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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】作物収穫機
(51)【国際特許分類】
   A01D 25/00 20060101AFI20220914BHJP
【FI】
A01D25/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019004546
(22)【出願日】2019-01-15
(65)【公開番号】P2020110109
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(73)【特許権者】
【識別番号】504352788
【氏名又は名称】オサダ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】池田 圭
(72)【発明者】
【氏名】村上 健太
(72)【発明者】
【氏名】井上 大嗣
(72)【発明者】
【氏名】長田 秀治
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 和晃
(72)【発明者】
【氏名】大宮 秀郷
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-060427(JP,U)
【文献】実開昭58-112623(JP,U)
【文献】特開2007-202405(JP,A)
【文献】実開平05-009236(JP,U)
【文献】特開2001-028917(JP,A)
【文献】特開2010-273617(JP,A)
【文献】特開2015-084760(JP,A)
【文献】特開平11-075440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 13/00 - 33/14
A01D 43/00 - 43/04
A01D 43/08 - 46/30
A01D 51/00
A01D 67/02
B60J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場の作物を機体後方上方に向けて搬送する搬送装置と、
前記搬送装置にて搬送された作物が受け渡されるとともに受け渡された作物を回収する回収部と、機体の上方を覆う屋根と
前記搬送装置の後端部を上下方向に位置変更調節可能な上下位置調節機構と が備えられ、
前記屋根が、前記搬送装置の上方を覆う作用状態と、前記搬送装置の上方を開放する非作用状態とに切り換え可能に支持され
前記上下位置調節機構は、前記屋根が前記非作用状態に切り換えられている状態で、前記搬送装置の後端部を高位置に位置変更可能である 作物収穫機。
【請求項2】
前記屋根を前記作用状態と前記非作用状態とに切り換え可能なアクチュエータと、
前記屋根の状態変更を指令する手動操作式の指令手段と、
前記指令手段の指令に基づいて前記アクチュエータの作動を制御する制御装置とが備えられている請求項に記載の作物収穫機。
【請求項3】
圃場の作物を機体後方上方に向けて搬送する搬送装置と、
前記搬送装置にて搬送された作物が受け渡されるとともに受け渡された作物を回収する回収部と、機体の上方を覆う屋根とが備えられ、
前記搬送装置が、機体左右方向一端側に偏倚する状態で備えられ、
前記屋根は、前記搬送装置の上方に対応する端部側部分と、それ以外の本体部分とからなり、
前記本体部分が、位置固定状態で機体に支持され、
前記端部側部分が、前記本体部分に対して前後軸芯周りで揺動可能に支持され、且つ、前記搬送装置の上方を覆う作用状態と、前記搬送装置の上方を開放する非作用状態とに切り換え可能である作物収穫機。
【請求項4】
前記搬送装置の機体左右方向他端側に運転部が備えられ、
前記運転部の後方に前記回収部が備えられ、
前記屋根は、前記運転部及び前記回収部の上方を覆う請求項に記載の作物収穫機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行しながら圃場の作物を収穫する作物収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記作物収穫機の一例としての大根等の根菜を収穫する収穫機において、従来では、機体左側に、圃場の作物を機体後方上方に向けて搬送する搬送装置が備えられ、機体後部に、搬送装置にて搬送された作物を回収する回収部として、横搬送装置や貯留用のコンテナ等が備えられたものがあった。搬送装置は、作物の長さや他の条件の違いに応じて、搬送終端部の上下位置が変更できるように構成されている。そして、機体右側には運転部が備えられ、運転部及び回収部の上方を覆う屋根が設けられていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-243714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来構成は、運転部にて操縦する運転者や回収部に貯留される作物等に対して、雨が降りかかったり、日差しが当たるのを防止することが可能である。しかし、上記従来構成では、搬送装置によって搬送される途中の作物に対しては、雨が降りかかったり、日差しが当たるのを防止できない不利があった。
【0005】
ところで、このような不利を解消するために、屋根を搬送装置の上方にまで延長することが考えられるが、搬送装置の搬送終端部の上下位置が変更される構成となっていることから、屋根の延長形成が行えないものとなっている。
【0006】
そこで、搬送装置による搬送作動を阻害することなく、搬送装置によって搬送される作物を雨や日差しから守ることが要望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る作物収穫機の特徴構成は、圃場の作物を機体後方上方に向けて搬送する搬送装置と、前記搬送装置にて搬送された作物が受け渡されるとともに受け渡された作物を回収する回収部と、機体の上方を覆う屋根と、前記搬送装置の後端部を上下方向に位置変更調節可能な上下位置調節機構とが備えられ、前記屋根が、前記搬送装置の上方を覆う作用状態と、前記搬送装置の上方を開放する非作用状態とに切り換え可能に支持され、前記上下位置調節機構は、前記屋根が前記非作用状態に切り換えられている状態で、前記搬送装置の後端部を高位置に位置変更可能である点にある。
【0008】
本発明によれば、機体の上方を覆う屋根が備えられており、その屋根が作用状態に切り換えられていると、屋根が搬送装置の上方を覆うので、搬送装置によって搬送される途中の作物に対しては、雨が降りかかったり、日差しが当たるのを防止することができる。
【0009】
そして、例えば、収穫対象である作物の長さが異なる等の作業条件が変化して、搬送装置の搬送終端部の上下位置が高い位置に変化するような場合には、屋根を非作用状態に切り換えておくことにより、屋根が搬送装置による搬送作動を阻害することを回避できる。
【0010】
従って、搬送装置による搬送作動を阻害することなく、搬送装置によって搬送される作物を雨や日差しから守ることが可能となった。
【0011】
【0012】
また、例えば作物の長さの違いに応じて、上下位置調節機構によって搬送装置の後端部を上下に位置変更させることにより、搬送装置の後端部から回収部への受け渡しが良好に行い易い状態に設定することができる。上下位置調節機構によって搬送装置の後端部を高い位置に変更させる際には、屋根を非作用状態に切り換えておくことで、搬送装置の後端部と屋根とが干渉することを回避することができる。
【0013】
本発明においては、前記屋根を前記作用状態と前記非作用状態とに切り換え可能なアクチュエータと、前記屋根の状態変更を指令する手動操作式の指令手段と、前記指令手段の指令に基づいて前記アクチュエータの作動を制御する制御装置とが備えられていると好適である。
【0014】
本構成によれば、指令手段を手動することにより、アクチュエータの操作力を用いて屋根を作用状態と非作用状態とに切り換えることができる。例えば、指令手段を運転部に備えておくと、運転部にて運転操作しながら指令することができ、屋根の切り換え操作を容易に行うことができる。
【0015】
本発明に係る作物収穫機の他の特徴構成は、圃場の作物を機体後方上方に向けて搬送する搬送装置と、前記搬送装置にて搬送された作物が受け渡されるとともに受け渡された作物を回収する回収部と、機体の上方を覆う屋根とが備えられ、前記搬送装置が、機体左右方向一端側に偏倚する状態で備えられ、前記屋根は、前記搬送装置の上方に対応する端部側部分と、それ以外の本体部分とからなり、前記本体部分が、位置固定状態で機体に支持され、前記端部側部分が、前記本体部分に対して前後軸芯周りで揺動可能に支持され、且つ、前記搬送装置の上方を覆う作用状態と、前記搬送装置の上方を開放する非作用状態とに切り換え可能である点にある。
【0016】
本構成によれば、搬送装置の上方に対応する端部側部分のみが、作用状態と非作用状態とに切り換え可能であるから、屋根全体を姿勢変更する場合に比べて、支持構造が簡単であり、姿勢切り換え操作も行い易い。又、機体の上方側の多くの部分を覆う屋根の本体部分が位置固定状態であるから、作業条件の変化にかかわらず、本体部分の下方側に位置する箇所に対して雨や日差しから守ることが可能である。
【0017】
本発明においては、前記搬送装置の機体左右方向他端側に運転部が備えられ、前記運転部の後方に前記回収部が備えられ、前記屋根は、前記運転部及び前記回収部の上方を覆うと好適である。
【0018】
本構成によれば、運転部にて運転操作する運転者や回収部に貯留される作物等に対しても、雨や日差しから守ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】大根収穫機の側面図である。
図2】大根収穫機の平面図である。
図3】搬送装置の支持構造を示す断面図である。
図4】ウェイト位置変更部の付近の平面図である。
図5】電動シリンダの支持構造を示す斜視図である。
図6】制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、矢印Fの方向を「機体前側」(図1及び図2参照)、矢印Bの方向を「機体後側」(図1及び図2参照)、矢印Uの方向を「上側」(図1参照)、矢印Dの方向を「下側」(図1参照)、矢印Lの方向を「機体左側」(図2参照)、矢印Rの方向を「機体右側」(図2参照)とする。
【0021】
(大根収穫機の全体構成)
図1及び図2に本発明に係る作物収穫機の一例である大根収穫機が示されている。大根収穫機は、右及び左のクローラ型式の走行装置2により、機体1が支持されており、機体1の右前部に運転部3が支持され、機体1の左部に、搬送装置4が前後方向に沿って支持されている。従って、搬送装置4が、機体左右方向一端側としての機体左側に偏倚する状態で備えられ、搬送装置4の機体左右方向他端側としての機体右側に運転部3が備えられている。搬送装置4の前部に分離装置5が支持され、機体1の前部に補助車輪6及びサブソイラ17が支持されている。
【0022】
搬送装置4の後部の下側の位置に、搬送コンベア7が左右方向に沿って支持され、機体1の後部に回収部としての貯留部8が支持されており、搬送コンベア7と貯留部8との間に、補助の作業者の為の作業デッキ9が備えられている。機体1の上部に屋根10が支持されており、屋根10は、前後方向で運転部3から貯留部8に亘っており、左右方向で運転部3から搬送装置4に亘っている。
【0023】
(搬送装置の構成)
図1に示すように、搬送装置4は、前部が圃場の近傍の低位置で、後部が搬送コンベア7の上側の高位置に位置するように、全体が後上がり状(前下がり状)に支持されている。
【0024】
搬送装置4に、右及び左の支持フレーム13、右及び左の第1搬送ベルト11、右及び左の第2搬送ベルト12、カッター14等が備えられている。
【0025】
右及び左の支持フレーム13の前部に亘って、アーチ状の横向きフレーム16が連結されている。支持フレーム13の前端部及び後端部に、右及び左の回転体15が支持され、前及び後の回転体15に亘って第1搬送ベルト11が取り付けられて、第1搬送ベルト11の全体が後上がり状(前下がり状)に支持されている。
【0026】
第2搬送ベルト12は、第1搬送ベルト11の前後方向での中間部の下側から第1搬送ベルト11に沿って、後上がり状(前下がり状)に支持されている。第2搬送ベルト12の後部において、第1搬送ベルト11と第2搬送ベルト12との間に、カッター14が支持されている。
【0027】
(分離装置の構成)
図1,2,4に示すように、分離装置5は、多数の係止爪18a,19aが間隔を置いて並ぶように一体的に形成された4組の分離ベルト18,19と、上下方向に配置された縦フレーム20とを備えており、縦フレーム20が支持フレーム13の前部に支持されている。
【0028】
分離ベルト19の係止爪19aが左右方向に向くように、2組の分離ベルト19が、左右方向に間隔を置いて縦フレーム20に回転自在に支持されており、右及び左の第1搬送ベルト11の前部の前方において、右及び左の分離ベルト19の係止爪19aが互いに対向する状態となっている。
【0029】
分離ベルト19の前方において、右及び左の分離ベルト18が左右方向に間隔を置いて縦フレーム20に回転自在に支持されており、分離ベルト18の係止爪18aが前方を向いている。
【0030】
(搬送装置の支持構造)
図1,2,3,4に示すように、機体1の左前部に、上リンク22及び下リンク23が上下に揺動自在に支持され、上リンク22及び下リンク23の前部に縦リンク24が接続されて、四連リンクが構成されている。
【0031】
上リンク22及び下リンク23の前部に、補助車輪6及びサブソイラ17が支持されており、上リンク22及び下リンク23を上下に昇降させる油圧シリンダ25が備えられている。
【0032】
下リンク23の前部の左右方向の軸芯P1周りに、支持リンク26が揺動自在に支持され、支持リンク26の上部の左右方向の軸芯P2周りに、支持リンク27が揺動自在に支持されている。支持リンク26,27に亘って油圧シリンダ28が接続されており、支持リンク27の上部が、横向きフレーム16の上部に揺動自在に接続されている。
【0033】
搬送装置4の後端部を上下方向に位置変更調節可能な上下位置調節機構Qが備えられている。上下位置調節機構Qは次のように構成されている。すなわち、機体1の左後部に縦向き支持体29が上下向きに連結されており、筒状部材30が縦向き支持体29に沿って上下方向にスライド自在に外嵌支持され、筒状部材30を上下にスライド駆動する昇降用油圧シリンダ31が備えられている。筒状部材30の上端部に、支持フレーム13の後部が揺動自在に接続されている。
【0034】
昇降用油圧シリンダ31により筒状部材30を上下にスライドさせることによって、搬送装置4の後端部、すなわち、支持フレーム13(第2搬送ベルト12)の後部の高さを変更することができる。この場合、上下方向のスライドに伴う支持フレーム13の前後方向の変位は、支持リンク26,27が軸芯P1周りに前後に揺動することによって吸収される。
【0035】
(上下位置調節の制御系の構成)
図6に示すように、昇降用油圧シリンダ31に作動油を給排操作して、昇降用油圧シリンダ31を伸縮作動させる油圧制御弁V2と、油圧制御弁V2の作動を制御する制御装置41と、搬送装置4の後端部の高さの上昇を指令する手動操作式の上昇スイッチ42と、搬送装置4の後端部の高さの下降を指令する手動操作式の下降スイッチ43とが備えられ、それらの各スイッチ42,43の指令に基づいて、制御装置41が油圧制御弁V2を切り換えて昇降用油圧シリンダ31を伸縮作動させる。制御装置41は、マイクロコンピュータを備えており、種々の制御を実行可能である。
【0036】
後述する(搬送装置及び分離装置による大根の収穫の流れ)に記載のように、大根A(作物に相当)の収穫において、例えば大根Aが長い場合、搬送装置4の後端部の高さを少し高くすればよい。大根Aが短い場合、搬送装置4の後端部の高さを少し低くすればよい。これにより、第2搬送ベルト12の後端部と搬送コンベア7の上下間隔を、大根Aの長さに合わせることができる。
【0037】
又、油圧シリンダ28を伸長作動及び収縮作動させ、支持リンク26,27を屈伸させて、支持リンク27の上部の位置を上下に変更することにより、第1搬送ベルト11(支持フレーム13)の前部の圃場からの高さを変更することができる。
【0038】
上昇スイッチ42及び下降スイッチ43は、運転部3の操作パネル部に備えられている。上昇スイッチ42及び下降スイッチ43は、運転座席3Bに着座している運転者が操作する。この上昇スイッチ42及び下降スイッチ43の操作に基づいて搬送装置4の後端部の高さを変更する操作が行われると、作業デッキ9にて補助作業を行っている補助作業者に、そのことを知らせるために、ブザー44を鳴動させて、そのことを報知するように構成されている。
【0039】
(屋根)
図1,3に示すように、屋根10は、屋根全体を支持する支持枠体45と、支持枠体45に装着されるシート部材46とを備えている。尚、図3ではシート部材46は記載を省略している。又、詳細な構造は図示していないが、支持枠体45は、丸パイプ材を外周部を囲うように矩形状に曲げた周枠部と、周枠部の各辺に亘って架設される複数の中継杆とを備えている。シート部材46は、例えば、ターポリン等のテント用生地材が用いられる。支持枠体45は、機体1から立設された複数の支柱47によって支持されている。
【0040】
図3,5に示すように、屋根10は、搬送装置4の上方に対応する端部側部分としての左後部10aと、それ以外の本体部分10bとを備えている。本体部分10bは、位置固定状態で機体1に支持されている。左後部10aは、本体部分10bに対して前後軸芯P4周りで揺動可能に支持されている。そして、左後部10aが、搬送装置4の上方を覆う作用状態と、搬送装置4の上方を開放する非作用状態とに切り換え可能である。
【0041】
説明を加えると、図3に示すように、屋根10において、搬送装置4の後部の上側に位置する屋根10の左後部10aは、屋根10の本体部分10bとは分離されている。支持枠体45が、本体部分10bと左後部10aとに分離されており、図5に示すように、左後部10aにおける支持枠体45が本体部分10bにおける支持枠体45に対して、前後軸芯P4周りで揺動可能に枢支連結されている。左後部10aは、本体部分10bに対して水平方向に連なる水平姿勢(作用状態に対応する)にて、本体部分10bに取り付けられた受止め具48によって受止め支持され、その姿勢を維持できるように構成されている。左後部10aは、作用姿勢から上方に向けて揺動可能である。
【0042】
図1,3,5に示すように、複数の支柱47のうちの機体前後中央部の左側端部に位置する支柱47の上部に、屋根10の左後部10aを上下に揺動駆動するアクチュエータとしての電動シリンダ49が備えられている。この電動シリンダ49は、一端部が支柱47に設けられたブラケット50に回動可能に支持され、他端部が左後部10aの支持枠体45に設けられたブラケット51に回動可能に支持されている。
【0043】
(屋根の姿勢切り換えの制御系の構成)
図6に示すように、屋根10の状態変更を指令する手動操作式の指令手段としての屋根開スイッチ52及び屋根閉スイッチ53が備えられ、制御装置41が、それらの各スイッチ52,53の指令に基づいて電動シリンダ49の作動を制御するように構成されている。
【0044】
屋根開スイッチ52を操作すると、電動シリンダ49が伸長操作され、屋根10の左後部10aが作用姿勢から上方に揺動操作され、搬送装置4の上方を開放させる縦向き姿勢(非作用状態に対応)に切り換えることができる(図3参照)。屋根開スイッチ52の操作を停止すると、電動シリンダ49は伸長操作を停止する。屋根10の左後部10aが本体部分10bに対して略直交する姿勢になるまで揺動操作させることができる。
【0045】
屋根閉スイッチ53を操作すると、電動シリンダ49が縮退操作され、屋根10の左後部10aが縦向き姿勢から下方に揺動操作される。屋根閉スイッチ53の操作を停止すると、電動シリンダ49は縮退操作を停止する。屋根10の左後部10aが水平姿勢になるまで揺動操作させることができる。屋根10の左後部10aが水平姿勢になると、受止め具48によって受止め支持され、それ以上の揺動は阻止される(図1,5参照)。
【0046】
前述の(搬送装置4の支持構造)に記載のように、昇降用油圧シリンダ31により搬送装置4の後端部、すなわち、支持フレーム13(第2搬送ベルト12)の後部が昇降操作される場合、筒状部材30が上下スライド範囲の中間部及び中間部から下側に位置しているときは、図1,2に示すように、屋根10の左後部10aは、屋根10の本体部分10bに連なる水平姿勢に維持することで対応できる。
【0047】
筒状部材30が上下スライド範囲の中間部から上側に移動するときは、図3に示すように、屋根開スイッチ52を操作して屋根10の左後部10aを縦向き姿勢(非作用状態に対応)に切り換えることにより、搬送装置4の後部と屋根10の左後部10aとの接触が回避される。
【0048】
(分離装置の支持構造)
図1,2,4に示すように、支持フレーム13の前部に、支持リンク32が上下に揺動自在に支持されており、支持リンク32の前部が、縦フレーム20の下部に揺動自在に接続されている。
【0049】
機体1の左前部の左右方向の軸芯P3周りに、操作アーム33が上下に揺動自在に支持されており、操作アーム33の前部が、縦フレーム20の上部に揺動自在に接続されている。油圧シリンダ34が、下リンク23と操作アーム33とに亘って接続されている。
以上の構造により、油圧シリンダ34により操作アーム33を上下に揺動駆動することによって、分離装置5の圃場からの高さを変更することができる。
【0050】
支持リンク26,27及び油圧シリンダ34が、下リンク23に支持されている。機体1の旋回時等において、油圧シリンダ25により上リンク22及び下リンク23(補助車輪6及びサブソイラ17)を昇降させると、搬送装置4の前部及び分離装置5が一緒に昇降する。
【0051】
支持フレーム13と縦フレーム20とが、支持リンク32を介して接続されている。
油圧シリンダ28により第1搬送ベルト11(支持フレーム13)の前部の圃場からの高さを変更しても、この動作が支持リンク32に吸収されて、分離装置5の高さに変化は無い。
【0052】
同様に、油圧シリンダ34により分離装置5の圃場からの高さを変更しても、この動作が支持リンク32に吸収されて、第1搬送ベルト11(支持フレーム13)の前部の高さに変化は無い。
【0053】
(搬送装置及び分離装置による大根の収穫の流れ)
図1,2,4に示すように、機体1が前進するのに伴って、右及び左の分離ベルト18の間に、収穫予定の列の大根Aが入る。
【0054】
右及び左の分離ベルト18において前方に向く係止爪18aが、収穫予定の列の大根Aの葉A1と隣接する列の大根Aの葉A1との間を上側に移動するように、分離ベルト18が回転駆動されて、隣接する大根Aの葉A1が互いに分離される。
【0055】
次に収穫予定の列の大根Aが右及び左の分離ベルト19の間に入るのであり、右及び左の分離ベルト19において対向する係止爪19aが上側に移動するように、分離ベルト19が回転駆動されて、収穫予定の列の大根Aにおいて、隣接する大根Aの葉A1が互いに分離される。
【0056】
右及び左の第1搬送ベルト11において対向する部分が後側に移動するように、第1搬送ベルト11が回転駆動されている。同様に、右及び左の第2搬送ベルト12も、対向する部分が後側に移動するように回転駆動されている。
【0057】
収穫予定の列の大根Aの葉A1が、右及び左の第1搬送ベルト11の前部から右及び左の第1搬送ベルト11の間に入り込み、右及び左の第1搬送ベルト11により挟持されながら、大根Aが圃場から持ち上げられて(引き抜かれて)、後側に搬送される。この場合、サブソイラ17により圃場の土が崩されるので、大根Aが圃場から無理なく持ち上げられる(引き抜かれる)。
【0058】
大根Aは、第1搬送ベルト11により後側に搬送され、大根Aの葉A1における第1搬送ベルト11の下側部分が、右及び左の第2搬送ベルト12により挟持されて搬送され、大根Aの葉A1における第2搬送ベルト12の上側部分が、カッター14により切断される。
【0059】
第2搬送ベルト12の後端部において、大根Aが第2搬送ベルト12から搬送コンベア7に落ちて、搬送コンベア7により右側に搬送される。作業デッキ9の作業者は、搬送コンベア7により搬送される大根Aから、良品の大根Aを取り出して貯留部8に整列状態に並べて置いていくのであり、不良の大根Aは搬送コンベア7により搬送されて、搬送コンベア7の右端部から圃場に放出される。
【0060】
この場合、前述の(搬送装置の支持構造)に記載のように、支持フレーム13(第2搬送ベルト12)の後部の高さを変更して、第2搬送ベルト12の後端部と搬送コンベア7の上下間隔を、大根Aの長さに合わせることにより、第2搬送ベルト12に後端部において、大根Aが、こぼれ落ちることなく、第2搬送ベルト12から搬送コンベア7に落ちるようにすることができる。
【0061】
大根Aの葉A1は、第1搬送ベルト11により後側に搬送され、第1搬送ベルト11の後端部から圃場に放出される。この場合、大根Aの葉A1が第1搬送ベルト11の後端部の略真下に落下するように、大根Aの葉A1を案内する案内板21が備えられている。
【0062】
(バランスウェイトを支持するウェイト支持部の構造)
図4に示すように、機体1の左前部にバランスウェイト35が支持されている。そして、このバランスウェイト35の位置を前後方向に変更可能なウェイト位置変更部40が備えられている。
【0063】
機体1の左前部において、角パイプ状の右及び左のガイド部36が、平面視で上リンク22及び下リンク23の機体中央側(右側)に、前後方向に沿って連結されている。角パイプ状の右及び左のスライド部37が、ガイド部36に挿入されて、ガイド部36に沿って前後方向にスライド自在に支持されている。
【0064】
右及び左のスライド部37の前部に亘って支持部38が連結されており、支持部38にバランスウェイト35を取り付ける。復動型の前後移動用油圧シリンダ39が、機体1と支持部38とに亘って接続されている。
【0065】
前後移動用油圧シリンダ39を伸縮作動させることにより、支持部38及びスライド部37を一体で、前後方向に移動させることができる(バランスウェイト35の位置を、前後方向に変更することができる)。
【0066】
この場合、支持部38及びバランスウェイト35は、平面視で上リンク22及び下リンク23の機体中央側(右側)に沿って、後限度位置B1及び前限度位置B2に亘って、前後方向に移動する。前限度位置B2は補助車輪6に対して後側の位置であり、支持部38及びバランスウェイト35は、前限度位置B2に達しても、補助車輪6に接触することはない。
【0067】
以上のように、ウェイト位置変更部40は、ガイド部36、スライド部37、支持部38及び前後移動用油圧シリンダ39等を備えている。複数のバランスウェイト35を、支持部38に左右方向に並べて、取り付け及び取り外し自在であり、支持部38に取り付けられるバランスウェイト35の数を、任意に設定(変更)することができる。
【0068】
(ウェイト位置変更部の制御系の構成)
図5に示すように、油圧シリンダ39に作動油を給排操作して、油圧シリンダ39を伸縮作動させる油圧制御弁V2と、バランスウェイト35の前方への移動を指令する手動操作式の前移動スイッチ55と、バランスウェイト35の後方への移動を指令する手動操作式の後移動スイッチ56とが備えられている。
【0069】
制御装置41は、前移動スイッチ55の操作により、バランスウェイト35を前方へ移動させるように油圧制御弁V2を切り換えて前後移動用油圧シリンダ39を操作する。制御装置41は、後移動スイッチ56の操作により、バランスウェイト35を後方へ移動させるように油圧制御弁V2を切り換え操作する。これにより、後限度位置B1及び前限度位置B2の間において、支持部38及びバランスウェイト35を所望の位置に位置させることができる。
【0070】
前移動スイッチ55及び後移動スイッチ56は、運転部3の操作パネル部に備えられている。前移動スイッチ55及び後移動スイッチ56は、運転座席3Bに着座している運転者が操作する。この操作に基づいてバランスウェイト35の位置を前後方向に変更する操作が行われると、作業デッキ9にて補助作業を行っている補助作業者に、そのことを知らせるために、ブザー44を鳴動させて、そのことを報知するように構成されている。
【0071】
バランスウェイト35の位置を、前後方向に変更する制御構成としては、上述したように手動操作による移動操作とは別に、例えば、機体の前後傾斜角を検出する傾斜センサを備えて、傾斜センサの検出結果に基づいて機体前後姿勢が水平姿勢になるように油圧制御弁V2を切り換えて前後移動用油圧シリンダ39を操作する構成を採用することもできる。
【0072】
このような構成を備えることで、作業の進行及び貯留部8への大根Aの貯留に伴って、全体の重心が後側に移動して、機体1の後下がり状態になると、バランスウェイト35を前側に移動させて、機体1を水平状態に戻すことができる。
【0073】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、屋根10が左後部(端部側部分)10aとそれ以外の本体部分10bとに分割され、本体部分10bが、位置固定状態で機体1に支持され、左後部(端部側部分)10aが、作用状態と非作用状態とに切り換え可能に構成したが、この構成に代えて、屋根10全体が揺動可能に支持され、搬送装置4の上方に対応する箇所が、搬送装置4の上方を覆う状態と開放する状態とに切り替わる構成としてもよい。
【0074】
(2)上記実施形態では、アクチュエータとして電動シリンダ49を用いるようにしたが、電動シリンダ49に代えて、油圧シリンダや油圧モータ、電動モータ等を用いてもよい。
【0075】
(3)上記実施形態では、屋根10をアクチュエータ(電動シリンダ49)により作用状態と非作用状態とに状態変更する構成としたが、この構成に代えて、手動操作により状態変更する構成としてもよい。
【0076】
(4)上記実施形態では、屋根10が搬送装置4、運転部3及び貯留部(回収部)8の夫々の上方を覆う構成としたが、この構成に代えて、搬送装置4と、運転部3とを覆う構成、搬送装置4と貯留部8とを覆う構成、あるいは、搬送装置4だけを覆う構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、大根収穫機の他、人参収穫機や玉葱収穫機等の各種の作物収穫機に適用できる。
【符号の説明】
【0078】
1 機体
3 運転部
4 搬送装置
8 回収部
10 屋根
10a 左後部(端部側部分)
10b 本体部分
41 制御装置
49 電動シリンダ(アクチュエータ)
52 屋根開スイッチ(指令手段)
53 屋根閉スイッチ(指令手段)
P4 前後軸芯
Q 上下位置調節機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6