(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】頭部冷却構造
(51)【国際特許分類】
A42B 3/28 20060101AFI20220913BHJP
A41D 13/002 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
A42B3/28
A41D13/002 105
(21)【出願番号】P 2018215105
(22)【出願日】2018-11-15
【審査請求日】2021-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】518408305
【氏名又は名称】外井 智廣
(74)【代理人】
【識別番号】100177921
【氏名又は名称】坂岡 範穗
(72)【発明者】
【氏名】外井 智廣
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-022331(JP,U)
【文献】特開2009-030212(JP,A)
【文献】登録実用新案第3186431(JP,U)
【文献】特開2013-127129(JP,A)
【文献】実開昭62-175012(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B 3/28
A41D 13/002
A42B 1/008
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性を有する第1の生地で構成され、人の頭部に装着される帽子部と、
通気性を有する第2の生地で構成され、前記帽子部の頭頂部表面にその周縁が接合され積層される被覆部と、
空気を放出する先端放出部が前記帽子部と前記被覆部との間に設けられる送風管と、
を備え、
前記帽子部及び前記被覆部の上からさらにヘルメットが装着されることを特徴とする頭部冷却構造。
【請求項2】
通気性を有する第1の生地で構成され、人の頭部に装着される帽子部と、
通気性を有する第2の生地で構成され、前記帽子部の頭頂部表面にその周縁が接合され積層される被覆部と、
空気を放出する先端放出部が前記帽子部と前記被覆部との間に設けられる送風管と、
前記帽子部の後側に、人の襟首を覆うとともに襟首に対応する部分に空気導入口が設けられた垂下部
と、
通気性がない第3の生地で構成され、前記被覆部に被されて前記被覆部を通過した空気が流入する流入口、前記流入口からの空気を襟首まで導く導風部、及び前記垂下部に被されて前記空気導入口に空気を排出する排出口を備えるカバー部と、
前記空気導入口と前記排出口の周囲に設けられ、前記空気導入口と前記排出口とを密着させるための面ファスナと、
を備えることを特徴とする頭部冷却構造。
【請求項3】
前記カバー部の上からさらにヘルメットが装着されることを特徴とする請求項
2に記載の頭部冷却構造。
【請求項4】
前記ヘルメットの上からさらにフード付きの防護服が着用されることを特徴とする請求項
3に記載の頭部冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業現場で働く作業員の頭部を冷却する頭部冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防護帽において気体の供給によるフード部内の騒音を低減することを目的として、特開2013-127129号公報に、フード部と、前記フード部の少なくとも後頭部から頭頂部より前方にかけて形成され、後頭部側の後端開口から送風管を挿入可能であり、頭頂部より前方側の先端開口から前記フード部内に気体を流入させる気体供給路と、を有し、前記気体供給路と前記フード部内との間には仕切り膜が形成されている防護帽が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されている防護帽では、空気が前方側の先端開口から集中的に供給され、流入した空気が顔面近傍を通過する構成となっている。このため、作業者によっては不快感を感じるおそれがあり、また流入する空気で目が乾燥する恐れもある。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、通気性を有する生地で構成される帽子部と被覆部との間に送風管の先端放出部を配置することで、帽子部及び被覆部の広い範囲から空気を通過させて、顔面や目に対する刺激を略無くしながら高い冷却効率を発揮する頭部冷却構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の頭部冷却構造は、
通気性を有する第1の生地で構成され、人の頭部に装着される帽子部と、
通気性を有する第2の生地で構成され、前記帽子部の頭頂部表面にその周縁が接合され積層される被覆部と、
空気を放出する先端放出部が前記帽子部と前記被覆部との間に設けられる送風管と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の頭部冷却構造によれば、帽子部と被覆部とが重ね合わされて、その間に送風管の先端放出部が配置されている。また、帽子部と被覆部は通気性を有する生地で構成されており、その双方を空気が通過する。このため、比較的広い面積から空気が放出され、当該広い面積から熱を奪って高い冷却効率を得ることができる。
【0008】
(2)本発明の頭部冷却構造の好ましい例は、
前記第1の生地より前記第2の生地の方が通気性に優れていることを特徴とする。
【0009】
本発明の頭部冷却構造の好ましい例によれば、被覆部を通過する空気が多くなる。これにより、帽子部が浮くことがなく装着性が高まる。
【0010】
(3)本発明の頭部冷却構造の好ましい例は、
前記帽子部の後側に、人の襟首を覆うとともに襟首に対応する部分に空気導入口が設けられた垂下部を備え、
通気性がない第3の生地で構成され、前記被覆部に被されて前記被覆部を通過した空気が流入する流入口、前記流入口からの空気を襟首まで導く導風部、及び前記垂下部に被されて前記空気導入口に空気を排出する排出口を備えるカバー部を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の頭部冷却構造の好ましい例によれば、空気導入口が設けられた垂下部、及び被覆部を通過した空気を空気導入口まで導くカバー部を備えるため、作業者の首もとも冷却することができる。なお、ここで通気性のない第3の生地とは、完全に空気が通過しないものを含めるのは勿論であるが、例えばウインドブレーカー等に用いられるような殆ど空気を通さない生地、又は微細な多数の穴が設けられており水は通さないが蒸気は通過させるような生地も含めることを意図する。
【0012】
(4)本発明の頭部冷却構造の好ましい例は、
前記垂下部が口元まで覆うように構成され、前記帽子部と前記垂下部とで頭巾状をなすことを特徴とする。
【0013】
本発明の頭部冷却構造の好ましい例によれば、帽子部と垂下部とで頭巾状をなすため、作業者を保護することができ安全性を高めることができる。また、空気導入口から首を冷却した空気が口元に抜け、作業者が呼吸を楽にすることができる。
【0014】
(5)本発明の頭部冷却構造の好ましい例は、
前記帽子部及び前記被覆部の上からさらにヘルメットが装着されることを特徴とする。
【0015】
本発明の頭部冷却構造の好ましい例によれば、ヘルメットをさらに装着するため、作業者の安全性が増す。また、被覆部を通過した空気がヘルメットの内側を流通し、高い冷却効率を保つことができる。
【0016】
(6)本発明の頭部冷却構造の好ましい例は、
前記カバー部の上からさらにヘルメットが装着されることを特徴とする。
【0017】
本発明の頭部冷却構造の好ましい例によれば、ヘルメットをさらに装着するため、作業者の安全性が増す。また、カバー部の内側には空気が流通して隙間が生じるため、ヘルメットによる頭部への当たり方が柔らかくなり、ヘルメットを装着することによる作業者の不快感を低減させることができる。
【0018】
(7)本発明の頭部冷却構造の好ましい例は、
前記ヘルメットの上からさらにフード付きの防護服が着用されることを特徴とする。
【0019】
本発明の頭部冷却構造の好ましい例によれば、液体等が飛散するような環境においても作業することができるとともに、作業者を効果的に冷却すること及び呼吸を助けることができる。
【発明の効果】
【0020】
上述したように、本発明の頭部冷却構造によれば、通気性を有する生地で構成される帽子部と被覆部との間に送風管の先端放出部を配置することで、帽子部及び被覆部の広い範囲から空気を通過させて、顔面や目に対する刺激を略無くしながら高い冷却効率を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る頭部冷却構造を説明する図である。
【
図2】本発明の他の実施形態に係る頭部冷却構造を説明する図である。
【
図3】
図2に示す頭部冷却構造の空気の流れを説明する図である。
【
図4】帽子部と垂下部とを頭巾状にしたものを説明する図である。
【
図5】
図4に示す帽子部と垂下部とを用いた頭部冷却構造の空気の流れを説明する図である。
【
図6】ヘルメットの上から防護服を着用した状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の頭部冷却構造1,2,3の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
[第1実施形態]
図1を参照して本発明の第1実施形態に係る頭部冷却構造1を説明する。本実施形態の頭部冷却構造1は、帽子部10と、被覆部20と、送風管30とを備える。
【0023】
帽子部10は、通気性を有する第1の生地で構成され、人の頭部に装着されるものである。この生地としては帽子に採用され得る様々な布地を用いることができる。被覆部20は、前記第1の生地より通気性に優れた第2の生地で構成され、帽子部10の頭頂部11表面にその周縁21が接合され積層されるものである。この第2の生地として、例えば、前記第1の生地より薄く構成された布地やタオル生地、ネル生地等が用いられる。本実施形態の頭部冷却構造1では、この被覆部20にネル生地を採用している。
【0024】
送風管30は、図示しないエアーコンプレッサ等から送られてくる空気を帽子部10と被覆部20との間に放出するもので、空気を放出する先端放出部31が帽子部10と被覆部20との間に設けられる。本実施形態では、この先端放出部31は、帽子部10と被覆部20の周縁21とが接合されるうちの一部から挿入されるが、例えば、帽子部10又は被覆部20のいずれかに穴を設けて、その穴から差し込んでも良い。そして、差し込まれた先端放出部31から放出された空気は、接合されておらず積層されているだけの帽子部10の頭頂部11と被覆部20の中央部に広がり、当該部分より帽子部10を構成する第1の生地及び被覆部20を構成する第2の生地を通過して拡散される。これにより、作業者の顔面や目に空気を当てることなく、作業者の頭頂部11全域を冷却することができる。
【0025】
また、本実施形態の頭部冷却構造1は、帽子部10及び被覆部20の上からさらにヘルメット60を装着することもできる。このヘルメット60を装着した場合、帽子部10及び被覆部20より拡散された冷却用の空気は、帽子部10及び被覆部20とヘルメット60との隙間を通じて排出される。これにより、作業者の安全性を高めながら、作業者の頭部を効率よく冷却することができる。
【0026】
[第2実施形態]
次に、
図2及び
図3を参照して、本発明の第2実施形態に係る頭部冷却構造2を説明する。
図2に示すように、本実施形態の頭部冷却構造2は、帽子部10と、被覆部20と、送風管30と、垂下部40と、カバー部50とを備える。帽子部10、被覆部20、送風管30は第1実施形態と同じ構成であるため、同じ符号を付して説明を省略する。
【0027】
垂下部40は、帽子部10の後側の周縁から垂下されるもので、作業者の後頭部から襟首を覆うとともに襟首に対応する部分に空気導入口42が設けられる。この垂下部40は、帽子部10と同じ第1の生地で構成される。
【0028】
カバー部50は、通気性がない第3の生地で構成され、流入口51、導風部52、排出口53を備える。この第3の生地として、本実施形態では、防寒目的で着用するウインドブレーカーに用いられるナイロンやポリエステル等の生地を採用している。流入口51は、被覆部20に被されて前記被覆部20を通過した空気をカバー部50に流入させるためのもので、作業者の頭に被される程度の大きさの開口を備える。導風部52は、筒状をなす部分であり、流入口51から流入した空気を排出口53に導くものである。この導風部52は、垂下部40に沿って作業者の後頭部から襟足に延びて、その下端が閉じられている。排出口53は、導風部52を通った空気を垂下部40に設けられた空気導入口42に向かって排出するためのもので、導風部52のうち作業者の襟首に向かって設けられる。また、排出口53及び空気導入口42の周囲には、排出口53と空気導入口42とを密着させるための面ファスナ54,55が設けられる。
【0029】
また、本実施形態の頭部冷却構造2には、カバー部50の上からさらにヘルメット60を装着することもできる。ヘルメット60を装着した場合、被覆部20を通過した空気によってカバー部50が膨らみ、ヘルメット60との間にクッション性を有するようになる。
【0030】
次に、
図3を参照して、本実施形態の頭部冷却構造2を使用したときの空気の流れを説明する。
図3は、ヘルメット60を含む構成の頭部冷却構造2である。送風管30の先端放出部31から放出された空気(符号a)は、帽子部10の頭頂部11と被覆部20との間に広がり、その一部は第1の生地で構成される帽子部10を通過して頭部を直接に冷却する(符号b)。また、空気の多くは、第1の生地より通気性に優れた第2の生地で構成された被覆部20を通過する(符号c)。この被覆部20を通過した空気は、通気性がない第3の生地で構成されるカバー部50の導風部52を膨らませながら通過する(符号d)。これにより、ヘルメット60の重さが直接に作業者の頭部にかからず、ヘルメット60を装着する不快感を低減させることができる。
【0031】
また、カバー部50の流入口51は、図に示すように被覆部20の全体と帽子部10の一部を覆うとともに、作業者の耳の上までを覆っている。これにより、カバー部50の内部を通過する空気が作業者の耳にかからず、周囲の音を聞く妨げにもならない。さらに、流入口51は作業者の額から上を覆っているため、作業者の顔面や目にかかる空気も略なくすことができる。次に、導風部52を膨らませた空気は、そのまま後頭部に向かって流れ、排出口53を通じて垂下部40の空気導入口42から作業者の首を冷却して(符号e)大気に放出される。これらにより、作業者の頭部、後頭部、首を効率よく冷却することができる。
【0032】
[第3実施形態]
次に、
図4ないし
図6を説明して本発明の第3実施形態に係る頭部冷却構造3を説明する。本実施形態の頭部冷却構造3は、帽子部10と、被覆部20と、送風管30と、垂下部41と、カバー部50(図示せず)と、ヘルメット60(図示せず)とを備える。帽子部10、被覆部20、送風管30、カバー部50、ヘルメット60は第2実施形態と同じ構成であるため説明を省略する。
【0033】
図4に示すように、垂下部41は、帽子部10の側面及び後側の周縁から垂下されるもので、作業者の目の部分を残して口元まで覆うように構成される。また、垂下部41の襟首に該当する部分には、カバー部50の排出口53から排出された空気を導入するための空気導入口43が設けられる。そして、帽子部10と垂下部41とで頭巾状をなしている。これにより、作業者を効果的に保護することができる。
【0034】
次に、
図5を参照して、本実施形態の頭部冷却構造3を使用したときの空気の流れを説明する。図中符号a~eまでは、上述の第2実施形態と同じである。次に、空気導入口43から前方に向かって作業者の首もとを通過した空気は、その一部が下に抜けるとともに(符号f)、一部が作業者の口元に到達する(符号g)。これにより、垂下部41で作業者の口元を覆っているにもかかわらず、作業者はエアーコンプレッサ等から送られてくる空気を吸うことができ、呼吸を楽にすることができる。特に
図6に示すように、コンテナやタンクの洗浄等で飛散する液体を避けるためのフード62付きの防護服61を、ヘルメット60の上から着用するような場合においても、作業者の冷却と呼吸の助けとなり有益である。
【0035】
なお、上述した各実施形態の頭部冷却構造1,2,3は、本発明の例示である。発明の趣旨を逸脱しない範囲において、その構成を適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0036】
1,2,3・・頭部冷却構造、
10・・帽子部、11・・頭頂部、
20・・被覆部、21・・周縁、
30・・送風管、31・・先端放出部、
40,41・・垂下部、42,43・・空気導入口、
50・・カバー部、51・・流入口、52・・導風部、53・・排出口、54,55・・面ファスナ、
60・・ヘルメット、61・・防護服、62・・フード、