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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】多関節ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/06 20060101AFI20220913BHJP
   B25J 19/00 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
B25J9/06 D
B25J19/00 H
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020562286
(86)(22)【出願日】2018-12-28
(86)【国際出願番号】 JP2018048548
(87)【国際公開番号】W WO2020136891
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】早川 慶
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-288990(JP,A)
【文献】特開平02-145284(JP,A)
【文献】特開平07-075992(JP,A)
【文献】特開平09-094791(JP,A)
【文献】特開2000-141270(JP,A)
【文献】特開2002-224989(JP,A)
【文献】特開2005-205576(JP,A)
【文献】特開2008-141095(JP,A)
【文献】特開2018-034268(JP,A)
【文献】特開2015-123549(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0200014(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 9/06-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空構造のベース部と、このベース部に連結される中空構造の第1アーム部とを備えた多関節ロボットであって、
前記ベース部に固定される第1部材と、この第1部材に所定間隔を隔てて対向した状態で前記第1アーム部に固定される第2部材とを備えた中空構造を有し、かつ前記ベース部と前記第1アーム部とを第1回転軸回りに相対回転可能に連結する第1関節部材と、
前記ベース部の内部に空気を導入すべく当該ベース部に設けられた空気導入部と、
前記第1関節部材の内部を通じて前記ベース部と前記第1アーム部とを連通させる第1連絡通路と、
前記ベース部の内部と前記第1関節部材の内部、又は前記第1アーム部の内部と前記第1関節部材の内部とを、前記第1連絡通路とは異なる位置で連通させる通路であって、第1関節部材側の通路面積が反関節部材側の通路面積よりも小さくなる部分を有した第1オリフィス通路と、を備えている、ことを特徴とする多関節ロボット。
【請求項2】
請求項1に記載の多関節ロボットにおいて、
前記第1オリフィス通路は、前記ベース部の内部と前記第1関節部材の内部、又は前記第1アーム部の内部と前記第1関節部材の内部とを連通させる孔部と、この孔部に着脱可能に装着されたオリフィス継手とにより構成される、ことを特徴とする多関節ロボット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の多関節ロボットにおいて、
前記第1関節部材は、円環状の構造を有する減速機からなり、
前記第1連絡通路は、前記減速機の内側を貫通するように前記第1回転軸に沿って前記ベース部から前記第1アーム部に亘って延在する中空軸により形成されている、ことを特徴とする多関節ロボット。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の多関節ロボットにおいて、
前記第1アーム部に連結される中空構造の第2アーム部と、
前記第1アーム部に固定される第3部材と、この第3部材に所定間隔を隔てて対向した状態で前記第2アーム部に固定される第4部材とを備えた中空構造を有し、かつ前記第1アーム部と前記第2アーム部とを第2回転軸回りに相対回転可能に連結する第2関節部材と、
前記第1アーム部に導入される空気を前記第2関節部材の内部を通じて前記第2アーム部に導入する第2連絡通路と、
前記第1アーム部の内部と前記第2関節部材の内部、又は前記第2アーム部の内部と前記第2関節部材の内部とを、前記第2連絡通路とは異なる位置で連通させる通路であって、第2関節部材側の通路面積が反第2関節部材側の通路面積よりも小さくなる部分を有した第2オリフィス通路と、を備えている、ことを特徴とする多関節ロボット。
【請求項5】
請求項4に記載の多関節ロボットにおいて、
前記第2オリフィス通路は、前記第1アーム部の内部と前記第2関節部材の内部、又は前記第2アーム部の内部と前記第2関節部材の内部とを連通させる孔部と、この孔部に着脱可能に装着されたオリフィス継手とにより構成される、ことを特徴とする多関節ロボット。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の多関節ロボットにおいて、
前記第2関節部材は、円環状の構造を有する減速機かなり、
前記第2連絡通路は、前記減速機の内側を貫通するように前記第1アーム部から前記第2アーム部に亘って延在する中空軸により形成されている、ことを特徴とする多関節ロボット。
【請求項7】
請求項乃至6の何れか一項に記載の多関節ロボットにおいて、
前記第2アーム部に連結される中空構造のツール装着部と、
前記第2アーム部に固定される第5部材と、この第5部材に所定間隔を隔てて対向した状態で前記ツール装着部に固定される第6部材とを備えた中空構造を有し、かつ前記第2アーム部と前記ツール装着部とを第3回転軸回りに相対回転可能に連結する第3関節部材と、
前記第2アーム部に導入される空気を前記第3関節部材の内部を通じて前記ツール装着部に導入する第3連絡通路と、
前記第2アーム部の内部と前記第3関節部材の内部、又は前記ツール装着部の内部と前記第3関節部材の内部とを、前記第3連絡通路とは異なる位置で連通させる通路であって、第3関節部材側の通路面積が反第3関節部材側の通路面積よりも小さくなる部分を有した第3オリフィス通路と、を備えている、ことを特徴とする多関節ロボット。
【請求項8】
請求項7に記載の多関節ロボットにおいて、
前記第3オリフィス通路は、前記第2アーム部の内部と前記第3関節部材の内部、又は前記ツール装着部の内部と前記第3関節部材の内部とを連通させる孔部と、この孔部に着脱可能に装着されたオリフィス継手とにより構成される、ことを特徴とする多関節ロボット。
【請求項9】
中空構造のベース部と、このベース部に連結される第1アーム部とを備えた多関節ロボットであって、
前記ベース部に固定される第1部材と、この第1部材に所定間隔を隔てて対向した状態で前記第1アーム部に固定される第2部材とを備えた中空構造を有し、かつ前記ベース部と前記第1アーム部とを第1回転軸回りに相対回転可能に連結する関節部材と、
前記ベース部の内部に空気を導入すべく当該ベース部に設けられた空気導入部と、
前記ベース部の内部と前記関節部材の内部とを連通させる通路であって、関節部材側の通路面積がベース部側の通路面積よりも小さくなる部分を有したオリフィス通路と、を備えている、ことを特徴とする多関節ロボット。
【請求項10】
請求項9に記載の多関節ロボットにおいて、
前記オリフィス通路は、前記ベース部の内部と前記関節部材の内部とを連通させる孔部と、この孔部に着脱可能に装着されたオリフィス継手とにより構成される、ことを特徴とする多関節ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多関節ロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットとして多関節ロボットが公知である。特許文献1には、多関節ロボットの一例として、垂直多関節ロボット(以下、ロボットと略す)が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されるロボットは、ベース部(基台部)と、このベース部に水平軸回りに回転可能に連結される第1アーム部と、この第1アーム部の先端に、水平軸回りに回転可能に連結される第2アーム部と、この第2アーム部の先端に回転可能に連結された手首部と、を備えている。
【0004】
特許文献1には、ロボットのベース部、第1、第2のアーム部及び手首部を中空構造とし、ベース部からロボット内に空気を送り込んで内部を正圧とすることで、外部からの粉塵の侵入を防止することが記載されている。つまり、アーム部同士の連結部分など、完全にシール(密閉)することが困難な非シール部分においては、ロボット内部から空気を積極的に噴出させることにより、ロボット内部への粉塵の侵入を防止するというものである。
【0005】
しかし、ベース部から空気を送り込むだけでは、所望の非シール部分から空気を適切に漏出させることは実際には難しい。すなわち、ベース部に形成される部材間の隙間などから無秩序に空気が漏出する結果、所望の非シール部からの空気の噴出量が減少し、意図するような防塵効果を得ることができない場合がある。また、アーム先端側への空気の流動が促進されないために、当該アーム先端側の非シール部分において意図するような防塵効果を得ることができない場合がある。
【0006】
なお、ロボット内に空気配管を設けて所望の非シール部まで確実に空気を導くことも考えられるが、狭いロボット内部に空気配管を設けることは実際には難しい。また、空気配管を設けたことで第1、第2アーム部の重量が増大し、当該アーム部の作動速度に影響するという弊害もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2000-141270号公報
【発明の概要】
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みて成されたものであって、内部の空気圧によって外部からの粉塵の侵入を防止する多関節ロボットに関し、より高度に外部からの粉塵の侵入を抑制することができる技術を提供することを目的としている。
【0009】
そして、本発明は、中空構造のベース部と、このベース部に連結される中空構造の第1アーム部とを備えた多関節ロボットであって、前記ベース部に固定される第1部材と、この第1部材に所定間隔を隔てて対向した状態で前記第1アーム部に固定される第2部材とを備えた中空構造を有し、前記ベース部と前記第1アーム部とを第1回転軸回りに相対回転可能に連結する第1関節部材と、前記ベース部の内部に空気を導入すべく当該ベース部に設けられた空気導入部と、前記第1関節部材の内部を通じて前記ベース部と前記第1アーム部とを連通させる第1連絡通路と、前記ベース部の内部と前記第1関節部材の内部、又は前記第1アームと前記第1関節部材の内部とを、前記第1連絡通路とは異なる位置で連通させる通路であって、第1関節部材側の通路面積が反関節部材側の通路面積よりも小さくなる部分を有した第1オリフィス通路と、を備えているものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明に係る多関節ロボットが適用された産業用ロボットの側面図である。
図2図2は、産業用ロボットの断面図である。
図3図3は、産業用ロボットの斜視図(斜め下から視た状態)である。
図4図4は、産業用ロボットの断面拡大図である。
図5図5は、産業用ロボットの断面拡大図である。
図6図6は、スカラロボット内の空気の流を示す産業用ロボットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1図3は、本発明に係る多関節ロボットが適用された産業用ロボットを示しており、図1は側面図で、図2は断面図で、図3は斜視図で各々産業用ロボットを示している。なお、各図中には、説明の便宜上、XYZの直角座標系を示している。当例では、Z方向は上下方向である。
【0012】
産業用ロボット1は、多関節ロボットの一種であるスカラロボット(水平多関節ロボット)2と、このスカラロボット2を直動(直線的に移動)させる単軸ロボット3とを備えた複合型ロボットである。当例では、単軸ロボット3は、スカラロボット2をZ方向に移動(昇降)させる。
【0013】
[単軸ロボット3の構成]
単軸ロボット3は、Z方向に延在する構造体を含む中空のケーシング10と、このケーシング10に沿ってZ方向に移動可能に支持されるスライダ12と、このスライダ12を駆動する駆動機構14とを含む。
【0014】
スライダ12は、ケーシング10の内壁面に固定されたZ方向に延在する一対のガイドレール(図示省略)に移動自在に支持されている。ケーシング10の側面には、Z方向に延在するスリット状の開口部10aが形成されており、スライダ12の一部は、当該開口部10aを介して外部に露出している。
【0015】
前記駆動機構14は、いわゆる送りねじ機構であり、スライダ12に組込まれたナット部材12aと、このナット部材12aに挿入されて前記ガイドレールと平行に延在するねじ軸16と、このねじ軸16の一端に連結された電動モータ18とを含む。つまり、駆動機構14は、モータ18によりねじ軸16を回転させ、このねじ軸16の回転運動を、ナット部材12a及びガイドレールを介してスライダ12のZ方向の直線運動に変換する。この構成によりスライダ12がZ方向に移動する。
【0016】
[スカラロボット2の構成]
スカラロボット2は、ベース部20と、このベース部20に連結されたロボットアーム22とを含む。ベース部20は、単軸ロボット3の前記スライダ12に固定されており、これにより、スカラロボット2が、スライダ12の移動に伴い当該スライダ12と共にZ方向に移動する。
【0017】
ロボットアーム22は、ベース部20に対して第1回転軸Ax1回りに回転可能に連結された第1アーム部23と、この第1アーム部23に対して第2回転軸Ax2回りに回転可能に連結された第2アーム部24と、この第2アーム部24に対して第3回転軸Ax3回りに回転可能に連結されたツール装着部25とを備えている。ツール装着部25は、ロボットハンド等などの各種用途に応じたエンドエフェクタが着脱自在に装着される部分である。なお、第1回転軸Ax1、第2回転軸Ax2及び後述する第3回転軸Ax3は、Z方向に延びる互いに平行な仮想軸である。
【0018】
第1アーム部23は、水平方向(Z方向と直交する方向)に延在する側面視長方形の剛性を有した中空の箱型構造体からなるケーシング231を有し、第2アーム部24もまた、水平方向に延在する剛性を有した中空の箱型構造体からなるケーシング241を有している。第1アーム部23は、その長手方向の一端部(基端部)で後記第1減速機40を介してベース部20に連結されており、第2アーム部24は、その一端部(基端部)で後記第2減速機50を介して第1アーム部23の先端部に連結されている。ツール装着部25は、第2アーム部24の先端部に後記第3減速機70を介して連結されている。
【0019】
スカラロボット2は、第1アーム部23の駆動源である第1モータ31と、この第1モータ31が発生する回転力を前記第1アーム部23に伝達する第1動力伝達機構PT1とを備えている。また、スカラロボット2は、第2アーム部24の駆動源である第2モータ32と、この第2モータ32が発生する回転力を前記第2アーム部23に伝達する第2動力伝達機構PT2とを備えている。また、スカラロボット2は、ツール装着部25の駆動源である第3モータ33と、この第3モータ31が発生する回転力をツール装着部25に伝達する第3動力伝達機構PT3とを備えている。
【0020】
第1~第3のモータ31~33は全てベース部20に搭載されている。ベース部20は、下方に開口した中空かつ箱形の剛性を有した構造体からなるケーシング201を備えており、モータ31~33は、第1回転軸Ax1を中心としてその周囲に配置され、各々、ブラケットを介してケーシング201の天井部202に固定されている。具体的には、第1モータ31は、第1回転軸Ax1に対してX方向に隣接する位置に配置されている。第2モータ32及び第3モータ33は、第1回転軸Ax1を挟んでY方向に並ぶ位置に各々配置されている。ケーシング201の下面には、カバー203が着脱可能に固定されている。
【0021】
[第1動力伝達機構PT1の構成]
図4は産業用ロボット1の断面拡大図である。この図に示すように、前記第1動力伝達機構PT1は、ベース部20とロボットアーム22との間に介設された第1減速機40と、第1モータ31の出力軸31aの回転を第1減速機40に伝達する第1伝動機構46とを含む。
【0022】
第1減速機40(本発明の第1関節部材に相当する)は、波動歯車減速機構からなる減速機本体42と、この減速機本体42が組み込まれた、剛性を有する構造体からなるケーシング44とを含み、第1回転軸Ax1に沿って貫通した概略円環状の構造を有している。
【0023】
ケーシング44は、周壁部を備えた有天円筒状の上部ケーシング45a(本発明の第1部材に相当する)と、周壁部を備えた有底円筒状の下部ケーシング45b(本発明の第2部材に相当する)とを含み、周壁部同士の間にラビリンス状の隙間44aが形成されるように、これら上、下のケーシング45a、45bが向かい合わせに配置された中空構造を有する。上部ケーシング45aは、第1アーム部23のケーシング231の下面232に固定されており、下部ケーシング45bは、ベース部20のケーシング201の上面に固定されている。
【0024】
減速機本体42は、ウェーブジェネレータ、サーキュラスプライン、フレクススプラインなどを備えた周知の波動歯車減速機構からなる。減速機本体42は、ケーシング44の内部に組み込まれている。ウェーブジェネレータは、第1モータ31の回転力の入力部であり、上部ケーシング45aは、減速後の回転力の出力部とされる。すなわち、第1減速機40は、入力部(ウェーブジェネレータ)に入力される回転力の回転速度を減速して出力部(上部ケーシング45a)から出力させる。
【0025】
前記第1伝動機構46はベルト伝動機構である。すなわち、第1伝動機構46は、第1モータ31の出力軸31aに固定されたプーリ47aと、第1減速機36の入力部に固定されたプーリ47bと、これらプーリ47a、47bとに掛け渡された伝動ベルト48とを含む。
【0026】
この構成により、第1モータ31の出力軸31aの回転が、第1減速機40の入力部に伝達され、この第1減速機40で回転速度が減速されながら第1アーム部23に伝達される。これにより、第1アーム部23が、ベース部20に対して所定の回転速度で第1回転軸Ax1回りに回転(旋回)する。
【0027】
[第2動力伝達機構PT2の構成]
前記第2動力伝達機構PT2は、図2に示すように、第1アーム部23と第2アーム部24との間に介設された第2減速機50と、ベース部20から第1アーム部23に亘って第1減速機40の内側を貫通して延在する第1伝動軸56と、前記第2モータ32の出力軸32a(図示省略)の回転を、ベース部20において第1伝動軸56に伝動するとともに、当該第1伝動軸56の回転を、第1アーム部23において第2減速機50に伝動する第2伝動機構57と、を含む。
【0028】
図5は産業用ロボット1の断面拡大図である。この図に示すように、第2減速機50(本発明の第2関節部材に相当する)は、波動歯車減速機構からなる減速機本体52と、この減速機本体52が組み込まれた、剛性を有する構造体からなるケーシング54とを含み、全体が第2回転軸Ax2に沿って貫通した概略円環状の構造を有している。この第2減速機50の基本的な構造は、第1減速機40の構造と基本的に共通している。
【0029】
ケーシング54は、周壁部を備えた有天円筒状の上部ケーシング55a(本発明の第3部材に相当する)と、周壁部を備えた有底円筒状の下部ケーシング55b(本発明の第4部材に相当する)とを含み、周壁部同士の間にラビリンス状の隙間54aが形成されるように、これら上、下のケーシング55a、55bが向かい合わせに配置された中空構造を有する。上部ケーシング55aは、第1アーム部23のケーシング231の下面232に固定されており、下部ケーシング55bは、第2アーム部24のケーシング241の上面243に固定されている。
【0030】
減速機本体52は、ウェーブジェネレータ、サーキュラスプライン、フレクススプラインなどを備えた周知の波動歯車減速機構からなる。減速機本体52は、ケーシング54の内部に組み込まれている。ウェーブジェネレータは、第2モータ32の回転力の入力部であり、フレクススプラインが固定される上部ケーシング55aが、減速後の回転力の出力部とされる。すなわち、第2減速機50は、入力部(ウェーブジェネレータ)に入力される回転力の回転速度を減速して出力部(上部ケーシング55a)から出力させる。なお、第2減速機50では、上部ケーシング45aが第1アーム部23に固定されているため、サーキュラスプラインが固定される下部ケーシング45bが相対的に回転することで回転力が第2アーム部24に伝達される。
【0031】
前記第2伝動機構57はベルト伝動機構である。すなわち、第2伝動機構57は、図3図5に示すように、第2モータ32の出力軸32aに固定されたプーリ58aと、ベース部20において第1伝動軸56の下端部に固定されたプーリ58bと、これらプーリ58a、58bとに掛け渡された伝動ベルト59とを含む。また、第2伝動機構57は、第1アーム部23において、第1伝動軸56の上端部に固定されたプーリ61aと、第2減速機50の入力部に固定されたプーリ61bと、これらプーリ61a、61bとに掛け渡された伝動ベルト62とを含む。
【0032】
前記第1伝動軸56は中空軸からなり、第1動力伝達機構PT1の第1減速機40及び第1伝動機構46のプーリ47bを貫通してZ方向に延在している。第1伝動軸56は、第1減速機40の上部ケーシング45a及び第1伝動機構46のプーリ47bにベアリングを介して相対回転が可能な状態で保持されている。
【0033】
この構成により、第2モータ32の出力軸32aの回転が、第1アーム部23を通じて第2減速機50の入力部(ウェーブジェネレータ)に伝達され、この第2減速機50で回転速度が減速されながら第2アーム部24に伝達される。これにより、第2アーム部24が第1アーム部23に対して所定の回転速度で第2回転軸Ax2回りに回転(旋回)する。
【0034】
[第3動力伝達機構PT3の構成]
前記第3動力伝達機構PT3は、第2アーム部24とツール装着部25との間に介設された第3減速機70と、第1伝動軸56と同心上に配置されて、ベース部20から第1アーム部23に亘って第1減速機40の内側を貫通して延在する第2伝動軸76と、第1アーム部23から第2アーム部24に亘って第2減速機50の内側を貫通して延在する第3伝動軸77と、前記第3モータ33の出力軸33a(図示省略)の回転を、ベース部20において第2伝動軸76に伝動し、当該第2伝動軸76の回転を、第1アーム部23において第3伝動軸77に伝動し、当該第3伝動軸77の回転を、第2アーム部において第3減速機70に伝動する第3伝動機構78と、を含む。
【0035】
図5及び図6に示すように、第3減速機70(本発明の第3関節部材に相当する)は、波動歯車減速機構からなる減速機本体72と、この減速機本体72が組み込まれた、剛性を有する構造体からなるケーシング74とを含み、全体が第3回転軸Ax3に沿って貫通した概略円環状の構造を有している。この第3減速機70の基本的な構造は、第1、第2の減速機40、50の構造と基本的に共通している。
【0036】
ケーシング74は、周壁部を備えた有天円筒状の上部ケーシング75a(本発明の第5部材に相当する)と、周壁部を備えた有底円筒状の下部ケーシング75b(本発明の第6部材に相当する)とを含み、周壁部同士の間にラビリンス状の隙間74aが形成されるように、これら上、下のケーシング75a、75bが向かい合わせに配置された中空構造を有する。上部ケーシング75aは、第2アーム部24のケーシング241の下面242に固定されており、下部ケーシング75bは、ツール装着部25の上部に固定されている。
【0037】
減速機本体72は、ウェーブジェネレータ、サーキュラスプライン、フレクススプラインなどを備えた周知の波動歯車減速機構からなる。減速機本体72は、ケーシング74の内部に組み込まれている。ウェーブジェネレータは、第3モータ33の回転力の入力部であり、フレクススプラインが固定される上部ケーシング75aが、減速後の回転力の出力部とされる。すなわち、第3減速機70は、入力部(ウェーブジェネレータ)に入力される回転力の回転速度を減速して出力部(上部ケーシング75a)から出力させる。なお、第3減速機70では、上部ケーシング75aが第2アーム部24に固定されているため、サーキュラスプラインが固定される下部ケーシング75bが相対的に回転することで回転力がツール装着部25に伝達される。
【0038】
前記第3伝動機構78はベルト伝動機構である。すなわち、第3伝動機構78は、図3図5に示すように、第3モータ33の出力軸33aに固定されたプーリ79aと、ベース部20において第2伝動軸76の下端部に固定されたプーリ79bと、これらプーリ79a、79bとに掛け渡された伝動ベルト80とを含む。また、第3伝動機構78は、第1アーム部23において第2伝動軸76の上端部に固定されたプーリ82aと、第3伝動軸77の上端部に固定されたプーリ82bと、これらプーリ82a、82bとに掛け渡された伝動ベルト83とを含む。さらに、第3伝動機構78は、第2アーム部24において、第3伝動軸77の下端部に固定されたプーリ84aと、第3減速機70の入力部に固定されたプーリ84bと、これらプーリ84a、84bとに掛け渡された伝動ベルト85とを含む。
【0039】
前記第2伝動軸76は、外径が前記第1伝動軸56の内径よりも小さい中空軸からなり、第1伝動軸56の内側を貫通してZ方向に延在している。第2伝動軸76と第1伝動軸56とは、第1回転軸Ax1を中心とする同心円状に配置されている。第2伝動軸76は、第1伝動軸56にベアリングを介して相対回転が可能な状態で保持されている。
【0040】
第3伝動軸77は中空軸からなり、第2動力伝達機構PT2の第1伝動機構46のプーリ61b及び第2減速機50を貫通してZ方向に延在している。第3伝動軸77は、第1伝動機構46のプーリ61b及び第2減速機50の下部ケーシング55bにベアリングを介して相対回転が可能な状態で保持されている。
【0041】
この構成により、第3モータ33の出力軸33aの回転が、第1アーム部23及び第2アーム部24を通じて第3減速機70の入力部(ウェーブジェネレータ)に伝達され、この第3減速機70で回転速度が減速されながらツール装着部25に伝達される。これにより、ツール装着部25が第2アーム部24に対して所定の回転速度で第3回転軸Ax3回りに回転する。
【0042】
なお、第3動力伝達機構PT3の第2伝動軸76の内側には、当該第2伝動軸76を貫通してベース部20から第1アーム部23に亘って延在する、中空軸からなる第1配線保護軸90が配置されている。また、第3伝動軸77の内側には、当該第3伝動軸77を貫通して第1アーム部23から第2アーム部24に亘って延在する、中空軸からなる第2配線保護軸94が配置されている。第1配線保護軸90、第2伝動軸76及び第1伝動軸56は、共に断面円形の中空軸(円筒体)であり、これら第1配線保護軸90、第2伝動軸76及び第1伝動軸56は、第1回転軸Ax1を中心とする同心円状にこの順番で内側から配置されている。また、第2配線保護軸94及び第3伝動軸77は、共に断面円形の中空軸(円筒体)であり、これら第2配線保護軸94及び第3伝動軸77は、第2回転軸Ax2を中心とする同心円状にこの順番で内側から配置されている。
【0043】
これら第1、第2の配線保護軸90、94は、スカラロボット2内に配索される電線類、すなわちツール装着部25に装着されるツール駆動用の電線及び/又は可撓性を有するパイプ(チューブ)を保護するものである。パイプは、例えば圧縮空気などの給排に用いられるものである。図示を省略するが、スカラロボット2の内部には、この電線類がベース部20からツール装着部25に亘って配索されている。概略的には、ベース部20から第1配線保護軸90、第1アーム部23、第2配線保護軸94、第2アーム部24及び第3減速機70を通過するように電線類が配索されている。
【0044】
第1、第2の配線保護軸90、94は、後述する通り、ベース部20内に導入される空気(クリーンエア)をロボットアーム22に亘って流動させる機能も備える。すなわち、第1配線保護軸90は、ベース部20に導入されるエアを第1減速機40の内部を通じて第1アーム部23に導入する第1連絡通路101を形成し、第2配線保護軸94は、第1アーム部23に導入されるエアを第2減速機50の内部を通じて第2アーム部24に導入する第2連絡通路102を形成する。
【0045】
第1配線保護軸90は、第3動力伝達機構PT3のプーリ79bに固定された連結部材91にベアリング92を介して相対回転可能に支持されている。また、第2配線保護軸94は、第3動力伝達機構PT3のプーリ84aに固定された連結部材95にベアリング96を介して相対回転可能に支持されている。両配線保護軸90、94の上端部は、第1アーム部23のケーシング231に対して回転不能に連結されている。
【0046】
[スカラロボット2の防塵構造]
図2及び図4に示すように、ベース部20には空気導入部110が設けられている。この空気導入部110には、図外のコンプレッサ等に清浄フィルタ等を介して接続された空気供給ホース112の末端部分が接続されている。これにより、一定圧力の空気(クリーンエア)がベース部20の内部に導入されるようになっている。
【0047】
ベース部20内に導入された空気は、図6中に実線矢印(符号FL1)で示すように、第1配線保護軸90からなる第1連絡通路101(図4参照)を通じて第1アーム部23の内部に導入され、さらに配線保護軸94からなる第2連絡通路102(図5参照)を通じて第1アーム部23から第2アーム部24に導入され、さらに第3減速機70の内側の空間(第3連絡通路103という/図5参照)を通じてツール装着部25に導入されることとなる。これにより、スカラロボット2の内部全体が正圧となり、スカラロボット2に形成される各種隙間から外部に空気が噴出(漏出)し、スカラロボット2の内部への粉塵の侵入が防止されるようになっている。
【0048】
なお、このスカラロボット2には、第1~第3の減速機40、50、70の前記隙間44a、54a、74aから適切に空気が噴射されるように、ベース部20の内部と第1減速機40の内部とを連通させる第1オリフィス通路120と、第2アーム部24の内部と第2減速機50の内部とを連通させる第2オリフィス通路130と、ツール装着部25の内部と第3減速機70の内部とを連通させる第3オリフィス通路140とが設けられている。
【0049】
図4に示すように、第1オリフィス通路120は、第1減速機40のケーシング44の周壁部近傍の位置に設けられたZ方向に延在する通路である。この第1オリフィス通路120は、第1減速機40側の通路面積が反第1減速機40側(ベース部20側)の通路面積よりも小さくなる部分を備えた通路である。具体的には、第1オリフィス通路120は、第1減速機40のケーシング44(下部ケーシング45b)及びベース部20のケーシング231に、これらをZ方向に貫通するように形成された一定径の孔部121と、ベース部20の内部においてこの孔部121に着脱可能に螺着されたオリフィス継手122とで構成されている。なお、「オリフィス継手」とは、内部に通路を有しかつ当該通路の径が一方側から他方側に向かって急激に狭まる部分を有した円筒状の部材である。
【0050】
図5に示すように、第2オリフィス通路130は、第2減速機50のケーシング54の周壁部近傍の位置に設けられたZ方向に延在する通路である。この第2オリフィス通路130は、第2減速機50側の通路面積が反第2減速機50側(第2アーム部24側)の通路面積よりも小さくなる部分を備えた通路である。具体的には、第2オリフィス通路130は、第2減速機50のケーシング54(下部ケーシング55b)及び第2アーム部24のケーシング241に、これらをZ方向に貫通するように形成された一定径の孔部131と、ベース部20の内部においてこの孔部121に着脱可能に螺着されたオリフィス継手132とで構成されている。
【0051】
第3オリフィス通路140は、第3減速機70のケーシング74の周壁部近傍の位置に設けられたZ方向に延在する通路である。この第3オリフィス通路140は、第3減速機70側の通路面積が反第3減速機70側(ツール装着部25側)の通路面積よりも小さくなる部分を備えた通路である。具体的には、第3オリフィス通路140は、第3減速機70のケーシング74(下部ケーシング75b)に、これをZ方向に貫通するように形成された一定径の孔部141と、ツール装着部25の内部においてこの孔部141に着脱可能に螺着されたオリフィス継手142とで構成されている。
【0052】
このような第1~第3のオリフィス通路120、130、140が設けられることにより、第1~第3の減速機40、50、70の前記隙間44a、54a、74aから適切に空気が噴出され、当該隙間44a、54a、74aからの粉塵の侵入が高度に抑制される。すなわち、オリフィス通路120、130、140が設けられていない場合には、スカラロボット2内の空気の流れは、必ずしも、図6中の符号FL1で示す流れが支配的とはならない。例えばベース部20に導入された空気は、第1連絡通路101を通じて第1アーム部23に流動する一方で、機構部分の隙間や部材間の隙間を通じて第1減速機40に流動して前記隙間44aから漏出するとともに、スカラロボット2に形成されるその他の隙間(例えば部材同士の組付け部分の隙間)から無秩序に漏出する。そのため、ロボットアーム22の先端に向かう程、空気流量が少なくなり、第2、第3の減速機50、70(隙間54a、74a)において十分な防塵効果が得られない場合がある。
【0053】
これに対して、第1~第3のオリフィス通路120、130、140が設けた上記スカラロボット2の構成によれば、空気導入部110からベース部20に導入される空気の大部分は、第1連絡通路101を通じて第1アーム部23の内部に導入される。また、第1オリフィス通路120を通じて第1減速機40の内部にも空気が導入される。一旦第1オリフィス通路120を通じて第1減速機40に空気が導入されると、この第1オリフィス通路120を通じた空気の流路(図6中の符号FL2を付した破線矢印を参照)が確立され、第1減速機40の内部に積極的に空気が導入される。これにより、第1減速機40の周囲において形成されるその他の隙間(部材同士の組付け部分の隙間)などから大量の空気が無秩序に漏出することが抑制され、第1アーム部23及び第1減速機40への空気の導入が促進される。この際、第1オリフィス通路120内で流路面積が絞られていることにより、必要以上に第1減速機40に空気が導入されることが抑制される。
【0054】
また、第1連絡通路101を通じて第1アーム部23に導入された空気は、第2連絡通路102を通じて第2アーム部24の内部に導入される。また、第2アーム部24内において、第2オリフィス通路130を通じて第2減速機50の内部にも空気が導入される。一旦第2オリフィス通路130を通じて第2減速機50の内部に空気が導入されると、この第2オリフィス通路130を通じた空気の流路(図6中の符号FL3を付した破線矢印を参照)が確立され、第2減速機50の内部に積極的に空気が導入される。これにより、第2減速機50の周囲において形成されるその他の隙間(部材同士の組付け部分の隙間)などから大量の空気が無秩序に漏出することが抑制され、ツール装着部25及び第2減速機50への空気の導入が促進される。この際、第2オリフィス通路130内で流路面積が絞られていることにより、必要以上に第2減速機50に空気が導入されることが抑制される。
【0055】
また、第2アーム部24から第3連絡通路103を通じてツール装着部25に導入された空気は、第3オリフィス通路140を通じて第3減速機70の内部に導入され、この第3オリフィス通路140を通じた空気の流路(図6中の符号FL4を付した破線矢印を参照)が確立され、第3減速機70の内部に積極的に空気が導入される。これにより、第3減速機70の周囲において形成されるその他の隙間(部材同士の組付け部分の隙間)などから大量の空気が無秩序に漏出することが抑制され、第2減速機50への空気の導入が促進される。
【0056】
従って、上記スカラロボット2によれば、ベース部20からロボットアーム22に亘ってその内圧を適切に高めながら、第1~第3の全ての減速機40、50、70についてそれらの隙間44a、54a、74aから空気を噴出させることができ、その結果、全ての減速機40、50、70について粉塵の侵入を高度に抑制することが可能となる。
【0057】
なお、上記スカラロボット2では、第1~第3のオリフィス通路120、130、140は、何れも一定径の孔部121、131、141にオリフィス継手122、132、142が着脱可能に螺着された構成であるが、オリフィス継手122、132、142を用いることなく、孔部121、131、141の内径を途中で変化されることより構成されてもよい。但し、スカラロボット2の内部で発生した粉塵等の異物が詰まって第1~第3のオリフィス通路120、130、140が目詰まりを起こす(不通となる)ことも考えられるので、メンテナンス性を考慮すると、オリフィス継手122、132、142を用いた構成であるのが望ましい。すなわち、当該構成によれば、第1~第3のオリフィス通路120、130、140が目詰まりを起こした場合でも、オリフィス継手122、132、142を交換することで速やかにオリフィス通路120、130、140を開通させることが可能となる。
【0058】
また、上記スカラロボット2では、第1配線保護軸90によってベース部20から第1アーム部23に空気を導入する第1連絡通路101が形成され、第2配線保護軸94によって、第1アーム部23から第2アーム部24に空気を導入する第2連絡通路102が形成されている。しかし、スカラロボット2は、これら第1、第2の配線保護軸90、94が省略された構成であってもよい。この場合には、第3動力伝達機構PT3の第2伝動軸76によって、ベース部20から第1アーム部23に空気を導入する第1連絡通路101が形成され、第3動力伝達機構PT3の第3伝動軸77によって、第1アーム部23から第2アーム部24に空気を導入する第2連絡通路102が形成されている。
【0059】
[変形例]
以上、本発明に係るスカラロボット2が適用された産業用ロボット1の実施形態について説明したが、上記スカラロボット2は本発明に係る多関節ロボットの好ましい実施形態の例示であって、スカラロボット2やこれを含む産業用ロボット1の具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、以下のような態様を採用することも可能である。例えば、以下のような態様を採用することも可能である。
【0060】
(1)実施形態では、第1オリフィス通路120は、ベース部20の内部と第1減速機40の内部とを連通するが、第1オリフィス通路120は、第1アーム部23の内部と第1減速機40の内部とを連通するものであってもよい。また、実施形態では、第2オリフィス通路130は、第2アーム部24の内部と第2減速機50の内部とを連通するが、第2オリフィス通路130は、第1アーム部23の内部と第1減速機40の内部とを連通するものであってもよい。また、実施形態では、第3オリフィス通路140は、ツール装着部25の内部と第3減速機70の内部とを連通するが、第3オリフィス通路140は、第2アーム部24と第3減速機70の内部とを連通するものであってもよい。
【0061】
(2)実施形態では、スカラロボット2の内部に電線類100が配索されているが、必要な場合には、スカラロボット2の外部に電線類100を設けるようにしてもよい。この場合には、第1、第2の配線保護軸90、94は省略可能である。第1、第2の配線保護軸90、94を省略する場合には、第2伝動軸76や第3伝動軸77を中実軸とすることもできる。
【0062】
(3)実施形態では、単軸ロボット3のスライダ12にスカラロボット2が固定され、これによりスカラロボット2がZ方向に移動する構成である。しかし、スカラロボット2は、ベース部20が接地面に固定されて使用されるものであってもよい。
【0063】
(4)実施形態のスカラロボット2は、第2アーム部24が第1アーム部23に対して上方に位置する構成であるが、第2アーム部24が第1アーム部23に対して下方に位置する構成であってもよい。
【0064】
(5)実施形態では、本発明をスカラロボット2(水平多関節ロボット)に適用した例について説明したが、本発明は、垂直多関節ロボットなど他の多関節ロボットについても適用可能である。
【0065】
[本発明のまとめ]
以上説明した本発明をまとめると以下の通りである。
【0066】
本発明の一局面に係る多関節ロボットは、中空構造のベース部と、このベース部に連結される中空構造の第1アーム部とを備えた多関節ロボットであって、前記ベース部に固定される第1部材と、この第1部材に所定間隔を隔てて対向した状態で前記第1アーム部に固定される第2部材とを備えた中空構造を有し、かつ前記ベース部と前記第1アーム部とを第1回転軸回りに相対回転可能に連結する第1関節部材と、前記ベース部の内部に空気を導入すべく当該ベース部に設けられた空気導入部と、前記第1関節部材の内部を通じて前記ベース部と前記第1アーム部とを連通させる第1連絡通路と、前記ベース部の内部と前記第1関節部材の内部、又は前記第1アーム部の内部と前記第1関節部材の内部とを、前記第1連絡通路とは異なる位置で連通させる通路であって、第1関節部材側の通路面積が反関節部材側の通路面積よりも小さくなる部分を有した第1オリフィス通路と、を備えているものである。
【0067】
この多関節ロボットによれば、空気導入部からベース部に導入される空気の大部分は、第1連絡通路を通じて第1アーム部の内部に導入される。また、一旦、第1オリフィス通路を通じて第1関節部材の内部に空気が導入されると、この第1オリフィス通路を通じた空気の流路が確立され、第1関節部材の内部に積極的に空気が導入される。これにより、第1関節部材の周囲において形成される他の隙間から空気が無秩序に漏出することが抑制され、第1関節部材への空気の導入が促進される。従って、第1連絡通路によりベース部から第1アーム部への空気導入量を適切に確保しながら、第1関節部材の前記隙間からも適切に空気を漏出(噴出)させて、当該隙間への粉塵の侵入を抑制することができる。
【0068】
この場合、前記第1オリフィス通路は、前記ベース部の内部と前記第1関節部材の内部、又は前記第1アーム部の内部と前記第1関節部材の内部とを連通させる孔部と、この孔部に着脱可能に装着されたオリフィス継手とにより構成されるのが好適である。
【0069】
この構成によれば、異物が侵入するなどして第1オリフィス通路が不通になった場合でも、オリフィス継手を交換することで第1オリフィス通路を速やかに開通させることが可能となる。そのため、メンテナンス性が向上する。
【0070】
上記各態様の多関節ロボットにおいて、前記第1関節部材は、円環状の構造を有する減速機からなり、前記第1連絡通路は、前記減速機の内側を貫通するように前記第1回転軸に沿って前記ベース部から前記第1アーム部に亘って延在する中空軸により形成されているのが好適である。
【0071】
この構成によれば、減速機の内側(中心部分)の空間を利用して円滑にベース部から第1アーム部に空気を導入することができる。従って、合理的な構成でベース部から第1アーム部に空気を導入することが可能となる。
【0072】
上記各態様の多関節ロボットにおいては、さらに、前記第1アーム部に連結される中空構造の第2アーム部と、前記第1アーム部に固定される第3部材と、この第3部材に所定間隔を隔てて対向した状態で前記第2アーム部に固定される第4部材とを備えた中空構造を有し、かつ前記第1アーム部と前記第2アーム部とを第2回転軸回りに相対回転可能に連結する第2関節部材と、前記第1アーム部に導入される空気を前記第2関節部材の内部を通じて前記第2アーム部に導入する第2連絡通路と、前記第1アーム部の内部と前記第2関節部材の内部、又は前記第2アーム部の内部と前記第2関節部材の内部とを、前記第2連絡通路とは異なる位置で連通させる通路であって、第2関節部材側の通路面積が反第2関節部材側の通路面積よりも小さくなる部分を有した第2オリフィス通路と、を備えているものであってもよい。
【0073】
この構成によれば、ベース部から第1アーム部に導入される空気の大部分は、第2連絡通路を通じて第2アーム部の内部に導入される。また、一旦、第2オリフィス通路を通じて第2関節部材の内部に空気が導入されると、この第2オリフィス通路を通じた空気の流路が確立され、第2関節部材の内部に積極的に空気が導入される。これにより、第2関節部材の周囲において形成される他の隙間などから空気が無秩序に漏出することが抑制され、第2関節部材への空気の導入が促進される。従って、第2連絡通路により第1アーム部から第2アーム部への空気導入量を適切に確保しながら、第2関節部材の前記隙間からも適切に空気を漏出(噴出)させて、当該隙間への粉塵の侵入を抑制することができる。
【0074】
この場合、前記第2オリフィス通路は、前記第1アーム部の内部と前記第2関節部材の内部、又は前記第2アーム部の内部と前記第2関節部材の内部とを連通させる孔部と、この孔部に着脱可能に装着されたオリフィス継手とにより構成されるのが好適である。
【0075】
この構成によれば、異物が侵入するなどして第2オリフィス通路が不通になった場合でも、オリフィス継手を交換することにより第2オリフィス通路を速やかに開通させることが可能となる。そのため、メンテナンス性が向上する。
【0076】
また、上記の多関節ロボットにおいて、前記第2関節部材は、円環状の構造を有する減速機かなり、前記第2連絡通路は、前記減速機の内側を貫通するように前記第1アーム部から前記第2アーム部に亘って延在する中空軸により形成されているのが好適である。
【0077】
この構成によれば、減速機の内側(中心部分)の空間を利用して円滑に第1アーム部から第2アーム部に空気を導入することができる。従って、合理的な構成で第1アーム部から第2アーム部に空気を導入することが可能となる。
【0078】
上記各態様の多関節ロボットにおいては、さらに、前記第2アーム部に連結される中空構造のツール装着部と、前記第2アーム部に固定される第5部材と、この第5部材に所定間隔を隔てて対向した状態で前記ツール装着部に固定される第6部材とを備えた中空構造を有し、かつ前記第2アーム部と前記ツール装着部とを第3回転軸回りに相対回転可能に連結する第3関節部材と、前記第2アーム部に導入される空気を前記第3関節部材の内部を通じて前記ツール装着部に導入する第3連絡通路と、前記第2アーム部の内部と前記第3関節部材の内部、又は前記ツール装着部の内部と前記第3関節部材の内部とを、前記第3連絡通路とは異なる位置で連通させる通路であって、第3関節部材側の通路面積が反第3関節部材側の通路面積よりも小さくなる部分を有した第3オリフィス通路と、を備えているものであってもよい。
【0079】
この構成によれば、第1アーム部から第2アーム部に導入される空気の大部分は、第3連絡通路を通じてツール装着部の内部に導入される。また、一旦、第3オリフィス通路を通じて第3関節部材の内部に空気が導入されると、この第3オリフィス通路を通じた空気の流路が確立され、第3関節部材の内部に積極的に空気が導入される。これにより、第3関節部材の周囲において形成される他の隙間などから空気が無秩序に漏出することが抑制され、第3関節部材への空気の導入が促進される。従って、第3連絡通路により第2アーム部からツール装着部への空気導入量を適切に確保しながら、第3関節部材の前記隙間からも適切に空気を漏出(噴出)させて、当該隙間への粉塵の侵入を抑制することができる。
【0080】
この場合、前記第3オリフィス通路は、前記第2アーム部の内部と前記第3関節部材の内部、又は前記ツール装着部の内部と前記第3関節部材の内部とを連通させる孔部と、この孔部に着脱可能に装着されたオリフィス継手とにより構成されるのが好適である。
【0081】
この構成によれば、異物が侵入するなどして第3オリフィス通路が不通になった場合でも、オリフィス継手を交換することにより第3オリフィス通路を速やかに開通させることが可能となる。そのため、メンテナンス性が向上する。
【0082】
本発明の他の一局面に係る多関節ロボットは、中空構造のベース部と、このベース部に連結される第1アーム部とを備えた多関節ロボットであって、前記ベースに固定される第1部材と、この第1部材に所定間隔を隔てて対向した状態で前記第1アーム部に固定される第2部材とを備えた中空構造を有し、かつ前記ベース部と前記第1アーム部とを第1回転軸回りに相対回転可能に連結する関節部材と、前記ベース部の内部に空気を導入すべく当該ベース部に設けられた空気導入部と、前記ベース部の内部と前記関節部材の内部とを連通させる通路であって、関節部材側の通路面積がベース部側の通路面積よりも小さくなる部分を有したオリフィス通路と、を備えているものである。
【0083】
この多関節ロボットによれば、空気導入部からベース部に導入された空気が一旦、オリフィス通路を通じて関節部材の内部に空気が導入されると、このオリフィス通路を通じた空気の流路が確立され、関節部材の内部に積極的に空気が導入される。これにより、ベース部に形成される他の隙間などから空気が無秩序に漏出することが抑制され、関節部材への空気の導入が促進される。従って、関節部材の前記隙間から適切に空気を漏出(噴出)させて、当該隙間への粉塵の侵入を抑制することができる。
【0084】
この場合、前記オリフィス通路は、前記ベース部の内部と前記関節部材の内部とを連通させる孔部と、この孔部に着脱可能に装着されたオリフィス継手とにより構成されるのが好適である。
【0085】
この構成によれば、異物が侵入するなどしてオリフィス通路が不通になった場合でも、オリフィス継手を交換することによりオリフィス通路を速やかに開通させることが可能となる。そのため、メンテナンス性が向上する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6