(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】制御システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20220913BHJP
H02P 9/04 20060101ALI20220913BHJP
H02J 3/46 20060101ALI20220913BHJP
H02P 9/10 20060101ALI20220913BHJP
H02J 9/06 20060101ALI20220913BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20220913BHJP
H02P 101/25 20150101ALN20220913BHJP
【FI】
H02J3/38 180
H02P9/04 J
H02J3/46
H02P9/10 A
H02J9/06
H02J7/34 H
H02P101:25
(21)【出願番号】P 2021128400
(22)【出願日】2021-08-04
【審査請求日】2021-08-04
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 歩夢
(72)【発明者】
【氏名】市川 哲理
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-204465(JP,A)
【文献】特開2018-068076(JP,A)
【文献】特開2007-006595(JP,A)
【文献】特開2008-301545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-5/00
H02J 7/34
H02J 9/00-11/00
H02P 9/04
H02P 9/10
H02P 101/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機を駆動させる原動機と電力貯蔵手段とを備えた自家発電設備を制御する制御システムであって、
発電機により発電された電気の周波数を計測することにより、構内の負荷を計測する計測手段と、
商用電力系統の停電発生から自立運転に移行するまでの間に、前記原動機への負荷が増加しているときに、前記計測手段により計測された周波数が、
前記自家発電設備の運転時にあるべき電気の周波数である定格周波数とは異なり、前記原動機
が停止しないために許容される前記原動機の回転数
の下限に基づいて定められた下限制御周波数を下回った場合に、周波数の減少する速度に応じて前記電力貯蔵手段から電力を出力させ、原動機の出力の上昇とともに出力電力量を徐々に減少させ原動機の負荷比率を上げる制御手段と
を備える制御システム。
【請求項2】
前記原動機がガスエンジンである請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記電力貯蔵手段から電力を出力させているときに、前記計測手段で計測された計測量が予め定められた
前記下限制御周波数内に納まった場合に、当該電力貯蔵手段から電力を出力させることを停止させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、正常時に商用系統に接続され商用系統の停電時等に商用系統から自立して原動機によって駆動される発電機と、電力貯蔵手段と、該電力貯蔵手段の充放電を制御する充放電制御装置を具備する自家発電設備の運転方法において、負荷の増加を検出すると、前記電力貯蔵手段から出力(放電)して負荷の増加分を電力貯蔵手段に一時的に全量負担させ、その後、電力貯蔵手段の出力を発電機の許容変動負荷以下の速度で徐々に削減し、電力貯蔵手段の出力が0となると負荷の分担処理を終了させることにより、自家発電設備の負荷投入率を改善することを特徴とする自家発電設備の運転方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
商用電力系統の停電が発生し自家発電設備が系統から切り離されるまでのごく短時間において、自家発電設備は、構内負荷に加えて停電事故点よりも下流側の構外負荷をも一時的に担うために、過負荷状態が発生し得る。この負荷レベルが発電機の特性上限を超過すると発電設備の運転停止を引き起こすおそれがある。遮断速度の優れた高速遮断器であれば、停電発生から商用電力系統遮断までの時間を短縮し、発電設備の運転継続確率を高めることができる。しかし、遮断速度の優れた高速遮断器は大型設備となりコストがかかる。
【0005】
本発明は、自家発電設備にて、遮断速度に優れた高速遮断器を用いずとも、過負荷状態を緩和し、継続確率を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、発電機を駆動させる原動機と電力貯蔵手段とを備えた自家発電設備を制御する制御システムであって、発電機により発電された電気の周波数を計測することにより、構内の負荷を計測する計測手段と、商用電力系統の停電発生から自立運転に移行するまでの間に、前記原動機への負荷が増加しているときに、前記計測手段により計測された周波数が、前記自家発電設備の運転時にあるべき電気の周波数である定格周波数とは異なり、前記原動機が停止しないために許容される前記原動機の回転数の下限に基づいて定められた下限制御周波数を下回った場合に、周波数の減少する速度に応じて前記電力貯蔵手段から電力を出力させ、原動機の出力の上昇とともに出力電力量を徐々に減少させ原動機の負荷比率を上げる制御手段とを備える制御システムである。
請求項2に記載の発明は、前記原動機がガスエンジンである請求項1に記載の制御システムである。
請求項3に記載の発明は、前記制御手段は、前記電力貯蔵手段から電力を出力させているときに、前記計測手段で計測された計測量が予め定められた前記下限制御周波数内に納まった場合に、当該電力貯蔵手段から電力を出力させることを停止させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の制御システムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、自家発電設備にて、遮断速度に優れた高速遮断器を用いずとも、過負荷状態を緩和し、継続確率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第一の実施形態の制御システムを示す図である。
【
図2】周波数変化に応じて電力貯蔵手段を制御する手順についてのフローチャートである。
【
図3】自立運転移行前からの周波数変化に応じた発電機の出力の時間変化を示す図である。
【
図4】発電機への負荷が増加した場合に、従来の制御の出力と周波数との関係を表した図である。
【
図5】発電機への負荷が増加した場合の電力貯蔵手段の異なる制御の手順についてのフローチャートである。
【
図6】発電機への負荷が増加した場合に、電力貯蔵手段の異なる制御による出力と周波数との関係を表した図である。
【
図7】発電機への負荷が減少した場合の制御の手順についてのフローチャートである。
【
図8】発電機への負荷が減少した場合に、実施形態による制御による出力と周波数との関係を表した図である。
【
図9】発電機への負荷が減少した場合に、従来の制御の出力と周波数との関係を表した図である。
【
図10】発電機への負荷が減少した場合の電力貯蔵手段の異なる制御の手順についてのフローチャートである。
【
図11】発電機への負荷が減少した場合に、電力貯蔵手段の異なる制御による出力と周波数との関係を表した図である。
【
図12】停電発生前から自立運転移行後の周波数変化に応じた電力貯蔵手段の出力等の時間変化を示す図である。
【
図13】構内発電機が構内の負荷のみならず構外の負荷を担う様子を模式的に示す図である。
【
図14】停電発生前から自立運転移行後の周波数変化に応じた発電機の出力の時間変化を示す図である。
【
図15】本発明に係る制御システムの全体図である。
【
図16】停電検出信号に応じた電力貯蔵手段の制御と周波数に基づく電力貯蔵手段の制御とを実行する手順についてのフローチャートである。
【
図17】停電発生前から自立運転移行後の停電検出信号に応じた電力貯蔵手段の出力等の時間変化を示す図である。
【
図18】停電発生前から自立運転移行後の停電検出信号に応じた発電機の出力の時間変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の第一の実施形態における制御システム100について、
図1を用いて説明する。
図1は第一の実施形態の制御システム100を示す図である。
制御システム100は、商用電力系統3と、構内配線10とを有し、この構内配線10は、自家発電装置1と、複数の需要器2a~2dと、遮断器4a、4bとを備えている。
そして、複数の需要器2a~2dに対し自家発電装置1と商用電力系統3とが電力を供給する。需要器2aと2bとは、重要な需要器であり、停電後も電力を供給されるべき需要器である。需要器2cと2dとは、停電発生後に遮断器4bが遮断すると電力供給が停止される需要器である。遮断器4aは、構内配線10と商用電力系統3とを遮断する遮断器である。遮断器4bは発電機12と需要器2c及び需要器2dとを遮断する遮断器である。したがって、停電発生後、遮断器4a及び遮断器4bが遮断を実行すると、自家発電装置1は、重要な需要器2a及び需要器2bへ電力の供給を行う。
第一の実施形態において、構内とは、自家発電装置1及び自家発電装置1が停電時でない正常時に電力を供給し得る範囲を指す。商用電力系統3において停電事故が発生した場合、自家発電装置1は、構内の負荷に加えて停電事故点よりも下流側の構外負荷をも一時的に担うことがある。
【0010】
自家発電装置1は、原動機11と、原動機11によって駆動される発電機12と、発電機12により発電された電気の周波数を計測して原動機11の回転数を制御する周波数制御装置13と、発電機12の出力電圧を計測して発電機12の出力電圧を制御する電圧制御装置14と、電力を蓄えまたは放出可能な電力貯蔵手段15と、電力貯蔵手段15の充放電を制御する充放電制御装置16とを備える。
【0011】
原動機11としては、ガスエンジン、ガスタービンエンジン、ディーゼルエンジンなどを用いることができ、コージェネレーションシステムに適用することができる。
【0012】
発電機12は原動機11によって駆動させられ、原動機11の1秒間あたりの回転数と発電機12によって発電された電気の周波数は所定の関係を有している。たとえば、原動機11の1秒間あたりの回転数をギア等によって3倍の周波数に変換して発電するなどである。以下の説明において、電気の周波数とは、発電機12によって発電された電気の周波数のことをいい、回転数とは、1秒間あたりの回転数のことをいう。
原動機11の出力が一定の場合に、需要器2a~2dへの電力の需要が増加し、発電機12から需要器2a~2dへの電力の供給が増加すると、原動機11の回転数が減少する。
【0013】
したがって、電気の周波数の増減により、原動機11に対する負荷が減少しているか増加しているかを検知でき、電力の需要と供給の関係を検知することができる。原動機11のエンジンの回転数が減少した場合は、原動機11の出力に比べ、需要が大きくなっているため原動機11の出力を上げる必要が生じている。一方、原動機11の回転数が増加している場合は、原動機11の出力に比べて電力の需要が小さくなっているため、原動機11の出力を下げる必要が生じている。
さらに、電気の周波数の増加または減少する速度によって、原動機11に対する負荷と原動機11の出力の差の大きさが把握できる。例えば、電気の周波数が減少する速度が速い場合と遅い場合とでは、電気の周波数が減少する速度が速い場合の方が原動機11に対する負荷が大きいと言える。
【0014】
周波数制御装置13は、所定の間隔で電気の周波数を計測し、一定の周波数で発電機12が運転するように原動機11の出力を制御するものである。以下、自家発電装置1の運転時に、あるべき電気の周波数を定格周波数という。
周波数制御装置13は、電気の周波数が定格周波数を下回った場合には、定格周波数に戻すために原動機11の出力を増加させ、減少した電気の周波数を増加させる制御を行う。電気の周波数が定格周波数を上回った場合には、定格周波数に戻すために原動機11の出力を減少させ、増加した電気の周波数を減少させる制御を行う。
【0015】
電力貯蔵手段15は、電力を貯蔵する能力を有する、高速応動特性があればどのような設備であっても良いが、例えば、鉛蓄電池、ニッケル水素蓄電池、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオン二次電池等を用いることができる。ここで、高速応動特性とは、原動機11が出力を上げるために必要な時間と比較して短い時間で、電力貯蔵手段15が充電及び放電する量を上げることができる特性をいう。
【0016】
充放電制御装置16は、電力貯蔵手段15の直流電力を交流電力に変換するとともに発電機12の交流出力電力を直流電力に変換する電力変換装置を用いることができ、原動機11にかかる負荷に基づいて、充放電を制御する。原動機11の負荷は、例えば、電気の周波数や原動機11の回転数を基に監視することができる。
【0017】
原動機11にかかっている負荷が急激に増加すると、原動機11のエンジンの回転数が減少し、エンジンがスリップ等の異常動作を起こし停止する。このように、原動機11の回転数は原動機11の負荷変動に応じた許容値が設定されている。以下、原動機11が設定された許容値の回転数で運転した場合に、発電機12で発電される電気の周波数を限界周波数という。充放電制御装置16は、限界周波数に基づいて定められた電気の周波数を基準として充放電の制御を行う。
【0018】
以下、負荷変動に応じた原動機11の回転数の許容値に基づいて定められた充放電制御の基準となる周波数を制御周波数という。また、原動機11の負荷変動には負荷が増加する場合と減少する場合があり、原動機11の負荷が急増した場合は、原動機11の回転数が減少するため負荷変動特性に応じた原動機11の回転数の許容値の下限がある。以下、原動機11の回転数の許容値の下限に基づいて定められた制御周波数を下限制御周波数という。
【0019】
反対に、原動機11の負荷が急減した場合には、原動機11の回転数が増加するため負荷変動特性に応じた原動機11の回転数の許容値の上限がある。以下、原動機11の回転数の許容値の上限に基づいて定められた制御周波数を上限制御周波数という。
原動機11の周波数と発電機12の周波数が一致している場合や、関連している場合は発電された電気の周波数を計測することで原動機11の回転数を把握してもよい。電気の周波数が制御周波数を超えると、充放電制御装置16は、電力貯蔵手段15から電力を放電又は充電する。
【0020】
詳しくは後述するが、電気の周波数が制限周波数を超え電力貯蔵手段15から電力を放出する場合には、周波数制御装置13が原動機11の出力を増加させる制御を行っている。電力貯蔵手段15から電力を放電させている充放電制御装置16は、原動機11の出力が増加するに伴い電力貯蔵手段15から放出される電力の量を減少させる制御を行う。反対に、電力貯蔵手段15が電力を充電している場合には、原動機11の出力を減少させる制御を行っている。電力貯蔵手段15に電力を充電させている充放電制御装置16は、原動機11の出力が減少するに伴い電力貯蔵手段15が充電する電力の量を減少させる制御を行う。
【0021】
このように、充放電制御装置16では、瞬間的な負荷変動が起きた場合に、電気の周波数が原動機11の特性上限付近まで変化した際には、電力貯蔵手段15の高速応動特性を生かし、原動機11の特性上限を超えないように電力貯蔵手段15の充電及び放電を制御する。
【0022】
系統分離による自立運転時には、発電機出力が急激に増加し、原動機11の負荷が増加することで原動機11の回転数が減少する。急激な減少によって原動機11の許容される回転数を超えるとスリップ等の異常動作を起こして停止してしまう。
コージェネレーションシステムに用いられる発動機には、一般に負荷変動特性(瞬間的な負荷変動)に対する許容量があり、系統分離による自立運転時には特性を超えた瞬間的な負荷変動に対応できない。
【0023】
そこで、本実施形態では、発電機12に対する負荷が変動した場合、発電機12の電気の周波数を測定し、原動機11の負荷変動特性に対する許容量から定められた電気の周波数に基づいて、電力貯蔵手段15から電力を充電及び放電する制御を行うことで瞬間的な負荷変動に対して原動機11がスリップ等の異常動作を起こして停止してしまうことを防止する。
【0024】
発電機12への負荷が変動するとき、負荷が増える場合と負荷が減少する場合があり、まず負荷が増える場合を、
図2のフローチャートを用いて説明する。
【0025】
(発電機12への負荷が増加した場合の制御の手順)
本フローチャートでは、例えば、停電によって商用電力系統3からの電力供給が停止され、発電機12への負荷が増加した場合の自家発電装置1の動作を説明する。
発電機12への負荷が増加すると、原動機11への負荷が増加する。原動機11の出力が一定の場合に、原動機11への負荷が増加すると、原動機11の回転数が減少する。そして原動機11の回転数が減少すると、電気の周波数も減少する。
【0026】
ステップS1001では、所定の間隔で電気の周波数を測定している周波数制御装置13が、電気の周波数が減少していることを検知する。
【0027】
ステップS1002では、周波数制御装置13が原動機11の出力を増加させる。
周波数制御装置13が原動機の出力を増加させる制御を行うことによって、原動機11の出力が増加する。原動機11の出力を増加させると、原動機11の回転数が上がるように作用するが、発電機12への負荷増加が大きい場合、負荷増加による原動機11の回転数の減少の作用が大きく、さらに電気の周波数が下がる場合がある。
【0028】
ステップS1003では、周波数制御装置13が電気の周波数を測定し、電気の周波数が定格周波数になったか否かを判断し、電気の周波数が定格周波数になった場合にはステップS1009へ進む。電気の周波数が定格周波数になっていない場合はステップS1004に進む。
【0029】
ステップS1004では、充放電制御装置16が電気の周波数を測定し、原動機11の特性上限の回転数により定められた下限制御周波数より下回っているか否かを判断する。測定した電気の周波数が下限制御周波数より下回っていない場合はステップS1003へ戻る。測定した電気の周波数が下限制御周波数より下回っている場合は、ステップS1005に進む。
【0030】
ステップS1005では、充放電制御装置16が電力貯蔵手段15を制御し、周波数の減少する速度に応じた電力量を電力貯蔵手段15に放電させる。
電力貯蔵手段15から放電させることで、発電機12と電力貯蔵手段15とで負荷の分担を行っている。
【0031】
ステップS1006では、充放電制御装置16が、原動機11の出力の増加に伴い電力貯蔵手段15からの放電量を減少させて徐々に発電機12の負荷比率を上げる。
【0032】
ステップS1007では、充放電制御装置16が電力貯蔵手段15からの放電量を徐々に減少させ、電力貯蔵手段15からの放電量が0となり、すべての負荷を発電機12がひきうけた状態になると、負荷の分担を終了する。
そして、ステップS1003へ戻り、電気の周波数を測定し定格周波数になっていたら、ステップ1009に進む。
【0033】
ステップS1009では、周波数制御装置13が、原動機11の出力の上昇を停止させる。そして本処理フローは終了する。
【0034】
以上の処理における負荷と出力と周波数との関係を、
図3によって説明する。
図3は、上から、負荷の大きさと、発電機出力と、原動機出力と、電力貯蔵手段出力と、電気の周波数とを表したグラフである。
図3の負荷は、需要器2a~2dが必要とする電力の大きさである。
図3では、負荷のグラフが上に行くと、自家発電装置1が供給する電力を大きくする必要がある。発電機出力と電力貯蔵手段出力とを加えたものが、自家発電装置1が需要器2a~2dに供給する電力となる。
【0035】
図3の発電機出力は発電機12が発電する電気の大きさである。
図3の原動機出力は、発電機12を駆動する原動機11の出力である。発電機出力と原動機出力の関係は、発電機出力に対して原動機出力が小さい場合、原動機11の回転数が減少する関係にある。一方、発電機出力に対して原動機出力が大きい場合は、原動機11の回転数が増加する関係にある。
【0036】
図3の電力貯蔵手段出力は、充放電制御装置16の指示により、電力貯蔵手段15から放電される電力の大きさである。
図3の電力貯蔵手段出力のグラフの最初の位置では、充電および放電を行っていなく、その位置より上側に電力貯蔵手段出力のグラフがあるときに電力貯蔵手段15は放電している。逆に、電力貯蔵手段出力のグラフの最初の位置より下側に電力貯蔵手段出力のグラフがあるときは、電力貯蔵手段15は充電を行っている。
【0037】
図3の周波数は、周波数制御装置13が測定している電気の周波数である。
図3においては、定格周波数を50.0Hzとし、限界周波数を47.5Hzとして、下限制御周波数を48.0Hzとしてある。
【0038】
図3では、最初は、負荷と、発電機出力と、原動機出力と、電力貯蔵手段出力と、周波数とすべてのグラフが水平で安定して運転している。そして、時刻t11において、負荷が増加することで、発電機12の出力が増加し、発電機12の出力が増加したことにより、原動機11の回転数が減少し、電気の周波数が減少している。時刻t12において、周波数制御装置13が電気の周波数が減少していることを検知し、原動機11の出力が増加している。
【0039】
そして、時刻t13において、電気の周波数が下限制御周波数48.0Hzを下回ると、電力貯蔵手段15から電力の出力が行われている。
電力貯蔵手段15から出力される電力により、発電機12の負荷を分担している。時刻t12以降に原動機出力を増加させているため、時刻t13で電力貯蔵手段15から出力される電力は、時刻t11で増加した発電機出力より
図3のW1の量だけ少ない。
【0040】
時刻t13から時刻t14の間では、原動機出力が増加すると共に、電力貯蔵手段15から放出される電力量が減少し、電力貯蔵手段15から放出される電力量が減少すると共に、発電機出力が増加している。
【0041】
充放電制御装置16の指示により電力貯蔵手段15からの放電する電力量が徐々に減少し、時刻t14において、電力貯蔵手段15が放電する電力量が0になると、発電機12が全ての負荷に対して電力を供給する。発電機12が全ての負荷に対して電力を供給し、電気の周波数が定格周波数になると、原動機11の出力の増加が終了する。
時刻t14以降において、負荷と発電機出力と原動機出力と電力貯蔵手段出力と周波数とが一定となり、安定した運転となっている。
【0042】
また、
図4を用いて、従来の制御方法による制御の一例を説明する。
図4は、負荷と出力と周波数の関係を表している。従来の制御方法では、負荷の増加を検出すると、すぐに電力貯蔵手段から電力を放電させ、負荷の増加分を電力貯蔵手段に一時的に全量負担させる。その後、電力貯蔵手段の出力を徐々に削減し、電力貯蔵手段の出力が0となると負荷の分担処理を終了させることを行っていた。
【0043】
図4では、時刻t21において、負荷が増加すると、発電機出力が増加し電気の周波数が減少し始める。次に、時刻t22において、電力貯蔵手段から増加した負荷の全量分の電力が放電される。さらに、時刻t22において原動機の出力が上昇し始める。時刻t22と時刻t23の間では、原動機の出力上昇に応じて電力貯蔵手段からの放電を徐々に減少させる。t23において、電力貯蔵手段からの放電量が0となり、発電機が増加した負荷分をすべて引き受けた状態になると周波数が定格周波数に戻り、原動機の出力増加が終了している。時刻t23以降は、負荷と発電機出力と原動機出力と電力貯蔵手段出力と周波数とが一定となり、安定した運転となっている。
【0044】
このように、従来の制御方法では、時刻t22で、原動機出力を上昇させるのと同時に電力貯蔵手段から電力の放電を開始している。時刻t21における発電機出力の増加分と時刻t22における発電機出力の減少分とが同じである。電力貯蔵手段の出力によって、増加した負荷分の全電力を負担する。
【0045】
一方、本実施例による制御は、電気の周波数が下限制御周波数を下回るまで電力貯蔵手段15から出力を行うことをしない。下限制御周波数に下回るまでに、原動機出力を増加させることで、電力貯蔵手段15から出力される電力量を小さくする。それにより、電力貯蔵手段15からの出力される電力の総量は、従来の制御によって出力される電力の総量より小さくなり、電力貯蔵手段15の容量を小さくすることができる。
【0046】
また、本実施形態における制御では、電気の周波数が下限制御周波数を下回ると電力貯蔵手段15から電力を放出し、原動機出力が負荷増分を補えるまで電力貯蔵手段15から電力を放出していた。ここで、電力貯蔵手段15から電力を放出しているときに電気の周波数が下限制御周波数を上回った場合に電力貯蔵手段15からの電力の放出を停止させる制御について
図5を用いてさらに説明する。
【0047】
図5のフローチャートにおいて、
図2のフローチャートと同じステップは同じステップ番号を付けて説明を省略する。
本フローチャートでは、ステップS1006で充放電制御装置16が、原動機出力の増加に伴い電力貯蔵手段15からの出力を徐々に減少させているときに、ステップS2007において、充放電制御装置16が、電気の周波数が下限制御周波数より上回ったか判断する。電気の周波数が下限制御周波数より上回っている場合はステップS2008に進む。ステップS2007において、電気の周波数が下限制御周波数より上回らなかったらステップS1006へ戻る。
【0048】
ステップS2008では、充放電制御装置16が電力貯蔵手段15を制御し、電力貯蔵手段15の放電を終了させる。そして、ステップS1003へ戻る。
【0049】
ステップS1003で電気の周波数を測定し、定格周波数になったと判断されると、ステップS1009へ進み、周波数制御装置13は原動機11の出力の上昇を停止させる制御を行う。
そして本処理フローは終了する。
【0050】
以上の処理における負荷と出力と周波数との関係を、
図6によって説明する。
図6では、時刻t31において、負荷が増加することで、発電機12の出力が増加している。発電機12の出力が増加したことにより、原動機11の回転数が減少し、電気の周波数が減少している。
次に時刻t32において、原動機出力が増加している。
【0051】
そして、時刻t33において、電気の周波数が下限制御周波数48.0Hzを下回ると、電力貯蔵手段15から電力が出力されている。電力貯蔵手段15から出力された電力分、発電機出力が減少している。
時刻t34では、電気の周波数が下限制御周波数48.0Hzを上回り、電力貯蔵手段出力が0となっている。電力貯蔵手段出力が0となったため、発電機出力が増加している。
【0052】
時刻t35と時刻t37では、時刻t33と同様に、電気の周波数が下限制御周波数48.0Hzを下回ると、電力貯蔵手段15から電力が出力されている。電力貯蔵手段15から出力された電力分、発電機出力が減少している。
また、時刻t36と時刻t38では、時刻t34と同様に周波数が下限制御周波数48.0Hzを上回り、電力貯蔵手段出力が0となっている。電力貯蔵手段出力が0となったため、発電機出力が増加している。
【0053】
時刻t38から時刻t39の間では、原動機出力が増加しているため、周波数が増加している。
時刻t39では、原動機出力が充分に増加し、電気の周波数を定格周波数50.0としている。
時刻t39以降は、負荷と、発電機出力と、原動機出力と、電気貯蔵手段出力と、周波数が一定となり、安定した運転を行っている。
【0054】
このように、下限制御周波数より電気の周波数が高い場合に、電力貯蔵手段15から電力の放出を行わないことで、電力貯蔵手段15からの電力放出量が抑制される。
【0055】
次に、負荷が減少した場合を、
図7のフローチャートを用いて説明する。
【0056】
(発電機12への負荷が減少した場合の制御の手順)
本フローチャートでは、例えば、停電によって商用電力系統3からの電力供給が停止され自家発電装置1によって複数の需要器2a~2dが運転されているときに、ある需要器2c~2dの運転を停止し、電力の需要が減少した場合の自家発電装置1の動作を説明する。
電力の需要が減少し、発電機12の発電量が減少すると、原動機11への負荷が減少し、原動機11の回転数が増加する。原動機11の回転数が増加すると、電気の周波数も増加する。
【0057】
ステップS3001では、所定の間隔で電気の周波数を測定している周波数制御装置13が、電気の周波数が増加していることを検知する。
【0058】
ステップS3002では、周波数制御装置13が原動機11の出力を減少させる。
周波数制御装置13が原動機11の出力を減少させる制御を行うことによって、原動機11の出力が減少する。原動機11の出力が減少すると、原動機11の回転数が減少するように作用するが、発電機12への負荷減少が大きい場合、負荷減少による原動機11の回転数増加の作用が大きく、さらに原動機11の回転数が増加し、電気の周波数が増加する場合がある。
【0059】
ステップS3003では、周波数制御装置13が電気の周波数を測定し、電気の周波数が定格周波数になったか否かを判断し、電気の周波数が定格周波数になった場合にはステップS3009へ進む。電気の周波数が定格周波数になっていない場合はステップS3004に進む。
【0060】
ステップS3004では、充放電制御装置16が電気の周波数を測定し、上限制御周波数より上回っているか否かを判断する。電気の周波数が上限制御周波数より上回っていない場合はステップS3003へ戻る。周波数が上限制御周波数より上回っている場合は、ステップS3005に進む。
【0061】
ステップS3005では、充放電制御装置16が電力貯蔵手段15を制御し、周波数の増加する速度に応じた電力量を電力貯蔵手段15に充電させる。
電力貯蔵手段15に充電させることで、発電機12への負荷が増加する。
ステップ3006では、原動機11の出力が減少するに伴い、充放電制御装置16は、電力貯蔵手段15に充電させる量を減少させる。
充放電制御装置16が、電力貯蔵手段15に充電させる量を減少させ、電力貯蔵手段15によって充電する量が0になると、ステップS3007において、充放電制御装置16は電力貯蔵手段15による充電を終了する。
【0062】
電力貯蔵手段15による充電が終了すると、ステップS3003に戻り、電気の周波数を測定し、定格周波数になっていれば、ステップS3009へ進み、周波数制御装置13が、原動機11の出力の減少を停止させる制御を行う。
そして、本処理フローは終了する。
【0063】
以上の処理における負荷と出力と周波数との関係を、
図8によって説明する。
図8においては、定格周波数を50.0Hzとし、限界周波数を52.5Hzとして、上限制御周波数を52.0Hzとしてある。
【0064】
図8では、最初は、負荷と、発電機出力と、原動機出力と、電力貯蔵手段出力と、周波数とすべてのグラフが水平で安定して運転している。そして、時刻t41において、負荷が減少することで、発電機12の出力が減少し、発電機12の出力が減少したことにより、原動機11の回転数が増加し、電気の周波数が増加している。時刻t42において、周波数制御装置13が電気の周波数が増加していることを検知し、原動機11の出力が減少している。
【0065】
そして、時刻t43において、電気の周波数が上限制御周波数52.0Hzを上回ると、電力貯蔵手段15によって電力の充電が行われている。時刻t42以降から原動機11の出力を減少させているため、時刻t43において電力貯蔵手段15によって充電される電力の大きさは、時刻t41で減少した発電機出力の量より
図8のW2の量だけ少ない。
【0066】
時刻t43から時刻t44の間では、原動機出力が減少すると共に、電力貯蔵手段15によって充電される電力量が減少し、電力貯蔵手段15によって充電される電力量が減少すると共に、発電機出力が減少している。
【0067】
充放電制御装置16の指示により電力貯蔵手段15からの充電する電力量が徐々に減少し、時刻t44において、電力貯蔵手段15が充電する電力量が0になると、発電機12が供給する電力量と負荷の量が釣り合い、電気の周波数が定格周波数になると、周波数制御装置13が、原動機11の出力の減少する制御を終了する。
時刻t44以降において、負荷と発電機出力と原動機出力と電力貯蔵手段出力と周波数とが一定となり、安定した運転となっている。
【0068】
また、
図9を用いて、従来の制御方法による制御の一例を説明する。
図9は、負荷と出力と周波数の関係を表している。従来の制御方法では、負荷の減少を検出すると、すぐに電力貯蔵手段に充電をさせ、負荷の減少分を電力貯蔵手段に一時的に全量充電させる。その後、電力貯蔵手段による充電量を徐々に削減し、電力貯蔵手段による充電量が0となると、電力貯蔵手段による充電を終了させることを行っていた。
【0069】
図9では、時刻t51において、負荷が減少すると、発電機出力が減少し、電気の周波数が増加し始める。次に、時刻t52において、減少した負荷の全量分の電力が電力貯蔵手段によって充電される。さらに、時刻t52において原動機の出力が減少し始める。時刻t52と時刻t53の間では、原動機の出力減少に応じて電力貯蔵手段が充電する電気量を徐々に減少させている。時刻t53において、電力貯蔵手段によって充電される電気量が0となり、発電機出力と負荷が釣り合った状態になると周波数が定格周波数に戻り、原動機の出力減少が終了している。時刻t53以降は、負荷と発電機出力と原動機出力と電力貯蔵手段出力と周波数とが一定となり、安定した運転となっている。
【0070】
このように、従来の制御方法では、時刻t52で、原動機出力を減少させるのと同時に電力貯蔵手段による電力の充電を開始している。時刻t51における発電機出力の減少分と時刻t52における発電機出力の増加分が同じである。電力貯蔵手段が充電することによって、減少した全負荷分の負荷を発電機に与える。
【0071】
一方、本実施例による制御は、電気の周波数が上限制御周波数を上回るまで充放電制御装置16は、電力貯蔵手段15によって充電を行う制御をしない。上限制御周波数を上回るまでに、原動機出力を減少させることで、電力貯蔵手段15によって充電される電気量を小さくする。それにより、電力貯蔵手段15によって充電される電力の総量は、従来の制御によって充電される電力の総量より小さくなり、電力貯蔵手段15の容量を小さくすることができる。
【0072】
また、本実施形態における制御では、電気の周波数が上限制御周波数を上回ると電力貯蔵手段15が電力を充電し、原動機出力が負荷減少分の出力を減少させるまで電力貯蔵手段15が電力を充電していた。ここで、電力貯蔵手段15が電力を充電しているときに電気の周波数が上限制御周波数を下回った場合に電力貯蔵手段15が電力を充電するのを停止させる制御について
図10を用いて説明する。
【0073】
図10のフローチャートにおいて、
図7と同じステップは同じステップ番号を付けて説明を省略する。
本フローチャートでは、ステップS3006で充放電制御装置16が、原動機出力の減少に伴い電力貯蔵手段15が充電する充電量を徐々に減少させているときに、ステップS4007において、充放電制御装置16が、電気の周波数が上限制限周波数より下回ったか判断する。電気の周波数が上限制御周波数より下回っている場合はステップS4008に進む。ステップS4007において、電気の周波数が上限制御周波数より下回らなかったらステップS3006へ戻る。
【0074】
ステップS4008では、充放電制御装置16が電力貯蔵手段15を制御し、電力貯蔵手段15による充電を終了させる。そして、ステップS3003へ戻る。
【0075】
ステップS3003で電気の周波数を測定し、定格周波数になったと判断されると、ステップS3009へ進み、周波数制御装置13は原動機11の出力の減少を停止させる制御を行う。
そして本処理フローは終了する。
【0076】
以上の処理における負荷と出力と周波数との関係を、
図11によって説明する。
図11では、時刻t61において、負荷が減少することで、発電機12の出力が減少している。発電機12の出力が減少したことにより、原動機11の回転数が増加し、電気の周波数が増加している。
次に時刻t62において、原動機出力が減少している。
【0077】
そして、時刻t63において、電気の周波数が上限制御周波数52.0Hzを上回ると、電力貯蔵手段15が電力を充電している。電力貯蔵手段15が充電した電力分、発電機出力が増加している。
時刻t64では、電気の周波数が上限制御周波数52.0Hzを下回り、電力貯蔵手段出力が0となっている。電力貯蔵手段出力が0となったため、発電機出力が減少している。
【0078】
時刻t65と時刻t67では、時刻t63と同様に、電気の周波数が上限制御周波数52.0Hzを上回ると、電力貯蔵手段15が電力を充電している。電力貯蔵手段が充電した電力分、発電機出力が増加している。
また、時刻t66と時刻t68では、時刻t64と同様に周波数が上限制御周波数52.0Hzを下回り、電力貯蔵手段出力が0となっている。電力貯蔵手段出力が0となったため、発電機出力が減少している。
【0079】
時刻t68から時刻t69の間では、原動機出力が減少しているため、電気の周波数が減少している。
時刻t69では、原動機出力が充分に減少し、電気の周波数を定格周波数50.0となっている。
時刻t69以降は、負荷と、発電機出力と、原動機出力と、電気貯蔵手段出力と、周波数が一定となり、安定した運転を行っている。
【0080】
このように、上限制限周波数より電気の周波数が低い場合に、電力貯蔵手段15によって電力を充電することを行わないことで、電力貯蔵手段15が充電する電気量が小さくなる。
【0081】
本実施形態では、各需要器2a~2dの負荷を計測することなく電気の周波数を基に制御するため、計測点の削減が実現できる。
【0082】
本実施形態では、充放電制御装置16は発電された電気の周波数を基に、電力貯蔵手段15の制御を行っているが、原動機11がエンジンである場合にはエンジンの回転数を計測することで負荷変動を把握し、制御を行ってもよい。
【0083】
上述までの周波数に基づく電力貯蔵手段の制御を自立運転移行前から実行した場合について
図12、
図13を用いて説明する。
図12は、停電発生前から自立運転移行後の周波数変化に応じた電力貯蔵手段の出力等の時間変化を示す図である。
また、
図13は、構内発電機が構内の負荷のみならず、構外の負荷を担う様子を模式的に示す図である。
【0084】
図12に示すように、停電発生前には、構内負荷を発電機12の電力W3と商用電力系統3の電力W4とで賄っている。次に停電が発生すると、構内負荷は、構外負荷分W5分だけ増加することになる。
図13に示すように、停電事故発生点よりも下流にある構外の需要器の負荷をも構内発電機が賄うことになるため、構外負荷分W5が増加することになる。構内負荷が増加すると、構内配線10を流れる電気の周波数は減少する。構内周波数が上限制御周波数と下限制御周波数の間の領域は、不感帯と言われる領域であり、構内周波数が不感帯にある時には、充放電制御装置16は電力貯蔵手段15から電力を充放電させない。しかし、構内の周波数が制御周波数を超えると、充放電制御装置16は、電力貯蔵手段15から電力を放電又は充電する。時刻t61において、構内の電気の周波数が下限制御周波数以下になると、充放電制御装置16は周波数の減少速度に応じて電力貯蔵手段15から放電出力する制御を開始する。
【0085】
その後、時刻t62において、構内配線10が商用電力系統3から遮断器4aにより遮断されると、構外負荷は切り離される。このため構外負荷分W5の影響はなくなるので、構内の負荷は減少する。さらに下流の需要器2c、2dの負荷を遮断する遮断器4bによる遮断により、重要な需要器2a、2bの負荷のみ残るので、構内負荷はさらに減少し発電機の出力はW6になる。つまり、
図12の遮断後の構内負荷変動のグラフに示すように負荷が過少の状態になる。構内の負荷が過少になると、構内周波数は増加する。
【0086】
その後、電力貯蔵手段15からの放電により、構内周波数が徐々に増加し、構内周波数が下限制御周波数に近づくに連れて電力貯蔵手段15は放電量を減少させていく。ついに時刻t63において構内周波数が下限制御周波数に達し不感帯領域に入ると、電力貯蔵手段15は放電を停止する。
さらに、時刻t64において、構内周波数が上限制御周波数を超えると、構内周波数の増加速度に応じて電力貯蔵手段15へと充電する制御を開始する。時刻t65において、構内周波数が再び不感帯に収まると、充放電制御装置16は電力貯蔵手段15への充電を停止する。
【0087】
以上のように、構内周波数が上限制御周波数と下限制御周波数の間の不感帯領域にある間は、電力貯蔵手段15は充放電を行わない。一方、構内周波数が下限制御周波数以下になった場合には、電力貯蔵手段15から放電出力する制御、逆に上限制御周波数を超えた場合には、電力貯蔵手段15に充電する制御を行う。
【0088】
次に、
図14を用いて、上述の構内の周波数変化に応じた電力貯蔵手段15の制御が構内負荷変動を緩和することについて説明する。
図14は、停電発生前から自立運転移行後の周波数変化に応じた発電機12の出力の時間変化を示す図である。停電事故が発生直後、遮断器4aが商用電力系統3と構内配線10とを遮断するまでにはタイムラグが生じる。本実施形態では、このタイムラグの期間、すなわち停電事故発生から系統遮断前(自立運転移行前)であっても、構内周波数が減少する変化に応じて電力貯蔵手段15から放電出力をする制御を実行する。仮に電力貯蔵手段15から放電出力をする制御を実行しない場合、破線のように発電機12の出力は上昇していくため、発電機12の許容範囲を超える場合には発電機12が停止してしまうおそれがある。特に、遮断速度に優れた高速遮断器でない場合、停電事故発生から系統遮断までの時間が長くなるため、発電機12に対する負荷が増大し、発電機12の許容範囲を超えて停止してしまうリスクが高い。本実施形態では、
図14の実線で示すように、自立運転開始前の時刻t70において、構内周波数が減少する変化に応じて電力貯蔵手段15から放電出力をする制御を実行することにより、発電機の出力増加の傾きを緩くすることができる。つまり、周波数変化に応じて電力貯蔵手段15から放電出力をする制御は、発電機に対する過負荷を緩和することにより、発電機の運転継続確率を高めることができる。
【0089】
また、系統遮断後は、構外負荷分がなくなるため構内負荷は過少になる。この場合、構内周波数が増加する変化に応じて電力貯蔵手段15に充電する制御を実行することによって、過少負荷が緩和される。仮に電力貯蔵手段15への充電をする制御を実行しない場合、破線のように発電機12の出力は急激に低下するため、発電機12の許容範囲を超えてしまう場合には発電機12が停止してしまうおそれがある。
図14の実線で示すように、自立運転開始後に構内周波数が増加する変化に応じて電力貯蔵手段15へ充電する制御を実行することにより、発電機の出力の急激な減少を抑制することができる。つまり、周波数変化に応じて電力貯蔵手段15へ充電する制御は、発電機に対する過少負荷を緩和することにより、発電機の運転継続確率を高めることができる。
【0090】
以上より、本実施形態の電力貯蔵手段15の充放電制御は、
図14に示す領域R1の過負荷分を減少させ、領域R2の過少負荷を増加させるため、発電機に対する負荷変動を緩和することができる。
【0091】
本実施形態では、電力貯蔵手段15の充放電制御が適切なタイミングで行われることにより、発電機に対する負荷変動を緩和する。特に、本実施形態の周波数に基づく電力貯蔵手段15の放電制御は、事故発生から自立運転移行前における、過負荷状態を緩和する。このため、遮断器4aが遮断速度に優れた高速遮断器でない場合であっても、自立運転開始前に負荷が発電機12の上限を超過して発電設備が運転停止することを回避し、発電機12の運転継続確率を高めることができる。
さらに周波数に基づく電力貯蔵手段15の充放電制御は、自立運転移行後の極端な過負荷や負荷の過少状態を緩和する。このため、負荷が発電機12の上限又は下限を超過して発電機12が運転停止することを回避し、発電機12の運転継続確率を高めることができる。
【0092】
次に、本発明の第二の実施形態における制御システム200について、
図15、
図16、
図17、及び
図18を用いて説明する。第二の実施形態は、第一の実施形態に対し、停電検出リレー5が充放電制御装置16、遮断器4a、4bと制御信号回路を介して繋がっている点で異なっている。尚、第一の実施形態と同様な機能については同様な符号を用い、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0093】
図15は第二の実施形態の制御システム200を示す図である。
図15は、停電検出リレー5が加わっている点で
図1と異なる。停電検出リレー5は、制御信号回路を介して遮断器4a、遮断器4b、及び充放電制御装置16に繋がっている。
【0094】
構内に配置されている停電検出リレー5は、商用電力系統3における停電発生を検出すると、制御信号回路で繋がった遮断器4a、遮断器4b、及び充放電制御装置16に対し停電検出信号を送出する。停電発生直後には、停電の影響が構内の周波数変動として直ぐに表れにくいことがある。したがって、停電検出する速度という観点からは、通常は、構内の周波数変動を計測するよりも停電検出リレー5による停電検出信号を用いた方が、停電検出速度が早い。つまり、電力貯蔵手段15の制御を開始するトリガーとして停電検出リレー5を用いることにより、停電発生後に電力貯蔵手段15の充放電制御を素早く開始することが可能になる。なお、
図15においては、停電検出リレー5は構内に配置されているが、本発明は構内配置に限定されず、停電検出リレー5は構外に配置されていてもよい。
【0095】
停電検出してから遮断されるまでの時間は、停電検出リレー5や遮断器4a、4bの性能に依存する。例えば、高速な停電検出リレーや遮断器を用いれば、停電検出から遮断まで15ms以下で実現可能である。また、高速性能の機器でなくとも、例えば、検出に約100ms程度、遮断に60ms(3サイクル遮断とも)程度で実現可能である。
【0096】
充放電制御装置16は、停電検出リレー5から停電検出信号を受けると、電力貯蔵手段15へ定格出力の放電指示を与える。電力貯蔵手段15からの定格出力とは、需要器を安全に使用するための最大電圧での出力をいう。
【0097】
充放電制御装置16は、停電検出信号を受信してから予め定めた時間が経過すると、周波数に基づく電力貯蔵手段15の充放電制御に切り替える。例えば、停電検出信号を受信してから予め定めた時間は、停電検出信号を受信してから遮断器4aが商用電力系統3を遮断し自立運転に移行する時間よりも短く設定してもよい。予め定めた時間経過後に、周波数に基づく電力貯蔵手段15の充放電制御に切り替えることにより、系統遮断後の急激な負荷の過少状態を緩和することができる。遮断器の遮断時間は、遮断器の遮断速度の性能に依存するため、停電検出信号を受信してから予め定めた時間は、遮断器の遮断速度に応じて設定することが望ましい。
【0098】
停電検出信号に応じて電力貯蔵手段15を制御する手順について
図16を用いて説明する。
図16は、停電検出信号に応じた電力貯蔵手段15の制御と周波数に基づく電力貯蔵手段の制御とを実行する手順についてのフローチャートである。
【0099】
(停電検出信号に応じて電力貯蔵手段を制御する手順)
本フローチャートでは、例えば、停電発生を検出してから自立運転開始までの自家発電装置1の動作を説明する。
【0100】
ステップS5001では、停電検出リレー5が商用電力系統3に停電の発生したことを検出する。
【0101】
ステップS5002では、停電検出リレー5が遮断器4a、4bと充放電制御装置16に対して制御信号回路を介して停電検出信号を送出する。
【0102】
ステップS5003では、停電検出信号を受けた充放電制御装置16が電力貯蔵手段15を制御し、定格出力の電力量を電力貯蔵手段15に放電させる。電力貯蔵手段15から放電させることで、発電機12と電力貯蔵手段15とで負荷の分担を行っている。
【0103】
ステップS5004では、充放電制御装置16は予め定めた時間が経過したか否かを判断する。予め定めた時間が経過した場合は、ステップS5005に進み、予め定めた時間が経過していない場合は、ステップS5003に戻る。
【0104】
ステップS5005では、充放電制御装置16は構内配線10の周波数に基づいて、電力貯蔵手段15の充放電を制御する。つまり、ステップS5005以降は、周波数に基づいた電力貯蔵手段15の充放電の制御に切り替わる。周波数に基づいた電力貯蔵手段15の充放電の制御の内容は、第一の実施形態における充放電制御装置16による電力貯蔵手段15の充放電制御と同じである。
【0105】
充放電制御装置16が電力貯蔵手段15からの放電量を徐々に減少させ、電力貯蔵手段15からの放電量が0となり、すべての負荷を発電機12がひきうけた状態になると、負荷の分担を終了する。
そして、電気の周波数を測定し定格周波数になっていたら、充放電制御装置16は電力貯蔵手段15の放電量制御を停止する。そして本処理フローは終了する。
【0106】
停電検出信号に基づく電力貯蔵手段15の制御から周波数に基づく電力貯蔵手段15の制御に移行するまでの過程に関して、構内負荷、構内周波数、電力貯蔵手段15の出力の変化について
図17を用いて説明する。
図17は、停電発生前から自立運転移行後の停電検出信号に応じた電力貯蔵手段15の出力等の時間変化を示す図である。
【0107】
停電発生前には、構内の負荷を発電機12の電力W3と商用電力系統3の電力W4とで賄っている。次に商用電力系統3で停電事故が発生すると、構内負荷は、構外負荷分W5分だけ増加することになる。そして、停電検出リレー5は停電を検出し、時刻t71に停電検出信号を生成した。停電検出リレー5は充放電制御装置16に停電検出信号を通知する。停電検出信号を受けた充放電制御装置16は、電力貯蔵手段15から定格出力の電力を予め定めた時間内において放電する。
【0108】
予め定めた時間は、停電検出して停電検出信号が生成された時刻t71から一定時間経過後の時刻t72までの、t72-t71の時間として設定されている。本実施形態においては、時刻t72は、商用電力系統3と遮断される時刻t73よりも前の時刻として設定されている。
【0109】
充放電制御装置16は、停電検出から予め定めた時間が経過した後である時刻t72に、構内の周波数に基づく電力貯蔵手段15の充放電制御に切り替える。時刻t72以降は、第一の実施形態と同様に構内周波数の変化に応じて充放電制御装置16は電力貯蔵手段15の充放電制御を開始する。
【0110】
時刻t73に構内配線10が商用電力系統3から遮断器4aにより遮断されると、構外負荷の影響はなくなるので、構内の負荷が減少する。さらに遮断器4bにより遮断されることにより、構内の複数の需要器のうち重要な需要器2a、2bの負荷のみ残ることになると、
図17の構内負荷変動のグラフに示すように構内負荷はさらに減少し発電機の出力はW6になる。負荷が過少の場合、構内周波数は増加する。時刻t74に構内周波数が下限制御周波数よりも大きくなる、すなわち不感帯に入ると電力貯蔵手段15からの放電は停止する。
【0111】
時刻t74から時刻t75の時間帯は、構内周波数が上限制御周波数と下限制御周波数の間、すなわち不感帯の範囲にあるため、充放電制御装置16は、電力貯蔵手段15からの充放電を停止させている。
【0112】
時刻t75において、構内周波数が上限制御周波数を超えて不感帯領域から逸脱すると、充放電制御装置16は、周波数の増加速度に応じて電力貯蔵手段15へ充電する制御を開始する。さらに、時刻t76に構内周波数が不感帯の範囲内に納まると、充放電制御装置16は電力貯蔵手段15への充電を停止させる。
【0113】
図17の事例では、停電検知信号に基づく制御から周波数に基づく制御に切り替わった時に、構内負荷は過負荷状態であった。仮に、停電検知信号に基づく制御から周波数に基づく制御に切り替わった時に、構内負荷が過少状態である場合でも、周波数に基づく制御は実行される。すなわち、周波数制御装置13が周波数の増加を検知することにより、発電機12の出力を減少させる制御が行われる。
【0114】
次に、
図18を用いて、構内の周波数変化に応じて電力貯蔵手段15が負荷変動を緩和することについて説明する。
図18は、停電検出信号に応じた制御における発電機の出力の時間変化を示す図である。事故発生前には、発電機12は定格で出力している。停電事故が発生直後、遮断器4aが商用電力系統3と構内配線10とを遮断するまでにはタイムラグが生じる。本実施形態では、このタイムラグの期間、すなわち停電事故発生から系統遮断前(自立運転移行前)であっても、停電検出信号に応じて充放電制御装置16は電力貯蔵手段15から放電出力をする制御を実行する。
【0115】
事故発生直後に構内負荷のうちの商用電力系統3で担っていた電力と構外負荷を発電機12が担うこととなり発電機12の出力は増加する(過負荷状態)。直ぐに停電検出リレー5の停電検出をトリガーとして電力貯蔵手段15からの定格出力の放電が開始するために、過負荷状態が一旦解消される。つまり停電検出信号に応じた電力貯蔵手段15からの放電により過負荷のレベルが緩和されることになる。
【0116】
仮に電力貯蔵手段15から放電出力をする制御を実行しない場合、破線で示すように発電機12の出力は上昇していくため、発電機12の許容範囲を超える場合には発電機12が停止してしまうおそれがある。特に、遮断速度に優れた高速遮断器でない場合、停電事故発生から系統遮断までの時間が長くなるため、発電機に対する負荷が増大し、発電機12の許容範囲を超えて停止してしまうリスクがある。本実施形態では、
図18の実線で示すように、自立運転開始前から停電検出リレー5の生成する停電検出信号に応じて電力貯蔵手段15から定格出力で放電をする制御を実行することにより、増加する発電機12の出力を一旦下げることができる。つまり、停電検出信号に応じて充放電制御装置16が電力貯蔵手段15から放電出力する制御は、発電機12に対する過負荷を緩和することにより、発電機12の運転継続確率を高めることができる。
【0117】
さらに、停電検出から予め定めた時間が経過した後、充放電制御装置16は、構内周波数の変化に応じて電力貯蔵手段15に充放電する制御に切り替える。この切り替えのタイミングが系統遮断直前である場合、
図18の実線で示すように、自立運転開始後に構内周波数が増加する変化に応じて電力貯蔵手段15へ充電する制御が実行され、発電機12の出力の急激な減少を抑制することができる。つまり、周波数変化に応じて電力貯蔵手段15へ充電する制御は、発電機12に対する過少負荷を緩和することにより、発電機12の運転継続確率を高めることができる。
【0118】
仮に電力貯蔵手段15への充電をする制御を実行しない場合、系統遮断以降は破線のように発電機12の出力は急激に低下するため、発電機12の許容範囲を超えてしまう場合には発電機12が停止してしまうおそれがある。つまり、周波数変化に応じて電力貯蔵手段15へ充電する制御は、発電機12に対する過少負荷を緩和することにより、発電機12の運転継続確率を高めることができる。
【0119】
以上のように、本実施形態の電力貯蔵手段15の充放電制御は、
図18に示す領域R3の負荷分を減少させ、領域R4の過少負荷を増加させるため、発電機に対する負荷変動を緩和することができる。
【0120】
本実施形態では、電力貯蔵手段15の充放電制御が適切なタイミングで行われることにより、事故発生から自立運転移行後までの大きな負荷変動を緩和する。特に、本実施形態の停電検出信号に基づく電力貯蔵手段15の放電制御は、事故発生から自立運転移行前において、過負荷状態を緩和する。このため、負荷が発電機12の上限を超過して発電機12が運転停止することを回避するため、発電機12の運転継続確率を高めることができる。さらに停電検出信号に基づく電力貯蔵手段15の放電制御に続く、周波数に基づく電力貯蔵手段15の充放電制御は、極端な過負荷や負荷の過少状態を緩和する。このため、負荷が発電機12の上限又は下限を超過して発電機12が運転停止することを回避するため、発電機12の運転継続確率を高めることができる。
【符号の説明】
【0121】
1…自家発電装置、2a~2d…需要器、3…商用電力系統、4a、4b…遮断器、5…停電検出リレー、10…構内配線、11…原動機、12…発電機、13…周波数制御装置、14…電圧制御装置、15…電力貯蔵手段、16…充放電制御装置、100、200…制御システム
【要約】
【課題】過負荷状態を緩和し、遮断速度に優れた高速遮断器でなくとも継続確率を高めることを目的とする。
【解決手段】発電機を駆動させる原動機と電力貯蔵手段とを備えた自家発電設備を制御する制御システムは、(a)構内の負荷を計測する計測手段と、商用電力系統の停電発生から自立運転に移行するまでの間に、負荷の増加により前記原動機ごとに予め定められた基準と前記計測手段が計測した計測量とにより、前記電力貯蔵手段を制御する制御手段、又は(b)商用電力系統の停電状態を検出する検出手段と、商用電力系統の停電発生から自立運転に移行するまでの間に、前記検出手段が検出した信号を受信してから予め定めた時間が経過するまで、前記電力貯蔵手段を制御する制御手段とを備える。
【選択図】
図15