(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】濃度測定装置および濃度測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/47 20060101AFI20220914BHJP
G01N 21/65 20060101ALI20220914BHJP
G01N 21/33 20060101ALI20220914BHJP
G01N 15/06 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
G01N21/47 Z
G01N21/65
G01N21/33
G01N15/06 D
(21)【出願番号】P 2018162559
(22)【出願日】2018-08-31
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000144991
【氏名又は名称】株式会社四国総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000102636
【氏名又は名称】エナジーサポート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(72)【発明者】
【氏名】朝日 一平
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 育彦
(72)【発明者】
【氏名】川崎 剛洋
【審査官】大熊 靖夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-024249(JP,A)
【文献】特開2004-028824(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0268548(US,A1)
【文献】特開平10-010036(JP,A)
【文献】特開2011-080768(JP,A)
【文献】国際公開第2015/005075(WO,A1)
【文献】特開2016-080349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/47
G01N 21/65
G01N 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を出射する発振器を備えたレーザー装置と、
測定対象空間からの弾性散乱光を検出する第1検出装置と、
前記測定対象空間からのラマン散乱光を検出する第2検出装置と、
前記第1検出装置により検出された弾性散乱光の受光信号に基づいて微粒子の濃度を測定するとともに、前記第2検出装置により検出されたラマン散乱光の受光信号に基づいてガスの濃度を測定する測定部と、を備え、
前記第1検出装置および前記第2検出装置は、前記レーザー装置から照射されたレーザー光により生じた弾性散乱光とラマン散乱光とをそれぞれ同時に検出する
こと、
前記測定部は、前記第2検出装置により検出したラマン散乱光における前記微粒子の影響による変動量を前記第1検出装置により検出した弾性散乱光の受光信号に基づいて算出し、当該算出した変動量に基づいて前記第2検出装置により検出したラマン散乱光の受光信号の信号強度を補正し、当該補正した信号強度に基づいて前記ガスの濃度を測定することを特徴とする、
濃度測定装置。
【請求項2】
前記測定部は、前記測定対象空間に前記ガスが存在せず前記微粒子が存在する場合に
前記第2検出装置により検出されるラマン散乱光
における前記微粒子に起因する信号強度
の変動量と、
前記測定対象空間に前記ガスが存在せず前記微粒子が存在する場合に前記第1検出装置により検出される弾性散乱光の受光信号の信号強度との関係を予め記憶している記憶装置をさらに有し、
前記測定部は、前記第1検出装置により検出した弾性散乱光の受光信号の信号強度に基づいて、前記第2検出装置により検出
したラマン散乱光の受光信号の信号強度における
前記微粒子の影響による変動量を算出し、
当該算出した変動量を前記第2検出装置により検出したラマン散乱光の受光信号の信号強度から
差し引くことで、前記第2検出装置により検出したラマン散乱光の受光信号の信号強度を補正する請求項
1に記載の濃度測定装置。
【請求項3】
前記レーザー装置から照射されたレーザー光により生じた弾性散乱光とラマン散乱光とを受光する受光光学系をさらに有し、
前記受光光学系は、前記測定対象空間で生じた弾性散乱光およびラマン散乱光を含む光を前記第1検出装置に伝達するための第1光学系と、前記測定対象空間で生じた弾性散乱光およびラマン散乱光を含む光を前記第2検出装置に伝達するための第2光学系と、を有する、請求項1
または2に記載の濃度測定装置。
【請求項4】
前記受光光学系は、前記測定対象空間から前記レーザー光の照射方向と交差する方向に放射された弾性散乱光およびラマン散乱光を含む光を反射し
て前記第1光学系
に伝達する
第1プリズム
と、前記測定対象空間から前記レーザー光の照射方向と交差する方向に放射された弾性散乱光およびラマン散乱光を含む光を反射して前記第2光学系に伝達する第2プリズムと、を有する、請求項
3に記載の濃度測定装置。
【請求項5】
前記受光光学系から前記第1検出装置または前記第2検出装置に、前記測定対象空間で生じた弾性散乱光およびラマン散乱光を含む光を伝達する光ファイバーをさらに有する、請求項
3または
4に記載の濃度測定装置。
【請求項6】
前記第2検出装置は、前記測定対象空間で生じた弾性散乱光およびラマン散乱光を含む光からラマン散乱光を抽出するために、回折格子または光学フィルタを有する、請求項1ないし
5のいずれかに記載の濃度測定装置。
【請求項7】
前記弾性散乱光は、レイリー散乱光
およびミー散乱光である、請求項1ないし
6のいずれかに記載の濃度測定装置。
【請求項8】
前記第2検出装置は、複数の異なる波長域のラマン散乱光を検出することができ、
前記測定部は、前記第2検出装置により検出された複数の異なる波長域のラマン散乱光に基づいて
前記ガスの種類を特定することができる、請求項1ないし
7のいずれかに記載の濃度測定装置。
【請求項9】
前記第2検出装置は、複数の異なる波長域のラマン散乱光を検出することができ、
前記測定部は、前記第2検出装置により検出された複数の異なる波長域のラマン散乱光に基づいて複数種類のガスの濃度を測定することができる、請求項1ないし
8のいずれかに記載の濃度測定装置。
【請求項10】
レーザー光を測定対象空間に照射し、前記測定対象空間からの弾性散乱光
を第1検出装置で受光するとともに、前記測定対象空間からのラマン散乱光を
第2検出装置で受光する受光工程、
前記第1検出装置
で検出された弾性散乱光
の受光信号に基づいて微粒子の濃度を測定するとともに、
前記第2検出装置で検出されたラマン散乱光
の受光信号に基づいてガスの濃度を測定する濃度測定工程、を備え、
前記受光工程において、
前記第1検出装置および前記第2検出装置は、前記レーザー光に起因する弾性散乱光とラマン散乱光とをそれぞれ同時に検出する
こと、
前記濃度測定工程において、前記第2検出装置により検出したラマン散乱光における前記微粒子の影響による変動量を前記第1検出装置により検出した弾性散乱光の受光信号に基づいて算出し、当該算出した変動量に基づいて前記第2検出装置により検出したラマン散乱光の受光信号の信号強度を補正し、当該補正した信号強度に基づいて前記ガスの濃度を測定することを特徴とする
、濃度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触により測定対象空間に存在するガスの濃度を測定すると同時に、非接触により測定対象空間に存在する微粒子(ダスト)も測定することが可能な濃度測定装置および濃度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非接触によりガスの濃度を測定する装置として、ラマン散乱分光法(レーザーラマン法)を用いた測定装置がある(たとえば特許文献1)。ラマン散乱は、単色光を分子に照射したときに、散乱光の周波数が分子の振動周波数だけ変移する現象であり、この散乱光の周波数変移量は、照射した単色光の周波数に無関係で、物質に固有の量である。そのため、特定波長のレーザー光を測定対象の物質に照射すると、レーザー光が当たった物質から、レーザー光の波長と異なる波長のラマン散乱光が発生する。また、その散乱光の強度は、その物質の密度に比例することが知られている。
【0003】
また従来、非接触により微粒子(ダスト)を測定する装置として、レーザー光を測定対象空間に照射し、測定対象空間に存在する微粒子により散乱したレイリー散乱光を検出することで、測定対象空間に存在する微粒子の濃度を測定する技術が知られている(たとえば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-105892号公報
【文献】特開平9-236411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、非接触により測定対象空間に存在するガスの濃度を測定する装置、および、非接触により測定対象空間に存在する微粒子(ダスト)を測定する装置は、それぞれ知られていたが、近年、非接触により測定対象空間に存在するガスおよび微粒子(ダスト)を単一の装置で同時に測定することができる濃度測定装置が求められていた。
【0006】
本発明は、非接触により測定対象空間に存在するガスおよび微粒子の濃度を単一の装置で同時に測定することが可能な濃度測定装置および濃度測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る濃度測定装置は、レーザー光を出射する発振器を備えたレーザー装置と、測定対象空間からの弾性散乱光を検出する第1検出装置と、前記測定対象空間からのラマン散乱光を検出する第2検出装置と、前記第1検出装置により検出された弾性散乱光の受光信号に基づいて微粒子の濃度を測定するとともに、前記第2検出装置により検出されたラマン散乱光の受光信号に基づいてガスの濃度を測定する測定部と、を備え、前記第1検出装置および前記第2検出装置は、前記レーザー装置から照射されたレーザー光により生じた弾性散乱光とラマン散乱光とをそれぞれ同時に検出すること、前記測定部は、前記第2検出装置により検出したラマン散乱光における前記微粒子の影響による変動量を前記第1検出装置により検出した弾性散乱光の受光信号に基づいて算出し、当該算出した変動量に基づいて前記第2検出装置により検出したラマン散乱光の受光信号の信号強度を補正し、当該補正した信号強度に基づいて前記ガスの濃度を測定することを特徴とする。
【0008】
上記濃度測定装置において、前記測定部は、前記測定対象空間に前記ガスが存在せず前記微粒子が存在する場合に前記第2検出装置により検出されるラマン散乱光における前記微粒子に起因する信号強度の変動量と、前記測定対象空間に前記ガスが存在せず前記微粒子が存在する場合に前記第1検出装置により検出される弾性散乱光の受光信号の信号強度との関係を予め記憶している記憶装置をさらに有し、前記測定部は、前記第1検出装置により検出した弾性散乱光の受光信号の信号強度に基づいて、前記第2検出装置により検出したラマン散乱光の受光信号の信号強度における前記微粒子の影響による変動量を算出し、当該算出した変動量を前記第2検出装置により検出したラマン散乱光の受光信号の信号強度から差し引くことで、前記第2検出装置により検出したラマン散乱光の受光信号の信号強度を補正するように構成することができる。
上記濃度測定装置において、前記レーザー装置から照射されたレーザー光により生じた弾性散乱光とラマン散乱光とを受光する受光光学系をさらに有し、前記受光光学系は、前記測定対象空間で生じた弾性散乱光およびラマン散乱光を含む光を前記第1検出装置に伝達するための第1光学系と、前記測定対象空間で生じた弾性散乱光およびラマン散乱光を含む光を前記第2検出装置に伝達するための第2光学系と、を有するように構成することができる。
上記濃度測定装置において、前記受光光学系は、前記測定対象空間から前記レーザー光の照射方向と交差する方向に放射された弾性散乱光およびラマン散乱光を含む光を反射して前記第1光学系に伝達する第1プリズムと、前記測定対象空間から前記レーザー光の照射方向と交差する方向に放射された弾性散乱光およびラマン散乱光を含む光を反射して前記第2光学系に伝達する第2プリズムと、を有するように構成することができる。
上記濃度測定装置において、前記受光光学系から前記第1検出装置または前記第2検出装置に、前記測定対象空間で生じた弾性散乱光およびラマン散乱光を含む光を伝達する光ファイバーをさらに有するように構成することができる。
上記濃度測定装置において、前記第2検出装置は、前記測定対象空間で生じた弾性散乱光およびラマン散乱光を含む光からラマン散乱光を抽出するために、回折格子または光学フィルタを有するように構成することができる。
上記濃度測定装置において、前記弾性散乱光は、レイリー散乱光およびミー散乱光であるように構成することができる。
上記濃度測定装置において、前記第2検出装置は、複数の異なる波長域のラマン散乱光を検出することができ、前記測定部は、前記第2検出装置により検出された複数の異なる波長域のラマン散乱光に基づいて前記ガスの種類を特定することができるように構成することができる。
上記濃度測定装置において、前記第2検出装置は、複数の異なる波長域のラマン散乱光を検出することができ、前記測定部は、前記第2検出装置により検出された複数の異なる波長域のラマン散乱光に基づいて複数種類のガスの濃度を測定することができるように構成することができる。
【0009】
本発明に係る濃度測定方法は、レーザー光を測定対象空間に照射し、前記測定対象空間からの弾性散乱光を第1検出装置で受光するとともに、前記測定対象空間からのラマン散乱光を第2検出装置で受光する受光工程、前記第1検出装置で検出された弾性散乱光の受光信号に基づいて微粒子の濃度を測定するとともに、前記第2検出装置で検出されたラマン散乱光の受光信号に基づいてガスの濃度を測定する濃度測定工程、を備え、前記受光工程において、前記第1検出装置および前記第2検出装置は、前記レーザー光に起因する弾性散乱光とラマン散乱光とをそれぞれ同時に検出すること、前記濃度測定工程において、前記第2検出装置により検出したラマン散乱光における前記微粒子の影響による変動量を前記第1検出装置により検出した弾性散乱光の受光信号に基づいて算出し、当該算出した変動量に基づいて前記第2検出装置により検出したラマン散乱光の受光信号の信号強度を補正し、当該補正した信号強度に基づいて前記ガスの濃度を測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、非接触により測定対象空間に存在するガスおよび微粒子(ダスト)を単一の装置で同時に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る濃度測定装置を示す構成図である。
【
図2】本実施形態に係る受光光学系の構成を示す構成図である。
【
図3】微粒子が存在する場合と存在しない場合のラマン散乱光の受光信号の信号強度の一例を示すグラフである。
【
図4】微粒子が存在しない場合における、メタンガスの濃度と、ラマン散乱光の受光信号の信号強度との関係の一例を示す図である。
【
図5】第1検出装置により検出されるレイリー散乱光の受光信号の信号強度と、第2検出装置により検出されるラマン散乱光の受光信号の信号強度において、レイリー散乱光に起因する信号強度との関係の一例を示す図である。
【
図6】他の実施形態に係る受光光学系の構成を示す構成図である。
【
図7】他の実施形態に係る濃度測定装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図に基づいて、本実施形態に係る濃度測定装置を説明する。
図1は、本実施形態に係る濃度測定装置1を示す構成図である。濃度測定装置1は、
図1に示すように、レーザー装置10と、受光光学系20と、第1検出装置30と、第2検出装置40と、第1光ファイバー50と、第2光ファイバー60と、測定部70とを一体的に備えている。そして、濃度測定装置1は、レーザー装置10により測定対象空間Sに対してレーザー光を照射することで、レーザー装置10から照射されたレーザー光により生じた弾性散乱光とラマン散乱光とを第1検出装置30および第2検出装置40でそれぞれ同時に検出し、測定することができる。なお、本実施形態では、測定対象のガスとして、メタンガスの濃度を測定する構成を例示するが、濃度測定装置1が測定可能なガスは特に限定されず、たとえば、CO
2,O
2,CO,N
2,H
2S,H
2,NH
3を測定対象とすることができる。また、本実施形態では、弾性散乱光として、微粒子(平均粒径が数十nm~数十μmのダスト粒子)により弾性散乱したレイリー散乱光を受光する構成を例示するが、弾性散乱光はレイリー散乱光に限定されず、レイリー散乱光およびミー散乱光を検出する構成とすることもできるし、ミー散乱光のみを検出する構成とすることもできる。なお、
図1においては、電気信号の伝達を実線で示し、光の伝達を破線で示している(後述する
図7も同様)。
【0013】
レーザー装置10は、被照射物に照射するためのパルスレーザー光を発振し、照射する。レーザー装置10は、
図1に示すように、レーザー光源11、偏光ビームスプリッタ12、λ/2波長板13、凸レンズ14、およびピンホール15を有する。
【0014】
レーザー光源11は、特に限定されないが、本実施形態においては、Nd:YAGレーザーを使用する。また本実施形態において、レーザー光源11は、基本波である355nmのパルスレーザー光を、数ns~数十nsのパルス幅、且つ、10Hz~数kHzの繰り返し周波数で出力する。レーザー装置10から照射されたパルスレーザー光は、偏光ビームスプリッタ12に入射される。
【0015】
偏光ビームスプリッタ12は、レーザー光源11から出射されたレーザー光を、S偏光の反射光と、P偏光の透過光とに分割する。具体的には、レーザー光のS偏光成分が偏光ビームスプリッタ12により反射されてS偏光の反射光として射出される。また、レーザー光のP偏光は、偏光ビームスプリッタ12を透過してP偏光の透過光として射出される。また、偏光ビームスプリッタ12の後方(レーザー光源11と反対側)にはλ/2波長板13が配置されており、偏光ビームスプリッタ12で分割されたP偏光がλ/2波長板13に入射されて偏光方位が変更される。なお、S偏光はλ/2波長板13に入射されずに排出される。λ/2波長板13は、光学軸を入射光の偏光方位からθ傾けることにより、出射光の偏光方位を入射光方位に対し2θ傾けるものであり、たとえば、λ/2波長板13の偏光方位を45°傾けると、レーザー光の直線偏光を、それと直交する直線偏光に変換することができる。また、λ/2波長板13は、図示しない波長板回転機構により回転角を調整することが可能である。このような波長板回転機構の一例として、λ/2波長板13を固定した固定枠を、ヘリコイド溝(螺旋溝)が内面に形成された回転筒に嵌合した機構が挙げられる。この場合、回転筒を回転させることで、λ/2波長板13の回転角を調整することができる。なお、λ/2波長板13は、後述する凸レンズ14とピンホール15との間に配置してもよい。
【0016】
凸レンズ14は、拡散したレーザー光を収束する。ピンホール15は、たとえば開口径が1mmφの孔である。凸レンズ14で収束された光は、ピンホール15で絞られて、測定対象空間Sにおいて1mmφの大きさとなるように調整される。なお、凸レンズ14は、平凸レンズにより構成してもよい。
【0017】
図2は、本実施形態に係る受光光学系20の構成を示す構成図である。受光光学系20は、
図2に示すように、レーザー装置10から測定対象空間Sに対してレーザー光L1が照射され、それにより、測定対象空間Sに存在するガスや微粒子から生じた光(レイリー散乱光およびラマン散乱光を含む光)L2,L3を受光する。
図2に示すように、受光光学系20は、第1凸レンズ21、第2凸レンズ22、第3凸レンズ23、第1ファイバーフェルール24、および第2ファイバーフェルール25を備える。
【0018】
第1凸レンズ21は、レーザー装置10により照射されたレーザー光を測定対象空間Sで合焦させるためのレンズである。また、第2凸レンズ22は、測定対象空間Sから放出された光L2(レイリー散乱光およびラマン散乱光を含む)を集光し、第1光ファイバー50に集光した光を伝達するためのレンズである。第1光ファイバー50の先端位置は第1ファイバーフェルール24で位置決めされており、第2凸レンズ22で集光された光を第1光ファイバー50に伝達することができる。同様に、第3凸レンズ23は、測定対象空間Sから放出された光L3(レイリー散乱光およびラマン散乱光を含む)を集光し、第2光ファイバー60に集光した光を伝達するためのレンズである。第2光ファイバー60の先端位置も第2ファイバーフェルール25で位置決めされており、第3凸レンズ23で集光された光を第2光ファイバー60に伝達することができる。
【0019】
第1検出装置30は、第1光ファイバー50を介して伝達された光L2(レイリー散乱光およびラマン散乱光を含む)から、微粒子によるレイリー散乱光を抽出し、抽出したレイリー散乱光の強度に応じた信号強度の受光信号を出力する。
図1に示すように、第1検出装置30は、光ファイバー端部31、集光レンズ32、平凸レンズ33、バンドパスフィルタ34、および光センサ35を有する。
【0020】
受光光学系20から第1光ファイバー50を介して伝達された光L2(レイリー散乱光およびラマン散乱光を含む)は、光ファイバー端部31を介して、集光レンズ32に射出される。集光レンズ32は、光ファイバー端部31から射出された光を集光し、集光した光を平凸レンズ33に照射する。平凸レンズ33は、集光レンズ32により集光された光を平行光とし、バンドパスフィルタ34に出力する。バンドパスフィルタ34は、たとえばレイリー散乱光の波長である355nm周辺(レーザー装置10から放出されるレーザー光の波長と同じ波長周辺)の光を選択的に透過し、ラマン散乱光などの他の波長の光を遮断する。これにより、測定対象空間Sに照射され、測定対象空間Sに存在する微粒子(ダスト)により反射されたレイリー散乱光が、光センサ35により選択的に受光される。そして、光センサ35は、受光したレイリー散乱光の強度に応じた受光信号を測定部70に出力する。なお、光センサ35は、一つの光センサから構成されたもの(例えば、アバランシェフォトダイオードまたは光電子増倍管)であってもよいし、複数の光センサによって構成されたマルチチャンネル型センサ(たとえば、CCDセンサまたはCMOSセンサ)であってもよい。本実施形態では、光センサ35として光電子増倍管を用いている。
【0021】
第2検出装置40は、第2光ファイバー60を介して伝達された光L3(レイリー散乱光およびラマン散乱光を含む)から、補正前ラマン散乱光を抽出し、抽出した補正前ラマン散乱光の強度に応じた信号強度の受光信号を出力する(なお、後述するように抽出したラマン散乱光にはレイリー散乱光の影響があるため、補正処理が必要である)。
図1に示すように、第2検出装置40は、光ファイバー端部41、集光レンズ42、エッジフィルタ43、バンドパスフィルタ44、および光センサ45を有する。
【0022】
受光光学系20から第2光ファイバー60を介して伝達された光L3(レイリー散乱光およびラマン散乱光を含む)は、光ファイバー端部41を介して、集光レンズ42に射出される。集光レンズ42は、光ファイバー端部41から射出された光を集光し、集光した光をエッジフィルタ43に射出する。エッジフィルタ43は、集光レンズ42により集光された光から、レーザー光に対応する波長(本実施形態では355nm)を含む短波長、もしくは長波長側の光を遮断し、その他の波長の光を選択的に透過させる。さらに、エッジフィルタ43の後方であって、光センサ45の前には、測定対象ガス(本実施形態ではメタンガス)のラマン散乱光を選択的に受光するためのバンドパスフィルタ44が配置されている。このように、本実施形態では、エッジフィルタ43およびバンドパスフィルタ44により、測定対象空間Sに存在するガスにより生じたラマン散乱光を、光センサ45において選択的に受光することができる。そして、光センサ45は、受光したラマン散乱光の強度に応じた受光信号を測定部70に出力する。なお、光センサ45は、光センサ35と同様に、一つの光センサから構成されたもの(例えば、アバランシェフォトダイオードまたは光電子増倍管)であってもよいし、複数の光センサによって構成されたマルチチャンネル型センサ(たとえば、CCDセンサまたはCMOSセンサ)であってもよい。本実施形態では、光センサ35と同様に、光センサ45として光電子増倍管を用いている。また、バンドパスフィルタ44は、複数枚のフィルタが装着可能なフィルターホイールに実装することができる。この場合、他のガス種のラマン散乱波長に対応する透過波長帯域のバンドパスフィルタを別のポジションに実装してホイールを回転させることにより、メタンガス以外の分子の計測も可能となる。
【0023】
測定部70は、第1検出装置30で測定されたレイリー散乱光の受光信号に基づいて、測定対象空間Sに存在する微粒子(ダスト)を測定するとともに、第2検出装置40で測定したラマン散乱光の受光信号に基づいて、測定対象空間Sに存在するガスの濃度を測定する。なお、レイリー散乱光の受光信号に基づく微粒子の濃度の測定方法については、公知の方法で行うことが可能である。一方で、ラマン散乱光の受光信号に基づくガスの濃度の測定方法については、後述するように、補正前ラマン散乱光の受光信号に含まれるレイリー散乱光の影響を除去するため、補正前ラマン散乱光の受光信号を補正する処理を行い、補正後の受光信号に基づいて、測定対象空間Sに存在するガスの濃度を測定する。
【0024】
すなわち、
図3に示すように、微粒子(ダスト)が存在する場合(
図3のAに示す)と、微粒子が存在しない場合(
図3に示すBに示す)とで、第2検出装置40で検出されるラマン散乱光の受光信号の信号強度に差が生じ、微粒子(ダスト)の存在が、ラマン散乱光に影響することが分かる。具体的には、(B)微粒子(ダスト)が存在しない場合と比べて、(A)微粒子(ダスト)が存在する場合には、ラマン散乱光の受光信号の信号強度が高くなることが分かった。より具体的には、
図3は、第2検出装置40で検出されたラマン散乱光の受光信号の時間波形を示しており、ラマン散乱光の受光信号の信号強度の最大値が、(B)微粒子(ダスト)を含まない場合では37mV程度であったが、(A)微粒子(ダスト)を含む場合には65mV程度となった。なお、
図3に示す例では、測定対象空間Sであるガスセル内に、(A)微粒子(ダスト)として線香の煙を充填するとともに、メタンガスを50%の濃度で充填した場合と、(B)微粒子(ダスト)を含めずに、メタンガスのみを50%の濃度で充填した場合とで、ラマン散乱光の受光信号の信号強度を測定しており、(A)および(B)はともに測定対象空間Sのメタンガスの濃度は同じ50%となっている。
【0025】
図4は、微粒子(ダスト)が存在しない場合における、メタンガスの濃度と、ラマン散乱光の受光信号の強度との関係を示すグラフである。
図4に示すように、微粒子(ダスト)が存在しない場合、メタンガスの濃度と、ラマン散乱光の受光信号の強度とは線形の相関関係にある。
図3に示す例では、メタンガスの濃度を50%としており、
図4に示すグラフを参照すると、メタンガスの濃度が50%の場合のラマン散乱光の受光信号の信号強度は35mV程度となっている。これは、
図3における微粒子(ダスト)が存在しない場合(
図3のBで示す場合)の受光信号の信号強度とほぼ一致する。そうすると、
図3に示す例において、(A)微粒子(ダスト)が存在する場合のラマン散乱光の受光信号の信号強度である約65mVと、(B)微粒子(ダスト)が存在しない場合のラマン散乱光の受光信号の信号強度である約37mVとの差である約28mVが、微粒子(ダスト)の影響によるラマン散乱光の受光信号の信号強度の変動量Vと言えることとなる。
【0026】
そこで、発明者は、測定対象空間Sであるガスセルに、ガスを含めないで、微粒子(ダスト)のみを異なる濃度で充填し、第1検出装置30で検出されるレイリー散乱光の受光信号の信号強度と、第2検出装置40で検出されるラマン散乱光の受光信号の信号強度との関係を予め測定し、
図5に示すように、グラフにした。なお、この場合、測定対象空間Sにガスは充填されていないため、第2検出装置40で検出されるラマン散乱光の受光信号の信号強度は、微粒子(ダスト)の影響によるラマン散乱光の受光信号の信号強度の変動量Vと言え、そのため、
図5に示すグラフは、レイリー散乱光の受光信号の信号強度と、微粒子(ダスト)の影響によるラマン散乱光の受光信号の信号強度の変動量Vとの関係を示すグラフと言える。
図5に示すように、レイリー散乱光の受光信号の信号強度と、微粒子(ダスト)の影響によるラマン散乱光の受光信号の信号強度の変動量Vとにも、線形の相関関係があることが分かる。
【0027】
本実施形態では、
図5に示すように、予め求めた、レイリー散乱光の受光信号の信号強度と、微粒子(ダスト)の影響によるラマン散乱光の受光信号の信号強度の変動量Vとの関係を、測定部70の記憶装置71に予め記憶しておく。これにより、測定部70は、記憶装置に記憶したレイリー散乱光の受光信号の信号強度と、微粒子(ダスト)の影響によるラマン散乱光の受光信号の信号強度の変動量Vとの関係を参照することで、第1検出装置30で検出したレイリー散乱光の受光信号の信号強度から、微粒子(ダスト)の影響によるラマン散乱光の受光信号の信号強度の変動量Vを求め、求めた変動量Vに基づいて、実際のラマン散乱光に応じた受光信号の信号強度を求めることができ、測定対象空間Sのガスの濃度を適切に測定することができる。
【0028】
具体的には、測定部70は、まず、第1検出装置30により検出されたレイリー散乱光の受光信号の信号強度を取得する。そして、測定部70は、
図5に示すような、レイリー散乱光の受光信号の信号強度と、微粒子(ダスト)の影響によるラマン散乱光の受光信号の信号強度の変動量Vとの関係とを参照し、第1検出装置30が検出したレイリー散乱光の受光信号の信号強度から、微粒子(ダスト)の影響によるラマン散乱光の受光信号の信号強度の変動量Vを算出する。さらに、測定部70は、第2検出装置40から出力されたラマン散乱光の受光信号の信号強度から、算出したラマン散乱光の受光信号の信号強度の変動量Vを差し引き、実際のラマン散乱光の受光信号の信号強度を算出する。そして、測定部70は、
図4に示すように、実際のラマン散乱光の受光信号の信号強度と、測定対象ガスの濃度との関係に基づいて、実際のラマン散乱光の受光信号の信号強度から、測定対象ガスの濃度を予測することができる。なお、測定部70の記憶装置71には、
図4に示すように、測定対象ガスの濃度と、実際のラマン散乱光の受光信号の信号強度との関係が、予め記憶されている。また、測定部70は、
図4に示す実際のラマン散乱光の受光信号の信号強度と、測定対象ガスの濃度との関係、および、
図5に示すレイリー散乱光の受光信号の信号強度と、微粒子(ダスト)の影響によるラマン散乱光の受光信号の信号強度の変動量Vとの関係を、関係式として記憶しておいてもよいし、テーブルとして記憶しておいてもよい。
【0029】
たとえば、第1検出装置30から出力されたレイリー散乱光の受光信号の信号強度が10mVであり、第2検出装置40から出力されたラマン散乱光の受光信号の信号強度が、
図3のBに示すように、65mVである場合、測定部70は、
図5に示すレイリー散乱光の受光信号の信号強度と、微粒子(ダスト)の影響によるラマン散乱光の受光信号の信号強度の変動量Vとの関係を参照し、レイリー散乱光の受光信号の信号強度10mVから、微粒子(ダスト)の影響によるラマン散乱光の受光信号の信号強度の変動量Vを30mVとして算出する。そして、測定部70は、第2検出装置40から出力されたラマン散乱光の受光信号の信号強度65mVから、ラマン散乱光の受光信号の信号強度の変動量Vの30mVを差し引いて、実際のラマン散乱光の受光信号の信号強度を35mVとして算出する。さらに、測定部70は、
図4に示す測定対象ガスの濃度と、実際のラマン散乱光の受光信号の信号強度との関係を参照し、実際のラマン散乱光の受光信号の信号強度35mVから、測定対象ガスの濃度を50%として算出することができる。
【0030】
以上のように、本実施形態に係る濃度測定装置1では、測定対象空間Sにレーザー光を照射するレーザー装置10と、測定対象空間Sからのレイリー散乱光を検出する第1検出装置30と、測定対象空間Sからのラマン散乱光を検出する第2検出装置40と、第1検出装置30により検出されたレイリー散乱光の受光信号の信号強度に基づいて微粒子の濃度を測定するとともに、第2検出装置40により検出されたラマン散乱光の受光信号に基づいてガスの濃度を測定する測定部70と、を備え、第1検出装置30および第2検出装置40が、レーザー装置10から照射されたレーザー光により生じたレイリー散乱光とラマン散乱光とをそれぞれ同時に検出する。これにより、本実施形態に係る濃度測定装置1では、非接触により測定対象空間に存在するガスおよび微粒子(ダスト)を単一の装置で同時に連続して測定することができる。そのため、本実施形態に係る濃度測定装置1は、たとえば、工場などで排出されるばい煙のダストやSOxなどのガスを同時に連続して測定する用途に用いることが可能となる。すなわち、従来では、非接触により測定対象空間に存在するガスの濃度を測定する装置、および、非接触により測定対象空間に存在する微粒子(ダスト)を測定する装置がそれぞれ知られていたが、これらの2台の装置を用いてガスと微粒子とを測定する場合、2台の装置を同期させて、ガスと微粒子(ダスト)とを同時に測定することは困難であった(2台同時にレーザー光を照射させても実際には僅かに時差が生じてしまい、ガスと微粒子(ダスト)との測定時刻に僅かに時差が生じてしまっていた)。これに対して、本実施形態に係る濃度測定装置では、同じレーザー光に起因して生じたガスと微粒子(ダスト)を測定することができるため、同期を行うことなく、ガスと微粒子(ダスト)とを同時に連続して測定することが可能である。
【0031】
また、上述したように、測定対象空間Sに微粒子(ダスト)が存在する場合には、測定対象空間Sからのラマン散乱光には、微粒子(ダスト)の影響も含まれてしまうが、本実施形態に係る濃度測定装置1では、測定部70が、第2検出装置40により検出したラマン散乱光の受光信号の信号強度を、第1検出装置30により検出したレイリー散乱光の受光信号の信号強度に基づいて補正することで、第2検出装置40により検出したラマン散乱光の受光信号の信号強度から微粒子(ダスト)の影響を除外し、実際のラマン散乱光の受光信号の信号強度を取得することができるため、測定対象空間Sに微粒子(ダスト)が存在する場合でも、測定対象空間Sに存在するガスを適切に測定することができる。測定対象空間Sは例示のガスセルに限定されず、開放空間であってもよいし、煙道のように流れを伴う空間であってもよい。
【0032】
特に、本実施形態では、測定部70が、第2検出装置40により検出されるラマン散乱光の受光信号の信号強度のうちレイリー散乱光に起因する信号強度と、第1検出装置30により検出されるレイリー散乱光の受光信号の信号強度との関係を予め記憶しており、第1検出装置30により検出したレイリー散乱光の受光信号の信号強度に基づいて、第2検出装置40により検出されるラマン散乱光の受光信号の信号強度におけるレイリー散乱光に起因する信号強度を求め、第2検出装置40により検出したラマン散乱光の受光信号の信号強度と、レイリー散乱光に起因する信号強度との差分を、実際のラマン散乱光の受光信号の信号強度として算出することで、測定対象空間Sに微粒子(ダスト)が存在する場合でも、測定対象空間Sに存在するガスを適切に測定することができる。
【0033】
以上、本発明の好ましい実施形態例について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の記載に限定されるものではない。上記実施形態例には様々な変更・改良を加えることが可能であり、そのような変更または改良を加えた形態のものも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0034】
たとえば、上述した実施形態では、受光光学系20として、
図2に示す構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、
図6に示すように、受光光学系20aは、直角プリズム26,27をさらに備える構成とすることができる。ここで、ラマン散乱光はレーザー光の光軸に対して90°の角度をなす位置において強度が最も高くなる指向性を有しており、
図6に示すように、直角プリズム27を用いて、レーザー光の光軸に対して90°の角度をなす位置を測定することで、ラマン散乱光の受光強度を高くすることができる。
【0035】
また、上述した実施形態に係る濃度測定装置1では、
図1に示すように、第2検出装置40が、光ファイバー端部41、集光レンズ42、エッジフィルタ43、バンドパスフィルタ44、および光センサ45を有する構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、
図7に示すように、濃度測定装置1aにおいて、第2検出装置40aを、光ファイバー端部41、集光レンズ42、凸レンズ46、回折格子47、ピンホール48、凸レンズ49、バンドパスフィルタ44、および光センサ45を有する構成としてもよい。回折格子47としては、測定対象ガスのラマン散乱光の波長に応じた波長領域の光を分光できるようにブレーズ角が調整されたブレーズド回折格子を用いることができる。回折格子47から放出された光はピンホール48で絞られた後、凸レンズ49で集光され、バンドパスフィルタ44に入射される。これにより、上述した実施形態と同様に、測定対象ガスのラマン散乱光を、光センサ45において選択的に受光することができる。
【0036】
さらに、上述した実施形態では、第2検出装置40が、測定対象空間Sに存在する単一のガスに起因するラマン散乱光を検出する構成を例示したが、これとは異なり、第2検出装置40で測定対象空間Sに存在する複数種類のガスに起因するラマン散乱光を検出し、測定部70によりガスの種類を特定するように構成することもできる。ここで、ラマン散乱は、単色光を分子に照射したときに、散乱光の周波数が分子に固有の振動周波数だけ変移する現象であり、この散乱光の周波数変移量は、物質に固有の量となる。そのため、たとえば第2検出装置40に、複数枚の異なる透過中心波長を有するフィルタが装着可能なフィルターホイールを実装させ、各種類のガスに由来するラマン散乱光の波長に対応する透過波長帯域のバンドパスフィルタをそれぞれ別のポジションに実装しておき、フィルターホイールを回転させて、各バンドパスフィルタでラマン散乱光を受光し、各受光信号を測定部70に送信することで、測定対象空間Sに存在するガスの種別を特定することができる。ここで、各受光信号を上述と同様の処理により補正することが好ましい。また、フィルターホイールを回転させる駆動装置を設け、測定部70によりフィルターホイールを自動で回転させるように構成してもよい。また、上述のフィルターホイールに代え、集光されたラマン散乱光を各分子種に対応する波長域に分光する分光器および複数の光検出器を備える構成を採用することでガスの種別を特定するようにしてもよい。
【0037】
また、第2検出装置40を、第1のガス種のラマン散乱光を検出する光学系および受光信号出力装置と、第2のガス種のラマン散乱光を検出する光学系および受光信号出力装置とを備えて構成することにより、複数種類のガスの濃度を同時に測定可能に構成してもよく、さらに第3以降のガス種のラマン散乱光を検出するように構成してもよい(この場合も各光学系で抽出したラマン散乱光の受光信号を補正することが好ましい)。
【符号の説明】
【0038】
1,1a…濃度測定装置
10…レーザー装置
11…レーザー光源
12…偏光ビームスプリッタ
13…λ/2波長板
14…凸レンズ14
15…ピンホール
20,20a…受光光学系
21…第1凸レンズ
22…第2凸レンズ
23…第3凸レンズ
24…第1ファイバーフェルール
25…第2ファイバーフェルール
30…第1検出装置
31…光ファイバー端部
32…集光レンズ
33…平凸レンズ
34…バンドパスフィルタ
35…光センサ
40,40a…第2検出装置
41…光ファイバー端部
42…集光レンズ
43…エッジフィルタ
44…バンドパスフィルタ
45…光センサ
46…凸レンズ
47…回折格子
48…ピンホール
49…凸レンズ
50…第1光ファイバー
60…第2光ファイバー
70…測定部