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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】液体ワイヤ
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/02 20060101AFI20220914BHJP
   B22F 9/00 20060101ALI20220914BHJP
   C22C 1/04 20060101ALI20220914BHJP
   C22C 28/00 20060101ALI20220914BHJP
   C22C 13/00 20060101ALI20220914BHJP
   H01B 1/04 20060101ALI20220914BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20220914BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
H01B1/02 Z
B22F9/00 B
C22C1/04 E
C22C28/00 B
C22C13/00
H01B1/04
H01B5/14 Z
H01B13/00 503Z
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2018545999
(86)(22)【出願日】2017-02-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-13
(86)【国際出願番号】 US2017019762
(87)【国際公開番号】W WO2017151523
(87)【国際公開日】2017-09-08
【審査請求日】2020-02-26
(31)【優先権主張番号】62/301,622
(32)【優先日】2016-02-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518307097
【氏名又は名称】リキッド ワイヤ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】LIQUID WIRE LLC
【住所又は居所原語表記】6267 NE Carillon Dr., Unity 104, Hillsboro, Oregon 97124, United States of America
(73)【特許権者】
【識別番号】518307101
【氏名又は名称】ローナイ, マーク
【氏名又は名称原語表記】RONAY, Mark
【住所又は居所原語表記】6267 NE Carillon Dr., Unity 104, Hillsboro, Oregon 97124, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】ローナイ, マーク
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0270089(US,A1)
【文献】特開2011-034708(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02058081(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/02
B22F 9/00
C22C 1/04
C22C 28/00
C22C 13/00
H01B 1/04
H01B 5/14
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性ずり減粘ゲル組成物であって、
共晶ガリウム合金と、
前記共晶ガリウム合金内にマイクロ構造として分布する酸化ガリウムと
を備え、
前記共晶ガリウム合金と前記酸化ガリウムとの混合物は、前記導電性ずり減粘ゲル組成物全体に対して、重量パーセント(wt%)で59.9%から99.9%の前記共晶ガリウム合金と、前記重量パーセント(wt%で0.1%から2.0%の前記酸化ガリウムとを有し、
前記混合物内に分散される1個以上のマイクロ粒子又はサブミクロンスケールの粒子をさらに備え、
前記マイクロ粒子は、前記導電性ずり減粘ゲル組成物内に前記重量パーセント(wt%で0.001%から40.0%のマイクロ粒子を有することを特徴とする導電性ずり減粘ゲル組成物。
【請求項2】
前記共晶ガリウム合金は、ガリウム及びインジウムを含む、請求項1の導電性ずり減粘ゲル組成物。
【請求項3】
前記共晶ガリウム合金は、ガリウム-インジウム合金を含み、
前記ガリウム-インジウム合金内のガリウムの前記重量パーセント(wt%)は、40%から95%であり、前記ガリウム-インジウム合金内のインジウムの前記重量パーセント(wt%)は、5%から60%である、請求項1または2の導電性ずり減粘ゲル組成物。
【請求項4】
前記共晶ガリウム合金はスズを含む、請求項2または3の導電性ずり減粘ゲル組成物。
【請求項5】
前記共晶ガリウム合金内のスズの前記重量パーセント(wt%)は、0.001%から50%である、請求項4の導電性ずり減粘ゲル組成物。
【請求項6】
前記1個以上のマイクロ粒子又はサブミクロンスケールの粒子は、酸化銅、銀コーティング銅、非酸化銅、タングステン、過飽和スズ細粒、ガラス、グラファイト、銀コーティング銅又はこれらの組み合わせを含む、請求項1~5のいずれかの導電性ずり減粘ゲル組成物。
【請求項7】
前記1個以上のマイクロ粒子又はサブミクロンスケールの粒子は、スフェロイド、ロッド、管、フレーク、板、立方体、角柱、ピラミッド形、檻形、及びデンドリマーの形状である、請求項1~6のいずれかの導電性ずり減粘ゲル組成物。
【請求項8】
前記マイクロ粒子又はサブミクロンスケールの粒子は、銀コーティング銅球、銀コーティング銅フレーク、銅フレーク又は銅球を含む、請求項6または7の導電性ずり減粘ゲル組成物。
【請求項9】
前記1個以上のマイクロ粒子又はサブミクロンスケールの粒子は、0.5ミクロンから60ミクロンのサイズ範囲にある、請求項1~8のいずれかの導電性ずり減粘ゲル組成物。
【請求項10】
前記導電性ずり減粘ゲル組成物は、ビンガム塑性体の特性を有する、請求項1~9のいずれかの導電性ずり減粘ゲル組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかのずり減粘ゲル組成物を有する、製品。
【請求項12】
前記製品は、生地、プラスチックフィルム及び/又は膜を含む、請求項11の製品。
【請求項13】
前記製品は、
基布と、
前記導電性ずり減粘ゲル組成物が配置された1以上の要素と
を含む、ボディウェア製品を含む、請求項11の製品。
【請求項14】
前記製品は電子デバイスを含む、請求項11の製品。
【請求項15】
導電性ずり減粘ゲル組成物を有する製品を製造する方法であって、
前記製品の少なくとも1つの面に請求項1~10のいずれかの導電性ずり減粘ゲル組成物を印刷する方法。
【請求項16】
前記製品は生地を含む、請求項15の方法。
【請求項17】
前記製品はボディウェア製品を含む、請求項15の方法。
【請求項18】
前記製品は電子デバイスを含む、請求項15の方法。
【請求項19】
前記電子デバイスはセンサを含む、請求項18の方法。
【請求項20】
導電性ずり減粘ゲル組成物を製造する方法であって、
共晶ガリウム合金の流体の表面に形成される表面酸化ガリウムを前記共晶ガリウム合金の前記流体のバルクに、前記表面酸化ガリウムと前記共晶ガリウム合金との界面の剪断混合により混ぜ合わせ、
前記表面酸化ガリウムにマイクロ構造を誘導し、これにより前記導電性ずり減粘ゲル組成物を形成し、
混合物内に分散される1個以上のマイクロ粒子又はサブミクロンスケールの粒子をさらに備え、
前記マイクロ粒子は、前記導電性ずり減粘ゲル組成物内に、前記導電性ずり減粘ゲル組成物全体に対する重量パーセント(wt%0.001%から40.0%のマイクロ粒子を有することを特徴とする、方法。
【請求項21】
前記共晶ガリウム合金と前記表面酸化ガリウムの混合物は、前記重量パーセント(wt%)で59.9%から99.9%の前記共晶ガリウム合金と、前記重量パーセント(wt%で0.1%から2.0%の前記表面酸化ガリウムを含む、請求項20の方法。
【請求項22】
前記共晶ガリウム合金はガリウム及びインジウムを含む、請求項20の方法。
【請求項23】
前記共晶ガリウム合金は、ガリウム-インジウム合金を含み、
前記ガリウム-インジウム合金内のガリウムの前記重量パーセント(wt%)は、40%から95%であり、前記ガリウム-インジウム合金内のインジウムの前記重量パーセント(wt%)は、5%から60%である、請求項20の方法。
【請求項24】
前記共晶ガリウム合金はスズを含む、請求項20の方法。
【請求項25】
前記共晶ガリウム合金内のスズの前記重量パーセント(wt%)は、0.001%から50%である、請求項20の方法。
【請求項26】
前記1個以上のマイクロ粒子又はサブミクロンスケールの粒子は、酸化銅、銀コーティング銅、非酸化銅、タングステン、過飽和スズ細粒、ガラス、グラファイト、銀コーティング銅又はこれらの組み合わせを含む、請求項20の方法。
【請求項27】
前記1個以上のマイクロ粒子又はサブミクロンスケールの粒子は、スフェロイド、ロッド、管、フレーク、板、立方体、角柱、ピラミッド形、檻形、及びデンドリマーの形状である、請求項20の方法。
【請求項28】
前記マイクロ粒子又はサブミクロンスケールの粒子は、銀コーティング銅球、銀コーティング銅フレーク、銅フレーク又は銅球を含む、請求項20の方法。
【請求項29】
前記1個以上のマイクロ粒子又はサブミクロンスケールの粒子は、0.5ミクロンから60ミクロンのサイズ範囲にある、請求項20の方法。
【請求項30】
前記導電性ずり減粘ゲル組成物は、ビンガム塑性体の特性を有する、請求項20の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願に対する相互参照】
【0001】
本出願は、2016年2月29日に提出された米国仮特許出願第62/301622号の先の出願日に対する優先権の利益を主張するものであり、この米国仮特許出願はその全体が参照により本明細書に特に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本明細書における実施形態は、液体ワイヤに関し、より詳細には、一体型マイクロ構造を有し、ガリウムインジウム合金を含む液体ワイヤに関するものである。
【背景技術】
【0003】
曲げたり伸ばしたりすることができて柔らかいことが期待される衣服や布地をはじめとする日用品に電子機器を組む込むことに関心が高まっている。柔らかい電子機器であれば、人体に滑らかに結びつくことができ、ウェアラブルデバイス、医療デバイス、人間や繊細な物とより安全に相互作用することができるコンフォーマルロボティクス又は「ソフトマシーン」の候補に対して多くの新しい用途を開拓することができる。(例えば、Dickey、ACS Appl Mater Interfaces、2014年11月12日、6巻21号、18369-18379ページを参照)。
【0004】
これらの柔軟な電子デバイスを製造するために、特に3D印刷のような、これまでとは異なる多くの製造方法が考えられている。しかしながら、大きなネックは、高い導電性を有し、簡単に加工することができる伸縮可能な導体が存在しないことである。
【0005】
伸縮可能な導体に対して多くの試みがなされてきた。最も成功した例の1つは、常温液体金属で満たされたマイクロ流体チャネルであった。ポリジメチルシロキサン(PDMS)にマイクロメートルオーダーのチャネルをエッチングし、それらのチャネルを封止した後、金属合金をチャネルに注入して導電経路を生成することにより機能的デバイスが生成される。これらの合金は、-19℃と低い融点を有するため、通常の条件下では流体を維持し得る。金属導体が流体であるため、これらの金属導体は、導体を含むチャネルを形成する材料によってのみ制限される程度に変形可能であり、また完全に復元することが可能である。さらに、金属導体の抵抗の変化は、ワイヤ長さと断面に対して純粋に機械的な関数となるため、線形的である。これにより、導電経路をセンサとしても機能させることができるという大きな利点が得られる。
【0006】
しかしながら、これらのマイクロ流体チャネルを有するデバイスを製造することは非常に難しいことである。PDMSは好ましい基板であるが、チャネルの周囲に適切なシールを形成するのにコストがかかり、チャネルを取り囲むためのキャップ層を付着させるために、チャネルを含む層を酸素プラズマに曝す必要がある。作製後は、2シリンジシステムを介してチャネルが充填されていなければならない。この2シリンジシステムにおいては、一方のシリンジは液体合金を注入し、他方のシリンジは既に存在している空気を排出する。作製中の故障率は非常に高い。個々の事例に基づけば、20回の製造試行を行った場合に約1回だけ成功することが報告されている。このように、他の「液体」金属に対する需要が存在している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明の実施形態は、添付図面と特許請求の範囲とともに以下の詳細な説明により容易に理解できるであろう。実施形態は例として示されているのであって、添付図面の図に限定するものとして示されているわけではない。
【0008】
図1A図1Aは、様々な実施形態による配合を含む様々なガリウムを示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像のデジタル画像である。
図1B図1Bは、様々な実施形態による配合を含む様々なガリウムを示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像のデジタル画像である。
図1C図1Cは、様々な実施形態による配合を含む様々なガリウムを示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像のデジタル画像である。
図1D図1Dは、様々な実施形態による配合を含む様々なガリウムを示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像のデジタル画像である。
図1E図1Eは、様々な実施形態による配合を含む様々なガリウムを示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像のデジタル画像である。
【0009】
図2A図2Aは、様々な実施形態による失敗した圧縮試験(図2A図2B)と成功した圧縮試験(図2C)のデジタル画像である。
図2B図2Bは、様々な実施形態による失敗した圧縮試験(図2A図2B)と成功した圧縮試験(図2C)のデジタル画像である。
図2C図2Cは、様々な実施形態による失敗した圧縮試験(図2A図2B)と成功した圧縮試験(図2C)のデジタル画像である。
【0010】
図3図3は、金属ゲルパターンの高い忠実度の接触転写の初期観察のデジタル画像である。
【0011】
図4A図4Aは、粒子充填金属ゲルを有する試験接触転写パターンのデジタル画像である。パターンは、様々な実施形態による0.5mmほどの微細なトレース幅と0.25mmほどの微細なピッチを有する。
図4B図4Bは、粒子充填金属ゲルを有する試験接触転写パターンのデジタル画像である。パターンは、様々な実施形態による0.5mmほどの微細なトレース幅と0.25mmほどの微細なピッチを有する。
図4C図4Cは、粒子充填金属ゲルを有する試験接触転写パターンのデジタル画像である。パターンは、様々な実施形態による0.5mmほどの微細なトレース幅と0.25mmほどの微細なピッチを有する。
図4D図4Dは、粒子充填金属ゲルを有する試験接触転写パターンのデジタル画像である。パターンは、様々な実施形態による0.5mmほどの微細なトレース幅と0.25mmほどの微細なピッチを有する。
【0012】
図5図5は、様々な実施形態によるパターン化された圧力センサのデジタル画像である。
【0013】
図6図6は、シリコーン内に封止された金属ゲルの8インチトレースの歪み試験のグラフであり、歪みの程度に対する抵抗の線形性を示している。
【0014】
図7図7は、経方向又は緯方向に沿う歪みによる変化に向けられた可変抵抗を図示したものである。
【0015】
図8図8は、10個の可変抵抗と4つのアナログ出力要素A,B,C,Dとを有する単純な1×3のグリッドである。出力要素のすべての一意なペアリングが6要素ベクトルを生成する。それぞれの可変抵抗の抵抗範囲を適切に重み付けすることにより、出力ベクトルによって任意の忠実度に対してすべての可能な抵抗の組み合わせを一意にエンコードすることを保証することができる。
【0016】
図9図9は、本明細書に開示される実施形態による、金属ゲルから印刷された990MHzアンテナのデジタル画像である。
【0017】
図10図10A図10Dは、トレースパターンの例である。図10Aは、経路に平行な歪みとともに変化する可変抵抗として機能する単純なラインである。図10Bは、互いに近いi/oポートで信号を読めるようにする戻り経路を有している。垂直に接続するバーは、メインのトレースに平行に測定される歪みに対する無視し得る抵抗変化を生じる。図10Cでは、ジグザグパターンは、トレースの方向に対して垂直な歪みに対して抵抗/歪みフィードバックを増す。図10Dは、戻り経路と水平部における抵抗/歪みフィードバック乗算器とを有するトレースである。このトレースは、その方向に平行な歪みに対しては敏感であるが、垂直な歪みに対しては敏感ではない。
【0018】
図11図11は、1.4ミル(35μm)厚さのCu基準トレースと75μmの厚さの金属ゲルラインについての6GHzに対する測定挿入損失のグラフである。挿入損失は、表皮効果から両方の材料について増加している。
【0019】
図12図12A図12Dは、ラインの封止を示す模式図である。図12Aは、シースに囲まれた複数のコードを有する標準パラシュートラインを示している。図12Bでは、金属ゲル(1)がナイロンコードでシース内に収容されている。図12Cでは、単一のパラシュートライン内に複数の導体を形成するために、個々の内側ナイロンコードを金属ゲルでコーティングし、熱硬化性ポリウレタンのような絶縁体内に封止してもよい。あるいは、図12Dでは、複数の金属ゲル導体(3)を熱可塑性ポリウレタン内に収容し、パラシュートラインシースの外側に付着させてもよい。
【0020】
図13図13は、長さLの1対の金属ゲルワイヤを用いた基本歪みセンサのブロック図である。2つのワイヤは、合成抵抗R=RS1+RS2=V/Iを有している。ここで、V及びIは、ホイートストンブリッジ検知ポートでの直流電圧及び電流である。ホイートストンブリッジは、デジタル歪みデータ出力を生成するためにADCに供給されるRに比例する出力Vを有している。
【0021】
図14図14は、どのようにしてLを介して歪みセンサループにDC電流Iを流すことを可能とし、RF信号がCによりループに結合され、C及びCにより除去されるのかを示すブロック図である。また、インダクタLは、RF信号が短絡することを防止する。
【0022】
図15図15A図15Cは、金属ゲルを用いて制御インピーダンス伝送ラインを形成する3つの方法を示している。図15Aは、絶縁封止層金属ゲル外側層(2)により最終外側封止層で覆われた金属ゲル中心(1)導体(コーティングされたナイロンコードであってもよい)との同軸相互接続部を示している。図15Bは、「平行二線型」(「二本」とも呼ばれる)構成における2つの金属ゲルラインを示している。図15Cは、放射を低減し、2つのラインを電磁干渉(EMI)から遮蔽する低いインピーダンスを可能とするために、図15Bにおける構造に適用した外側金属ゲル層を示している。1つ目の構成(図15A)は、30から100オームの範囲のインピーダンス同軸伝送ラインを形成するために、絶縁中心導体(1)の周囲に形成された金属ゲル(2)からなる外側導体を有している。
【詳細な説明】
【0023】
以下の詳細な説明においては、本出願の一部を構成する添付図面が参照され、この添付図面においては、実施され得る実施形態が一例として示されている。本開示の趣旨又は範囲を逸脱することなく、他の実施形態を利用したり、構造的又は論理的な変更をしたりすることができることを理解すべきである。したがって、以下の詳細な説明は、限定する意味に解釈すべきではなく、実施形態の範囲は、特許請求の範囲及びその均等物により規定される。
【0024】
特に説明しない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、開示される主題の属する技術分野における当業者によって通常理解されるものと同一の意味を有する。化学用語においてよく用いられる語の定義は、The McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms(1985年)、The Condensed Chemical Dictionary(1981年)に見つけることができる。そうでないと言及している場合を除いて、本開示に係る方法及び手法は、一般的に、当該分野においてよく知られている従来の方法により実施され、本明細書を通して引用され述べられる様々な一般文献及びより具体的な文献において述べられているように実施される。例えば、Loudon著、Organic Chemistry、第4版、ニューヨーク:オックスフォード大学出版局、2002年、360~361ページ及び1084~1085ページ、Smith及びMarch著、March’s Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure、第5版、ワイリー・インターサイエンス、2001年、又はVogel著、A Textbook of Practical Organic Chemistry, Including Qualitative Organic Analysis、第4版、ニューヨーク:ロングマン、1978年を参照されたい。
【0025】
様々な作業は、実施形態を理解するのに役立ち得るように、複数の別個の作業として順番に述べられていることがある。しかしながら、説明の順序は、これらの作業が順序通りであることを示唆しているものではないと解釈すべきである。
【0026】
本説明では、上/下、後/前、及び上部/底部などの相対的な記述を用いることがある。そのような記述は、説明を簡単にするために使用されているだけであり、開示されている実施形態の適用を制限することを意図しているものではない。
【0027】
「連結」及び「接続」という用語及びその派生語が使用されることがある。これらの用語は、互いの同義語として使用しているのではないことを理解すべきである。むしろ、特定の実施形態においては、「接続」は、2つ以上の要素が互いに物理的に直接接触することを示すために使用されることがある。「連結」は、2つ以上の要素が物理的に直接接触することを意味し得るが、「連結」は、2つ以上の要素が互いに直接接触していないが、互いに協働又は相互作用することを意味することもある。
【0028】
本明細書において使用される場合には、文脈が明確にそうではないと示していない限り、単数の語は、複数の指示対象を含んでいる。同様に、「又は」の語は、文脈が明確にそうではないと示していない限り、「及び」を含むことを意図している。また、本明細書において使用される場合には、「備える」という用語は「含む」を意味する。したがって、「A又はBを備える」はAを含むこと、Bを含むこと、又はAとBとを含むことを意味している。
【0029】
そうでないと言及している場合を除いて、いずれの定量値も、「約」又は「およそ」などの語が付いているかいないかにかかわらず、およその値である。本明細書で述べられる材料、方法、及び実施例は、例示的なものに過ぎず、限定することを意図しているものではない。いずれの分子量又は分子質量値も、およその値であり、説明のためだけのものである。
【0030】
本説明では、「実施形態」という用語を使用することがあるが、これらの語は、それぞれ同一の実施形態又は異なる実施形態のうち1つ以上の実施形態を意味している場合がある。さらに、「備える」、「含む」、「有する」などの用語は、実施形態に関して使用される場合には、同義である。
【0031】
A.概説
フレキシブル導体は、電子機器における数多くの用途で必要とされている。ウェアラブルデバイス、適合センサ、フレキシブルディスプレイ、ソフトロボットアクチュエータ及び伸縮可能な相互接続部は、いずれも、曲げたり伸ばしたりすることを両方とも繰り返してできるような導電媒体を必要とする。理想的には、フレキシブル導体は、伸ばしたり曲げたりする数多くのサイクルの間、導通を維持しつつ、導体が付着している基板の運動に対してそれほど抵抗を生じないものである必要がある。理想的には、液体導体がこのタスクに適している。
【0032】
上記で簡単に述べたが、「液体」金属導体は、通常、インジウムと混合されたガリウムとスズの共晶合金を用いており、これらの共晶合金は、マイクロ流体チャネル内に埋め込まれる。典型的には、これらの合金は、ガリウム-インジウム(通常75%のガリウムと25%のインジウム)及びガリウム-インジウム-スズ(最も一般的には68.5%のガリウムと21.5%のインジウムと10%のスズ)を含んでいる。ガリウム合金流体は、粘度が低く、表面張力が大きい。これらの合金は良好な導体であり得るが、広く採用されることを阻害する大きな問題がある。例えば、合金自体が加工しづらい。加えて、合金からなる基板が疲労を受ける状態で埋め込まれている場合には、マイクロ流体チャネルは、不可逆的に漏れたり壊れたりしやすい。最後に、合金は、大気に露出すると酸化層を形成し、この酸化層は、導電性がなく、フレキシブルワイヤと固い構成要素との間の接続部での故障を引き起こす可能性がある。このように、簡単に加工することができ、酸化から保護され、その基板が摩耗し始めたときでも機能し続けることを可能とする自己治癒特性を有する流体を提供できれば、当該分野に対して重要な進歩となり得るであろう。本開示は、これらの需要を満たすものである。
【0033】
本発明者により発見された、ガリウム合金と酸化ガリウム組成を含む新しい複合材料であって、バルクガリウム合金内の酸化ガリウムから形成される分散されたマイクロ構造を含む新しい複合材料が本明細書に開示される。実施形態においては、マイクロ構造は、ガリウム合金に混合される際に分散されたマイクロ構造を引き起こすためにバルクガリウムの表面に形成された酸化ガリウムのシートから形成される。合金は、通常の水をベースとするゲルにおけるポリマーゲル化剤と同様の目的を果たす酸化物リボンの架橋ナノ構造に結合する。ゲルは、サブミクロンのスケールの粒子を用いることにより安定化され、高粘度で、濡れやすく、漏れにくいビンガム塑性体(剪断力が作用するまで固体の特性を呈する流体)が作製される。このビンガム塑性体は、室温で多くの表面に一貫してパターン化することができる。パターン化されると、その結果、その基板の材料特性に影響を与えない高導電性流体相互接続部が得られる。このゲルは、室温で流体であり、-5℃の凝固点を有する。最終材料は、必要とされる安定性の程度に応じて2~8×10S/mのスケールの導電性を有し、100μmの厚さまで導体をパターン化することは比較的簡単であるため、得られるシート抵抗は他のフレキシブル導体に比べて非常に低い。本開示に係る組成は、一般的に、ペースト状の材料を形成する。酸化ガリウムは、ガリウム合金流体と協働して、マイクロ・ナノ構造を形成する。これらの構造は、これらの幾何的構造に応じて、少量の力に耐えることができる。不規則に整形された酸化ガリウムからなる非常に多くのマイクロ・ナノ構造を大量のガリウム合金流体に分散させることにより、高粘度で非ニュートンレオロジー特性を有する新しい新規な複合流体を生成することができる。この流体は、ビンガム塑性体と同様の振る舞いをし、応力が作用するまで構造を保持する。本明細書に開示されているように、これらのマイクロ・ナノ構造の生成と分散を複数の方法により実現することができる。一実施形態においては、酸化ガリウムのマイクロ・ナノ構造の生成と分散は、酸化ガリウムに包まれたガリウム-インジウム-スズ内にナノ粒子及び/又はマイクロ粒子をコーティングし、加振又は混合により剪断を作用させることでこれらをガリウム-インジウム-スズの流体に懸濁させることにより実現される。
【0034】
B.いくつかの実施形態の概要
本開示に係る側面は、例えば、ペースト程度の粘度を有し、共晶ガリウム合金に混合される酸化ガリウムにより提供される構造を、共晶ガリウム合金のバルク材料特性を変えることができるマイクロ又はナノ構造が得られるように利用することにより生成される導電組成に関するものである。ある実施形態においては、導電組成は、導電性のずり減粘ゲル組成又はビンガム塑性体の特性を有する材料として特徴付けることができる。実施形態においては、本開示に係る組成は、低剪断下で約10,000,000センチポアズから約40,000,000センチポアズにわたる粘度、高剪断下で約150から約180センチポアズにわたる粘度を有する。例えば、低剪断の条件下では、この組成は、約10,000,000センチポアズ、約15,000,000センチポアズ、約20,000,000センチポアズ、約25,000,000センチポアズ、約30,000,000センチポアズ、約45,000,000センチポアズ、又は約40,000,000センチポアズの粘度を有する。高剪断の条件下では、この組成は、約150センチポアズ、約155センチポアズ、約160センチポアズ、165センチポアズ、約170センチポアズ、約175センチポアズ、又は約180センチポアズの粘度を有する。
【0035】
実施形態においては、本開示に係る組成は、共晶ガリウム合金と酸化ガリウムの混合物を含んでおり、この共晶ガリウム合金と酸化ガリウムの混合物は、重量パーセント(wt%)で約59.9%から約99.9%、例えば約67%から約90%の共晶ガリウム合金と、wt%で約0.1%から約2.0%、例えば約0.2から約1%の酸化ガリウムとを有している。例えば、本開示に係る組成は、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又はそれより多く、例えば約99.9%の共晶ガリウム合金と、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1.0%、約1.1%、約1.2%、約1.3%、約1.4%、約1.5%、約1.6%、約1.7%、約1.8%、約1.9%。及び約2.0%の酸化ガリウムを含むことができる。
【0036】
実施形態においては、共晶ガリウム合金は、ガリウム-インジウム又はガリウム-インジウム-スズを任意の元素比で含むことができる。ある実施形態においては、共晶ガリウム合金は、ガリウムとインジウムを含んでいる。ある実施形態においては、本開示に係る組成は、ガリウム-インジウム合金中の重量パーセントで約40%から約95%、例えば約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、又は約95%のガリウムを含んでいる。
【0037】
ある実施形態においては、本開示に係る組成は、ガリウム-インジウム合金中の重量パーセントで約5%から約60%、例えば約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、又は約60%のインジウムを含んでいる。
【0038】
ある実施形態においては、共晶ガリウム合金は、ガリウムとスズを含んでいる。ある実施形態においては、本開示に係る組成は、合金中の重量パーセントで約0.001%から約50%、例えば約0.001%、約0.005%、約0.01%、約0.05%、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1%、約1.5%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、又は約50%のスズを含んでいる。
【0039】
実施形態においては、1以上のマイクロ粒子又はサブミクロンスケールの粒子が、ガリウム合金及び酸化ガリウムと混ぜ合わせられる。実施形態においては、これらの粒子は、共晶ガリウム合金又はガリウムのいずれかに被覆されて酸化ガリウム内に封止された状態、あるいは、先に述べたようには被覆されない状態で、共晶ガリウム合金流体内に懸濁される。これらの粒子のサイズは、ナノメートルからマイクロメートルにわたることがあり、ガリウム、ガリウム-インジウム合金、又はガリウム-インジウム-スズ合金内で懸濁され得る。流体特性を変えるために合金に対する粒子の比を変えることができる。実施形態においては、マイクロ・ナノ構造が混合物内で超音波処理又は他の機械的手段により混ぜ合わされる。実施形態においては、本開示に係る組成は、ガリウム合金/酸化ガリウム混合物内にマイクロ・ナノ構造の懸濁コロイドを含んでいる。
【0040】
実施形態においては、本開示に係る組成は、混合物内に分散された1以上のマイクロ粒子又はサブミクロンスケールの粒子をさらに含んでいる。これは、粒子を、共晶ガリウム合金又はガリウムのいずれかに被覆された酸化ガリウム内に封止された状態、あるいは、先に述べたようには被覆されない状態で、共晶ガリウム合金流体内に懸濁させることにより行うことができる。これらの粒子のサイズは、ナノメートルからマイクロメートルにわたることがあり、ガリウム、ガリウム-インジウム合金、又はガリウム-インジウム-スズ合金内で懸濁され得る。流体特性を変えるために合金に対する粒子の比を変えることができる。加えて、その物理的、電気的又は熱的特性を向上又は修正するために、懸濁コロイド又はガリウム合金ペーストへ補助材料が追加される。共晶ガリウム合金内でのマイクロ・ナノ構造の分散は、粒子を加えることなく、音波処理又は他の機械的手段により行うことができる。ある実施形態においては、1以上のマイクロ粒子又はサブミクロン粒子が、約0.001%から約40.0%、例えば、約0.001%、約0.005%、約0.01%、約0.05%、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1%、約1.5%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、又は約40%のwt%のマイクロ粒子が存在するように混合物に混ぜ合わされる。
【0041】
実施形態においては、粒子は、ソーダガラス、シリカ、ホウケイ酸ガラス、石英、酸化銅、銀コーティング銅、非酸化銅、タングステン、過飽和スズ細粒、ガラス、ガラス、グラファイト、銀コーティング銅球や銀コーティング銅フレークのような銀コーティング銅、銅フレーク、又は銅球、あるいはこれらの組み合わせ、あるいはガリウムに濡れることができる他の任意の材料であり得る。ある実施形態においては、1以上のマイクロ粒子又はサブミクロンスケールの粒子は、スフェロイド、ロッド、管、フレーク、板、立方体、角柱、ピラミッド形、檻形、及びデンドリマーの形状である。ある実施形態においては、1以上のマイクロ粒子又はサブミクロンスケールの粒子は、約0.5ミクロンから約60ミクロン、例えば、約0.5ミクロン、約0.6ミクロン、約0.7ミクロン、約0.8ミクロン、約0.9ミクロン、約1ミクロン、約1.5ミクロン、約2ミクロン、約3ミクロン、約4ミクロン、約5ミクロン、約6ミクロン、約7ミクロン、約8ミクロン、約9ミクロン、約10ミクロン、約11ミクロン、約12ミクロン、約13ミクロン、約14ミクロン、約15ミクロン、約16ミクロン、約17ミクロン、約18ミクロン、約19ミクロン、約20ミクロン、約21ミクロン、約22ミクロン、約23ミクロン、約24ミクロン、約25ミクロン、約26ミクロン、約27ミクロン、約28ミクロン、約29ミクロン、約30ミクロン、約31ミクロン、約32ミクロン、約33ミクロン、約34ミクロン、約35ミクロン、約36ミクロン、約37ミクロン、約38ミクロン、約39ミクロン、約40ミクロン、約41ミクロン、約42ミクロン、約43ミクロン、約44ミクロン、約45ミクロン、約46ミクロン、約47ミクロン、約48ミクロン、約49ミクロン、約50ミクロン、約51ミクロン、約52ミクロン、約53ミクロン、約54ミクロン、約55ミクロン、約56ミクロン、約57ミクロン、約58ミクロン、約59ミクロン、又は約60ミクロンのサイズ範囲にある。
【0042】
本開示に係る側面は、さらに、導電性ずり減粘ゲル組成を作製する方法に関係している。実施形態においては、この方法では、ガリウム合金流体の表面に形成された表面酸化物をガリウム合金流体のバルクに、表面酸化物と合金との界面の剪断混合により混ぜ合わせ、表面酸化物に架橋マイクロ構造を誘導し、これにより導電性ずり減粘ゲル組成を形成する。実施形態においては、マイクロ構造の懸濁コロイドが、ガリウム合金/酸化ガリウムの混合物内に、例えば、酸化ガリウム粒子及び/又は酸化ガリウムシートとして形成される。
【0043】
実施形態においては、約0.1%から約2.0%(重量パーセント)の酸化ガリウムに対して約59.9%から約99.9%(重量パーセント)の共晶ガリウム合金の比で表面酸化物が混ぜ合わせされる。例えば、酸化ガリウムに混ぜ合わせられるガリウム合金の重量パーセントは、約60%、61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又はそれよりも多く、例えば約99.9%の共晶ガリウム合金であり、酸化ガリウムの重量パーセントは、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1.0%、約1.1%、約1.2%、約1.3%、約1.4%、約1.5%、約1.6%、約1.7%、約1.8%、約1.9%、及び約2.0%の酸化ガリウムである。実施形態においては、共晶ガリウム合金は、ガリウム-インジウム又はガリウム-インジウム-スズを任意の元素比で含むことができる。ある実施形態においては、共晶ガリウム合金は、ガリウムとインジウムを含んでいる。ある実施形態においては、ガリウム-インジウム合金内のガリウムの重量パーセントは、約40%から約95%、例えば約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、又は約95%である。ある実施形態においては、ガリウム-インジウム合金内のインジウムの重量パーセントは、約5%から約60%、例えば約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、又は約60%である。ある実施形態においては、共晶ガリウム合金は、ガリウムとインジウムとスズを含んでいる。ある実施形態においては、ガリウム-インジウム-スズ合金内のスズの重量パーセントは、約0.001%から約50%、例えば約0.001%、約0.005%、約0.01%、約0.05%、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1%、約1.5%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、又は約50%である。
【0044】
実施形態においては、1以上のマイクロ粒子又はサブミクロンスケールの粒子が、ガリウム合金及び酸化ガリウムと混ぜ合わせられる。ある実施形態においては、1以上のマイクロ粒子又はサブミクロン粒子が、組成内に約0.001%から約40.0%、例えば約0.001%、約0.005%、約0.01%、約0.05%、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1%、約1.5%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、又は約40%のwt%のマイクロ粒子となるように混合物と混ぜ合わせられる。実施形態においては、粒子は、ソーダガラス、シリカ、ホウケイ酸ガラス、石英、酸化銅、銀コーティング銅、非酸化銅、タングステン、過飽和スズ細粒、ガラス、グラファイト、銀コーティング銅球や銀コーティング銅フレークのような銀コーティング銅、銅フレーク、又は銅球、あるいはこれらの組み合わせ、あるいはガリウムに濡れることができる他の任意の材料であり得る。ある実施形態においては、1以上のマイクロ粒子又はサブミクロンスケールの粒子は、スフェロイド、ロッド、管、フレーク、板、立方体、角柱、ピラミッド形、檻形、及びデンドリマーの形状である。ある実施形態においては、1以上のマイクロ粒子又はサブミクロンスケールの粒子は、約0.5ミクロンから約60ミクロン、例えば、約0.5ミクロン、約0.6ミクロン、約0.7ミクロン、約0.8ミクロン、約0.9ミクロン、約1ミクロン、約1.5ミクロン、約2ミクロン、約3ミクロン、約4ミクロン、約5ミクロン、約6ミクロン、約7ミクロン、約8ミクロン、約9ミクロン、約10ミクロン、約11ミクロン、約12ミクロン、約13ミクロン、約14ミクロン、約15ミクロン、約16ミクロン、約17ミクロン、約18ミクロン、約19ミクロン、約20ミクロン、約21ミクロン、約22ミクロン、約23ミクロン、約24ミクロン、約25ミクロン、約26ミクロン、約27ミクロン、約28ミクロン、約29ミクロン、約30ミクロン、約31ミクロン、約32ミクロン、約33ミクロン、約34ミクロン、約35ミクロン、約36ミクロン、約37ミクロン、約38ミクロン、約39ミクロン、約40ミクロン、約41ミクロン、約42ミクロン、約43ミクロン、約44ミクロン、約45ミクロン、約46ミクロン、約47ミクロン、約48ミクロン、約49ミクロン、約50ミクロン、約51ミクロン、約52ミクロン、約53ミクロン、約54ミクロン、約55ミクロン、約56ミクロン、約57ミクロン、約58ミクロン、約59ミクロン、又は約60ミクロンのサイズ範囲にある。
【0045】
本開示に係る側面は、本開示に係る組成を含む製品及びそのような組成を作製する方法に関係している。曲げたり伸ばしたりすることができて柔らかいことが期待される衣服や布地をはじめとする日用品に電子機器を組む込むことに関心が高まっている。柔らかい電子機器であれば、人体に滑らかに結びつくことができ、ウェアラブルデバイス、医療デバイス、人間や繊細な物とより安全に相互作用することができるコンフォーマルロボティクス又は「ソフトマシーン」の候補に対して多くの新しい用途を開拓することができる。
【0046】
ある実施形態においては、製品は、電子デバイスを含んでいる。ある実施形態においては、製品は、生地、プラスチックフィルム及び/又は膜を含んでいる。ある実施形態においては、本開示に係る組成は、センサ、例えば、歪み検出及び/又は剪断検知に使用されるセンサに一体化される。一例として、本開示に係る組成を有する変形液体ワイヤは、導体の幾何学的特性に応じて、抵抗、静電容量、インダクタンス、インピーダンス又は特性周波数に測定可能な変化を生じさせることができる。例えば、この組成を、任意の基板上の歪み及び/又は剪断を検出するためのセンサとして使用することができる。例えば、路肩や堤防を補強するために使用される「ジオテキシタイル」に組成を一体化することができる。そのような一例においては、本開示に係る組成から形成された長いプラスチック被覆ワイヤにより、土木構造におけるスランピングを検出することができ、倒壊の警告を早期に出すことができた。他の例においては、本開示に係る組成をパラシュート吊索上にパターン化して自動操舵可能なパラシュートを制御するために使用可能なリアルタイム歪みフィードバックを供給することができた。
【0047】
ある実施形態においては、製品は、基布と、その上に配置された、本開示に係る組成を有する1以上の要素とを備えるボディウェアを含んでいる。様々な実施形態においては、基布の上に配置され、例えば布の表面に対して外側又は内側に面する基布の表面に連結された、本開示に係る組成を有する1以上の要素を用いることができる基布、例えばボディギア用の基布が開示される。一実施形態においては、本開示に係る組成は、衣服の他の様々な要素、例えばバッテリなどの電源と、センサなどの他の一体型電子デバイスとの間で電流を流す。
【0048】
ある実施形態においては、ボディウェアは、本開示に係る組成に連結され、情報を収集及び/又は収集された情報を処理するための構成要素を含み得る。例えば、ボディウェアは、例えば、心拍数やEKG、脈拍や体温などの身体の生命兆候や移動といった装着者の1以上の身体的状況をモニタリングする構成要素を含み得る。ある実施形態においては、本開示に係る組成は、圧力センサとして構成される。
【0049】
一般的に、所望の基布機能(例えば、伸張性、ドレープ性、テクスチャ性、通気性、湿気伝達性、透気性、及び/又はウィッキング)を発揮するためには、基布の表面積を十分に露出する必要がある。例えば、露出している基布が少なすぎる場合には、湿気伝達性及び/又は透気性のような特性が、カバーしているパーセンテージに対して釣り合わないほどに損なわれることがある。
【0050】
実施形態においては、導電組成の幅は、約0.1mmから約10.0mmの範囲にあり、例えば、約0.1、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、又は10.0mm(時としてこれより大きい)、あるいは任意の値であり、あるいは任意の範囲にある。
【0051】
ある実施形態においては、導電組成の量及び/又は配置は、コストを抑え、見た目の美しい材料を生成するように選択される。実施形態において、導電組成の厚さは、約0.05mmから約5mmの範囲にあり、例えば、約0.05、約0.1、約0.5、約1.0、約1.5、約2.0、約2.5、約3.0、約3.5、約4.0、約4.5、約5.0mm、又は任意の値であり、あるいは任意の範囲にあるが、これよりも小さな厚さや大きな厚さも考えられる。
【0052】
様々な実施形態によれば、基布は、任意の形態のボディウェア、毛布、テント、レインフライ、傘、又は日除けのようなボディギア又は任意の材料又は装置の一部であってもよい。本明細書で使用される場合には、ボディウェアは、圧着衣服のような運動着、Tシャツ、ショーツ、タイツ、スリーブス、ヘッドバンドなど、ジャケットのような上着、パンツ、レギンス、シャツ、帽子など、及び履物などの身体に着用する任意のものを含んでいるが、これらに限られるものではない。
【0053】
様々な実施形態においては、導電組成の量及び/又は配置は、1以上の所望の特性又は特徴を有する基布上に配置され得る。例えば、基布は、室内用及び室外用の両方の用途において使用されるボディウェアに必要とされる透気性、湿気伝達性、及び/又はウィック性などの特性を有し得る。ある実施形態においては、基布は、耐摩耗性、静電防止特性、抗菌活性、撥水性、防炎性、親水性、疎水性、耐風性、太陽光保護、SPF保護、弾力性、耐汚染性、防しわ性などの他の所望の属性を有し得る。他の実施形態においては、導電組成の量を分離することにより、基布に所望のドレープ性、見た目、及び/又はテクスチャを持たせることができる場合がある。好適な基布は、ナイロン、ポリエステル、レーヨン、綿、スパンデックス、羊毛、絹、又はこれらの混紡、又は所望の見た目、触感、重さ、厚さ、織り方、テクスチャ、又は他の所望の特性を有する任意の他の材料を含み得る。
【0054】
様々な実施形態においては、単一層の基布を用いて基布を構成してもよく、他の実施形態では、1以上の他の層に連結された基布の層を含む複数層の生地を用いることがある。
【0055】
様々な実施形態においては、導電組成の配置、パターン、量が変化し得る。様々な実施形態においては、導電組成の量のパターン及び/又は配置は、対称的、順序通り、ランダム、及び/又は非対称的であり得る。
【0056】
本開示に係る側面は、さらに、上記で開示されたずり減粘ゲル組成を有する製品を作製する方法に関係している。そのような方法においては、ずり減粘ゲル組成は、製品の少なくとも1つの面に印刷される。
【0057】
ある実施形態においては、本開示に係る組成は、基板に印刷あるいは転写される。ある実施形態においては、印刷は、スクリーン印刷を含んでいる。一部の例では、印刷は、例えばシリコーンゴム及び/又はポリウレタンゴムのスタンプである3D印刷スタンプ金型を用いて接触転写によりなされる。転写接触におけるパラメータは、転写される材料、接触パッド及び基板の表面エネルギーである。流体は、一般的に、自身の表面エネルギーよりも高いエネルギーで表面に対して濡れ、さらに高いエネルギーで基板に対して優先的に濡れる。シリコンゴム(PDMS)は、異常に表面エネルギーが低く、接触転写印刷においては転写媒介として用いられることが多い。他の実施形態においては、本開示に係る組成は、飽和したスポンジをマスクに押し付け材料を転写することで基板に転写される。スポンジを使う方法については、数多くのポリウレタンフォーム及びPDMSフォームを利用することができる。
【0058】
本開示に係る主題は、以下の非限定的な実施例によりさらに説明される。
【実施例1】
【0059】
材料形成の方法
最初に、市販のガリウム-インジウム-スズ(68.5、21.5、10)の合金(ガリンスタン)で実験したところ、ガリウム系合金は、大気中で酸化物層を非常に早く形成することが観察された。液体金属をPDMSマイクロ流体チャネルに注入するプロセス中に、塩酸(HCL)を用いて試料上の酸化物層を還元し、不要物を減らすことで、「清浄な」非酸化デバイスを作ることができた。このプロセスの間、HCLにより還元される際に試料に奇妙な物理的挙動が生じることが観察された。例えば、試料が通常のガリンスタンを形成せず、高粘度の材料が作製された。この材料は、市販されていたガリンスタン試料から少量得られることができた。
【0060】
最初の試行は、30ミクロンのガラスビーズに混ぜ合わせることによりガリンスタンから発泡体に似た材料を合成した。酸素の存在下において、ガリンスタンは、その酸化物層を介してガラスに対して簡単に濡れた。最初は、このようにガラスビーズに対してガリンスタンが「濡れ」、ガリンスタンとガラスのスラリがこのように形成されることを望んでいた。このスラリは、粘度が高く、任意の形状に簡単に形成できる。
【0061】
ガリウム-インジウム及び関連する合金が任意の非金属面に対して濡れる唯一のメカニズムは、その酸化物層の付着と、その結果得られるその層の下の流体のトラップとによることが過去に報告されている。ガリウム-インジウム-スズは、ガラスと直接接触する流体金属の薄い層によりビーズに対するように濡れ、酸化物層により適切な場所でトラップされるという仮説があった。混合を通じて、ガラスビーズは繰り返し大気と接触し、ガリウム-インジウム-スズの酸化物トラップ連続層からなる連続層を形成する。これらの構造が再び浸漬されると、混合からの剪断力が酸化物層の破壊を引き起こし、散乱構造を形成し、ガラスビーズの懸濁コロイドを実現して、流体の粘度を上げると思われる。
【0062】
この方法は、ミクロンのビーズと他の様々なサイズのビーズでうまく機能した。これは、連結ガリウム-酸化物構造の微細なネットワークが、ガリウム-インジウム合金を吸収し、粘度を上げる流体の内部構造を提供するという発見につながった。粘度が高くなると、流体はより簡単に押し出し成形することが可能となり、ノズル成膜やステンシル印刷のような従来の印刷手法を用いて導電性を有する幾何学的構成に確実に形成することができた。得られる高粘度流体は、ガリウム-インジウムゲル、ガリウム-インジウム合金ゲル、金属ゲル、あるいは単にゲルなど様々に呼ばれる。
【実施例2】
【0063】
材料形成の付加方法
まず、ガラス平面上に濡らしたガリウム-インジウム-スズを超音波処理することにより酸化ガリウムのマイクロ構造を生成した。超音波処理により、ガリウム-酸化物表面にマイクロ構造が形成された。続く超音波処理と混合工程により、これらの構造を混ぜ合わせて流体のバルクにし、最終的にガリウム-インジウム-スズと約.84%の酸化物からなるゲルを得た。このゲルは、ガラスビーズを用いて作製されたものよりも分離しにくく、当然バルク導電性もずっと高かった。興味深いことに、ガリウム合金上の酸化物を還元するために用いられることが多い塩酸は、このように生成されたゲル上の表面酸化物のみ還元し、内部構造は元のままとなる。これは、HCLにより完全に還元され、ゲルからビーズが完全に分離して粘度の低下を引き起こすガラスビーズを用いて作製されたゲルと対照的である。
【実施例3】
【0064】
材料形成の付加方法
3つ目の成功例は、ガリウム-インジウム又はガリウム-インジウム-スズの浴に部分的に浸漬された混合バーを使用し、渦を生成するために非常に高いRPMで回転させることを伴う。そのようにして生成された渦により、ガリウム-インジウムとその酸化物層を含む不安定な薄壁が、流体液面の上方に数センチメートル延びるように混合バーの周囲に形成される。これらの壁により、渦は、大きな表面積を有し、大量の酸化物を流体中に昇華させる。流体は、急激に粘度が上昇し、環状に混ぜる必要が生じる。得られる流体は均質ではなく、低粘度のガリウム-インジウム合金は底部に溜まり、気泡内に混ぜ合わされたことにより、表面にガリウム-インジウムゲルが浮遊する。ゲルを傾斜面に置くことによりゲルを排出した後、集めて、真空サイクルして空気中に取り出すことができる。得られるゲルは、超音波処理により生成されたものに匹敵する。
【実施例4】
【0065】
スタンプ転写可能な組成の生成
ガリウム及びインジウムのいずれも高価である。これらの導電性は十分なものであるが、銅や銀よりもずっと低い(銅の58.5×10S/mに対して3.46×10S/m)。コストを上げつつ導電性を上げるためにゲルに添加材の懸濁を生成することが望ましいと考えられていた。複数の添加材が試された。
【0066】
微小球ゲル及びフレークゲルのいずれも、接着材又は熱可塑性溶接による封止中に圧力が作用する際の変位に対して耐性がある。
【0067】
フレークゲル及び純銅充填ゲルの両方がスタンプ転写可能となることが革新的であった。通常の文字押し付けスタンプをゲル+添加材料で被覆した後、好適な基板に対して押し付けることができ、スタンプ上のパターンが高い忠実度で転写される。このように0.5mmほどの小さなフィーチャが0.25mmほどの小さなピッチで生成された。そのような堆積物は非常に薄く、約25マイクロメートルであった。
【実施例5】
【0068】
スタンプ転写可能な組成の生成
マクロ接触印刷が行われてきたが、流体を含む他のガリウムに対しては今まで成功していない。スタンプリソグラフィに関しては、平坦スタンプとテクスチャードスタンプの両方を用いて実線及び中実矩形をエラストマ基板上に転写する試みもなされているが成功していない。この転写方法は、過去の既存のアプローチと似ているが、他のグループでは、この手法を液相ゲイン合金に拡張することができなかった。例えば、ガリンスタンは、ある領域ではエラストマに濡れず、他の領域では合体して滴になる。テクスチャードスタンプの場合、それぞれの凹みに堆積した滴は均一に合体しない。この不均一な濡れは、スタンプが最初にガリンスタンでコーティングされる「インキング」中の不均一な濡れから、あるいは転写中の不均一な接触圧力から生じる場合がある。
【0069】
これらの問題は、低ミクロン粒子及びナノスケール粒子をガリウム合金/酸化物ゲルに混ぜることで本開示に係る組成により克服された。理論に拘束されるものではないが、加えられた粒子は、酸化物構造にくっつき、ガリウム金属中で自由に浮遊しないと考えられる。補強酸化物により、酸化物がより大きな塊の中で壊れて、一般的にシステム中の流れを閉じ込めることが保証される。おそらくより重要なこととして、裂開が起きない場合には、金属の流れは、加えられた粒子+酸化物を取り込んで移送しやすく、これが自由流れを阻害する。不安定な金属間化合物を形成し得る、使用される金属粒子の一部においては、ガリウム、インジウム又はスズと銀又は銅との間の相互作用も起きやすく、流体中にさらに微小な構造を生成し、その自由流れを阻害する。
【0070】
それぞれの添加物に対していくつかの充填スキームが試行された。すべてを一定の添加速度で前もって用意したゲルに機械的に混ぜた。54%ほどの高い充填も試されたが、金属の充填が高くなればなるほど、未知のプロセスによって(合金又は金属間化合物の形成と考えられる)、得られた混合物の硬化が生じる。
【0071】
重量で10~30%の間の銀コーティング銅フレークの充填により、へら又はブラシを用いて堆積させた場合に非常に均一な平坦シートに広がる粘土と同様の一貫性を持って複合材料が生成されることが見出された。走査型電子顕微鏡(SEM)画像は、堆積した材料のシートの高さが、正確に測定したわけではないが、極めて均一であることを示していた(図1A図1E参照)。図1Aは、通常の未処理のガリウム-インジウム-スズ(非常に粘度が低く、電子ビームの衝撃により振動するので、ぼやけていることに留意されたい)を示している。図1Bは、ミクロンスケールの安定フレークゲル(画像の幅は500ミクロンである)を示しており、図1Cは、不安定ゲル(幅90ミクロン)を示しており、図1Dは、起立形状に形成された不安定ゲルを示しており、その半固体特性を示している(幅75ミクロン)、図1Eは、不安定ゲル(視野250ミクロン)を示している。
【0072】
シートが封止されると、流動的になり、封止チャネルの力によって広がったり改質したりする。重量で10~30%充填された銅微小球又はフレークは、より粘性の高い流体を生じ、充填範囲の上限近傍で幾分固体状となり脆くなる。
【0073】
圧縮性を試験するために、市販されている粘着性のPDMS基板である「レスキューテープ」の層の間で新しい配合をプレスし、圧縮による流れの均一性を確認した。
【0074】
図2A及び図2Bは、失敗した圧縮試験例(図2A図2B)と成功した圧縮試験例(図2C)を並べて示している。「スプルー」が失敗した圧縮例の主な部分を噴出したことに留意されたい。これらは、複合系とは別個に移動するガリウム金属の制限されない流れにより生じる。これに対して、成功した試験において充填した粒子添加物は、系が一緒に流れないといけなくなるようにするとともに、圧縮中に均一に広がる。これは、堆積パターンの周りにプラスチック膜を熱溶接するような確立された工業手法を用いて導電性のゲルを封止するのに非常に望ましい。これらの圧縮試験の過程で、剥がした際に基板の間でパターンが非常に高い忠実度で転写されることが確認された(図3参照)。
【0075】
有力な接触印刷法をさらに試験するために、様々なトレース幅、ピッチ及びパターンを有する「ケルト結び」パターン技術のスタンプを使用した。図4A図4Dは、そのスタンプを用いた最初の試行では優良な結果、0.5mmほどの微小なトレース幅及び0.25mmほどの微小なピッチを有するパターンが得られたことを示している。
【0076】
転写プロセスは、どれだけの量の金属ゲルが最初にスタンプに充填されるか、基板とスタンプとがどれだけ平坦であるか、及びどれくらいの量の圧力を作用させるかに大きく依存していた。
【0077】
これらの手法を用いて、スタンプ転写によって有用なデバイスを作製することができる。図5は、リードが取り付けられた封止スタンプを示している。この構成は圧力センサとして作用する。圧力が作用する際に、パターンがゆがんで圧縮され、測定される抵抗値が変化する。高い忠実度の転写印刷プロセス及びカスタマイズされたトレースパターンを用いることにより、これを非常に安価で非常に有用な圧力センサとすることができた。手作業による総組立時間は、リードの取り付け及びポッティングを含め約1分であった。この製造プロセスは、非常にスケーラブルであり、二次元の任意のトレース幾何学配置の迅速なパターン化を可能にする。
【実施例6】
【0078】
共晶金属ゲルによる歪み検知
本開示に係る配合は、導電トレースを生成するために、インク又は塗料と同様に種々の基板上に印刷することができる共晶金属ゲル複合材料を用いることによって大きなスケールの歪み及び変形を検出することを可能とする。本開示に係る材料は、非晶質室温流体であるので、疲労を生じることなく変形させたり、伸ばしたりすることができる。プラスチック生地ライナ上に置かれた薄いトレースは、生地の触感に影響を与えることなく、曲がったり伸びたりすることができる。そのようなトレースを生地ライナの第2の層により封止することにより封止導電経路が生成される。これらの用途は、歪みセンサにおける使用やスマートスポーツ衣服用の非検知薄型伸張可能ワイヤについて既に示されている。
【0079】
本開示に係る材料の非晶質金属構造により、伸ばしたり、あるいは変形したりした際の線形抵抗変化を検知に利用することができる(図6参照)。パラシュート吊索上にパターン化してホイートストンブリッジ及びアナログ・デジタル変換器と一体化することで、抵抗変化を使用してパラシュート開傘中の動的な力と歪みを測定することができる。
【0080】
金属ゲルワイヤ片は、その分散値が導電体に平行な歪みの関数となる可変導電体として役立つ。これにより、様々な分解能の多くの歪み検知パターンを作ることができる。最も簡単な場合においては、パラシュート上のそれぞれのゴア上に、一方は緯方向に延び、他方は経方向に延びる2つのトレースをパターン化することができた(図7参照)。両者の導電変化を測定することにより、個々のパラシュートゴアに対する歪みプロファイルを得ることができる。正しいパターン化により、トレースのある部分は、歪みに応じて極端に大きな線形抵抗変化を生じ得る。例えば、ジグザグパターンは、トレースの経路に垂直な軸に歪むと極端に大きな抵抗変化を示す。この特徴を用いて、注目領域にわたって適切なパターン化をすることで、歪み情報を得るための複数のトレースを作ることができた。これにより、ゴアにわたる歪み検知の分解能が高まり、完全な歪みマップを推定することが可能となる。
【0081】
相互に接続された金属ゲルトレースのメッシュを作ることにより非常に高い分解能を実現することができた。このメッシュのそれぞれの断片は、その方向に応じて緯方向又は経方向のいずれかにおける歪みに依存する可変抵抗である。出力要素のすべての一意なペアリングは、6要素ベクトルを生成する。それぞれの可変抵抗の抵抗範囲に適切に重み付けを行うことにより、考えられる抵抗値の組み合わせのそれぞれを出力ベクトルが任意の忠実度に一意にエンコードすることを確実にすることができる(例えば図8参照)。
【0082】
有限i/oベクトルに基づく、可変抵抗を接続したメッシュにおける抵抗値の解法は、VLSI設計及び検証の分野においてしばしば遭遇する、よく知られた問題である。既に開発されている手法を用いて、導電ゲル断片が横切るパラシュート傘体表面のそれぞれ部分における歪みを素早く効果的に計測することを可能にする、i/oベクトル抵抗値に対する抵抗値のマッピングを開発することができる。この方法により、1平方cmよりも良好な分解能を得ることができた。
【0083】
データ取得
【0084】
金属ゲルはまさに金属として機能するので、吊索から延びる金属ゲルトレースから形成される有線接続を介して、あるいは、放送を介して電気信号を伝達することができる。それぞれのゴアは、抵抗値を読み取り、これらを標準の放送フォーマットにする小さな埋め込みシステムに縫い付けることができていた。これらの信号を、傘体表面(図9参照)に印刷された金属ゲルアンテナに供給することができた。アンテナは伸張可能であり、その動作周波数が変化するが、そのような変化は、線形であり、整合させることができる。一意のIDを送信するアンテナのパターンにより、傘体表面の低分解能歪みマップも得ることができた。RF信号を介したデータ転送及び歪み検出は可能ではあるが、フェイズIの提案においては提案されていない。
【0085】
上記の方法のいずれかにおいては、外部照明源や遠隔検出などを必要とせずに、傘体表面上で歪みを直接測定することができる。これにより、画像処理の計算のためのオーバヘッドなしに歪み場の高分解能測定が可能となるだけではなく、様々な光レベル、悪天候やペイロード/傘体の不整合に対して影響を受けにくい現場設置可能なシステムを実現することが可能となる。
【0086】
パラシュート傘体生地のための現在の金属ゲルパターン化及び封止法に対する検証
【0087】
目的は、パラシュート傘体のナイロン材料に付着させることである。薄いTPUトレース又はシリコーン接着材が下地材料に悪影響を与えるとは考えられていない。しかしながら、悪影響がないことを保証するために引っ張り強さ及び疲労試験が行われる。Dow Corning 7091のようなシリコーン系接着材をパラシュート生地に直接塗布した後、硬化した封止材上に金属ゲルをパターン化し、TPU封止金属ゲルトレースを傘体生地に付着させることに対して評価が行われる。
【0088】
パラシュート傘体生地上の金属ゲルトレースの特徴分析
【0089】
緯方向及び経方向における歪み抵抗フィードバック関係を測定するために、パラシュート生地に対する封止金属ゲルトレースの歪み試験が行われる。緯方向及び経方向における様々な標準トレースパターンが.2~25%の所望の歪み範囲で測定される。特徴付けられた共晶金属ゲル可変抵抗値が使用される。
【0090】
2次元可変抵抗歪み検知をモデル化するために特徴分析の出力を利用する
【0091】
MatLabやLabViewなどの市販シミュレーションツールを用いて、複数の2次元歪みゲージトポロジがモデル化される。特に注目されるのは、可変抵抗メッシュネットワークである。以下に述べるようにして得られる実際値でこれらのネットワークをシミュレーションすることにより、連続範囲中の値をとり得る出力ベクトルに対する連結線形可変抵抗の高次元表面ネットワークのマッピングが生成される。そのようなマッピングは、より大きなスケールの実験において可変抵抗ネットワーク出力を分析するために使用され得るルックアップテーブルに格納される。
【0092】
風洞における可変抵抗トポロジを用いて小さなスケールのパラシュートを特徴付ける
【0093】
シングルゴアで3フィート未満の小さなスケールのパラシュートを緯方向用と経方向用の2つの共晶金属ゲル歪みセンサを用いてパターン化する。風洞内にシステムを配置し、結果の特徴分析を行う。
【0094】
センサ分解能を高めた風洞試験の繰り返し
【0095】
単純なパラシュート上の分解能をどんどん上げた検知ネットワークを作製し、試験し、先の試験を用いて検証する。歪みセンサ傘体からのデータを用いて、4つのセンサ試験からの出力データを検証し、続いてこれを用いて、次第により複雑かつ高分解能となるパターンからのデータを検証する。
【0096】
パラシュート傘体生地のための現在の金属ゲルパターン化及び封止手法を検証する
【0097】
TPU膜の内側に可変抵抗トレースを用意する。これらの膜を1フィート×3インチのパラシュート傘体材料の材料見本に付着させる。さらに、Dow Corning 7091接着材/封止材のようなシリコーン接着材を直接パラシュート傘体に塗布し、接着材上に金属ゲルをパターン化し、第2の封止層が置かれる。このタスクにより得られるものは、パラシュート傘体材料上に金属ゲルを堆積する最善の手段である。
【0098】
パラシュート傘体生地上の金属ゲルトレースの特徴分析
【0099】
上記用意した材料見本にInstron 3365において350サイクルの疲労を与え、故障するまで歪みを与える。傘体生地に悪影響を与えないことを保証するために金属ゲルトレースを使わずに傘体生地の材料見本を制御するために結果を比較する。これらの試験の結果について、異なるトレース幾何学的構成に対して、歪み/抵抗関係のより深い特徴分析を行う。一体型金属ゲルトレースを用いて、歪みε=ΔL/Lに対する正規化された抵抗変化ΔR/Rを測定することにより、緯方向及び経方向の両方でL=0.5メートルの傘体生地の材料見本に対してゲージ率(GF)
を特徴付ける。
【0100】
GFを算出するためのデータを取得するために、2kNロードセル及びLVDTを備えたInstron 3365試験装置上に一体型歪み検知トレースを有する傘体材料の材料見本を搭載して変位ΔLを測定する。0~20%の歪みで0.25%ごとに準静的歪み試験を行う。動的歪み試験は、各試料に対して350サイクルの間0~20%の範囲にわたって行われる。すべての試験に対して変位データがLabviewに収集される。
【0101】
入力での抵抗変化の関数であるアナログ出力電圧Vを生成するホイートストンブリッジを用いて抵抗変化ΔRが測定される。本適用例においては、入力「歪み」抵抗は、長さLの2つの金属ゲルワイヤが抵抗RS1及びRS2を有する場合に、R=V/Iで与えられる。これらの2つのワイヤは、図10A図10Dに示されるような歪み検知トポロジにおける2つの導体を表している。アナログ出力電圧Vは、Labviewにおける分析のためにNational Instruments社のADC(アナログ・デジタル変換器)を用いてデジタルデータに変換され、LabviewではこれがRデータに変換される。ADCは、1000Hzのサンプリングレートで0.25%の電圧変化を検出するのに十分な目標空間分解能を有している。公称ゼロ歪み抵抗RS0に対する抵抗変化率ΔRを歪みεで割ったものがGFとなる。実際には、このシステムをマイクロコントローラに取り付けると、パラシュート開傘中の歪みをリアルタイムで動的に見ることができる。このタスク中、複数の導電パターンが緯方向及び経方向に試験される。これらのパターンは、様々な幾何学的構成において.5mmの増分で1~4mmのトレース幅を含んでいる。
【0102】
シミュレーション用ゲージ率モデルの構築
【0103】
測定されたGFを用いて、MatLab又はLabViewのいずれかにおいてシミュレーションモデルが生成される。このモデルは、歪みパーセンテージを入力として、金属ゲルパターンに適切な抵抗変化を出力として有する可変抵抗の一覧からなる。この既知の特徴付けられた金属ゲルトレースの一覧が以下で用いられる。
【0104】
複数の2次元可変抵抗歪み検知をモデル化する
【0105】
MatLab又はLabviewを用いて、様々な可変抵抗のトポロジに対して回路シミュレーションが作製される。生成された可変抵抗モデルの一覧を用いて、シミュレーションされた可変抵抗ネットワーク上で値を変化させることにより、傘体生地の歪みの正確なシミュレーションを行うことができる。これらのシミュレーションを用いて、高分解能設計を実現するために、新しいトポロジを設計及び試験することができる。特に注目すべきは可変抵抗グリッドパターンであり、これらは歪みセンサを高密度で作製しやすい。しかしながら、高分解能検知のための他の未接続又は希薄接続の可変抵抗ネットワークを除外するものではない。このタスクにより得られるものは、傘体システム見本上に形成可能な1組のモデル化パターンである。
【0106】
風洞において可変抵抗トポロジを用いて小さなスケールのパラシュートの特徴分析を行う
【0107】
小さなパラシュートを購入し、1つのゴアに2つの金属ゲルトレースを取り付ける。1つは緯方向に、もう1つは経方向にする。歪み結果をリアルタイムに記録するためにLabViewを実行しているコンピュータに取り付けられたADC回路に対するホイートストンブリッジにこれらのトレースをワイヤ付けする。その後、組み立てたものをトンネル内に配置する。風洞内でパラシュートが開傘される際にリアルタイムデータが取得される。
【0108】
センサ分解能を高めた風洞試験の繰り返し
【0109】
上記で収集されたデータを検証のために用いて、より高い分解能の2つの追加パターンが試験される。これらのパターンは、シミュレーションに基づくものであり、モデルを検証するのに役立つ。1つのパターンは、図8において述べられたような出力ベクトルを有する可変抵抗のグリッドであると予想される。もう1つのパターンは、歪みフィードバックを解読するのが些細なこととなるように専用i/oラインを用いて傘体表面の複数の部分にわたって独立した緯トレース及び経トレースを備えることにより、より高い分解能を提供する出力を増大するパラシュート表面にわたるトレース幾何学的構成の未接続ネットワークである。
【実施例7】
【0110】
ナイロン繊維パラシュート吊索コードへの応用
中間化学処理を必要とすることなく、室温で共晶金属ゲルをナイロン繊維パラシュート吊索コードへ直接適用することができる。2液ポリウレタン樹脂又はシリコーンエラストマのような柔軟で伸張可能な結合材を用いて、ゲルをナイロンコードに永久に封止し、パラシュート吊索及び制御ラインシステムの通常の取り扱い及びパッキング中の変位を防止することができる。このプロセスは、パラシュートラインの極限引っ張り強さ及び柔軟性を変えることがないと考えられる。
【0111】
重要なことに、本開示に係る組成の非晶質金属構造により、伸ばした際、あるいは変形した際に、検知用に用いることが可能な、線形的で再現可能な抵抗変化が生じることを保証する。PIA-C-5040のような標準パラシュートコードにパターン化し、アナログ・デジタル変換器を用いてホイートストンブリッジと一体化した際には、線形的で再現可能なこれらの抵抗変化を用いてパラシュート開傘中の動的な力と歪みを測定することができる。
【0112】
MIL-C-5040Hパラシュートラインからの内部コードのコーティングの実現性を示すために試験を行った。金属ゲルは、ナイロンに対して良好な濡れ性を実現し、無視できる程度の重量の増加で低抵抗トレースを生成できた。
【0113】
液体ワイヤ導体の抵抗は、1から100オーム毎メートルのオーダに厚さと幅を調整することにより設定することができる。この抵抗値は、ホイートストンブリッジにおいてノイズ比に対して良好な信号を与えるのに十分に高いので、伸びに対して測定抵抗を必要とする用途に対しては理想的である。CNTベースの導電コーティング用のように抵抗を高くすることにより、電流が非常に小さくなり、電磁干渉(EMI)により容易に損なわれる。同様に、銅は、抵抗が小さいので、数メートルのラインの電圧低下が小さすぎて現実的ではなく、EMIの問題もある。金属ゲルでコーティングされた6フィートの長さのMIL-C-5040H制御ラインの典型的な抵抗値は、堆積厚さに応じて2から20オームである。
【0114】
シリコーンゴム内に封止された金属ゲルワイヤに対する歪み応答を示している図6には、典型的な導電性の変化を見ることができる。試料を1.5mmごとに伸張可能な調整可能ジグと準静的歪み試験中に試料のサブ1オームの抵抗を正確に測定するESRメータとを用いて試験を行った。
【0115】
金属ゲルを用いた導体は、銅ほど導電性が高くないが、高速データを送信するには依然として有効である。衣服用途の平坦なトレースについての試験は、この材料が6GHz以上までの信号の伝送に対して好適であり、相互接続部を汎用無線周波数又はマイクロ波周波数伝送システムに直接組み込むことが可能になることを示している。図11は、銅と金属ゲルから形成される50オームのマイクロストリップラインに対する測定挿入損失を示している。有機導体を用いた他の解決法は、数キロオームの抵抗があり、数インチよりも遠くにRF信号を送ることが非現実的となってしまう。
【0116】
歪み検知用の金属ゲルゲージ率を試験する
【0117】
一体型金属ゲルトレースを有する0.5メートルのナイロンコードのゲージ率(GF)は、軸方向歪み検知に対して特徴付けられる。これは、歪み(ΔL/L)に対する正規化抵抗変化(ΔR/R)を測定することにより実現される。
【0118】
RF信号伝送能力
【0119】
この目標のゴールは、RF信号伝送能力を特徴付けるために金属ゲルから形成される異なるタイプの伝送ラインを試験することである。これは、伝送ライン特性インピーダンスを制御することを含んでいる。伝送ラインは、標準パラシュートラインコード形状因子に適合するように設計される。
【0120】
電磁干渉(EMI)シールド
【0121】
EMIが金属ゲルラインによって放射されること(放射性放出)あるいは金属ゲルラインに受け取られること(放射感応能力)を防止するため、おそらくある種の導電シールドを使用する必要がある。このシールドは、金属ゲルラインを完全にあるいはおそらく部分的にのみ囲む。この目的は、内部導体又は金属ゲルから形成される導体をコーティングする絶縁体上に形成されるシールド層としてカーボンブラックが充填されたポリウレタン又はシリコーン、あるいは金属ゲルを使用することの実現性を試験することである。
【0122】
吊索ライン耐久性に対する共晶金属ゲル及び封止の影響
【0123】
パラシュートラインは、共晶金属ゲルの添加により、実質的に変化することのない柔軟性と耐久性を有する必要がある。コーティングされたラインの極限引っ張り強さが測定され、コーティングされていないものと比較される。同様に、導電金属ゲルコーティングは、吊索ラインに与えられる柔軟性と耐久性の同様の要求に耐えられる必要がある。このため、ラインに350サイクルの間歪みを繰り返し与えることにより、動的歪みフィードバックが試験される。この目的は、導体又はパラシュート吊索ラインの一部に欠陥を発生させないためである。
【0124】
PIA-C-5040パラシュートラインへの金属ゲルの適用
【0125】
このタスクにおいては、衣服布地に見られるような平坦面に対して使用される公知の形成法を必要に応じてパラシュート吊索ラインからのナイロン内部コードの円筒面に適用及び修正する。その後、シリコーン及び2液ポリウレタンの両方を用いてコーティングされたコードの封止が行われる。加えて、TPU膜内に金属ゲルを封止する公知の方法を用いて、ナイロン制御ラインの外部に、あるいはパラシュート吊索ラインと制御ラインのコアとスリーブコードとの間に付着させることが可能な、大きくて、極めて柔軟性及び伸張性があり、ロープロファイルの歪みセンサを生成する。このアプローチは、同じロープロファイルのTPU封止相互接続部を制御ライン及び傘体に付着させることができるので、パラシュート傘体材料にも適用可能であるという付加的な効果も有する。考えられる方法の一部が図12A図12Dに示されている。方法を評価すると、全部で4つの種類の歪み検知パラシュートラインが作製されることが考えられる。8つの内部コードのすべてに未封止コーティングを行い、シースで封止を行ったもの(図12B)、出力信号ラインと戻り信号ラインとを提供する2つのポリウレタン封止金属ゲルコーティングナイロン内部コードを有するもの(図12C)、シリコーンゴム内に封止された同様の構成のもの、及びパラシュートラインの長さにわたって別個のTPU検知リボンを有するもの(図12D)である。それぞれのタイプについて複数のラインを作製して試験を容易にしてもよい。
【0126】
引っ張り強さ及び歪み範囲試験
【0127】
一体型歪み検知トレースを有するPIA-C-5040パラシュートラインを5kNのロードセルを装備したInstron 3364試験機に搭載し、その破壊点まで歪みを加える。試験を一体型歪み検知トレースを有していない在庫パラシュートラインと比較する。導電トレースからの歪みフィードバックの線形範囲を0%から破壊(30%であると予想される)に至るまですべての伸張にわたって評価する。この方法がパラシュートラインの極限引っ張り強さに対して与える影響についてのデータを生成する。
【0128】
歪み検知のための金属ゲルゲージ率
【0129】
このタスクの目標は、歪み検知のために、歪みε=ΔL/Lに対する正規化された抵抗変化ΔR/Rを測定することにより、一体型金属ゲルトレースを有するL=0.5メートルのナイロンコードに対するゲージ率GF
を特徴付けることである。
【0130】
GFを計算するためのデータを取得するために、2kNのロードセルとLVDTを装備したInstron 3385試験機に一体型歪み検知トレースを有するパラシュートラインを搭載して変位ΔLを測定する。0~20%の歪みで0.25%ごとに準静的歪み試験を行う。動的歪み試験は、各試料に対して350サイクルの間0~20%の範囲にわたって行われる。すべての試験に対して変位データがLabviewに収集される。入力での抵抗変化の関数であるアナログ出力電圧Vを生成するホイートストンブリッジを用いて抵抗変化ΔRが測定される。本適用例においては、入力「歪み」抵抗は、長さLの2つの金属ゲルワイヤが抵抗RS1及びRS2を有する場合に、図13に示されるようにR=V/Iで与えられる。これらの2つのワイヤは、図12C及び図12Dに示されるような歪み検知トポロジにおける2つの導体を表している。アナログ出力電圧Vは、Labviewにおける分析のためにNational Instruments社のADC(アナログ・デジタル変換器)を用いてデジタルデータに変換され、LabviewではこれがRデータに変換される。ADCは、1000Hzのサンプリングレートで0.25%の電圧変化を検出するのに十分な目標空間分解能を有している。公称ゼロ歪み抵抗RS0に対する抵抗変化率ΔRを歪みεで割ったものがGFとなる。実際には、このシステムをマイクロコントローラに取り付けると、パラシュート開傘中の歪みをリアルタイムで動的に見ることができる。
【0131】
RF信号伝搬能力
【0132】
このタスクでは、金属ゲル歪み検知ラインに沿ったRF信号の伝送が示される。図11において、予備データは、6GHz以上において金属ゲルから形成されるマイクロストリップラインにおけるRF信号の挿入損失が銅に比べてそれほど悪くないことを示している。この知見を広げて、標準パラシュートライン形状因子に適合する伝送ライン構造を設計する。金属ゲル歪み検知ワイヤに沿ってRF信号を伝達できるようにするために、図14に示されるようなシステムが構築される。これは、直流電流Iを流すためにダイプレクサが追加され、RS1及びRS2を測定可能とするためにインダクタLが追加され、キャパシタCがDCブロックとして機能し、RF信号が図示されるRFデータ源からループに入ることができる点を除いて、図3のブロック図と同様である。インダクタは、RF信号を短絡から防止し、ループの遠端でRF信号はキャパシタC及びCを通ってループから出る。相互接続システムに沿ってRF信号を伝送するために、特性インピーダンスを制御することが望まれる。インピーダンスを制御するために、図15A図15Cに示されるような相互接続スキームを評価することが考えられる。2番目の構造(B)は、100から300オームのオーダのインピーダンスを有する「平行二線型」相互接続部を生成するために1対の近接導体(3)を用いている。正確なインピーダンスは、金属ゲル寸法、ラインの間隔、及び封止材料の誘電率の関数である。3番目の構造(C)は、インピーダンス値を低くして、放射とEMIを低減するために外側シールド(4)が追加されている点を除いて、(B)と同様である。試験構造をシミュレーションし、その周波数に対する挿入損失及び特性インピーダンスを特徴付けるために試験構造を測定する。シミュレーションの結果及び完成した伝送ライン構造がこのタスクにより得られるものである。
【0133】
EMIシールド
【0134】
概念を実証するための伝送ライン又は複数のラインを図15A及び図15Cに示されるようにEMIシールドを提供するために導電材料を含むゴムの外被で信号ラインを被覆して製造する。検知/伝送ゲルの内側層をコーティングする絶縁封止部上に形成される金属ゲルからなるシールド層とともに、カーボンブラックが充填されたポリウレタン又はシリコーンを用いることの実現性を試験する。ANSYS HFSSのような3D電磁シミュレータを用いてシミュレーションを行い、挙動をモデル化する。シミュレーションからのデータと試作品ラインがこのタスクにより得られるものである。
【0135】
埋め込みシステム設計
【0136】
可変抵抗値を読み取り、別の場所で処理するためにSPI又はI2Cを介して送信可能な歪みパーセンテージにこれらを変換するために、試作品埋め込みシステムを設計し作製する。250mVから2500mVの範囲にわたる可変電圧を生成するように設計されたホイートストンブリッジを12ビットADCと、低パワーマイクロコントローラと、電源とを有するボードに一体化する。試作品ボードの設計及び構築は、未知の科学や新しい工学を伴うものではなく、アセンブリ業者との作業に応じておよそ2ヶ月の期間を必要とするものである。埋め込みシステムのプログラミングは、さらに1ヶ月かかると予想される。ADCを通じて読み取られるホイートストンブリッジからのそのままの電圧値は、およそのGFを与えるタスク3で行われた実験に基づいて歪みパーセンテージに変換する必要がある。より不確実な目標は、金属ゲル導体をしっかりとボード上の接点に結合するパッケージデザインである。パラシュートコードの長さにわたる導電ラインは、金属ゲルの変位又は汚染を防止するように金属ゲルトレースが封止されるように固体金属と接触する必要がある。最も成功しやすいパッケージ方法は、黄銅ワイヤを終端で可変抵抗の伝送ラインに接合し、ポッティング材で接続点を封止し、その後、ワイヤをPCB上の端子に半田付けする方法である。十分な長さのワイヤにある程度たるみを持たせて使用し、パラシュート吊索ライン終端でそれらをリップストップ織物に縫い込むことで、接続点から十分な歪みを制限し、複数の開傘を通じて動作させることが可能になると考えている。パラシュートラインをInstron 3364に搭載し、埋め込みシステムからデータを読み出しつつ、そのラインに正確で既知の歪みを与えることにより、完成したシステムを検証することができる。このタスクで得られるものは、SPI又はI2Cデータラインのいずれかを通じて歪みパーセンテージの形態でデータを生成可能な組み込みシステムに歪み検知可能な金属ゲルを取り付けたパラシュート吊索ラインの完成試作品である。
【0137】
EMIシールド試作及び試験
【0138】
金属ゲル又はカーボンブラック含浸エラストマのいずれかのシールド層からなる試作品ラインとそれぞれ図15A及び図15Cに示されるように同軸ケーブル又はシールド二本ラインを生成するような検知/伝送ゲルからなる試作品ラインとを物理的に試験する。両方のシステムを伝送ラインとして試験し、無響室を用いてそれらの放射性放出を試験する。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15