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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】ストラットマウント
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/54 20060101AFI20220913BHJP
   F16F 1/38 20060101ALI20220913BHJP
   B60G 11/16 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
F16F9/54
F16F1/38 H
B60G11/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018227632
(22)【出願日】2018-12-04
(65)【公開番号】P2020090981
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】522297236
【氏名又は名称】株式会社プロスパイラ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】大津 一高
(72)【発明者】
【氏名】橋本 武蔵
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-206636(JP,A)
【文献】特開2006-281827(JP,A)
【文献】特開平09-014327(JP,A)
【文献】特開昭58-077945(JP,A)
【文献】特開昭56-167507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/54
F16F 1/38
B60G 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側にショックアブソーバのロッドの上端部が差し込まれて固定される環状の内側部材と、
前記内側部材を、その中心軸線回りに沿う周方向に囲い車体側に取付けられる外側部材と、
前記内側部材と前記外側部材との間に配設され、前記内側部材および前記外側部材を相対的に弾性変位可能に支持する本体ゴムと、を備え、
前記本体ゴムに、前記中心軸線に沿う軸方向の外側に向けて突出したストッパゴムが配設され、
前記外側部材は、前記ストッパゴムを前記軸方向の外側から覆う支持部を備え、
前記ストッパゴムは、
前記内側部材から前記軸方向の外側に向けて突出した台座突部と、
前記台座突部から前記軸方向の外側に向けて突出するとともに、前記支持部に当接し、前記台座突部より前記軸方向のばねが軟らかい先端突部と、を備え、
前記台座突部、および前記先端突部は、前記軸方向の外側に向けて尖り、
前記台座突部は、
径方向の内端部に位置し、前記内側部材側から前記軸方向の外側に向けて延びる内側面と、
前記内側面における前記軸方向の外端部から径方向の外側に向かうに従い漸次、前記軸方向の内側に向けて延びる外側面と、を備え、
前記外側面の、前記中心軸線に直交する水平線に対する傾斜角度が、前記内側面の前記傾斜角度より小さく、
前記先端突部は、前記外側面に配設されている、ストラットマウント。
【請求項2】
前記台座突部は周方向に延び、
前記先端突部は、前記台座突部における周方向の両端部に配設されている、請求項1に記載のストラットマウント。
【請求項3】
前記台座突部は周方向に延び、
前記台座突部における周方向の中間部に、前記軸方向の内側に向けて窪み、かつ径方向に貫く窪み部が形成されている、請求項1または2に記載のストラットマウント。
【請求項4】
前記先端突部は、周方向に間隔をあけて複数配設されるとともに、前記外側面において、径方向の内端部より径方向の外側に位置する部分に配設されている、請求項1から3のいずれか1項に記載のストラットマウント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストラットマウントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内側にショックアブソーバのロッドの上端部が差し込まれて固定される環状の内側部材と、内側部材を、その中心軸線回りに沿う周方向に囲い車体側に取付けられる外側部材と、内側部材と外側部材との間に配設され、内側部材および外側部材を相対的に弾性変位可能に支持する本体ゴムと、を備えるストラットマウントが知られている。この種のストラットマウントとして、例えば下記特許文献1に示されるような、内側部材に、前記中心軸線に沿う軸方向の外側に向けて突出したストッパゴムが配設され、外側部材が、ストッパゴムを前記軸方向の外側から覆う支持部を備える構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭58-77945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のストラットマウントでは、振動の入力に伴い、内側部材および外側部材が、前記軸方向に相対変位したとき、並びに、内側部材および外側部材が、それぞれの中心軸線が互いに傾くように、こじり方向に相対変位したときに、ばねが硬くなり衝撃力や異音が生ずるおそれがある。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、軸方向およびこじり方向それぞれの振動入力時に生ずる衝撃力や異音を抑えることができるストラットマウントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係るストラットマウントは、内側にショックアブソーバのロッドの上端部が差し込まれて固定される環状の内側部材と、前記内側部材を、その中心軸線回りに沿う周方向に囲い車体側に取付けられる外側部材と、前記内側部材と前記外側部材との間に配設され、前記内側部材および前記外側部材を相対的に弾性変位可能に支持する本体ゴムと、を備え、前記本体ゴムに、前記中心軸線に沿う軸方向の外側に向けて突出したストッパゴムが配設され、前記外側部材は、前記ストッパゴムを前記軸方向の外側から覆う支持部を備え、前記ストッパゴムは、前記内側部材から前記軸方向の外側に向けて突出した台座突部と、前記台座突部から前記軸方向の外側に向けて突出するとともに、前記支持部に当接し、前記台座突部より前記軸方向のばねが軟らかい先端突部と、を備え、前記台座突部、および前記先端突部は、前記軸方向の外側に向けて尖り、前記台座突部は、径方向の内端部に位置し、前記内側部材側から前記軸方向の外側に向けて延びる内側面と、前記内側面における前記軸方向の外端部から径方向の外側に向かうに従い漸次、前記軸方向の内側に向けて延びる外側面と、を備え、前記外側面の、前記中心軸線に直交する水平線に対する傾斜角度が、前記内側面の前記傾斜角度より小さく、前記先端突部は、前記外側面に配設されている。
【0007】
この発明では、ストッパゴムが、台座突部、および台座突部より前記軸方向のばねが軟らかい先端突部を備えるので、振動の入力に伴い、内側部材および外側部材が、前記軸方向に相対変位する過程において、支持部が台座突部に当接するまでは、ばねを軟らかくして振動を吸収し、支持部が台座突部に当接した後は、ばねを硬くしてこの変位を抑止することができる。
しかも、台座突部、および先端突部が、前記軸方向の外側に向けて尖っているので、台座突部、および先端突部それぞれにおいて、支持部により前記軸方向に押し込まれる過程で、当初はばねを軟らかくし漸次、ばねを硬くすることができる。したがって、ストッパゴムが、支持部により前記軸方向に押し込まれる過程において、先端突部に当接していた支持部が台座突部に当接したときに、急激にばねが硬くなることが抑えられ、衝撃力や異音が生ずるのを抑制することができる。
【0008】
また、ストッパゴムが、台座突部から前記軸方向の外側に向けて突出し、支持部に当接した先端突部を備えるので、このストラットマウントを製造する際に、支持部に先端突部を当接させることで、内側部材および外側部材それぞれの前記軸方向の相対位置がずれるのを抑制することが可能になり、台座突部と支持部との前記軸方向の隙間を、設計通りに容易かつ確実に確保することができる。
また、先端突部が、台座突部の外側面に配設され、この外側面が、台座突部の内側面における前記軸方向の外端部から径方向の外側に向かうに従い漸次、前記軸方向の内側に向けて延びている。したがって、先端突部の、軸方向の外側に向けて尖る頂部が、径方向の外側に向けられることとなり、先端突部が支持部により前記軸方向に押し込まれたときに、先端突部を、径方向の外側に向けて変形させ、本体ゴムの変形に追従させることができる。これにより、振動の入力に伴い、内側部材および外側部材が、前記軸方向に相対変位する過程において、支持部が台座突部に当接するまでは、ばねを確実に軟らかく維持することができる。
【0009】
また、台座突部が、内側面および外側面を備えていて、外側面の前記水平線に対する傾斜角度が、内側面の前記傾斜角度より小さくなっている。したがって、台座突部の、前記軸方向の外側に向けて尖る頂部が、径方向の内側に向けられることとなり、内側部材および外側部材が、それぞれの中心軸線が互いに傾くように、こじり方向に相対変位したときに、台座突部の頂部を支持部に圧接させにくくすることが可能になり、ばねが硬くなることが抑えられ、衝撃力や異音が生ずるのを抑制することができる。
【0010】
また、台座突部の頂部が径方向の内側に向けられることから、台座突部が支持部により前記軸方向に押し込まれたときに、台座突部を径方向の内側に向けて変形させることができる。したがって、内側部材および外側部材が、前記軸方向に大きく相対変位したときに、台座突部が、本体ゴムの変形に追従して変形させられるのを抑えることが可能になり、ばねを硬くして、前記軸方向のこれ以上の変位を抑止することができる。
【0011】
ここで、前記台座突部は周方向に延び、前記先端突部は、前記台座突部における周方向の両端部に配設されてもよい。
【0012】
この場合、先端突部が、台座突部における周方向の両端部に配設されているので、周方向で互いに隣り合う先端突部の周方向の距離を長く確保することが可能になり、複数の先端突部を支持部に均等な力で当接させることを容易に実現することができる。
【0013】
また、前記台座突部は周方向に延び、前記台座突部における周方向の中間部に、前記軸方向の内側に向けて窪み、かつ径方向に貫く窪み部が形成されてもよい。
【0014】
この場合、台座突部における周方向の中間部に、窪み部が形成されているので、ストッパゴムが、支持部により前記軸方向に押し込まれる過程において、支持部が台座突部に当接した後のばねの硬さを容易に調整することができる。
【0015】
また、前記先端突部は、周方向に間隔をあけて複数配設されるとともに、前記外側面において、径方向の内端部より径方向の外側に位置する部分に配設されてもよい。
【0016】
この場合、先端突部が、台座突部の外側面において、径方向の内端部より径方向の外側に位置する部分に配設されているので、周方向で互いに隣り合う先端突部の周方向の距離を長く確保することが可能になり、複数の先端突部を支持部に均等な力で当接させることを容易に実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、軸方向およびこじり方向それぞれの振動入力時に生ずる衝撃力や異音を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るストラットマウントを有するストラット式サスペンション装置の要部の車両左右方向に沿う断面図である。
図2図1に示すストラットマウントの上面図である。
図3図2に示すストラットマウントのIII-III線矢視断面図である。
図4図2に示すストラットマウントのIV-IV線矢視断面図である。
図5図2に示すストラットマウントのV-V線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るストラットマウントの一実施形態を、ストラット式サスペンション装置10に適用した例に基づいて、図1から図5を参照しながら説明する。
【0020】
ストラット式サスペンション装置10は、車輪(前輪)Wを回転可能に支持するハブ11と、ハブ11から車両左右方向Xの内側に向けて突出したナックル12と、ナックル12に上方に向けて立設されたショックアブソーバ13と、ショックアブソーバ13のロッド16の上端部が取り付けられたストラットマウント1と、ショックアブソーバ13の下端部より下方に位置し、ナックル12から車両左右方向Xの内側に向けて延びるロワアーム14と、ロワアーム14とナックル12とを連結するボールジョイント部15と、ロッド16およびストラットマウント1を一体に上方付勢状態で下方移動可能に支持するスプリング18と、その他、不図示のタイロッドおよびブレーキ装置などと、を備える。
【0021】
ショックアブソーバ13は、上方に向かうに従い漸次、車両左右方向Xの内側に向けて延び、ロッド16およびシリンダ19を備える。ロッド16およびシリンダ19は、共通軸と同軸に配設されている。以下、この共通軸を中心軸線Oといい、また、中心軸線Oに沿う軸方向から見て中心軸線Oに交差する方向を径方向といい、軸方向から見て中心軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0022】
ロッド16は、シリンダ19から上方に突出している。ロッド16の上端部に雄ねじ部が形成されている。シリンダ19の下端部は、ボールジョイント部15より車両左右方向Xの内側に位置している。シリンダ19の下端部は、ボールジョイント部15より上方に位置している。シリンダ19の下端部が、ナックル12に固定されている。シリンダ19の外周面に、スプリング18の下端部を支持する下受板29が取付けられている。
【0023】
ストラットマウント1は、内側にショックアブソーバ13のロッド16の上端部が差し込まれて固定される環状の内側部材21と、内側部材21を周方向に囲い車体B側に取付けられる外側部材22と、内側部材21と外側部材22との間に配設され、内側部材21および外側部材22を相対的に弾性変位可能に支持する本体ゴム23と、を備える。
【0024】
ロッド16の上端部のうち、内側部材21から上方に突出した部分にナット25が螺着されることにより、ロッド16の上端部が内側部材21に固定される。内側部材21は、中心軸線Oと同軸に配置されている。
外側部材22は、内側部材21を径方向の外側から囲う内筒部26と、内側に内筒部26が嵌合された外筒部24と、を備える。内筒部26および外筒部24は、中心軸線Oと同軸に配置されている。
【0025】
図3から図5に示されるように、内筒部26において、上部26aの内径および外径は、下部26bの内径および外径より大きい。
図1に示されるように、外筒部24は、軸方向に分割されている。外筒部24の上部24a内に、内筒部26の上部26aが嵌合され、外筒部24の下部24b内に、内筒部26の下部26bが嵌合されている。外筒部24の上部24aの下端部に、径方向の外側に向けて突出し、車体Bの上面に配置されたフランジ部が形成されている。外筒部24の下部24bの上端部は、車体Bに形成された装着孔に嵌合されている。
【0026】
本体ゴム23は、内筒部26の内周面と内側部材21の外周面とを連結している。本体ゴム23は、環状に形成され、中心軸線Oと同軸に配設されている。図2図5に示されるように、本体ゴム23に、軸方向の外側に向けて突出したストッパゴム30が配設されている。ストッパゴム30は、本体ゴム23と一体に形成されている。本体ゴム23の弾性中心は、中心軸線O上に位置している。
【0027】
図1に示されるように、外側部材22は、本体ゴム23を軸方向の両側から覆う一対の支持部22aを備える。支持部22aは、ストッパゴム30を軸方向の外側から覆っている。図示の例では、支持部22aは、外筒部24の上部24aの上端部、および外筒部24の下部24bの下端部に各別に配設されている。一対の支持部22aは、内側部材21の外周縁部を軸方向の両側から覆っている。一対の支持部22aは、環状に形成され、中心軸線Oと同軸に配設されている。一対の支持部22aのうち、下方に位置する支持部22aの下面は、スプリング18の上端部を支持している。
【0028】
ここで、ナックル12における車両前後方向Zの端部に、不図示のタイロッドが連結されている。タイロッドが、転舵時に、ナックル12における車両前後方向Zの端部を、車両左右方向Xの外側に押したり、車両左右方向Xの内側に引いたりすることによって、ナックル12および車輪Wが一体に、ボールジョイント部15の中心と、ロッド16と内側部材21との連結部分Pと、を結ぶキングピン軸Kを中心に回転する。前記連結部分Pは、例えば本体ゴム23の弾性中心となっている。
【0029】
キングピン軸Kは、上方から下方に向かうに従い漸次、車両左右方向Xの外側に向けて延びている。車両前後方向Zから見て、キングピン軸Kの上下方向Yに対する傾斜角度が、中心軸線Oの上下方向Yに対する傾斜角度より大きくなっている。これにより、ショックアブソーバ13は、転舵時に、ロッド16と内側部材21との連結部分P回りに、外側部材22に対して車両前後方向Zに回転する。
【0030】
ストッパゴム30は、車両左右方向Xから見て、中心軸線Oを車両前後方向Zに挟む両側に配設されている。
そして、転舵に伴い、ショックアブソーバ13が、ロッド16と内側部材21との連結部分P回りに、外側部材22に対して車両前後方向Zに回転したときに、ストッパゴム30が、外側部材22の支持部22aに当接して圧縮変形し、ロッド16に前記連結部分P回りの反力を生じさせる。
【0031】
ストッパゴム30は、内側部材21における軸方向の両側から突出し、一対の支持部22aと軸方向で各別に対向している。図3図5に示されるように、内側部材21の上面および下面に配設された各ストッパゴム30の大きさは互いにほぼ同じとされ、形状は上下でほぼ対称となっている。図示の例では、内側部材21の上面に配設されたストッパゴム30の大きさが、内側部材21の下面に配設されたストッパゴム30の大きさよりわずかに大きい。ストッパゴム30は支持部22aに当接している。
【0032】
図2に示されるように、内側部材21の外周縁部のうち、中心軸線Oを車両左右方向Xに挟む両側に位置する各部分に、被覆ゴム39が配設されている。被覆ゴム39は、内側部材21の外周縁部における上面および下面に配設されている。被覆ゴム39は、本体ゴム23と一体に形成されている。被覆ゴム39と、支持部22aと、の間には、軸方向の隙間が設けられている。被覆ゴム39の体積は、ストッパゴム30の体積より小さい。
そして、ショックアブソーバ13が、前記連結部分P回りに、外側部材22に対して車両前後方向Zに回転したときに、ロッド16が受ける反力が、ショックアブソーバ13が、前記連結部分P回りに、外側部材22に対して車両左右方向Xに回転したときに、ロッド16が受ける反力より大きい。
【0033】
ショックアブソーバ13の、前記連結部分P回りの外側部材22に対する車両前後方向Zの回転移動量が大きくなるに従い漸次、ロッド16に生ずる前記連結部分P回りの反力、およびシリンダ19に対するロッド16の軸方向の摺動抵抗が高くなる。これらの回転移動量と摺動抵抗との関係は、ショックアブソーバ13の特性に合わせて、ストッパゴム30の大きさ、および材質などを設計することで調整することができる。
【0034】
そして本実施形態では、ストッパゴム30は、台座突部31、および先端突部32を備える。
【0035】
図3に示されるように、台座突部31は、内側部材21から軸方向の外側に突出している。台座突部31は、内側部材21の外周縁部に位置し、本体ゴム23の内周縁部に接続されている。台座突部31は、周方向に延び、中心軸線Oを中心とする約90°の角度範囲にわたって2つ配設されている。2つの台座突部31は、中心軸線Oを中心に約180°離れた位置に配設されている。
台座突部31の軸方向の高さは、台座突部31の径方向の厚さと同等になっている。台座突部31の周方向の長さは、台座突部31の高さ、および厚さより大きくなっている。
【0036】
台座突部31は、径方向の内端部に位置し、内側部材21側から軸方向の外側に向けて延びる内側面35と、内側面35における軸方向の外端部から径方向の外側に向かうに従い漸次、軸方向の内側に向けて延びる外側面36と、を備え、軸方向の外側に向けて尖っている。
【0037】
図示の例では、内側面35は、内側部材21側から軸方向の外側に向かうに従い漸次、径方向の外側に向けて延びている。なお、内側面35は、内側部材21側から軸方向に真直ぐ延びてもよいし、内側部材21側から軸方向の外側に向かうに従い漸次、径方向の内側に向けて延びてもよい。
軸方向に沿う縦断面視において、内側面35および外側面36それぞれの長さは、互いに同等になっている。外側面36の、前記中心軸線Oに直交する水平線L1に対する傾斜角度θ1が、内側面35の、水平線L1に対する傾斜角度θ2より小さくなっている。
【0038】
内側面35における軸方向の外端部と、外側面36における径方向の内端部と、は、軸方向の外側に向けて尖る頂部31aを介して接続されている。頂部31aは、軸方向の外側に向けて突の曲面状に形成されている。頂部31aは、径方向の内側を向いている。すなわち、前記縦断面視において、頂部31aの角度の二等分線L2が、軸方向に対して径方向の内側に傾いている。
【0039】
図2および図4に示されるように、台座突部31における周方向の中間部に、軸方向の内側に向けて窪み、かつ径方向に貫く窪み部33が形成されている。窪み部33は、台座突部31における周方向の中央部に形成されている。窪み部33の周方向の大きさは、台座突部31のうち、窪み部33を周方向に挟む両側に位置する各部分の周方向の大きさの半分程度となっている。窪み部33の底面は、径方向の内端部に位置し、径方向の内側に向かうに従い漸次、軸方向の外側に向けて延びる傾斜部33aと、傾斜部33aから径方向の外側に向けて延び、軸方向に直交する方向に延びる平坦部33bと、を備える。窪み部33の両側面33cは、径方向の外側から内側に向かうに従い漸次、互いが周方向に離れるように軸方向に対して傾斜している。
【0040】
先端突部32は、周方向に間隔をあけて複数配設されている。先端突部32は、台座突部31より軸方向のばねが軟らかくなっている。図示の例では、先端突部32および台座突部31は、同じ材質で一体に形成されており、形状、および寸法に起因して、先端突部32が、台座突部31より軸方向に変形しやすくなっている。
図示の例では、先端突部32は、軸方向の外側に向けて尖る錐状に形成され、先端突部32の高さ、および先端突部32の底部の外径が互いに同等になっている。先端突部32の体積は、台座突部31の体積より小さくなっている。
【0041】
先端突部32は、台座突部31の外側面36に配設されている。先端突部32は、台座突部31における周方向の両端部に配設されている。先端突部32の表面のうち、周方向の外側を向く面は、台座突部31における周方向の端面と面一となっている。先端突部32の周方向の大きさは、台座突部31のうち、窪み部33を周方向に挟む両側に位置する各部分の周方向の大きさの半分程度となっている。
【0042】
先端突部32は、台座突部31の外側面36において、径方向の内端部より径方向の外側に位置する部分に配設されている。前記縦断面視において、先端突部32の底部の長さは、外側面36の長さの半分より長くなっている。先端突部32の表面のうち、径方向の外側を向く面は、台座突部31の外側面36の径方向の外端縁に段差なく連なっている。先端突部32の頂部32aは、径方向の外側を向いている。すなわち、前記縦断面視において、頂部32aの角度の二等分線L3が、軸方向に対して径方向の外側に傾いている。前記縦断面視において、先端突部32の頂部32aの角度の二等分線L3の、軸方向に対する傾斜角度は、台座突部31の頂部31aの角度の二等分線L2の、軸方向に対する傾斜角度より小さくなっている。
【0043】
以上説明したように、本実施形態によるストラットマウント1によれば、ストッパゴム30が、台座突部31、および台座突部31より軸方向のばねが軟らかい先端突部32を備えるので、振動の入力に伴い、内側部材21および外側部材22が、軸方向に相対変位する過程において、支持部22aが台座突部31に当接するまでは、ばねを軟らかくして振動を吸収し、支持部22aが台座突部31に当接した後は、ばねを硬くしてこの変位を抑止することができる。
【0044】
しかも、台座突部31、および先端突部32が、軸方向の外側に向けて尖っているので、台座突部31、および先端突部32それぞれにおいて、支持部22aにより軸方向に押し込まれる過程で、当初はばねを軟らかくし漸次、ばねを硬くすることができる。したがって、ストッパゴム30が、支持部22aにより軸方向に押し込まれる過程において、先端突部32に当接していた支持部22aが台座突部31に当接したときに、急激にばねが硬くなることが抑えられ、衝撃力や異音が生ずるのを抑制することができる。
【0045】
また、ストッパゴム30が、台座突部31から軸方向の外側に向けて突出し、支持部22aに当接した先端突部32を備えるので、このストラットマウント1を製造する際に、支持部22aに先端突部32を当接させることで、内側部材21および外側部材22それぞれの軸方向の相対位置がずれるのを抑制することが可能になり、台座突部31と支持部22aとの軸方向の隙間を、設計通りに容易かつ確実に確保することができる。
【0046】
また、先端突部32が、台座突部31の外側面36に配設され、この外側面36が、台座突部31の内側面35における軸方向の外端部から径方向の外側に向かうに従い漸次、軸方向の内側に向けて延びている。したがって、先端突部32の、軸方向の外側に向けて尖る頂部32aが、径方向の外側に向けられることとなり、先端突部32が支持部22aにより軸方向に押し込まれたときに、先端突部32を、径方向の外側に向けて変形させ、本体ゴム23の変形に追従させることができる。これにより、振動の入力に伴い、内側部材21および外側部材22が、軸方向に相対変位する過程において、支持部22aが台座突部31に当接するまでは、ばねを確実に軟らかく維持することができる。
【0047】
また、台座突部31が、内側面35および外側面36を備えていて、外側面36の水平線L1に対する傾斜角度θ1が、内側面35の傾斜角度θ2より小さくなっている。したがって、台座突部31の、軸方向の外側に向けて尖る頂部31aが、径方向の内側に向けられることとなり、内側部材21および外側部材22が、それぞれの中心軸線が互いに傾くように、こじり方向に相対変位したときに、台座突部31の頂部31aを支持部22aに圧接させにくくすることが可能になり、ばねが硬くなることが抑えられ、衝撃力や異音が生ずるのを抑制することができる。
【0048】
また、台座突部31の頂部31aが径方向の内側に向けられることから、台座突部31が支持部22aにより軸方向に押し込まれたときに、台座突部31を径方向の内側に向けて変形させることができる。したがって、内側部材21および外側部材22が、軸方向に大きく相対変位したときに、台座突部31が、本体ゴム23の変形に追従して変形させられるのを抑えることが可能になり、ばねを硬くして、軸方向のこれ以上の変位を抑止することができる。
【0049】
また、先端突部32が、台座突部31における周方向の両端部に配設されているので、周方向で互いに隣り合う先端突部32の周方向の距離を長く確保することが可能になり、複数の先端突部32を支持部22aに均等な力で当接させることを容易に実現することができる。
【0050】
また、台座突部31における周方向の中間部に、窪み部33が形成されているので、ストッパゴム30が、支持部22aにより軸方向に押し込まれる過程において、支持部22aが台座突部31に当接した後のばねの硬さを容易に調整することができる。
【0051】
また、先端突部32が、台座突部31の外側面36において、径方向の内端部より径方向の外側に位置する部分に配設されているので、周方向で互いに隣り合う先端突部32の周方向の距離を長く確保することが可能になり、複数の先端突部32を支持部22aに均等な力で当接させることを容易に実現することができる。
【0052】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0053】
例えば前記実施形態では、ストッパゴム30が、車両左右方向Xから見て、中心軸線Oを車両前後方向Zに挟む両側に配設された構成を示したが、ストッパゴム30の配設位置は、適宜変更してもよい。
また、前記実施形態では、内側部材21の上面および下面に配設された各ストッパゴム30の大きさを互いにほぼ同じとし、形状を上下でほぼ対称としたが、これらのストッパゴム30の大きさおよび形状を互いに異ならせてもよい。
また、ストッパゴム30として、窪み部33を有さず、全周にわたって連続して延びる構成を採用してもよい。
また、内側部材21のうち、中心軸線Oを車両左右方向Xに挟む両側に位置する各部分に、被覆ゴム39を配設したが、被覆ゴム39を設けなくてもよい。
また、先端突部32は、台座突部31における周方向の中間部に配設してもよい。
【0054】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 ストラットマウント
13 ショックアブソーバ
16 ロッド
21 内側部材
22 外側部材
22a 支持部
23 本体ゴム
30 ストッパゴム
31 台座突部
32 先端突部
33 窪み部
35 内側面
36 外側面
B 車体
L1 水平線
O 中心軸線
θ1 外側面の傾斜角度
θ2 内側面の傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5