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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】粉体の乾燥装置
(51)【国際特許分類】
   F26B 11/02 20060101AFI20220914BHJP
   F26B 3/24 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
F26B11/02
F26B3/24
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019155142
(22)【出願日】2019-08-28
(65)【公開番号】P2021032524
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2021-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】513127456
【氏名又は名称】有限会社ライン工業
(73)【特許権者】
【識別番号】597110711
【氏名又は名称】日研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 実
(72)【発明者】
【氏名】足立 大輔
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-136267(JP,A)
【文献】特開2001-183057(JP,A)
【文献】特開平07-071874(JP,A)
【文献】特開平10-318672(JP,A)
【文献】特開2016-055258(JP,A)
【文献】特開2002-139278(JP,A)
【文献】特開平07-116537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体を乾燥するための装置であって、
設置面に設置される支持フレームと、
前記支持フレームに対し、水平な支軸を介して傾動可能に支持された揺動枠体と、
前記揺動枠体に対し、中心軸線を中心として回転可能に支持された内バケツ保持容器と、
前記内バケツ保持容器の内部に着脱可能に収納保持されると共に被乾燥物たる粉体を収容する開放型の容器としての内バケツと、
前記内バケツ保持容器をそれに収納保持された前記内バケツと共に回転駆動するための駆動手段と、
前記内バケツ保持容器の下方に配設されたロータリージョイントと、 を備え、
前記内バケツの少なくとも外周部には、加熱流体を流通させるための流通路が設定されており、
前記内バケツの少なくとも外周部に設定された加熱流体の流通路は、前記ロータリージョイントを介して加熱流体の供給源と接続される、 ことを特徴とする粉体の乾燥装置。
【請求項2】
前記駆動手段は、
前記内バケツ保持容器の外周部に巻き付けられたチェーンと、
前記チェーンを駆動すべく前記揺動枠体に取り付けられた電動モータと、
を含んでなることを特徴とする請求項1に記載の粉体の乾燥装置。
【請求項3】
前記加熱流体は、水蒸気もしくはお湯、またはオイルである、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の粉体の乾燥装置。
【請求項4】
粉体 の乾燥装置を用いて粉体を乾燥する方法であって、
当該方法で用いられる粉体の乾燥装置は、
設置面に設置される支持フレームと、
前記支持フレームに対し、水平な支軸を介して傾動可能に支持された揺動枠体と、
前記揺動枠体に対し、中心軸線を中心として回転可能に支持された内バケツ保持容器と、
前記内バケツ保持容器の内部に着脱可能に収納保持されると共に被乾燥物たる粉体を収容する開放型の容器としての内バケツと、
前記内バケツ保持容器をそれに収納保持された前記内バケツと共に回転駆動するための駆動手段とを備え、
前記内バケツの少なくとも外周部には、加熱流体を流通させるための流通路が設定されている、粉体の乾燥装置であり、
当該方法は、
前記内バケツ保持容器及びそれに収納保持された前記内バケツを傾斜した姿勢に維持すると共に、その傾斜姿勢にて、前記内バケツ保持容器及び内バケツを前記駆動手段によって回転駆動させながら、且つ、前記内バケツの外周部の流通路に加熱流体を流通させながら、前記内バケツに収容された粉体を乾燥するものである、
ことを特徴とする粉体の乾燥方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体の乾燥装置に関するものである。但し、被乾燥物(乾燥対象物)としての「粉体」には、少量の液体を含んで湿った状態にあるものや、液体との混合状態にあるもの(例えばスラリー等)が含まれる。
【背景技術】
【0002】
様々な産業分野において各種の粉体が工業原料として用いられている。粉体としては、色粉(例えば酸化物系顔料)、セラミック粉、土粉、金属粉などが挙げられる。また、かかる粉体を乾燥するための装置や手法も種々提案されている。例えば、粉体等の乾燥用容器として密封式の容器を採用したものがある(特許文献1,2及び3参照)。また、粉体乾燥用の熱源または加熱方式として、ドラム型の密封容器内に熱風(乾燥した高温の空気)を送り込むものや、密封容器の周囲に電熱線を配設したもの等が知られている。
【0003】
その一方で粉体原料の需要も、単品種大量使用から多品種・少ロット化の傾向にあり、多品種・少ロットの需要にも柔軟に応じられる粉体の乾燥装置が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3455848号公報
【文献】特開2007-93178号公報
【文献】特開2009-28707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、乾燥処理すべき粉体の量に応じて運転態様を切り替えることができ、処理すべき品種を容易に取り換えることができる、多品種・少ロットの需要にも柔軟に対応可能な粉体の乾燥装置を提供することにある。また、そのような乾燥装置を用いた粉体の乾燥方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、粉体を乾燥するための装置であって、
設置面に設置される支持フレームと、
前記支持フレームに対し、水平な支軸を介して傾動可能に支持された揺動枠体と、
前記揺動枠体に対し、中心軸線を中心として回転可能に支持された内バケツ保持容器と、
前記内バケツ保持容器の内部に着脱可能に収納保持されると共に被乾燥物たる粉体を収容する開放型の容器としての内バケツと、
前記内バケツ保持容器をそれに収納保持された前記内バケツと共に回転駆動するための駆動手段と、
前記内バケツ保持容器の下方に配設されたロータリージョイントと、を備え、
前記内バケツの少なくとも外周部には、加熱流体を流通させるための流通路が設定されており、
前記内バケツの少なくとも外周部に設定された加熱流体の流通路は、前記ロータリージョイントを介して加熱流体の供給源と接続される、ことを特徴とする粉体の乾燥装置である。
【0007】
本発明の乾燥装置によれば、支持フレームに支持された揺動枠体には、内バケツを内部に収納保持した状態の内バケツ保持容器が傾動可能に支持されている。このため、支持フレームに支持された揺動枠体が、水平な設置面(または重力方向の鉛直線)に対して傾斜した姿勢に保たれるとき、内バケツおよび内バケツ保持容器もまた揺動枠体と共に傾斜した姿勢に保持される。そして、このときの内バケツの傾斜角度(ひいては内バケツ保持容器および揺動枠体の傾斜角度)を、内バケツに収容された被乾燥物たる粉体の量に応じて設定する。具体的には、粉体の量が多い場合には内バケツの傾斜を直立状態に近づける一方、粉体の量が少ない場合には内バケツの傾斜を水平状態に近づけることで、粉体の量が変化しても、粉体が内バケツからこぼれ出ることを防ぎつつ、内バケツの内壁面と粉体との接触面積が少しでも大きくなるようにする。そして、かかる傾斜姿勢を保ったまま駆動手段によって内バケツ保持容器を内バケツと共に回転駆動することで、且つ、その回転駆動中に内バケツの外周部に設定された流通路に加熱流体を流通させることで、内バケツに収容された粉体を効率的に乾燥することができる。
なお、本発明の乾燥装置が、内バケツ保持容器の下方に配設されたロータリージョイントを備えることで、内バケツおよび内バケツ保持容器が揺動枠体に対して相対回転可能な状態を維持したまま、当該乾燥装置の外に設置された加熱流体の供給源から、回転する内バケツの流通路に対して加熱流体を連続的/持続的に供給することができる。
【0008】
好ましくは、本発明の粉体の乾燥装置において、
前記駆動手段は、
前記内バケツ保持容器の外周部に巻き付けられたチェーンと、
前記チェーンを駆動すべく前記揺動枠体に取り付けられた電動モータと、
を含んでなることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、内バケツと、それを収納保持する内バケツ保持容器との間の比較的狭い中間領域を利用して、内バケツ保持容器および内バケツを同期的に回転駆動するための駆動手段をコンパクトに構築することができる。
【0012】
好ましくは、前記加熱流体は、水蒸気もしくはお湯、またはオイルである。
【0013】
内バケツの外周部の流通路に対して供給される加熱流体が高温の水蒸気(例えば120~150℃)である場合には、内バケツのほぼ全体(特に、粉体と接する内壁面)を温度ムラ無く均等に加熱することができ、所定の乾燥温度を安定的に保つことができる。また、加熱流体としてお湯(例えば70~80℃)を用いた場合には、相対的に低温度で粉体を乾燥することができる。また、加熱流体としてオイルを用いることもできる。なお、水蒸気またはお湯を流通させた後に、前記流通路に水(冷水)を流通させることで、当該乾燥装置を冷却装置として機能させることもできる。
【0014】
本願における第2の発明は、粉体の乾燥装置を用いて粉体を乾燥する方法であって、
当該方法で用いられる粉体の乾燥装置は、
設置面に設置される支持フレームと、
前記支持フレームに対し、水平な支軸を介して傾動可能に支持された揺動枠体と、
前記揺動枠体に対し、中心軸線を中心として回転可能に支持された内バケツ保持容器と、
前記内バケツ保持容器の内部に着脱可能に収納保持されると共に被乾燥物たる粉体を収容する開放型の容器としての内バケツと、
前記内バケツ保持容器をそれに収納保持された前記内バケツと共に回転駆動するための駆動手段とを備え、
前記内バケツの少なくとも外周部には、加熱流体を流通させるための流通路が設定されている、粉体の乾燥装置であり、
当該方法は、
前記内バケツ保持容器及びそれに収納保持された前記内バケツを傾斜した姿勢に維持すると共に、その傾斜姿勢にて、前記内バケツ保持容器及び内バケツを前記駆動手段によって回転駆動させながら、且つ、前記内バケツの外周部の流通路に加熱流体を流通させながら、前記内バケツに収容された粉体を乾燥するものである、
ことを特徴とする粉体の乾燥方法である。
【0015】
この乾燥方法によれば、被乾燥物たる粉体の量に応じて、内バケツ内の粉体を効率的に乾燥することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の乾燥装置および乾燥方法によれば、乾燥処理すべき粉体の量に応じて運転態様を切り替えることができると共に、処理すべき品種を容易に取り換えることができ、多品種・少ロットの需要にも柔軟に対応することができる。
【0017】
より具体的なレベルで本発明の利点を列挙すると、次の通りである。
・内バケツおよび内バケツ保持容器の傾斜角度を乾燥処理すべき粉体の量に応じた適切な傾斜角度に保持した状態で、内バケツおよび内バケツ保持容器を回転させることで、接面範囲を大きくとることができるため、粉体を効率的に乾燥することができる。
・粉体を収容する内バケツは開放型の容器として構成されているため、乾燥作業完了後に揺動枠体ごと内バケツを大きく傾けるだけで、乾燥済みの粉体を内バケツから容易に取り出すことができる。
・内バケツは内バケツ保持容器を介して揺動枠体に間接的に取り付けられると共に、内バケツは内バケツ保持容器に対し着脱可能となっているため、乾燥装置から内バケツだけを容易に取り外すことができる。このため、品種替えに伴う洗浄等の作業は内バケツだけで済ませることができる。また、内バケツを事前に複数個用意しておけば、品種替えに伴う作業時間のロスを最小化することができ、作業の迅速化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に従う粉体の乾燥装置の全体側面図。
図2図1の乾燥装置の支持フレームを示し、(A)は側面図、(B)は背面図。
図3図1の乾燥装置の傾動枠体を示し、(A)は側面図、(B)は背面図。
図4図1の乾燥装置の内バケツ保持容器を示し、(A)は径方向断面図、(B)は底面図。
図5図1の乾燥装置の内バケツを示し、(A)は側面図、(B)は底面図。
図6図5に示す内バケツの径方向断面図。
図7】内バケツ保持容器に内バケツを収納保持した状態を示す概略断面図。
図8図7の底部付近を拡大した図であって、加熱流体の分配・回収機構の概要を示す断面図。
図9】乾燥装置を用いた乾燥作業の一連の手順を示す説明図。
図10】乾燥装置を用いた乾燥作業の一連の手順を示す説明図。
図11】乾燥装置を用いた乾燥作業の一連の手順を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態の乾燥装置の組立状態における全体側面図である。但し図1では、輪郭線等の重なりによる見づらさを緩和するために、部材の一部を省略したり破断して示したりして判読性を改善していることに注意されたい。図2図8は、乾燥装置の主要な構成要素を、構成要素ごとに示した図である。
【0020】
図1に示すように、粉体の乾燥装置は、設置面S(例えば工場の床面)上に固定的に設置される支持フレーム10と、揺動枠体20と、内バケツ保持容器30(説明の便宜上「外バケツ30」ともいう)と、内バケツ40とを備えている。
【0021】
図2(A)及び(B)に示すように、支持フレーム10は、設置面S(図1参照)に対して縦(垂直)、横(水平)または斜めに延びる複数のフレーム材11を組み立ててなる枠状構造物であり、乾燥装置本体の主骨格を形作っている。この支持フレーム10の上部には、相対向する一対の軸受け部12が設けられている。これら一対の軸受け部12は、後述する揺動枠体20に設けられた水平な支軸22を支える部位であり、これらの軸受け部12を介して揺動枠体20が支持フレーム10に対して傾動可能に支持される。
【0022】
図3(A)及び(B)に示すように、揺動枠体20は、縦または横に延びる複数の枠材21を組み立ててなる略直方体の籠状あるいはサイコロ状の枠体である。揺動枠体20には、図3(B)で見てその左右両側に水平な支軸22が設けられている。これらの水平な支軸22が前記支持フレームの軸受け部12に装着されることで、揺動枠体20が支持フレーム10に対して傾動可能に支持される。また、揺動枠体20の下面側の一端には、連結具23が取り付けられている。この連結具23は、揺動枠体20に対してワイヤやロープの類(図示略)を連結するための部位である。当該連結具23に結び付けられたワイヤやロープをウインチ(巻き上げ機)等で引っ張り操作することで、支持フレーム10に対する揺動枠体20の姿勢(つまり傾斜角度)を種々変更することができる。なお、揺動枠体20は、ワイヤやロープに引っ張られていない自然状態(無負荷状態)において設置面Sに対しほぼ垂立した姿勢(図1参照)を保つように重量バランス等が設計されている。なお、ワイヤやロープに代えて、油圧シリンダを用いた機構で揺動枠体20の姿勢を変更(調整)するようにしてもよい。
【0023】
直方体の籠状あるいはサイコロ状をした揺動枠体20の内側には、内バケツ保持容器(外バケツ)30を揺動枠体20内で回転可能に支持するための複数のローラ機構(24,25,26)が設けられている。例えば図3(A)及び(B)に示すように、揺動枠体20の上部領域の四隅には4基の水平ローラ機構24が配設されると共に、揺動枠体20の下部領域の四隅には4基の水平ローラ機構25が設けられている(なお、水平ローラ機構24,25の基数は4基に限定されるものではない。)これら合計8基の水平ローラ機構(24,25)は、揺動枠体内に配置される外バケツ30の外周部の一部に接触して、外バケツ30の回転を許容しつつ外バケツ30を半径方向(水平方向)に位置決めする。また、揺動枠体20の下部領域の4つの辺部のそれぞれの中央位置には、合計4基の垂直ローラ機構26が配設されている(なお、垂直ローラ機構26の基数は4基に限定されるものではない。)。垂直ローラ機構26の各々は、上下一対のローラ(26a,26b)で構成されており、これら上下のローラ(26a,26b)間に外バケツ30の外周部の一部を挟み込むことで、外バケツ30の回転を許容しつつ外バケツ30を垂直方向に位置決めしている。
【0024】
更に、揺動枠体20は電動モータ27を具備している。この電動モータ27は、揺動枠体20の一部に固定された支持板28に取り付けられている。電動モータ27は、その出力軸(図示略)の先端部に駆動ギヤ(図示略)を有している。
【0025】
図4(A)及び(B)に示すように、内バケツ保持容器(外バケツ)30は、上端部が開口した概ね有底円筒状の容器体として形成されている。この外バケツ30の上端開口部31の外周域には鍔状の上側フランジ部32が設けられると共に、外バケツ30の底壁部33の外周域には鍔状の下側フランジ部34が設けられている。上側フランジ部32は、揺動枠体20の上部領域の四隅に設けられた4基の水平ローラ機構24が当接する部位である。また、下側フランジ部34は、揺動枠体20の下部領域の四隅に設けられた4基の水平ローラ機構25が当接する部位であると共に、揺動枠体20の各垂直ローラ機構26の上下ローラ(26a,26b)間に挟まれる部位でもある。また、図4(B)に示すように、外バケツ30の底壁部33には、中央に位置する大貫通穴35と、その大貫通穴35の四方に配置された4つの小貫通穴36とが貫通形成されている。
【0026】
図4(A)に示すように、外バケツ30の上端開口部31の周縁には、周方向に沿って90°の等角度間隔で配置された4つのタブ係合部37が設けられている。それぞれのタブ係合部37は、相対向する一対の係合片(37a,37b)で構成されており、その一対の係合片(37a,37b)の間に、後述する内バケツ40のタブ42(図5,6参照)が挿入配置可能となっている。
【0027】
また、外バケツ30の本体外周の高さ方向中程位置には、外バケツ30の外周部を一周する環状のギヤ部38が形成されている。この環状ギヤ部38には、前記電動モータ27の駆動力を外バケツ30に伝達するためのチェーン(図示略)が巻き付けられる。即ち、当該チェーンは、外バケツ30の環状ギヤ部38と、電動モータ27の出力軸先端の駆動ギヤ(図示略)とを連結する無限軌道を形成する。そして、このチェーンを介して電動モータ27の駆動力が外バケツ30に伝達されることで、揺動枠体20に対し、外バケツ30がその中心軸線Cを中心として回転駆動される。つまり、電動モータ27、環状ギヤ部38および上記チェーンは、内バケツ保持容器(外バケツ)30を回転駆動するための駆動手段を構成する。
【0028】
図5(A)及び(B)並びに図6に示すように、内バケツ40は、概ね有底円筒状の金属製(例えばステンレス鋼製)の容器体である。内バケツ40は、その上端部41が開口形成されており(図6)、被乾燥物たる粉体を収容可能な開放型の容器をなしている。
【0029】
内バケツ40の上端部外周には、合計4つのタブ(板片状突起)42が突設されている。これら4つのタブ42は、前記外バケツ30の4つのタブ係合部37にそれぞれ対応して設けられたものである。この内バケツ40が外バケツ30内に収納されるとき(図7参照)、内バケツ40の各タブ42が、外バケツ30の対応するタブ係合部37の一対の係合片(37a,37b)間に挿入配置されると共に、当該タブ係合部37中に着座する。すると、両バケツ30,40の中心軸線(C)が一致すると共に両バケツが相対回転不能な状態(つまり一体回転可能な状態)で、内バケツ40が外バケツ30の内部に収納保持される。
【0030】
図5(A)及び(B)に示すように、内バケツ40の底壁部43および外周壁部44には、複数(本例では4つ)の加熱流体用の流通路45A~45Dが設定されている。4つの流通路45A~45Dの各々は、円形の底壁面の4分の1の領域と、その4分の1の底壁面領域に隣接する(全外周の4分の1に相当するところの)外周壁面領域とにまたがる、蛇行した経路として設定されている。例えば、図5(B)に示された内バケツ底壁部43のうちの左上4分の1の領域に割り当てられた流通路45Aに着目すると、この流通路45Aは、底壁部43に設けられた入側カプラ51(入側のプラグ状連結器)を始点とし、同じく底壁部43に設けられた出側カプラ57(出側のプラグ状連結器)を終点とする。そして、入側カプラ51から始まる流通路45は、
「底壁部43を半径方向外側へ向かう経路52、それに続く、外周壁部44を底壁側から上端に向けて上昇する経路53、それに続く、外周壁部44をその上端付近で折り返して上端側から底壁に向けて下降する経路54、それに続く、底壁部43を半径方向内側へ向かう経路55を経て、底壁部43の半径方向中程の折り返し部56に達するまで」
を一つの蛇行単位とする蛇行を複数回繰り返した後、当該流通路45は出側カプラ57に到達する。かくして本実施形態の内バケツ40は、上述のような流通路45を4つ備えることで、内バケツ40の外周壁部44の大部分と、当該外周壁部44に隣接した底壁部43の外周壁部寄り部分とを万遍なく加熱可能となっている。
【0031】
図5及び図6に示すように、内バケツ40の底壁部43には、その底壁面から下方に向けて突出する4つのガード(保護材)46が設けられている。4つのガード46の各々は、筒状(より具体的には長円筒状)をなしており、隣り合う2つの蛇行流通路45のうちの一方の流通路の入側カプラ51(又は出側カプラ57)と、他方の流通路の入側カプラ51(又は出側カプラ57)とを包囲するように設けられている。
【0032】
図7は、外バケツ30の内部に内バケツ40を収納保持した状態を示す断面図である(但し図7では外バケツ30を支持する揺動枠体20を描いていない)。図7に示すように、外バケツ30の4つのタブ係合部37に対し、それぞれ対応する内バケツ40のタブ42が係合することで、内バケツ40が外バケツ30内に相対回動不能(つまり一体回転可能)な状態で保持される。このとき、内バケツ40の底壁部43に設けられた4つのガード46が、外バケツ30の底壁部33に設けられた4つの小貫通穴36にそれぞれ対向配置される。かくして前記4つの流通路45A~45Dの入側カプラ51および出側カプラ59は、小貫通穴36を介して後述する分配・回収機構60と連結可能となる。
【0033】
図7及び図8に示すように、内バケツ40および外バケツ30の下側には、加熱流体を前記4つの流通路45A~45Dに分配すると共に加熱流体を各流通路45から回収するための分配・回収機構60が設けられている。この分配・回収機構60は、中央区画部61と、その直下に配設されたロータリージョイント62と、これら中央区画部61及びロータリージョイント62の内外に延びる多数の配管系(63~65)とから構成されている。
【0034】
中央区画部61は、外バケツ底壁部33の大貫通穴35内に配置されると共に、内バケツ底壁部43の中央部分および大貫通穴35の周囲の外バケツ底壁部33に対して連結固定されている。中央区画部61の内部は、下室61aと上室61bとに区分されている。下室61aは、加熱流体の供給源70からロータリージョイント62を介して供給される相対的に高温の加熱流体を一旦受け入れる中継室である。他方、上室61bは、各流通路45から戻された相対的に低温の加熱流体を受け入れて集約する中継室である。
【0035】
ロータリージョイントとは一般に、固定配管を流れる流体を回転体に搬送するための回転式連結機器をいい、市販品として入手可能である。本実施形態で使用するロータリージョイント62は、回転体側である中央区画部61とつながった中空なシャフト部62aと、そのシャフト部62aの周囲に環状の通路を区画するハウジング部62bとを備えている(図8参照)。ハウジング部62b内の環状の通路は、外部の加熱流体供給源70と中央区画部61の下室61aとを接続しており、当該供給源70からの加熱流体を下室61aに導く供給路として働く。他方、シャフト部62aの中心に貫通形成された通路は、中央区画部61の上室61bと加熱流体供給源70とを接続しており、上室61bに集められた加熱流体を加熱流体供給源70に戻す回収路として働く。
【0036】
使用する加熱流体に応じて、加熱流体の供給源70を種々選択することができる。例えば、加熱流体として高温(例えば120~150℃程度)の水蒸気を使用する場合には、加熱流体供給源70として蒸気発生型のボイラーを使用できる。あるいは、加熱流体としてお湯(例えば70~80℃)やオイルを用いることもできる。
【0037】
図8に示すように、加熱流体供給源70からの加熱流体(例えば高温の水蒸気)は、ロータリージョイント62の側面入口62cから前記環状の通路に入り、その環状の通路を通って中央区画部61の下室61aに導入される。この下室61aには4つの供給配管63(図8では1つのみ図示)が接続されており、下室61aに導入された加熱流体は、それぞれの供給配管63を介して前記4つの流通路45A~45Dの各入側カプラ51に導かれる。入側カプラ51に導かれた加熱流体は、内バケツ40の底壁部及び外周壁部に沿って蛇行する流通路45を経由して、対応する出側カプラ57に到達する。それぞれの出側カプラ57に達した加熱流体は、それぞれの回収配管64(図8では1つのみ図示)を介して中央区画部61の上室61bに導かれる。上室61bに集められた加熱流体(下室61aの加熱流体よりも相対的に低温となっている)は、中央区画部61の中心に位置する中央配管65を介してロータリージョイントのシャフト部62aに導かれ、当該シャフト部62aの中心通路を経由してロータリージョイント62の下端出口62dから加熱流体供給源70に戻される。加熱流体供給源70に戻された加熱流体(例えば水蒸気)は、ボイラー等で再加熱され、高温の加熱流体として再生され、再びロータリージョイント62に向けて供給される。このように高温の加熱流体を当該乾燥装置の内バケツ40と加熱流体供給源70との間で循環させることで、内バケツ40を効率的且つ持続的に加熱することができる。
【0038】
図1は、先に説明した支持フレーム10、揺動枠体20、内バケツ保持容器(外バケツ)30および内バケツ40を組み立ててなる乾燥装置の全体を示す(但し図1では加熱流体の分配・回収機構60を省略している)。図1の乾燥装置では、揺動枠体20、外バケツ30および内バケツ40の三者が、支持フレーム10に対し、水平な支軸22を中心として傾動可能に支持される。また、外バケツ30および内バケツ40は、揺動枠体20に対し、両バケツに共通の中心軸線Cを中心として一体回転可能となっており、両バケツ30,40は、電動モータ27を含む前記駆動手段によって同期回転される。ちなみに本実施形態の乾燥装置では、外バケツ30(および内バケツ40)の中心軸線Cは、揺動枠体20の水平な支軸22と直交する関係にあり、この直交関係は、揺動枠体20等の傾斜角度によらず常に保たれる。
【0039】
図9,10及び11は、本実施形態の乾燥装置を用いた乾燥作業の一連の手順を説明するための図であり、とりわけ内バケツ40及び外バケツ30の傾斜角度に的を絞った概略断面図である。
【0040】
図9は、待機時または被乾燥物たる粉体の搬入時の状態を示す。この待機状態では、乾燥装置の内バケツ40及び外バケツ30は、直立した姿勢(即ち、両バケツの中心軸線Cが水平な設置面Sに対して90°に垂立した姿勢)を保つ。この直立姿勢において内バケツ40の中に未乾燥状態の粉体が所定量搬入される。あるいは、直立姿勢にある外バケツ30に対して、未乾燥の粉体が予め収められた内バケツ40がセットされる。
【0041】
次に図10に示すように、内バケツ40及び外バケツ30を揺動枠体20ごと所定の傾斜角度θにまで傾斜させ、その傾斜角度θに内バケツ40等の姿勢を固定する。この傾動操作は、揺動枠体20の連結具23に連結されたワイヤ又はロープを引っ張ることで行われる。水平な設置面Sと中心軸線Cとがなす傾斜角度θは、例えば、内バケツ40内の粉体が内バケツ40の上端開口縁からこぼれ出る寸前の角度(図10参照、この図ではθが約45°である)に設定する。傾斜角度θを小さくするほど(つまり、内バケツ40の傾斜を水平に近づけるほど)、内バケツ40の内壁面と粉体との接触面積が大きくなり、乾燥の効率化(短時間化)が図られる。換言すれば、内バケツ40への粉体の搬入量を少なめにすることで、傾斜角度θをより小さくすることができ、乾燥時間の短縮化を図ることが可能になる。
【0042】
内バケツ40等を傾斜角度θに保持した状態で電動モータ27を起動することで、傾いた中心軸線Cを中心として外バケツ30及び内バケツ40を回転駆動させる。この回転に併せて内バケツ40の全ての流通路45A~45Dに加熱流体(例えば高温の水蒸気)を連続流通させることで、内バケツ40内の粉体が加熱乾燥される。なお、内バケツ40の内周壁面は、内バケツ40の回転(自転)に伴い、傾斜した中心軸線Cの周りを周回運動するため、内バケツ40の内周壁面(の各壁面部分)は、回転速度に応じた自転周期で粉体との接触/非接触のサイクルを繰り返すことになる。つまり、内バケツ40の内周壁面の各壁面部分には、1サイクルごとに粉体と非接触となるタイミング(時区間)が確保されており、その非接触タイミングを利用して各壁面部分が流通路45を流れる加熱流体からの熱によって温度を回復することができる。
【0043】
図10の傾斜状態で所定時間、加熱乾燥することで、粉体が所望の乾燥レベルまで乾燥される。その後、図11に示すように、内バケツ40及び外バケツ30を揺動枠体20ごと大きく傾けることで(図11では、傾斜角度θ’は約マイナス10°)、内バケツ40から乾燥済みの粉体を搬出することができる。
【0044】
本実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。即ち、
(イ)内バケツ40及び外バケツ30の傾斜角度を乾燥処理すべき粉体の量に応じた適切な傾斜角度(θ)に保持した状態で、内バケツ40及び外バケツ30を回転させることで、粉体を効率的に乾燥することができる。
(ロ)粉体を収容する内バケツ40は上端部が開口した開放型の容器として構成されているため、乾燥作業完了後に揺動枠体20ごと内バケツ40を大きく傾けるだけで、乾燥済みの粉体を内バケツ40から容易に取り出すことができる。
(ハ)内バケツ40は外バケツ30を介して揺動枠体20に間接的に取り付けられると共に、内バケツ40は外バケツ30に対し着脱可能となっているため、乾燥装置から内バケツ40だけを容易に取り外すことができる。このため、品種替えに伴う洗浄等の作業は内バケツ40だけで済ませることができる。また、内バケツ40を事前に複数個用意しておけば、品種替えに伴う作業時間のロスを最小化することができる。
【符号の説明】
【0045】
10 支持フレーム
20 揺動枠体
22 水平な支軸
27 電動モータ(駆動手段)
30 内バケツ保持容器(外バケツ)
40 内バケツ
45A,45B,45C,45D 加熱流体の流通路
60 分配・回収機構
61 中央区画部
62 ロータリージョイント
70 加熱流体の供給源
S 設置面
C 中心軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11