(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20220914BHJP
B60N 3/02 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N3/02 A
(21)【出願番号】P 2017196284
(22)【出願日】2017-10-06
【審査請求日】2020-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】三上 俊介
【審査官】小原 正信
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-196061(JP,A)
【文献】特開2002-078557(JP,A)
【文献】特開2017-114314(JP,A)
【文献】実開昭58-073044(JP,U)
【文献】特開2013-086590(JP,A)
【文献】特開平10-033307(JP,A)
【文献】実開昭56-098744(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/90
B60N 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員を支持するシート本体と、
前記シート本体の幅方向外側に形成される把持部と、を備え、
前記把持部は、
前記シート本体における着座面側に設けられる第1開口部と、
前記第1開口部より下方に形成される第2開口部と、
前記第1開口部、前記第2開口部、及び前記シート本体により囲まれる貫通部と、を有し、
前記把持部において、前記第2開口部が最下部に位置し、
前記シート本体は、シートクッション
と、該シートクッションの内部に設けられるブロアと、を有し、
前記第1開口部は、前記シートクッションの上面に形成され、
前記第2開口部は、前記シートクッションの下面に形成され
、
前記把持部は、前記貫通部における幅方向内側の面に1以上の通気孔が形成された通気部を有し、
前記ブロアと、前記通気部とは、通気路により接続されてい
ることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記把持部は、前記シートクッションにおいて、前後方向の中央より前方に形成されることを特徴とする請求項1記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記把持部は、前記シート本体に対向するドアの開口部の後端よりも前側に形成されることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記把持部は、スライドドアである前記ドアの開放方向における前記シートクッションの中央に対し、前記ドアの開放方向の反対側に形成されることを特徴とする請求項3に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記ドアは、回動軸となるヒンジ部を有し、
前記把持部は、前記ヒンジ部よりも、前記ドアの前記開口部の前記後端に近い位置に形成されることを特徴とする請求項3に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記第1開口部は、前記ドアの開閉を行う際に使用する操作部よりも下方に形成されることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記把持部は、シートフレームと、前記シートフレームに取り付けられる棒状部材と、により囲まれることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記シートクッションに対し傾動可能なシートバックを備え、
前記把持部は、前記シートバックよりも幅方向外側に設けられることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記把持部のうち、前記第2開口部を塞ぐ着脱可能な蓋部をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項10】
乗員を支持するシート本体と、
前記シート本体の幅方向外側に形成される把持部と、を備え、
前記把持部は、
前記シート本体における着座面側に設けられる第1開口部と、
前記第1開口部より下方に形成される第2開口部と、
前記第1開口部、前記第2開口部、及び前記シート本体により囲まれる貫通部と、を有し、
前記把持部において、前記第2開口部が最下部に位置し、
前記把持部は、前記貫通部における幅方向内側の面に1以上の通気孔が形成された通気部を有
し、
前記シート本体は、シートクッションと、該シートクッションの内部に設けられるブロアと、を有し、
前記ブロアと、前記通気部とは、通気路により接続されている
ことを特徴とする乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに係り、特に乗降を支援可能な乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
シートクッションの車両幅方向外側の座面部側に把持部として開口が形成されている乗物用シートが知られている(例えば下記の特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術では、把持部の底にゴミ等の異物が溜まる虞があった。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、乗降を支援可能とするとともに、ゴミ溜まりが抑制された乗物用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、本発明に係る乗物用シートによれば、乗員を支持するシート本体と、前記シート本体の幅方向外側に形成される把持部と、を備え、前記把持部は、前記シート本体における着座面側に設けられる第1開口部と、前記第1開口部より下方に形成される第2開口部と、前記第1開口部、前記第2開口部、及び前記シート本体により囲まれる貫通部と、を有し、前記把持部において、前記第2開口部が最下部に位置し、前記シート本体は、シートクッションと、該シートクッションの内部に設けられるブロアと、を有し、前記第1開口部は、前記シートクッションの上面に形成され、前記第2開口部は、前記シートクッションの下面に形成され、前記把持部は、前記貫通部における幅方向内側の面に1以上の通気孔が形成された通気部を有し、前記ブロアと、前記通気部とは、通気路により接続されていることにより解決される。
こうすることで、シート本体の幅方向外側に乗員が把持する把持部を設けることができる。これにより、シートの乗降時に乗員が把持部に掴まることができるため、乗降をサポートできる。そして、把持部の上下が開口しているため、把持部にはゴミ等の異物が溜まりにくくなる。
すなわち、乗降を支援可能とするとともに、ゴミ溜まりを抑制できる。
【0007】
また、第1開口部は、シートクッションの上面に形成され、第2開口部は、シートクッションの下面に形成されることで、ゴミ等の異物が把持部の中にさらに溜まりにくくなる。
【0008】
上記の乗物用シートにおいて、前記把持部は、前記シートクッションにおいて、前後方向の中央より前方に形成されると好適である。
こうすることで、乗員が乗降時に把持部に掴まりやすくなる。これにより、乗り降りがより容易となる。
【0009】
上記の乗物用シートにおいて、前記把持部は、前記シート本体に対向するドアの開口部の後端よりも前側に形成されると好適である。
こうすることで、ドアが邪魔にならない位置に把持部を設けることができる。
【0010】
上記の乗物用シートにおいて、前記把持部は、スライドドアである前記ドアの開放方向における前記シートクッションの中央に対し、前記ドアの開放方向の反対側に形成されると好適である。
こうすることで、スライドドアが邪魔にならない位置に把持部を設けることができる。
【0011】
上記の乗物用シートにおいて、前記ドアは、回動軸となるヒンジ部を有し、前記把持部は、前記ヒンジ部よりも、前記ドアの前記開口部の前記後端に近い位置に形成されると好適である。
こうすることで、ヒンジタイプのドアを大きく開くことなく、ヒンジタイプのドアの開口部を通じて把持部を掴むことができる。
【0012】
上記の乗物用シートにおいて、前記第1開口部は、前記ドアの開閉を行う際に使用する操作部よりも下方に形成されると好適である。
こうすることで、乗降時に掴みやすい高さに把持部を設けることができる。
【0013】
上記の乗物用シートにおいて、前記把持部は、シートフレームと、前記シートフレームに取り付けられる棒状部材と、により囲まれると好適である。
こうすることで、把持部の剛性を向上できる。これにより、乗降時に把持部が変形することを抑制し、乗降時のサポートをより安定させることができる。また、棒状部材を設けることで、シートパッドの形状出しが容易となる。
【0014】
上記の乗物用シートにおいて、前記シートクッションに対し傾動可能なシートバックを備え、前記把持部は、前記シートバックよりも幅方向外側に設けられると好適である。
こうすることで、シートバックを前傾させてシートを収納状態にしたときでも、把持部に掴まることが可能となる。これにより、シートの状態によらず乗員の乗降をサポートできる。
【0015】
上記の乗物用シートにおいて、前記把持部のうち、前記第2開口部を塞ぐ着脱可能な蓋部をさらに備えると好適である。
このように、第2開口部に蓋を付けることで、把持部を小物入れとしても使用できる。これにより、シートの利便性が向上する。
また、上記課題は、本発明に係る乗物用シートによれば、乗員を支持するシート本体と、前記シート本体の幅方向外側に形成される把持部と、を備え、前記把持部は、前記シート本体における着座面側に設けられる第1開口部と、前記第1開口部より下方に形成される第2開口部と、前記第1開口部、前記第2開口部、及び前記シート本体により囲まれる貫通部と、を有し、前記把持部において、前記第2開口部が最下部に位置し、前記把持部は、前記貫通部における幅方向内側の面に1以上の通気孔が形成された通気部を有し、前記シート本体は、シートクッションと、該シートクッションの内部に設けられるブロアと、を有し、前記ブロアと、前記通気部とは、通気路により接続されていることにより解決される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、乗降を支援可能とするとともに、ゴミ溜まりを抑制できる。
本発明によれば、ゴミ等の異物が把持部の中にさらに溜まりにくくなる。
本発明によれば、乗員が乗降時に把持部に掴まりやすくなる。
本発明によれば、ドアが邪魔にならない位置に把持部を設けることができる。
本発明によれば、スライドドアが邪魔にならない位置に把持部を設けることができる。
本発明によれば、ヒンジタイプのドアを大きく開くことなく、ヒンジタイプのドアの開口部を通じて把持部を掴むことができる。
本発明によれば、乗降時に掴みやすい高さに把持部を設けることができる。
本発明によれば、把持部の剛性を向上できる。
本発明によれば、シートの状態によらず乗員の乗降をサポートできる。
本発明によれば、シートの利便性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係るシートを備える車両の側面図である。
【
図2】車両のスライドドアを開放した状態を示す図である。
【
図8】シートクッションの通気構造を説明する図である。
【
図10】ヒンジドアとシートに形成される把持部の位置関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、
図1乃至
図10を参照しながら、本発明の実施の形態(以下、本実施形態)に係る乗物用シートとしてのシートSについて説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0019】
図1には、本実施形態に係るシートSを搭載した車両1を示した。なお、以下において、「前後」、「上下」、「左右」の各方向は、車両1のシートSに着座する乗員から見たときの「前後」、「上下」、「左右」の各方向に一致する。
【0020】
車両1は、自動車であり、側部にヒンジドア2と、スライドドア3を備える。具体的には、ヒンジドア2は操作部2Aを備え、操作部2Aを操作することによりヒンジドア2を開放し、車両1に乗り込むことができる。
また、スライドドア3は操作部3Aを備え、操作部3Aを操作することにより、
図2に示すようにスライドドア3を後方にスライドさせて開放し、車両1に乗り込むことができる。
なお、本実施形態では、スライドドア3の開放方向は、後方となる。
【0021】
そして、
図2に示されるように、スライドドア3を開放することで、車両1に備えられたシートSが現れる。
【0022】
ここで、
図3には、シートSの斜視図を示した。
図3に示されるように、シートSは、シートクッションS1、シートバックS2、ヘッドレストS3及びリクライニング機構5を備える。
シートクッションS1は、主に乗員の臀部や大腿部を支持する。
シートバックS2は、主に乗員の腰部や背部を支持する。
ヘッドレストS3は、主に乗員の頭部を支持する。
リクライニング機構5は、シートクッションS1に対してシートバックS2を傾動可能に連結する。
なお、本実施形態において、シートクッションS1、シートバックS2、ヘッドレストS3のように乗員を支持する部材をシート本体と称する。
また、シートSの左右方向は(シート)幅方向に相当し、シートSに対して最も近いドア(ヒンジドア2、スライドドア3)の方向を外側、その反対方向を内側とする。そして、
図3に示す例においては、左側が外側に、右側が内側に相当する。
【0023】
また、
図3に示されるように、シートクッションS1の中央部10の左側の側部11には、把持部15が形成されている。すなわち、把持部15は、シート本体としてのシートクッションS1の幅方向外側に形成されている。
【0024】
この把持部15は、シートクッションS1の上面(着座面)に形成された第1開口部21と、シートクッションS1の下面に形成された第2開口部22と、第1開口部21と第2開口部22とを貫く空間としての貫通部20を有する。換言すれば、貫通部20は、第1開口部21、第2開口部22、及びシート本体としてのシートクッションS1により囲まれる部分である。
また、把持部15において、第2開口部22は最下部に位置する。こうすることで、把持部15にゴミが溜まることを抑制できる。
【0025】
乗員は、シートクッションS1に形成された把持部15に指を入れることで、シートクッションS1の側部11とともに把持部15を把持することができる。このように、乗員はシートSへの乗降時に把持部15を掴むことで、シートSへの乗降を行いやすくなる。
【0026】
図4には、シートSの骨格となるシートフレームFを示した。
図4に示されるように、シートフレームFは、シートクッションフレーム40、シートバックフレーム50及びリクライニング機構5を備える。
シートクッションフレーム40は、シートクッションS1の骨格部分に相当し、シートバックフレーム50はシートバックS2の骨格部分に相当する。
そして、リクライニング機構5は、シートクッションフレーム40とシートバックフレーム50とを連結する機構である。
【0027】
シートクッションフレーム40は、主な構成として、クッションサイドフレーム41L、クッションサイドフレーム41R、パンフレーム42及びパイプフレーム44を備える。
左に配されるクッションサイドフレーム41Lと、右に配されるクッションサイドフレーム41Rとのそれぞれの前端をパンフレーム42が連結し、後端をパイプフレーム44が連結する。
これにより、シートクッションフレーム40は略矩形の枠状に構成される。
【0028】
そして、シートクッションS1の把持部15が形成される箇所に対応して、クッションサイドフレーム41Lにはワイヤー43が取り付けられる。ワイヤー43は、金属製の棒状部材からなり、例えば溶接によりクッションサイドフレーム41Lに接合される。
すなわち、把持部15は、クッションサイドフレーム41Lと、クッションサイドフレーム41Lに取り付けられるワイヤー43(棒状部材)と、により囲まれる。
このワイヤー43が取り付けられる位置は、第1開口部21に近い箇所とする。このように把持部15がワイヤー43により囲まれていることで、把持部15の剛性が高くなる。そのため、乗員が把持部15を掴んでも、把持部15の変形が抑制され、乗降時の乗員を安定的にサポートできる。
【0029】
ここで、把持部15の位置について説明する。
図5には、シートクッションS1に対してシートバックS2を前傾させて折り畳んだ状態、すなわち収容状態におけるシートSの上面図を示した。
図5に示されるように、把持部15は、シートクッションS1における前後方向中央Cよりも前方に設けられる。
【0030】
ここで、シートクッションの前後方向中央Cより前側の着座面は、前後方向中央Cより後側の着座面よりも高くなっており、把持部15は前後方向において高めに設定された前側の着座面に形成される。
【0031】
さらに、把持部15は、シートバックS2に対して、シート幅方向外側に形成される。
こうすることで、シートSが収容状態にある場合でも、把持部15をシートクッションS1の上面において露出させることができる。これにより、シートSが起立状態(使用状態)であっても、収容状態(未使用状態)であっても、乗員はシートSへの乗降時に把持部15を利用することができる。
【0032】
また、
図2に示されるように、シートSにおける把持部15は、対向するドア(例えばスライドドア3)が開放した際の開口部後端3Bよりも前側に形成される。
【0033】
また、
図2に示されるように、シートSにおける把持部15は、スライドドア3の開放方向におけるシートクッションS1の中央に対し、スライドドア3の開放方向の反対側に形成される。
具体的には、スライドドア3の開放方向が前方であれば、把持部15は、シートクッションS1の中央よりも後側に形成される。
また、スライドドア3の開放方向が後方であれば、把持部15は、シートクッションS1の中央よりも前側に形成される。
【0034】
また、
図2に示されるように、シートSにおける把持部15は、ドア(スライドドア3)の開閉を行う際に使用する操作部(操作部3A)よりも下方に形成される。このように、把持部15を低い位置に形成することで、老人や子供にとっても把持部15を掴みやすくなり、乗降を楽に行うことができる。
【0035】
また、
図6に示すように、把持部15の第2開口部22には、着脱可能な蓋部24を取り付けてもよい。
図6に示すように、蓋部24は、嵌合部24Aと板部24Bを備える。ここで、嵌合部24Aは、板部24Bの上部に設けられており、第2開口部22から貫通部20に入り込むことで、第2開口部22と嵌合する。
板部24Bは、第2開口部22よりも面積が大きい板状の部材である。このように、第2開口部22に蓋部24を取り付けることで、把持部15に底部を設けることができる。こうすることで、把持部15を小物入れとして利用することができる。
蓋部24は、把持部15から着脱可能であるため、蓋部24を外すことで、把持部15に溜まったゴミを容易に取り除くことができる。
【0036】
なお、蓋部の構成は上記の蓋部24に限られるものではなく、以下のように構成してもよい。
まず、蓋部の上面に面ファスナーを設け、シートクッションS1の下面に張り付くように構成してもよい。
また、シートクッションS1の第2開口部22の周囲に線ファスナーを設け、線ファスナーを用いて蓋部を着脱可能に設けてもよい。
また、蓋部は第2開口部22に対してスライド可能とし、蓋部のスライドに応じて第2開口部22の開閉を切り替えるようにしてもよい。
【0037】
[第1の変形例]
次に、
図7及び
図8を参照しながら、シートSの第1の変形例について説明する。
図7に示されるように、把持部15(貫通部20)において、シート幅方向内側の面には、シートSの内部に設けられたブロア30の通風のための1以上の通気孔が形成された通気部23が設けられる。
【0038】
ここで、
図8に示されるように、シートクッションS1の内部にはブロア30が設けられており、ブロア30と通気部23とは、第1通気路31により接続されている。また、ブロア30に対し、シートクッションS1の中央部10には第2通気路32が形成されている。
このように、通気部23、第1通気路31を通じてブロア30が取り込んだ空気を、第2通気路32から乗員に吹き当てるようにすることができる。
また、第2通気路32を通じてブロア30が取り込んだ空気を、第1通気路31、通気部23を通じて排気することができる。
なお、通気部23をエアフィルターとすることで、ブロア30へのホコリの浸入を抑制することができる。
【0039】
[第2の変形例]
次に、
図9を参照しながら、シートSの第2の変形例について説明する。
図9に示されるように、第2の変形例に係るシートSでは、把持部15Aの第2開口部22Aが、シートクッションS1の側面12に形成されている点で、
図3に示すシートSとは相違している。
【0040】
そして、シートクッションS1の上面に形成された第1開口部21と第2開口部22Aとを貫く貫通部20Aは湾曲している。
このように把持部15Aを構成した場合には、第1開口部21から貫通部20Aに入ったゴミは、湾曲した貫通部20Aの内部を通って、シートクッションS1の側面12に形成された第2開口部22AからシートSの側部に排出される。これにより、シートSをスライドさせなくともゴミの掃除が可能となる。
【0041】
ここで、
図10を参照しながら、ヒンジドア2とシートSに形成される把持部15の位置関係について説明する。
図10には、車両1のヒンジドア2を開放した状態の模式図を示した。なお、
図10においては、車両1においてヒンジドア2に対応する(すなわち近接する)シートS以外のシートSについては図示を省略している。
【0042】
図10に示されるように、ヒンジドア2は、開放時の回動軸となるヒンジ部2Bを有する。そして、シートSの把持部15は、前後方向において、ヒンジドア2の開口部前端としてのヒンジ部2Bと、開口部後端2Cとの間であって、ヒンジ部2Bよりも開口部後端2Cに近い側に形成される。
すなわち、把持部15は、ヒンジ部2Bと開口部後端2Cの前後方向における中央位置よりも、開口部後端2C側に形成される。
こうすることで、ヒンジドア2を大きく開くことなく、開口部から把持部15を掴むことが容易となる。
【0043】
[まとめ]
シートSは、乗員を支持するシートクッションS1(シート本体の一例)と、シートクッションS1の幅方向外側に形成される把持部15と、を備える。把持部15は、シートクッションS1における着座面側に設けられる第1開口部21と、第1開口部21より下方に形成される第2開口部22と、第1開口部21、第2開口部22、及びシートクッションS1により囲まれる貫通部20と、を有する。そして、把持部15において、第2開口部22が最下部に位置する。
こうすることで、シート本体の幅方向外側に乗員が把持する把持部15を設けることができる。これにより、シートSの乗降時に乗員が把持部15に掴まることができるため、乗降をサポートできる。そして、把持部15の上下が開口しているため、把持部15にはゴミ等の異物が溜まりにくくなる。
すなわち、シートSによれば、乗降を支援可能とするとともに、ゴミ溜まりを抑制できる。
【0044】
シートSでは、シート本体は、シートクッションS1を有し、第1開口部21は、シートクッションS1の上面に形成され、第2開口部22は、シートクッションS1の下面に形成される。
こうすることで、ゴミ等の異物が把持部15の中にさらに溜まりにくくなる。
【0045】
シートSでは、把持部15は、シートクッションS1において、前後方向の中央より前方に形成される。
こうすることで、乗員が乗降時に把持部15に掴まりやすくなる。これにより、乗り降りがより容易となる。
【0046】
シートSでは、把持部15は、シート本体に対向するドア(ヒンジドア2、スライドドア3)の開口部の後端(例えば開口部後端3B)よりも前側に形成される。
こうすることで、ドアが邪魔にならない位置に把持部15を設けることができる。
【0047】
シートSでは、把持部15は、スライドドア3の開放方向におけるシートクッションS1の中央に対し、ドアの開放方向の反対側に形成される。
こうすることで、スライドドア3が邪魔にならない位置に把持部15を設けることができる。
【0048】
シートSでは、ヒンジドア2は、回動軸となるヒンジ部2Bを有し、把持部15は、ヒンジ部2Bよりも、ヒンジドア2の開口部後端2Cに近い位置に形成される。
こうすることで、ヒンジドア2を大きく開くことなく、ヒンジドア2の開口部を通じて把持部15を掴むことができる。
【0049】
シートSでは、第1開口部21は、ドアの開閉を行う際に使用する操作部(操作部2A、操作部3A)よりも下方に形成される。
こうすることで、乗降時に掴みやすい高さに把持部15を設けることができる。
【0050】
シートSでは、把持部15は、シートフレームFと、シートフレームFに取り付けられるワイヤー43(棒状部材)と、により囲まれる。
こうすることで、把持部15の剛性を向上できる。これにより、乗降時に把持部15が変形することを抑制し、乗降時のサポートをより安定させることができる。また、ワイヤー43(棒状部材)を設けることで、シートパッドの形状出しが容易となる。
【0051】
シートSでは、シートクッションS1に対し傾動可能なシートバックS2を備え、把持部15は、シートバックS2よりも幅方向外側に設けられる。
こうすることで、シートバックS2を前傾させてシートSを収納状態にしたときでも、把持部15に掴まることが可能となる。これにより、シートSの状態によらず乗員の乗降をサポートできる。
【0052】
シートSでは、把持部15のうち、第2開口部22を塞ぐ着脱可能な蓋部24をさらに備える。
このように、第2開口部22に蓋を付けることで、把持部15を小物入れとしても使用できる。これにより、シートSの利便性が向上する。
【0053】
シートSでは、シート本体の内部に設けられるブロア30を備え、貫通部20の幅方向内側の面に、ブロア30の通風のための通気孔が形成された通気部23が設けられる。
こうすることで、ブロア30への通気孔を目立たない箇所に設けることができる。さらに、貫通部20にはゴミが溜まりにくいため、通気孔が詰まることを防止できる。
【0054】
[その他の実施形態]
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
例えば、把持部15において第1開口部21に対し、第2開口部22を複数形成してもよい。
また、シートクッションS1において把持部15を複数形成してもよい。
【0055】
また、ヒンジドア2を開いて乗降するシートSに対しても同様に把持部15を形成することとしてよい。
【0056】
また、把持部15の剛性を高めるために、ワイヤー43に代えて、金属製の筒状部材を用いてもよい。
また、ワイヤー43は、シートクッションフレーム40に対してではなく、シートクッションS1のパッド側に埋設してもよい。すなわち、パッドには形状を維持するための骨子になるインサートワイヤが挿通されている場合があり、そのインサートワイヤの一部を把持部15の剛性を高めるフレームとして用いてもよい。
【0057】
また、貫通部20の幅方向外側の面には、連続する凹凸が形成されていてもよい。この凹凸は、指の形状に合わせて、波状に形成することとしてよい。
【0058】
また、上記の実施形態では、シートクッションS1に把持部15を設けた例について説明したが、把持部15はシートバックS2や、シートバックS2のアームレスト等に設けてもよい。
【0059】
また、本発明は、車両、船舶、飛行機等の各種乗物のシートに対して適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 車両
2 ヒンジドア
2A 操作部
2B ヒンジ部
2C 開口部後端
3 スライドドア
3A 操作部
3B 開口部後端
5 リクライニング機構
10 中央部
11 側部
12 側面
15 把持部
15A 把持部
20 貫通部
20A 貫通部
21 第1開口部
22 第2開口部
22A 第2開口部
23 通気部
24 蓋部
24A 嵌合部
24B 板部
30 ブロア
31 第1通気路
32 第2通気路
40 シートクッションフレーム
41L クッションサイドフレーム
41R クッションサイドフレーム
42 パンフレーム
43 ワイヤー(棒状部材)
44 パイプフレーム
50 シートバックフレーム
C 前後方向中央
F シートフレーム
S シート(乗物用シート)
S1 シートクッション(シート本体)
S2 シートバック(シート本体)
S3 ヘッドレスト(シート本体)