(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】ろう付固定方法、構造体の製造方法、および、固定構造
(51)【国際特許分類】
B23K 3/00 20060101AFI20220913BHJP
B23K 1/00 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
B23K3/00 310F
B23K1/00 330A
(21)【出願番号】P 2018221900
(22)【出願日】2018-11-28
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000239426
【氏名又は名称】福田金属箔粉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【氏名又は名称】田邊 淳也
(72)【発明者】
【氏名】望月 美代
(72)【発明者】
【氏名】望月 裕郎
(72)【発明者】
【氏名】石原 章博
(72)【発明者】
【氏名】柏原 寛親
(72)【発明者】
【氏名】若杉 誠
(72)【発明者】
【氏名】横井 将大
(72)【発明者】
【氏名】河原田 敬
(72)【発明者】
【氏名】永井 省三
(72)【発明者】
【氏名】萩野 博紀
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/031500(WO,A1)
【文献】特公昭57-044433(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 3/00-3/08
B23K 1/00-1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の金属部材をろう付によって互いに固定するろう付固定方法であって、
穴部が形成された一方の金属部材と、前記穴部に係合可能な金属粉末体が固定された他方の金属部材と、を準備する準備工程と、
前記金属粉末体が有するベース部と前記一方の金属部材の外面とを当接させつつ、前記金属粉末体において前記ベース部から突出する凸部と前記穴部とが係合するように、前記一対の金属部材を配置する係合工程と、
ろう材を溶融して前記金属粉末体に含浸させることによって、前記一対の金属部材を互いに固定する固定工程と、を備える、
ろう付固定方法。
【請求項2】
請求項1に記載のろう付固定方法であって、
前記一方の金属部材には、複数の前記穴部が形成され、
前記他方の金属部材には、2つ以上の前記穴部のそれぞれに係合可能な複数の
前記凸部を備えた前記金属粉末体が固定されている、
ろう付固定方法。
【請求項3】
請求項2に記載のろう付固定方法であって、
複数の前記穴部は、前記一方の金属部材の軸線方向に並ぶように配置されている、
ろう付固定方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のろう付固定方法は、さらに、
前記係合工程の後、前記一方の金属部材と前記他方の金属部材との間に、前記金属粉末体に隣接するように前記ろう材を配置する配置工程を備える、
ろう付固定方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のろう付固定方法であって、
前記穴部が配置されている前記一方の金属部材の外面と、前記金属粉末体が配置されている前記他方の金属部材の外面と、の少なくとも一方は、曲面である、
ろう付固定方法。
【請求項6】
請求項5に記載のろう付固定方法であって、
前記他方の金属部材は、筒状に形成されており、
前記金属粉末体は、前記他方の金属部材の軸線方向に沿うように配置されており、
前記ろう材は、前記金属粉末体の延伸方向の側面と両側の端面とに隣接するように配置される、
ろう付固定方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のろう付固定方法であって、
前記準備工程は、
前記他方の金属部材と、前記金属粉末体と、を準備する工程と、
前記金属粉末体を前記他方の金属部材に固定する工程と、を含む、
ろう付固定方法。
【請求項8】
一対の金属部材と、前記一対の金属部材を互いに固定する固定部と、を備える構造体の製造方法であって、
穴部が形成された一方の金属部材と、前記穴部に係合可能な金属粉末体が固定された他方の金属部材とを準備する準備工程と、
前記金属粉末体が有するベース部と前記一方の金属部材の外面とを当接させつつ、前記金属粉末体において前記ベース部から突出する凸部と前記穴部とが係合するように、前記一対の金属部材を配置する係合工程と、
ろう材を溶融して前記金属粉末体に含浸させることによって、前記一対の金属部材を互いに固定する前記固定部を形成する固定部形成工程と、を備える、
構造体の製造方法。
【請求項9】
一対の金属部材をろう付によって互いに固定するために用いられる固定構造であって、
一方の金属部材に形成されている穴部と、
他方の金属部材に固定され前記穴部に係合可能な金属粉末体と、
前記金属粉末体に隣り合うように配置され、溶融すると前記金属粉末体に含浸するろう材と、を備え
、
前記金属粉末体は、前記一方の金属部材の外面に当接可能なベース部と、前記ベース部から突出し、前記穴部に係合可能な凸部と、を有する、
固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろう付固定方法、構造体の製造方法、および、固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の金属部材をろう付によって互いに固定するろう付固定方法が知られている。例えば、特許文献1には、一対の金属部材をろう付する接合ろう材と、接合ろう材と共晶反応可能な金属粉末の集合体とから形成される複合ろう材を用いて、一対の金属部材のうちの一方の金属部材を他方の金属部材にろう付によって固定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の複合ろう材は、一方の金属部材に設けられる。特許文献1に記載の複合ろう材を用いて一対の金属部材が互いに固定されている構造体を製造するとき、複合ろう材が設けられている一方の金属部材と他方の金属部材とを所定の位置関係で対向させたのち複合ろう材を加熱する。このとき、複合ろう材に含まれる接合ろう材は溶融するため、他方の金属部材に対する一方の金属部材の位置がずれるおそれがある。このため、一対の金属部材の位置決めの精度が低下する場合がある。また、一対の金属部材の位置決めを高精度に行う場合、位置決め用の治具を別途用意する必要があり、製造コストが増大する。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、一対の金属部材をろう付によって互いに固定するろう付固定方法において、一対の金属部材の高精度な位置決めを安価に行うことができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、一対の金属部材をろう付によって互いに固定するろう付固定方法が提供される。ろう付固定方法は、穴部が形成された一方の金属部材と、前記穴部に係合可能な金属粉末体が固定された他方の金属部材と、を準備する準備工程と、前記穴部と前記金属粉末体とが係合するように、前記一対の金属部材を配置する係合工程と、ろう材を溶融して前記金属粉末体に含浸させることによって、前記一対の金属部材を互いに固定する固定工程と、を備える。
【0008】
この構成によれば、一方の金属部材に形成された穴部と他方の金属部材に固定された金属粉末体とが係合するように一対の金属部材を配置することによって、一対の金属部材の位置決めを行うことができる。これにより、一対の金属部材の位置決めを行うための専用の治具がない場合でも、固定工程でのろう付によって高精度に一対の金属部材を互いに固定することができる。したがって、一対の金属部材の高精度な位置決めを安価に行うことができる。
【0009】
(2)上記形態のろう付固定方法において、前記一方の金属部材には、複数の前記穴部が形成され、前記他方の金属部材には、2つ以上の前記穴部のそれぞれに係合可能な複数の凸部を備えた前記金属粉末体が固定されていてもよい。一対の金属部材の接合で1つの穴部と1つの金属粉末体とを係合する場合、当該係合した個所を中心として金属部材が回転するおそれがある。この構成によれば、穴部と金属粉末体とが係合する個所が2か所以上になるため、係合個所を中心とした回転を防止することができる。これにより、一対の金属部材の位置決めの精度をさらに向上することができる。また、2か所以上で係合することによって1か所で係合する場合に比べ接合力が強くなるため、一対の金属部材をより強固に接合することができる。
【0010】
(3)上記形態のろう付固定方法において、複数の前記穴部は、前記一方の金属部材の軸線方向に並ぶように配置されていてもよい。この構成によれば、一対の金属部材の軸線方向への移動が、複数個所の係合によって抑制される。これにより、一対の金属部材の位置決めの精度をさらに向上することができるとともに、一対の金属部材をより強固に接合することができる。
【0011】
(4)上記形態のろう付固定方法は、さらに、前記係合工程の後、前記一方の金属部材と前記他方の金属部材との間に、前記金属粉末体に隣接するように前記ろう材を配置する配置工程を備えてもよい。この構成によれば、穴部と金属粉末体とを係合させたのち、一方の金属部材と他方の金属部材との接合に必要な量のろう材を配置することができる。これにより、ろう材が足りない場合の接合不良を防止しつつ、ろう材の使用量を低減することができる。
【0012】
(5)上記形態のろう付固定方法において、前記穴部が配置されている前記一方の金属部材の外面と、前記金属粉末体が配置されている前記他方の金属部材の外面と、の少なくとも一方は、曲面であってもよい。例えば、一方の金属部材の外面が曲面であって、他方の金属部材の外面が平面である場合、曲面と平面とを組み合わせるため一対の金属部材の位置決めは困難になるが、この構成によれば、穴部と金属粉末体との係合によって、一対の金属部材を高精度に位置決めすることができる。
【0013】
(6)上記形態のろう付固定方法において、前記他方の金属部材は、筒状に形成されており、前記金属粉末体は、前記他方の金属部材の軸線方向に沿うように配置されており、前記ろう材は、前記金属粉末体の延伸方向の側面と両側の端面とに隣接するように配置されてもよい。この構成によれば、ろう材は、金属粉末体の延伸方向の側面と両側の端面とから当該金属粉末体に含浸するため、金属粉末体にろう材を十分に含浸させることができる。したがって、一対の金属部材を強固に固定することができる。
【0014】
(7)上記形態のろう付固定方法において、前記準備工程は、前記他方の金属部材と、前記金属粉末体と、を準備する工程と、前記他方の金属部材に前記金属粉末体を固定する工程と、を含んでもよい。この構成によれば、準備工程において、他方の金属部材に別部材となっている金属粉末体を固定することによって、金属粉末体が固定されている他方の金属部材を準備することができる。これにより、必要に応じて穴部と金属粉末体との係合箇所の数を変更したり当該係合箇所の位置を設定したりすることができる。
【0015】
(8)本発明の別の形態によれば、一対の金属部材と、前記一対の金属部材を互いに固定する固定部と、を備える構造体の製造方法が提供される。構造体の製造方法は、穴部が形成された一方の金属部材と、前記穴部に係合可能な金属粉末体が固定されている他方の金属部材とを準備する準備工程と、前記穴部と前記金属粉末体とが係合するように、前記一対の金属部材を配置する係合工程と、ろう材を溶融して前記金属粉末体に含浸させることによって、前記一対の金属部材を互いに固定する前記固定部を形成する固定部形成工程と、を備える。この構成によれば、一対の金属部材の相対位置が高精度に設定された構造体を製造することができる。
【0016】
(9)本発明のさらに別の形態によれば、一対の金属部材をろう付によって互いに固定するために用いられる固定構造が提供される。固定構造は、一方の金属部材に形成されている穴部と、他方の金属部材に固定され前記穴部に係合可能な金属粉末体と、前記金属粉末体に隣り合うように配置され、溶融すると前記金属粉末に含浸するろう材と、を備える。この構成によれば、一対の金属部材の相対位置を高精度に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態の構造体の製造前の構成を示す模式図である。
【
図2】第1実施形態のろう付固定方法のフローチャートである。
【
図3】第1実施形態のろう付固定方法を説明する模式図である。
【
図4】第2実施形態のろう付固定方法を説明する模式図である。
【
図5】第3実施形態のろう付固定方法を説明する模式図である。
【
図6】第4実施形態の構造体の製造前の構成を示す模式図である。
【
図7】第4実施形態のろう付固定方法を説明する模式図である。
【
図8】第5実施形態の構造体の製造前の構成を示す模式図である。
【
図9】第6実施形態の構造体の製造前の構成を示す模式図である。
【
図10】第7実施形態の構造体の製造前の構成を示す模式図である。
【
図11】第8実施形態のろう付固定方法を説明する模式図である。
【
図12】第9実施形態のろう付固定方法を説明する模式図である。
【
図13】第1実施形態の構造体の変形例を示す模式図である。
【
図14】第1実施形態のろう付固定方法の変形例を説明する模式図である。
【
図15】第4実施形態のろう付固定方法の変形例を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の構造体の製造前の構成を示す模式図である。
図2は、第1実施形態のろう付固定方法のフローチャートである。
図3は、第1実施形態のろう付固定方法を説明する模式図である。第1実施形態のろう付固定方法は、
図1(a)に示す一対の金属部材11、12を、白抜き矢印F1のように組み合わせてろう付によって固定することで、構造体5(
図3参照)を製造する。構造体5は、それぞれ筒状に形成されている一対の金属部材11、12と、一対の金属部材11、12を互いに固定する固定部16と、から構成されており、例えば、水和反応によって発熱し脱水反応によって蓄熱する円柱状の蓄熱材を収容することができる。
【0019】
本実施形態のろう付固定方法は、
図2に示すように、準備工程と、係合工程と、固定工程と、を備える。
準備工程(S11)では、一対の金属部材11、12が準備される。
金属部材11は、
図1に示すように、断面形状が略円環状の金属からなる部材であって、円筒状の本体部11aを有している。
本体部11aは、金属部材11の軸線方向の長さと同じ長さを有するステンレス鋼から形成されており、例えば、上述した蓄熱材を収容する場合、水蒸気を通すことが可能なメッシュ状に形成されている。本体部11aには、穴部13が形成されている。
穴部13は、本体部11aの曲面状に形成されている側面に形成されている。本実施形態では、穴部13は、
図1に示すように、3個設けられ、本体部11aの軸線方向に並ぶように略等間隔に配置されている。
【0020】
金属部材12は、金属部材11と同様に、断面形状が略円環状の金属からなる部材であって、円筒状の本体部12aを有している。
本体部12aは、金属部材12の軸線方向の長さと同じ長さを有するステンレス鋼から形成されており、例えば、上述した蓄熱材を収容する場合、水蒸気を通すことが可能なメッシュ状に形成されている。なお、本実施形態では、金属部材11と金属部材12とは、同じ形状の部材であるが、異なる形状の部材であってもよい。
【0021】
本体部12aの外面には、金属粉末体14が固定されている。金属粉末体14は、金属粉末の集合体を形成したものであって、具体的には、金属粉末と、当該金属粉末の粉末同士を接着させるバインダとを混合させたものを乾燥させ、成形したものである。金属粉末としては、金属部材11と同じ材料であるステンレス鋼の粉末であって、粒径が10~45μmのものが用いられる。また、バインダは、後述する固定工程における加熱炉内の温度以下で蒸発するもの、例えば、有機系溶剤が用いられる。金属粉末体14は、本体部12aの軸線方向に延びるように形成され、本体部12aの軸線方向と同じ長さを有し、本体部12aの曲面状に形成されている側面に固定されている。金属粉末体14は、本体部12aの軸線方向に沿って延伸するように形成され、本体部12aの軸線方向の長さと同じ長さを有するベース部14aと、ベース部14aから本体部12aの径方向に突出する3個の凸部14bを有する。すなわち、金属粉末体14の凸部14bが形成されている部位の厚みは、ベース部14aが形成されている部位の厚みより厚い。3個の凸部14bは、金属部材11の穴部13に挿入可能な大きさであって、本体部12aの軸線方向に並ぶように配置され、それぞれが3個の穴部13のそれぞれに係合することができる。本実施形態の凸部14bは、本体部12aの周方向に沿った長さが、ベース部14aの長さと同じになるように形成されている。
【0022】
本実施形態では、金属部材12の側面に、ろう材15が設けられている。ろう材15は、金属部材11、12に拡散し金属部材11、12と固着可能な材料であって、金属部材11、12を形成する材料に対して融点が低く、かつ、金属部材11、12を形成する材料と共晶反応可能な材料から形成される。ろう材15は、一例として、ニッケル基ろう材、鉄基ろう材、銀基ろう材、チタン基ろう材が挙げられる。本実施形態では、ろう材15は、金属部材12の本体部12aの軸線方向の長さと略同じ長さを有する直線状に形成され、金属粉末体14の延伸方向の一方の側面に隣接するように配置されている。
【0023】
係合工程(S12)では、3個の穴部13と金属粉末体14が有する3個の凸部14bと、が係合するように、一対の金属部材11、12を配置する。
具体的には、
図3(a)に示すように、金属部材11の穴部13と、金属部材12の金属粉末体14とが対向するように、一対の金属部材11、12を配置する。次に、
図3(b)の白抜き矢印F11、F12のように、金属部材11と金属部材12とを近づけ、
図3(c)に示すように、穴部13と金属粉末体14の凸部14bとを係合させる。このとき、穴部13には凸部14bが挿入され、金属粉末体14のベース部14aの外面が金属部材11の本体部11aの外面に当接することで、金属部材12に対する金属部材11の相対位置が確定する。
【0024】
固定工程(S13)では、ろう材15を溶融して金属粉末体14に含浸させることによって、一対の金属部材11、12を互いに固定する。
具体的には、
図3(c)に示す状態の一対の金属部材11、12を、図示しない加熱炉によって加熱し、ろう材15を溶融する。なお、加熱炉内の温度は、ろう材15は溶融するが、金属部材11、12は溶融しないように、例えば、1100度に設定されている。ろう材15を溶融させると、金属粉末体14内に溶融したろう材15が吸引される。これにより、ろう材15が金属粉末体14に含浸し金属粉末の表面にろう材が共晶反応する。
【0025】
さらに、金属粉末体14に含浸したろう材15は、金属部材11、12との接合界面で拡散し、金属部材11、12と共晶反応する。この後、金属部材11、12と金属粉末体14とに含浸したろう材15を冷却させることによって、金属部材11と金属部材12とは、ろう付によって固定される。これにより、金属部材11、12と、ろう材15が含浸した金属粉末体14であって、一対の金属部材11、12を互いに固定する固定部16と、を備える構造体5が製造される(
図3(d)参照)。
【0026】
以上説明した、本実施形態のろう付固定方法によれば、穴部13と金属粉末体14とが係合可能なように構成されているため、係合工程において、穴部13と金属粉末体14とが係合するように一対の金属部材11、12を配置することによって、一対の金属部材11、12の位置決めを行うことができる。これにより、一対の金属部材11、12の位置決めを行うための専用の治具がない場合でも、固定工程でのろう付によって高精度に一対の金属部材11、12を互いに固定することができる。したがって、一対の金属部材11、12の高精度な位置決めを安価に行うことができる。
【0027】
また、本実施形態のろう付固定方法によれば、穴部13と金属粉末体14とが係合する個所が3か所となる。1つの穴部と1つの金属粉末体とが係合する場合、当該係合した個所を中心として金属部材が回転するおそれがある。しかしながら、本実施形態のろう付固定方法によれば、穴部13と金属粉末体14とが係合する個所は3か所になるため、係合個所を中心とした金属部材11、12の回転を防止することができる。これにより、一対の金属部材11、12の位置決めの精度をさらに向上することができる。また、3か所で係合することによって1か所で係合する場合に比べ接合力が強くなるため、一対の金属部材11、12をより強固に接合することができる。
【0028】
また、本実施形態のろう付固定方法によれば、3個の穴部13は、金属部材11の軸線方向に並ぶよう配置されている。これにより、一対の金属部材11、12の軸線方向への移動が、3か所の係合個所によって抑制される。したがって、一対の金属部材11、12の位置決めの精度をさらに向上することができるとともに、一対の金属部材11、12をより強固に接合することができる。
【0029】
また、本実施形態のろう付固定方法によれば、穴部13が設けられている金属部材11の外面と金属粉末体14が設けられている金属部材12の外面とは、曲面状に形成されている。この構成によれば、位置決めが比較的困難な曲面同士の接合でも、穴部13と金属粉末体14との係合によって、一対の金属部材11、12を高精度に位置決めすることができる。
【0030】
<第2実施形態>
図4は、第2実施形態のろう付固定方法を説明する模式図である。第2実施形態のろう付固定方法は、第1実施形態のろう付固定方法(
図3)と比較すると、ろう材が設けられる位置が異なる。
【0031】
本実施形態では、ろう材25は、金属部材11の側面に設けられている。ろう材25は、金属部材11、12に拡散し、金属部材11、12と固着可能な材料であって、金属部材11の本体部11aの軸線方向の長さと略同じ長さを有する直線状に形成されている。本実施形態では、ろう材25は、本体部11aの周方向において穴部13の一方の側に、穴部13に隣接するように配置されている。
【0032】
本実施形態のろう付固定方法では、準備工程において、ろう材25が設けられ、穴部13が形成されている金属部材11と、金属粉末体14が固定されている金属部材12と、が準備される。次に、係合工程において、
図4(a)に示すように、一対の金属部材11、12を配置し、
図4(b)の白抜き矢印F21、F22のように、金属部材11と金属部材12とを近づける。これにより、
図4(c)に示すように、穴部13と凸部14bとが係合する。
図4(c)に示す状態のとき、ろう材25は、金属粉末体14に隣接する。
次に、固定工程において、ろう材25を溶融して金属粉末体14に含浸させることによって、
図4(d)に示すように、金属部材11と金属部材12とがろう付によって固定される。これにより、金属部材11、12と、ろう材25が含浸した金属粉末体14であって、一対の金属部材11、12を互いに固定する固定部26と、を備える構造体5が製造される。
【0033】
以上説明した、本実施形態のろう付固定方法によれば、穴部13と金属粉末体14とが係合可能なように構成されているため、穴部13と金属粉末体14とが係合するように一対の金属部材11、12を配置することで、一対の金属部材11、12の位置決めを行うことができる。これにより、一対の金属部材11、12の高精度な位置決めを安価に行うことができる。
【0034】
<第3実施形態>
図5は、第3実施形態のろう付固定方法を説明する模式図である。第3実施形態のろう付固定方法は、第1実施形態のろう付固定方法(
図3)と比較すると、ろう材が設けられるタイミングが異なる。
【0035】
本実施形態では、ろう材35は、穴部13と金属粉末体14とを係合したのちに、金属部材11の側面と金属部材12の側面とに塗布する。以下、本実施形態のろう付固定方法を、
図5を用いて説明する。
【0036】
本実施形態のろう付固定方法では、準備工程において、穴部13が形成されている金属部材11と、金属粉末体14が固定されている金属部材12と、が準備される。次に、係合工程において、
図5(a)に示すように、一対の金属部材11、12を配置し、
図5(b)の白抜き矢印F31、F32のように、金属部材11と金属部材12とを近づける。これにより、
図5(c)に示すように、穴部13と凸部14bとが係合する。
【0037】
次に、固定工程において、
図5(d)に示すように、穴部13と金属粉末体14とが係合している金属部材11と金属部材12との間において、金属部材11の側面と金属部材12の側面とにろう材35を塗布する。このとき、ろう材35は、金属粉末体14に隣接するように塗布される。ろう材35を塗布したのち、ろう材35を溶融して金属粉末体14に含浸させることによって、
図5(e)に示すように、金属部材11と金属部材12とがろう付によって固定される。これにより、金属部材11、12と、ろう材35が含浸した金属粉末体14であって、一対の金属部材11、12を互いに固定する固定部36と、を備える構造体5が製造される。
【0038】
以上説明した、本実施形態のろう付固定方法によれば、穴部13と金属粉末体14とが係合可能なように構成されているため、穴部13と金属粉末体14とが係合するように一対の金属部材11、12を配置することで、一対の金属部材11、12の位置決めを行うことができる。これにより、一対の金属部材11、12の高精度な位置決めを安価に行うことができる。
【0039】
また、本実施形態のろう付固定方法によれば、穴部13と金属粉末体14とを係合させたのち、金属部材11と金属部材12との接合に必要な量のろう材35を塗布する。これにより、ろう材35が足りない場合の接合不良を防止しつつ、ろう材35の使用量を低減することができる。
【0040】
<第4実施形態>
図6は、第4実施形態の構造体の製造前の構成を示す模式図である。
図7は、第4実施形態のろう付固定方法を説明する模式図である。第4実施形態のろう付固定方法は、第1実施形態のろう付固定方法(
図1、
図3)と比較すると、金属粉末体の形状が異なる。
【0041】
本実施形態のろう付固定方法は、
図6(a)に示す一対の金属部材11、42を、白抜き矢印F4のように組み合わせてろう付によって固定することによって、構造体5(
図7(d)参照)を製造する。本実施形態のろう付固定方法では、準備工程において、穴部13が形成されている金属部材11と、ろう材15と金属粉末体44とが設けられている金属部材42と、が準備される。
【0042】
金属粉末体44は、金属粉末の集合体を形成したものであって、ベース部14aと、3個の凸部44bと、を有する。3個の凸部44bは、
図7(a)に示すように、ベース部14aの延伸方向の側面44cに設けられ、本体部12aの径方向における厚みが、ベース部14aの、本体部12aの径方向の厚みより厚くなるように、形成されている。これにより、凸部44bは、先端が、ベース部14aの径方向外側の端面44dより外に突出する。3個の凸部44bは、金属部材11の穴部13に挿入可能な大きさであって、本体部12aの軸線方向に並ぶように配置され、それぞれが3個の穴部43のそれぞれに係合することができる。ろう材15は、
図7(a)に示すように、ベース部14aの、凸部44bが設けられている側とは反対側の、延伸方向の側面44eに隣接するように配置されている。
【0043】
次に、係合工程において、
図7(a)に示すように、一対の金属部材11、42を配置し、
図7(b)の白抜き矢印F41、F42のように、金属部材11と金属部材42とを近づける。これにより、
図7(c)に示すように、穴部13と凸部44bとが係合する。
次に、固定工程において、金属部材42の側面に設けられているろう材15を溶融して金属粉末体44に含浸させることによって、
図7(d)に示すように、金属部材11と金属部材42とがろう付によって固定される。これにより、金属部材11、42と、ろう材15が含浸した金属粉末体44であって、一対の金属部材11、42を互いに固定する固定部46と、を備える構造体5が製造される。
【0044】
以上説明した、本実施形態のろう付固定方法によれば、穴部13と金属粉末体44とが係合可能なように構成されているため、穴部13と金属粉末体44とが係合するように一対の金属部材11、42を配置することによって、一対の金属部材11、42の位置決めを行うことができる。これにより、一対の金属部材11、42の高精度な位置決めを安価に行うことができる。
【0045】
また、本実施形態のろう付固定方法によれば、ベース部14aとベース部14aの側面44cに設けられる3個の凸部44bとを有する金属粉末体44と穴部13との係合によって、一対の金属部材11、42が位置決めされている。これにより、接合面の面積が第1実施形態に比べ大きくなるため接合力が強くなり、一対の金属部材41、42をより強固に接合することができる。
【0046】
<第5実施形態>
図8は、第5実施形態の構造体の製造前の構成を示す模式図である。第5実施形態のろう付固定方法は、第1実施形態のろう付固定方法(
図1)と比較すると、ろう材の形状が異なる。
【0047】
本実施形態では、ろう材55は、金属部材12の側面に設けられている。ろう材55は、金属部材11、12に拡散し、金属部材11、12と固着可能な材料である。ろう材55は、
図8(b)に示すように、金属粉末体14が有するベース部14aの延伸方向の2つの側面14c、14dと、両側の端面14e、14fと、において金属粉末体14に隣接するように設けられている。
【0048】
本実施形態のろう付固定方法では、係合工程において、一対の金属部材11、12を、
図8(a)に示す白抜き矢印F5のように組み合わせ、固定工程において、ろう材55を溶融して穴部13に係合している金属粉末体14に含浸させる。これにより、金属部材11と金属部材12とがろう付によって固定される。
【0049】
以上説明した、本実施形態のろう付固定方法によれば、固定工程において溶融するろう材55は、金属粉末体14を囲むように設けられている。ろう材55が溶融すると、金属粉末体14は、ベース部14aの延伸方向の2つの側面14c、14dと、両側の端面14e、14fとから、ろう材55が含浸する。これにより、金属粉末体14にろう材55を十分に含浸させることができるため、金属部材11と金属部材12とを確実に接合することができる。
【0050】
<第6実施形態>
図9は、第6実施形態の構造体の製造前の構成を示す模式図である。第6実施形態のろう付固定方法は、第1実施形態のろう付固定方法(
図1)と比較すると、ろう材の形状が異なる。
【0051】
本実施形態では、金属部材12の側面には、略L字状に形成されている2つのろう材65a、65bが設けられている。ろう材65aは、
図9(b)に示すように、金属粉末体14のベース部14aの延伸方向の側面14cと、端面14eとにおいて金属粉末体14に隣接するように設けられている。ろう材65bは、
図9(b)に示すように、ベース部14aの延伸方向の側面14dと、端面14fとにおいて金属粉末体14に隣接するように設けられている。
【0052】
本実施形態のろう付固定方法では、係合工程において、一対の金属部材11、12を、
図9(a)に示す白抜き矢印F6のように組み合わせ、固定工程において、2つのろう材65a、65bを溶融して穴部13に係合している金属粉末体14に含浸させる。これにより、金属部材11と金属部材12とがろう付によって固定される。
【0053】
以上説明した、本実施形態のろう付固定方法によれば、固定工程において溶融する2つのろう材65a、65bは、金属粉末体14を囲むように設けられている。ろう材65a、65bが溶融すると、金属粉末体14は、ベース部14aの延伸方向の2つの側面14c、14dと、両側の端面14e、14fと、からろう材65a、65bが含浸する。これにより、金属粉末体14にろう材65a、65bを十分に含浸させることができるため、金属部材11と金属部材12とを確実に接合することができる。
【0054】
<第7実施形態>
図10は、第7実施形態の構造体の製造前の構成を示す模式図である。第7実施形態のろう付固定方法は、第1実施形態のろう付固定方法(
図1)と比較すると、ろう材の形状が異なる。
【0055】
本実施形態では、ろう材75は、金属部材12の側面に設けられている。ろう材75は、
図10(b)に示すように、金属粉末体14が有するベース部14aの延伸方向の側面14dと、両側の端面14e、14fと、において金属粉末体14に隣接するように設けられている。
【0056】
本実施形態のろう付固定方法では、係合工程において、一対の金属部材11、12を、
図10(a)に示す白抜き矢印F7のように組み合わせ、固定工程において、ろう材75を溶融して穴部13に係合している金属粉末体14に含浸させる。これにより、金属部材11と金属部材12とがろう付によって固定される。
【0057】
以上説明した、本実施形態のろう付固定方法によれば、固定工程においてろう材75を溶融すると、金属粉末体14は、ベース部14aの延伸方向の側面14dと、両側の端面14e、14fとからろう材75が含浸する。これにより、金属粉末体14にろう材75を十分に含浸させることができるため、金属部材11と金属部材12とを確実に接合することができる。
【0058】
<第8実施形態>
図11は、第8実施形態のろう付固定方法を説明する模式図である。第8実施形態のろう付固定方法は、第1実施形態のろう付固定方法(
図3)と比較すると、準備工程が異なる。
【0059】
本実施形態のろう付固定方法は、準備工程と、係合工程と、固定工程と、を備える。
準備工程では、金属部材11、82と、接合部材84と、が準備される。
金属部材82は、金属部材12と同様に、断面形状が略円環状の金属からなる部材であって、円筒状の本体部82aを有している。
本体部82aは、金属部材82の軸線方向の長さと同じ長さを有するステンレス鋼から形成されている。穴部83は、本体部82aの曲面状に形成されている側面に配置されている。本実施形態では、穴部83は、3個設けられ、本体部82aの軸線方向に並ぶように略等間隔に配置されている。
【0060】
接合部材84は、金属部材11と金属部材82とは別部材であって、ベース部84aと、第1凸部84bと、第2凸部84cと、ろう材85と、から構成されている。ベース部84aと、第1凸部84bと、第2凸部84cと、は、金属粉末の集合体で成形したものである。
ベース部84aは、長手方向の長さが金属部材11、82の軸線方向の長さと同じになるように形成されている平板状の部位である。ベース部84aの金属部材82における接線方向の長さは、穴部13、83の幅より大きい。
【0061】
第1凸部84bは、
図11(a)に示すように、ベース部84aの側面84dから突出するように形成され、金属部材11に形成されている穴部13に係合可能である。本実施形態では、3個の第1凸部84bは、ベース部84aの側面84dにおいて略等間隔に配置されている。
第2凸部84cは、
図11(a)に示すように、ベース部84aの側面84dとは反対側の側面84eから突出するように形成され、金属部材82に形成されている穴部83に係合可能である。本実施形態では、3個の第1凸部84bは、ベース部84aの側面84eにおいて略等間隔に配置されている。
【0062】
ろう材85は、ベース部84aの、第1凸部84bと第2凸部84cとが設けられていない両側の端部に設けられている。ろう材85は、
図11に示すように、ベース部84aに接続する側の端部から離れるにしたがって、金属部材11、82の側面に沿って幅が広がるように形成されている。
【0063】
本実施形態のろう付固定方法の準備工程では、
図11(a)に示すように、接合部材84の第2凸部84cと、金属部材82の穴部83とが係合するように、金属部材82と接合部材84とを組み付ける。このとき、ベース部84aが本体部82aの外面に当接するため、金属部材82に対する接合部材84の相対位置が決定される。金属部材82と接合部材84とを組み付けた状態で接合部材84を金属部材82に固定すると、金属部材82と接合部材84とは、
図11(b)に示す状態となる。
【0064】
次に、係合工程において、
図11(b)の白抜き矢印F81、F82のように、金属部材11と金属部材82とを近づけ、
図11(c)に示すように、穴部13と第1凸部84bとを係合させる。すなわち、第1凸部84bは、穴部13に係合することから、「金属粉末体」として機能する。
次に、固定工程において、接合部材84のろう材85を溶融して、ベース部84aと、第1凸部84bと、第2凸部84cと、に含浸させることによって、
図11(d)に示すように、金属部材11と金属部材82とがろう付によって固定される。これにより、金属部材11、82と、ろう材85が含浸したベース部84aと第1凸部84bと第2凸部84cとであって、一対の金属部材11、82を互いに固定する固定部86と、を備える構造体5が製造される。
【0065】
以上説明した、本実施形態のろう付固定方法によれば、準備工程において、接合部材84を金属部材11と金属部材82とに組み付けることによって、金属部材11と金属部材82との位置決めを行うことができる。これにより、一対の金属部材11、12の位置決めの精度を向上することができる。
【0066】
また、本実施形態のろう付固定方法によれば、金属部材82に、金属部材11、82とは別に用意した接合部材84を組み付けて固定することによって金属部材11の穴部13に係合する第1凸部84bが金属部材82に設けられる。これにより、必要に応じて穴部13と第1凸部84bとの係合箇所の数を変更したり当該係合箇所の位置を設定したりすることができる。
【0067】
<第9実施形態>
図12は、第9実施形態のろう付固定方法を説明する模式図である。第9実施形態のろう付固定方法は、第1実施形態のろう付固定方法(
図3)と比較すると、準備工程が異なる。
【0068】
本実施形態のろう付固定方法は、準備工程と、係合工程と、固定工程と、を備える。準備工程では、金属部材11、82と、接合部材94と、が準備される。
【0069】
接合部材94は、金属部材11と金属部材82とは別部材であって、ベース部94aと、第1凸部84bと、第2凸部84cと、ろう材85と、から構成されている。ベース部94aと、第1凸部84bと、第2凸部84cと、は、金属粉末の集合体で形成したものである。
ベース部94aは、長手方向の長さが金属部材11、82の軸線方向の長さと同じになるように形成されている平板状の部位である。ベース部94aの金属部材82における接線方向の長さは、第1凸部84bや第2凸部84cと同じである。
第1凸部84bは、
図12に示すように、ベース部94aの側面94dから突出するように形成され、ベース部94aの側面94dにおいて略等間隔に配置されている。
第2凸部84cは、
図12に示すように、ベース部94aの側面94dとは反対側の側面94eから突出するように形成され、ベース部94aの側面94eにおいて略等間隔に配置されている。
ろう材85は、ベース部84aの、第1凸部84bと第2凸部84cとが設けられていない両側の端部に設けられている。
【0070】
本実施形態のろう付固定方法の準備工程では、
図12(a)に示すように、接合部材94の第2凸部84cと、金属部材82の穴部83とが係合するように、金属部材82と接合部材94とを組み付ける。このとき、ベース部94aの両端に設けられているろう材85が本体部82aの外面に当接するため、金属部材82に対する接合部材94の相対位置が決定される。金属部材82と接合部材94とを組み付けた状態で接合部材94を金属部材82に固定すると、金属部材82と接合部材94とは、
図12(b)に示す状態となる。
【0071】
次に、係合工程において、
図12(b)の白抜き矢印F91、F92のように、金属部材11と金属部材82とを近づけ、
図11(c)に示すように、穴部13と第1凸部84bとを係合させる。
次に、固定工程において、接合部材94のろう材85を溶融して、ベース部94aと、第1凸部84bと、第2凸部84cと、に含浸させることによって、
図12(d)に示すように、金属部材11と金属部材82とがろう付によって固定される。これにより、金属部材11、82と、ろう材85が含浸したベース部94aと第1凸部84bと第2凸部84cとであって、一対の金属部材11、82を互いに固定する固定部96と、を備える構造体5が製造される。
【0072】
以上説明した、本実施形態のろう付固定方法によれば、金属部材82に、金属部材11、82とは別に用意した接合部材94を組み付けることによって金属部材11の穴部13に係合する第1凸部84bが金属部材82に設けられる。これにより、必要に応じて穴部13と第1凸部84bとの係合箇所の数を変更したり当該係合箇所の位置を設定したりすることができる。
【0073】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0074】
[変形例1]
第1実施形態では、金属粉末体14の凸部14bは、本体部12aの周方向に沿った長さが、ベース部14aの長さと同じになるように形成されているとした、しかしながら、凸部14bの周方向に沿った長さはこれに限定されない。
【0075】
[変形例2]
第1実施形態では、断面形状が略円環状の金属からなる一対の金属部材11、12をろう付によって互いに固定するとした。しかしながら、ろう付される金属部材の形状や数はこれに限定されない。
図13は、第1実施形態の構造体5の変形例を示す模式図である。金属部材11、12の断面形状が、
図13(a)に示すように、角丸長方形である場合、断面形状が円弧状の側面同士を接合し、一対の金属部材11、12を互いに固定してもよい。また、金属部材11、12の断面形状が、
図13(b)に示すように、楕円形状である場合、断面形状が楕円弧状の側面同士を接合し、一対の金属部材11、12を互いに固定してもよい。
また、
図13(c)に示すように、一の金属部材11の周囲に複数の他の金属部材12が位置する場合、金属部材11において複数の金属部材12に対応する位置に穴部13が形成される。また、他の金属部材12には、一の金属部材11の穴部13に係合する金属粉末体14が設けられている。これにより、一の金属部材11の周囲に複数の他の金属部材12が位置する場合であっても、互いに固定することができる。
【0076】
[変形例3]
上述の実施形態では、金属粉末体の凸部は、ベース部に設けられるとした。しかしながら、凸部のみの金属粉末体が、金属部材に固定されていてもよい。
【0077】
[変形例4]
上述の実施形態では、複数の穴部と複数の金属粉末体とは、金属部材の軸線方向に沿うよう配置されているとした。しかしながら、穴部や金属粉末体の配置は、これに限定されない。また、穴部と金属粉末体とは、一つであってもよい。
【0078】
[変形例5]
上述の実施形態では、一対の金属部材11、12は、いずれも接合される外面が曲面状に形成されるとした。しかしながら、一方だけが曲面状であってもよいし、両方とも曲面状でなくてもよい。
【0079】
[変形例6]
第1実施形態では、ろう材15は、金属粉末体14の延伸方向の一方の側面に隣接するように配置されているとした。しかしながら、ろう材15が配置される位置は、これに限定されない。
【0080】
図14は、第1実施形態のろう付固定方法の変形例を示す模式図である。
図14(a)に示すように、第1実施形態の変形例では、ろう材15は、金属粉末体14の延伸方向の両方の側面に隣接するように配置されている。ろう材15をこのように配置しても、一対の金属部材11、12の位置決めを行うことができるため、一対の金属部材11、12の高精度な位置決めを安価に行うことができる。また、
図14(a)に示すようにろう材15を配置することによって、金属粉末体14には、2つの方向から溶融したろう材15が含浸する。これにより、金属粉末体14にろう材15を均一に含浸させることができる。
【0081】
[変形例7]
第2実施形態では、ろう材25は、本体部11aの周方向において穴部13の一方の側に、穴部13に隣接するように配置されているとした。しかしながら、ろう材25は、本体部11aの周方向において穴部13の両方の側に、穴部13に隣接するように配置されてもよい。
【0082】
[変形例8]
第4実施形態では、ろう材15は、ベース部14aの、凸部44bが設けられている側とは反対側の、延伸方向の側面44eに隣接するように配置されているとした。しかしながら、ろう材15が配置される位置は、これに限定されない。
【0083】
図15は、第4実施形態のろう付固定方法の変形例を示す模式図である。
図15(a)に示すように、第4実施形態の変形例では、ろう材15は、ベース部14aの側面44eと、凸部44bのベース部14a側とは反対側の側面44fとに、隣接するように配置されている。ろう材15をこのように配置しても、一対の金属部材11、42の位置決めを行うことができるため、一対の金属部材11、42の高精度な位置決めを安価に行うことができる。また、
図15(a)に示すようにろう材15を配置することによって、金属粉末体44には、2つの方向から溶融したろう材15が含浸する。これにより、金属粉末体44に、ろう材15を均一に含浸させることができる。
【0084】
[変形例9]
第1、4~7実施形態では、ろう材は、金属粉末体が固定されている金属部材に設けられるとした。第2実施形態では、ろう材25は、穴部13が形成されている金属部材11に設けられるとした。しかしながら、ろう材は、金属部材と金属部材との両方に設けられてもよい。例えば、第6実施形態のように、ろう材が2つに分割されているとき、1つは、金属粉末体が固定されている金属部材に設けられ、もう一つは、穴部が形成されている金属部材に設けられてもよい。
【0085】
[変形例10]
第8実施形態と第9実施形態では、準備工程において、接合部材は、一方の金属部材に組みつけられるとした。しかしながら、接合部材の組み付け順序はこれに限らず、接合部材を他方の金属部材に組みつけてもよい。
【0086】
[変形例11]
第8実施形態と第9実施形態では、ろう材は、接合部材が有するとした。しかしながら、ろう材は、第3実施形態のように、固定工程において塗布してもよい。
【0087】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0088】
5…構造体
11、12、41、42、82…金属部材
11a、12a、82a…本体部
13、43、83…穴部
14、44…金属粉末体
14a、84a、94a…ベース部
14b、44b…凸部
15、25、35、55、65a、65b、75、85…ろう材
16、26、36、46、86、96…固定部
84、94…接合部材(金属粉末体)
84b…第1凸部
84c…第2凸部