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特許7140657伝送データ作成装置およびインクジェットプリンタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】伝送データ作成装置およびインクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/015 20060101AFI20220913BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/01 401
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018224915
(22)【出願日】2018-11-30
(65)【公開番号】P2020082667
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】萩森 普
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-024163(JP,A)
【文献】特開2014-194701(JP,A)
【文献】特開2005-176368(JP,A)
【文献】特開2008-279616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するインクヘッドを備えたプリンタにおいて、前記インクヘッドに伝送される印刷画像データである伝送印刷画像データと、前記インクヘッドに伝送されるクロックである伝送クロックとを有する伝送データを作成する伝送データ作成装置であって、
周期が同一の複数のパルスを有するクロックである基準クロック、および、前記基準クロックに対応した印刷画像データである基準印刷画像データが記憶された記憶部と、
周波数が所定の内部周波数である内部クロックと、
周波数が前記内部クロックの前記内部周波数よりも高い所定の第1周波数である時分割用クロックを、前記内部クロックに基づいて作成する時分割用クロック作成部と、
前記時分割用クロックの前記第1周波数に対応した半周期に基づいて、前記半周期、または、前記半周期を全周期としたときの前記全周期の半周期である全周半周期の間隔で前記基準クロックを分割することで、前記基準クロックを複数の分割クロックに分割する時分割部と、
前記複数の分割クロックから選択された1つの分割クロックを第1選択分割クロックとしたとき、前記第1選択分割クロックを削除した後の前記基準クロックを前記伝送クロックとする伝送クロック作成部と、
前記伝送クロック作成部によって作成された前記伝送クロックに対応するように、前記基準印刷画像データのデータレートを調整することで、前記伝送印刷画像データを作成する印刷画像データ作成部と、
を備えた、伝送データ作成装置。
【請求項2】
位相同期回路を備え、
前記時分割用クロック作成部は、前記位相同期回路を用いて前記内部クロックに基づいて、前記時分割用クロックを作成する、請求項1に記載された伝送データ作成装置。
【請求項3】
前記第1周波数は、前記内部周波数の1.5倍から5倍までの間の数値である、請求項1または2に記載された伝送データ作成装置。
【請求項4】
前記伝送クロック作成部は、前記時分割部によって分割された前記複数の分割クロックから選択された他の1つの分割クロックを第2選択分割クロックとしたとき、前記第2選択分割クロックの後に、前記第2選択分割クロックの後端の値が所定の挿入間隔の間、連続する新た分割クロックを挿入した後の前記基準クロックを前記伝送クロックとする、請求項1から3までの何れか1つに記載された伝送データ作成装置。
【請求項5】
前記挿入間隔は、前記第1周波数に対応した前記半周期、または、前記全周半周期の間隔と同じ数値である、請求項4に記載された伝送データ作成装置。
【請求項6】
前記伝送クロック作成部は、前記時分割部によって分割された前記複数の分割クロックから選択された他の1つの分割クロックを第3選択分割クロックとしたとき、前記第3選択分割クロックに対して何も処理を行わない、請求項1から5までの何れか1つに記載された伝送データ作成装置。
【請求項7】
前記記憶部には、周期が同一の複数のパルスを有するクロックである他の基準クロック、および、前記他の基準クロックに対応した印刷画像データである他の基準印刷画像データが記憶され、
前記時分割用クロック作成部は、さらに、周波数が前記第1周波数と異なる第2周波数である他の時分割用クロックを、前記内部クロックに基づいて作成し、
前記時分割部は、さらに、前記第2周波数に対応した半周期である第2半周期に基づいて、前記第2半周期、または、前記第2半周期を全周期としたときの半周期である第2全周半周期の間隔で前記他の基準クロックを分割することで、前記他の基準クロックを複数の他の分割クロックに分割し、
前記伝送クロック作成部は、さらに、前記複数の他の分割クロックから選択された1つの他の分割クロックを他の第1選択分割クロックとしたとき、前記他の第1選択分割クロックを削除した後の前記他の基準クロックを、前記インクヘッドとは異なる他のインクヘッドに伝送される他の伝送クロックとし、
前記印刷画像データ作成部は、前記伝送クロック作成部によって作成された前記他の伝送クロックに対応するように、前記他の基準印刷画像データのデータレートを調整することで、前記他のインクヘッドに伝送される他の伝送印刷画像データを作成する、請求項1から6までの何れか1つに記載された伝送データ作成装置。
【請求項8】
前記第2周波数は、前記内部周波数よりも高い、請求項7に記載された伝送データ作成装置。
【請求項9】
前記第1周波数および前記第2周波数は、前記第1周波数と前記第2周波数との公約数に、前記第1周波数が含まれず、かつ、前記第2周波数が含まれないような値である、請求項7または8に記載された伝送データ作成装置。
【請求項10】
前記第1周波数を、前記第1周波数と前記第2周波数との最大公約数で割ったときの値、および、前記第2周波数を、前記最大公約数で割ったときの値は、それぞれ3以上である、請求項7から9までの何れか1つに記載された伝送データ作成装置。
【請求項11】
請求項1から6までの何れか1つに記載された伝送データ作成装置と、
インクを吐出するインクヘッドと、
前記伝送クロック作成部によって作成された前記伝送クロック、および、前記印刷画像データ作成部によって作成された前記伝送印刷画像データを前記インクヘッドに伝送する伝送部と、
を備えた、インクジェットプリンタ。
【請求項12】
請求項7から10までの何れか1つに記載された伝送データ作成装置と、
インクを吐出するインクヘッドと、
前記インクヘッドと異なる他のインクヘッドと、
前記伝送クロック作成部によって作成された前記伝送クロック、および、前記印刷画像データ作成部によって作成された前記伝送印刷画像データを前記インクヘッドに伝送し、かつ、前記伝送クロック作成部によって作成された前記他の伝送クロック、および、前記印刷画像データ作成部によって作成された前記他の伝送印刷画像データを前記他のインクヘッドに伝送する伝送部と、
を備えた、インクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送データ作成装置およびインクジェットプリンタに関する。詳しくは、インクヘッドに伝送される伝送データであって、クロックと、クロックに対応した印刷画像データとを有する伝送データを作成する伝送データ作成装置、および、それを備えたインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、記録媒体を支持するプラテンなどの支持台と、記録媒体に向かってインクを吐出するインクヘッドと、インクヘッドにケーブルを介して電気的に接続された制御装置と、を備えたインクジェットプリンタが知られている。この種のインクジェットプリンタでは、制御装置からインクヘッドに向かって伝送データが伝送される。この伝送データには、例えば、クロック(言い換えると、クロック信号)、および、印刷対象である印刷画像をラスターデータに変換した印刷画像データが含まれる。
【0003】
この伝送データがインクヘッドに伝送される際、インクヘッドと制御装置を接続するケーブルには、高電流が流れる。その結果、ケーブルがアンテナとして作用することで、ケーブルから放射ノイズが発生することがあり得る。この放射ノイズは、周辺の機器に対して誤作動を起こさせる要因となる。
【0004】
そこで、放射ノイズの発生を抑制するために、例えば特許文献1には、複数のインクヘッドのそれぞれが備えた複数のノズルによって構成されたノズル列を複数のグループに分割し、分割したグループ毎に周波数の異なるクロックを作成する記録装置が開示されている。このことによって、放射ノイズのレベルが増大することを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-279616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された記録装置では、分割したグループ毎に特定の周波数が存在することになる。そのため、グループ毎における特定の周波数域において、放射ノイズが顕著に発生する。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、インクヘッドに伝送データを伝送する際に発生する放射ノイズのレベルが増大することを抑制することが可能な伝送データを作成する伝送データ作成装置およびインクジェットプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る伝送データ作成装置は、インクを吐出するインクヘッドを備えたプリンタにおいて、前記インクヘッドに伝送される印刷画像データである伝送印刷画像データと、前記インクヘッドに伝送されるクロックである伝送クロックとを有する伝送データを作成する伝送データ作成装置である。前記伝送データ作成装置は、記憶部と、内部クロックと、時分割用クロック作成部と、時分割部と、伝送クロック作成部と、印刷画像データ作成部と、を備えている。前記記憶部には、周期が同一の複数のパルスを有するクロックである基準クロック、および、前記基準クロックに対応した印刷画像データである基準印刷画像データが記憶されている。前記内部クロックにおいて、周波数が所定の内部周波数である。前記時分割用クロック作成部は、周波数が前記内部クロックの前記内部周波数よりも高い所定の第1周波数である時分割用クロックを、前記内部クロックに基づいて作成する。前記時分割部は、前記時分割用クロックの前記第1周波数に対応した半周期に基づいて、前記半周期、または、前記半周期を全周期としたときの前記全周期の半周期である全周半周期の間隔で前記基準クロックを分割することで、前記基準クロックを複数の分割クロックに分割する。前記伝送クロック作成部は、前記複数の分割クロックから選択された1つの分割クロックを第1選択分割クロックとしたとき、前記第1選択分割クロックを削除した後の前記基準クロックを前記伝送クロックとする。前記印刷画像データ作成部は、前記伝送クロック作成部によって作成された前記伝送クロックに対応するように、前記基準印刷画像データのデータレートを調整することで、前記伝送印刷画像データを作成する。
【0009】
前記伝送データ作成装置によれば、時分割用クロックの第1周波数は、内部クロックの内部周波数よりも高い。時分割部によって基準クロックを分割する際、時分割用クロックの第1周波数に対応した半周期、または、上記全周半周期の間隔で基準クロックを分割している。この第1周波数に対応した上記半周期、または、上記全周半周期は、周波数が高くなるほど短くなるため、上記半周期、または、上記全周半周期の間隔が短いほど、基準クロックの分割数を多くすることができる。また、前記伝送データ作成装置では、複数の分割クロックの中から選択された分割クロックを削除することで、削除した分割クロックが属するパルスの周期を短くしている。よって、パルス同士の周期を異ならせ易い。前記伝送データ作成装置では、例えば基準クロックを分割する際に、内部クロックを使用する場合と比較して、分割クロックの数が多い。そのため、削除することが可能な分割クロックの選択肢が多く、パルスの周期を様々な数値に設定することができるため、パルスの周期をより異ならせ易い。よって、特定の周波数を持たない伝送クロックを作成し易く、特定の周波数で放射ノイズのレベルが増大することを抑制することができる。したがって、発生する放射ノイズのレベルが増大することを抑制することが可能な伝送クロックを作成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、インクヘッドに伝送データを伝送する際に発生する放射ノイズのレベルが増大することを抑制することが可能な伝送データを作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係るインクジェットプリンタを示す斜視図である。
図2】インクジェットプリンタの内部構成を示す平面図である。
図3】インクヘッドの底面図である。
図4】インクジェットプリンタのブロック図である。
図5】基準印刷画像データと基準クロックのタイムチャートである。
図6】位相同期回路のブロック図である。
図7】伝送印刷画像データと伝送クロックのタイムチャートである。
図8】伝送データを作成する手順を示したフローチャートである。
図9】内部クロックと時分割用クロックを示すタイムチャートである。
図10】時分割をした状態を示す基準印刷画像データと基準クロックのタイムチャートである。
図11】第2実施形態に係る内部クロックおよび第1~第4時分割用クロックを示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0013】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るプリンタ100の斜視図である。以下の説明では、前、後、左、右、上、下とは、プリンタ100を正面から見たときの前、後、左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を意味する。ただし、上記方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ100の設置態様を何ら限定するものではない。また、図面中の符号Yは主走査方向を示している。ここでは、主走査方向Yは左右方向である。符号Xは副走査方向を示している。ここでは、副走査方向Xは、前後方向であり、主走査方向Yと平面視において直交している。ただし、主走査方向Yおよび副走査方向Xは、特に限定されず、プリンタ100の形態に応じて適宜に設定可能である。
【0014】
図1に示すように、プリンタ100は、インクジェット式のプリンタである。プリンタ100は、記録媒体5に印刷を行う。ここでは、記録媒体5はロール状の記録紙である。しかしながら、記録媒体5は、シート状の記録紙であってもよいし、樹脂製のシートであってもよい。また、記録媒体5は、可撓性を有するシートに限らず、ガラス基板などの材質が硬い媒体であってもよい。
【0015】
本実施形態では、プリンタ100は、ケーシングを有する本体10と、本体10の下部に設けられ、本体10を支持する脚11と、利用者が印刷に関する操作を行う操作パネル12と、本体10の上部に設けられたカバー15を備えている。カバー15の下方であって、本体10の前側には、記録媒体5を排出するための排出口13が形成されている。排出口13の前方かつ下方の位置には、排出口13から排出された記録媒体5を案内するガイド14が設けられている。
【0016】
図2は、プリンタ100の内部構成を示す平面図である。図3は、インクヘッド40の底面図である。図4は、プリンタ100のブロック図である。図2に示すように、プリンタ100は、ガイドレール20と、プラテン25と、第1移動機構51と、第2移動機構52と、キャリッジ30と、インクヘッド40(図3参照)と、制御装置55(図4参照)と、伝送データ作成装置60(図4参照)を備えている。ガイドレール20は、カバー15(図1参照)の下方に配置されている。ガイドレール20は主走査方向Yに延びている。
【0017】
プラテン25は、記録媒体5への印刷を行う際、記録媒体5を支持する。プラテン25には、記録媒体5が載置される。記録媒体5への印刷は、プラテン25上で行われる。本実施形態では、プラテン25は、主走査方向Yに延びており、ガイドレール20の中央部分の下方に配置されている。プラテン25は、ガイド14(図1参照)と連なっている。
【0018】
本実施形態では、プラテン25の主走査方向Y(ここでは、左右方向)の長さは、20インチ以上である。例えば、プラテン25の主走査方向Yの長さは、A0サイズの用紙の横幅(言い換えると、短辺の長さ)以上の長さである。ここで、A0サイズの用紙とは、寸法が841mm×1189mmであり、A0サイズの用紙の横幅は、841mmである。また、プラテン25の主走査方向Yの長さは、A1サイズの用紙の縦幅(言い換えると、長辺の長さ)以上の長さである。プラテン25の主走査方向Yの長さは、B1サイズの用紙の横幅以上の長さである。本実施形態では、プリンタ100の本体10の主走査方向Yの長さは、利用者の片腕の長さよりも長い。本体10の主走査方向Yの長さは、利用者が片腕を主走査方向Yに伸ばしたときにおける、利用者の目から片腕の指先までの長さよりも長い。プリンタ100は、家庭用のプリンタと比較すると、家庭用のプリンタよりも主走査方向Yに長い、いわゆる大型のプリンタである。プリンタ100は、業務用のプリンタである。
【0019】
第1移動機構51は、プラテン25に支持された記録媒体5を、インクヘッド40(図3参照)に対して副走査方向Xに移動させる機構である。本実施形態では、第1移動機構51は、上下一対のローラ26(以下、一対のローラ26という。)と、モータ27とを有している。なお、一対のローラ26において、図2では上側のローラ26が図示されており、下側のローラ26は省略されている。一対のローラ26の数および設置位置は特に限定されない。ここでは、一対のローラ26のうち、一方のローラ26はグリットローラである。グリットローラ26には、モータ27が接続されている。モータ27が駆動することで、グリットローラ26は回転する。一対のローラ26のうち、他方のローラ26は、上記グリットローラと共に記録媒体5を挟み込むためのピンチローラである。一対のローラ26で記録媒体5を挟みこんだ状態でモータ27が駆動することで、記録媒体5は副走査方向Xに搬送される。
【0020】
第2移動機構52は、プラテン25に支持された記録媒体5に対して、インクヘッド40(図3参照)を主走査方向Yに移動させる機構である。本実施形態では、第2移動機構52は、プーリ21と、プーリ22と、ベルト23と、モータ24とを有している。プーリ21は、ガイドレール20の右端部分に設けられ、プーリ22は、ガイドレール20の左端部分に設けられている。ベルト23は、無端状であり、プーリ21とプーリ22とに巻き掛けられている。なお、ベルト23は、無端状ではなく、両端部がプーリ21、22に固定される構成であってもよい。モータ24は、例えばプーリ21に接続されている。モータ24の駆動に伴いプーリ21が駆動することで、プーリ21とプーリ22との間においてベルト23が走行する。なお、第2移動機構52は、プーリ21と、プーリ22と、ベルト23を備えていなくてもよい。例えば、第2移動機構52は、シャフトと、シャフトに設けられた第1ギアと、第1ギアと噛み合う第2ギアなどを備えていてもよい。この場合、上記シャフトには、モータ24が接続されており、モータ24の駆動に伴い、上記第1ギアおよび上記第2ギアが回転する。
【0021】
本実施形態では、キャリッジ30は、ベルト23に取り付けられている。図示は省略するが、キャリッジ30は、ガイドレール20に係合している。キャリッジ30は、第2移動機構52によるベルト23の走行に従って、ガイドレール20に沿って主走査方向Yに移動する。
【0022】
インクヘッド40は、プラテン25に載置された記録媒体5に向かってインクを吐出するものである。図3に示すように、インクヘッド40は、キャリッジ30に搭載されている。インクヘッド40は、プラテン25(図2参照)よりも上方に配置され、キャリッジ30を介してガイドレール20(図2参照)にスライド自在に係合している。インクヘッド40は、第2移動機構52によってガイドレール20に沿って主走査方向Yに移動する。インクヘッド40の数は特に限定されない。本実施形態では、インクヘッド40の数は4つである。4つのインクヘッド40は、主走査方向Yに並んで配置されている。ここでは、4つのインクヘッド40を左から、第1インクヘッド41、第2インクヘッド42、第3インクヘッド43、第4インクヘッド44と称している。4つのインクヘッド40からそれぞれ異なる色のインクが吐出される。例えば、4つのインクヘッド40のそれぞれから、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのうち何れかの色のインクが吐出される。各インクヘッド40の底面には、副走査方向Xに並んだ複数のノズル46が形成されている。複数のノズル46からインクが吐出される。
【0023】
本実施形態では、インクヘッド40には、インクカートリッジ45(図2参照)が接続されている。ここでは、インクヘッド40とインクカートリッジ45とは、チューブ46(図2参照)を介して互いに接続されている。インクカートリッジ45には、インクヘッド40に供給するインク、すなわち、印刷の際に使用されるインクが収容されている。なお、インクカートリッジ45の設置位置は特に限定されない。例えば、図示は省略するが、インクカートリッジ45は、本体10の上面に取り外し可能に設けられている。なお、図示は省略するが、インクカートリッジ45とインクヘッド40の間には、圧力を制御するためのポンプ、および、ダンパーなどが設けられていてもよい。
【0024】
次に、制御装置55について説明する。図4に示すように、制御装置55は、印刷に関する制御を行う装置である。制御装置55は、マイクロコンピュータからなっており、本体10の内部に設けられている。制御装置55は、中央処理装置(CPU)と、CPUが実行するプログラムなどを格納したROMと、RAMなどを備えている。ここでは、上記マイクロコンピュータ内に保存されたプログラムを使用して、印刷に関する制御を行う。
【0025】
本実施形態では、制御装置55は、操作パネル12と、第1移動機構51のモータ27と、第2移動機構52のモータ24と、インクヘッド40と電気的に接続しており、操作パネル12、モータ27、モータ24、および、インクヘッド40をそれぞれ制御する。制御装置55は、操作パネル12から印刷に関する情報を受信する。制御装置55は、第1移動機構51のモータ27の駆動を制御して、グリットローラ26の回転を制御する。このことで、制御装置55は、プラテン25に支持された記録媒体5における副走査方向Xへの移動を制御する。制御装置55は、第2移動機構52のモータ24の駆動を制御することで、プーリ21の回転、および、ベルト23(図2参照)の走行を制御する。このことで、制御装置55は、インクヘッド40の主走査方向Yへの移動を制御する。制御装置55は、インクヘッド40からインクを吐出するタイミングを制御する。
【0026】
本実施形態では、制御装置55は、伝送部56を備えている。伝送部56は、後述する伝送クロックCS2(図7参照)、および、伝送印刷画像データPD2(図7参照)をインクヘッド40に伝送する。
【0027】
本実施形態に係るプリンタ100では、印刷画像データおよびクロック(言い換えると、クロック信号)がインクヘッド40に伝送される。印刷画像データとは、印刷対象の印刷画像であって、予め用意された印刷画像を、インクヘッド40に伝送する形式に変換したデータのことである。印刷画像データは、例えばラスターデータである。クロックは、印刷画像データと関連付けられた信号である。クロックは、インクヘッド40のノズル41からインクを吐出するタイミングを規定するものである。本実施形態では、印刷画像データとクロックとを併せて、伝送データという。図示は省略するが、インクヘッド40は、インクヘッド40に印加される電気エネルギーを圧力に変換する圧電素子を備えている。この圧電素子の構成は特に限定されない。本実施形態では、印刷画像データ、および、クロックがインクヘッド40に伝送されることで、インクヘッド40に電気エネルギーが印加される。インクヘッド40では、印加された電気エネルギーが適宜変更されて、上記圧電素子が膨張および収縮することで、電気エネルギーから変換された圧力が変化する。インクヘッド40では、上記圧電素子による膨張および収縮によって生じる変位に基づいて、ノズル46(図3参照)からインクが吐出される。
【0028】
図5は、印刷画像データPD1とクロックCS1のタイムチャートである。図5に示すように、クロックCS1は、複数のパルスP、P、・・・、Pが連続しているものであり、複数のパルスP、P、・・・、Pを有している。図5において、各パルスP、P、・・・、Pの周期であるパルス周期D11、D12、・・・D1nは、それぞれ同じである。
【0029】
ところで、図4に示すように、制御装置55とインクヘッド40とは、フレキシブルケーブルなどのケーブル53によって互いが接続されている。印刷画像データPD1およびクロックCS1は、このケーブル53を介してインクヘッド40に伝送される。印刷画像データPD1およびクロックCS1が伝送される際には、ケーブル53には電流が流れる。その結果、ケーブル53がアンテナとして作用することで、ケーブル53から放射ノイズが発生することがあり得る。従来において、図5に示すようなクロックCS1では、上述のように、各パルスP、P、・・・、Pのパルス周期D11、D12、・・・、D1nがそれぞれ同じであるため、クロックCS1は、特定の周波数を持っていた。そのため、図5のような印刷画像データPD1およびクロックCS1をインクヘッド40に伝送する際、特定の周波数域において、放射ノイズが顕著に発生していた。この放射ノイズは、プリンタ100の周辺の機器に誤作動を起こさせるおそれがある。そこで、本実施形態では、放射ノイズの発生を抑制するような伝送データ(詳しくは、印刷画像データおよびクロック)の作成を伝送データ作成装置60が行う。
【0030】
次に、伝送データ作成装置60について説明する。図4に示すように、伝送データ作成装置60は、プリンタ100に備えられている。伝送データ作成装置60は、印刷画像データとクロックとを有する伝送データを作成する装置である。ここでは、伝送データ作成装置60は、マイクロコンピュータからなっており、本体10の内部に設けられている。この場合、伝送データ作成装置60および制御装置55は、同じマイクロコンピュータによって実現されるものであってもよい。伝送データ作成装置60が本体10の内部に設けられている場合、例えば伝送データ作成装置60は、制御装置55に組み込まれたものである。なお、伝送データ作成装置60は、パーソナルコンピュータ内に設けられているものであってもよい。伝送データ作成装置60は、中央処理装置(CPU)と、CPUが実行するプログラムなどを格納したROMと、RAMなどを備えている。ここでは、上記マイクロコンピュータ内に保存されたプログラムを使用して、伝送データを作成する。
【0031】
本実施形態では、伝送データ作成装置60は、制御装置55と電気的に接続されている。例えば伝送データ作成装置60が本体10の内部に設けられている場合、伝送データ作成装置60は、制御装置55の一部として機能する。このように、伝送データ作成装置60が制御装置55の一部として機能している場合も、「伝送データ作成装置60が制御装置55と電気的に接続されている」場合に含まれるものとする。伝送データ作成装置60は、印刷画像データ、および、クロックを作成し、作成した印刷画像データ、および、クロックを制御装置55に送信する。なお、伝送データ作成装置60がパーソナルコンピュータ内に設けられている場合、印刷画像データは、パーソナルコンピュータで作成され、クロックは、制御装置55によって作成されてもよい。
【0032】
本実施形態では、伝送データ作成装置60は、内部クロックCS20と、位相同期回路65と、記憶部70と、基準印刷画像データ作成部71と、時分割用クロック作成部73と、時分割部75と、伝送クロック作成部77と、伝送印刷画像データ作成部78と、送信部79とを備えている。伝送印刷画像データ作成部78は、本発明の印刷画像データ作成部の一例である。この伝送データ作成装置60の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。例えば伝送データ作成装置60の各部は、プロセッサによって行われるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。
【0033】
内部クロックCS20は、マイクロコンピュータまたはプログラマブルゲートアレイのクロックのことであり、制御の基準となるクロックのことである。内部クロックCS20は、例えばシステムクロックのことである。この内部クロックCS20に基づいて、印刷に関する制御が行なわれる。本実施形態では、内部クロックCS20の周波数は、所定の内部周波数F20(図9参照)である。この内部周波数F20は、マイクロコンピュータまたはプログラマブルゲートアレイ毎に予め設定された周波数である。なお、内部周波数F20の具体的な値は特に限定されない。例えば内部周波数F20は、50MHzである。
【0034】
図6は、位相同期回路65の構成を示すブロック図である。位相同期回路65は、Phase Locked Loopであり、PLLと略されるものである。位相同期回路65は、入力される周期的な信号に基づいてフィードバック制御を加えて、発振器から位相が同期した信号を出力する電子回路のことである。本実施形態では、位相同期回路65は、内部クロックCS20の信号に基づいて、フィードバック制御を加えて、後述する時分割用クロックCS10(図9参照)を作成する。なお、位相同期回路65の構成は特に限定されず、従来の位相同期回路の構成を採用することが可能である。図6に示すように、例えば位相同期回路65は、位相比較器(PFD:Phase Frequency Detector)65aと、ループフィルタ65bと、発振器65cと、分周器65dとを有している。
【0035】
位相比較器65aは、内部クロックCS20と他の信号(例えば、分周器65dからの信号)を入力信号とし、互いの位相差を電圧に変換して出力する回路である。ループフィルタ65bは、例えばローパスフィルタであり、不要な短周期の変動を遮断するものである。ループフィルタ65bは、位相比較器65aに接続されている。発振器65cは、例えば電圧制御発振器(VCO:Voltage Controlled Oscillator)であり、位相比較器65aから出力された電圧によって出力周波数を制御する回路である。本実施形態では、発振器65cによって出力された出力周波数が時分割用クロックCS10の周波数となる。発振器65cは、ループフィルタ65bに接続されている。分周器65dは、発振器65cから出力された出力周波数を整数分の1にして出力するものである。分周器65dは、発振器65cと、位相比較器65aに接続されている。
【0036】
図7は、インクヘッド40に伝送される印刷画像データPD2と、クロックCS2のタイムチャートである。図8は、本実施形態に係る伝送データを作成する手順を示したフローチャートである。次に、図7に示すような印刷画像データPD2およびクロックCS2を作成する手順について、図8のフローチャートに沿って説明する。
【0037】
以下の説明において、インクヘッド40に伝送される印刷画像データPD2のことを「伝送印刷画像データ」と称し、インクヘッド40に伝送されるクロックCS2のことを「伝送クロック」と称する。本実施形態では、図7に示すように、伝送クロックCS2は、パルスP、P、・・・、Pのうち少なくとも一部のパルス周期D21、D22、・・・、D2nが異なるものである。例えば、図7の伝送クロックCS2では、パルス周期D2nは、パルス周期D21、D22とそれぞれ異なる。本実施形態では、インクヘッド40に伝送される伝送クロックCS2では、パルス周期(言い換えると、周波数)がランダムに変化している。換言すると、伝送クロックCS2の周波数には、周期性がない。
【0038】
ここでは、伝送クロックCS2および伝送印刷画像データPD2は、図5のクロックCS1および印刷画像データPD1からそれぞれ作成される。以下において、伝送クロックCS2を作成する際の基準となるクロックCS1のことを「基準クロック」と称する。また、伝送印刷画像データPD2を作成する際の基準となる印刷画像データPD1のことを「基準印刷画像データ」と称する。
【0039】
本実施形態では、4つのインクヘッド40(詳しくは、第1~第4インクヘッド41~44)が設けられているが、4つのインクヘッド40のそれぞれに対して、伝送クロックCS2および伝送印刷画像データPD2が伝送される。4つのインクヘッド40のそれぞれに伝送される伝送クロックCS2および伝送印刷画像データPD2を作成する手順は、同じである。そこで、以下の説明では、4つのインクヘッド40のうち1つのインクヘッド40に伝送される伝送クロックCS2および伝送印刷画像データPD2について説明する。
【0040】
本実施形態では、伝送クロックCS2および伝送印刷画像データPD2が作成される前において、記憶部70には、特定の周波数を持つ基準クロックCS1(詳しくは、基準クロックCS1の周波数)(図5参照)、および、印刷対象の画像である印刷画像(図示せず)が予め記憶されているものとする。この基準クロックCS1の周波数は、4つのインクヘッド40において共通の周波数である。各インクヘッド40に対して異なる基準クロックCS1が設けられていてもよいし、共通の基準クロックCS1が設けられていてもよい。
【0041】
まず、図8のステップS101では、利用者によって印刷指示が行われる。例えば、利用者が操作パネル12(図1参照)に表示された印刷開始ボタン(図示せず)を操作することで、操作パネル12から制御装置55に印刷ジョブが送信される。そして、制御装置55は、印刷ジョブを受信することで、印刷指示が行われたことを認識する。このとき、制御装置55は、伝送データ作成装置60に、伝送データを作成させるための指示信号を送信する。伝送データ作成装置60は、上記指示信号を受信することで、伝送データである伝送クロックCS2および伝送印刷画像データPD2の作成を開始する。
【0042】
次に、図8のステップS103では、基準印刷画像データ作成部71は、図5に示すような基準印刷画像データPD1を作成する。ここでは、基準印刷画像データ作成部71は、記憶部70に記憶された印刷画像から、基準印刷画像データPD1を作成する。基準印刷画像データPD1は、ラスターデータをインクヘッド40に送るために最適化したデータである。基準印刷画像データPD1は、インクヘッド40に伝送される伝送印刷画像データPD2(図7参照)を作成する基準となるデータである。なお、ステップS103において作成された基準印刷画像データPD1は、図5に示すような特定の周波数を持つ基準クロックCS1と関連付けられている。ステップS103において、作成された基準印刷画像データPD1は、記憶部70に記憶される。
【0043】
図9は、内部クロックCS20および時分割用クロックCS10を示すタイムチャートである。次に、図8のステップS105では、時分割用クロック作成部73は、伝送クロックCS2および伝送印刷画像データPD2を作成する際に用いられる時分割用クロックCS10(図9参照)を作成する。本実施形態では、時分割用クロックCS10は、内部クロックCS20に基づいて作成されるものである。時分割用クロック作成部73は、内部クロックCS20を入力信号として、位相同期回路65(図6参照)を用いることで時分割用クロックCS10を作成する。
【0044】
本実施形態では、図9に示すように、内部クロックCS20は、複数のパルスPL20を有している。時分割用クロックCS10は、複数のパルスPL10を有している。上述のように、内部クロックCS20の周波数は、所定の内部周波数F20である。時分割用クロックCS10の周波数は、所定の時分割周波数F10である。時分割周波数F10は、本発明の第1周波数の一例である。時分割周波数F10は、内部周波数F20よりも高い周波数である。ここでは、時分割周波数F10は、例えば内部周波数F20の1.5倍から5倍までの間の数値である。例えば内部周波数F20は、50MHzである。例えば時分割周波数F10は、100MHzまたは200MHzである。そのため、時分割用クロックCS10のパルスPL10のパルス周期PC10は、内部クロックCS20のパルスPL20のパルス周期PC20よりも短い。パルス周期PC10は、時分割周波数F10に対応した周期であり、時分割周波数F10の逆数で表される。ここでは、時分割用クロックCS10のパルス周期PC10の半分の周期、すなわち、パルスPL10の立ち上がりから立ち下がりまでの周期、および、パルスPL10の立ち下がりから立ち上がりまでの周期のことを、半周期PC10aという。
【0045】
次に、図8のステップS107では、時分割部75は、基準クロックCS1(図5参照)と、基準クロックCS1に関連付けられた基準印刷画像データPD1(図5参照)に対して時分割を行う。図10は、時分割をした状態を示す基準印刷画像データPD1と基準クロックCS1のタイムチャートである。本実施形態では、図10に示すように、時分割部75は、時分割用クロックCS10の時分割周波数F10に対応した半周期PC10aの間隔(以下、単に間隔PC10aともいう。)で基準クロックCS1および基準印刷画像データPD1を分割している。ここでは、時分割部75は、時分割用クロックCS10のパルスPL10の立ち上がるタイミング、および、パルスPL10の立ち下がるタイミングで、基準クロックCS1および基準印刷画像データPD1を分割している。
【0046】
なお、本実施形態では、時分割部75は、上述のように時分割用クロックCS10の時分割周波数F10に対応した半周期PC10aの間隔で基準クロックCS1および基準印刷画像データPD1を分割している。しかしながら、時分割部75は、時分割周波数F10に対応した半周期PC10aを全周期としたときの半周期(ここでは、全周半周期という。)の間隔で基準クロックCS1を分割してもよい。ここで、上記全周半周期とは、半周期PC10aを2分割したものであり、全周半周期の間隔とは、間隔PC10aの2分の1である。すなわち、上記全周半周期とは、時分割用クロックCS10の時分割周波数F10の2倍の周波数に対応した半周期であると言える。よって、上記全周半周期の間隔で分割した場合には、間隔PC10aで分割した場合と比較して、分割数をより多くすることができる。
【0047】
なお、本実施形態では、時分割部75によって時分割された後の個々のクロックのことを分割クロックDC、DC、・・・DCと称する。すなわち、時分割部75は、基準クロックCS1を複数の分割クロックDC、DC、・・・DCに分割するように、間隔PC10aで時分割を行う。なお、図10では、説明の便宜上、半周期(間隔)PC10aを実際よりも長く表現している。ただし、実際には、半周期PC10aは短く設定されており、基準クロックCS1の分割数は図10の分割数よりも多い。
【0048】
次に、図8のステップS109では、伝送クロック作成部77は、インクヘッド40に伝送する伝送クロックCS2(図7参照)を作成する。具体的には、伝送クロック作成部77は、ステップS107において時分割部75によって分割された各分割クロックDC、DC、・・・DCに対して、1つの分割クロックを選択し、選択した分割クロックに対して、以下の処理A、処理Bおよび処理Cの何れかの処理をランダムに行う。
処理A:選択した分割クロックを削除する。
処理B:選択した分割クロックの直後に、新たな分割クロックを挿入する。
処理C:処理Aおよび処理Bの何れの処理も行わない。
【0049】
ここで、処理Aでは、例えば図10において、伝送クロック作成部77は分割クロックDCを選択する。そして、伝送クロック作成部77は、選択した分割クロックDC、および、選択した分割クロックDCに対応する基準印刷画像データPD1の部分に、値が切り替わる部分があるか否かを判定する。値が切り替わる部分がない場合、伝送クロック作成部77は、図7に示すように、選択した分割クロックDCを削除する。このことによって、削除した分割クロックDCが属するパルスPのパルス周期が周期D1n図10参照)から周期D2nになる。
【0050】
なお、例えば、伝送クロック作成部77が分割クロックDCを選択した場合、分割クロックDCには、時間T12において値が切り替わる部分が存在する。この場合、伝送クロック作成部77は、分割クロックDCを削除することができないと判定し、分割クロックDCに対して処理Aを行わない。同様に、例えば、分割クロックDCにおいて、分割クロックDCに対応する基準印刷画像データPD1の部分には、時間T21において値が切り替わる部分が存在する。よって、選択した分割クロックが分割クロックDCである場合、伝送クロック作成部77は、分割クロックDCを削除することができないと判定し、分割クロックDCに対して処理Aを行わない。なお、本実施形態では、処理Aにおいて選択された分割クロックは、本発明の「第1選択分割クロック」に対応する。
【0051】
処理Bでは、例えば図10において、伝送クロック作成部77は分割クロックDCを選択する。そして、伝送クロック作成部77は、図7に示すように、選択した分割クロックDCの直後に、新たな分割クロックDC1’を挿入する。このことで、選択した分割クロックDCが属するパルスPのパルス周期が周期D11図10参照)から周期D21になる。ここで、新たな分割クロックDC1’とは、選択した分割クロックDCの後端の値を間隔PC10a(言い換えると、時分割用クロックCS10のパルスPL10の半周期PC10a)の間、連続するようなクロックである。新たな分割クロックDC1‘の間隔である挿入間隔PC10bは、間隔PC10aと同じ数値である。言い換えると、処理Bにおいて、伝送クロック作成部77は、選択した分割クロックDCの後端の値が間隔PC10aの間、さらに連続するように、選択した分割クロックDCを延長させる。
【0052】
なお、図7では、伝送クロック作成部77は、分割クロックDCおよび分割クロックDCを選択し、選択した分割クロックDCおよび分割クロックDCの直後に、新たな分割クロックDC6’、および、新たな分割クロックDC7’を挿入している。本実施形態では、処理Bにおいて選択された分割クロックは、本発明の「第2選択分割クロック」に対応する。
【0053】
処理Cでは、例えば図10において、伝送クロック作成部77は、分割クロックDCを選択する。そして、伝送クロック作成部77は、選択した分割クロックDCに対して、処理Aおよび処理Bの何れの処理を行わない。すなわち、処理Cにおいて、伝送クロック作成部77は、選択した分割クロックDCに対して、何も処理を行わない。なお、本実施形態では、処理Cにおいて選択された分割クロックは、本発明の「第3選択分割クロック」に対応する。
【0054】
本実施形態では、ステップS109において、伝送クロック作成部77は、ステップS107において時分割が行われた後の分割クロックに対して、上述した処理A、処理Bおよび処理Cの何れかの処理をランダムで行う。そのため、連続した分割クロックに対して、処理A、処理Bおよび処理Cのうち何れかの処理が連続して行われてもよい。例えば図10では、連続した分割クロックDCおよび分割クロックDCに対して、処理Bが行われている。
【0055】
図8のステップS109において、伝送クロック作成部77によって、図7に示すような伝送クロックCS2を作成した後、ステップS111では、伝送印刷画像データ作成部78は、ステップS109で作成された伝送クロックCS2のパルスP、P、・・・、Pに対応するように、図5の基準印刷画像データPD1から図7の伝送印刷画像データPD2を作成する。ここでは、伝送印刷画像データ作成部78は、例えば処理Aが行われた分割クロックDCおよびDCに対応する基準印刷画像データPD1の部分では、データレート(以下、レートともいう。)を短くする。伝送印刷画像データ作成部78は、例えば処理Bが行われた分割クロックDC、DC、DCに対応する基準印刷画像データPD1の部分では、レートを長くする。また、伝送印刷画像データ作成部78は、例えば処理Cが行われた分割クロックに対応する基準印刷画像データPD1の部分では、何も処理を行わない。このようにして、図7に示すように、伝送クロックCS2のパルスP、P、・・・、Pに対応するように、基準印刷画像データPD1のレートを調整することで、伝送印刷画像データPD2が作成される。
【0056】
次に、ステップS113では、送信部79は、ステップS109において伝送クロック作成部77によって作成された伝送クロックCS2(図7参照)、および、ステップS111において伝送印刷画像データ作成部78によって作成された伝送印刷画像データPD2(図7参照)を制御装置55(図4参照)に送信する。そして、伝送クロックCS2および伝送印刷画像データPD2を制御装置55が受信した後、制御装置55の伝送部56は、伝送クロックCS2および伝送印刷画像データPD2をインクヘッド40に伝送する。このことで、インクヘッド40は、伝送された伝送クロックCS2および伝送印刷画像データPD2に基づいて、プラテン25に支持された記録媒体5にインクを吐出する。なお、伝送データ作成装置60が制御装置55に組み込まれている場合、送信部79から制御装置55へ伝送クロックCS2および伝送印刷画像データPD2を送信することは、省略されてもよい。この場合、例えば送信部79は、制御装置55を介さずに、伝送クロックCS2および伝送印刷画像データPD2をインクヘッド40に直接伝送する。
【0057】
上述のように、図7に示す伝送クロックCS2および伝送印刷画像データPD2は、複数のインクヘッド40のそれぞれに対して作成される。すなわち、各インクヘッド40に対して、図8のステップS107~S113の各処理が行われる。各インクヘッド40の伝送クロックCS2では、各パルスP、P、・・・、Pのパルス周期D21、D22、・・・、D2nが異なることがあり得る。
【0058】
以上、本実施形態では、図9に示すように、時分割用クロックCS10の時分割周波数F10は、内部クロックCS20の内部周波数F20よりも高い。図10に示すように、時分割部75によって基準クロックCS1を分割する際、時分割用クロックCS10の所定の時分割周波数F10に対応した半周期の間隔PC10aで基準クロックCS1を分割している。この間隔PC10aは、周波数が高いほど短くなるため、間隔PC10aが短いほど、基準クロックCS1の分割数(言い換えると、分割クロックの数)を多くすることができる。また、本実施形態では、例えば複数の分割クロックの中から選択された分割クロックDCを削除することで、図7に示すように、削除した分割クロックDCが属するパルスPの周期D2nを短くしている。よって、パルスPの周期D2nを他のパルスの周期と異ならせることができる。本実施形態では、例えば基準クロックCS1を分割する際に、内部クロックCS20を使用する場合と比較して、分割クロックの数が多い。そのため、削除することが可能な分割クロックの選択肢が多く、パルスP、P、・・・、Pの周期を様々な数値に設定することができるため、パルスP、P、・・・、Pの周期をより異ならせ易い。よって、特定の周波数を持たない伝送クロックCS2を作成し易く、特定の周波数で放射ノイズのレベルが増大することを抑制することができる。したがって、本実施形態では、発生する放射ノイズのレベルが増大することを抑制することが可能な伝送クロックCS2を作成することができる。
【0059】
本実施形態では、時分割用クロック作成部73は、位相同期回路65(図6参照)を用いて内部クロックCS20に基づいて、時分割用クロックCS10を作成している。このように、位相同期回路65を用いることで、内部クロックCS20から時分割用クロックCS10を作成し易い。
【0060】
本実施形態では、時分割用クロックCS10の時分割周波数F10は、内部クロックCS20の内部周波数F20の1.5倍から5倍までの間の数値である。このことによって、内部クロックCS20を使用する場合と比較して、分割クロックの数を確実に多くすることができる。よって、特定の周波数を持たない伝送クロックCS2を作成し易く、特定の周波数で放射ノイズのレベルが増大することを抑制することができる。
【0061】
本実施形態では、伝送クロック作成部77は、例えば、複数の分割クロックDC、DC、・・・、DCから選択された分割クロックDCの後に、図7に示すように、分割クロックDCの後端の値が、時分割用クロックCS10の半周期に対応した間隔PC10aの間、連続する新たな分割クロックDC1’を挿入する。このように、本実施形態では、選択した分割クロックDCの後、すなわち、分割クロックDCと分割クロックDCとの間に、新たな分割クロックDC1’を挿入することで、分割クロックDCが属するパルスPのパルス周期D21を長くすることができる。よって、パルスPのパルス周期D21を他のパルスのパルス周期と異ならせることができるため、特定の周波数を持たない伝送クロックCS2を作成することができる。
【0062】
本実施形態では、新たな分割クロックDC1’の間隔である挿入間隔PC10b(図7参照)は、時分割用クロックCS10の時分割周波数F10に対応した半周期PC10aの間隔、すなわち、時分割部75によって分割された分割クロックの間隔PC10aと同じ数値である。このように、挿入間隔PC10bと、間隔PC10aを同じにすることによって、処理が複雑になることを抑制するとともに、処理時間を短くすることができる。
【0063】
本実施形態では、伝送クロック作成部77は、例えば図10において、複数の分割クロックDC、DC、・・・、DCから選択された分割クロックDCに対して何も処理を行わない。仮に、全ての分割クロックDC、DC、・・・、DCに対して、処理Aであって、選択した分割クロックを削除する処理、および、処理Bであって、新たな分割クロックを挿入する処理の何れかの処理を行う場合、処理時間が長くなる。しかしながら、例えば、選択した分割クロックDCに対して何も処理を行わない処理Cがあることで、処理時間を短縮することができる。また、各分割クロックDC、DC、・・・、DCに対して、処理A~処理Cの3種類の処理の何れかの処理が行われるため、処理Aおよび処理Bの処理の何れかが行われる場合と比較して、パルス周期D21、D22、・・・、D2nが互いに異なり易い。したがって、放射ノイズがより分散されるような伝送クロックCS2を作成し易い。
【0064】
本実施形態では、プリンタ100は、いわゆる、大型のプリンタである。ここでは、プラテン25の主走査方向Yの長さは、20インチ以上である。大型のプリンタである程、高い電流がインクヘッド40に向かって流れるため、放射ノイズが発生し易い。しかしながら、本実施形態では、伝送データ作成装置60によって、各インクヘッド40に対して、特定の周波数を持たない伝送クロックCS2が作成される。よって、大型のプリンタであっても、発生する放射ノイズのレベルが増大することを抑制することができる。したがって、このような伝送クロックCS2を作成することは、大型のプリンタに対して特に有用である。
【0065】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の各実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。次に、他の実施形態について簡単に説明する。なお、以下の説明では、既に説明した構成と同様の構成には同じ符号を使用し、その説明は適宜省略する。
【0066】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係るプリンタについて説明する。第1実施形態では、4つのインクヘッド40にそれぞれ伝送される伝送クロックCS2および伝送印刷画像データPD2を作成する際に用いられた時分割用クロックCS10は、共通した周波数のクロックであった。そのため、同じ周波数の時分割用クロックCS10に基づいて、各インクヘッド40に対する基準クロックCS1を分割していた。しかしながら、第2実施形態では、各インクヘッド40に伝送される伝送クロックCS2および伝送印刷画像データPD2を作成する際に、基準クロックCS1を分割するときに用いられる時分割用クロックにおいて、少なくとも一部の時分割用クロックの周波数が他の時分割用クロックの周波数と異なっていてもよい。
【0067】
以下の説明では、図3に示すように、4つのインクヘッド40をそれぞれ第1インクヘッド41、第2インクヘッド42、第3インクヘッド43、および、第4インクヘッド44と称することとする。図11は、第2実施形態に係る内部クロックCS20、および、第1~第4時分割用クロックCS11~CS14を示すタイムチャートである。本実施形態では、時分割用クロック作成部73は、図11に示すように、内部クロックCS20に基づいて、第1時分割用クロックCS11、第2時分割用クロックCS12、第3時分割用クロックCS13および第4時分割用クロックCS14の4つのクロックを作成する。例えば第2時分割用クロックCS12が本発明の「他の時分割用クロック」の一例である。ここで、時分割用クロックCS11、CS12、CS13、CS14は、それぞれインクヘッド41、42、43、44に伝送される伝送クロックCS2および伝送印刷画像データPD2を作成するときの基準クロックCS1の時分割の際に用いられるクロックである。
【0068】
ここで、時分割用クロックCS11、CS12、CS13、CS14の周波数を、それぞれ第1周波数F11、第2周波数F12、第3周波数F13、第4周波数F14とする。第1~第4周波数F11~F14は、内部クロックCS20の周波数である内部周波数F20よりも高い。言い換えると、第1~第4周波数F11~F14にそれぞれ対応したパルス周期PC11~PC14は、内部周波数F20に対応したパルス周期PC20よりも短い。本実施形態では、第1~第4周波数F11~F14のうち、少なくとも1つの周波数は、他の周波数と異なる数値である。例えば、本実施形態のように第1~第4周波数F11~F14は、それぞれ異なる数値であってもよい。例えば、第1周波数F11と第2周波数F12が同じ数値であり、第3周波数F13および第4周波数F14は、互いが異なる数値であり、かつ、第1周波数F11と異なる数値であってもよい。
【0069】
例えば第1周波数F11と第2周波数F12との数値が異なる場合、第1周波数F11および第2周波数F12は、第1周波数F11と第2周波数F12との公約数に、第1周波数F11および第2周波数F12の両方の数値が含まれないような数値であるとよい。例えば、第1周波数F11が50MHzであり、第2周波数F12が200MHzである場合(以下、「第1の場合」という。)、第1周波数F11と第2周波数F12との公約数(ここでは、最大公約数)に、50が含まれる。上記第1の場合、第1周波数F11で生成可能なデータレートの全てが第2周波数F12で生成可能なデータレートとなる。このように、第1周波数F11で生成されるデータレートが、第2周波数F12で生成されることを「データレートの被り」という。上記第1の場合、第1周波数F11で生成されるデータレートの全てに対して、第2周波数F12に対するデータレートの被りが発生する。
【0070】
一方、例えば、第1周波数F11が120MHzであり、第2周波数F12が200MHzである場合(以下、第2の場合)、第1周波数F11と第2周波数F12との公約数には、120および200の両方の数値が含まれない。上記第2の場合、第1周波数F11で生成可能なデータレートの中に、第2周波数F12で生成されるデータレートに含まれないデータレートが存在する。そのため、例えば第2周波数F12が200MHzのとき、第1周波数F11は50MHzよりも120MHzの方が好ましい。第1周波数F11と第2周波数F12との数値が異なる場合、第1周波数F11および第2周波数F12を、第1周波数F11と第2周波数F12との公約数に、第1周波数F11が含まれず、かつ、第2周波数F12が含まれないような値にすることで、第1インクヘッド41用の伝送データ作成時の時分割のタイミングと、第2インクヘッド42用の伝送データ作成時の時分割のタイミングとを異ならせ易い。
【0071】
また、本実施形態では、例えば第1周波数F11を、第1周波数F11と第2周波数F12との最大公約数(以下、単に「最大公約数」という。)で割ったときの値、および、第2周波数F12を上記最大公約数で割ったときの値は、比較的に大きい方が好ましい。最大公約数で割った値xは、その周波数で生成され得るデータレートを降順(または昇順)に並べたときに、(x-1)個置きにデータレートの被りが発生することを意味する。例えば最大公約数で割った値が「3」である場合、その周波数で生成され得るデータレートを降順に並べたときに、2つ置きにデータレートの被りが発生する。そのため、最大公約数で割った値が大きいほど、2つの周波数の間において、データレートの被りが少なくなる。
【0072】
例えば、上記第1の場合のように、第1周波数F11が50MHzであり、第2周波数F12が200MHzの場合、最大公約数は50となり、第1周波数F11および第2周波数F12を最大公約数(ここでは50)で割ったときの値は、それぞれ1および4となる。上記第2の場合のように、第1周波数F11が120MHzであり、第2周波数F12が200MHzの場合、最大公約数は40となり、第1周波数F11および第2周波数F12を最大公約数(ここでは40)で割ったときの値は、それぞれ3および5となる。例えば、第1周波数F11が110MHzであり、第2周波数F12が200MHzの場合(以下、第3の場合という。)、最大公約数は10となり、第1周波数F11および第2周波数F12を最大公約数(ここでは10)で割ったときの値は、それぞれ11および20となる。第1~第3の場合のうち、最大公約数で割ったときの値が最も大きい第3の場合の周波数の組み合わせが、データレートの被りの発生が少なくなる組み合わせとなる。本実施形態では、第1周波数F11を最大公約数で割ったときの値、および、第2周波数F12を最大公約数で割ったときの値は、例えばそれぞれ3以上であることが好ましい。上記第1~第3の場合、第1の場合の周波数の組み合わせよりも、第2の場合の周波数の組み合わせのほうが好ましく、第3の場合の周波数の組み合わせのほうが更に好ましい。
【0073】
なお、上記では、第1周波数F11と第2周波数F12における公約数に関する関係について記載しているが、第1~第4周波数F11~F14の他の2つの周波数における公約数に関するについても、上記と同じことが言える。
【0074】
本実施形態では、記憶部70には、インクヘッド41~44のそれぞれに対する基準クロックCS1の周波数が記憶されている。これら基準クロックCS1は、インクヘッド41~44に対して全て同じものでもあってもよいし、少なくとも一部が異なるものであってもよい。
【0075】
時分割部75は、第1インクヘッド41用の基準クロックCS1および基準印刷画像データPD1を、第1時分割用クロックCS11の第1周波数F11に対応した半周期PC11aの間隔で分割する。同様に、時分割部75は、第2インクヘッド42用の基準クロックCS1および基準印刷画像データPD1を、第2時分割用クロックCS12の第2周波数F12に対応した半周期PC12aの間隔で分割し、第3インクヘッド43用の基準クロックCS1および基準印刷画像データPD1を、第3時分割用クロックCS13の第3周波数F13に対応した半周期PC13aの間隔で分割する。また、時分割部75は、第4インクヘッド44用の基準クロックCS1および基準印刷画像データPD1を、第4時分割用クロックCS14の第4周波数F14に対応した半周期PC14aの間隔で分割する。
【0076】
なお、本実施形態において、伝送クロック作成部77および伝送印刷画像データ作成部78の制御は、第1実施形態と実質的に同じである。伝送クロック作成部77は、時分割部75によって分割された各基準クロックCS1であって、各インクヘッド41~44用の基準クロックCS1の分割クロックに対して、上述した処理A~Cの何れかの処理をランダムに行う。このことで、伝送クロック作成部77は、各インクヘッド41~44用の伝送クロックCS2をそれぞれ作成する。本実施形態では、伝送クロック作成部77は、4つの伝送クロックCS2を作成する。
【0077】
伝送印刷画像データ作成部78は、各インクヘッド41~44用の伝送クロックCS2に対応するように、各インクヘッド41~44の基準印刷画像データPD1のデータレートを調整することで、各インクヘッド41~44用の伝送印刷画像データPD2を作成する。
【0078】
以上、本実施形態では、各インクヘッド41~44用の伝送データを作成する際、基準クロックCS1を時分割する際の基準となる第1~第4時分割用クロックCS11~CS14の第1~第4周波数F11~F14の少なくとも何れかの周波数が、他の周波数と数値が異なる。このことによって、各インクヘッド41~44用の基準クロックCS1に対して分割されるタイミングを異ならせ易い。そのため、各インクヘッド41~44の伝送クロックCS2において、パルス周期を異ならせ易い。よって、各インクヘッド41~44間において伝送データを伝送する際、同じタイミングで放射ノイズを発生させ難くすることができるため、放射ノイズのレベルが増大することを抑制することができる。
【0079】
本実施形態では、第1~第4周波数F11~F14は、内部周波数F20よりも高い。このことによって、基準クロックCS1を分割する際、分割する間隔を短くすることができ、基準クロックCS1の分割数(言い換えると、分割クロックの数)を多くすることができる。分割クロックの数が多いため、処理A~Cの何れかを行うタイミングが多くなり、パルスの周期を様々な数値に設定することができる。よって、パルスの間隔を異ならせ易い。したがって、特定の周波数を持たない伝送クロックCS2を作成し易く、特定の周波数で放射ノイズのレベルが増大することを抑制することができる。
【0080】
第1周波数F11と第2周波数F12とが異なり、仮に第1周波数F11と第2周波数F12との公約数に、第1周波数F11が含まれる場合、第1時分割用クロックCS11の第1周波数F11に対応した半周期PC11aの間隔で分割したときの分割されるタイミングは、第2時分割用クロックCS12の第2周波数F12に対応した半周期PC12aの間隔で分割したときの分割されるタイミングと少なくとも同じになる。よって、この場合、放射のノイズが発生するタイミングが同じになり易い。しかしながら、本実施形態では、例えば第1周波数F11および第2周波数F12は、第1周波数F11と第2周波数F12との公約数に、第1周波数F11が含まれず、かつ、第2周波数F12が含まれないような数値である。よって、この場合、第1時分割用クロックCS11の第1周波数F11に対応した半周期PC11aの間隔で分割したときの分割されるタイミングと、第2時分割用クロックCS12の第2周波数F12に対応した半周期PC12aの間隔で分割したときの分割されるタイミングとを異ならせ易い。したがって、放射ノイズが発生するタイミングが同じになり難い。
【0081】
本実施形態では、第1周波数F11を、第1周波数F11と第2周波数F12との最大公約数で割ったときの値、および、第2周波数F12を、第1周波数F11と第2周波数F12との最大公約数で割ったときの値は、それぞれ3以上である。このように、最大公約数で割ったときの値を大きくすることで、2つの周波数(例えば、第1周波数F11と第2周波数F12)の間において、上記のようなデータレートの被りを少なくすることができる。データレートの被りを少なくすることで、同じタイミングで放射ノイズを発生させ難くすることができるため、放射ノイズのレベルが増大することを抑制することができる。
【0082】
上記各実施形態では、プリンタ100は、いわゆるロールtoロール型のプリンタであった。そのため、上記各実施形態では、プラテン25上の記録媒体5がプラテン25に対して副走査方向Xに移動するように構成されていた。しかしながら、本発明は、いわゆるフラットベッド型のプリンタに適用することが可能である。この場合、記録媒体はフラットベッド(言い換えると、テーブル)に支持される。この場合、上記フラットベッドが副走査方向Xに移動することに伴い、上記フラットベッドに支持された記録媒体5は副走査方向Xに移動する。
【符号の説明】
【0083】
40 インクヘッド
60 伝送データ作成装置
65 位相同期回路(PLL)
70 記憶部
73 時分割用クロック作成部
75 時分割部
77 伝送クロック作成部
78 伝送印刷画像データ作成部(印刷画像データ作成部)
100 プリンタ(インクジェットプリンタ)
CS1 基準クロック
CS2 伝送クロック
CS10 時分割用クロック
CS20 内部クロック
図1
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