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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】ホイール及びそれを備えた車両
(51)【国際特許分類】
   B60B 5/02 20060101AFI20220913BHJP
   B60B 21/02 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
B60B5/02 G
B60B5/02 E
B60B21/02 J
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019520223
(86)(22)【出願日】2018-05-18
(86)【国際出願番号】 JP2018019353
(87)【国際公開番号】W WO2018216626
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2017104054
(32)【優先日】2017-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(72)【発明者】
【氏名】篠宮 将光
【審査官】西田 侑以
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-108701(JP,U)
【文献】特公昭33-000301(JP,B1)
【文献】特開平09-290601(JP,A)
【文献】実開平2-126902(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 1/00 - 11/10
17/00 - 19/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に用いられるホイールであって、
タイヤを支持し、樹脂が繊維によって強化された繊維強化樹脂を含む円環状の繊維強化樹脂製リムと、
回転中心に位置するハブと、
前記繊維強化樹脂製リムと該繊維強化樹脂製リムに装着されるタイヤとの間に環状に形成される環状空間内に気体を流入させるためのバルブと、
前記繊維強化樹脂製リムの一部を構成する繊維強化樹脂製の境界壁部と、
前記繊維強化樹脂製リムに接続される繊維強化樹脂製の壁部と、
前記繊維強化樹脂製の境界壁部及び前記繊維強化樹脂製の壁部によって区画形成された区画空間と、を有する繊維強化樹脂製チャンバー部と、
前記ハブと前記繊維強化樹脂製チャンバー部とを径方向に連結する連結部と、
を備え、
前記繊維強化樹脂製チャンバー部は、
前記繊維強化樹脂製の境界壁部に、前記繊維強化樹脂製チャンバー部の前記区画空間と前記環状空間または外部とを接続する通気孔が設けられ、
前記繊維強化樹脂製の壁部に、前記バルブが取り付けられるバルブ取付穴が設けられており、
樹脂が繊維によって強化された繊維強化樹脂によって前記繊維強化樹脂製リムと一体に構成されている、
ホイール。
【請求項2】
請求項1に記載のホイールにおいて、
前記繊維強化樹脂製の壁部は、前記繊維強化樹脂製リムに沿って周方向に繋がった円環状である、ホイール。
【請求項3】
請求項1または2に記載のホイールにおいて、
前記繊維強化樹脂製の壁部は、前記繊維強化樹脂製リムから前記径方向の内方に延びていて、
前記繊維強化樹脂製チャンバー部における前記区画空間は、前記繊維強化樹脂製リムよりも前記径方向の内方に位置する、ホイール。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載のホイールにおいて、
前記繊維強化樹脂製チャンバー部は、前記区画空間における前記径方向の寸法が前記車両の左右方向の寸法よりも大きくなるように形成されている、ホイール。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載のホイールにおいて、
前記繊維強化樹脂製の壁部は、前記繊維強化樹脂製リムから前記径方向の内方に延びる繊維強化樹脂製の縦壁部を有し、
前記バルブ取付穴は、前記繊維強化樹脂製の縦壁部を前記車両の左右方向に貫通して、前記繊維強化樹脂製チャンバー部の前記区画空間と外部とを接続し、
前記通気孔は、前記繊維強化樹脂製の境界壁部を前記径方向に貫通して、前記環状空間と前記区画空間とを接続する、ホイール。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一つに記載のホイールにおいて、
前記繊維強化樹脂製の壁部は、前記繊維強化樹脂製リムから前記径方向の内方に延びる繊維強化樹脂製の縦壁部を有し、
前記バルブ取付穴は、前記繊維強化樹脂製の縦壁部によって囲まれた空間により構成され、
前記通気孔は、前記繊維強化樹脂製の境界壁部を前記径方向に貫通して、前記環状空間と前記区画空間とを接続する、ホイール。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか一つに記載のホイールにおいて、
前記繊維強化樹脂製の壁部は、前記繊維強化樹脂製の境界壁部よりも前記径方向の外方で前記車両の左右方向に延びて、前記繊維強化樹脂製の境界壁部との間に前記区画空間を区画形成する繊維強化樹脂製の横壁部を有し、
前記バルブ取付穴は、前記繊維強化樹脂製の横壁部を前記径方向に貫通して、前記繊維強化樹脂製チャンバー部の前記区画空間と前記環状空間とを接続し、
前記通気孔は、前記繊維強化樹脂製の境界壁部を前記径方向に貫通して、前記区画空間と外部とを接続する、ホイール
【請求項8】
請求項1からのいずれか一つに記載のホイールにおいて、
前記連結部は、円盤状である、ホイール。
【請求項9】
請求項1からのいずれか一つに記載のホイールにおいて、
前記繊維強化樹脂製リム、前記繊維強化樹脂製チャンバー部、前記ハブ及び前記連結部は、樹脂が繊維によって強化された繊維強化樹脂によって一体に構成されている、ホイール。
【請求項10】
請求項1からのいずれか一つに記載のホイールを備えた車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に用いられるホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に採用可能な繊維強化樹脂製のリムを備えたホイールが知られている。例えば、特許文献1には、リムと、ハブと、リム及びハブを連結するフランジとが、繊維強化樹脂によって一体に成形された車輪が開示されている。
【0003】
前記特許文献1に開示されている車輪では、繊維強化樹脂を用いることにより、金属製の車輪よりも軽量化を図れる。また、前記特許文献1に開示されている車両では、リムは、補強用連続繊維または補強用織物によって樹脂が円周方向に強化された層と、補強用短繊維を使用した層とを有する層状体によって構成されている。これにより、前記車輪は、高い強度及び剛性を有する。
【0004】
したがって、前記特許文献1に開示されている車輪では、軽量化及び強度確保を両立している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭61-135801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、ホイールを繊維強化樹脂によって構成することにより、強度を確保しつつ、ホイールの軽量化を図れる。しかしながら、近年では、ホイールの強度を確保しつつ、ホイールのさらなる軽量化が望まれている。
【0007】
本発明は、繊維強化樹脂を含むリムを備えたホイールにおいて、強度を確保しつつ、より軽量化が可能な構成を有するホイールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
まず、本発明者は、強度を確保しつつホイールをさらに軽量化するために、ホイールの肉厚を小さくすることを検討した。その結果、本発明者は、以下の点を見出した。
【0009】
繊維強化樹脂を含むリム(以下、繊維強化樹脂製リム)は、ホイールを径方向に切断した際の断面(以下、径方向断面という)で見て、前記ホイールの幅方向(車両の左右方向)にそれぞれ突出した支持部を有する。そのため、ホイールに対して径方向に力を加えた場合、繊維強化樹脂製リムには、該リムの幅方向(車両の左右方向)の両端部、すなわち前記支持部の先端部をホイールの径方向に変位させるような力が作用する。
【0010】
よって、本発明者は、前記ホイールに対して上述のような力が作用した際に繊維強化樹脂製リムの強度を確保しようとすると、前記ホイールの肉厚を小さくすることは困難であることに気づいた。
【0011】
具体的には、本発明者は、バルブを取り付けるために繊維強化樹脂製リムに設けられたバルブ穴の周辺で、バルブ穴が設けられていない部分に比べて繊維強化樹脂製リムの強度が低下することが分かった。すなわち、本発明者は、繊維強化樹脂製リムに含まれる繊維強化樹脂中の繊維が、前記バルブ穴の周辺で切断されるため、切断されていない部分に比べて繊維強化樹脂製リムの強度が前記バルブ穴の周辺で低下する点に気づいた。
【0012】
繊維強化樹脂製リムにバルブを取り付ける場合、バルブ穴として、繊維強化樹脂製リムにバルブを取り付け可能なサイズ(例えば、直径8.5mmまたは11.5mm)の穴を設ける必要がある。このようなサイズのバルブ穴を繊維強化樹脂製リムに設けた場合には、上述のように、穴がない部分に比べて繊維強化樹脂製リムの強度が低下する。また、バルブを繊維強化樹脂製リムに取り付ける場合、繊維強化樹脂製リムにバルブを取り付けるためにバルブ穴の周りに座面を形成する必要がある。そうすると、繊維強化樹脂製リムに座面を形成した部分で繊維強化樹脂製リムの厚みが小さくなる。この場合、座面を形成していない部分に比べて繊維強化樹脂製リムの強度は低下する。
【0013】
これに対し、繊維強化樹脂製リムに設けるバルブ穴のサイズを小さくすることにより、バルブ穴のサイズが大きい場合に比べて繊維強化樹脂製リムの強度低下を抑制できる。しかしながら、バルブのサイズは決まっているため、バルブ穴のサイズを小さくすると、前記バルブ穴に前記バルブを取り付けることができなくなる。また、繊維強化樹脂製リムに設けるバルブ穴の周りの座面部分の厚みを大きくすることにより、繊維強化樹脂製リムの強度低下を防止できる。しかしながら、バルブ穴の周りの座面部分の厚みのサイズは決まっているため、バルブ穴の周りの座面部分の厚みを大きくすると、前記バルブ穴に前記バルブを取り付けることができなくなる。よって、バルブ穴を繊維強化樹脂製リムに設けつつ繊維強化樹脂製リムの強度を確保して、繊維強化樹脂製リムの肉厚を小さくすることは困難であった。
【0014】
繊維強化樹脂製リムを備えたホイールにおいて、強度を確保しつつ、より軽量化するために、バルブ穴の構成を工夫した。具体的には、本発明者は、以下のような構成に想到した。
【0015】
本発明の一実施形態に係るホイールは、車両に用いられるホイールである。タイヤを支持し、樹脂が繊維によって強化された繊維強化樹脂を含む円環状の繊維強化樹脂製リムと、回転中心に位置するハブと、前記繊維強化樹脂製リムと該繊維強化樹脂製リムに装着されるタイヤとの間に環状に形成される環状空間内に気体を流入させるためのバルブと、前記繊維強化樹脂製リムの一部を構成する繊維強化樹脂製の境界壁部と、前記繊維強化樹脂製リムに接続される繊維強化樹脂製の壁部と、前記繊維強化樹脂製の境界壁部及び前記繊維強化樹脂製の壁部によって区画形成された区画空間と、を有する繊維強化樹脂製チャンバー部と、前記ハブと前記繊維強化樹脂製チャンバー部とを径方向に連結する連結部と、を備える。前記繊維強化樹脂製チャンバー部は、前記繊維強化樹脂製の境界壁部に、前記繊維強化樹脂製チャンバー部の前記区画空間と前記環状空間または外部とを接続する通気孔が設けられ、前記繊維強化樹脂製の壁部に、前記バルブが取り付けられるバルブ取付穴が設けられている。
【0016】
これにより、繊維強化樹脂を含む繊維強化樹脂製リムを備えたホイールにおいて、該ホイールに対して径方向に力が作用した場合でも、前記繊維強化樹脂製リムの境界壁部に設けられた通気孔の周辺部分で強度を確保することができる。
【0017】
すなわち、前記ホイールに対して径方向に力が作用した場合、リムにおいてタイヤを支持する部分には、先端部が前記径方向に変位するような力を受ける。前記リムにバルブを取り付けるためのバルブ穴が設けられている構成では、前記バルブ穴の周辺部分の強度が低下している。そのため、前記リムが上述のような力を受けた場合、前記バルブ穴の周辺部分が変形する可能性がある。特に、前記リムが、樹脂が繊維によって強化された繊維強化樹脂を含む繊維強化樹脂製リムの場合には、前記バルブ穴の周辺部分で前記繊維が切断されているため、前記バルブ穴の周辺部分の強度がより低下する。
【0018】
これに対し、上述の構成では、繊維強化樹脂製リムの一部を構成し且つ前記繊維強化樹脂製リムとタイヤとの間の環状空間を区画する繊維強化樹脂製の境界壁部と、前記繊維強化樹脂製リムから径方向内方に延びる繊維強化樹脂製の壁部とによって区画形成された区画空間を有する繊維強化樹脂製チャンバー部を設ける。そして、前記繊維強化樹脂製リムの境界壁部に、前記区画空間と前記環状空間とを接続する通気孔を設ける。また、前記繊維強化樹脂製の壁部に、前記区画空間と外部とを接続し、バルブが貫通するバルブ取付穴を設ける。これにより、前記通気孔の周辺部分において強度を確保できる。よって、前記繊維強化樹脂製リムが上述のような力を受けた場合でも、前記繊維強化樹脂製リムの構造が変化することを防止できる。
【0019】
しかも、前記繊維強化樹脂製リムは、樹脂が繊維によって強化された繊維強化樹脂を含むため、金属製のリムに比べて、軽量化を図れる。
【0020】
したがって、上述の構成により、強度を確保しつつホイールの軽量化を図れるような構成が得られる。
【0021】
他の観点によれば、本発明のホイールは、以下の構成を含むことが好ましい。前記繊維強化樹脂製の壁部は、前記繊維強化樹脂製リムに沿って周方向に繋がった円環状である。
【0022】
これにより、繊維強化樹脂製の境界壁部とともに繊維強化樹脂製チャンバー部の区画空間を区画形成する壁部は、繊維強化樹脂製リムの周方向及び径方向に十分な強度を有する。よって、前記繊維強化樹脂製チャンバー部は、前記周方向及び前記径方向に十分な強度を有する。したがって、ホイールの強度を確保できる。
【0023】
他の観点によれば、本発明のホイールは、以下の構成を含むことが好ましい。前記繊維強化樹脂製の壁部は、前記繊維強化樹脂製リムから前記径方向の内方に延びている。前記繊維強化樹脂製チャンバー部における前記区画空間は、前記繊維強化樹脂製リムよりも前記径方向の内方に位置する。
【0024】
これにより、繊維強化樹脂製チャンバー部によって、ホイールの径方向の断面係数を大きくすることができるため、前記ホイールの強度を向上できる。
【0025】
他の観点によれば、本発明のホイールは、以下の構成を含むことが好ましい。前記繊維強化樹脂製チャンバー部は、前記区画空間における前記径方向の寸法が前記車両の左右方向の寸法よりも大きくなるように形成されている。
【0026】
これにより、ホイールの径方向において、繊維強化樹脂製チャンバー部の強度を向上できる。よって、前記ホイールの径方向の強度を向上できる。
【0027】
他の観点によれば、本発明のホイールは、以下の構成を含むことが好ましい。前記繊維強化樹脂製の壁部は、前記繊維強化樹脂製リムから前記径方向の内方に延びる繊維強化樹脂製の縦壁部を有する。前記バルブ取付穴は、前記繊維強化樹脂製の縦壁部を前記車両の左右方向に貫通して、前記繊維強化樹脂製チャンバー部の前記区画空間と外部とを接続する。前記通気孔は、前記繊維強化樹脂製の境界壁部を、前記径方向に貫通して、前記環状空間と前記区画空間とを接続する。
【0028】
これにより、繊維強化樹脂製リムに対して径方向に力が加わった場合でも、バルブ取付穴の周辺部分に大きな力が加わることを防止できる。よって、ホイールの強度向上を図れる。
【0029】
他の観点によれば、本発明のホイールは、以下の構成を含むことが好ましい。前記繊維強化樹脂製の壁部は、前記繊維強化樹脂製リムから前記径方向の内方に延びる繊維強化樹脂製の縦壁部を有する。前記バルブ取付穴は、前記繊維強化樹脂製の縦壁部によって囲まれた空間により構成されている。前記通気孔は、前記繊維強化樹脂製の境界壁部を前記径方向に貫通して、前記環状空間と前記区画空間とを接続する。
【0030】
このような構成によっても、強度を確保しつつホイールの軽量化を図れるような構成が得られる。
【0031】
他の観点によれば、本発明のホイールは、以下の構成を含むことが好ましい。前記繊維強化樹脂製の壁部は、前記繊維強化樹脂製の境界壁部よりも前記径方向の外方で前記車両の左右方向に延びて、前記繊維強化樹脂製の境界壁部との間に前記区画空間を区画形成する繊維強化樹脂製の横壁部を有する。前記バルブ取付穴は、前記繊維強化樹脂製の横壁部を前記径方向に貫通して、前記繊維強化樹脂製チャンバー部の前記区画空間と前記環状空間とを接続する。前記通気孔は、前記繊維強化樹脂製の境界壁部を前記径方向に貫通して、前記区画空間と外部とを接続する。
【0032】
このような構成によっても、強度を確保しつつホイールの軽量化を図れるような構成が得られる。
【0033】
他の観点によれば、本発明のホイールは、以下の構成を含むことが好ましい。前記繊維強化樹脂製チャンバー部は、樹脂が繊維によって強化された繊維強化樹脂によって前記繊維強化樹脂製リムと一体に構成されている。
【0034】
繊維強化樹脂製チャンバー部及び繊維強化樹脂製リムを、繊維強化樹脂によって一体に構成することにより、ホイールの強度をより向上できるとともに、前記ホイールをより軽量化できる。
【0035】
他の観点によれば、本発明のホイールは、以下の構成を含むことが好ましい。前記連結部は、円盤状である。これにより、連結部の強度を、ホイールの全周で向上できる。よって、ホイールの強度をより確実に向上できる。
【0036】
他の観点によれば、本発明のホイールは、以下の構成を含むことが好ましい。前記繊維強化樹脂製リム、前記繊維強化樹脂製チャンバー部、前記ハブ及び前記連結部は、樹脂が繊維によって強化された繊維強化樹脂によって一体に構成されている。
【0037】
これにより、ホイールの強度をより向上できるとともに、前記ホイールをより軽量化できる。
【0038】
本明細書で使用される専門用語は、特定の実施例のみを定義する目的で使用されるのであって、前記専門用語によって発明を制限する意図はない。
【0039】
本明細書で使用される「及び/または」は、一つまたは複数の関連して列挙された構成物のすべての組み合わせを含む。
【0040】
本明細書において、「含む、備える(including)」「含む、備える(comprising)」または「有する(having)」及びそれらの変形の使用は、記載された特徴、工程、要素、成分、及び/または、それらの等価物の存在を特定するが、ステップ、動作、要素、コンポーネント、及び/または、それらのグループのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0041】
本明細書において、「取り付けられた」、「接続された」、「結合された」、及び/または、それらの等価物は、広義の意味で使用され、“直接的及び間接的な”取り付け、接続及び結合の両方を包含する。さらに、「接続された」及び「結合された」は、物理的または機械的な接続または結合に限定されず、直接的または間接的な接続または結合を含むことができる。
【0042】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
【0043】
一般的に使用される辞書に定義された用語は、関連する技術及び本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想的または過度に形式的な意味で解釈されることはない。
【0044】
本発明の説明においては、いくつもの技術及び工程が開示されていると理解される。これらの各々は、個別の利益を有し、他に開示された技術の1つ以上、または、場合によっては全てと共に使用することもできる。
【0045】
したがって、明確にするために、本発明の説明では、不要に個々のステップの可能な組み合わせをすべて繰り返すことを控える。しかしながら、本明細書及び特許請求の範囲は、そのような組み合わせがすべて本発明の範囲内であることを理解して読まれるべきである。
【0046】
本明細書では、本発明に係るホイールの実施形態について説明する。
【0047】
以下の説明では、本発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な例を述べる。しかしながら、当業者は、これらの具体的な例がなくても本発明を実施できることが明らかである。
【0048】
よって、以下の開示は、本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を以下の図面または説明によって示される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【0049】
<繊維強化樹脂製の定義>
本明細書において、繊維強化樹脂製とは、樹脂が繊維によって強化された繊維強化樹脂のみによって部品が構成されている場合だけでなく、繊維強化樹脂に加えて、繊維強化樹脂以外の材料も用いて部品が構成されている場合も含む。
【0050】
<区画の定義>
本明細書において、区画とは、壁等によって空間が複数に仕切られることを意味する。区画は、壁等によって密閉空間が形成される場合だけでなく、空間として分離されていれば、空間の一部が他の空間と繋がっている場合も含む。
【0051】
本発明の適用対象は、自動二輪車に限らない。本発明は、三輪車、四輪車など、自動二輪車以外の車両に適用してもよい。
【発明の効果】
【0052】
本発明の一実施形態によれば、繊維強化樹脂製リムを備えたホイールにおいて、強度を確保しつつ、より軽量化が可能な構成を有するホイールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1図1は、本発明の実施形態1に係る車両の全体構成の概略を示す左側面図である。
図2図2は、車両の左側面図、及び、該左側面図におけるA-A線断面図である。
図3図3は、後輪ホイールの概略構成を示す斜視図である。
図4図4は、図3におけるIV-IV線断面図である。
図5図5は、後輪タイヤに力が入力された場合に、後輪ホイールのリムが受ける力を模式的に示す図である。
図6図6は、実施形態2に係る車両の後輪ホイールの概略構成を示す断面図である。
図7図7は、実施形態3に係る車両の後輪ホイールの概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下で、実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図において、同一部分には同一の符号を付して、その同一部分の説明は繰り返さない。なお、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0055】
以下、図中の矢印Fは、車両の前方向を示す。図中の矢印RRは、車両の後方向を示す。図中の矢印Uは、車両の上方向を示す。図中の矢印Lは、車両の左方向を示す。図中の矢印Rは、車両の右方向を示す。また、以下の説明において前後左右の方向は、それぞれ、車両を運転する乗員から見た場合の前後左右の方向を意味する。
【0056】
[実施形態1]
<全体構成>
図1は、実施形態1に係る車両1の全体構成の概略を示す左側面図である。図2は、車両1の左側面図及び後輪ホイール41の断面図である。図2における車両1の左側面図は、図1と同様であるため、以下では、図1を参照して、車両1の構成について説明する。なお、図2における後輪ホイール41の断面図は、図4と同様である。後輪ホイール41の構成は後述する。
【0057】
車両1は、例えば、自動二輪車であり、車体2と、前輪3と、後輪4とを備える。車体2は、前輪3、後輪4、ハンドル6、シート7及びパワーユニット8等の各構成部品を支持する。本実施形態では、車体2は、フレーム10と、一対のフロントフォーク15と、リアアーム16とを含む。
【0058】
フレーム10は、ヘッドパイプ11と、メインフレーム12とを有する。ヘッドパイプ11は、車両1の前部に位置し、ハンドル6に接続されたステアリングシャフト(図示省略)を回転可能に支持する。メインフレーム12は、ヘッドパイプ11から車両後方に向かって延びるように、ヘッドパイプ11に接続されている。メインフレーム12には、パワーユニット8等が支持されている。
【0059】
フレーム10は、金属材料によって構成されていてもよいし、炭素繊維などの繊維によって樹脂が強化された繊維強化樹脂によって構成されていてもよい。
【0060】
一対のフロントフォーク15は、前輪3の左方及び右方に配置され、前輪3から上方且つ後方に延びている。各フロントフォーク15の上端部は、ハンドル6に接続されている。各フロントフォーク15の下端部は、前輪3を回転可能に支持している。
【0061】
リアアーム16は、メインフレーム12の後部から後方に伸びている。リアアーム16の前端部は、メインフレーム12の後部に、上下方向に回転可能に接続されている。リアアーム16の後端部は、後輪4を回転可能に支持している。なお、リアアーム16とメインフレーム12とは、リアサスペンション17によって接続されている。
【0062】
前輪3は、前輪ホイール31と、前輪タイヤ32とを有する。前輪ホイール31は、一対のフロントフォーク15の下端部に、回転可能に支持されている。本実施形態では、前輪ホイール31は、従来と同様、例えば金属製のホイールである。前輪タイヤ32は、前輪ホイール31の外周面上に配置されている。
【0063】
前輪ホイール31には、回転中心に、前輪ブレーキの一部を構成する前輪ブレーキディスク33が取り付けられている。前輪ブレーキディスク33は、円盤状であり、前輪ホイール31とともに回転する。なお、前輪ブレーキディスク33の外周部には、前輪ブレーキの動作時に前輪ブレーキディスク33を把持する前輪キャリパ34が配置されている。
【0064】
後輪4は、後輪ホイール41(ホイール)と、後輪タイヤ42(タイヤ)とを有する。後輪ホイール41は、リアアーム16の後端部に、回転可能に支持されている。本実施形態では、後輪ホイール41は、樹脂が炭素繊維によって強化された炭素繊維強化樹脂によって構成されている。後輪タイヤ42は、後輪ホイール41の外周面上に配置されている。
【0065】
後輪ホイール41にも、回転中心に、後輪ブレーキの一部を構成する後輪ブレーキディスク43が取り付けられている。後輪ブレーキディスク43は、円盤状であり、後輪ホイール41とともに回転する。なお、前輪3と同様、後輪ブレーキディスク43の外周部には、後輪ブレーキの動作時に後輪ブレーキディスク43を把持する後輪キャリパ44が配置されている。
【0066】
<後輪ホイール>
次に、後輪ホイール41の具体的な構成を、図3及び図4を用いて説明する。図3は、後輪ホイール41の概略構成を示す斜視図である。図4は、図3におけるIV-IV線断面図である。
【0067】
図3及び図4に示すように、後輪ホイール41は、後輪4の回転中心に位置する回転軸Rの軸線方向から見て、円形状である。後輪ホイール41は、前記軸線方向から見て、中心が回転軸Rと一致するように配置されている。なお、後輪4の回転軸Rの軸線方向は、車両1の左右方向と一致している。
【0068】
後輪ホイール41は、後輪4の回転中心に位置するハブ50と、後輪ホイール41の径方向外周部に位置する円環状のリム60(繊維強化樹脂製リム)と、リム60の径方向内方に位置するチャンバー部80(繊維強化樹脂製チャンバー部)と、ハブ50とチャンバー部80とを連結する連結部70とを有する。本実施形態の後輪ホイール41は、連結部70が円盤状である、いわゆるディッシュホイールである。
【0069】
ハブ50は、後輪ホイール41の回転中心に位置する。図4に示すように、ハブ50は、左ハブ部51と、右ハブ部52とを有する。左ハブ部51は、後輪ホイール41の左右方向の中心よりも左方に位置する。右ハブ部52は、前記左右方向の中心よりも右方に位置する。左ハブ部51及び右ハブ部52は、それぞれ、円環状且つ板状であり、厚み方向が前記左右方向に一致するように配置されている。
【0070】
左ハブ部51には、左側部に左側ハブ接続部材53が接続されている。右ハブ部52には、右側部に右側ハブ接続部材54が接続されている。左側ハブ接続部材53及び右側ハブ接続部材54は、それぞれ円盤状であり、厚み方向が前記左右方向に一致するようにハブ50に取り付けられている。左側ハブ接続部材53及び右側ハブ接続部材54は、ハブ50を挿通する連結パイプ55によって、左右方向に連結されている。連結パイプ55内には、図示しない車軸が挿通している。これにより、ハブ50は、左側ハブ接続部材53、右側ハブ接続部材54及び連結パイプ55を介して、図示しない車軸に回転可能に支持される。
【0071】
なお、特に図示しないが、右側ハブ接続部材54には、パワーユニットの動力を伝達するチェーンと噛み合うスプロケットが取り付けられている。これにより、パワーユニットの動力がチェーンを介して後輪ホイール41に伝達される。
【0072】
本実施形態では、左側ハブ接続部材53、右側ハブ接続部材54及び連結パイプ55は、それぞれ、金属製の部材である。
【0073】
連結部70は、後輪ホイール41の径方向の断面で見て、ハブ50からチャンバー部80に向かって徐々に幅が狭くなるように形成されている。すなわち、連結部70は、前記径方向の断面で見て、チャンバー部80との連結部分における幅がハブ50との連結部分における幅よりも小さい。これにより、連結部70におけるチャンバー部80との連結部分の右方に後輪キャリパ44を配置することができる。よって、後輪キャリパ44を後輪4に対して左右方向にコンパクトに配置できる。
【0074】
詳しくは、連結部70は、左連結部71と、右連結部72とを有する。左連結部71は、左ハブ部51とチャンバー部80とを連結する。右連結部72は、右ハブ部52とチャンバー部80とを連結する。左連結部71及び右連結部72は、それぞれ板状であり、後輪ホイール41の径方向の断面で見て、ハブ50からチャンバー部80に向かうほど間隔が狭くなるように設けられている。左連結部71と右連結部72との間には、空間が形成されている。
【0075】
リム60は、後輪ホイール41を径方向の断面で見て、後輪ホイール41の左右方向の中央から左右方向に延びている。すなわち、リム60は、前記左右方向の中央から左方且つ前記径方向の外方に延びる左リム部61と、前記左右方向の中央から右方且つ前記径方向の外方に延びる右リム部62とを有する。リム60において、左リム部61及び右リム部62は一体で形成されている。リム60において、左リム部61と右リム部62との接続部分は、前記径方向の内方に凹んでいる。
【0076】
左リム部61は、前記径方向の断面で見て、連結部70よりも左方に突出している。右リム部62は、前記径方向の断面で見て、連結部70よりも右方に突出している。左リム部61及び右リム部62は、前記径方向の断面で見て、左右対称である。
【0077】
左リム部61及び右リム部62の径方向外方に、後輪タイヤ42が配置される。具体的には、左リム部61及び右リム部62の径方向外周部には、後輪タイヤ42の内周部が接触する。これにより、リム60と後輪タイヤ42との間には、リム60に沿って環状に延びる環状空間Sが形成される。
【0078】
左リム部61は、左端部に、径方向外方に突出した突出部61aを有する。右リム部62は、右端部に、径方向外方に突出した突出部62aを有する。すなわち、リム60の左右方向の両端部には、突出部61a,62aが位置する。後輪タイヤ42の内周部は、左右方向において、リム60における突出部61aと突出部62aとの間に配置されている。
【0079】
後輪ホイール41は、炭素繊維によって樹脂(例えば、エポキシ樹脂、ビニルエステル、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイドなど)が強化された炭素繊維強化樹脂によって構成されている。本実施形態では、前記炭素繊維は、厚み方向に複数積層された繊維シートを含む。この繊維シート(繊維)の積層方向は、後輪ホイール41を構成する各壁の厚み方向である。前記繊維シートは、繊維を例えば編んだり固めたりすることによって、シート状(平面状)に形成された部材を意味する。
【0080】
本実施形態では、ハブ50、リム60、連結部70及びチャンバー部80は、炭素繊維樹脂によって構成されている。また、ハブ50、リム60、連結部70及びチャンバー部80は、一体で形成されている。
【0081】
上述の構成において、図5に示すように、後輪タイヤ42に上方向に力が入力された場合(図5の白抜き矢印)、後輪タイヤ42からリム60の左右方向の両端部に力が入力される(図5の実線矢印)。すなわち、左リム部61の左端部及び右リム部62の右端部には、上方向の力が入力される。これにより、リム60における左右方向の中央部には、引張応力が生じる。
【0082】
一般的に、リムには、リムと後輪タイヤとの間の環状空間内に空気を供給するためのバルブが取り付けられている。そのため、前記リムには、前記バルブを取り付けるための貫通穴が形成されている。上述のように、樹脂が炭素繊維によって強化された炭素繊維強化樹脂によって構成された後輪ホイール41の場合、リムにおいてバルブを取り付けるための貫通穴が設けられた部分では、炭素繊維が分断される。そのため、前記リムにおける前記貫通穴の周辺部分では、貫通穴が設けられていない部分に比べて強度が低下する。このような構成において、上述のように、後輪タイヤからリムの左右方向の両端部に力が入力された場合、前記リムにおいて十分な強度が得られない可能性がある。
【0083】
これに対し、本実施形態では、リム60に直接、バルブを取り付けずに、リム60には通気孔81aのみを設けるとともに、リム60の径方向内方に位置するチャンバー部80にバルブ90が取り付けられている。
【0084】
詳しくは、後輪ホイール41は、リム60の径方向内方で、且つ、リム60の左右方向の中央部分と連結部70との間に、チャンバー部80を有する。図4に示すように、チャンバー部80は、リム60の左右方向の中央部分を構成し、環状空間Sの一部を区画する境界壁部81と、リム60から径方向内方に延びる一対の壁部82,83(縦壁部)と、壁部82,83同士を連結する連結壁部84とを有する。チャンバー部80は、境界壁部81と、壁部82,83と、連結壁部84とによって区画形成された区画空間Pを有する。すなわち、後輪ホイール41は、リム60と連結部70との間に、区画空間Pを有する。なお、区画空間Pは、後輪ホイール41のリム60の径方向内方に、周方向全周に円環状に形成されていてもよいし、周方向の一部のみに形成されていてもよい。
【0085】
上述のようなチャンバー部80を、リム60の径方向内方に設けることにより、後輪ホイール41の径方向の断面において、断面係数を大きくすることができる。よって、後輪ホイール41の強度を向上できる。
【0086】
境界壁部81は、リム60において左リム部61の右端部及び右リム部62の左端部によって構成されている。境界壁部81は、リム60において前記径方向の内方に凹んだ部分に位置する。
【0087】
一対の壁部82,83は、左右方向に平行に配置されている。一対の壁部82,83は、径方向の寸法が同等である。また、一対の壁部82,83の径方向寸法は、一対の壁部82,83の間隔よりも大きい。よって、チャンバー部80の区画空間Pは、径方向の寸法が左右方向の寸法よりも大きい。これにより、後輪ホイール41の径方向において、チャンバー部80の強度を向上することができる。よって、後輪ホイール41の径方向の強度を向上することができる。
【0088】
一対の壁部82,83は、リム60に沿って周方向に繋がった円環状である。これにより、境界壁部81及び連結壁部84とともに区画空間Pを区画形成する壁部82,83は、リム60の周方向及び径方向に十分な強度を有する。よって、チャンバー部80の強度を確保することができる。
【0089】
境界壁部81には、境界壁部81を径方向に貫通する通気孔81aが設けられている。通気孔81aは、環状空間Sと区画空間Pとを接続する。この通気孔81aは、バルブ90が取り付けられる後述のバルブ取付穴82aよりも小さい。通気孔81aは、リム60を径方向の断面で見て、リム60の左右方向の中央部分に設けられている。
【0090】
一対の壁部82,83のうち一方の壁部82には、壁部82を左右方向に貫通するバルブ取付穴82aが設けられている。バルブ取付穴82aは、区画空間Pと外部とを接続する。バルブ取付穴82aには、バルブ90が取り付けられている。
【0091】
詳しくは、バルブ90は、バルブ本体91と、カラー92とを有する。バルブ本体91は、カラー92を介してバルブ取付穴82aの周縁部に取り付けられる。カラー92は、例えばアルミ合金などの金属材料によって構成されていて、バルブ取付穴82aの周縁部に接着剤等によって固定されている。カラー92には、バルブ本体91が取り付けられる。すなわち、カラー92は、バルブ本体91を壁部82におけるバルブ取付穴82aの周縁部に取り付けるための取り付け部材として機能する。
【0092】
上述のように、チャンバー部80において、バルブ90を取り付けるためのバルブ取付穴82aを、後輪タイヤ42とリム60との間の環状空間Sと区画空間Pとを接続する通気孔81aとは別に設けることにより、後輪ホイール41の強度低下を防止できる。すなわち、上述の構成により、リム60の一部を構成する境界壁部81に設けられる通気孔81aを、バルブ90を取り付け可能なサイズにする必要がなくなる。よって、通気孔及びバルブ取付穴の形状、サイズ、位置及び数等の設計自由度を向上できるとともに、リム60の強度低下を防止できる。したがって、後輪ホイール41の強度低下を防止できる。
【0093】
しかも、後輪ホイール41は、樹脂が炭素繊維によって強化された炭素繊維強化樹脂によって構成されている。すなわち、ハブ50、リム60及び連結部70は、樹脂が炭素繊維によって強化された炭素繊維強化樹脂によって、一体に形成されている。また、チャンバー部80は、樹脂が炭素繊維によって強化された炭素繊維強化樹脂によって、リム60と一体に形成されている。これにより、金属製のホイールに比べて、後輪ホイール41の軽量化を図れる。
【0094】
したがって、上述の構成により、強度を確保しつつ軽量化を図れるホイールが得られる。
【0095】
[実施形態2]
図6に、実施形態2に係る後輪ホイール141の断面図を示す。この実施形態2における後輪ホイール141は、チャンバー部180の構成及びバルブ90の取り付け構造が、実施形態1の構成とは異なる。よって、以下では、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0096】
図6に示すように、チャンバー部180は、リム60の一部を構成する境界壁部81と、リム60から径方向内方に延びる一対の壁部182,183(縦壁部)とを有する。壁部182,183は、径方向内方の端部で連結されていない。よって、チャンバー部180は、径方向内周部に開口を有する。この開口にバルブ90が取り付けられる。すなわち、前記開口が、バルブ90のバルブ取付穴180aである。バルブ取付穴180aは、チャンバー部180に径方向内方に向かって開口している。すなわち、バルブ取付穴180aは、区画空間Pと外部とを接続する。実施形態1のバルブ90と同様、バルブ取付穴180aには、バルブ90のカラー92が装着されている。
【0097】
チャンバー部180の境界壁部81及び壁部182,183は、実施形態1と同様、炭素繊維によって樹脂(例えば、エポキシ樹脂、ビニルエステル、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイドなど)が強化された炭素繊維強化樹脂によって構成されている。本実施形態でも、前記炭素繊維は、厚み方向に複数積層された繊維シートを含む。この繊維シート(繊維)の積層方向は、後輪ホイール141を構成する各壁の厚み方向である。前記繊維シートは、繊維を例えば編んだり固めたりすることによって、シート状(平面状)に形成された部材を意味する。
【0098】
本実施形態では、後輪ホイール141は、チャンバー部180と連結部70との間に、バルブ90を配置するための収容空間Qを有する。収容空間Qは、チャンバー部180の壁部182,183の径方向内方に位置する端部と、連結部70の径方向外方に位置する端部との間に、形成されている。収容空間Qは、バルブ90を収容可能で且つバルブ90に図示しない空気ポンプの空気注入部を装着可能な大きさを有する空間である。また、収容空間Qは、後輪ホイール141において周方向の一部のみに設けられている。
【0099】
なお、チャンバー部180のバルブ取付穴180aにバルブ90を装着することにより、チャンバー部180内には、境界壁部81及び壁部182,183によって区画空間Pが区画形成される。
【0100】
上述のような構成によっても、バルブ90を後輪ホイール141に取り付けるためのバルブ取付穴180aを、境界壁部81に設けられた通気孔81aとは別に設けることができる。これにより、後輪ホイール141の強度低下を防止できる。
【0101】
したがって、上述の構成によっても、強度を確保しつつ軽量化を図れるホイールが得られる。
【0102】
[実施形態3]
図7に、実施形態3に係る後輪ホイール241の断面図を示す。この実施形態3における後輪ホイール241は、チャンバー部280の構成及びバルブ190の取り付け構造が、実施形態1の構成とは異なる。よって、以下では、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0103】
図7に示すように、チャンバー部280は、横壁部263と、境界壁部281とを有する。横壁部263は、後輪ホイール241のリム260の径方向外方に設けられている。具体的には、横壁部263は、リム260において左右方向の中央部分で且つ径方向内方に凹んだ部分との間に区画空間Pを形成するように、リム260に対して径方向外方に位置する。リム260において、前記中央部分で且つ前記凹んだ部分が、チャンバー部280の境界壁部281を構成する。よって、本実施形態のチャンバー部280は、リム260の中央部分よりも径方向外方に形成されている。
【0104】
横壁部263には、バルブ190を取り付けるためのバルブ取付穴263aが設けられている。バルブ取付穴263aは、区画空間Pと環状空間Sとを接続する。境界壁部281には、通気孔281aが形成されている。通気孔281aは、区画空間Pと外部とを接続する。本実施形態では、通気孔281a内に、バルブ190の一部が挿通している。
【0105】
本実施形態のバルブ190は、バルブ本体191にゴム部192が一体形成されたバルブである。ゴム部192が、バルブ取付穴263aの周縁部に取り付けられる。
【0106】
なお、リム260の境界壁部281と連結部270との間には、バルブ190の一部を収容可能で且つバルブ190に図示しない空気ポンプの空気注入部を装着可能な大きさを有する収容空間Qが設けられている。
【0107】
上述のような構成によっても、バルブ190を後輪ホイール241に取り付けるためのバルブ取付穴263aを、境界壁部281に設けられた通気孔281aとは別に設けることができる。これにより、後輪ホイール241の強度低下を防止できる。
【0108】
したがって、上述の構成によっても、強度を確保しつつ軽量化を図れるホイールが得られる。
【0109】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0110】
前記各実施形態では、後輪ホイール41,141,241について適用した場合について説明したが、前輪ホイールを繊維強化樹脂によって構成するとともに、前記各実施形態の構成を、前輪ホイールに適用してもよい。
【0111】
前記各実施形態では、後輪ホイール41,141,241は、連結部70,270が円盤状である、いわゆるディッシュホイールである。しかしながら、後輪ホイールは、連結部が複数の柱状の部材である、スポークタイプのホイールであってもよい。後輪ホイールの連結部は、ハブとチャンバー部とを連結可能な構成であれば、どのような構成を有していてもよい。
【0112】
前記各実施形態では、後輪ホイール41,141,241において、左リム部61及び右リム部62は、左右対称の形状を有する。しかしながら、左リム部と右リム部とは左右非対称であってもよい。例えば、後輪ホイールは、径方向の断面で見て、リムにおける左右方向の中央よりも右方または左方に位置する部分に連結部が接続された構成を有していてもよい。
【0113】
前記各実施形態では、通気孔81a,281aは、後輪ホイール41,141,241に一つ設けられている。しかしながら、通気孔は、後輪ホイールに複数設けられていてもよい。また、通気孔の大きさ及び形状も、どのような大きさ及び形状であってもよい。なお、後輪ホイールにバルブを複数取り付けてもよい。
【0114】
前記各実施形態では、後輪ホイール41,141,241は、炭素繊維によって樹脂が強化された炭素繊維強化樹脂によって構成されている。しかしながら、後輪ホイールを、炭素繊維以外の繊維(例えば、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ガラス繊維など)によって樹脂が強化された繊維強化樹脂によって構成してもよい。また、前記各実施形態では、後輪ホイール41,141,241は、エポキシ樹脂、ビニルエステル、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイドなどの樹脂によって構成されている。樹脂は、繊維によって強化可能な樹脂であれば、他の種類の樹脂であってもよい。
【0115】
また、後輪ホイールは、リム及びチャンバー部が繊維強化樹脂製であれば、それら以外の部分、すなわち、ハブ及び連結部が例えば金属材料または樹脂などによって構成されていてもよい。なお、リム及びチャンバー部は、一部が金属または樹脂などによって構成されていてもよい。
【0116】
前記各実施形態において、炭素繊維強化樹脂に用いられる炭素繊維は、繊維同士が編まれていてもよいし、編まれていない状態であってもよい。すなわち、炭素繊維は、繊維シートでなくてもよい。また、前記各実施形態では、炭素繊維の繊維シートは、複数、積層されているが、この限りではなく、繊維シートが1枚だけであってもよい。この場合には、前記各実施形態における積層方向は、炭素繊維強化樹脂によって構成された部材の厚み方向に対応する。さらに、前記炭素繊維は、所定長さ(例えば1mm)以上、連続した繊維であってもよいし、不連続繊維であってもよい。
【0117】
前記各実施形態において、炭素繊維強化樹脂に用いられる繊維シートは、厚み方向に複数、積層された状態で、樹脂によって結合されている。しかしながら、前記炭素繊維強化樹脂は、繊維シートによって強化された炭素繊維強化樹脂層と、発泡合成樹脂を含む発泡樹脂層とが厚み方向に積層された複合材料によって形成されていてもよい。この複合材料は、一対の前記炭素繊維強化樹脂層を有し、それらの炭素繊維強化樹脂層の間に、前記発泡樹脂層が配置された材料である。前記複合材料を用いることにより、炭素繊維強化樹脂層のみを用いる場合に比べて、炭素繊維強化樹脂を含む各部材の軽量化を図れるとともに、前記各部材の厚みを容易に変えることができる。なお、前記発泡樹脂層の前記発泡合成樹脂として、振動を吸収可能な樹脂を用いてもよい。
【0118】
前記各実施形態では、後輪ホイール41,141,241は一体で形成されている。しかしながら、後輪ホイールは、複数の部材が接着剤またはボルト等によって接続されることによって構成されていてもよい。
【0119】
前記実施形態1では、チャンバー部80の区画空間Pは空洞である。しかしながら、区画空間P内に、発泡材料または樹脂材料などが充填されていてもよい。
【0120】
前記実施形態1では、チャンバー部80は、区画空間Pにおける径方向の寸法が左右方向の寸法よりも大きい。しかしながら、チャンバー部は、区画空間における径方向の寸法が左右方向の寸法と同じであってもよいし、左右方向の寸法が径方向の寸法よりも大きくてもよい。
【0121】
前記実施形態1,2では、バルブ90は、バルブ本体91と、カラー92とを有する。しかしながら、バルブは、バルブ取付穴に取り付け可能なゴム部を有していてもよい。この場合には、バルブは、カラーを有していなくてもよい。また、前記実施形態3では、バルブ190は、バルブ本体191と、ゴム部192とを有する。しかしながら、バルブは、ゴム部ではなく、ねじによって横壁部263に固定されていてもよい。前記各実施形態において、バルブは、後輪タイヤとリムとの間の環状空間に空気を供給可能な構成であれば、どのような構成を有していてもよい。
【符号の説明】
【0122】
1 車両
2 車体
3 前輪4 後輪
41、141、241 後輪ホイール(ホイール)
42 後輪タイヤ(タイヤ)
43 後輪ブレーキディスク
44 後輪キャリパ
50 ハブ
51 左ハブ部
52 右ハブ部
60、260 リム(繊維強化樹脂製リム)
61、261 左リム部
61a 突出部
62、262 右リム部
62a 突出部
70、270 連結部
80、180、280 チャンバー部(繊維強化樹脂製チャンバー部)
81、281 境界壁部
81a、281a 通気孔
82、83、182、183 壁部(縦壁部)
82a、180a、263a バルブ取付穴
84 連結壁部
90、190 バルブ
91、191 バルブ本体
92 カラー
192 ゴム部
263 横壁部
S 環状空間
P 区画空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7