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特許7140783血液成分採取用カセット、血液成分採取システム及び流路内圧検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】血液成分採取用カセット、血液成分採取システム及び流路内圧検出方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/02 20060101AFI20220913BHJP
【FI】
A61M1/02 180
A61M1/02 125
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019565962
(86)(22)【出願日】2018-06-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-06
(86)【国際出願番号】 JP2018022348
(87)【国際公開番号】W WO2018230545
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2017118851
(32)【優先日】2017-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 政嗣
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-158369(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0150225(US,A1)
【文献】実開昭58-005443(JP,U)
【文献】特表2001-504748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路が形成されたカセット本体を備え、荷重検出部を有する血液成分分離装置に装着可能に構成された血液成分採取用カセットであって、
前記カセット本体は、カセット厚さ方向の少なくとも一方面においてカセット厚さ方向に膨出した圧力測定用膨出部を有する膨出構造部を備え、
前記膨出構造部は、軟質素材で形成されており、
前記膨出構造部の内部には、前記流路の少なくとも一部が形成されており、
前記膨出構造部の厚さ方向の一方面には、前記血液成分分離装置に設けられた第1把持部によって把持可能な第1被把持部が設けられ、
前記膨出構造部の厚さ方向の他方面には、前記荷重検出部が固定された第2把持部によって把持可能な第2被把持部が設けられており
前記カセット本体は、前記流路のうち前記膨出構造部内の流路以外の流路を内部に形成するとともに前記カセット厚さ方向に突出した流路形成凸状壁部を有し、
前記膨出構造部の前記カセット本体のプレート状ベース部からの突出高さ及び幅は、前記流路形成凸状壁部のプレート状ベース部からの突出高さ及び幅よりも大きい、
ことを特徴とする血液成分採取用カセット。
【請求項2】
請求項1記載の血液成分採取用カセットにおいて、
前記カセット本体は、軟質素材で形成された第1シート及び第2シートを有し、前記第1シートと前記第2シートとは厚さ方向に重ねられ且つ互いに結合しており、前記第1シートと前記第2シートとの間に前記流路が形成されている、
ことを特徴とする血液成分採取用カセット。
【請求項3】
請求項1又は2記載の血液成分採取用カセットにおいて、
前記第1被把持部は、前記膨出構造部の前記一方面に固定されるとともに、前記第1把持部に係合可能な係合突起又は係合溝を有する第1係合部材であり、
前記第2被把持部は、前記膨出構造部の前記他方面に固定されるとともに、前記第2把持部に係合可能な係合突起又は係合溝を有する第2係合部材である、
ことを特徴とする血液成分採取用カセット。
【請求項4】
請求項記載の血液成分採取用カセットにおいて、
前記流路は、分岐部を介して互いに接続された第1ライン及び第2ラインを有し、
前記第1シートと前記第2シートとの間に前記第1ライン及び前記第2ラインが形成され、
前記カセット本体は、前記第1ラインを形成する第1ライン形成部材と、前記第2ラインを形成する第2ライン形成部材とを有し、
前記第1ライン形成部材と前記第2ライン形成部材とが前記カセット本体の前記プレート状ベース部から前記カセット厚さ方向に凸状に膨出し、
前記第1ライン形成部材が前記膨出構造部を有する、
ことを特徴とする血液成分採取用カセット。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の血液成分採取用カセットにおいて、
前記圧力測定用膨出部は、前記プレート状ベース部からドーム状に膨出している、
ことを特徴とする血液成分採取用カセット。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の血液成分採取用カセットにおいて、
前記圧力測定用膨出部は、前記カセット厚さ方向からみて円形に形成されている、
ことを特徴とする血液成分採取用カセット。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の血液成分採取用カセットにおいて、
前記第1被把持部及び前記第2被把持部は、前記圧力測定用膨出部の中央部に設けられ、
ことを特徴とする血液成分採取用カセット。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の血液成分採取用カセットにおいて、
前記流路は、血液成分が凝集した物質をトラップするためのフィルタ部材が配置された第1ラインと、前記フィルタ部材が配置されていない第2ラインとを有し、
前記膨出構造部の内側に前記フィルタ部材が配置されている、
ことを特徴とする血液成分採取用カセット。
【請求項9】
請求項1記載の血液成分採取用カセットにおいて、
前記カセット本体は、前記膨出構造部を含むとともに前記流路を形成する流路形成部材と、前記流路形成部材を支持するとともに硬質素材により形成されたカセットベース部を有する、
ことを特徴とする血液成分採取用カセット。
【請求項10】
第1把持部と、第2把持部と、前記第2把持部に固定された荷重検出部とを有する血液成分分離装置と、前記血液成分分離装置に装着可能に構成された血液成分採取用カセットとを備えた血液成分採取システムであって、
前記血液成分採取用カセットは、流路が形成されたカセット本体を備え、
前記カセット本体は、前記カセット本体の少なくとも一方面においてカセット厚さ方向に膨出した圧力測定用膨出部を有する膨出構造部を備え、
前記膨出構造部は、軟質素材で形成されており、
前記膨出構造部の内部には、前記流路の少なくとも一部が形成されており、
前記膨出構造部の厚さ方向の一方面には、前記第1把持部によって把持可能な第1被把持部が設けられ、
前記膨出構造部の厚さ方向の他方面には、前記第2把持部によって把持可能な第2被把持部が設けられ、
前記血液成分分離装置は、前記荷重検出部により検出される荷重に基づいて、前記流路内の圧力を取得する、
前記血液成分分離装置は、前記血液成分採取用カセットを保持可能なカセットホルダを備え、
前記カセットホルダは、前記カセット本体の外周形状に対応した形状のカセット装着溝が設けられた取付ベースと、前記取付ベースに対して開閉可能な蓋体とを有し、
前記取付ベースは、前記圧力測定用膨出部の少なくとも一部を受容可能な開口部と、前記開口部に連通するとともに前記第2被把持部の通過を許容するスリットとを有する、
ことを特徴とする血液成分採取システム。
【請求項11】
請求項10記載の血液成分採取システムにおいて、
前記カセット本体は、軟質素材で形成された第1シート及び第2シートを有し、前記第1シートと前記第2シートとは厚さ方向に重ねられ且つ互いに結合しており、前記第1シートと前記第2シートとの間に前記流路が形成されている、
ことを特徴とする血液成分採取システム。
【請求項12】
請求項10又は11記載の血液成分採取システムにおいて、
前記第1把持部は、前記第1被把持部に係合可能な係合溝又は係合突起を有し、
前記第2把持部は、前記第2被把持部に係合可能な係合溝又は係合突起を有する、
ことを特徴とする血液成分採取システム。
【請求項13】
請求項10~12のいずれか1項に記載の血液成分採取システムにおいて、
前記膨出構造部は、前記カセット本体の一方面及び他方面において前記カセット厚さ方向にそれぞれ膨出した第1圧力測定用膨出部及び第2圧力測定用膨出部を有し、
前記第1圧力測定用膨出部には、第1マグネット部からなる前記第1被把持部が設けられ、
前記第2圧力測定用膨出部には、第2マグネット部からなる前記第2被把持部が設けられ、
前記第1把持部は、第1把持用マグネットを有し、前記第1把持用マグネットの磁力により前記第1マグネット部を吸着することにより前記第1圧力測定用膨出部を把持可能であり、
前記第2把持部は、第2把持用マグネットを有し、前記第2把持用マグネットの磁力により前記第2マグネット部を吸着することにより前記第2圧力測定用膨出部を把持可能である、
ことを特徴とする血液成分採取システム。
【請求項14】
請求項10記載の血液成分採取システムにおいて、
前記第1把持部は、前記取付ベースに対して固定された位置に設けられ、
前記第2把持部は、前記第1把持部に対向して配置されている、
ことを特徴とする血液成分採取システム。
【請求項15】
流路が形成されたカセット本体を備え、荷重検出部を有する血液成分分離装置に装着可能に構成された血液成分採取用カセットであって、
前記カセット本体は、カセット厚さ方向の少なくとも一方面においてカセット厚さ方向に膨出した圧力測定用膨出部を有する膨出構造部を備え、
前記膨出構造部は、軟質素材で形成されており、
前記膨出構造部の内部には、前記流路の少なくとも一部が形成されており、
前記膨出構造部の厚さ方向の一方面には、前記血液成分分離装置に設けられた第1把持部によって把持可能な第1被把持部が設けられ、
前記膨出構造部の厚さ方向の他方面には、前記荷重検出部が固定された第2把持部によって把持可能な第2被把持部が設けられており、
前記カセット本体は、軟質素材で形成された第1シート及び第2シートを有し、前記第1シートと前記第2シートとは厚さ方向に重ねられ且つ互いに結合しており、前記第1シートと前記第2シートとの間に前記流路が形成されており、
前記流路は、分岐部を介して互いに接続された第1ライン及び第2ラインを有し、
前記第1シートと前記第2シートとの間に前記第1ライン及び前記第2ラインが形成され、
前記カセット本体は、前記第1ラインを形成する第1ライン形成部材と、前記第2ラインを形成する第2ライン形成部材とを有し、
前記第1ライン形成部材と前記第2ライン形成部材とが前記カセット本体のプレート状ベース部から前記カセット厚さ方向に凸状に膨出し、
前記第1ライン形成部材が前記膨出構造部を有する、
ことを特徴とする血液成分採取用カセット。
【請求項16】
第1把持部と、第2把持部と、前記第2把持部に固定された荷重検出部とを有する血液成分分離装置と、前記血液成分分離装置に装着可能に構成された血液成分採取用カセットとを備えた血液成分採取システムであって、
前記血液成分採取用カセットは、流路が形成されたカセット本体を備え、
前記カセット本体は、軟質素材で形成された膨出構造部を備え、
前記膨出構造部は、前記カセット本体の一方面及び他方面においてカセット厚さ方向にそれぞれ膨出した第1圧力測定用膨出部及び第2圧力測定用膨出部を有し、
前記膨出構造部の内部には、前記流路の少なくとも一部が形成されており、
前記膨出構造部の厚さ方向の一方面には、前記第1把持部によって把持可能な第1被把持部が設けられ、
前記膨出構造部の厚さ方向の他方面には、前記第2把持部によって把持可能な第2被把持部が設けられ、
前記血液成分分離装置は、前記荷重検出部により検出される荷重に基づいて、前記流路内の圧力を取得し、
前記第1圧力測定用膨出部には、第1マグネット部からなる前記第1被把持部が設けられ、
前記第2圧力測定用膨出部には、第2マグネット部からなる前記第2被把持部が設けられ、
前記第1把持部は、第1把持用マグネットを有し、前記第1把持用マグネットの磁力により前記第1マグネット部を吸着することにより前記第1圧力測定用膨出部を把持可能であり、
前記第2把持部は、第2把持用マグネットを有し、前記第2把持用マグネットの磁力により前記第2マグネット部を吸着することにより前記第2圧力測定用膨出部を把持可能である、
ことを特徴とする血液成分採取システム。
【請求項17】
血液成分を採取するための血液成分分離装置に取り付けられる血液成分採取用カセットの流路内の圧力を検出する流路内圧検出方法であって、
前記血液成分採取用カセットは、前記流路が形成されたカセット本体を備え、
カセット本体は、前記カセット本体の少なくとも一方面においてカセット厚さ方向に膨出した圧力測定用膨出部を有する膨出構造部を備え、前記膨出構造部は、軟質素材で形成されており、前記膨出構造部の内部には、前記流路の少なくとも一部が形成されており、
前記カセット本体は、前記流路のうち前記膨出構造部内の流路以外の流路を内部に形成するとともに前記カセット厚さ方向に突出した流路形成凸状壁部を有し、
前記膨出構造部の前記カセット本体のプレート状ベース部からの突出高さ及び幅は、前記流路形成凸状壁部のプレート状ベース部からの突出高さ及び幅よりも大きく、
前記流路内圧検出方法は、
前記血液成分分離装置に設けられた第1把持部により、前記膨出構造部の厚さ方向の一方面に設けられた第1被把持部を把持するとともに、前記血液成分分離装置に設けられた第2把持部により、前記膨出構造部の厚さ方向の他方面に設けられた第2被把持部を把持する把持ステップと、
前記第1把持部により前記第1被把持部が把持され、前記第2把持部により前記第2被把持部が把持され、且つ前記膨出構造部に血液が送液されている状態で、前記第2把持部に固定された荷重検出部に作用する荷重を測定する測定ステップと、
測定された前記荷重に基づいて、前記流路の内圧を算出する内圧算出ステップと、
を含む、
ことを特徴とする流路内圧検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液成分採取用カセット、血液成分採取用キット、血液成分採取システム及び流路内圧検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の献血においては、供血者から全血を採取する全血採血の他に、供血者の身体への負担が軽い成分採血(アフェレーシス)が行われている。成分採血は、血液成分採取システム(アフェレーシスシステム)を使用し、全血から特定の血液成分だけを採取し、残りの成分を供血者の体内に再び戻す採血方法である。
【0003】
特許文献1には、供血者から取り出した全血を遠心分離して血小板を採取する血液成分採取システムが開示されている。この血液成分採取システムは、処理される血液又は血液成分が流れる回路を形成する採血回路セットと、この採血回路セットが装着される遠心分離装置(血液成分分離装置)とを備える。
【0004】
採血回路セットは、採血針を有する採血ライン、全血が導入される帯状のチャネル(分離器)、血液成分等を収容するための複数のバッグと、複数のチューブを介してこれらに接続されたカセットとを備える。カセットには、供血者からの血液を導入するライン、バッグへと血液成分を移送するライン、採取しない血液成分を供血者へと戻す返血ライン等を含む複数の流路が形成されている。使用に際し、カセットは、血液成分分離装置に設けられた取付部に装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2013-514863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような血液成分採取システムでは、血液成分分離装置が適正に動作しているか否かを確認するために、採血回路内の圧力(回路内圧)を測定して監視することが必要である。回路内圧は、陰圧及び陽圧の両方を測定可能であること、及び低圧領域でも精度良く測定可能であることが望ましい。
【0007】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、回路内圧を陰圧及び陽圧の領域で、精度良く測定することが可能な血液成分採取用カセット、血液成分採取用キット、血液成分採取システム及び流路内圧検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、流路が形成されたカセット本体を備え、荷重検出部を有する血液成分分離装置に装着可能に構成された血液成分採取用カセットであって、前記カセット本体は、カセット厚さ方向の少なくとも一方面においてカセット厚さ方向に膨出した圧力測定用膨出部を有する膨出構造部を備え、前記膨出構造部は、軟質素材で形成されており、前記膨出構造部の内部には、前記流路の少なくとも一部が形成されており、前記膨出構造部の厚さ方向の一方面には、前記血液成分分離装置に設けられた第1把持部によって把持可能な第1被把持部が設けられ、前記膨出構造部の厚さ方向の他方面には、前記荷重検出部が固定された第2把持部によって把持可能な第2被把持部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、血液成分採取用カセットを用いることにより、圧力測定のための初期反力をカセット本体に作用させることなく、血液成分分離装置に設けられた荷重検出部により回路内圧(陰圧及び陽圧)を精度良く測定することができる。すなわち、圧力測定用膨出部に設けられた第1被把持部が、血液成分分離装置に設けられた第1把持部に把持されるとともに、圧力測定用膨出部に設けられた第2被把持部が、血液成分分離装置に設けられた第2把持部に把持される。このため、回路内圧は、陽圧の場合も陰圧の場合も、第2把持部に固定された荷重検出部に作用する。従って、荷重検出部により検出された荷重に基づいて回路内圧を測定することができる。
【0010】
前記カセット本体は、軟質素材で形成された第1シート及び第2シートを有し、前記第1シートと前記第2シートとは厚さ方向に重ねられ且つ互いに結合しており、前記第1シートと前記第2シートとの間に前記流路が形成されていることが好ましい。
【0011】
軟質素材からなる第1シートと第2シートとを接合することにより血液成分採取用カセットを製造できるため、射出成形により製造される硬質樹脂からなる従来のカセットと比較して、低コストで製造することができる。
【0012】
前記第1被把持部は、前記膨出構造部の前記一方面に固定されるとともに、前記第1把持部に係合可能な係合突起又は係合溝を有する第1係合部材であり、前記第2被把持部は、前記膨出構造部の前記他方面に固定されるとともに、前記第2把持部に係合可能な係合突起又は係合溝を有する第2係合部材であることが好ましい。
【0013】
この構成により、第1被把持部及び第2被把持部をそれぞれ第1把持部及び第2把持部により十分な把持力で把持することができ、回路内圧を安定的に測定することが可能となる。
【0014】
前記カセット本体は、前記流路のうち前記膨出構造部内の流路以外の流路を内部に形成するとともに前記カセット厚さ方向に突出した流路形成凸状壁部を有し、前記膨出構造部の前記カセット本体のプレート状ベース部からの突出高さ及び幅は、前記流路形成凸状壁部のプレート状ベース部からの突出高さ及び幅よりも大きいことが好ましい。
【0015】
この構成により、回路内圧に応じて膨出構造部が変形しやすいため、回路内圧の測定精度を向上させることができる。
【0016】
前記圧力測定用膨出部は、前記プレート状ベース部からドーム状に膨出していることが好ましい。
【0017】
この構成により、回路内圧に対する膨出構造部の変形追従性が向上し、回路内圧の測定精度を一層向上させることができる。
【0018】
前記圧力測定用膨出部は、前記カセット厚さ方向からみて円形に形成されていることが好ましい。
【0019】
この構成により、回路内圧に対する膨出構造部の変形追従性を一層向上させることができる。
【0020】
前記第1被把持部及び前記第2被把持部は、前記圧力測定用膨出部の中央部に設けられていることが好ましい。
【0021】
この構成により、回路内圧の測定精度を一層向上させることができる。
【0022】
前記流路は、血液成分が凝集した物質をトラップするためのフィルタ部材が配置された第1ラインと、前記フィルタ部材が配置されていない第2ラインとを有し、前記膨出構造部の内側に前記フィルタ部材が配置されていることが好ましい。
【0023】
この構成により、膨出構造部がフィルタ機能を兼ねるため、流路構造を複雑にすることなくカセットにフィルタ部材を配置することができる。
【0024】
前記カセット本体は、前記膨出構造部を含むとともに前記流路を形成する流路形成部材と、前記流路形成部材を支持するとともに硬質素材により形成されたカセットベース部を有してもよい。
【0025】
また、本発明は、第1把持部と、第2把持部と、前記第2把持部に固定された荷重検出部とを有する血液成分分離装置と、前記血液成分分離装置に装着可能に構成された血液成分採取用カセットとを備えた血液成分採取システムであって、前記血液成分採取用カセットは、流路が形成されたカセット本体を備え、前記カセット本体は、前記カセット本体の少なくとも一方面においてカセット厚さ方向に膨出した圧力測定用膨出部を有する膨出構造部を備え、前記膨出構造部は、軟質素材で形成されており、前記膨出構造部の内部には、前記流路の少なくとも一部が形成されており、前記膨出構造部の厚さ方向の一方面には、前記第1把持部によって把持可能な第1被把持部が設けられ、前記膨出構造部の厚さ方向の他方面には、前記第2把持部によって把持可能な第2被把持部が設けられ、前記血液成分分離装置は、前記荷重検出部により検出される荷重に基づいて、前記流路内の圧力を取得することを特徴とする。
【0026】
上記血液成分採取システムにおいて、前記カセット本体は、軟質素材で形成された第1シート及び第2シートを有し、前記第1シートと前記第2シートとは厚さ方向に重ねられ且つ互いに結合しており、前記第1シートと前記第2シートとの間に前記流路が形成されていることが好ましい。
【0027】
上記血液成分採取システムにおいて、前記第1把持部は、前記第1被把持部に係合可能な係合溝又は係合突起を有し、前記第2把持部は、前記第2被把持部に係合可能な係合溝又は係合突起を有することが好ましい。
【0028】
この構成により、第1被把持部及び第2被把持部をそれぞれ第1把持部及び第2把持部により十分な把持力で把持することができ、回路内圧を安定的に測定することが可能となる。
【0029】
上記血液成分採取システムにおいて、前記血液成分分離装置は、前記血液成分採取用カセットを保持可能なカセットホルダを備え、前記カセットホルダは、前記カセット本体の外周形状に対応した形状のカセット装着溝が設けられた取付ベースと、前記取付ベースに対して開閉可能な蓋体とを有することが好ましい。
【0030】
この構成により、血液成分採取用カセットを血液成分分離装置の所定位置に容易に取り付けることができ、取付作業性の向上が図られる。
【0031】
上記血液成分採取システムにおいて、前記第1把持部は、前記取付ベースに対して固定された位置に設けられ、前記第2把持部は、前記第1把持部に対向して配置されていることが好ましい。
【0032】
この構成により、カセット装着溝への血液成分採取用カセットの装着に伴って、第1把持部により第1被把持部を把持させるとともに、第2把持部により第2被把持部を把持させることができるため、取付作業性の一層の向上が図られる。
【0033】
上記血液成分採取システムにおいて、前記取付ベースは、前記圧力測定用膨出部の少なくとも一部を受容可能な開口部と、前記開口部に連通するとともに前記第2被把持部の通過を許容するスリットとを有することが好ましい。
【0034】
この構成により、カセット装着溝への血液成分採取用カセットの装着を一層簡単にすることができる。
【0035】
また、本発明は、荷重検出部を有する血液成分分離装置に装着可能に構成され、該血液成分分離装置の動作により、内部を血液が送液される流路を備える血液成分採取用キットであって、前記流路の送液方向に対して垂直な軸の少なくとも一方面に膨出した圧力測定用膨出部を有する膨出構造部を備え、前記膨出構造部は、軟質素材で形成されており、膨出構造部の内部には、前記流路の少なくとも一部が形成されており、前記膨出構造部の厚さ方向の一方面には、前記血液成分分離装置に設けられた第1把持部によって把持可能な第1被把持部が設けられ、前記膨出構造部の厚さ方向の他方面には、前記荷重検出部が固定された第2把持部によって把持可能な第2被把持部が設けられていることを特徴とする。
【0036】
また、本発明は、血液成分を採取するための血液成分分離装置に取り付けられる血液成分採取用カセットの流路内の圧力を検出する流路内圧検出方法であって、前記血液成分採取用カセットは、前記流路が形成されたカセット本体を備え、カセット本体は、前記カセット本体の少なくとも一方面においてカセット厚さ方向に膨出した圧力測定用膨出部を有する膨出構造部を備え、前記膨出構造部は、軟質素材で形成されており、前記膨出構造部の内部には、前記流路の少なくとも一部が形成されており、前記流路内圧検出方法は、前記血液成分分離装置に設けられた第1把持部により、前記膨出構造部の厚さ方向の一方面に設けられた第1被把持部を把持するとともに、前記血液成分分離装置に設けられた第2把持部により、前記膨出構造部の厚さ方向の他方面に設けられた第2被把持部を把持する把持ステップと、前記第1把持部により前記第1被把持部が把持され、前記第2把持部により前記第2被把持部が把持され、且つ前記膨出構造部に血液が送液されている状態で、前記第2把持部に固定された荷重検出部に作用する荷重を測定する測定ステップと、測定された前記荷重に基づいて、前記流路の内圧を算出する内圧算出ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
本発明の血液成分採取用カセット、血液成分採取用キット、血液成分採取システム及び流路内圧検出方法によれば、簡易且つ経済的な構成で、回路内圧を陰圧及び陽圧の領域で、精度良く測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の実施形態に係る血液成分採取システムの概略図である。
図2】血液成分採取用カセットの斜視図である。
図3】血液成分採取用カセットの側面図である。
図4】血液成分採取用カセットの断面図である。
図5】カセットホルダの斜視図である。
図6】血液成分採取用カセットをカセットホルダに装着した状態の断面図である。
図7】血液成分採取用カセットをカセットホルダに装着した状態の斜視図である。
図8】クランプの動作を説明する第1説明図である。
図9】クランプの動作を説明する第2説明図である。
図10】クランプの動作を説明する第3説明図である。
図11】クランプの動作を説明する第4説明図である。
図12】クランプの動作を説明する第5説明図である。
図13】血液成分採取システムの変形例を示す図である。
図14】血液成分採取システムの別の変形例を示す図である。
図15】別の実施形態に係る血液成分採取用カセットの斜視図である。
図16】血液成分採取用キットの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明に係る血液成分採取用カセット、血液成分採取用キット、血液成分採取システム及び流路内圧検出方法について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0040】
図1において、血液成分採取システム10は、供血者から血液(全血)を連続的に取り出して体外で遠心分離することにより、特定の血液成分(本実施形態では、血漿(乏血小板血漿:PPP))を採取し、残りの血液成分を供血者に戻す血液アフェレーシスシステムとして構成されている。
【0041】
まず、図1に示す血液成分採取システム10の概略を説明する。この血液成分採取システム10は、血液成分を貯留及び流動するための採血回路セット12と、採血回路セット12に遠心力を付与する遠心分離装置14(血液成分分離装置)とを備える。採血回路セット12は、供血者から取り出された全血が導入され全血を複数の血液成分に遠心分離する血液処理部16を有する。遠心分離装置14は、血液処理部16に遠心力を付与するためのロータ18aを有する遠心部18を備える。血液処理部16は、遠心部18に装着可能である。
【0042】
採血回路セット12は、汚染防止や衛生のため、1回の使用毎に使い捨てされる。採血回路セット12は、採血針20及び初流血採取バッグ21を有する採血・返血部22と、血液処理部16と、複数のバッグ24と、これらの要素にチューブを介して接続された血液成分採取用カセット28(以下、「カセット28」と略称する)とを備える。複数のバッグ24は、抗凝固剤であるACD液を収容したACD液用バッグ24aと、血漿(乏血小板血漿)を貯留するためのPPP用バッグ24bとを含む。
【0043】
採血・返血部22は、チューブコネクタ30を介してACD液用バッグ24a及びカセット28に接続されている。ACD液用バッグ24aは、ACD液移送チューブ23を介してチューブコネクタ30に接続されている。
【0044】
カセット28は、ドナー側チューブ32を介して採血・返血部22に接続されるとともに、処理部側チューブ34を介して血液処理部16に接続されている。血液処理部16は、遠心分離装置14の遠心部18(ロータ18a)に装着され、血液が導入、流動及び流出するように容器状に構成されている。血液処理部16には、PPP移送チューブ36を介してPPP用バッグ24bが接続されている。
【0045】
図2において、カセット28は、流路42が形成されたカセット本体40を備える。カセット本体40は、平面視で長方形状に構成されている。カセット本体40は、軟質素材で形成された第1シート40a及び第2シート40bを有する。第1シート40aと第2シート40bとは厚さ方向に重ねられ且つ互いに接合されている。
【0046】
第1シート40a及び第2シート40bを構成する軟質素材としては、例えば、塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリウレタン等が挙げられる。
【0047】
第1シート40aと第2シート40bとの間に流路42が形成されている。第1シート40aと第2シート40bとの接合手段は、例えば、融着(高周波融着、熱融着等)、接着等が挙げられる。また、カセット本体40の周縁部には、第1ポート部材44及び第2ポート部材46が設けられている。第1ポート部材44は、流路42の一端側に接続されている。第2ポート部材46は流路42の他端側に接続されている。これらのポート部材44、46にドナー側チューブ32及び処理部側チューブ34がそれぞれ接続されている。
【0048】
カセット本体40に形成された流路42は、血液成分が凝集した物質(以下、「血液凝集塊」という)を除去するためのフィルタ部材64が配置された第1ライン42aと、フィルタ部材64が配置されていない第2ライン42bとを有する。第1ライン42aの一端側42a1と、第2ライン42bの一端側42b1とは、第1分岐部48を介して接続している。第1ライン42aの他端側42a2と、第2ライン42bの他端側42b2とは、第2分岐部49を介して接続している。第1ライン42aと第2ライン42bとは、少なくとも部分的に並列して延在している。第1分岐部48及び第2分岐部49は、それぞれ流路42の一部を構成している。
【0049】
カセット本体40のうち流路42を形成する壁部は、流路42内に陽圧が作用していないときでも、カセット本体40の両面側において、カセット28の厚さ方向(以下、「カセット厚さ方向」という)に凸状に膨らんでいる。従って、流路42は、自然状態で開いている流路である。外力によって押圧された際には、押圧された箇所の流路42を閉じる方向に弾性変形可能である。カセット本体40は、第1ライン42aを形成する第1ライン形成部材54と、第2ライン42bを形成する第2ライン形成部材56とを有する。
【0050】
図3に示すように、カセット本体40は、カセット厚さ方向の少なくとも一方面においてプレート状ベース部41(カセット本体40のうち凸状に膨らんでいない部分)からカセット厚さ方向に膨出した圧力測定用膨出部を有する膨出構造部50を備える。膨出構造部50の内部には、流路42の少なくとも一部が形成されている。膨出構造部50は、第1ライン形成部材54の一部を構成している。本実施形態では、膨出構造部50は、カセット本体40の一方面及び他方面においてカセット厚さ方向にそれぞれ膨出した第1圧力測定用膨出部51及び第2圧力測定用膨出部52を有する。第1圧力測定用膨出部51と第2圧力測定用膨出部52との間に、流路42の少なくとも一部が形成されている。
【0051】
図2に示すように、カセット本体40は、流路42のうち膨出構造部50内の流路以外の流路を内部に形成するとともにカセット厚さ方向に突出した流路形成凸状壁部58を有する。膨出構造部50の幅W1は、流路形成凸状壁部58の幅W2よりも大きい。
【0052】
本実施形態では、第1圧力測定用膨出部51と第2圧力測定用膨出部52は、カセット厚さ方向から見て円形に形成されている。なお、第1圧力測定用膨出部51と第2圧力測定用膨出部52は、カセット厚さ方向から見て非円形(楕円形状、多角形状等)に形成されてもよい。
【0053】
図3に示すように、第1圧力測定用膨出部51と第2圧力測定用膨出部52は、プレート状ベース部41から互いに反対方向にドーム状に膨出している。第1圧力測定用膨出部51と第2圧力測定用膨出部52の形状及び大きさは、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。膨出構造部50のプレート状ベース部41からの突出高さH1は、流路形成凸状壁部58のプレート状ベース部41からの突出高さH2よりも高い。なお、高さH1と高さH2とは互いに同じ高さであってもよい。高さH1は、高さH2より低くてもよい。
【0054】
第1圧力測定用膨出部51には、遠心分離装置14に設けられた後述する第1把持部78(図6)によって把持可能な第1被把持部60が設けられている。第2圧力測定用膨出部52には、遠心分離装置14に設けられた後述する第2把持部80(図6)によって把持可能な第2被把持部62が設けられている。第1被把持部60は、第1圧力測定用膨出部51の中央部に設けられている。第2被把持部62は、第2圧力測定用膨出部52の中央部に設けられている。
【0055】
図4に示すように、本実施形態では、第1被把持部60は、第1圧力測定用膨出部51に固定されるとともに、第1把持部78に係合可能な係合突起61を有する第1係合部材60Aである。第1係合部材60Aは、第1圧力測定用膨出部51の頂部に固定された固定ベース60aと、固定ベース60aからカセット厚さ方向に突出した軸部60bと、軸部60bの突出端に設けられた鍔状の係合ツメ60cとを有する。軸部60bと係合ツメ60cとにより係合突起61が構成されている。固定ベース60aの、第1圧力測定用膨出部51に固定された面60asは、球面状に凹む湾曲面に形成されている。係合ツメ60cは、軸部60bよりも大径に形成されている。第1係合部材60Aは、係合突起61に代えて、第1把持部78に係合可能な係合溝を有していてもよい。
【0056】
本実施形態では、第2被把持部62は、第2圧力測定用膨出部52に固定されるとともに、第2把持部80に係合可能な係合突起を有する第2係合部材62Aである。第2係合部材62Aは、第2圧力測定用膨出部52の頂部に固定された固定ベース62aと、固定ベース62aからカセット厚さ方向に突出した軸部62bと、軸部62bの突出端に設けられた鍔状の係合ツメ62cとを有する。軸部62bと係合ツメ62cとにより係合突起63が構成されている。固定ベース62aの、第2圧力測定用膨出部52に固定された面62asは、球面状に凹む湾曲面に形成されている。係合ツメ62cは、軸部62bよりも大径に形成されている。第1係合部材60Aの軸部60bと、第2係合部材62Aの軸部62bとは、同一軸上に配置されている。第2係合部材62Aは、係合突起63に代えて、第2把持部80に係合可能な係合溝を有していてもよい。
【0057】
第1係合部材60A及び第2係合部材62Aの構成材料としては、例えば、塩化ビニル、環状ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等が挙げられる。第1係合部材60A及び第2係合部材62Aは、金属材料により構成されてもよい。
【0058】
図4に示すように、膨出構造部50の内側にシートメッシュ状のフィルタ部材64が配置されている。膨出構造部50の両側に位置する第1ライン42aに、第1チューブ部材66及び第2チューブ部材68が配置されている。フィルタ部材64により、膨出構造部50の内部空間が、第1チューブ部材66と連通する第1空間領域70aと、第2チューブ部材68と連通する第2空間領域70bとに仕切られている。
【0059】
具体的に、第1チューブ部材66は、第1シート40a及び第2シート40bに融着等により接合されている。第1チューブ部材66と第1シート40aとの間にフィルタ部材64の一端側64aが配置されるとともに、第1シート40a、フィルタ部材64の一端側64a及び第1チューブ部材66が互いに融着等により接合されている。第2チューブ部材68は、第1シート40a及び第2シート40bに融着等により接合されている。第2チューブ部材68と第2シート40bとの間にフィルタ部材64の他端側64bが配置されるとともに、第2シート40b、フィルタ部材64の他端側64b及び第2チューブ部材68が互いに融着等により接合されている。
【0060】
図2に示すように、カセット28には、遠心分離装置14に備えられた複数のクランプ72(72a、72b)(図5参照)が作用する複数のクランプ作用部76(76a、76b)が設けられている。カセット28を遠心分離装置14に装着すると、クランプ作用部76は、対応するクランプ72に当接又は対向する。具体的に、クランプ作用部76aは、第1ライン形成部材54のうち膨出構造部50よりも第2ポート部材46側に設けられている。クランプ作用部76aは、第1ライン形成部材54のうち膨出構造部50よりも第1ポート部材44側に設けられてもよい。クランプ作用部76bは、第2ライン形成部材56に設けられている。
【0061】
なお、カセット28に形成される流路構成や、設けられるバッグの個数及び配置は、上述及び図示した構成に限られず、採取する血液成分の種類や使用方法等に応じて改変がなされてもよい。
【0062】
上述した構成を備えたカセット28の製造方法は、第1シート40a及び第2シート40bを重ね合わせ、第1シート40aと第2シート40bとの間に流路42を形成するように第1シート40aと第2シート40bとを溶着してカセット本体40を備えたカセット28を成形する成形工程と、成形工程により得られたカセット28に滅菌を施す滅菌工程とを含む。
【0063】
成形工程では、例えば、第1シート40a及び第2シート40bの素材であるシート状素材がそれぞれ巻かれてなる2つの素材ロールからシート状素材を繰り出し、組付部品(フィルタ部材64、ポート部材44、46)とともに高周波融着装置等の接合装置へと供給する。接合装置は、上下の金型を備えており、2枚のシート状素材を組付部品とともに接合しつつブロー成形することにより、流路42が形成されたカセット28を成形する。この場合、接合装置でのカセット28の成形時に、チューブ32、34が接続されてもよい。
【0064】
滅菌工程では、成形工程により得られたカセット28に、例えばオートクレーブ滅菌を施す。カセット28は、オートクレーブ滅菌の熱に耐えられる素材で構成されているため、滅菌時の熱で溶けてしまうことはない。また、カセット28は水蒸気透過性を有する素材で構成されているため、オートクレーブ滅菌の処理用ガスである水蒸気がカセット28の流路42内へと導入される。従って、カセット28の滅菌を好適に行うことができる。滅菌工程では、EOG滅菌を行ってもよい。
【0065】
滅菌工程では、複数のバッグ24(ACD液用バッグ24a等)を含む採血回路セット12の全体を滅菌してもよい。これにより、採血回路セット12に効率的に滅菌処理を施すことができる。
【0066】
図1において、遠心分離装置14は、血液成分採取において繰り返し使用される機器であり、例えば、医療施設や採血用車両等に備えられる。遠心分離装置14は、ロータ18aを有する遠心部18と、採血回路セット12のカセット28を保持可能に構成されたカセットホルダ86を有するカセット取付部84とを備える。
【0067】
図6に示すように、遠心分離装置14は、カセット28の第1被把持部60を把持可能な第1把持部78と、カセット28の第2被把持部62を把持可能な第2把持部80と、第2把持部80が固定された荷重検出部82とを備える。荷重検出部82は、例えば、ロードセルにより構成される。
【0068】
第1把持部78は、第1被把持部60に係合可能な第1係合溝78aを有する。第1係合溝78aは、第1係合部材60Aの軸部60bが挿入可能な係合スリット78b(図5も参照)の形態を有する。第1被把持部60において係合突起61に代えて係合溝が設けられる場合には、第1把持部78には、当該係合溝に係合可能な係合突起が設けられる。
【0069】
第2把持部80は、第1把持部78に対向して配置されている。第2把持部80は、第2被把持部62に係合可能な第2係合溝80aを有する。第2係合溝80aは、第2係合部材62Aの軸部62bが挿入可能な係合スリット80bの形態を有する。第2被把持部62において係合突起63に代えて係合溝が設けられる場合には、第2把持部80には、当該係合溝に係合可能な係合突起が設けられる。第2係合溝80aは、第1係合溝78aと同一方向に開口している。
【0070】
第1把持部78及び第2把持部80の構成材料としては、例えば、塩化ビニル、環状ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等が挙げられる。第1把持部78及び第2把持部80は、金属材料により構成されてもよい。
【0071】
図5に示すように、カセットホルダ86は、カセット本体40の外周形状に対応した形状のカセット装着溝89が設けられた取付ベース88と、取付ベース88に対して開閉可能な蓋体90とを有する。取付ベース88及び蓋体90は、硬質材料により構成されている。第1把持部78は、取付ベース88に対して固定された位置に設けられている。第1把持部78は、取付ベース88に一体成形されていてもよく、取付ベース88に固定された別部材であってもよい。
【0072】
取付ベース88は、第2圧力測定用膨出部52の少なくとも一部を受容可能な開口部88aと、開口部88aに連通するとともに第2被把持部62の通過を許容するスリット88bとを有する。開口部88a及びスリット88bは、取付ベース88の厚さ方向に貫通している。取付ベース88の外周部には、カセット28の第1ポート部材44を配置可能な第1ポート配置溝88cと、カセット28の第2ポート部材46を配置可能な第2ポート配置溝88dとが設けられている。第1ポート配置溝88c及び第2ポート配置溝88dは、カセット装着溝89に連通している。
【0073】
蓋体90は、取付ベース88にヒンジ部85を介して回動可能に連結されている。カセット28が取付ベース88のカセット装着溝89に保持された状態で蓋体90を閉じると、カセット28は、取付ベース88と蓋体90との間に挟まれる。蓋体90には、第1圧力測定用膨出部51の少なくとも一部を受容可能な開口部90aが設けられている。開口部90aが設けられていることにより、蓋体90を閉じる際に、蓋体90が第1把持部78に干渉することを回避することができる。また、取付ベース88に開口部88aが設けられるとともに、蓋体90に開口部90aが設けられていることにより、取付ベース88と蓋体90との間でカセット28を適切に保持しつつ、膨出構造部50が潰れることが防止される。
【0074】
カセット取付部84は、さらに、カセット28のクランプ作用部76を押圧可能に構成された複数のクランプ72(72a、72b)を備える。複数のクランプ72は、カセット装着溝89に保持された状態のカセット厚さ方向に進退動作可能であり、カセット28に設けられた複数のクランプ作用部76(76a、76b)の配置に対応するように配置されている。複数のクランプ72は、カセット装着溝89の底面89aに開口する複数の孔部94を介して、複数のクランプ作用部76をそれぞれ押圧可能である。
【0075】
カセット取付部84にカセット28が装着された状態でクランプ作用部76がクランプ72によって押圧されていないときは、クランプ作用部76内の流路は開通している。クランプ72が孔部94から突出してクランプ作用部76を押圧すると、クランプ作用部76内の流路が閉塞される。そして、クランプ72が後退すると、カセット本体40(クランプ作用部76)の弾性復元力により、クランプ作用部76は元の形状に戻り、クランプ作用部76内の流路が開通する。
【0076】
図1に示すように、遠心分離装置14は、ACD液移送チューブ23に作用するACD液移送ポンプ98と、カセット28に接続された処理部側チューブ34に作用する採血・返血ポンプ100とを有する。ACD液移送ポンプ98は、ACD液用バッグ24aからACD液移送チューブ23を介してカセット28及び血液処理部16へとACD液を移送するポンプである。採血・返血ポンプ100は、供血者側から血液処理部16へと血液を移送するとともに、血液処理部16から供血者側へと血液を移送するポンプである。ACD液移送ポンプ98及び採血・返血ポンプ100は、例えば、ローラポンプ、フィンガポンプにより構成される。
【0077】
遠心分離装置14は、さらに、遠心部18、カセット取付部84及びポンプ98、100を制御する制御部102を有する。上述した複数のクランプ72の動作は、制御部102によって制御される。制御部102は、遠心分離装置14の稼働時に、荷重検出部82(図6)により検出される荷重に基づいて、採血回路セット12の回路内圧(カセット28の回路内圧)を取得(算出)する演算部103を有する。
【0078】
次に、上記のように構成された本実施形態に係る血液成分採取システム10の作用を、本実施形態に係る流路内圧検出方法との関係で説明する。
【0079】
図1に示す血液成分採取システム10を用いて供血者から血液成分採取を行うための準備(セットアップ)として、採血回路セット12が遠心分離装置14に装着される。具体的には、カセット28がカセット取付部84に取り付けられるとともに、血液処理部16がロータ18aに装着される。一方、採血針20は、供血者に穿刺される。
【0080】
カセット28がカセット取付部84に取り付けられる際、図7に示すように、カセット本体40がカセット装着溝89に装着される。次に、第1ポート部材44及び第2ポート部材46がそれぞれ第1ポート配置溝88c及び第2ポート配置溝88dに挿入される。そして、蓋体90が閉じられることで、取付ベース88と蓋体90との間にカセット28が挟まれて保持された状態となる。
【0081】
この結果、カセット28の複数のクランプ作用部76が、複数のクランプ72に対向配置された状態となる。また、図6のように、カセット28の第1被把持部60が第1把持部78に把持される。この場合、係合突起61が第1係合溝78aに挿入されることに伴い、固定ベース60aと係合ツメ60cとの間に第1把持部78が挟持される。また、第2被把持部62が第2把持部80に把持される。この場合、係合突起63が第2係合溝80aに挿入されることに伴い、固定ベース62aと係合ツメ62cとの間に第2把持部80が挟持される。第1被把持部60が第1把持部78に把持された状態では、第1被把持部60は、第1把持部78に対するカセット厚さ方向の相対移動(ガタツキ)が阻止されている。第2被把持部62が第2把持部80に把持された状態では、第2被把持部62は、第2把持部80に対するカセット厚さ方向の相対移動(ガタツキ)が阻止されている。
【0082】
このように、流路内圧検出方法は、遠心分離装置14に設けられた第1把持部78により、膨出構造部50の厚さ方向の一方面に設けられた第1被把持部60を把持するとともに、遠心分離装置14に設けられた第2把持部80により、膨出構造部50の厚さ方向の他方面に設けられた第2被把持部62を把持する把持ステップを有する。
【0083】
図1に示した遠心分離装置14に対して、ユーザの操作により動作開始が指示されると、遠心分離装置14では、ACD液移送ポンプ98の作用下に、ACD液によるプライミングが実行される。具体的に、プライミングでは、ACD液がACD液用バッグ24aからACD液移送チューブ23を介してカセット28内の流路42へと導入され、流路42上(又はカセット28外)に配置された図示しないラインセンサで第1ライン42aの直近までACD液が来るのを検知した段階で、ACD液によるプライミングを終了する。
【0084】
次に、遠心分離装置14は、ロータ18aを回転させることによりロータ18aに装着された血液処理部16に遠心力を付与するとともに、採血・返血ポンプ100を作動させることにより供血者から血液(全血)を取り出して血液処理部16内に血液を導入する(採血動作)。血液処理部16内に導入された血液は、ロータ18aの回転に伴う遠心力によって、赤血球(濃厚赤血球)、バフィーコート及び血漿(乏血小板血漿)に分離される。
【0085】
血液処理部16内で分離された血漿は、PPP移送チューブ36を介してPPP用バッグ24bへと導入される。残りの血液成分(赤血球及びバフィーコート)は、遠心分離処理後に供血者へと戻される(返血動作)。このとき、残りの血液成分に含まれる血液凝集塊は、カセット28に設けられたフィルタ部材64によりトラップされるため、血液凝集塊が供血者に戻ることで生じるリスクを低減することができる。上述した採血動作と返血動作は、複数回繰り返される。
【0086】
流路内圧検出方法は、さらに、測定ステップ及び内圧算出ステップを有する。測定ステップでは、第1把持部78により第1被把持部60が把持され、第2把持部80により第2被把持部62が把持され、且つ膨出構造部50に血液が送液されている状態で、第2把持部80に固定された荷重検出部82に作用する荷重を測定する。内圧算出ステップでは、荷重検出部82で測定された荷重に基づいて、流路42の内圧を算出する。
【0087】
血液成分採取システム10の稼働時において、遠心分離装置14のクランプ72(図5)は以下のように動作する。
【0088】
図8に示すように、ACD液によるプライミングを行う際には、クランプ72a、72bが開けられる。そして、この状態で、ACD液がカセット28の第1ライン42aの直近の流路42に導入され、流路42上(又はカセット28外)に配置された図示しないラインセンサで第1ライン42aの直近までACD液が来るのを検知した段階で、ACD液によるプライミングを終了する。
【0089】
次に、初回の採血を行う際には、図9に示すように、クランプ72a、72bが開けられた状態が維持される。そして、この状態で、供血者からの血液がカセット28の流路42に導入され、血液によってカセット28内の空気がすべて血液処理部16へと押し出される。
【0090】
初回の採血の途中で、図10に示すように、クランプ72bが開けられた状態が維持されつつ、クランプ72aが閉じられることで、第1ライン42aが閉鎖される。これにより、膨出構造部50に陰圧が作用して膨出構造部50(フィルタ室)が閉塞することが防止される。
【0091】
次に、供血者への血液成分の返血を行う際には、図11に示すように、クランプ72bが閉じられ、クランプ72aが開けられることで、第2ライン42bが閉鎖される一方、第1ライン42aが開放される。従って、血液成分がフィルタ部材64を通過する際に、血液成分に含まれる血液凝集塊がフィルタ部材64にトラップされる。第1ライン42aは閉鎖されているため、血液凝集塊が第2ライン42bを介して供血者に戻されることはない。
【0092】
次に、2回目以降の採血を行う際には、図12のように、クランプ72aが閉じられ、クランプ72bが開けられることで、第1ライン42aが閉鎖される一方、第2ライン42bが開放される。従って、血液は、第1ライン42a及び第2ライン42bのうち第2ライン42bのみを介して血液処理部16側(遠心部18側)へと移送される。その後、返血(図11)が再び行われる。このような採血と返血が複数回繰り返される。
【0093】
そして、最終の返血を行う際には、供血者にできるだけ多くの血液成分を返血するために、図11に示すように、クランプ72bが閉じられ、クランプ72aが開けられる。
【0094】
この場合、本実施形態に係るカセット28、血液成分採取システム10及び流路内圧検出方法は、以下の効果を奏する。
【0095】
図2等に示したカセット28の製造時の滅菌処理としては、EOG滅菌やオートクレーブ滅菌等が挙げられる。また、軟質素材からなる第1シート40aと第2シート40bとを溶着することによりカセット本体40が得られるため、射出成形により製造される硬質樹脂からなる従来のカセットと比較して、低コストで製造することができる。
【0096】
血液成分採取システム10によれば、圧力測定のための初期反力をカセット本体40に作用させることなく、遠心分離装置14に設けられた荷重検出部82により回路内圧(陰圧及び陽圧)を精度良く測定することができる。すなわち、図6に示したように、第1圧力測定用膨出部51に設けられた第1被把持部60が、遠心分離装置14に設けられた第1把持部78に把持されるとともに、第2圧力測定用膨出部52に設けられた第2被把持部62が、遠心分離装置14に設けられた第2把持部80に把持される。このため、回路内圧は、第2把持部80に固定された荷重検出部82に作用する。具体的には、回路内圧が陽圧の場合、荷重検出部82には、第2把持部80を介して押圧荷重が作用する。一方、回路内圧が陰圧の場合、荷重検出部82には、第2把持部80を介して引張荷重が作用する。従って、荷重検出部82により検出された荷重に基づいて回路内圧を測定することができる。この場合、遠心分離装置14の制御部102(図1)は、荷重と回路内圧との関係を示す検量線(検量線データ)を記憶しており、得られた荷重と、当該検量線データとを用いて、回路内圧を算出することができる。
【0097】
ところで、本実施形態と異なり、回路内圧の測定のために荷重検出部を押し付けて(初期反力を与えて)、カセットの押し付けられた部分を弾性変形させた状態で荷重を検出する方式の場合、押圧される状態が継続することに伴って、押圧された部分にクリープが発生するため、カセットからの反力(弾性変形に伴う復元力)が経時的に減少する。反力の経時的減少は、測定精度を低下させる要因となる。これに対し、本実施形態では、膨出構造部50を両側から把持することで、測定誤差の原因となり得る初期反力を与えることなく、回路内圧を測定する。これにより、回路内圧を、陰圧及び陽圧のいずれの圧力領域においても、精度良く測定することができる。
【0098】
また、高圧領域と比較して、低圧領域では反力が相対的に大きいため、初期反力を与える上記方式の場合、測定誤差に与える影響が大きくなりやすい。これに対し、血液成分採取システム10によれば、測定誤差となりうる初期反力を排除して回路内圧を測定するため、回路内圧を精度良く測定することができる。
【0099】
第1被把持部60は、第1圧力測定用膨出部51に固定されるとともに、第1把持部78に係合可能な係合突起61又は係合溝を有する第1係合部材60Aである。第2被把持部62は、第2圧力測定用膨出部52に固定されるとともに、第2把持部80に係合可能な係合突起63又は係合溝を有する第2係合部材62Aである。この構成により、第1被把持部60及び第2被把持部62をそれぞれ第1把持部78及び第2把持部80により十分な把持力で把持することができ、回路内圧を安定的に測定することが可能となる。
【0100】
カセット本体40は、流路42のうち膨出構造部50内の流路以外の流路を内部に形成するとともにカセット厚さ方向に突出した流路形成凸状壁部58を有する。そして、膨出構造部50のプレート状ベース部41からの突出高さH1及び幅W2は、流路形成凸状壁部58のプレート状ベース部41からの突出高さH2及び幅W2よりも大きい(図2図3)。この構成により、回路内圧に応じて膨出構造部50が変形しやすいため、回路内圧の測定精度を向上させることができる。
【0101】
第1圧力測定用膨出部51と第2圧力測定用膨出部52は、プレート状ベース部41からドーム状に膨出している。この構成により、回路内圧に対する膨出構造部50の変形追従性が向上し、回路内圧の測定精度を向上させることができる。このため、荷重検出部82への力の伝達性を向上させることができる。
【0102】
第1圧力測定用膨出部51と第2圧力測定用膨出部52は、カセット厚さ方向からみて円形に形成されている。この構成により、回路内圧に対する膨出構造部50の変形追従性を一層向上させることができる。
【0103】
第1被把持部60は、第1圧力測定用膨出部51の中央部に設けられ、第2被把持部62は、第2圧力測定用膨出部52の中央部に設けられている。この構成により、回路内圧の測定精度を一層向上させることができる。
【0104】
図2に示したように、流路42は、血液凝集塊をトラップするためのフィルタ部材64が配置された第1ライン42aと、フィルタ部材64が配置されていない第2ライン42bとを有し、膨出構造部50の内側にフィルタ部材64が配置されている。この構成により、膨出構造部50がフィルタ機能を兼ねるため、流路構造を複雑にすることなくカセット28にフィルタ部材64を配置することができる。
【0105】
図7に示したように、遠心分離装置14は、カセット28を保持可能なカセットホルダ86を備え、カセットホルダ86は、カセット本体40の外周形状に対応した形状のカセット装着溝89が設けられた取付ベース88と、取付ベース88に対して開閉可能な蓋体90とを有する。この構成により、カセット28を遠心分離装置14の所定位置に容易に取り付けることができ、取付作業性の向上が図られる。
【0106】
第1把持部78は、取付ベース88に対して固定された位置に設けられ、第2把持部80は、第1把持部78に対向して配置されている。この構成により、カセット装着溝89へのカセット28の装着に伴って、第1把持部78により第1被把持部60を把持させるとともに、第2把持部80により第2被把持部62を把持させることができるため、取付作業性の一層の向上が図られる。
【0107】
図5に示したように、取付ベース88は、第2圧力測定用膨出部52の少なくとも一部を受容可能な開口部88aと、開口部88aに連通するとともに第2被把持部62の通過を許容するスリット88bとを有する。この構成により、カセット装着溝89へのカセット28の装着を一層簡単にすることができる。
【0108】
図13に示すように、第1圧力測定用膨出部51には第1マグネット部104からなる第1被把持部105が設けられ、第2圧力測定用膨出部52には第2マグネット部106からなる第2被把持部107が設けられ、遠心分離装置14は、第1把持用マグネット108aを有する第1把持部108と、第2把持用マグネット110aを有するとともに荷重検出部82が固定された第2把持部110とを備えてもよい。第1把持部108は、磁力により第1マグネット部104を吸着することにより、第1マグネット部104を介して第1圧力測定用膨出部51を把持可能である。第2把持部110は、磁力により第2マグネット部106を吸着することにより、第2マグネット部106を介して第2圧力測定用膨出部52を把持可能である。
【0109】
第1マグネット部104及び第2マグネット部106は、例えば、第1圧力測定用膨出部51及び第2圧力測定用膨出部52の各表面に形成されたマグネットコーティング層である。第1マグネット部104及び第2マグネット部106は、第1圧力測定用膨出部51及び第2圧力測定用膨出部52の各表面に固着されたマグネットプレートであってもよい。第1把持部108は、上述した第1把持部78(図5参照)と同様に、取付ベース88に一体的に形成された部分、又は取付ベース88に固定された部材であってもよい。第1把持部108は、蓋体90に一体的に形成された部分、又は蓋体90に固定された部材であってもよい。
【0110】
図14に示すように、第1圧力測定用膨出部51自体の一部として第1被把持部114が設けられ、第2圧力測定用膨出部52自体の一部として第2被把持部116が設けられ、遠心分離装置14は、第1吸盤118aを有する第1把持部118と、第2吸盤120aを有するとともに荷重検出部82が固定された第2把持部120とを備えてもよい。第1把持部118は、第1吸盤118aの内部流路を真空吸引することにより、第1圧力測定用膨出部51を直接把持することが可能である。第2把持部120は、第2吸盤120aの内部流路を真空吸引することにより、第1圧力測定用膨出部51を直接把持することが可能である。
【0111】
上述したカセット28では、軟質素材で形成された第1シート40aと第2シート40bとの間に流路42が形成されているが、流路42を形成する構造は、このような構成に限られない。例えば、カセット本体のうち膨出構造部50の内部流路以外の流路42を形成する部材はチューブであってもよい。この場合、カセット本体は、第1ライン42aを構成する流路を有するとともに第1チューブ部材66及び第2チューブ部材68にそれぞれ接続された2つの第1チューブと、第2ライン42bを構成する流路を有する第2チューブとを備えるとともに、2つの第1チューブ及び第2チューブを支持するプレート状のカセットベース部を備える。カセットベース部は硬質素材により構成される。
【0112】
一方の第1チューブには、クランプ作用部76a(図2)が設けられる。第2チューブには、クランプ作用部76b(図2)が設けられる。第1把持部が第1被把持部を把持でき、第2把持部が第2被把持部を押圧できるように、カセットベース部は、第1被把持部及び第2被把持部が露出するように形成される。また、クランプ72a、72bがクランプ作用部76a、76bを押圧できるように、カセットベース部は、クランプ作用部76a、76bが露出するように形成される。
【0113】
上述した血液成分採取システム10では、カセット28に代えて、図15に示す血液成分採取用カセット28A(以下、「カセット28A」と略称する)が採用されてもよい。流路42は、血液又は血液成分に含まれる血液凝集塊を除去するためのフィルタ部材64が配置された第1ライン42aと、フィルタ部材64が配置されていない第2ライン42bとを有する。第1ライン42aの一端側42a1と、第2ライン42bの一端側42b1とは、第1分岐部48を介して接続している。第1ライン42aの他端側42a2と、第2ライン42bの他端側42b2とは、第2分岐部49を介して接続している。第1ライン42aと第2ライン42bとは、少なくとも部分的に並列して延在している。第1分岐部48及び第2分岐部49は、それぞれ流路42の一部を構成している。
【0114】
長方形状のカセット本体40は、長軸方向一端部である第1端部45aと、長軸方向他端部である第2端部45bとを有する。第1ポート部材44は、第1端部45aに設けられている。第2ポート部材46は、第2端部45bに設けられている。第1ポート部材44と第2ポート部材46とは、カセット本体40の長手方向軸に沿った同一直線上に配置されている。
【0115】
第1分岐部48は、第1分岐部48での流体の流れ方向の変化が鈍角となるように構成されている。具体的に、第2ライン42bの一端側42b1は、第1ライン42aに対して、カセット本体40の第2端部45b側に傾斜して接続している。
【0116】
第2分岐部49は、第2分岐部49での流体の流れ方向の変化が鈍角となるように構成されている。具体的に、第2ライン42bの他端側42b2は、第1ライン42aに対して、カセット本体40の第1端部45a側に傾斜して接続している。
【0117】
このように、カセット28Aによれば、第1分岐部48及び第2分岐部49は、それぞれ、当該結合部での流体の流れ方向の変化が鈍角となるように構成されている。この構成により、血液が各結合部を流れる際の血液へのダメージを低減することができる。
【0118】
上述した血液成分採取システム10では、カセット28に代えて、図16に示す血液成分採取用キット130(以下、「キット130」と略称する)が採用されてもよい。キット130において、カセット28と同様又は等価な構成要素には同一符号を付している。キット130は、カセット28における流路42を形成する部材の大部分をチューブで構成したものである。
【0119】
具体的に、キット130は、供血者から血液を採取するための採血針20と、一端が採血針20に接続された採血チューブ132と、第1チューブコネクタ134aを介して一端が採血チューブ132に接続された第1チューブ136aと、一端が第1チューブ136aの他端に接続された圧力測定用カセット部135と、一端が圧力測定用カセット部135の他端に接続された別の第1チューブ136bとを備える。2つの第1チューブ136a、136b内の流路及び圧力測定用カセット部135内の流路が、第1ライン42aを構成している。圧力測定用カセット部135は、軟質素材で形成された第1シート138aと第2シート138bとが厚さ方向に重ねられ且つ互いに接合されてなるカセット本体138を備える。
【0120】
カセット本体138に、第1圧力測定用膨出部51及び第2圧力測定用膨出部52を有する膨出構造部50が設けられている。第1シート138aと第2シート138bとの間にはフィルタ部材64が配置されている。カセット本体138におけるフィルタ部材64の配置構造は、カセット本体40におけるフィルタ部材64の配置構造(図4参照)と同様となっている。すなわち、フィルタ部材64は、第1シート138aと第1チューブ部材66との間に配置された一端側64aと、第2シート138bと第2チューブ部材68との間に配置された他端側64bとを有する。
【0121】
キット130はさらに、一端が第1チューブコネクタ134aを介して採血チューブ132と接続され、他端が第2チューブコネクタ134bを介して第1チューブ136bと接続された第2チューブ129(第2ライン形成部材)を備える。第2チューブ129内の流路が、第2ライン42bを構成している。
【0122】
採血チューブ132、2つの第1チューブ136a、136b及び第2チューブ129は、軟質素材により形成されている。第2チューブコネクタ134bには、処理部側チューブ34の一端が接続されている。処理部側チューブ34の他端は、血液処理部16(図1参照)に接続されている。
【0123】
キット130には、遠心分離装置14に備えられた複数のクランプ72(72a、72b)が作用する複数のクランプ作用部76(76a、76b)が設けられている。なお、キット130が用いられる場合、遠心分離装置14ではカセット取付部84(図1)に代えてキット取付部128が設けられる。詳細は省略するが、キット取付部128は、キット130が装着可能な装着溝が形成された取付ベースと、取付ベースに対して開閉可能な蓋体とを有し、当該蓋体を閉じると当該取付ベースと当該蓋体との間にキット130が挟まれるように構成されている。
【0124】
複数のクランプ72(72a、72b)は、複数のクランプ作用部76(76a、76b)の配置に合わせて配置されている。キット130を遠心分離装置14に装着すると、クランプ作用部76は、対応するクランプ72に当接又は対向する。クランプ72aは、第1チューブ136bを押圧可能である。クランプ72aは、第1チューブ136aを押圧可能に配置されてもよい。クランプ72bは、第2チューブ129を押圧可能である。
【0125】
上記のように構成されたキット130を用いた場合でも、図2等に示したカセット28を用いた場合と同様に、圧力測定のための初期反力をカセット本体138に作用させることなく、遠心分離装置14に設けられた荷重検出部82(図6)により回路内圧(陰圧及び陽圧)を精度良く測定することができる。
【0126】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0127】
10…血液成分採取システム 14…遠心分離装置
28…血液成分採取用カセット 50…膨出構造部
51…第1圧力測定用膨出部 52…第2圧力測定用膨出部
60…第1被把持部 62…第2被把持部
78…第1把持部 80…第2把持部
82…荷重検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
図16