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特許7141030日射計およびこれを使用する雲の挙動予測システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】日射計およびこれを使用する雲の挙動予測システム
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/02 20060101AFI20220914BHJP
   G01J 1/04 20060101ALI20220914BHJP
   G01W 1/12 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
G01J1/02 U
G01J1/04 E
G01W1/12 G
G01W1/12 D
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2017212478
(22)【出願日】2017-11-02
(65)【公開番号】P2019086317
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504243095
【氏名又は名称】株式会社エイム
(74)【代理人】
【識別番号】100149320
【弁理士】
【氏名又は名称】井川 浩文
(74)【代理人】
【識別番号】100113664
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 正往
(74)【代理人】
【識別番号】110001324
【氏名又は名称】特許業務法人SANSUI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝川 浩史
(72)【発明者】
【氏名】針谷 達
(72)【発明者】
【氏名】谷本 壮
(72)【発明者】
【氏名】竹内 悠人
(72)【発明者】
【氏名】高岡 秀司
(72)【発明者】
【氏名】平塚 元久
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-132730(JP,A)
【文献】実公平01-043620(JP,Y2)
【文献】米国特許出願公開第2011/0198480(US,A1)
【文献】実開昭55-181567(JP,U)
【文献】特開2010-286458(JP,A)
【文献】国際公開第2005/048208(WO,A1)
【文献】特開2005-287377(JP,A)
【文献】特開2009-162508(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0052172(US,A1)
【文献】特開2017-198520(JP,A)
【文献】片岡佑人,フォトダイオードを用いたアレイ型簡易日射計の試作,第24年度 電気関係学会東海支部連合大会 講演論文集,2012年,p.M5-6
【文献】針谷達,温度補償を施した太陽電池簡易日射計の開発,電気学会論文誌A(基礎・材料・共通部門誌),Vol.137 No.11,pp.674-675
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00-1/60
G01W 1/00-1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、該基台に設けられる保持部と、該保持部に収納される少なくとも1個の光電変換センサと、該光電変換センサの受光面を含む範囲について特定波長の光を透過させる材質により被覆するカバーとを備え、
前記カバーは、光電変換センサの周辺において前記保持部の外側または前記基台の外側に配置される側壁部と、外側表面を上部表面とする天板部とが、一体的に構成されてキャップ状となるものであり、
前記カバーは、複数の板状もしくは膜状の材料によって多層構造とし、または天板部に積層体が積層された構成とされており、
前記カバーもしくは前記積層体または前記多層構造の最外層に位置する材料は、強化ガラス製、ポリテトラフルオロエチレン製、アクリル製、塩化ビニル製、ポリプロピレン製もしくはポリカーボネート製、またはこれらに強化繊維を混合したもので構成されており、
前記天板部の内層材料には、合成樹脂、発泡材、ゴムまたはエラストマーによる衝撃緩和効果を有する材料が用いられている
とを特徴とする日射計。
【請求項2】
前記天板部の内層材料に用いられる衝撃緩和効果を有する材料は多孔質である請求項1に記載の日射計。
【請求項3】
前記カバーが多層構造である場合の最外層に使用する材料は、ガラス繊維入りポリテトラフルオロエチレン、炭素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチック、エンジニアリング・プラスチックまたはスーパーエンジニアリング・プラスチックで構成されている請求項1または2に記載の日射計。
【請求項4】
前記カバーは、厚さ0.1mm~10mmであり、波長400nm~700nmの光を0.01%~95%の透過率で透過させるものである請求項1~3のいずれかに記載の日射計。
【請求項5】
前記カバーは、獣害忌避または虫害忌避のための忌避手段が設けられている請求項1~4のいずれかに記載の日射計。
【請求項6】
前記忌避手段は、前記カバーのうち前記光電変換センサの受光面を被覆する特定領域を少なくとも含む範囲において、前記カバーの表面から適宜間隔を有して設置されるワイヤ部材、該カバーの表面から立設される尖端状の突起、該カバーの表面に塗布される忌避剤、該カバーの表面に塗布されるものであって忌避効果を有する色彩のコーティング剤の中から選択された1以上が設けられている請求項5に記載の日射計。
【請求項7】
前記忌避手段は、前記カバーのうち前記光電変換センサの受光面を被覆する特定領域を少なくとも含む範囲において、前記カバーが多層構造である場合の該カバーの表面を除くいずれかの材料に設けられており、該多層構造を形成する材料のいずれか1以上が反射光を低減させる材料または忌避効果を有する色彩の材料によって構成されている請求項5に記載の日射計。
【請求項8】
基台と、該基台に設けられる複数の光電変換センサと、特定波長の光を透過させる材質により前記基台の全体を被覆するキャップ状のカバーとを備え、
前記カバーは、天板部を備え、該天板部には、大きさ0.1~2mm、高さ0.1~5mm、間隔0.1~5mmとするディンプル加工による凸部またはエンボス加工による凹部が構成されており、
前記天板部は、エンジニアリング・プラスチック、スーパーエンジニアリング・プラスチック、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂によって構成され、
前記天板部の下層には、衝撃吸収用の樹脂フィルム、厚さ5mm以下の炭素繊維強化プラスチックもしくはガラス繊維強化ポリマーまたは光量もしくは色調調整用の着色樹脂が積層されているものである
ことを特徴とする日射計。
【請求項9】
前記カバーは、厚さ0.1mm~10mmであり、波長400nm~700nmの光を0.01%~95%の透過率で透過させるものである請求項8に記載の日射計。
【請求項10】
前記カバーまたは前記多層構造の最外層に位置する材料は、光触媒能を有する材料および導電性材料のいずれか一方または双方が塗布または含有されている請求項1~9のいずれかに記載の日射計。
【請求項11】
前記光電変換センサの両端の間に接続された抵抗と、該抵抗に対して直列または並列に接続されたサーミスタとを備える請求項1~10のいずれかに記載の日射計。
【請求項12】
前記サーミスタは、前記光電変換センサの裏面または該光電変換センサを支持する基台の一部に当接した状態で設けられる請求項11に記載の日射計。
【請求項13】
前記光電変換センサは、光電変換素子が利用でき、太陽電池、フォトダイオード、フォトトランジスタ、焦電素子または光電セルのいずれかである請求項1~12のいずれかに記載の日射計。
【請求項14】
前記光電変換センサは、複数の光電変換センサによる光電センサモジュールであり、個々の光電変換センサには、バイパスダイオードが配置されている請求項1~13のいずれかに記載の日射計。
【請求項15】
日射は、日射強度(W/m2)、日射量(J/m2)、照度(lx)、光量子束密度(μmol・m-2・s-1)、太陽光依存性抵抗(Ω)、太陽光発電電力(kW/m2)または太陽熱集熱量(kW/m2)の1つ以上である請求項1~14のいずれかに記載の日射計。
【請求項16】
請求項1~15のいずれかに記載の日射計を使用する雲の挙動予測システムであって、
適宜間隔を有しつつ少なくとも3箇所のそれぞれに前記日射計が設置されることによって形成される雲影センサと、
該雲影センサが十分な距離を有しつつ複数の地点に設置されることによって形成される雲影センサ群と、
個々の前記日射計、雲影センサおよび雲影センサ群によって計測される計測値および計測時刻から雲の挙動情報を算出する演算部と
を備えることを特徴とする雲の挙動予測システム。
【請求項17】
前記日射計は、既設の支柱に設置されるものであって、
前記支柱に設置するための基部と、該基部から突出する支持部と、該支持部によって支持される日射計とを備え、
前記支持部は、前記基部から複数立設されており、各支持部に少なくとも1個の日射計が設けられている請求項16に記載の雲の挙動予測システム。
【請求項18】
前記雲影センサを形成する個々の日射計は、相互に10m以上の間隔を有して配置されるものである請求項16または17に記載の雲の挙動予測システム。
【請求項19】
前記雲影センサ群を形成する個々の雲影センサは、相互に1km以上の距離を有して配置されるものである請求項16~18のいずれかに記載の雲の挙動予測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外や温室等の鳥類や昆虫などが飛来するなどの可能性がある場所に設置される日射計と、その日射計を使用する雲の挙動予測システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
屋外等に設置されることを前提とした日射計にかかる従来技術は、光電変換素子からなるセンサをガラスドームで覆うとともに、そのガラスドームの表面に光触媒層を設けるものがあった(特許文献1参照)。この技術は、屋外に設置した日射計が風雨に晒され、ガラスドームの表面に汚れが沈着することを防止するために開発されたものであった。
【0003】
ところが、近年では、カラスや椋鳥等の鳥類が街中に飛来し、糞害が問題となっている。これは日射計においても例外ではなく、特に、高所に設置する場合には、鳥類の飛来が容易となり、しかも、鳥類は、日射計を構成する受光面等による反射光に反応しやすく、その襲来を招来することがあり、受光面または被覆面が汚損によって太陽光を遮る原因となることが想定される。また、比較的低い場所に設置する場合には、昆虫等が飛来し、または這え上がることもあり、それらの死骸等による受光面の汚損も想定されるところである。しかも、カラスなどの鳥類は、小石等の固形物を上空から落下させることがあり、鳥類等が飛来する際には、このような小石等の落下によって、日射計(特に受光面)が破損することの懸念もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-132730号公報
【文献】特開2016-1958号公報
【文献】特開2013-250129号公報
【文献】特開2015-59821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鳥類の糞や昆虫の死骸等の除去については、光触媒によっても除去し得るものではあるが、鳥類等が日射計の受光面に飛来し、有翅昆虫などが日射計の受光面付近を飛び回ることにより、また無翅昆虫等が受光面を這うことによって、太陽光を遮って影を作ることから日射量計測に支障をきたすものとなっていた。そのため、これらを十分に防護することが要請される。その対策が不十分である場合には、定期的に見回り(清掃や虫除け対策等の実施)が必要となり、特に、高所に設置した場合には、その作業が容易でなく、しかも長期間の屋外等に設置することによって日射計測は誤差を含むものとなっていた。その結果として、日射計による測定値は日射量として使用できず参考データとして使用せざるを得なかった。
【0006】
また、太陽光発電システムにおいて、発電量の推定に際して感雨センサとともに日射計による日射量に基づいて天候状態を検出する構成もあるが(特許文献2参照)、この技術は、天候状態を検出するためのものであり、感雨センサのデータとともに参照されるものであり、太陽光発電システムに照射される日射量を測定するものとして使用されてはいなかった。すなわち、発電量を推定するためのものではなく、発電の可否を判断するために利用される程度であった。
【0007】
他方、雲の挙動を予測する技術にあっては、日射量予測の一形態として開発されたものがあり、雲の移動を検出して日射量を予測するものであった。この技術は、日射計による日射量を測定するものではなく、天空等を撮影した画像を解析することにより、雲塊の存在およびその挙動を検出するものであった(特許文献3および4参照)。
【0008】
ところが、天空等の画像を解析するためには膨大な情報量を必要とし、雲塊の存在を確認し得たとしても、その雲塊による日射の影響については、さらに解析が必要となり、しかも現実の日射に対する影響は、予想されたものと必ずしも一致しないものとなっていた。そのため、太陽光発電システムにおける発電量予測に使用する場合には、予想される日射量と現実の日射量が乖離すれば、その発電計画に支障をきたすこととなり得るものであった。
【0009】
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、鳥類や昆虫等の飛来等に起因する破損等や誤計測を防止し、日射量計測に適する日射計を提供し、併せて日射量に影響を及ぼす雲についての挙動予測システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、日射計に係る本発明は、少なくとも1個の光電変換センサと、該光電変換センサの受光面を含む範囲について特定波長の光を透過させる材質により被覆するカバーとを備えることを特徴とするものである。
【0011】
上記構成によれば、少なくとも光電変換センサの受光面は、特定波長が透過できる材料によって被覆されるため、カバーによる被覆によって透過光の測定は可能となる。光電変換センサは一般的に光電変換素子によるものであり、受光面の保護が機能維持に重要である。そこで、少なくとも光電変換素子である光電変換センサの受光面を覆う形態を有するものであれば、本発明のカバーに該当し、シート状に限らずキャップ状であってもよく、硬質または軟質のいずれのものでもよい。また、このカバーに加工を施すことにより、鳥類や昆虫等の飛来等から防護することができる。例えば、カバーをすりガラスのように減光効果を有する加工を施すことにより、受光面等からの反射光の発生を抑制することができる。また、着色ガラスや着色樹脂によって減光効果を発揮させることもでき、ND(Neutral Density)フィルタ機能を有するフィルムや偏光フィルムなどの減光効果フィルムあるいは概板状物体を使用することも可能である。さらに、カバーに強度を付与するために多層構造としてもよく、強化ガラスに減光効果を有する樹脂等を積層する構成でもよい。特定波長とは、いわゆる可視光全般(波長400nm~700nm)であり、紫外光や赤外光を含まないものである。これは日射以外の光を計測させないことにより、日射量を正確に計測するためである。なお、着色ガラスや着色樹脂の使用によって可視光(波長400nm~700nm)の一部が遮断されることもあり、限定された透過光についても特定波長に属するものである。
【0012】
上記構成による日射計に係る本発明において、前記カバーは、厚さ0.1mm~10mmであり、波長400nm~700nmの光を0.01%~95%の透過率で透過させるものであるものとすることができる。
【0013】
上記構成によれば、いわゆる可視光を特定範囲で透過させ、適度な透過率を有する材料によってカバーを構成することにより、光電変換センサの特性に応じた光の照射を測定することができる。透過率を0.01~95%の範囲内としているのは、減光効果を有する材料によって作製した場合のカバーを考慮しており、例えば、超高感度の光電変換センサを用いた場合、出力の飽和を避けるため、減光効果を有する材料によって透過率を小さくすることができる。厚さを0.1mm~10mmとすることにより、適度な減光効果を得ながら鳥類や昆虫等による破損等を防止する効果を得ることができる。すなわち、カバーは単層構造の場合もあれば多層構造の場合もあり、板状部材による単層構造の場合は1mm、多重構造でも2mm~3mm程度とすることができ、樹脂フィルムによる単層構造の場合は0.1mm、多重構造で一部に板状材料を使用して1.1mm~2.2mmとしている。これらの肉厚は、最小でも0.1mmとすることで最小限度の強度を担保するものであり、最大でも5mmを上限とすることにより、減光効果による透過光強度をある程度に維持し、また重量の過度の増加をもたらさない。なお、衝撃緩和材を利用する場合や表面に凹凸構造を形成する場合には、実質的に全体の厚さが10mm程度となることもあるが、この種の構成の場合には重量の大きな増加はなく、また、減光効果は適宜材料を選択することにより調整され得るものである。
【0014】
上記各構成の日射計に係る本発明において、前記カバーは、複数の板状または膜状の材料によって多層構造とされている構成とすることができる。
【0015】
上記構成によれば、少なくとも光電変換センサの受光面を含む範囲を複数の層状とすることができ、所望の効果を得るための材料を積層させることができる。例えば、補強のための強化ガラスの表面に、忌避効果を有する着色材料や減光効果を有する材料を積層することにより、鳥類や昆虫等の飛来等からの防護を可能にし得る。また、着色材料と減光効果材料とを積層することも可能となる。
【0016】
上記各構成による日射計に係る本発明において、前記カバーは、獣害忌避または虫害忌避のための忌避手段が設けられている構成とすることが好ましい。
【0017】
忌避手段としては、前記カバーの表面から適宜間隔を有して設置されるワイヤ部材、該カバーの表面から立設される尖端状の突起、該カバーの表面に塗布される忌避剤、該カバーの表面に塗布されるものであって忌避効果を有する色彩のコーティング剤の中から選択された1以上であり、前記カバーのうち前記光電変換センサの受光面を被覆する特定領域を少なくとも含む領域に設けられているような構成がある。
【0018】
上記構成によれば、鳥類などによる獣害または昆虫などによる虫害から日射計を防護することができる。カバー表面に設置されたワイヤ部材または尖端状またはドーム状突起は、鳥類が留まることから防護するものであり忌避剤またはコーティング剤は、その忌避効果による鳥類または昆虫等の接近から防護することができる。鳥類や昆虫等が近づけないことにより、主位的には、鳥類が飛来し、また有翅昆虫が近傍を飛び回ることによる日射の遮断を回避し、さらに、無翅昆虫の侵入を回避することにより、測定すべき日射を確保し得ることとなる。まだ、副次的には、糞害を防止し、また昆虫の死骸等の付着を防止できる。
【0019】
また、前記の各構成による日射計に係る本発明において、前記カバーまたは前記多層構造の最外層に位置する材料は、耐水性および撥水性のいずれか一方または双方を有する強化ポリマー製で構成することができる。このような構成の場合には、降雨時または洗浄(清掃)時において、当該カバーによって被覆される光電変換センサに洗浄水または雨水等の侵入を防止できる。
【0020】
さらに、前記の各構成による日射計に係る本発明において、前記カバーまたは前記多層構造の最外層に位置する材料は、強化ガラス製、ポリテトラフルオロエチレン製、アクリル製、塩化ビニル製、ポリプロピレン製もしくはポリカーボネート製、またはこれらに強化繊維を混合したもので構成されるものでもよい。ガラス繊維入りポリテトラフルオロエチレンなどが好適である。炭素繊維強化プラスチック(CFPR)やガラス繊維強化プラスチック(FRP)を用いてもよい。耐熱性のあるエンジニアリング・プラスチックや耐熱性に加え耐溶剤性の高いスーパーエンジニアリング・プラスチックを利用するのもよい。当該カバーの内層には、合成樹脂や発泡材(ウレタンなど)、ゴム、エラストマーなどを適宜利用できる。内層材料は多孔質(ポーラス状)であるとより衝撃緩和効果があったり、透過率の調節ができたりする。
【0021】
上記構成の場合には、十分な強度を有するとともに、耐水性を有することから、雨水等の侵入を防止しつつ、鳥類等によって破壊されることを回避することができる。すなわち、鳥類(特にカラスなど)は、小石などを上空から落下させることがあり、そのような行為による光電変換センサの受光面を、破損から防護することができる。
【0022】
また、前記の各構成による日射計に係る本発明において、前記カバーまたは前記多層構造の最外層に位置する材料は、光触媒能を有する材料および導電性材料のいずれか一方または双方が塗布または含有されていることが好ましい。
【0023】
上記構成の場合には、光触媒能を有する材料を表面に塗布すれば、光触媒効果により、汚れを分解させることができることから、降雨による水垢などの除去に好適である。また、導電性材料を表面に塗布すれば、静電気の発生を防ぎ、細かな埃などの付着を防止できる。これらの材料を選択して使用することも可能であるが、双方を用いることも可能である。この場合、導電性材料を塗布した表面に光触媒能を有する材料を塗布すれば、導電性材料の効果をも維持させることとなる。また、導電性材料が親水性の材料であれば、光触媒能を有する材料の効果を向上させることができる。これらの光触媒能を有する材料や導電性材料は、表面に塗布する場合に限らず、単層の場合はカバーを構成する材料に、多層構造の場合には最外層を構成する材料に含有させることによっても同様の効果を得ることができる。なお、前述のとおり、忌避手段を設ける場合には、鳥類や昆虫等の害獣または害虫の接近を防ぐことができることから、これらによる糞害等によって透過光に影響を与えることがないとしても、水垢や埃等の付着によって、徐々に光の透過率が変化するため、これを除去することによって、長期間に亘る安定した日射計測が可能となる。
【0024】
前記各構成の日射計に係る本発明においては、さらに、前記光電変換センサの両端の間に接続された抵抗と、該抵抗に対して直列または並列に接続されたサーミスタとを備える構成とすることができる。
【0025】
上記構成によれば、日射計の温度上昇等に基づく測定値を補正することができる。すなわち、光電変換センサの両端の間に接続される抵抗とサーミスタにより、両者の合成抵抗の両端に発生する電圧から略短絡電流を検出し、その変化量を日射に換算することが可能となるが、温度変化によって光電変換センサの出力が変化することから、合成抵抗の値をサーミスタによって温度変化に応じて変化させ、当該略短絡電流を補正することができる。この補正された略短絡電流の値の変化を日射に換算することで、日射計の温度変化に対応させるものである。
【0026】
上記構成の日射計に係る本発明においては、前記サーミスタが、前記光電変換センサの裏面または該光電変換センサを支持する基台の一部に当接した状態で設けられることが好ましい。これは、カバーによって被覆される内部の空間による温度上昇ではなく、光電変換センサの温度変化に応じてサーミスタの抵抗値を変化させるためである。なお、サーミスタを光電変換センサの裏面または基台に当接させることにより、光電変換センサの温度変化に応じた短絡電流の補正を可能にすることとなる。
【0027】
なお、前述の各発明における前記光電変換センサとしては、種々の光電変換素子が利用でき、太陽電池、フォトダイオード、フォトトランジスタ、焦電素子または光電セルのいずれかから選択することができ、また、日射は、日射強度(W/m2)、日射量(J/m2)、照度(lx)、光量子束密度(μmol・m-2・s-1)、太陽光依存性抵抗(Ω)、太陽光発電電力(kW/m2)または太陽熱集熱量(kW/m2)の1つ以上を選択することができる。
【0028】
また、前記光電変換センサは、複数の光電変換センサによる光電センサモジュールであり、個々の光電変換センサには、バイパスダイオードが配置される構成とすることができる。
【0029】
上記構成の場合には、日射計測すべき位置において、複数の光電変換センサが配置されることにより、そのうちの1個が一時的または持続的に影などによって日射が遮断されるような場合であっても、残りの他の光電変換センサによる出力の検出が可能となる。すなわち、カバー表面に想定外に鳥類の糞等が付着し、その一部の光電変換センサにおける出力値が低下したとしても、バイパスダイオードの設置により、全体としての略短絡電流の値に影響を及ぼさない構成とすることができる。
【0030】
前記日射計は、屋外で利用するほか、温室内でも利用可能である。太陽光が照射され得る場所であれば、屋根等の有無は関係ないものである。すなわち、透光性を有する屋根が設置されている場合や反射光が入射される場所であっても、日射を計測すべき場所であれば使用可能である。これらの場所が部分的に開放されていれば鳥類や有翅昆虫等が侵入することがあるためである。特に、完全密閉でない温室の場合、鳥類や虫類が侵入し、さらには土壌から昆虫等が発生することもあり得る。
【0031】
日射計には、計測値(短絡電流値)を日射量に換算する処理部および処理結果を表示する表示部を内蔵することによって、計測地点における日射量を直ちに確認し得る構成としてもよいが、日射計を屋外や温室等に設置する場合には、有線または無線によって計測値を送信させる構成とすることができる。このような場合には、計測地点(高所)から離れた場所に処理部および表示部を設けることにより、計測地点(高所)での日射量を確認する必要がなく、その計測結果の集中管理も容易となる。
【0032】
他方、雲の挙動予測システムに係る発明は、前述の構成による日射計係る発明を利用するものであって、適宜間隔を有しつつ少なくとも3箇所のそれぞれに前記日射計が設置されることによって形成される雲影センサと、該雲影センサが十分な距離を有しつつ複数の地点に設置されることによって形成される雲影センサ群と、個々の前記日射計、雲影センサおよび雲影センサ群によって計測される計測値および計測時刻から雲の挙動情報を算出する演算部とを備えることを特徴とするものである。
【0033】
上記構成によれば、3箇所以上の地点に適宜間隔を有して設置された日射計によって構成される雲影センサは、当該3箇所以上の地点によって形成される特定面積の区域における日射を個別に測定することができ、その3箇所以上の地点のうち、最初に日陰になった地点、その後に日陰となる地点を順次検出することができる。このときの日陰となる順序によって、第一次的な雲の挙動を分析することができる。さらに、同種の雲影センサが十分な距離を有しつつ複数の地点に設置されることにより、第一次的に検出した地点の周辺における離れた場所での雲の状態を検出し、雲の移動方向および移動速度を含め第二次的に分析することができる。雲が移動する速度が分析できることにより、特定地点での通過時間から雲の広さを分析することも可能となる。
【0034】
上記構成の雲の挙動予測システムに係る発明において、前記日射計は、既設の支柱に設置されるものであって、前記支柱に設置するための基部と、該基部から突出する支持部と、該支持部によって支持される日射計とを備え、前記支持部は、前記基部から複数立設されており、各支持部に少なくとも1個の日射計が設けられる構成としてもよい。
【0035】
上記構成によれば、既存の支柱に設置されることから、当該雲影センサのために特別な支柱の設置が不要となり、支柱に設けられる基部に立設される複数の支持部にそれぞれ日射計が設置されることにより、いずれかの日射計によって日射を計測する場合(一部が日陰となった場合)であっても、これを雲による日陰と判断せず、支柱その他周辺の建造物による影の影響によるものと判断することが可能となる。さらに、個々の支持部に対し、複数の日射計(光電変換センサ)を設ける場合には、個々の支持部の一部が日陰となった場合であっても日射を計測することができる。そして、これらの各日射計または光電変換センサにバイパスダイオードを配置することにより、一部の出力が低下した場合であっても全体としての出力に影響を与えない構成とすることができる。
【0036】
上記の各構成による雲の挙動予測システムに係る発明において、前記雲影センサを形成する個々の日射計は、相互に10m以上の間隔を有して配置されるように構成することが好ましい。
【0037】
上記構成の場合には、相互に10m以上の間隔を有して3箇所以上の地点において日射を計測するため、雲によって日陰となる状態を計測した場合に、第一次的な分析として雲の移動方向を検出する際に、雲の形状の影響を受け難くすることができる。すなわち、最初に雲影を検出した日射計と第2番目に雲影を検出した日射計との間が近接している場合には、例えば、一部が膨出した形状の雲による影の場合には、移動方向とは関係なく、膨出した雲の先端による雲影を第1に検出することとなるが、10m以上の間隔を有することにより、3地点以上の範囲で検出された順番は、概ね雲の移動方向に一致することとなるのである。なお、10m以上であるから、20mであっても30mであってもよく、3箇所以上の地点により適度な面積を確保できればよく、例えば、8箇所の場合は相互に10mであっても適度な面積を確保し得るが、3箇所の場合は10~100m程度の距離を設けることが望ましい。
【0038】
上記の各構成による雲の挙動予測システムに係る発明において、前記雲影センサ群を形成する個々の雲影センサは、相互に1km以上の距離を有して配置されるものであることが好ましい。
【0039】
上記構成の場合には、第一次的に分析された地点での雲影センサから、十分に離れているため、雲の移動方向を正確に分析することができるとともに、1km以上の距離を単位として雲の広さを測定することが可能となる。従って、雲影センサ群を形成する複数の雲影センサのうち、日射を検出する雲影センサと雲影を検出する雲影センサの間に途切れた雲の境界が存在するから、複数の雲影センサにより雲の境界を推定することにより、雲の塊の外縁を分析することが可能となる。なお、1km間隔によって複数の地点に雲影センサが多数設置されることにより、雲の挙動分析の精度は向上することとなる。
【発明の効果】
【0040】
日射計に係る本発明によれば、カバーによって少なくとも光電変換センサの受光面を被覆することにより、当該受光面を保護することができる。このカバーが光電変換センサの全体を被覆する場合、特に耐水性を有する材料によって被覆される場合は、降雨等による水の侵入を防止し、長期間の屋外等への設置が可能となる。さらに、忌避手段を設けることにより、鳥類や昆虫等の飛来等から防護し、受光面に対して照射される日射を遮るものを排除することができる。さらに強化材料により小石等の落下による破損を防ぎ、光触媒能を有する材料および導電性材料のいずれか一方または双方が塗布されている場合には、水垢や埃等の付着を防止できることから、正確な日射量を検出することができる。
【0041】
さらにサーミスタを設ける場合には、温度の情報に伴う光電変換センサの出力増大を補正することができ、また、複数の光電変換センサを使用しつつ、これらにバイパスダイオードを設置することにより、一部の光電変換センサが機能しない場合であっても全体として日射計測が可能となる。
【0042】
他方、雲の挙動予測システムに係る本発明によれば、上述のように屋外等に長期間設置可能な日射計を使用して、長期間の雲の挙動予測を可能とする。このとき、雲影センサを適宜距離で3箇所以上設置することにより、雲の移動方向を第一次的に分析することができるうえ、当該雲影センサをさらに距離の離れた地点に複数設置することにより、雲の移動状況を正確に分析できるとともに、その移動速度および雲の塊の大きさをも分析することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】日射計に係る本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図2】II-II断面図である。
図3】日射計に係る本発明の第2の実施形態を示す説明図である。
図4】IV-IV断面図である。
図5】日射計に係る本発明の他の実施形態を示す説明図である。
図6】光電変換センサによる短絡電流の測定回路を示す説明図である。
図7】日射計に係る実施形態の使用態様を示す説明図である。
図8】影の挙動予測システムに係る本発明の実施形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1および図2は、日射計に係る本発明の第1の実施形態を示す図である。図1(a)は、光電変換センサ1に対してカバー2を装着する前の状態を示し、図1(b)は、装着後の状態を示している。また、図2は、図1(b)中のII-II線による断面図である。図1に示す実施形態は、カバー2が光電変換センサ1の受光面11を中心として被覆できる大きさに設けられたものとし、光電変換センサ1は、基台10に設置され、その中央に受光部11が設置されるものを例示したものである。
【0045】
本実施形態は、カバー2の表面(上部表面)20に尖端状の突起部21を設けたものである。この突起部21は、カバー2の成型時にカバー2と一体的に形成してもよいが、図示のように、別途作製した突起部21を上部表面20に接着するものとしてよい。この突起部21は、忌避手段の一種として設けられてものであり、鳥類などの飛来から防護するためのものである。鳥類は平面上であれば容易に飛来して留まることができるが、尖端状には留まることを回避する習性を有するためである。なお、上部表面20が小面積であれば1個でも有効であるが、面積に応じて複数個設置することができる。
【0046】
図2(a)に示すように、光電変換センサ1は、一般的には光電変換素子が使用され、基板3に設置される。その受光面11を上向きに配置されたものであり、光電変換素子としては、フォトダイオード、フォトトランジスタ、焦電素子または光電セルなどを使用することができるが、本実施形態では太陽電池を使用する場合を例示する。太陽電池を使用する場合には、太陽光の照射によって励起される電流値によって日射量に換算することができる。
【0047】
光電変換センサ1および基板3は、基台10に設けられる筒状の保持部12に収納されており、この保持部12の内壁に設けられる環状のストッパ12aによって適宜位置に保持されるものである。光電変換センサ1と基板3とは、分離して作製されることから、個別に保持される構成としてもよいが、図示のように積層した状態で設置される場合もあり得る。
【0048】
ところで、カバー2は、光電変換センサ1の周辺に配置される側壁部22と、天板部23とが一体的に構成され、実質的にはこの両者22,23によってキャップ状に構成されたものである。上記構成の天板部23の外側表面がカバー2の上部表面20となる。側壁部22と天板部23とは、同一材料によって一体成型されることを基本としており、いずれも透光性を有する材料で構成されるものであるが、天板部23のみについて透光性を有する別の材料で構成してもよい。側壁部22は、基台10に設けられる保持部12の周囲を覆うものであり、保持部12の外側に配置される状態であれば、その深さ(高さ)方向の被覆範囲は問わない。従って、図示のように、側壁部22の下端縁が基台10の表面に到達しない状態であってもよい。
【0049】
カバー2の透光性とは、特定波長についての透過性を有するものを意味し、例えば、波長400nm~700nmのいわゆる可視光について、0.01%~95%の透過率を有するものを想定している。日射を測定するものであるため、透過すべき波長は可視光の範囲が望ましいが、可視光領域の全域を透過できる必要はない。また、透過率は、僅かであっても光電変換センサ1が受光することによって電力が励起される程度であればよい。
【0050】
そのため、図2(b)に示すように、天板部23は、光電変換センサ1の受光面11との間に間隙13を有する構成であってもよい。このとき、カバー2の側壁部22は、基台10の保持部12よりも深さ(高さ)方向が大きく設けられ、光電変換センサ1の受光部11と天板部23との間に空隙13を形成できるようにしている。また、図2(c)に示すように尖端状突起21に代わる忌避手段を設ける構成としてもよい。例えば、天板部23の表面に忌避効果を有する板状またはフィルム状の材料によって積層体24を積層するのである。忌避剤としては、鳥類に対するものとしては酸化第二鉄などがあり、昆虫に対するものとしてはジエチルトルアミドなどがある。この忌避剤は、側壁部22にも塗布することができる。側壁部に対する忌避剤の塗布により、羽を持たない昆虫等の接近を防止することを目的とする場合に有効である。
【0051】
カバー(特に、多層構造の場合の最外層)に使用する材料としては、強化ガラス製、ポリテトラフルオロエチレン製、アクリル製、塩化ビニル製、ポリプロピレン製もしくはポリカーボネート製、またはこれらに強化繊維を混合したもので構成することができる。また、ガラス繊維入りポリテトラフルオロエチレンなどが好適であり、炭素繊維強化プラスチック(CFPR)やガラス繊維強化プラスチック(FRP)を用いてもよい。耐熱性のあるエンジニアリング・プラスチックや耐熱性に加え耐溶剤性の高いスーパーエンジニアリング・プラスチックを使用してもよい。また、天板部23の下層には、合成樹脂や発泡材(ウレタンなど)、ゴム、エラストマーなどを適宜利用することができる。さらに、天板部23の下層に使用する材料が多孔質(ポーラス状)であるとより衝撃緩和効果を得ることができるとともに、透過率の調節が可能となる。
【0052】
さらに、天板部23の表面にあっては、鳥類の飛来を防止する目的で、減光効果を有する材料を使用することができる。減光効果を有する材料としては、着色ガラスや着色樹脂などがある。着色樹脂は、樹脂フィルムで構成することができるほか、樹脂製の板材として構成することができる。着色すべき色彩としては、黒色、灰色、白色または銀色などが想定される。白黒を基調とすることによって鳥類や羽を有する昆虫などの飛来を防止することを目的としている。なお、透光性については、特定波長のみの透過を許容する意味からは、着色することによって透過光の波長を限定するものとしている。
【0053】
また、減光効果を有するものとしては、ND(Neutral Density)フィルタ機能を有するフィルムや偏光フィルムなどの減光効果フィルムあるいは概板状物体を使用することが可能である。その他に、つや消し加工もしくはフロスト処理またはディンプル加工もしくはエンボス加工などの表面凹凸加工を施すことによっても減光効果を得ることができる。つや消し加工またはフロスト加工は、表面の光沢を排除することにより、反射光の発生を制限するものであり、これに伴い透過光強度が低下するものであり、ディンプル加工またはエンボス加工は、直線的な入射光を屈折させることにより透過光強度を低下させるものである。透過光強度を低下させることにより、僅かな日射の変化の検出を可能にするものである。表面凹凸加工は、鳥類や虫類等の忌避にも効果がある。
【0054】
これらの減光効果材料を使用する場合には、図2(c)に示す積層体24として、カバー2の天板部23に減光効果材料を積層体24として積層することができる。さらに、カバー2そのものを減光効果材料で構成する場合には、積層体24として、強化ガラス等の強化材料を積層する構成としてもよい。強化材料としては、強化ガラス製とする場合のほか、ポリテトラフルオロエチレン製、アクリル製、塩化ビニル製、ポリプロピレン製もしくはポリカーボネート製、またはこれらに強化繊維を混合したものを使用することができる。このような強化材料を使用することにより、例えば、カラス等による小石等の落下から防護することができる。
【0055】
また、積層体24を設ける場合には、前述の減光効果を有する材料を積層してもよい。例えば、天板部23を減光樹脂フィルムで構成し、積層体24をすりガラス状(フロスト加工した)強化ガラスを使用するような状態があり得る。また、積層体24を減光樹脂フィルムで構成する場合、カバー2の天板部23は補強用の強化ガラスを使用する構成としてもよく、積層部3を強化ガラスで構成する場合は、天板部23を衝撃吸収用の樹脂フィルムで構成することができる。天板部23を硬質素材で構成する場合には、天板部23と積層体24との中間に衝撃吸収用の樹脂フィルムを積層させてもよい。
【0056】
さらに、積層体24として、または、積層体2にさらに積層する材料として、耐水性および撥水性のいずれか一方または双方の性質を有する材料をすることができる。耐水性または撥水性を有する材料は、雨水等から光電変換センサ1を保護するためのものであるため、最外層として積層される材料に使用することが好ましい。
【0057】
そして、上記のように、積層体24に各種の材料を積層する場合には、さらに表面に導電性材料または光触媒能を有する材料を塗布する構成とすることができる。導電性材料としては、例えばITO(In2O3:Sn)などがあり、光触媒能を有する材料としては、酸化チタン(TiO2)や酸化亜鉛(ZnO)などがある。導電性材料を塗布する場合には、静電気を放電することにより、埃等の吸着を防止することができ、光触媒能を有する材料を塗布する場合は、降雨等による水垢等を排除することができ、長期間の屋外等への設置による光透過性の減衰を排除することができる。これらの光触媒能を有する材料または導電性材料は、表面に塗布する場合に限らず、積層体24を構成する材料に含有させてもよい。これらの材料の含有は、積層体24の作製時に混練することによることができる。
【0058】
また、図2(d)に示すように、カバー2の全体構成として、多重構造とすることができる。例示の多重構造は、二重構造としており、しかも、上面部23は、二層の中間に間隙25を有する構成としたものである。この二重構造は、側壁部22および天板部23をそれぞれ二層に積層したものであり、個々の層に使用する材料としては、前述の天板部23と積層体24との関係と同様に形成することができる。なお、この種の多重構造において、中間の間隙25には衝撃吸収用の樹脂フィルムあるいは薄いCFRP板を積層すること、または補強用の強化ガラスを積層するように構成し、間隙25を設けない構成としてもよい。
【0059】
なお、図2(c)および(d)は、光電変換センサ1の受光面11とカバー2との間に間隙13を形成したものとしているが、図2(a)に示したように当接させた構成としてもよい。また、図2(d)に示したカバー2の二重構造(多重構造)においても、間隙25を設けず、密着させた状態としてもよい。
【0060】
上述の構成による各形態のカバー2の肉厚は、板状部材を使用する場合の単層で1mm、多重構造でも2mm~3mm程度としている。樹脂フィルムを使用する場合には、単層で0.1mm、多重構造で一部に板状材料を使用して1.1mm~2.2mmとしている。これらの肉厚は、最小でも0.1mmとすることで最小限度の強度を担保するものであり、最大でも5mmを上限とすることにより、減光効果による透過光強度をある程度に維持し、また重量を低減させている。ただし、後述するように、衝撃緩和材を利用する場合や表面に凹凸構造を持つ場合には、全体の厚さが10mm程度となってもよい。この種の構成の場合には、重量が大きく増加することはなく、減光効果材料による透過光強度の低減についても材料を適宜選択することにより調整が可能である。着色ガラスまたは着色樹脂を使用する場合にあっては、その色彩を白黒基調とすることにより、波長400nm~700nmの範囲の光を透過させることが可能となるが、他の色彩により透過光波長を上記範囲内の一部に限定してもよい。なお、減光効果によって、透過光は、照射光に対して0.01%~95%の範囲とし、減光によって制限された透過光強度の変化によって日射量を測定するものとしている。
【0061】
次に、日射計に係る本発明の第2の実施形態について説明する。図3および図4は、第2の実施形態による日射計を示している。図3(a)は、光電変換センサ1に対してカバー2を装着する前の状態を示し、図3(b)は、装着後の状態を示している。また、図4は、図3(b)中のIV-IV線による断面図である。なお、この形態では、カバー2が基部10の全体を被覆するものを例示している。
【0062】
本実施形態では、図3(a)に示すように、鳥類等の忌避手段として、カバー2の上部表面20から適宜間隔を有するワイヤ4を設置したものを例示する。ワイヤ4は、カバー2の上部表面20に立設した支持部41,42によって緊張した状態で設置されるものである。この種のワイヤ4を設けることにより鳥類が飛来する際に、足にワイヤ4を感じとり、着地することを回避させるものである。この形態におけるカバー2についても、全体または上部表面が透光性を有する材料で設けられるものである。
【0063】
この形態においても、図4(a)に示すように、カバー2は、側壁部22と天板部23とで構成され、側壁部22は、基部10の全体を被覆する必要はなく、側壁部22の下端縁は基部10の底面まで到達しない状態とすることができる。なお、忌避手段としてのワイヤ4は、カバー2の上部表面20から適宜間隔Hを有して設けられているが、適宜間隔Hは、概ね10mm~20mm程度であり、鳥類の飛来に際し、当該鳥類が着地する前に足に感知できる程度としている。また、例示の図は、1本のワイヤ4を設けているが、複数であってもよく、上部表面20が円形である(図示のような)場合には、その端縁に合致する円形に設けてもよい。
【0064】
また、この形態においては、図4(b)に示すように、カバー2の天板部23は、光電変換センサ1の受光面11に対して間隙13を有する構成としてもよい。間隙13を形成するために、基台10の周縁に、カバー2の側壁部22の下端を保持する形状とすることができる。間隙13を形成した場合であっても、透光性を有する材料によってカバー2の天板部23(特に光電変換センサ1の受光面11を被覆する領域)が構成されれば、日射を測定し得るものである。
【0065】
さらに、図4(c)に示すように、天板部23の表面に積層体24を積層させる構成としてもよい。この場合の積層体24は、鳥類や昆虫等に対する忌避効果を有する材料、または減光効果を有する材料によって構成することができる。また、カバー2を多層構造としてもよく、さらには、積層体24に光触媒能を有する材料や導電性材料を塗布または含有させてもよい。
【0066】
なお、図4(d)に示すように、光電変換センサ1による出力値を温度変化に応じて補正するために、サーミスタ5を設ける構成とすることができる。サーミスタ5を設ける場合には、例えば、光電変換センサ1と基板3とを離して設け、その中間に設置することができる。このとき、サーミスタ5を光電変換センサ1の裏面に当接させることで、光電変換センサ1の温度を感知して抵抗値を変化させることができる。サーミスタ5による補正の方法は後述するが、温度変化は、内部空気の温度を検出させるのではなく、補正すべき部分の温度変化を検出させることが望ましく、そのために光電変換センサ1の裏面に当接されている。また、光電変換センサ1と基板3とが積層する構成の場合には、近似の温度を検出させるため、基板3の裏面(または表面)に当接させてもよく、基部10の筒状の保持部12に当接させてもよい(図4(c)参照)。これは、上述の各形態、および後述の形態においても同様である。
【0067】
次に、他の実施形態およびその使用法について説明する。図5は、本実施形態の概略を示す図であり、(a)は光電変換センサ1および基部10と、カバー2とを分離した状態を示し、(b)は、一体化した状態を示している。ここでは、第1または第2の実施形態との相違点についてのみ詳述する。
【0068】
本実施形態は、図5(a)に示されているように、基台10に複数(図示は4個)の光電変換センサ1が設けられており、カバー2によって、その全てをキャップ状に被覆する構成としている。カバー2の天板部23の表面(上部表面)にはディンプル加工による微細な凸部21が構成されている。鳥類等の飛来を防止する効果を得るためには、ディンプルの大きさは0.1~2mm、高さは0.1~5mm、ディンプル間の間隔は0.1~5mmが好適である。
【0069】
また、上記の天板部23は、例えば、ポリテトラフルオロエチレンのようなエンプラ、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂などを使用することができる。エンプラには、エンジニアリング・プラスチックのほか、スーパーエンジニアリング・プラスチックがあり、エンジニアリング・プラスチックとしては、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、 GF強化ポリエチレンテレフタレート(GF-PET)、超高分子量ポリエチレン(UHPE)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、などが挙げられる。また、スーパーエンジニアリング・プラスチックとしては、非晶ポリアリレート(PAR)、ポリサルフォン(PSF)ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、フッ素樹脂(fluorocarbon polymers)、液晶ポリマー(LCP)などが挙げられる。これらのエンプラが薄板状の場合、プレス加工によってこのような形状を製造するのは容易である。
【0070】
また、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を使用して射出成型品として製造することも可能である。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂 (PF)、エポキシ樹脂(EP)、メラミン樹脂(MF)、尿素樹脂(ユリア樹脂、(UF))、不飽和ポリエステル樹脂 (UP)、アルキド樹脂、ポリウレタン(PUR)、熱硬化性ポリイミド(PI)、などが挙げられる。また、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン (PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン (PP)、ポリ塩化ビニル (PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン (PS)、ポリ酢酸ビニル (PVAc)、ポリウレタン(PUR)、テフロン(登録商標) - (ポリテトラフルオロエチレン:PTFE)、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、AS樹脂、アクリル樹脂 (PMMA)、などが挙げられる。
【0071】
なお、このディンプル加工は例示であって、その他に、エンボス加工による凹部を構成してもよく、強化ガラスの場合には、つや消し加工またはフロスト処理を施してもよい。また、図示は省略しているが、天板部23の下層には衝撃吸収用の樹脂フィルム、厚さ5mm以下の薄いCFRP、厚さ5mm以下の薄いFRP(ガラス繊維強化ポリマー)や光量あるいは色調調整用の着色樹脂などを積層した多層構造としてもよい。
【0072】
ところで、本実施形態は、複数(図示は4個)光電変換センサ1を使用しており、これらの光電変換センサ1は、直列または並列に接続されるものであり、全体として光電変換センサモジュールを形成している。基板は、前記光電変換センサモジュールの両側端子間(両端)に抵抗が接続され、さらに、この抵抗に対して直列または並列に接続される配線と、この配線に接続されたサーミスタが設けられるものとしている。サーミスタの設置の状態は、図4(c)または(d)に示したように、いずれかの光電変換センサ1の裏面または基板等に当接されるものである。
【0073】
光電変換センサ1としては、種々の光電変換素子が利用でき、太陽電池、フォトダイオード、フォトトランジスタ、焦電素子または光電セルなどを使用することができ、2個を同じ種類のものを使用してもよいが、異なる種類のものを用いてもよい。サーミスタとしては、温度上昇に伴って抵抗値が減少するNTCサーミスタを使用している。なお、抵抗およびサーミスタは、光電変換センサ1に対して直列または並列に接続されるものであるが、これらの抵抗等が接続される両端に端子が設けられ、この端子間における電流値(略短絡電流値)を測定することによって、光電変換センサ1から得られる電流の変化を観察することが可能となり、この電流の変化によって日射の計測を可能としている。また、略短絡電流値を測定するための電流計は、ケース内部に収納してもよいが、別途設ける構成でもよい。
【0074】
サーミスタは、一般的に先端において温度が検出される。そこで、光電変換センサ1の裏面等に対し、シリコーン接着剤等を利用して、サーミスタの先端を当接しつつ貼着固定させることができる。サーミスタの先端を光電変換センサ1の裏面等に当接させることによって、光電変換センサモジュール3に照射される日射量に応じて生じる温度に応じた抵抗値を得ることができる。すなわち、使用されるサーミスタがNTC型であるため、日射量が大きい場合には、光電変換センサ1の出力が増大することに応じて、温度上昇による抵抗値の低下を可能にするのである。これにより、サーミスタに接続される抵抗との合成抵抗が小さくなり、略短絡電流は短絡電流に近似することとなる。なお、実際の電流値は、抵抗の両端に発生する電圧を計測することにより、オームの法則から電流値を得ることができる。上記のサーミスタは、単一である必要はなく、複数設置することができる。
【0075】
上述のように構成された光電変換センサ1のほか、基板に接続される抵抗およびサーミスタが基部10に内蔵され、これをカバー2によって全体的に被覆することによって、日射計100が構成されている。
【0076】
なお、計測される日射の指標としては、日射強度(W/m2)、日射量(J/m2)、照度(lx)、光量子束密度(μmol・m-2・s-1)、太陽光依存性抵抗(Ω)、太陽光発電電力(kW/m2)または太陽熱集熱量(kW/m2)などがあり、これらの中から1つ以上をもって、本実施形態が計測し得る日射として定めることができる。
【0077】
複数の光電変換センサ1によって形成される光電変換センサモジュールは、図6(a)に示されているように、例えば、複数の光電変換センサ1を直列に接続したものがあり、これらの両端A,Bにおける略短絡電流の変化を計測するように構成できる。略短絡電流を測定するために、これらの光電変換センサモジュール(光電変換センサ1を直列に接続したもの)に対して、サーミスタ5および抵抗6を直列または並列に接続するのである。なお、図は、例示として光電変換センサ1を直列に接続したが、並列に接続したものであってもよい。また、サーミスタ5および抵抗6は、両端A,Bの間のいずれかの位置に直列に接続してもよい。
【0078】
いずれの形態の場合においても、両端の端子A,Bの間における略短絡電流の変化が観察できれば、日照計測が可能となるのである。ここで、略短絡電流とは、光電変換センサモジュールの両極A,Bを短絡させることにより得られる電流(短絡電流)と同じ程度の電流を意味するものである。すなわち、サーミスタ5による抵抗値と、抵抗6による抵抗値との合成抵抗の値を著しく小さくすることにより、略短絡電流の値は光電変換センサモジュールの短絡電流の値とみなすことができる。そして、略短絡電流の変化を観察することは、光電変換センサモジュール3等から得られる電流の変化を観察することとなり、光電変換センサモジュール3等から得られる電流値の変化の状態を得ることができるのである。
【0079】
そのためには、サーミスタ5は、温度上昇に伴って抵抗値が減少するNTCサーミスタであることが好ましい。すなわち、サーミスタ6を含む出力抵抗の値は、小さい程に短絡電流に近似する値を得ることができるからである。このことは、抵抗が一定の場合における電圧と電流との関係から明らかである。そして、光電変換センサモジュールから得られる出力は、温度上昇とともに増大する傾向にある。これは太陽電池を例にすれば、照射光が強ければ出力は増大するが同時に温度も上昇することを想定すれば明らかである。そのため、光電変換センサモジュールが定電流電源として機能するとしても、出力の増大に伴って短絡電流値は当然に上昇する。しかし、略短絡電流を測定するための出力抵抗(合成抵抗)が同じ値である場合には、出力抵抗の両端に発生する電圧と電流との関係は線形となり、測定され得る電圧が大きくなる結果、算出される略短絡電流値は短絡電流に近似しない値(短絡電流の値から離れた電流値)を計測することとなる。そのため、短絡電流値に近似するように合成抵抗の値を減少させるのである。
【0080】
さらに、図6(b)に示すように、個々の光電変換センサ1にバイパスダイオード7を並列に接続する構成としてもよい。個々の光電変換センサ1にバイパスダイオード7を接続することにより、これら複数の光電変換センサ1のいずれか1個に対する日射が遮断された場合(影になった場合)であっても当該対象エリア内の両端A,Bにおける略短絡電流の値を維持させることができるのである。なお、光電変換センサ1の出力を稼ぐために、一つのバイパスダイオードに接続される光電変換センサを複数にしてもよい。
【0081】
日射計に係る実施形態は上記のとおりであるから、カバー2によって被覆される光電変換センサ1の受光面2を獣害または虫害から防護でき、カバー2の少なくとも一部が耐水性等を有する材料によって構成されることにより、降雨等による水の侵入を防止し、長期間の屋外等への設置が可能となる。さらに、各種の忌避手段21により、鳥類や昆虫等の飛来等から防護し得る。強化材料または衝撃緩衝材料を使用する場合は、小石等の落下による破損を防ぎ、光触媒能を有する材料および導電性材料のいずれか一方または双方が塗布または含有されている場合には、水垢や埃等の付着を防止できることから、正確な日射量を検出することができる。これらの光電変換センサ1の近傍にサーミスタ5を設けることにより、温度の情報に伴う光電変換センサの出力増大を補正することができる。また、光電変換センサ1にバイパスダイオード7を接続することにより、一部の日陰に対しても全体としての日射計測が可能となる。
【0082】
日射計に係る本発明の実施形態は、以上のような構成であるが、これらの実施形態は一例であって、本発明がこれらの構成に限定されるものではない。日射計としては、日射に換算し得る照射光の強度を計測し得るセンサ1と、少なくともセンサ1の受光部11を被覆できるカバー2を有するものであれば、他の形態とすることができる。カバー2(特に天板部23)を構成する材料についても上述したが、これらに限定されるものではなく、種々の材料を選択して使用することができる。特に、鳥類や昆虫等の飛来を防止し得る忌避効果材料は、上述に列記したもの以外において適宜選択して使用することができる。
【0083】
なお、日射計には、上記の構成要素のほかに、時計機能、日射量のデジタル化機能、データストア機能、演算機能、マイコン、通信機能、停電時対応用バッテリ、などを内蔵装備したものを使用することが好ましい。個々の日射計において、計測値を日射量に換算することができ、また、各種用途に使用するためのデータ蓄積とデータ送信が可能になるからである。上記の通信機能は、無線、有線のどちらでも構わない。また、時計機能は、電波時計やインターネットの時刻サーバで時刻を合わせるNTP対応時計を利用するのがよい。太陽電池発電機能とバッテリを取り付け、配線なしの単独で動作するようにしてもよい。動作が確認できるように表示器やインジケータを設けてもよい。
【0084】
次に、日射計100を使用する雲の挙動予測システムについて説明する。これは、日射計100の使用方法としても概念され得るものである。なお、ここでは、個々の光電変換センサ1にバイパスダイオード7を接続したものを使用することとする。図7は、いわゆる電柱Pに設置した状態を示す。
【0085】
図7に示されるように、日射計100は、電柱Pの適当に高い位置に設置される。そのため、電柱Pの表面に支持部101が設けられ、その支持部101によって日射計100を支持する状態としている。このとき、電力供給用の電力線Yよりも高位とすることで、日射計100に対して日陰となる要因を少なくしている。しかしながら、さらに上部には、架空地線Zなどが架設される場合がある。また、適度に高い電柱Pであっても、近隣の構築物などによって日陰となる場合もあり得る。
【0086】
そこで、上述のように複数の光電変換センサ1を使用する光電変換センサモジュールを使用するとともに、個々の光電変換センサ1にバイパスダイオードを使用する構成の日射計100を使用することにより、いずれかの光電変換センサ1が日陰となった場合であっても短絡電流値を検出することが可能となり、安定的に日射を測定することができるものとしている。
【0087】
なお、図示のように、電柱Pの適度に高位に設置されることから、頻繁にメンテナンス(受光面の清掃等)を行うことができない。そこで、前述のように、鳥類の飛来を防止し、または小石等の落下による破損を防ぎ、さらに光触媒能等による汚れの排除などを可能にしている。
【0088】
次に、日射計100を使用する雲の挙動予測システムについて説明する。これは、日射計100の使用方法としても概念され得るものである。本実施形態は、上述の日射計100を使用することにより、屋外等に長期間設置することが可能であるため、例えば雲の挙動を予測するための日射計として使用するものである。図8は、その実施形態を示すものである。
【0089】
本実施形態は、図8に示すように、例えば、交差点の適宜箇所に設置される電柱、標識、信号機または街灯などの既設の支柱を使用し、それらに上述の日射計を設置するのである。このとき設置される日射計は、複数の光電変換センサ1にバイパスダイオードを接続したもの日射計100が好ましい。上方に架設される他の配線や隣接する建築構造物などの存在を考慮したためである。
【0090】
また、少なくとも3箇所(図は4箇所)に設置することにより、所定の面積を有して配置することができる。すなわち、交差点を例示すれば、幅員10mの道路が交差する交差点では、相互に10m以上の間隔を有して設置でき、その間隔に応じた面積を所定区域として観測領域とすることができる。幅員が20mの道路が交差する交差点では、20m以上の距離を有して配置することができる。幅員の長さにかかわらず、設置可能な支柱(電柱等)の位置により個々の日射計の距離は適宜変更でき、また、設置する日射計の数によっても変更し得る。例えば、8箇所に設置する場合は、相互に10m程度の距離を設ければ、適度な面積を確保し得る。また、2箇所に設置する場合は、10~100m程度に設置することにより所望の面積を確保し得るものとなる。このように、所定の面積の区域における日射を個別に測定することにより、最初に日陰になった地点、その後に日陰となる地点を順次検出することができる。このときの日陰となる順序によって、第一次的な雲の挙動を分析することができる。
【0091】
なお、相互の距離を10mとする場合には、公共建造物の屋上などを利用することができ、また、住宅が密集する住宅地においては、例えば隣接する複数のアパートの屋根を利用することも可能である。いずれの場合においても少なくとも3箇所の地点において日射を計測することにより、雲の第一次的な挙動を把握することができる。これらの各地点における日射計100は上述のような構成のものを各1個設置するものでもよいが、複数の日射計を設置することにより、当該日射計全体が日陰となった場合に、他の日射計の観測データにより、隣接建物等による日陰の状態である場合を判別し得るものである。このとき、単一の支柱に対し、複数の支持部101を設けて、日射計100を支持させる構成とすることができる。このような複数地点に日射計を設けることによって形成されるものが雲影センサ200である。
【0092】
実質的には、図中のセンサユニットが雲影センサ200を構成している。この雲影センサ200を構成するセンサユニットは個々の地点において(図は1箇所のみを例示)日射計が設けられている。使用される日射計は、前述の実勢形態に示したものの中から適宜選択されるものであるが、のほか、時計機能、日射量のデジタル化機能、データストア機能、演算機能、マイコン、通信機能、停電時対応用バッテリなどを内蔵するものとして例示した前述の日射計が好ましい。
【0093】
上述のような日射計を含むセンサユニットが3箇所以上の地点に適度な距離を有して設置されることにより、雲影センサ200が形成され、前述の無線または有線によって送信される測定値が図示せぬ演算部によって演算処理され、第一次的な雲の挙動を予測する。さらに、上述の雲影センサ200が十分な距離を有しつつ複数の地点に設置されることにより、個々の雲影センサ200ごとに雲影を検出することができ、特定の地点の周辺における離れた場所での雲の状態を第一次的に検出し、これらをまとめて雲影センサ群として総合的に解析することにより、雲の移動方向および移動速度を含めた第二次的な分析を可能としている。雲が移動する速度が分析できることにより、特定地点での通過時間から雲の広さを分析することも可能となる。
【0094】
すなわち、第一次的には、比較的狭い範囲において、雲の挙動を観測し得るものであるが、雲の形状(最初に雲影が生じる雲の端縁形状)によっては、最初に雲影を観測した地点から次に観測した地点へ移動している場合でないことがある。そこで、十分に離れた地点においても雲影センサ200を設置することにより、雲の移動方向を正確に把握し得るのである(第二次的分析)。これらの複数の雲影センサ200の集合体を雲影センサ群と称し、一塊を対象に分析し得る集合体として観念することができる。
【0095】
また、広域における全体的な雲の挙動を観測する場合には、雲影センサ200が複数(多数)設置されていることにより、いずれの方角から雲が接近し、いずれの方角へ移動するかについて、最初の観測し得る地点が増加するため、雲の検出を早期に行うことができる。さらには、太陽光発電設備を有する場合には、雲が太陽光パネルの上空を通過するのか否か、通過するとすれば、その時間がどの程度なのかをも把握することができ、発電計画の予測を可能にすることができる。
【0096】
他方において、日射の程度を測定することにより、雲の種類を予測させることも可能である。これは、積乱雲のように降雨が想定され、太陽光発電設備では発電量が激減することが予想される場合と、上層雲のように、降雨の影響がなく、また発電量の低下が僅少であることが判断できる場合とを区別するためである。これらの各種測定結果を使用することにより、発電計画のみならず、雷雲等の接近予測も容易となり、早期の非難誘導にも資するものとなる。雲影センサ200の数が極めて多数となり、相当程度の広域に設置されることにより、利用価値が拡大し得る。
【0097】
なお、各日射計または雲影センサにより検出されたデータ(短絡電流の値)は、図示せぬ処理装置(演算部)によって処理されるものであり、雲影センサおよび雲影センサ群によって計測される計測値および計測時刻から雲の挙動を測定する。すなわち、各地点において計測された短絡電流の値が時間ごとの変化として推移が記憶され、その変化量により、各地点の位置および距離の基づき、雲の挙動が分析されるものである。
【0098】
本発明の実施形態は上記のとおりであるが、これらは本発明の一例を示すものであって、本発明がこれらの実施形態に限定されるものではない。従って、上述の実施形態を変更し、または実施形態に他の構成要素を追加したものであってもよい。
【0099】
例えば、日射計に係る上記実施形態は、基部10を円形板状に設けているが、この形状は特に限定されるものではなく、矩形その他の形状とすることができる。光電変換センサ1の受光面11の形状についても同様である。また、日射計100に使用する光電変換センサ1または雲影センサを構成する日射計の数については、それぞれ4個を例示したが、これらの数は適宜変更可能である。多層構造についても二層構造に限定されず、三層構造または四層構造としてもよい。
【符号の説明】
【0100】
1 光電変換センサ
2 カバー
3 基板
4 ワイヤ
5 サーミスタ
6 抵抗
7 バイパスダイオード
10 基台
11 光電変換センサの受光面
12 保持部
12a 環状のストッパ
13,14,25 空隙
20 上部表面
21 忌避手段(尖端状突起)
22 カバーの側壁部
23 カバーの天板部
100 日射計
200 雲影センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8