(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】基板検査装置及び基板検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/956 20060101AFI20220913BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
G01N21/956 B
H05K3/00 Q
(21)【出願番号】P 2022034459
(22)【出願日】2022-03-07
【審査請求日】2022-08-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】菊池 和義
(72)【発明者】
【氏名】小畑 卓也
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-334319(JP,A)
【文献】特開2018-182070(JP,A)
【文献】特開2003-80143(JP,A)
【文献】特開2002-139452(JP,A)
【文献】特開2020-204487(JP,A)
【文献】特開2006-162274(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0039524(US,A1)
【文献】特開2016-86039(JP,A)
【文献】特開2016-70723(JP,A)
【文献】国際公開第2015/025403(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-21/958
G01B 11/00-11/30
G06T 1/00、7/00
H05K 3/00、3/30-3/34、13/00-13/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に塗布された接着剤を検査可能な基板検査装置であって、
前記基板における少なくとも前記接着剤が塗布された領域を撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段によって得られた撮像画像における前記接着剤の中央部領域を特定する中央部特定手段と、
前記中央部特定手段による前記中央部領域の特定手法とは異なる特定手法により、前記撮像画像における、前記中央部領域の周囲に位置する前記接着剤のすそ野部領域を特定するすそ野部特定手段と、
前記中央部特定手段により特定された前記中央部領域と、前記すそ野部特定手段により特定された前記すそ野部領域とに基づき、前記接着剤の全体領域を特定する全体特定手段と、
前記全体特定手段により特定された前記全体領域に基づいて、前記接着剤に関する良否判定を行う判定手段とを備え
、
前記基板は、緑色のレジスト領域を有し、
前記接着剤は、赤色であるとともに、前記レジスト領域上に塗布されたものであり、
前記すそ野部特定手段は、前記すそ野部領域の特定にあたって、前記撮像画像に基づく彩度画像のうちの所定の彩度閾値よりも低彩度の領域を抽出するように構成されていることを特徴とする基板検査装置。
【請求項2】
前記中央部特定手段は、前記中央部領域の特定にあたって、前記撮像画像に基づく色相画像のうちの赤色の領域、又は、前記撮像画像に基づく赤色輝度画像のうちの所定の輝度閾値よりも高輝度の領域を抽出するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の基板検査装置。
【請求項3】
前記中央部特定手段、前記すそ野部特定手段及び前記全体特定手段のうちの少なくとも1つは、最終的に特定する領域の中から、前記基板に設けられたシルクに係る領域を除外する処理を実行可能に構成されていることを特徴とする請求項1
又は2に記載の基板検査装置。
【請求項4】
基板に塗布された接着剤を検査するための基板検査方法であって、
前記基板における少なくとも前記接着剤が塗布された領域を撮像可能な撮像工程と、
前記撮像工程によって得られた撮像画像における前記接着剤の中央部領域を特定する中央部特定工程と、
前記中央部特定工程による前記中央部領域の特定手法とは異なる特定手法により、前記撮像画像における、前記中央部領域の周囲に位置する前記接着剤のすそ野部領域を特定するすそ野部特定工程と、
前記中央部特定工程により特定された前記中央部領域と、前記すそ野部特定工程により特定された前記すそ野部領域とに基づき、前記接着剤の全体領域を特定する全体特定工程と、
前記全体特定工程により特定された前記全体領域を用いて、前記接着剤に関する良否判定を行う判定工程とを含
み、
前記基板は、緑色のレジスト領域を有し、
前記接着剤は、赤色であるとともに、前記レジスト領域上に塗布されたものであり、
前記すそ野部特定工程は、前記すそ野部領域の特定にあたって、前記撮像画像に基づく彩度画像のうちの所定の彩度閾値よりも低彩度の領域を抽出するように構成されていることを特徴とする基板検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板等に代表される基板に関する検査を行うための基板検査装置、及び、基板検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリント基板上に電子部品を実装する場合、まずプリント基板上に配設された電極パターン上にクリーム半田が印刷される。次いで、クリーム半田が印刷されたプリント基板に対し、クリーム半田の粘性に基づいて電子部品が仮止めされる。また、電子部品が実装されたプリント基板を所定のリフロー炉に通す際などにおいて、電子部品が脱落してしまうことなどを防止すべく、プリント基板上に接着剤(例えば熱硬化性接着剤)を塗布することがある。そして、電子部品の実装後、プリント基板がリフロー炉へ導かれ、所定のリフロー工程を経ることで半田付けが行われる。
【0003】
ところで、リフロー工程の前段階においては、接着剤の塗布状態に関する検査が行われることがある。接着剤の塗布状態に関する検査の手法としては、例えば、プリント基板を撮像して得た画像データから接着剤の占める領域(実接着剤領域)を特定(抽出)した上で、特定した実接着剤領域とクリーム半田等との位置関係に基づいて検査を行う方法が知られている(例えば、特許文献1等参照)。尚、画像データとしては、輝度データなどが挙げられている。
【0004】
また、接着剤の占める領域を特定(抽出)する手法としては、カラー画像を用いる手法が知られている(例えば、特許文献2等参照)。この手法では、カラー画像信号と予め設定された接着剤の色分布とが比較され、カラー画像のうち前記色分布内の色を有する部分が接着剤の占める領域として特定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6262378号公報
【文献】特開平6-347419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、接着剤は、通常半透明であるところ、接着剤の全域における塗布厚さが十分に大きなものであれば、上記特許文献2のように色を利用して接着剤の占める領域を正確に特定可能ではある。
【0007】
しかしながら、実際の接着剤の塗布厚さは、全域で一定ということはなく、外縁側部分(すそ野部分)で比較的小さなものとなっている。そして、このような塗布厚さが比較的小さな部分は、接着剤の下に位置する部分の影響を受けて、塗布厚さが十分に大きな部分と異なる色を呈することがある。そのため、単に色を用いた手法では、接着剤の占める領域のうち塗布厚さが十分に大きな領域だけしか特定することができず、接着剤の占める領域を正確に特定することができないおそれがある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、接着剤の占める領域をより正確に特定することができる基板検査装置などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0010】
手段1.基板に塗布された接着剤を検査可能な基板検査装置であって、
前記基板における少なくとも前記接着剤が塗布された領域を撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段によって得られた撮像画像における前記接着剤の中央部領域を特定する中央部特定手段と、
前記中央部特定手段による前記中央部領域の特定手法とは異なる特定手法により、前記撮像画像における、前記中央部領域の周囲に位置する前記接着剤のすそ野部領域を特定するすそ野部特定手段と、
前記中央部特定手段により特定された前記中央部領域と、前記すそ野部特定手段により特定された前記すそ野部領域とに基づき、前記接着剤の全体領域を特定する全体特定手段と、
前記全体特定手段により特定された前記全体領域に基づいて、前記接着剤に関する良否判定を行う判定手段とを備え、
前記基板は、緑色のレジスト領域を有し、
前記接着剤は、赤色であるとともに、前記レジスト領域上に塗布されたものであり、
前記すそ野部特定手段は、前記すそ野部領域の特定にあたって、前記撮像画像に基づく彩度画像のうちの所定の彩度閾値よりも低彩度の領域を抽出するように構成されていることを特徴とする基板検査装置。
【0011】
上記手段1によれば、中央部特定手段によって、撮像画像における接着剤の中央部の領域が特定される。また、すそ野部特定手段によって、中央部領域の特定手法とは異なる手法により、中央部領域と比較して通常薄くなる接着剤のすそ野部領域(外縁側の領域)が特定される。そして、全体特定手段によって、それぞれ特定された中央部領域とすそ野部領域とに基づき、最終的に接着剤の全体領域が特定される。このように上記手段1によれば、光学的特性の異なる中央部領域及びすそ野部領域を異なる特定手法によって別々に特定するため、両者を精度よく特定することができ、ひいては接着剤の占める領域をより正確に特定することができる。その結果、接着剤の良否判定(例えば、接着剤の塗布範囲に関する良否判定や、半田等に対する接着剤の相対位置関係についての良否判定)に係る精度をより良好なものとすることができる。
また、緑色のレジスト領域上に赤色の接着剤が塗布されてなる基板において、接着剤における塗布厚さの比較的小さな部分は、下地に当たる緑色のレジスト領域の影響で比較的低い彩度を有するものとなる。この点を利用して、上記手段1によれば、すそ野部領域の特定にあたって、撮像画像に基づく彩度画像から低彩度の領域を抽出する。従って、接着剤のすそ野部領域をより正確にかつより容易に特定することができる。
【0012】
手段2.前記中央部特定手段は、前記中央部領域の特定にあたって、前記撮像画像に基づく色相画像のうちの赤色の領域、又は、前記撮像画像に基づく赤色輝度画像のうちの所定の輝度閾値よりも高輝度の領域を抽出するように構成されていることを特徴とする手段1に記載の基板検査装置。
【0013】
赤色の接着剤は一般に広く用いられるところ、上記手段2によれば、このような赤色の接着剤における中央部領域をより正確にかつより容易に特定することができる。
【0016】
手段3.前記中央部特定手段、前記すそ野部特定手段及び前記全体特定手段のうちの少なくとも1つは、最終的に特定する領域の中から、前記基板に設けられたシルクに係る領域を除外する処理を実行可能に構成されていることを特徴とする手段1又は2に記載の基板検査装置。
【0017】
尚、「最終的に特定する領域」とあるのは、中央部特定手段においては中央部領域であり、すそ野部特定手段においてはすそ野部領域であり、全体特定手段においては全体領域である。
【0018】
上記手段3によれば、シルク(基板に印刷された、文字や記号などの情報を示す印刷部)に係る領域が接着剤に係る領域(中央部領域、すそ野部領域又は全体領域)として誤って特定されることをより確実に防止できる。これにより、接着剤に係る領域をより一層正確に特定することができる。
【0019】
手段4.基板に塗布された接着剤を検査するための基板検査方法であって、
前記基板における少なくとも前記接着剤が塗布された領域を撮像可能な撮像工程と、
前記撮像工程によって得られた撮像画像における前記接着剤の中央部領域を特定する中央部特定工程と、
前記中央部特定工程による前記中央部領域の特定手法とは異なる特定手法により、前記撮像画像における、前記中央部領域の周囲に位置する前記接着剤のすそ野部領域を特定するすそ野部特定工程と、
前記中央部特定工程により特定された前記中央部領域と、前記すそ野部特定工程により特定された前記すそ野部領域とに基づき、前記接着剤の全体領域を特定する全体特定工程と、
前記全体特定工程により特定された前記全体領域を用いて、前記接着剤に関する良否判定を行う判定工程とを含み、
前記基板は、緑色のレジスト領域を有し、
前記接着剤は、赤色であるとともに、前記レジスト領域上に塗布されたものであり、
前記すそ野部特定工程は、前記すそ野部領域の特定にあたって、前記撮像画像に基づく彩度画像のうちの所定の彩度閾値よりも低彩度の領域を抽出するように構成されていることを特徴とする基板検査方法。
【0020】
上記手段4によれば、上記手段1と同様の作用効果が奏される。尚、上記手段4に対し、上記手段2~3に係る技術事項を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】プリント基板の概略構成を示す部分拡大平面模式図である。
【
図3】プリント基板の製造ラインの構成を示すブロック図である。
【
図4】基板検査装置を模式的に示す概略構成図である。
【
図5】基板検査装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図6】接着剤検査部の機能構成を示すブロック図である。
【
図7】HSV色空間の色相環を簡易的に示す図である。
【
図11】すそ野部特定工程のフローチャートである。
【
図14】二値化反転彩度画像の一例を示す図である。
【
図15】二値化反転明度画像の一例を示す図である。
【
図18】接着剤単体の検査を説明するための平面模式図である。
【
図19】半田及び接着剤の位置関係に関する検査を説明するための平面模式図である。
【
図20】電極部の配置予定領域及び接着部の位置関係に関する検査を説明するための平面模式図である。
【
図21】別の実施形態における中央部特定工程のフローチャートである。
【
図23】二値化赤色輝度画像の一例を示す図である。
【
図25】別の実施形態における中央部抽出画像の一例を示す図である。
【
図26】接着剤及びシルク抽出画像の一例を示す図である。
【
図27】別の実施形態におけるシルク領域除外工程のフローチャートである。
【
図32】別の実施形態における接着部抽出画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。まず、基板としてのプリント基板の構成について説明する。
【0023】
図1,2に示すように、プリント基板1(以下、単に「基板1」という)は、ガラスエポキシ樹脂等からなる平板状のベース基板2に、銅箔からなるランド3や所定の電極パターン(不図示)などが形成されたものである。ランド3上には、半田粒をフラックスで練ってなるクリーム半田4(以下、単に「半田4」という)が印刷されている。
【0024】
半田4上には、チップ等の電子部品5が搭載されている。より詳しくは、電子部品5は電極やリードにより構成された電極部5aを複数備えており、各電極部5aがそれぞれ所定の半田4に対し接合されている。
【0025】
加えて、電子部品5は、半田4によって固定された状態となっているが、本実施形態では、固定状態をより強固なものとすべく、接着剤6(
図1にて斜線を付した部位)により接着された状態となっている。接着剤6は、熱硬化性を有する絶縁性の接着剤である。接着剤6は、少なくとも硬化前において、赤色を呈するともに半透明であり、かつ、粘性を有する液体である。基板1を平面視したとき、接着剤6は、中央部6aと該中央部6aの周囲に位置するすそ野部6bとを有する構成となっている。電子部品5の実装前において、通常、中央部6aにおける塗布厚さは比較的大きなものとなる一方、接着剤6の外縁側に位置するすそ野部6bの塗布厚さは比較的小さなものとなる。
【0026】
また、ベース基板2の表面であってランド3を除く部位には、緑色のレジスト領域7(
図1にて散点模様を付した領域)が設けられている。レジスト領域7は、絶縁性のレジストからなり、ベース基板2や前記電極パターンをコーティングする。本実施形態では、レジスト領域7上に接着剤6が塗布されている。
【0027】
さらに、レジスト領域7には、文字や記号などの情報が印刷されてなる印刷部であるシルク8が設けられている。シルク8の色は、一般的には白色又は黄色であり、本実施形態では、白色とされている。
【0028】
次に、プリント基板1を製造する製造ライン(製造工程)について説明する。
図3に示すように、製造ライン10には、その上流側(
図3上側)から順に、半田印刷機11、接着剤塗布装置12、基板検査装置13、部品実装機14、リフロー装置15及びリフロー後検査装置16が設置されている。基板1は、これら装置に対しこの順序で搬送されるように設定されている。
【0029】
半田印刷機11は、基板1の所定箇所(例えば、ランド3上)に所定量の半田4を印刷する。より詳しくは、半田印刷機11は、基板1上のランド3等に対応する位置に複数の孔が形成されたメタルスクリーン(図示せず)を備えており、当該メタルスクリーンを用いて基板1に対し半田4をスクリーン印刷する。
【0030】
接着剤塗布装置12は、基板1の所定箇所(例えば、電子部品5の配置予定箇所)に所定量の接着剤6を塗布する。接着剤塗布装置12は、例えば、X-Y方向に移動可能なノズルヘッド(図示せず)を備えており、該ノズルヘッドから接着剤6を吐出することでレジスト領域7に対し接着剤6を塗布する。
【0031】
基板検査装置13は、塗布された接着剤6に関する検査を行う。また、基板検査装置13は、印刷された半田4の状態や基板1における異物の有無に関する検査機能も備えている。基板検査装置13については後により詳しく説明する。
【0032】
部品実装機14は、半田4が印刷されたランド3などに電子部品5を搭載する部品実装工程(マウント工程)を行う。これにより、電子部品5の電極部5aがそれぞれ所定の半田4に対し仮止めされる。
【0033】
リフロー装置15は、半田4を加熱溶融させるとともに、接着剤6を加熱硬化させるためのものである。リフロー装置15によるリフロー工程を経た基板1においては、半田4によってランド3と電子部品5の電極部5aとが接合されるとともに、接着剤6によって電子部品5が強固に固定された状態となる。
【0034】
リフロー後検査装置16は、リフロー工程において半田接合が適切に行われたか否か等について検査するリフロー後検査工程を行う。例えばリフロー工程後の基板1の画像データ等を用いて電子部品5における位置ずれの有無などを検査する。
【0035】
この他、図示は省略するが、製造ライン10は、半田印刷機11と接着剤塗布装置12との間などの上記各装置間に、基板1を移送するためのコンベア等を備えている。また、基板検査装置13と部品実装機14との間やリフロー後検査装置16の下流側には分岐装置が設けられている。そして、基板検査装置13やリフロー後検査装置16にて良品判定された基板1は、そのまま下流側へ案内される一方、検査装置13,16にて不良品判定された基板1は分岐装置により不良品貯留部(不図示)へと排出されるようになっている。
【0036】
次に、基板検査装置13の構成について説明する。
図4,5に示すように、基板検査装置13は、基板1の搬送や位置決め等を行う搬送機構31と、基板1の検査を行うための検査ユニット32と、搬送機構31や検査ユニット32の駆動制御をはじめ、基板検査装置13における各種制御や画像処理、演算処理を実行する制御装置33とを備えている。
【0037】
搬送機構31は、基板1の搬入出方向に沿って配置された一対の搬送レール31aと、各搬送レール31aに対し回転可能に配設された無端のコンベアベルト31bとを備えている。また、図示は省略するが、搬送機構31には、前記コンベアベルト31bを駆動するモータ等の駆動手段と、基板1を所定位置に位置決めするためのチャック機構とが設けられている。搬送機構31は、制御装置33(後述する搬送機構制御部339)により駆動制御される。
【0038】
上記構成の下、基板検査装置13へ搬入された基板1は、搬入出方向と直交する幅方向の両側縁部がそれぞれ搬送レール31aに挿し込まれるとともに、コンベアベルト31b上に載置される。続いて、コンベアベルト31bが動作を開始し、基板1が所定の検査位置まで搬送される。基板1が検査位置に達すると、コンベアベルト31bが停止するとともに、前記チャック機構が作動する。このチャック機構の動作により、コンベアベルト31bが押し上げられ、コンベアベルト31bと搬送レール31aの上辺部によって基板1の両側縁部が挟持された状態となる。これにより、基板1が検査位置に位置決め固定される。検査が終了すると、チャック機構による固定が解除されるとともに、コンベアベルト31bが動作を開始する。これにより、基板1は、基板検査装置13から搬出される。勿論、搬送機構31の構成は、上記形態に限定されるものではなく、他の構成を採用してもよい。
【0039】
検査ユニット32は、搬送レール31a(基板1の搬送路)の上方に配設されている。検査ユニット32は、照明装置321及びカメラ322を備えている。本実施形態では、カメラ322が「撮像手段」を構成する。
【0040】
また、検査ユニット32は、X軸方向(
図4左右方向)の移動を可能とするX軸移動機構323、及び、Y軸方向(
図4前後方向)の移動を可能とするY軸移動機構324をも備えている。両移動機構323,324は、制御装置33(後述する移動機構制御部338)により駆動制御される。
【0041】
照明装置321は、基板検査装置13による検査対象となる基板1に対し、所定の光を照射する。より詳しく説明すると、照明装置321は、第一リングライト321a、第二リングライト321b及び第三リングライト321cを備えている(
図4参照)。
【0042】
第一リングライト321aは、基板1に対し略水平方向からの光照射を行う。第二リングライト321bは、第一リングライト321aよりも上方に配置され、基板1に対し斜め上方からの光照射を行う。第三リングライト321cは、第二リングライト321bの内側に配置されており、基板1に対しほぼ鉛直上方からの光照射を行う。
【0043】
各リングライト321a,321b,321cは、それぞれ基板1に対し白色光を照射する。すなわち、各リングライト321a,321b,321cは、赤色光、青色光及び緑色光という複数のカラー光を一度に基板1へと照射する。
【0044】
カメラ322は、その光軸が上下方向(Z軸方向)に延びるように配置されており、検査対象の基板1における所定の被検査領域を真上から撮像する。尚、基板1の「被検査領域」は、カメラ322の撮像視野(撮像範囲)の大きさを1単位として基板1に予め設定された複数のエリアのうちの1つのエリアである。
【0045】
カメラ322は、カラーカメラで構成されており、制御装置33(後述するカメラ制御部333)により動作制御される。制御装置33の動作制御により、カメラ322は、各リングライト321a,321b,321cから基板1に対する光の同時照射が行われている状態で、基板1における少なくとも接着剤6が塗布された領域を含む被検査領域を撮像する。これにより、被検査領域に係るRGB輝度画像が取得される。このRGB輝度画像は、多数の画素を有しており、各画素に対応して、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)に係る3種類のパラメータ値がそれぞれ設定されている。本実施形態において、これらパラメータ値は0~1の範囲で表現される。カメラ322によって基板1における少なくとも接着剤6が塗布された領域を撮像する工程が「撮像工程」に相当する。また、RGB輝度画像が「撮像画像」に相当する。
【0046】
カメラ322によって取得されたRGB輝度画像は、制御装置33(後述のカラー画像取込部334)に転送される。制御装置33は、該RGB輝度画像に基づき接着剤6についての検査処理を実行する。
【0047】
制御装置33は、所定の演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)、各種プログラムや固定値データ等を記憶するROM(Read Only Memory)、各種演算処理の実行に際して各種データが一時的に記憶されるRAM(Random Access Memory)及びこれらの周辺回路等を含んだコンピュータからなる。
【0048】
制御装置33は、CPUが各種プログラムに従って動作することで、メイン制御部331、照明制御部332、カメラ制御部333、カラー画像取込部334、電極部領域生成部335、半田特定部336、接着剤検査部337、移動機構制御部338、搬送機構制御部339などの各種機能部として機能する。
【0049】
但し、上記各種機能部は、上記CPU、ROM、RAMなどの各種ハードウェアが協働することで実現されるものであり、ハード的又はソフト的に実現される機能を明確に区別する必要はなく、これらの機能の一部又は全てがICなどのハードウェア回路により実現されてもよい。尚、制御装置33は、半田4の状態や基板1における異物の有無を検査するための機能部を備えているが、本実施形態では、該機能部に関する記載を省略している。
【0050】
さらに、制御装置33には、キーボードやマウス、タッチパネル等で構成される入力部340、液晶ディスプレイ等で構成される、表示画面を備えた表示部341、各種データやプログラム、演算結果、検査結果等を記憶可能な記憶部342、外部と各種データを送受信可能な通信部343などが設けられている。まず、記憶部342及び通信部343について説明する。
【0051】
記憶部342は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等で構成されており、各種情報を記憶する。記憶部342は、画像記憶部342a、検査用情報記憶部342b及び検査結果記憶部342cを備えている。
【0052】
画像記憶部342aは、カメラ322により撮像され取得されたRGB輝度画像を記憶する。また、画像記憶部342aには、それぞれ後述する色相画像や彩度画像などの各種画像も記憶される。画像記憶部342aに記憶された画像は、適宜表示部341に表示させることが可能である。
【0053】
検査用情報記憶部342bは、基板1の検査に用いられる各種情報を記憶する。例えば、検査用情報記憶部342bには、画像に二値化処理を施したり、良否判定を行ったりする際に用いられる各種閾値や、設計データ及び製造データなどが記憶されている。設計データ及び製造データには、接着剤6の塗布予定位置、理想的な塗布状態における接着剤6のサイズ(例えば、接着剤6の面積、輪郭長、体積等)、電極部5aの大きさや配置予定領域などの電子部品5に関する各種情報が含まれる。
【0054】
検査結果記憶部342cは、接着剤検査部337による検査結果データを記憶する。また、検査結果記憶部342cには、半田4の状態や基板1における異物の有無に関する検査結果データや、各種検査結果データを確率統計的に処理した統計データなども記憶される。これらの検査結果データや統計データは、適宜表示部341に表示させることが可能となっている。
【0055】
通信部343は、例えば有線LAN(Local Area Network)や無線LAN等の通信規格に準じた通信インターフェースなどを備え、外部と各種データを送受信可能に構成されている。例えば接着剤検査部337により行われた検査の結果などが通信部343を介して外部に出力されたり、リフロー後検査装置16により行われた検査の結果が通信部343を介して入力されたりする。
【0056】
次に、制御装置33を構成する上記各種機能部について詳しく説明する。まず、移動機構制御部338及び搬送機構制御部339について説明し、その後、メイン制御部331等について説明する。
【0057】
移動機構制御部338は、X軸移動機構323及びY軸移動機構324を駆動制御する機能部であり、メイン制御部331からの指令信号に基づき、検査ユニット32の位置を制御する。移動機構制御部338は、X軸移動機構323及びY軸移動機構324を駆動制御することにより、検査ユニット32を、検査位置に位置決め固定された基板1における任意の被検査領域の上方位置へ移動させることができる。そして、基板1に設定された複数の被検査領域に検査ユニット32が順次移動されつつ、該被検査領域に係る検査が実行されていくことで、基板1全域の検査が実行される。
【0058】
搬送機構制御部339は、搬送機構31を駆動制御する機能部であり、メイン制御部331からの指令信号に基づき、基板1の搬送位置を制御する。
【0059】
次いで、メイン制御部331等について説明する。メイン制御部331は、基板検査装置13全体の制御を司る機能部であり、照明制御部332やカメラ制御部333など他の機能部と各種信号を送受信可能に構成されている。
【0060】
照明制御部332は、照明装置321を駆動制御する機能部である。照明制御部332は、メイン制御部331からの指令信号に基づき、照明装置321から基板1に対する光の照射又は照射停止に関するタイミング制御などを行う。
【0061】
カメラ制御部333は、カメラ322を駆動制御する機能部である。カメラ制御部333は、メイン制御部331からの指令信号に基づき、カメラ322による基板1の撮像タイミングなどを制御する。
【0062】
カラー画像取込部334は、カメラ322により撮像され取得されたRGB輝度画像を取り込むための機能部である。カラー画像取込部334によって取り込まれたRGB輝度画像は、画像記憶部342aに記憶される。
【0063】
電極部領域生成部335は、電子部品5の電極部5aの配置予定領域を示す電極部領域Adh(
図20参照)を生成する。本実施形態において、電極部領域生成部335は、基本的には、電極部領域Adhとして、設計データや製造データ上における電極部5aの配置予定領域を生成する。但し、実際の半田4の占める領域(次述する半田領域Ajh)が理想的な半田4の占める領域に対しずれている場合、電極部領域生成部335は、このずれに合わせて電極部領域Adhの調節を行う。
【0064】
半田特定部336は、カメラ322によって得られたRGB輝度画像に基づき、基板1上における半田4の占める領域(以下、「半田領域Ajh」という)を特定する。より詳しくは、半田特定部336は、前記RGB輝度画像に対し予め設定された所定の輝度値を閾値として二値化処理を行うこと等により、半田4の占める平面領域を示す半田領域Ajhを特定する。尚、半田4の塗布予定位置に対応するサーチエリアを設定し、該サーチエリアの面積に対する、該サーチエリア内に位置する半田4の面積の割合に基づき、面積が極端に小さな半田4の平面領域を半田領域Ajhとして扱わないようにしてもよい。
【0065】
接着剤検査部337は、基板1に塗布された接着剤6の検査を行う。接着剤検査部337は、
図6に示すように、中央部特定部337a、すそ野部特定部337b、全体特定部337c及び判定部337dなどの各種機能部を有する。本実施形態では、中央部特定部337aが「中央部特定手段」を構成し、同様に、すそ野部特定部337bが「すそ野部特定手段」を、全体特定部337cが「全体特定手段」を、判定部337dが「判定手段」を、それぞれ構成する。
【0066】
中央部特定部337aは、前記RGB輝度画像における、中央部6aに当たる領域である中央部領域Ajsa(
図10参照)を特定するための中央部特定工程を行う。
【0067】
中央部特定工程では、
図8に示すように、まず、ステップS11において、カメラ322によって得られたRGB輝度画像を用いて、基板1の被検査領域に係る色相画像が取得される。より詳しくは、0°(360°)を赤、60°を黄、120°を(厳密な)緑、180°をシアン、240°を青、300°をマゼンタとしたHSV色空間の色相環(
図7参照)における各画素の色相Hue(以下、「色相H」と記載する)が算出され、各画素とその色相Hとが関連付けられてなる色相画像が取得される。色相画像は、画像記憶部342aに記憶される。
【0068】
色相Hは、以下の数式1,2又は3を用いて算出される。尚、数式1は、RGBに係る各パラメータ値のうちBのパラメータ値が最大である場合に用いられる。数式2は、RGBに係る各パラメータ値のうちRのパラメータ値が最大である場合に用いられる。数式3は、RGBに係る各パラメータ値のうちGのパラメータ値が最大である場合に用いられる。但し、RGBに係る各パラメータ値の最大値及び最小値が等しい場合、色相Hは定義されない。
<数式1> H=60×(G-R)/(MAX-MIN)+60
<数式2> H=60×(B-G)/(MAX-MIN)+180
<数式3> H=60×(R-B)/(MAX-MIN)+300
尚、数式1~3において、R,G,BはそれぞれRGBに係る各パラメータ値を示し、MAXは各パラメータ値のうちの最大値を示し、MINは各パラメータ値のうちの最小値を示す。
【0069】
色相画像は、RGB輝度画像における各画素の、HSV色空間の色相環における色相を示す画像である。
図9に色相画像の一例を示す。色相画像には、接着剤6やシルク8などが含まれる。
【0070】
尚、RGB輝度画像において、塗布厚さが比較的大きな中央部6aは赤色となる一方、塗布厚さが比較的小さなすそ野部6bは、下地となる緑色のレジスト領域7の影響を受けて黒色に近い色となる。そのため、取得される色相画像において、中央部6aは比較的暗いものとなり、すそ野部6bは比較的明るいものとなる(
図9参照)。また、色相画像において、シルク8は比較的明るいものとなる。
【0071】
色相画像の取得後、ステップS12において、前記色相画像から赤色の領域(つまり、中央部6aを含む領域)を抽出すべく、所定の色相閾値を用いて前記色相画像に二値化処理を施すことにより、中央部抽出画像が取得される。
図10に中央部抽出画像の一例を示す。尚、色相閾値は、色相画像における中央部6aの色相に基づき設定される。
【0072】
中央部抽出画像は、0(明部分)及び1(暗部分)を備えた白黒画像であり、画像記憶部342aに記憶される。本実施形態では、色相画像における赤色の領域に対応する、中央部抽出画像の明部分が中央部領域Ajsa(
図10参照)として特定される。尚、中央部領域Ajsaの特定にあたって、孤立点を除去するための穴埋め処理などを行ってもよい。また、仮にRGB輝度画像に接着剤6以外の赤色領域が存在する場合には、設計データや製造データに基づき、該赤色領域が中央部領域Ajsaに含まれないように該赤色領域の除去処理を行ってもよい。
【0073】
すそ野部特定部337bは、RGB輝度画像における、中央部領域Ajsaの周囲に位置し接着剤6のすそ野部6bに当たる領域であるすそ野部領域Ajsbを特定するためのすそ野部特定工程を行う。すそ野部特定工程では、中央部特定部337aによる中央部領域Ajsaの特定手法とは異なる特定手法によって、すそ野部領域Ajsbの特定が行われる。
【0074】
すそ野部特定工程では、
図11に示すように、まず、ステップS21において、画像記憶部342aに記憶されたRGB輝度画像を用いて、基板1の被検査領域に係る彩度画像が取得される。より詳しくは、次の数式4を用いてRGB輝度画像における各画素の彩度S(HSV形式の彩度)が算出され、各画素とその彩度Sとが関連付けられてなる彩度画像が取得される。彩度画像は、画像記憶部342aに記憶される。
<数式4> S=(1-3×MIN/(R+G+B))
尚、数式1~3と同様に、数式4において、R,G,BはそれぞれRGBに係る各パラメータ値を示し、MINは各パラメータ値のうちの最小値を示す。また、彩度画像における各画素の彩度Sは0~1で表され、画素の彩度Sが1に近いほど該画素の色は原色に近いものとなる。尚、数式4に代えて、次の数式4aから彩度Sを求めてもよい。
<数式4a> S=(MAX-MIN)/MAX
彩度画像は、RGB輝度画像における各画素の彩度を示す画像である。
図12に彩度画像の一例を示す。彩度画像には、接着剤6やシルク8などが含まれる。
【0075】
尚、RGB輝度画像において、塗布厚さが比較的小さなすそ野部6bは、下地となる緑色のレジスト領域7の影響を受けて低彩度となるため、取得される彩度画像において、すそ野部6bは比較的暗いものとなる(
図12参照)。また、彩度画像において、シルク8も比較的暗いものとなる。一方、彩度画像において、中央部6aやレジスト領域7は、明るいものとなる。
【0076】
次いで、ステップS22において、前記彩度画像から比較的低彩度の領域(つまり、すそ野部6bを含む領域)を抽出すべく、まず、前記彩度画像を反転させた反転彩度画像が取得される。
図13に反転彩度画像の一例を示す。反転彩度画像において、すそ野部6bやシルク8は比較的明るいものとなる。
【0077】
ステップS22の後、ステップS23において、所定の彩度閾値を用いて前記反転彩度画像に二値化処理を施すことにより、二値化反転彩度画像が取得される。
図14に二値化反転彩度画像の一例を示す。二値化反転彩度画像は、0(明部分)及び1(暗部分)を備えた白黒画像であり、画像記憶部342aに記憶される。二値化反転彩度画像においては、すそ野部6bのみならず、シルク8も明部分となる。尚、彩度閾値は、二値化反転彩度画像におけるすそ野部6b及びレジスト領域7の各彩度に基づき設定される。
【0078】
次に、ステップS24において、二値化反転彩度画像からシルク8に係る領域を除外すべく、シルク領域除外工程を行う。シルク領域除外工程では、まず、ステップS241において、RGB輝度画像のうちの特に明度の低い領域を抽出すべく、RGB輝度画像に基づく二値化反転明度画像が取得される。二値化反転明度画像を得るにあたっては、まず、次の数式5を用いてRGB輝度画像における各画素の明度V(HSV形式の明度)が算出され、各画素とその明度Vとが関連付けられてなる明度画像が取得される。明度画像は、RGB輝度画像における各画素の明度を示す画像である。
<数式4> V=MAX
尚、数式1~3と同様に、数式5において、MAXはRGBに係る各パラメータ値のうちの最大値を示す。
【0079】
その上で、前記明度画像に対し反転処理及び二値化処理を行うことにより、二値化反転明度画像が取得される。
図15に二値化反転明度画像の一例を示す。尚、この二値化処理の際には、シルク8に係る領域が除外される(抽出されない)一方、すそ野部6bに係る領域が抽出されるような明度閾値が用いられる。尚、シルク8に係る領域をより確実に除外するために、後述するシルク画像(
図30)を取得し、該シルク画像を用いて、二値化反転明度画像からシルク8に係る領域を除外する処理を別途行ってもよい。
【0080】
次いで、ステップS242において、取得した二値化反転彩度画像及び二値化反転明度画像の論理積をとることで、二値化反転彩度画像からシルク8に係る領域が除外される。これにより、すそ野部抽出画像が取得される。
図16にすそ野部抽出画像の一例を示す。すそ野部抽出画像は、0(明部分)及び1(暗部分)を備えた白黒画像であり、画像記憶部342aに記憶される。本実施形態では、すそ野部抽出画像における明部分がすそ野部領域Ajsbとして特定される。
【0081】
尚、すそ野部領域Ajsbの特定にあたっては、彩度が比較的低いものとなり得るランド3や前記電極パターンに係る領域を除外する処理を別途行ってもよい。この処理は、例えば、設計データや製造データにおけるランド3等の位置に基づき、該位置に存在する低彩度の領域を二値化反転彩度画像から除外すること等により行うことができる。
【0082】
全体特定部337cは、中央部特定部337aにより特定された中央部領域Ajsaと、すそ野部特定部337bにより特定されたすそ野部領域Ajsbとに基づき、接着剤6の全体領域Ajs(
図17参照)を特定するための全体特定工程を行う。全体特定工程では、前記中央部抽出画像と前記すそ野部抽出画像との論理和をとることで、接着剤抽出画像が取得される。
図17に接着剤抽出画像の一例を示す。接着剤抽出画像は、0(明部分)及び1(暗部分)を備えた白黒画像であり、画像記憶部342aに記憶される。本実施形態では、接着剤抽出画像における明部分が全体領域Ajsとして特定される。
【0083】
尚、接着剤抽出画像の取得にあたって、中央部領域Ajsaとすそ野部領域Ajsbとの間に孤立点(暗部分)が存在する場合には、該孤立点を埋める穴埋め処理(該孤立点を明部分として扱う処理)を行うようにしてもよい。
【0084】
上記のように、本実施形態では、カメラ322によって基板1を撮像する工程(撮像工程)と、中央部特定工程と、すそ野部特定工程と、全体特定工程とを行うことにより、最終的に全体領域Ajsが特定される。そして、基板1の全ての被検査領域を対象として上記各工程が行われることにより、基板1に設けられた全ての接着剤6に係る全体領域Ajsが特定される。
【0085】
判定部337dは、全体特定部337cにより特定された全体領域Ajsに基づいて、接着剤6に関する良否を判定するための判定工程を行う。判定工程では、検査用情報記憶部342bに記憶された設計データ又は製造データに基づき、接着剤6の基準検査範囲を示す接着剤検査窓Krs(
図18参照)が生成される。接着剤検査窓Krsは、接着剤6単体のサイズや位置に関する良否判定基準である。接着剤検査窓Krsは、データ上における接着剤6の占める平面領域と相似する形状であり、かつ、その中心座標が該平面領域の中心座標と同一の座標となる領域である。また、接着剤検査窓Krsは、データ上における接着剤6の占める平面領域よりも一回り大きなサイズに設定される。
【0086】
その上で、接着剤検査窓Krsを用いて全体領域Ajsが適正であるか否かが判定される。具体的には、接着剤検査窓Krsに対する全体領域Ajs以外の領域の占める範囲割合が予め設定された所定の閾値を超えるか否かについての判定が行われる。そして、前記範囲割合が前記閾値以下であれば接着剤6単体の塗布状態が「良」と判定され、前記範囲割合が前記閾値よりも大きければ接着剤6単体の塗布状態が「不良」と判定される。
【0087】
さらに、判定工程では、接着剤6及び半田4の位置関係が適正であるか否かの判定が行われる。より詳しくは、半田領域Ajhと全体領域Ajsとの重なり領域の面積が求められるとともに、この重なり領域の面積が予め設定された所定の面積閾値を超えるか否かが判定される(
図19参照)。ここで、重なり領域の面積が前記面積閾値を超えており、接着剤6及び半田4の位置関係が適正でない場合、半田4との位置関係の点で接着剤6の塗布状態が「不良」であると判定される。尚、この場合には、半田4の塗布状態も「不良」であるといえる。一方、重なり領域の面積が前記面積閾値以下であり、接着剤6及び半田4の位置関係が適正である場合、半田4との位置関係の点で接着剤6の塗布状態が「良」であると判定される。
【0088】
加えて、判定工程では、接着剤6及び電極部領域Adhの位置関係が適正であるか否かの判定も行われる。より詳しくは、全体領域Ajsと電極部領域Adhの重なり領域の面積が求められるとともに、この重なり領域の面積が予め設定された所定の面積閾値を超えるか否かが判定される(
図20参照)。ここで、重なり領域の面積が前記面積閾値を超えており、接着剤6及び電極部領域Adhの位置関係が適正でない場合、電極部5aの配置予定領域との関係で接着剤6の塗布状態が「不良」であると判定される。一方、重なり領域の面積が前記面積閾値以下であり、接着剤6及び電極部領域Adhの位置関係が適正である場合、電極部5aの配置予定領域との関係で接着剤6の塗布状態が「良」と判定される。
【0089】
そして、判定工程では、上記各判定の全てにおいて「良」と判定された場合、接着剤6の塗布状態が「良」と判定される。一方、上記各判定工程の少なくとも1つにて「不良」と判定された場合、接着剤6の塗布状態は「不良」と判定される。
【0090】
尚、本実施形態において、上記のような接着剤6に関する良否判定は、基板1上に設けられた全ての接着剤6を対象に行われる。そして、各接着剤6などのいずれかが「不良」と判定された場合、制御装置33によって基板1は「不良」であると判断される。基板1が「不良」であると判定された場合、前記分岐装置によって該基板1は前記不良品貯留部へと排出される。
【0091】
以上詳述したように、本実施形態によれば、中央部領域Ajsaは色相Hを利用して、すそ野部領域Ajsbは彩度Sを利用して、それぞれ特定される。このように光学的特性の異なる中央部領域Ajsa及びすそ野部領域Ajsbを異なる特定手法によって別々に特定するため、両者を精度よく特定することができ、ひいては接着剤6の占める領域(全体領域Ajs)をより正確に特定することができる。その結果、接着剤6の良否判定に係る精度をより良好なものとすることができる。
【0092】
また、中央部特定部337aは、中央部領域Ajsaの特定にあたって、色相画像のうちの赤色の領域を抽出する。従って、一般に広く用いられる赤色の接着剤6における中央部領域Ajsaをより正確にかつより容易に特定することができる。
【0093】
加えて、すそ野部特定部337bは、すそ野部領域Ajsbの特定にあたって、彩度画像から低彩度の領域を抽出する。従って、下地に当たる緑色のレジスト領域7の影響で比較的低い彩度となるすそ野部領域Ajsb(すそ野部6b)をより正確にかつより容易に特定することができる。
【0094】
さらに、すそ野部特定工程では、シルク8に係る領域を除外する処理が行われるため、シルク8に係る領域が接着剤6に係る領域(すそ野部領域Ajsb又は全体領域Ajs)として誤って特定されることをより確実に防止できる。これにより、接着剤6に係る領域をより一層正確に特定することができる。
【0095】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0096】
(a)上記実施形態において、中央部特定部337aは、中央部領域Ajsaの特定にあたって、RGB輝度画像に基づく色相画像のうちの赤色の領域を抽出するように構成されている。これに対し、中央部特定部337aは、中央部領域Ajsaの特定にあたって、RGB輝度画像に基づく赤色輝度画像のうちの所定の輝度閾値よりも高輝度の領域を抽出するものであってもよい。この場合、中央部特定工程は次のようにして行われる。
【0097】
すなわち、
図21に示すように、まず、ステップS31において、カメラ322によって得られたRGB輝度画像を用いて、基板1の被検査領域に係る赤色輝度画像が取得される。より詳しくは、RGB輝度画像において、RGBに係る各パラメータ値のうちRのパラメータ値のみを抽出することで、赤色輝度画像が取得される。
図22に赤色輝度画像の一例を示す。赤色輝度画像においては、Rのパラメータ値が比較的高い中央部6aが比較的明るいものとなる。また、赤色輝度画像においては、シルク8も比較的明るいものとなる。
【0098】
その後、ステップS32において、所定の輝度閾値を用いて前記赤色輝度画像に二値化処理を施すことにより、二値化赤色輝度画像が取得される。
図23に二値化赤色輝度画像の一例を示す。二値化赤色輝度画像は、0(明部分)及び1(暗部分)を備えた白黒画像である。該画像では、中央部6aのみならず、シルク8も明部分となる。
【0099】
次に、ステップS33において、二値化赤色輝度画像からシルク8に係る領域を除外すべく、シルク領域除外工程を行う。シルク領域除外工程では、まず、ステップS331において、RGB輝度画像のうちの特に彩度の低い領域を抽出すべく、RGB輝度画像に基づき彩度画像(
図12参照)が取得される。彩度画像において、彩度が比較的高い中央部6aなどは明るいものとなる一方、彩度が比較的低いシルク8は暗いものとなる。
【0100】
次いで、ステップS332において、所定の彩度閾値を用いて前記彩度画像に二値化処理を施すことにより、二値化彩度画像が取得される。
図24に二値化彩度画像の一例を示す。二値化彩度画像は、0(明部分)及び1(暗部分)を備えた白黒画像であり、画像記憶部342aに記憶される。二値化彩度画像においては、中央部6aが明部分となる一方、シルク8が暗部分となる。
【0101】
次に、ステップS333において、取得した二値化赤色輝度画像及び二値化彩度度画の論理積をとることで、二値化赤色輝度画像からシルク8に係る領域が除外される。これにより、中央部抽出画像(
図25参照)が取得される。この中央部抽出画像も、上記実施形態における中央部抽出画像と同様に、0(明部分)及び1(暗部分)を備えた白黒画像となる。そして、中央部抽出画像の明部分が中央部領域Ajsaとして特定される。
【0102】
(b)上記実施形態や上記(a)では、中央部領域Ajsaやすそ野部領域Ajsbを特定する際に、シルク8に係る領域を除外する処理を行うこととしている。これに対し、全体領域Ajsを特定する際に、シルク8に係る領域を除外する処理を行うこととしてもよい。
【0103】
この場合、中央部特定工程では、上記(a)のように、シルク8に係る領域を除外する処理を行う必要がないから、中央部特定部337aにより、中央部領域Ajsaとシルク8に係る領域とを含み、中央部領域Ajsaを特定可能な二値化赤色輝度画像(
図23)が取得される。また、すそ野部特定部337bでは、すそ野部領域Ajsbとシルク8に係る領域とを含み、すそ野部領域Ajsbを特定可能な二値化反転彩度画像(
図14参照)が取得される。
【0104】
そして、全体特定部337cでは、中央部特定部337aにより取得された二値化赤色輝度画像と、すそ野部特定部337bにより取得された二値化反転彩度画像との論理和をとることで、接着剤及びシルク抽出画像が取得される。
図26に接着剤及びシルク抽出画像の一例を示す。この画像には、全体領域Ajsのみならず、シルク8に係る領域が含まれる。全体特定部337cは、全体領域Ajsのみを特定するために、シルク8に係る領域を除外する処理(シルク領域除外工程)を行う。
【0105】
該シルク領域除外工程では、まず、シルク8に係る領域のみを抽出するための処理が行われる。すなわち、
図27に示すように、まず、ステップS41において、RGB輝度画像に基づき反転彩度画像(
図13参照)が取得されるとともに、ステップS42において、二値化反転彩度画像(
図14参照)が取得される。二値化反転彩度画像において、シルク8に係る領域は明部分となる。
【0106】
さらに、ステップS43において、RGB輝度画像に基づき明度画像(
図28参照)が取得される。その上で、ステップS44において、ステップS43にて得られた明度画像に対し所定の明度閾値を用いて二値化処理を施すことで、二値化明度画像(
図29参照)が取得される。尚、この明度閾値は、明度画像における中央部6a及びシルク8の明度に基づき設定される。二値化明度画像においても、二値化反転彩度画像と同様に、シルク8に係る領域は明部分となる。尚、ステップS41,S42の処理に先立って、又は、これら処理と並行して、ステップS43,S44の処理を行ってもよい。
【0107】
その後、ステップS45において、ステップS42にて取得された二値化反転彩度画像とステップS44にて取得された二値化明度画像との論理積をとることで、シルク8に係る領域8のみが抽出されたシルク画像(
図30参照)が取得される。尚、シルク画像においては、シルク8に係る領域を膨張させるための処理を行うこととしてもよい。このような処理を行うことで、シルク8に係る領域をより確実に除外することが可能となる。
【0108】
次いで、ステップS46,S47において、接着剤及びシルク抽出画像から、シルク8に係る領域が除外されることで、全体領域Ajsのみを含む接着剤抽出画像が取得される。まず、ステップS46において、ステップS45で取得されたシルク画像を反転させることで、反転シルク画像(
図31参照)が取得される。反転シルク画像では、シルク8に係る領域が暗部分となる。そして、ステップS47において、接着剤及びシルク抽出画像と反転シルク画像の論理積をとることで、接着剤及びシルク抽出画像からシルク8に係る領域が除外される。これにより、接着剤抽出画像(
図32)が取得される。全体特定部337cは、取得した接着剤抽出画像の明部分を全体領域Ajsとして特定する。
【0109】
(c)上記実施形態や上記(b)では、シルク8が白色である場合におけるシルク8に係る領域の除外について説明しているが、シルク8が黄色である場合には、次のようにしてシルク8に係る領域を除外することができる。すなわち、RGB輝度画像から色相画像を得るとともに、この色相画像における黄色の領域を特定(抽出)することで、シルク8に係る領域を抽出したシルク画像を得る。その上で、該シルク画像を用いること(例えば、上述の接着剤及びシルク抽出画像と該シルク画像の反転画像との論理積をとること)により、シルク8に係る領域を除外することができる。
【0110】
(d)上記実施形態では、中央部特定部337a(中央部特定工程)により、色相画像から中央部領域Ajsaを特定するにあたって、シルク8に係る領域を除外する処理は行われていないが、色相画像から中央部領域Ajsaを特定するにあたっても、上記(a)や(b)のようなシルク領域除外工程を行うこととしてもよい。
【0111】
(e)上記実施形態において、すそ野部特定部337bは、すそ野部領域Ajsbを特定するにあたって、二値化反転彩度画像からボンド8に係る領域を除外する処理を行うように構成されている。
【0112】
これに対し、すそ野部特定部337bは、二値化反転彩度画像におけるすそ野部6b及びシルク8に係る領域(
図14における明部分)のうち、中央部特定部337aにより特定された中央部領域Ajsaと接する、又は、該中央部領域Ajsaの周囲に位置する領域を、すそ野部領域Ajsbとして特定(抽出)するものであってもよい。この場合においても、すそ野部領域Ajsbをより正確にかつより容易に特定することができる。
【0113】
(f)上記実施形態及び上記(a)では、色相H又は赤色の輝度を利用して中央部領域Ajsaを特定するように構成されている。これに対し、明度V(例えば
図28のような明度画像)を利用して中央部領域Ajsaを特定するように構成してもよい。中央部6aについては、すそ野部6b及びレジスト領域7に対し、明度V、色相H及び赤色の輝度(RGBに係る各パラメータ値のうちRのパラメータ値)の点で比較的大きな差が生じやすいためである。
【0114】
また、上記実施形態では、彩度Sを利用してすそ野部領域Ajsbを特定するように構成されているが、色相H(例えば
図9のような色相画像)を利用してすそ野部領域Ajsbを特定するように構成してもよい。すそ野部6bについては、中央部6a及びレジスト領域7に対し、彩度S及び色相Hの点で比較的大きな差が生じやすいためである。
【0115】
尚、色相Hを利用して中央部領域Ajsa及びすそ野部領域Ajsbをそれぞれ特定する場合には、特定対象ごとに異なる色相閾値を用いて、中央部6a(中央部領域Ajsa)又はすそ野部6b(すそ野部領域Ajsb)を特定してもよい。従って、中央部領域Ajsaの特定手法とすそ野部領域Ajsbの特定手法とが異なるというのは、中央部領域Ajsa又はすそ野部領域Ajsbを特定するときに用いられる要素(色相H、彩度S、明度V及び赤色輝度)がそれぞれ異なっていたり、中央部領域Ajsa又はすそ野部領域Ajsbを特定するための閾値が異なっていたりするなど、中央部領域Ajsa及びすそ野部領域Ajsbの各光学的特性の差異を踏まえた両領域をそれぞれ特定するための条件が異なることをいう。
【0116】
(g)上記実施形態において、各リングライト321a,321b,321cは、白色光を照射するように構成されているが、赤色光、青色光又は緑色光(つまり、それぞれ異なる色)を照射するものであってもよい。また、この場合には、カメラ322をモノクロカメラにより構成し、各リングライト321a,321b,321cからの照射が順次行われる都度、該カメラ322によるプリント基板1の撮像を行い、計3種類の画像を得るように構成してもよい。そして、この3種類の画像に基づき、色相画像や彩度画像などを取得するようにしてもよい。尚、三種類の画像は、各画素に対応して、R(赤色)に係るパラメータ値、G(緑色)に係るパラメータ値、又は、B(青色)に係るパラメータ値がそれぞれ設定されているものである。従って、これら三種類の画像が「RGB輝度画像」に相当するということができる。
【符号の説明】
【0117】
1…プリント基板(基板)、6…接着剤、7…レジスト領域、8…シルク、13…基板検査装置、322…カメラ(撮像手段)、337a…中央部特定部(中央部特定手段)、337b…すそ野部特定部(すそ野部特定手段)、337c…全体特定部(全体特定手段)、337d…判定部(判定手段)、Ajs…全体領域、Ajsa…中央部領域、Ajsb…すそ野部領域。
【要約】
【課題】接着剤の占める領域をより正確に特定することができる基板検査装置などを提供する。
【解決手段】基板における少なくとも接着剤が塗布された領域を撮像することで、撮像画像が得られる。そして、撮像画像における接着剤の中央部領域を特定するとともに、中央部領域の特定手法とは異なる特定手法により、撮像画像における、中央部領域の周囲に位置する接着剤のすそ野部領域を特定する。その上で、それぞれ特定された中央部領域とすそ野部領域とに基づき、接着剤の全体領域Ajsを特定する。光学的特性の異なる中央部領域及びすそ野部領域を異なる特定手法によって別々に特定するため、両者が精度よく特定され、ひいては接着剤の占める領域(全体領域Ajs)がより正確に特定される。その結果、接着剤の良否判定に係る精度がより良好なものとなる。
【選択図】
図17