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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/4093 20060101AFI20220913BHJP
   B23Q 15/013 20060101ALI20220913BHJP
   B23B 1/00 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
G05B19/4093 M
B23Q15/013
B23B1/00 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019548169
(86)(22)【出願日】2018-10-04
(86)【国際出願番号】 JP2018037284
(87)【国際公開番号】W WO2019073907
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2017199695
(32)【優先日】2017-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000137856
【氏名又は名称】シチズンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】中谷 尊一
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/162739(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/140906(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/047485(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/031897(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/146946(WO,A1)
【文献】特開2014-054688(JP,A)
【文献】特開2016-182655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18 - 19/416
B23Q 15/00 - 15/28
B23B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを切削加工する切削工具と、前記切削工具と前記ワークとを相対的に回転させる回転手段と、前記切削工具と前記ワークとを、所定の加工送り方向に送り動作させる送り手段と、前記切削工具と前記ワークとを相対的に往復振動させる振動手段と、前記振動手段による往復振動の振幅を制御する振幅制御手段とを備え、
前記ワークと前記切削工具との相対回転と、前記ワークに対する前記切削工具の前記加工送り方向への前記振幅を備えた前記往復振動を伴う送り動作とによって、前記切削工具を前記ワークに対して所定の移動経路に沿って移動させて切削加工を行う工作機械において、
前記移動経路が、前記移動経路上の所定の座標位置で分割された複数の分割経路からなり、
前記振幅制御手段が、各分割経路毎に振幅送り比率を設定することによって、各分割経路毎に前記振幅を各別に設定する工作機械。
【請求項2】
前記移動経路が、予め定められる2つの座標位置間を所定の補間方法に基づいた補間経路からなる請求項1の工作機械。
【請求項3】
2つの座標位置が、前記切削工具の移動開始位置と到達位置とからなり、前記振幅制御手段が、切削工具の到達位置への移動に伴って順に振幅を小さく設定する請求項2の工作機械。
【請求項4】
2つの座標位置が、前記切削工具の移動開始位置と到達位置とからなり、前記振幅制御手段が、切削工具の到達位置への移動に伴って順に振幅を大きく設定する請求項2の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークを切削加工する切削工具と、前記切削工具と前記ワークとを相対的に回転させる回転手段と、前記切削工具と前記ワークとを、所定の加工送り方向に送り動作させる送り手段と、前記切削工具と前記ワークとを相対的に往復振動させる振動手段と、前記振動手段による往復振動の振幅を制御する振幅制御手段とを備え、前記ワークと前記切削工具との相対回転と、前記ワークに対する前記切削工具の前記加工送り方向への前記振幅を備えた前記往復振動を伴う送り動作とによって、前記切削工具を前記ワークに対して所定の移動経路に沿って移動させて切削加工を行う工作機械が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/047485号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
切削加工を行う際に切削工具がワークに対して移動する所定の移動経路内で振動手段による往復振動の振幅を任意に設定して前記振動を伴う切削加工を行うことができる工作機械を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の工作機械は、ワークを切削加工する切削工具と、前記切削工具と前記ワークとを相対的に回転させる回転手段と、前記切削工具と前記ワークとを、所定の加工送り方向に送り動作させる送り手段と、前記切削工具と前記ワークとを相対的に往復振動させる振動手段と、前記振動手段による往復振動の振幅を制御する振幅制御手段とを備え、前記ワークと前記切削工具との相対回転と、前記ワークに対する前記切削工具の前記加工送り方向への前記振幅を備えた前記往復振動を伴う送り動作とによって、前記切削工具を前記ワークに対して所定の移動経路に沿って移動させて切削加工を行う工作機械において、前記移動経路が、前記移動経路上の所定の座標位置で分割された複数の分割経路からなり、前記振幅制御手段が、各分割経路毎に振幅送り比率を設定することによって、各分割経路毎に前記振幅を各別に設定することを特徴とする。
【0006】
本発明の工作機械は、上記構成おいて、前記移動経路が、予め定められる2つの座標位置間を所定の補間方法に基づいた補間経路からなるのが好ましい。
【0007】
本発明の工作機械は、上記構成おいて、2つの座標位置が、前記切削工具の移動開始位置と到達位置とからなり、前記振幅制御手段が、切削工具の到達位置への移動に伴って順に振幅を小さく設定することができる。
あるいは、2つの座標位置が、前記切削工具の移動開始位置と到達位置とからなり、前記振幅制御手段が、切削工具の到達位置への移動に伴って順に振幅を大きく設定することができる。
【発明の効果】
【0008】
以上のように構成される本発明の工作機械の構造によると、切削加工を行う際に切削工具がワークに対して移動する所定の移動経路を、前記移動経路上の所定の座標位置で複数の分割経路に分割し、各分割経路毎に振動手段による往復振動の振幅を各別に設定することによって、前記移動経路内で振幅を任意に設定して前記振動を伴う切削加工を容易に行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態の工作機械の概略を示す図。
図2】本発明の一実施の形態の切削工具とワークとの関係を示す図。
図3】本発明の一実施の形態の切削工具の往復振動および位置を示す図。
図4】本発明の一実施の形態の主軸n回転目、n+1回転目、n+2回転目の関係を示す図。
図5A】本発明の一実施の形態の送り量と振幅との関係について説明する図。
図5B】本発明の一実施の形態の送り量と振幅との関係について説明する図。
図5C】本発明の一実施の形態の送り量と振幅との関係について説明する図。
図6】補間経路を複数の分割経路に分割した例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
工作機械100は、図1に示されるように、主軸110と、切削工具台130Aとを備えている。
主軸110の先端にはチャック120が設けられている。
主軸110は、ワークを保持するワーク保持手段として構成され、ワークWがチャック120を介して主軸110に保持されている。
切削工具台130Aは、ワークWを旋削加工するバイト等の切削工具130を保持する刃物台として構成され、切削工具130が切削工具台130Aに装着されている。
【0011】
主軸110は、主軸モータの動力によって回転駆動されるように主軸台110Aに支持されている。
前記主軸モータとして主軸台110A内において、主軸台110Aと主軸110との間に形成される従来公知のビルトインモータ等が考えられる。
主軸台110Aは、Z軸方向送り機構160を介して工作機械100のベッド側に搭載されている。
Z軸方向送り機構160は、前記ベッド等のZ軸方向送り機構160の固定側と一体的なベース161と、主軸110の軸線方向となるZ軸方向に延びて、ベース161に設けられるZ軸方向ガイドレール162とを備えている。
Z軸方向ガイドレール162に、Z軸方向ガイド164を介してZ軸方向送りテーブル163がスライド自在に支持されている。
Z軸方向送りテーブル163側にリニアサーボモータ165の可動子165aが設けられている。
ベース161側にリニアサーボモータ165の固定子165bが設けられている。
リニアサーボモータ165の駆動によってZ軸方向送りテーブル163が、Z軸方向に移動駆動される。
主軸台110Aは、Z軸方向送りテーブル163に搭載されている。
Z軸方向送りテーブル163の移動によって主軸台110AがZ軸方向に移動し、主軸110のZ軸方向への移動が行われる。
主軸110は、主軸台110Aと一体的に、Z軸方向送り機構160によってZ軸方向に移動自在に設けられ、Z軸方向送り機構160は、主軸移動機構として、主軸110をZ軸方向に移動させる。
【0012】
X軸方向送り機構150が、工作機械100のベッド側に設けられている。
X軸方向送り機構150は、前記ベッド側と一体的なベース151と、Z軸方向に対して上下方向で直交するX軸方向に延びるX軸方向ガイドレール152とを備えている。
X軸方向ガイドレール152はベース151に固定され、X軸方向ガイドレール152には、X軸方向送りテーブル153がX軸方向ガイド154を介してスライド自在に支持されている。
切削工具台130Aは、X軸方向送りテーブル153に搭載されている。
X軸方向送りテーブル153側にリニアサーボモータ155の可動子155aが設けられている。
ベース151側にリニアサーボモータ155の固定子155bが設けられている。
X軸方向送りテーブル153がリニアサーボモータ155の駆動によってX軸方向ガイドレール152に沿ってX軸方向に移動することにより、切削工具台130AがX軸方向に移動し、切削工具130がX軸方向に移動する。
X軸方向送り機構150は、刃物台移動機構として、切削工具台130Aを切削工具130と一体的に、X軸方向に移動させる。
前記刃物台移動機構(X軸方向送り機構150)と前記主軸移動機構(Z軸方向送り機構160)とが協動して動作し、X軸方向送り機構150よるX軸方向への切削工具台130A(切削工具130)の移動と、Z軸方向送り機構160による主軸台110A(主軸110)のZ軸方向への移動によって、切削工具130は、ワークWに対して相対的に任意の加工送り方向に移動して送られる。
なお、Z軸方向およびX軸方向に直交するY軸方向に対するY軸方向送り機構を設けてもよい。
前記Y軸方向送り機構は、X軸方向送り機構150と同様の構造とすることができる。
X軸方向送り機構150をY軸方向送り機構を介してベッドに搭載することにより、Y軸方向送りテーブルをリニアサーボモータの駆動によってY軸方向に移動させ、切削工具台130AをX軸方向に加えてY軸方向に移動させ、切削工具130をX軸方向およびY軸方向に移動させることができる。
この場合、前記刃物台移動機構は、X軸方向送り機構150とY軸送り機構とから構成され、前記刃物台移動機構と前記主軸移動機構とが協動し、切削工具台130Aに装着されている切削工具130は、ワークWに対してX軸方向及びZ軸方向に加えて、Y軸方向に移動が可能となり、相対的に任意の加工送り方向に移動して送られる。
Y軸方向送り機構を、X軸方向送り機構150を介してベッドに搭載し、前記Y軸方向送りテーブルに切削工具台130Aを搭載してもよい。
【0013】
前記主軸移動機構と前記刃物台移動機構とから構成される送り手段により、主軸110と切削工具台130Aとを相対的に移動させ、切削工具130を、ワークWに対して相対的に任意の加工送り方向に移動させて送り、主軸110を、ワークWと切削工具130とを相対的に回転させる回転手段として駆動して、ワークWを切削工具130に対して回転させることによって、図2に示すように、ワークWを、前記切削工具130により任意の形状に切削加工することができる。
【0014】
本実施形態においては、主軸台110Aと切削工具台130Aとの両方を移動するように構成しているが、主軸台110Aを工作機械100のベッド側に移動不能に固定し、刃物台移動機構を、切削工具台130AをX軸方向、Z軸方向、またはY軸方向に移動させるように構成してもよい。
この場合、前記送り手段が、切削工具台130AをX軸方向、Z軸方向、またはY軸方向に移動させる刃物台移動機構から構成され、固定的に位置決めされて回転駆動される主軸110に対して、切削工具台130Aを移動させることによって、切削工具130をワークWに対して任意に加工送り動作させることができる。
切削工具台130Aを工作機械100のベッド側に移動不能に固定し、主軸台110AをX軸方向、Z軸方向、またはY軸方向に移動させるように、主軸移動機構を構成してもよい。
この場合、前記送り手段が、主軸台110AをX軸方向、Z軸方向、またはY軸方向に移動させる主軸台移動機構から構成され、固定的に位置決めされる切削工具台130Aに対して、主軸台110Aを移動させることによって、切削工具130をワークWに対して任意に加工送り動作させることができる。
本実施形態においては、X軸方向送り機構150、Y軸方向送り機構、Z軸方向送り機構160は、リニアサーボモータによって駆動されるように構成されているが、従来公知のボールネジとサーボモータとによる駆動等とすることもできる。
本実施形態においては、ワークWと切削工具130とを相対的に回転させる回転手段が、前記ビルトインモータ等の前記主軸モータによって構成され、ワークWと切削工具130との相対回転は、主軸110の回転駆動によって行われる。
本実施形態では、切削工具130に対してワークWを回転させる構成としたが、ワークWに対して切削工具130を回転させる構成としてもよい。
この場合切削工具130としてドリル等の回転工具が考えられる。
【0015】
主軸110の回転、X軸方向送り機構150やZ軸方向送り機構160、あるいはY軸送り機構等の移動は、制御装置Cで制御される。
制御装置Cは、制御部C1によって主軸110の回転、Z軸方向送り機構160、X軸方向送り機構150、あるいはY軸方向送り機構を駆動制御する。
制御部C1は、各送り機構を振動手段として、各送り機構を各々対応する移動方向に沿って往復振動させながら、主軸台110A又は切削工具台130Aを各々の方向に移動させるように制御を行う。
各送り機構は、制御部C1の制御により、図3に示すように、主軸110又は切削工具台130Aを、1回の往復振動において、所定の前進量だけ前進(往動)移動してから所定の後退量だけ後退(復動)移動させ、前進量と後退量の差である進行量だけ各移動方向に移動させる。
前記送り手段は、制御部C1の制御による各送り機構の協動によって、ワークWに対して切削工具130を加工送り方向に沿って往復振動させ、所定の進行量ずつ進めながら加工送り方向に移動させて送る。
前記送り手段により、切削工具130が加工送り方向に沿った往復振動しながら加工送り方向に送られることによって、主軸1回転分となる主軸位相0度から360度まで変化した時の前記進行量の合計を送り量として、ワークWの加工が行われる。
前記送り手段による切削工具130の送りにより、例えば、ワークWを所定の形状に外形切削加工することによって、ワークWの周面は、図4に示すように波状に切削される。
図4に示されるように、ワークWの1回転当たりの切削工具130の振動の回数を振動数Nとすると、振動数Nが、3.5回(振動数N=3.5)の場合、n+1回転目(nは1以上の整数)の切削工具130により旋削されるワークWの周面形状の位相が、n回転目の切削工具130により旋削された形状の位相に対して逆位相の関係となる。
これにより、n回転目の切削工具130の往動時の切削加工部分と、n+1回転目の復動時の切削加工部分とが一部重複する。
ワーク周面のn+1回転目の切削部分に、n回転目に切削済みの部分が含まれるため、この部分では、切削中に切削工具130が、ワークWに対して何ら切削を行わずに空削りする、空振り動作が生じる。
切削加工時にワークWから生じる切屑は、前記空振り動作によって順次分断される。
工作機械100は、切削工具130の切削送り方向に沿った往復振動によって切屑を分断しながら、ワークWの外形切削加工等を円滑に行うことができる。
切削工具130の往復振動によって切屑を順次分断する場合、ワーク周面のn+1回転目の切削部分に、n回転目に切削済みの部分が含まれていればよい。
換言すると、ワーク周面のn+1回転目における復動時の切削工具130の軌跡が、ワーク周面のn回転目における切削工具130の軌跡の位置まで到達すればよい。
図4に示されるように、n+1回転目とn回転目のワークWにおける切削工具130により旋削される形状の位相が一致(同位相)とならなければよく、必ずしも180度反転させる必要はない。
【0016】
図5Aに示すように、図4と同様に、主軸1回転で切削工具130が3.5回振動し、切削工具130の往動時の切削加工部分と、復動時の切削加工部分とが一部重複し、ワークW周面の2回転目の切削部分に、1回転目に切削済みの部分が含まれ、切削中に切削工具130の前記空振り動作が生じている状態から、図5Bに示すように、単に送り量だけ増大させると、2回転目における復動時の切削工具130の軌跡が1回転目における切削工具130の軌跡まで到達しなくなるため、前述した空振り動作ができず、切屑が分断されない場合がある。
なお図5A乃至図5Cでは、説明をわかり易くするために、切削工具130の振動を直線状にして表現している。
単に送り量を徐々に増加させていくと、前述した切削工具130の往動時の切削加工部分と復動時の切削加工部分との重複部分が徐々に小さくなり、往動時の切削加工部分と復動時の切削加工部分とが重複しなくなるため、前述した空振り動作ができず、切屑が分断されない場合が発生する。
制御部C1は、ワークWに対する切削工具130の送り量に比例して前記往復振動の振幅を設定する振幅設定手段を備える。
振幅設定手段は、送り量に対する振幅の比率を振幅送り比率として、送り量に振幅送り比率を乗じて振幅を設定するように構成されている。
振幅送り比率は、ユーザによって、数値設定部C2等を介して、制御部C1に設定することができる。
前記振幅設定手段と前記振動手段とは互いに連係し、図5Cに示すように、切削工具130の前記加工送り方向に沿った往復振動と、切削加工において設定される送り量に応じた振幅を設定することによって、制御部C1がワークWの2回転目における復動時の切削工具130の軌跡を、ワークWの1回転目における切削工具130の軌跡まで到達させるように前記振動手段を制御する。
これにより、送り量に応じて振幅が設定され、制御部C1の制御によって振動手段が切削工具130を、前述した空振り動作が生じるように振動させて、切屑を分断することができる。
【0017】
切削工具130の前記送りによる前記切削加工は、切削工具130を所定の座標位置に移動させるように制御部C1側に移動指令することによって行われる。
例えば、移動開始位置としてワークWに対して所定の座標位置に位置する切削工具130を、前記移動指令によって指定される座標位置を到達位置として、所定の補間方法に基づいた補間経路を移動経路として移動させることによって、2つの座標位置間を前記補間経路で繋いだ形状に沿って切削工具130が送られ、2つの座標位置間を前記補間経路で繋いだ形状にワークWが切削加工される。
切削工具130を、前記2つの座標位置間を直線状の補間経路で移動させることによって、ワークWが前記両座標位置間で直線状の形状に加工される。
切削工具130を、前記2つの座標位置間を所定の半径を有する円弧状の補間経路で移動させることによって、ワークWが前記両座標位置間で前記円弧状の形状に加工される。
【0018】
本実施形態の制御部C1は、経路分割手段と振幅制御手段とを備えている。
経路分割手段は、前記移動指令によって指定される座標位置への切削工具130の移動に際して、前記補間経路を、前記補間経路上の所定の座標位置によって、複数の分割経路に分割する。
例えば、図6に示されるように、P0(Xs,Zs)の座標位置にある切削工具130を、P4(Xe,Ze)に直線状の補間経路で移動させ、前記補間経路上に、P1(X1,Z1)、P2(X2,Z2)、P3(X3,Z3)の各座標が位置している場合、経路分割手段は、前記補間経路を、P0(Xs,Zs)からP1(X1,Z1)への第1移動分割経路、P1(X1,Z1)からP2(X2,Z2)への第2移動分割経路、P2(X2,Z2)からP3(X3,Z3)への第3移動分割経路、P3(X3,Z3)からP4(Xe,Ze)への第4移動分割経路に分割する。
振幅制御手段は、各分割経路毎に前記往復振動の振幅を各別に設定する。
制御部C1は、切削工具130を、第1分割経路において、前記補間経路となる直線に沿って、振幅制御手段によって定められる所定の振幅D1で往復振動させながら送り、第2分割経路において、前記補間経路となる直線に沿って、振幅制御手段によって定められる所定の振幅D2で往復振動させながら送り、第3分割経路において、前記補間経路となる直線に沿って、振幅制御手段によって定められる所定の振幅D3で往復振動させながら送り、第4分割経路において、前記補間経路となる直線に沿って、振幅制御手段によって定められる所定の振幅D4で往復振動させながら送る。
各移動分割経路での移動の経路は前記補間経路に重なるため、全体として切削工具130はP0(Xs,Zs)からP4(Xe,Ze)に直線状の補間経路に沿って往復振動を行いながら移動する。
各分割経路における各振幅は別々に設定されるため、例えば切削工具130が移動開始位置から到達位置への移動に伴って、各振幅を順に小さくして設定することができる。例えば、振幅D1から振幅D4に順次小さくしたり、振幅D1から振幅D2を順に大きくし、振幅設定手段によって定められた振幅とした後、振幅D2に比較して、振幅D3、振幅D4を順次小さくしたり、振幅D3に比較して振幅D4を小さくしたりすることができる。
第1分割経路から第4分割経路で順に往復振動の振幅を減少させることによって、第4分割経路での往復振動の際に、往動から復動に切り替わるときの切削工具130の位置が前記到達位置に一致するように切削加工を実行させることができる。
第4分割経路における切削加工の完了に際して、切削工具130を到達位置で維持したままワークWを切削するように、前記往復振動を停止させる。
これにより、ワークWの到達位置における切削加工面を整えることができる。
【0019】
振幅制御手段は、各分割経路毎に振幅送り比率を設定することによって、各分割経路における各振幅を別々に設定することができる。
振幅制御手段は、例えば、振幅設定手段に対して設定される振幅送り比率を、各分割経路毎に所定の定数で乗じることによって、各分割経路における各振幅を別々に設定することができる。
ただし、単に振幅送り比率を順に小さくすると、前述した切削工具130の往動時の切削加工部分と復動時の切削加工部分との重複部分が小さくなり、往動時の切削加工部分と復動時の切削加工部分とが重複しなくなり、前述した空振り動作ができず、切屑が分断されない場合が発生し得るため、振幅制御手段は、各分割経路毎に送り量を定め、異なる送り量とすることによって各分割経路における各振幅を別々に設定することもできる。
これにより、各分割経路において切屑を分断しながら、順に前記振幅を小さくすることができる。
【0020】
なお一部の分割経路同士で同じ大きさの振幅となる場合があっても良い。
また、往動から復動に切り替わるときの切削工具130の位置を到達位置に一致させることができない場合は、往動から復動に切り替わるときの切削工具130の位置が、到達位置を越えないような、到達位置に近接する状態で、前記往復振動を停止させ、往復振動させることなく切削工具を到達位置に送ることもできる。
往復振動の停止は、例えば振幅送り比率を0とすることによって実行することができる。
また振幅送り比率を0等とすることによって往復振動を停止させて切削加工を行う分割補間経路を設定することもできる。
振幅制御手段は、切削工具130が移動開始位置から到達位置への移動に伴って、各振幅を順に大きく設定する構成とすることもできる。例えば、振幅D1から振幅D4に順次大きくしたり、振幅D1から振幅D2あるいは振幅D3を順に大きくし、振幅設定手段によって定められた振幅としたりすることができる。振幅D1から振幅D4を順に大きく設定することにより、移動開始位置(切削開始位置)における振幅D1を小さくして、切削開始時における切削工具130の負荷を低減させることができる。
【0021】
経路分割手段は、所定の時間に基づいて補間経路を複数の分割経路に分割する構成とすることもできる。例えば切削工具130が移動開始位置から移動を開始した後、所定の時間が経過するまでの区間を第1分割経路、第1分割経路後、所定の時間が経過するまでの区間を第2分割経路、第2分割経路後、所定の時間が経過するまでの区間を第3分割経路、とし、第3分割経路後、到達位置に移動するまでの区間を第4分割経路とすることができる。
【0022】
各分割経路において、前記実施形態と同様に、振幅送り比率や送り量を各別に設定することによって、各分割経路における各振幅を別々に設定することができる。例えば切削工具130の移動開始位置から到達位置への移動に伴って、第1分割経路での振幅D1から第4分割経路での振幅D4を順次小さくしたり、振幅D1から第2分割経路での振幅D2を順に大きくし、振幅設定手段によって定められた振幅とした後、振幅D2に比較して、第3分割経路での振幅D3、振幅D4を順次小さくしたり、振幅D3に比較して振幅D4を小さくしたりすること等が可能となる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6