(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】電線処理装置
(51)【国際特許分類】
H02G 1/12 20060101AFI20220913BHJP
B26D 3/00 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
H02G1/12 056
H02G1/12 060
B26D3/00 603Z
(21)【出願番号】P 2020559079
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(86)【国際出願番号】 JP2019046172
(87)【国際公開番号】W WO2020121803
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-06-04
(31)【優先権主張番号】P 2018231920
(32)【優先日】2018-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【氏名又は名称】後藤 高志
(72)【発明者】
【氏名】久野 勝
(72)【発明者】
【氏名】津田 光彦
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-287312(JP,A)
【文献】特開平5-30621(JP,A)
【文献】特開平4-261316(JP,A)
【文献】特開平6-178421(JP,A)
【文献】特開2008-160911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/12
B26D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線と前記芯線の周囲を覆う被覆材とを有する電線を処理する電線処理装置であって、
前記電線の切断および前記被覆材の周方向の切り込みが可能な一対の切断刃と、
前記切断刃よりも前記電線の長手方向の一方に配置され、前記被覆材を前記電線の長手方向に切り裂き可能なスリット刃と、
前記スリット刃が前記切断刃よりも前記電線に近づくスリット位置と、前記スリット刃が前記切断刃よりも前記電線から遠ざかる退避位置との間で前記スリット刃を移動させるスリット刃アクチュエータと、
前記スリット刃よりも前記電線の長手方向の前記一方に配置され、前記電線を把持するクランプ部材と、
前記クランプ部材と前記スリット刃とを前記電線の長手方向に沿って相対移動させるクランプアクチュエータと、
前記一対の切断刃を互いに接近および離反させるように駆動するメインアクチュエータと、
前記スリット刃アクチュエータ、前記クランプアクチュエータ、および前記メインアクチュエータを制御する制御装置と、
前記切断刃よりも前記電線の長手方向の一方または他方に配置され、前記被覆材を周方向に切り込み可能な一対のストリップ刃と、を備え、
前記ストリップ刃は、前記切断刃と共に前記電線に対して接近および離反するように前記切断刃に連結され、
前記クランプアクチュエータは、前記クランプ部材と前記ストリップ刃とを前記電線の長手方向に沿って相対移動させるように構成され、
前記制御装置は、
前記スリット刃を前記退避位置に保持しつつ、前記切断刃が前記電線に向けて移動するように前記メインアクチュエータを駆動することにより、前記電線を切断する切断制御部と、
前記スリット刃を前記退避位置に保持しつつ、切断された前記電線の端部に向けて前記ストリップ刃が移動するよう前記メインアクチュエータを駆動することにより、前記電線の被覆材の端部に周方向の切り込みを入れるストリップ刃切込制御部と、
前記スリット刃を前記退避位置に保持しつつ、前記電線の被覆材の端部が前記ストリップ刃に切り込まれた状態のまま、前記クランプアクチュエータを駆動することにより、前記クランプ部材と前記ストリップ刃とを前記電線の長手方向に相対移動させるストリップ制御部と、
前記スリット刃を前記退避位置に保持しつつ、前記切断刃が前記電線に向けて移動するよう前記メインアクチュエータを駆動することにより、前記電線の被覆材の中途部における第1の位置に周方向の切り込みを入れる第1位置切込制御部と、
前記スリット刃アクチュエータを駆動することにより前記スリット刃を前記スリット位置に移動させると共に、前記スリット刃を前記電線に向けて移動させて前記被覆材に切り込みを入れる第1スリット刃制御部と、
前記クランプアクチュエータを駆動することにより、前記スリット刃を前記被覆材に対して前記第1の位置と第2の位置との間で相対移動させる第2スリット刃制御部と、
前記スリット刃アクチュエータを駆動することにより前記スリット刃を前記退避位置に移動させると共に、前記切断刃が前記電線に向けて移動するよう前記メインアクチュエータを駆動することにより、前記被覆材の前記第2の位置に周方向の切り込みを入れる第2位置切込制御部と、を有している、電線処理装置。
【請求項2】
前記スリット刃を前記スリット位置と前記退避位置との間で移動可能に支持
するスリット刃支持部材を備え、
前記スリット刃支持部材は、前記切断刃と共に前記電線に対して接近および離反するように前記切断刃に連結され
、
前記第1スリット刃制御部は、前記メインアクチュエータを駆動することにより、前記スリット刃を前記電線に向けて移動させて前記被覆材に切り込みを入れるように構成されている、請求項
1に記載の電線処理装置。
【請求項3】
前記スリット刃は、前記ストリップ刃よりも前記電線の長手方向の前記一方に配置されている、請求項
1または2に記載の電線処理装置。
【請求項4】
芯線と前記芯線の周囲を覆う被覆材とを有する電線を処理する電線処理装置であって、
前記電線の切断および前記被覆材の周方向の切り込みが可能な一対の切断刃と、
前記切断刃よりも前記電線の長手方向の一方に配置され、前記被覆材を周方向に切り込み可能な一対の第1ストリップ刃と、
前記切断刃よりも前記電線の長手方向の他方に配置され、前記被覆材を周方向に切り込み可能な一対の第2ストリップ刃と、
前記切断刃よりも前記電線の長手方向の前記一方または前記他方に配置され、前記被覆材を前記電線の長手方向に切り裂き可能なスリット刃と、
前記スリット刃が前記切断刃、前記第1ストリップ刃、および前記第2ストリップ刃よりも前記電線に近づくスリット位置と、前記スリット刃が前記切断刃、前記第1ストリップ刃、および前記第2ストリップ刃よりも前記電線から遠ざかる退避位置との間で前記スリット刃を移動させるスリット刃アクチュエータと、
を備えた電線処理装置。
【請求項5】
前記第1ストリップ刃および前記スリット刃よりも前記電線の長手方向の前記一方に配置され、前記電線を把持する第1クランプ部材と、
前記第2ストリップ刃および前記スリット刃よりも前記電線の長手方向の前記他方に配置され、前記電線を把持する第2クランプ部材と、
前記第1クランプ部材と前記スリット刃とを前記電線の長手方向に沿って相対移動させる第1クランプアクチュエータと、
前記第2クランプ部材と前記スリット刃とを前記電線の長手方向に沿って相対移動させる第2クランプアクチュエータと、
を備えた、請求項
4に記載の電線処理装置。
【請求項6】
前記一対の切断刃を互いに接近および離反させるように駆動するメインアクチュエータと、
前記スリット刃アクチュエータ、前記第1クランプアクチュエータ、前記第2クランプアクチュエータ、および前記メインアクチュエータを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記スリット刃を前記退避位置に保持しつつ、前記切断刃が前記電線に向けて移動するよう前記メインアクチュエータを駆動することにより、前記電線の被覆材の中途部における第1の位置に周方向の切り込みを入れる第1位置切込制御部と、
前記スリット刃アクチュエータを駆動することにより前記スリット刃を前記スリット位置に移動させると共に、前記スリット刃を前記電線に向けて移動させて前記被覆材に切り込みを入れる第1スリット刃制御部と、
前記第1クランプアクチュエータまたは前記第2クランプアクチュエータを駆動することにより、前記スリット刃を前記被覆材に対して前記第1の位置と第2の位置との間で相対移動させる第2スリット刃制御部と、
前記スリット刃アクチュエータを駆動することにより前記スリット刃を前記退避位置に移動させると共に、前記切断刃が前記電線に向けて移動するよう前記メインアクチュエータを駆動することにより、前記被覆材の前記第2の位置に周方向の切り込みを入れる第2位置切込制御部と、を有している、請求項
5に記載の電線処理装置。
【請求項7】
前記スリット刃を前記スリット位置と前記退避位置との間で移動可能に支持
するスリット刃支持部材を備え、
前記スリット刃支持部材は、前記切断刃と共に前記電線に対して接近および離反するように前記切断刃に連結され
、
前記第1スリット刃制御部は、前記メインアクチュエータを駆動することにより、前記スリット刃を前記電線に向けて移動させて前記被覆材に切り込みを入れるように構成されている、請求項
6に記載の電線処理装置。
【請求項8】
前記第1ストリップ刃および前記第2ストリップ刃は、前記切断刃と共に前記電線に対して接近および離反するように前記切断刃に連結され、
前記第1クランプアクチュエータは、前記第1クランプ部材と前記第1ストリップ刃とを前記電線の長手方向に沿って相対移動させるように構成され、
前記第2クランプアクチュエータは、前記第2クランプ部材と前記第2ストリップ刃とを前記電線の長手方向に沿って相対移動させるように構成され、
前記制御装置は、
前記スリット刃を前記退避位置に保持しつつ、前記切断刃が前記電線に向けて移動するように前記メインアクチュエータを駆動することにより、前記電線を切断して前記電線の長手方向の前記一方側の第1電線と前記他方側の第2電線とに分ける切断制御部と、
前記スリット刃を前記退避位置に保持しつつ、切断された前記第1電線の端部に向けて前記第1ストリップ刃が移動し、かつ、切断された前記第2電線の端部に向けて前記第2ストリップ刃が移動するよう前記メインアクチュエータを駆動することにより、前記第1電線および前記第2電線の前記被覆材の端部に周方向の切り込みを入れるストリップ刃切込制御部と、
前記スリット刃を前記退避位置に保持しつつ、前記第1電線の前記被覆材の端部が前記第1ストリップ刃に切り込まれ、かつ、前記第2電線の前記被覆材の端部が前記第2ストリップ刃に切り込まれた状態のまま、前記第1クランプアクチュエータおよび前記第2クランプアクチュエータを駆動することにより、前記第1クランプ部材と前記第1ストリップ刃とを前記第1電線の長手方向に相対移動させ、かつ、前記第2クランプ部材と前記第2ストリップ刃とを前記第2電線の長手方向に相対移動させるストリップ制御部と、を有している、請求項
6または7に記載の電線処理装置。
【請求項9】
前記スリット刃は、前記第1ストリップ刃よりも前記電線の長手方向の前記一方に配置され、または、前記第2ストリップ刃よりも前記電線の長手方向の前記他方に配置されている、請求項
4~8のいずれか一つに記載の電線処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の切断と被覆材の剥ぎ取りが可能な電線処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電線を切断する処理と、電線の中途部の被覆材を剥ぎ取る処理とを行う電線処理装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示された電線処理装置は、上下一対の切断・切込カッターと、切断・切込カッターの右方に配置された上下一対の切裂カッターとを備えている。この電線処理装置では、電線の中途部の被覆材を剥ぎ取る際には、まず、切断・切込カッターにより、電線の中途部の被覆材における第1の位置に周方向の切り込みを入れる。次に、電線を右方に移動させ、上下一対の切裂カッターの間に配置する。そして、切裂カッターにより、電線の中途部の被覆材を上記第1の位置から第2の位置まで、電線の長手方向に沿って切り裂く。その後、電線を左方に移動させ、再び上下一対の切断・切込カッターの間に配置する。そして、切断・切込カッターにより、電線の中途部の被覆材における上記第2の位置に周方向の切り込みを入れる。これにより、中途部の被覆材が剥ぎ取られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記電線処理装置では、電線を切断する処理を行う切断・切込カッターを利用して、電線の中途部の被覆材を剥ぎ取る処理の一部(すなわち、被覆材に周方向の切り込みを入れる処理)を行うことができる。しかし、電線の中途部の被覆材を剥ぎ取る処理の際に、電線を左右に移動させる必要がある。そのため、電線の中途部の被覆材を剥ぎ取る処理に手間と時間がかかるという課題がある。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、電線を切断する処理と電線の中途部の被覆材を剥ぎ取る処理とを行うことができる電線処理装置において、それらの処理を迅速かつ効率的に行うことを可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電線処理装置は、芯線と前記芯線の周囲を覆う被覆材とを有する電線を処理する電線処理装置であって、前記電線の切断および前記被覆材の周方向の切り込みが可能な一対の切断刃と、前記切断刃よりも前記電線の長手方向の一方に配置され、前記被覆材を前記電線の長手方向に切り裂き可能なスリット刃と、前記スリット刃が前記切断刃よりも前記電線に近づくスリット位置と、前記スリット刃が前記切断刃よりも前記電線から遠ざかる退避位置との間で前記スリット刃を移動させるスリット刃アクチュエータと、を備えている。
【0008】
上記電線処理装置によれば、スリット刃を退避位置に保ったまま、一対の切断刃を互いに近づく方向に移動させることにより、電線を切断する処理(以下、切断処理という)を行うことができる。
【0009】
また、スリット刃をスリット位置に移動させ、スリット刃を電線に近づく方向に移動させて被覆材に切り込みを入れた後、スリット刃が相対的に電線の長手方向に沿って移動するようにスリット刃と電線とを相対移動させることにより、電線の中途部の被覆材を電線の長手方向に沿って切り裂くことができる。また、スリット刃を退避位置に保ったまま、一対の切断刃を互いに近づく方向に移動させることにより、被覆材の切り裂かれた部分の両側に、周方向の切り込みを入れることができる。これにより、電線の中途部の被覆材を剥ぎ取る処理(以下、中途部ストリップ処理という)を行うことができる。
【0010】
上記電線処理装置によれば、切断刃とスリット刃とは、電線の長手方向に沿って配置されている。そのため、中途部ストリップ処理において、電線を長手方向と垂直な方向に移動させる動作は不要である。したがって、中途部ストリップ処理を迅速かつ効率的に行うことができる。上記電線処理装置によれば、切断処理および中途部ストリップ処理を迅速かつ効率的に行うことができる。
【0011】
本発明の好ましい一態様によれば、前記スリット刃よりも前記電線の長手方向の前記一方に配置され、前記電線を把持するクランプ部材と、前記クランプ部材と前記スリット刃とを前記電線の長手方向に沿って相対移動させるクランプアクチュエータと、を備えている。
【0012】
上記態様によれば、クランプ部材により電線を把持することができる。また、電線を把持したままクランプ部材とスリット刃とを電線の長手方向に沿って移動させることができる。そのため、切断処理および中途部ストリップ処理を良好に行うことができる。
【0013】
本発明の好ましい一態様によれば、前記一対の切断刃を互いに接近および離反させるように駆動するメインアクチュエータと、前記スリット刃アクチュエータ、前記クランプアクチュエータ、および前記メインアクチュエータを制御する制御装置と、を備えている。前記制御装置は、前記スリット刃を前記退避位置に保持しつつ、前記切断刃が前記電線に向けて移動するよう前記メインアクチュエータを駆動することにより、前記電線の被覆材の中途部における第1の位置に周方向の切り込みを入れる第1位置切込制御部と、前記スリット刃アクチュエータを駆動することにより前記スリット刃を前記スリット位置に移動させると共に、前記スリット刃を前記電線に向けて移動させて前記被覆材に切り込みを入れる第1スリット刃制御部と、前記クランプアクチュエータを駆動することにより、前記スリット刃を前記被覆材に対して前記第1の位置と第2の位置との間で相対移動させる第2スリット刃制御部と、前記スリット刃アクチュエータを駆動することにより前記スリット刃を前記退避位置に移動させると共に、前記切断刃が前記電線に向けて移動するよう前記メインアクチュエータを駆動することにより、前記被覆材の前記第2の位置に周方向の切り込みを入れる第2位置切込制御部と、を有している。
【0014】
上記態様によれば、中途部ストリップ処理が制御装置により自動的に実行される。
【0015】
本発明の好ましい一態様によれば、前記スリット刃を前記スリット位置と前記退避位置との間で移動可能に支持し、前記切断刃と共に前記電線に対して接近および離反するように前記切断刃に連結されたスリット刃支持部材を備えている。前記第1スリット刃制御部は、前記メインアクチュエータを駆動することにより、前記スリット刃を前記電線に向けて移動させて前記被覆材に切り込みを入れるように構成されている。
【0016】
上記態様によれば、切断刃を駆動するメインアクチュエータにより、スリット刃を電線に向けて移動させて被覆材に切り込みを入れることができる。そのため、スリット刃を電線に向けて移動させて被覆材に切り込みを入れるための専用のアクチュエータは不要である。よって、アクチュエータの個数を削減することができ、電線処理装置を低コスト化および小型化することができる。
【0017】
本発明の好ましい一態様によれば、前記切断刃よりも前記電線の長手方向の一方または他方に配置され、前記被覆材を周方向に切り込み可能な一対のストリップ刃を備えている。
【0018】
上記態様によれば、スリット刃を退避位置に保ったまま、一対のストリップ刃を互いに近づく方向に移動させることにより、切断された電線の端部の被覆材に周方向の切り込みを入れることができる。そして、ストリップ刃が相対的に電線の先端側に移動するようにストリップ刃と電線とを相対移動させることにより、電線の端部の被覆材を剥ぎ取る処理(以下、端部ストリップ処理という)を行うことができる。上記態様によれば、切断処理、端部ストリップ処理、および中途部ストリップ処理を迅速かつ効率的に行うことができる。
【0019】
本発明の好ましい一態様によれば、前記切断刃よりも前記電線の長手方向の一方または他方に配置され、前記被覆材を周方向に切り込み可能な一対のストリップ刃を備えている。前記ストリップ刃は、前記切断刃と共に前記電線に対して接近および離反するように前記切断刃に連結されている。前記クランプアクチュエータは、前記クランプ部材と前記ストリップ刃とを前記電線の長手方向に沿って相対移動させるように構成されている。前記制御装置は、前記スリット刃を前記退避位置に保持しつつ、前記切断刃が前記電線に向けて移動するように前記メインアクチュエータを駆動することにより、前記電線を切断する切断制御部と、前記スリット刃を前記退避位置に保持しつつ、切断された前記電線の端部に向けて前記ストリップ刃が移動するよう前記メインアクチュエータを駆動することにより、前記電線の被覆材の端部に周方向の切り込みを入れるストリップ刃切込制御部と、前記スリット刃を前記退避位置に保持しつつ、前記電線の被覆材の端部が前記ストリップ刃に切り込まれた状態のまま、前記クランプアクチュエータを駆動することにより、前記クランプ部材と前記ストリップ刃とを前記電線の長手方向に相対移動させるストリップ制御部と、を有している。
【0020】
上記態様によれば、切断処理および端部ストリップ処理が制御装置により自動的に実行される。
【0021】
本発明の好ましい一態様によれば、前記スリット刃は、前記ストリップ刃よりも前記電線の長手方向の前記一方に配置されている。
【0022】
上記態様によれば、スリット刃は、ストリップ刃に対して切断刃が設けられている側と反対側に配置されている。ストリップ刃の切断刃側と反対側には比較的スペースの余裕があるので、スリット刃の設置が容易となる。
【0023】
本発明に係る他の電線処理装置は、芯線と前記芯線の周囲を覆う被覆材とを有する電線を処理する電線処理装置であって、前記電線の切断および前記被覆材の周方向の切り込みが可能な一対の切断刃と、前記切断刃よりも前記電線の長手方向の一方に配置され、前記被覆材を周方向に切り込み可能な一対の第1ストリップ刃と、前記切断刃よりも前記電線の長手方向の他方に配置され、前記被覆材を周方向に切り込み可能な一対の第2ストリップ刃と、前記切断刃よりも前記電線の長手方向の前記一方または前記他方に配置され、前記被覆材を前記電線の長手方向に切り裂き可能なスリット刃と、前記スリット刃が前記切断刃、前記第1ストリップ刃、および前記第2ストリップ刃よりも前記電線に近づくスリット位置と、前記スリット刃が前記切断刃、前記第1ストリップ刃、および前記第2ストリップ刃よりも前記電線から遠ざかる退避位置との間で前記スリット刃を移動させるスリット刃アクチュエータと、を備えている。
【0024】
上記電線処理装置によれば、スリット刃を退避位置に保ったまま、一対の切断刃を互いに近づく方向に移動させることにより、切断処理を行うことができる。
【0025】
また、スリット刃を退避位置に保ったまま、一対の第1ストリップ刃および一対の第2ストリップ刃を互いに近づく方向に移動させることにより、切断された一方および他方の電線の端部の被覆材に、周方向の切り込みを入れることができる。そして、第1および第2ストリップ刃がそれぞれ被覆材の先端側に相対的に移動するように第1および第2ストップ刃と電線とを相対移動させることにより、両方の電線の端部ストリップ処理を行うことができる。
【0026】
さらに、スリット刃をスリット位置に移動させ、スリット刃を電線に近づく方向に移動させて被覆材に切り込みを入れた後、スリット刃が相対的に電線の長手方向に沿って移動するようにストリップ刃と電線とを相対移動させることにより、電線の中途部の被覆材を電線の長手方向に沿って切り裂くことができる。また、スリット刃を退避位置に保ったまま、一対の切断刃を互いに近づく方向に移動させることにより、被覆材の切り裂かれた部分の両側に、周方向の切り込みを入れることができる。これにより、中途部ストリップ処理を行うことができる。
【0027】
上記電線処理装置によれば、切断刃と第1ストリップ刃と第2ストリップ刃とスリット刃とは、電線の長手方向に沿って配置されている。そのため、中途部ストリップ処理において、電線を長手方向と垂直な方向に移動させる動作は不要である。したがって、中途部ストリップ処理を迅速かつ効率的に行うことができる。また、切断処理、端部ストリップ処理、および中途部ストリップ処理のうちの一の処理から他の一の処理に移行する際にも、電線を長手方向と垂直な方向に移動させる動作は不要である。したがって、上記電線処理装置によれば、切断処理、端部ストリップ処理、および中途部ストリップ処理を迅速かつ効率的に行うことができる。
【0028】
本発明の好ましい一態様によれば、前記第1ストリップ刃および前記スリット刃よりも前記電線の長手方向の前記一方に配置され、前記電線を把持する第1クランプ部材と、前記第2ストリップ刃および前記スリット刃よりも前記電線の長手方向の前記他方に配置され、前記電線を把持する第2クランプ部材と、前記第1クランプ部材と前記スリット刃とを前記電線の長手方向に沿って相対移動させる第1クランプアクチュエータと、前記第2クランプ部材と前記スリット刃とを前記電線の長手方向に沿って相対移動させる第2クランプアクチュエータと、を備えている。
【0029】
上記態様によれば、第1および第2クランプ部材により電線を把持することができる。また、電線を把持したまま、第1クランプ部材とスリット刃とを電線の長手方向に沿って相対移動させることができ、第2クランプ部材とスリット刃とを電線の長手方向に沿って相対移動させることができる。そのため、切断処理、端部ストリップ処理、および中途部ストリップ処理を良好に行うことができる。
【0030】
本発明の好ましい一態様によれば、前記一対の切断刃を互いに接近および離反させるように駆動するメインアクチュエータと、前記スリット刃アクチュエータ、前記第1クランプアクチュエータ、前記第2クランプアクチュエータ、および前記メインアクチュエータを制御する制御装置と、を備えている。前記制御装置は、前記スリット刃を前記退避位置に保持しつつ、前記切断刃が前記電線に向けて移動するよう前記メインアクチュエータを駆動することにより、前記電線の被覆材の中途部における第1の位置に周方向の切り込みを入れる第1位置切込制御部と、前記スリット刃アクチュエータを駆動することにより前記スリット刃を前記スリット位置に移動させると共に、前記スリット刃を前記電線に向けて移動させて前記被覆材に切り込みを入れる第1スリット刃制御部と、前記第1クランプアクチュエータまたは前記第2クランプアクチュエータを駆動することにより、前記スリット刃を前記被覆材に対して前記第1の位置と第2の位置との間で相対移動させる第2スリット刃制御部と、前記スリット刃アクチュエータを駆動することにより前記スリット刃を前記退避位置に移動させると共に、前記切断刃が前記電線に向けて移動するよう前記メインアクチュエータを駆動することにより、前記被覆材の前記第2の位置に周方向の切り込みを入れる第2位置切込制御部と、を有している。
【0031】
上記態様によれば、中途部ストリップ処理が制御装置により自動的に実行される。
【0032】
本発明の好ましい一態様によれば、前記スリット刃を前記スリット位置と前記退避位置との間で移動可能に支持し、前記切断刃と共に前記電線に対して接近および離反するように前記切断刃に連結されたスリット刃支持部材を備えている。前記第1スリット刃制御部は、前記メインアクチュエータを駆動することにより、前記スリット刃を前記電線に向けて移動させて前記被覆材に切り込みを入れるように構成されている。
【0033】
上記態様によれば、切断刃を駆動するメインアクチュエータにより、スリット刃を電線に向けて移動させて被覆材に切り込みを入れることができる。そのため、スリット刃を電線に向けて移動させて被覆材に切り込みを入れるための専用のアクチュエータは不要である。よって、アクチュエータの個数を削減することができ、電線処理装置を低コスト化および小型化することができる。
【0034】
本発明の好ましい一態様によれば、前記第1ストリップ刃および前記第2ストリップ刃は、前記切断刃と共に前記電線に対して接近および離反するように前記切断刃に連結されている。前記第1クランプアクチュエータは、前記第1クランプ部材と前記第1ストリップ刃とを前記電線の長手方向に沿って相対移動させるように構成されている。前記第2クランプアクチュエータは、前記第2クランプ部材と前記第2ストリップ刃とを前記電線の長手方向に沿って相対移動させるように構成されている。前記制御装置は、前記スリット刃を前記退避位置に保持しつつ、前記切断刃が前記電線に向けて移動するように前記メインアクチュエータを駆動することにより、前記電線を切断して前記電線の長手方向の前記一方側の第1電線と前記他方側の第2電線とに分ける切断制御部と、前記スリット刃を前記退避位置に保持しつつ、切断された前記第1電線の端部に向けて前記第1ストリップ刃が移動し、かつ、切断された前記第2電線の端部に向けて前記第2ストリップ刃が移動するよう前記メインアクチュエータを駆動することにより、前記第1電線および前記第2電線の前記被覆材の端部に周方向の切り込みを入れるストリップ刃切込制御部と、前記スリット刃を前記退避位置に保持しつつ、前記第1電線の前記被覆材の端部が前記第1ストリップ刃に切り込まれ、かつ、前記第2電線の前記被覆材の端部が前記第2ストリップ刃に切り込まれた状態のまま、前記第1クランプアクチュエータおよび前記第2クランプアクチュエータを駆動することにより、前記第1クランプ部材と前記第1ストリップ刃とを前記第1電線の長手方向に相対移動させ、かつ、前記第2クランプ部材と前記第2ストリップ刃とを前記第2電線の長手方向に相対移動させるストリップ制御部と、を有している。
【0035】
上記態様によれば、切断処理および両電線の端部ストリップ処理が制御装置により自動的に実行される。
【0036】
本発明の好ましい一態様によれば、前記スリット刃は、前記第1ストリップ刃よりも前記電線の長手方向の前記一方に配置され、または、前記第2ストリップ刃よりも前記電線の長手方向の前記他方に配置されている。
【0037】
上記態様によれば、スリット刃は、第1ストリップ刃に対して切断刃が設けられている側と反対側、または、第2ストリップ刃に対して切断刃が設けられている側と反対側に配置されている。第1ストリップ刃の切断刃側と反対側、および、第2ストリップ刃の切断刃側と反対側には比較的スペースの余裕があるので、スリット刃の設置が容易となる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、電線を切断する処理と電線の中途部の被覆材を剥ぎ取る処理とを行うことができる電線処理装置において、それらの処理を迅速かつ効率的に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】実施形態に係る電線処理装置の構成を模式的に表す平面図である。
【
図4】電線処理装置の制御システムのブロック図である。
【
図5】電線を切断したときのカッター装置の主要部の右側面図である。
【
図6】ストリップ刃により電線を切り込んだときのカッター装置の主要部の右側面図である。
【
図7】電線の端部の被覆材を剥ぎ取るときのカッター装置の主要部の右側面図である。
【
図8】切断刃により被覆材の第1位置を切り込んだときのカッター装置の主要部の右側面図である。
【
図9】被覆材の第1位置が一対のスリット刃の間に来るように電線を後方に移動させたときのカッター装置の主要部の右側面図である。
【
図10】スリット刃により被覆材の第1位置を切り込んだときのカッター装置の主要部の右側面図である。
【
図11】スリット刃により被覆材を第1位置から第2位置まで切り裂いたときのカッター装置の主要部の右側面図である。
【
図12】スリット刃を退避位置に移動させたときのカッター装置の主要部の右側面図である。
【
図13】被覆材の第2位置が一対の切断刃の間に来るように電線を前方に移動させたときのカッター装置の主要部の右側面図である。
【
図14】切断刃により被覆材の第2位置を切り込んだときのカッター装置の主要部の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電線処理装置1の構成を模式的に表す平面図である。以下の説明では、
図1の右側、左側をそれぞれ前側、後側とする。
図1の上側、下側をそれぞれ左側、右側とする。図面中の符号F、Rは、それぞれ前方、後方を意味する。ただし、以下の説明における各方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、本発明を何ら限定するものではない。
【0041】
電線処理装置1は、伸線機25と、電線5を送り出す送給装置20と、電線クランプ装置30F,30Rと、カッター装置10と、圧着機13F,13Rと、制御装置9と、トレイ8とを備えている。
図2に示すように、電線5はいわゆる被覆電線であり、導体からなる芯線5aと、芯線5aの周囲を覆う絶縁体からなる被覆材5bとを含んでいる。
【0042】
伸線機25は、電線5の巻き癖を除去し、電線5を真っ直ぐに矯正する装置である。伸線機25は、千鳥状に配置された複数のローラを有している。
【0043】
送給装置20は、図示しないモータによって駆動される駆動ローラ21aと、従動ローラ21bと、駆動ローラ21aおよび従動ローラ21bに巻かれた搬送ベルト22とを、左右に一対備えている。駆動ローラ21aが搬送ベルト22を走行させることにより、左右の搬送ベルト22に挟まれた電線5が前方に送り出される。ただし、送給装置20は電線5を送り出すことができる装置であれば足り、その具体的構成は何ら限定されるものではない。
【0044】
電線クランプ装置30F,30Rは、電線5の把持と、電線5の長手方向CLに沿った移動(矢印A参照)と、鉛直線30cF,30cR周りの旋回(矢印B参照)とが可能な装置である。電線クランプ装置30Fは、電線5を把持する第1クランプ部材31Fと、第1クランプ部材31Fを電線5の長手方向CL(本実施形態では前後方向である)に移動させる第1クランプアクチュエータ32Fと、第1クランプ部材31Fを鉛直線30cF周りに旋回させる第1旋回アクチュエータ36F(
図4参照)とを備えている。電線クランプ装置30Rは、電線5を把持する第2クランプ部材31Rと、第2クランプ部材31Rを電線5の長手方向CLに移動させる第2クランプアクチュエータ32Rと、第2クランプ部材31Rを鉛直線30cR周りに旋回させる第2旋回アクチュエータ36R(
図4参照)とを備えている。
【0045】
カッター装置10は、電線5の切断、電線5の端部の被覆材5bの剥ぎ取り、および電線5の中途部の被覆材5bの剥ぎ取りを行うことができる装置である。カッター装置10の具体的な構成については後述する。
【0046】
圧着機13F,13Rは、電線5の端部に端子7を圧着する装置である。前述したように、電線クランプ装置30F,30Rは、鉛直線30cF,30cR周りに旋回可能に構成されている。圧着機13Fは、電線クランプ装置30Fに把持される電線5の前端部に端子7を圧着するように構成されている。圧着機13Rは、電線クランプ装置30Rに把持される電線5の後端部に端子7を圧着するように構成されている。
【0047】
トレイ8は、処理後の電線5を回収する箱体である。トレイ8は、例えば、両端に端子7が圧着された電線5や、中途部の被覆材5bが剥ぎ取られた電線5などを収容する。
【0048】
次に、カッター装置10の詳細な構成について説明する。
図3は、カッター装置10の右側面図である。カッター装置10は、上下一対の切断刃40A,40Bと、切断刃40A,40Bよりも後方に配置された上下一対の第1ストリップ刃41A,41Bと、切断刃40A,40Bよりも前方に配置された上下一対の第2ストリップ刃42A,42Bと、第1ストリップ刃41A,41Bの後方に配置された上下一対のスリット刃43A,43Bとを備えている。切断刃40A,40B、第1ストリップ刃41A,41B、第2ストリップ刃42A,42B、およびスリット刃43A,43Bは、電線5の長手方向CLに沿って配置されている。詳しくは、上側の切断刃40A、第1ストリップ刃41A、第2ストリップ刃42A、およびスリット刃43Aは前後方向に一列に配置され、下側の切断刃40B、第1ストリップ刃41B、第2ストリップ刃42B、およびスリット刃43Bは前後方向に一列に配置されている。また、カッター装置10は、フレーム31と、フレーム31に設けられた上下に延びるガイド15と、ガイド15に上下にスライド可能に係合した上ブロック33Aおよび下ブロック33Bと、上ブロック33Aおよび下ブロック33Bを互いに接近または離反させるように上下に駆動するメインアクチュエータ32とを備えている。
【0049】
上側の切断刃40A、第1ストリップ刃41A、および第2ストリップ刃42Aは、上ブロック33Aに支持されている。なお、本明細書では特に断らない限り、支持されているとは、直接支持されている場合と、他の部材を介して間接的に支持されている場合との両方が含まれるものとする。本実施形態では、上側の切断刃40A、第1ストリップ刃41A、および第2ストリップ刃42Aは、上ブロック33Aに間接的に支持されており、上ブロック33Aと共に上下に移動するように構成されている。上側のストリップ刃41A,42Aは、上側の切断刃40Aと共に上下に移動するように、上側の切断刃40Aに間接的に連結されている。下側の切断刃40B、第1ストリップ刃41B、および第2ストリップ刃42Bは、下ブロック33Bに支持されており、下ブロック33Bと共に上下に移動するように構成されている。下側の第1ストリップ刃41Bおよび第2ストリップ刃42Bは、下側の切断刃40Bと共に上下に移動するように、下側の切断刃40Bに間接的に連結されている。
【0050】
メインアクチュエータ32は、上ブロック33Aおよび下ブロック33Bを上下に駆動するものであればよく、その種類は何ら限定されない。本実施形態では、メインアクチュエータ32はサーボモータによって構成されている。メインアクチュエータ32は、上ブロック33Aおよび下ブロック33Bを互いに接近または離反させるように構成されている。上ブロック33Aと下ブロック33Bとが互いに接近するように移動すると、上側の切断刃40Aと下側の切断刃40B、上側の第1ストリップ刃41Aと下側の第1ストリップ刃41B、上側の第2ストリップ刃42Aと下側の第2ストリップ刃42Bは、それぞれ互いに接近するように移動する。すなわち、上ブロック33Aと下ブロック33Bとが互いに接近するように移動すると、切断刃40A,40B、第1ストリップ刃41A,41B、および第2ストリップ刃42A,42Bは、電線5に向けて移動する。逆に、上ブロック33Aと下ブロック33Bとが互いに離反するように移動すると、上側の切断刃40Aと下側の切断刃40B、上側の第1ストリップ刃41Aと下側の第1ストリップ刃41B、上側の第2ストリップ刃42Aと下側の第2ストリップ刃42Bは、それぞれ互いに離反するように移動する。すなわち、上ブロック33Aと下ブロック33Bとが互いに離反するように移動すると、切断刃40A,40B、第1ストリップ刃41A,41B、および第2ストリップ刃42A,42Bは、電線5から遠ざかるように移動する。
【0051】
上ブロック33Aには、上スリット刃支持部材34Aが固定されている。上スリット刃支持部材34Aは、上ブロック33Aと共に上下に移動するように構成されている。この上スリット刃支持部材34Aには、上側のスリット刃43Aが上下に移動可能に支持されている。上側のスリット刃43Aは、上側の切断刃40Aおよびストリップ刃41A,42Aよりも電線5に近づくスリット位置と、上側の切断刃40Aおよびストリップ刃41A,42Aよりも電線5から遠ざかる退避位置との間で上下に移動可能である。また、上スリット刃支持部材34Aには、上側のスリット刃43Aを上下に駆動するスリット刃アクチュエータ35Aが固定されている。
【0052】
下ブロック33Bには、下スリット刃支持部材34Bが固定されている。下スリット刃支持部材34Bは、下ブロック33Bと共に上下に移動するように構成されている。下スリット刃支持部材34Bには、下側のスリット刃43Bが上下に移動可能に支持されている。下側のスリット刃43Bは、下側の切断刃40Bおよびストリップ刃41B,42Bよりも電線5に近づくスリット位置と、下側の切断刃40Bおよびストリップ刃41B,42Bよりも電線5から遠ざかる退避位置との間で上下に移動可能である。また、下スリット刃支持部材34Bには、下側のスリット刃43Bを上下に駆動するスリット刃アクチュエータ35Bが固定されている。
【0053】
スリット刃アクチュエータ35A,35Bは、それぞれ上側、下側のスリット刃43A,43Bをスリット位置および退避位置に移動させることができる。本実施形態では、スリット刃アクチュエータ35A,35Bはエアシリンダによって構成されている。ただし、スリット刃アクチュエータ35A,35Bは、スリット刃43A,43Bをスリット位置および退避位置に移動させることができれば足り、エアシリンダに限定されない。スリット刃アクチュエータ35A,35Bは、例えば、ソレノイドまたはモータにより構成されていてもよい。
【0054】
図4に示すように、制御装置9は、伸線機25、送給装置20、電線クランプ装置30F,30R、カッター装置10、および圧着機13F,13Rと通信可能に接続されており、それらの動作を制御する。制御装置9は、電線処理装置1のための専用のコンピュータであってもよく、パーソナルコンピュータなどの汎用のコンピュータであってもよい。制御装置9は、切断制御部91、ストリップ刃切込制御部92、ストリップ制御部93、第1位置切込制御部94、第2位置切込制御部95、第1スリット刃制御部96、および第2スリット刃制御部97を有している。なお、これら各部91~97が行う処理については後述する。本実施形態では、これら各部91~97は、コンピュータが所定のプログラムを実行することにより実現される。
【0055】
次に、電線処理装置1が行う各処理について説明する。以下に説明するように、電線処理装置1は、電線5を切断する処理(切断処理)、切断された電線5の端部の被覆材5bを剥ぎ取る処理(端部ストリップ処理)、電線5の端部に端子7を圧着する処理(端子圧着処理)、および、電線5の中途部の被覆材5bを剥ぎ取る処理(中途部ストリップ処理)を行うことができる。以下に説明する各処理は、制御装置9によって実行される。
【0056】
まず、切断処理について説明する。切断処理では、制御装置9の切断制御部91が、スリット刃43A,43Bを退避位置に保持する。また、切断制御部91は、第1クランプ部材31Fおよび第2クランプ部材31Rにより電線5を把持し、切断刃40A,40Bが電線5に向けて移動するようにメインアクチュエータ32を駆動する。詳しくは、切断刃40A,40Bの互いの刃先が交差するまで、切断刃40A,40Bを互いに接近させる。すると、
図5に示すように、電線5は切断刃40A,40Bにより、後側の電線5と前側の電線5とに切断される。以上が切断処理である。
【0057】
続いて、
図6に示すように、制御装置9のストリップ刃切込制御部92が、第1ストリップ刃41A,41Bおよび第2ストリップ刃42A,42Bが電線5に向けて移動するようにメインチュエータ32を駆動する。これにより、後側の電線5の前端部の被覆材5bが、第1ストリップ刃41A,41Bにより周方向に切り込まれる。また、前側の電線5の後端部の被覆材5bが、第2ストリップ刃42A,42Bにより周方向に切り込まれる。次に、
図7に示すように、制御装置9のストリップ制御部93が、後側の電線5を把持している第1クランプ部材31Fを後方に移動させると共に、前側の電線5を把持している第2クランプ部材31Rを前方に移動させる。すると、後側の電線5は後方に引っ張られ、後側の電線5の前端部の被覆材5bは第1ストリップ刃41A,41Bにより剥ぎ取られる。また、前側の電線5は前方に引っ張られ、前側の電線5の後端部の被覆材5bは第2ストリップ刃42A,42Bにより剥ぎ取られる。このようにして、切断後の両電線5の端部の被覆材5bが剥ぎ取られる。以上が端部ストリップ処理である。
【0058】
制御装置9は、端部ストリップ処理が終わると、電線クランプ装置30Fおよび30Rを旋回させる(
図1参照)。電線クランプ装置30Fは、後側の電線5を把持したまま左側に旋回し、後側の電線5の前端部を圧着機13Fに導く。一方、電線クランプ装置30Rは、前側の電線5を把持したまま右側に旋回し、前側の電線5の後端部を圧着機13Rに導く。そして、圧着機13F,13Rにより、後側の電線5の前端部および前側の電線5の後端部に端子7が圧着される。以上が端子圧着処理である。
【0059】
その後、電線クランプ装置30Fは、後側の電線5を把持したままカッター装置10に対向する初期位置(
図1に示す位置)に戻り、当該電線5の把持を解除する。電線クランプ装置30Rは、前側の電線5の把持を解除した後、カッター装置10に対向する初期位置(
図1に示す位置)に戻る。なお、前側の電線5は、電線クランプ装置30Rによる把持が解除されると、落下してトレイ8に回収される。
【0060】
次に、中途部ストリップ処理について説明する。まず、制御装置9は、第1クランプ部材31Fおよび第2クランプ部材31Rにより電線5を把持する。次に、制御装置9の第1位置切込制御部94が、スリット刃43A,43Bを退避位置に保持しつつ、切断刃40A,40Bが電線5に向けて移動するようにメインアクチュエータ32を駆動する。詳しくは、切断刃40A,40Bの互いの刃先が交差する手前の位置まで、切断刃40A,40Bを互いに接近させる。すると、
図8に示すように、電線5の中途部の被覆材5bが周方向に切り込まれる。なお、以下では、この切り込み位置を第1位置P1と称する。
【0061】
次に、制御装置9は、
図9に示すように、切断刃40A,40Bを互いに離反させ、被覆材5bの第1位置P1とスリット刃43A,43Bの間の位置とが一致するまで、電線5を後方に移動させる。すなわち、被覆材5bの第1位置P1が上側のスリット刃43Aの真下の位置および下側のスリット刃43Bの真上の位置に一致するまで、電線5を後方に移動させる。
【0062】
また、制御装置9の第1スリット刃制御部96は、スリット刃アクチュエータ35A、35Bを駆動し、スリット刃43A,43Bを退避位置からスリット位置に移動させる。なお、スリット刃43A、43Bをスリット位置に移動させるタイミングは、電線5を後方に移動させる前であってもよく、後であってもよく、移動させている間であってもよい。次に、制御装置9の第1スリット刃制御部96は、上ブロック33Aと下ブロック33Bとが互いに接近するようにメインアクチュエータ32を駆動する。これにより、スリット刃43A、43Bは互いに接近するように移動する。第1スリット刃制御部96は、スリット刃43A,43Bが被覆材5bの第1位置P1に切り込みを入れるまで、スリット刃43A,43Bを電線5に向けて移動させる(
図10参照)。
【0063】
次に、制御装置9の第2スリット刃制御部97が、第1クランプアクチュエータ32Fおよび第2クランプアクチュエータ32Rを駆動することにより、スリット刃43A,43Bが被覆材5bを切り込んだ状態のまま、電線5を前方に移動させる。すると、
図11に示すように、被覆材5bはスリット刃43A,43Bにより、電線5の長手方向CLに沿って切り裂かれる。第2スリット刃制御部97は、スリット刃43A,43Bが被覆材5bの予め定められた第2位置P2に至るまで、電線5を前方に移動させる。これにより、被覆材5bの第1位置P1から第2位置P2にかけて、電線5が長手方向CLに切り裂かれる。
【0064】
次に、制御装置9は、
図12に示すように、上ブロック33Aと下ブロック33Bとが互いに離反するようにメインアクチュエータ32を駆動する。
【0065】
また、制御装置9の第2位置切込制御部95は、スリット刃アクチュエータ35A,35Bを駆動し、スリット刃43A,43Bをスリット位置から退避位置に移動させる。なお、スリット刃43A,43Bを退避位置に移動させるタイミングは、上ブロック33Aと下ブロック33Bとを互いに離反させる前であってもよく、後であってもよく、離反させている間であってもよい。また、制御装置9の第2位置切込制御部95は、
図13に示すように、被覆材5bの第2位置P2が切断刃40A,40Bの間の位置に一致するまで、電線5を前方に移動させる。すなわち、被覆材5bの第2位置P2が上側の切断刃40Aの真下の位置および下側の切断刃40Bの真上の位置に一致するまで、電線5を前方に移動させる。なお、電線5を前方に移動させるタイミングは、スリット刃43A,43Bを退避位置に移動させる前であってもよく、後であってもよく、移動させている間であってもよい。
【0066】
そして、制御装置9の第2位置切込制御部95は、スリット刃43A,43Bを退避位置に保持したまま、切断刃40A,40Bが電線5に向けて移動するようにメインアクチュエータ32を駆動する。詳しくは、切断刃40A,40Bの互いの刃先が交差する手前の位置まで、切断刃40A,40Bを互いに接近させる。これにより、
図14に示すように、被覆材5bが切断刃40A,40Bにより、第2位置P2において周方向に切り込まれる。その結果、電線5の中途部の被覆材5bは、第1位置P1および第2位置P2において周方向に切り込まれると共に、第1位置P1から第2位置P2にかけて電線5の長手方向CLに切り裂かれるので、被覆材5bの第1位置P1と第2位置P2との間の部分が剥ぎ取られる。すなわち、電線5の中途部分の被覆材5bが剥ぎ取られる。以上が中途部ストリップ処理である。
【0067】
なお、上記の中途部ストリップ処理を行うタイミングは特に限定されない。中途部ストリップ処理は、端部ストリップ処理および端子圧着処理と無関係に行ってもよい。また、中途部ストリップ処理は、切断処理の後に行ってもよく、端部ストリップ処理の後に行ってもよい。中途部ストリップ処理は、切断処理と端部ストリップ処理と端子圧着処理とを行った後に行ってもよい。なお、この場合、中途部ストリップ処理は後側の電線5に対して行われることになる。
【0068】
以上のように、本実施形態に係る電線処理装置1によれば、スリット刃43A,43Bをスリット位置と退避位置とに移動させるスリット刃アクチュエータ35A,35Bを備えている。切断刃40A,40Bとスリット刃43A,43Bとは電線5の長手方向CLに沿って配置されているが、スリット刃43A,43Bを退避位置に移動させることにより、スリット刃43A,43Bに邪魔されることなく、切断刃40A,40Bによって電線5の中途部の被覆材5bに周方向の切り込みを入れることができる。また、スリット刃43A,43Bをスリット位置に移動させることにより、切断刃40A,40Bに邪魔されることなく、スリット刃43A,43Bによって電線5の中途部の被覆材5bを長手方向に切り裂くことができる。したがって、本実施形態に係る電線処理装置1によれば、切断刃40A,40Bとスリット刃43A,43Bとを電線5の長手方向CLに沿って配置しながら、電線5の中途部の被覆材5bを剥ぎ取る処理(中途部ストリップ処理)を行うことができる。よって、中途部ストリップ処理において、電線5を長手方向CL(すなわち前後方向)に移動させれば足り、電線5を長手方向CLと垂直な方向(例えば左右方向)に移動させる動作は不要である。電線5を長手方向CLに移動させる動作は、長手方向CLと垂直な方向に移動させる動作に比べて、迅速かつ効率的に行うことができる。したがって、本実施形態に係る電線処理装置1によれば、中途部ストリップ処理を迅速かつ効率的に行うことができる。
【0069】
また、本実施形態に係る電線処理装置1によれば、電線5の長手方向CLに沿って配置された切断刃40A,40B、第1ストリップ刃41A,41B、および第2ストリップ刃42A,42Bにより、切断処理および端部ストリップ処理を行うことができる。切断処理から端部ストリップ処理に移行する際に、電線5を長手方向CLと垂直な方向に移動させる動作は不要である。また、切断処理または端部ストリップ処理から中途部ストリップ処理に移行する際、および、中途部ストリップ処理から切断処理または端部ストリップ処理に移行する際に、電線5を長手方向CLと垂直な方向に移動させる動作は不要である。したがって、本実施形態に係る電線処理装置1によれば、切断処理、端部ストリップ処理、および中途部ストリップ処理を迅速かつ効率的に行うことができる。
【0070】
本実施形態に係る電線処理装置1は、第1ストリップ刃41A,41Bおよびスリット刃43A,43Bよりも後方に配置された第1クランプ部材31Fと、第2ストリップ刃42A,42Bおよびスリット刃43A,43Bよりも前方に配置された第2クランプ部材31Rと、第1クランプ部材31Fを電線5の長手方向CLに移動させる第1クランプアクチュエータ32Fと、第2クランプ部材31Rを電線5の長手方向CLに移動させる第2クランプアクチュエータ32Rとを備えている。そのため、切断処理、両電線の端部ストリップ処理、および中途部ストリップ処理を良好に行うことができる。
【0071】
なお、切断刃40A,40B、第1ストリップ刃41A,41B、および第2ストリップ刃42A,42Bを駆動するアクチュエータと、スリット刃43A,43Bを電線5に向けて駆動するアクチュエータとは、別々であってもよい。しかし、本実施形態によれば、単一のメインアクチュエータ32がそれらのアクチュエータを兼用している。切断刃40A,40Bを駆動するメインアクチュエータ32により、スリット刃43A,43Bを電線5に向けて移動させて被覆材5bに切り込みを入れることができる。本実施形態によれば、アクチュエータの個数を削減することができ、電線処理装置1を低コスト化および小型化することができる。
【0072】
本実施形態では、スリット刃43A,43Bは第1ストリップ刃41A,41Bの後方に配置されている。すなわち、スリット刃43A,43Bは、第1ストリップ刃41A,41Bに対して切断刃40A,40Bが設けられている側と反対側に配置されている。第1ストリップ刃41A,41Bの切断刃40A,40B側と反対側には、比較的スペースの余裕がある。そのため、本実施形態によれば、スリット刃43A,43Bを容易に設置することができる。
【0073】
なお、スリット刃43A,43Bの位置は特に限定されない。スリット刃43A,43Bは第2ストリップ刃42A,42Bの前方に配置されていてもよい。すなわち、スリット刃43A,43Bは、第2ストリップ刃42A,42Bに対して切断刃40A,40Bが設けられている側と反対側に配置されていてもよい。この場合にも、スリット刃43A,43Bの設置が容易となる。
【0074】
一方、切断刃40A,40Bと第1ストリップ刃41A,41Bとの間に十分なスペースがある場合には、スリット刃43A,43Bを切断刃40A,40Bと第1ストリップ刃41A,41Bとの間に配置してもよい。また、切断刃40A,40Bと第2ストリップ刃42A,42Bとの間に十分なスペースがある場合には、スリット刃43A,43Bを切断刃40A,40Bと第2ストリップ刃42A,42Bとの間に配置してもよい。これにより、カッター装置10の前後方向の寸法を小さくすることができ、カッター装置10を小型化することができる。
【0075】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、前記実施形態は一例に過ぎない。本発明は、他にも様々な形態で実施することができる。次に、他の実施形態の例について簡単に説明する。
【0076】
前記実施形態では、切断刃40A,40B、第1ストリップ刃41A,41B、第2ストリップ刃42A,42B、およびスリット刃43A,43Bは、それぞれ上下に一対設けられている。しかし、切断刃40A,40B、第1ストリップ刃41A,41B、第2ストリップ刃42A,42B、またはスリット刃43A,43Bは、電線5を挟んで向かい合っていればよく、それらの一対の配置は上下に限定されない。例えば、切断刃40A,40B、第1ストリップ刃41A,41B、第2ストリップ刃42A,42B、およびスリット刃43A,43Bは、左右に一対設けられていてもよい。
【0077】
前記実施形態では、切断後の電線5の両端部の被覆材5bを同時に剥ぎ取ることができるように、切断刃40A,40Bの後方の第1ストリップ刃41A,41Bと、切断刃40A,40Bの前方の第2ストリップ刃42A,42Bとを備えている。しかし、切断刃40A,40Bの後方の第1ストリップ刃41A,41B、および、切断刃40A,40Bの前方の第2ストリップ刃42A,42Bのうち、いずれか一方はなくてもよい。すなわち、一対のストリップ刃は、切断刃40A,40Bの後方のみまたは前方のみに設けられていてもよい。
【0078】
前記実施形態では、カッター装置10は一対のスリット刃43A,43Bを備えている。しかし、電線5の中途部の被覆材5bを剥ぎ取ることができる限り、スリット刃43A,43Bのいずれか一方はなくてもよい。すなわち、カッター装置10が備えるスリット刃の個数は1つであってもよい。
【0079】
前記実施形態では、切断刃40A,40B、第1ストリップ刃41A,41B、および第2ストリップ刃42A,42Bを同一のアクチュエータ32によって駆動できるよう、第1ストリップ刃41A,41Bおよび第2ストリップ刃42A,42Bは切断刃40A,40Bに間接的に連結されている。しかし、第1ストリップ刃41A,41Bおよび第2ストリップ刃42A,42Bは、必ずしも切断刃40A,40Bに連結されていなくてもよい。切断刃40A,40Bを駆動するアクチュエータと、第1ストリップ刃41A,41Bまたは第2ストリップ刃42A,42Bを駆動するアクチュエータとは、異なっていてもよい。
【0080】
また、前記実施形態では、切断刃40A,40Bおよびスリット刃43A,43Bを同一のアクチュエータ32によって駆動できるよう、スリット刃43A,43Bは、上ブロック33Aに固定された上スリット刃支持部材34A、下ブロック33Bに固定された下スリット刃支持部材34Bにそれぞれ支持されている。しかし、スリット刃43A,43Bを移動可能に支持する上スリット刃支持部材および下スリット刃支持部材は、必ずしも上ブロック33A、下ブロック33Bにそれぞれ固定されていなくてもよい。切断刃40A,40Bを駆動するアクチュエータと、スリット刃43A,43Bを駆動するアクチュエータとは、異なっていてもよい。
【0081】
前記実施形態では、中途部ストリップ処理の際に、被覆材5bの第1位置P1を周方向に切り込んだ後、第1位置P1から第2位置P2まで長手方向CLに切り裂き、その後に第2位置P2を周方向に切り込むこととしていた。しかし、中途部ストリップ処理では、第1位置P1および第2位置P2の周方向の切り込みと、第1位置P1から第2位置P2に至る長手方向CLの切り裂きとを結果的に行えばよく、それらの順序は特に限定されない。例えば、第1位置P1および第2位置P2の周方向の切り込みを行った後に、第1位置P1から第2位置P2への切り裂きを行ってもよい。また、第1位置P1から第2位置P2への切り裂きを行った後、第1位置P1および第2位置P2の周方向の切り込みを行ってもよい。スリット刃43A,43Bが被覆材5bを前方および後方のいずれにも切り裂くことができるように構成されている場合、スリット刃43A,43Bが被覆材5bを切り裂き始める位置は第1位置P1と第2位置P2との間の任意の位置であってもよい。被覆材5bに対してスリット刃43A,43Bを相対的に前方および後方に移動させることとすれば、スリット刃43A,43Bが被覆材5bを切り裂き始める位置は第1位置P1または第2位置P2に限定されない。スリット刃43A,43Bは、結果として被覆材5bを第1位置P1から第2位置P2にわたって切り裂くことができればよい。
【0082】
前記実施形態では、第1クランプ部材31Fおよび第2クランプ部材31Rは、端子圧着処理のために旋回するように構成されていたが、特に限定されない。第1クランプ部材31Fまたは第2クランプ部材31Rは、例えば、左右方向に移動するように構成されていてもよい。
【0083】
端部ストリップ処理が不要な場合、カッター装置10の第1ストリップ刃41A,41Bおよび第2ストリップ刃42A,42Bはなくてもよい。
【0084】
第1クランプアクチュエータ32Fは、第1クランプ部材31Fとカッター装置10とを電線5の長手方向CLに沿って相対移動させるものであればよく、第1クランプ部材31Fを移動させるものに限定されない。第1クランプアクチュエータ32Fは、カッター装置10を電線5の長手方向CLに移動させるものであってもよい。同様に、第2クランプアクチュエータ32Rは、第2クランプ部材31Rとカッター装置10とを電線5の長手方向CLに沿って相対移動させるものであればよく、第2クランプ部材31Rを移動させるものに限定されない。第2クランプアクチュエータ32Rは、カッター装置10を電線5の長手方向CLに移動させるものであってもよい。
【0085】
前記実施形態では、中途部ストリップ処理のときにスリット刃43A,43Bを電線5の被覆部5bに突き刺す際に、まず、スリット刃アクチュエータ35A,35Bを駆動することによりスリット刃43A,43Bをスリット位置に移動させ、その後、メインアクチュエータ32を駆動することにより、スリット刃43A,43Bを電線5に近づけることとしている。しかし、スリット刃43A,43Bを電線5の被覆部5bに突き刺す動作は特に限定されない。例えば、まず、メインアクチュエータ32を駆動することによりスリット刃43A,43Bを電線5に近づけ、その後、スリット刃アクチュエータ35A,35Bを駆動することにより、スリット刃43A,43Bを電線5の被覆部5bに突き刺すようにしてもよい。
【0086】
圧着機13F,13Rは必ずしも必要ではない。端子7の圧着が不要の場合、圧着機13F,13Rを省略してもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 電線処理装置
5 電線
5b 被覆材
9 制御装置
31F 第1クランプ部材
31R 第2クランプ部材
32 メインアクチュエータ
32F 第1クランプアクチュエータ
32R 第2クランプアクチュエータ
34A,34B スリット刃支持部材
35A,35B スリット刃アクチュエータ
40A,40B 切断刃
41A,41B 第1ストリップ刃
42A,42B 第2ストリップ刃
43A,43B スリット刃