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特許7140683新規なAAV8変異カプシド及びそれを含有する組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】新規なAAV8変異カプシド及びそれを含有する組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/864 20060101AFI20220913BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20220913BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220913BHJP
   C07K 14/015 20060101ALI20220913BHJP
   C12N 15/35 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
C12N7/01 ZNA
C12N5/10
C07K14/015
C12N15/35
【請求項の数】 37
(21)【出願番号】P 2018554344
(86)(22)【出願日】2017-04-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-05-30
(86)【国際出願番号】 US2017027392
(87)【国際公開番号】W WO2017180854
(87)【国際公開日】2017-10-19
【審査請求日】2020-04-02
(31)【優先権主張番号】62/323,389
(32)【優先日】2016-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502409813
【氏名又は名称】ザ・トラステイーズ・オブ・ザ・ユニバーシテイ・オブ・ペンシルベニア
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウイルソン,ジェームス・エム
(72)【発明者】
【氏名】ワン,チャン
【審査官】白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/124282(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
Genbank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Pubmed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号18(AAV3G1)、配列番号20(AAV8.T20)、または配列番号22(AAV8.TR1)の配列を有するカプシドタンパク質を含む、アデノ随伴ウイルス(AAV)。
【請求項2】
請求項1に記載のカプシドタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸。
【請求項3】
前記カプシドタンパク質は、配列番号17、配列番号19もしくは配列番号21に記載のヌクレオチド配列、または配列番号17、配列番号19もしくは配列番号21に記載のヌクレオチド配列と少なくとも95%の同一性を共有する配列によってコードされる、請求項1に記載のAAV。
【請求項4】
天然型AAV8(配列番号34)と比較した場合に、少なくとも以下の変異:
263SGTH267、268位または269位における欠失、457SRP459、A583G、Q588L、Q589Y、Q594G、I595S、G596V及びT597F、
を有するvp3カプシドタンパク質を含む、AAV。
【請求項5】
前記vp3カプシドタンパク質は、配列番号17に記載のヌクレオチド配列かまたはそれと少なくとも95%の同一性を共有する配列によってコードされている、請求項4に記載のAAV。
【請求項6】
前記vp3カプシドタンパク質は、配列番号19に記載のヌクレオチド配列かまたはそれと少なくとも95%の同一性を共有する配列によってコードされている、請求項に記載のAAV。
【請求項7】
天然型AAV8(配列番号34)と比較した場合に、少なくとも以下の変異:
263SDTH267、268位または269位における欠失、455DGSGL459、A583G、Q588L、Q589Y、Q594G、I595S、G596V及びT597F、
を有するvp3カプシドタンパク質を含む、AAV。
【請求項8】
前記vp3カプシドタンパク質は、配列番号21に記載のヌクレオチド配列かまたはそれと少なくとも95%の同一性を共有する配列によってコードされている、請求項7に記載のAAV。
【請求項9】
前記AAVは、筋肉、肝臓、肺、気道上皮、ニューロン、眼及び心臓から選択される組織を標的とする、請求項4~8のいずれか1項に記載のAAV。
【請求項10】
前記vp3カプシドタンパク質の残りの部分はAAV8(配列番号34)と同一である、請求項4~9のいずれか1項に記載のAAV。
【請求項11】
AAV末端逆位反復(ITR)配列、及び制御配列に機能的に連結されている異種核酸配列をさらに含み、ここで前記制御配列は標的細胞において前記異種核酸配列によりコードされる産物の発現を導く、請求項1及び3~10のいずれか1項に記載のAAV。
【請求項12】
前記ITR配列は、AAV8とは異なるAAVに由来する、請求項11に記載のAAV。
【請求項13】
前記ITR配列はAAV2由来である、請求項12に記載のAAV。
【請求項14】
肝組織への形質導入に使用するための、配列番号18のアミノ酸配列を有するカプシドタンパク質(AAV3G1)を含むAAV。
【請求項15】
筋組織への形質導入に使用するための、配列番号18の配列を有するカプシドタンパク質(AAV3G1)を含むAAV。
【請求項16】
気道上皮への形質導入に使用するための、配列番号18の配列を有するカプシドタンパク質(AAV3G1)を含むAAV。
【請求項17】
肝組織への形質導入に使用するための、配列番号22の配列を有するカプシドタンパク質(AAV8.TR1)を含むAAV。
【請求項18】
気道上皮への形質導入に使用するための、配列番号20の配列を有するカプシドタンパク質(AAV8.T20)を含むAAV。
【請求項19】
眼細胞への形質導入に使用するための、配列番号18の配列を有するカプシドタンパク質(AAV3G1)を含むAAV。
【請求項20】
(a)天然型AAV8と比べた場合に、少なくとも以下の変異:
263SGTH267、268位または269位における欠失、457SRP459、A583G、Q588L、Q589Y、Q594G、I595S、G596V及びT597F、
を有するAAVvp3カプシドタンパク質をコードする核酸分子と、
(b)機能性rep遺伝子と、
(c)AAV ITR配列及び導入遺伝子を含むミニ遺伝子と、
(d)AAVカプシド内への前記ミニ遺伝子のパッケージングを可能にする十分なヘルパー機能
とを含有する宿主細胞を培養するステップを含む、AAVカプシドを含む組換え型AAVの作製方法。
【請求項21】
前記AAVvp3カプシドタンパク質をコードする核酸分子は、配列番号17に記載のヌクレオチド配列かまたはそれと少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む、請求項20に記載のAAV。
【請求項22】
前記AAVvp3カプシドタンパク質をコードする核酸分子は、配列番号19に記載のヌクレオチド配列かまたはそれと少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む、請求項20に記載のAAV。
【請求項23】
(a)天然型AAV8と比べた場合に、少なくとも以下の変異:
263SDTH267、268位または269位における欠失、455DGSGL459、A583G、Q588L、Q589Y、Q594G、I595S、G596V及びT597F、
を有するAAVvp3カプシドタンパク質をコードする核酸分子と、
(b)機能性rep遺伝子と、
(c)AAV ITR配列及び導入遺伝子を含むミニ遺伝子と、
(d)AAVカプシド内への前記ミニ遺伝子のパッケージングを可能にする十分なヘルパー機能
とを含有する宿主細胞を培養するステップを含む、AAVカプシドを含む組換え型AAVの作製方法。
【請求項24】
前記AAVvp3カプシドタンパク質をコードする核酸分子は、配列番号21に記載のヌクレオチド配列かまたはそれと少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む、請求項23に記載のAAV。
【請求項25】
前記vp3カプシドタンパク質の残りの部分はAAV8(配列番号34)と同一である、請求項20~24のいずれか1項に記載のAAV。
【請求項26】
請求項1及び3~13のいずれか1項に記載のAAVでトランスフェクトされた、宿主細胞。
【請求項27】
請求項1及び3~13のいずれか1項に記載の少なくとも1つのAAV、ならびに生理学的に適合性のある担体、緩衝剤、アジュバント、及び/または希釈剤を含む、組成物。
【請求項28】
細胞に導入遺伝子をエキソビボで送達する方法であって、前記細胞と、請求項1及び3~13のいずれか1項に記載のAAVとを接触させるステップを含み、ここで、前記rAAVは前記導入遺伝子を含む、前記方法。
【請求項29】
配列番号18、20及び22から選択されるアミノ酸配列を有するAAVカプシドタンパク質を含み、非AAV核酸配列をさらに含む、組換え型AAV。
【請求項30】
AAVカプシドタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、前記ヌクレオチド配列は、配列番号17、19及び21から選択される、前記核酸分子。
【請求項31】
前記核酸分子は、AAVカプシドタンパク質及び機能性AAV repタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、請求項30に記載の核酸分子。
【請求項32】
前記核酸分子はプラスミドである、請求項30又は31に記載の核酸分子。
【請求項33】
請求項29に記載の組換え型AAVでトランスフェクトされた、宿主細胞。
【請求項34】
請求項30~32のいずれかに記載の核酸分子でトランスフェクトされた、宿主細胞。
【請求項35】
天然型AAV8と比較した場合に、少なくとも以下の変異:
(a)263SGTH267、268位または269位における欠失、457SRP459、A583G、Q588L、Q589Y、Q594G、I595S、G596V及びT597F、または、
(c)263SDTH267、268位または269位における欠失、455DGSGL459、A583G、Q588L、Q589Y、Q594G、I595S、G596V及びT597F、
を有する、AAVカプシドタンパク質。
【請求項36】
請求項35に記載のカプシドタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子。
【請求項37】
前記ヌクレオチド配列は、配列番号17、19もしくは21、または配列番号17、19もしくは21と少なくとも95%の同一性を共有する配列から選択される、請求項36に記載の核酸分子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子形式で提出した資料の参照による組み込み
出願人は、本明細書と共に提出した電子形式の配列表資料を参照により本明細書に組み込むものとする。このファイルには「UPN-16-7726PCT_ST25.txt」というファイル名が付いている。
【背景技術】
【0002】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、ヒトの遺伝子治療において非常に有望であり、このウイルスが遺伝子を長期発現できること、及び病原性が欠落していることから、肝臓、筋肉、心臓、脳、眼、腎臓及び他の組織を標的にするため、さまざまな試験で広く使用されてきている。AAVはパルボウイルス科に属し、各々2つの末端逆位反復配列が隣接する一本鎖DNAを含有する。天然に生じる数十のAAVカプシドは、その固有のカプシド構造のため、異なる細胞型及び器官を認識して形質導入できることが報告されている。
【0003】
1981年に開始された第1回目の治験以降、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いた遺伝子治療の臨床試験におけるベクター関連の毒性はこれまで報告されていない。臨床試験でこれまでに蓄積されたAAVベクターの安全性の記録は、実証された有効性と合わせると、AAVが取り扱いに良好なプラットフォームであることを示している。別の魅力的特徴は、AAVはゲノムサイズが小さく(約4.7kb)、遺伝子構成成分がシンプルである、すなわち、末端逆位反復配列(ITR)、Rep遺伝子及びCap遺伝子からなる一本鎖DNAウイルスであることから、AAVの操作が比較的容易なことである。AAVベクターで必要とされるのはITRとAAVカプシドタンパク質のみであり、ITRは、ベクター作製用の複製シグナル及びパッケージングシグナルとして機能し、カプシドタンパク質は、ベクターゲノムDNAを収容するカプシドを形成し、組織指向性を決定し、標的細胞内へベクターゲノムDNAを送達して中心的役割を果たす。AAVカプシド遺伝子を得るには主に4つの方法、すなわち、培養試料または組織試料からのAAV単離、AAV定向進化、シャッフリング、及び合理的設計があった。
【0004】
AAV8は、肝臓、筋肉に効率的に形質導入されることが示されている。さらに、単回末梢静脈内注入によるAAV8介在性hFIX遺伝子導入は、重度の血友病B患者に、急性または長期持続性の毒性を示すことなくFIX導入遺伝子を治療的レベルで長期間、確実に発現させる。
【0005】
AAVベクターには遺伝子導入における多くの利点があるが、依然として解決すべき問題がある。したがって、より有効なAAVベクターが必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
一態様ではアデノ随伴ウイルスを提供する。ウイルスは、AAV8変異カプシドを含む。一実施形態では、カプシドは配列番号18の配列を有し、これをAAV3G1と呼ぶ。別の実施形態では、カプシドは配列番号20の配列を有し、これをAAV8.T20と呼ぶ。さらに別の実施形態では、カプシドは配列番号22の配列を有し、これをAAV8.TR1と呼ぶ。別の態様では、本明細書に記載するカプシドをコードする核酸を提供する。一実施形態では、カプシドは、配列番号17またはそれと少なくとも95%の同一性を共有する配列によってコードされる。別の実施形態では、カプシドは、配列番号19またはそれと少なくとも95%の同一性を共有する配列によってコードされる。別の実施形態では、カプシドは、配列番号21またはそれと少なくとも95%の同一性を共有する配列によってコードされる。
【0007】
別の実施形態では、AAV8変異カプシドを含むAAVには、天然型AAV8(配列番号34)と比較した場合に、以下の領域:i.アミノ酸263~267(配列番号78);ii.アミノ酸457~アミノ酸459;iii.アミノ酸455~アミノ酸459(配列番号81);またはiv.アミノ酸583~アミノ酸597(配列番号69)の少なくとも1つの領域に変異を有する少なくとも1つのvp3カプシドが含まれる。一実施形態では、AAV8変異カプシドを有するAAVは、AAV8と比べて標的組織における形質導入率が高い。一実施形態では、標的組織は筋肉、肝臓、肺、気道上皮、ニューロン、眼、または心臓である。別の実施形態では、AAV8変異カプシドを有するAAVは、天然型AAV8と比べてAAV中和抗体に対する回避能力が高い。
【0008】
一実施形態では、vp1ユニーク領域及び/またはvp2ユニーク領域は、vp3ユニーク領域を供給するAAV(すなわち、AAV8)とは異なるAAVに由来する。一実施形態では、vp1配列及びvp2配列を供給するAAVはrh.20である。一実施形態では、rh.20 vp1配列は配列番号88である。
【0009】
別の実施形態では、AAVにはさらに、AAV末端逆位反復配列、及び制御配列に機能的に連結されている異種核酸配列が含まれ、ここで制御配列は、標的細胞において前記異種核酸配列がコードする産物の発現を導く。
【0010】
別の態様では、標的組織に形質導入する方法を提供する。一実施形態では、方法には、本明細書に記載するようなカプシドを有するAAVの投与が含まれる。一実施形態では、肝組織に形質導入する方法を提供し、AAV3G1カプシドを有するAAVの投与を含む。別の実施形態では、筋組織に形質導入する方法を提供し、AAV3G1カプシドを有するAAVの投与を含む。さらに別の実施形態では、気道上皮に形質導入する方法を提供し、AAV3G1またはAAV8.T20カプシドを有するAAVの投与を含む。別の実施形態では、肝組織に形質導入する方法を提供し、AAV8.TR1カプシドを有するAAVの投与を含む。さらに別の実施形態では、眼細胞に形質導入する方法を提供し、AAV3G1カプシドを有するAAVの投与を含む。
【0011】
さらに別の態様では、標的組織に対する形質導入率が野生型カプシドよりも高い変異AAVカプシドを作製する方法を提供する。方法には、野生型カプシドに対する中和抗体の接触領域にて変異誘発させること、及びモノクローナル抗体存在下でインビトロ選択を実施することが含まれる。一実施形態では、方法には、カプシドの超可変領域においてさらなる変異を実施することが含まれる。別の実施形態では、方法にはさらに、vp1ユニーク配列及び/またはvp2ユニーク配列を、異なるAAVカプシド由来のvp1配列及び/またはvp2配列で置換することが含まれる。
【0012】
別の態様では、AAVカプシドを含む組換え型アデノ随伴ウイルス(AAV)を作製する方法を提供する。一実施形態では、方法には、(a)天然型AAV8(配列番号34)と比較した場合に、カプシドが以下の領域、すなわち、i.アミノ酸263~267(配列番号78);ii.アミノ酸457~アミノ酸459;iii.アミノ酸455~アミノ酸459(配列番号81);またはiv.アミノ酸583~アミノ酸597(配列番号69)のうち少なくとも1つの領域において変異を有するAAVカプシドタンパク質をコードする分子と、(b)機能性rep遺伝子と、(c)AAV末端逆位反復配列(ITR)及び導入遺伝子を含むミニ遺伝子と、(d)AAVカプシドタンパク質内へのミニ遺伝子のパッケージングを可能にする十分なヘルパー機能とを含有している宿主細胞を培養することが含まれる。
【0013】
さらに別の態様では、組換え型アデノ随伴ウイルス(AAV)を提供する。一実施形態
では、rAAVには、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、及び32から選択されるアミノ酸配列を有するAAVカプシドが含まれる。そのようなカプシドを、本明細書では「AAV8変異カプシド(複数可)」と呼ぶ場合がある。rAAVにはさらに非AAV核酸配列が含まれる。別の態様では、AAVカプシド配列をコードする核酸分子を提供する。一実施形態では、核酸配列は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、及び31から選択される。
【0014】
別の態様では、AAVカプシドタンパク質を提供する。AAVカプシドは、天然型AAV8(配列番号34)と比較した場合に、以下の領域、すなわち、i.アミノ酸263~267(配列番号78);ii.アミノ酸457~アミノ酸459;iii.アミノ酸455~アミノ酸459(配列番号81);またはiv.アミノ酸583~アミノ酸597(配列番号69)のうち少なくとも1つの領域において変異を有する。別の態様では、本明細書に記載するようなAAVカプシドをコードする核酸配列を提供する。
【0015】
さらに別の態様では、本明細書に記載するようにアデノ随伴ウイルスでトランスフェクトされた宿主細胞を提供する。
【0016】
別の態様では、本明細書に記載するようなAAVを少なくとも1つ、ならびに生理学的に適合性のある担体、緩衝剤、アジュバント、及び/または希釈剤が含まれる組成物を提供する。
【0017】
さらに別の態様では、細胞に導入遺伝子を送達する方法を提供する。方法には、細胞を本明細書に記載するようなAAVと接触させるステップが含まれ、ここで、前記rAAVは導入遺伝子を含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】AAV変異体ライブラリーの構築に使用するプラスミドのマップを提供する。
図1B】AAV変異体ライブラリーの構築の選択工程を例示する。
図2A】インビトロにおいて、抗体-カプシド接触部位における変異誘発によりNabに対する耐性が付与されることを示す棒グラフである。HEK293細胞を、CMV.eGFPを担持する変異体AAV8に感染させ、培地(Abなし)、抗体ADK8、ADK8/9またはADK9と混合した。M.O.I.は約1e4であった。2日後、GFP画像を取得して分析した。実施例2B2を参照のこと。
図2B】インビボにおいて、抗体-カプシド接触部位における変異誘発によりNabに対する耐性が付与されるを示す散布図である。AAV8変異体にTBG.イヌF9-WPREカセットをパッケージングし、i.v.注射による抗体ADK8の存在下/非存在下、B6で試験した。ベクター注射2時間前に100uLの希釈ADK8をi.v.注射した。AAV8を対照として使用した。投与から1週間後に採取した血漿によりイヌF9レベルをELISAで測定した。ADK8無し動物のF9に対するADK8有り動物のF9の割合(%)及びp値(t-検定)を上方に示す。実施例2B6を参照のこと。
図3A】本明細書に記載するAAV8、AAV3G1、AAV8.T20及びAAV8.TR1のタンパク質アラインメントである。
図3B】本明細書に記載するAAV8、AAV3G1、AAV8.T20及びAAV8.TR1のタンパク質アラインメントである。
図4A】AAV8と比べてAAV3G1はプールしたヒトIVIG(hIVIG)に対し耐性であることを示す。CB7.CI.ルシフェラーゼカセットを担持するAAV8(塗りつぶし棒)またはAAV3G1(中抜き棒)を、さまざまな希釈度のプールしたヒトIVIGと共にインキュベートしてから、96ウェルプレートに入れたHuh7細胞に塗布した(M.O.I.、約1e4)。感染から72時間後、ルシフェラーゼレベルを読み取った。x軸はhIVIGの希釈倍率である。y軸は、「ベクター単独」対照と比較したルシフェラーゼ発現の割合(%)を表す。灰色の点線は、50%発現レベルを指す。
図4B】AAV3G1の3変異全てがNab耐性に寄与していることを示す。AAV8、AAV3G1、及びAAV3G1を構成する3変異の組み合わせ全てを担持する変異体を、ヒト血漿(4試料)及び抗AAV8サル血清(4試料)を用いてインビトロで試験した。AAV8及び変異型を、希釈した血清/血漿(抗AAV8Nab含有混合物の最終滴定、1:4)と共にインキュベートしてから、96ウェルプレートに入れたHuh7細胞に塗布した。72時間後、ルシフェラーゼ発現を読み取り、各「ベクター単独」対照の発現レベルのパーセンテージに変換した。各血清/血漿について、その残存発現に従って各ベクターに順番を付けた(残存発現の最も高いものを順番1、最も低いものを8とした)。実施例2Cを参照のこと。
図5A】CB7.CI.ルシフェラーゼカセットを担持するAAV8またはAAV3G1のi.m.注射を受けたマウスの写真である。マウス4匹/群で、ベクターを用量3x1010gc/マウスでB6の筋肉に投与した。ルシフェラーゼ活性を投与から2週間及び4週間監視した。これらの知見は、筋肉内注射により、AAV3G1は、AAV8と比べると肝臓よりも筋肉に選択的であることを示している。実施例2Cを参照のこと。
図5B図5aに示すカセットとは異なる導入遺伝子カセットを担持するAAVベクターをi.m.注射した後の筋組織の写真である。これらの実験は、B6マウスにおいてAAV3G1が同様に筋選択性であることを示している。用量1x10gc/動物、5x10gc/25uL/脚を両脚に実施。ベクター注射後の第3週、筋肉切片、X-gal染色、各群の最良切片、4倍。
図5C】第3の導入遺伝子カセットtMCK.ヒトF9を担持するAAVベクターのI.m.注射では、B6マウスにおいてAAV3G1が同様に筋選択性であることが示されている。tMCKは筋特異的プロモーターである。用量3e10gc/マウス、マウス3匹/群。血漿及び筋肉をそれぞれ投与から28日後及び30日後に採取した。血漿及び筋肉の溶解物からELISAによってヒトF9を測定した。AAV3G1では筋肉F9発現レベルはAAV8の11.2倍であった。実施例2B6を参照のこと。
図5D】第28日の血漿の中和抗体価は、AAV8とAAV3G1の抗原性は異なることを示している。血漿試料は図5cの試験で得たものであった。実施例2B6を参照のこと。
図6A】AAV8ベクターまたはAAV3G1ベクターの投与を受けたマウスの心臓、筋肉及び肝臓から得たX-gal染色した切片の概要。MPS 3A Hetマウス(B6バックグラウンド)に5e11gcのAAV.CMV.Lac/マウスをi.v.投与した。14日後、組織を採取した。各動物の代表的筋肉切片の4倍像。実施例2Cを参照のこと。
図6B】CB7.CI.ffルシフェラーゼ導入遺伝子カセットを有するAAV8とAAV3G1とを比較する、i.v.を受けたB6マウスにおけるルシフェラーゼイメージングの代表的インビボ画像である。用量3e11gc/マウス、ベクター注射後の第2週。左はAAV8、右はAAV3G1である。実施例2Cを参照のこと。
図7A】AAV3G1は、マウス気道上皮細胞への形質導入率が高く、形質導入率はVP12領域をrh.20で置き換えることによりさらに改善される。B6マウスにAAV.CB7.CI.ルシフェラーゼを1e11gc/マウス、i.n.で与えた。ルシフェラーゼ活性をベクター投与後2週間、3週間及び4週間監視した。右のパネルは試験の代表画像(第4週)である。左のパネルはLiving Image(登録商標)3.2を用いて定量し、第2週のAAV8群の平均値で正規化したものである。実施例2Cを参照のこと。
図7B】AAV8、AAV8.T20、AAV9及びAAV6.2の気道上皮細胞への形質導入の比較。B6マウスにAAV.CB7.CI.ルシフェラーゼを1e11gc/マウス、i.n.、マウス4匹/ベクターで与えた。ルシフェラーゼ活性をベクター投与後1週間、2週間及び3週間監視した。Living Image(登録商標)3.2を使用して定量し、第1週のAAV8群の平均値で正規化した。実施例2Cを参照のこと。
図8A】AAV3G1のヘパリン親和性が高まる。AAVベクターをDPBSに希釈し、2e11gcのベクターをヘパリンカラムに担持させ、その後、DPBS及びさまざまな濃度のNaClを含むDPBSを用いて洗浄した。抗体B1を用いてPVDF膜でドットブロット法を実施した。
図8B】AAV8.TR1の電荷を減少させるとそのヘパリン親和性が低下する。等しいgcのAAV8.TR1.TBG.hF9co.WPRE.bGHとAAV3G1.CB7.CI.ルシフェラーゼ.RBGとを合わせてTris緩衝液(pH7.4、0.01M)に混合し、ヘパリンカラムに担持させ、さまざまな緩衝液を用いて順次洗浄した。プロセスの間の画分を採取した:FT+W;フロースルー及び洗浄にはTris緩衝液0.05M~2.0M、Tris緩衝液と0.05~2.0MのNaClを用いた。ベクター分布をbGH及びRBGプローブを用いてqPCRにより測定した。
図8C】AAV3G1の電荷を減少させると、変異AAV8.TR1において肝臓への形質導入が部分的に回復することを示す。B6マウスにAAV.TBG.hF9co.WPRE.RBGを用量1e10gc/マウス、マウス5匹/群で静脈内投与した。ベクター注射後の第1週、第2週及び第4週に血漿を採取し、ヒトF9でELISAにより測定した。
図8D】インビトロでのHuh7 Nabアッセイの結果を表す。レポーター:CB7.CI.ffルシフェラーゼ;M.O.I.約1e3。試料は、図8Cと同一試験の動物3匹/群から得た第4週の血漿であった。
図8E図8Cのマウスから得た、ベクターのゲノムコピーの分布を表す。
図9】pAAV.DE.0のマップを表す。
図10】pAAV.DE.1のマップを表す。
図11】pAAV.DE.1.HVR.Iのマップを表す。
図12】pAAV.DE.1.HVR.IVのマップを表す。
図13A】AAV.TBG.ヒトF9を1e10gc/マウス、i.v.で注射されたマウス(マウス5匹/群)におけるヒトF9の発現(ng/mL)を示すグラフである。処置から1週間後、2週間後及び4週間後に血漿を採取した。
図13B図13Aのマウスで第4週における、AAV8に対する中和抗体価を示すグラフである。最終濃度1e9gc/mLのAAV8.CB7.ルシフェラーゼと共にHuh7細胞を使用した。各群の平均が示されている。
図14】pAAVinvivoのマップを表す。
図15】AAV3G1.tMCK.PI.ffluc.bGHを、3e9または3e10gc/マウス、脚1本/マウスでi.m.注射された雄B6マウス、マウス3匹/群のdd-PCR(PK)による写真である。第1週の結果を示す。各図とも、左はAAV8処置、右はAAV3G1処置したものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
アデノ随伴ウイルス(AAV)を用いる遺伝子治療は、近年の臨床試験で得られた有望な結果に刺激され、ますます期待が高まっている。現在まで、カプシドを利用するAAVベクターは、げっ歯類で血管内注入後、多くの組織へほぼ完全に形質導入され、インビボ遺伝子送達への大きな可能性を示している。したがって、AAV8は、改善ベクターを設計するための論理的開始点である。その基盤を前進させるため、本明細書は、中和抗体に対する耐性、収量、発現、または形質導入率が高いAAV8変異体を提供する。方法は、さまざまな組織を標的とし、さまざまな病態を治療するAAVの使用を対象とする。
【0020】
特に明記しないかぎり、本明細書で使用する技術用語及び科学用語は、本発明の属する分野の当業者によって、また本出願で使用する多くの用語に対する一般指針を当業者に提
供する公開済みテキストの参照によって、共通して理解される意味と同一の意味を持つ。以下の定義は、あくまで明確にするために提供するものであり、特許請求する発明を限定するものではない。本明細書で使用する場合、「a」または「an」という用語は、1つ以上を指し、例えば、「眼細胞(an ocular cell)」は、1つ以上の眼細胞を表すと理解される。したがって、「a」(または「an」)、「1つ以上」、及び「少なくとも1つ」という用語は、本明細書では同じ意味で使用される。本明細書で使用する場合、用語「約」は、特に明記しない限り、所与の参照値から10%の変動性を意味する。本明細書のさまざまな実施形態は、「含む(comprising)」という表現を使用して提示されているが、他の状況下、関連する実施形態も「からなる(consisting of)」または「から本質的になる(consisting essentially of)」という表現を使用して解釈され記載されるものとする。
【0021】
以下の記載に関して、本明細書に記載される組成物の各々は、別の実施形態、本発明の方法において有用であることが意図される。さらに、かかる方法において有用な、本明細書に記載される組成物の各々はそれ自体が、別の実施形態においては、本発明の実施形態であることも意図される。
【0022】
本明細書で使用する場合、用語「標的組織」は、対象AAVベクターによる形質導入が意図される任意の細胞または組織を指し得る。かかる用語は、筋肉、肝臓、肺、気道上皮、ニューロン、眼(眼細胞)、または心臓のいずれか1つ以上を指してよい。一実施形態では、標的組織は肝臓である。別の実施形態では、標的組織は眼である。
【0023】
本明細書で使用する場合、用語「眼細胞」は、眼内にあるかまたは眼の機能に関連している任意の細胞を指す。かかる用語は、杆体、錐体を含む視細胞、及び光感受性神経節細胞、網膜色素上皮(RPE)細胞、ミュラー細胞、双極細胞、水平細胞、アマクリン細胞のいずれか1つ以上を指してよい。一実施形態では、眼細胞は双極細胞である。別の実施形態では、眼細胞は水平細胞である。別の実施形態では、眼細胞は神経節細胞である。
【0024】
本明細書で使用する場合、「哺乳類の対象」または「対象」という用語には、本明細書に記載の処置または予防をする方法を必要とする任意の哺乳類、特にヒトなどが含まれる。そのような処置または予防を必要とする他の哺乳類には、非ヒト霊長類等などを含めた、イヌ、ネコ、または他の飼育動物、ウマ、家畜、実験動物が挙げられる。対象は雄でも雌でもよい。
【0025】
本明細書で使用する場合、用語「宿主細胞」は、その内部でプラスミドからrAAVが産生されるパッケージング細胞株を指してよい。別の場合には、用語「宿主細胞」は、その内部で導入遺伝子の発現が所望される標的細胞を指してよい。
【0026】
A.AAVカプシド
本明細書に記載する組換え型AAVカプシドタンパク質は、天然型完全長(vp1)AAV8カプシド配列(配列番号34)と比較して、以下の領域、すなわち、i.アミノ酸263~267(配列番号78);ii.アミノ酸457~アミノ酸459;iii.アミノ酸455~アミノ酸459(配列番号81);またはiv.アミノ酸583~アミノ酸597(配列番号69)のうち少なくとも1つの領域において変異を有する可変タンパク質3(vp3)を特徴とする。そのようなカプシドを有するAAVは、AAV8に比べて標的組織における形質導入率が高い。本明細書に記載する新規なAAV、カプシド、及びその断片をコードする核酸配列も本発明によって包含される。
【0027】
本明細書で使用する場合、用語「天然型」は、カプシドタンパク質のi.アミノ酸263~267;ii.アミノ酸457~アミノ酸459;iii.アミノ酸455~アミノ
酸459;またはiv.アミノ酸583~アミノ酸597(AAV8の番号付けを使用)に変異のない天然型AAV配列を指す。ただし、天然に生じるAAV8が唯一の野生型配列源ということではない。本明細書で有用なものは天然には生じないAAVであり、それらには、限定することなく、組換え型、修飾または改変型、シャッフル型、キメラ型、ハイブリッド型、進化型、合成、人工等のAAVが含まれる。これには、カプシドのi.アミノ酸263~267;ii.アミノ酸457~アミノ酸459;iii.アミノ酸455~アミノ酸459;またはiv.アミノ酸583~アミノ酸597(AAV8の番号付けを使用)以外の領域に変異を有するAAVが含まれるが、それらの変異は、本明細書に記載する変異カプシド作製用の「開始配列」として使用されるものである。
【0028】
AAVカプシドは3つの重複するコード配列からなり、それらは代替的な開始コドンを使用するため長さが異なる。これらの可変タンパク質はVP1、VP2及びVP3と呼ばれ、VP1が最も長く、VP3が最も短い。AAV粒子は、3つの全てのカプシドタンパク質の比が約1:1:10(VP1:VP2:VP3)で構成される。N末端でVP1及びVP2に含まれているVP3は、粒子を作る主要構造成分である。カプシドタンパク質は、幾つかの異なる番号付けシステムを使用して参照することができる。便宜上、本明細書では、VP1の第1残基がアミノ酸1で開始されるVP1番号付けを使用してAAV配列を参照する。ただし、本明細書に記載するカプシドタンパク質には、タンパク質の対応する領域に変異を有する、VP1、VP2及びVP3(本明細書ではvp1、vp2及びvp3と同じ意味で使用されるの)が含まれる。AAV8では、可変タンパク質は、完全長VP1の番号付けを使用したVP1(アミノ酸1~738)、VP2(アミノ酸138~738)、及びVP3(アミノ酸204~738)に対応する。天然型AAV8 vp1のアミノ酸配列は配列番号34で示される。
【0029】
AAVカプシドは、AAV分離株全体を通して配列相違を最も多く示す9つの超可変領域(HVR)を含有している。参照により本明細書に組み込まれるGovindasamy et al,J Virol.2006 Dec;80(23):11556-70.Epub 2006 Sep 13を参照のこと。したがって、新たなベクターを合理的に設計する場合、HVRは豊富な標的となる。一実施形態では、AAVカプシドは、HVRVIII領域における変異を有する。一実施形態では、AAV8天然型配列と比較した場合にアミノ酸583~アミノ酸597に変異を有するAAVカプシドを提供する。一実施形態では、AAVカプシドは、下記表1に示すアミノ酸583~597配列を有する。本明細書には、表1に示すアミノ酸配列のうち1つが含まれるvp1、vp2及び/またはvp3の配列を有する、カプシドタンパク質及びカプシドタンパク質を有するrAAVが包含される。
【表1】
【0030】
HVR.1領域及びHVR.IV領域でさらなる変異を行った。したがって、一実施形態では、AAVカプシドは、アミノ酸263~アミノ酸267における変異を有する。一実施形態では、AAVカプシドは、263NGTSG267(配列番号78)-->SGTH(配列番号79)の変異を有する。別の実施形態では、AAVカプシドは、263NGTSG267(配列番号78)-->SDTH(配列番号80)の変異を有する。本明細書には、配列番号79または配列番号80のアミノ酸配列のうち1つが含まれるvp1、vp2及び/またはvp3の配列を有する、カプシドタンパク質及びカプシドタンパク質を有するrAAVが包含される。
【0031】
一実施形態では、AAVカプシドは、アミノ酸457~アミノ酸459における変異を有する。別の実施形態では、AAVカプシドは、アミノ酸455~アミノ酸459における変異を有する。一実施形態では、AAVカプシドは、457TAN459-->SRPの変異を有する。一実施形態では、AAVカプシドは、455GGTAN459(配列番号81)-->DGSGL(配列番号82)の変異を有する。本明細書には、配列番号79または配列番号80のアミノ酸配列のうち1つが含まれるvp1、vp2及び/またはvp3の配列を有する、カプシドタンパク質及びカプシドタンパク質を有するrAAVが包含される。
【0032】
別の実施形態では、AAV8カプシド(または本明細書に記載する他のAAVカプシド)のvp1/vp2ユニーク領域は、異なるカプシド由来のvp1/vp2領域で置き換えることができる。一実施形態では、vp1/vp2ユニーク領域を、rh.20のvp1/vp2ユニーク領域で置き換える。AAV8では、AAV8 vp1の番号付けを使用して場合、vp2はアミノ酸138にて、またvp3はアミノ酸204にて開始する。したがって、一実施形態では、AAV8のvp1/2領域(アミノ酸1~203)を別のカプシドの対応する部分(vp1/2)と交換する。交換されたカプシドのvp1/2領
域は、アミノ酸長が同一であっても異なっていてもよい。例えば、AAVrh.20では、vp1/2領域はその配列(配列番号88)のアミノ酸1~202に及ぶ。Limberis et al,Mol Ther.2009 Feb;17(2):294-301(参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。別の実施形態では、vp1/vp2ユニーク領域を、AAV1、AAV6、AAV9、rh.8、rh.10、rh.20、hu.37、rh.2R、rh.43、rh.46、rh.64R1、hu.48R3、またはcy.5R4のvp1/vp2ユニーク領域で置き換える。vp1/2領域は、当該技術分野で利用可能なアラインメントに基づいて容易に決定することができる。例えば、参照により本明細書に組み込まれるWO2006/110689を参照のこと。
【0033】
AAVカプシドのvp1のORFには第2のORFが含まれ、AAVの集合活性化タンパク質(AAP)をコードする。ORF2のAAPコード配列が先に開始してから、VP3コード配列が開始される。AAV8 AAP天然型コード配列は配列番号35で示される。天然型AAPアミノ酸配列は配列番号36で示される。一実施形態では、AAV VP1のORFを変異させ、代替的AAPアミノ酸配列にする。したがって、一実施形態では、AAV vp1核酸配列は、天然型AAV8コード配列と少なくとも95%の同一性を共有する。別の実施形態では、AAV vp1核酸配列には、配列番号37で示されるORF2(AAPコード配列)が含まれる。別の実施形態では、AAVのAAPアミノ酸配列は配列番号38で示される。参照により本明細書に組み込まれるSonntag et al,A viral assembly factor promotes AAV2 capsid formation in the nucleolus,Proc Natl Acad Sci USA.2010 Jun 1;107(22):10220-10225を参照のこと。
【0034】
下記例に示すように、発明者らは、AAV3G1と呼ぶAAV(AAV8.TripleまたはTripleと呼ぶ場合もある)は肝臓、筋肉及び気道上皮に効率的に形質導入することを示した。事実、AAV3G1は、i.m.及びi.v.のいずれでも天然型AAV8と比べて約10倍増の形質導入率を示し、CB7.CI.ffルシフェラーゼ、CMV.LacZ及びtMCK.ヒトF9などのさまざまな導入遺伝子カセットを有する。AAV3G1変異体でさらに認められた有益性は、サル及びヒトのさまざまな抗血清、ならびにヒトIVIGに対する耐性(ヒトIVIGに関して、AAV8の2~4倍レベル)を示すことである。さらに、AAV3G1の鼻腔内投与により、気道上皮への形質導入効率がAAV8より2~3倍高くなった。したがって、一実施形態では、AAVカプシドは、配列番号18に示すようなAAV3G1配列を有する。
【0035】
下記例に示すように、AAV8.T20と呼ぶAAVは、AAV8より約10倍高いレベルで気道上皮に形質導入する。したがって、一実施形態では、AAVカプシドは、配列番号20に示すAAV8.T20の配列を有する。
【0036】
下記例に示すように、AAV8.TR1と呼ぶAAVは肝臓に効率的に形質導入する。したがって、一実施形態では、AAVカプシドは、配列番号22に示すAAV8.TR1の配列を有する。
【0037】
別の実施形態では、配列番号2で示される配列を有するAAVカプシドを提供する。別の実施形態では、配列番号4で示される配列を有するAAVカプシドを提供する。別の実施形態では、配列番号6で示される配列を有するAAVカプシドを提供する。別の実施形態では、配列番号8で示される配列を有するAAVカプシドを提供する。別の実施形態では、配列番号10で示される配列を有するAAVカプシドを提供する。別の実施形態では、配列番号12で示される配列を有するAAVカプシドを提供する。別の実施形態では、配列番号14で示される配列を有するAAVカプシドを提供する。別の実施形態では、配
列番号16で示される配列を有するAAVカプシドを提供する。別の実施形態では、配列番号18で示される配列を有するAAVカプシドを提供する。別の実施形態では、配列番号20で示される配列を有するAAVカプシドを提供する。別の実施形態では、配列番号22で示される配列を有するAAVカプシドを提供する。別の実施形態では、配列番号24で示される配列を有するAAVカプシドを提供する。別の実施形態では、配列番号26で示される配列を有するAAVカプシドを提供する。別の実施形態では、配列番号28で示される配列を有するAAVカプシドを提供する。別の実施形態では、配列番号30で示される配列を有するAAVカプシドを提供する。別の実施形態では、配列番号32で示される配列を有するAAVカプシドを提供する。別の実施形態では、AAVカプシドは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30または32(vp1配列を示す)のいずれかに示すようなvp1、vp2またはvp3タンパク質を有する。
【0038】
別の態様では、本明細書に記載するAAVウイルス、カプシド及び断片をコードする核酸配列を提供する。したがって、一実施形態では、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30または32をコードする核酸を提供する。一実施形態では、AAV3G1カプシド(配列番号18)をコードする核酸を提供する。別の実施形態では、AAV8.T20カプシド(配列番号20)をコードする核酸を提供する。別の実施形態では、AAV8.TR1カプシド(配列番号22)をコードする核酸を提供する。一実施形態では、AAV3G1をコードする核酸配列は配列番号17で示される。一実施形態では、AAV8.T20をコードする核酸配列は配列番号19で示される。一実施形態では、AAV8.TR1をコードする核酸配列は配列番号21で示される。別の実施形態では、カプシドをコードする核酸配列は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29もしくは31で示されるか、またはこれらの配列のいずれかと少なくとも80%の同一性を共有する配列である。別の実施形態では、核酸分子は機能性AAV repタンパク質もコードする。
【0039】
B.rAAVベクター及び組成物
別の態様では、異種遺伝子または他の核酸配列を標的細胞に送達する際に有用なウイルスベクターを作製するための本明細書に記載のAAVカプシド配列(その断片を含む)を利用する分子を本明細書に記載する。一実施形態では、本明細書に記載する組成物及び方法において有用なベクターは、本明細書に記載の選択AAVカプシド、例えば、AAV3G1カプシド、AAV8.T20カプシドもしくはAAV.TR1カプシド、またはその断片、をコードする配列を最低限含有する。別の実施形態では、有用なベクターは、選択したAAVの血清型のrepタンパク質、例えば、AAV8 repタンパク質、またはその断片をコードする配列を最低限含有する。任意選択で、そのようなベクターは、AAVのcapとrepの両タンパク質を含有してよい。AAVのrep及びcapの両方が提供されるベクターでは、AAV rep配列及びAAV cap配列のいずれも1つの血清型に由来する、例えば、全てAAV8由来などであり得る。別法として、rep配列が、cap配列を提供する野生型AAVとは異なるAAVに由来するベクターを使用してよい。一実施形態では、rep配列及びcap配列を別々の材料(例えば、別々のベクター、または宿主細胞とベクター)で発現させる。別の実施形態では、これらのrep配列を、異なるAAVの血清型のcap配列にインフレームで融合させ、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,282,199号に記載のAAV2/8のようなキメラ型AAVベクターを形成する。任意選択で、ベクターは、両側でAAVの5’ITR及びAAVの3’ITRが隣接する選択導入遺伝子を含むミニ遺伝子をさらに含有する。別の実施形態では、AAVは自己相補型(self-complementary)AAV(sc-AAV)である(参照により本明細書に組み込まれるUS2012/0141422を参照のこと)。自己相補型ベクターには、複数のベクターゲノム間でのDNA合成また
は塩基対形成を必要とせずにdsDNAに折り畳み可能な逆位反復配列ゲノムがパッケージングされている。scAAVは、発現に先立って一本鎖DNA(ssDNA)ゲノムを二本鎖DNA(dsDNA)に変換する必要がないので、より効率的なベクターである。ただし、この効率と引き替えにベクターのコード能力は半減するため、ScAAVは、低分子タンパク質をコードする遺伝子(最高約55kd)及び現在利用可能なRNAによる任意の治療にとって有用である。
【0040】
一態様では、本明細書に記載するベクターは、本明細書に記載する無傷のAAVカプシドをコードする核酸配列を含有する。一実施形態では、カプシドは、配列番号18、20または22のアミノ酸1~738を含む。別の実施形態では、AAVは、天然型AAV8(配列番号34)と比較した場合に、以下の領域、すなわち、i.アミノ酸263~267(配列番号78);ii.アミノ酸457~アミノ酸459;iii.アミノ酸455~アミノ酸459(配列番号81);またはiv.アミノ酸583~アミノ酸597(配列番号69)のうち少なくとも1つの領域において変異を含む組換え型AAVカプシドを有する。一実施形態では、AAVは、AAV8に比べて標的組織における形質導入率が高い。一実施形態では、AAVは、263NGTSG267(配列番号78)-->SGTH(配列番号79)、または263NGTSG267(配列番号78)-->SDTH(配列番号80)を含む変異を有する。別の実施形態では、AAVは、457TAN459-->SRP、または455GGTAN459(配列番号81)-->DGSGL(配列番号82)を含む変異を有する。さらに別の実施形態では、AAVは、583ADNLQQQNTAPQIGT597(配列番号69)-->GDNLQLYNTAPGSVF(配列番号70)を含む変異を有する。別の実施形態では、AAVは、以下の変異、すなわち、263NGTSG267(配列番号78)-->SGTH(配列番号79)、457TAN459-->SRP、及び583ADNLQQQNTAPQIGT597(配列番号69)-->GDNLQLYNTAPGSVF(配列番号70)を有する。
【0041】
別の実施形態では、AAVはカプシドタンパク質を有し、ここで、前記VP1/VP2ユニーク領域は、AAV8とは異なるカプシドに由来するVP1/VP2ユニーク領域で置き換えられている。一実施形態では、VP1/VP2ユニーク領域は、AAVrh.20由来である。一実施形態では、rh.20 vp1配列は配列番号88である。
【0042】
1つのAAVのカプシドが異種カプシドタンパク質で置き換えられているシュードタイプ化ベクターは、本明細書において有用である。例示するため、AAV2のITRを有する、本明細書に記載するAAV8変異カプシドを用いるAAVベクターを、以下に記載の例で使用する。Mussolino et al,上記引用を参照のこと。特に明記しない限り、AAVのITR、及び本明細書に記載する他の選択AAV成分は、限定することなく、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9または既知及び不明の他のAAV血清型など、AAVの任意の血清型から個別に選択されてよい。望ましい一実施形態では、血清型が2型のAAVのITRを使用する。ただし、他の好適な血清型由来のITRを選択してよい。これらのITRまたは他のAAV成分は、当業者に利用可能になっている技術を使用して、AAVの血清型から容易に単離され得る。そのようなAAVは、単離しても、または学術、商用、または公共の供給源(例えば、the American Type Culture Collection,Manassas,VA)から入手してもよい。別法として、AAV配列は、合成を介して得ても、または文献、もしくは、例えば、GenBank、PubMed等のようなデータベースにて利用可能なものなど、公開済み配列の参照による他の好適な手段を介して得てもよい。一実施形態では、AAVは配列番号17の配列を含み、これはAAV3G1の完全長DNAコード配列に対応する。別の実施形態では、AAVは配列番号19の配列を含み、これはAAV8.T20の完全長DNA配列に対応する。別の実施形態では、AAVは配列番号21の配列を含み、これはAAV8.TR1の完全長DNA配
列に対応する。
【0043】
本明細書に記載するrAAVは、ミニ遺伝子も含む。ミニ遺伝子は、最低限、以下に記載のような異種核酸配列(導入遺伝子)、及びその制御配列、ならびに5’及び3’の各AAV末端逆位反復配列(ITR)で構成される。カプシドタンパク質にパッケージングされ、選択標的細胞まで送達されるのは、このミニ遺伝子である。
【0044】
導入遺伝子は、それに隣接するベクター配列とは異種の核酸配列であり、これは、関心対象のポリペプチド、タンパク質、または他の産物をコードする。核酸コード配列は、標的細胞において導入遺伝子の転写、翻訳、及び/または発現が可能になる様態で制御成分に機能的に連結されている。異種核酸配列(導入遺伝子)は、いかなる生物に由来してもよい。AAVは、1つ以上の導入遺伝子を含んでよい。
【0045】
導入遺伝子配列の組成は、得られるベクターをどの用途に置くかに依存することになる。例えば、ある種の導入遺伝子配列には、レポーター配列が含まれ、発現と同時に検出可能なシグナルを発する。そのようなレポーター配列には、限定することなく、β-ラクタマーゼ、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ、チミジンキナーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、増強GFP(EGFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、膜結合型タンパク質、例えば、CD2、CD4、CD8、ヘマグルチニンタンパク質、及び当該技術分野で周知のもので、それに指向する高親和性抗体が存在するかまたは従来の手段で作製可能なものなど、ならびに抗原タグドメイン、なかでも、ヘマグルチニンまたはMycに由来するものと適切に融合された膜結合型タンパク質を含む融合タンパク質をコードするDNA配列が含まれる。
【0046】
これらのコード配列は、かかる配列の発現を誘導してくれる調節エレメントと会合すると、酵素、X線、比色法、蛍光または他の分光法によるアッセイ、蛍光標示式細胞分取法、ならびに酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)及び免疫組織化学を含む免疫学的測定法など、従来の手段で検出可能なシグナルを発する。例えば、マーカー配列がLacZ遺伝子である場合、そのシグナルを持っているベクターの存在がベータ-ガラクトシダーゼ活性用アッセイによって検出される。導入遺伝子が緑色蛍光タンパク質またはルシフェラーゼである場合、そのシグナルを持っているベクターを、ルミノメーターで得られる色または光によって目視で測定してよい。
【0047】
しかしながら、導入遺伝子は、生物学及び医学において有用な産物、例えば、タンパク質、ペプチド、RNA、酵素、ドミナントネガティブ変異体、または触媒RNAなどをコードする非マーカー配列であることが望ましい。望ましいRNA分子には、tRNA、dsRNA、リボソームリボ核酸、触媒RNA、siRNA、短ヘアピンRNA、トランススプライシングRNA、及びアンチセンスRNAが挙げられる。有用なRNA配列の一例は、処置を受けた動物において標的とした核酸配列の発現を阻害するかまたは消失させる配列である。典型的に、好適な標的配列には、腫瘍学的標的及びウイルス性疾患が含まれる。そのような標的の例は、下記の免疫原に関連する項で特定されている腫瘍学的な標的及びウイルスを参照のこと。
【0048】
導入遺伝子を使用して遺伝子欠損を修正または改善してよく、かかる欠損には、正常遺伝子が正常レベルより少ないレベルで発現している欠損、または機能性遺伝子産物が発現していない欠損が含まれ得る。別法として、導入遺伝子は、その細胞型または宿主において天然では発現されない産物をかかる細胞に提供してよい。好ましい型の導入遺伝子配列は、宿主細胞に発現させる治療用のタンパク質またはポリペプチドをコードする。本発明には、複数の導入遺伝子を使用することがさらに含まれる。特定の状況では、異なる導入
遺伝子を使用して、タンパク質の各サブユニットをコードさせても、または異なるペプチドまたはタンパク質をコードさせてもよい。これは、タンパク質サブユニットをコードするDNAサイズが大きい場合、例えば、免疫グロブリン、血小板由来成長因子、またはジストロフインタンパク質の場合に望ましい。細胞がマルチサブユニットタンパク質を産生するために、細胞を、各種サブユニットの各々を含有する組換え型ウイルスに感染させる。別法として、タンパク質の各種サブユニットは、同一の導入遺伝子によりコードされてよい。この場合、単一導入遺伝子には、サブユニットの各々をコードするDNAが含まれ、各サブユニットに対するDNAは配列内リボザイム進入部位(IRES)により区切られている。これは、サブユニットの各々をコードするDNAサイズが小さい場合、例えば、サブユニット及びIRESをコードするDNAの合計サイズが5キロ塩基未満の場合に望ましい。IRESの代替として、翻訳後イベントにおいて自己切断する2Aペプチドをコードする配列によりDNAを区切ってよい。例えば、M.L.Donnelly,et
al,J.Gen.Virol.,78(Pt 1):13-21(Jan 1997);Furler,S.,et al,Gene Ther.,8(11):864-873(June 2001);Klump H.,et al.,Gene Ther.,8(10):811-817(May 2001)を参照のこと。この2Aペプチドは、IRESよりはるかに小さく、空間が制限要因となる場合の使用に非常に適している。より頻度が多いのは、導入遺伝子が、大きい場合、マルチサブユニットからなる場合、または2つの導入遺伝子を同時送達する場合に、所望の導入遺伝子(複数可)またはサブユニットを担持するrAAVを同時投与し、生体内でコンカタマー化して単一ベクターゲノムを形成するようにすることである。そのような実施形態では、第1のAAVは単一導入遺伝子を発現する発現カセットを担持してよく、第2のAAVは宿主細胞での共発現用の異なる導入遺伝子を発現する発現カセットを担持してよい。ただし、選択導入遺伝子は、任意の生物学的に活性な産物または他の産物、例えば、試験に望ましい産物をコードしてよい。
【0049】
導入遺伝子によってコードされる有用な治療用産物には、ホルモンならびに増殖因子及び分化因子が含まれ、これには、インスリン、グルカゴン、成長ホルモン(GH)、副甲状腺ホルモン(PTH)、成長ホルモン放出因子(GRF)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、アンジオポエチン、アンジオスタチン、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、エリスロポエチン(EPO)、結合組織増殖因子(CTGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性線維芽細胞増殖因子(aFGF)、上皮成長因子(EGF)、トランスフォーミング増殖因子α(TGFα)、血小板由来成長因子(PDGF)、インスリン成長因子I及びII(IGF-I及びIGF-II)、トランスフォーミング増殖因子βスーパーファミリー(TGFβ、アクチビン、インヒビン、または任意の骨形成タンパク質(BMP)BMP1~BMP15を含む)のいずれか1つ、成長因子のヘレグルイン(heregluin)/ニューレグリン/ARIA/neu分化因子(NDF)ファミリーのいずれか1つ、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィンNT-3とNT-4/5、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン、アグリン、セマフォリン/コラプシンのファミリーのいずれか1つ、ネトリン-1及びネトリン-2、肝細胞増殖因子(HGF)、エフリン、ノギン、ソニック・ヘッジホッグならびにチロシンヒドロキシラーゼが挙げられるが、これに限定されない。
【0050】
他の有用な導入遺伝子産物には、サイトカインとリンホカイン、例えば、トロンボポチエン(TPO)、IL-1からIL-25までのインターロイキン(IL)(IL-2、IL-4、IL-12、及びIL-18を含む)など、単球走化性タンパク質、白血病抑制性因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、Fasリガンド、腫瘍壊死因子αと腫瘍壊死因子β、インターフェロンのα、β、及びγ、幹細胞因子、flk-2/flt
3リガンドを含むが、これに限定されない免疫系制御タンパク質が含まれる。免疫系により産生される遺伝子産物もまた本発明では有用である。これらには、免疫グロブリン(IgG、IgM、IgA、IgD及びIgE)、キメラ型免疫グロブリン、ヒト化抗体、一本鎖抗体、T細胞受容体、キメラ型T細胞受容体、一本鎖T細胞受容体、クラスI及びクラスIIのMHC分子、ならびに工学的に操作された免疫グロブリン及びMHC分子が含まれるが、これに限定されない。有用な遺伝子産物には、補体調節タンパク質、メンブレンコファクタープロテイン(MCP)、崩壊促進因子(DAF)、CR1、CF2及びCD59などの補体調節タンパク質も含まれる。
【0051】
他に有用なさらなる遺伝子産物には、ホルモン、成長因子、サイトカイン、リンホカイン、調節タンパク質及び免疫系タンパク質に対する各受容体のいずれか1つが挙げられる。本発明は、低比重リポタンパク質(LDL)受容体、高比重リポタンパク質(HDL)受容体、超低比重リボタンパク質(VLDL)受容体、及びスカベンジャー受容体など、コレステロール調節のための受容体を包含する。本発明は、遺伝子産物、例えば、グルココルチコイド受容体及びエストロゲン受容体を含むステロイドホルモン受容体スーパーファミリーメンバー、ビタミンD受容体ならびに他の核内受容体も包含する。さらに、有用な遺伝子産物には、転写因子、例えば、jun、fos、最大、mad、血清応答因子(SRF)、AP-1、AP2、myb、MyoDとミオゲニン、ETSボックス含有タンパク質、TFE3、E2F、ATF1、ATF2、ATF3、ATF4、ZF5、NFAT、CREB、HNF-4、C/EBP、SP1、CCAATボックス結合タンパク質、インターフェロン制御因子(IRF-1)、ウィルムス腫瘍タンパク質、ETS結合タンパク質、STAT、GATAボックス結合タンパク質、例えば、GATA-3、ならびにウィングドヘリックスタンパク質のフォークヘッドファミリーなどが含まれる。
【0052】
他の有用な遺伝子産物には、カルバモイル合成酵素I、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギニノコハク酸合成酵素、アルギニノコハク酸リアーゼ、アルギナーゼ、フマリルアセト酢酸加水分解酵素、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、アルファ-1抗トリプシン、グルコース-6-ホスファターゼ、ポルホビリノーゲンデアミナーゼ、第VIII因子、第IX因子、シスタチオン(cystathione)ベータ合成酵素、分岐鎖ケト酸デカルボキシラーゼ、アルブミン、イソバレリルcoAデヒドロゲナーゼ、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ、メチルマロニルCoAムターゼ、グルタリルCoAデヒドロゲナーゼ、インスリン、ベータ-グルコシダーゼ、ピルビン酸カルボキシラート(pyruvate carboxylate)、肝臓ホスホリラーゼ、ホスホリラーゼキナーゼ、グリシンデカルボキシラーゼ、H-タンパク質、T-タンパク質、嚢胞性線維症膜貫通調節因子(CFTR)配列、及びジストロフインcDNA配列が含まれる。他に有用なさらなる遺伝子産物には、酵素補充療法で有用であり得る酵素が挙げられ、これは、酵素作用の欠乏に起因するさまざまな状態に有用である。例えば、マンノース-6-リン酸を含有する酵素はリソソーム蓄積症の治療に用いられ得る(例えば、好適な遺伝子には、β-グルクロニダーゼ(GUSB)をコードする遺伝子が含まれる)。
【0053】
他の有用な遺伝子産物には、天然には生じないポリペプチド、例えば、挿入、欠失またはアミノ酸置換が含有される天然には生じないアミノ酸配列を有するキメラ型またはハイブリッド型ポリペプチドが含まれる。例えば、一本鎖の工学的に操作された免疫グロブリンは特定の免疫不全患者において有用となり得るであろう。他の種類の天然には生じない遺伝子配列には、アンチセンス分子及び触媒核酸、例えばリボザイムなどが含まれ、それを使用して標的の過剰発現を抑制することができるであろう。
【0054】
遺伝子の発現の抑制及び/または調節は、がん及び乾癬のような高増殖細胞を特徴とする高増殖性病態の治療に特に望ましい。標的ポリペプチドには、正常細胞と比較した場合に、高増殖細胞で排他的に産生されるかまたは高レベルで産生されるポリペプチドが含ま
れる。標的抗原には、myb、myc、fynのようながん遺伝子ならびに転座遺伝子bcr/abl、ras、src、P53、neu、trk及びEGRFによってコードされるポリペプチドが挙げられる。標的抗原としてのがん遺伝子産物に加え、抗がん治療及び保護レジメンの標的ポリペプチドには、B細胞リンパ腫により作られる抗体の可変領域及びT細胞性リンパ腫のT細胞受容体の可変領域が含まれ、これらも、いくつかの実施形態では、自己免疫疾患の標的抗原として使用される。他の腫瘍関連ポリペプチドを標的ポリペプチドとして使用することができ、例えば、モノクローナル抗体17-1Aによって認識されるポリペプチド及び葉酸結合ポリペプチドを含め、腫瘍細胞に高レベルで見られるポリペプチドなどを標的ポリペプチドとして使用できる。
【0055】
他の好適な治療用のポリペプチド及びタンパク質には、自己を対象にする抗体を産生する細胞受容体及び細胞など、自己免疫に関連した標的に対し、広範な防御免疫応答を付与することによって自己免疫性の疾患及び障害に苦しむ個人を治療するのに有用であり得るものが含まれる。T細胞媒介性自己免疫疾患には、関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、シェーグレン症候群、サルコイドーシス、インスリン依存性真性糖尿病(IDDM)、自己免疫性甲状腺炎、反応性関節炎、強直性脊椎炎、強皮症、多発(性)筋炎、皮膚筋炎、乾癬、血管炎、ウェゲナー肉芽腫症、クローン病及び潰瘍性大腸炎が挙げられる。これらの疾患の各々は、自己免疫疾患に関連する内在性抗原に結合して炎症カスケードを開始するT細胞受容体(TCR)により特徴付けられる。
【0056】
別法として、または追加として、本発明のベクターは、本発明のAAV配列、及び選択免疫原に対する免疫応答を誘導する、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質をコードする導入遺伝子を含有してよい。例えば、免疫原は、多種多様なウイルスファミリーから選択されてよい。それに対する免疫応答が望ましいと考えられる望ましいウイルスファミリーの例には、ピコルナウイルス科が含まれ、これには、感冒の約50%の症例の原因となっているライノウイルス属;ポリオウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、及びヒトエンテロウイルス、例えばA型肝炎ウイルスを含むエンテロウイルス属;及び主に非ヒト動物における口蹄疫の原因である口蹄疫ウイルス属が含まれる。ウイルスのピコルナウイルス科内では、標的抗原にはVP1、VP2、VP3、VP4、及びVPGが含まれる。別のウイルス科には、流行性胃腸炎の主要病原体であるノーウォーク群のウイルスを包含するカリシウイルス科が含まれる。ヒト及び非ヒト動物に免疫応答を誘発させるために抗原指向で使用するのに望ましいさらに別のウイルス科はトガウイルス科であり、この科には、シンドビスウイルス、ロスリバーウイルス、及びベネズエラウマ脳炎、東部ウマ脳炎&西部ウマ脳炎のウイルスを含むアルファウイルス属、ならびにルビウイルス(風疹ウイルスを含む)が含まれる。Flaviviridae科には、デングウイルス、黄熱ウイルス、日本脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス及びダニ媒介性脳炎ウイルスが含まれる。他の標的抗原は、C型肝炎ウイルスまたはコロナウイルス科から生じるものであってよく、これには、多数の非ヒトウイルス、例えば、感染性気管支炎ウイルス(家禽)、ブタ伝染性胃腸炎ウイルス(ブタ)、ブタ血球凝集性脳脊髄炎ウイルス(ブタ)、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス(ネコ)、ネコ腸コロナウイルス(ネコ)、イヌコロナウイルス(イヌ)、及びヒト呼吸器コロナウイルスなどが含まれ、それらは、感冒及び/またはA型、B型もしくはC型以外の肝炎を引き起こし得る。コロナウイルス科内では、標的抗原には、E1(Mまたは基質タンパク質とも呼ばれる)、E2(Sまたはスパイクタンパク質とも呼ばれる)、E3(HEまたはヘマグルチン-エルテロース(hemagglutin-elterose)とも呼ばれる)糖タンパク質(全てのコロナウイルスに存在するわけではない)、またはN(ヌクレオカプシド)が含まれる。ラブドウイルス科に対しては、さらに他の抗原を標的としてよく、それらには、ベシクロウイルス属(例えば、水胞性口炎ウイルス)、及びリッサウイルス全般(例えば、狂犬病)が含まれる。ラブドウイルス科内では、好適な抗原はGタンパク質またはNタンパク質に由来してよい。Filoviridae科にはマールブルグなどの出血熱ウイルスが含まれ、エボラウイ
ルスは好適な抗原供給源であり得る。パラミクソウイルス科には、パラインフルエンザウイルス1型、パラインフルエンザウイルス3型、ウシパラインフルエンザウイルス3型、ルブラウイルス(ムンプスウイルス、パラインフルエンザウイルス2型、パラインフルエンザウイルス4型、ニューカッスル病ウイルス(ニワトリ)、牛疫、モルビリウイルスが含まれ、このモルビリウイルスには、麻疹及びイヌジステンパー、及びニューモウイルスが含まれ、ニューモウイルスには呼吸器合胞体ウイルスが含まれる。インフルエンザウイルスはオルトミクソウイルス科に分類され、好適な抗原供給源である(例えば、HAタンパク質、N1タンパク質)。ブニヤウイルス科には、ブニヤウイルス属(カリフォルニア脳炎、ラクロス)、フレボウイルス(リフトバレー熱)、ハンタウイルス(プレマラ(puremala)はヘマハギン(hemahagin)熱ウイルス)、ナイロウイルス(ナイロビ羊病)及びさまざまな未割当のブンガウイルス(bungavirus)が含まれる。アレナウイルス科は、LCM及びラッサ熱ウイルスに対する抗原供給源を提供する。レオウイルス科には、レオウイルス属、ロタウイルス属(小児急性胃腸炎を引き起こす)、オルビウイルス属、及びクルチウイルス(cultivirus)(コロラドダニ熱、レボンボ(ヒト)、ウマ脳症、ブルータング)が含まれる。
【0057】
レトロウイルス科には、亜科オンコリウイルス(oncorivirinal)が含まれ、ネコ科白血病ウイルス、HTLVI及びHTLVII、レンチウイルス(lentivirinal)、のようなヒト疾患及び獣医疾患を包含する(これらには、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウマ伝染性貧血ウイルス、及びスプマウイルス(spumavirinal)、が含まれる)。HIVとSIVの間で、多くの好適な抗原が記載されており、容易に選択することができる。好適なHIV及びSIV抗原の例には、限定することなく、gag、pol、Vif、Vpx、VPR、Env、Tat及びRevといったタンパク質、ならびにその各種断片が含まれる。さらに、これらの抗原に対するさまざまな修飾が記載されている。これを目的とした好適な抗原は当業者に公知である。例えば、他のタンパク質の中でもgag、pol、Vif、及びVpr、Env、Tat及びRevをコードする配列を選択してよい。例えば、米国特許第5,972,596号に記載の修飾gagタンパク質を参照のこと。また、D.H.Barouch et al,J.Virol.,75(5):2462-2467(March 2001)、及びR.R.Amara,et
al,Science,292:69-74(6 April 2001)に記載のHIVタンパク質及びSIVタンパク質を参照のこと。これらのタンパク質またはそのサブユニットは、単独で送達するか、または別々のベクターにして組み合わせるか、もしくは組み合わせた単一ベクターにして送達してよい。
【0058】
パポーバウイルス科には、亜科のポリオーマウイルス(BKU及びJCUウイルス)及び亜科のパピローマウイルス(がんまたは乳頭腫の悪性進行に関連する)が含まれる。アデノウイルス科には、呼吸器疾患及び/または腸炎を引き起こすウイルス(EX、AD7、ARD、O.B.)が含まれる。パルボウイルス科のネコパルボウイルス(ネコ腸炎)、ネコ汎白血球減少症ウイルス、イヌパルボウイルス、及びブタパルボウイルスがある。ヘルペスウイルス科には、単純ウイルス属(HSVI、HSVII)、バリセロウイルス属(仮性狂犬病ウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス)を包含するアルファヘルペスウイルス亜科、ならびにサイトメガロウイルス属(HCMV、ムロメガロウイルス(muromegalovirus))を含むベータヘルペスウイルス亜科、ならびにリンフォクリプトウイルス属、EBV(バーキットリンパ腫)、感染性鼻気管炎ウイルス、マレック病ウイルス、及びラジノウイルスを含むガンマヘルペスウイルス亜科が含まれる。ポックスウイルス科には、オルソポックスウイルス属(痘瘡(天然痘)及びワクシニア(牛痘)属、パラポックスウイルス属、トリポックスウイルス属、カプリポックスウイルス属、レポリポックスウイルス属、スイポックスウイルス属を包含するコルドポックスウイルス亜科、ならびにエントモポックスウイルス亜科が含まれる。ヘパドナウイルス科には、B型肝炎
ウイルスが含まれる。抗原供給源として好適であり得る未割当のウイルスの一つはデルタ肝炎ウイルスである。さらなる他のウイルス供給源には、トリ鷄伝染性ファブリキウス嚢病及びブタ呼吸・繁殖障害症候群ウイルスが含まれ得る。アルファウイルス科には、ウマ動脈炎ウイルス及び各種脳炎ウイルスが含まれる。
【0059】
本発明は、ヒト及び非ヒト脊椎動物を感染させる細菌、真菌類、寄生微生物もしくは多細胞性寄生虫を含む他の病原体、またはがん細胞または腫瘍細胞由来の病原体に対してヒトまたは非ヒト動物を免疫するのに有用な免疫原も包含し得る。細菌病原体の例には、肺炎球菌;ブドウ球菌;及びレンサ球菌を含む病原性グラム陽性球菌が含まれる。病原性グラム陰性球菌には、髄膜炎菌、淋菌が含まれる。病原性腸溶性グラム陰性桿菌には、enterobacteriaceae;pseudomonas、アシネトバクター及びeikenella;類鼻疽;salmonella;shigella;haemophilus;moraxella;H.ducreyi(軟性下疳を引き起こす);brucella;Franisella tularensis(野兎病を引き起こす);yersinia(パスツレラ属);streptobacillus moniliformis及びspirillumが含まれ、グラム陽性桿菌には、listeria monocytogenes;erysipelothrix rhusiopathiae;Corynebacterium diphtheria(ジフテリア);cholera;B.anthracis(炭疽);donovanosis(鼠径肉芽腫);及びバルトネラ症が含まれる。病原性嫌気性菌によって生じる疾患には、破傷風;ボツリヌス中毒;他のクロストリジウム;結核;らい病;及び他のマイコバクテリアが含まれる。病原性スピロヘータによる疾患には、梅毒;トレポネーマ症:イチゴ腫、ピンタ及び地方病性梅毒;及びレプトスピラ症が含まれる。病原性の高い細菌及び病原性真菌類によって生じる他の感染症には、アクチノミセス症;ノカルジア症;クリプトコッカス症、醸母菌症、ヒストプラスマ症及びコクチジオイデス真菌症;カンジダ症、アスペルギルス症、及びムコール症;スポロトリクム症;パラコクシジオイデス症、ペトリエリジオーシス(petriellidiosis)、トルロプシス症、菌腫及びクロモミコーシス;及び皮膚糸状菌症が含まれる。リケッチア感染には、チフス熱、ロッキー山紅斑熱、Q熱、及びリケッチア痘症が含まれる。マイコプラズマ感染及びクラミジア感染の例には、肺炎マイコプラズマ;性病性リンパ肉芽腫;オウム病;及び周産期クラミジア感染が含まれる。病原性真核生物は、病原性の原虫及び蠕虫ならびにそれにより生じる感染を包含し、それには、アメーバ症;マラリア;リーシュマニア症;トリパノソーマ症;トキソプラズマ症;Pneumocystis carinii;Trichans;Toxoplasma
gondii;バベシア症;ジアルジア症;施毛虫症;フィラリア症;住血吸虫症;線虫;吸虫(trematode)または吸虫(fluke);及び条虫(cestode)(条虫(tapeworm))による感染が含まれる。
【0060】
これらの生物及び/またはその産生毒素の多くは、Centers for Disease Control[(CDC)、Department of Health and Human Services,USA]により、生物攻撃で使用される可能性を秘める病原体として同定されている。例えば、これらの生物病原体には、いずれも現在カテゴリA病原体に分類されているBacillus anthracis(炭疽)、Clostridium botulinum及びその毒素(ボツリヌス中毒)、Yersinia pestis(ペスト)、大痘瘡(天然痘)、Francisella tularensis(野兎病)、及びウイルス性出血熱;Coxiella burnetti(Q熱);いずれも現在カテゴリB病原体に分類されているBrucella種(ブルセラ症)、Burkholderia mallei(鼻疽)、Ricinus communis及びその毒素(リシン毒素)、Clostridium perfringens及びその毒素(イプシロン毒素)、Staphylococcus種及びその毒素(エンテロトキシンB);ならびに現在カテゴリC病原体に分類されているニパン(Nip
an)ウイルス及びハンタウイルスが含まれる。さらに、そのように分類されているか、または異なって分類されている他の生物は、今後そのような目的のために同定及び/または使用され得る。本明細書に記載するウイルスベクター及び他の構成体は、これらの生物、ウイルス、その毒素または他の副生成物に由来する抗原を送達するために有用であり、それにより、これらの生物病原体との感染または他の有害反応が予防及び/または治療されるであろうことを容易に理解されるであろう。
【0061】
本発明のベクターを投与してT細胞の可変領域に対する免疫原を送達することにより、CTLなど免疫応答を誘発してそれらのT細胞を排除する。関節リウマチ(RA)では、疾患に関与する、T細胞受容体(TCR)の幾つかの特定の可変領域が明らかにされている。これらのTCRには、V-3、V-14、V-17及びVα-17が含まれる。したがって、これらのポリペプチドの少なくとも1つをコードする核酸配列の送達により、RAに関与するT細胞を標的とするであろう免疫応答が誘発されることになる。多発性硬化症(MS)では、疾患に関与するTCRの幾つかの特定の可変領域が明らかにされている。これらのTCRには、V-7及びVα-10が含まれる。したがって、これらのポリペプチドの少なくとも1つをコードする核酸配列の送達により、MSに関与するT細胞を標的とするであろう免疫応答が誘発されることになる。強皮症では、疾患に関与するTCRの幾つかの特定の可変領域が明らかにされている。これらのTCRには、V-6、V-8、V-14及びVα-16、Vα-3C、Vα-7、Vα-14、Vα-15、Vα-16、Vα-28及びVα-12が含まれる。したがって、これらのポリペプチドの少なくとも1つをコードする核酸分子の送達により、強皮症に関与するT細胞を標的とするであろう免疫応答が誘発されることになる。
【0062】
望ましい一実施形態では、光遺伝学的治療を提供するよう導入遺伝子を選択する。光遺伝学的治療では、網膜神経回路に残存する生存細胞型に光活性化チャネルまたはポンプを遺伝子送達することによって人工視細胞を構築する。これは、視細胞機能の相当量を喪失しているが、神経節細胞への双極細胞回路及び視神経は無傷で残っている患者に特に有用である。一実施形態では、異種核酸配列(導入遺伝子)はオプシンである。オプシン配列は、ヒト、藻類及び細菌を含め、任意の好適な単細胞生物または多細胞生物に由来してよい。一実施形態では、オプシンはロドプシン、フォトプシン、L/M波長(赤/緑)のオプシン、または短波長(複数可)オプシン(青色)である。別の実施形態では、オプシンはチャネルロドプシンまたはハロロドプシンである。
【0063】
別の実施形態では、遺伝子増強療法、すなわち、欠損または欠陥のある遺伝子の交換コピーを提供する療法での使用について導入遺伝子を選択する。この実施形態では、導入遺伝子は、必要な交換遺伝子を提供するため、当業者により容易に選択され得る。一実施形態では、欠損遺伝子/欠陥遺伝子は眼障害に関連する。別の実施形態では、導入遺伝子はNYX、GRM6、TRPM1LまたはGPR179であり、眼障害は先天性停止性夜盲症である。例えば、参照により本明細書に組み込まれるZeitz et al,Am J Hum Genet.2013 Jan 10;92(1):67-75.Epub
2012 Dec 13を参照のこと。別の実施形態では、導入遺伝子はRPGRである。
【0064】
別の実施形態では、遺伝子抑制療法、すなわち、天然型遺伝子の1つ以上の発現を転写レベルまたは翻訳レベルで分断または抑制する療法での使用について導入遺伝子を選択する。これは、短ヘアピンRNA(shRNA)または当該技術分野において周知の他の技術を使用して達成可能である。例えば、参照により本明細書に組み込まれるSun et
al,Int J Cancer.2010 Feb 1;126(3):764-74及びO’Reilly M,et al.Am J Hum Genet.2007 Jul;81(1):127-35を参照のこと。この実施形態では、導入遺伝子は、サ
イレンシングが所望される遺伝子に基づいて当業者により容易に選択され得る。
【0065】
別の実施形態では、導入遺伝子は2つ以上の導入遺伝子を含む。これは、2つ以上の異種配列を担持する単一ベクターを使用して、または各々が1つ以上の異種配列を担持する2つ以上のAAVを使用して達成してよい。一実施形態では、AAVを遺伝子抑制(またはノックダウン)と遺伝子増強の併用療法に使用する。ノックダウン/増強併用療法では、関心対象の遺伝子の欠陥コピーをサイレンシングし、非変異コピーを供給する。一実施形態では、これは、同時投与する2つ以上のベクターを使用して達成される。参照により本明細書に組み込まれるMillington-Ward et al,Molecular Therapy,April 2011,19(4):642-649を参照のこと。導入遺伝子は、所望の結果に基づいて当業者により容易に選択され得る。
【0066】
別の実施形態では、遺伝子修正療法での使用について導入遺伝子を選択する。これは、例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)に誘導されるDNA二本鎖切断と外因性DNAドナー基質とを併せて使用し達成してよい。例えば、参照により本明細書に組み込まれるEllis et al,Gene Therapy(epub January 2012)20:35-42を参照のこと。導入遺伝子は、所望の結果に基づいて当業者により容易に選択され得る。
【0067】
一実施形態では、本明細書に記載するカプシドは、各々が参照により本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第61/153,470号、第62/183,825号、第62/254,225号及び第62/287,511号に記載のCRISPR-Casデュアルベクター系で有用である。カプシドは、ホーミングエンドヌクレアーゼまたは他のメガヌクレアーゼの送達にも有用である。
【0068】
別の実施形態では、本明細書で有用な導入遺伝子には、発現と同時に検出可能シグナルを発するレポーター配列が含まれる。そのようなレポーター配列には、限定することなく、β-ラクタマーゼ、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ、チミジンキナーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、膜結合型タンパク質、例えば、CD2、CD4、CD8、ヘマグルチニンタンパク質、及び当該技術分野で周知のもので、それに指向する高親和性抗体が存在するか、または従来の手段で作製可能なものなど、ならびに抗原タグドメイン、なかでも、ヘマグルチニンまたはMycに由来するものと適切に融合された膜結合型タンパク質を含む融合タンパク質をコードするDNA配列が含まれる。
【0069】
これらのコード配列は、かかる配列の発現を誘導してくれる調節エレメントと会合すると、酵素、X線、比色法、蛍光または他の分光法によるアッセイ、蛍光標示式細胞分取法、ならびに酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)及び免疫組織化学を含む免疫学的測定法など、従来の手段で検出可能なシグナルを発する。例えば、マーカー配列がLacZ遺伝子である場合、そのシグナルを持っているベクターの存在がベータ-ガラクトシダーゼ活性用アッセイによって検出される。導入遺伝子が緑色蛍光タンパク質またはルシフェラーゼである場合、そのシグナルを持っているベクターを、ルミノメーターで得られる色または光によって目視で測定してよい。
【0070】
望ましくは、導入遺伝子は、生物学及び医学において有用な産物、例えば、タンパク質、ペプチド、RNA、酵素、または触媒RNAなどをコードする。望ましいRNA分子には、shRNA、tRNA、dsRNA、リボソームリボ核酸、触媒RNA、及びアンチセンスRNAが含まれる。有用なRNA配列の一例は、処置を受けた動物において標的とした核酸配列の発現を消失させる配列である。
【0071】
制御配列には、従来の制御エレメントが含まれ、これらは、ベクターでトランスフェクトした細胞または本明細書に記載のように作製されたウイルスに感染した細胞において、導入遺伝子の転写、翻訳及び/または発現を可能にするよう、かかる導入遺伝子に機能的に連結されている。本明細書で使用する場合、「機能的に連結されている」配列には、対象遺伝子に隣接する発現制御配列、及びトランスまたは遠隔で作用して対象遺伝子を制御する発現制御配列の両方が含まれる。
【0072】
発現制御配列には、適切な転写開始の配列、終結配列、プロモーターとエンハンサーの各配列;スプライシング及びポリアデニル化(ポリA)シグナルなど効率的RNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定させる配列;翻訳効率を高める配列(すなわち、Kozakコンセンサス配列);タンパク質安定性を高める配列;及び所望に応じ、コード産物の分泌を高める配列が含まれる。プロモーター配列を含め、非常に多数の発現制御配列が当該技術分野で公知であり、それらを利用してよい。
【0073】
本明細書で提供する構成体で有用な制御配列は、イントロン、望ましくはプロモーター/エンハンサー配列と遺伝子との間に位置するイントロンも含有し得る。望ましいイントロン配列の一つはSV-40に由来し、100bpの小型のイントロンのSD-SAと呼ばれるスプライスドナー/スプライスアクセプターである。別の好適な配列には、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後エレメントが含まれる。(例えば、L.Wang and I.Verma,1999 Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,96:3906-3910を参照のこと)。ポリAシグナルは、SV-40、ヒト及びウシを含むがこれに限定されない好適な多くの種に由来してよい。
【0074】
本明細書に記載する方法で有用なrAAVの別の制御成分は配列内リボソーム進入部位(IRES)である。IRES配列、または他の好適な系を使用して、単一の遺伝子転写産物から2つ以上のポリペプチドを産生させてよい。IRES(または他の好適な配列)を使用して、2本以上のポリペプチド鎖を含有するタンパク質を産生させるか、または2つの異なるタンパク質を同一細胞から、または同一細胞内に発現させる。例示的なIRESはポリオウイルスの配列内リボソーム進入配列であり、視細胞、RPE及び神経節細胞での導入遺伝子の発現を支持する。好ましくは、IRESは、rAAVベクターの導入遺伝子の3’に位置する。
【0075】
一実施形態では、AAVは、プロモーター(またはプロモーターの機能性断片)を含む。rAAVで採用すべきプロモーターの選択は、所望の標的細胞で選択導入遺伝子を発現させることができる、多数の構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターの中から行ってよい。一実施形態では、標的細胞は眼細胞である。プロモーターは、ヒトを含め、任意の種に由来してよい。望ましくは、一実施形態では、プロモーターは「細胞特異的」である。用語「細胞特異的」とは、組換え型ベクター用に選択された特定のプロモーターが、特定の細胞組織において選択導入遺伝子の発現を導くことができることを意味する。一実施形態では、プロモーターは、導入遺伝子の筋細胞での発現に特異的である。別の実施形態では、プロモーターは肺での発現に特異的である。別の実施形態では、プロモーターは、導入遺伝子の肝細胞での発現に特異的である。別の実施形態では、プロモーターは、導入遺伝子の気道上皮での発現に特異的である。別の実施形態では、プロモーターは、導入遺伝子のニューロンでの発現に特異的である。別の実施形態では、プロモーターは、導入遺伝子の心臓での発現に特異的である。
【0076】
発現カセットは典型的にプロモーター配列を発現制御配列の一部として含有し、例えば、選択された5’ ITR配列と免疫グロブリン構成体コード配列との間に位置する。一実施形態では、肝臓での発現が望ましい。したがって、一実施形態では、肝臓特異的プロ
モーターを使用する。組織特異的プロモーター、構成的プロモーター、調節可能プロモーター[例えば、WO2011/126808及びWO2013/04943を参照のこと]、または生理学的合図に応答するプロモーターを本明細書に記載するベクターで使用してよい。別の実施形態では、筋肉での発現が望ましい。したがって、一実施形態では、筋特異的プロモーターを使用する。一実施形態では、プロモーターは、MCKを用いるプロモーター、例えば、dMCK(509bp)またはtMCK(720bp)プロモーターである(例えば、参照により本明細書に組み込まれるWang et al,Gene Ther.2008 Nov;15(22):1489-99.doi:10.1038/gt.2008.104.Epub 2008 Jun 19を参照のこと)。別の有用なプロモーターはSPc5-12プロモーターである(参照により本明細書に組み込まれるRasowo et al,European Scientific Journal June 2014 edition vol.10,No.18を参照のこと)。一実施形態では、プロモーターはCMVプロモーターである。別の実施形態では、プロモーターはTBGプロモーターである。別の実施形態では、CB7プロモーターを使用する。CB7は、サイトメガロウイルスのエンハンサーエレメントを有するニワトリβ-アクチンプロモーターである。別法として、他の肝臓特異的プロモーターを使用してよい[例えば、The Liver Specific Gene Promoter Database,Cold Spring Harbor,rulai.schl.edu/LSPD,alpha 1 anti-trypsin(A1AT);human albumin Miyatake et al.,J.Virol.,71:5124 32(1997),humAlb;及びhepatitis B virus core promoter,Sandig et al.,Gene Ther.,3:1002
9(1996)を参照のこと]。TTR最小エンハンサー/プロモーター、アルファ-アンチトリプシンプロモーター、LSP(845nt)25(要イントロン-scAAV少量)。
【0077】
プロモーター(複数可)は、異なる供給源、例えば、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)前初期エンハンサー/プロモーター、SV40初期エンハンサー/プロモーター、JCポリモウイルス(polymovirus)プロモーター、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)またはグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)プロモーター、単純ヘルペスウイルス(HSV-1)潜伏感染関連プロモーター(LAP)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)の長い末端反復配列(LTR)プロモーター、ニューロン特異的プロモーター(NSE)、血小板由来増殖因子(PDGF)プロモーター、hSYN、メラニン凝集ホルモン(MCH)プロモーター、CBA、マトリックスメタロプロテインプロモーター(MPP)、及びニワトリベータ-アクチンプロモーターから選択することができる。
【0078】
発現カセットは、少なくとも1つのエンハンサー、すなわち、CMVエンハンサーを含有してよい。さらに他のエンハンサーエレメントとして、例えば、アポリポタンパク質エンハンサー、ゼブラフィッシュエンハンサー、GFAPエンハンサーエレメント、及びWO2013/1555222に記載があるような脳特異的エンハンサー、ウッドチャック肝炎後転写後調節エレメントが含まれ得る。追加として、または別法として、他に、例えば、ハイブリッドヒトサイトメガロウイルス(HCMV)前初期(IE)PDGRプロモーターまたは他のプロモーター-エンハンサーエレメントを選択してよい。本明細書で有用な他のエンハンサー配列には、IRBPエンハンサー(Nicoud 2007,J Gene Med.2007 Dec;9(12):1015-23)、前初期サイトメガロウイルスエンハンサー、免疫グロブリン遺伝子またはSV40エンハンサー由来のもの、マウス近位プロモーターで同定されたシス作用性エレメント等が含まれる。
【0079】
プロモーターに加え、発現カセット及び/またはベクターは、他の適切な転写開始配列、終結配列、エンハンサー配列、スプライシング及びポリアデニル化(ポリA)シグナル
など効率的RNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定させる配列;翻訳効率を高める配列(すなわち、Kozakコンセンサス配列);タンパク質安定性を高める配列;及び所望に応じ、コード産物の分泌を高める配列を含有してよい。多種多様な好適なポリAが公知である。一例では、ポリAはウサギベータグロビン、例えば、127bpウサギベータグロビンポリアデニル化シグナル(GenBank#V00882.1)である。他の実施形態では、SV40ポリAシグナルを選択する。さらに他の好適なポリA配列を選択してよい。ある実施形態では、イントロンが含まれる。好適なイントロンの一つはニワトリベータ-アクチンイントロンである。一実施形態では、イントロンは875bp(GenBank#X00182.1)である。別の実施形態では、Promegaから入手可能なキメラ型イントロンを使用する。ただし、他の好適なイントロンを選択してよい。一実施形態では、ベクターゲノムが天然型AAVベクターゲノムとほぼ同サイズ(例えば、4.1~5.2kb)となるようスペーサーが含まれる。一実施形態では、ベクターゲノムが約4.7kbとなるようスペーサーが含まれる。参照により本明細書に組み込まれるWu et al,Effect of Genome Size on AAV
Vector Packaging,Mol Ther.2010 Jan;18(1):80-86を参照のこと。
【0080】
これら及び他の一般的なベクター及び調節エレメントの選択は慣例的であり、そのような多くの配列が利用可能である。例えば、Sambrook et al、及びその中の例えば、3.18ページ~3.26ページ及び16.17ページ~16.27ページで引用されている参考文献、ならびにAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,New York,1989を参照のこと。もちろん、ベクター及び発現制御配列が全て等しく良好に機能して、本明細書に記載する導入遺伝子全てを発現するというわけではないであろう。しかしながら、当業者は、これら及び他の発現制御配列の中から、本発明の範囲を逸脱することなく選択し得る。
【0081】
別の実施形態では、組換え型アデノ随伴ウイルスを作製する方法を提供する。好適な組換え型アデノ随伴ウイルス(AAV)は、本明細書に記載のようなAAVカプシドタンパク質をコードする核酸配列、またはその断片;機能性rep遺伝子;AAV末端逆位反復配列(ITR)と、望ましい導入遺伝子をコードする異種核酸配列とで最低限構成されるミニ遺伝子;及びAAVカプシドタンパク質内へのミニ遺伝子パッケージングを可能にする十分なヘルパー機能を含有する宿主細胞を培養することによって作製される。AAVカプシドにAAVミニ遺伝子をパッケージングする宿主細胞で培養が必要な成分は、トランスで提供されてよい。別法として、必要成分の任意の1つ以上(例えば、ミニ遺伝子、rep配列、cap配列、及び/またはヘルパー機能)は、当業者に公知の方法を使用して必要成分の1つ以上を含有するよう工学的に操作されている安定宿主細胞により提供されてよい。
【0082】
また本明細書は、本明細書に記載するようなAAVでトランスフェクトした宿主細胞も提供する。最も好適には、そのような安定宿主細胞は誘導性プロモーターの制御下、必要成分(複数可)を含有するであろう。ただし、必要成分(複数可)は構成的プロモーターの制御下であってよい。好適な誘導性プロモーター及び構成的プロモーターの例は、本明細書の、導入遺伝子との併用に好適な調節エレメントについての下記考察に記載されている。さらに別の代替的方法では、選択した安定宿主細胞は、選択成分(複数可)を構成的プロモーターの制御下で、また他の選択成分(複数可)を1つ以上の誘導性プロモーターのの制御下で含有してよい。例えば、293細胞由来である(構成的プロモーター制御下のE1ヘルパー機能を含有する)が、誘導性プロモーター制御下でrep及び/またはcapタンパク質を含有する安定宿主細胞を作製してよい。さらに他の安定宿主細胞は当業者により作製され得る。別の実施形態では、宿主細胞は本明細書に記載する核酸分子を含
む。
【0083】
本明細書に記載するrAAV作製に必要なミニ遺伝子、rep配列、cap配列、及びヘルパー機能は、そこに含まれている配列を移入させる任意の遺伝子エレメントの形態にしてパッケージング宿主細胞に送達してよい。選択した遺伝子エレメントは、本明細書に記載のものも含め、任意の好適な方法によって送達してよい。本発明の任意の実施形態の構築に使用する方法は、核酸操作における当業者には公知であり、それには、遺伝子工学、組換え工学、及び合成技術が含まれる。例えば、Sambrook et al,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold
Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NYを参照のこと。同様に、rAAVウイルス粒子を作製する方法は周知であり、好適な方法の選択が本発明に対する制限要素とはならない。中でも、例えば、K.Fisher
et al,1993 J.Virol.,70:520-532及び米国特許第5,478,745号を参照のこと。これらの刊行物は参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0084】
本明細書では、本明細書に記載のベクターを作製する際に使用するプラスミドも提供する。そのようなプラスミドは実施例の項に記載されている。
C.医薬組成物及び投与
【0085】
一実施形態では、先に詳述したような、標的細胞で使用するための所望される導入遺伝子及び細胞特異的プロモーターを含有する組換え型AAVを、任意選択で、従来方法で汚染について評価し、その後、それを必要とする対象への投与が意図される医薬組成物に製剤化する。そのような製剤化では、pHを適切な生理学的濃度に維持する緩衝生理食塩水もしくは他の緩衝剤、例えばHEPESなど、薬理学的及び/または生理学的に許容できるビヒクルもしくは担体、ならびに任意選択で、他の薬剤、医薬品、安定化剤、緩衝剤、担体、アジュバント、希釈剤等を使用する。注射の場合、担体は典型的に液体であろう。例示的な生理学的に許容される担体には、滅菌パイロジェンフリー水及び滅菌パイロジェンフリーリン酸緩衝食塩水が含まれる。多種多様なそのような公知の担体は米国特許公開第7,629,322号に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。一実施形態では、担体は等張性塩化ナトリウム溶液である。別の実施形態では、担体は平衡塩溶液である。一実施形態では、担体にはtweenが含まれる。ウイルスを長期保存する場合は、グリセロールまたはTween20の存在下で凍結させてよい。別の実施形態では、薬理学的に許容される担体は、界面活性剤、例えばペルフルオロオクタン(Perfluoron液)などを含む。ベクターは、ヒト対象への注入に好適な緩衝液/担体に配合する。緩衝液/担体には、rAAVの注入チューブへの付着を防ぐが、生体内でのrAAVの結合活性を妨害しない成分が含まれなければならない。
【0086】
本明細書に記載する方法のある実施形態では、上記の医薬組成物を対象に筋肉内投与する。他の実施形態では、医薬組成物を静脈内に投与する。本明細書に記載する方法で有用であり得る他の投与形態には、網膜下もしくは硝子体内送達、経口送達、吸入、経鼻送達、気管内送達、静脈内送達、筋肉内送達、皮下送達、皮内送達、及び他の非経口投与経路など、所望臓器(例えば、眼)への直接送達が挙げられるが、これに限定されるものではない。投与経路は、必要に応じて組み合わせてよい。
【0087】
さらに、ある実施形態では、治療で細胞指向が必要な領域を確認するため、ベクター投与に先立ち特定の検査を実施することが望ましい。眼への送達が所望される一実施形態では、治療で標的とすべき特定の眼細胞の領域を確認する非侵襲的網膜イメージング及び機能検査を行う。例えば、参照により本明細書に組み込まれるWO2014/124282を参照のこと。また、参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願第PCT/US2
013/022628号を参照のこと。
【0088】
組成物は、治療すべき領域の大きさ、使用するウイルス価、投与経路、及び方法による所望の効果に応じて、範囲内の全ての数字が含まれる、約0.1μL~約10mLの容量で送達してよい。一実施形態では、容量は約50μLである。別の実施形態では、容量は約70μLである。別の実施形態では、容量は約100μLである。別の実施形態では、容量は約125μLである。別の実施形態では、容量は約150μLである。別の実施形態では、容量は約175μLである。さらに別の実施形態では、容量は約200μLである。別の実施形態では、容量は約250μLである。別の実施形態では、容量は約300μLである。別の実施形態では、容量は約450μLである。別の実施形態では、容量は約500μLである。別の実施形態では、容量は約600μLである。別の実施形態では、容量は約750μLである。別の実施形態では、容量は約850μLである。別の実施形態では、容量は約1000μLである。別の実施形態では、容量は約1.5mLである。別の実施形態では、容量は約2mLである。別の実施形態では、容量は約2.5mLである。別の実施形態では、容量は約3mLである。別の実施形態では、容量は約3.5mLである。別の実施形態では、容量は約4mLである。別の実施形態では、容量は約5mLである。別の実施形態では、容量は約5.5mLである。別の実施形態では、容量は約6mLである。別の実施形態では、容量は約6.5mLである。別の実施形態では、容量は約7mLである。別の実施形態では、容量は約8mLである。別の実施形態では、容量は約8.5mLである。別の実施形態では、容量は約9mLである。別の実施形態では、容量は約9.5mLである。別の実施形態では、容量は約10mLである。
【0089】
制御配列の制御下で所望の導入遺伝子をコードする核酸配列を担持する組換え型アデノ随伴ウイルスの有効濃度は、1ミリリットルあたりのベクターゲノム(vg/mL)(ゲノムコピー/mL(GC/mL)とも呼ばれる)が約10~1014の範囲が望ましい。一実施形態では、rAAVベクターゲノムをリアルタイムPCRにより測定する。別の実施形態では、rAAVベクターゲノムをデジタルPCRにより測定する。参照により本明細書に組み込まれるLock et al,Absolute determination of single-stranded and self-complementary adeno-associated viral vector genome titers by droplet digital PCR,Hum Gene Ther Methods.2014 Apr;25(2):115-25.doi:10.1089/hgtb.2013.131.Epub 2014 Feb 14を参照のこと。別の実施形態では、rAAV感染単位は、参照により本明細書に組み込まれるS.K.McLaughlin et al,1988 J.Virol.,62:1963に記載のように測定する。
【0090】
好ましくは、濃度は約1.5×10vg/mL~約1.5×1013vg/mL、より好ましくは約1.5×10vg/mL~約1.5×1011vg/mLである。一実施形態では、有効濃度は約1.4×10vg/mLである。一実施形態では、有効濃度は約3.5×1010vg/mLである。別の実施形態では、有効濃度は約5.6×1011vg/mLである。別の実施形態では、有効濃度は約5.3×1012vg/mLである。さらに別の実施形態では、有効濃度は約1.5×1012vg/mLである。別の実施形態では、有効濃度は約1.5×1013vg/mLである。本明細書に記載する全ての範囲にはその端点が含まれる。
【0091】
一実施形態では、用量は約1.5×10vg/kg体重~約1.5×1013vg/kg、より好ましくは約1.5×10vg/kg~約1.5×1011vg/kgである。一実施形態では、用量は約1.4×10vg/kgである。一実施形態では、用量は約3.5×1010vg/kgである。別の実施形態では、用量は約5.6×1011
vg/kgである。別の実施形態では、用量は約5.3×1012vg/kgである。さらに別の実施形態では、用量は約1.5×1012vg/kgである。別の実施形態では、用量は約1.5×1013vg/kgである。別の実施形態では、用量は約3.0×1013vg/kgである。別の実施形態では、用量は約1.0×1014vg/kgである。本明細書に記載する全ての範囲にはその端点が含まれる。
【0092】
一実施形態では、有効用量(送達される総ゲノムコピー数)は約10~1013ベクターゲノムである。一実施形態では、総用量は約10ゲノムコピーである。一実施形態では、総用量は約10ゲノムコピーである。一実施形態では、総用量は約1010ゲノムコピーである。一実施形態では、総用量は約1011ゲノムコピーである。一実施形態では、総用量は約1012ゲノムコピーである。一実施形態では、総用量は約1013ゲノムコピーである。一実施形態では、総用量は約1014ゲノムコピーである。一実施形態では、総用量は約1015ゲノムコピーである。
【0093】
毒性などの望ましくない作用を抑えるため、最低有効濃度のウイルスを用いることが望ましい。これらの範囲内のさらに他の用量及び投与容量は、処置を受ける対象、好ましくはヒトの身体状態、対象の年齢、特定の障害及び進行性の場合はその障害の進行の程度を考慮に入れ、主治医により選択されてよい。静脈内送達では、例えば、1.5×1013vg/kg程度の用量を必要とする。
D.方法
【0094】
本明細書で論じるように、AAV8変異カプシドを含むベクターは、高レベルで標的組織に形質導入することができる。したがって、本明細書は、肝細胞に導入遺伝子を送達する方法を提供する。方法には、細胞と、AAV3G1カプシドを有するrAAVとを接触させることが含まれ、ここで、前記rAAVは導入遺伝子を含む。別の実施形態では、方法には、細胞と、AAV8.TR1カプシドを有するrAAVとを接触させることが含まれ、ここで、前記rAAVは導入遺伝子を含む。別の実施形態では、方法には、細胞と、本明細書に記載する任意のカプシドを有するrAAVとを接触させることが含まれ、ここで、前記rAAVは導入遺伝子を含む。別の態様では、導入遺伝子を肝臓に送達するため、AAV3G1カプシドを有するrAAVの使用を提供する。別の態様では、導入遺伝子を肝臓に送達するため、AAV8.TR1カプシドを有するrAAVの使用を提供する。
【0095】
本明細書では、導入遺伝子を筋細胞に送達する方法も提供する。方法には、細胞と、AAV3G1カプシドを有するrAAVとを接触させることが含まれ、ここで、前記rAAVは導入遺伝子を含む。別の実施形態では、方法には、細胞と、本明細書に記載する任意のカプシドを有するrAAVとを接触させることが含まれ、ここで、前記rAAVは導入遺伝子を含む。別の態様では、導入遺伝子を筋肉に送達するため、AAV3G1カプシドを有するrAAVの使用を提供する。
【0096】
さらに、導入遺伝子を気道上皮に送達する方法を提供する。方法には、細胞と、AAV3G1カプシドを有するrAAVとを接触させることが含まれ、ここで、前記rAAVは導入遺伝子を含む。別の実施形態では、方法には、細胞と、AAV8.T20カプシドを有するrAAVとを接触させることが含まれ、ここで、前記rAAVは導入遺伝子を含む。別の実施形態では、方法には、細胞と、本明細書に記載する任意のカプシドを有するrAAVとを接触させることが含まれ、ここで、前記rAAVは導入遺伝子を含む。別の態様では、導入遺伝子を気道上皮に送達するため、AAV3G1カプシドを有するrAAVの使用を提供する。別の態様では、導入遺伝子を気道上皮に送達するため、AAV8.T20カプシドを有するrAAVの使用を提供する。
【0097】
さらに、導入遺伝子を眼細胞に送達する方法を提供する。方法には、細胞と、AAV3
G1カプシドを有するrAAVとを接触させることが含まれ、ここで、前記rAAVは導入遺伝子を含む。別の実施形態では、方法には、細胞と、本明細書に記載する任意のカプシドを有するrAAVとを接触させることが含まれ、ここで、前記rAAVは導入遺伝子を含む。別の態様では、導入遺伝子を眼細胞に送達するため、AAV3G1カプシドを有するrAAVの使用を提供する。
【0098】
下記例に記載のように、インビトロでは、AAV3G1変異体は、サル及びヒトのさまざまな抗血清、ならびにヒトIVIGに対する耐性(ヒトIVIGに関して、AAV8の2~4倍レベル)を示した。観察された耐性には3つの変異全てが寄与している。マウスでは、AAV3G1の肝臓への形質導入効率はAAV8と比較して低下したが、筋肉への形質導入率はAAV8よりも約10倍高かった。さらに、AAV3G1は、AAV8よりも高いヘパリン親和性を示した。興味深いことに、HVR.IV変異の正電荷を減少させると、ベクターのヘパリン親和性が低下したが、肝臓への形質導入は部分的に回復した。筋肉で観察された傾向も同様で、AAV3G1の鼻腔内投与により、AAV8より2~3倍高い形質導入効率がもたらされ、これは、AAV3G1のVP1ユニーク領域を別のAAV血清型のVP1ユニーク領域と交換することにより、AAV8より約10倍高いレベルまでさらに改善された。これらの知見は、筋肉内、眼または鼻腔内への高効率の遺伝子送達及び既存の中和抗体に対する耐性が所望される疾患モデルに関係がある。
【0099】
本明細書で示されるように、一実施形態では、本明細書に記載するカプシド(例えば、AAV3G1カプシド、AAVT20カプシドまたはAAVTR1カプシド)は、AAV8に対する既存の中和抗体(NAb)による中和を回避することができる。一実施形態では、記載のカプシドを有するrAAVは、AAV8を中和する抗体による中和に対し、天然型AAV8と比べて少なくとも約2倍増の耐性を示す。一実施形態では、記載のカプシドを有するrAAVは、AAV8を中和する抗体による中和に対し、天然型AAV8と比べて少なくとも約3倍増の耐性を示す。一実施形態では、記載のカプシドを有するrAAVは、AAV8を中和する抗体による中和に対し、天然型AAV8と比べて少なくとも約4倍増の耐性を示す。一実施形態では、記載のカプシドを有するrAAVは、AAV8を中和する抗体による中和に対し、天然型AAV8と比べて少なくとも約5倍増の耐性を示す。一実施形態では、記載のカプシドを有するrAAVは、AAV8を中和する抗体による中和に対し、天然型AAV8と比べて少なくとも約10倍増の耐性を示す。一実施形態では、記載のカプシドを有するrAAVは、AAV8を中和する抗体による中和に対し、天然型AAV8と比べて少なくとも約15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、55倍、60倍、65倍、70倍、75倍、80倍、85倍、90倍、95倍、100倍、200倍、220倍、240倍、260倍またはそれ以上高い耐性を示す。抗体による中和を評価する方法は、当該技術分野で公知であり、本明細書に記載されている。例えば、参照により本明細書に組み込まれるLochrie et al,J Virol.,Jan 2006,80(2):821-34を参照のこと。一実施形態では、AAV8中和抗体はADK8である。参照により本明細書に組み込まれるGurda et al,J.Virol,2012 Aug;86(15):7739-51.doi:10.1128/JVI.00218-12.Epub 2012 May
16を参照のこと。別の実施形態では、AAV8中和抗体はADK8/9である。
【0100】
AAV8抗体による中和のこうした低下により、対象に存在し得る既存のAAV8抗体から逃れるという利点が提供される。これは、対象の特定の病態の治療にAAV8ベクターを使用しており、追加免疫投与が必要とされる、またはAAVベクターの使用が必要な第2の治療の場合に有用である。
【0101】
抗体-カプシド構造情報に基づいて、AAV8超可変領域(HVR)VIIIで飽和的変異誘発法を実施した。カプシド変異体はAAV8中和抗体を回避することができ、肝臓
形質導入を維持することが実証された。HVR.I領域及びHVR.IV領域で飽和的変異誘発法を実施し、その際、上記のカプシド変異体の1つであるAAV8.C41を骨格として用いて開始し、その後、マウスの肝臓でのインビボ増殖を3回実施して、AAV3G1(AAV8.TripleまたはTripleとも呼ばれる)と呼ぶAAV8変異体を得た。AAV3G1は、サル及びヒトのさまざまな抗血清、ならびにヒトIVIGに対する耐性(ヒトIVIGに関して、AAV8の2~4倍レベル)を示した。全3変異が、観察された耐性に寄与した。意外なことに、AAV83G1は、AAV8天然型と比較して肝臓形質導入率の低下を示した(約1/6×AAV8)が、その筋肉への形質導入率は高まった(約10×AAV8)。AAV3G1は、AAV8よりも高いヘパリン親和性を示した。HVR.IVとHVR.Iの変異の正電荷を減少させると、ベクターのヘパリン親和性が低下し、肝臓形質導入の部分的な回復を伴った(得られる変異体をAAV8.TR1と呼ぶ)。AAV3G1の鼻腔内投与により、AAV8より2~3倍高い形質導入効率がもたらされた。新たな変異体AAV8.T20を創製した、高形質導入率メンバーの1つであるrh.20のVP1/2-ユニーク領域でAAV3G1のそれを交換し、AAV8.T20を得た。すなわち、AAVrh.20のアミノ酸1~202(配列番号88)でAAV3G1カプシドのアミノ酸1~203を交換した。鼻腔内投与によるマウスにおいて、AAV8.T20の形質導入率はAAV8より約10倍高かった。
【実施例
【0102】
E.実施例
実施例1:試験計画
HVR.VIII領域に変異を有する幾つかのAAV8変異体、c41、c42、c46、g110、g113、g115及びg117を作製した。上記で引用されているGurda et alで考察されているように、主なADK8エピトープはHVR.VIII領域(AAV8 vp1番号付けを使用したアミノ酸586~591)にある。それらの変異体をADK8耐性についてインビトロで試験し、その一部をADK8耐性についてインビボで試験した。例えば、上記引用Lochrie 2006を参照のこと。
【表2】
【0103】
HVR.I及びHVR.IV領域におけるさらなる変異誘発用の骨格として変異体c41を選んだ。変異体c41は、配列番号2で示される配列を有する(配列番号1で示されるDNA配列)。c41アミノ酸配列は、HVR.VIII領域に以下の変異、すなわち、583ADNLQQQNTAPQIGT597(配列番号69)-->GDNLQLYNTAPGSVF(配列番号70)を有するAAV8のアミノ酸配列である。
【0104】
HVR.IまたはHVR.IV変異誘発では、3回のインビボ選択を行った。その後、HVR.I変異SGTH及びHVR.IV変異GGSRPをc41骨格クローンに組み込みAAV3G1を作製した。インビトロでのNab試験から、AAV3G1はある程度の
hIVIG耐性を示したことが示され、3変異(c41、SGTH及びGGSRP)は全て耐性に寄与する。
【0105】
AAV3G1は、CB7.CI.ffルシフェラーゼ、CMV.LacZ及びtMCK.ヒトF9などのさまざまな導入遺伝子カセットのi.m.及びi.v.のいずれでも、AAV8よりも筋肉への高い形質導入を示す。
【0106】
AAV3G1はまた、マウス気道上皮細胞においてAAV8より高い形質導入も示す。VP1/2領域をrh.20のそれと置き換えることにより、得られる変異体AAV8.T20はAAV8の約10倍の形質導入率を示す。B6マウスへの鼻投与では、AAV8を基準として正規化(100%、CB7.CI.ルシフェラーゼ)すると、AAV3G1は375%形質導入し、AAV8.T20は988%形質導入した。
【0107】
AAV3G1は、AAV8よりも高いヘパリン親和性を有する。HVR.I及びHVR.IVに負に荷電した残基が導入されるよう新たな変異体を設計した(HVRI:SGTH→SDTH)。HVR.IV:GGSRPを、選択工程の際に現われた別の変異DGSGL(配列番号82)で置き換える。得られる変異体AAV8.TR1は、低いヘパリン親和性を示し、その肝臓形質導入は部分的に回復した。AAV8(100%、TBG.ヒトF9)と比較すると、AAV3G1は肝臓に18%形質導入し、AAV.TR1は52%形質導入した。
【0108】
実施例2:材料及び方法
A.ライブラリー構築用プラスミド.
1.pAAV.DE.0
AAVの2つのITRの間に構成要素のZsGreen発現カセット、続くCMVプロモーター、続くAAV2ゲノムの断片1883~2207(NC_001401)、続く制限部位AarIとSpeI(AAV VP1 ORF挿入用)を置いてプラスミドpAAV.DE.0を構築した。pAAV.DE.0は配列番号39及び図9で示されている。
【0109】
2.pAAV.DE.1
プラスミドpAAV.DE.1はpAAV.DE.0に基づいたものであり、変更点は、1)NheI断片を除去したこと、2)3’ ITRとSpeI制限認識部位との間にウサギベータグロビンポリアデニル化シグナル配列を挿入したことである。pAAV.DE.1は配列番号40及び図10で示されている。
【0110】
3.pAAV.DE.1.HVR.I
プラスミドは、pAAV.DE.1に基づいたものであり、それに、1)AAV8.c41のVP1 ORFを、pAAV.DE.1のAarIとSpeIの間に挿入し、2)2つのBsmBI制限認識部位をサイレント変異誘発により除去し、3)2つのBsmBI部位を両末端に担持しているDNA小断片をAAV8.c41 VP1 ORFのHVR.I領域に挿入して、HVR.I変異誘発用のクローニング部位を創製した。pAAV.DE.1.HVRIは配列番号41及び図11で示されている。
【0111】
4.pAAV.DE.1.HVR.IV
プラスミドはpAAV.DE.1に基づいたものであり、それに、1)AAV8.c41のVP1 ORFを、pAAV.DE.1のAarIとSpeIの間に挿入し、2)2つのBsmBI制限認識部位をサイレント変異誘発により除去し、3)2つのBsmBI部位を両末端に担持しているDNA小断片を、AAV8.c41 VP1 ORFのHVR.IV領域に挿入して、HVR.IV変異誘発用のクローニング部位を創製した。pA
AV.DE.1.HVRIVは配列番号42及び図12で示されている。
【0112】
5.pRep
プラスミドはpAAV2/8プラスミド(配列番号43)に基づいた。プラスミドpAAV2/8をAfeIで消化させ、その後、BbsIで部分的に消化させ、末端ポリシングを行った後、セルフライゲーションさせる。
【0113】
B.AAV3G1、AAV8.T20及びAAV8.TR1のライブラリー構築、選択及び作製。
1.HVR.VIIIライブラリー
PCRを以下のように3つ設定した。PCR1:プライマー031(配列番号49)、プライマー032(配列番号50)及びプライマー009(配列番号45);PCR2:プライマー016(配列番号46)及びプライマー030(配列番号48)、プラスミドpAAV2/8を鋳型として使用;PCR3:プライマー033(配列番号49)及びプライマー017(配列番号47)、プラスミドpAAV2/8を鋳型として使用。各プライマーを下記表2に示す。3つのPCRによる産物をQIAquick PCR精製キットKit(Qiagen)で精製し、併せてBsmBI(New England Biolabs)で消化させた後、再度精製し、T4 DNAリガーゼ(Roche)を用いて16℃でライゲーションを行った。428bp断片をゲルで抽出し、pAAV2/8の6908bpのBsmBI断片を用いてライゲーションを行った。ライゲーション産物は、プライマー.AAV8start及びプライマーAAV8 END nd5Rを有するPCR鋳型として使用した。PCR産物を精製し、AarIとSpeIを介してpAAV.DE.0にクローニングし、Stbl4(Invitrogen)に形質転換した。形質転換を一晩培養したものからプラスミドを抽出し、それをAAV8 HVR.VIII変異誘発のプラスミドライブラリーとした。
【0114】
プラスミドライブラリーをヘルパープラスミド(pAdΔF6)及びpRepと混合し、その後、リン酸カルシウム法により293細胞にトランスフェクトした。トランスフェクション3日後、細胞溶解物を採取し、DPBSに再懸濁させ、Benzonase(Merck)で処理した。その後、溶解物を遠沈し、残屑を除去した。上清をAAV変異誘発ライブラリーとし、以降で使用するため-20℃で保存した。リアルタイムPCRで滴定を行った。
【0115】
1x10ゲノムコピー(gc)のAAV変異誘発ライブラリーを、0.5μLのADK8(AAV8 Nab力価-1:2560)と混合し、完全培地と合わせて加え1mLとした。混合物を37℃で30分インキュベートし、その後、293細胞(MOI、約1x10)に塗布した。2日後、細胞を継代比1:5で継代した。2日後、細胞をプラスミドpAdΔF6及びpRepでトランスフェクトした。2日後、RNA及びゲノムDNAを細胞から抽出し、RT-PCRまたはPCR用の鋳型とした。PCR用プライマーはプライマー016(配列番号46)及びプライマー017(配列番号47)であった。PCR産物をTopoベクター(Invitrogen)にクローニングし、配列決定した。AAV断片をTopoプラスミドから切り出し、pAAV2/8のBsmBI部位にクローニングしtransプラスミドを作製した。個々のtransプラスミドを、cis-プラスミドとしてpAAV.CMV.eGFPを有する通常のAAVベクターにパッケージングし、さらなる分析用とした。
【表3-1】
【表3-2】
【0116】
2.インビトロNabアッセイ
eGFPカセットを担持するAAV変異体各々の1x10gcを、異なるモノクローナル抗体(ADK8、[Nab]AAV8=1:2560、0.5μL/ウェル;ADK8/9、[Nab]AAV8=1:2560、0.5μL/ウェル;ADK9、[Nab]AAV8=5、0.5μL/ウェル;Abなし:培地)と混合し、培地と合わせて100μLとし、37℃で30分インキュベートした後、293細胞に塗布した(感染前日に5x10細胞/ウェルで96ウェルプレートに播種)。GFP発現を監視し、Image Jで定量した。図2a。
【0117】
3.HVR.I及びHVR.IVライブラリー
インビボでの選択を3回実施した。各回ごとに、プールしたヒトIVIG(hIVIG)存在下でi.v.によりB6マウスにAAVライブラリーを注射した。
【0118】
1回目、HVR.I:
PCRにより2つの断片を作製し、鋳型としてのpAAV2/8.c41、及びプライマー098(配列番号55)+プライマー156(配列番号58)、プライマー155(配列番号57)+プライマーのそれぞれのプライマーセットを用いた。プライマー098(配列番号55)+プライマー.AAV8end(配列番号68)を用いてPCRで2つの断片を共に組み立てた。その後、得られる断片をHindIII及びSpeI部位を介してpAAV.DE.1にクローニングし、AAVライブラリー作製用のプラスミドライブラリーとした。ライブラリー作製は、イオジキサノール勾配を用いて精製したことを除いてはHVR.VIIIライブラリーの場合と類似しており、通常のAAVベクターの場合と同様であった。
【0119】
1回目、HVR.IV:
工程は、プライマーセットがプライマー098(配列番号55)+プライマー158(配列番号60)、プライマー157(配列番号59)+プライマー.AAV8end(配列番号68)であったことを除いてはHVR.Iの場合と非常に類似していた。
【0120】
その後、ヒトIVIGの存在下でi.v.によりマウスにライブラリーを注射した。2週間後、肝臓を採取した。ゲノムDNA及びRNAを抽出した。AAVのDNA断片をPCRにより回収し、新しいライブラリー作製用にプラスミドにクローニングした。
【0121】
2回目及び3回目は、以下の点を除いては1回目と類似していた。
【0122】
HVR.Iでは、プライマー175(配列番号63)及びプライマー200(配列番号64)を使用し、クローニングベクターはpAAV.DE.1.HVR.Iであり、HVR.IVでは、プライマー201(配列番号65)及びプライマー202(配列番号66)を使用し、クローニングベクターはpAAV.DE.1.HVR.IVであった。
【0123】
3回目終了後、ゲノムDNAはマウス肝臓の抽出物であり、PCRで増幅し、transプラスミド骨格にクローニングし、さらなる分析用とした。
【0124】
4.AAV3G1、AAV8.T20及びAAV8.TR1の作製
transプラスミドpAAV2/8.TripleはpAAV2/8.c41(配列番号44)に基づいたものであり、これは、HVR.I領域がSGTHをコードするDNAで置き換えられ、HVR.IV領域がGGSRPをコードするDNAで置き換えられたものである。
【0125】
transプラスミドpAAV2/8.T20はpAAV2/8.Tripleに基づいたものであり、これは、VP12領域がAAVrh.20の対応する領域で置き換えられたものである。
【0126】
transプラスミドpAAV2/8.TRはpAAV2/8.Tripleに基づいたものであり、これは、HVR.I領域がSDTH(配列番号80)をコードするDNAで置き換えられ、HVR.IV領域がDGSGL(配列番号82)をコードするDNAで置き換えられたものである。
【0127】
5.AAVベクター作製
Lock,M,Alvira,M,Vandenberghe,LH,Samanta,A,Toelen,J,Debyser,Z,et al.(2010).Rapid,Simple,and Versatile Manufacturing of Recombinant Adeno-Associated Viral Vectors at Scale.Human Gene Therapy 21:1259-1271による記載の方法に従ってAAVベクターを作製した。
【0128】
6.イヌF9及びヒトF9のELISA
イヌF9を測定するELISAは、Wang,LL,Calcedo,R,Nichols,TC,Bellinger,DA,Dillow,A,Verma,IM,et al.(2005).Sustained correction of disease in naive and AAV2-pretreated hemophilia B dogs:AAV2/8-mediated,liver-directed gene therapy.Blood 105:3079-3086により記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。簡単に言えば、AAV8変異体にTBG.イヌF9-WPREカセットをパッケージングし、抗体ADK8の存在下/非存在下、i.v.注射によりB6マウスで試験した。ベクター注射2時間前に100uLの希釈ADK8をi.v.注射した。AAV8を対照として使用した。投与から1週間後に採取した血漿によりイヌF9レベルをELISAで測定した。ADK8未処置動物に対するADK8処置動物のF9の割合及びp値(t-検定)を図2bに示す。
【0129】
ヒトF9を使用して同様の実験を行った。第3の導入遺伝子カセットtMCK.ヒトF9を担持するAAVベクターのI.m.注射では、B6マウスにおいてAAV3G1が同様に筋選択性であることが示されている。tMCKは筋特異的プロモーターである。用量は3x1010gc/マウス、n=マウス3匹/群であった。血漿及び筋肉をそれぞれ投
与から28日後及び30日後に採取した。血漿及び筋肉の溶解物からELISAによってヒトF9を測定した。AAV3G1を用いた形質導入後の筋肉でのF9発現レベルは、AAV8を用いた形質導入後よりも11.2倍高かった。図5c。第28日の血漿の中和抗体価の測定値から、AAV8とAAV3G1の抗原性は異なることが示される。図5d。
【0130】
C.レポーター遺伝子としてルシフェラーゼを用いたインビトロNabアッセイ
AAV8、AAV3G1及びAAV3G1を含む3変異の組み合わせ全てを担持する変異体を、ヒト血漿(4試料)及び抗AAV8サル血清(4試料)を用いてインビトロで試験した。96ウェル透明底黒色プレート(Corning)にHuh7細胞を5x10細胞/ウェルで播種した。2日後、AAV8及び変異型を、完全培地に希釈し、希釈した血清/血漿(抗AAV8Nab含有混合物の最終滴定、1:4)と共にインキュベートしてから、96ウェルプレートに入れたHuh7細胞に塗布した。混合物を37℃で30分間インキュベートしてから、Huh7プレートに移した。
【0131】
72時間後、ルシフェラーゼ発現を読み取り、各「ベクター単独」対照の発現レベルのパーセンテージに変換した。各血清/血漿について、その残存発現に従って各ベクターに順番を付けた(残存発現の最も高いものを順番1、最も低いものを8とした)。図4b。これらのデータは、AAV3G1の3変異全てがNab耐性に寄与することを示す。
【0132】
1.インビボでのルシフェラーゼアッセイ
CB7.CI.ルシフェラーゼカセットを担持するAAV8またはAAV3G1を、用量3x1010gc/マウス、マウス4匹/群でC57BL6マウスに筋肉内投与した。ルシフェラーゼ活性を投与から2週間及び4週間監視した。筋肉内注射により、AAV3G1は、AAV8と比べると、肝臓よりも筋肉に選択的である。図5a。
【0133】
第2の実験を実施し、ここでは、異なる導入遺伝子を担持するAAV8ベクター及びAAV3G1ベクターを、用量1x10gc/動物(5x10gc/25uL/脚、両脚)でC57BL6マウスにi.m.投与した。ベクター注射後の第3週の、筋肉切片、X-gal染色、各群の最良切片を図5bに示す(4倍拡大)。これらの試験では、別の導入遺伝子カセットを担持するAAVベクターのi.m.注射では、B6マウスにおいてAAV3G1が同様に筋選択性を示すことが示されている。
【0134】
MPS 3A Hetマウス(C57BL6バックグラウンド)に5x1011gcのAAV.CMV.Lac/マウスをi.v.で与えた。14日後、組織を採取した。AAV8ベクターまたはAAV3G1ベクターの投与を受けたマウスの心臓、筋肉及び肝臓から得たX-gal染色した切片を作製した(データ図示せず)。これらの試験から、i.v.注射では、AAV8と比べてAAV8Tripleで高い筋選択性を示すことがわかる。各動物の代表的筋肉切片の4倍像を図6aに示す。
【0135】
AAV8及びAAV3G1をCB7.CI.ffルシフェラーゼ導入遺伝子カセットを用いて比較した。B6マウスに用量3x1011gc/マウスでi.v.注射した。ベクター注射の2週間後、ルシフェラーゼを撮像した。図6b。左はAAV8、右はAAV3G1である。
【0136】
AAV3G1は、マウス気道上皮細胞への形質導入率が高く、形質導入率はVP1/2領域をrh.20で置き換えることによりさらに改善される。B6マウスに1x1011gc/マウスのAAV.CB7.CI.ルシフェラーゼをi.n.で与えた。マウス4匹に各ベクターを与えた。ルシフェラーゼ活性をベクター投与後2週目、3週目及び4週目に測定した。図7aの右パネルは試験の代表画像(第4週)である。左のパネルはLiving Image(登録商標)3.2を用いて定量し、第2週のAAV8群の平均値で
正規化したものである。
【0137】
AAV8、AAV8.T20、AAV9及びAAV6.2の気道上皮細胞への形質導入の比較。B6マウスに1×1011gc/マウスのAAV.CB7.CI.ルシフェラーゼをマウス4匹/ベクターでi.n.により与えた。ルシフェラーゼ活性をベクター投与後1週間、2週間及び3週間監視した。Living Image(登録商標)3.2を使用して定量し、第1週のAAV8群の平均値で正規化した。図7b。
【0138】
マウスに麻酔をかけた。D-ルシフェリン(Xenogen)をマウスの鼻孔内に15ug/uL、10uL/鼻孔、20uL/マウスで注入した。5分後、発光画像をIVIS(登録商標)Imaging Systems(Xenogen)で取得し、ソフトウェアLiving Image(登録商標)3.2を用いて定量した。
【0139】
2.ヘパリン結合アッセイ
AAVベクターを所望の緩衝液に希釈し、ベクター-希釈液-緩衝液が予め調整されたAKTA(商標)FPLC System(GE)製HiTrap Heparin HPカラム(GE Healthcare Life Sciences)に負荷した。その後、ベクター希釈緩衝液及び塩化ナトリウムを増量した緩衝液を用いて順次カラムを洗浄した。全工程での画分を採取した。ドットブロット法の操作手順は、参照により本明細書に組み込まれるTenney,RM,Bell,CL,and Wilson,JM(2014).AAV8 capsid variable regions at the two-fold symmetry axis contribute to high liver transduction by mediating nuclear entry and capsid uncoating.Virology 454:227-236により記載されている。図8a~8dを参照のこと。各ベクターの収量を以下に示す。
【表4】
【0140】
実施例3:詳細研究
AAV変異体ライブラリーの調製。ライブラリーの調製ではpAAVinvivoと呼ばれるプラスミドを使用した。プラスミドは、2つのAAV ITRの間に、CMVプロモーター、部分的Rep配列(AAV2、NC_001401,1881-2202)18、AAV8 VP1遺伝子及びウサギベータグロビン(RBG)ポリアデニル化シグナルを含有する(図14)。NNK縮重コドンを所望の部位に担持するプライマーを用いて飽和的変異誘発法を行った。NNS及びNNKはいずれも全ての20アミノ酸を包含する。ヒトのコドン使用の場合、NNSがNNKよりわずかに高い(図15A)が、PCR及び/またはウイルス複製ではGCが多すぎるのは良くない場合があり、平均GC%はNNSが67%、NNKが50%である(図15B)。以上を考慮し、NNKを選択した。AAVライブラリー作製用に、pAdΔF6(アデノウイルス構成成分を担持)及びpRep(AAV Rep遺伝子を担持)の2つのヘルパープラスミド、及びプラスミドライブラリーをHEK293細胞にトランスフェクトした。下流のステップでは先に記載のあるAAVベクター製造技術を利用した。プラスミドライブラリーのサイズは1×10~3×10であった。AAVライブラリーの収量は1.52×1011~2.56×1013gcであった。
【0141】
構造に基づく飽和的変異誘発法では、抗体によるベクターの中和が速やかに消失した。我々は、最初に、変異誘発用に残基583、588、589、594~597(配列番号34、AAV8 VP1番号付け)を選んだが、その理由は、Gurdaらによって明らかにされた構造に従うと、これらがモノクローナル中和抗体ADK8とAAV8カプシドとの間の接触領域内にあるためである。ADK8存在下、HEK293細胞でインビトロ
選択を1回行った後、変異体を無作為に選び、Nabアッセイで試験した。変異配列は、表1に記載されている。図2Aに示されるように、AAV8と比べると、全ての変異体がADK8に対し耐性を示した。これらの変異体はまた、ADK8/9に対する耐性も示し、2抗体間でエピトープが重複していることを暗示している。C42という1つの変異体は、AAV8よりかなり高い293細胞形質導入を示したが、これは恐らく残基589がアルギニンに変更されたためと思われる。Huh7細胞でも同様の結果が示された(データ図示せず)。
【0142】
B6マウスで肝臓への形質導入を評価した。マウスにCB7.CI.eGFPベクターを用量1×1011GC/動物でi.v.投与し、2週間後に肝臓を回収した。G112の用量は動物1匹あたり3.5×1010であった。CB7.CI.eGFPレポーターを用いたB6マウスにおける肝臓への形質導入では、C41、G110及びG112のGFP発現はAAV8よりも良好であり、G113及びG115はAAV8とほぼ等しかったが、C42は、その293細胞への高い形質導入とは対照的に、マウス肝臓でのGFP発現は少なかったことが示された(データ図示せず)。
【0143】
それらのAAV8変異体にLSP.イヌF9導入遺伝子カセットをパッケージングし、ADK8をi.v.注射してから2時間後にマウスに静脈内投与した場合、インビボ試験での耐性はそのままであった(図2B)。どの変異体も、幾つかのAAV8 Nab-陽性ヒト血漿に対して明らかな耐性を示さなかったが(データ図示せず)、これは、チンパンジーにおけるAAV Nabの広域中和スペクトルにより示されるように、上記の変異体は単一エピトープが除去されたものであり、AAV抗血清はポリクローナルである可能性が高いためと予測された。
【0144】
AAV3G1のさらなる変異誘発と作製。
C41という1つの変異体は、CB7.CI.eGFP導入遺伝子カセットを用いてインビボで試験した場合、2つのAAV8 Nab-陽性ヒト血漿に対してある程度の耐性を示した(データ図示せず)。この変異体を、さらなる変異誘発の骨格として使用した。次回の変異誘発用にHVR.I及びHVR.IV領域をそれぞれ選んだが、その理由は、タンパク質の突起部はより抗原性が高い可能性があるからである。pAAVinvivo.C41骨格(pAAVinvivo.C41は、AAV8 VP1がAAV8.C41 VP1と置き換えられているpAAVinvivoと同一である)の263位~267位及び455位~459位それぞれに(NNK)を5つ搭載してライブラリーを作製し、その後、マウスでインビボ選択を3回実施した。各回ごとに、プールしたヒト静脈内免疫グロブリン(hIVIG)注射の2時間後にマウスにAAVライブラリーを静脈内注射した。ベクター注射の2週間後のマウスの肝臓からPCRでAAV配列を取り出し、pAAVinvivo.C41に搭載してライブラリーを作製し、増量hIVIGを用いた次回の選択用にした。3回の選択終了後、全てのPCR陽性動物のうちIVIGが最も高い群から回収された変異体はSGTHのみであった。その変異体は3bp欠失型の変異体であり、これがVP1、2、3の各ORF及び集合活性化タンパク質を破壊しないことは興味深い(DNAの変更:AACGGGACATCGGGA(配列番号83)-->TCTGGTACTCAT(配列番号84)。HVR.IVのシグナルは依然として多様であったが、これは、コンホメーションが柔軟であることを暗示しており、プールしたhIVIGの優性エピトープではない可能性がある。C41(HVR.VIII変異)、SGTH(HVR.I変異)及びGGSRP(HVR.IV変異)の3つの変異をAAV8骨格内に共に合わせてAAV3G1を作製した。GSRPを選んだ理由は、これが、全ての被験HVR.IV変異体中、hIVIGに対する最も高い耐性をインビトロNabアッセイで示したからである(データ図示せず)。
【0145】
AAV3G1はNab耐性を示し、3つの変異全てがその耐性に寄与した。AAV3G
1は、hIVIGに対する耐性を示した(図4A)。各変異の耐性への寄与を理解するため、我々は、一連のAAV8変異体の他、AAV8及びAAV3G1を作製して全組み合わせを網羅し、それらを抗AAV霊長類血清または血漿を用いて試験した。図4Bに示されるように、AAV3G1を構成する3つの変異全てがNab耐性に寄与した。
【0146】
AAV3G1の肝臓への形質導入は低いが、その筋肉への形質導入は高い。我々は、レポーター遺伝子としてTBG.ヒトF9(hF9)を用いてAAV3G1の肝臓への形質導入をマウスで検討した。用量1×1010gc/動物、i.v.では、ベクター投与後第1週、第2週及び第4週の血漿で発現したF9はAAV8の約18%であった(図13A)。AAV3G1注射マウスから得た、AAV8に対する中和抗体価はAAV8注射動物の12倍少なかった(図13B)。F9発現データと一致して、AAV3G1の肝臓中ベクターゲノムコピー数はAAV8の20%であった。いずれの処置の場合も、ベクターゲノムDNAの肝臓/脾臓比は同様であり、AAV3G1が285、AAV8が237であった(図8E)。次いで、我々は、AAV3G1の筋肉への形質導入をマウスで検討した。3つのレポーター遺伝子カセット:CB7.CI.ルシフェラーゼ、CMV.LacZ及びtMCK.hF9を使用した。図5aのように、3e10gcのCB7.ルシフェラーゼの筋肉内注射では、先の試験と一致して、大量のAAV8ベクターが肝臓に行っており、対照的に、AAV3G1では、AAV8より筋肉形質導入がはるかに高く、肝臓に行ったベクターは少量であったことが明確に示された。静脈内注射は同様の結果を示した(図6c)。同様に、CMV.LacZをi.m.及びi.vの両方で(図5B、6A)、またtMCK.hF9をi.m.で行った(図5C)。tMCK.hF9のi.m.注射では、AAV3G1注射マウスから得た筋溶解物中のF9レベルは、AAV8よりも約10倍高かったが、対照的に、2つのベクターの血漿中F9レベルは類似しており、筋肉はF9発現に理想的な組織ではないという先の報告と一致する。我々は、tMCK.hF9試験でNabの測定も行った。先の論文に記載の試験と一致して、AAV8注射マウスのAAV8 Nabは、AAV3G1注射マウスのそれよりも高かった(約12倍)が、AAV8注射マウスのAAV3G1 NabはAAV3G1注射マウスのそれよりも低かった(約4倍)(図5D)。結果から、AAV3G1は筋肉への形質導入がAAV8よりも優れていることが示され、このことは、2つのカプシドは血清学的に異なったものであることを示す。
【0147】
AAV3G1のヘパリン親和性は高く、その表面電荷を減少させる合理的設計により、そのヘパリン親和性は首尾よく低下し、及びそのマウス肝臓形質導入は部分的に回復する。AAV8.C41骨格で、AAV3G1の肝臓への形質導入は、その3変異のうち2変異がマウス肝臓での3回のインビボ選択で確認されたにもかかわらず低くなっている。ヘパリン結合アッセイは、AAV3G1の親和性の増加を示した(図8A)。ヘパリンまたは負に荷電した他の一部の高分子への結合により、ベクターが、肝細胞へ達しないうちにトラップ/捕捉される可能性があるであろう。ヘパリン結合を排除するため、我々は、HVR.I変異であるSGTHをSDTHに変更し、かつHVR.IV変異であるGGSRPを、選択工程の際に現われた、負に荷電した別の変異のDGSGLに置き換えることによってAAV3G1カプシドに負電荷を導入し、新たな変異体AAV8.TR1を得た。修飾によりヘパリン結合は首尾よく抑制され(図8B)、肝臓への形質導入は部分的に回復した(図13A)。AAV8 Nab力価はAAV8処置マウスより19倍少なかった(図13B)。驚くべきことに、AAV8.TR1処置を受けたマウスの脾臓のベクターDNAはAAV8処置を受けたマウスよりも高かった(図8E)。経鼻ベクター投与を受けたマウスでは、AAV3G1の形質導入はAAV8よりも高く、そのVP1/2領域をrh.20で置き換えるという合理的設計により形質導入をさらに改善した。図7aに示されるように、鼻腔内投与によるマウスでは、AAV3G1の形質導入はAAV8よりも高かった。先の包括的研究では、各AAV間のさまざまな気道形質導入を示した。参照により本明細書に組み込まれるLimberis,MP et al,(2009).Tr
ansduction efficiencies of novel AAV vectors in mouse airway epithelium in vivo and human ciliated airway epithelium in vitro.Mol Ther 17:294-301の表1のデータ分析により、我々は、コドン24は、AAV系統群Eの低スコアメンバーと高スコアメンバーの間、特に、rh.39とhu.37間で明確に異なっており(データ図示せず)、これら2つは、アミノ酸が1つしか違わない(A24D)が、そのスコアは極めて異なっている(4対13)。我々は、AAVの気道への形質導入においてVP1/2領域が何らかの役割を果たしている可能性があると理由付けた。
【0148】
我々は、AAV3G1のVP1/2領域(1~202)をrh.20で置き換えることにより、AAV8.T20という別の変異体を創製した。事実、AAV8.T20の形質導入はAAV8よりも8~12倍高く(図7B)、AAV9レベルに近づいた(図7B)。
【0149】
材料及び方法
動物試験。
Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Careに認定され、Public Health Serviceが保証する、University of Pennsylvaniaの施設で試験用の全マウスを飼育した。動物を用いたすべての手順は、University of PennsylvaniaのInstitute of Animal Care and Use Committeesにより承認されたプロトコルに従った。全マウスともJackson Laboratory(Bar Harbor,ME)より購入した。マウスは、特に具体的な記載がない限り、C57BL/6Jマウス(オス、6~8週齢)であった。プラスミドライブラリーの構築。
【0150】
開始用プラスミドのpAAVinvivoを図14に示す。Phusion(Thermo Fisher Scientific,MA)及び縮重オリゴ
CTACAGAGGAATACGGTATCGTGNNKGATAACTTGCAGNNKNNKAACACGGCTCCTNNKNNKNNKNNKGTCAACAGCCAGGGGGCCTTAC(配列番号85)を用いたPCRによってHVR.VIII変異誘発ライブラリーを構築し、その後、pAAVinvivoへクローニングし、電気穿孔法でStbl4コンピテントセル(Invitrogen,CA)に形質転換した。HVR.I及びHVR.IVの初期ライブラリーを同一の方法で構築し、HVR.Iでは縮重オリゴCAACCACCTCTACAAGCAAATCTCCNNKNNKNNKNNKNNKGGAGCCACCAACGACAACACCTACT(配列番号86)を、またHVR.IVではCTACTTGTCTCGGACTCAAACAACANNKNNKNNKNNKNNKACGCAGACTCTGGGCTTCAGCCAA(配列番号87)を用いた。
【0151】
クローニングプラスミドは、AAV8 VP1をAAV8.C41 VP1で置き換えたpAAVinvivo.C41であった。第1回選択後、BsmBI部位に隣接するプライマーを用いてAAV配列を取り出し、サイレント突然変異で2つの内在性BsmBI部位を除去することによってpAAVinvivo.C41で構築した新たな2つのクローニングプラスミド内にクローニングし、その後、2つのBsmBI部位をそれぞれHVR.I及びHVR.IVに隣接させて導入した。ここで使用したコンピテントセルはMegaX DH10B(商標)T1R Electrocomp(商標)細胞(Invitrogen,CA)に代えた。通常のAAVベクター作製と同様の方法でウイルスライブラリーを作製した。
【0152】
AAVライブラリー作製。
HVR.VIIIでは、プラスミドライブラリーをpdeltaF6及びpRepと混合し、リン酸カルシウム法でEK293細胞にトランスフェクトした。トランスフェクション3日後、細胞溶解物を採取し、DPBSに再懸濁させてBenzonase(Merck)で処理した。その後、溶解物を遠沈して残屑を除去した。上清がAAV変異誘発ライブラリーであり、以降で使用するため-20℃で保存した。HVR.I及びHVR.IVでは、通常のAAVベクターと同様の方法でライブラリーを作製した(下記を参照のこと)。リアルタイムPCRで滴定を行った。
【0153】
選択。
HVR.VIIIにインビトロ選択を1回行った。具体的には、1e9ゲノムコピー(gc)のAAV変異誘発ライブラリーを0.5μLのADK8(AAV8 Nab力価-1:2560)と混合し、完全培地と共に加えて1mLとした。混合物を37℃で30分インキュベートし、その後、293細胞(MOI、約1e4)に塗布した。2日後、細胞を継代し、次いで2日後、プラスミドpAdΔF6及びpRepを用いてトランスフェクションを行った。トランスフェクション2日後、PCRにより細胞からAAV断片を回収し、シークエンシング用にTopoベクター(Invitrogen)にクローニングし、その後、transプラスミドにクローニングしてAAV.CMV.eGFPベクターを作製し、さらなる分析用とした。
【0154】
B6マウスでHVR.I及びHVR.IVの3回のインビボ選択を行い、その際、HVR.Iについては2.53e10gc/マウスの用量を、HVR.IVについては4e10gc/マウスの用量をマウス3匹/群でi.v.注射した。ライブラリー注射の2時間前、DPBSで希釈したhIVIGの100uLを静脈内注射した。1回目では、各HVRにマウス1群ずつ、hIVIG力価1:40を用い、2回目では、各HVRに2群ずつで、hIVIG力価1:40を群1に、1:80を群2に用い、3回目では、各HVRに3群ずつで、hIVIG力価1:80を群1に、1:160を群2に、1:320を群3に用いた。ベクター注射の2週間後、PCRにより肝臓からAAV配列を取り出し、上記にある次回のライブラリー構築用とした。
AAVベクター作製
Lock et al,2010による記載のようにAAVベクターを作製した。
【0155】
イヌF9及びヒトF9のELISA。イヌF9を測定するELISAは、Wang et al.,2005により記載されている。ヒトF9のELISAの操作手順は、やはりWangらにより開発された、イヌF9のELISAを改変したバージョンであった。
【0156】
eGFPをレポーター遺伝子に用いたインビトロNabアッセイ。
eGFPカセットを担持するAAV変異体各々の1e9gcを、異なるモノクローナル抗体(ADK8、AAV8 Nab力価1:2560、0.5μL/ウェル;ADK8/9、AAV8 Nab力価1:2560、0.5μL/ウェル;ADK9、AAV8 Nab力価1:5、0.5μL/ウェル)と混合し、培地と合わせて100μLとし、37℃で30分インキュベートした後、293細胞に塗布した(感染前日に96ウェルプレートに5e4細胞/ウェルで播種)。GFP発現を監視し、ルシフェラーゼをレポーター遺伝子として用いたImage J.In vitro Nabアッセイで定量した。96ウェル透明底黒色プレート(Corning)にHuh7細胞を5e4細胞/ウェルで播種した。2日後、AAVベクターを完全培地に希釈し、その後、血清/血漿試料をさまざまな希釈で混合した。混合物を37℃で30分間インキュベートしてからHuh7プレートに移した。ベクター感染3日後、Clarity(商標)Luminescence Microplate Reader(BioTek)で発光を読み取った。
【0157】
インビボでのルシフェラーゼアッセイ
鼻腔内投与による試験用にマウスに麻酔をかけた。D-ルシフェリン(Xenogen)を、15ug/uL、10uL/鼻孔、20uL/マウスでマウスの鼻孔内に注入した。5分後、発光画像をIVIS(登録商標)Imaging Systems(Xenogen)で取得し、ソフトウェアLiving Image(登録商標)3.2を用いて定量した。他の試験では、D-ルシフェリンを10uL/マウス体重(グラム)でi.p.投与したこと、及びルシフェリン注射の20分後に発光を測定したことを除き、マウスを同様に処置した。
【0158】
ヘパリン結合アッセイ
AAVベクターを所望の緩衝液(DPBSまたはTris緩衝液)に希釈し、AKTA(商標)FPLC System(GE)によってHiTrap Heparin HPカラム(GE Healthcare Life Sciences)に負荷した。その後、ベクター希釈緩衝液及び希釈緩衝液と増量塩化ナトリウムを合わせたものを用いてカラムを順次洗浄した。全工程での画分を採取した。ドットブロット法の操作手順はTenney et al,2014により記載されている。
【0159】
本試験の別の態様は、AAV3G1のVP1/2領域(1~202)をh.20で置き換えることである。我々は、Limberisらの研究(参照により本明細書に組み込まれるLimberis,MP et al,(2009).Transduction efficiencies of novel AAV vectors in mouse airway epithelium in vivo and human ciliated airway epithelium in vitro.Mol Ther 17:294-301)によるデータと、我々のシークエンス解析とを合わせることにより、AAV系統群E内の肺形質導入の高いメンバーと肺形質導入の低いメンバーとの間でコドン24に相違があることを見出した。最も高い系統群Eの3メンバーであるrh.64R1、rh.10及びrh.20の1~202領域のアミノ酸は同一であるので、この領域をAAV3G1内に置き換えたところ、AAV3G1の鼻への形質導入のさらなる改善がもたらされた。
【0160】
実施例4:筋肉でのAAV8とAAV3G1の比較
Vector Coreにより製造及び用量設定されたAAV3G1.tMCK.PI.ffluc.bGH、dd-PCR(PK)を、オスB6マウスに、マウス3匹/群、3e9gc/マウスまたは3e10gc/マウス、1脚/マウスでi.m.注射した。第1週の結果を図15に示す。各図とも、左はAAV8処置、右はAAV3G1処置したものである。
【0161】
ベクターを筋肉内に注射したにもかかわらず、先の試験と一致して、かなりの割合のAAV8ベクターが肝臓に行っており、導入遺伝子は、筋特異的プロモーターtMCKで制御された場合でも肝臓に発現した。AAV3G1の筋肉形質導入はAAV8よりかなり良好である。
【0162】
実施例5
未処置のNHPから得た血清を使用してAAV8、AV83G1及びAAV9について中和抗体価を測定した。結果から、AAV8及びAAV3G1は、血清学的に別個のものであることが確認される。
【表5】
【0163】
(配列表フリーテキスト)
以下の情報を、識別子<223>下にフリーテキストを含む配列用に提供する。
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【表6-4】
【表6-5】
【表6-6】
【表6-7】
【表6-8】
【表6-9】
【表6-10】
【0164】
本明細書で引用した刊行物はいずれも、2016年4月15日に提出された米国仮特許出願第62/323,389号同様、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。同様に、本明細書で参照される配列番号、及び添付の配列表に出現する配列番号は、参照により組み込まれる。本発明は特定の実施形態を参照にして記載されているが、本発明の趣旨から逸脱することなく修正が可能であることは認識されよう。そのような修正は、添付の特許請求の範囲内に含まれるものとする。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15
【配列表】
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