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  • 特許-ノイズフィルタ回路を備えた電気機器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】ノイズフィルタ回路を備えた電気機器
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/12 20060101AFI20220913BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20220913BHJP
【FI】
H02M1/12
H02M7/48 M
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019049694
(22)【出願日】2019-03-18
(65)【公開番号】P2020156139
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 雅治
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-301585(JP,A)
【文献】特開平11-173588(JP,A)
【文献】特表2006-500892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/12
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータ回路と、外部電源の出力電圧に基づく電圧を前記インバータ回路に供給するための一対の電源ライン上を前記インバータ回路の高周波ノイズが伝導することを抑制するノイズフィルタ回路とを備えた電気機器において、
前記ノイズフィルタ回路が、第1コンデンサ、第2コンデンサ、切替リレーおよび正特性サーミスタを有し、
前記第1コンデンサが、前記一対の電源ラインの一方と機器本体アースとの間に設けられ、
前記第2コンデンサが、前記一対の電源ラインの他方と前記機器本体アースとの間に設けられ、
前記切替リレーおよび前記正特性サーミスタが、前記第1コンデンサおよび前記第2コンデンサとの間の接続ノードと前記機器本体アースとの間で、互いに並列となるように接続されていることを特徴とする電気機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電気機器であって、
前記ノイズフィルタ回路が、さらに抵抗を有しており、
前記抵抗は前記正特性サーミスタと直列に接続され、かつ、前記正特性サーミスタおよび前記抵抗は切替リレーと並列に接続されていることを特徴とする電気機器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電気機器であって、
前記切替リレーは、2つのリレーが直列に接続された構成であることを特徴とする電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大電流(例えば20[A]程度)が流れる電源ライン上をインバータ回路で発生する高周波ノイズが伝導することを抑制するノイズフィルタ回路を備えた電気機器(例えば空気調和機)に関する。
【背景技術】
【0002】
ノイズフィルタ回路を備えた電気機器が、例えば特許文献1に開示されている。図5は、特許文献1に開示された電気機器の構成を示す図であり、この図ではノイズフィルタ回路を備えた電気機器として空気調和機200が例示されている。
【0003】
空気調和機200は、電源リレーMRY1および端子板2を有する室内機201と、端子板3、ノイズフィルタ回路4、全波整流回路5、平滑コンデンサC5、インバータ回路6、圧縮機7、スイッチング電源回路8およびマイコン9を有する室外機202とによって構成されている。端子板2および端子板3のN端子同士、端子板2および端子板3のL端子同士はそれぞれ配線によって接続され、インバータ回路6とマイコン9とはフォトカプラなどの絶縁素子(不図示)を介して接続される。空気調和機200の運転中においては、通常、20[A]程度の電流が電源ラインに流れ、また、平滑コンデンサC5の容量が大きいため、待機状態から運転状態に移行した場合にはより大きな突入電流が電源ラインに流れるため、電源リレーMRY1はそれらの大電流に耐えることができる仕様にする必要がある。
【0004】
空気調和機200の運転中においては、室内機201の電源コードが外部の商用交流電源1へ接続されている状態で電源リレーMRY1がオンになっており、商用交流電源1から出力される交流電圧が、室内機201を経由して室外機202に供給される。全波整流回路5および平滑コンデンサC5は、供給された交流電圧を整流且つ平滑化した後、インバータ回路6およびスイッチング電源回路8に供給する。スイッチング電源回路8は、平滑コンデンサC5の両端電圧から各種DC電圧を生成してマイコン9やその他の回路に電源電圧として供給する。インバータ回路6は、マイコン9からの制御に従って内部のパワースイッチング素子をオン/オフさせることにより平滑コンデンサC5の両端電圧を所望周波数の交流電圧に変換する。インバータ回路6によって変換された所望周波数の交流電圧は、圧縮機7に供給され、圧縮機7を動作させる。
【0005】
インバータ回路6では、パワースイッチング素子のオン/オフによりスイッチングノイズが発生する。このスイッチングノイズは、室外機202内部の電源ラインから室内機201へ伝わり、最終的には室内機201の電源コードから外部の商用交流電源1へ伝導し、商用交流電源1に接続している他の機器に悪影響を及ぼす。このようなスイッチングノイズの伝導を抑制するために、室外機202内にノイズフィルタ回路4を設置している。
【0006】
ノイズフィルタ回路4は、図5に示すように、放電抵抗R1、コモンモードノイズを抑制するコモンモードチョークコイルL1、ノーマルモードノイズを抑制するコンデンサC1,C2(いわゆるXコンデンサ)、コモンモードノイズを抑制するコンデンサC3,C4(いわゆるYコンデンサ)およびリレーRY1を備えている。コモンモードチョークコイルL1とコンデンサC1,C2は、一対のAC電源ラインLN1,LN2間に設けられている。また、コンデンサC3,C4は、コンデンサC3が一方のAC電源ラインLN1と室外機202の本体アース(機器本体アース)Gとの間に設けられ、コンデンサC4が他方のAC電源ラインLN2と室外機202の本体アースGとの間に設けられている。これらの構成により、ノイズフィルタ回路4は、室外機202の電源ラインにノイズが伝導することを抑制している。
【0007】
また、ノイズフィルタ回路4におけるリレーRY1は、コンデンサC3とコンデンサC4との間の接続ノードN1と、室外機202の本体アースGとの間に設けられている。リレーRY1のリレーコイルの各端部はスイッチング電源回路8の出力側に接続されている。
【0008】
図5に示す空気調和機200が待機状態のとき、すなわち、電源リレーMRY1がオフであるときは、商用交流電源1から室外機202への電力供給がないため、スイッチング電源回路8は動作せず、リレーRY1のリレーコイルの両端には電圧が印加されない。このため、待機状態の空気調和機200において、リレーRY1はオフとなる。また、リレーRY1がオフとなることで、ノイズフィルタ回路4はノイズフィルタとして機能しなくなる。
【0009】
したがって、空気調和機200が待機状態のときは、接続ノードN1と本体アースGとが遮断され、漏洩電流が流れない。また、待機状態のときは、インバータ回路6が動作しておらずスイッチングノイズが発生していないので、ノイズフィルタ回路4がノイズフィルタとして機能しなくても何ら問題は生じない。
【0010】
これに対して、運転状態のとき、すなわち、電源リレーMRY1がオンであるときは、商用交流電源1から室外機202へ電力が供給され、スイッチング電源回路8が動作する。スイッチング電源回路8が動作すると、リレーRY1のリレーコイルの両端に所定の電圧(Vcc-0[V]、例えば12[V]、24[V]など)が印加され、リレーRY1はオンになる。リレーRY1がオンになると、ノイズフィルタ回路4はノイズフィルタとして機能し、インバータ回路6で発生するスイッチングノイズの伝導を抑えることができる。また、運転状態のときは、接続ノードN1から本体アースGへ漏洩電流が流れるが、このときの漏洩電流レベルは低いものである。
【0011】
このように、図5に示すノイズフィルタ回路4は、スイッチング電源回路8の制御によってオン/オフされるリレーRY1を備え、待機状態においてはリレーRY1をオフして漏洩電流を抑え、運転状態においてはリレーRY1をオンしてスイッチングノイズを抑えることができる。また、リレーRY1には運転状態における漏洩電流が流れるだけであるので、小電流タイプのリレー、すなわち低廉かつ小型のリレーをリレーRY1に用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特許第5031444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1に開示された電気機器(ここでは空気調和機200)は、ノイズフィルタ回路4における搭載部品の大幅なコストアップや大型化を伴うことなく、高周波ノイズと漏洩電流をともに抑制することができる優れたものである。
【0014】
しかしながら、このような電気機器においても、雷などのサージ電流から電気機器を保護するサージ保護回路を備えた場合には、絶縁耐圧試験でリレーRY1の接点間に高い電圧がかかってNGとなる(不良品と判定される)場合があることが本願発明者により発見された。これについて説明すると以下の通りである。
【0015】
図6に示す空気調和機200’は、図5に示す空気調和機200に、サージ保護回路としてサージアブソーバSA1とバリスタNR1とを追加した構成である。サージアブソーバSA1およびバリスタNR1は、AC電源ラインLN2と本体アースGとの間で直列に接続されている。
【0016】
図7は、空気調和機200’から絶縁耐圧試験で関係する部分のみを抜粋して記載した回路図である。そして、絶縁耐圧試験では、電源部とアース部との間で絶縁耐圧試験電源10による試験電圧を印加するため、絶縁耐圧試験時の等価回路は図8に示すようになる。尚、図8に示すように、絶縁耐圧試験時には、商用交流電源1が接続されておらず、AC電源ラインLN1,LN2同士が直接接続されている。
【0017】
また、図7では、図5および図6では図示されていない抵抗R2が、リレーRY1に対して並列に接続されている。この抵抗R2は、リレーRY1における接点間電圧を下げる機能を有するものである。抵抗R2は、その抵抗値が低いほど、リレーRY1の接点間電圧を下げる効果が高い。しかしながら、図7に示す回路では、抵抗R2が存在することで待機状態時に漏洩電流が発生し、抵抗R2の抵抗値が低いと漏洩電流も大きくなるため、抵抗R2の抵抗値を必要以上に小さくすることは好ましくない。
【0018】
絶縁耐圧試験では、通常、1.8kV(周波数は50Hzまたは60Hz)の交流電圧が1秒間印加される(200V機種の場合)。ここで、リレーRY1に印加される電圧(接点間電圧)は、抵抗R2がなければ1.8kVであるが、抵抗R2がある場合は1800×r2/(r2+z1)[V]となる。ここで、r2は抵抗R2の抵抗値[Ω]であり、z1はコンデンサC3およびC4のインピータンス[Ω]である。また、コンデンサC3およびC4のインピータンスz1は、z1=1/(2Π・f・(c3+c4))で表される。ここで、fは試験電圧の周波数[Hz]であり、c3およびc4はコンデンサC3およびC4のそれぞれの容量値[F]である。
【0019】
YコンデンサであるコンデンサC3およびC4には、温度によって容量が変化するF特性のコンデンサが一般的に使用され、F特性のコンデンサは10℃環境下で容量が最大となる。このため、リレーRY1の接点間電圧は10℃環境下で最も高くなる。
【0020】
リレーRY1において、接点間電圧が降伏電圧を超えるとリレーRY1がチャタリングを起こし、接点間電圧がさらに上昇する。チャタリングによってリレーRY1の端子間電圧が上がるのは、図9に示す等価回路で説明できる。ここで、Lは、電源線、電源線につけているフェライトコア、パターンのインダクタンス成分を表している。リレーRY1がチャタリングによってオン/オフを繰り返すと、インダクタンス成分Lにエネルギが発生し、このエネルギによってリレーRY1の端子間電圧が上昇する。
【0021】
チャタリングによって上昇したリレーRY1の端子間電圧が、サージ保護回路(サージアブソーバSA1またはバリスタNR1)の放電電圧よりも高くなると、サージ保護回路が導通を起こし、絶縁耐圧試験でNGとなる場合があった。すなわち、図6に示す空気調和機200’では、気温が低下してコンデンサC3およびC4の容量が大きくなる冬場の生産において、絶縁耐圧試験でのNGが生じ易くなるといった問題があった。この問題は、抵抗R2の抵抗値を低くすることで解消可能ではあるが、その場合は、待機状態時の漏洩電流が増加するといった問題が生じる。
【0022】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、待機状態時の漏洩電流の増加を抑制しながら、絶縁耐圧試験にも耐えうるノイズフィルタ回路を備えた電気機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記の課題を解決するために、本発明の第1の態様は、インバータ回路と、外部電源の出力電圧に基づく電圧を前記インバータ回路に供給するための一対の電源ライン上を前記インバータ回路の高周波ノイズが伝導することを抑制するノイズフィルタ回路とを備えた電気機器において、前記ノイズフィルタ回路が、第1コンデンサ、第2コンデンサ、切替リレーおよび正特性サーミスタを有し、前記第1コンデンサが、一方の電源ラインと機器本体アースとの間に設けられ、前記第2コンデンサが、他方の電源ラインと前記機器本体アースとの間に設けられ、前記切替リレーおよび前記正特性サーミスタが、前記第1コンデンサおよび前記第2コンデンサとの間の接続ノードと前記機器本体アースとの間で、互いに並列となるように接続されていることを特徴としている。
【0024】
上記の構成によれば、気温が低下する冬場などで、F特性の第1および第2コンデンサのそれぞれの容量値が大きくなり、切替リレーの接点間電圧を増加させるが、同時に正特性サーミスタの抵抗値が減少する。その結果、気温が低下して第1および第2コンデンサの容量が増加する冬場などにおいても、絶縁耐圧試験におけるNGを抑制することができる。また、気温が低くないときは正特性サーミスタの抵抗値が高抵抗となることで待機状態時の漏洩電流を抑制できる。
【0025】
また、上記電気機器では、前記ノイズフィルタ回路が、さらに抵抗を有しており、前記抵抗は前記正特性サーミスタと直列に接続され、かつ、前記正特性サーミスタおよび前記抵抗は切替リレーと並列に接続されている構成とすることができる。
【0026】
上記の構成によれば、正特性サーミスタに対して抵抗を直列に接続することで、待機状態時に漏洩電流が流れる経路の抵抗が下がりすぎることを防止し、気温が下がった場合の漏洩電流の増加を抑制することができる。
【0027】
また、上記電気機器では、前記切替リレーは、2つのリレーが直列に接続された構成とすることができる。
【0028】
上記の構成によれば、切替リレーとして1つのリレーを用いる場合に比べて、リレー1つ当たりの接点間電圧を半減させることができる。これにより、絶縁耐圧試験において各リレーでのチャタリングが発生しにくくなり、絶縁耐圧試験におけるNGを抑制することができる。
【0029】
また、上記の課題を解決するために、本発明の第2の態様は、インバータ回路と、外部電源の出力電圧に基づく電圧を前記インバータ回路に供給するための一対の電源ライン上を前記インバータ回路の高周波ノイズが伝導することを抑制するノイズフィルタ回路とを備えた電気機器において、前記ノイズフィルタ回路が、第1コンデンサ、第2コンデンサおよび切替リレーを有し、前記第1コンデンサが、一方の電源ラインと機器本体アースとの間に設けられ、前記第2コンデンサが、他方の電源ラインと前記機器本体アースとの間に設けられ、前記切替リレーが、前記第1コンデンサおよび前記第2コンデンサとの間の接続ノードと前記機器本体アースとの間に接続されており、前記切替リレーは、2つのリレーが直列に接続された構成であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0030】
本発明のノイズフィルタ回路を備えた電気機器は、第1および第2コンデンサの容量が増加する冬場において、同時に正特性サーミスタの抵抗値が減少することで、絶縁耐圧試験におけるNGを抑制することができ、それ以外のときは正特性サーミスタの抵抗値が高抵抗となることで待機状態時の漏洩電流を抑制できるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本実施の形態1に示す電気機器の構成を示す図であり、電気機器として例示された空気調和機の構成を示す図である。
図2】実施の形態1に示す空気調和機から絶縁耐圧試験で関係する部分のみを抜粋して記載した回路図である。
図3】実施の形態2に示す空気調和機から絶縁耐圧試験で関係する部分のみを抜粋して記載した回路図である。
図4】実施の形態3に示す空気調和機から絶縁耐圧試験で関係する部分のみを抜粋して記載した回路図である。
図5】従来のノイズフィルタ回路を備えた電気機器として、空気調和機の一般的な構成を示す図である。
図6図5の空気調和機にサージ保護回路を追加した構成を示す図である。
図7図6に示す空気調和機から絶縁耐圧試験で関係する部分のみを抜粋して記載した回路図である。
図8図6に示す空気調和機において、絶縁耐圧試験時の等価回路図である。
図9図6に示す空気調和機において、チャタリングによるリレー端子間電圧の上昇を説明するための等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
〔実施の形態1〕
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施の形態1に示す電気機器の構成を示す図であり、この図ではノイズフィルタ回路を備えた電気機器として、室内機101および室外機102からなる空気調和機100が例示されている。尚、図1に示す空気調和機100は、図6に示す空気調和機200’に正特性サーミスタPTC1(以下、単にサーミスタPTC1と称する)を追加したものであり、それ以外の部分については空気調和機200’と同様の構成である。このため、図1において図6と同一の部分については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0033】
サーミスタPTC1は、リレーRY1に対して並列に接続されている。図2は、図1に示す空気調和機100から絶縁耐圧試験で関係する部分のみを抜粋して記載した回路図である。尚、図2に示す回路は、図7に示す回路における抵抗R2をサーミスタPTC1に置き換えたものとなっている。また、空気調和機100においては、コンデンサC3およびコンデンサC4が特許請求の範囲に記載の第1コンデンサおよび第2コンデンサに相当し、リレーRY1が特許請求の範囲に記載の切替リレーに相当し、AC電源ラインLN1,LN2が一対の電源ラインに相当する。
【0034】
本実施の形態1に係る空気調和機100において絶縁耐圧試験を行う場合、リレーRY1の接点間電圧は、サーミスタPTC1があることで、1800×rPTC/(rPTC+z1)[V]となる。ここで、rPTCはサーミスタPTC1の抵抗値[Ω]である。また、コンデンサC3,C4のインピータンスz1は、z1=1/(2Π・f・(c3+c4))である。
【0035】
上述したように、F特性のコンデンサC3,C4のそれぞれの容量値c3,c4は、気温が低下する冬場などで大きくなり、このとき、インピータンスz1も増加する。インピータンスz1の増加は、リレーRY1の接点間電圧を増加させるように作用する。一方、サーミスタPTC1は、温度が下がると抵抗値が小さくなり、リレーRY1の接点間電圧を減少させるように作用する。すなわち、気温が低下してインピータンスz1が増加するときには、同時にサーミスタPTC1の抵抗値が減少する。サーミスタPTC1の抵抗値が減少することでリレーRY1の接点間電圧が低減されるため、空気調和機100は、コンデンサC3およびC4の容量が増加する冬場などにおいても、絶縁耐圧試験におけるNGを抑制することができる。
【0036】
また、気温が低くないときは、サーミスタPTC1の抵抗値が高抵抗に維持されるため、待機状態時にサーミスタPTC1を介して流れる漏洩電流を抑制することができる。
【0037】
〔実施の形態2〕
図3は、本実施の形態2に係る空気調和機100から絶縁耐圧試験で関係する部分のみを抜粋して記載した回路図である。図3に示す回路は、図2に示す回路に抵抗R3を追加したものである。抵抗R3はサーミスタPTC1に直列に接続されており、サーミスタPTC1および抵抗R3は、リレーRY1に対して並列に接続されている。尚、本実施の形態2に係る空気調和機100は、抵抗R3を追加した以外は、実施の形態1における空気調和機100と同様の構成であるとする。
【0038】
実施の形態1に係る空気調和機100は、リレーRY1に対してサーミスタPTC1のみを並列に接続した構成であるため、気温が下がってサーミスタPTC1の抵抗値が減少すると、待機状態時の漏洩電流が増加する。これに対し、本実施の形態2に係る空気調和機100では、サーミスタPTC1に対して抵抗R3を直列に接続することで、待機状態時に漏洩電流が流れる経路の抵抗が下がりすぎることを防止し、気温が下がった場合の漏洩電流の増加を抑制することができる。
【0039】
〔実施の形態3〕
図4は、本実施の形態3に係る空気調和機100から絶縁耐圧試験で関係する部分のみを抜粋して記載した回路図である。図4に示す回路は、図2に示す回路において、サーミスタPTC1を無くし、代わりに2つのリレーRY1,RY2を直列に接続して構成したものである。尚、本実施の形態3に係る空気調和機100は、サーミスタPTC1を無くし、2つのリレーRY1,RY2を直列に接続した以外は、実施の形態1における空気調和機100と同様の構成であるとする。
【0040】
本実施の形態3に係る空気調和機100では、2つのリレーRY1,RY2を直列に接続した配置したことにより、1つのリレーRY1を用いる場合に比べて、リレー1つ当たりの接点間電圧を半減させることができる。これにより、絶縁耐圧試験において各リレーでのチャタリングが発生しにくくなり、絶縁耐圧試験におけるNGを抑制することができる。
【0041】
尚、本実施の形態3に係る空気調和機100では、図2および図3に示したサーミスタPTC1や抵抗R3、もしくは図7に示した抵抗R2を用いなくても、絶縁耐圧試験におけるリレーのチャタリングを抑制し、絶縁耐圧試験におけるNGを抑制できるものである。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、2つのリレーRY1,RY2と並列に、サーミスタPTC1や抵抗R3、もしくは抵抗R2を接続するものであってもよい。
【0042】
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0043】
1 商用交流電源
2,3 端子板
4 ノイズフィルタ回路
5 全波整流回路
6 インバータ回路
7 圧縮機
8 スイッチング電源回路
9 マイコン
100 空気調和機(電気機器)
101 室内機
102 室外機
LN1,LN2 AC電源ライン(一対の電源ライン)
C1,C2 コンデンサ
C3 コンデンサ(第1コンデンサ)
C4 コンデンサ(第2コンデンサ)
C5 平滑コンデンサ
L1 コモンモードチョークコイル
MRY1 電源リレー
PTC1 正特性サーミスタ
R3 抵抗
RY1,RY2 リレー(切替リレー)
SA1 サージアブソーバ
NR1 バリスタ
G 本体アース(機器本体アース)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9