(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】容器入り氷菓およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23G 9/04 20060101AFI20220913BHJP
A23G 9/48 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
A23G9/04
A23G9/48
(21)【出願番号】P 2019509054
(86)(22)【出願日】2018-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2018008013
(87)【国際公開番号】W WO2018180199
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-01-22
(31)【優先権主張番号】P 2017068277
(32)【優先日】2017-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】307013857
【氏名又は名称】株式会社ロッテ
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤堂 純子
(72)【発明者】
【氏名】秋山 直哉
【審査官】吉海 周
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-225679(JP,A)
【文献】特開2010-046015(JP,A)
【文献】特開昭56-018551(JP,A)
【文献】特許第4568852(JP,B2)
【文献】特開2004-201510(JP,A)
【文献】特開2016-166051(JP,A)
【文献】国際公開第15/098273(WO,A1)
【文献】特表平10-506841(JP,A)
【文献】特開平10-117692(JP,A)
【文献】"アイス+氷 2度楽しめます 大山乳業・白バラコーヒー",大阪読売新聞 朝刊,第31頁,2016年06月07日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底で上面が開口したカップ状の容器を準備し、
かき氷用ミックスと削氷とを混合したかき氷材料およびフリージングした第2の氷菓材料を、断面が同心円状に2重円を成すドーナツ状ノズルを用いて容器に充填する充填工程を有し、
充填工程では、外側リング状口からかき氷材料を容器に充填し、つづいて内側円形口および外側リング状口から第2の氷菓材料およびかき氷材料を容器に充填し、その後内側円形口から第2の氷菓材料を容器に充填して容器の上面からかき氷材料の露出をなくする連続した3段階の充填を行うことを特徴とする、容器入り氷菓の製造方法。
【請求項2】
有底で上面が開口したカップ状の容器を準備し、
かき氷用ミックスと削氷とを混合し、それをフリージングしたかき氷材料およびフリージングした第2の氷菓材料を、断面が同心円状に2重円を成すドーナツ状ノズルを用いて容器に充填する充填工程を有し、
充填工程では、外側リング状口からかき氷材料を容器に充填し、つづいて内側円形口および外側リング状口から第2の氷菓材料およびかき氷材料を容器に充填し、その後内側円形口から第2の氷菓材料を容器に充填して容器の上面からかき氷材料の露出をなくする連続した3段階の充填を行うことを特徴とする、容器入り氷菓の製造方法。
【請求項3】
容器への材料充填後に、容器に充填された第2の氷菓の上面を、中央部が下方に向かってふくらんだ凸状の押圧部品で冷やし固めるように押す工程をさらに含むことを特徴とする、請求項
1または
2に記載の容器入り氷菓の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、容器入りの氷菓および容器入り氷菓の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱いコーヒー等のドリンクを注いで撹拌することにより、フローズンドリンクが出来上がる商品が公知である(特許文献1および非特許文献1)。
【0003】
上記販売されている商品は、氷菓を収容した容器が、容器本体と蓋体とを有し、蓋体には、容器本体に収容された氷菓に空洞を保持するための専用の蓋体が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】月刊雑誌「日経トレンディ(TRENDY)」2014年8月号、第38~39頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来公知の上記商品は、ドリンクが入るための空洞を保持するために専用の蓋体を用いなければならず、また、蓋体を氷菓から抜き取る作業が必要であり、飲食までの作業がめんどうであるといった課題があった。
【0007】
この発明の主たる目的は、上記の課題を解決するものであり、専用の蓋体を使わなくても、注いだ飲料により氷菓を混合・撹拌しやすく、より手軽にフローズンドリンクを作ることのできる容器入り氷菓を提供することにある。
【0008】
この発明の他の目的は、上記容器入り氷菓の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、この発明は、有底で上面が開口したカップ状の容器を準備し、かき氷用ミックスと削氷とを混合したかき氷材料およびフリージングした第2の氷菓材料を、断面が同心円状に2重円を成すドーナツ状ノズルを用いて容器に充填する充填工程を有し、充填工程では、外側リング状口からかき氷材料を容器に充填し、つづいて内側円形口および外側リング状口から第2の氷菓材料およびかき氷材料を容器に充填し、その後内側円形口から第2の氷菓材料を容器に充填して容器の上面からかき氷材料の露出をなくする連続した3段階の充填を行うことを特徴とする、容器入り氷菓の製造方法である。
【0021】
また、この発明は、有底で上面が開口したカップ状の容器を準備し、かき氷用ミックスと削氷とを混合し、それをフリージングしたかき氷材料およびフリージングした第2の氷菓材料を、断面が同心円状に2重円を成すドーナツ状ノズルを用いて容器に充填する充填工程を有し、充填工程では、外側リング状口からかき氷材料を容器に充填し、つづいて内側円形口および外側リング状口から第2の氷菓材料およびかき氷材料を容器に充填し、その後内側円形口から第2の氷菓材料を容器に充填して容器の上面からかき氷材料の露出をなくする連続した3段階の充填を行うことを特徴とする、容器入り氷菓の製造方法である。
【0023】
この発明は、容器への材料充填後に、容器に充填された第2の氷菓の上面を、中央部が下方に向かってふくらんだ凸状の押圧部品で冷やし固めるように押す工程をさらに含むことを特徴とする、容器入り氷菓の製造方法である。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、容器内の氷菓は、下部に第1の氷菓としてのかき氷が充填され、中央部には第2の氷菓と第1の氷菓が同心円状に充填され、上部はすべて第2の氷菓で覆われているという配置が採用されている。このため、注がれた液体(飲料)の熱は第2の氷菓が受け止め、液体は第2の氷菓を溶かしつつ第1の氷菓であるかき氷をほぐしてゆく。よって、かき氷の氷感を損なうことなく、フローズンドリンクを作ることができる。
【0025】
また、この発明によれば、上部の第2の氷菓は、その上面が中央部へ向かってゆるやかにへこんだ凹面とされているから、注がれた液体は中心部にたまりやすく、液体の持つ熱が第2の氷菓の中心部に伝わりやすい。このため、液体は第2の氷菓を溶かしつつ、次いでかき氷も溶かしてゆくため、最後まで氷感のあるフローズンドリンクを作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、この発明の一実施形態に係る容器入り氷菓10の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、この発明の一実施形態に係る容器入り氷菓10の中央縦断面である。
【
図3】
図3(A),
図3(B),
図3(C)は、それぞれ、容器11に充填された氷菓の中身を示す模式図である。
【
図4】
図4(A),
図4(B)は、それぞれ、かき氷20とシャーベット30の充填形状を示す模式図である。
【
図5】
図5(A),
図5(B)は、それぞれ、かき氷20とシャーベット30の充填形状を示す模式図である。
【
図6】
図6(A),
図6(B)は、それぞれ、かき氷20とシャーベット30の充填形状を示す模式図である。
【
図7】
図7(A),
図7(B),
図7(C)は、それぞれ、シャーベット30の上面形状を示す模式図である。
【
図8】
図8は、容器入り氷菓10の製造工程(A)を示す概略ブロック図である。
【
図9】
図9は、容器入り氷菓10の製造工程(B)を示す概略ブロック図である。
【
図10】
図10(A)は、充填用ノズル40の一例を示す模式的な縦断面図であり、
図10(B)は、その下端面図である。
【
図13】
図13は、第1の氷菓と第2の氷菓の容量割合の評価結果を示す表及び画像である。
【
図14】
図14は、第2の氷菓のオーバーランによる溶解性の違いを示す一覧表である。
【
図15】
図15は、第2の氷菓のオーバーランによる溶解性の違いを示す画像である。
【
図16】
図16は、第2の氷菓のオーバーランによる溶解性の違いを示す画像である。
【
図17】
図17は、第2の氷菓のオーバーランによる溶解性の違いを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明をする。
【0028】
図1は、この発明の一実施形態に係る容器入り氷菓10の一例を示す斜視図である。容器入り氷菓10は、カップ状の容器11内に収容された第1の氷菓としてのかき氷20と第2の氷菓としてのシャーベット30とを有している。容器11の上面開口14は、一例として、容器11に圧着されたシール蓋15で覆われている。
【0029】
図2は、容器入り氷菓10の図解的な中央縦断面図である。カップ状の容器11は、平面視円形の内底面16と、内底面16の周縁17から上方へ向かって、その径が徐々に大きくなるように立ち上がった内周面18とを有している。そして、この容器11内の底面部および周面部にかき氷20が充填されている。周面部のかき氷20は、上方の肉厚が薄くなるように充填されている。その結果、かき氷20は、その中央部に、上方から凹んだ凹部21を有している。凹部21は、上方の径が最も大きく、下方へ向かって徐々に縮径した形状をしている。
【0030】
また、容器11内のかき氷20に形成された凹部21内を満たし、かき氷20の上面全体を覆うようにシャーベット30が充填されている。
【0031】
さらに、充填されたシャーベット30の上面31は、中心部へ向かってゆるやかにへこんだ凹面とされている。
【0032】
かき氷20は、乳製品、糖類、安定剤を主体としたミックスと、削氷を混合したものである。かき氷20は、一例として、ミックス45mlと削氷105mlとが混合された150mlの容量を有している。なお、かき氷20は、フランス語のフラッペ(frappe)と称されることもある。
【0033】
一方、シャーベット30は、特許第4568852号の特許発明にかかる氷菓が用いられている。すなわち、「安定剤として、少なくとも水溶性大豆多糖類および小麦グルテン分解物を配合し、さらに乳化剤を配した全固形分が5~15重量%であり、オーバーランが100~300容量%である」シャーベット30が用いられている。一例として、シャーベット30は、かき氷20と等量の150mlの容量を有している。
【0034】
次に、容器入り氷菓10の食べ方について説明する。
【0035】
容器入り氷菓10の蓋15を外し、容器11の上面開口14を露出させる。そして、容器11の側面を軽く押してかき氷20とシャーベット30をもみほぐす。そして、上面開口14を介して容器11内のシャーベット30の上面に一定量、たとえば70mlの液体(一例としてコーヒーまたはミルク)を注ぐ。注ぐ液体は、低温であっても高温であってもかまわないが、一例として60℃~80℃程度の温かい液体が望ましい。注がれた(温かい)液体は、シャーベット30の上面31中心部に溜まり、シャーベット30の上面31からシャーベット30内へ溶け込んでいく。ユーザーは、ストローやスプーン等でシャーベット30と液体、さらにはかき氷20を混ぜながら、フローズンドリンクとなったシャーベット30およびかき氷20を食する。シャーベット30の周囲および下方にはかき氷20が配置されているから、フローズンドリンク状態のシャーベット30と共に食する際に、氷感を最後まで保てる。
【0036】
容器入り氷菓10への液体飲料の注入は、一例として、コンビニエンスストアに設置されているコーヒーマシンを利用して行うことができる。コーヒーマシンを利用して液体飲料の注入を行う場合、コーヒーマシンに容器入り氷菓10への注入専用のボタンを設けてもよい。そうすることで、コンビニエンスストアで本商品を購入し、コーヒーマシンを用いて、適量、たとえば70mlの温かいコーヒーまたはミルクを、手軽に注ぎ入れるようにすることができる。
【0037】
容器入り氷菓10は、たとえばコンビニエンスストアで購入し、その場で液体飲料を注入して直ちに食することができる。また、容器入り氷菓10を購入して自宅へ持ち帰り、自宅の冷凍庫に保存しておき、自宅で液体飲料を注いで食することもできる。
【0038】
また、容器入り氷菓10は、レストランやカフェなどで、ドリンクを注いで食するフローズンドリンクとして業務用に提供することもできる。
【0039】
この発明の一実施形態に係る容器入り氷菓10は、カップ状の容器11に収容されている。容器11は、平面視円形の内底面16と、内底面16の周縁17から上方へ向かって立ち上がり、その径が徐々に大きくなった内周面18とを有している。この実施形態では、容器11の内容積は、200~700mlとされている。しかし、容器11の形態は、係る形態に限定されるものではない。容器11は、第1の氷菓としてのかき氷20およびかき氷とは異なる第2の氷菓を収容できる有底で上面が開口したカップ状の容器11であれば、種々のものを用いることができる。ここでカップ状の容器11とは、容器11の内面形状がカップ状であればよく、容器11の外形はどのような形態であってもかまわない。また、容器11は、樹脂、紙、金属、ガラス、陶器等の各種材料で形成することができる。
【0040】
また、蓋15は、先行技術におけるもののように氷菓に空洞を保持するための専用の蓋である必要はなく、この実施形態のようにシール蓋15であってもよいし、あるいは着脱可能な簡単な蓋で形成することもできる。
【0041】
次に、この発明が完成するに至るまでの試作品についての評価を説明し、完成品の特徴を明らかにする。
【0042】
(1)氷菓の中身について
図3(A)~(C)に示すように、容器11にかき氷20のみを300ml充填したもの、容器11にシャーベット30のみを300ml充填したもの、および、容器11に、かき氷20を150mlとシャーベット30を150mlとを、水平に下上二層に充填したものを作り、評価した。
【0043】
かき氷20のみのもの(
図3(A))は、かき氷20に密度があり、注いだ液体が非常に混ざりにくく、評価は×であった。
【0044】
シャーベット30のみのもの(
図3(B))は、液体を注ぐと混ざりやすいが、クラッシュした氷の清涼感がなく、フローズンドリンクらしさが不足しており、評価は△であった。
【0045】
かき氷20とシャーベット30を水平に下上二層に充填したもの(
図3(C))は、液体を注ぐとシャーベット30には混ざりやすいが、下半分のかき氷20に厚みがあり、混ぜにくく、評価は△であった。
【0046】
(2)かき氷とシャーベットの充填形状について(その1)
図4(A)に示す、容器11に平面視で同心円状に、周辺にシャーベット30を150ml、中心にかき氷20を150ml充填したものと、
図4(B)に示す、容器11に平面視で同心円状に、周辺にかき氷20を150ml、中心にシャーベット30を150ml充填したものを作り、評価した。
【0047】
図4(A)のものは、液体を注ぐと、周辺部のシャーベット30が柔かく溶け、中心部のかき氷20が固いので、バランスが悪い。また、撹拌する時に少しの力で容器11が変形して、中身がこぼれやすく、評価は△であった。
【0048】
図4(B)のものは、液体を注ぐと、上面周辺部のかき氷20に厚みがあり、かき氷20に注いだ液体の熱が奪われ、中心部のシャーベット30が溶け難かった。評価は〇であった。
【0049】
(3)かき氷とシャーベットの充填形状について(その2)
図5(A)の平面図のように、容器11の周辺部にかき氷20を充填し、中心部に三角形状にシャーベット30を充填したものと、
図5(B)の平面図のように、同心円状に周辺部にかき氷20、中心部にシャーベット30を充填したもの(
図4(B)に示す試作品と同じもの)を作り、評価した。
【0050】
図5(A)の充填形状は、液体を注いだとき、周りのかき氷20をほぐれ易くするためにシャーベット30を平面視三角形状としたが、結果的に、かき氷20に厚みの増す部分が多くなって、かき氷20はほぐれ難くなった。また、形状が平面視丸形より平面視三角形の方が容積が小さいので、シャーベット30の容積を増やす為に平面視三角形の大きさを大きくし、シャーベット30を180ml、かき氷20を120mlとしたものでは、かき氷20に由来する氷感が減ってしまった。評価は〇であった。
【0051】
図5(B)の充填形状は、
図4(B)と同じであり、充填作業が比較的容易である。評価は〇であった。
【0052】
(4)かき氷とシャーベットの充填形状について(その3)
図6(A)の断面図のように、容器11の下部にかき氷20、中上部では、中心にシャーベット30、周囲にかき氷20が位置するよう同心円状に充填したものと、
図6(B)の断面図のように、容器11の下部にかき氷20、中部では、中心にシャーベット30、周囲にかき氷20の同心円状とし、上部(上面)は全てシャーベット30となるように充填したものを作り、評価した。いずれのものも、かき氷20を150ml、シャーベット30を150mlの同量を用いた。
【0053】
図6(A)の充填形状は、
図4(B)の充填形状より、下部においてかき氷20の占める体積が多く、氷感が増したが、シャーベット30の溶けやすさは
図4(B)の充填形状と変わらなかった。ヒートショックにかかった場合に、シャーベット30とかき氷20の間に隙間が出来るので、見た目が悪く、評価は〇であった。
【0054】
図6(B)の充填形状は、上面のシャーベット30が注がれた液体の熱を受けるので、かき氷20の氷感を損なうことなくフローズンドリンクに仕上げられた。また、上面がシャーベット30で覆われており、見た目も良い。評価は◎であった。
【0055】
(5)シャーベットの上面形状について
図6(B)の充填形状において、シャーベット30の上面31の形状を、平らにする(
図7(A))、中心を盛り上げる(
図7(B))、中心をへこます(
図7(C))の3種類を作り、評価した。
【0056】
図7(A)および
図7(B)では、容器11の上から液体を注ぐと、シャーベット30の上面31に平均して液体が溜まるか、シャーベット30の上面31の周囲に液体が溜まる。よって、熱い液体の場合、容器11の外周面が、カップの材質等にもよるが、熱くなる恐れがある。評価は◎であった。
【0057】
一方、
図7(C)では、注いだ液体はシャーベット30の上面31の中心部に溜まり易く、液体の持つ熱がシャーベット30の中心部に伝わり易い。評価は◎◎であった。
【0058】
(6)第1の氷菓と第2の氷菓の容量割合について
この発明の一実施形態に係る容器入り氷菓における第1の氷菓(フラッペ)と第2の氷菓(一例として、ホイップで実施。ここに、「ホイップ」とは、全固形分が5~25重量%でオーバーランが70~300容量%であるシャーベットをいう。)の容量違い品を準備し、混ぜ易さ及び出来上りを確認した。
[サンプル]
図13に示すように、同じ配合、フリージング条件で作成したフラッペ部及びホイップ部の充填容量違い品として、サンプル(1)~(4)を準備した。
[試験方法]
-22℃の各サンプルの上から70℃のコーヒーをゆっくり100g注いだ。注ぎ終わった各サンプルを、ストローでかき混ぜて、混ぜ易さ、出来上がりの氷感を比較評価した。
[結果]
結果の詳細を、
図14に示す。
(A)今回用いた第1の氷菓(フラッペ)は、混ぜ易いように改良したものであり、第2の氷菓(ホイップ部)の比率が多いと混ぜにくい傾向がある。
(B)全体容量に対しフラッペ部の比率が高く、1個当たりの全体重量が多い方が氷感が残る。
(C)全体量が340mlの場合はホイップ部とフラッペ部が1:2あるいは1:3のものが混ぜやすさと氷感の残り氷感の好みの評価が高い。
(D)開発当初はホイップ部とフラッペ部の比率を1:1の比率で検討していたが、改良したフラッペを用いると、ホイップ部とフラッペ部の比率が1:2.1であり、混ぜやすさと氷感のバランスが良いことがわかった。
[今後の方向性]
(1)第2の氷菓(ホイップ部)の役割はかき混ぜやすくするためではなく、『注いだコーヒーの熱をすばやく吸収し、カップにさわったり、こぼれたりした際にやけどしない温度にすること』に特化して良いことがわかった。
(2)今後、品温が高い状態で提供される可能性がある場合は出来上がりの氷感をあげるために第2の氷菓(ホイップ部)と第1の氷菓(フラッペ部)の比率が1:4程度の範囲まで第1の氷菓(フラッペ部)の比率を上げていけば良いと考える。
<容器入り氷菓の製造工程>
次に、容器入り氷菓10の製造方法について説明する。
【0059】
図8は、容器入り氷菓10の製造工程(A)を示す概略ブロック図であり、
図9は、容器入り氷菓10の製造工程(B)を示す概略ブロック図である。容器入り氷菓10は、容器11に、第1の氷菓としてのかき氷20と第2の氷菓としてのシャーベット30とが充填され、蓋15がされ、商品が急速冷凍されて、ダンボール詰めされるという工程で作られる。
【0060】
第1の氷菓としてのかき氷20は、一例として、乳製品、糖類、安定剤、およびコーヒー風味を付与するためのコーヒーエキスを主体としたコーヒーミックスと、削氷を混合したものが用いられる(
図8の製造工程(A)を参照)が、必要に応じて、その後フリージングしたものが用いられてもよい(
図9の製造工程(B)を参照)。そして、かき氷20として容器11に充填される。この実施形態では、一例として、コーヒーミックスと削氷との混合比率(重量比)は、35:65のものが使用されている。
【0061】
第2の氷菓としてのシャーベット30は、シャーベットミックス(原料ミックス)がフリージングされ、容器11に充填される。シャーベットミックスの成分は、前述したように、安定剤として少なくとも水溶性大豆多糖類および小麦グルテン分解物を配合し、さらに乳化剤を配合した全固形分が5~15重量%で、オーバーランが100~300容量%のものを用いることができる。
【0062】
なお、ここで、全固形分とは、製品中の水分を除いた残りの部分をいい、製品の全固形分は、実質的に、原料ミックスの全固形分に等しい。
【0063】
また、オーバーランとは、原料ミックスに空気を抱き込むことにより、原料ミックスの容積以上になった容積のことをいう。オーバーラン100容量%とは、シャーベット30の容積がシャーベットミックス(原料ミックス)の容積の2倍であることを示すものである。
[表1]に、この実施形態に係る容器入り氷菓10の成分規格の一例を示す。
【0064】
【0065】
表1に示すように、容器入り氷菓10は、コーヒーミックス45ml、削氷105ml、シャーベット150mlにより構成され、総容量は300mlである。
【0066】
なお、容器入り氷菓において、第2の氷菓(例えば、シャーベット)のオーバーランによる溶解性の違いを確認したので、以下に説明をする。
[サンプル]
同一配合のシャーベットミックスをフリージングし、オーバーラン違いのものをカップに150ml充填したサンプル(1)~(6)を準備した。各サンプルのオーバーラン(%)は、次の通りである。
【0067】
(1)25%、(2)100%、(3)150%、(4)200%、(5)250%、(6)300%
[試験方法]
-22℃の各サンプルの上から70℃の湯を一定の速度で100ml注いだ。注ぎ終わったら、液体部分を廃棄し、残ったシャーベットミックスの量を測定した。
[試験結果]
試験結果を、
図15、
図16及び
図17に示す。
[考察]
同容量、同温度の湯が持つ熱量は同じであるため、同重量のシャーベットミックスを溶かすことができる。オーバーランが高い方が同じ重量あたりのシャーベットミックスの容量が多いので、溶ける容量が多い。また、空気を多く含むと気泡を包み込むシャーベットミックスの膜が薄くなり、組織がもろくくずれやすいので、崩れながら溶けるようになり、溶けだすシャーベットミックスの重量も増える。
【0068】
図10(A)は、充填用ノズル40の一例を示す模式的な縦断面図であり、
図10(B)は、その下端面図である。充填用ノズル40は、
図8または
図9に示す製造工程中の充填工程において用いられる。
【0069】
充填工程では、充填用ノズル40が用いられ、第1の氷菓としてのかき氷20と第2の氷菓としてのシャーベット30とが、同時に充填される。より詳しくは、ノズル下端が同心円状に2重円をなすノズルにより、かき氷20、かき氷20とシャーベット30、シャーベット30の順で連続的に充填動作が行われ、容器11に前述した配置でかき氷20およびシャーベット30が充填される。
【0070】
図11は、別の充填工程の例を示す図解図である。
図11に示す充填工程では、第1のノズル61を用いて容器11内の少なくとも下方部位に、第1の氷菓としてのかき氷20を充填する(
図11(A))。
【0071】
次いで、容器11内に充填されたかき氷20中に、第1のノズル61とは別の第2のノズル62を差し込み、かき氷20中に第2の氷菓としてのシャーベット30を押し出すように注入し(
図11(B))、容器11の上面からかき氷20の露出がないように、シャーベット30を充填する(
図11(C))。
【0072】
図8に示す製造工程(A)においても、
図9に示す製造工程(B)においても、上述した
図10(A)(B)の充填用ノズル40を用いたいわゆる連続同時充填を採用することができるし、
図11で説明した2つのノズルを用いた二段充填を採用することもできる。
【0073】
図12(A)~(C)は、容器11にかき氷20およびシャーベット30が充填された後に行われる押し固め処理工程を説明する図である。「押し固め」工程は、
図8に示す製造工程(A)においてのみ記載しているが、
図9に示す製造工程(B)においても採用されてもよい。
【0074】
押し固め工程では、容器11にかき氷20およびシャーベット30が充填された容器11に対し、上から押圧板50が降下される(
図12(A))。押圧板50は、平面視円形で中心が下方に凸の板であり、ステンレス板等の金属製である。この押圧板50で容器10に充填されたシャーベット30の上面31が押圧されることにより(
図12(B))、容器10に充填されたシャーベット30の上面31が冷やし固められ、中心部に向かってゆるやかにへこんだ凹面31となる(
図12(C))。
【0075】
なお、
図12(A)~(C)の押圧板50は、シャーベット30の上面31の形状を触り易く説明するために、単純な傘板状としたが、実際には、押圧板50の中に液体窒素を循環させる等の機構を組み込んでもよく、単純な傘板状ではないことを申し添える。
<変形例>
上述の実施形態の説明では、第2の氷菓としてのシャーベット30は、「安定剤として、少なくとも水溶性大豆多糖類および小麦グルテン分解物を配合し、さらに乳化剤を配した全固形分が5~15重量%であり、オーバーランが100~300容量%であるシャーベット」を例示したが、シャーベット30の組成は例示したものに限定されるものではない。
【0076】
また、上述の実施形態では、かき氷とシャーベットを有する容器入り氷菓を説明したが、容器に収容する氷菓は、2種類、すなわち、第1の氷菓としてのかき氷またはフラッペと、かき氷とは異なる種類の第2の氷菓とを有していればよい。特に、第2の氷菓としては、シャーベットに限定されるものではなく、削氷、味付削氷、多孔質化されたアイスクリーム、ホイップ等の氷菓であってもよい。
【0077】
また、容器11に充填されたシャーベット30の上面31は、中心部へ向かってゆるやかにへこんだ凹面を形成していればよく、当該凹面は、
図2に示す形状の凹面31でもよいし、
図12(C)に示す形状の凹面31でもよく、さらには、具体的例示以外の凹面であってもよい。
【0078】
また、上述した第1の氷菓(かき氷20)および第2の氷菓(シャーベット30)の容量並びに容器11の容量は、一例に過ぎず、各容量の少ない小ぶりの容器入り氷菓とすることもできるし、各容量の大きな容器入り氷菓とすることもできる。
【0079】
その他、この発明は、上記説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内で種々の変更が可能である。
【産業上の利用分野】
【0080】
この発明によれば、コンビニエンスストア等において購入し、その場でフローズンドリンクとして手軽に食せる容器入り氷菓を提供できる他、自宅等において、購入した商品をフローズンドリンクにしてゆっくりと味わえる容器入り氷菓を提供できる。
【0081】
さらに、容器入り氷菓は、レストランやカフェ等での業務用メニューとしても提供できるものであり、容器入り氷菓市場の拡大に寄与するものである。
【符号の説明】
【0082】
10 容器入り氷菓
11 容器
14 上面開口
15 蓋
16 内底面
17 周縁
18 内周面
20 第1の氷菓としてのかき氷
21 凹部
30 第2の氷菓としてのシャーベット
31 上面
40 充填用ノズル
50 押圧板
61 第1のノズル
62 第2のノズル