘッド3が前記第1の位置と前記第2の位置(前記退避位置)との間で往復運動駆動される間に亘って連結角度θが略一定に維持されるように、支持軸25の位置が設定されている。しかし、本発明において、その支持軸の位置は、そのように設定されたものに限らず、前記の往復運動駆動の間に亘って連結角度が変化するように設定されたものであっても良い。
【0132】
なお、駆動伝達部における2つの連結レバーと揺動アームとで構成される前記リンク機構が前記のように前記実施例と異なるかたちに形成されている場合には、中間伝動軸の運動を揺動アームに伝達する効率が前記実施例よりも悪くなる。但し、そのように前記リンク機構が形成された場合であっても、中間伝動軸の回動量が前記実施例よりも大きくなるように反転駆動部を構成することで、揺動アーム(タックインヘッド)の所望の往復運動を得ることができる。
【0133】
また、前記実施例では、揺動アーム13と第2の連結レバー142との連結部分CPは、揺動アーム13の長手方向における中間部13cよりも他端側の位置に設定されている。しかし、その連結部分の位置は、そのように揺動アームの他端側に限らず、例えば、揺動アームの中間部に設定されていても良い。
【0134】
また、以上では、駆動伝達部が2つの連結レバーで構成される場合について説明した。しかし、本発明において、駆動伝達部は、そのように2つの連結レバーで構成されたものに限らず、単一の連結レバーで構成されたものであっても良い。但し、その場合には、その連結レバーと揺動アームとの連結構成を前記実施例における第2の連結レバー142と揺動アーム13との連結構成と同じように構成すると、揺動アームが揺動不能となる。したがって、その場合には、単一の連結レバーと揺動アームとの連結構成を、例えば、一方に嵌装された連結軸とその連結軸が挿入される他方に形成された孔とで構成すると共に、その他方に形成される孔を前記揺動が許容されるように形成された長孔とする構成等とすることが考えられる。
【0135】
(5)前記実施例は、織幅方向において単一の織布Tが製織される空気噴射式織機(一幅取り織機)1において、エアタックイン装置2における反給糸側のタックインヘッド3を往復運動させる往復運動機構7に対し本発明を適用する例となっている。しかし、本発明が前提とする空気噴射式織機は、前記のような一幅取り織機に限らず、織幅方向において複数に分割される織布を同時に製織する複数幅取り織機であっても良い。そして、空気噴射式織機がそのような複数幅取り織機である場合には、本発明によるエアタックイン装置における往復運動機構は、反給糸側のタックインヘッドに加え、中耳形成用のタックインヘッドを往復運動させる機構として適用することも可能である。
【0136】
なお、中耳形成用のタックインヘッドは、分割される織布間において、両織布の織端に隣接させるかたちで2つ設けられる。但し、前記のように中耳形成用のタックインヘッドに適用する場合におけるその2つのタックインヘッドを往復運動させるための構成(揺動アーム、駆動伝達部等)は、前記実施例のように1つのタックインヘッドに対し1組設けられるものには限らない。例えば、揺動アームをタックインヘッド毎に設ける(支持軸に対し2つの揺動アームが支持された状態とする)と共に、単一の駆動伝達部を両揺動アームに連結するようにしても良い。また、単一の揺動アームに対し2つのタックインヘッドが支持される構成とし、単一の揺動アーム及び駆動伝達部が2つのタックインヘッドに対し共通となっている構成としても良い。
【0137】
また、空気噴射式織機としては、その織機での最大織幅の織幅方向における中心を基準とし、左右の織端の位置をその中心に対して変更することで織幅変更が行われる所謂中心基準の織機がある。そして、その中心基準の織機では、製織される織布の織幅が変更されるのに伴い、給糸側及び反給糸側のタックインヘッドの配置が変更される。そこで、空気噴射式織機がそのような中心基準の織機である場合には、給糸側のタックインヘッドを往復運動させる機構として本発明のエアタックイン装置における往復運動機構を適用することも可能である。
【0138】
(6)前記実施例では、往復運動機構7は、中間伝動軸11がその軸線方向における両側で駆動される構成(両側駆動)となっている。すなわち、その往復運動機構7は、空気噴射式織機1の両側に反転駆動部12を設け、中間伝動軸11の両端部のそれぞれに反転駆動部12を連結するように構成されている。しかし、本発明において、往復運動機構は、そのように中間伝動軸を両側駆動するように構成されたものに限らず、反転駆動部が空気噴射式織機の片側にのみ設けられ、中間伝動軸の一端と駆動軸とをその反転駆動部で連結して中間伝動軸を片側駆動するように構成されたものであっても良い。
【0139】
また、往復運動機構の駆動源としての駆動軸について、前記実施例では、駆動軸8は、織機主軸MSに対し機械的に連結され、織機主軸MSによって回転駆動されている。すなわち、前記実施例では、駆動軸8を回転駆動する構成の駆動源が、織機主軸MSを回転駆動する織機の原動モータとなっている。しかし、本発明において、駆動軸を回転駆動する構成の駆動源は、そのような原動モータに限らず、原動モータとは独立した専用の駆動モータであっても良い。そして、その場合には、その専用の駆動モータは、原動モータと同期するようにその駆動が制御される。
【0140】
また、本発明は、以上で説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0141】
1 空気噴射式織機
2 エアタックイン装置
3 タックインヘッド
3a スリット
3b スリットの底部
3c タックインノズル
3d 案内部
3e 傾斜面
3f 解放ノズル
4 筬
4a 筬羽
5 給糸カッタ
6 反給糸側のカッタ
6a 可動刃
6b 固定刃
7 往復運動機構
8 駆動軸
9 織機フレーム
10,20 軸受
11 中間伝動軸
12 反転駆動部
13 揺動アーム
13a 前側面
13b 後側面
13c 中間部
14 駆動伝達部
141 第1の連結レバー
141a スリ割り部
142 第2の連結レバー
15 テンプルバー
16 クランク機構
161 コンロッド
161a 貫通孔
162 クランクハブ
162a 嵌挿孔
162b スリ割り部
163 偏心軸
17 揺動レバー
18 駆動レバー
18a スリ割り部
19 連結ロッド
21 レバー軸
22,23,24,27,28 連結軸
25 支持軸
26 ブラケット
30 支持機構
31 支持部
311 第1のブラケット
312 第2のブラケット
312a ベース部
312b 突出部
313 第3のブラケット
32 取付部
321 取付ブラケット
321a 支持部取付部分
321b 溝
321c 固定部分
322 止め部材
322a 受け部
322b 突起部
40 第1のネジ部材
41 第2のネジ部材
42 第3のネジ部材
43 第4のネジ部材
44 ネジ部材
50 反転駆動部(4節リンク機構)
51 コンロッド
52 駆動レバー
MN メインノズル
Y 緯糸
W 経糸
CF 織前
C キャッチコード
T 織布
MS 織機主軸
WL ワープライン
CP 連結部分
θ 連結角度
P1 第1の連結点
P2 第2の連結点
F1 第1の支点
F2 第2の支点