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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】下肢用サポータ
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/05 20060101AFI20220913BHJP
【FI】
A41D13/05 143
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020005323
(22)【出願日】2020-01-16
(65)【公開番号】P2021113366
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2020-11-12
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】串田 啓介
(72)【発明者】
【氏名】船橋 祐美子
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0196789(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0262161(US,A1)
【文献】特許第5514349(JP,B1)
【文献】特開2016-83254(JP,A)
【文献】特開2005-74138(JP,A)
【文献】登録実用新案第3086861(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0021410(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/00-13/12、20/00
A41B1/14
A41C1/00-5/00
A61F5/00-6/24
A61H1/00-5/00、99/00
A63B1/00-26/00、71/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腰部に装着される腰部ベルト、及び前記腰部ベルトから下方に延びた少なくとも1本の帯状の弾性部材を備えたバドミントン用下肢用サポータにおいて、
前記1本の帯状の弾性部材は、少なくとも片方の臀部及び大腿部後面を通り膝下の前面に至るように装着され、
前記1本の帯状の弾性部材自体の少なくとも下部は切れ目によって外側弾性部材及び内側弾性部材に分かれており、
前記外側弾性部材の表側には外側連結部材が配置され、かつ前記内側弾性部材の裏側には内側連結部材が配置されるか、又は、前記外側弾性部材の裏側には外側連結部材が配置され、かつ前記内側弾性部材の表側には内側連結部材が配置されており、
前記外側弾性部材が膝の外側を通り、前記内側弾性部材が膝の内側を通り、膝下の前面において前記外側連結部材と前記内側連結部材が脱着可能に結合されることを特徴とするバドミントン用下肢用サポータ。
【請求項2】
前記外側連結部材と前記内側連結部材を結合しない状態において、弾性部材の身長方向の長さをLeとし、弾性部材の身長方向に19.6Nの荷重を加えた際の弾性部材の身長方向の長さをLdとした場合、Ld/Leは1.05~3.0である請求項1に記載のバドミントン用下肢用サポータ。
【請求項3】
前記外側連結部材と前記内側連結部材を結合しない状態において、前記弾性部材の身長方向の長さをLeとした場合、前記外側弾性部材の長さLo及び内側弾性部材の長さLiは、いずれも0.10Le以上である請求項1又は2に記載のバドミントン用下肢用サポータ。
【請求項4】
前記弾性部材は全体が外側弾性部材及び内側弾性部材に分かれている請求項1又は2に記載のバドミントン用下肢用サポータ。
【請求項5】
前記外側弾性部材及び内側弾性部材は、身幅方向の幅が3cm以上である請求項1~4のいずれか1項に記載のバドミントン用下肢用サポータ。
【請求項6】
前記弾性部材は、臀頂部を通り、大腿二頭筋及び半腱様筋の少なくとも一部を覆うように装着される請求項1~5のいずれか1項に記載のバドミントン用下肢用サポータ。
【請求項7】
前記外側弾性部材及び内側弾性部材において、装着者の肌に接する部分又は下肢用サポータより装着者の肌側に着用された衣服に接する部分には滑り止め材が配置されている請求項1~6のいずれか1項に記載のバドミントン用下肢用サポータ。
【請求項8】
前記弾性部材の下端には非弾性体が連結されている請求項1~7のいずれか1項に記載のバドミントン用下肢用サポータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、股関節の伸展フェーズをアシストすることができる下肢用サポータに関するものであり、特にしゃがみ姿勢から立位姿勢に戻る動作をアシストすることができる下肢用サポータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スポーツウェアに運動をサポータする機能を持たせることや運動をサポートするためにサポータを用いることが行われた。例えば、特許文献1には、ベース部よりも高い伸長荷重を示す強パワー部を有するスパッツにおいて、大腿部を周方向に囲んで臀部から膝上に延びるように強パワー部を設けることが提案されている。また、特許文献2には、足首部を包囲して装着される足部装着部と、膝部又は膝部近傍を包囲して装着される膝部装着部と、当該脚部装着部と膝部装着部とに連架されて、前脛骨筋の正面側に存在する、弾性素材で形成された第一伸縮部とからなる下肢用サポータが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-147759号公報
【文献】特開2018-11903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のスパッツは、着脱が容易ではなく、アシスト効果の程度や身体の大きさに合わせてサイズを調整することができなかった。また、引用文献2に記載の下肢用サポータは、股関節の伸展フェーズ、特にしゃがみ姿勢から立位姿勢に戻る動作をアシストすることができなかった。
【0005】
本発明は、上記従来の問題を解決するため、股関節の伸展フェーズ、特にしゃがみ姿勢から立位姿勢に戻る動作をアシストし、着脱が容易であり、アシスト効果の程度を調整できる上、装着者の身体の大きさに合わせてサイズを調整することもできる下肢用サポータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、腰部に装着される腰部ベルト、及び前記腰部ベルトから下方に延びた少なくとも1本の帯状の弾性部材を備えた下肢用サポータにおいて、前記弾性部材は、少なくとも片方の大腿部後面を通り膝下に至るように装着され、前記弾性部材の少なくとも下部は外側弾性部材及び内側弾性部材に分かれており、前記外側弾性部材の表側には外側連部材が配置され、かつ前記内側弾性部材の裏側には内側連部材が配置されるか、又は、前記外側弾性部材の裏側には外側連部材が配置され、かつ前記内側弾性部材の表側には内側連部材が配置されており、前記外側弾性部材が膝の外側を通り、前記内側弾性部材が膝の内側を通り、膝下において前記外側連結部材と前記内側連結部材が脱着可能に結合されることを特徴とする下肢用サポータに関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、股関節の伸展フェーズ、特にしゃがみ姿勢から立位姿勢に戻る動作をアシストし、着脱が容易であり、アシスト効果の程度を調整可能である上、装着者の身体の大きさに合わせてサイズを調整し得る下肢用サポータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施形態の下肢用サポータ(右用)の模式的表面図である。
図2図2は、同下肢用サポータを装着した状態の模式的説明図であり、図2Aは装着者の前面から見た説明図であり、図2Bは装着者の後面から見た説明図であり、図2Cは側面から見た説明図である。
図3図3は、本発明の他の一実施形態の下肢用サポータ(右用)の模式的表面図である。
図4図4は、同下肢用サポータを装着した状態の模式的説明図であり、図4Aは装着者の前面から見た説明図であり、図4Bは装着者の後面から見た説明図であり、図4Cは側面から見た説明図である。
図5図5は、本発明の他の一実施形態の下肢用サポータ(右用)の模式的表面図である。
図6図6は、同下肢用サポータを装着した状態の模式的説明図であり、図6Aは装着者の前面から見た説明図であり、図6Bは装着者の後面から見た説明図であり、図6Cは側面から見た説明図である。
図7図7は、本発明の他の一実施形態の下肢用サポータ(右用)の模式的表面図である。
図8図8は、同下肢用サポータを装着した状態の模式的説明図であり、図8Aは装着者の前面から見た説明図であり、図8Bは装着者の後面から見た説明図であり、図8Cは側面から見た説明図である。
図9図9は、本発明の一実施形態の下肢用サポータ(両足用)の模式的表面図である。
図10図10は、同下肢用サポータを装着した状態の模式的説明図であり、図10Aは装着者の前面から見た説明図であり、図10Bは装着者の後面から見た説明図であり、図10Cは側面から見た説明図である。
図11A-B】図11は、筋骨格シミュレーション解析に用いた弾性素材のモデル条件を説明する模式図であり、図11Aは前面から見た説明図であり、図11Bは後面から見た説明図である。
図12図12は、筋骨格シミュレーション解析で得られた弾性要素の張力と股関節角度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の発明者らは、上述した課題を解決するため検討を重ねた。その結果、腰部に装着される腰部ベルト、及び前記腰部ベルトから下方に延びた少なくとも1本の帯状の弾性部材を備え、弾性部材が少なくとも片方の臀部及び大腿部後面を通り膝下に至るように装着される下肢用サポータにおいて、弾性部材の少なくとも下部(又は全部)を外側弾性部材と内側弾性部材の二股に分けるとともに、外側弾性部材の表側に外側連部材を配置し、かつ内側弾性部材の裏側に内側連部材を配置し、或いは、外側弾性部材の裏側に外側連部材を配置し、かつ内側弾性部材の表側に内側連部材を配置し、外側弾性部材を膝の外側を通過させ、内側弾性部材を膝の内側を通過させ、膝下において外側連結部材と内側連結部材を脱着可能に結合させることで、股関節の伸展フェーズ、特にバドミントン等のスポーツ時に多く見られるフロントランジ動作、フェンシングのステップ及び片足の立ち上がり動作等のしゃがみ姿勢から立位姿勢に戻る動作をアシストできることを見出した。このような下肢用サポータは、着脱が容易であり、アシスト効果の程度を調整できる上、装着者の身体の大きさに合わせてサイズを調整することも可能である。このような下肢用サポータは、バミントン用サポータとして好適である。
【0010】
前記下肢用サポータを装着すると、しゃがみ姿勢の際に大腿部後面に装着された弾性部材が伸長され弾性エネルギーを蓄え、立位姿勢に戻る動作の際に弾性部材が元の長さに戻ろうとする力により、股関節を伸展させる方向にアシスト力が発揮され、臀部や大腿部の筋肉の負担を軽減されると推測される。また、膝下において外側連結部材と内側連結部材を結合することで、弾性部材が膝蓋骨を覆わないため、フロントランジ動作の踏み込み動作が阻害されない。また、腰部ベルトを腰部に装着し、膝下において外側連結部材と内側連結部材を結合することで、繰り返しフロントランジ動作を実施しても下肢用サポータがずれることなく、適切に弾性部材がアシスト効果を発揮し続けることができる。特に膝下において外側連結部材と内側連結部材を結合することで、股関節の伸展フェーズ、特に股関節と膝関節を90度近くにまで深く曲げたフロントランジ動作等のしゃがみ動作において、弾性部材が発揮するテンションの方向に対し効果的にアンカー機能を発揮することができる。また、膝下において外側連結部材と内側連結部材を脱着可能に結合することで、着脱が容易であり、アシスト効果の程度を調整し得る上、装着者の身体の大きさに合わせてサイズを調整することもできる。また、ランニングにおいて立脚側の脚が体重を支えるフェーズで股関節と膝関節が屈曲位になるが、弾性部材を2本有する下肢用サポータを両足に着用すると、このときにサポータが伸張し股関節と膝関節の伸展方向へのアシストを実施することができる。また、歩行において接地した直後に衝撃を緩和するために、股関節と膝関節が屈曲するフェーズ(ダブルニーアクション)が起こるが、弾性部材を2本有する下肢用サポータを両足に着用すると、このときにサポータが伸張し、股関節と膝関節の伸展方向へのアシストを実施することができる。
【0011】
前記下肢用サポータは、装着者の肌に直接接するように装着して使用してもよく、装着者が着用した衣服の上に装着して使用してもよい。
【0012】
前記弾性部材は、少なくとも片方の臀部及び大腿部後面を通り膝下に至るように装着されればよく、特に限定されないが、前記弾性部材は、骨盤上部、臀頂部を通り、大腿二頭筋及び半腱様筋の少なくとも一部を覆うように装着されることが好ましい。これにより、股関節の伸展フェーズ、特にバドミントンのフロントランジ動作等のしゃがみ姿勢から立位姿勢に戻る動作を効果的にアシストし、該動作時の臀部や大腿部の筋肉の負担を効果的に軽減することができる。下肢用サポータが片足用の場合、弾性部材は少なくとも1本であればよい。下肢用サポータが両足用の場合、弾性部材は少なくとも2本であればよい。
【0013】
本明細書において、「臀頂部」とは、矢状面(身体に対して横方向)から見たときに臀部が後方に最も突起している点のことをいう。本明細書において、「骨盤上部」とは、骨盤において、臀頂部より上に位置する部分を意味する。本明細書において、「身長方向」とは装着者の身体の身長方向を意味し、「身幅方向」とは装着者の身体の身幅方向を意味する。本発明において、「膝下」とは、膝蓋骨下端から脛骨粗面の下端までの領域を意味する。
【0014】
本発明の1以上の実施形態において、弾性部材の長さは、弾性部材の伸び率との関係において適宜に決定することができる。例えば、弾性部材の伸び率が小さい場合は、弾性部材の長さを、臀部及び大腿部後面を通り膝下に至る道のり距離(自然長)程の長さにすることで、一定のアシスト効果を与えることができる。弾性部材の伸び率が大きい場合は、弾性部材の長さを短くすることで、強いアシスト効果を与えることができ、弾性部材の長さを長くすることで、緩やかなアシスト効果を与えることができる。このように、弾性部材の長さは、弾性部材の伸び率や所望するアシスト力に応じて適宜決定すればよい。
【0015】
また、本発明の1以上の実施形態において、弾性部材の長さは、前記下肢用サポータを装着したときに弾性部材にかかる荷重の値に基づいて、その値を定めてもよい。例えば、前記下肢用サポータを装着した立位の状態において弾性部材にかかる荷重(初期荷重)を19.6Nに設定した場合、前記外側連結部材と前記内側連結部材を結合しない状態における弾性部材の身長方向の長さをLeとし、前記外側連結部材と前記内側連結部材を結合しない状態において、前記弾性部材の身長方向に19.6Nの荷重を加えた際の弾性部材の身長方向の長さをLdとした場合、Ld/Leは1.05以上3.0以下であることが好ましく、1.10以上2.0以下であることがより好ましく、1.15以上1.5以下であることがさらに好ましい。前記下肢用サポータを装着し、前記外側連結部材と前記内側連結部材を膝下で結合した場合、弾性部材に19.6Nの荷重がかかる条件の下では、Ld/Leを上述した範囲にすることで、装着者の身体の大きさに合わせて弾性部材のサイズを調整しやすい上、弾性部材による股関節の伸展フェーズ、特にバドミントンのフロントランジ動作等のしゃがみ姿勢から立位姿勢に戻る動作のアシスト効果の程度も調整しやすい。
【0016】
本発明において、所定の荷重を加えた際の弾性部材の身長方向の長さは、具体的には、JIS L 1096に準じ、定速伸長型試験機を用い、引張速度200mm/minで試験片の身長方向に荷重をかけて荷重が前記所定の値になるまで伸長させた後、その長さを測定することで求めることができる。また、本発明において、未荷重下の弾性部材の身長方向の長さ等の各種サイズは、下肢用サポータを水平面に平置きにした状態で測定する。なお、特に指定がない場合、各種サイズは未荷重下のサイズを意味する。
【0017】
本発明の1以上の実施形態において、前記外側連結部材と前記内側連結部材の長さについても、上述した弾性部材の長さと同じく、外側連結部材と内側連結部材の伸び率や所望するアシスト力とに応じて任意に決定することができる。
【0018】
また、本発明の1以上の実施形態において、前記外側連結部材と前記内側連結部材の長さは、装着者に応じたサイズ調整やアシスト力の調整の観点より、その値を定めてもよい。例えば、前記外側連結部材と前記内側連結部材を結合しない状態において、前記弾性部材の身長方向の長さをLeとした場合、特に限定されないが、前記外側弾性部材の長さLo及び内側弾性部材の長さLiは、いずれも0.10Le以上であることが好ましく、0.20Le以上であることがより好ましく、0.30Le以上であることがさらに好ましい。また、特に限定されないが、前記外側弾性部材の長さLo及び内側弾性部材の長さLiは、いずれも0.70Le以下であることが好ましく、0.60Le以下であることがより好ましく、0.50Le以下であることがさらに好ましい。これにより、装着者の身体の大きさに合わせて弾性部材のサイズを調整しやすい上、弾性部材による股関節の伸展フェーズ、特にバドミントンのフロントランジ動作等のしゃがみ姿勢から立位姿勢に戻る動作のアシスト効果の程度も調整しやすい。
【0019】
本発明の1以上の実施形態において、前記弾性部材は全体が外側弾性部材及び内側弾性部材に分かれていてもよい。これにより、弾性部材を臀部の身体形状に沿わせ易くなり、アシスト効果を効率的に与えることができるようになる。なお、この場合は、外側弾性部材及び内側弾性部材が大腿部後面で交差するようにして、前記外側弾性部材が膝の内側を通り、前記内側弾性部材が膝の外側を通り、膝下において前記外側連結部材と前記内側連結部材が脱着可能に結合されるように装着してもよい。
【0020】
前記弾性部材は、特に限定されないが、装着性、アシスト効果やサイズを調整しやすい観点から、身幅方向の幅が6cm以上35cm以下であることが好ましく、8cm以上25cm以下であることがより好ましく、10cm以上20cm以下であることがさらに好ましい。弾性部材が後述するように、二つに分かれる場合や二つ以上に分割されている場合は、弾性部材の身幅方向の幅は、各部分の合計幅を意味する。なお、弾性部材の身幅方向の幅は、各部分において同一でもよく、異なっていてもよい。
【0021】
前記外側弾性部材及び内側弾性部材は、特に限定されないが、装着性を良好にし、股関節の伸展フェーズ、特にしゃがみ姿勢から立位姿勢に戻る動作をアシストしやすい観点から、身幅方向の幅が3cm以上であることが好ましく、4cm以上であることがより好ましく、5cm以上であることがさらに好ましい。前記外側弾性部材及び内側弾性部材は、身幅方向の幅が同一でもよく、異なっていてもよい。また、先端に向け幅が変わっていてもよい。
【0022】
本発明の1以上の実施形態において、前記弾性部材の上部は、長手方向が身長方向に沿っている切れ目によって2以上に分割されていてもよい。この場合、装着性を良好にし、股関節の伸展フェーズ、特にしゃがみ姿勢から立位姿勢に戻る動作をアシストしやすい観点から、前記弾性部材の上部において、分割されたそれぞれの部分の身幅方向の幅は3cm以上であることが好ましく、4cm以上であることがより好ましく、5cm以上であることがさらに好ましい。前記各分割部分の身幅方向の幅が同一でもよく、異なっていてもよい。
【0023】
前記弾性部材は、その素材は特に限定されないが、例えば、ポリウレタン弾性繊維を含む織編物等を用いることができる。ポリウレタン弾性繊維は熱融着性を有するものであってもよい。前記織物は、モールド成形されたものであってもよい。前記織編物は、ポリウレタン弾性繊維に加えて、ナイロン繊維を含んでもよい。前記弾性部材を構成する素材は、特に限定されないが、目付が70g/m2以上400g/m2以下であることが好ましい。
【0024】
前記外側連結部材と前記内側連結部材は、股関節の伸展フェーズ、特にしゃがみ姿勢から立位姿勢に戻る動作のアシスト効果の程度や装着者の身体の大きさに合わせてサイズを調整しやすい観点から、未接合状態において、身長方向の長さは、それぞれ、弾性部材の長さの10%以上70%以下であることが好ましく、20%以上60%以下であることがより好ましく、30%以上50%以下であることがさらに好ましい。
【0025】
前記外側連結部材と前記内側連結部材は、互いに脱着可能に結合することができればよく、その素材は特に限定されないが、例えば、フック、ボタン、面ファスナー等が挙げられるが、結合後にアンカーとしての機能を発揮しやすい観点から、面ファスナーであることが好ましい。前記外側連結部材及び前記内側連結部材を面ファスナーで構成する場合、いずれか一方を起毛生地で構成してもよい。
【0026】
前記起毛生地は、天然繊維で構成されたものであってもよく、合成繊維で構成されたものであってもよい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル繊維、ポリウレタン繊維、アセテート繊維、コットン繊維、レーヨン繊維、エチレンビニルアルコール繊維、ナイロン繊維等で構成することができる。
【0027】
本発明の一実施形態において、外側弾性部材の表側には起毛面が露出するように起毛生地を配置して外側連部材を構成し、内側弾性部材の裏側には起毛生地と脱着可能に結合することができる面ファスナーを配置して内側連部材を構成してもよい。或いは、内側弾性部材の表側には起毛面が露出するように起毛生地を配置して内側連部材を構成し、外側弾性部材の裏側には起毛生地と脱着可能に結合することができる面ファスナーを配置して外側連部材を構成してもよい。前記起毛生地及び面ファスナーは、弾性部材に縫い合わされて、すなわち縫着されていることが好ましい。前記起毛生地及び面ファスナーは、二つ以上の部分に分けられてもよい。
【0028】
前記外側弾性部材及び内側弾性部材において、装着者の肌又は装着者が着用した衣服に接する部分には滑り止め材が配置されていることが好ましい。膝下における外側弾性部材及び内側弾性部材の結合部分が膝関節の屈曲や伸展によってずれることを防止し、該結合部分によるアンカー効果がより良好になる。
【0029】
前記滑り止め剤としては、特に限定されないが、例えば、樹脂を用いることができる。滑り止め効果を高める観点から、前記樹脂は、ポリウレタン、シリコーン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ゴム系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、及びアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体及びアクリル系樹脂からなる群から選ばれる1種以上の弾性樹脂であることが好ましい。滑り止め効果をより高める観点から、繊維径が1μm以下のナノ繊維を含む糸から構成された織物、編地、または不織布を用いてもよい。
【0030】
本発明の1以上の実施形態において、膝下における外側弾性部材及び内側弾性部材の結合部分によるアンカー機能を高める観点から、前記弾性部材の下端には非伸縮性素材で構成された非弾性体が連結されてもよい。
【0031】
前記腰部ベルトは、上部アンカーとして機能しており、これにより、弾性部材によるアシスト機能をより効果的に発揮することができる。前記腰部ベルトは、装着者の腰部に負担が掛からず、かつある程度の負荷が掛かってもズレ落ちない程度に、腰部に固定できれば良く、伸縮性部材のみ、非伸縮性部材のみ、あるいは伸縮性部材と非伸縮性部材の双方により構成することができる。
【0032】
前記腰部ベルトの構成部材として伸縮性部材を用いる場合、前記伸縮性素材としては、特に限定されないが、例えば、ポリウレタン弾性繊維を含む織編物等を用いることができる。ポリウレタン弾性繊維は熱融着性を有するものであってもよい。前記織物は、モールド成形されたものであってもよい。前記織編物は、ポリウレタン弾性繊維に加えて、ナイロン繊維を含んでも良い。前記弾性部材を構成する素材は、特に限定されないが、目付が70g/m2以上400g/m2以下であることが好ましい。
【0033】
前記非伸縮性素材としては、特に限定されないが、例えば、ナイロンや綿による織物や編物等を用いることができる。
【0034】
前記腰部ベルトは、装着者の身幅方向に沿う長手方向の両端部に配置されている連結部材によって脱着可能に結合することができる。腰部ベルトの端部連結部材は、互いに脱着可能に結合することができればよく、その素材は特に限定されないが、上述した外側連結部材及び前記内側連結部材に用いるものと同様のものを用いることができる。
【0035】
本発明の一実施形態において、腰部ベルトの一方の端部の表側には起毛面が露出するように起毛生地を配置して連部材を構成し、腰部ベルトの他方の端部の裏側には起毛生地と脱着可能に結合することができる面ファスナーを配置して連部材を構成してもよい。或いは、腰部ベルトの一方の端部の表側には面ファスナーを配置して連部材を構成し、腰部ベルトの他方の端部の裏側には面ファスナーと脱着可能に結合することができる起毛生地を配置して連部材を構成してもよい。
【0036】
前記弾性部材と前記腰部ベルトは縫製で一体化されていることが好ましく、製造工程の簡便性から、前記弾性部材の中心線と前記腰部ベルトの上端がなす角度は90度であることがより好ましい。一方、装着性の観点から、前記弾性部材の中心線と前記腰部ベルトの上端がなす劣角は90度未満であってもよい。
【0037】
以下、図面に基づいて、本発明の下肢用サポータの実施形態を具体的に説明する。但し、本発明の下肢用サポータは、図面に示されたものに限定されない。
【0038】
図1は、本発明の一実施形態の下肢用サポータ(右用)の模式的表面図であり、図2は、同下肢用サポータを装着した状態の模式的説明図であり、図2Aは装着者の前面から見た説明図であり、図2Bは装着者の後面から見た説明図であり、図2Cは側面から見た説明図である。該実施形態の下肢用サポータ1は、腰部に装着される腰部ベルト2、及び腰部ベルト2から下方に延びた1本の帯状の弾性部材3を備え、弾性部材3は、片方の臀部及び大腿部後面を通り膝下に至るように装着される。腰部ベルト2と弾性部材3は縫製で一体化されており、腰部ベルト2の上端部と弾性部材3の中心線がなす角度は90度である。腰部ベルト2は、伸縮性素材で構成された弾性体部分2aと、非伸縮性素材で構成された非弾性体部分2bを含み、弾性体部分2aと非弾性体部分2bは縫製で一体化されている。弾性部材3の少なくとも下部は外側弾性部材4と内側弾性部材5の二股に分かれており、外側弾性部材4の裏側には外側連部材6が配置され、かつ内側弾性部材5の表側には内側連部材7が配置されている。外側連部材6は面ファスナーで構成され、内側連部材7は起毛生地で構成されている。外側弾性部材4が膝の外側を通り、内側弾性部材5が膝の内側を通り、膝下において外側連結部材6と内側連結部材7が脱着可能に結合されている。腰部ベルト2の一方の端部の裏側には面ファスナーで構成された連結部材8が配置され、他方の端部の表側には起毛生地で構成された連結部材9が配置されており、連結部材8と9は、脱着可能に結合されている。
【0039】
図3は、本発明の一実施形態の下肢用サポータ(右用)の模式的表面図であり、図4は、同下肢用サポータを装着した状態の模式的説明図であり、図4Aは装着者の前面から見た説明図であり、図4Bは装着者の後面から見た説明図であり、図4Cは側面から見た説明図である。該実施形態の下肢用サポータ11は、腰部に装着される腰部ベルト12、及び腰部ベルト12から下方に延びた1本の帯状の弾性部材13を備え、弾性部材13は、片方の臀部及び大腿部後面を通り膝下に至るように装着される。腰部ベルト12と弾性部材13は縫製で一体化されており、腰部ベルト12の上端部と弾性部材13の中心線がなす角度は90度である。腰部ベルト12は、伸縮性素材で構成された弾性体部分12aと、非伸縮性素材で構成された非弾性体部分12bを含み、弾性体部分12aと非弾性体部分12bは縫製で一体化されている。弾性部材13は全体が外側弾性部材14と内側弾性部材15の二股に分かれており、外側弾性部材14の裏側には外側連部材16が配置され、かつ内側弾性部材15の表側には内側連部材17が配置されている。外側連部材16は面ファスナーで構成され、内側連部材17は起毛生地で構成されている。外側弾性部材14が膝の外側を通り、内側弾性部材15が膝の内側を通り、膝下において外側連結部材16と内側連結部材17が脱着可能に結合されている。腰部ベルト12の一方の端部の裏側には面ファスナーで構成された連結部材18が配置され、他方の端部の表側には起毛生地で構成された連結部材19が配置されており、連結部材18と19は、脱着可能に結合されている。
【0040】
図5は、本発明の一実施形態の下肢用サポータ(右用)の模式的表面図であり、図6は、同下肢用サポータを装着した状態の模式的説明図であり、図6Aは装着者の前面から見た説明図であり、図6Bは装着者の後面から見た説明図であり、図6Cは側面から見た説明図である。該実施形態の下肢用サポータ21は、腰部に装着される腰部ベルト22、及び腰部ベルト22から下方に延びた1本の帯状の弾性部材23を備え、弾性部材23は、片方の臀部及び大腿部後面を通り膝下に至るように装着される。腰部ベルト22と弾性部材23は縫製で一体化されており、腰部ベルト22の上端部と弾性部材23の中心線がなす角度は90度である。腰部ベルト22は、伸縮性素材で構成された弾性体部分22aと、非伸縮性素材で構成された非弾性体部分22bを含み、弾性体部分22aと非弾性体部分22bは縫製で一体化されている。弾性部材23の下部が外側弾性部材24と内側弾性部材25の二股に分かれており、外側弾性部材24の裏側には外側連部材26が配置され、かつ内側弾性部材25の表側には内側連部材27が配置されている。外側連部材26は面ファスナーで構成され、内側連部材27は起毛生地で構成されている。外側弾性部材24が膝の外側を通り、内側弾性部材25が膝の内側を通り、膝下において外側連結部材26と内側連結部材27が脱着可能に結合されている。腰部ベルト22の一方の端部の裏側には面ファスナーで構成された連結部材28が配置され、他方の端部の表側には起毛生地で構成された連結部材29が配置されており、連結部材28と29は、脱着可能に結合されている。弾性部材23の上部は、長手方向が身長方向に沿っている2つの切れ目30によって三つの部分に分割されている。
【0041】
図7は、本発明の一実施形態の下肢用サポータ(右用)の模式的表面図であり、図8は、同下肢用サポータを装着した状態の模式的説明図であり、図8Aは装着者の前面から見た説明図であり、図8Bは装着者の後面から見た説明図であり、図8Cは側面から見た説明図である。該実施形態の下肢用サポータ31は、腰部に装着される腰部ベルト32、及び腰部ベルト32から下方に延びた1本の帯状の弾性部材33を備え、弾性部材33は、片方の臀部及び大腿部後面を通り膝下に至るように装着される。腰部ベルト32と弾性部材33は縫製で一体化されており、腰部ベルト32の上端部と弾性部材33の中心線がなす角度は90度未満である。腰部ベルト32は、伸縮性素材で構成された弾性体部分32aと、非伸縮性素材で構成された非弾性体部分32bを含み、弾性体部分32aと非弾性体部分32bは縫製で一体化されている。弾性部材33の少なくとも下部は外側弾性部材34と内側弾性部材35の二股に分かれており、外側弾性部材34の裏側には外側連部材36が配置され、かつ内側弾性部材35の表側には内側連部材37が配置されている。外側連部材36は面ファスナーで構成され、内側連部材37は起毛生地で構成されている。外側弾性部材34が膝の外側を通り、内側弾性部材35が膝の内側を通り、膝下において外側連結部材36と内側連結部材37が脱着可能に結合されている。腰部ベルト32の一方の端部の裏側には面ファスナーで構成された連結部材38が配置され、他方の端部の表側には起毛生地で構成された連結部材39が配置されており、連結部材38と39は、脱着可能に結合されている。
【0042】
図9は、本発明の一実施形態の下肢用サポータ(両足用)の模式的表面図であり、図10は、同下肢用サポータを装着した状態の模式的説明図であり、図10Aは装着者の前面から見た説明図であり、図10Bは装着者の後面から見た説明図であり、図10Cは側面から見た説明図である。該実施形態の下肢用サポータ41は、腰部に装着される腰部ベルト42、及び腰部ベルト42から下方に延びた2本の帯状の弾性部材43を備え、それぞれの弾性部材43は、片方ずつの臀部及び大腿部後面を通り膝下に至るように装着される。腰部ベルト42と2本の弾性部材43は縫製で一体化されており、腰部ベルト42の上端部とそれぞれの弾性部材43の中心線がなす角度は90度である。それぞれの弾性部材43の少なくとも下部は外側弾性部材44と内側弾性部材45の二股に分かれており、外側弾性部材44の裏側には外側連部材46が配置され、かつ内側弾性部材45の表側には内側連部材47が配置されている。外側連部材46は面ファスナーで構成され、内側連部材47は起毛生地で構成されている。外側弾性部材44が膝の外側を通り、内側弾性部材45が膝の内側を通り、膝下において外側連結部材46と内側連結部材47が脱着可能に結合されている。腰部ベルト42の一方の端部の裏側には面ファスナーで構成された連結部材48が配置され、他方の端部の表側には起毛生地で構成された連結部材49が配置されており、連結部材48と49は、脱着可能に結合されている。
【実施例
【0043】
以下実施例を用いてさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0044】
実施例で下記の素材を用いた。
(1)生地a:平織りの織物、目付け約360g/m2、繊維組成は、ポリウレタン弾性繊維76.5%、ナイロン繊維23.5%であった。経糸は、ポリウレタン糸を用いた。緯糸は、ナイロン糸を用いた。該生地のタテ方向の荷重19.6N下の伸長率は34.3%であり、ヨコ方向の荷重19.6N下の伸長率は17.3%であった。
(2)生地b:綿繊維からなる平織りの織物。
【0045】
(実施例1)
生地aをタテ方向が身長方向に沿うように用いて弾性部材3を構成し、生地aをタテ方向が身幅方向に沿うように用いて腰部ベルト2の弾性体部分2aを構成し、生地bをタテ方向が身幅方向に沿うように用いて腰部ベルト2の非弾性体部分2bを構成し、図1に示す下肢用サポータ1を作製した。下肢用サポータ1において、弾性部材3の身長方向の長さは69cmであり、身幅方向の幅は10であり、弾性部材3の下部が二股に分かれて形成した外側弾性部材4及び内側弾性部材5の身長方向の長さは30cmであり、身幅方向の幅は5cmであった。弾性部材3の19.6N荷重下の身長方向の長さは93cmであった。外側弾性部材4の裏側には起毛生地(身長方向の長さ9cm、身幅方向の幅3cm)で構成された外側連部材6が配置され、内側弾性部材5の表側には面ファスナー(身長方向の長さ3cm、身幅方向の幅3cm)で構成された側連部材が配置されていた。なお、面ファスナーは二つであり、間隔は6cmであった。腰部ベルト2において、腰部ベルト1の一方の端部の裏側には面ファスナー(身長方向の長さ3cm、身幅方向の幅5cm)で構成された連結部材8が配置され、他方の端部には起毛生地(身長方向の長さ2.5cm、身幅方向の幅29cm)で構成された連結部材9が配置されていた。
【0046】
被験者はバドミントン競技を専門とする大学生とし、試技は前方へ踏み出すフロントランジ動作とした。三次元光学分析装置(250Hz)及び床反力計(1000Hz)を用いて、身体分析点の座標値と地面反力を収集し、筋骨格シミュレーション解析ソフト(AnyBody Modeling System,AnyBody Technology社製)に入力した。弾性要素のモデル条件は,図11A~BのようにRT1~RT3を配置した。下肢用サポータの着用時を模擬するため,立位姿勢で生地の初期伸びが20%発生しているよう設定にした。分析区間は,フロントランジ動作1回分の接地から離地までとした。弾性要素の張力と股関節角度の関係を図12に示した。図12から分かるように、接地した初期姿勢の股関節角度は約20度で、ランジ動作を行うと、股関節角度は最大となり(約100度)、その際生地は伸長し約8~20Nの張力がそれぞれ発揮していた。股関節角度最大から離地に向かって股関節角度が伸展方向に変位していくとともに、生地の張力も減少した。
【符号の説明】
【0047】
1、11、21、31、41 下肢用サポータ
2、12、22、32、42 腰部ベルト
3、13、23、33、43 弾性部材
4、14、24、34、44 外側弾性部材
5、15、25、35、45 内側弾性部材
6、16、26、36、46 外側連結部材
7、17、27、37、47 内側連結部材
8、9、18、19、28、29、38、39、48、49 腰部ベルトの連結部材
30 切れ目
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12